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審決分類 審判 全部申し立て 発明同一  A61K
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A61K
審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
管理番号 1357635
異議申立番号 異議2019-700287  
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-01-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-04-12 
確定日 2019-10-20 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6422091号発明「まつげエクステンション用接着剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6422091号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正することを認める。 特許第6422091号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6422091号の請求項1?4に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成30年5月25日に特許出願され、同年10月26日にその特許権の設定登録がなされ、同年11月14日に特許掲載公報が発行され、その特許について、平成31年4月12日に、特許異議申立人弓野理恵(以下、「申立人」という。)により、本件特許の全請求項に対して特許異議の申立てがされ、令和1年7月10日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年9月12日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされたものである。
なお、申立人からは、特許異議申立書において特許法第120条の5第5項に係る意見書の提出を希望しない旨の申出があったので、その機会を与えなかった。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、
「(a)下式で表される一官能性モノマー

式中、R^(1):水素原子又はメチル基、X:酸素原子又は窒素原子、R^(2)及びR^(3):水素原子又は重合基を含まない有機基であって、Xが酸素原子である場合n=0であり、Xが窒素原子である場合n=1である。」
と記載されているのを、
「(a)N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド又はN-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド。」
に訂正する。

そして、本件訂正請求は、一群の請求項〔1-3〕について請求されたものである。

2 訂正の目的の適否、新規事項追加の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の有無
訂正事項1は、訂正前の請求項1において、一般式で記載された(a)成分を、本件明細書の段落【0024】で(a)成分として例示され、かつ、段落【0042】の実施例に用いた成分として記載された特定の2成分であるN-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド又はN-メトキシメチル(メタ)アクリルアミドに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正することを認める。

第3 本件発明
本件訂正後の請求項1?4に係る発明(以下、「本件発明1」?「本件発明4」という。)は、令和1年9月12日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
下記の成分を含有する、まつげエクステンション用接着剤。
(a)N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド又はN-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド。
(b)光重合開始剤
【請求項2】
さらに、
(c)下式で表される多官能性モノマー

式中、R^(4)::水素原子又はメチル基、X:酸素原子又は窒素原子、R^(5)及びR^(6):少なくとも一方は重合基を1つ以上含む有機基、他方は水素原子であってもよく、Xが酸素原子である場合m=0であり、Xが窒素原子である場合m=1である。
(d)重合禁止剤
(e)着色剤
(f)増粘剤
又は
(g)希釈剤
から選ばれる1以上の成分を含有する、請求項1に記載のまつげエクステンション用接着剤。
【請求項3】
成分(b)が、(ビス)アシルホスフィンオキサイド類、ケタール類、又はα-ジケトン類である、請求項1又は2に記載のまつげエクステンション用接着剤。
【請求項4】
下記の成分
(a)下式で表される一官能性モノマー

式中、R^(1):水素原子又はメチル基、X:酸素原子又は窒素原子、R^(2)及びR^(3):水素原子又は重合基を含まない有機基であって、Xが酸素原子である場合n=0であり、Xが窒素原子である場合n=1である。
(b)光重合開始剤
を含有するまつげエクステンション用接着剤で接着したまつげを脱離するための、下記の成分を含有する、リムーバー。

式中、R^(7):ヒドロキシ基が置換していてもよいC_(1)?C_(12)までの、環状構造を含んでいてもよい炭化水素基、カルボベンゾキシ基、又はメトキシ基が置換していてもよいアシル基である。」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1?3に係る特許に対して、当審が令和1年7月10日に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

(1)取消理由1
本件特許の請求項1?3に係る発明は、本件特許に係る出願の日前の特許出願であって、本件特許に係る出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた先願1の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許に係る出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許に係る出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、その発明についての特許は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

(2)取消理由2
本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許に係る出願の日前の特許出願であって、本件特許に係る出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた先願2の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許に係る出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許に係る出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、その発明についての特許は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

先願1:特願2017-182847号(特開2019-56095号)(甲第1号証)
先願2:特願2017-233731号(特開2019-99957号)

