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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C09J
審判 全部申し立て 2項進歩性  C09J
管理番号 1357666
異議申立番号 異議2018-700815  
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-01-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-10-05 
確定日 2019-11-11 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6308413号発明「接着剤、ブリスターパック用積層体及びそれを用いたブリスターパック」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6308413号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕について訂正することを認める。 特許第6308413号の請求項1、4ないし7に係る特許を維持する。 特許第6308413号の請求項2ないし3に対する特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6308413号の請求項1?7に係る特許についての出願は、平成29年8月29日(優先権主張 平成28年年9月6日)を国際出願日とするものであり、平成30年3月23日にその特許権の設定登録がされ、同年4月11日にその特許掲載公報が発行されたものである。
その後、平成30年10月5日に特許異議申立人松本聡子により特許異議の申立てがなされた。
その後の経緯は、以下のとおりである。

平成30年12月21日付け 取消理由通知
平成31年 3月 6日付け 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
同年 4月 2日付け 訂正拒絶理由通知
同年 同月25日受付け 意見書の提出(特許権者)
令和 元年 6月 4日付け 取消理由通知(決定の予告)
同年 7月26日付け 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)

なお、平成31年3月6日になされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
また、令和元年7月26日になされた訂正請求に対し、特許法第120条の5第5項の規定により、特許異議申立人に期間を指定して意見を述べる機会を与えたが、特許異議人からの応答はなかった。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容

令和元年7月26日付けの訂正請求(以下、「本件訂正」という。)の内容は、特許請求の範囲を訂正する以下の訂正事項1?4を含むものである。

訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「ポリオール及びエポキシ化合物を含有する主剤と、イソシアネート化合物を含有する硬化剤とを有し、前記主剤中のポリオールとエポキシ化合物の固形分質量比が100/20?100/60である」と記載されているのを、
「ポリオールとしてポリエステルポリオールのみを含有し、及びビスフェノールA型エポキシ化合物を含有する主剤と、芳香族系のイソシアネート化合物を含有する硬化剤とを有し、前記主剤中のポリエステルポリオールとビスフェノールA型エポキシ化合物の固形分質量比が100/20?100/60である」に訂正する。(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項4、5、6、7も同様に訂正する)

訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4に
「基材層と金属箔が請求項1?3のいずれかに記載の接着剤層を介して積層されたブリスターパック用積層体。」と記載されているのを、
「基材層と金属箔とを請求項1に記載の接着剤を塗布し貼り合わせたブリスターパック用積層体。」に訂正する。(請求項4の記載を直接的又は間接的に引用する請求項5、6、7も同様に訂正する)

訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

訂正事項4
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

2 訂正の適否
(1) 一群の請求項について

訂正事項1?4は、請求項1?7を訂正するものであるところ、本件訂正前の請求項2?7はいずれも請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、請求項1?7は特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項であり、本件訂正は、一群の請求項ごとになされたものである。

(2) 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1について

訂正事項1は、本件訂正前の請求項1にかかる発明の「ポリオール」を「ポリオールとしてポリエステルポリオールのみを含有し」に限定し、また、「エポキシ化合物」を「ビスフェノールA型エポキシ化合物」に限定し、また、「前記主剤中のポリオールとエポキシ化合物」を「前記主剤中のポリエステルポリオールとビスフェノールA型エポキシ化合物」に限定し、さらに、「イソシアネート化合物」を「芳香族系のイソシアネート化合物」に限定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

