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審決分類 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  A23L
審判 一部申し立て 2項進歩性  A23L
審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
管理番号 1357664
異議申立番号 異議2018-700257  
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-01-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-03-27 
確定日 2019-10-25 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6204942号発明「飲料、飲料の製造方法及び難消化性グルカンを含む飲料のえぐ味を改善する方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6204942号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?5、7?10について訂正することを認める。 特許第6204942号の請求項1?5、7?10に係る特許を取り消す。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6204942号の請求項1?6に係る特許についての出願は、平成27年6月12日に出願され、平成29年9月8日にその特許権の設定登録がされ、平成29年9月27日に特許掲載公報が発行され、平成30年3月27日に特許異議申立人石野美智枝(以下「申立人」という。)により、請求項1?5に係る特許について特許異議の申立てがされた。その後の経緯は、次のとおりである。
平成30年 7月24日:取消理由通知書
同年 9月21日:訂正請求書、意見書(特許権者)
同年11月 2日:意見書(申立人)
平成31年 2月19日:取消理由通知書(決定の予告)
同年 4月23日:訂正請求書、意見書(特許権者)
令和 元年 6月 7日:意見書(申立人)

第2 訂正について
1 訂正の内容(下線は訂正箇所を示す。)
(1)一群の請求項1?4に係る訂正
ア 訂正事項1
請求項1について、「である、ビールテイスト飲料。」を「であり、前記酸味料が、リン酸、乳酸及びリンゴ酸からなる群から選択される少なくとも一種である、ビールテイスト飲料。」に訂正し、以下の事項により特定されるとおりの請求項1とする。
「【請求項1】
難消化性グルカンと、酸味料と、ミネラルと、を含み、
前記難消化性グルカンの含有量が、ビールテイスト飲料100質量%あたり、0.1?5.0質量%であり、
前記酸味料の含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、クエン酸換算で24?4000ppmであり、
前記ミネラルの含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、10?1000ppmであり、
前記ミネラルが、カルシウムイオン又はナトリウムイオンであり、
前記酸味料が、リン酸、乳酸及びリンゴ酸からなる群から選択される少なくとも一種である、ビールテイスト飲料。」

イ 訂正事項2
請求項2について、引用関係を解消し、以下の事項により特定されるとおりの請求項2とする。
「【請求項2】
難消化性グルカンと、酸味料と、ミネラルと、を含み、
前記難消化性グルカンの含有量が、ビールテイスト飲料100質量%あたり、0.5?5.0質量%であり、
前記酸味料の含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、クエン酸換算で50?800ppmであり、
前記ミネラルの含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、10?1000ppmであり、
前記ミネラルが、カルシウムイオン又はナトリウムイオンであり、
前記酸味料が、リン酸、乳酸及びリンゴ酸からなる群から選択される少なくとも一種である、ビールテイスト飲料。」

ウ 訂正事項3
請求項1を引用する請求項3について、引用関係を解消し、以下の事項により特定されるとおりの請求項3とする。
「【請求項3】
難消化性グルカンと、酸味料と、ミネラルと、を含み、
前記難消化性グルカンの含有量が、ビールテイスト飲料100質量%あたり、1.0?2.0質量%であり、
前記酸味料の含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、クエン酸換算で50?800ppmであり、
前記ミネラルの含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、20?60ppmであり、
前記ミネラルが、カルシウムイオンであり、
前記酸味料が、乳酸及びリンゴ酸からなる群から選択される少なくとも一種である、ビールテイスト飲料。」

エ 訂正事項4
請求項1を引用する請求項4について、引用関係を解消し、以下の事項により特定されるとおりの請求項4とする。
「【請求項4】
難消化性グルカンと、酸味料と、ミネラルと、を含み、
前記難消化性グルカンの含有量が、ビールテイスト飲料100質量%あたり、0.1?5.0質量%であり、
前記酸味料の含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、クエン酸換算で24?4000ppmであり、
前記ミネラルの含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、10?1000ppmであり、
前記ミネラルが、カルシウムイオン又はナトリウムイオンであり、
前記酸味料が、リン酸、乳酸及びリンゴ酸からなる群から選択される少なくとも一種であり、
ノンアルコール飲料である、ビールテイスト飲料。」

オ 訂正事項5
請求項2を引用する請求項3について、引用関係を解消し、以下の事項により特定されるとおりの請求項7とする。
「【請求項7】
難消化性グルカンと、酸味料と、ミネラルと、を含み、
前記難消化性グルカンの含有量が、ビールテイスト飲料100質量%あたり、1.0?2.0質量%であり、
前記酸味料の含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、クエン酸換算で50?800ppmであり、
前記ミネラルの含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、20?60ppmであり、
前記ミネラルが、カルシウムイオンであり、
前記酸味料が、乳酸及びリンゴ酸からなる群から選択される少なくとも一種である、ビールテイスト飲料(但し、醸造酒であるビールテイスト飲料を除く)。」

カ 訂正事項6
請求項2を引用する請求項4について、引用関係を解消し、以下の事項により特定されるとおりの請求項8とする。
「【請求項8】
難消化性グルカンと、酸味料と、ミネラルと、を含み、
前記難消化性グルカンの含有量が、ビールテイスト飲料100質量%あたり、0.5?5.0質量%であり、
前記酸味料の含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、クエン酸換算で50?800ppmであり、
前記ミネラルの含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、10?1000ppmであり、
前記ミネラルが、カルシウムイオン又はナトリウムイオンであり、
前記酸味料が、リン酸、乳酸及びリンゴ酸からなる群から選択される少なくとも一種であり、
ノンアルコール飲料である、ビールテイスト飲料。」

キ 訂正事項7
請求項1を引用する請求項3を引用する請求項4について、引用関係を解消し、以下の事項により特定されるとおりの請求項9とする。
「【請求項9】
難消化性グルカンと、酸味料と、ミネラルと、を含み、
前記難消化性グルカンの含有量が、ビールテイスト飲料100質量%あたり、1.0?2.0質量%であり、
前記酸味料の含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、クエン酸換算で50?800ppmであり、
前記ミネラルの含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、20?60ppmであり、
前記ミネラルが、カルシウムイオンであり、
前記酸味料が、乳酸及びリンゴ酸からなる群から選択される少なくとも一種であり、
ノンアルコール飲料である、ビールテイスト飲料。」

ク 訂正事項8
請求項2を引用する請求項3を引用する請求項4について、引用関係を解消し、以下の事項により特定されるとおりの請求項10とする。
「【請求項10】
難消化性グルカンと、酸味料と、ミネラルと、を含み、
前記難消化性グルカンの含有量が、ビールテイスト飲料100質量%あたり、1.0?2.0質量%であり、
前記酸味料の含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、クエン酸換算で50?800ppmであり、
前記ミネラルの含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、20?60ppmであり、
前記ミネラルが、カルシウムイオンであり、
前記酸味料が、乳酸及びリンゴ酸からなる群から選択される少なくとも一種であり、
ノンアルコール飲料である、ビールテイスト飲料(但し、高甘味度甘味料を含有するものを除く。)。」

なお、訂正後の請求項2?4、7?10について、特許権者は、当該訂正が認められる場合に請求項1とは別の訂正単位として扱われることを求めている。

(2)請求項5に係る訂正
ケ 訂正事項9
請求項5について、「である、ビールテイスト飲料の製造方法。」を「であり、前記酸味料が、リン酸、乳酸及びリンゴ酸からなる群から選択される少なくとも一種である、ビールテイスト飲料の製造方法。」に訂正し、以下の事項により特定されるとおりの請求項5とする。
「【請求項5】 (訂正事項9)
難消化性グルカンと、酸味料と、ミネラルと、を配合する配合工程を含み、
前記難消化性グルカンを、ビールテイスト飲料100質量%あたり、0.1?5.0質量%になるように配合し、
前記酸味料を、ビールテイスト飲料全体に対して、クエン酸換算で24?4000ppmになるように配合し、
前記ミネラルを、ビールテイスト飲料全体に対して、10?1000ppmになるように配合し、
前記ミネラルが、カルシウムイオン又はナトリウムイオンであり、
前記酸味料が、リン酸、乳酸及びリンゴ酸からなる群から選択される少なくとも一種である、ビールテイスト飲料の製造方法。」

2 訂正の適否
(1)一群の請求項1?4に係る訂正
ア 訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された「酸味料」について、「リン酸、乳酸及びリンゴ酸からなる群から選択される少なくとも一種」であるとの限定を付加するものであるから特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、本件明細書の【0008】に、「上記酸味料は、リン酸、乳酸、リンゴ酸及びクエン酸からなる群から選択される少なくとも一種であってもよく・・・」と記載されているから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

