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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  A23L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A23L
管理番号 1357652
異議申立番号 異議2019-700064  
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-01-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-01-29 
確定日 2019-11-12 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6368026号発明「着色された水溶液の調製における色素凝集の抑制方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6368026号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[5?7]について訂正することを認める。 特許第6368026号の請求項1?10に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6368026号の請求項1?10に係る特許についての出願は、平成29年12月22日に特許出願され、平成30年7月13日に特許権の設定登録がされ、平成30年8月1日にその特許公報が発行され、平成31年1月29日に、その請求項1?10に係る発明の特許に対し、特許異議申立人 清水 すみ子(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
その後の手続の経緯は以下のとおりである。
令和 1年 5月 7日付け 取消理由通知
同年 7月11日 意見書・訂正請求書(特許権者)
同年 8月 6日付け 通知書
同年 9月 6日 意見書(特許異議申立人)

第2 訂正の適否について

1 訂正の内容
特許権者は、特許法第120条の5第1項の規定により審判長が指定した期間内である令和1年7月11日に訂正請求書を提出し、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項5?7について訂正することを求めた(以下「本件訂正」という。)。その訂正内容は、以下のとおりである。

(1)訂正事項1
訂正前の請求項5の「調製された水溶液の泡立ちを惹起する操作」を、訂正後の請求項5の「調製された水溶液の泡立ちを惹起する操作(凍結及び攪拌を同時に行う操作を除く)」と訂正する。

2 訂正の適否

(1)一群の請求項について
訂正事項1に係る訂正前の請求項5?7について、請求項6及び7は請求項5を直接引用しており、訂正事項によって記載が訂正される請求項5に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正事項1に係る訂正前の請求項5?7に対応する訂正後の請求項5?7は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項であり、本件訂正は、一群の請求項ごとにされたものである。

(2)訂正の目的の適否
訂正事項1は、「調製された水溶液の泡立ちを惹起する操作」を「調製された水溶液の泡立ちを惹起する操作(凍結及び攪拌を同時に行う操作を除く)」として、「調製された水溶液の泡立ちを惹起する操作」を限定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(3)新規事項の追加の有無
訂正事項1の「調製された水溶液の泡立ちを惹起する操作(凍結及び攪拌を同時に行う操作を除く)」とする事項については、調製された水溶液の泡立ちを惹起する操作において、凍結及び攪拌を同時に行う操作を除くものである。
願書に添付した明細書には、「【0021】・・水溶液の泡立ちを惹起する操作としては、攪拌、タンク等への投入、容器への充填等が挙げられる」と記載され、実施例において「【実施例】・・【0024】<試験1>・・色素以外の成分を水に溶解しながら80℃まで加温し、これを10℃以下まで冷却した後、色素を混合溶解することで水溶液を調製した。・・調製した各水溶液を・・2分間攪拌した。攪拌操作後、液体の状態、泡立ちの程度、及び泡立ちが見られる場合には泡沫部分の色素凝集の程度を評価した。・・【0031】<試験3>・・表3に示す仕込み量(質量%)により、実施例・・の着色された水溶液を、実施例1と同じ方法で調製し、評価した。さらに、水溶液を凍結して氷菓を製造し・・」と記載されており(審決注:下線は当審が付与。以下同様。)、調製された水溶液の泡立ちを惹起する操作において、凍結及び攪拌を同時に行うものではない操作が記載されているといえる。
また、「凍結及び攪拌を同時に行う操作を除く」との訂正は、訂正前の請求項1に係る発明が、特許異議申立人が提出した甲第3号証に記載された発明と重なる(以下の第5 I 1(3)ア(イ)参照。)ために、当該重なりのみを除くものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でなされたものであって、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

(4)実質上特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

3 まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合するので、訂正後の請求項[5?7]についての訂正を認める。

第3 本件発明
本件訂正により訂正された請求項1?10に係る発明(以下「本件発明1」?「本件発明10」といい、まとめて「本件発明」ということがある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
着色された水溶液の泡立ちにおける泡沫部分での色素の凝集を抑制する方法であって、
色素を、タマリンドシードガム、グァーガム、及びローカストビーンガムから選ばれる1種又は2種以上の多糖類と共に溶解して着色した水溶液を調製することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記水溶液がタンパク質、ポリフェノール及び食物繊維から選ばれる1種又は2種以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記多糖類を、前記水溶液に対する濃度が0.0007?0.7質量%となるように溶解する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記色素が、スピルリナ色素、カロテン色素、紅麹色素、及びベニバナ黄色素から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする、請求項1?3の何れかに記載の方法。
【請求項5】
着色された水溶液の調製、及び調製された水溶液の泡立ちを惹起する操作(凍結及び攪拌を同時に行う操作を除く)、及び該操作を経た水溶液の凍結を含む、氷菓の製造方法であって、
前記水溶液が、タンパク質、ポリフェノール、及び食物繊維から選ばれる1種または2種以上を含み、
前記水溶液の調製は、色素を、タマリンドシードガム、グァーガム、及びローカストビーンガムから選ばれる1種または2種以上の多糖類と共に水に溶解することを特徴とする、氷菓の製造方法。
【請求項6】
前記多糖類を、前記水溶液に対する濃度が0.0007?0.7質量%となるように溶解する、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記色素が、スピルリナ色素、カロテン色素、紅麹色素、及びベニバナ黄色素から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする、請求項5又は6に記載の製造方法。
【請求項8】
水を90?99質量%、脂質を0?0.5質量%、タンパク質を0?0.5質量%、色素を0.001?0.5質量%、及び泡立ち惹起成分を含む氷菓であって、
タマリンドシードガム、グァーガム、及びローカストビーンガムから選ばれる1種又は2種以上の多糖類を合計で0.0007?0.7質量%含むことを特徴とする氷菓。
【請求項9】
前記泡立ち惹起成分が、タンパク質、ポリフェノール及び食物繊維から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする、請求項8に記載の氷菓。
【請求項10】
水を90?99質量%、脂質を0?0.5質量%、タンパク質を0?0.5質量%、色素を0.001?0.5質量%含み、泡立ちを惹起する操作を経て製造される氷菓(但し、ゲル状食品を除く)であって、
タマリンドシードガム、グァーガム、及びローカストビーンガムから選ばれる1種又は2種以上の多糖類を合計で0.0007?0.7質量%含み、
前記色素が、スピルリナ色素、カロテン色素、紅麹色素、及びベニバナ黄色素から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする、氷菓。」

第4 取消理由の概要

1 特許異議申立人が申し立てた取消理由の概要
特許異議申立人が申し立てた取消理由の概要は、以下のとおりである。

理由1:訂正前の請求項1?7に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第1号証に記載された発明(甲第2号証に記載された技術的事項を参照)、並びに、甲第3号証に記載された発明(甲第4及び5号証に記載された技術的事項を参照)であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、訂正前の請求項1?7に係る特許は、同法第29条の規定に違反してなされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

甲第1号証:特開2001-218567号公報(以下「甲1」という。)
甲第2号証:特開2002-345409号公報(以下「甲2」という。)
甲第3号証:特開2007-54040号公報(以下「甲3」という。)
甲第4号証:特開平11-60980号公報(以下「甲4」という。)
甲第5号証:今立恵美編「別冊フードケミカル-10 食品着色料総覧」(平成20年3月1日)株式会社食品化学新聞社発行、p.230-232(以下「甲5」という。)

理由2:訂正前の請求項1?10に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術的事項、並びに、甲第3号証に記載された発明及び甲第4、5号証に記載された技術的事項に基いて、本出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、訂正前の請求項1?10に係る特許は、同法第29条の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

甲第1?5号証:理由1で示したとおりである。

理由3:訂正前の請求項1?10に係る発明は、以下の点で、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、訂正前の請求項1?10に係る特許は、同法第36条第6項の規定を満たさない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

(1)請求項1?10に係る発明は、実施例12等を発明の具体例として含むその範囲全体にわたって課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものではない。

(2)請求項8?10に記載の「水を90?99質量%」全体にわたって課題を解決できるとはいえないから、請求項8?10に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものとは認められない。

2 令和1年5月7日付けで当審が通知した取消理由の概要
訂正前の請求項1?10に係る発明に対して、令和1年5月7日付けで当審が特許権者に通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。

理由1(新規性)訂正前の請求項5?7に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、訂正前の請求項5?7に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してなされたものである。

刊行物1:特開2007-54040号公報(甲3)
刊行物2:特開2011-236192号公報
刊行物3:特開2017-139967号公報
刊行物4:今立恵美編「別冊フードケミカル-10 食品着色料総覧」(平成20年3月1日)株式会社食品化学新聞社発行、p.230-232(甲5)

理由2(サポート要件)特許請求の範囲の記載が、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、訂正前の請求項1?10に係る特許は、特許法第36条第6項の規定に違反してなされたものである。

請求項1?10に係る発明は、実施例12等を発明の具体例として含むその範囲全体にわたって課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものではない。

第5 当審の判断
当審は、本件発明1?10は、特許異議申立人が申し立てた取消理由及び当審の通知した取消理由によっては、取り消すことはできないと判断する。理由は以下のとおりである。

I 令和1年5月7日付けで当審が通知した取消理由についての判断

1 取消理由の理由1(特許法第29条第1項第3号)に対して

(1)刊行物の記載

ア 刊行物1には、以下の記載1a?1cがある。
記載1a「【請求項1】
ヒドロキシプロピルセルロースを含むことを特徴とする冷菓用安定剤。
【請求項2】
請求項1に記載の冷菓用安定剤を含む冷菓。
・・・・・
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な冷菓用安定剤及び当該冷菓用安定剤を含む冷菓に関する。」

記載1b「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、新規な冷菓用安定剤及び、起泡性(オーバーラン性)が向上し、また、保型性や離水抑制効果に優れ、軽く、口溶けの良好な冷菓を提供することを目的とする。
・・・・・
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、冷菓に含有させる安定剤に特に注目して鋭意研究を重ねていたところ、冷菓用安定剤としてヒドロキシプロピルセルロースを含むことにより、起泡性(オーバーラン性)が向上し、また、保型性や離水抑制効果に優れる冷菓が調製できることが判った。更には、ヒドロキシプロピルセルロース及び他の冷菓用安定剤を併用することにより、軽く、口溶けの良好な泡雪様の食感を有する冷菓となることを見いだした。
・・・・・
【0025】
なお、本発明の冷菓は、含まれる可溶性固形分が、1?60重量%、好ましくは25?40重量%の範囲に設定されていることが好ましい。かかる可溶性固形分の成分としては、通常冷菓に使用される水溶性の固形分であれば特に制限はないが、通常の冷菓と同様の構成をとることができる。すなわち、前述の冷菓用安定剤以外に、本発明の効果を奏する限り、水、油脂、タンパク質、甘味料、無脂乳固形分、香料、色素、乳化剤、酸化防止剤等より選択された添加材料を、所定の割合で混合させ溶融したものが用いることができる。」

記載1c「【実施例】
【0031】
以下、本発明の内容を以下の実施例、比較例等を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。なお、文中、「HPC」はヒドロキシプロピルセルロースを、「部」は「重量部」とし、「*」は三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製、「※」は三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の登録商標であることを示す。
【0032】
実験例1:シャーベット:起泡性(オーバーラン性)テスト
容器に、果糖ブドウ液糖、水あめ及び交換水を計量し、それらを攪拌しながら、予め混合した砂糖および安定剤をダマにならないように注意して添加して加熱攪拌し、80℃に達したら、そのまま10分間攪拌溶解を行った。この溶液を10℃以下までゆっくり攪拌冷却し、果汁、クエン酸溶液、香料を添加して、全量補正後、フリージング(フリーザー;富繁産業(株)製、5Lバッチ式フリーザー、ダッシャー回転数:280rpm、ミックス量2リットル)を行い、-40℃で硬化してシャーベットを調製した。
【0033】
オーバーラン性について、フリージング時のオーバーラン(%)を経時的に測定した。
結果を表2および図1に示す。
・・・・・
【0035】
注1)HPC(Klucel EF;ハーキュリーズ社製;2%水溶液の粘度が1?20mPa・s)
注2)HPC(Klucel GF;ハーキュリーズ社製;2%水溶液の粘度が200?300mPa・s)
・・・・・
【0038】
実験例2:シャーベット:食感の評価
下記の表3に掲げる処方で、実験例1と同様の方法でシャーベットを調製した。
【0039】



イ 刊行物2には、以下の記載2a?2bがある。
記載2a「【背景技術】
・・・・・
【0005】
ヘスペリジン(Hesperidin)は、温州みかんや八朔、ダイダイなどの果皮及び薄皮に多く含まれるフラボノイドでポリフェノールの一種である。漢方の陳皮の主成分である。ビタミンPと呼ばれるものの一部で毛細血管を強化し、血管透過性を抑える働きがある。」

記載2b「【0022】
ヘスペリジンは柑橘類等の果皮などに含まれるポリフェノールの一種で、ビタミンPとも呼ばれるビタミン様物質です。・・・
・・・・・
【0023】
ヘスペリジンはみかん、レモン、グレープフルーツなど柑橘類等の果皮・果汁・種子、アンズ、さくらんぼなどに多く含有される。」

ウ 刊行物3には、以下の記載3aがある。
記載3a「【0015】
・・柑橘類の中ではペクチン(水溶性植物繊維)と有機酸の含有量が多い・・。」

エ 刊行物4には、以下の記載4aがある。
記載4a「

・・・・・

・・・・・ 」

オ 令和1年7月11日付け意見書(特許権者)に添付して提出された乙第1号証:特開2006-238732号公報(以下「乙1」という。)には、以下の記載乙1aがある。
記載乙1a「【0013】
本発明に係る冷菓の製造方法である・・フリージングまでの一般的な冷菓の製造方法は・・フリージング(高速攪拌しながら-2?-8℃に急冷する事で冷菓ミックスに気泡を取り込む(オーバーランを出す)工程)の工程・・・
【0014】
本発明で言う冷菓は、例えば・・シャーベット・・なども包含する。」

カ 令和1年7月11日付け意見書(特許権者)に添付して提出された乙第2号証:特開2004-141082号公報(以下「乙2」という。)には、以下の記載乙2aがある。
記載乙2a「【0002】
【従来の技術】
シャーベットは、アイスクリーム類より淡白でフレッシュ感や爽やか感が賞味されるアイスクリーム類と並ぶ代表的な冷菓である。
上記のような冷菓では、ミックスを攪拌しながら含気させるフリージング工程において、ミックス中の水分を微細な氷結晶にすると同時に空気が気泡として取り込まれ、「オーバーラン」により表現される空気の量がこれらの冷菓の組織や食感を形成する上で極めて重要な因子となっている。」