また、願書に添付した明細書には、「ポリオール」の具体例として「ポリエステルポリオール」が(【0018】、【0020】?【0021】、【0023】)具体的に例示され、かつ、好ましいものである旨記載されており、さらに、「ポリオール」として「ディックドライLX-906(ポリエステルポリオール、DIC社製)」のみを用いる実施例(【0049】?【0055】)も記載されている。
また、「エポキシ化合物」については、その具体例として「ビスフェノール型エポキシ樹脂」が具体的に例示され、かつ、好ましいものである旨記載されている(【0024】)ところ、「ビスフェノールA型エポキシ化合物」は、いわば、「ビスフェノール型エポキシ樹脂」の代表例ともいえる化合物であり、さらに、「エポキシ化合物」として「EPICLON-1050(エポキシ化合物、DIC社製)」を用いる実施例(【0049】?【0055】)も記載されている。なお、乙第4号証によれば、「EPICLON-1050(エポキシ化合物、DIC社製)」は、「ビスフェノールA型エポキシ化合物」である。
また、「イソシアネート化合物」については、その具体例として「トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート」が具体的に例示されるとともに、「脂肪族系より芳香族系」の方が好ましいものである旨記載されている(【0026】)ところ、「トリレンジイソシアネート」や「ジフェニルメタンジイソシアネート」は、いわば、「芳香族系ポリイソシアネート」の代表例ともいえる化合物であり、さらに、「イソシアネート化合物」として「硬化剤KW-75(ポリイソシアネート、DIC社製)」を用いる実施例(【0049】?【0055】)も記載されている。なお、「硬化剤KW-75(ポリイソシアネート、DIC社製)」は、乙第5号証によれば、「芳香族系ポリイソシアネート」であり、特開2014-101422号公報の【0064】によれば、「トルエンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体」である。

そうすると、訂正事項1は、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

イ 訂正事項2について

訂正事項2は、請求項4が請求項1?3を引用するものであったところ、引用する請求項から請求項2及び3を削除する訂正を含むものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項2は、「請求項1?3のいずれかに記載の接着剤層を介して積層された」との記載が、請求項1?3に記載の発明が「接着剤」の発明であることと整合しない表現であったので、これを「請求項1に記載の接着剤を塗布し貼り合わせた」という表現に改めることによって当該不整合を解消する訂正を含むものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項2は、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

ウ 訂正事項3、4について

訂正事項3、4は、それぞれ、請求項2、3を削除するものであるから、いずれも、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項3、4は、いずれも、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(3) 小括

上記のとおり、訂正事項1?4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1、3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、特許請求の範囲を、令和元年7月26日付けの訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1?7]について訂正することを認める。

第3 本件訂正発明

本件特許の請求項1?7に係る発明は、令和元年7月26日付けの訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?7に記載された、以下のとおりのもの(以下、それぞれ、「本件訂正発明1」、「本件訂正発明2」・・・「本件訂正発明7」といい、これらをまとめて「本件訂正発明」ともいう。)と認める。

「【請求項1】
ポリオールとしてポリエステルポリオールのみを含有し、及びビスフェノールA型エポキシ化合物を含有する主剤と、芳香族系のイソシアネート化合物を含有する硬化剤とを有し、前記主剤中のポリエステルポリオールとビスフェノールA型エポキシ化合物の固形分質量比が100/20?100/60であることを特徴とするブリスターパック積層体用接着剤。
【請求項2】
削除
【請求項3】
削除
【請求項4】
基材層と金属箔とを請求項1に記載の接着剤を塗布し貼り合わせたブリスターパック用積層体。
【請求項5】
前記基材層がポリアミドである請求項4に記載のブリスターパック用積層体。
【請求項6】
金属箔がアルミニウム箔である請求項4または5に記載のブリスターパック用積層体。
【請求項7】
請求項4?6のいずれかに記載のブリスターパック用積層体を用いたブリスターパック。」

第4 当審が通知した取消理由(決定の予告)の概要

当審が令和元年6月4日付けで通知した取消理由(決定の予告)の概要は、以下のA-1ないしCである。
また、取消理由Cは、刊行物として以下の甲1を引用するものである。

<取消理由>
A-1
本件特許の特許請求の範囲の請求項2の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
また、請求項2を直接又は間接的に引用する請求項3?7の記載も、同様の理由により、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
A-2
本件特許の特許請求の範囲の請求項1の記載は、その課題を解決することができるといえる範囲を超えて拡張・一般化されているので、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
また、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2?7の記載も、同様の理由により、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
B 本件特許の特許請求の範囲の請求項4の記載は、その「請求項1?3のいずれかに記載の接着剤層」という表現が、請求項1?3に記載の発明が「接着剤」の発明であることと整合しないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
また、請求項4を直接又は間接的に引用する請求項5?7の記載も、同様の理由により、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
C 本件特許の特許請求の範囲の請求項1?7に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された刊行物(下記「甲1」)に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<刊行物>
甲1:特開2015-82354号公報

