• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H01B
管理番号 1357651
異議申立番号 異議2018-700581  
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-01-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-07-13 
確定日 2019-10-15 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6263146号発明「導電膜付基板、その製造方法、およびポリイミド基板用導電性ペースト」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6263146号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕、〔3、4〕及び〔5、6〕について訂正することを認める。 特許第6263146号の請求項1及び2に係る特許を取り消す。 特許第6263146号の請求項3ないし6に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6263146号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし6に係る特許についての出願は、平成27年4月6日を出願日とする出願であって、平成29年12月22日にその特許権の設定登録(請求項の数6)がされ、平成30年1月17日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年7月13日に特許異議申立人 伊藤麻子(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされ、当審において同年10月3日付けで取消理由及び審尋が通知され、同年12月4日に特許権者 株式会社ノリタケカンパニーリミテド(以下、「特許権者」という。)から意見書が提出されるとともに訂正の請求がされ、同年同月18日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、平成31年1月18日に特許異議申立人から意見書が提出され、同年3月20日付けで訂正拒絶理由が通知され、同年4月24日に特許権者から意見書及び手続補正書が提出され、令和1年6月5日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年8月5日に特許権者から意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否について
1 訂正の内容
平成30年12月4日にされた訂正の請求による訂正(平成31年4月24日に提出された手続補正書による補正されたもの。以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「ポリイミド基板の一面に銀を導体成分として含む導電膜が備えられた導電膜付基板であって、
前記導電膜および前記ポリイミド基板の構成成分がそれらの界面を越えてその導電膜の厚さ寸法以下の範囲で相互に他方に侵入することにより形成された凹凸面をその界面が成していることを特徴とする導電膜付基板。」と記載されているのを、「ポリイミド基板の一面に銀を導体成分として含む導電膜が備えられた導電膜付基板であって、
前記導電膜および前記ポリイミド基板の構成成分がそれらの界面を越えてその導電膜の厚さ寸法以下の範囲で相互に他方に侵入することにより形成された凹凸面をその界面が成していて、
前記導電膜の厚み方向の一部は、前記ポリイミド基板に入り込んでいる
ことを特徴とする導電膜付基板。」に訂正する。
併せて、特許請求の範囲の請求項1を直接引用する請求項2についても、請求項1を訂正したことに伴う訂正をする。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に「銀を導体成分として含む導電膜をポリイミド基板上に形成する導電膜付基板の製造方法であって、
ロジン、脂肪酸、およびアミン類のうちの少なくとも1種から成る所定量のコート剤が表面に付着した銀粉末と、樹脂結合剤と、有機溶剤とを含む導電性ペーストを前記ポリイミド基板上に所定パターンで塗布するペースト塗布工程と、
250?300(℃)の最高温度で焼成処理を施すことにより銀を焼結させて前記導電性ペーストから導電膜を生成する焼成工程と
を、含むことを特徴とする導電膜付基板の製造方法。」と記載されているのを、「銀を導体成分として含む導電膜をポリイミド基板上に形成する導電膜付基板の製造方法であって、
ロジン、脂肪酸、およびアミン類のうちの少なくとも1種から成る所定量のコート剤が表面に付着した銀粉末と、樹脂結合剤と、有機溶剤とを含む導電性ペーストを前記ポリイミド基板上に所定パターンで塗布するペースト塗布工程と、
250?300(℃)の範囲内の温度で焼成処理を施すことにより銀を焼結させて前記導電性ペーストから導電膜を生成する焼成工程と
を、含むことを特徴とする導電膜付基板の製造方法。」に訂正する。
併せて、特許請求の範囲の請求項3を直接引用する請求項4についても、請求項3を訂正したことに伴う訂正をする。

(3)訂正事項3(平成31年4月24日に提出された手続補正書による補正後のもの)
特許請求の範囲の請求項5に「銀粉末と、樹脂結合剤と、有機溶剤とを含み、ポリイミド基板上に導電膜を形成して導電膜付基板を製造するために用いられるポリイミド基板用導電性ペーストであって、
前記銀粉末は、ロジン、脂肪酸、およびアミン類のうちの少なくとも1種から成るコート剤をその銀粉末に対する質量比で2.3(%)以下の量で表面に付着させたコート剤付着銀粉末であることを特徴とするポリイミド基板用導電性ペースト。」と記載されているのを、「銀粉末と、樹脂結合剤と、有機溶剤とを含み、ポリイミド基板上に導電膜を形成して導電膜付基板を製造するために用いられるポリイミド基板用導電性ペーストであって、
前記銀粉末は、ロジン、脂肪酸、およびアミン類のうちの少なくとも1種から成るコート剤をその銀粉末に対する質量比で2.3(%)以下の量で表面に付着させたコート剤付着銀粉末であり、
250℃の処理温度において6.7(mΩ/□)以下のシート抵抗値を有することを特徴とするポリイミド基板用導電性ペースト。」に訂正する。
併せて、特許請求の範囲の請求項5を直接引用する請求項6についても、請求項5を訂正したことに伴う訂正をする。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6に「前記銀粉末は、平均粒径が0.5(μm)以下である請求項5のポリイミド基板用導電性ペースト。」と記載されているのを、「前記銀粉末は、平均粒径が0.07(μm)以上0.5(μm)以下の範囲である請求項5のポリイミド基板用導電性ペースト。」に訂正する。

(5)訂正事項5
明細書の【0012】に「斯かる目的を達成するため、第1発明の要旨とするところは、ポリイミド基板の一面に銀を導体成分として含む導電膜が備えられた導電膜付基板であって、前記導電膜および前記ポリイミド基板の構成成分がそれらの界面を越えてその導電膜の厚さ寸法以下の範囲で相互に他方に侵入することにより形成された凹凸面をその界面が成していることにある。」と記載されているのを、「斯かる目的を達成するため、第1発明の要旨とするところは、ポリイミド基板の一面に銀を導体成分として含む導電膜が備えられた導電膜付基板であって、前記導電膜および前記ポリイミド基板の構成成分がそれらの界面を越えてその導電膜の厚さ寸法以下の範囲で相互に他方に侵入することにより形成された凹凸面をその界面が成していて、前記導電膜の厚み方向の一部は、前記ポリイミド基板に入り込んでいることにある。」に訂正する。
また、明細書の【0015】に「前記第1発明によれば、導電膜およびポリイミド基板は、それらの構成成分が導電膜の厚さ寸法以下の範囲で相互に他方に侵入しており、これにより形成された凹凸面をそれらの界面が成していることから、接触面積の増大に伴って導電性と密着性が高められる。そのため、高い導電性とポリイミド基板との高い密着性を有する導電膜が備えられた導電膜付基板が得られる。」とあるのを「前記第1発明によれば、導電膜およびポリイミド基板は、それらの構成成分が導電膜の厚さ寸法以下の範囲で相互に他方に侵入しており、これにより形成された凹凸面をそれらの界面が成していて、前記導電膜の厚み方向の一部は、前記ポリイミド基板に入り込んでいることから、接触面積の増大に伴って導電性と密着性が高められる。そのため、高い導電性とポリイミド基板との高い密着性を有する導電膜が備えられた導電膜付基板が得られる。」に訂正する。

(6)訂正事項6
明細書の【0013】に「また、前記目的を達成するための第2発明の要旨とするところは、銀を導体成分として含む導電膜をポリイミド基板上に形成する導電膜付基板の製造方法であって、(a)ロジン、脂肪酸、およびアミン類のうちの少なくとも1種から成る所定量のコート剤が表面に付着した銀粉末と、樹脂結合剤と、有機溶剤とを含む導電性ペーストを前記ポリイミド基板上に所定パターンで塗布するペースト塗布工程と、(b)250?300(℃)の最高温度で焼成処理を施すことにより銀を焼結させて前記導電性ペーストから導電膜を生成する焼成工程とを、含むことにある。」と記載されているのを、「また、前記目的を達成するための第2発明の要旨とするところは、銀を導体成分として含む導電膜をポリイミド基板上に形成する導電膜付基板の製造方法であって、(a)ロジン、脂肪酸、およびアミン類のうちの少なくとも1種から成る所定量のコート剤が表面に付着した銀粉末と、樹脂結合剤と、有機溶剤とを含む導電性ペーストを前記ポリイミド基板上に所定パターンで塗布するペースト塗布工程と、(b)250?300(℃)の範囲内の温度で焼成処理を施すことにより銀を焼結させて前記導電性ペーストから導電膜を生成する焼成工程とを、含むことにある。」に訂正する。

(7)訂正事項7(平成31年4月24日に提出された手続補正書による補正後のもの)
明細書の【0014】に「また、前記目的を達成するための第3発明の要旨とするところは、銀粉末と、樹脂結合剤と、有機溶剤とを含み、ポリイミド基板上に導電膜を形成して導電膜付基板を製造するために用いられるポリイミド基板用導電性ペーストであって、前記銀粉末は、ロジン、脂肪酸、およびアミン類のうちの少なくとも1種から成るコート剤をその銀粉末に対する質量比で2.3(%)以下の量で表面に付着させたコート剤付着銀粉末であることにある。」と記載されているのを、「また、前記目的を達成するための第3発明の要旨とするところは、銀粉末と、樹脂結合剤と、有機溶剤とを含み、ポリイミド基板上に導電膜を形成して導電膜付基板を製造するために用いられるポリイミド基板用導電性ペーストであって、前記銀粉末は、ロジン、脂肪酸、およびアミン類のうちの少なくとも1種から成るコート剤をその銀粉末に対する質量比で2.3(%)以下の量で表面に付着させたコート剤付着銀粉末であり、250℃の処理温度において6.7(mΩ/□)以下のシート抵抗値を有することにある。」に訂正する。
また、明細書の【0018】に「また、前記第3発明によれば、ポリイミド基板用の導電性ペーストは、銀粉末が、ロジン、脂肪酸、またはアミン類から成るコート剤を、銀粉末に対する質量比で2.3(%)以下の範囲で付着させたコート剤付着銀粉末であることから、300(℃)以下、好ましくは270(℃)以下の低温で焼成処理を施しても、銀粉末の焼結が十分に進むので、高い導電性とポリイミド基板への高い密着性が得られる。なお、コート剤が僅かでも銀粉末に付着していれば、その量に応じて銀粉末の焼結性が高められるが、2.3(%)を超えて過剰になると焼成時に燃え抜け難くなって、膜密度を低下させ、導電性が低下する。」と記載されているのを、「また、前記第3発明によれば、ポリイミド基板用の導電性ペーストは、銀粉末が、ロジン、脂肪酸、またはアミン類から成るコート剤を、銀粉末に対する質量比で2.3(%)以下の範囲で付着させたコート剤付着銀粉末であり、250℃の処理温度においても6.7(mΩ/□)以下のシート抵抗値を有することから、300(℃)以下、好ましくは270(℃)以下の低温で焼成処理を施しても、銀粉末の焼結が十分に進むので、高い導電性とポリイミド基板への高い密着性が得られる。なお、コート剤が僅かでも銀粉末に付着していれば、その量に応じて銀粉末の焼結性が高められるが、2.3(%)を超えて過剰になると焼成時に燃え抜け難くなって、膜密度を低下させ、導電性が低下する。」に訂正する。

(8)訂正事項8
明細書の【0021】に「また、好適には、前記導電性ペーストにおいて、前記銀粉末は、平均粒径が0.5(μm)以下である。銀粒径が大きくなるほど焼結性が低下するが、1(μm)以上になると著しく焼結が進みにくくなり、抵抗値が増大する。」と記載されているのを、「また、好適には、前記導電性ペーストにおいて、前記銀粉末は、平均粒径が0.07(μm)以上0.5(μm)以下の範囲である。銀粒径が大きくなるほど焼結性が低下するが、1(μm)以上になると著しく焼結が進みにくくなり、抵抗値が増大する。」に訂正する。

(9)ここで、訂正前の請求項2は訂正前の請求項1を直接引用するものであるから、訂正前の請求項1及び2は一群の請求項に該当するものであり、訂正事項1は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、訂正前の請求項4は訂正前の請求項3を直接引用するものであるから、訂正前の請求項3及び4は一群の請求項に該当するものであり、訂正事項2は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、訂正前の請求項6は訂正前の請求項5を直接引用するものであるから、訂正前の請求項5及び6は一群の請求項に該当するものであり、訂正事項3は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものである。
また、訂正事項5ないし8は、願書に添付した明細書についての訂正であるが、当該明細書に係る請求項の全てについて、本件訂正の請求は行われている。

2 訂正の目的の適否、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1)訂正事項1について
訂正事項1は、請求項1において、「前記導電膜の厚み方向の一部は、前記ポリイミド基板に入り込んでい」るという記載を追加することによって、訂正前の請求項1に係る発明における「前記導電膜および前記ポリイミド基板の構成成分がそれらの界面を越えてその導電膜の厚さ寸法以下の範囲で相互に他方に侵入することにより形成された凹凸面をその界面が成している」という事項を明確にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、訂正事項1は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項3の「250?300(℃)の最高温度」という記載を「250?300(℃)の範囲内の温度」と訂正することにより、請求項3の記載と明細書の【0032】、【0036】の【表1】及び【0042】の【表2】の記載との整合をとるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項3
訂正事項3は、請求項5において、「250℃の処理温度において6.7(mΩ/□)以下のシート抵抗値を有す」るという記載を追加することによって、訂正前の請求項5に係る発明における「ポリイミド基板用導電性ペースト」をさらに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)訂正事項4
訂正事項4は、請求項6において、「平均粒径が0.5(μm)以下」を「平均粒径が0.07(μm)以上0.5(μm)以下の範囲である」とすることで、「平均粒径」の数値範囲の下限値を設定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(5)訂正事項5ないし8
訂正事項5ないし8は、訂正事項1ないし4により特許請求の範囲を訂正したことに伴い、特許請求の範囲と明細書の記載との整合をとるためのものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項5ないし8は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3 訂正の適否についてのむすび
以上のとおり、訂正事項1ないし8は、それぞれ、特許法120条の5第2項ただし書第1又は3号に掲げる事項を目的とするものである。
さらに、訂正事項1ないし8は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないので、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。
なお、特許異議の申立ては、訂正前の全ての請求項に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。

したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕、〔3、4〕及び〔5、6〕について訂正することを認める。