キ 令和1年7月11日付け意見書(特許権者)に添付して提出された乙第3号証:特開2000-316481号公報(以下「乙3」という。)には、以下の記載乙3aがある。
記載乙3a「【0002】
【従来の技術】・・アイスクリームフリーザーと呼ばれる専用の機械を使用して、アイスクリームフリーザー中の二重管の氷管中に導入されたアイスクリームミックスを冷媒により冷却、凍結せしめつつ攪拌、混練を同時に行う(フリージング)こと・・」

(2)刊行物1に記載された発明

ア 刊行物1の上記記載1a?1c(特に、記載1cにおける表3の実施例3についての記載)から、刊行物1には、
「容器に、果糖ブドウ液糖、水あめ及び交換水を計量し、それらを攪拌しながら、予め混合した砂糖および安定剤をダマにならないように注意して添加して加熱攪拌し、80℃に達したら、そのまま10分間攪拌溶解を行」い、「この溶液を10℃以下までゆっくり攪拌冷却し、果汁、クエン酸溶液、香料を添加して、全量補正後、フリージング(フリーザー;富繁産業(株)製、5Lバッチ式フリーザー、ダッシャー回転数:280rpm、ミックス量2リットル)を行い、-40℃で硬化してシャーベットを調製」する方法により得られる、「果糖ブドウ糖液糖10重量部、水飴8重量部、砂糖6.5重量部、5倍濃縮柑橘果汁5重量部、クエン酸(結晶)0.3重量部、香料(オレンジエッセンス51237(N)三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)0.1重量部、色素(カロチンベースNO.80-SV三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)0.05重量部、HPC(Klucel GF;ハーキュリーズ社製)0.025重量部、タマリンドシードガム0.05重量部、ローカストビーンガム0.05重量部、残部は水にて全量100重量部」の処方を有するシャーベットの調製方法の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

イ また、刊行物1の上記記載1a?1c(特に、記載1cにおける表3の実施例5についての記載)から、刊行物1には、
「容器に、果糖ブドウ液糖、水あめ及び交換水を計量し、それらを攪拌しながら、予め混合した砂糖および安定剤をダマにならないように注意して添加して加熱攪拌し、80℃に達したら、そのまま10分間攪拌溶解を行」い、「この溶液を10℃以下までゆっくり攪拌冷却し、果汁、クエン酸溶液、香料を添加して、全量補正後、フリージング(フリーザー;富繁産業(株)製、5Lバッチ式フリーザー、ダッシャー回転数:280rpm、ミックス量2リットル)を行い、-40℃で硬化してシャーベットを調製」する方法により得られる、「果糖ブドウ糖液糖10重量部、水飴8重量部、砂糖6.5重量部、5倍濃縮柑橘果汁5重量部、クエン酸(結晶)0.3重量部、香料(オレンジエッセンス51237(N)三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)0.1重量部、色素(カロチンベースNO.80-SV三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)0.05重量部、HPC(Klucel GF;ハーキュリーズ社製)0.025重量部、タマリンドシードガム0.05重量部、ペクチン0.05重量部、残部は水にて全量100重量部」の処方を有するシャーベットの調製方法の発明(以下「引用発明2」という。)も記載されていると認められる。

(3)本件発明5について

ア 引用発明1との対比・判断

(ア)引用発明1との対比

a 引用発明1における処方には、「色素(カロチンベースNO.80-SV三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)」並びに「タマリンドシードガム」及び「ローカストビーンガム」が含まれ、これらが引用発明1におけるフリージング前までに共に水に溶解されることは技術常識から明らかであるので、引用発明1においても、本件発明5と同様に、「着色された水溶液の調製」及び「前記水溶液の調製は、色素を、タマリンドシードガム、グァーガム、及びローカストビーンガムから選ばれる1種または2種以上の多糖類と共に水に溶解すること」が行われていると認められる。

b 引用発明1においては、「全量補正後、フリージング(フリーザー;富繁産業(株)製、5Lバッチ式フリーザー、ダッシャー回転数:280rpm、ミックス量2リットル)を行」っている。
この「フリージング」操作について、一般に、シャーベットの製造方法において、「フリージング」とは、原料溶液の凍結と攪拌を同時に行う操作であると認められる(記載乙1a、記載乙2a、記載乙3a)。
それ故、引用発明1における「フリージング(・・)を行」う操作は、原料溶液の凍結と攪拌を同時に行う操作といえる。
そして、刊行物1の上記記載1cに、「起泡性(オーバーラン性)テスト」(【0032】)及び「オーバーラン性について、フリージング時のオーバーラン(%)を経時的に測定した」(【0033】)とあることから、引用発明1の「フリージング(・・)を行」う操作における原料溶液の攪拌によって、原料溶液の泡立ちが惹起され起泡が生じていると認められる。
そうすると、引用発明1における「フリージング(・・)を行」う操作における、原料溶液の攪拌は、本件発明5における「調製された水溶液の泡立ちを惹起する操作」に相当する。

c 一般に、「フリージング」は攪拌を経た水溶液の凍結を含むものと当業界では認識されているから、引用発明1における「フリージング(・・)を行」うことは、攪拌を経た原料溶液を凍結することと同様と認識することができる。
そうすると、引用発明1における「フリージング(・・)を行」うことは、本件発明5における「該操作を経た水溶液の凍結を含む」にも相当する。

d 引用発明1における「シャーベットの調製」は、本件発明5における「氷菓の製造」に相当する。

そうすると、本件発明5と引用発明1とは、
「着色された水溶液の調製、及び調製された水溶液の泡立ちを惹起する操作、及び該操作を経た水溶液の凍結を含む、氷菓の製造方法であって、
前記水溶液の調製は、色素を、タマリンドシードガム、グァーガム、及びローカストビーンガムから選ばれる1種または2種以上の多糖類と共に水に溶解することを特徴とする、氷菓の製造方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1-1:前記水溶液が、本件発明5では、タンパク質、ポリフェノール、及び食物繊維から選ばれる1種または2種以上を含むのに対し、引用発明1では、タンパク質、ポリフェノール又は食物繊維を含むのか明らかでない点

相違点1-2:調製された水溶液の泡立ちを惹起する操作が、本件発明5では、「(凍結及び攪拌を同時に行う操作を除く)」ものであるのに対し、引用発明1では、凍結及び攪拌を同時に行う操作である点

(イ)判断
事案に鑑み、相違点1-2から検討する。
前記(ア)bで述べたように、一般に、シャーベットの製造方法において、フリージングとは、原料溶液の凍結と攪拌を同時に行う操作と認められる(記載乙1a、記載乙2a、記載乙3a)から、引用発明1において、原料溶液にフリージングを行うことは、原料溶液の凍結と攪拌を同時に行う操作といえる。
そして、引用発明1の「フリージング(・・)を行」う操作(すなわち、原料溶液の凍結と攪拌を同時に行う操作)における、原料溶液の攪拌によって、原料溶液の泡立ちが惹起され起泡が生じていると認められ、この攪拌が、調製された水溶液の泡立ちを惹起する操作といえるものである。
そうすると、引用発明1のこの調製された水溶液の泡立ちを惹起する操作は、原料溶液の凍結と攪拌を同時に行う操作といえる。

しかしながら、本件発明5においては、調製された水溶液の泡立ちを惹起する操作が、「(凍結及び攪拌を同時に行う操作を除く)」ものである。
そうすると、相違点1-2は実質的な相違点である。

したがって、相違点1-2は実質的な相違点であるから、相違点1-1について検討するまでもなく、本件発明5は、引用発明1であるとはいえない。

イ 引用発明2との対比・判断

(ア)引用発明2との対比

a 引用発明2における処方には、「色素(カロチンベースNO.80-SV三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)」及び「タマリンドシードガム」が含まれ、これらが引用発明2におけるフリージング前までに共に水に溶解されることは技術常識から明らかであるので、引用発明2においても、本件発明5と同様に、「着色された水溶液の調製」及び「前記水溶液の調製は、色素を、タマリンドシードガム、グァーガム、及びローカストビーンガムから選ばれる1種または2種以上の多糖類と共に水に溶解すること」が行われていると認められる。

b 引用発明2においては、「全量補正後、フリージング(フリーザー;富繁産業(株)製、5Lバッチ式フリーザー、ダッシャー回転数:280rpm、ミックス量2リットル)を行」っており、これは引用発明1と同じである。
そうすると、前記ア(ア)bで述べたように、引用発明2における「フリージング(・・)を行」う操作における、原料溶液の攪拌は、本件発明5における「調製された水溶液の泡立ちを惹起する操作」に相当する。

c 引用発明2における「フリージング(・・)を行」うことは、前記ア(ア)cで述べたように、本件発明5における「該操作を経た水溶液の凍結を含む」にも相当する。

d 引用発明2における「シャーベットの調製」は、本件発明5における「氷菓の製造」に相当する。

そうすると、本件発明5と引用発明2とは、
「着色された水溶液の調製、及び調製された水溶液の泡立ちを惹起する操作、及び該操作を経た水溶液の凍結を含む、氷菓の製造方法であって、
前記水溶液の調製は、色素を、タマリンドシードガム、グァーガム、及びローカストビーンガムから選ばれる1種または2種以上の多糖類と共に水に溶解することを特徴とする、氷菓の製造方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点2-1:前記水溶液が、本件発明5では、タンパク質、ポリフェノール、及び食物繊維から選ばれる1種または2種以上を含むのに対し、引用発明2では、タンパク質、ポリフェノール又は食物繊維を含むのか明らかでない点

相違点2-2:調製された水溶液の泡立ちを惹起する操作が、本件発明5では、「(凍結及び攪拌を同時に行う操作を除く)」ものであるのに対し、引用発明2では、凍結及び攪拌を同時に行う操作である点

(イ)判断
事案に鑑み、相違点2-2から検討する。
相違点2-2は、前記ア(ア)で述べた相違点1-2と同じである。
そうすると、前記ア(イ)で述べたように、相違点2-2は実質的な相違点である。
したがって、相違点2-1について検討するまでもなく、本件発明5は、引用発明2であるとはいえない。

ウ 令和1年9月6日付け意見書に記載の特許異議申立人の主張について

(ア)特許異議申立人は、当該意見書2頁「(2)異議申立人の意見の内容 1)訂正後の請求項5?7に係る発明の新規性について」において、乙1の記載「【0005】・・フリージング後、減圧して凍結するなどして、フリージング時の雰囲気圧と比べて凍結時における雰囲気圧を25%以上減じることにより・・」、「【0010】なお、本発明ではフリージング等の含気処理を行う・・」及び「【0012】なお、本発明ではフリージング時の雰囲気圧より減圧した状態で凍結するが、凍結工程は、-38?-40℃にて急速凍結を行う等、冷菓の製造方法に一般的に使用される凍結方法を採ればよい。」から、フリージングは凍結とは区別される含気処理操作であることが理解できること、さらに、刊行物1(甲3)の記載「【0032】・・この溶液を10℃以下までゆっくり攪拌冷却し、果汁、クエン酸溶液、香料を添加して、全量補正後、フリージング・・を行い、-40℃で硬化してシャーベットを調製した」より、引用発明1及び2においても、フリージングと凍結(-40℃で硬化)は区別されていることが認められ、加えて、溶液を10℃以下まで攪拌冷却したのち、全量補正をしてからフリージングを行っていることから、フリージング当初の溶液は氷点以上であり、攪拌されていたとしても凍結が起こっていない蓋然性が高いこと、それ故、引用発明1及び2の「フリージング」は、「凍結及び攪拌を同時に行う操作」とはいえず、引用発明1及び2は、凍結前に攪拌のみが行われている状態が存在する以上、本件発明5?7は、刊行物1(甲3)に記載された発明と実質的に相違しない旨、主張する。

(イ)しかしながら、前記ア(ア)bに記載したように、記載乙1a、記載乙2a及び記載乙3aより、一般に、シャーベットの製造方法において、「フリージング」とは、原料溶液の凍結と攪拌を同時に行う操作であると認められ、それを裏付けるように、食品事典にも「しゃーべっと[Sherbet]果汁に水を加えて<アイスクリーム>のように凍らせたものをいう.・・[日本のシャーベット]アメリカ風のもので,その一般的なものは果汁(メロン,アンズ,イチゴ,モモ,ミカンなど)に適当に水を加え,これに香料エッセンス,ゼラチン,レモン汁またはクエン酸,アイスミックスを少量ずつ加え,これをアイスクリームと同様に攪拌しつつ凍らせる(オーバーラン35?50%).・・」[桜井芳人編、「総合食品事典(第五版)」、同文書院発行、(昭和58年5月20日)、415頁「しゃーべっと」の項参照。]と記載されている。
それ故、シャーベットの製造方法において、「フリージング」とは、原料溶液の凍結と攪拌を同時に行う操作であるといえ、このことは、本出願当時、周知事項であったといえる。

乙1の上記記載は、フリージング(原料溶液の凍結と攪拌を同時に行う操作)した後に、減圧状態下で凍結のみを行うことを意味していると理解され、刊行物1(甲3)の上記記載も、フリージング(原料溶液の凍結と攪拌を同時に行う操作)を行った後に、-40℃で硬化するすなわち凍結のみを行うことを意味していると理解される。また、刊行物1(甲3)の上記記載より、引用発明1及び2において、フリージング当初の溶液は氷点以上であり、原料溶液が攪拌されていたとしても凍結が起こっていない蓋然性が仮に高いとしても、シャーベットの製造方法におけるフリージングという操作を、シャーベットの製造方法における「フリージング」という操作全体を俯瞰して理解すれば、原料溶液の凍結と攪拌を同時に行う操作であることに変わりはない。
そして、前記ア及びイで述べたとおりであるから、本件発明5は、引用発明1又は引用発明2であるとはいえない。

したがって、特許異議申立人の主張は採用できない。

エ 小括
以上のとおりであるから、本件発明5は、刊行物1に記載された発明であるとはいえない。

(4)本件発明6及び7について
本件発明6及び7は、いずれも本件発明5の全ての発明特定事項を含むものであるから、本件発明5が、刊行物1に記載された発明であるとはいえない以上、本件発明6及び7も、本件発明5と同様の理由により、刊行物1に記載された発明であるとはいえない。

(5)まとめ
したがって、本件発明5?7は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物1に記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当しない。
よって、本件発明5?7に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してなされたものではないから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものではない。

2 取消理由の理由2(特許法第36条第6項第1号)に対して

(1)特許法第36条第6項第1号の解釈について
特許法第36条第6項は、「第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し、その第1号において「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。同号は、明細書のいわゆるサポート要件を規定したものであって、特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものとされている。
以下、この観点に立って、判断する。