第5 当合議体の判断

当合議体は、以下述べるように、本件特許は、明細書の記載が同法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものであるとはいえず(取消理由A-1、A-2)、また、本件特許は、特許請求の範囲の記載が同法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものであるとはいえず(取消理由B)、また、本件発明は、取消理由で通知した刊行物(甲1)に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものであるともいえない(取消理由C)と判断する。

1 取消理由A-1、A-2について(サポート要件)
(1) 検討手法

特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件(いわゆるサポート要件)に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らして当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
以下、この観点に沿って検討する。

(2) 取消理由A-1について

取消理由A-1は、「本件特許の特許請求の範囲の請求項2の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。」というものであるところ、上記第2のとおり、本件訂正により請求項2及び請求項2を引用する請求項3は削除された。また、上記第2のとおり、本件訂正により、請求項4?7は、請求項2を直接又は間接的に引用するものでなくなった。そうすると、取消理由A-1は、その対象となる請求項が存在しないものとなったため、理由がない。

(3) 取消理由A-2について
ア 本件訂正発明が解決しようとする課題

本件特許の明細書の発明の詳細な説明(以下、単に「発明の詳細な説明」ともいう。)には以下の記載がある。
「【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、ブリスターパックとして利用が可能なブリスターパック用積層体として、成型加工時に金属箔層の破断や基材層の浮き上がりを低減できる特定の組成である接着剤層を有する積層体を提供することを目的とする。」

したがって、本件訂正発明が解決しようとする課題は、ブリスターパックとして利用が可能なブリスターパック用積層体として、成型加工時に金属箔層の破断や基材層の浮き上がりを低減できる特定の組成である接着剤層を有する積層体を提供することであると認められる。

イ 本件訂正発明1について
(ア) 発明の詳細な説明の記載

本件訂正発明1の「ブリスターパック積層体用接着剤」は、「ポリエステルポリオール」、「ビスフェノールA型エポキシ化合物」、及び、「芳香族系のイソシアネート化合物」を含むこと、及び、「前記主剤中のポリエステルポリオールとビスフェノールA型エポキシ化合物の固形分質量比が100/20?100/60であること」を発明特定事項として備えるものであるところ、これらの発明特定事項について発明の詳細な説明には以下の記載がある。なお、下線は、当審が付した。

<ポリエステルポリオールについて>
「【0018】
(ポリオール)
本発明で使用するポリオールは、特に限定なく接着剤分野で使用されるポリオールをいずれも使用することができる。例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリエステルポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリウレタンポリオール、更に前述のポリオール等のブレンド物等を使用することができる。
【0019】
ポリエーテルポリオールとしては、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のオキシラン化合物を、例えば水、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の低分子量ポリオールを開始剤として重合して得られるポリエーテルポリオールが挙げられる。
【0020】
ポリエステルポリオールは多塩基酸と多価アルコールを反応させて得られる。前記多塩基酸は、公知であればいずれの原料も使用することができる。例えばダイマー酸が使用できる。ダイマー酸とはオレイン酸、リノール酸などのC18の不飽和脂肪酸のディールスアルダー型2量化反応による生成物であり、不飽和結合に水素を添加し飽和させたものなど種々のものが市販されている。代表的なものは、C18のモノカルボン酸0?5重量%、C36のダイマー酸70?98%およびC54のトリマー酸0?30重量%からなるものである。また、ダイマージオールとは上記で説明したダイマー酸を還元させて得られるものである。また例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、無水マレイン酸、フマル酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2-ビス(フェノキシ)エタン-p,p’-ジカルボン酸及びこれらジカルボン酸の無水物あるいはエステル形成性誘導体;p-ヒドロキシ安息香酸、p-(2-ヒドロキシエトキシ)安息香酸及びこれらのジヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体、ダイマー酸等の多塩基酸を単独であるいは二種以上の混合物で使用することができる。
【0021】
また前記多価アルコールは、公知であればいずれの原料も使用することができる。例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、メチルペンタンジオール、ジメチルブタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリエチレングリコール、ポリカプロラクトンジオール、ダイマージオール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA等のグリコール類、プロピオラクトン、ブチロラクトン、ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン、β-メチル-δ-バレロラクトン等の環状エステル化合物の開環重合反応によって得られるポリエステル類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の活性水素原子を2個有する化合物の1種または2種以上を開始剤としてエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン、シクロヘキシレン、等のモノマーの1種または2種以上を常法により付加重合したポリエーテル類等の多価アルコール成分を単独であるいは二種以上の混合物として使用できる。
【0022】
ポリウレタンポリオールは前記多価アルコールとイソシアネートと反応させて得られる。反応即ちウレタン化に用いられるイソシアネートとしては、芳香族ジイソシアネート(ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、低分子グリコール類と前記芳香族ジイソシアネートとのプレポリマー等);脂肪族ジイソシアネート(1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、エチレングリコール、プロピレングリコール等の低分子グリコール類と前記脂肪族ジイソシアネートとのプレポリマー等);脂環族ジイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、水添化4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシルー4,4’-ジイソシアネート、低分子グリコール類と前記脂環族ジイソシアネートとのプレポリマー等);及びこれらの二種以上の混合物が挙げられる。また前述のポリアルキレンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールと反応させてもよく、この場合前記多価アルコールと併用してもよく併用しなくてもよい。反応させたものはポリエステルポリウレタンポリオールやポリエーテルポリウレタンポリオールと称される。
【0023】
この中で、ポリエステルポリオールやポリエステルポリウレタンポリオール等のエステル骨格を有するポリオールが柔軟性や成型性に優れることから好ましく使用される。」