イ 訂正事項2は、請求項2について請求項1との引用関係を解消するとともに、難消化性グルカンの含有量の下限値を「0.5」に、酸味料の含有量の範囲を「50?800ppm」に、酸味料の選択肢を、クエン酸を除いた「リン酸、乳酸及びリンゴ酸」に、それぞれ限定するものであるから、引用関係の解消及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、本件明細書の【0021】に「難消化性グルカンの含有量は、飲料100質量%あたり・・・0.5質量%以上であってもよく、1.0%質量%以上であってもよい。また、難消化性グルカンの含有量は・・・2質量%以下であってもよい。」、同じく【0024】に「酸味料の含有量は、酸味度で・・・800ppm以下であってもよい。」と記載され、【0050】に酸味度50ppmの飲料サンプル7が記載されているから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ 訂正事項3は、請求項3について請求項1との引用関係を解消するとともに、難消化性グルカンの含有量の範囲を「1.0?2.0質量%」に、酸味料の含有量の範囲を「50?800ppm」に、ミネラルの含有量の範囲を「20?60ppm」に、ミネラルを、選択肢からナトリウムイオンを除いて「カルシウムイオン」に、酸味料の選択肢を、リン酸を除いた「乳酸及びリンゴ酸」に、それぞれ限定するものであるから、引用関係の解消及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、本件明細書の上記【0021】、【0024】、【0050】の記載に加え、【0029】に「ミネラルの含有量は、飲料全体に対して・・・20ppm以上であってもよい。また・・・60ppm以下であってもよい。」と記載されているから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

エ 訂正事項4は、請求項4について請求項1との引用関係を解消するとともに、「酸味料」について、「リン酸、乳酸及びリンゴ酸からなる群から選択される少なくとも一種」であるとの限定を付加するものであるから、引用関係の解消及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、前述のとおり、本件明細書の【0008】に酸味料について記載されているから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

オ 訂正事項5は、請求項3について請求項2との引用関係を解消するとともに、上記訂正事項3と同様に、難消化性グルカンの含有量の範囲を「1.0?2.0質量%」に、酸味料の含有量の範囲を「50?800ppm」に、ミネラルの含有量の範囲を「20?60ppm」に、ミネラルを、選択肢からナトリウムイオンを除いて「カルシウムイオン」に、酸味料の選択肢を、リン酸を除いた「乳酸及びリンゴ酸」に、それぞれ限定し、更に、「ビールテイスト飲料」を、「醸造酒であるビールテイスト飲料」を除いて限定するものである。よって、訂正事項5は、引用関係の解消及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

カ 訂正事項6は、請求項4について請求項2との引用関係を解消するとともに、上記訂正事項2と同様に、難消化性グルカンの含有量の下限値を「0.5」に、酸味料の含有量の範囲を「50?800ppm」に、酸味料の選択肢を、クエン酸を除いた「リン酸、乳酸及びリンゴ酸」に、それぞれ限定するものである。よって、訂正事項6は、引用関係の解消及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

キ 訂正事項7は、請求項4について、請求項1を引用する請求項3との引用関係を解消するとともに、上記訂正事項3と同様に、難消化性グルカンの含有量の範囲を「1.0?2.0質量%」に、酸味料の含有量の範囲を「50?800ppm」に、ミネラルの含有量の範囲を「20?60ppm」に、ミネラルを、選択肢からナトリウムイオンを除いて「カルシウムイオン」に、酸味料の選択肢を、リン酸を除いた「乳酸及びリンゴ酸」に、それぞれ限定するものである。よって、訂正事項7は、引用関係の解消及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ク 訂正事項8は、請求項4について、請求項2を引用する請求項3との引用関係を解消するとともに、上記訂正事項3と同様に、難消化性グルカンの含有量の範囲を「1.0?2.0質量%」に、酸味料の含有量の範囲を「50?800ppm」に、ミネラルの含有量の範囲を「20?60ppm」に、ミネラルを、選択肢からナトリウムイオンを除いて「カルシウムイオン」に、酸味料の選択肢を、リン酸を除いた「乳酸及びリンゴ酸」に、それぞれ限定し、更に、「ビールテイスト飲料」を、「高甘味度甘味料を含有するもの」を除いて限定するものである。よって、訂正事項8は、引用関係の解消及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)請求項5に係る訂正
ケ 訂正事項9は、訂正前の請求項5に記載された「酸味料」について、「リン酸、乳酸及びリンゴ酸からなる群から選択される少なくとも一種」であるとの限定を付加するものであるから特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、前述のとおり、本件明細書の【0008】に酸味料について記載されているから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3 小括
したがって、本件訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号又は4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?5、7?10について訂正することを認める。

第3 取消理由について
1 取消理由の概要
当審は、平成31年2月19日付けの取消理由通知書(決定の予告)において特許権者に以下の取消理由を通知した(なお、証拠は後記3(1)に示すとおりであり、甲第1号証を甲1のように略記する。)。
請求項1?5に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲3?5、8?17に示される事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、甲2に記載された発明及び甲3?5、8?17に示される事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、請求項1?5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

2 本件発明
本件特許の請求項1?5、7?10に係る発明(以下、各発明を「本件発明1」?「本件発明5」、「本件発明7」?「本件発明10」という。)は、上記第2「1 訂正の内容」において示したとおりのものである。

3 取消理由についての判断
(1)証拠及びその記載
ア 申立人が提出した証拠は以下のとおりである。
甲1:特開2015-104357号公報
甲2:特開2013-76044号公報
甲3:「日本醸造協会雑誌」、財団法人日本醸造協会、昭和52年3月15日、第72巻、第3号、p.188-192
甲4:「醸造物の成分」、財団法人日本醸造協会、平成11年12月10日、p.187-190、236-241
甲5:石田卓、外1名、「水に関する基礎的研究 その1 ミネラルに関しての文献調査」、福岡大学工学集報、平成15年9月、第71号、p.135-157
甲6:USDAのウェブページ(「National Nutrient Database for Standard Reference」、「Release 28 slightly revised May, 2016」、「Basic Report 14121, Beverages, carbonated, club soda」のページ)(https://ndb.nal.usda.gov/ndb/foods/show/4210?fgcd=&manu=&lfacet=&format=&count=&max=50&offset=&sort=default&order=asc&qlookup=soda&ds=Standard+Reference&qt=&qp=&qa=&qn=&q=&ing)
甲6の2:USDAのウェブページ(「Release 27」のページ)(https://www.ars.usda.gov/northeast-area/beltsville-md-bhnrc/beltsville-human-nutrition-research-center/nutrient-data-laboratory/docs/sr27-home-page/)
甲6の3:USDAのウェブページ(甲6の2から入手できるエクセルファイルの「14121 CARBONATED BEV,CLUB SODA」の項目)(https://www.ars.usda.gov/ARSUserFiles/80400525/Data/SR27/dnload/sr27abxl.zip)
甲7:USDAのウェブページ(「National Nutrient Database for Standard Reference」、「Release 28 slightly revised May, 2016」、「Basic Report 14305, Malt beverage, includes non-alcoholic beer」のページ)(https://ndb.nal.usda.gov/ndb/foods/show/4346?fgcd=&manu=&lfacet=&format=&count=&max=50&offset=&sort=default&order=asc&qlookup=beer&ds=Standard+Reference&qt=&qp=&qa=&qn=&q=&ing)
甲7の2:USDAのウェブページ(甲6の2から入手できるエクセルファイルの「14305 MALT BEV,INCL NON-ALCOHOLIC BEER」の項目)(https://www.ars.usda.gov/ARSUserFiles/80400525/Data/SR27/dnload/sr27abxl.zip)
甲8:戸塚昭、「酒類と金属」、化学と生物、財団法人日本農芸化学会、昭和50年4月25日、Vol.13、No.4、p.229-234
甲9:日本食品標準成分表2010、文部科学省 科学技術・学術審議会 資源調査分科会、平成26年5月20日、p.230-231
甲10:特開2011-217706号公報
甲11:特開2014-82976号公報
甲12:佐藤信、外2名、「麦芽飲料について」、J. Brew. Soc. Japan、1980年、Vol.75、No.4、p.344-346
甲13:西野伊史、外2名、「麦芽飲料のタイプの解析」、J. Brew. Soc. Japan、1983年、Vol.78、No.8、p.637-640
甲14:日本醸造協会雑誌、昭和51年10月15日、第71巻、第10号、p.753-761
甲15:上田隆蔵、外2名、「ビール中の有機酸に関する研究(第1報) 市販ビールの有機酸組成」、醗工、1963年、第41巻、第1号、p.10-14
甲16:山崎裕康、外3名、「食品中のイオン成分に関する基礎的研究(第1報) ビールの味覚に対するリン酸イオンの関与について」、日本食品化学学会誌(日食化誌)、1997年、第4巻、第1号、p.33-36
甲17:特開2014-166167号公報
甲18:日本食品工業学会、「新版・食品工業総合事典」、株式会社光琳、平成5年4月30日、p.800
甲19:特開平10-215848号公報
甲20:特開2014-166169号公報
甲21:国際公開2013/146348号
甲22:特開2014-166168号公報
甲23:特開2014-161293号公報
甲24:特開2014-161294号公報
甲25:Nutritive Value of Foods、Home and Garden Bulletin Number 72、United States Department of Agriculture、2002年10月、p.14-15
甲26:橋本直樹、「ビールのはなし Part2 おいしさの科学」、技報堂出版株式会社、1998年4月5日、p.62-63