第3 本件特許発明
上記のとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1ないし6に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、それぞれ、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
ポリイミド基板の一面に銀を導体成分として含む導電膜が備えられた導電膜付基板であって、
前記導電膜および前記ポリイミド基板の構成成分がそれらの界面を越えてその導電膜の厚さ寸法以下の範囲で相互に他方に侵入することにより形成された凹凸面をその界面が成していて、
前記導電膜の厚み方向の一部は、前記ポリイミド基板に入り込んでいることを特徴とする導電膜付基板。
【請求項2】
前記導電膜は銀が焼結しているものである請求項1の導電膜付基板。
【請求項3】
銀を導体成分として含む導電膜をポリイミド基板上に形成する導電膜付基板の製造方法であって、
ロジン、脂肪酸、およびアミン類のうちの少なくとも1種から成る所定量のコート剤が表面に付着した銀粉末と、樹脂結合剤と、有機溶剤とを含む導電性ペーストを前記ポリイミド基板上に所定パターンで塗布するペースト塗布工程と、
250?300(℃)の範囲内の温度で焼成処理を施すことにより銀を焼結させて前記導電性ペーストから導電膜を生成する焼成工程と
を、含むことを特徴とする導電膜付基板の製造方法。
【請求項4】
前記銀粉末の表面に付着した前記コート剤は、その銀粉末に対する質量比で2.3(%)以下の量である請求項3の導電膜付基板の製造方法。
【請求項5】
銀粉末と、樹脂結合剤と、有機溶剤とを含み、ポリイミド基板上に導電膜を形成して導電膜付基板を製造するために用いられるポリイミド基板用導電性ペーストであって、
前記銀粉末は、ロジン、脂肪酸、およびアミン類のうちの少なくとも1種から成るコート剤をその銀粉末に対する質量比で2.3(%)以下の量で表面に付着させたコート剤付着銀粉末であり、
250℃の処理温度において6.7(mΩ/□)以下のシート抵抗値を有することを特徴とするポリイミド基板用導電性ペースト。
【請求項6】
前記銀粉末は、平均粒径が0.07(μm)以上0.5(μm)以下の範囲である請求項5のポリイミド基板用導電性ペースト。」

第4 特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由及び通知された取消理由(決定の予告)の概要
1 特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由の概要
平成30年7月13日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した特許異議申立ての理由の概要は次のとおりである。なお、該理由は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1ないし6に対するものである。

(1)(新規性)本件特許の請求項1、2、5及び6に係る発明は、下記の本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、2、5及び6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである(請求項1及び2に係る発明に対しては、甲第1号証を引用文献とする理由である。また、請求項5及び6に係る発明に対しては、甲第3又は4号証を引用文献とする理由である。)。

(2)(進歩性)本件特許の請求項3ないし6に係る発明は、下記の本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項3ないし6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである(請求項3及び4に係る発明に対しては、甲第2号証を主引用文献とし、甲第3ないし5号証を副引用文献とする理由と、甲第3号証を主引用文献とし、甲第2、4及び5号証を副引用文献とする理由の2つである。また、請求項5及び6に係る発明に対しては、甲第5号証を主引用文献とし、甲第3及び4号証を副引用文献とする理由である。)。

(3)(明確性要件、サポート要件及び実施可能要件)本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、特許法第36条第6項第1及び2号並びに第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである(請求項1及び2に係る特許に対しては、明確性要件、サポート要件及び実施可能要件違反の理由であり、また、請求項3及び4に係る発明に対しては、明確性要件及びサポート要件違反の理由である。)。

(4)証拠方法
甲第1号証:レーザ加工学会誌 Vol.19、No.3(2012)p42-p47「エレクトロニクス実装用銀ナノ粒子ペーストのレーザ焼結特性」
甲第2号証:特開2010-287434号公報
甲第3号証:特開2002-299833号公報
甲第4号証:特開2010-177084号公報
甲第5号証:特開2010-192841号公報
なお、文献名等の表記は特許異議申立書の記載に従った。以下、順に「甲1」のようにいう。

2 令和1年6月5日付けで通知された取消理由(決定の予告)の概要
令和1年6月5日付けで通知された取消理由(決定の予告)(以下、「取消理由(決定の予告)」という。)の概要は次のとおりである。なお、該理由は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1及び2に対するものである。

(新規性)本件特許の請求項1及び2に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1及び2に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである(甲1を主引用文献とする理由である。)。

第5 当審の判断
1 甲1ないし5に記載された事項
(1)甲1に記載された事項
甲1には、「エレクトロニクス実装用銀ナノ粒子ペーストのレーザ焼結特性」に関して、次の事項(以下、「甲1に記載された事項」という。)が記載されている。なお、下線は他の甲号証を含め当審で付したものである。

・「1.緒 言
・・・(略)・・・
本研究では,銀ナノ粒子ペーストを用いた微細配線およびワイヤボンディング用パッド形成について,レーザー焼結によるバルク化および基板との密着性の向上について検討した.」(第42ページ左欄)

・「2.銀ナノ粒子ペーストのレーザ焼結法
2.1 銀ナノ粒子ペースト
金属ナノ粒子は活性に富むので,凝集しやすい.このため有機分子膜で保護されて用いられる.Fig.1は,アミン系の分散剤で被覆され、テトラデカンの溶媒中に浮遊する銀ナノ粒子である.(a)はTEM像で,平均粒径は5nmである.(b)はハリマ化成製のナノペーストNPS-Jを示す.粘度は10mPa・s,金属含有率は65wt%である.
2.2 レーザ焼結法
この銀ナノ粒子ペーストを基板に塗布し,溶媒を除去するための乾燥工程を経てから,レーザ照射により必要箇所を焼結する.
微細配線実験のための基板材料としては,ポリイミド(PI)シート(Torey/DuPont製Kapton500H,厚さ0.125mm)を用いた.FIg.2は配線工程を示す.スピンコータで均一厚さに塗布した銀ナノペーストを,ホットプレートで100℃,1min仮乾燥させる.仮乾燥はペースト中の溶媒の除去が目的であり,これを行わなければレーザ照射時の溶媒の気化に伴い,ナノ粒子が飛散してしまう.その後,X-Yステージに移し,レーザ光を走査速度4mm/sで一度だけ集光照射する.最後に,レーザを照射していない部分をトルエンにより除去すると,配線部分が残る.」(第42ページ左欄ないし第43ページ左欄)

・「5.考 察
5.1 レーザ波長が焼結機構に及ぼす影響
銀ナノ粒子ペーストに対して、吸光度の高い可視光レーザが焼結には有利に働く.Fig.5に見るように,狭い配線幅が低いレーザ出力で得られる.しかし,Fig.7のFIB-SIM像からは,可視光レーザは近赤外レーザに比べて,焼結膜はより多孔質構造となり,表面粗さも大きいことが見て取れる.
この原因は,焼結メカニズムの違いによるものと推測される.Fig.12に焼結メカニズムの模式図を示す.前述のFig.4に示すように,半導体やNd:YAGレーザのような近赤外光は,銀ナノ粒子ペーストであまり吸収されず,ペースト中を透過してPI基板に吸収され,その部位を加熱する(Fig.12(a)参照).これにより,基板側からの熱伝導によって銀ナノ粒子の焼結が進み,その結果,ガスの放出が容易になったものと考えられる.
・・・(略)・・・
5.2 レーザ焼結膜の密着性向上メカニズム
金属ナノ粒子のレーザ焼結により高い密着性が得られる理由は,基板と焼結された銀との界面構造にあると考えられる.Fig.13は,Ag/PI界面のTEM像である.銀ナノ粒子ペーストにはほとんど吸収されずにPI表面に到達したレーザ光がPI表面を溶融する.この溶融層に有機分子保護膜の取れた銀ナノ粒子が入り込み,その状態で焼結が進んでいく.その結果,PI表面の凹凸に銀原子が入り込んだ状態が観察されている.すなわち,機械的アンカー効果が密着力を高めているものと考えられる.」(第45ページ右欄ないし第46ページ左欄)

・「

Fig.13 TEM image at laser-sintered Ag/polyimide substrate interface.」(第46ページ右欄)

・「6.結 言
平均粒径5nmの銀ナノ粒子ペーストを用いて,バルク構造に近い機能性膜を得るためには,レーザ焼結前に溶媒除去を目的とした加熱処理が必要であること,ペーストに対して吸光度の低い連続波近赤外光レーザを照射して基板側から焼結させること,高分子保護膜を離脱させるための加熱時酸素をほとんど必要としないこと,など金属ナノ粒子ペーストのレーザ焼結に特有な知見が得られた.」(第47ページ左欄ないし右欄)

(2)甲2に記載された事項
甲2には、「銀導電膜付き基板およびその製造方法」に関して、次の事項(以下、「甲2に記載された事項」という。)が記載されている。

・「【要約】
【課題】銀導電膜の基板との密着性および導電性が良好であり且つ安価な銀導電膜付き基板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】表面に有機保護剤としてオレイルアミン、ヘキサデセンアミン、テトラデセンアミン、ドデセンアミン、デセンアミンなどのアミンまたはその誘導体を有する銀微粒子が液状有機媒体に分散した銀微粒子分散液を、銀微粒子の表面のアミンまたはその誘導体と結合する(カルボシキル基、エポキシ基、イソシアネ-ト基、カルボニル基などの)官能基を有するポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、トリアセチルセルロースなどからなる基板上に塗布した後、300℃以下の温度で焼成して銀微粒子を焼結させることにより、膜厚2000nm以下の銀導電膜を基板上に形成する。
【選択図】なし」

・「【請求項1】
表面にアミンまたはその誘導体を有する銀微粒子が有機媒体に分散した液を、銀微粒子の表面のアミンまたはその誘導体と結合する官能基を有する基板上に塗布した後、300℃以下の温度で焼成して、膜厚2000nm以下の銀導電膜を基板上に形成することを特徴とする、銀導電膜付き基板の製造方法。」

・「【請求項6】
前記基板が、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネートおよびトリアセチルセルロースからなる群から選ばれる基板であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の銀導電膜付き基板の製造方法。」

・「【0005】
一方、金属粒子を含有するペーストを基板上に塗布して焼成することにより金属導電膜を形成すると、金属導電膜の基板との密着性が低く、金属導電膜が基板から剥がれ易いという問題があり、また、金属導電膜に割れ(クラック)が生じ易いという問題もある。このような問題を解決するために、ペーストにバインダー成分を加えて金属導電膜の基板との密着性を確保する方法が知られている。例えば、有機溶剤に金属微粒子が分散した金属微粒子分散液と(バインダー成分としての)シランカップリング剤とを含むペーストをガラス基板上に塗布し、250?300℃の温度で焼成することによって、金属導電膜の基板との密着性を向上させる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、銀粒子が有機媒体に分散した銀塗料を基板上に塗布して100?300℃未満で焼成して焼成膜を形成した後、焼成膜の表面に圧力を加えることによって、銀導電膜の基板との密着性を向上させる方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
・・・(略)・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の方法では、ペーストにシランカップリング剤を添加しているので、ペーストの粘度が経時変化する場合がある。また、バインダー成分としてシランカップリング剤を使用しているため、金属導電膜を形成するような低温では、炭素鎖が完全に分解せずに金属導電膜中に残存して導電性が不十分になる場合がある。
【0008】
また、特許文献2の方法では、密着性と導電性の問題を解決することができるが、焼成後に銀導電膜を機械的に圧縮する必要があるため、生産性を上げ難く、大量生産性に劣り、製造コストを下げ難い。
【0009】
したがって、本発明は、このような従来の問題点に鑑み、銀導電膜の基板との密着性および導電性が良好であり且つ安価な銀導電膜付き基板およびその製造方法を提供することを目的とする。」

・「【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明による銀導電膜付き基板の製造方法の実施の形態では、表面に有機保護剤としてアミンまたはその誘導体を有する銀微粒子が液状有機媒体に分散した銀微粒子分散液を、銀微粒子の表面のアミンまたはその誘導体と結合する官能基を有する基板上に塗布した後、300℃以下の温度で焼成して銀微粒子を焼結させることにより、膜厚2000nm以下の銀導電膜を基板上に形成する。」

・「【0019】
有機保護剤としてのアミンまたはその誘導体は、好ましくは1分子中に1個以上の不飽和結合を有し、その分子量は、好ましくは100?1000であり、さらに好ましくは100?400である。」

・「【0020】
銀化合物の還元反応は、好ましくは、加熱によって反応媒体および還元剤としてのアルコールまたはポリオールの蒸発と液化を繰り返す還流条件下で行われる。この還元反応を有機保護剤の存在下で行うことにより、有機保護剤で覆われた銀微粒子を生成することができる。なお、銀に対する有機保護剤のモル比は、好ましくは0.1?20にする。」

・「【0025】
このようにして製造された銀微粒子分散液中の銀微粒子の表面には、アミンまたはその誘導体が有機保護剤として含まれている。また、この銀微粒子分散液を基板上に塗布して焼成すると、銀の融点が961℃であるにもかかわらず、100?300℃程度の低温で焼結が起こり、銀導電膜を形成することができる。」

・「【0034】
以下、本発明による銀導電膜付き基板およびその製造方法の実施例について詳細に説明する。
【0035】
[実施例1]
反応媒体および還元剤としてのイソブタノール(和光純薬工業株式会社製の特級試薬)96gに、有機保護剤としてのオレイルアミン(和光純薬工業株式会社)165gと、銀化合物としての硝酸銀(関東化学株式会社)21gを添加し、マグネットスターラーで攪拌して硝酸銀を溶解させた。次に、この溶液を還流器付の容器に移し、この容器内に不活性ガスとして窒素ガスを400mL/分の流量で吹込みながら、溶液をマグネットスターラーで攪拌しながら、昇温速度0.5℃/分で115℃まで加熱した。115℃で5時間還流して、反応を終了した。反応終了後のスラリーを遠心分離器で固液分離して、固形成分を回収した。この固形成分をメタノールと混合して遠心分離器で固液分離することによって洗浄を行った。この洗浄を2回繰り返した後の固形成分を、25℃の比誘電率が15以下の液状有機媒体としてn-テトラデカン(沸点約250℃)に混合し、遠心分離器で30分間固液分離し、銀微粒子が分散した液を回収した。
【0036】
この銀微粒子分散液を透過型電子顕微鏡(TEM)により観察して、銀微粒子の平均粒径DTEMを求めた。また、レオメーター(HAAKE社製のReostress600)を使用して、銀微粒子分散液の粘度を測定した。また、銀微粒子分散液をマッフル炉(ヤマト社製のマッフル炉FO310)において700℃で1時間加熱することによって、銀微粒子分散液中の銀のみが残るとして、加熱前後の重量を測定して、銀濃度(質量%)={(加熱後の銀の重量)/(加熱前の銀微粒子分散液の重量)}×100から、銀微粒子分散液中の銀濃度を算出した。その結果、銀微粒子の平均粒径DTEMは10nm、銀微粒子分散液の粘度は14mPa・s、銀濃度は70質量%であった。
【0037】
また、GC-MS(日本電子株式会社製のガスクロマトグラフ飛行時間質量分析計JMS-T100GC)を使用し、ヘリウムガス雰囲気中において300℃に加熱して、銀微粒子の表面の有機保護膜の分析を行った。その結果、銀微粒子の表面のアミンまたはその誘導体として、ドデカンニトリル、ヘキサデセンニトリル、ヘキサデカンニトリル、オクタデセンアミン、オクタデセンニトリル、オクタデカンニトリルおよび脂肪酸ニトリルであると推定されるピークが観察された。
【0038】
次いで、基板としてポリイミドフィルム(東レ・デュポン株式会社のカプトン100V)を用意した。基板の表面の官能基についてESCA(アルバック・ファイ社製のESCA5800)により分析を行った結果、COOに由来するピークが出現し、基板の表面にはカルボキシル基が存在していることがわかった。
【0039】
次に、ポリイミドフィルムに対して上記の銀微粒子分散液(銀濃度70質量%)をスピンコート法(回転数2000rpm)により塗布をした後、240℃に加熱されたマッフル炉内に投入し、10分間保持して銀導電膜を形成した。」