<ビスフェノールA型エポキシ化合物について>
「【0024】
(エポキシ化合物)
本発明で使用するエポキシ化合物としては、一般的に市販されているエピ-ビス型、ノボラック型、β-メチルエピクロ型、環状オキシラン型、グリシジルエーテル型、グリシジルエステル型、ポリグリコールエーテル型、グリコールエーテル型、エポキシ化脂肪酸エステル型、多価カルボン酸エステル型、アミノグリシジル型、レゾルシン型等の各種エポキシ樹脂が挙げられる。
エポキシ樹脂としては、一般的に市販されているビスフェノール型エポキシ樹脂、のぼらック型エポキシ樹脂、環状オキシラン型樹脂、グリシジルエーテル型樹脂、グリシジルエステル型樹脂、ポリグリコールエーテル型エポキシ樹脂、グリコールエーテル型エポキシ樹脂、エポキシ化脂肪酸エステル型樹脂、多価カルボン酸エステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂等の各種エポキシ樹脂が挙げられる。中でも、ビスフェノール型エポキシ樹脂が、成型性に優れることから好ましく使用される。」

<芳香族系のイソシアネート化合物について>
「【0026】
(イソシアネート化合物を含有する硬化剤)
本発明で使用するイソシアネート化合物は、公知慣用のものを使用することができる。
例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3-(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネートなどのポリイソシアネート;これらのポリイソシアネートのアダクト体、これらのポリイソシアネートのビュレット体、または、これらのポリイソシアネートのイソシアヌレート体などのポリイソシアネートの誘導体(変性物)などが挙げられる。
ポリイソシアネートに限定はないが、脂肪族系より芳香族系のものの方が剥離強度、成形性において好成績である。」

<前記主剤中のポリエステルポリオールとビスフェノールA型エポキシ化合物の固形分質量比が100/20?100/60であることについて>
「【0025】
前記ポリオール及びエポキシ化合物を含有する主剤中、ポリオールとエポキシ化合物の固形分質量比は100/20?100/60であることが特徴である。この範囲において、成型加工時に金属箔層の破断や基材層の浮き上がりが生じにくい接着剤層を有する積層体を得ることができる。前記固形分質量比は中でも100/20?100/40であることが好ましく100/20?100/30であることが最も好ましい。」