(2)発明の詳細な説明の記載
発明の詳細な説明には、請求項の内容の実質的な繰り返し記載の他、以下の記載がある。

ア 背景技術及び発明が解決しようとする課題に関する記載
「【0001】
本発明は、飲食品の製造において、着色された水溶液を調製する際の色素の凝集を抑制する方法に関する。また、本発明は、色素の凝集が抑制された氷菓や飲料、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
氷菓等の飲食品の分野では、風味を連想させる着色により嗜好性を高めることが行われている。
着色した氷の製造技術として、水に、着色剤及び該水を増粘させない程度の微量の安定剤を添加し、これに直接式超高温加熱装置を用いて蒸気を注入し、脱気した後、この液体を密封式ペーパーカートンにヘッドスペースのないように充填することを特徴とする着色氷の製造に適した水の製造法が知られている(特許文献1)。この技術は、凍結時に色素がまだら模様に偏り汚い氷となってしまうという問題を解決できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62-56753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、着色された氷菓の工業的生産において、氷菓の原料である着色された水溶液に強い攪拌力が加わったり、タンクへの投入時に衝撃が加わったりする際に、水溶液が泡立つことがあり、泡立った部分(泡沫部分)に色素が凝集するという問題に直面した。この色素の凝集は、特許文献1にみられるようなまだら模様の偏りとは異なり、粒状の凝集物が、泡沫部分に吸着する現象であった。
このような色素凝集は、特に飲料や氷菓等の透明度の高い商品においては、商品価値を著しく低減させる。そのため、このような食品の製造工程において色素凝集が発生した場合には、凝集部分を除去する工程が必要となり、製造効率を低下させる。
さらに、凝集部分を除去することで、色素原料のロスにつながったり、当初の色調設計と異なる薄い色調となってしまったり、或いは、製品によって色調にばらつきが生ずる等の問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、飲食品の製造において、着色された水溶液の泡沫部分への色素の凝集を抑制する技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意研究開発を行った結果、水溶液を着色する際にタマリンドシードガム、グァーガム、及びローカストビーンガムから選ばれる1種又は2種以上の多糖類を添加することで、泡沫部分に色素が凝集することを防ぐことができることを見出し、本発明を完成するに至った。」

イ 色素、多糖類、泡立ち惹起成分及び氷菓の実施の態様に関する記載
「【0016】
本発明の方法は、色素を、タマリンドシードガム、グァーガム、及びローカストビーンガムから選ばれる多糖類と共に水に溶解して着色された水溶液を調製することを特徴とする。
色素としては、特段の制限なく用いることができる。色素として、例えば、スピルリナ色素、カロテン色素、紅麹色素及びベニバナ黄色素等が挙げられる。
水溶液に対する色素の含有量は、通常の範囲で適宜設定することができるが、例えば総量で、0.001?0.5質量%を目安とすることができる。
【0017】
多糖類としては、好ましくは、タマリンドシードガム、グァーガム及びローカストビーンガムから選ばれる1種又は2種以上の多糖類を用いることができる。
水溶液に対する前記多糖類の合計濃度としては、色素の凝集の抑制効果の観点から、下限値としては、好ましくは0.0007質量%、さらに好ましくは0.001質量%、より好ましくは0.01質量%である。また、上限値としては粘度等の取り扱い性、氷菓や飲料に適用する場合の食感や冷涼感等の嗜好性を考慮すると、好ましくは0.7質量%、さらに好ましくは0.5質量%、より好ましくは0.2質量%である。・・・
・・・・・
【0018】
水溶液には、更に任意成分を添加することができる。中でも、泡立ち惹起成分として、タンパク質、ポリフェノール及び食物繊維から選ばれる1種又は2種以上を添加する形態が好ましく挙げられる。これは、タンパク質、ポリフェノール、食物繊維のような泡立ち惹起成分を添加する形態では、水溶液の泡立ちが起こりやすく、同時に泡沫部分への色素の凝集が起こりやすいためである。
タンパク質を添加する形態としては、乳タンパク質を含む乳製品を添加する場合等が挙げられる。ポリフェノールや食物繊維を添加する形態としては、果汁を添加する場合などが挙げられる。なお、これらの添加量は、所定の工業的生産において、泡立ちが起こる範囲が挙げられる。
【0019】
但し、本発明の色素凝集を抑制する効果が特に価値を有するのは、水を主成分とする透明度を有する水溶液を用いた飲食品、水を主成分とする低粘度(15℃で60cp以下)の水溶液を用いた飲食品の製造への応用である。また、本発明の色素凝集を抑制する方法によれば、飲食品の粘度を大きく変化させることなく色素凝集を抑制することが可能であることから、特に冷涼感を有する冷菓や飲料などの飲食品、特にBrixが10以下の飲食品の製造に好適である。これらの観点から、水溶液におけるタンパク質の濃度の上限値としては、0.5質量%が好ましく挙げられる。また、同様の観点から、脂質の濃度の上限値としては、0.5質量%が好ましく挙げられる。また、同様の観点から、前記必須成分である多糖類を含む全多糖類の含有量の上限値としては、0.5質量%が好ましく挙げられる。
・・・・・
【0022】
本発明の飲食品の好ましい形態としては、氷菓や飲料が挙げられる。本発明の飲食品は、少なくとも泡立ち惹起成分を含むか、泡立ち惹起工程を経て製造される。本発明の飲食品の組成としては、好ましくは以下の特徴を有する。
水を90?99質量%含む。
色素を0.001?0.5質量%、好ましくは0.001?0.3質量%含む。
タマリンドシードガム、グァーガム、及びローカストビーンガムから選ばれる1種又は2種以上の多糖類を合計で、0.0007?0.7質量%、さらに好ましくは0.001?0.5質量%、好ましくは0.01?0.2質量%含む。・・」

ウ 実施例に関する記載
「【実施例】
・・・・・
【0024】
<試験1>
以下の試験は、多糖類の添加による泡立ちにおける泡沫部分への色素の凝集の抑制効果を見るために行った。
表1に示す仕込み量(質量%)により、実施例及び比較例の着色された水溶液を調製した。
すなわち、色素以外の成分を水に溶解しながら80℃まで加温し、これを10℃以下まで冷却した後、色素を混合溶解することで水溶液を調製した。
ここで、用いたスピルリナ色素(市販品)には、微量のタンパク質が含まれている。
また、各多糖類は、市販品を用いた。なお、グァーガム/タマリンドシードガム混合品は、グァーガム25%/タマリンドシードガム75%の混合品である。
調製した各水溶液を、HOMOMIXER MARKII Model2.5を用いて2分間攪拌した。攪拌操作後、液体の状態、泡立ちの程度、及び泡立ちが見られる場合には泡沫部分の色素凝集の程度を評価した。結果を表1に示す。
【0025】
【表1】

【0026】
比較例1の多糖類を含まない水溶液では、泡立ちは多く、泡沫部分の色素凝集も目立っていた。比較例2は、比較例1において、消泡剤であるシリコーン製剤を添加したものである。シリコーン製剤の添加により泡立ちは抑制されたが、色素凝集は抑制されなかった。
一方、実施例1?4の、グァーガム、タマリンドシードガム、ローカストビーンガムから選ばれる多糖類を含む水溶液では、泡沫部分の色素凝集が抑制された。また、液体の状態も均一であった。
【0027】
さらに、他の多糖類を用いた比較例3?7は、液体中や泡沫部分に色素の不溶物が見られた。
以上の結果から、グァーガム、タマリンドシードガム、ローカストビーンガムから選ばれる1種又は2種以上の多糖類を色素と共に水に溶解することで、泡立ちにおける泡沫部分への色素凝集を抑制できることが分かった。
また、比較例1と比較例2の結果を比較するとシリコーン製剤で泡立ちを抑制すると泡立ちは抑制されるものの、色素凝集は抑制されないことが分かる。このことから、多糖類による泡沫部分への色素凝集の抑制の効果は、泡立ちを抑制する効果と同義でないことも分かった。
【0028】
<試験2>
以下の試験は、様々な色素を用いた場合の、多糖類の添加による泡立ちにおける泡沫部分への色素の凝集の抑制効果を見るために行った。
表2に示す仕込み量(質量%)により、実施例及び比較例の着色された水溶液を、実施例1と同じ方法で調製し、評価した。
なお、本試験例では、ホエイパウダーを添加することで、泡立ちを惹起したが、実際の工業生産においては、より大きな攪拌力等が水溶液に加わるためタンパク質が存在せずとも泡立ちが惹起されることが確認されている。
【0029】
【表2】

【0030】
各実施例及び比較例の結果に示されるように、様々な色素において、泡立ちにおける泡沫部分の色素の凝集が抑制されることが確認された。
【0031】
<試験3>
以下の試験は、多糖類の添加量の好ましい範囲を評価するために行った。
表3に示す仕込み量(質量%)により、実施例及び比較例の着色された水溶液を、実施例1と同じ方法で調製し、評価した。
さらに、水溶液を凍結して氷菓を製造し、氷菓の食感を専門パネラー2名により評価した。
【0032】
【表3】

【0033】
各実施例の結果に示されるように、多糖類の広範な濃度において、泡立ちにおける泡沫部分の色素の凝集の抑制効果が発揮されることが確認された。
実施例9、実施例11、実施例13については、氷菓の食感にややとろみが感じられ、やや冷涼感が小さかった。
なお、実施例9においてタマリンドシードガムを0.2質量%とした場合、実施例11においてグァーガムを0.04質量%とした場合、実施例13においてローカストビーンガムを0.1質量%とした場合には、とろみは全く感じられなかった。
【0034】
<試験例4>
以下の試験は、ポリフェノールに起因する泡立ちにおける泡沫部分への色素の凝集の抑制効果を見るために行った。
【0035】
【表4】

【0036】
実施例と比較例の結果からわかるように、ポリフェノールを含有することに起因する泡立ちにおいても、泡沫部分への色素の凝集の抑制効果が発揮されることが確認された。これにより、本発明は、様々な泡立ちにおける泡沫部分への色素の凝集に対して有効であることが分かった。」

(3)本件発明1?10の課題について
発明の詳細な説明の段落の、「【0005】・・本発明は、飲食品の製造において、着色された水溶液の泡沫部分への色素の凝集を抑制する技術を提供することを課題とする。」(下線は当審が付与した。以下同様。)、「【0027】・・以上の結果から、グァーガム、タマリンドシードガム、ローカストビーンガムから選ばれる1種又は2種以上の多糖類を色素と共に水に溶解することで、泡立ちにおける泡沫部分への色素凝集を抑制できることが分かった。」、「【0030】各実施例及び比較例の結果に示されるように、様々な色素において、泡立ちにおける泡沫部分の色素の凝集が抑制されることが確認された。」、「【0033】各実施例の結果に示されるように、多糖類の広範な濃度において、泡立ちにおける泡沫部分の色素の凝集の抑制効果が発揮されることが確認された。」、「【0036】実施例と比較例の結果からわかるように・・本発明は、様々な泡立ちにおける泡沫部分への色素の凝集に対して有効であることが分かった。」との記載及び明細書全体の記載を参酌して、本件発明1?4が解決しようとする課題は、飲食品の製造において、着色された水溶液の泡沫部分への色素の凝集を抑制する方法を提供すること、本件発明5?7が解決しようとする課題は、氷菓の製造において、着色された水溶液の泡沫部分への色素の凝集を抑制する氷菓の製造方法を提供すること、及び、本件発明8?10が解決しようとする課題は、氷菓の製造において、着色された水溶液の泡沫部分への色素の凝集が抑制された氷菓を提供することであると認める。
そして、泡沫部分への色素の凝集とは、本件明細書の「【0004】・・氷菓の原料である着色された水溶液に強い攪拌力が加わったり・・する際に、水溶液が泡立つことがあり、泡立った部分(泡沫部分)に色素が凝集するという問題に直面した。この色素の凝集は・・まだら模様の偏りとは異なり、粒状の凝集物が、泡沫部分に吸着する現象であった」という記載より、粒状の凝集物が泡沫部分に吸着する現象と理解される。

(4)特許請求の範囲の記載
前記第3に記載したとおりである。

(5)検討

ア 発明の詳細な説明には、本件発明1?10の具体例として、以下の実施例が記載されている。

(ア)実施例1?4(【0024】?【0027】)には、タマリンドシードガム、グァーガム及びローカストビーンガムから選ばれる1種または2種以上の多糖類(各0.1質量%)、並びに、スピルリナ色素(微量のタンパク質が含まれている)を含む水溶液を調製し、調製した各水溶液を、攪拌操作後、泡沫部分の色素凝集の程度を評価したところ、実施例1?4の当該多糖類を含む水溶液では、当該多糖類が含まれていないもの又は当該多糖類以外の多糖類が含まれているもの(比較例1?7の水溶液)の「目立つ」又は液体状態に「色素の不溶物(粒状)が目立つ」ことと異なり、泡沫部分の色素凝集が「なし」であり、泡沫部分の色素凝集が抑制されたことが確認されている。

(イ)実施例5?7(【0028】?【0030】)は、様々な色素を用いた場合の、多糖類の添加による泡立ちにおける泡沫部分への色素の凝集の抑制効果を調べるために行ったものであり、タマリンドシードガム、泡立ち惹起成分としてホエイパウダー、及び、色素として紅麹色素、ベニバナ黄色素又はカロチン色素を含む水溶液を調製し、調製した各水溶液を、攪拌操作後、泡沫部分の色素凝集の程度を評価したところ、実施例6及び7の水溶液では、泡沫部分の色素凝集が「なし」で、泡沫部分の色素凝集が抑制されたことが確認され、実施例5の水溶液では、泡沫部分の色素凝集が「僅かにあり」であるが、比較例であるタマリンドシードガムを含まないもの(比較例8の水溶液)の「目立つ」と比較して、泡沫部分の色素凝集が抑制されていることが理解される。