(3)甲3に記載された事項
甲3には、「多層配線板およびその形成方法」に関して、次の事項(以下、「甲3に記載された事項」という。)が記載されている。

・「【請求項1】 平均粒径が1?100nmである金属微粒子が、その表面を、当該金属微粒子に含まれる金属元素と配位可能な有機化合物で被覆されて、液体中に安定に分散したペースト組成物を、250℃以下の温度で燒結することにより得られる回路パターンを、配線板表面部分に形成した、ことを特徴とする多層配線板。」

・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えばアミン, アルコール, チオールなどの存在下、有機溶媒中に安定に分散した金属微粒子からなる導電性ペーストを用いて、ビルドアップ配線板,プラスチック配線板,プリント配線板,セラミック配線板などの多層配線板に微細な回路パターンや、配線板表裏面間を結ぶ方向の微細な導通用孔部を形成することを対象にしている。」

・「【0025】図1は、銀ナノ粒子を、トルエン, キシレン, テルピネオール, ミネラルスピリットなどの、室温付近では容易に蒸散することのない、比較的高沸点な非極性溶剤や低極性溶剤の中に安定に分散させたペーストが燒結する際の変化の様子を概念的に示す説明図であり、(a)は印刷前のペースト状態,(b)は加熱時に分散剤が除去される状態,(c)は樹脂収縮および低温燒結の状態をそれぞれ示している。
【0026】(a)の状態では、銀ナノ粒子1の表面が、銀元素と配位可能な有機物、例えば金属イオンに対して還元作用を持つ2-メチルアミノエタノール,ジエタノールアミン,ジエチルメチルアミン,2-ジメチルアミノエタノール,メチルジエタノールアミンなどのアミン化合物や、アルキルアミン類,エチレンジアミン,アルキルアルコール類,エチレングリコール,プロピレングリコール,アルキルチオール類,エタンジチオールなどの分散剤2で被覆されている。
【0027】この被覆作用により、銀ナノ粒子1のそれぞれは有機溶媒中に安定したかたちで分散する。
【0028】なお、3は有機バインダー(例えば熱硬化性フェノール樹脂)、4は分散剤2を取り込むための捕捉物質(例えば酸無水物, 酸無水物誘導体)をそれぞれ示している。」

・「【0031】図2は、銀ナノペーストを用いたビルドアップ配線板の製造プロセス(積み上げ式)を示す断面図であり、その内容は次のようになっている。
(s11) コア基板11(エポキシ,ポリイミド,熱硬化性樹脂,アラミド不織布,ガラス布,ガラス不織布などからなる各種基板)を準備する。
(s12) エッチング処理により直径約50μm?1mmの第1のビアホール12を形成する。
(s13) 銀ナノペースト13でコア基板11の表面に回路パターンを描画するとともに、銀ナノペースト13をビアホール12に充填した上で、加熱処理する。このとき、ビアホール12の銀ナノペーストは加熱硬化してその溶剤成分は飛散し、その金属成分がビアホール内周面に付着して、ビアホール12の全体がいわば「ちくわ状」になる。」

・「【0042】(例2)市販されている銀の超微粒子分散液(商品名独立分散超微粒子パーフェクトシルバー 真空冶金(株))を利用し、含まれる銀微粒子100質量部当たり、アルキルアミンとして、ドデシルアミン1質量部、有機溶剤として、ターピネオール75質量部を含む、平均粒子径8nmの銀微粒子の分散液を調製した。
【0043】導電性金属ペーストは、前記組成の銀微粒子の分散液について、銀微粒子100質量部当たり、酸無水物として、Me-HHPA(メチルヘキサヒドロ無水フタル酸)を0.45質量部、熱硬化性樹脂として、レゾール型フェノール樹脂(群栄化学(株)製、PL-2211)を5質量部添加した。
【0044】これらを混合した後、攪拌して調製された導電性金属ペーストに関して、それぞれメタルマスクで100μmのスルーホールを持つエポキシ基板上に膜厚50μm、縦横10×20mmの大きさで両面に塗布し、その表面状態(凝集状態)を確認した後、150℃×30分+210℃×60分で硬化した。」

・「【0046】図5に、導電性金属ペーストの組成と、塗布後の表面状態(凝集状態)、得られる熱硬化物の比抵抗、ならびに、粘度をおよそ80Pa・sに調整した際の印刷性に関する評価結果を併せて示す。なお、上記の導電性金属ペースト中に含有されるアミン化合物;ドデシルアミンと、酸無水物;Me-HHPA(メチルヘキサヒドロ無水フタル酸)の比率は、アミノ基1当たり、酸無水物1/2分子の割合である。」

(4)甲4に記載された事項
甲4には、「金属ナノ粒子ペースト及び導電性基材」に関して、次の事項(以下、「甲4に記載された事項」という。)が記載されている。

・「【請求項1】
金属ナノ粒子(A1)とこの金属ナノ粒子(A1)を被覆する保護コロイド(A2)とで形成された金属コロイド粒子(A)、沸点が100?250℃である極性溶媒で構成された分散媒(B)、及び沸点又は分解温度が250℃を超え、かつ数平均分子量が150?3000である親水性化合物で構成された分散助剤(C)を含む金属ナノ粒子ペースト。」

・「【発明を実施するための形態】
【0014】
[金属ナノ粒子ペースト]
本発明の金属ナノ粒子ペーストは、金属ナノ粒子(A1)とこの金属ナノ粒子(A1)を被覆する保護コロイド(A2)とで形成された金属コロイド粒子(A)、沸点が100?250℃である親水性化合物で構成された分散媒(B)、及び沸点又は分解温度が250℃を超え、かつ数平均分子量が100?3000である親水性化合物で構成された分散助剤(C)を含む。
【0015】
(A)金属コロイド粒子
本発明の金属コロイド粒子(A)は、金属ナノ粒子(A1)と、この金属ナノ粒子(A1)を被覆する保護コロイド(A2)で構成されている。
【0016】
(A1)金属ナノ粒子
金属ナノ粒子(A1)を構成する金属(金属原子)としては、例えば、遷移金属(例えば、チタン、ジルコニウムなどの周期表第4A族金属;バナジウム、ニオブなどの周期表第5A族金属;モリブデン、タングステンなどの周期表第6A族金属;マンガンなどの周期表第7A族金属;鉄、ニッケル、コバルト、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、レニウム、イリジウム、白金などの周期表第8族金属;銅、銀、金などの周期表第1B族金属など)、周期表第2B族金属(例えば、亜鉛、カドミウムなど)、周期表第3B族金属(例えば、アルミニウム、ガリウム、インジウムなど)、周期表第4B族金属(例えば、ゲルマニウム、スズ、鉛など)、周期表第5B族金属(例えば、アンチモン、ビスマスなど)などが挙げられる。金属は、周期表第8族金属(鉄、ニッケル、ロジウム、パラジウム、白金など)、周期表第1B族金属(銅、銀、金など)、周期表第3B族金属(アルミニウムなど)及び周期表第4B族金属(スズなど)などであってもよい。なお、金属(金属原子)は、保護コロイドに対する配位性の高い金属、例えば、周期表第8族金属、周期表第1B族金属などである場合が多い。
【0017】
金属ナノ粒子(A1)は、前記金属単体、前記金属の合金、金属酸化物、金属水酸化物、金属硫化物、金属炭化物、金属窒化物、金属ホウ化物などであってもよい。これらの金属ナノ粒子(A1)は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。金属ナノ粒子(A1)は、通常、金属単体粒子、又は金属合金粒子である場合が多い。なかでも、金属ナノ粒子(A1)を構成する金属は、少なくとも銀などの貴金属(特に周期表第1B族金属)を含む金属(金属単体及び金属合金)、特に貴金属単体(例えば、銀単体など)であるのが好ましい。
【0018】
金属ナノ粒子(A1)はナノメーターサイズである。例えば、本発明の金属コロイド粒子における金属ナノ粒子(A1)の数平均粒子径(平均一次粒子径)は、1?100nm、好ましくは1.5?80nm、さらに好ましくは2?70nm、特に3?50nm程度であってもよく、通常1?40nm(例えば、2?30nm)程度であってもよい。
【0019】
また、本発明の金属コロイド粒子は、粗大粒子をほとんど含んでいなくてもよい。そのため、金属ナノ粒子(A1)の最大一次粒子径は、例えば、200nm以下、好ましくは150nm以下、さらに好ましくは100nm以下である。さらに、金属ナノ粒子(A1)(又は金属コロイド粒子)において、一次粒子径が100nm以上の粒子の割合は、金属(又は金属成分)の質量基準で、例えば、10質量%以下(例えば、0?8質量%程度)、好ましくは5質量%以下(例えば、0.01?3質量%)、さらに好ましくは1質量%以下(例えば、0.02?0.5質量%程度)であってもよい。
【0020】
なお、金属コロイド粒子の粒子径も、通常、前記金属ナノ粒子(A1)の粒子径と略同じ粒子径である。
【0021】
(A2)保護コロイド
保護コロイド(A2)は、金属ナノ粒子に対して物理的又は化学的に親和性を有するか又は結合(水素結合、イオン結合、配位結合などの化学結合など)して安定化する成分であればよい。このような成分は、金属ナノ粒子表面に配位可能な官能基(又は金属原子に対する親和性基)を有する有機化合物である場合が多い。このような配位性官能基(又は配位子)としては、例えば、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基などの官能基が挙げられる。有機化合物は、これらの官能基を単独で又は二種以上組み合わせて有していてもよい。本発明では、このような官能基を有する有機化合物の中でも、カルボキシル基を有する有機化合物(A2-1)と高分子分散剤(A2-2)との組み合わせが特に好ましい。」

・「【0026】
代表的な有機化合物(A2-1)には、カルボン酸が含まれる。このようなカルボン酸としては、例えば、モノカルボン酸、ポリカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸(又はオキシカルボン酸)などが挙げられる。
【0027】
モノカルボン酸としては、例えば、脂肪族モノカルボン酸[飽和脂肪族モノカルボン酸(例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプリル酸、カプロン酸、ヘキサン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、シクロヘキサンカルボン酸、デヒドロコール酸、コラン酸などのC_(1-34)脂肪族モノカルボン酸、好ましくはC_(1-30)脂肪族モノカルボン酸など)、不飽和脂肪族モノカルボン酸(例えば、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸、アビエチン酸などのC_(4-34)不飽和脂肪族カルボン酸、好ましくはC_(10-30)不飽和脂肪族カルボン酸)]、芳香族モノカルボン酸(安息香酸、ナフトエ酸などのC_(7-12)芳香族モノカルボン酸など)などが挙げられる。」

・「【0041】
高分子分散剤としては、通常、塗料、インキ分野などで着色剤の分散に用いられている高分子分散剤(親水性重合体)が例示できる。このような分散剤には、スチレン系樹脂(スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体など)、アクリル系樹脂((メタ)アクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸などの(メタ)アクリル酸系樹脂など)、水溶性ウレタン樹脂、水溶性アクリルウレタン樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性ポリエステル系樹脂、セルロース誘導体(ニトロセルロース;エチルセルロースなどのアルキルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロースなどのアルキル-ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのカルボキシアルキルセルロースなどのセルロースエーテル類など)、ポリビニルアルコール、ポリアルキレングリコール(液状のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなど)、天然高分子(ゼラチン、デキストリンなど)、ポリエチレンスルホン酸又はその塩、ポリスチレンスルホン酸又はその塩、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、窒素原子含有高分子化合物[例えば、ポリアルキレンイミン(ポリエチレンイミンなど)、ポリビニルピロリドン、ポリアリルアミン、ポリエーテルポリアミン(ポリオキシエチレンポリアミンなど)などのアミノ基を有する高分子化合物]などが含まれる。」

・「【0059】
なお、金属コロイド粒子(A)において、有機化合物(A2-1)の割合は、固形分換算で、例えば、金属ナノ粒子(A1)100質量部に対して、0.01?70質量部程度の範囲から選択でき、例えば、0.05?50質量部、好ましくは0.1?40質量部、さらに好ましくは0.3?30質量部(特に0.5?20質量部)程度であってもよい。特に、本発明の金属コロイド粒子において、有機化合物(A2-1)の割合は、金属ナノ粒子(A1)100質量部に対して、5質量部以下(例えば、0.1?5質量部)、好ましくは0.2?4.5質量部、さらに好ましくは0.3?4質量部(特に0.5?3質量部)程度であってもよい。」

・「【0067】
(B)分散媒
分散媒(B)としては、前記金属コロイド粒子(又は金属ナノ粒子)(A)との組み合わせにより、ペースト(ペースト状分散液)において十分な粘度を生じさせ、かつ焼成温度において速やかに蒸発可能な極性溶媒(水溶性溶媒)であれば特に限定されず、汎用の極性溶媒が使用できる。なお、溶媒は、新たに混合してもよく、少なくとも後述の金属コロイド粒子の製造において使用する溶媒で構成してもよく、これらを組み合わせてもよい。」

・「【0069】
このような極性溶媒には、例えば、水、脂肪族多価アルコール類、セロソルブ類、セロソルブアセテート類、カルビトール類、カルビトールアセテート類、ケトン類、エーテル類、アミド類などが含まれる。これらの極性溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。」

・「【0079】
(C)分散助剤
分散助剤(C)としては、前記分散媒(B)との組み合わせにおいて金属コロイド粒子(A)のペースト中での安定性を保持するとともに、焼成において分散媒(B)の蒸発を促進して膜の膨れや剥離を抑制できる観点から、焼成温度において徐々に分解又は蒸発可能な親水性化合物が利用できる。」

・「【0082】
このような親水性化合物は、通常、親水性オリゴマー又はポリマーを利用できる。親水性オリゴマー又はポリマーとしては、前記高分子分散剤において、塗料、インキ分野などで着色剤の分散に用いられている親水性重合体などが例示できる。」

・「【0102】
[導電性基材の製造方法]
本発明の金属ナノ粒子ペーストは、種々の用途に使用できる。例えば、本発明の金属ナノ粒子ペーストは、金属膜(特に導電性膜)を形成するためのペーストとして有用である。特に、本発明の金属ナノ粒子ペーストは、高濃度で金属ナノ粒子を含んでおり、高温で焼成しても膨れや剥離の発生が抑制され、基材のとの密着性に優れているため、各種の基材に対して、所定の層又はパターン(回路パターンなど、特に導電性パターンなど)を有する焼結層(焼結パターン)を形成し、導電性基材を製造するためのペーストとして好適である。以下、前記金属ナノ粒子ペーストを用いて、導電性基材を製造する方法について詳述する。
【0103】
このような方法では、通常、基材に、前記金属ナノ粒子ペースト(又は金属ナノ粒子ペーストの塗布)により、被膜(塗布層又はパターン)を形成(描画)し、形成された被膜(描画パターン)を焼成処理することにより焼結層(焼結膜、焼結パターン、金属膜、焼結体層、導体層)を形成できる。
【0104】
基材(又は基板)としては、特に限定されず、用途に応じて適宜選択できる。基材を構成する材質は、無機材料であってもよく、有機材料であってもよい。無機材料としては、例えば、ガラス類(ソーダガラス、ホウケイ酸ガラス、クラウンガラス、バリウム含有ガラス、ストロンチウム含有ガラス、ホウ素含有ガラス、低アルカリガラス、無アルカリガラス、結晶化透明ガラス、シリカガラス、石英ガラス、耐熱ガラスなど)、金属酸化物(アルミナ、サファイア、ジルコニア、チタニア、酸化イットリウム、酸化インジウム-酸化錫系複合酸化物(ITO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)など)、シリコン半導体などが挙げられる。有機材料としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂[ポリアルキレンアリレート系樹脂(ポリエチレンテレタフタレートなど)、ポリアリレート系樹脂や液晶ポリマーを含む]、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリイミド系樹脂、セルロース誘導体、フッ素樹脂などが挙げられる。これらの材料は、焼成工程を経るため、耐熱性の高い材料、例えば、無機材料、エンジニアリングプラスチック(例えば、芳香族ポリエステル系樹脂(ポリアリレート系樹脂を含む)、ポリイミド系樹脂、ポリスルホン系樹脂など)、液晶ポリマー、フッ素樹脂などが好ましい。」