<実施例について>
「【0049】
以下、実施例によりさらに本発明を詳細に説明する。表記「部」は、質量部を示す。
【0050】
(製造例1)接着剤(1)の作製
ディックドライLX-906(ポリエステルポリオール、DIC社製)とEPICLON-1050(エポキシ化合物、DIC社製)の固形分質量比を100/40(ポリオール/エポキシ化合物)で混合し、酢酸エチルで希釈する事により固形分60%の主剤Aを調製した。主剤Aに硬化剤KW-75(ポリイソシアネート、DIC社製)を主剤/硬化剤比率=10:1.6(NCO/OH比(mol/mol)に換算し5.2)で混合し、酢酸エチルで希釈する事により配合液として固形分35%の接着剤(1)を得た。
【0051】
(製造例2)接着剤(2)の作製
ディックドライLX-906(ポリエステルポリオール、DIC社製)とEPICLON-1050(エポキシ化合物、DIC社製)の固形分質量比を100/25(ポリオール/エポキシ化合物)で混合し、酢酸エチルで希釈する事により固形分60%の主剤Aを調製した。主剤Aに硬化剤KW-75(ポリイソシアネート、DIC社製)を主剤/硬化剤比率=10:1.6(NCO/OH比(mol/mol)に換算し4.6)で混合し、酢酸エチルで希釈する事により配合液として固形分35%の接着剤(2)を得た。
【0052】
(製造例3)接着剤(3)の作製
ディックドライLX-906(ポリエステルポリオール、DIC社製)とEPICLON-1050(エポキシ化合物、DIC社製)の固形分質量比を100/60(ポリオール/エポキシ化合物)で混合し、酢酸エチルで希釈する事により固形分60%の主剤Aを調製した。主剤Aに硬化剤KW-75(ポリイソシアネート、DIC社製)を主剤/硬化剤比率=10:1.6(NCO/OH比(mol/mol)に換算し5.9)で混合し、酢酸エチルで希釈する事により配合液として固形分35%の接着剤(3)を得た。
【0053】
(製造例4)接着剤(4)の作製
ディックドライLX-906(ポリエステルポリオール、DIC社製)とEPICLON-1050(エポキシ化合物、DIC社製)の固形分質量比を100/40(ポリオール/エポキシ化合物)で混合し、酢酸エチルで希釈する事により固形分60%の主剤Aを調製した。主剤Aに硬化剤KW-75(ポリイソシアネート、DIC社製)を主剤/硬化剤比率=10:1.4(NCO/OH比(mol/mol)に換算し4.5)で混合し、酢酸エチルで希釈する事により配合液として固形分35%の接着剤(4)を得た。
【0054】
(製造例5)接着剤(5)の作製
ディックドライLX-906(ポリエステルポリオール、DIC社製)とEPICLON-1050(エポキシ化合物、DIC社製)の固形分質量比を100/40(ポリオール/エポキシ化合物)で混合し、酢酸エチルで希釈する事により固形分60%の主剤Aを調製した。主剤Aに硬化剤KW-75(ポリイソシアネート、DIC社製)を主剤/硬化剤比率=10:1.8(NCO/OH比(mol/mol)に換算し5.8)で混合し、酢酸エチルで希釈する事により配合液として固形分35%の接着剤(5)を得た。
【0055】
(製造例6)接着剤(6)の作製
ディックドライLX-906(ポリエステルポリオール、DIC社製)とEPICLON-1050(エポキシ化合物、DIC社製)の固形分質量比を100/40(ポリオール/エポキシ化合物)で混合し、酢酸エチルで希釈する事により固形分60%の主剤Aを調製した。主剤Aに硬化剤KW-75(ポリイソシアネート、DIC社製)を主剤/硬化剤比率=10:2.0(NCO/OH比(mol/mol)に換算し6.5)で混合し、酢酸エチルで希釈する事により配合液として固形分35%の接着剤(6)を得た。
【0056】
(製造例H1)接着剤(H1)の作製