(ウ)実施例8?13(【0031】?【0033】)は、多糖類の添加量の好ましい範囲を評価するために行ったものであり、タマリンドシードガム、グァーガム又はローカストビーンガムを0.001?0.5質量%、及び、スピルリナ色素(微量のタンパク質が含まれている)を含む水溶液を調製し、調製した各水溶液を、攪拌操作後、泡沫部分の色素凝集の程度を評価したところ、実施例8、9、11及び13の水溶液では、泡沫部分の色素凝集が「なし」で、泡沫部分の色素凝集が抑制されたことが確認され、実施例10の水溶液では、泡沫部分の色素凝集が「僅かにあり」だが、グァーガムを含まない以外ほぼ同じもの(比較例2の水溶液)の「目立つ」と比較し、泡沫部分の色素凝集が抑制されていることが理解される。
実施例12の水溶液では、泡沫部分の色素凝集が「色ムラが出る」という評価結果である。色ムラは、前記(3)で指摘した本件明細書の「【0004】・・氷菓の原料である着色された水溶液に強い攪拌力が加わったり・・する際に、水溶液が泡立つことがあり、泡立った部分(泡沫部分)に色素が凝集するという問題に直面した。この色素の凝集は・・まだら模様の偏りとは異なり、粒状の凝集物が、泡沫部分に吸着する現象であった」いう記載より、まだら模様の偏りのことであると理解され、粒状の凝集物が泡沫部分に吸着する現象である、泡沫部分への色素の凝集とは異なると理解される。
それ故、実施例12の「色ムラが出る」という評価結果は、まだら模様の偏りが出たことと理解され、泡沫部分への色素の凝集とは異なるものと当業者は理解するといえる。

(エ)実施例14(【0034】?【0036】)は、ポリフェノールに起因する泡立ちにおける泡沫部分への色素の凝集の抑制効果を見るために行ったものであり、ポリフェノール(泡立ち惹起成分)、タマリンドシードガム及びカロチン色素を含む水溶液を調製し、調製した水溶液を、攪拌操作後、泡沫部分の色素凝集の程度を評価したところ、泡沫部分の色素凝集が「なし」であり、多糖類であるタマリンドシードガムが含まれていないもの(比較例15の水溶液)と異なり、泡沫部分での色素凝集が抑制されたことが確認されている。

イ 発明の詳細な説明には、一般的な実施の態様の記載として、「【0016】・・色素として・・スピルリナ色素、カロテン色素、紅麹色素及びベニバナ黄色素等が挙げられる。水溶液に対する色素の含有量は、通常の範囲で適宜設定することができるが、例えば総量で、0.001?0.5質量%を目安とすることができる」、「【0017】多糖類としては、好ましくは、タマリンドシードガム、グァーガム及びローカストビーンガムから選ばれる1種又は2種以上の多糖類を用いることができる。水溶液に対する前記多糖類の合計濃度としては、色素の凝集の抑制効果の観点から、下限値としては、好ましくは0.0007質量%・・である。また、上限値としては粘度等の取り扱い性、氷菓や飲料に適用する場合の食感や冷涼感等の嗜好性を考慮すると、好ましくは0.7質量%・・である。」、「【0018】・・泡立ち惹起成分として、タンパク質、ポリフェノール及び食物繊維から選ばれる1種又は2種以上を添加する形態が好ましく挙げられる・・【0019】但し、本発明の色素凝集を抑制する効果が特に価値を有するのは、水を主成分とする透明度を有する水溶液を用いた飲食品、水を主成分とする低粘度(15℃で60cp以下)の水溶液を用いた飲食品の製造への応用である。また、本発明の色素凝集を抑制する方法によれば、飲食品の粘度を大きく変化させることなく色素凝集を抑制することが可能であることから、特に冷涼感を有する冷菓や飲料などの飲食品、特にBrixが10以下の飲食品の製造に好適である。これらの観点から、水溶液におけるタンパク質の濃度の上限値としては、0.5質量%が好ましく挙げられる。また、同様の観点から、脂質の濃度の上限値としては、0.5質量%が好ましく挙げられる。」及び「【0022】本発明の飲食品の好ましい形態としては、氷菓や飲料が挙げられる。本発明の飲食品は、少なくとも泡立ち惹起成分を含むか、泡立ち惹起工程を経て製造される。本発明の飲食品の組成としては、好ましくは以下の特徴を有する。水を90?99質量%含む。色素を0.001?0.5質量%、・・タマリンドシードガム、グァーガム、及びローカストビーンガムから選ばれる1種又は2種以上の多糖類を合計で、0.0007?0.7質量%・・含む」と記載されている。
当該実施の態様の記載を裏付けるように、実施例1?14(【0024】?【0036】)には、前記アで述べたように、様々な実施例が行われ、着色された水溶液の泡沫部分への色素の凝集を抑制する方法、該泡沫部分への色素の凝集が抑制された氷菓の製造方法及び該製造方法により氷菓を得たことが客観的な評価を伴って記載されている。

ウ そうすると、色素、多糖類、泡立ち惹起成分及び氷菓についての実施の態様の上記記載及び実施例の上記記載に基づき、本件明細書の記載に接した当業者であれば、飲食品の製造において、着色された水溶液の泡沫部分への色素の凝集を抑制する方法、氷菓の製造において、着色された水溶液の泡沫部分への色素の凝集を抑制する氷菓の製造方法、及び、氷菓の製造において、着色された水溶液の泡沫部分への色素の凝集が抑制された氷菓をそれぞれ提供し得ると理解できるといえ、本件発明1?10の前記課題を解決し得ると認識できるといえる。

したがって、本件発明1?10は、本件発明1?10の前記課題を解決できるといえ、発明の詳細な説明に記載された発明であるといえる。

エ 令和1年9月6日付け意見書に記載の特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、当該意見書9頁「2)理由2(サポート要件)について」において、実施例12の「色ムラが出る」との評価結果につき、これは「粒状の凝集物ではない」との特許権者の主張に対し、泡沫部分の色素凝集は粒状の凝集物に限定されないこと、
色ムラが「色の調子や濃淡に不揃いが生じていること」と解しても、そのような色の調子や濃淡に不揃いが生じれば、色素凝集が「目立つ」と捉えることもでき、比較例1、2の「目立つ」よりも泡沫部分の色素凝集の程度が少ないことを表すとは当業者は認識できない、それ故、そのような実施例を含む本件発明1?10が、本件発明1?10の課題を解決できると理解することはできない旨、主張する。

しかしながら、前記ア(ウ)で述べたように、実施例12の「色ムラが出る」という評価結果は、まだら模様の偏りが出たことと理解され、粒状の凝集物が泡沫部分に吸着する現象である、泡沫部分への色素の凝集とは異なるものと当業者は理解するといえる。
そうすると、実施例12の「色ムラが出る」という評価結果より、本件発明1?10の課題を解決し得ないとはいえない。
したがって、特許異議申立人の主張は採用できない。

(6)まとめ
したがって、発明の詳細な説明には、本件発明1?10が記載されているといえ、特許法第36条第6項第1号に適合しないということはできない。
よって、本件発明1?10に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではないから、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものではない。

II 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について

1 特許法第29条第1項第3号及び同条第2項について

(1)刊行物の記載について

ア 甲1
甲1a「【請求項1】色素及び蛋白質若しくはその分解物を含有する酸性食品であって、ペクチン、大豆食物繊維、高分子多糖類及びカルボキシメチルセルロースナトリウムよりなる群から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする蛋白質含有酸性食品。」

甲1b「【発明が解決しようとする課題】しかしながら、本発明者らは研究を重ねていく過程で、蛋白質含有食品の場合、安定化剤を使用しなくとも蛋白質を安定的に可溶化できるpH4以下の酸性領域で、色素を併用すると色素が不安定となり凝集若しくは沈殿が生じるという問題が生じることを見出した。本発明は、かかる蛋白質含有酸性食品に伴う問題を解決することを目的とするものであり、具体的には、蛋白質含有酸性食品において、色素の可溶性及び分散性を高めることによって色素の沈殿を防止する方法を提供することを目的とするものである。また、本発明は、酸性領域において、色素を安定に可溶化してなる蛋白質含有食品を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意研究を重ねていたところ、ペクチン、大豆食物繊維またはカルボキシメチルセルロースナトリウムといった特定の成分を安定化剤として食品に配合することによって、酸性領域、特にpH4以下といった比較的高い酸性域にある蛋白質含有食品であっても、その製造ないしは保存時に、色素を凝集ないしは沈殿させることなく安定に可溶化できることを見いだした。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。」(1欄36行?2欄7行)

甲1c「本発明の食品は、これらの蛋白質若しくはその分解物を含有するものであればよく、その配合割合を特に制限するものではないが、通常0.001?1重量%、好ましくは0.01?0.5重量%、より好ましくは0.01?0.1重量%の範囲を挙げることができる。・・
・・・・・
これらの安定化剤の蛋白質含有酸性食品に対する配合割合は、食品に含まれる蛋白質の種類や量、並びに色素の種類や量などによって異なり、一概に規定することはできないが、ペクチンの場合は通常0.001?1重量%、好ましくは0.005?0.1重量%、より好ましくは0.01?0.05重量%を;大豆食物繊維の場合は通常0.001?1重量%、好ましくは0.005?0.2重量%、より好ましくは0.01?0.1重量%を;またカルボキシメチルセルロースの場合は通常0.001?1重量%、好ましくは0.005?0.2重量%、より好ましくは0.01?0.1重量%を;さらに高分子多糖類の場合は通常0.001?1重量%、好ましくは0.005?0.2重量%、より好ましくは0.01?0.1重量%を例示することができる。」(2欄33?38行、4欄4?16行)

甲1d「【実施例】以下、本発明の内容を以下の実施例及び比較例を用いて具体的に説明する。・・なお、下記に記載する処方の単位は特に言及しない限り重量%を意味するものとする。
・・・・・
実施例23?27 氷菓
下記の処方に従って、5種類の氷菓(実施例23?27)を調製した。具体的には、クエン酸、色素及び香料以外の成分を水に溶解し、80℃で10分間撹拌加熱し、これを10℃以下に冷却し、次いでこれに残りのクエン酸、色素及び香料を添加配合して、容器に充填し、冷却固化して氷菓を調製した(pH3.0)。なお、色素及び香料はいずれも三栄源エフ・エフ・アイ(株)製のものを使用した。
<処方>
グラニュー糖 10.00
水飴 6.25
果糖ブドウ糖液糖 5.00
サンナイスYK-500 0.20
(安定剤:三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)
クエン酸 0.10
コラーゲン 0.01
ペクチン 0.01
色素 表4参照
香料 表4参照
水 残 部
合 計 100.00
【表4】

これら実施例23?27の氷菓は、調製時並びに冷蔵?室温における長期保存によっても色素の凝集や沈殿が認められなかった。このことから本発明によれば蛋白質含有酸性条件下でも色素を安定して可溶化させることができ、均一な色調を有する氷菓を調製できることが示された。なお、実施例1?27で使用されるペクチンに代えて、大豆食物繊維(SM-700、三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、またはアラビアガムをそれぞれ使用して同様に清涼飲料、糖衣製菓、ゼリー及び氷菓を調製した。これらはいずれも調製時及び保存に際して濁りや沈殿が認められず、このことから色素が安定して可溶化していることが示された。
【発明の効果】本発明によれば、酸性領域、特にpH4以下の酸性領域にありながらも、色素の凝集や沈殿を生じることなく、色素が安定に可溶化してなる蛋白質含有食品が提供できる。」(4欄37?41行、7欄35行?10欄末行)

イ 甲2
甲2a「【請求項1】寒天を含有することを特徴とする不溶性固形食品入り冷菓。」

甲2b「【0024】実施例3:抹茶アイスキャンデーの調製
水と牛乳をあわせて約50℃で脱脂粉乳、砂糖、天然抹茶、安定剤及び乳化剤を添加、混合後、90℃10分間攪拌溶解を行い、色素を加えて水にて全量補正を行った。これをホモジナイザーにより均質化を行い(乳化条件 1.47×107Pa)、香料を加えて速やかに5℃まで冷却後、あずきつぶあんを混合し、型に入れ冷凍して、抹茶が均一に分散した抹茶アイスキャンデーを調製した。
【0025】



ウ 甲4
甲4a「【請求項7】水系組成物中におけるカロテノイド色素の分散安定化方法において、カロテノイド色素と共に、大豆抽出繊維を有効成分とする分散安定剤と、さらに必要に応じてトマト搾汁液を、水系組成物に添加することを特徴とする水系組成物中におけるカロテノイド色素の分散安定化方法。」

甲4b「【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記観点からなされたものであり、各種水系組成物に、広い温度域、特に低温域においても優れた分散安定性をもって配合することが可能な水分散性カロテノイド色素製剤、及び広い温度域においてその分散安定性を維持しながらカロテノイド色素を含有するカロテノイド色素含有水系組成物、並びに水系組成物中においてカロテノイド色素を広い温度域で分散安定化させる方法を提供することを課題とする。
・・・・・
【0021】大豆抽出繊維は、単独で分散安定剤として使用することができ、また、大豆抽出繊維以外の水溶性ヘミセルロース、さらに他の既存の分散安定剤と併用することもできる。併用可能な大豆抽出繊維以外の水溶性ヘミセルロースとして具体的には、油糧種子、例えばパーム、ヤシ、コーン、綿実などの油脂やタンパク質を除いた殻、或いは穀類、例えば米、小麦などの澱粉等を除いた粕等を原料として、上記大豆抽出繊維を得るのと同様の方法により得られる水溶性ヘミセルロース等を挙げることができる。
【0022】また併用可能な他の既存の分散安定剤としては、単分子分散安定剤として、脂肪酸石鹸に代表される各種アニオン界面活性剤、4級アンモニウム塩等のカチオン界面活性剤、グリセリン脂肪酸エステル、シュガーエステル等の非イオン界面活性剤、レシチンのような両性界面活性剤等が挙げられる。また、高分子分散安定剤として、天然系分散安定剤、例えば布海苔、寒天、カラギーナン、ファーセレラン、タマリンド種子多糖類、タラガム、カラヤガム、ペクチン、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、トラガントガム、グワーガム、ローカストビーンガム、プルラン、ジェランガム、アラビアガム、ゼラチン、ホエー等のアルブミン、カゼインナトリウム、各種澱粉等が挙げられる。また、半合成糊剤として、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸プロピレングリコールエステル及び可溶性澱粉に代表される加工澱粉等が例示でき、合成糊剤としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム等が例示できる。」

(2)刊行物に記載された発明

ア 甲1に記載された発明

甲1の甲1a?甲1d(特に、甲1dにおける表4の実施例25及び27)の記載より、実施例25と実施例27とは、色素及び香料の種類と配合量が異なるのみであるから、甲1には、

「クエン酸、色素及び香料以外の成分を水に溶解し、80℃で10分間撹拌加熱し、これを10℃以下に冷却し、次いでこれに残りのクエン酸、色素及び香料を添加配合して、容器に充填し、冷却固化して氷菓を調製」「(pH3.0)」「なお、色素及び香料はいずれも三栄源エフ・エフ・アイ(株)製のものを使用」する方法により得られる、「グラニュー糖10.00重量%、水飴6.25重量%、果糖ブドウ糖液糖5.00重量%、サンナイスYK-500(安定剤:三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)0.20重量%、クエン酸0.10重量%、コラーゲン0.01重量%、ペクチン0.01重量%、色素としてベニバナ黄色素(サンエローNO.2A)0.03重量%又はスピルリナ色素(リナブルーA)0.07重量%、香料としてレモン香料0.1重量%又はソーダ香料0.1重量%、残部は水にて合計100.00重量%」の処方を有する氷菓の調製方法の発明(以下「甲1発明1」という。) 、