(5)甲5に記載された事項
甲5には、「導電性基板」に関して、次の事項(以下、「甲5に記載された事項」という。)が記載されている。

・「【請求項1】
基材上に、金属又は金属酸化物微粒子を含む塗布液を印刷して印刷層を形成し、該印刷層を焼成処理して金属微粒子焼結膜を形成してなる導電性基板であって、前記金属微粒子焼結膜おけるX線回折により測定した結晶子径が25nm以上であり、かつ前記金属微粒子焼結膜の断面の空隙率が1%以下である導電性基板。」

・「【請求項6】
前記基材がポリイミド樹脂である請求項1?5のいずれかに記載の導電性基板。」

・「【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ポリイミドなどの基材上に、銅配線などパターン状の金属微粒子焼結膜を形成してなり、基材との密着性が高く、優れた導電性を有する導電性基板を提供することができる。」

・「【0015】
(金属又は金属酸化物微粒子)
金属の種類としては、導電性を有するものであれば特に制限されるものではなく、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウムなどの貴金属;銅、ニッケル、スズ、鉄、クロムなどの卑金属が挙げられる。
・・・(略)・・・
【0016】
・・・(略)・・・
得られた微粒子は、分散液とするために、微粒子にポリビニルピロリドンなどの水溶性高分子やグラフト共重合高分子のような保護剤、界面活性剤、金属と相互作用するようなチオール基やアミノ基、水酸基、カルボキシル基を有する化合物で被覆することが好ましい。また、合成法によっては、原料の熱分解物や金属酸化物が粒子表面を保護し、分散性に寄与する場合もある。熱分解法や化学還元法などの湿式法で作製した場合は、還元剤などがそのまま微粒子の保護剤として作用することがある。
・・・(略)・・・
【0017】
上記微粒子の平均一次粒子径は1?200nmの範囲であることが好ましい。」

・「【0018】
微粒子の分散液(塗布液)を構成し、上記微粒子を分散させる分散媒としては、水及び/又は有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどのアルコール類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのエステル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)などのエーテル類;ヘキサン、デカン、ドデカン、テトラデカン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン等の脂環式炭化水素などが挙げられる。
【0019】
さらに、造膜性を高めること、印刷適性を付与すること、及び分散性を高めることを目的として、例えばポリエステル樹脂、アクリル樹脂、あるいはウレタン樹脂等を樹脂バインダーとして分散液に添加してもよい。また、必要に応じて、粘度調整剤、表面張力調整剤、あるいは安定剤等を添加してもよい。」

2 取消理由(決定の予告)について
(1)甲1発明
甲1に記載された事項を整理すると、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。

<甲1発明>
「ポリイミド(PI)シートを基板材料とする基板にスピンコータで銀ナノ粒子ペーストが均一厚さに塗布され、仮乾燥してペースト中の溶媒が除去された後、レーザ光が照射されてレーザ焼結された銀ナノ粒子が備えられた基板であって、
レーザ光により溶融されたポリイミド(PI)表面の溶融層に銀ナノ粒子が入り込み,その状態で焼結が進んでいく結果,ポリイミド(PI)表面の凹凸に銀原子が入り込んだ状態が観察されているという基板と焼結された銀との界面構造を有している銀ナノ粒子がレーザ焼結された基板。」

(2)対比・判断
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1発明を対比する。
(ア)甲1発明における「ポリイミド(PI)シートを基板材料とする基板」は、本件特許発明1における「ポリイミド基板」に相当する。

(イ)甲1発明における「スピンコータで銀ナノ粒子ペーストが均一厚さに塗布され、仮乾燥してペースト中の溶媒を除去された後、レーザ光が照射されてレーザ焼結された銀ナノ粒子」は、スピンコータにより塗布されていることから、膜状であることは明らかであり、又「導電部分」となるものなので、本件特許発明1における「銀を導体成分として含む導電膜」に相当する。

(ウ)したがって、甲1発明における「ポリイミド(PI)シートを基板材料とする基板にスピンコータで銀ナノ粒子ペーストが均一厚さに塗布され、仮乾燥してペースト中の溶媒が除去された後、レーザ光が照射されてレーザ焼結された銀ナノ粒子が備えられた基板」は、本件特許発明1における「ポリイミド基板の一面に銀を導体成分として含む導電膜が備えられた導電膜付基板」に相当する。

(エ)甲1発明において、「銀原子」は「ポリイミド(PI)表面の凹凸」に入り込んでいることから、「焼結された銀」の厚み方向の一部は「ポリイミド(PI)表面」に入り込んでいるといえる。
したがって、甲1発明における「レーザ光により溶融されたポリイミド(PI)表面の溶融層に銀ナノ粒子が入り込み,その状態で焼結が進んでいく結果,ポリイミド(PI)表面の凹凸に銀原子が入り込んだ状態が観察されているという基板と焼結された銀との界面構造を有している」は、本件特許発明1における「前記導電膜および前記ポリイミド基板の構成成分がそれらの界面を越えてその導電膜の厚さ寸法以下の範囲で相互に他方に侵入することにより形成された凹凸面をその界面が成していて、
前記導電膜の厚み方向の一部は、前記ポリイミド基板に入り込んでいる」に相当する。

(オ)よって、本件特許発明1と甲1発明との間に、相違点はなく、本件特許発明1は甲1発明である。

(カ)特許権者は、令和1年8月5日提出の意見書において、次のとおり、甲1が取消理由の根拠として用いられることが妥当でない旨主張する。
<主張1>
「先ず、上記のように、Fig.13には、導電膜の厚みの基準となる上記境界線がポリイミドの表面からポリイミド内へ入り込んでいることが示されておりません。このため、Fig.13が記載された甲第1号証を、「前記導電膜の厚み方向の一部は、前記ポリイミド基板に入り込んでいる」ことの根拠として適用することは、困難でありますので、甲第1号証が本件特許の請求項1及び2の取消理由の根拠として用いられることは妥当でないと存じます。」

<主張2>
「次に、Fig.13には、濃淡の濃い(黒い)領域内において、濃淡の淡い部分が入り込んでいる結果、濃淡の濃い(黒い)領域の一部が粒子のように観察されます。この粒子のように観察される部分の径は、50nmの長さ単位を示す太い線分と比較すると、80nm程度となります。しかし、前述のように、甲第1号証の第46頁には、「PI表面の凹凸に銀原子が入り込んだ状態が観察されている.すなわち,機械的アンカー効果が密着力を高めているものと考えられる.」と記載されており、原子レベルの凹凸の存在を根拠として、機械的アンカー効果によって密着力が高められていることを説明しています。しかし、一般に、銀原子は、原子半径が1.44オングストローム(1/10nm)程度であり、この数値には若干の誤差はあるにしてもオングストロームオーダであることは明らかであり、これはFig.13のTEM写真には画像として表れ難い寸法オーダであります。このように、甲第1号証のFig.13と第46頁の記載との間には、明らかな矛盾があります。仮に、「銀原子」が正しいとしても、甲第1号証の原子レベルの凹凸が、本件特許の請求項1に係る発明の「前記導電膜の厚み方向の一部は、前記ポリイミド基板に入り込んでいる」という構成要件の示唆にはなり得ないものと存じます。したがって、甲第1号証が本件特許の請求項1及び2の取消理由の根拠として用いられることは妥当でないと存じます。」

<主張3>
「さらに、前述のように、甲第1号証の第46頁には「銀ナノ粒子ペーストにほとんど吸収されずにPI表面に到達したレーザ光がPI表面を溶融する.この溶融層に有機分子保護膜の取れた銀ナノ粒子が入り込み,その状態で焼結が進んでいく.」という記載があります。この記載では、(i)レーザ光が銀ナノ粒子ペーストにほとんど吸収されずにPI表面に到達してPI表面を溶融する点、(ii)その溶融層に有機分子保護膜の取れた銀ナノ粒子が入り込む点、(iii)その状態で焼結が進んでいくという点が、示されています。しかしながら、(iii)における焼結とは、広辞苑第六版によれば、「粉末を加圧成形し融点以下の温度で熱処理した場合、粉体粒子の間に結合が生じて成形した形で固まる現象」であります。このことから、甲第1号証の場合では、PI(樹脂)表面の溶融後の硬化を指すのではなく、銀ナノ粒子が熱処理によって相互に固まる現象であると推定できます。しかしながら、(i)に対応する第46頁の記載中の当初の部分には、「銀ナノ粒子ペーストにはほとんど吸収されずにPI表面に到達したレーザ光がPI表面を溶融する」とされていて、銀ナノ粒子ペーストがレーザ光によってほとんど熱処理されていないという意味で理解されますので、(iii)の銀ナノ粒子が焼結という点との関係に矛盾が存在します。このような矛盾する記載のある甲第1号証は、本件特許の請求項1及び2に係る発明の取消理由の根拠として用いられることが妥当でないと存じます。」

そこで、上記主張について検討する。
a 主張1について
甲1の「レーザ光がPI表面を溶融する.この溶融層に有機分子保護膜の取れた銀ナノ粒子が入り込み,その状態で焼結が進んでいく.その結果,PI表面の凹凸に銀原子が入り込んだ状態が観察されている.」という記載によると、レーザ焼結が行われた後のAgとPIの境界面が凹凸になっていると理解できることから、レーザ焼結が行われた後のAgとPIの境界線は、特許権者の主張するような「Fig.13中の水平方向の概ね直線状の境界線」ではなく、それより紙面上若干上側に位置する凹凸状の線というべきである。そして、Fig.13は、レーザ焼結が行われた後の上記境界線がAgの表面からAg内に入り込んでいると共に、PIの表面からPI内にも入り込んでいることを示す図であるといえる。
したがって、甲1には導電膜の厚み方向の一部が、ポリイミド基板に入り込んでいるような構成の開示がないことを旨とする主張1は採用できない。

b 主張2について
甲1の「PI表面に到達したレーザ光がPI表面を溶融する.この溶融層に有機分子保護膜の取れた銀ナノ粒子が入り込み,その状態で焼結が進んでいく.」という記載(以下、「記載1」という。)からみて、PI表面の凹凸に入り込むのは銀ナノ粒子であるから、上記記載1に続く「その結果,PI表面の凹凸に銀原子が入り込んだ状態が観察されている.」という記載(以下、「記載2」という。)中の「銀原子」は「銀ナノ粒子」の誤記であると解すべきである。
仮にそうでないとしても、銀ナノ粒子は複数個の銀原子が集まったものであるから、銀ナノ粒子が入り込む以上、銀原子が入り込んでいるといえることは明らかである。
したがって、記載1は記載2と矛盾しないし、Fig.13とも矛盾しない。
よって、甲1のFig.13と第46ページの記載との間に矛盾があるとはいえず、主張2も採用できない。

c 主張3について
甲1の「半導体やNd:YAGレーザのような近赤外光は,銀ナノ粒子ペーストであまり吸収されず,ペースト中を透過してPI基板に吸収され,その部位を加熱する(Fig.12(a)参照).これにより,基板側からの熱伝導によって銀ナノ粒子の焼結が進み」(第46ページ左欄)及び「ペーストに対して吸光度の低い連続波近赤外光レーザを照射して基板側から焼結させる」(第47ページ右欄)という記載によると、銀ナノ粒子は基板側からの熱伝導によって焼結するものであるから、銀ナノ粒子ペーストがレーザー光によってほとんど熱処理されていないことと銀ナノ粒子が焼結することとは矛盾しない。
したがって、主張3も採用できない。

イ 本件特許発明2について
甲1発明は「基板と焼結された銀との界面構造」を有するものであるから、請求項2において、本件特許発明1に追加された「前記導電膜は銀が焼結しているものである」という発明特定事項は、甲1発明も有するものである。
したがって、本件特許発明2は、甲1発明である。

(3)取消理由(決定の予告)についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1及び2に係る発明は、甲1発明、すなわち甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1及び2に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

3 取消理由(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由について
(1)本件特許発明5及び6に対する甲3を引用文献とする新規性違反について
ア 甲3発明
甲3に記載された事項を、特に【0042】ないし【0044】に記載された(例2)に関して整理すると、甲3には、次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認める。

<甲3発明>
「平均粒子径8nmの銀微粒子と、レゾール型フェノール樹脂と、ターピネオールとを含み、エポキシ基板上に膜を形成して膜付基板を製造するために用いられるエポキシ基板用導電性金属ペーストであって、
前記銀微粒子は、ドデシルアミンをその銀微粒子100質量部当たり1質量部の量で表面に被覆させたドデシルアミン被覆銀微粒子であるエポキシ基板用導電性金属ペースト。」

なお、特許異議申立人は、甲3には、「L 銀粉末と、樹脂結合剤と、有機溶剤とを含む、
M ポリイミド基板上に導電膜を形成して導電膜付基板を製造するために用いられるポリイミド基板用導電性ペーストであって、
N 銀粉末は、ロジン、脂肪酸、およびアミン類のうちの少なくとも1種から成るコート剤を
O その銀粉末に対する質量比で2.3(%)以下の量で表面に付着させたコート剤付着銀粉末である。
P 銀粉末は、平均粒径が0.5(μm)である。」という発明が記載されている旨主張するが、甲3には、ポリイミドは基板の材料として選択肢の一つとして挙げられているにすぎず、また、コート剤の付着量を「銀粉末に対する質量比で2.3(%)以下の量」とするという事項に相当する記載があるとも認められないから、甲3発明として、特許異議申立人が主張するような発明を直ちには認定することはできない。

イ 本件特許発明5について
(ア)対比
本件特許発明5と甲3発明を対比する。
a 甲3発明における「平均粒子径8nmの銀微粒子」は、本件特許発明5における「銀粉末」に相当し、以下、同様に、「レゾール型フェノール樹脂」は「樹脂結合剤」に、「ターピネオール」は「有機溶剤」に、「膜」は「導電膜」に、「ドデシルアミン」は「ロジン、脂肪酸、およびアミン類のうちの少なくとも1種から成るコート剤」に、「被覆」は「付着」に、「導電性金属ペースト」は「導電性ペースト」に、それぞれ相当する。

b 甲3発明における「エポキシ基板」は、本件特許発明5における「ポリイミド基板」と、「基板」という限りにおいて一致する。

c 甲3発明における「ドデシルアミンをその銀微粒子100質量部当たり1質量部の量で表面に被覆させた」は、「100質量部当たり1質量部」は1%、すなわち2.3%以下であるから、本件特許発明5における「ロジン、脂肪酸、およびアミン類のうちの少なくとも1種から成るコート剤をその銀粉末に対する質量比で2.3(%)以下の量で表面に付着させた」に相当する。

d したがって、両者は、次の点で一致する。
「銀粉末と、樹脂結合剤と、有機溶剤とを含み、基板上に導電膜を形成して導電膜付基板を製造するために用いられる基板用導電性ペーストであって、
前記銀粉末は、ロジン、脂肪酸、およびアミン類のうちの少なくとも1種から成るコート剤をその銀粉末に対する質量比で2.3(%)以下の量で表面に付着させたコート剤付着銀粉末である基板用導電性ペースト。」

e そして、両者は、次の点で相違する。
<甲3発明に対する相違点1>
導電性(金属)ペーストの用途について、本件特許発明5においては、「ポリイミド基板用」であるのに対し、甲3発明においては、「エポキシ基板用」である点。