ディックドライLX-906(ポリエステルポリオール、DIC社製)とEPICLON-1050(エポキシ化合物、DIC社製)の固形分質量比を100/10(ポリオール/エポキシ化合物)で混合し、酢酸エチルで希釈する事により固形分60%の主剤Aを調製した。主剤Aに硬化剤KW-75(ポリイソシアネート、DIC社製)を主剤/硬化剤比率=10:1.6(NCO/OH比(mol/mol)に換算し4.1)で混合し、酢酸エチルで希釈する事により配合液として固形分35%の接着剤(H1)を得た。
【0057】
(製造例H2)接着剤(H2)の作製
ディックドライLX-906(ポリエステルポリオール、DIC社製)とEPICLON-1050(エポキシ化合物、DIC社製)の固形分質量比を100/70(ポリオール/エポキシ化合物)で混合し、酢酸エチルで希釈する事により固形分60%の主剤Aを
調製した。主剤Aに硬化剤KW-75(ポリイソシアネート、DIC社製)を主剤/硬化剤比率=10:1.6(NCO/OH比(mol/mol)に換算し6.3)で混合し、酢酸エチルで希釈する事により配合液として固形分35%の接着剤(H2)を得た。
【0058】
(実施例1)接着剤(1)を用いたブリスターパック用積層体(1)の作製
軟質アルミニウム箔(厚さ45μm)に接着剤(1)を固形分3.0gの塗布量でドライラミネーターによって塗布し、溶剤を揮散させた後、PVC(厚さ60μm)と貼り合わせて積層体を得た。次いで、二軸延伸ポリアミドフィルム(厚さ25μm)に接着剤(1)を固形分3.0gの塗布量でドライラミネーターによって塗布し、溶剤を揮散させた後、前記積層体のアルミニウム面と貼り合わせ、40℃で96時間保温して接着剤を硬化させてブリスターパック用積層体(1)を得た。
【0059】
(実施例2?6)
接着剤(1)の代わりに接着剤(2)?(6)を使用した以外は実施例1と同様にして、ブリスターパック用積層体(2)?(6)を得た。
【0060】
(比較例1)接着剤(H1)を用いたブリスターパック用積層体(2)の作製
接着剤(1)の代わりに製造例2で作製した接着剤(H1)を用いた他は積層体(1)と同様にしてブリスターパック用積層体(H1)を作製した。
【0061】
(比較例2)接着剤(H2)を用いたブリスターパック用積層体の作製
接着剤(1)の代わりに製造例3で作製した接着剤(H2)を用いた他は積層体(1)と同様にしてブリスターパック用積層体(H2)を作製した。
【0062】
(底材(1)の作製)
実施例(1)で得たブリスターパック用積層体(1)を縦横60mmに切断した。これを縦横各30mmの正方形金型で精密プレス機を用いてラミネート物に対して垂直方向に深さ6.0mmにプレス成型を行い、底材(1)を得た。
なお、使用した金型のポンチ形状は、一辺30mmの正方形、コーナーR2mm、ポンチ肩R1mm。使用した金型のダイス孔形状は一片34mmの正方形、ダイス孔コーナーR2mm、ダイス孔肩R:1mmであり、ポンチとダイス孔とのクリアランスは片側0.3mm。前記クリアランスにより成型高さに応じた傾斜が発生する。
【0063】
(底材(2)?(6)、底材(H1)?(H2)の作製)
ブリスターパック用積層体(1)の代わりにブリスターパック用積層体(2)?(6)、(H1)?(H2)を使用した以外は(底材(1)の作製)と同様にして、底材(2)?(6)、底材(H1)?(H2)を得た。
【0064】
<成型性の評価>
底材(1)?(6)、底材(H1)?(H2)に対し、ポリアミド側を凸側としてプレス機で3cm四方、深さ6mmの成型加工を行い成形物(1)?(6)、成形物(H1)?(H2)を得た。
【0065】
(浮き面積)
得られた成型物の角部分について、ポリアミドがアルミ面から浮き上がる箇所の個数と面積を比較評価した。
ポリアミド浮き面積が5mm未満のもの:小
ポリアミド浮き面積が5mm以上10mm未満:中
ポリアミド浮き面積が10mm以上:大
とした。
【0066】
(金属破断の個数)
得られた成型物について、アルミニウムが破断する箇所の個数を比較評価した。
【0067】
結果を表1に示す。
【0068】
【表1】