2 先願明細書等の記載事項
(1)先願1
先願1の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「先願1明細書等」という。)には、以下の事項が記載されている。
(1-1)
「【請求項1】
ホルムアルデヒドを含有しない重合性単量体、及び可視光域光重合開始剤を含む睫毛エクステンション用接着剤。
【請求項2】
更に、長波長紫外線域光重合開始剤が添加されている請求項1に記載した睫毛エクステンション用接着剤。
【請求項3】
更に、希釈剤単量体、重合禁止剤、接着性付与剤、チキソトロピー性付与剤、充填材、重合促進剤、顔料、及び有機溶剤からなる群から選択された少なくとも一種の添加剤が、所定量配合されている請求項1又は2に記載した睫毛エクステンション用接着剤。」
(1-2)
「【0022】
[本発明の光重合型(メタ)アクリル系睫毛エクステンション用接着剤の必須成分]
本発明の光硬化型(メタ)アクリル系睫毛エクステンション用接着剤は、(メタ)アクリルオリゴマー、(メタ)アクリルモノマー、及び光重合開始剤を必須成分とし、必要に応じて、重合禁止剤、接着性付与剤、チキソトロピー性付与剤、充填材等が配合されている。以下、必須成分に関して説明する。
【0023】
1.(メタ)アクリルオリゴマー:
(メタ)アクリルオリゴマーは、接着剤の硬化性、硬化皮膜の機械的特性、接着強度等を左右するもので、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、に大別される。
i)ウレタン(メタ)アクリレート:
ウレタン(メタ)アクリレートは、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリブタジエンポリオール等ポリオールと、トリレンジイソシアネート、キシリデンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等ポリイソシアネートとを反応させ、水酸基を含有するアクリレートモノマーで封緘したものである。原料によって、硬化物の強度、伸び率、柔軟性、ガラス転移点等諸物性が異なるので、原料から選択する必要がある。
ii)ポリエステル(メタ)アクリレート:
ポリエステル(メタ)アクリレートは、ポリオールと多塩基酸との反応生成物であるポリエステルポリオールの(メタ)アクリレート化物である。多塩基酸とポリオールの組み合わせで多種類のポリエステル(メタ)アクリレートを製造することができるので、接着剤の強度、伸び率等物性の調整が可能で、また粘度が低いので作業性が容易である。
iii)エポキシ(メタ)アクリレート:
ポリグリシジルエーテル(エポキシ化合物)と(メタ)アクリル酸の付加反応によって製造され、硬化性に優れている。
【0024】
2.(メタ)アクリルモノマー:
前記の(メタ)アクリルオリゴマーは高粘度なので、(メタ)アクリルモノマーは、希釈剤単量体として使用されることがある。(メタ)アクリルモノマーは、官能基の数によって、単官能型モノマー、2官能型モノマー及び多官能型モノマーがあり、官能基の数によって、硬化物の物性が異なる。即ち、光硬化性、硬化(重合)は、[単官能型モノマー]→[2官能型モノマー]→[多官能型モノマー]の順に高くなる。逆に、接着性は、[単官能型モノマー]→[2官能型モノマー]→[多官能型モノマー]の順に低くなる。従って、複数のモノマーを組み合わせて、接着剤の用途に応じた物性等を調整するこが望ましい。
【0025】
[(メタ)アクリル系モノマー]
次に、本発明で使用できる(メタ)アクリル系モノマーを、例示する。
1.単官能基型(メタ)アクリレート
エトキシ化O-フェニルフェノールアクリレート
メトキシポリエチレングリコールアクリレート
フェノキシポリエチレングリコールアクリレート
2-アクリロイルオキシエチルサクシネート
イソステアリルアクリレート
イソボロニル(メタ)アクリレート
ヒドキロキシアルキル(メタ)アクリレート
ジメチルアクリルアミド
アクロイルモルホリン
【0026】
2.二官能基型(メタ)アクリレート
2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピルメタクリレ-ト
ポリエチレングリコールジアクリレート
プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート
エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート
9,9ビス[4-(2アクロイルオキシエトキシ)フェニルフルオレン
プロポキシ化ビスフェノールジアクリレート
トリシクロデカンジメタアクリレート
2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、
エチレングリコールジメタクリレート、
ジエチレングリコールジメタクリレート、
トリエチレングリコールジメタクリレート、
テトラエチレングリコールジメタクリレート、
1,3-ブタンジオールジメタクリレート、
1,4-ブタンジオールジメタクリレート、
1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、
【0027】
3.三官能基型(メタ)アクリレート
トリメチロールプロパントリメタクリレート、
トリメチロールエタントリメタクリレート、
ペンタエリスリトールトリメタクリレート、
トリメチロールメタントリメタクリレート
【0028】
4.四官能基型(メタ)アクリレート
ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート
ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、
ペンタエリスリトールテトラアクリレート、
エトキシ化ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、
ジペンタエリスリトールテトラアクリレート
ジペンタエリスリトールポリアクリレート
【0029】
5.五官能基型(メタ)アクリレート
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
【0030】
[プレポリマー]
次に、本発明で使用できるプレポリマーを例示する。
1.ポリエステルアクリレート:
多塩基酸と3価アルコールの結合で得られたポリエステルに(メタ)アクリル基を導入したもので、多用な構造が可能で比較的低粘度である。
[アジピン酸-1,6-ヘキサンジオール-(メタ)アクリル酸]:
[無水フタル酸-プロピレンオキシド-(メタ)アクリル酸]:
[トリメリット酸-ジエチレングリコール-(メタ)アクリル酸]:
2.エポキシアクリレート:
エポキシ樹脂に(メタ)アクリル基を導入したものである。ベースのエポキシ樹脂の特性が付与されているので、耐熱性、接着性に優れた紫外線硬化型樹脂になる。
[ビスフェノールA-エピクロロヒドリン-(メタ)アクリル酸]:
[フェノールノボラック-エピクロロヒドリン-(メタ)アクリル酸]:
3.ウレタン(メタ)アクリレート:
ウレタン結合は、水素結合などにより凝集効果を示すので、これが樹脂に含まれると強靱な硬化物が得られる。
[ポリエステル(エチレングリコール-アジピン酸)-トリレンジイソシアナート-2-ヒドロキシエチルアクリレート]:
[ポリエーテル(ポリエチレングリコール)-トリレンジイソシアナート)-2-ヒドロキシエチルメタクリレート]:
[ヒドロキシエチルフタリルメタクリレート-キシレンジイソシアナート]:
[1,2-ポリブタジエングリコール-トリレンジイソシアナート-2-ヒドロキシエチルメタクリレート]:
[トリメチロールプロパン-プロピレングリコール-トリレンジイソシアナート-2-ヒドロキシエチルアクリレート]:
[フェニルグリシジルエーテルアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー]:
[ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー]:
[ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー]:
[ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー]:
[ジペンタエリスリトールペンタアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー]:
【0031】
[希釈剤単量体]
さらに、必要に応じて、上記重合性単量体には、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等のメタクリレート、およびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート等を希釈剤単量体として配合してもよい。希釈剤単量体は、粘度調整、硬化皮膜の物性調整等の効果がある。」
(1-3)
「【0034】