<甲3発明に対する相違点2>
本件特許発明5においては、「250℃の処理温度において6.7(mΩ/□)以下のシート抵抗値を有する」と特定されているのに対して、甲3発明においては、そのようには特定されていない点。

(イ)判断
そこで、上記相違点について検討するに、これらは、いずれも実質的な相違点であるといわざるを得ない。
したがって、本件特許発明5は甲3発明、すなわち甲第3号証に記載された発明であるとはいえない。

ウ 本件特許発明6について
本件特許発明6は、請求項5を直接引用し、請求項5に記載された発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明5と同様に、甲第3号証に記載された発明であるとはいえない。

(2)本件特許発明5及び6に対する甲4を引用文献とする新規性違反について
ア 甲4発明
甲4に記載された事項を、特に【請求項1】に関して整理すると、甲4には、次の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されていると認める。

<甲4発明>
「金属ナノ粒子(A1)とこの金属ナノ粒子(A1)を被覆する保護コロイド(A2)とで形成された金属コロイド粒子(A)、沸点が100?250℃である極性溶媒で構成された分散媒(B)、及び沸点又は分解温度が250℃を超え、かつ数平均分子量が150?3000である親水性化合物で構成された分散助剤(C)を含む金属ナノ粒子ペースト。」

なお、特許異議申立人は、甲4には、「L 銀粉末と、樹脂結合剤(親水性重合体)と、有機溶剤とを含む、
M ポリイミド基板上に導電膜を形成して導電膜付基板を製造するために用いられるポリイミド基板用導電性ペーストであって、
N 銀粉末は、ロジン、脂肪酸、およびアミン類のうちの少なくとも1種から成るコート剤を
O その銀粉末に対する質量比で2.3(%)以下の量で表面に付着させたコート剤付着銀粉末である。
P 銀粉末は、平均粒径が0.5(μm)である。」という発明が記載されている旨主張するが、甲4には、銀、ポリイミド及び脂肪族カルボン酸という記載があるものの、いずれも、選択肢の一つとして挙げられているにすぎず、また、コート剤の付着量を「銀粉末に対する質量比で2.3(%)以下の量」とするという事項に相当する記載があるとも認められないから、甲4発明として、特許異議申立人が主張するような発明を直ちには認定することはできない。

イ 本件特許発明5について
(ア)対比
本件特許発明5と甲4発明を対比する。
a 甲4発明における「金属ナノ粒子(A1)とこの金属ナノ粒子(A1)を被覆する保護コロイド(A2)とで形成された金属コロイド粒子(A)」は、本件特許発明5における「ロジン、脂肪酸、およびアミン類のうちの少なくとも1種から成るコート剤をその銀粉末に対する質量比で2.3(%)以下の量で表面に付着させたコート剤付着銀粉末」と、「金属粉末」という限りにおいて一致する。

b 甲4発明における「沸点が100?250℃である極性溶媒で構成された分散媒(B)」は、本件特許発明5における「有機溶剤」と、「溶剤」という限りにおいて一致する。

c 甲4発明における「金属ナノ粒子ペースト」は、本件特許発明5における「ポリイミド基板用導電性ペースト」と、「導電性ペースト」という限りにおいて一致する。

d したがって、両者は次の点で一致する。
「金属粉末と、溶剤とを含む導電性ペースト。」

e そして、両者は次の点で相違する。
<甲4発明に対する相違点1>
「金属粉末」に関して、本件特許発明5においては、「ロジン、脂肪酸、およびアミン類のうちの少なくとも1種から成るコート剤をその銀粉末に対する質量比で2.3(%)以下の量で表面に付着させたコート剤付着銀粉末」であるのに対し、甲4発明においては「金属ナノ粒子(A1)とこの金属ナノ粒子(A1)を被覆する保護コロイド(A2)とで形成された金属コロイド粒子(A)」である点。

<甲4発明に対する相違点2>
「溶剤」に関して、本件特許発明5においては、「有機溶媒」であるのに対し、甲4発明においては、「沸点が100?250℃である極性溶媒で構成された分散媒(B)」である点。

<甲4発明に対する相違点3>
本件特許発明5においては、「銀粉末と、樹脂結合剤と、有機溶剤とを含み、ポリイミド基板上に導電膜を形成して導電膜付基板を製造するために用いられるポリイミド基板用導電性ペースト」であると特定されているのに対して、甲4発明においては、そのようには特定されていない点。

<甲4発明に対する相違点4>
本件特許発明5においては、「250℃の処理温度において6.7(mΩ/□)以下のシート抵抗値を有する」と特定されているのに対して、甲4発明においては、そのようには特定されていない点。

(イ)判断
そこで上記相違点について検討するに、少なくとも甲4発明に対する相違点4は実質的な相違点であるといわざるを得ない。
よって、甲4発明に対する相違点1ないし3について検討するまでもなく、本件特許発明5は甲4発明、すなわち甲第4号証に記載された発明であるとはいえない。

ウ 本件特許発明6について
本件特許発明6は、請求項5を直接引用し、請求項5に記載された発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明5と同様に、甲第4号証に記載された発明であるとはいえない。

(3)本件特許発明3及び4に対する甲2を主引用文献とし、甲3ないし5を副引用文献とする進歩性違反について
ア 甲2発明
甲2に記載された事項を、特に【請求項1】及び【請求項6】に関して整理すると、甲2には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認める。

<甲2発明>
「表面にアミンまたはその誘導体を有する銀微粒子が有機媒体に分散した液を、銀微粒子の表面のアミンまたはその誘導体と結合する官能基を有するポリイミド基板上に塗布した後、300℃以下の温度で焼成して、膜厚2000nm以下の銀導電膜をポリイミド基板上に形成する、銀導電膜付き基板の製造方法。」

なお、特許異議申立人は、甲2には、「F 銀を導体成分として含む導電膜を
G ポリイミド基板上に形成する導電膜付基板の製造方法であって、
h アミン類から成る所定量のコート剤(保護剤)が表面に付着した銀粉末と、有機溶剤とを含む銀微粒子分散液を、
i ポリイミド基板上に塗布する塗布工程と、
J 300℃以下の温度で焼成処理することにより銀を焼結させて導電膜を生成する工程と、を含む製造方法」という発明が記載されている旨主張するが、甲2には、特許異議申立人が主張するような形で発明が記載されているとは認められないので、甲2発明として、特許異議申立人が主張するような発明を直ちには認定することはできない。

イ 本件特許発明3について
(ア)対比
本件特許発明3と甲2発明を対比する。
a 甲2発明における「(銀導電膜をポリイミド基板上に形成する、)銀導電膜付き基板の製造方法」は、本件特許発明3における「銀を導体成分として含む導電膜をポリイミド基板上に形成する導電膜付基板の製造方法」に相当する。

b 甲2発明における「表面にアミンまたはその誘導体を有する銀微粒子」は、本件特許発明3における「ロジン、脂肪酸、およびアミン類のうちの少なくとも1種から成る所定量のコート剤が表面に付着した銀粉末」に相当する。

c 甲2発明における「有機媒体」は、本件特許発明3における「有機溶剤」に相当する。

d 甲2発明における「表面にアミンまたはその誘導体を有する銀微粒子が有機媒体に分散した液を、銀微粒子の表面のアミンまたはその誘導体と結合する官能基を有するポリイミド基板上に塗布」する工程は、本件特許発明3における「ロジン、脂肪酸、およびアミン類のうちの少なくとも1種から成る所定量のコート剤が表面に付着した銀粉末と、樹脂結合剤と、有機溶剤とを含む導電性ペーストを前記ポリイミド基板上に所定パターンで塗布するペースト塗布工程」と、「ロジン、脂肪酸、およびアミン類のうちの少なくとも1種から成る所定量のコート剤が表面に付着した銀粉末と、有機溶剤とを含む導電性液状体を前記ポリイミド基板上に塗布する液状体塗布工程」という限りにおいて一致する。

e 甲2発明における「300℃以下の温度で焼成して、膜厚2000nm以下の銀導電膜をポリイミド基板上に形成する」工程は、本件特許発明3における「250?300(℃)の範囲内の温度で焼成処理を施すことにより銀を焼結させて前記導電性ペーストから導電膜を生成する焼成工程」と、「250?300(℃)の範囲内の温度で焼成処理を施すことにより銀を焼結させて前記導電性液状体から導電膜を生成する焼成工程」という限りにおいて一致する。

f したがって、両者は次の点で一致する。

「銀を導体成分として含む導電膜をポリイミド基板上に形成する導電膜付基板の製造方法であって、
ロジン、脂肪酸、およびアミン類のうちの少なくとも1種から成る所定量のコート剤が表面に付着した銀粉末と、有機溶剤とを含む導電性液状体を前記ポリイミド基板上に塗布する液状体塗布工程と、
250?300(℃)の範囲内の温度で焼成処理を施すことにより銀を焼結させて前記導電性液状体から導電膜を生成する焼成工程と
を、含む導電膜付基板の製造方法。」

g そして、両者は次の点で相違する。
<甲2発明に対する相違点1>
「ロジン、脂肪酸、およびアミン類のうちの少なくとも1種から成る所定量のコート剤が表面に付着した銀粉末と、有機溶剤とを含む導電性液状体を前記基板上に所定パターンで塗布する液状体塗布工程」に関して、本件特許発明3においては「ロジン、脂肪酸、およびアミン類のうちの少なくとも1種から成る所定量のコート剤が表面に付着した銀粉末と、樹脂結合剤と、有機溶剤とを含む導電性ペーストを前記ポリイミド基板上に所定パターンで塗布するペースト塗布工程」、すなわち「樹脂結合剤」を含む「ペースト」を「所定パターンで塗布する」工程であるのに対し、甲2発明においては「表面にアミンまたはその誘導体を有する銀微粒子が有機媒体に分散した液を、銀微粒子の表面のアミンまたはその誘導体と結合する官能基を有するポリイミド基板上に塗布」する工程である点。

<甲2発明に対する相違点2>
「250?300(℃)の範囲内の温度で焼成処理を施すことにより銀を焼結させて前記導電性液状体から導電膜を生成する焼成工程」に関して、本件特許発明3においては「250?300(℃)の範囲内の温度で焼成処理を施すことにより銀を焼結させて前記導電性ペーストから導電膜を生成する焼成工程」であるのに対し、甲2発明においては「300℃以下の温度で焼成して、膜厚2000nm以下の銀導電膜をポリイミド基板上に形成する」工程である点。

(イ)判断
そこで、上記相違点について検討する。
まず、甲2発明に対する相違点1について検討する。
甲3には「熱硬化性樹脂として、レゾール型フェノール樹脂」を添加すること、甲4には分散助剤として「親水性化合物」を添加すること及び甲5には「ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、あるいはウレタン樹脂等を樹脂バインダーとして」添加することが記載され、甲3ないし5には、「樹脂結合剤」を含むという事項に相当する記載があるといえる。
しかし、甲2の【0005】及び【0007】には、ペーストにバインダー成分を加えて金属導電膜の基板との密着性を確保する方法には「ペーストの粘度が経時変化する場合がある」及び「導電性が不十分になる場合がある」等の問題があることが記載されており、甲2発明は、これらの問題を解決するためのものであるから、バインダー成分である「樹脂結合剤」を含ませることには、阻害要因があるといえる。
したがって、甲2発明において、甲2発明に対する相違点1に係る本件特許発明3の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
よって、甲2発明に対する相違点2について検討するまでもなく、本件特許発明3は甲2発明、すなわち甲第2号証に記載された発明及び甲3ないし5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 本件特許発明4について
本件特許発明4は、請求項3を直接引用し、請求項3に記載された発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明3と同様に、甲第2号証に記載された発明及び甲3ないし5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4)本件特許発明3及び4に対する甲3を主引用文献とし、甲2、4及び5を副引用文献とする進歩性違反について
ア 甲3方法発明
甲3に記載された事項を、特に【0042】ないし【0044】に記載された(例2)に関して整理すると、甲3には、次の発明(以下、「甲3方法発明」という。)が記載されていると認める。

<甲3方法発明>
「市販されている銀の超微粒子分散液(商品名独立分散超微粒子パーフェクトシルバー 真空冶金(株))を利用し、含まれる銀微粒子100質量部当たり、アルキルアミンとして、ドデシルアミン1質量部、有機溶剤として、ターピネオール75質量部を含む、平均粒子径8nmの銀微粒子の分散液を調製し、前記組成の銀微粒子の分散液について、銀微粒子100質量部当たり、酸無水物として、Me-HHPA(メチルヘキサヒドロ無水フタル酸)を0.45質量部、熱硬化性樹脂として、レゾール型フェノール樹脂(群栄化学(株)製、PL-2211)を5質量部添加し、これらを混合した後、攪拌して調製された導電性金属ペーストを、メタルマスクで100μmのスルーホールを持つエポキシ基板上に膜厚50μm、縦横10×20mmの大きさで両面に塗布し、150℃×30分+210℃×60分で硬化する多層配線板の製造方法。」

なお、特許異議申立人は、甲3には、「F 銀を導体成分として含む導電膜を
G ポリイミド基板上に形成する導電膜付基板の製造方法であって、
H アミン類から成る所定量のコート剤が表面に付着した銀粉末と、樹脂結合剤と、有機溶剤とを含む導電ペーストを、
I ポリイミド基板上に塗布する塗布工程と、
j 導電ペーストを250℃以下の温度で焼結することにより導電膜を生成する工程と、を含む方法
K 銀粉末の表面に付着したコート剤は、その銀粉末に対する質量比で2.3(%)以下の量である。」という発明が記載されている旨主張するが、甲3には、ポリイミドは基板の材料として選択肢の一つとして挙げられているにすぎず、また、コート剤の付着量を「銀粉末に対する質量比で2.3(%)以下の量」とするという事項に相当する記載があるとも認められないから、甲3発明として、特許異議申立人が主張するような発明を直ちには認定することはできない。