及び、当該氷菓の調製方法により調製された、
「グラニュー糖10.00重量%、水飴6.25重量%、果糖ブドウ糖液糖5.00重量%、サンナイスYK-500(安定剤:三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)0.20重量%、クエン酸0.10重量%、コラーゲン0.01重量%、ペクチン0.01重量%、色素としてベニバナ黄色素(サンエローNO.2A)0.03重量%又はスピルリナ色素(リナブルーA)0.07重量%、香料としてレモン香料0.1重量%又はソーダ香料0.1重量%、残部は水にて合計100.00重量%」の処方を有する氷菓の発明(以下「甲1発明2」という。) が記載されていると認められる。

イ 刊行物1(甲3)に記載された発明

(ア)前記I 1(2)に記載された、刊行物1(甲3)に記載された発明を再掲する。

「容器に、果糖ブドウ液糖、水あめ及び交換水を計量し、それらを攪拌しながら、予め混合した砂糖および安定剤をダマにならないように注意して添加して加熱攪拌し、80℃に達したら、そのまま10分間攪拌溶解を行」い、「この溶液を10℃以下までゆっくり攪拌冷却し、果汁、クエン酸溶液、香料を添加して、全量補正後、フリージング(フリーザー;富繁産業(株)製、5Lバッチ式フリーザー、ダッシャー回転数:280rpm、ミックス量2リットル)を行い、-40℃で硬化してシャーベットを調製」する方法により得られる、「果糖ブドウ糖液糖10重量部、水飴8重量部、砂糖6.5重量部、5倍濃縮柑橘果汁5重量部、クエン酸(結晶)0.3重量部、香料(オレンジエッセンス51237(N)三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)0.1重量部、色素(カロチンベースNO.80-SV三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)0.05重量部、HPC(Klucel GF;ハーキュリーズ社製)0.025重量部、タマリンドシードガム0.05重量部、ローカストビーンガム0.05重量部、残部は水にて全量100重量部」の処方を有するシャーベットの調製方法の発明(以下「引用発明1」という。)

「容器に、果糖ブドウ液糖、水あめ及び交換水を計量し、それらを攪拌しながら、予め混合した砂糖および安定剤をダマにならないように注意して添加して加熱攪拌し、80℃に達したら、そのまま10分間攪拌溶解を行」い、「この溶液を10℃以下までゆっくり攪拌冷却し、果汁、クエン酸溶液、香料を添加して、全量補正後、フリージング(フリーザー;富繁産業(株)製、5Lバッチ式フリーザー、ダッシャー回転数:280rpm、ミックス量2リットル)を行い、-40℃で硬化してシャーベットを調製」する方法により得られる、「果糖ブドウ糖液糖10重量部、水飴8重量部、砂糖6.5重量部、5倍濃縮柑橘果汁5重量部、クエン酸(結晶)0.3重量部、香料(オレンジエッセンス51237(N)三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)0.1重量部、色素(カロチンベースNO.80-SV三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)0.05重量部、HPC(Klucel GF;ハーキュリーズ社製)0.025重量部、タマリンドシードガム0.05重量部、ペクチン0.05重量部、残部は水にて全量100重量部」の処方を有するシャーベットの調製方法の発明(以下「引用発明2」という。)。

(イ)刊行物1(甲3)には、また、引用発明1及び引用発明2のシャーベットの調製方法により調製された、以下に示すシャーベットの発明も記載されていると認められる。

「果糖ブドウ糖液糖10重量部、水飴8重量部、砂糖6.5重量部、5倍濃縮柑橘果汁5重量部、クエン酸(結晶)0.3重量部、香料(オレンジエッセンス51237(N)三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)0.1重量部、色素(カロチンベースNO.80-SV三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)0.05重量部、HPC(Klucel GF;ハーキュリーズ社製)0.025重量部、タマリンドシードガム0.05重量部、ローカストビーンガム0.05重量部、残部は水にて全量100重量部」の処方を有するシャーベットの発明(以下「引用発明1-2」という。)

「果糖ブドウ糖液糖10重量部、水飴8重量部、砂糖6.5重量部、5倍濃縮柑橘果汁5重量部、クエン酸(結晶)0.3重量部、香料(オレンジエッセンス51237(N)三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)0.1重量部、色素(カロチンベースNO.80-SV三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)0.05重量部、HPC(Klucel GF;ハーキュリーズ社製)0.025重量部、タマリンドシードガム0.05重量部、ペクチン0.05重量部、残部は水にて全量100重量部」の処方を有するシャーベットの発明(以下「引用発明2-2」という。)。

(3)甲1を主引用文献とする場合

ア 本件発明1について

(ア)甲1発明1との対比

a 甲1発明1の「色素としてベニバナ黄色素(サンエローNO.2A)0.03重量%又はスピルリナ色素(リナブルーA)0.07重量%」は、本件発明1の「色素」に相当する。

b 甲1発明1の「サンナイスYK-500(安定剤:三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)」は、甲2の「安定剤(サンナイスYK-500*;タマリンド種子多糖類80%、グァーガム20%含有)」(甲2b)との記載より、タマリンド種子多糖類80%及びグァーガム20%含有しているものであることが分かるから、本件発明1の「タマリンドシードガム、グァーガム、及びローカストビーンガムから選ばれる1種又は2種以上の多糖類」に相当する。

c 甲1発明1の「色素及び香料以外の成分を水に溶解し・・次いでこれに残りの・・色素・・を添加配合」する方法について、「色素及び香料以外の成分」には、「サンナイスYK-500(安定剤:三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)」が含まれ、前記bで述べたことより、これはタマリンドシードガム及びグァーガムの多糖類であり、この多糖類を含む「色素及び香料以外の成分」を水に溶解し、これに「色素としてベニバナ黄色素(サンエローNO.2A)0.03重量%又はスピルリナ色素(リナブルーA)0.07重量%」を添加配合し、着色した水溶液として調製されているといえる。
そうすると、甲1発明1の「色素及び香料以外の成分を水に溶解し・・次いでこれに残りの・・色素・・を添加配合」する方法は、本件発明1の「色素を、タマリンドシードガム、グァーガム、及びローカストビーンガムから選ばれる1種又は2種以上の多糖類と共に溶解して着色した水溶液を調製する」「方法」に相当する。

そうすると、本件発明1と甲1発明1とは、
「色素を、タマリンドシードガム、グァーガム、及びローカストビーンガムから選ばれる1種又は2種以上の多糖類と共に溶解して着色した水溶液を調製することを特徴とする、方法」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点A:本件発明1は、着色された水溶液の泡立ちにおける泡沫部分での色素の凝集を抑制する方法であるのに対し、甲1発明1は、そのような方法であるのか明らかでない点

(イ)判断

a 相違点Aについて

(a)甲1は、色素及び蛋白質若しくはその分解物を含有する酸性食品において、色素の可溶性及び分散性を高めることによって色素の沈殿を防止する方法を提供することを目的とするもの(甲1a、甲1b)について記載する文献であることから、甲1発明1は、処方の全成分が溶解した水溶液における色素の可溶性及び分散性を高めることによって、該水溶液全体及びそれを冷却固化して調製された氷菓全体において色素の沈殿が防止すなわち抑制されている方法であるとは理解される。
しかしながら、甲1には、着色された水溶液の泡立ちにおける泡沫部分での色素の凝集を抑制することについては、記載も示唆もない。
また、一般に、着色された水溶液において、色素の可溶性及び分散性を高めて色素の沈殿が防止されれば、着色された水溶液の泡立ちにおける泡沫部分での色素の凝集も抑制されるということが、本出願当時、技術常識であったとも認められない。
したがって、甲1発明1は、着色された水溶液の泡立ちにおける泡沫部分での色素の凝集を抑制する方法とはいえないから、前記相違点Aは、実質的な相違点といえる。

(b)甲1発明1が、着色された水溶液の泡立ちにおける泡沫部分での色素の凝集を抑制する方法となることについては、甲1に記載も示唆もなく、本出願当時、技術常識であったとも認められない。また、他に動機付けられるものもない。
したがって、甲1発明1を、着色された水溶液の泡立ちにおける泡沫部分での色素の凝集を抑制する方法とすることは、当業者といえども、容易に想到し得る技術的事項であるとはいえない。

b 本件発明1の効果について
本件発明1の効果は、本件明細書の段落【0005】?【0006】の記載及び実施例1?14(【0023】?【0036】)の記載より理解されているように、着色された水溶液の泡立ちにおける泡沫部分での色素の凝集を抑制する方法を提供できることであると認められ、甲1及び2の記載から当業者が予測し得たものとはいえない。

(ウ)したがって、本件発明1は、本出願前に頒布された甲1に記載された発明とはいえないし、また、甲1に記載された発明及び甲2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

イ 本件発明2?4について

(ア)本件発明2?4はいずれも、本件発明1の全ての発明特定事項を含むものである。
そうすると、本件発明1が、本出願前に頒布された甲1に記載された発明とはいえない以上、本件発明2?4も、同様の理由により、甲1に記載された発明とはいえない。

(イ)本件発明1が、甲1に記載された発明及び甲2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明2?4も、同様の理由により、甲1に記載された発明及び甲2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 本件発明5について

(ア)甲1発明1との対比

a 甲1発明1の「色素としてベニバナ黄色素(サンエローNO.2A)0.03重量%又はスピルリナ色素(リナブルーA)0.07重量%」は、本件発明5の「色素」に相当する。

b 甲1発明1の「サンナイスYK-500(安定剤:三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)」は、甲2の「安定剤(サンナイスYK-500*;タマリンド種子多糖類80%、グァーガム20%含有)」(甲2b)との記載より、タマリンド種子多糖類80%及びグァーガム20%含有しているものであることが分かるから、本件発明5の「タマリンドシードガム、グァーガム、及びローカストビーンガムから選ばれる1種又は2種以上の多糖類」に相当する。

c 甲1発明1の「コラーゲン」は、本件発明5の「タンパク質」に相当し、甲1発明1の「ペクチン」は、本件発明5の「食物繊維」に相当する。

d 甲1発明1の「クエン酸、色素及び香料以外の成分を水に溶解し・・次いでこれに残りの・・色素・・を添加配合」する方法について、「クエン酸、色素及び香料以外の成分」は、甲1発明1の「処方」より、「グラニュー糖・・、水飴・・、果糖ブドウ糖液糖・・、サンナイスYK-500(安定剤:三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)」「コラーゲン・・、ペクチン」「残部は水」であるから、「サンナイスYK-500(安定剤:三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)」、「コラーゲン・・、ペクチン」及び「水」が含まれており、前記b及びcで述べたことを踏まえると、タマリンドシードガム及びグァーガムの多糖類及び食物繊維類を水に溶解し、これに「色素としてベニバナ黄色素(サンエローNO.2A)0.03重量%又はスピルリナ色素(リナブルーA)0.07重量%」を添加配合して水に溶解し、着色した水溶液として調製されているといえる。
そうすると、甲1発明1の「クエン酸、色素及び香料以外の成分を水に溶解し・・次いでこれに残りの・・色素・・を添加配合」する方法は、本件発明5の「着色された水溶液の調製」、「前記水溶液が、タンパク質、ポリフェノール、及び食物繊維から選ばれる1種または2種以上を含み、前記水溶液の調製は、色素を、タマリンドシードガム、グァーガム、及びローカストビーンガムから選ばれる1種または2種以上の多糖類と共に水に溶解する」「方法」に相当する。

e 甲1発明1の「冷却固化して氷菓を調製」する方法は、処方の全成分を含む水溶液を、冷却固化すなわち凍結して氷菓を製造する方法といえるから、本件発明1の「該・・水溶液の凍結を含む、氷菓の製造方法」に相当する。

そうすると、本件発明5と甲1発明1とは、
「着色された水溶液の調製、及び該水溶液の凍結を含む、氷菓の製造方法であって、
前記水溶液が、タンパク質、ポリフェノール、及び食物繊維から選ばれる1種または2種以上を含み、
前記水溶液の調製は、色素を、タマリンドシードガム、グァーガム、及びローカストビーンガムから選ばれる1種または2種以上の多糖類と共に水に溶解することを特徴とする、氷菓の製造方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点B:氷菓の製造方法が、本件発明5では、調製された水溶液の泡立ちを惹起する操作(凍結及び攪拌を同時に行う操作を除く)を含み、凍結する水溶液が該操作を経たものであるのに対し、甲1発明1では、調製された水溶液の泡立ちを惹起する操作(凍結及び攪拌を同時に行う操作を除く)を含むのか明らかでなく、凍結する水溶液が該操作を経たものであるのか明らかでない点

(イ)判断

a 本件明細書に「【0021】・・水溶液の泡立ちを惹起する操作としては、攪拌、タンク等への投入、容器への充填等が挙げられる」と記載され、容器への充填は水溶液の泡立ちを惹起する操作の一つとして例示されている。
この点、甲1発明1には、「容器に充填」する工程が含まれており、これは本件発明5の「調製された水溶液の泡立ちを惹起する操作(凍結及び攪拌を同時に行う操作を除く)」に相当するのではないかと、一見考えられる。
しかしながら、一般に、氷菓は、表面上に泡立ち等の跡が生じているものは、製品の外観上好ましくないと考えられることから、甲1発明1において、凍結工程の前、調製された水溶液を容器に充填する際には、該水溶液を容器に泡立てて充填するというよりは、むしろ該水溶液を容器内へできるだけ泡立たないように充填するのが通常であるといえる。
また、一般に、氷菓の製造方法において、凍結工程の前、調製された水溶液を容器に充填する際、該水溶液を容器に泡立てて充填することが、本出願当時、技術常識であったとも認められない。

また、甲1は、色素及び蛋白質若しくはその分解物を含有する酸性食品において、色素の可溶性及び分散性を高めることによって色素の沈殿を防止する方法を提供することを目的とするものについて記載する文献であり、該色素の可溶性及び分散性を高める手段として、ペクチン、大豆食物繊維またはカルボキシメチルセルロースナトリウムを安定化剤として食品に配合することによって、比較的高い酸性域にある蛋白質含有食品であっても、その製造時に、色素を凝集ないしは沈殿させることなく安定に可溶化できることを見いだしたことに因るものである(甲1a、甲1b)。
このような目的及び解決手段の下、甲1には、色素及び蛋白質若しくはその分解物を含有する酸性食品の製造方法において、調製された水溶液の泡立ちを惹起する操作(凍結及び攪拌を同時に行う操作を除く)を含むことについては、記載も示唆もない。
そして、一般に、色素及び蛋白質若しくはその分解物を含有する酸性食品の製造方法において、調製された水溶液の泡立ちを惹起する操作(凍結及び攪拌を同時に行う操作を除く)を含むことが、本出願当時、技術常識であったとも認められない。