イ 甲1には、以下の事項が記載されている。(「・・・」は記載の省略を意味し、下線は当審による。以下同じ。)

(1a)「【請求項1】
DE70?100の澱粉分解物を加熱縮合させて得られた糖縮合物からなる難消化性グルカンを、糖質分解酵素で酵素処理し、得られた難消化性グルカン酵素処理物を、二糖以下の画分が15%以下となるように分画処理して得られた難消化性グルカン分画処理物、または該難消化性グルカンを還元処理して得られた難消化性グルカン還元処理物を含有する、カロリーが40kcal/100g以下または20kcal/100ml以下の飲食品。」
(1b)「【背景技術】
・・・
【0009】
また、健康増進法に規定する特別用途表示の許可等に関する内閣府令(平成21年8月31日付内閣府令第57号)によれば、一定量以上の食物繊維を含有していれば、食物繊維の補給ができる旨の強調表示をすることができる。具体的な表示基準としては、食品100g(飲料100ml)当り6g(飲料の場合3g)の場合、高い旨の表示として「高」、「多」、「豊富」、その他これに類する表示ができ、食品100g(飲料100ml)当り3g(飲料の場合1.5g)の場合、含む旨の表示として「源」、「供給」、「含有」、「入り」、「使用」、「添加」、その他これに類する表示をする事ができる。
【0010】
以上のことから、良好な味質を維持しながら、低カロリー、特に「カロリーオフ」や「カロリーゼロ」との表示が可能であり、好ましくは、更に食物繊維の強調表示が可能である飲食品を提供するために、所定以下のカロリーであり、かつ、異味・異臭を有さない新たな食物繊維素材の開発が望まれている。
・・・
【発明の概要】
【0012】
本発明は、良好な味質を維持しつつ、カロリーが40kcal/100g以下または20kcal/100ml以下の飲食品を提供することを目的とする。
【0013】
本願発明者らは、DE70?100の澱粉分解物を加熱縮合させて得られた糖縮合物からなる難消化性グルカンの酵素・分画処理物または還元処理物が、極めて低カロリーな新たな水溶性食物繊維素材であり、この難消化性グルカンの酵素・分画処理物または還元処理物を添加することで、異味・異臭を与えることなく飲食品に良好な味質・風味を付与しつつ、健康増進法の規格であるカロリーオフ(40kcal/100g以下又は20kcal/100ml)やカロリーゼロ(5kcal/100g以下又は5kcal/100ml)を満たす設計とした飲食品を製造可能であることを見出した。」
(1c)「【0022】
本発明において「難消化性グルカン」は、難消化性のグルカン(グルコースポリマー)を意味し、DE70?100の澱粉分解物を、加熱処理により縮合反応させることで得られる糖縮合物として得ることができる。難消化性グルカンは、水溶性食物繊維画分を豊富に有している。
・・・
【0026】
本発明において「難消化性グルカン酵素処理物」は、難消化性グルカンを糖質分解酵素で酵素処理して得ることができる。当該処理により難消化性グルカン中の消化性部位を分解することができるため、食物繊維含量を高める事ができる。
・・・
【0029】
本発明において「難消化性グルカン分画処理物」は、難消化性グルカン酵素処理物を二糖以下の画分が15%以下となるように分画処理して得ることができる。言い換えれば「難消化性グルカン分画処理物」は三糖以上の糖類を85%を超えて有するものである。ここで「%」は、固形分に対する質量%を意味する。」
(1d)「【0040】
添加対象となる飲食品としては、ビール系飲料(ビール、発泡酒および所謂「第3のビール」あるいは「新ジャンル」と呼ばれるその他の醸造酒・リキュール(発泡性)の他に、低アルコールビール風味麦芽発酵飲料)、酎ハイ、カクテル、サワー、清酒、ワイン、焼酎、ウイスキー、ブランデー等のアルコール飲料や、ノンアルコールビール(ビールテイスト飲料)、コーラ、サイダー、栄養ドリンク、乳性飲料、アイソトニック飲料、スポーツ飲料、果汁飲料、緑茶、紅茶、コーヒー、野菜ジュース等のノンアルコール飲料等の飲料や、粉糖や液糖(シラップ)等の甘味料、キャンディー等の飴菓子、ケーキやゼリー等の洋菓子、ヨーグルト、シャーベットやアイスキャンディー等の冷菓、水羊羹やわらび餅等の和菓子、ドレッシング等の調味料、スープ類等の食品が挙げられる。」
(1e)「【0064】
実施例1:ノンアルコールビール
表2の処方により、各種水溶性食物繊維が添加されているノンアルコールビールを製造した。なお、表2中の原材料の単位はすべて「g」である。
・・・


以上によれば、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「DE70?100の澱粉分解物を加熱縮合させて得られた糖縮合物からなる難消化性グルカンを、糖質分解酵素で酵素処理し、得られた難消化性グルカン酵素処理物を、二糖以下の画分が15%以下となるように分画処理して得られた難消化性グルカン分画処理物を添加した、カロリーが40kcal/100g以下または20kcal/100ml以下のビール系飲料又はノンアルコールビール。」

ウ 甲2には、以下の事項が記載されている。
(2a)「【請求項1】
1種または2種以上の糖質またはその誘導体を活性炭存在下で縮合させることを特徴とする、糖縮合物またはその還元物の製造方法。
・・・
【請求項7】
請求項1?6に記載の製造方法により製造された糖縮合物若しくはその還元物または糖縮合物組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の糖縮合物若しくはその還元物または糖縮合物組成物が添加されてなる、飲食品。
・・・
【請求項13】
飲食品がビール風味飲料である、請求項8に記載の飲食品。」
(2b)「【0011】
本発明者らは、意外にも、活性炭存在下で糖縮合反応を実施することにより、着色度が低く、高い難消化性を示す糖縮合物が得られることを見出した。・・・得られた糖縮合物がビール風味飲料にコクを付与するとともに雑味を付与しないことを見出した。」
(2c)「【0068】
本発明の製造方法により製造された糖縮合物およびその還元物並びに糖縮合物組成物はビール風味飲料に添加すると飲料にコクやキレを付与し、かつ、マスキングによる香りの低下や雑味の付与を伴わないことが確認された(後記実施例C1?C4)。すなわち、本発明によれば、本発明の製造方法により製造された糖縮合物およびその還元物並びに糖縮合物組成物が添加されてなる、ビール風味アルコール飲料が提供される。
【0069】
本発明の製造方法により製造された糖縮合物およびその還元物並びに糖縮合物組成物が添加される「ビール風味アルコール飲料」には酒税法上の、ビール、発泡酒およびいわゆる「第三のビール」あるいは「新ジャンル」と呼ばれるその他の醸造酒・その他のリキュール(発泡性)の他に、低アルコールビール風味麦芽発酵飲料が含まれる。本発明における「ビール風味飲料」には、ビール風味アルコール飲料に加えて、ノンアルコールビール風味飲料等が含まれる。」
(2d)「【0074】
本発明のビール風味アルコール飲料への糖縮合物の含有量は、特に制限されないが、コク付与効果等をよりよく発揮させる観点から、0.1?10重量%とすることができ、好ましくは、0.3?5重量%とすることができる。」

以上によれば、甲2には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「1種または2種以上の糖質またはその誘導体を活性炭存在下で縮合させて製造された糖縮合物が添加されてなるビール風味アルコール飲料又はノンアルコールビール風味飲料。」

エ 甲3?5、8?17によれば、それぞれ、以下の事項が把握できる。
・甲3
(3a)麦芽は0.128%のCaを含むこと(189ページ第3表)。
(3b)麦芽の灰分中のCaは5.2%であること(188ページ第2表)。
(3c)アメリカとドイツのビールの陽イオン含有量の例が以下のとおりであること(188ページ第1表)。
アメリカA アメリカB ドイツ
Na(mg/l) 11.25 49.25 25.25
Ca(mg/l) 51.4 38.3 33.2
(3d)ビールにはPO_(4)^(3-)(リン酸イオン)が330?690mg/l含まれていること(188ページ右欄1行)。

・甲4
(4a)麦芽中の灰分が2.27%であること(187ページ第2表)。
(4b)各国ビールの無機物分析例が以下のとおりであること(187ページ第1表)。
アメリカA アメリカB ドイツ 日本
Na(mg/l) 20 35 37 23
Ca(mg/l) 42 134 22 16
(4c)ビールの種類別の主要な有機酸の分析例が以下のとおりであること(237ページ第2表)。
クエン酸 乳酸 リンゴ酸 (mg/l)
Ale 71?133 44?276 26?78
Lager 56?158 48?233 14?95
Stout 107?134 275?292 92?97
Pilsener 107?186 10?284 24?104
Top fermented 173?211 15?901 110?136
Acid beer 6?146 62?1362 6?67
America 83?146 58?82 55?79
America 101 64 86
Belgium 101?174 21?111 24?122