光重合開始剤には、開裂型と水素引き抜き型の2種累がある。本発明の接着剤は、その用途の特殊性から、可視光域で重合させるものである。そのために、本発明で使用される光重合開始剤は、可視光硬化性があるアシルホスフィンオキサイド系として、例えばベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド;2,6-ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド;2、4、6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド;2、4、6-トリメチルベンゾイルジメトキシフェニルホスフィンオキサイド等;ホスフィンオキサイド系として、例えばビス(2、4、6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド;ビス(2、6-ジメトキシベンンゾイル)-2、4、4ートリメチルフェニルホスフィンオキサイド等;カンファ-キノン系として、カンファーキノン;7,7-ジメチル-2、3-ジオキソビシクロ[2、2、1]ヘプタン-1-カルボキシ-2メチルエステル;7、7-ジメチル-2、3-ジオキソビシク[2、2、1]ヘプタン-2カルボン酸等が例示される。これらの可視光域光重合剤は、市販のものを使用することができる。
【0035】
また、本発明の光重合型(メタ)アクリル系睫毛用接着剤において、紫外線硬化型重合性単量体の硬化に使用する光重合開始剤は、従来から公知の光重合開始剤を使用することができる。紫外線重合に用いる重合開始剤としては、α-ヒドロキシアセトフェノン系、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインアルキルエーテル系、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタールなどのベンジルケタール系、ベンゾフェノン、4,4'-ジメチルベンゾフェノン、4-メタクリロキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系、ジアセチル、2,3-ペンタジオンベンジル、カンファーキノン、9,10-フェナントラキノン、9,10-アントラキノンなどのα-ジケトン系、2,4-ジエトキシチオキサントン、2-クロロチオキサントン、メチルチオキサントン等のチオキサントン化合物等が例示される。」
(1-4)
「【0041】
[代表的な添加剤効果等に関する説明]
1.顔料
顔料として、化粧品,毛髪化粧品等において使用される公知のものを使用することができる。例えば、カーボンブラック,マンガンバイオレット等を配合することができるが、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックは、通常、ゴムに配合する場合は、補強材としての効果を得るためであるが、プラスチックへ添加した場合は、ゴムのような補強効果は殆ど無く、専ら着色顔料として使用される。即ち、本発明の睫毛エクステンション用接着剤を黒色に着色することによって、自家睫毛に対して目立たなくすることができる。カーボンブラックは、単に黒さだけではなく、色の耐久力が強く、光、薬品等で変色しないという特徴がある。カーボンブラックの配合量は、例えば、本発明の睫毛エクステンション用接着剤の全量当たり1?3質量%の少量でよい。
【0042】
2.チキソトロピー性付与剤
チキソトロピー性付与剤として、化粧品,毛髪化粧品等において使用される公知のものを使用することができる。例えば、極微粒子ケイ酸,超微粒子酸化チタン,超微粒子酸化チタン等が挙げられるが、極微粒子ケイ酸が好ましい。極微粒子ケイ酸は、フユームドシリカ或いはホワイトカーボンとも呼称されているが、化学的には、極微粒子ケイ酸或いはケイ酸塩であり、それぞれ同義である。本発明の睫毛エクステンション用接着剤にフユームドシリカを所定量配合することによって、増粘効果、チキソトロピー性付与効果、沈降防止効果等、即ち、流動性の調整、だれ防止等が奏功される。フユームドシリカの配合量は、本発明の睫毛エクステンション用接着剤の全質量当たり0.2?15%の範囲でよい。フユームドシリカの配合量が0.2質量%以下の場合、所期の効果を得ることができない。また、フユームドシリカの配合量が15質量%以上の場合、過剰物性になり、コストの点からも望ましくない。尚、本発明の実施例では、日本アエロジール株式会社製の「アエロジール200」を使用したが、その他類似のフユームドシリカが、Degussa、G.L.Cabot Corp、Dow Corning、Fransol等から上市されているので、それぞれ物性(粒子径(μm)、比表面積(m^(2)/g)、見掛比重(g/cc)、給油量(cc/100g)等を勘案して選択するべきである。」
(1-5)
「【実施例】
【0048】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0049】
[実施例で使用した原料]
1.プレポリマー
ウレタンアクリレート
エポキシアクリレート
2.重合性単量体
イソポロニルアクリレート
ジメチル(メタ)アクリルアミド
アクロイルモノレホリン
ヒドロキシエチルメタクリレート(UE8071‐60BHに含有する)
ラウリルアクリレート
ヒドロキシエチルアクリレート
3.可視光域重合開始剤
2、4、6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド
ビス(2、4、6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド
4.重合禁止剤
ヒドロキノン
5.充填剤
ヒュームドシリカ
カーボンブラック
【0050】
[実施例1]
ガラス製の反応容器に、平均分子量650のテトラメチレンエーテルグリコール78g、トリレンジインシアネート35g、及び反応触媒としてカルボン酸ビスマス0.05gを加え、80℃で60分間加熱反応させた後、40gのヒドロキシエチルアクリレートを加え、80℃で、60分間加熱反応させ、ポリウレタンアクリレートを作成した。得たポリウレタンアクリレートに、イソボロニルアクリレート120g、ジメチル(メタ)アクリルアミド60g、2、4、6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド24g、カーボンブラック0.5g、ヒュームドシリカ6g、及びエチルアルコールl0gを添加し、均一な溶液になるまで5時間、室温で撹拝して睫毛エクステンション接着剤を作成した。
【0051】
[実施例2]
ガラス製の反応容器に、平均分子量1000のテトラメチレンエーテルグリコール20gと平均分子量360のビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物40gとインホロンジイソシアネート45g、反応触媒としてアルミニウム錯体2.0g加え80℃で60分間加熱反応させた後、さらに、40gのヒドロキシエチルアクリレートを加え、80℃で60分間、加熱反応させ、ポリウレタンアクリレートを作成した。得たポリウレタンアクリレートに、インボロニルアクリレート160g、アクロイルモルホリン70g、ビス(2、4、6トリメチルベンゾイル)フェニルフォオスフィンオキサイド15g、カーボンブラック0.5g、ヒュームドシリカ6g、及びエチルアルコール10gを添加し、均一な溶液になるまで、5時間室温で撹拌して睫毛エクステンション接着剤を作成した。
【0052】
[実施例3]
市販のエポキシアクリレートUE‐8071-60BH(大日本インキ株式会社)100gにテトラヒドロフルフリルアクリレ一ト20g、ラウリルアクリレート15g、フェノキシジエチレングリコールアクリレート30g、2、4、6-トリメチルベンゾイルジフェニノレホスフィンオキサイド24g、カーボンブラック0.5g、ヒュームドシリカ6g、及びエチルアルコールl0gを均一な溶液になるまで5時間室温で攪拌して、睫毛エクステンション接着剤を作成した。
【0053】
[実施例4]
ガラス製の反応容器に、平均分子量2000のポリカーボネートジオール40gと平均分子量360のビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物18gとトリレンイソシアネート17g、反応触媒としてジブチルチンジアセテート0.04gを加え、80℃で60分加熱反応させた後、さらに40gのヒドロキシエチルアクリレートを加え、80℃で、60分間加熱反応させ、ポリウレタンアクリレートを作成した。得たポリウレタンアクリレートに、イソボロニルアクリレート100g、アクロイルモルホリン70g、ビス(2、4、6トリメチルペンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド15g、カーボンブラック0.5g、ヒュームドシリカ6g、及びエチルアルコール20gを添加し均一な溶液になるまで5時間室温で攪拌して、睫毛エクステンション接着剤を作成した。」
(1-6)
「【表1】