イ 本件特許発明3について
(ア)対比
a 甲3方法発明における「市販されている銀の超微粒子分散液(商品名独立分散超微粒子パーフェクトシルバー 真空冶金(株))を利用し、含まれる銀微粒子100質量部当たり、アルキルアミンとして、ドデシルアミン1質量部、有機溶剤として、ターピネオール75質量部を含む、平均粒子径8nmの銀微粒子の分散液」中の「銀微粒子」及び「有機溶剤」は、それぞれ、本件特許発明3における「ロジン、脂肪酸、およびアミン類のうちの少なくとも1種から成る所定量のコート剤が表面に付着した銀粉末」及び「有機溶剤」に相当する。

b 甲3方法発明における「熱硬化性樹脂として、レゾール型フェノール樹脂(群栄化学(株)製、PL-2211)」は、本件特許発明3における「樹脂結合剤」に相当するから、甲3方法発明における「市販されている銀の超微粒子分散液(商品名独立分散超微粒子パーフェクトシルバー 真空冶金(株))を利用し、含まれる銀微粒子100質量部当たり、アルキルアミンとして、ドデシルアミン1質量部、有機溶剤として、ターピネオール75質量部を含む、平均粒子径8nmの銀微粒子の分散液を調製し、前記組成の銀微粒子の分散液について、銀微粒子100質量部当たり、酸無水物として、Me-HHPA(メチルヘキサヒドロ無水フタル酸)を0.45質量部、熱硬化性樹脂として、レゾール型フェノール樹脂(群栄化学(株)製、PL-2211)を5質量部添加し、これらを混合した後、攪拌して調製された導電性金属ペースト」は、本件特許発明3における「ロジン、脂肪酸、およびアミン類のうちの少なくとも1種から成る所定量のコート剤が表面に付着した銀粉末と、樹脂結合剤と、有機溶剤とを含む導電性ペースト」に相当する。

c 甲3方法発明における「導電性金属ペーストを、メタルマスクで100μmのスルーホールを持つエポキシ基板上に膜厚50μm、縦横10×20mmの大きさで両面に塗布」する工程は、本件特許発明3における「導電性ペーストを前記ポリイミド基板上に所定パターンで塗布するペースト塗布工程」と、「導電性ペーストを前記基板上に所定パターンで塗布するペースト塗布工程」という限りにおいて一致する。

d 甲3方法発明における「150℃×30分+210℃×60分で硬化する」工程は、本件特許発明3における「250?300(℃)の範囲内の温度で焼成処理を施すことにより銀を焼結させて前記導電性ペーストから導電膜を生成する焼成工程」と、「250?300(℃)の範囲内の温度で焼成処理を施すことにより前記導電性ペーストから導電膜を生成する焼成工程」という限りにおいて一致する。

e 甲3方法発明における「多層配線板の製造方法」は、本件特許発明3における「銀を導体成分として含む導電膜をポリイミド基板上に形成する導電膜付基板の製造方法」と、「銀を導体成分として含む導電膜を基板上に形成する導電膜付基板の製造方法」という限りにおいて一致する。

f したがって、両者は次の点で一致する。

「銀を導体成分として含む導電膜を基板上に形成する導電膜付基板の製造方法であって、
ロジン、脂肪酸、およびアミン類のうちの少なくとも1種から成る所定量のコート剤が表面に付着した銀粉末と、樹脂結合剤と、有機溶剤とを含む導電性ペーストを前記基板上に所定パターンで塗布するペースト塗布工程と、
250?300(℃)の範囲内の温度で焼成処理を施すことにより前記導電性ペーストから導電膜を生成する焼成工程と
を、含む導電膜付基板の製造方法。」

g そして、両者は次の点で相違する。
<甲3方法発明に対する相違点1>
「導電性ペーストを前記基板上に所定パターンで塗布するペースト塗布工程」に関して、本件特許発明3においては、「導電性ペーストを前記ポリイミド基板上に所定パターンで塗布するペースト塗布工程」であるのに対し、甲3方法発明においては、「導電性金属ペーストを、メタルマスクで100μmのスルーホールを持つエポキシ基板上に膜厚50μm、縦横10×20mmの大きさで両面に塗布」する工程である点。

<甲3方法発明に対する相違点2>
「250?300(℃)の範囲内の温度で焼成処理を施すことにより前記導電性ペーストから導電膜を生成する焼成工程」に関して、本件特許発明3においては、「250?300(℃)の範囲内の温度で焼成処理を施すことにより銀を焼結させて前記導電性ペーストから導電膜を生成する焼成工程」であるのに対し、甲3方法発明においては、「150℃×30分+210℃×60分で硬化する」工程である点。

<甲3方法発明に対する相違点3>
「銀を導体成分として含む導電膜を基板上に形成する導電膜付基板の製造方法」に関して、本件特許発明3においては、「銀を導体成分として含む導電膜をポリイミド基板上に形成する導電膜付基板の製造方法」であるのに対し、甲3方法発明においては、「多層配線板の製造方法」である点。

(イ)判断
そこで、上記相違点について検討する。
事案に鑑み、甲3方法発明に対する相違点2から検討する。
甲3方法発明における「150℃×30分+210℃×60分で硬化する」工程は、甲3の【0043】及び【0046】の記載からみて、熱硬化性樹脂を硬化させる工程であって、銀を焼結させるものではない。
また、甲2、4及び5にも、甲3方法発明において、銀を焼結させることの動機付けとなる記載はないし、示唆もない。
したがって、甲3方法発明において、甲3方法発明に対する相違点2に係る本件特許発明3の発明特定事項とすることは、甲2、4及び5に記載された事項を考慮しても、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
よって、甲3方法発明に対する相違点1及び3について検討するまでもなく、本件特許発明3は甲3方法発明、すなわち甲第3号証に記載された発明並びに甲2、4及び5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 本件特許発明4について
本件特許発明4は、請求項3を直接引用し、請求項3に記載された発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明3と同様に、甲第3号証に記載された発明並びに甲2、4及び5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(5)本件特許発明5及び6に対する甲5を主引用文献とし、甲3及び4を副引用文献とする進歩性違反について
ア 甲5発明
甲5に記載された事項を、特に【請求項1】及び【請求項6】に関して整理すると、甲5には、次の発明(以下、「甲5発明」という。)が記載されていると認める。

<甲5発明>
「金属又は金属酸化物微粒子を含み、ポリイミド樹脂基材上に金属微粒子焼結膜を形成してなる導電性基板を製造するために用いられるポリイミド樹脂基材用塗布液。」

なお、特許異議申立人は、甲5には、「L 銀粉末と、樹脂結合剤と、有機溶剤とを含み、
M ポリイミド基板上に導電膜を形成して導電膜付基板を製造するために用いられるポリイミド基板用導電性ペーストであって、
N 銀粉末は、アミノ基を有する化合物(アミン類)から成るコート剤を表面に付着させたコート剤付着銀粉末である」という発明が記載されている旨主張するが、甲5には、銀やアミノ基を有する化合物は選択枝の一つとして記載されているにすぎず、また、ペーストという記載があるとも認められないから、甲5発明として、特許異議申立人が主張するような発明を直ちには認定することはできない。

イ 本件特許発明5について
(ア)対比
本件特許発明5と甲5発明を対比する。
a 甲5発明における「金属又は金属酸化物微粒子」は、本件特許発明5における「銀粉末」と、「金属粉末」という限りにおいて一致する。

b 甲5発明における「ポリイミド樹脂基材」は、本件特許発明5における「ポリイミド基板」に相当し、以下、同様に、「金属微粒子焼結膜」は「導電膜」に、「導電性基板」は「導電膜付基板」に、それぞれ、相当する。

c 甲5発明における「ポリイミド樹脂基材用塗布液」は、本件特許発明5における「ポリイミド基板用導電性ペースト」と、「ポリイミド基板用液状体」という限りにおいて一致する。

d したがって、両者は次の点で一致する。

「金属粉末を含み、ポリイミド基板上に導電膜を形成して導電膜付基板を製造するために用いられるポリイミド基板用導電性液状体。」

e そして、両者は次の点で相違する。
<甲5発明に対する相違点1>
「金属粉末」に関して、本件特許発明5においては、「銀粉末」であるのに対し、甲5発明においては、「金属又は金属酸化物微粒子」である点。

<甲5発明に対する相違点2>
「ポリイミド基板用液状体」に関して、本件特許発明5においては、「銀粉末と、樹脂結合剤と、有機溶剤とを含」む「ポリイミド基板用導電性ペースト」であるのに対し、甲5発明においては、「金属又は金属酸化物微粒子を含」む「ポリイミド樹脂基材用塗布液」である点。

<甲5発明に対する相違点3>
本件特許発明5においては、「前記銀粉末は、ロジン、脂肪酸、およびアミン類のうちの少なくとも1種から成るコート剤をその銀粉末に対する質量比で2.3(%)以下の量で表面に付着させたコート剤付着銀粉末」と特定されているのに対し、甲5発明においては、そのようには特定されていない点。

<甲5発明に対する相違点4>
本件特許発明5においては、「250℃の処理温度において6.7(mΩ/□)以下のシート抵抗値を有する」と特定されているのに対し、甲5発明においては、そのようには特定されていない点。

(イ)判断
そこで、上記相違点について検討する。
事案に鑑み、甲5発明に対する相違点3及び4から検討する。

a 甲5発明に対する相違点3について
甲5には、【0016】に「微粒子にポリビニルピロリドンなどの水溶性高分子やグラフト共重合高分子のような保護剤、界面活性剤、金属と相互作用するようなチオール基やアミノ基、水酸基、カルボキシル基を有する化合物で被覆することが好ましい。」と記載され、アミノ基を有する化合物、すなわちアミン類を被覆、すなわち表面に付着させることが好ましいことが記載されているといえるが、付着させる量については、記載も示唆もされていない。
また、甲3及び4にも、脂肪酸やアミン類を付着させることは記載されているが、その量を2.3%以下とすることは記載も示唆もされていない。
したがって、甲5発明において、甲5発明に対する相違点3に係る本件特許発明5の発明特定事項を想到することは、甲3及び4に記載された事項を考慮しても、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。

b 甲5発明に対する相違点4について
甲5自体には、甲5発明が「250℃の処理温度において6.7(mΩ/□)以下のシート抵抗値を有する」ことを示唆する記載はない。
また、甲3及び4にも、上記事項に相当する記載はなく、示唆もない。
したがって、甲5発明において、甲5発明に対する相違点4に係る本件特許発明5の発明特定事項を想到することは、甲3及び4に記載された事項を考慮しても、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。

c まとめ
よって、甲5発明に対する相違点1及び2について検討するまでもなく、本件特許発明5は甲5発明、すなわち甲第5号証に記載された発明並びに甲3及び4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 本件特許発明6について
本件特許発明6は、請求項5を直接引用し、請求項5に記載された発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明5と同様に、甲第5号証に記載された発明並びに甲3及び4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(6)本件特許の請求項3及び4に係る特許に対する明確性要件及びサポート要件違反について
本件特許の請求項3及び4に係る特許に対して特許異議申立人が主張する明確性要件及びサポート要件の理由は、具体的には、本件訂正前の請求項3の「250?300(℃)の最高温度で焼成処理を施す」という記載に起因して、焼成温度と最高温度の関係が不明であり、特許請求の範囲の記載は、明確性要件及びサポート要件に違反するというものである。
そこで、検討する。

明確性要件について
本件訂正により、本件訂正前の請求項3の「250?300(℃)の最高温度で焼成処理を施す」という記載は、「250?300(℃)の範囲内の温度で焼成処理を施す」と訂正された。
したがって、焼成温度と最高温度の関係が不明である旨の明確性要件違反の理由は解消したし、他に本件訂正後の請求項3に不明確な記載はない。
また、請求項3を直接引用する請求項4の記載についても同様である。

イ サポート要件について
本件訂正により、本件訂正前の請求項3は上記アのとおり訂正された。
他方、発明の詳細な説明の【0011】の「本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的は、導電性とポリイミド基板への密着性に優れた銀導電膜を備えた導電膜付基板、その製造方法、およびその導電膜付基板の製造に用い得るポリイミド基板用導電性ペーストを提供することにある。」という記載によると、本件特許発明3の解決しようとする課題(以下、「発明の課題」という。)は、「導電性とポリイミド基板への密着性に優れた銀導電膜を備えた導電膜付基板」の「製造方法」を「提供すること」である。
そして、同【0032】の「このようにして用意した導電性ペーストを用いて、ポリイミド基板に厚膜スクリーン印刷を施す。印刷製版はSUS400製とした。また、印刷膜の幅寸法は500(μm)になるように印刷条件を設定した。乾燥後、250?300(℃)の範囲内の温度で焼成処理を施すことにより、樹脂結合剤が燃え抜けると共に銀粉末が焼結し、前記銀導電膜10が得られる。」(下線は当審で付した。)という記載並びに【表1】及び【表2】によると、250?300(℃)の範囲内の温度で焼成処理を施すことによって、シート抵抗及びテープ強度に優れた、すなわち導電性とポリイミド基板への密着性に優れた銀導電膜を得られることを当業者は認識できる。
したがって、本件特許発明3は、発明の課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものである。
また、請求項3を直接引用する本件特許発明4についても同様に発明の課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものである。

ウ まとめ
したがって、本件特許の請求項3及び4に係る特許に関して、特許請求の範囲の記載は明確性要件及びサポート要件に適合する。

(7)取消理由(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由についてのむすび
したがって、本件特許の請求項3ないし6に係る特許は、取消理由(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由によっては取り消すことはできない。