・甲5
(5a)Ca含有量が7.50?370.0ppmの炭酸水が知られていること、多くの飲用水について、CaとNaの合計含有量が10?1000ppmの範囲内であること(表9?表16)。

・甲8
(8a)ビールのNa含有量が21?60ppmであり、Ca含有量が23?57ppmであること(229ページ表1)。

・甲9
(9a)ビール及び発泡酒の成分について、ビール(淡色)、ビール(黒)、ビール(スタウト)、発泡酒の順に、ナトリウム含有量が、それぞれ、3、3、4、1(mg/100g)であり、同じく、カルシウム含有量が、それぞれ、3、3、3、4(mg/100g)であること(230ページ)。

・甲10
(10a)クエン酸、リンゴ酸、リン酸、乳酸から選ばれる1以上の酸味料を含むノンアルコールビールテイスト飲料(【請求項1】、【請求項2】)。
(10b)酸味料が、リン酸、コハク酸、乳酸の組み合わせであり、酸味料の合計がクエン酸換算で0.03?0.10g/100ml(300?1000ppm)である、ノンアルコールビールテイスト飲料(【請求項8】)。

・甲11
(11a)クエン酸0.02g/1L(20ppm)、乳酸0.02g/1L(20ppm)を含むノンアルコールビール風味飲料(【0044】)。

・甲12
(12a)ノンアルコール麦芽飲料3製品(GERSTEL、KARAMALZ、Ex.BIER)と市販ピルゼン型ビール(日本K社製品)の有機酸組成が以下のとおりであること(345ページ第3表)。
乳酸 リンゴ酸 クエン酸 有機酸計 (mg/l)
GERSTEL 47.4 36.8 64.3 231.9
KARAMALZ 131.9 29.4 100.0 413.6
Ex.BIER 80.3 69.5 157.1 494.7
市販ビール 76.2 82.8 157.1 669.8

・甲13
(13a)ノンアルコール麦芽飲料4製品(Birell、Prostel、Near Beer、Scandia Club)と市販淡色ビール(日本製)の有機酸組成が以下のとおりであること(638ページ第4表)。
乳酸 リンゴ酸 クエン酸 有機酸合計 (mg/l)
Beer 89 65 104 580
Birell 151 21 61 377
Prostel 15 28 101 359
Near Beer 45 52 131 453
Scandia Club 24 45 99 534

・甲14
(14a)ビール中のオキシ置換カルボン酸の含量(mg/l)が以下のとおりであること(756ページ第3表)。
Lactic(乳酸) Malic(リンゴ酸) Citric(クエン酸)
日本(各社) 110 70 140
日本(全麦芽) 250 85 200
アメリカ 80 80 150
欧諸国 130 70 170
英(エール) 90 50 100

・甲15
(15a)市販ビール17種類についての有機酸組成(mg/100ml)が以下のとおりであること(12ページTable 2)。
Lactic(乳酸) Malic(リンゴ酸) Citric(クエン酸)
No. 1 10.27 8.75 11.94
No. 2 46.01 8.37 17.70
No. 5 6.91 6.27 12.89
No. 6 20.14 7.24 11.10
No. 3 103.41 7.45 9.75
No. 4 34.80 3.55 11.28
No. 7 3.66 9.32 17.12
No. 8 2.13 7.90 12.74
No. 9 9.82 7.50 12.90
No.10 13.59 8.82 14.76
No.11 56.89 14.68 18.24
No.12 6.77 9.61 17.95
No.13 3.70 8.50 17.08
No.14 5.90 9.53 16.02
No.15 13.81 9.92 38.10
No.16 3.59 9.13 17.45
No.17 30.51 13.06 24.43

・甲16
(16a)市販ビール24銘柄のリン酸イオン含量が187.7?413.6ppmであること(34ページ表3)。

・甲17
(17a)麦使用量10%のビールテイスト飲料に含有される酸味物質の含有量は、クエン酸25ppm、リンゴ酸14ppm(クエン酸換算17.5ppm)、コハク酸8ppm(クエン酸換算9.2ppm)、乳酸15ppm(クエン酸換算18ppm)、リン酸68ppm(クエン酸換算136ppm)、合計205.7ppmであること(【0029】)。
(17b)麦使用量18%のビールテイスト飲料に含有される酸味物質の含有量は、クエン酸45ppm、リンゴ酸26ppm(クエン酸換算32.5ppm)、コハク酸14ppm(クエン酸換算16.1ppm)、乳酸27ppm(クエン酸換算32.4ppm)、リン酸123ppm(クエン酸換算246ppm)、合計372ppmであること(【0030】)。

(2)甲1発明に基づく進歩性
ア 本件発明1
(ア)対比
甲1発明の「DE70?100の澱粉分解物を加熱縮合させて得られた糖縮合物からなる難消化性グルカンを、糖質分解酵素で酵素処理し、得られた難消化性グルカン酵素処理物を、二糖以下の画分が15%以下となるように分画処理して得られた難消化性グルカン分画処理物」は、記載(1c)も踏まえると、難消化性グルカン中の消化性部位を分解し、これを分画処理して二糖以下の画分が15%以下となるようにしたものであり、いわば、難消化性グルカンにおける、難消化性画分の割合を高めたものといえる。一方、本件発明1の「難消化性グルカン」は、難消化性画分の割合等が限定されたものではない。そうすると、甲1発明の上記「難消化性グルカン分画処理物」は、本件発明1の「難消化性グルカン」に相当する。
甲1発明の「ビール系飲料又はノンアルコールビール」は、本件発明1の「ビールテイスト飲料」に相当する。
甲1発明において、難消化性グルカン分画処理物を「添加した」ことにより、難消化性グルカン分画処理物を「含む」ものとなることは明らかである。
なお、特許権者は、甲1において「難消化性グルカン」と「難消化性グルカンの酵素・分画処理物」が区別して記載されているから、甲1発明の「難消化性グルカン分画処理物」は、本件発明の「難消化性グルカン」ではない旨を主張する(平成31年4月23日付け意見書8?11ページ)。しかし、上記のとおり、甲1発明の「難消化性グルカン分画処理物」は、「難消化性グルカン」の難消化性画分の割合を高めたものにすぎず、甲1において両者を区別して記載しているのは、難消化性画分の割合を高めたものとそうでないものを区別するためであって、「難消化性グルカン分画処理物」が「難消化性グルカン」ではないことを意味するものではないから、上記特許権者の主張は理由がない。
よって、本件発明1と甲1発明の一致点、相違点は以下のとおりである。
[一致点]
難消化性グルカンを含むビールテイスト飲料。
[相違点1]
本件発明1は、「酸味料と、ミネラル」を含み「前記酸味料の含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、クエン酸換算で24?4000ppmであり、前記ミネラルの含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、10?1000ppmであり、前記ミネラルが、カルシウムイオン又はナトリウムイオンであり、前記酸味料が、リン酸、乳酸及びリンゴ酸からなる群から選択される少なくとも一種である」のに対し、甲1発明は、酸味料とミネラルを含むとはされていない点。
[相違点2]
難消化性グルカンの含有量が、本件発明1では「ビールテイスト飲料100質量%あたり、0.1?5.0質量%」と特定されているのに対し、甲1発明では特定されていない点。

(イ)判断
相違点1について検討する。
まず、ミネラルについてみると、甲3、4、8、9(3c、4b、8a、9a)によれば、一般にビール又は発泡酒に含まれるカルシウム又はナトリウムの含有量は10?1000ppmの範囲内である。
そうすると、甲1発明において、難消化性グルカン分画処理物の添加対象の「カロリーが40kcal/100g以下または20kcal/100ml以下のビール系飲料又はノンアルコールビール」についても、カルシウムイオン又はナトリウムイオン含有量が10?1000ppmの範囲内のものとすることは、当業者が普通になし得たことである。
この点に関し、特許権者は、乙1?4を提出し、甲1発明の水に純水が使用される可能性があり、その場合にはカルシウムやナトリウムが実質的に含まれない旨を主張するが(平成30年9月21日付け意見書6?8ページ)、上記のとおり、一般にビール又は発泡酒に含まれるカルシウム又はナトリウムの含有量は10?1000ppmの範囲内であることから、上記特許権者の主張は採用できない。
次に、酸味料について検討する。
甲3、16(3d、16a)によれば、ビールに含まれるリン酸は330?690ppm(クエン酸換算で660?1380ppm)又は187.7?413.6ppm(クエン酸換算で375.4?827.2ppm)である。
甲4、12?15(4c、12a?15a)によれば、ビール又はノンアルコール麦芽飲料に含まれる乳酸は10?1362ppm(クエン酸換算で12?1634ppm)、リンゴ酸は6?136ppm(クエン酸換算で7.5?170ppm)である。
甲10(10b)には、リン酸、乳酸、リンゴ酸等の酸味料を含み、酸味料の合計がクエン酸換算で300?1000ppmであるノンアルコールビールテイスト飲料が示され)、甲11(11a)には乳酸を20ppm(クエン酸換算で24ppm)含むノンアルコールビール風味飲料が示され、甲17(17a、17b)には、ビールテイスト飲料に含有される酸味物質の含有量が、クエン酸換算で、リンゴ酸17.5ppm、乳酸18ppm、リン酸136ppm、又は、リンゴ酸32.5ppm、乳酸32.4ppm、リン酸246ppmであることが示されている。
以上によれば、ビールテイスト飲料は一般に、リン酸、乳酸及びリンゴ酸からなる群から選択される少なくとも一種である酸味料を含んでいて、その含有量は、クエン酸換算で24?4000ppmの範囲内である。
そうすると、甲1発明において、難消化性グルカン分画処理物の添加対象の「カロリーが40kcal/100g以下または20kcal/100ml以下のビール系飲料又はノンアルコールビール」についても、上記酸味料をクエン酸換算で24?4000ppm含むものとすることは、当業者が普通になし得たことである。
よって、相違点1に係る本件発明1の特定事項は、甲1発明及び甲3、4、8?17に示される事項に基いて当業者が容易に想到し得たものである。