(2)先願2
先願2の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「先願2明細書等」という。)には、以下の事項が記載されている。
(2-1)
「【請求項1】
まつ毛エクステンション用の人工毛を準備する工程と、
前記人工毛にジェル状の光硬化型アクリル樹脂系接着剤を塗布する工程と、
光硬化型アクリル樹脂系接着剤を塗布した人工毛を自まつ毛に圧着することにより、人工まつ毛を自まつ毛に装着する工程と、
LED光を照射して、人工まつ毛を自まつ毛に装着した状態の光硬化型アクリル樹脂系接着剤を硬化させる工程と、
を備えることを特徴とするまつ毛エクステンションの施術方法。
【請求項2】
ジェル状の光硬化型アクリル樹脂系接着剤が、主成分として、アクリル系モノマー、アクリル系オリゴマー、光重合開始剤を含むことを特徴とする請求項1記載のまつ毛エクステンションの施術方法。
【請求項3】
アクリル系モノマーとして、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルのモノマーを含み、アクリル系オリゴマーとして、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルのいずれかのオリゴマーを含むことを特徴とする請求項2記載のまつ毛エクステンションの施術方法。」

3 当審の判断
(1)取消理由1
ア 先願発明1
(ア)上記記載事項(1-5)の実施例1によれば、先願1明細書等には、次の発明が記載されている。
「下記の成分を含有する、まつげエクステンション用接着剤。
・イソボロニルアクリレート
・ジメチル(メタ)アクリルアミド
・2、4、6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド
・ポリウレタンアクリレート
・カーボンブラック
・ヒュームドシリカ
・エチルアルコール」(以下、「先願発明1-1」という。)

(イ)上記記載事項(1-5)の実施例2によれば、先願1明細書等には、以下の発明が記載されている。
「下記の成分を含有する、まつげエクステンション用接着剤。
・イソボロニルアクリレート
・アクロイルモルホリン
・ビス(2、4、6トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド
・ポリウレタンアクリレート
・カーボンブラック
・ヒュームドシリカ
・エチルアルコール」(以下、「先願発明1-2」という。)

(ウ)上記記載事項(1-5)の実施例3によれば、先願1明細書等には、以下の発明が記載されている。
「下記の成分を含有する、まつげエクステンション用接着剤。
・テトラヒドロフルフリルアクリレート
・ラウリルアクリレート
・フェノキシジエチレングリコールアクリレート
・2、4、6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド
・エポキシアクリレート
・カーボンブラック
・ヒュームドシリカ
・エチルアルコール」(以下、「先願発明1-3」という。)

(エ)上記記載事項(1-5)の実施例4によれば、先願1明細書等には、以下の発明が記載されている。
「下記の成分を含有する、まつげエクステンション用接着剤。
・イソボロニルアクリレート
・アクロイルモルホリン
・ビス(2、4、6トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド
・ポリウレタンアクリレート
・カーボンブラック
・ヒュームドシリカ
・エチルアルコール」(以下、「先願発明1-4」という。)
なお、「先願発明1-1」、「先願発明1-2」、「先願発明1-3」及び「先願発明1-4」をまとめて「先願発明1」という。

イ 本件発明1
(ア)対比
本件発明1と先願発明1とを対比する。
先願発明1-1の「イソボロニルアクリレート」及び「ジメチル(メタ)アクリルアミド」、先願発明1-2及び先願発明1-4の「イソボロニルアクリレート」及び「アクロイルモルホリン」、並びに、先願発明1-3の「テトラヒドロフルフリルアクリレート」、「ラウリルアクリレート」及び「フェノキシジエチレングリコールアクリレート」は、先願1当初明細書等の実施例において、3WのLEDによる405nmの光を用いて硬化させていることから(上記記載事項(1-6))、光硬化性モノマーであるといえる。また、本件発明1の「N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド又はN-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド」は、本件明細書の実施例において、光硬化性モノマーとして使用されている(段落【0045】及び表1)。そうすると、先願発明1-1の「イソボロニルアクリレート」及び「ジメチル(メタ)アクリルアミド」、先願発明1-2及び先願発明1-4の「イソボロニルアクリレート」及び「アクロイルモルホリン」、並びに、先願発明1-3の「テトラヒドロフルフリルアクリレート」、「ラウリルアクリレート」及び「フェノキシジエチレングリコールアクリレート」は、本件発明1の「N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド又はN-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド」と光硬化性モノマーである限りにおいて一致する。
先願発明1の「2、4、6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド」は、本件明細書において光重合開始剤として例示されているものであるから(段落【0026】)、本件発明1の「光重合開始剤」に相当する。
以上のことから、本件発明1と先願発明1との一致点及び相違点は次のとおりである。
(一致点)
「下記の成分を含有する、まつげエクステンション用接着剤。
(a)’光硬化性モノマー
(b)光重合開始剤」

(相違点A-1)
光硬化性モノマーが、本件発明1では、「N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド又はN-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド」であるのに対し、先願発明1-1では「イソボロニルアクリレート」及び「ジメチル(メタ)アクリルアミド」であり、先願発明1-2及び先願発明1-4では「イソボロニルアクリレート」及び「アクロイルモルホリン」であり、先願発明1-3では「テトラヒドロフルフリルアクリレート」、「ラウリルアクリレート」及び「フェノキシジエチレングリコールアクリレート」である点
(相違点A-2)
先願発明1は、光硬化性モノマー及び光重合開始剤以外の成分を含むものであるのに対し、本件発明1は、それらの成分を含むことは特定されていない点

(イ)判断
上記相違点A-1について検討する。
本件発明1は、上記第2において示したとおり、(a)成分を「N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド又はN-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド」に限定する訂正がなされたため、本件発明1の上記相違点A-1に係る化合物は、先願発明1のものと明確に相違するものとなった。
そして、先願1明細書等には、まつげエクステンション用接着剤に含まれる光硬化性モノマーとして、「N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド又はN-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド」を使用することは記載も示唆もないし、本件特許出願前における周知慣用技術の付加であるともいえない。
したがって、本件発明1は、相違点A-2について検討するまでもなく、先願1明細書等に記載された発明ということはできない。

ウ 本件発明2及び3
上記イに説示したとおり、本件発明1は、先願1明細書等に記載された発明ではないから、その本件発明1をさらに限定した発明である本件特許発明2及び3も同様に、先願1明細書等に記載された発明ということはできない。

エ 小括
よって、本件発明1?3に係る特許は、取消理由1によって取り消すべきものではない。

(2)取消理由2
ア 先願発明2
上記記載事項(2-1)によれば、先願2明細書等には、次の発明が記載されている。
「下記の成分を含有するまつげエクステンション用接着剤。
(a)’アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルのモノマー
(b)光重合開始剤」(以下、「先願発明2」という。)

イ 本件発明1
(ア)対比
本件発明1と先願発明2とを対比する。
先願発明2の「アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルのモノマー」は、上記記載事項(2-1)の請求項1の記載によれば、LED光を照射して硬化させるものであるから、光硬化性モノマーであるといえる。また、本件発明1の「N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド又はN-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド」は、本件明細書の実施例において、光硬化性モノマーとして使用されている(段落【0045】及び表1)。そうすると、先願発明2の「アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルのモノマー」は、本件発明1の「N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド又はN-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド」と光硬化性モノマーである限りにおいて一致する。
以上のことから、本件発明1と先願発明2との一致点及び相違点は次のとおりである。
(一致点)
「下記の成分を含有する、まつげエクステンション用接着剤。
(a)’光硬化性モノマー
(b)光重合開始剤」

(相違点B)
光硬化性モノマーが、本件発明1では、「N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド又はN-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド」であるのに対し、先願発明2では「アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルのモノマー」である点

(イ)判断
上記相違点Bについて検討する。
本件発明1は、上記第2において示したとおり、(a)成分を「N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド又はN-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド」に限定する訂正がなされたため、本件発明1の上記相違点Bに係る化合物は、先願発明2のものと明確に相違するものとなった。
そして、先願2明細書等には、まつげエクステンション用接着剤に含まれる光硬化性モノマーとして、「N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド又はN-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド」を使用することは記載も示唆もないし、本件特許出願前における周知慣用技術の付加であるともいえない。
したがって、本件発明1は、先願2明細書等に記載された発明ということはできない。