第6 結語
上記第5のとおり、本件特許の請求項1及び2に係る特許は特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
また、本件特許の請求項3ないし6に係る特許は、特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由及び取消理由(決定の予告)によっては取り消すことはできない。
さらに、他に本件特許の請求項3ないし6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
導電膜付基板、その製造方法、およびポリイミド基板用導電性ペースト
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド基板上に導電膜が備えられた導電膜付基板と、その製造方法、および、その導電膜の形成に好適に用いられる導電性ペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、回路基板の配線形成や、電子部品の電極形成等に用いられる導電性ペーストは、導電性粉末と、樹脂結合剤と、有機溶剤と、必要に応じて含まれるガラスフリット等の無機フィラーとから成るものである。この導電性ペーストは、概ね300(℃)以下の低温で熱処理を施すことによって基板上に導体膜を形成することができる熱硬化タイプと、400(℃)以上の温度で焼成処理を施すことによって導体膜を形成する焼成タイプとに大別される。
【0003】
前者の熱硬化タイプは、樹脂結合剤として熱硬化樹脂が用いられたものであり、熱処理によってその熱硬化樹脂が硬化することで導電膜が形成される。このタイプは処理温度が低いことから基板の材質を選ばない利点があるが、導電性粉末は相互に接触した状態で樹脂結合剤によって固定されているだけであり、しかも、樹脂が残存することから、抵抗値が高めであり、また、耐熱性や長期的な信頼性が低いことが難点である。
【0004】
一方、後者の焼成タイプでは、焼成処理によって導電性粉末自体が焼結し、或いは、これに加えてガラスフリットが焼結することで導電膜が形成される。このタイプは樹脂を焼失させると共に導電性粉末が焼結することから、抵抗値が低く、耐熱性や長期的な信頼性が高い利点があるが、高温の焼成処理が必要であることから、樹脂基板には適用できず、製造コストも高めになることが難点である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-310022号公報
【特許文献2】特開2011-252140号公報
【特許文献3】特開2011-065783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、樹脂基板の一種であるポリイミド基板は、耐熱性が高く且つ可撓性に優れることから、携帯端末その他の電子機器の基板に広く用いられるようになっている。ポリイミド基板への配線形成は、銅を圧着してエッチング処理を施してパターン形成する方法が主流であるが、導体配線を低抵抗化するために、スクリーン印刷等により厚膜で形成することが検討されている。前述したように、樹脂基板には焼成タイプの導電性ペーストを使用できないことから、熱硬化タイプの導電性ペーストの改善が従来から試みられていたが、十分な導電性は得られていない。
【0007】
例えば、導電性粉末と溶媒とバインダーとからなる導電性ペーストにおいて、そのバインダーが、アルミニウム化合物及びシランカップリング剤から選ばれる一種または二種以上を含むものが提案されている(特許文献1を参照。)。この導電性ペーストは、200(℃)で乾燥処理を施すことによって導電膜を形成するものであるが、比抵抗が2.9×10^(-5)(Ω・cm)?6.1×10^(-5)(Ω・cm)程度と、比較的高い値に留まる。アルミニウム化合物及びシランカップリング剤が導電性を低下させているものと考えられる。
【0008】
また、タップ密度が1.0?10.0(g/cm^(3))、D50粒子径が0.3?5(μm)、BET比表面積0.3?5.0(m^(2)/g)の導電性粒子と、数平均分子量が10000?300000であり、水酸基価2?300(mgKOH/g)のエポキシ樹脂と、そのエポキシ樹脂中の水酸基とアルコール交換反応が可能であり、そのエポキシ樹脂100重量部に対して0.2?20重量部の金属キレートとを含有する導電性インキが提案されている(特許文献2を参照。)。この導電性インキは、高精細な導電性パターンを印刷形成するためのもので、ポリイミド基板に対する密着性が優れることが記載されているが、上記ペーストと同様に熱硬化タイプであり、抵抗率が5.0×10^(-5)(Ω・cm)程度と高く、導電性が不十分である。
【0009】
これらに対して、例えば、平均一次粒子径が50(nm)以下の金属粒子1の群と、平均一次粒子径が100(nm)以上の金属粒子2の群により構成される金属粉末成分、熱可塑性樹脂、分散媒からなり、金属と樹脂の合計質量に対する金属の質量の割合が94?98(%)を示す焼成タイプの導電性ペーストが提案されている(特許文献3を参照。)。この導電性ペーストによれば、ポリイミド基板上にスクリーン印刷等で膜形成して、200(℃)程度の低温で焼成すると、導電性および密着性の両立した導電膜が得られるものとされている。
【0010】
しかしながら、上記導電性ペーストは、未だ銅圧着配線に代わるものではなく、一層の改善が望まれていた。導電性はある程度改善しているものの十分ではなく、しかも、50(nm)以下の金属微粉末を必須とするものであることから、高コストで取扱性が悪いのである。上記特許文献3には、平均粒径が100(nm)以上の金属粒子のみを用いた導電性ペーストが導電性の低い比較例として記載されているが、これは金属粉末の焼結が十分に進んでいないためと考えられる。その焼結性を改善するために、50(nm)以下の微粉を混合しているのである。
【0011】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的は、導電性とポリイミド基板への密着性に優れた銀導電膜を備えた導電膜付基板、その製造方法、およびその導電膜付基板の製造に用い得るポリイミド基板用導電性ペーストを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
斯かる目的を達成するため、第1発明の要旨とするところは、ポリイミド基板の一面に銀を導体成分として含む導電膜が備えられた導電膜付基板であって、前記導電膜および前記ポリイミド基板の構成成分がそれらの界面を越えてその導電膜の厚さ寸法以下の範囲で相互に他方に侵入することにより形成された凹凸面をその界面が成していて、前記導電膜の厚み方向の一部は、前記ポリイミド基板に入り込んでいることにある。
【0013】
また、前記目的を達成するための第2発明の要旨とするところは、銀を導体成分として含む導電膜をポリイミド基板上に形成する導電膜付基板の製造方法であって、(a)ロジン、脂肪酸、およびアミン類のうちの少なくとも1種から成る所定量のコート剤が表面に付着した銀粉末と、樹脂結合剤と、有機溶剤とを含む導電性ペーストを前記ポリイミド基板上に所定パターンで塗布するペースト塗布工程と、(b)250?300(℃)の範囲内の温度で焼成処理を施すことにより銀を焼結させて前記導電性ペーストから導電膜を生成する焼成工程とを、含むことにある。
【0014】
また、前記目的を達成するための第3発明の要旨とするところは、銀粉末と、樹脂結合剤と、有機溶剤とを含み、ポリイミド基板上に導電膜を形成して導電膜付基板を製造するために用いられるポリイミド基板用導電性ペーストであって、前記銀粉末は、ロジン、脂肪酸、およびアミン類のうちの少なくとも1種から成るコート剤をその銀粉末に対する質量比で2.3(%)以下の量で表面に付着させたコート剤付着銀粉末であり、250℃の処理温度において6.7(mΩ/□)以下のシート抵抗値を有することにある。
【発明の効果】
【0015】
前記第1発明によれば、導電膜およびポリイミド基板は、それらの構成成分が導電膜の厚さ寸法以下の範囲で相互に他方に侵入しており、これにより形成された凹凸面をそれらの界面が成していて、前記導電膜の厚み方向の一部は、前記ポリイミド基板に入り込んでいることから、接触面積の増大に伴って導電性と密着性が高められる。そのため、高い導電性とポリイミド基板との高い密着性を有する導電膜が備えられた導電膜付基板が得られる。
【0016】
また、前記第2発明によれば、導電膜をポリイミド基板上に形成して導電膜付基板を製造するに際しては、ペースト塗布工程において、塗布される導電性ペーストが、銀粉末として、ロジン、脂肪酸、またはアミン類から成るコート剤が表面に付着したコート剤付着銀粉末が用いられていることから、焼成工程において、250?300(℃)の範囲内の低温で焼成処理が施されても、十分に焼結が進むので、高い導電性とポリイミド基板への高い密着性を有する導電膜を備えた導電膜付基板が得られる。焼成温度が250(℃)未満では、焼結が十分に進まず、一方、300(℃)を超えても、導電性や密着性は特に向上しないので、ポリイミド基板に過剰な熱が与えられる不都合が生ずるに過ぎない。
【0017】
なお、銀粉末を導体成分として含む導電性ペーストは、前述した50(nm)以下の微粉が用いられるような特殊なものでなければ、通常は、300(℃)以下の低温では焼結が進まない。そのため、ポリイミド基板等の樹脂基板に対しては、一般に熱硬化型ペーストが用いられていたが、これは銀粉末が相互に接触した状態で熱硬化樹脂で固定されているものに過ぎないので、高い導電性は得られない。しかしながら、本発明においては、熱硬化樹脂による固定ではなく、銀粉末自体が焼結する。このように焼結性が向上する理由は定かではないが、銀の焼結の進行に伴い、ポリイミド基板の表面と銀粉末を含む膜との接触面積が増大していき、銀粉末に付着させられたコート剤が接着剤或いは反応促進剤としてその接触界面に作用していることが考えられる。
【0018】
また、前記第3発明によれば、ポリイミド基板用の導電性ペーストは、銀粉末が、ロジン、脂肪酸、またはアミン類から成るコート剤を、銀粉末に対する質量比で2.3(%)以下の範囲で付着させたコート剤付着銀粉末であり250℃の処理温度において6.7(mΩ/□)以下のシート抵抗値を有することから、300(℃)以下、好ましくは270(℃)以下の低温で焼成処理を施しても、銀粉末の焼結が十分に進むので、高い導電性とポリイミド基板への高い密着性が得られる。なお、コート剤が僅かでも銀粉末に付着していれば、その量に応じて銀粉末の焼結性が高められるが、2.3(%)を超えて過剰になると焼成時に燃え抜け難くなって、膜密度を低下させ、導電性が低下する。
【0019】
ここで、好適には、前記第1発明において、前記導電膜は銀が焼結しているものである。すなわち、第1発明の導電膜付基板は、焼成タイプの導電性ペーストを用いて、ポリイミド基板上に導電膜が形成されたものである。そのため、導電膜中の導体成分である銀が焼結していることから、高い導電性を有する。
【0020】
また、好適には、前記第2発明において、前記銀粉末の表面に付着した前記コート剤は、その銀粉末に対する質量比で2.3(%)以下の量である。コート剤は僅かでも付着して入ればその量に応じて銀粉末の焼結性が改善されるが、2.3(%)を超えて過剰になると焼成時に燃え抜け難くなって、膜密度を低下させ、導電性が低下する。
【0021】
また、好適には、前記導電性ペーストにおいて、前記銀粉末は、平均粒径が0.07(μm)以上0.5(μm)以下の範囲である。銀粒径が大きくなるほど焼結性が低下するが、1(μm)以上になると著しく焼結が進みにくくなり、抵抗値が増大する。
【0022】
また、好適には、前記導電性ペーストおよび前記導電膜は、実質的にガラスを含まないものである。なお、「実質的にガラスを含まない」とは、理想的にはガラスを全く含まないことを意味するが、焼結性等の特性に影響を与えない程度に含まれていることは許容される。
【0023】
また、好適には、前記第2発明および前記第3発明において、前記樹脂結合剤は、分解温度が250(℃)以下のもの、すなわち、前記焼成温度よりも低温で燃え抜けるものである。このようにすれば、形成される導電膜中に有機物や炭化物が残存し難いことから、導電膜の導電性が一層高く且つポリイミド基板への密着性が一層高い導電膜付基板が得られる。印刷性や取扱性も考慮すると、アクリル樹脂が好ましい。例えば、メタクリル酸イソブチルの重合体で、平均分子量16万のものが挙げられる。なお、樹脂結合剤の分解温度が焼成温度よりも低いことは必須ではない。例えば、分解温度が300(℃)以上の樹脂結合剤が用いられてもよい。そのような場合にも、本願発明によれば銀粉末の焼結は十分に進むことから、導電膜に有機物や炭化物が残存しても、従来に比べて十分に高い導電性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施例の銀導電膜がポリイミド基板一面に形成された導電膜付基板の断面を模式的に示す図である。
【図2】図1の導電膜付基板の導電膜と基板の界面近傍の断面写真である。
【図3】図2の断面の一部を拡大して示す写真である。
【図4】比較例の導電膜付基板の導電膜と基板の界面近傍の断面写真である。
【図5】図4の断面の一部を拡大して示す写真である。
【図6】本発明の一実施例の導電膜付基板の導電膜の断面形状を焼成温度毎に示す図である。
【図7】本発明の一実施例の導電膜付基板の導電膜表面のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【0026】
図1は、本発明の銀導電膜10がポリイミド基板12の一面に形成された導電膜付基板14の断面を示す図である。この配線基板は、種々の電子機器等において、可撓性のある内部配線基板や、可動部分の端子と固定部分の端子とを接続するフレキシブル配線基板等として用いられるものである。銀導電膜10は、例えば、1.0?8.0(μm)程度の厚さ寸法を備えた銀のみから成るもので、ポリイミド基板12が変形するときは、これに倣って変形する柔軟性を備えている。
【0027】
上記導電膜付基板14は、例えば、銀粉末と、樹脂結合剤と、有機溶剤とを含む導電性ペーストを用意し、ポリイミド基板12上にスクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、或いはインクジェット印刷等の適宜の印刷方法により膜形成して、焼成処理を施すことにより銀導電膜10を生成して製造される。上記銀粉末は、表面に所定量のコート剤を付着させたコート剤付着銀粉末として添加する。コート剤は、ロジン、脂肪酸、アミン類の何れかである。脂肪酸としては、例えば、ステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸、リノール酸、デカン酸などが挙げられる。また、アミン類としては、例えば、ドデシルアミンが挙げられる。
【0028】
このようなコート剤付着銀粉末は、以下のようにして作成する。銀粉末としては、一般的な湿式法により調製された市販品を用いた。平均粒径0.07(μm)、0.10(μm)、0.5(μm)、0.8(μm)、0.9(μm)、1.0(μm)、1.4(μm)、3(μm)の球形状のものを用意した。これを例えばビーカーにそれぞれ約100(g)とり、さらにイソプロピルアルコール約1000(ml)を追加し十分に撹拌する。これを一晩放置し、次いで、上澄みを廃棄する。さらにイソプロピルアルコール約1000(ml)を投入し、撹拌後、一晩放置する。この洗浄操作を3?5回繰り返す。これにより、これにより、銀粉末に付着している有機物を十分に除去する。
【0029】
次いで、コート剤をイソプロピルアルコールに溶解させる。以下、コート剤としてロジンを用いる場合を例にとって説明する。ロジン原料としては、例えば、荒川化学工業製ガムロジンWWを用い、これを1.0?2.5(g)とって、500(ml)のイソプロピルアルコールに添加し撹拌する。次いで、上記の洗浄操作を終えた銀粉の上澄み液を廃棄し、これにロジンを溶かしたイソプロピルアルコールを添加し十分に撹拌する。次いで、この混合物をナス型フラスコに移し替え、エバポレータを用いて55(℃)?60(℃)の温水で加温しながら減圧させることで、イソプロピルアルコールを気化させる。このようにして得られた銀粉をトレイに載せ、一晩放置する。その後、200メッシュのスクリーンを用いてふるいを実施することで表面にロジンが付着した銀粉粒子を用意した。
【0030】
なお、付着したロジン量は、得られた銀粉をTG-DTAで昇温速度10(℃/min)で900(℃)まで測定して求めた。すなわち、TGの50(℃)の質量と400(℃)の質量との差を付着ロジン量とした。ロジン付着量は添加するガムロジンWWの量を変化させることで調整する。例えば、粒径0.1(μm)の銀粉の場合、ガムロジン量1.2(g)、1.7(g)、2.2(g)に対して、ロジン量は1.0(%)、1.6(%)、2.0(%)になる。
【0031】
上記のようにして、ロジン付着銀粉を用意し、樹脂結合剤および有機溶剤と攪拌機等で混合する。樹脂結合剤としては、例えばアクリル樹脂(三菱レーヨン製 EMB-002)、有機溶剤としては、例えばメンタノールを用いる。これらを所定量調合し、三本ロールミルを用いて分散処理を行ってペースト化することにより、導電性ペーストが得られる。上記アクリル樹脂は、250(℃)以下で燃え抜けるもので、スクリーン印刷性やハンドリング性を考慮した平均分子量16万程度のメタクリル酸イソブチルである。ペースト調製に際しては、印刷性を同等とするために、例えば、25(℃)-20(rpm)における粘度が180?200(Pa・s)になるように調整する。
【0032】
このようにして用意した導電性ペーストを用いて、ポリイミド基板に厚膜スクリーン印刷を施す。印刷製版はSUS400製とした。また、印刷膜の幅寸法は500(μm)になるように印刷条件を設定した。乾燥後、250?300(℃)の範囲内の温度で焼成処理を施すことにより、樹脂結合剤が燃え抜けると共に銀粉末が焼結し、前記銀導電膜10が得られる。
【0033】
本実施例によれば、上述したように銀粉末としてロジン、脂肪酸、或いはアミン類を付着させたコート剤付着銀粉末を用いていることから、上記のような250?270(℃)の低温でも銀粉末の焼結が十分に進むので、例えば、シート抵抗値が2?8(mΩ/□)程度の高い導電性と、高い密着性とを有する導電膜10がポリイミド基板12上に備えられた導電膜付基板14が得られる。
【0034】
図2は、上記導電膜付基板14の導電膜10とポリイミド基板12の界面近傍の断面のSEM像であり、図3は、その一部を更に拡大したSEM像である。図2の上半分程度を占める淡色部分が導電膜10、その下側に位置する濃色部分がポリイミド基板12である。このSEM像に現れている通り、導電膜10は粒界が消失する程度まで十分に焼結している。しかも、導電膜10と基板12の界面には凹凸が形成されており、図3にその境界部分を拡大して示すように、銀とポリイミドが相互に他方の領域に侵入した状態となっている。
【0035】
ここで、ペースト組成や膜形成条件を種々変更して評価した試験結果を説明する。下記の表1は、コート剤の有無や種類、銀粒径を検討した結果をまとめたものである。表1において、No.1、No.2、No.6、No.13は比較例、他は実施例である。また、「組成」欄は、導電性ペーストの組成を質量百分率で示したもので、銀量を68?75(%)、ガラス量を0?2(%)、樹脂結合剤量を5?6(%)、有機溶剤量を20?24(%)の範囲とした。「樹脂/銀」は、銀に対する樹脂量の百分率である。また、「材料」欄において、「銀粒径」は、各ペーストに用いたコート剤付着前の銀粉末の粒径、「添加剤種」は、銀粉末のコート剤として用いた材料名、「付着量」は、付着させたコート剤量を前述したようにTG-DTAで測定した結果を銀粉末に対する百分率で示したものである。また、「ガラス」欄は、ペーストに添加したガラス粉末の組成系である。また、「試験条件・結果」欄において、「印刷版」はメッシュサイズ、「印刷厚み」は、印刷・乾燥後の膜厚である。また、「処理温度」は焼成処理の最高保持温度であり、各処理温度毎に、試験結果を示した。「焼成厚み」は、焼成後の膜厚、「抵抗値」は、焼成後にデジタルマルチメーターを用いて一般的な2端子法に基づいて端子間隔10(cm)、ライン幅500(μm)で測定した膜状導体の抵抗値である。また、「シート抵抗(mΩ/□)」は、上記抵抗値から次式より算出した焼成後のシート抵抗値である。なお、換算厚みは、10(μm)である。
シート抵抗値(mΩ/□)=測定抵抗値(Ω)×(導体幅(mm)/導体長さ(mm))×(導体厚み(μm)/換算厚み(μm))
【0036】
【表1】