相違点1に関し、特許権者は、飲料に難消化性グルカンを配合した際に生じるえぐ味を改善するという新規の課題との関係において、甲1発明の組成を検討・変更する動機付けがない旨を主張する(平成31年4月23日付け意見書12ページ)。しかし、上記のとおり、ミネラル及び酸味料の含有量を、ビールテイスト飲料における一般的な範囲内とすることで、相違点1に係る本件発明1の構成に到達するのであるから、特許権者のいう新規の課題を認識するまでもなく、当該構成は、当業者が容易に想到し得たものである。
特許権者は、甲1に「原料にクエン酸やソルビトールを使用しているため、味質の面ではわずかな酸味や雑味、渋味を有しており、飲食品自体の風味を阻害してしまう」(【0006】)と記載されていることから、甲1発明において酸味は飲食品の風味を阻害するものであるとも主張するが(同意見書12?13ページ)、上記記載は、「ポリデキストロース」の味質を説明するものにすぎず、酸味料を排除すべき趣旨ではない。
よって、上記特許権者の主張はいずれも理由がない。

相違点2について検討する。
甲1には、食物繊維の強調表示が可能である飲食品を提供するための食物繊維素材が望まれていること、具体的な表示基準として、飲料100ml当り3g(約3%)であれば高い旨の表示ができ、1.5g(約1.5%)であれば含む旨の表示ができることが記載されている(1b)。そして、実施例1には、難消化性グルカンの酵素・分画処理物を約2%添加したノンアルコールビールが例示されている(1e)。
以上によれば、甲1発明の難消化性グルカン分画処理物を「ビールテイスト飲料100質量%あたり、0.1?5.0質量%」添加することは、普通に想定される範囲といえる。
よって、相違点2に係る本件発明1の特定事項は、甲1発明に基いて当業者が容易に想到し得たものである。

そして、甲1に、難消化性グルカンの酵素・分画処理物または還元処理物を添加することで、異味・異臭を与えることなく飲食品に良好な味質・風味を付与できることが記載されており(1b)、「えぐ味」そのものの記載がなくとも、総合的な味質が良好であることが示されているから、本件発明1が、甲1発明に比べて格別顕著な効果を奏するものであるとは認められない。

(ウ)小括
したがって、本件発明1は、甲1発明及び甲3、4、8?17に示される事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

イ 本件発明2
(ア)対比
上記ア(ア)での検討を踏まえ、本件発明2と甲1発明を対比すると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
[一致点]
難消化性グルカンを含むビールテイスト飲料。
[相違点1’]
本件発明2は、「酸味料と、ミネラル」を含み「前記酸味料の含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、クエン酸換算で50?800ppmであり、前記ミネラルの含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、10?1000ppmであり、前記ミネラルが、カルシウムイオン又はナトリウムイオンであり、前記酸味料が、リン酸、乳酸及びリンゴ酸からなる群から選択される少なくとも一種である」のに対し、甲1発明は、酸味料とミネラルを含むとはされていない点。
[相違点2’]
難消化性グルカンの含有量が、本件発明2では「ビールテイスト飲料100質量%あたり、0.5?5.0質量%」と特定されているのに対し、甲1発明では特定されていない点。
(注:下線は、それぞれ相違点1、相違点2と異なる部分である。)

(イ)判断
相違点1’について検討する。
相違点1についての検討事項に加え、甲16によれば、ビールに含まれるリン酸は、少ないものでは187.7ppm(クエン酸換算で375.4ppm)であり(16a)、製品毎の分析値が記載されている甲12、13、15によれば、ビール又はノンアルコール麦芽飲料に含まれる乳酸、リンゴ酸の含有量合計は、特に乳酸の多い甲15のNo.2、No.3、No.4、No.11、No.17を除けば、クエン酸換算で53ppm(13aのProstel)?332ppm(15aのNo.6)の範囲内である。
そうすると、リン酸、乳酸及びリンゴ酸からなる群から選択される少なくとも一種である酸味料の含有量が、クエン酸換算で50?800ppmの範囲内であるビールテイスト飲料も多数存在するといえる。
よって、相違点1’に係る本件発明2の特定事項は、甲1発明及び甲3、4、8?17に示される事項に基いて当業者が容易に想到し得たものである。
相違点2’については、相違点2とは下限値が異なるものの、判断については同様である。
したがって、本件発明2は、甲1発明及び甲3、4、8?17に示される事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

ウ 本件発明3
(ア)対比
上記ア(ア)での検討を踏まえ、本件発明3と甲1発明を対比すると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
[一致点]
難消化性グルカンを含むビールテイスト飲料。
[相違点1”]
本件発明3は、「酸味料と、ミネラル」を含み「前記酸味料の含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、クエン酸換算で50?800ppmであり、前記ミネラルの含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、20?60ppmであり、前記ミネラルが、カルシウムイオンであり、前記酸味料が、乳酸及びリンゴ酸からなる群から選択される少なくとも一種である」のに対し、甲1発明は、酸味料とミネラルを含むとはされていない点。
[相違点2”]
難消化性グルカンの含有量が、本件発明3では「ビールテイスト飲料100質量%あたり、1.0?2.0質量%」と特定されているのに対し、甲1発明では特定されていない点。
(注:下線は、それぞれ相違点1、相違点2と異なる部分である。)

(イ)判断
相違点1”について検討する。
まず、ミネラルについてみると、甲3、4、8、9(3c、4b、8a、9a)によれば、一般にビール又は発泡酒に含まれるカルシウムの含有量は概ね20?60ppmの範囲内である。
そうすると、甲1発明において、難消化性グルカン分画処理物の添加対象の「カロリーが40kcal/100g以下または20kcal/100ml以下のビール系飲料又はノンアルコールビール」についても、カルシウムイオン含有量が20?60ppmの範囲内のものとすることは、当業者が普通になし得たことである。
次に酸味料についてみると、相違点1についての検討事項に加え、製品毎の分析値が記載されている甲12、13、15によれば、ビール又はノンアルコール麦芽飲料に含まれる乳酸、リンゴ酸の含有量合計は、特に乳酸の多い甲15のNo.2、No.3、No.4、No.11、No.17を除けば、クエン酸換算で53ppm(13aのProstel)?332ppm(15aのNo.6)の範囲内である。
そうすると、乳酸及びリンゴ酸からなる群から選択される少なくとも一種である酸味料の含有量が、クエン酸換算で50?800ppmの範囲内であるビールテイスト飲料も多数存在するといえる。
よって、相違点1”に係る本件発明3の特定事項は、甲1発明及び甲3、4、8?17に示される事項に基いて当業者が容易に想到し得たものである。
相違点2”については、相違点2とは上下限値が異なるものの、判断については同様である。
したがって、本件発明3は、甲1発明及び甲3、4、8?17に示される事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

エ 本件発明4
(ア)対比
上記ア(ア)での検討に加え、甲1発明の「ノンアルコールビール」は、本件発明4の「ノンアルコール飲料である、ビールテイスト飲料」に相当するから、本件発明4と甲1発明を対比すると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
[一致点]
難消化性グルカンを含む、ノンアルコール飲料である、ビールテイスト飲料。
[相違点1]
本件発明4は、「酸味料と、ミネラル」を含み「前記酸味料の含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、クエン酸換算で24?4000ppmであり、前記ミネラルの含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、10?1000ppmであり、前記ミネラルが、カルシウムイオン又はナトリウムイオンであり、前記酸味料が、リン酸、乳酸及びリンゴ酸からなる群から選択される少なくとも一種である」のに対し、甲1発明は、酸味料とミネラルを含むとはされていない点。
[相違点2]
難消化性グルカンの含有量が、本件発明4では「ビールテイスト飲料100質量%あたり、0.1?5.0質量%」と特定されているのに対し、甲1発明では特定されていない点。

(イ)判断
相違点1、2についての判断は、前記ア(イ)のとおりである。
したがって、本件発明4は、甲1発明及び甲3、4、8?17に示される事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