したがって、甲1発明1は、調製された水溶液の泡立ちを惹起する操作(凍結及び攪拌を同時に行う操作を除く)を含む方法とはいえず、凍結する水溶液が該操作を経たものであるともいえないから、前記相違点Bは、実質的な相違点といえる。

b 甲1発明1が、調製された水溶液の泡立ちを惹起する操作(凍結及び攪拌を同時に行う操作を除く)を含むことについては、甲1に記載も示唆もなく、本出願当時、技術常識であったとも認められない。また、他に動機付けられるものもない。
したがって、甲1発明1において、調製された水溶液の泡立ちを惹起する操作(凍結及び攪拌を同時に行う操作を除く)を含むとすること、さらに凍結する水溶液は該操作を経たものとすることは、当業者といえども、容易に想到し得る技術的事項であるとはいえないし、それにより奏される効果も、甲1及び2の記載から当業者が予測し得たものとはいえない。

(ウ)したがって、本件発明5は、本出願前に頒布された甲1に記載された発明とはいえないし、また、甲1に記載された発明及び甲2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

エ 本件発明6及び7について

(ア)本件発明6及び7はいずれも、本件発明5の全ての発明特定事項を含むものである。
そうすると、本件発明5が、本出願前に頒布された甲1に記載された発明とはいえない以上、本件発明6及び7も、同様の理由により、甲1に記載された発明とはいえない。

(イ)本件発明5が、甲1に記載された発明及び甲2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明6及び7も、同様の理由により、甲1に記載された発明及び甲2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

オ 本件発明8について

(ア)甲1発明2との対比

a 甲1発明2の「色素としてベニバナ黄色素(サンエローNO.2A)0.03重量%又はスピルリナ色素(リナブルーA)0.07重量%」は、本件発明8の「色素を0.001?0.5質量%」に相当する。

b 甲1発明2の「サンナイスYK-500(安定剤:三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)0.20重量%」は、甲2の「安定剤(サンナイスYK-500*;タマリンド種子多糖類80%、グァーガム20%含有)」(甲2b)との記載より、タマリンド種子多糖類80%及びグァーガム20%含有しているものであることが分かり、タマリンド種子多糖類及びグァーガム合計で0.20重量%であるから、本件発明8の「タマリンドシードガム、グァーガム、及びローカストビーンガムから選ばれる1種又は2種以上の多糖類を合計で0.0007?0.7質量%」に相当する。

c 甲1発明2の「コラーゲン0.01重量%」は、本件発明8の「タンパク質を0?0.5質量%」に相当する。

d 本件発明8の「泡立ち惹起成分」について、本件明細書には「【0018】・・泡立ち惹起成分として、タンパク質、ポリフェノール及び食物繊維から選ばれる1種又は2種以上・・」と記載されている。
そうすると、甲1発明2の「コラーゲン」は、タンパク質であるから、本件発明8の「泡立ち惹起成分」に相当する。

e 甲1発明2には、脂質は含まれていない、すなわち0重量%であるから、本件発明8の「脂質を0?0.5質量%」に相当する。

f 甲1発明2の「残部は水にて合計100.00重量%」について、甲1発明2における水の重量%は、78.3重量%又は78.26重量%[=100.00重量%-(グラニュー糖10.00重量%+水飴6.25重量%+果糖ブドウ糖液糖5.00重量%+サンナイスYK-500(安定剤:三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)0.20重量%+クエン酸0.10重量%+コラーゲン0.01重量%+ペクチン0.01重量%+[ベニバナ黄色素(サンエローNO.2A)0.03重量%又はスピルリナ色素(リナブルーA)0.07重量%]+(レモン香料0.1重量%又はソーダ香料0.1重量%)]である。
そうすると、本件発明8の「水を90?99質量%」と甲1発明2の「残部は水にて合計100.00重量%」とは、水を特定質量%である点で共通する。

そうすると、本件発明8と甲1発明2とは、
「水を特定質量%、脂質を0?0.5質量%、タンパク質を0?0.5質量%、色素を0.001?0.5質量%、及び泡立ち惹起成分を含む氷菓であって、
タマリンドシードガム、グァーガム、及びローカストビーンガムから選ばれる1種又は2種以上の多糖類を合計で0.0007?0.7質量%含むことを特徴とする氷菓」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点C:氷菓に含まれる水の配合割合が、本件発明8では、90?99質量%であるのに対し、甲1発明2では、78.3重量%又は78.26重量%である点

(イ)判断

甲1発明2の氷菓の処方成分の配合割合について、甲1に実施の態様として記載されているのは、「蛋白質若しくはその分解物を含有するもの」の配合割合が「通常0.001?1重量%・・の範囲」(甲1c)、及び、「安定化剤の蛋白質含有酸性食品に対する配合割合は・・ペクチンの場合は通常0.001?1重量%・・を;大豆食物繊維の場合は通常0.001?1重量%・・を;またカルボキシメチルセルロースの場合は通常0.001?1重量%・・を;さらに高分子多糖類の場合は通常0.001?1重量%・・を例示することができる」(甲1c)という記載のみであり、これらの配合割合もいずれも微量な範囲である。
それ故、これらの処方成分の配合割合を、当該実施の態様の範囲内で変化させたとしても、残部の水の配合割合に影響を与えるものではない。

他方、甲1発明2の氷菓の処方中大きな配合割合を占めている、グラニュー糖(10.00重量%)、水飴(6.25重量%)及び果糖ブドウ糖液糖(5.00重量%)について、各成分における許容される配合割合の範囲が、実施の態様等として、甲1には記載も示唆もされていない。
そして、このグラニュー糖、水飴及び果糖ブドウ糖液糖は全て糖類であり、それらの合計配合割合は21.25重量%(=グラニュー糖10.00重量%+水飴6.25重量%+果糖ブドウ糖液糖5.00重量%)で、氷菓の甘味に大きな影響を与えているものであり、その糖類の合計配合割合を、例えば1?10質量%(本件発明8の水の配合割合が90?99質量%で、それ以外の成分の合計配合割合が1?10質量%であることを念頭に置いた場合)とかなり低減することは、本出願当時の技術常識を踏まえても、通常なし得ないものと理解される。

そうすると、甲1発明2において、氷菓に含まれる水の配合割合を、78.3重量%又は78.26重量%に代えて、本件発明8において規定されるような90?99質量%と大幅に増加させる動機付けはないことから、甲1発明2において、氷菓に含まれる水の配合割合を、90?99質量%とすることは、当業者といえども容易に想到し得る技術的事項であるとはいえないし、それにより奏される効果も、甲1及び2の記載から当業者が予測し得たものとはいえない。

(ウ)したがって、本件発明8は、本出願前に頒布された甲1に記載された発明及び甲2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

カ 本件発明9について

(ア)本件発明9は、本件発明8の全ての発明特定事項を含むものである。
そうすると、本件発明8が、甲1に記載された発明及び甲2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明9も、同様の理由により、甲1に記載された発明及び甲2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

キ 本件発明10について

(ア)甲1発明2との対比

a 甲1発明2の「色素としてベニバナ黄色素(サンエローNO.2A)0.03重量%又はスピルリナ色素(リナブルーA)0.07重量%」は、本件発明10の「色素を0.001?0.5質量%」「前記色素が、スピルリナ色素、カロテン色素、紅麹色素、及びベニバナ黄色素から選ばれる1種又は2種以上である」に相当する。

b 甲1発明2の「サンナイスYK-500(安定剤:三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)0.20重量%」は、甲2の「安定剤(サンナイスYK-500*;タマリンド種子多糖類80%、グァーガム20%含有)」(甲2b)との記載より、タマリンド種子多糖類80%及びグァーガム20%含有しているものであることが分かり、タマリンド種子多糖類及びグァーガム合計で0.20重量%であるから、本件発明10の「タマリンドシードガム、グァーガム、及びローカストビーンガムから選ばれる1種又は2種以上の多糖類を合計で0.0007?0.7質量%」に相当する。

c 甲1発明2の「コラーゲン0.01重量%」は、本件発明10の「タンパク質を0?0.5質量%」に相当する。

d 甲1発明2には、脂質は含まれていない、すなわち0重量%であるから、本件発明10の「脂質を0?0.5質量%」に相当する。

e 甲1発明2の「残部は水にて合計100.00重量%」について、甲1発明2における水の重量%は、78.3重量%又は78.26重量%[=100.00重量%-(グラニュー糖10.00重量%+水飴6.25重量%+果糖ブドウ糖液糖5.00重量%+サンナイスYK-500(安定剤:三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)0.20重量%+クエン酸0.10重量%+コラーゲン0.01重量%+ペクチン0.01重量%+[ベニバナ黄色素(サンエローNO.2A)0.03重量%又はスピルリナ色素(リナブルーA)0.07重量%]+(レモン香料0.1重量%又はソーダ香料0.1重量%)]である。
そうすると、本件発明10の「水を90?99質量%」と甲1発明2の「残部は水にて合計100.00重量%」とは、水を特定質量%である点で共通する。

f 甲1発明2の「氷菓」は、ゲル状食品とは示されておらずゲル状食品とは認められないので、本件発明10の「氷菓(但し、ゲル状食品を除く)」に相当する。

そうすると、本件発明10と甲1発明2とは、
「水を特定質量%、脂質を0?0.5質量%、タンパク質を0?0.5質量%、色素を0.001?0.5質量%含む、氷菓(但し、ゲル状食品を除く)であって、
タマリンドシードガム、グァーガム、及びローカストビーンガムから選ばれる1種又は2種以上の多糖類を合計で0.0007?0.7質量%含み、
前記色素が、スピルリナ色素、カロテン色素、紅麹色素、及びベニバナ黄色素から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする、氷菓。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点D-1:氷菓に含まれる水の配合割合が、本件発明10では、90?99質量%であるのに対し、甲1発明2では、78.3重量%又は78.26重量%である点

相違点D-2:氷菓が、本件発明10では、泡立ちを惹起する操作を経て製造されるものであるのに対し、甲1発明2では、泡立ちを惹起する操作を経て製造されるものか明らかでない点

(イ)判断
相違点D-1は、前記オ(ア)に記載の相違点Cと同じであるから、前記オ(イ)で述べたとおりである。

(ウ)したがって、相違点D-2を検討するまでもなく、本件発明10は、本出願前に頒布された甲1に記載された発明及び甲2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

(4)刊行物1(甲3)を主引用文献とする場合

ア 本件発明1について

(ア)引用発明1との対比・判断

a 引用発明1との対比

引用発明1における処方には、「色素(カロチンベースNO.80-SV三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)」並びに「タマリンドシードガム」及び「ローカストビーンガム」が含まれ、これらが引用発明1におけるフリージング前までに共に水に溶解されることは技術常識から明らかであるので、引用発明1においても、本件発明1と同様に、「色素を、タマリンドシードガム、グァーガム、及びローカストビーンガムから選ばれる1種または2種以上の多糖類と共に水に溶解して着色した水溶液を調製すること」が行われていると認められる。

そうすると、本件発明1と引用発明1とは、
「色素を、タマリンドシードガム、グァーガム、及びローカストビーンガムから選ばれる1種又は2種以上の多糖類と共に溶解して着色した水溶液を調製することを特徴とする、方法」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点E:方法が、本件発明1は、着色された水溶液の泡立ちにおける泡沫部分での色素の凝集を抑制する方法であるのに対し、引用発明1では、そのような方法であるのか明らかでない点

b 判断

(a)相違点Eについて

i 刊行物1(甲3)は、新規な冷菓用安定剤及び、起泡性(オーバーラン性)が向上し、また、保型性や離水抑制効果に優れ、軽く、口溶けの良好な冷菓を提供することを目的とし、その解決手段として、冷菓用安定剤としてヒドロキシプロピルセルロースを含むことにより、起泡性(オーバーラン性)が向上し、また、保型性や離水抑制効果に優れる冷菓が調製できること、更には、ヒドロキシプロピルセルロース及び他の冷菓用安定剤を併用することにより、軽く、口溶けの良好な泡雪様の食感を有する冷菓となることを見いだしたこと(記載1b)に基づく発明について記載する文献である。

引用発明1においては、「全量補正後、フリージング(フリーザー;富繁産業(株)製、5Lバッチ式フリーザー、ダッシャー回転数:280rpm、ミックス量2リットル)を行」っており、この「フリージング」操作は、原料溶液の凍結と攪拌を同時に行う操作と認められ(記載乙1a、記載乙2a、記載乙3a)、刊行物1の上記記載1cに、「起泡性(オーバーラン性)テスト」(【0032】)及び「オーバーラン性について、フリージング時のオーバーラン(%)を経時的に測定した」(【0033】)とあることから、引用発明1の「フリージング(・・)を行」う操作における原料溶液の攪拌によって、原料溶液の泡立ちが惹起され起泡が生じていると認められる。

それ故、引用発明1の「フリージング(・・)を行」う操作における原料溶液には、ヒドロキシプロピルセルロースであるHPC (Klucel GF;ハーキュリーズ社製)及び色素(カロチンベースNO.80-SV三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)が含まれているから、
引用発明1の「フリージング(・・)を行」う操作における原料溶液(着色された水溶液)の攪拌によって惹起される起泡性(オーバーラン性)が向上し、また、保型性や離水抑制効果に優れ、軽く、口溶けの良好なシャーベットの調製方法であることは理解される。
しかしながら、刊行物1(甲3)には、着色された水溶液の泡立ちにおける泡沫部分での色素の凝集を抑制することについては、記載も示唆もない。
また、一般に、着色された水溶液において、起泡性(オーバーラン性)が向上し、また保型性や離水抑制効果が優れれば、着色された水溶液の泡立ちにおける泡沫部分での色素の凝集も抑制されるということが、本出願当時、技術常識であったとも認められない。
したがって、引用発明1は、着色された水溶液の泡立ちにおける泡沫部分での色素の凝集を抑制する方法とはいえないから、前記相違点Eは、実質的な相違点といえる。

ii 引用発明1が、着色された水溶液の泡立ちにおける泡沫部分での色素の凝集を抑制する方法となることについては、刊行物1(甲3)、甲4及び刊行物4(甲5)に記載も示唆もなく、本出願当時、技術常識であったとも認められない。また、他に動機付けられるものもない。
したがって、引用発明1を、着色された水溶液の泡立ちにおける泡沫部分での色素の凝集を抑制する方法とすることは、当業者といえども、容易に想到し得る技術的事項であるとはいえない。