【0069】
<耐熱性の評価>
(ブリスターパックの作製)
成型物(1)?(6)、成型物(H1)?(H2)に収納物を充填し、ヒートシール剤を塗布したアルミニウム箔(厚さ25μm)を蓋材として、180℃2秒間の加熱により貼り合わせる事でブリスターパックを作製した。蓋材を貼り合わせるヒートシール工程後に成型物の角部分のポリアミドがアルミ面から浮き上がる箇所の個数と面積を比較評価した。
【0070】
【表2】


【0071】
この結果、実施例の接着剤を使用したブリスターパック積層体は、成形後あるいはブリスターパック製造後も、ポリアミドとアルミ面との間の浮きがなく良好であった。一方比較例の接着剤を使用したブリスターパック積層体は、浮きが生じてしまった。」

(イ) 検討

上記(ア)によれば、本件訂正発明1の「ブリスターパック積層体用接着剤」の構成成分である「ポリエステルポリオール」について、発明の詳細な説明に、種々のポリオールが列挙されているが、その上で、「ポリエステルポリオールやポリエステルポリウレタンポリオール等のエステル骨格を有するポリオールが柔軟性や成型性に優れることから好ましく使用される」(段落【0023】)と説明されていることから、本件訂正発明1の「ポリエステルポリオール」は、発明の詳細な説明において好ましく使用されるものとして例示されている具体例のうちの1つに該当することが理解できる。
同様に、「エポキシ化合物」についても、発明の詳細な説明において、種々のエポキシ化合物を列挙した上で、「中でも、ビスフェノール型エポキシ樹脂が、成型性に優れることから好ましく使用される」(段落【0024】)と説明されているから、好ましく使用されるものとして例示されている具体例に該当することが理解でき、また、「芳香族系のイソシアネート化合物」についても、発明の詳細な説明において、種々のイソシアネート化合物を列挙した上で、「脂肪族系より芳香族系のものの方が剥離強度、成形性において好成績である」(段落【0026】)と説明されているから、より好ましいと説明されているものに該当するものであることが理解できる。
さらに、本件訂正発明1の「ブリスターパック積層体用接着剤」は、「前記主剤中のポリオールとエポキシ化合物の固形分質量比が100/20?100/60であること」を充足するものとすることによって、「成型加工時に金属箔層の破断や基材層の浮き上がりが生じにくい接着剤層を有する積層体を得ることができる」(段落【0025】)と説明されているところ、本件訂正発明1は、この点も充足するものであることが理解できる。

加えて、発明の詳細な説明には、本件訂正発明1において、「ポリエステルポリオール」として、「ディックドライLX-906(ポリエステルポリオール、DIC社製)」を使用し、「ビスフェノールA型エポキシ化合物」として、「EPICLON-1050(エポキシ化合物、DIC社製)」を使用し、「芳香族系のイソシアネート化合物」として、「KW-75(ポリイソシアネート、DIC社製)」を使用するとともに、ポリオールとエポキシ化合物の固形分質量比が100/20?100/60ものを製造したこと(段落【0049】?【0055】)、その「成形性の評価」(段落【0064】)をするために「浮き面積」(段落【0065】)及び「金属破断の個数」(段落【0066】)を評価した結果(段落【0068】の【表1】、段落【0070】の【表2】)が記載されており、さらに「この結果、実施例の接着剤を使用したブリスターパック積層体は、成形後あるいはブリスターパック製造後も、ポリアミドとアルミ面との間の浮きがなく良好であった。一方比較例の接着剤を使用したブリスターパック積層体は、浮きが生じてしまった。」(段落【0071】)と記載されている。

以上によれば、本件訂正発明1は、「ポリオール」、「エポキシ化合物」及び「ポリイソシアネート」のそれぞれについて、発明の詳細な説明において好ましいものである旨説明されているものに限定されているとともに、当該好ましいものを使用した実施例において、課題を解決することができることが確認されていると認められる。
そうすると、本件訂正発明1は、発明の詳細な説明の記載により、その発明が解決しようとする課題を解決することができるものであることを理解できるものであると認められる。

ウ 本件訂正発明4?7について
本件訂正発明4?7は、本件訂正発明1を直接または間接的に引用し、さらに限定した発明であるが、上記イのとおり、本件訂正発明1は、発明の詳細な説明の記載により、その発明が解決しようとする課題を解決することができるものであることを理解できるものであると認められる。
そうすると、本件訂正発明4?7も、本件訂正発明1と同様の理由により、発明の詳細な説明の記載により、その発明が解決しようとする課題を解決することができるものであることを理解できるものであると認められる。

エ 小括

以上のとおりであるから、この出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものであるとはいえない。

2 取消理由Bについて(明確性)

取消理由Bは、「本件特許の特許請求の範囲の請求項4の「請求項1?3のいずれかに記載の接着剤層」という表現が、請求項1?3に記載の発明が「接着剤」の発明であることと整合しないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。」というものであるところ、上記第2のとおり、本件訂正により当該表現が訂正されて明瞭になった。
そうすると、取消理由Bは、理由がない。