オ 本件発明5
本件発明5は、本件発明1の「ビールテイスト飲料」を、単に発明のカテゴリーを変更して、「ビールテイスト飲料の製造方法」の発明としたものに相当する。一方、甲1には、甲1発明に係るビール系飲料又はノンアルコールビールの製造方法の発明(以下「甲1’発明」という。)も記載されていると認められる。
そして、本件発明5と、甲1’発明とを対比すると、両者の一致点、相違点は、本件発明1と甲1発明の一致点、相違点と同様であり、相違点についての判断も同様である。
よって、本件発明5は、本件発明1と同様に、甲1’発明及び甲3、4、8?17に示される事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

カ 本件発明7
(ア)対比
上記ア(ア)での検討に加え、甲1発明の「ノンアルコールビール」は、本件発明7の「ビールテイスト飲料(但し、醸造酒であるビールテイスト飲料を除く)」に相当するから、本件発明7と甲1発明を対比すると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
[一致点]
難消化性グルカンを含むビールテイスト飲料(但し、醸造酒であるビールテイスト飲料を除く)。
[相違点1”]
本件発明7は、「酸味料と、ミネラル」を含み「前記酸味料の含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、クエン酸換算で50?800ppmであり、前記ミネラルの含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、20?60ppmであり、前記ミネラルが、カルシウムイオンであり、前記酸味料が、乳酸及びリンゴ酸からなる群から選択される少なくとも一種である」のに対し、甲1発明は、酸味料とミネラルを含むとはされていない点。
[相違点2”]
難消化性グルカンの含有量が、本件発明7では「ビールテイスト飲料100質量%あたり、1.0?2.0質量%」と特定されているのに対し、甲1発明では特定されていない点。

(イ)判断
相違点1”、2”についての判断は、前記ウ(イ)のとおりである。
したがって、本件発明7は、甲1発明及び甲3、4、8?17に示される事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

キ 本件発明8
(ア)対比
上記ア(ア)での検討に加え、甲1発明の「ノンアルコールビール」は、本件発明8の「ノンアルコール飲料である、ビールテイスト飲料」に相当するから、本件発明8と甲1発明を対比すると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
[一致点]
難消化性グルカンを含む、ノンアルコール飲料である、ビールテイスト飲料。
[相違点1’]
本件発明8は、「酸味料と、ミネラル」を含み「前記酸味料の含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、クエン酸換算で50?800ppmであり、前記ミネラルの含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、10?1000ppmであり、前記ミネラルが、カルシウムイオン又はナトリウムイオンであり、前記酸味料が、リン酸、乳酸及びリンゴ酸からなる群から選択される少なくとも一種である」のに対し、甲1発明は、酸味料とミネラルを含むとはされていない点。
[相違点2’]
難消化性グルカンの含有量が、本件発明8では「ビールテイスト飲料100質量%あたり、0.5?5.0質量%」と特定されているのに対し、甲1発明では特定されていない点。

(イ)判断
相違点1’、2’についての判断は、前記イ(イ)のとおりである。
したがって、本件発明8は、甲1発明及び甲3、4、8?17に示される事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

ク 本件発明9
(ア)対比
上記ア(ア)での検討に加え、甲1発明の「ノンアルコールビール」は、本件発明9の「ノンアルコール飲料である、ビールテイスト飲料」に相当するから、本件発明9と甲1発明を対比すると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
[一致点]
難消化性グルカンを含む、ノンアルコール飲料である、ビールテイスト飲料。
[相違点1”]
本件発明9は、「酸味料と、ミネラル」を含み「前記酸味料の含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、クエン酸換算で50?800ppmであり、前記ミネラルの含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、20?60ppmであり、前記ミネラルが、カルシウムイオンであり、前記酸味料が、乳酸及びリンゴ酸からなる群から選択される少なくとも一種である」のに対し、甲1発明は、酸味料とミネラルを含むとはされていない点。
[相違点2”]
難消化性グルカンの含有量が、本件発明9では「ビールテイスト飲料100質量%あたり、1.0?2.0質量%」と特定されているのに対し、甲1発明では特定されていない点。

(イ)判断
相違点1”、2”についての判断は、前記ウ(イ)のとおりである。
したがって、本件発明9は、甲1発明及び甲3、4、8?17に示される事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

ケ 本件発明10
(ア)対比
上記ア(ア)での検討に加え、甲1発明の「ノンアルコールビール」は、本件発明10の「ノンアルコール飲料である、ビールテイスト飲料」に相当するから、本件発明10と甲1発明を対比すると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
[一致点]
難消化性グルカンを含む、ノンアルコール飲料である、ビールテイスト飲料。
[相違点1”]
本件発明10は、「酸味料と、ミネラル」を含み「前記酸味料の含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、クエン酸換算で50?800ppmであり、前記ミネラルの含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、20?60ppmであり、前記ミネラルが、カルシウムイオンであり、前記酸味料が、乳酸及びリンゴ酸からなる群から選択される少なくとも一種である」のに対し、甲1発明は、酸味料とミネラルを含むとはされていない点。
[相違点2”]
難消化性グルカンの含有量が、本件発明10では「ビールテイスト飲料100質量%あたり、1.0?2.0質量%」と特定されているのに対し、甲1発明では特定されていない点。
[相違点3]
ノンアルコール飲料である、ビールテイスト飲料について、本件発明10では「高甘味度甘味料を含有するものを除く」ことが特定されているのに対し、甲1発明では特定されていない点。

(イ)判断
相違点1”、2”についての判断は、前記ウ(イ)のとおりである。
相違点3について、甲1には、ノンアルコールビールに高甘味度甘味料を含有させることの記載はなく、また、ノンアルコールビールに、必ずしも高甘味度甘味料を含有させる必要はないから、甲1発明を、高甘味度甘味料を含有しないノンアルコールビールとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
したがって、本件発明10は、甲1発明及び甲3、4、8?17に示される事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)甲2発明に基づく進歩性
ア 本件発明1
(ア)対比
甲2発明の「1種または2種以上の糖質またはその誘導体を活性炭存在下で縮合させて製造された糖縮合物」は、本件発明1の「難消化性グルカン」に相当する。
甲2発明の「糖縮合物が添加されてなる」ことは、本件発明1の「難消化性グルカン」「を含」むことに相当する。
甲2発明の「ビール風味アルコール飲料又はノンアルコールビール風味飲料」は、本件発明1の「ビールテイスト飲料」に相当する。
よって、本件発明1と甲2発明の一致点、相違点は以下のとおりである。
[一致点]
難消化性グルカンを含むビールテイスト飲料。
[相違点4]
本件発明1は、「酸味料と、ミネラル」を含み「前記酸味料の含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、クエン酸換算で24?4000ppmであり、前記ミネラルの含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、10?1000ppmであり、前記ミネラルが、カルシウムイオン又はナトリウムイオンであり、前記酸味料が、リン酸、乳酸及びリンゴ酸からなる群から選択される少なくとも一種である」のに対し、甲2発明は、酸味料とミネラルを含むとはされていない点。
[相違点5]
難消化性グルカンの含有量が、本件発明1では「ビールテイスト飲料100質量%あたり、0.1?5.0質量%」と特定されているのに対し、甲2発明では糖縮合物の添加量が特定されていない点。

(イ)判断
相違点4について検討する。
上記(2)ア(イ)で検討したとおり、甲3、4、8、9(3c、4b、8a、9a)によれば、一般にビール又は発泡酒に含まれるカルシウム又はナトリウムの含有量は10?1000ppmの範囲内であるから、甲2発明において糖縮合物が添加されるビール風味アルコール飲料又はノンアルコールビール風味飲料を、カルシウムイオン又はナトリウムイオン含有量が10?1000ppmの範囲内のものとすることは、当業者が普通になし得たことである。
同じく、上記(2)ア(イ)で検討したとおり、甲3、16、4、12?15、10、11、17(3d、16a、4c、12a?15a、10b、11a、17a、17b)によれば、ビールテイスト飲料は一般に、リン酸、乳酸及びリンゴ酸からなる群から選択される少なくとも一種である酸味料を含んでいて、その含有量は、クエン酸換算で24?4000ppmの範囲内であるから、甲2発明において糖縮合物が添加されるビール風味アルコール飲料又はノンアルコールビール風味飲料を、上記酸味料をクエン酸換算で24?4000ppm含むものとすることは、当業者が普通になし得たことである。
相違点5について検討する。
甲2には、ビール風味アルコール飲料への糖縮合物の含有量について、コク付与効果等をよりよく発揮させる観点から、0.3?5重量%が好ましい旨の記載があり(2d)、甲1によれば、飲料100ml当り1.5gの食物繊維を含有していれば、食物繊維を含む旨の強調表示をすることができることは当業者に周知であった(1b)。
そうすると、甲2発明の糖縮合物(食物繊維)について、コクを付与する効果や、食物繊維を含む旨の表示をすることを想定して、添加量を「ビールテイスト飲料100質量%あたり、0.1?5.0質量%」とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
よって、相違点4及び5に係る本件発明1の特定事項は、甲2発明及び甲1?4、8?17に示される事項に基いて当業者が容易に想到し得たものである。
そして、甲2発明の糖縮合物は、ビール風味飲料にコクを付与するとともに雑味を付与しないものであり(2b)、「えぐ味」そのものの記載がなくとも、総合的に雑味を付与しないことが示されているから、本件発明1が、甲2発明に比べて格別顕著な効果を奏するものであるとは認められない。