ウ 小括
よって、本件発明1に係る特許は、取消理由2によって取り消すべきものではない。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
申立人は、以下の甲第2号証?甲第6号証を提出し、訂正前の本件特許に対し、以下の申立理由1及び2を主張している。
甲第2号証:特開2011-087658号公報
甲第3号証:特開2001-224677号公報
甲第4号証:特開2015-105447号公報
甲第5号証:Angela、まつげエクステグルーリムーバージェルタイプ15mlマツエク、[online]、Yahoo!ショッピング、[平成31年3月25日検索]、インターネット、
甲第6号証:N-メチルピロリドン、[online]、Wikipedia、[平成31年3月28日検索]、インターネット、

(1)申立理由1(進歩性)
(申立理由1-ア)
請求項1に係る発明は、甲2に記載された発明及び甲3、4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は、同法第113条第2号に該当する。
(申立理由1-イ)
請求項2に係る発明は、甲2に記載された発明及び甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は、同法第113条第2号に該当する。
(申立理由1-ウ)
請求項3に係る発明は、甲3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は、同法第113条第2号に該当する。

(2)申立理由2(新規性)
請求項4に係る発明は、甲6を参酌すれば甲5に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に違反するものであり、本件特許は、同法113条第2号に該当する。

第6 甲号証の記載
1 甲2
甲2には、次の事項が記載されている(下線は当審による。以下、同様。)。
(2’-1)
「【請求項1】
人工毛を睫毛に取り付けることで睫毛が延びたように見せる睫毛エクステンション方法において、
特定波長の光の照射によって硬化が促進される光硬化剤を含んだグルーを、前記人工毛に塗布する塗布工程と、
塗布した前記グルーが前記睫毛に付着するように前記人工毛を前記睫毛に沿って前記睫毛に載せる載置工程と、
前記人工毛が前記睫毛に載せられた状態で前記グルーに対し、前記特定波長をピーク波長とする光照射器により光照射することで前記光硬化剤を硬化させて前記睫毛に前記人工毛を装着する光照射工程と、を備えている、
ことを特徴とする睫毛エクステンション方法。」
(2’-2)
「【0001】
本発明は、睫毛に人工毛を装着する睫毛エクステンション方法、及びこれに使用する光照射器に関する。」
(2’-3)
「【0043】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
<実施形態1>
【0044】
図1?図4を参照して、本発明を適用した睫毛エクステンション方法、及び光照射器30について説明する。このうち、図1は、睫毛エクステンション方法の流れを説明するブロック図である。図2は前工程S0を説明する図であり、(A)及び(B)はテーピングを、また(C)はマスキングを説明する図である。図3(A)は塗布工程Sを説明する図であり、(B)は載置工程S2を説明する図である。図4は光照射器30及び光照射工程S3を説明する図であり、(A)は光照射器30の正面図、(B)は下面図、(C)は右側面図である。
【0045】
図1に示すように、睫毛エクステンション方法は、塗布工程S1と、載置工程S2と、光照射工程S3とを備えており、さらに、塗布工程S1の前には、前工程S0があり、光照射工程S3の後には後工程S4がある。
【0046】
前工程S0では、テーピングと保護マスクKの装着が行われる。
【0047】
ここで、睫毛エクステンションを施す者を施術者、施される者を被施術者とすると、前者の施術者は、例えば、睫毛エクステンションについての専門の講習を修了した、美容院等の従業員がこれに該当する。
【0048】
被施術者は、美容院のシートに着座し、背もたれが倒されることにより、上向きに寝た状態で施術(睫毛エクステンション)を受ける。
【0049】
施術者は、まず、被施術者の目の周りの汚れや脂分を取り除く。つづいて、図2(A)に示すように被施術者の下の瞼にテープT1を貼り、さらに、目尻と目頭とにテープT2を貼る。そして、被施術者の顔に、図2(C)示す目、鼻、口の部分が開口された保護マスクKを付ける。このように、テーピングやマスキングを行うことで、施術中に目が開きにくくし、また、顔の不要な部分に後述するグルー(接着剤)20が付着したり、光が照射されたりすることを防止する。
【0050】
塗布工程S1は、人工毛10にグルー20を塗布する工程である。
【0051】
図3(A)に示すように、施術者は、容器(不図示)から皿Sに少量のグルー20を取り出す。施術者は、一方の手(例えば、右手)でピンセットPを持って、人工毛10の先端部11を摘み、人工毛10の基端部12を皿S上のグルー20の表面に軽く接触させて、先端部12に極少量のグルー20を付着させる。このときのグルー20の付着長さLは、施術者の睫毛M(M1,M2,M3)の長さと略同じにする。つまり、睫毛Mの全長にわたってグルー20がいきわたるようにする。
【0052】
ここで、人工毛10としては、ナイロン,シルク,ガラス,ポリカーボネイト,プラスチック,アクリル等の素材でできたものを使用することができるが、一般的には、ナイロン製のものが多数流通していて、入手が容易であり、好適に使用することができる。また、人工毛10は、長さ,太さ,形状(例えば、カールの度合い),色等については、種々のものが市販されており、被施術者は、自分の好みに合った適宜なものを選択することができる。
【0053】
これに対し、グルー20は、本実施形態では、一般的な従来のグルーとは異なり、光硬化剤を含んだ光硬化型の接着剤を使用している。光硬化型の接着剤は、一般に、光硬化性のモノマー及びオリゴマー、又は光重合触媒として光開始剤及び増感剤その他増粘剤、チキソ化剤、染料、顔料などから構成され、構成成分の一つである光重合触媒がどの波長の光によって感光するかによって、可視光線硬化型と紫外線硬化型とに区分される。本実施形態では、波長が365?410nmの特定波長によって硬化が促進されるものを使用しており、このうち波長が365?400nmのものは紫外線硬化型に分類され、400?410nmのものは可視光線硬化型に分類される。波長が365?400nmの紫外線は、紫外線のうちでも人体に対する悪影響がほとんどないUVAに分類されるが、本実施形態では、紫外線でない、波長が400?410nmの可視光線硬化型のグルー20を使用することが特に好ましい。なお、グルー20の製造にあたり、400?410nmのうち、どの数値を目標とするかは、後述する光照射器30のLED31の固有のピーク波長に合わせるものとする。ちなみに、本実施形態では、LED31は、ピーク波長が405nmのものを使用するので、グルー20としては、光重合触媒が405nmの波長で感光するようにしている。
【0054】
本実施形態におけるグルー20としては、上述のように人工毛10の基端部12に長さLで極少量付着させたときに、液垂れしない粘度を有していることが好ましい。
【0055】
ここで、従来のグルーは、図3(A)に示す皿Sに取りだした場合には、常温,常湿で硬化を開始してしまう。このため、数十分の時間を要する従来の施術においては、全体で使用する量を一度に取り出した場合には、施術後半でグルーを使用する際には、既にある程度固化しているため、使用できなくなるおそれがある。このため、従来は、直近で使用する量(例えば、人工毛10の数本に使用する量)ずつ容器から取り出すことが必要となる。また、容器についてもグルーを取り出すごとに、蓋を開け閉めするといった煩雑な作業を伴う。これに対して、本実施形態のグルー20は、特定波長の光を照射しない限り、ほとんど硬化を開始しないので、施術全体に要する時間が数分程度と短いこともあり、施術全体で必要な量のグルー20を容器から取り出しておいても、ほとんど硬化するおそれがなく、接着力が低下するようなことなない。
【0056】
なお、グルー20は、上述のものに限定されず、光硬化剤を含んでいて、特定波長の光で短時間(数秒程度)で全体が固化するものであれば、他のものを使用することもできる。」