(b)本件発明1の効果について
本件発明1の効果は、本件明細書の段落【0005】?【0006】の記載及び実施例1?14(【0023】?【0036】)の記載より理解されているように、着色された水溶液の泡立ちにおける泡沫部分での色素の凝集を抑制する方法を提供できることであると認められ、刊行物1(甲3)、甲4及び刊行物4(甲5)の記載から当業者が予測し得たものとはいえない。

(イ)引用発明2との対比・判断

a 引用発明2との対比

引用発明2における処方には、「色素(カロチンベースNO.80-SV三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)」並びに「タマリンドシードガム」が含まれ、これらが引用発明2におけるフリージング前までに共に水に溶解されることは技術常識から明らかであるので、引用発明2においても、本件発明1と同様に、「色素を、タマリンドシードガム、グァーガム、及びローカストビーンガムから選ばれる1種または2種以上の多糖類と共に水に溶解して着色した水溶液を調製すること」が行われていると認められる。

そうすると、本件発明1と引用発明2とは、
「色素を、タマリンドシードガム、グァーガム、及びローカストビーンガムから選ばれる1種又は2種以上の多糖類と共に溶解して着色した水溶液を調製することを特徴とする、方法」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点F:方法が、本件発明1は、着色された水溶液の泡立ちにおける泡沫部分での色素の凝集を抑制する方法であるのに対し、引用発明2では、そのような方法であるのか明らかでない点

b 判断
相違点Fは、前記(ア)aに記載の相違点Eと同じであるから、前記(ア)bで述べたとおりである。

(ウ)したがって、本件発明1は、本出願前に頒布された刊行物1(甲3)に記載された発明とはいえないし、また、刊行物1(甲3)、甲4及び刊行物4(甲5)に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

イ 本件発明2?4について

(ア)本件発明2?4はいずれも、本件発明1の全ての発明特定事項を含むものである。
そうすると、本件発明1が、本出願前に頒布された刊行物1(甲3)に記載された発明とはいえない以上、本件発明2?4も、同様の理由により、刊行物1(甲3)に記載された発明とはいえない。

(イ)本件発明1が、刊行物1(甲3)に記載された発明及び甲2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明2?4も、同様の理由により、刊行物1(甲3)に記載された発明並びに甲4及び刊行物4(甲5)に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 本件発明5について
新規性については、前記I 1(3)で既に述べたとおりである。ここでは、進歩性について、以下検討する。

(ア)引用発明1との対比・判断

a 引用発明1との対比
前記I 1(3)ア(ア)で既に述べたとおりである。一致点及び相違点を再掲する。

本件発明5と引用発明1とは、
「着色された水溶液の調製、及び調製された水溶液の泡立ちを惹起する操作、及び該操作を経た水溶液の凍結を含む、氷菓の製造方法であって、
前記水溶液の調製は、色素を、タマリンドシードガム、グァーガム、及びローカストビーンガムから選ばれる1種または2種以上の多糖類と共に水に溶解することを特徴とする、氷菓の製造方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1-1:前記水溶液が、本件発明5では、タンパク質、ポリフェノール、及び食物繊維から選ばれる1種または2種以上を含むのに対し、引用発明1では、タンパク質、ポリフェノール又は食物繊維を含むのか明らかでない点

相違点1-2:調製された水溶液の泡立ちを惹起する操作が、本件発明5では、「(凍結及び攪拌を同時に行う操作を除く)」ものであるのに対し、引用発明1では、凍結及び攪拌を同時に行う操作である点

b 判断
事案に鑑み、相違点1-2から検討する。

刊行物1(甲3)、甲4及び刊行物4(甲5)には、シャーベットの調製方法において、調製された水溶液の泡立ちを惹起する操作(凍結及び攪拌を同時に行う操作を除く)を含むことについては、記載も示唆もない。

前記I 1(3)ウ(イ)に記載したように、記載乙1a、記載乙2a及び記載乙3aより、一般に、シャーベットの製造方法において、「フリージング」とは、原料溶液の凍結と攪拌を同時に行う操作であると認められ、食品事典にも「しゃーべっと[Sherbet]果汁に水を加えて<アイスクリーム>のように凍らせたものをいう.・・[日本のシャーベット]アメリカ風のもので,その一般的なものは果汁(メロン,アンズ,イチゴ,モモ,ミカンなど)に適当に水を加え,これに香料エッセンス,ゼラチン,レモン汁またはクエン酸,アイスミックスを少量ずつ加え,これをアイスクリームと同様に攪拌しつつ凍らせる(オーバーラン35?50%).・・」[桜井芳人編、「総合食品事典(第五版)」、同文書院発行、(昭和58年5月20日)、415頁「しゃーべっと」の項参照。]と記載されているから、シャーベットの製造方法において、「フリージング」とは、原料溶液の凍結と攪拌を同時に行う操作であるといえる。

そして、当該食品事典において「しゃーべっと」の用語解説に「攪拌しつつ凍らせる」ものであることが記載されていることからも理解されるように、シャーベットの調製方法において、攪拌しつつ凍らせる「フリージング」操作は、必要な操作であると理解される。
また、一般に、シャーベットの調製方法において、攪拌しつつ凍らせる「フリージング」操作は必要な操作ではなく、攪拌と凍結を別々に行うことが、本出願当時、技術常識であったとも認められない。

そうすると、引用発明1はシャーベットの調製方法であることから、引用発明1において、「フリージング(・・)を行」う操作、すなわち、原料溶液の凍結と攪拌を同時に行う操作は、必要な操作といえ、引用発明1が、調製された水溶液の泡立ちを惹起する操作(凍結及び攪拌を同時に行う操作を除く)を含むことについては、刊行物1(甲3)、甲4及び刊行物4(甲5)に記載も示唆もなく、本出願当時、技術常識であったとも認められない。また、他に動機付けられるものもない。
したがって、引用発明1において、調製された水溶液の泡立ちを惹起する操作(凍結及び攪拌を同時に行う操作を除く)を含むとすることは、当業者といえども、容易に想到し得る技術的事項であるとはいえないし、それにより奏される効果も、刊行物1(甲3)、甲4及び刊行物4(甲5)の記載から当業者が予測し得たものとはいえない。

(イ)引用発明2との対比・判断

a 引用発明2との対比
前記I 1(3)イ(ア)で既に述べたとおりである。一致点及び相違点を再掲する。

本件発明5と引用発明2とは、
「着色された水溶液の調製、及び調製された水溶液の泡立ちを惹起する操作、及び該操作を経た水溶液の凍結を含む、氷菓の製造方法であって、
前記水溶液の調製は、色素を、タマリンドシードガム、グァーガム、及びローカストビーンガムから選ばれる1種または2種以上の多糖類と共に水に溶解することを特徴とする、氷菓の製造方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点2-1:前記水溶液が、本件発明5では、タンパク質、ポリフェノール、及び食物繊維から選ばれる1種または2種以上を含むのに対し、引用発明2では、タンパク質、ポリフェノール又は食物繊維を含むのか明らかでない点

相違点2-2:調製された水溶液の泡立ちを惹起する操作が、本件発明5では、「(凍結及び攪拌を同時に行う操作を除く)」ものであるのに対し、引用発明2では、凍結及び攪拌を同時に行う操作である点

b 判断
事案に鑑み、相違点2-2から検討する。
相違点2-2は、前記(ア)aで述べた相違点1-2と同じである。
そうすると、前記(ア)bで述べたように、引用発明2において、調製された水溶液の泡立ちを惹起する操作(凍結及び攪拌を同時に行う操作を除く)を含むとすることは、当業者といえども、容易に想到し得る技術的事項であるとはいえないし、それにより奏される効果も、刊行物1(甲3)、甲4及び刊行物4(甲5)の記載から当業者が予測し得たものとはいえない。

(ウ)したがって、相違点1-1及び相違点2-1を検討するまでもなく、本件発明5は、本出願前に頒布された刊行物1(甲3)、甲4及び刊行物4(甲5)に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

エ 本件発明6及び7について
新規性については、前記I 1(4)で既に述べたとおりである。ここでは、進歩性について、以下検討する。

本件発明6及び7はいずれも、本件発明5の全ての発明特定事項を含むものである。
そうすると、本件発明5が、刊行物1(甲3)、甲4及び刊行物4(甲5)に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明6及び7も、同様の理由により、刊行物1(甲3)に記載された発明並びに甲4及び刊行物4(甲5)に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

オ 本件発明8について

(ア)引用発明1-2との対比・判断

a 引用発明1-2との対比

(a)引用発明1-2の「色素(カロチンベースNO.80-SV三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)0.05重量部」は、本件発明8の「色素を0.001?0.5質量%」に相当する。

(b)引用発明1-2の「タマリンドシードガム0.05重量部、ローカストビーンガム0.05重量部」は合計で0.10重量%であるから、本件発明8の「タマリンドシードガム、グァーガム、及びローカストビーンガムから選ばれる1種又は2種以上の多糖類を合計で0.0007?0.7質量%」に相当する。

(c)引用発明1-2には、タンパク質は含まれていない、すなわち0重量%であるから、本件発明8の「タンパク質を0?0.5質量%」に相当する。

(d)引用発明1-2には、脂質は含まれていない、すなわち0重量%であるから、本件発明8の「脂質を0?0.5質量%」に相当する。

(e)本件発明8の「泡立ち惹起成分」について、本件明細書には「【0018】・・泡立ち惹起成分として、タンパク質、ポリフェノール及び食物繊維から選ばれる1種又は2種以上・・」と記載されている。
しかし、引用発明1-2には、タンパク質、ポリフェノール又は食物繊維が含まれているか明らかでない。

(f)引用発明1-2の「残部は水にて全量100重量部」について、引用発明1-2における水の重量部は、69.925重量部[=100重量部-(果糖ブドウ糖液糖10重量部+水飴8重量部+砂糖6.5重量部+5倍濃縮柑橘果汁5重量部+クエン酸(結晶)0.3重量部+香料(オレンジエッセンス51237(N)三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)0.1重量部+色素(カロチンベースNO.80-SV三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)0.05重量部+HPC(Klucel GF;ハーキュリーズ社製)0.025重量部+タマリンドシードガム0.05重量部+ローカストビーンガム0.05重量部)]である。
そうすると、本件発明8の「水を90?99質量%」と引用発明1-2の「残部は水にて全量100重量部」とは、水を特定質量%である点で共通する。

(g)引用発明1-2の「シャーベット」は、本件発明8の「氷菓」に相当する。

そうすると、本件発明8と引用発明1-2とは、
「水を特定質量%、脂質を0?0.5質量%、タンパク質を0?0.5質量%及び色素を0.001?0.5質量%を含む氷菓であって、
タマリンドシードガム、グァーガム、及びローカストビーンガムから選ばれる1種又は2種以上の多糖類を合計で0.0007?0.7質量%含むことを特徴とする氷菓」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点G-1:氷菓が、本件発明8では、泡立ち惹起成分を含むのに対し、引用発明1-2では、泡立ち惹起成分を含むか明らかでない点

相違点G-2:氷菓に含まれる水の配合割合が、本件発明8では、90?99質量%であるのに対し、引用発明1-2では、69.925重量部である点

b 判断
事案に鑑み、相違点G-2から検討する。

引用発明1-2の氷菓には、水以外の処方成分として30.075重量部(=果糖ブドウ糖液糖10重量部+水飴8重量部+砂糖6.5重量部+5倍濃縮柑橘果汁5重量部+クエン酸(結晶)0.3重量部+香料(オレンジエッセンス51237(N)三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)0.1重量部+色素(カロチンベースNO.80-SV三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)0.05重量部+HPC(Klucel GF;ハーキュリーズ社製)0.025重量部+タマリンドシードガム0.05重量部+ローカストビーンガム0.05重量部)含まれている。
これら水以外の処方成分の大部分は、果糖ブドウ糖液糖10重量部、水飴8重量部、砂糖6.5重量部、5倍濃縮柑橘果汁5重量部といった、氷菓の甘味や酸味に大きな影響を与えているものであり、そのような可溶性固形分の合計配合割合を、例えば1?10質量%(本件発明8の水の配合割合が90?99質量%で、それ以外の成分の合計配合割合が1?10質量%であることを念頭に置いた場合)と低減することは、氷菓の甘味や酸味に大きな影響を与えるため、本出願当時の技術常識を踏まえても、通常なし得ないものと理解される。

そうすると、引用発明1-2において、氷菓に含まれる水の配合割合を、69.925重量部に代えて、本件発明8において規定されるような90?99質量%と大幅に増加させる動機付けはないことから、引用発明1-2において、氷菓に含まれる水の配合割合を、90?99質量%とすることは、当業者といえども容易に想到し得る技術的事項であるとはいえないし、それにより奏される効果も、刊行物1(甲3)、甲4及び刊行物4(甲5)の記載から当業者が予測し得たものとはいえない。

(イ)引用発明2-2との対比・判断

a 引用発明2-2との対比

(a)引用発明2-2の「色素(カロチンベースNO.80-SV三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)0.05重量部」は、本件発明8の「色素を0.001?0.5質量%」に相当する。

(b)引用発明2-2の「タマリンドシードガム0.05重量部」は、本件発明8の「タマリンドシードガム、グァーガム、及びローカストビーンガムから選ばれる1種又は2種以上の多糖類を合計で0.0007?0.7質量%」に相当する。

(c)引用発明2-2には、タンパク質は含まれていない、すなわち0重量%であるから、本件発明8の「タンパク質を0?0.5質量%」に相当する。

(d)引用発明2-2には、脂質は含まれていない、すなわち0重量%であるから、本件発明8の「脂質を0?0.5質量%」に相当する。

(e)引用発明2-2の「残部は水にて全量100重量部」について、引用発明2-2における水の重量部は、69.925重量部[=100重量部-(果糖ブドウ糖液糖10重量部+水飴8重量部+砂糖6.5重量部+5倍濃縮柑橘果汁5重量部+クエン酸(結晶)0.3重量部+香料(オレンジエッセンス51237(N)三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)0.1重量部+色素(カロチンベースNO.80-SV三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)0.05重量部+HPC(Klucel GF;ハーキュリーズ社製)0.025重量部+タマリンドシードガム0.05重量部+ペクチン0.05重量部)]である。
そうすると、本件発明8の「水を90?99質量%」と引用発明2-2の「残部は水にて全量100重量部」とは、水を特定質量%である点で共通する。