(ウ)小括
したがって、本件発明1は、甲2発明及び甲1?4、8?17に示される事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

イ 本件発明2
(ア)対比
上記ア(ア)での検討を踏まえ、本件発明2と甲2発明を対比すると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
[一致点]
難消化性グルカンを含むビールテイスト飲料。
[相違点4’]
本件発明2は、「酸味料と、ミネラル」を含み「前記酸味料の含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、クエン酸換算で50?800ppmであり、前記ミネラルの含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、10?1000ppmであり、前記ミネラルが、カルシウムイオン又はナトリウムイオンであり、前記酸味料が、リン酸、乳酸及びリンゴ酸からなる群から選択される少なくとも一種である」のに対し、甲2発明は、酸味料とミネラルを含むとはされていない点。
[相違点5’]
難消化性グルカンの含有量が、本件発明2では「ビールテイスト飲料100質量%あたり、0.5?5.0質量%」と特定されているのに対し、甲2発明では糖縮合物の添加量が特定されていない点。
(注:下線は、それぞれ相違点4、相違点5と異なる部分である。)

(イ)判断
相違点4’について検討すると、相違点4についての検討事項に加え、上記(2)イ(イ)で検討したとおり、リン酸、乳酸及びリンゴ酸からなる群から選択される少なくとも一種である酸味料の含有量が、クエン酸換算で50?800ppmの範囲内であるビールテイスト飲料も多数存在するといえるから、甲2発明のビール風味アルコール飲料又はノンアルコールビール風味飲料を、上記酸味料をクエン酸換算で50?800ppm含むものとすることは、当業者が普通になし得たことである。
相違点5’については、相違点5とは下限値が異なるものの、判断については同様である。
したがって、本件発明2は、甲2発明及び甲1?4、8?17に示される事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

ウ 本件発明3
(ア)対比
上記ア(ア)での検討を踏まえ、本件発明3と甲2発明を対比すると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
[一致点]
難消化性グルカンを含むビールテイスト飲料。
[相違点4”]
本件発明3は、「酸味料と、ミネラル」を含み「前記酸味料の含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、クエン酸換算で50?800ppmであり、前記ミネラルの含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、20?60ppmであり、前記ミネラルが、カルシウムイオンであり、前記酸味料が、乳酸及びリンゴ酸からなる群から選択される少なくとも一種である」のに対し、甲2発明は、酸味料とミネラルを含むとはされていない点。
[相違点5”]
難消化性グルカンの含有量が、本件発明3では「ビールテイスト飲料100質量%あたり、1.0?2.0質量%」と特定されているのに対し、甲2発明では糖縮合物の添加量が特定されていない点。
(注:下線は、それぞれ相違点4、相違点5と異なる部分である。)

(イ)判断
相違点4”について検討する。
まず、ミネラルについてみると、上記(2)ウ(イ)で検討したとおり、一般にビール又は発泡酒に含まれるカルシウムの含有量は概ね20?60ppmの範囲内であるから、甲2発明のビール風味アルコール飲料又はノンアルコールビール風味飲料を、カルシウムイオン含有量が20?60ppmの範囲内のものとすることは、当業者が普通になし得たことである。
次に酸味料についてみると、相違点4についての検討事項に加え、上記(2)ウ(イ)で検討したとおり、乳酸及びリンゴ酸からなる群から選択される少なくとも一種である酸味料の含有量が、クエン酸換算で50?800ppmの範囲内であるビールテイスト飲料も多数存在するといえるから、甲2発明のビール風味アルコール飲料又はノンアルコールビール風味飲料を、上記酸味料をクエン酸換算で50?800ppm含むものとすることは、当業者が普通になし得たことである。
相違点5”については、相違点5とは上下限値が異なるものの、判断については同様である。
したがって、本件発明3は、甲2発明及び甲1?4、8?17に示される事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

エ 本件発明4
(ア)対比
上記ア(ア)での検討に加え、甲2発明の「ノンアルコールビール風味飲料」は、本件発明4の「ノンアルコール飲料である、ビールテイスト飲料」に相当するから、本件発明4と甲2発明を対比すると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
[一致点]
難消化性グルカンを含む、ノンアルコール飲料である、ビールテイスト飲料。
[相違点4]
本件発明4は、「酸味料と、ミネラル」を含み「前記酸味料の含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、クエン酸換算で24?4000ppmであり、前記ミネラルの含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、10?1000ppmであり、前記ミネラルが、カルシウムイオン又はナトリウムイオンであり、前記酸味料が、リン酸、乳酸及びリンゴ酸からなる群から選択される少なくとも一種である」のに対し、甲2発明は、酸味料とミネラルを含むとはされていない点。
[相違点5]
難消化性グルカンの含有量が、本件発明4では「ビールテイスト飲料100質量%あたり、0.1?5.0質量%」と特定されているのに対し、甲2発明では糖縮合物の添加量が特定されていない点。

(イ)判断
相違点4、5についての判断は、上記ア(イ)のとおりである。
したがって、本件発明4は、甲2発明及び甲1?4、8?17に示される事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

オ 本件発明5
本件発明5は、本件発明1の「ビールテイスト飲料」を、単に発明のカテゴリーを変更して、「ビールテイスト飲料の製造方法」の発明としたものに相当する。一方、甲2には、甲2発明に係るビール風味アルコール飲料又はノンアルコールビール風味飲料の製造方法の発明(以下「甲2’発明」という。)も記載されていると認められる。
そして、本件発明5と、甲2’発明とを対比すると、両者の一致点、相違点は、本件発明1と甲2発明の一致点、相違点と同様であり、相違点についての判断も同様である。
よって、本件発明5は、本件発明1と同様に、甲2’発明及び甲1?4、8?17に示される事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

カ 本件発明7
(ア)対比
上記ア(ア)での検討に加え、甲2発明の「ノンアルコールビール風味飲料」は、本件発明7の「ビールテイスト飲料(但し、醸造酒であるビールテイスト飲料を除く)」に相当するから、本件発明7と甲2発明を対比すると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
[一致点]
難消化性グルカンを含むビールテイスト飲料(但し、醸造酒であるビールテイスト飲料を除く)。
[相違点4”]
本件発明7は、「酸味料と、ミネラル」を含み「前記酸味料の含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、クエン酸換算で50?800ppmであり、前記ミネラルの含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、20?60ppmであり、前記ミネラルが、カルシウムイオンであり、前記酸味料が、乳酸及びリンゴ酸からなる群から選択される少なくとも一種である」のに対し、甲2発明は、酸味料とミネラルを含むとはされていない点。
[相違点5”]
難消化性グルカンの含有量が、本件発明7では「ビールテイスト飲料100質量%あたり、1.0?2.0質量%」と特定されているのに対し、甲2発明では糖縮合物の添加量が特定されていない点。

(イ)判断
相違点4”、5”についての判断は、前記ウ(イ)のとおりである。
したがって、本件発明7は、甲2発明及び甲1?4、8?17に示される事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

キ 本件発明8
(ア)対比
上記ア(ア)での検討に加え、甲2発明の「ノンアルコールビール風味飲料」は、本件発明8の「ノンアルコール飲料である、ビールテイスト飲料」に相当するから、本件発明8と甲2発明を対比すると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
[一致点]
難消化性グルカンを含む、ノンアルコール飲料である、ビールテイスト飲料。
[相違点4’]
本件発明8は、「酸味料と、ミネラル」を含み「前記酸味料の含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、クエン酸換算で50?800ppmであり、前記ミネラルの含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、10?1000ppmであり、前記ミネラルが、カルシウムイオン又はナトリウムイオンであり、前記酸味料が、リン酸、乳酸及びリンゴ酸からなる群から選択される少なくとも一種である」のに対し、甲2発明は、酸味料とミネラルを含むとはされていない点。
[相違点5’]
難消化性グルカンの含有量が、本件発明8では「ビールテイスト飲料100質量%あたり、0.5?5.0質量%」と特定されているのに対し、甲2発明では糖縮合物の添加量が特定されていない点。

(イ)判断
相違点4’、5’についての判断は、前記イ(イ)のとおりである。
したがって、本件発明8は、甲2発明及び甲1?4、8?17に示される事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

ク 本件発明9
(ア)対比
上記ア(ア)での検討に加え、甲2発明の「ノンアルコールビール風味飲料」は、本件発明9の「ノンアルコール飲料である、ビールテイスト飲料」に相当するから、本件発明9と甲2発明を対比すると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
[一致点]
難消化性グルカンを含む、ノンアルコール飲料である、ビールテイスト飲料。
[相違点4”]
本件発明9は、「酸味料と、ミネラル」を含み「前記酸味料の含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、クエン酸換算で50?800ppmであり、前記ミネラルの含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、20?60ppmであり、前記ミネラルが、カルシウムイオンであり、前記酸味料が、乳酸及びリンゴ酸からなる群から選択される少なくとも一種である」のに対し、甲2発明は、酸味料とミネラルを含むとはされていない点。
[相違点5”]
難消化性グルカンの含有量が、本件発明9では「ビールテイスト飲料100質量%あたり、1.0?2.0質量%」と特定されているのに対し、甲2発明では糖縮合物の添加量が特定されていない点。