2 甲3
甲3には、次の事項が記載されている。
(3-1)
「【請求項1】 タンパク質の少なくとも一部にビニル基を結合したタンパク質マクロマーと、光反応性化合物とを混合した水溶液が、光照射によってゲル状に硬化して、生体組織に接着することを特徴とする医療用の光硬化性組織接着剤。
・・・
【請求項4】 前記水溶液が、更にビニル化合物を混合したものであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の医療用の光硬化性組織接着剤。」
(3-2)
「【0010】本発明において用いるビニル化合物は、ラジカル重合性の水溶性の各種ビニル系モノマー、オリゴマーおよびポリマーであればどのようなものでもよく、また二官能性、三官能性など多官能性ビニル化合物が好ましい。望ましくは分子量約1000のポリエチレングリコール・ジアクリレートである。」
(3-3)
「【0011】光反応性化合物は、光照射によりラジカルを発生する有機化合物であり、たとえばカンファキノン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ジメトキシフェニルアセトフェノンなどのカルボニル化合物およびそれらの誘導体、ジチオカルバメート、ザンテート、チオフェノールなどのイオウ化合物およびそれらの誘導体、過酸化ベンゾイル、ブチルペルオキシドなどの過酸化物およびそれらの誘導体、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソ酪酸エステルなどのアゾビス化合物およびそれらの誘導体、ブロモプロパン、クロロメチルナフタレンなどのハロゲン化合物およびそれらの誘導体、フェニルアジドなどのアジド化合物およびそれらの誘導体、ローダミン、エリトロン、フルオレセイン、エオシンなどのキサンテン系色素およびそれらの誘導体、リボフラビンおよびそれらの誘導体よりなる群から選ばれた少なくとも1種類、またはアミン類などのプロトンドナーを添加した混合物であり、好ましくはカンファキノン単独、もしくはさらにジメチルアミノエチルメタクリレートとの混合系である。光反応性化合物が、上記の光反応性化合物をタンパク質又は多糖類の側鎖に化学的に導入されている光反応性タンパク質又は光反応性多糖類の場合には、前記タンパク質マクロマーを又は多糖類マクロマーを用いない光反応性タンパク質又は光反応性多糖類からなる水溶液でも接着剤として使用することができる。」
(3-4)
「【0013】光硬化性組織接着剤の硬化は以下の機構により進行する。まず光反応性化合物に光照射するとラジカルが発生する。生成したラジカルによりタンパク質マクロマーや多糖類マクロマーに含まれるビニル基の重合反応が開始される。また、ビニル化合物を共存させている場合にはタンパク質マクロマーあるいは多糖類マクロマーとの共重合反応が起こる。これらの重合反応によりタンパク質間あるいは多糖類間、さらにビニル化合物間とにおいて架橋が起こり、ゲル状の硬化物を与える。」

3 甲4
甲4には、次の事項が記載されている。
(4-1)
「【請求項1】
まつげエクステンションの取付け方法であって、
先端部と末端部とを有する人工まつげ本体部に、接着剤を塗布する工程(a)と、
前記接着剤から揮発する揮発成分を吸引する吸引器具を配置する工程(b)と、
前記吸引器具の吸引動作を実行しながら、前記接着剤が塗布された前記人工まつげ本体部をまつげに装着する工程(c)と
を含む、取付け方法。」
(4-2)
「【0099】
まず、図8(a)に示すように、本実施形態のまつげエクステ100(人工まつげ本体部10)の一部をピンセット60で掴み、そして末端部15に接着剤17を塗布する。そして、接着剤17から揮発する揮発成分19を吸着する吸着材23を、まつげエクステ100が取付けされる人(被施術者)の眼の周囲に配置する。図示した例では、施術される人(ユーザー)のまぶた55又はその周辺に、吸着材23を付着させている。
【0100】
本実施形態の吸着材23は、揮発成分19を吸着するクリーム、または、揮発成分19を吸着するゲルである。より具体的には、シアノアクリレート系接着剤から発生するポリマー蒸気を吸着するクリームまたはゲルである。クリームまたはゲルは、その表面で、ポリマー蒸気(または、揮発性有機化合物(VOC))を好適に吸着することができる。また、クリーム、ゲルでなく、表面積増大による物理吸着を利用した吸着材23を用いることも可能である。そのような吸着材としては、揮発成分を吸着する多孔質部材(例えば、ゼオライトなど)を挙げることができる。さらに、本実施形態の吸着材23としては、ホルムアルデヒド吸着・分解シート(例えば、アイシン精機株式会社製)、ホルムアルデヒド吸着・分解剤(酸化チタン(光触媒)とフッ素樹脂とを含有する材料)、ホルム吸着ビーズ(例えば、日本デオドール株式会社製)、アルデヒド用キャッチャー剤(例えば、大塚化学株式会社製の「ケムキャッチ」)などを挙げることができる。なお、具体的な材料選定にあたっては、当業者が適宜好適なものを採用すればよい。」

4 甲5
甲5には、次の事項が記載されている。
(5-1)




5 甲6
甲6には、次の事項が記載されている。
(6-1)




第7 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由についての合議体の判断
1 甲2に記載された発明を引用発明とする申立理由1-ア及び申立理由1-イ(進歩性)
(1)甲2に記載された発明
上記記載事項(2’-3)の段落【0053】には、まつげエクステンションに用いるグルーにおいて、光硬化型接着剤を使用することが記載されており、光硬化型接着剤は、光硬化性モノマー、光開始剤、増感剤、増粘剤、チキソ化剤、染料及び顔料から構成されることが記載されている。
そうすると、甲2には、以下の発明が記載されている。
「下記の成分を含有するまつげエクステンション用接着剤。
光硬化性モノマー
光開始剤
増感剤
増粘剤
チキソ化剤
染料
顔料」(以下、「甲2発明」という。)