【0037】
また、「テープ強度」は、焼成後に、ポリイミド基板上に形成された銀導電膜の表面にセロハンテープ(ニチバン製 CT-15153P)を指で押し付けて付着させ、テープを剥がして剥離したテープ面に付着する銀導電膜の様子を目視により観察して判定した。押しつけたテープのほぼ全面に銀導電膜がまったく付着しておらず、かつポリイミド基板上に形成された銀導電膜もそのまま残っているものを「○」、押しつけたテープに銀導電膜の一部が付着し、かつポリイミド基板上に形成された銀導電膜が一部残っていないものを「△」、押しつけたテープに銀導電膜の90(%)以上が付着し、かつポリイミド基板上に形成された銀導電膜の90(%)以上が残っていないものを「×」として3段階評価した。
【0038】
上記の表1において、比較例No.1、No.2のように、銀粉末をコート剤無しで用いたものは、ポリイミド基板上で焼結しないため、シート抵抗値が高く、テープ強度も低い結果であった。特に、粒径が1(μm)の銀粉末を用いたNo.1では、270(℃)で焼成してもシート抵抗値が32.3(mΩ/□)と著しく高い値に留まった。また、比較例No.13は、コート剤としてドデカンチオールを付着した銀粉末を用いたものであるが、焼結性の改善効果は得られず、270(℃)で焼成してもシート抵抗値が65.1(mΩ/□)と高い値に留まり、テープ強度も得られなかった。
【0039】
これらに対して、実施例No.3?No.5、No.7?No.12は、コート剤としてロジン、ステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸、リノール酸、デカン酸、ドデシルアミンを、それぞれ銀に対する質量比で0.16?2.3(%)の範囲で付着したものであるが、何れも、250?270(℃)で焼成処理を施すことにより、よく焼結し、シート抵抗値が2.4?6.7(mΩ/□)と、高い導電性を得ることができた。また、テープ強度も全て「○」の結果となった。なお、No.3、No.4は、何れもロジンを用いて、銀粒径が0.1(μm)、0.07(μm)と異なる他は同様にして評価したものであるが、粒径の大きいNo.3の方が若干導電性に優れる結果であった。微粉の銀粉末は表面積が大きいため、コート剤量を多めに必要とするものと考えられる。なお、No.6は、ペースト中にガラス粉末を2(%)添加した他はNo.3と同様な条件であるが、導電性は十分に得られるものの、テープ強度が得られない結果となった。銀導電膜自体は焼結しているが、ガラスがポリイミド基板との密着性を阻害している可能性がある。
【0040】
なお、図4、図5は、上記実施例No.7において、焼成温度が230(℃)の場合の断面写真であり、それぞれ前記図2、図3に対応するものである。焼成温度が230(℃)では低すぎるため、焼結が進まず、銀導電膜10とポリイミド基板12との界面も平坦な状態である。そのため、シート抵抗値が高く、且つテープ強度も得られないことになる。
【0041】
また、下記の表2は、条件を更に変更して評価した結果をまとめたもので、No.14?No.16は、銀粉末の粒径を検討した結果である。粒径が0.5?1(μm)の銀粉末を用いたNo.14、No.15は、250?270(℃)の焼成温度でシート抵抗値が3.5?5.4(mΩ/□)と高い導電性が得られると共に、テープ強度も「○」であったが、粒径が3(μm)の銀粉末を用いたNo.16は、これらよりも導電性の劣る結果となった。特に、250(℃)の焼成温度ではシート抵抗値が10.5(mΩ/□)と大きく、テープ強度も「×」となった。但し、270(℃)で焼成すれば、テープ強度は十分に高くなると共に、シート抵抗値も7.1(mΩ/□)と、高めではあるが、使用可能な程度まで改善する。
【0042】
【表2】

【0043】
また、No.17?No.19は、ペースト中の樹脂結合剤量を銀に対する質量比で12.9?4.3(%)の範囲で変化させたものである。何れの条件でも、250?270(℃)の焼成でシート抵抗値が2.7?5.4(mΩ/□)と高い導電性と、「○」評価の高いテープ強度とを得ることができた。ペースト中の樹脂量は、比較的広い範囲で許容される。
【0044】
また、No.20、No.21は、ペースト中の樹脂結合剤を変更して評価したもので、No.20は、分解温度の高いアクリル樹脂(例えば、分解温度が300(℃)程度の三菱レーヨン製 EMB-398)を用いたもの、No.21は、エチルセルロース(例えば、分解温度が450(℃)程度のダウケミカル製 EC-45)を用いたものであるが、何れも、250?270(℃)の焼成温度でシート抵抗値が2.3?2.8(mΩ/□)の高い導電性と、高いテープ強度とを得ることができた。なお、上記2種は、分解温度が高いことから、焼成後の銀導電膜10内に有機物或いは炭化物として少なくとも一部が残存しているものと考えられるが、上記評価結果によれば、このような分解温度の高いものでも全く問題がなく、樹脂結合剤が完全に燃え抜けるものでなくとも差し支えないことが判る。
【0045】
また、No.22?No.24は、ペースト中の樹脂結合剤と有機溶剤との割合を変化させると共に、印刷版を#400、#250、#165と変化させて、印刷厚みを3.2?10.1(μm)の間で変化させたものである。印刷厚みが厚くなると、焼結性がやや悪くなる傾向があり、250?270(℃)の焼成温度で、印刷厚みが3.2(μm)のNo.22、5.8(μm)のNo.23では、シート抵抗値が2.7?3.7(mΩ/□)、テープ強度が「○」と良好な結果が得られたのに対し、印刷厚みが10.1(μm)のNo.24では、250(℃)でテープ強度が「×」となった。但し、No.24も270(℃)では十分に焼結し、シート抵抗値が4.8(mΩ/□)、テープ強度が「○」と、No.22、No.23にはやや劣るものの良好な結果が得られる。また、これらNo.22?No.24の試料については、焼成温度300(℃)でも評価を行ったところ、シート抵抗値が2.4?2.5(mΩ/□)、テープ強度が「○」と、何れも良好な結果が得られることが確認できた。
【0046】
また、No.25は、コート剤を銀粉末に付着させず、ペースト中に添加したものであるが、250(℃)の焼成温度で、シート抵抗値が332(mΩ/□)と著しく大きく、導電性が得られず、テープ強度も「×」となった。ポリイミド基板上における銀粉末の焼結性を改善するためには、コート剤を銀粉末に付着させる処理が必須であることが確認できた。
【0047】
ここで、上述した実施例において、焼成後の銀導電膜10の表面形状を評価した結果を説明する。図6は、銀導電膜10の断面形状図である。この断面形状は、東京精密製 サーフコム480Aを用いて、スキャンスピード 1.5(mm/sec)、倍率 10K、カットオフ0.8(mm)として、形成した500(μm)幅の配線パターンをその幅方向に横断して測定した。図6において、縦方向は、銀導電膜10の厚み方向、横方向はその幅方向であり、中央部の凹凸が生じている部分が銀導電膜10,その両側の平坦な部分がポリイミド基板12である。また、温度は、各評価試料の焼成温度で、250(℃)、270(℃)のものは、前記実施例No.3、300(℃)のものは、前記実施例No.22の試料を測定した。なお、325(℃)の試料は、これらと同様な導電性ペーストを用いたものであるが、この測定データは、前記表1、表2には掲載していない。
【0048】
上記測定結果の断面形状に示されるように、250?300(℃)の温度範囲で焼成処理を施して銀導電膜10を形成することにより、前記図2、図3に示されるように、銀導電膜10およびポリイミド基板12の構成成分が相互に他方に侵入して凹凸形状の界面が形成されるが、その結果、銀導電膜10の表面は、図6に示されるように、凹凸の激しい断面形状になる。この凹凸の大きさは、スケールに示されるように銀導電膜10の厚さ寸法以下、すなわち2(μm)程度である。
【0049】
これに対して、325(℃)で焼成した場合は、ポリイミド基板12が銀導電膜10に著しく浸食され銀導電膜10の膜厚寸法以上の深さの凹所が形成される。このとき、銀導電膜10側にも、ポリイミド基板12の構成成分がおそらくは膜厚方向全体に亘って侵入しているものと推定され、シート抵抗値も高くなる。このように、焼成温度325(℃)ではポリイミド基板12が破れるなど不都合が生じており、使用できないことが明らかであるため、前記表1、表2への掲載を省略した。
【0050】
なお、図7は、銀導電膜10の表面SEM写真である。この写真に示すように、銀導電膜10の表面には、多数の小さな穴が生じている。前記図6において現れる凹凸はこのような穴にも起因しているものと考えられるが、膜厚や構成成分の侵入深さを考える際には、この穴に起因する凹凸は無視している。
【0051】
以上、説明したように、本実施例によれば、銀導電膜10およびポリイミド基板12は、それらの構成成分が銀導電膜10の厚さ寸法以下の範囲で相互に他方に侵入しており、これにより形成された凹凸面をそれらの界面が成していることから、接触面積の増大に伴って導電性と密着性が高められる。そのため、高い導電性とポリイミド基板12との高い密着性を有する銀導電膜10が備えられた導電膜付基板14が得られる。
【0052】
また、本実施例によれば、銀導電膜10をポリイミド基板12上に形成して導電膜付基板14を製造するに際しては、ペースト塗布工程において、塗布される導電性ペーストが、銀粉末として、ロジン、脂肪酸、またはアミン類から成るコート剤が表面に付着したコート剤付着銀粉末が用いられていることから、焼成工程において、250?300(℃)の範囲内の低温で焼成処理が施されても、十分に焼結が進むので、高い導電性とポリイミド基板12への高い密着性を有する銀導電膜10を備えた導電膜付基板14が得られる。
【0053】
また、本実施例によれば、導電性ペーストは、銀粉末として、ロジン、脂肪酸、またはアミン類から成るコート剤が、銀粉末に対する質量比で2.3(%)以下の範囲で付着したコート剤付着銀粉末が用いられていることから、300(℃)以下の低温で焼成処理を施しても、銀粉末の焼結が十分に進むので、高い導電性とポリイミド基板12への高い密着性が得られる。
【0054】
以上、本発明を図面を参照して詳細に説明したが、本発明は更に別の態様でも実施でき、その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
【符号の説明】
【0055】
10:銀導電膜、12:ポリイミド基板、14:導電膜付基板
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド基板の一面に銀を導体成分として含む導電膜が備えられた導電膜付基板であって、
前記導電膜および前記ポリイミド基板の構成成分がそれらの界面を越えてその導電膜の厚さ寸法以下の範囲で相互に他方に侵入することにより形成された凹凸面をその界面が成していて、
前記導電膜の厚み方向の一部は、前記ポリイミド基板に入り込んでいる
ことを特徴とする導電膜付基板。
【請求項2】
前記導電膜は銀が焼結しているものである請求項1の導電膜付基板。
【請求項3】
銀を導体成分として含む導電膜をポリイミド基板上に形成する導電膜付基板の製造方法であって、
ロジン、脂肪酸、およびアミン類のうちの少なくとも1種から成る所定量のコート剤が表面に付着した銀粉末と、樹脂結合剤と、有機溶剤とを含む導電性ペーストを前記ポリイミド基板上に所定パターンで塗布するペースト塗布工程と、
250?300(℃)の範囲内の温度で焼成処理を施すことにより銀を焼結させて前記導電性ペーストから導電膜を生成する焼成工程と
を、含むことを特徴とする導電膜付基板の製造方法。
【請求項4】
前記銀粉末の表面に付着した前記コート剤は、その銀粉末に対する質量比で2.3(%)以下の量である請求項3の導電膜付基板の製造方法。
【請求項5】
銀粉末と、樹脂結合剤と、有機溶剤とを含み、ポリイミド基板上に導電膜を形成して導電膜付基板を製造するために用いられるポリイミド基板用導電性ペーストであって、
前記銀粉末は、ロジン、脂肪酸、およびアミン類のうちの少なくとも1種から成るコート剤をその銀粉末に対する質量比で2.3(%)以下の量で表面に付着させたコート剤付着銀粉末であり、
250℃の処理温度において6.7(mΩ/□)以下のシート抵抗値を有することを特徴とするポリイミド基板用導電性ペースト。
【請求項6】
前記銀粉末は、平均粒径が0.07(μm)以上0.5(μm)以下の範囲である請求項5のポリイミド基板用導電性ペースト。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-09-03 
出願番号 特願2015-78076(P2015-78076)
審決分類 P 1 651・ 113- ZDA (H01B)
P 1 651・ 121- ZDA (H01B)
P 1 651・ 537- ZDA (H01B)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 田澤 俊樹  
特許庁審判長 須藤 康洋
特許庁審判官 加藤 友也
土屋 知久
登録日 2017-12-22 
登録番号 特許第6263146号(P6263146)
権利者 株式会社ノリタケカンパニーリミテド
発明の名称 導電膜付基板、その製造方法、およびポリイミド基板用導電性ペースト  
代理人 池田 光治郎  
代理人 池田 治幸  
代理人 池田 治幸  
代理人 池田 光治郎  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