(イ)判断
相違点4”、5”についての判断は、前記ウ(イ)のとおりである。
したがって、本件発明9は、甲2発明及び甲1?4、8?17に示される事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

ケ 本件発明10
(ア)対比
上記ア(ア)での検討に加え、甲2発明の「ノンアルコールビール風味飲料」は、本件発明10の「ノンアルコール飲料である、ビールテイスト飲料」に相当するから、本件発明10と甲2発明を対比すると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
[一致点]
難消化性グルカンを含む、ノンアルコール飲料である、ビールテイスト飲料。
[相違点4”]
本件発明10は、「酸味料と、ミネラル」を含み「前記酸味料の含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、クエン酸換算で50?800ppmであり、前記ミネラルの含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、20?60ppmであり、前記ミネラルが、カルシウムイオンであり、前記酸味料が、乳酸及びリンゴ酸からなる群から選択される少なくとも一種である」のに対し、甲2発明は、酸味料とミネラルを含むとはされていない点。
[相違点5”]
難消化性グルカンの含有量が、本件発明10では「ビールテイスト飲料100質量%あたり、1.0?2.0質量%」と特定されているのに対し、甲2発明では糖縮合物の添加量が特定されていない点。
[相違点6]
ノンアルコール飲料である、ビールテイスト飲料について、本件発明10では「高甘味度甘味料を含有するものを除く」ことが特定されているのに対し、甲2発明では特定されていない点。

(イ)判断
相違点4”、5”についての判断は、前記ウ(イ)のとおりである。
相違点6について、甲2には、高甘味度甘味料含有飲食品への適用についても記載されているが(【0058】)、高甘味度甘味料が必須とされているわけではなく、また、ノンアルコールビールに、必ずしも高甘味度甘味料を含有させる必要はないから、甲2発明を、高甘味度甘味料を含有しないノンアルコールビールとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
したがって、本件発明10は、甲2発明及び甲1?4、8?17に示される事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本件特許の請求項1?5、7?10に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲3、4、8?17に示される事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、本件特許の請求項1?5、7?10に係る発明は、甲2に記載された発明及び甲1?4、8?17に示される事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本件特許の請求項1?5、7?10に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであるから、特許法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
難消化性グルカンと、酸味料と、ミネラルと、を含み、
前記難消化性グルカンの含有量が、ビールテイスト飲料100質量%あたり、0.1?5.0質量%であり、
前記酸味料の含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、クエン酸換算で24?4000ppmであり、
前記ミネラルの含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、10?1000ppmであり、
前記ミネラルが、カルシウムイオン又はナトリウムイオンであり、
前記酸味料が、リン酸、乳酸及びリンゴ酸からなる群から選択される少なくとも一種である、ビールテイスト飲料。
【請求項2】
難消化性グルカンと、酸味料と、ミネラルと、を含み、
前記難消化性グルカンの含有量が、ビールテイスト飲料100質量%あたり、0.5?5.0質量%であり、
前記酸味料の含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、クエン酸換算で50?800ppmであり、
前記ミネラルの含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、10?1000ppmであり、
前記ミネラルが、カルシウムイオン又はナトリウムイオンであり、
前記酸味料が、リン酸、乳酸及びリンゴ酸からなる群から選択される少なくとも一種である、ビールテイスト飲料。
【請求項3】
難消化性グルカンと、酸味料と、ミネラルと、を含み、
前記難消化性グルカンの含有量が、ビールテイスト飲料100質量%あたり、1.0?2.0質量%であり、
前記酸味料の含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、クエン酸換算で50?800ppmであり、
前記ミネラルの含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、20?60ppmであり、
前記ミネラルが、カルシウムイオンであり、
前記酸味料が、乳酸及びリンゴ酸からなる群から選択される少なくとも一種である、ビールテイスト飲料。
【請求項4】
難消化性グルカンと、酸味料と、ミネラルと、を含み、
前記難消化性グルカンの含有量が、ビールテイスト飲料100質量%あたり、0.1?5.0質量%であり、
前記酸味料の含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、クエン酸換算で24?4000ppmであり、
前記ミネラルの含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、10?1000ppmであり、
前記ミネラルが、カルシウムイオン又はナトリウムイオンであり、
前記酸味料が、リン酸、乳酸及びリンゴ酸からなる群から選択される少なくとも一種であり、
ノンアルコール飲料である、ビールテイスト飲料。
【請求項5】
難消化性グルカンと、酸味料と、ミネラルと、を配合する配合工程を含み、
前記難消化性グルカンを、ビールテイスト飲料100質量%あたり、0.1?5.0質量%になるように配合し、
前記酸味料を、ビールテイスト飲料全体に対して、クエン酸換算で24?4000ppmになるように配合し、
前記ミネラルを、ビールテイスト飲料全体に対して、10?1000ppmになるように配合し、
前記ミネラルが、カルシウムイオン又はナトリウムイオンであり、
前記酸味料が、リン酸、乳酸及びリンゴ酸からなる群から選択される少なくとも一種である、ビールテイスト飲料の製造方法。
【請求項6】
難消化性グルカンを含むビールテイスト飲料のえぐ味を改善する方法であって、
ビールテイスト飲料に、難消化性グルカンと、酸味料と、ミネラルと、を配合することを含み、
前記難消化性グルカンを、ビールテイスト飲料100質量%あたり、0.1?5.0質量%になるように配合し、
前記酸味料を、ビールテイスト飲料全体に対して、クエン酸換算で24?4000ppmになるように配合し、
前記ミネラルを、ビールテイスト飲料全体に対して、10?1000ppmになるように配合する、方法。
【請求項7】
難消化性グルカンと、酸味料と、ミネラルと、を含み、
前記難消化性グルカンの含有量が、ビールテイスト飲料100質量%あたり、1.0?2.0質量%であり、
前記酸味料の含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、クエン酸換算で50?800ppmであり、
前記ミネラルの含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、20?60ppmであり、
前記ミネラルが、カルシウムイオンであり、
前記酸味料が、乳酸及びリンゴ酸からなる群から選択される少なくとも一種である、ビールテイスト飲料(但し、醸造酒であるビールテイスト飲料を除く。)。
【請求項8】
難消化性グルカンと、酸味料と、ミネラルと、を含み、
前記難消化性グルカンの含有量が、ビールテイスト飲料100質量%あたり、0.5?5.0質量%であり、
前記酸味料の含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、クエン酸換算で50?800ppmであり、
前記ミネラルの含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、10?1000ppmであり、
前記ミネラルが、カルシウムイオン又はナトリウムイオンであり、
前記酸味料が、リン酸、乳酸及びリンゴ酸からなる群から選択される少なくとも一種であり、
ノンアルコール飲料である、ビールテイスト飲料。
【請求項9】
難消化性グルカンと、酸味料と、ミネラルと、を含み、
前記難消化性グルカンの含有量が、ビールテイスト飲料100質量%あたり、1.0?2.0質量%であり、
前記酸味料の含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、クエン酸換算で50?800ppmであり、
前記ミネラルの含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、20?60ppmであり、
前記ミネラルが、カルシウムイオンであり、
前記酸味料が、乳酸及びリンゴ酸からなる群から選択される少なくとも一種であり、
ノンアルコール飲料である、ビールテイスト飲料。
【請求項10】
難消化性グルカンと、酸味料と、ミネラルと、を含み、
前記難消化性グルカンの含有量が、ビールテイスト飲料100質量%あたり、1.0?2.0質量%であり、
前記酸味料の含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、クエン酸換算で50?800ppmであり、
前記ミネラルの含有量が、ビールテイスト飲料全体に対して、20?60ppmであり、
前記ミネラルが、カルシウムイオンであり、
前記酸味料が、乳酸及びリンゴ酸からなる群から選択される少なくとも一種であり、
ノンアルコール飲料である、ビールテイスト飲料(但し、高甘味度甘味料を含有するものを除く。)。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-09-13 
出願番号 特願2015-119319(P2015-119319)
審決分類 P 1 652・ 121- ZAA (A23L)
P 1 652・ 113- ZAA (A23L)
P 1 652・ 537- ZAA (A23L)
最終処分 取消  
前審関与審査官 藤澤 雅樹  
特許庁審判長 松下 聡
特許庁審判官 槙原 進
紀本 孝
登録日 2017-09-08 
登録番号 特許第6204942号(P6204942)
権利者 サッポロビール株式会社
発明の名称 飲料、飲料の製造方法及び難消化性グルカンを含む飲料のえぐ味を改善する方法  
代理人 坂西 俊明  
代理人 清水 義憲  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 清水 義憲  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 坂西 俊明  

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