(2)本件発明1
ア 対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
本件発明1の「N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド又はN-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド」は、本件明細書の実施例において、光硬化性モノマーとして使用されている(段落【0045】及び表1)。そうすると、甲2発明の「光硬化性モノマー」と本件発明1の「N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド又はN-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド」は、光硬化性モノマーである限りにおいて一致する。
甲2発明の「光開始剤」は、本件発明1の「光重合開始剤」に相当する。
以上のことから、本件発明1と甲2発明との一致点及び相違点は次のとおりである。
(一致点)
「下記の成分を含有する、まつげエクステンション用接着剤。
(a)’光硬化性モノマー
(b)光重合開始剤」

(相違点2-1)
光硬化性モノマーが、本件発明1は、「N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド又はN-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド」であるのに対し、甲2発明では具体的な構造は不明である点

(相違点2-2)
甲2発明は、「増感剤」、「増粘剤」、「チキソ化剤」、「染料」及び「顔料」を含むものであるのに対し、本件発明1は、それらの成分を含むことは特定されていない点

イ 判断
上記相違点2-1について検討する。
上記記載事項(3-1)の請求項4の記載によると、甲3には、ビニル化合物を混合した医療用の光硬化性組織接着剤が記載されているものの、まつげエクステンション用接着剤に関する技術ではないため、甲2発明に、甲3に記載された技術を組み合わせる動機付けがない上に、そもそも、甲3には、ビニル化合物について、上記記載事項(3-2)に「本発明において用いるビニル化合物は、ラジカル重合性の水溶性の各種ビニル系モノマー、オリゴマーおよびポリマーであればどのようなものでもよく、また二官能性、三官能性など多官能性ビニル化合物が好ましい。望ましくは分子量約1000のポリエチレングリコール・ジアクリレートである。」と記載されているだけであって、本件発明1に規定される「N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド又はN-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド」を用いることは記載も示唆もされていない。
また、甲4は、従来のまつげエクステンション用接着剤には、シアノアクリレート系接着剤が使用されており、これにはホルムアルデヒドを発生する不具合があることを示すための文献であって、まつげエクステンション用接着剤として、「N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド又はN-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド」を用いることは記載も示唆もされていない。
そうすると、甲2発明における光硬化性モノマーとして、「N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド又はN-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド」を用いることを動機付ける記載は、甲3及び甲4には見当たらない。
そして、本件発明1は、光硬化性モノマーとして、「N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド又はN-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド」を用いることにより、人毛等への密着性が向上するとともに、硬化体が溶媒へ溶解しやすくなるという効果を奏するものであり、この効果は、いずれの証拠の記載から予測されるものではない。
したがって、相違点2-2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2に記載された発明及び甲3、4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

(3)本件発明2
本件発明2は、本件発明1をさらに限定した発明であるから、本件発明1と同様に、甲2に記載された発明及び甲3、4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

(4)小括
以上のとおりであるから、申立理由1-ア及び申立理由1-イは理由がない。

2 甲3に記載された発明を引用発明とする申立理由1-ウ(進歩性)
(1)甲3に記載された発明
上記記載事項(3-1)及び(3-3)によると、甲3には、次の発明が記載されている。
「タンパク質の少なくとも一部にビニル基を結合したタンパク質マクロマーと、カンファキノンである光反応性化合物と、ビニル化合物を含む医療用の光硬化性組織接着剤。」(以下、「甲3発明」という。)

(2)本件発明3
ア 本件発明3は、「成分(b)が、(ビス)アシルホスフィンオキサイド類、ケタール類、又はα-ジケトン類である、請求項1又は2に記載のまつげエクステンション用接着剤。」に係る発明であるところ、請求項1を引用する本件発明3を独立形式で書き下すと、次のとおりとなる。
「下記の成分を含有する、まつげエクステンション用接着剤。
(a)N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド又はN-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド。
(b)光重合開始剤
成分(b)が、(ビス)アシルホスフィンオキサイド類、ケタール類、又はα-ジケトン類である。」(以下、「本件発明3-1」という。)

また、請求項2を引用する本件発明3を独立形式で書き下すと次のとおりとなる。
「下記の成分を含有する、まつげエクステンション用接着剤。
(a)N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド又はN-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド。
(b)光重合開始剤
さらに、
(c)下式で表される多官能性モノマー

式中、R^(4)::水素原子又はメチル基、X:酸素原子又は窒素原子、R^(5)及びR^(6):少なくとも一方は重合基を1つ以上含む有機基、他方は水素原子であってもよく、Xが酸素原子である場合m=0であり、Xが窒素原子である場合m=1である。
(d)重合禁止剤
(e)着色剤
(f)増粘剤
又は
(g)希釈剤
から選ばれる1以上の成分を含有し、
成分(b)が、(ビス)アシルホスフィンオキサイド類、ケタール類、又はα-ジケトン類である、まつげエクステンション用接着剤」(以下、「本件発明3-2」という。)
なお、「本件発明3-1」及び「本件発明3-2」をまとめて、「本件発明3」という。

イ 対比
本件発明3と甲3発明とを対比する。
上記記載事項(3-4)には、「光硬化性組織接着剤の硬化は以下の機構により進行する。まず光反応性化合物に光照射するとラジカルが発生する。生成したラジカルによりタンパク質マクロマーや多糖類マクロマーに含まれるビニル基の重合反応が開始される。また、ビニル化合物を共存させている場合にはタンパク質マクロマーあるいは多糖類マクロマーとの共重合反応が起こる。これらの重合反応によりタンパク質間あるいは多糖類間、さらにビニル化合物間とにおいて架橋が起こり、ゲル状の硬化物を与える。」と記載されていることから、甲3発明の「タンパク質の少なくとも一部にビニル基を結合したタンパク質マクロマー」及び「ビニル化合物」は、光硬化性材料であるといえる。また、本件発明1の「N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド又はN-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド」は、本件明細書の実施例において、光硬化性モノマーとして使用されている(段落【0045】及び表1)。そうすると、甲3発明の「タンパク質の少なくとも一部にビニル基を結合したタンパク質マクロマー」及び「ビニル化合物」は、本件発明1の「N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド又はN-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド」と光硬化性材料である限りにおいて一致する。
甲3発明の「カンファキノン」は、本件明細書において、α-ジケトン類として例示されているものであるから(段落【0029】)、本件発明3の「α-ジケトン類」に包含されるものである。そうすると、甲3発明の「カンファキノンである光反応性化合物」は、本件発明3の「α-ジケトン類である」「光重合開始剤」に相当する。