(f)引用発明2-2の「シャーベット」は、本件発明8の「氷菓」に相当する。

そうすると、本件発明8と引用発明2-2とは、
「水を特定質量%、脂質を0?0.5質量%、タンパク質を0?0.5質量%及び色素を0.001?0.5質量%を含む氷菓であって、
タマリンドシードガム、グァーガム、及びローカストビーンガムから選ばれる1種又は2種以上の多糖類を合計で0.0007?0.7質量%含むことを特徴とする氷菓」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点H-1:氷菓が、本件発明8では、泡立ち惹起成分を含むのに対し、引用発明2-2では、泡立ち惹起成分を含むか明らかでない点

相違点H-2:氷菓に含まれる水の配合割合が、本件発明8では、90?99質量%であるのに対し、引用発明2-2では、69.925重量部である点

b 判断
事案に鑑み、相違点H-2から検討する。
相違点H-2は、前記(ア)aで述べた相違点G-2と同じである。
そうすると、前記(ア)bで述べたように、引用発明2-2において、氷菓に含まれる水の配合割合を、69.925重量部に代えて、本件発明8において規定されるような90?99質量%と大幅に増加させる動機付けはないことから、引用発明2-2において、氷菓に含まれる水の配合割合を、90?99質量%とすることは、当業者といえども容易に想到し得る技術的事項であるとはいえないし、それにより奏される効果も、刊行物1(甲3)、甲4及び刊行物4(甲5)の記載から当業者が予測し得たものとはいえない。

(ウ)したがって、相違点G-1及び相違点H-1を検討するまでもなく、本件発明8は、本出願前に頒布された刊行物1(甲3)に記載された発明並びに甲4及び刊行物4(甲5)に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

カ 本件発明9について

(ア)本件発明9は、本件発明8の全ての発明特定事項を含むものである。
そうすると、本件発明8が、刊行物1(甲3)に記載された発明並びに甲4及び刊行物4(甲5)に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明9も、同様の理由により、刊行物1(甲3)に記載された発明並びに甲4及び刊行物4(甲5)に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

キ 本件発明10について

(ア)引用発明1-2との対比・判断

a 引用発明1-2との対比

(a)引用発明1-2の「色素(カロチンベースNO.80-SV三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)0.05重量部」について、刊行物4(甲5)の記載4aより、「カロチンベースNO.80-SV」はカロチン色素であるから、本件発明10の「色素を0.001?0.5質量%」「前記色素が、スピルリナ色素、カロテン色素、紅麹色素、及びベニバナ黄色素から選ばれる1種又は2種以上である」に相当する。

(b)引用発明1-2の「タマリンドシードガム0.05重量部、ローカストビーンガム0.05重量部」は合計で0.10重量%であるから、本件発明10の「タマリンドシードガム、グァーガム、及びローカストビーンガムから選ばれる1種又は2種以上の多糖類を合計で0.0007?0.7質量%」に相当する。

(c)引用発明1-2には、タンパク質は含まれていない、すなわち0重量%であるから、本件発明10の「タンパク質を0?0.5質量%」に相当する。

(d)引用発明1-2には、脂質は含まれていない、すなわち0重量%であるから、本件発明10の「脂質を0?0.5質量%」に相当する。

(e)引用発明1-2の「残部は水にて全量100重量部」について、引用発明1-2における水の重量部は、69.925重量部[=100重量部-(果糖ブドウ糖液糖10重量部+水飴8重量部+砂糖6.5重量部+5倍濃縮柑橘果汁5重量部+クエン酸(結晶)0.3重量部+香料(オレンジエッセンス51237(N)三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)0.1重量部+色素(カロチンベースNO.80-SV三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)0.05重量部+HPC(Klucel GF;ハーキュリーズ社製)0.025重量部+タマリンドシードガム0.05重量部+ローカストビーンガム0.05重量部)]である。
そうすると、本件発明10の「水を90?99質量%」と引用発明1-2の「残部は水にて全量100重量部」とは、水を特定質量%である点で共通する。

(f)引用発明1-2の「シャーベット」は、ゲル状食品とは認められないので、本件発明10の「氷菓(但し、ゲル状食品を除く)」に相当する。

そうすると、本件発明10と引用発明1-2とは、
「水を特定質量%、脂質を0?0.5質量%、タンパク質を0?0.5質量%、色素を0.001?0.5質量%含む、氷菓(但し、ゲル状食品を除く)であって、
タマリンドシードガム、グァーガム、及びローカストビーンガムから選ばれる1種又は2種以上の多糖類を合計で0.0007?0.7質量%含み、
前記色素が、スピルリナ色素、カロテン色素、紅麹色素、及びベニバナ黄色素から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする、氷菓」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点I-1::氷菓が、本件発明10では、泡立ちを惹起する操作を経て製造されるものであるのに対し、引用発明1-2では、泡立ちを惹起する操作を経て製造されるものか明らかでない点

相違点I-2:氷菓に含まれる水の配合割合が、本件発明10では、90?99質量%であるのに対し、引用発明1-2では、69.925重量部である点

b 判断
事案に鑑み、相違点I-2から検討する。
相違点I-2は、前記オ(ア)aで述べた相違点G-2と同じである。
そうすると、前記オ(ア)bで述べたように、引用発明1-2において、氷菓に含まれる水の配合割合を、69.925重量部に代えて、本件発明10において規定されるような90?99質量%と大幅に増加させる動機付けはないことから、引用発明1-2において、氷菓に含まれる水の配合割合を、90?99質量%とすることは、当業者といえども容易に想到し得る技術的事項であるとはいえないし、それにより奏される効果も、刊行物1(甲3)、甲4及び刊行物4(甲5)の記載から当業者が予測し得たものとはいえない。

(イ)引用発明2-2との対比・判断

a 引用発明2-2との対比

(a)引用発明2-2の「色素(カロチンベースNO.80-SV三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)0.05重量部」について、刊行物4(甲5)の記載4aより、「カロチンベースNO.80-SV」はカロチン色素であるから、本件発明10の「色素を0.001?0.5質量%」「前記色素が、スピルリナ色素、カロテン色素、紅麹色素、及びベニバナ黄色素から選ばれる1種又は2種以上である」に相当する。

(b)引用発明2-2の「タマリンドシードガム0.05重量部」は、本件発明10の「タマリンドシードガム、グァーガム、及びローカストビーンガムから選ばれる1種又は2種以上の多糖類を合計で0.0007?0.7質量%」に相当する。

(c)引用発明2-2には、タンパク質は含まれていない、すなわち0重量%であるから、本件発明10の「タンパク質を0?0.5質量%」に相当する。

(d)引用発明2-2には、脂質は含まれていない、すなわち0重量%であるから、本件発明10の「脂質を0?0.5質量%」に相当する。

(e)引用発明2-2の「残部は水にて全量100重量部」について、引用発明2-2における水の重量部は、69.925重量部[=100重量部-(果糖ブドウ糖液糖10重量部+水飴8重量部+砂糖6.5重量部+5倍濃縮柑橘果汁5重量部+クエン酸(結晶)0.3重量部+香料(オレンジエッセンス51237(N)三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)0.1重量部+色素(カロチンベースNO.80-SV三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)0.05重量部+HPC(Klucel GF;ハーキュリーズ社製)0.025重量部+タマリンドシードガム0.05重量部+ペクチン0.05重量部)]である。
そうすると、本件発明10の「水を90?99質量%」と引用発明2-2の「残部は水にて全量100重量部」とは、水を特定質量%である点で共通する。

(f)引用発明2-2の「シャーベット」は、ゲル状食品とは認められないので、本件発明10の「氷菓(但し、ゲル状食品を除く)」に相当する。

そうすると、本件発明10と引用発明2-2とは、
「水を特定質量%、脂質を0?0.5質量%、タンパク質を0?0.5質量%、色素を0.001?0.5質量%含む、氷菓(但し、ゲル状食品を除く)であって、
タマリンドシードガム、グァーガム、及びローカストビーンガムから選ばれる1種又は2種以上の多糖類を合計で0.0007?0.7質量%含み、
前記色素が、スピルリナ色素、カロテン色素、紅麹色素、及びベニバナ黄色素から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする、氷菓」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点J-1::氷菓が、本件発明10では、泡立ちを惹起する操作を経て製造されるものであるのに対し、引用発明2-2では、泡立ちを惹起する操作を経て製造されるものか明らかでない点

相違点J-2:氷菓に含まれる水の配合割合が、本件発明10では、90?99質量%であるのに対し、引用発明2-2では、69.925重量部である点

b 判断
事案に鑑み、相違点J-2から検討する。
相違点J-2は、前記オ(イ)aで述べた相違点H-2と同じである。
そうすると、前記オ(イ)bで述べたように、引用発明2-2において、氷菓に含まれる水の配合割合を、69.925重量部に代えて、本件発明10において規定されるような90?99質量%と大幅に増加させる動機付けはないことから、引用発明2-2において、氷菓に含まれる水の配合割合を、90?99質量%とすることは、当業者といえども容易に想到し得る技術的事項であるとはいえないし、それにより奏される効果も、刊行物1(甲3)、甲4及び刊行物4(甲5)の記載から当業者が予測し得たものとはいえない。

(ウ)したがって、相違点I-1及び相違点J-1を検討するまでもなく、本件発明10は、本出願前に頒布された刊行物1(甲3)に記載された発明並びに甲4及び刊行物4(甲5)に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(5)まとめ
したがって、本件発明1?7は、本出願前に頒布された甲1に記載された発明(甲2に記載された技術的事項を参照)、並びに、甲3に記載された発明(甲4及び5に記載された技術的事項を参照)とはいえないし、また、本件発明1?10は、甲1に記載された発明及び甲2に記載された技術的事項、並びに、甲3に記載された発明及び甲4、5に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
よって、本件発明1?7に係る特許は、特許法第29条第1項に違反してなされたものではなく、かつ、本件発明1?10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではないから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものではない。

2 特許法第36条第6項第1号について

(1)特許異議申立人が申し立てた取消理由の理由3の(1)について
前記I 2で述べたとおりである。

(2)特許異議申立人が申し立てた取消理由の理由3の(2)について
本件発明8及び10の「水を90?99質量%」について、発明の詳細な説明に、本件発明8及び10の具体例として、実施例1?13(【0023】?【0033】)では、水を少なくとも99.23質量%含むもの、及び、実施例14(【0034】?【0036】)では、「巨峰5倍濃縮透明果汁」の水分量が記載されておらず全水分量が不明であるもの、をそれぞれ着色された水溶液を調製し、調製した水溶液を、攪拌操作後、泡沫部分への色素凝集の程度を評価し、前記I 2(5)で述べたように、泡沫部分での色素凝集が抑制されていると理解される客観的な結果が記載されている。
本件明細書の実施例に、水を90質量%付近とする場合の具体例が記載されていないとしても、水溶液に含まれる各成分の含有量についての実施の態様の記載(前記I 2(5)で示した段落【0016】?【0019】及び【0022】に記載)を知見した当業者であれば、水を90質量%とする場合においても、着色された水溶液の泡沫部分への色素の凝集が抑制され得ると理解できるといえ、本件発明8?10の前記課題[前記I 2(3)で述べた、氷菓の製造において、着色された水溶液の泡沫部分への色素の凝集が抑制された氷菓を提供すること]を解決し得ると認識できるといえる。

したがって、発明の詳細な説明には、本件発明8?10が記載されているといえ、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないということはできない。
よって、本件発明8?10に係る特許は、特許法第36条第6項の規定に違反してなされたものではないから、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものではない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、本件発明1?10に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立ての理由並びに証拠によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色された水溶液の泡立ちにおける泡沫部分での色素の凝集を抑制する方法であって、
色素を、タマリンドシードガム、グァーガム、及びローカストビーンガムから選ばれる1種又は2種以上の多糖類と共に溶解して着色した水溶液を調製することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記水溶液がタンパク質、ポリフェノール及び食物繊維から選ばれる1種又は2種以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記多糖類を、前記水溶液に対する濃度が0.0007?0.7質量%となるように溶解する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記色素が、スピルリナ色素、カロテン色素、紅麹色素、及びベニバナ黄色素から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする、請求項1?3の何れかに記載の方法。
【請求項5】
着色された水溶液の調製、及び調製された水溶液の泡立ちを惹起する操作(凍結及び攪拌を同時に行う操作を除く)、及び該操作を経た水溶液の凍結を含む、氷菓の製造方法であって、
前記水溶液が、タンパク質、ポリフェノール、及び食物繊維から選ばれる1種または2種以上を含み、
前記水溶液の調製は、色素を、タマリンドシードガム、グァーガム、及びローカストビーンガムから選ばれる1種または2種以上の多糖類と共に水に溶解することを特徴とする、氷菓の製造方法。
【請求項6】
前記多糖類を、前記水溶液に対する濃度が0.0007?0.7質量%となるように溶解する、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記色素が、スピルリナ色素、カロテン色素、紅麹色素、及びベニバナ黄色素から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする、請求項5又は6に記載の製造方法。
【請求項8】
水を90?99質量%、脂質を0?0.5質量%、タンパク質を0?0.5質量%、色素を0.001?0.5質量%、及び泡立ち惹起成分を含む氷菓であって、
タマリンドシードガム、グァーガム、及びローカストビーンガムから選ばれる1種又は2種以上の多糖類を合計で0.0007?0.7質量%含むことを特徴とする氷菓。
【請求項9】
前記泡立ち惹起成分が、タンパク質、ポリフェノール及び食物繊維から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする、請求項8に記載の氷菓。
【請求項10】
水を90?99質量%、脂質を0?0.5質量%、タンパク質を0?0.5質量%、色素を0.001?0.5質量%含み、泡立ちを惹起する操作を経て製造される氷菓(但し、ゲル状食品を除く)であって、
タマリンドシードガム、グァーガム、及びローカストビーンガムから選ばれる1種又は2種以上の多糖類を合計で0.0007?0.7質量%含み、
前記色素が、スピルリナ色素、カロテン色素、紅麹色素、及びベニバナ黄色素から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする、氷菓。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-11-01 
出願番号 特願2017-246226(P2017-246226)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (A23L)
P 1 651・ 851- YAA (A23L)
P 1 651・ 113- YAA (A23L)
P 1 651・ 121- YAA (A23L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 池上 文緒  
特許庁審判長 村上 騎見高
特許庁審判官 関 美祝
齊藤 真由美
登録日 2018-07-13 
登録番号 特許第6368026号(P6368026)
権利者 森永製菓株式会社
発明の名称 着色された水溶液の調製における色素凝集の抑制方法  
代理人 辻田 朋子  
代理人 辻田 朋子  
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