以上のことから、本件発明1と甲3発明は、
「下記の成分を含有する接着剤。
(a)’光硬化性材料
(b)α-ジケトン類である光重合開始剤」
である点で一致し、少なくとも次の点で相違する。

(相違点3-1)
光硬化性材料が、本件発明1は、「N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド又はN-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド」であるのに対し、甲3発明では、「タンパク質の少なくとも一部にビニル基を結合したタンパク質マクロマー」及び「ビニル化合物」である点

(相違点3-2)
本件発明3は、「まつげエクステンション用接着剤」であるのに対し、甲3発明は「医療用の光硬化性組織接着剤」である点

ウ 判断
(ア)相違点3-1について
甲3発明の「タンパク質の少なくとも一部にビニル基を結合したタンパク質マクロマー」は、本件発明1の「N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド又はN-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド」とは全く異なる化学構造を有する化合物である。また、甲3には、ビニル化合物について、上記記載事項(3-2)に「本発明において用いるビニル化合物は、ラジカル重合性の水溶性の各種ビニル系モノマー、オリゴマーおよびポリマーであればどのようなものでもよく、また二官能性、三官能性など多官能性ビニル化合物が好ましい。望ましくは分子量約1000のポリエチレングリコール・ジアクリレートである。」と記載されているだけであって、本件発明1に規定される「N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド又はN-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド」を用いることは記載も示唆もされていない。
そうすると、甲3発明において、光硬化性材料として、「N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド又はN-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド」を用いることは、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。

(イ)相違点3-2について
甲3発明は、医療用の光硬化性組織接着剤に係る発明であって、甲3には、これをまつげエクステンション用接着剤として使用することは記載も示唆もされていないし、このことが本件特許出願前における周知の技術的事項であるとも認められない。
そうすると、甲3発明の医療用の光硬化性組織接着剤をまつげエクステンション用接着剤として用いることは、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。

(ウ)効果
そして、本件発明1は、光硬化性材料として、「N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド又はN-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド」を用いることにより、人毛等への密着性が向上するとともに、硬化体が溶媒へ溶解しやすくなるという効果を奏するものであり、この効果は、甲3の記載から予測されるものではない。

(エ)したがって、本件発明1は、甲3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

(3)小括
以上のとおりであるから、申立理由1-ウは理由がない。

3 甲5に記載された発明を引用発明とする申立理由2(新規性)
(1)甲5に記載された発明
上記記載事項(5-1)によると、甲5には、N-メチル-2-ピロリドンを成分として含むまつげエクステ専用リムーバーが記載されており、まつげエクステ専用リムーバーということは、まつげエクステンション用接着剤で接着したまつげを脱離するためのリムーバーであるといえる。
そうすると、甲5には、次の発明が記載されていると認められる。
「まつげエクステンション用接着剤で接着したまつげを脱離するためのリムーバーであって、成分としてN-メチル-2-ピロリドンを含有するリムーバー。」(以下、「甲5発明」という。)

(2)本件発明4
ア 対比
本件発明4と甲5発明を対比する。
甲5発明の「N-メチル-2-ピロリドン」の化学構造式は、上記記載事項(6-1)によれば、



であるから、本件発明4の



に包含されるものである。

そうすると、本件発明4と甲5発明は、
「まつげエクステンション用接着剤で接着したまつげを脱離するための下記の成分を含有する、リムーバー。


である点で一致し、次の点で相違する。
(相違点4-1)
まつげエクステンション用接着剤が、本件発明4では、
「下記の成分
(a)下式で表される一官能性モノマー

式中、R^(1):水素原子又はメチル基、X:酸素原子又は窒素原子、R^(2)及びR^(3):水素原子又は重合基を含まない有機基であって、Xが酸素原子である場合n=0であり、Xが窒素原子である場合n=1である。
(b)光重合開始剤
を含有する」
ものであるのに対し、甲5発明ではそのような成分を含有するか不明である点

イ 判断
上記相違点4-1について検討すると、甲5には、まつげエクステンション用接着剤の成分が何ら記載されていないのであるから、上記相違点4-1は実質的な相違点である。
したがって、本件発明4は、甲6に記載された事項を参酌しても、甲5に記載された発明ということはできない。

(3)小括
以上のとおりであるから、申立理由2は理由がない。

第8 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1?4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1?4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、特許法第114条第4項の規定により、本件請求項1?4に係る特許について、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分を含有する、まつげエクステンション用接着剤。
(a)N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド又はN-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド。
(b)光重合開始剤
【請求項2】
さらに、
(c)下式で表される多官能性モノマー

式中、R^(4)::水素原子又はメチル基、X:酸素原子又は窒素原子、R^(5)及びR^(6):少なくとも一方は重合基を1つ以上含む有機基、他方は水素原子であってもよく、Xが酸素原子である場合m=0であり、Xが窒素原子である場合m=1である。
(d)重合禁止剤
(e)着色剤
(f)増粘剤
又は
(g)希釈剤
から選ばれる1以上の成分を含有する、請求項1に記載のまつげエクステンション用接着剤。
【請求項3】
成分(b)が、(ビス)アシルホスフィンオキサイド類、ケタール類、又はα-ジケトン類である、請求項1又は2に記載のまつげエクステンション用接着剤。
【請求項4】
下記の成分
(a)下式で表される一官能性モノマー

式中、R^(1):水素原子又はメチル基、X:酸素原子又は窒素原子、R^(2)及びR^(3):水素原子又は重合基を含まない有機基であって、Xが酸素原子である場合n=0であり、Xが窒素原子である場合n=1である。
(b)光重合開始剤
を含有するまつげエクステンション用接着剤で接着したまつげを脱離するための、下記の成分を含有する、リムーバー。

式中、R^(7):ヒドロキシ基が置換していてもよいC_(1)?C_(12)までの、環状構造を含んでいてもよい炭化水素基、カルボベンゾキシ基、又はメトキシ基が置換していてもよいアシル基である。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-10-08 
出願番号 特願2018-100521(P2018-100521)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (A61K)
P 1 651・ 161- YAA (A61K)
P 1 651・ 113- YAA (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 松井 一泰  
特許庁審判長 岡崎 美穂
特許庁審判官 吉田 知美
冨永 みどり
登録日 2018-10-26 
登録番号 特許第6422091号(P6422091)
権利者 嶋田 桂 内田 一司
発明の名称 まつげエクステンション用接着剤  
代理人 谷口 博  
代理人 谷口 操  
代理人 横堀 芳徳  
代理人 谷口 博  
代理人 谷口 操  
代理人 谷口 博  
代理人 谷口 操  
代理人 竹沢 荘一  
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