3 取消理由Cについて(進歩性)
(1) 刊行物

特開2015-82354号公報(甲1)

(2) 刊行物の記載事項

特開2015-82354号公報(異議申立人が提出した甲第1号証。)には以下の事項が記載されている。

「【請求項1】
外層側樹脂フィルム層(11)、外層側接着剤層(12)、金属箔層(13)、内層側接着剤層(14)およびヒートシール層(15)が順次積層されてなる電池用包装材において、
前記外層側接着剤層(12)が、ポリオール成分(A)を含有する主剤と、ポリイソシアネート成分(B)を含有する硬化剤とを含有するポリウレタン接着剤から形成されたものであり、
前記ポリオール成分(A)が、ポリエステルポリオール(A1):85?99重量%、3官能以上のアルコール成分(A2):1?15重量%を含有し(但し、前記(A1)と(A2)の合計を100重量%とする)、
前記ポリエステルポリオール(A1)が、多塩基酸成分と多価アルコール成分とから構成される数平均分子量5000?50000ポリエステルポリオールであって、前記多塩基酸成分100モル%中、芳香族多塩基酸成分を45?95モル%含み、
前記主剤中に含まれるポリオール(A)由来のヒドロキシル基とカルボキシル基の合計に対する硬化剤中に含まれるイソシアネート基の当量比[NCO]/([OH]+[COOH])が0.5?10であることを特徴とする電池用包装材。」
「【0022】
主剤に含まれるポリオール成分(A)は、例えば、下記の3官能以上のアルコール(A2)を1?15重量%含有する。ポリオール成分(A)は、3官能以上のアルコール(A2)は、2?13重量%含有することが好ましく、3?10重量%含有することがより好ましい。
3官能以上のアルコール(A2)は、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリメチロールブタン、1,2,6-ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、更に前記3官能以上のアルコールとジイソシアネートを反応させて得られるウレタン変性アルコールを挙げることができる。
3官能以上のアルコール(A2)を上記の割合で含有することにより、105℃、100%RHの高温高湿試験後のラミネート強度と高温高湿試験前のラミネート強度とをバランスよく両立することができる。即ち、3官能以上のアルコール(A2)が1重量%未満の場合、接着剤層の架橋密度不足により、高温高湿試験の際、接着剤層が膨潤して加水分解が促進され、でラミネート強度が高温高湿試験前に比して低下する。一方、3官能以上のアルコール(A2)が15重量%を超えると接着剤層の架橋密度が高くなりすぎて、金属箔層(13)に対する濡れ性が低下し、高温高湿試験前のラミネート強度が不足する。」
「【実施例】
【0041】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。実施例及び比較例中の%は総て質量%を意味する。
(合成例1)
イソフタル酸232.4g、エチレングリコール42.7g、ネオペンチルグリコール71.8g、1,6-ヘキサンジオール108.6gを仕込み、200?230℃で6時間エステル化反応を行い、所定量の水の留出後、アジピン酸87.6g加え、更に6時間エステル化反応を行った。所定量の水の留出後、テトライソブチルチタネート0.13gを添加し徐々に減圧し、1.3?2.6hPa、230?250℃で3時間エステル交換反応を行い、芳香族多塩基酸成分70モル%、数平均分子量19,000のポリエステルポリオールを得た。
このポリエステルポリオールを酢酸エチルにて不揮発分50%に調整し、水酸基価2.85mgKOH/g、酸価0.1mgKOH/gのポリエステルポリオール溶液(1)を得た。」
「【0053】
[主剤(1)の製造]
ポリエステルポリオール溶液(1)200g(固形分100g)と、KBM-403(シランカップリング剤)1gと、りん酸0.1gを配合した後、酢酸エチル24gを加え、不揮発分が45%の主剤(1)を得た。
【0054】
[主剤(2)?(16)の製造]
主剤(1)の場合と同様にして、ポリエステルポリオール溶液(1)?(8)と、下記に示す3官能以上のアルコール成分(A2)と、下記に示すカルボキシル基と反応可能な成分(C)、その他の成分を表1に示す割合(g)で配合した後、不揮発分が45%となるように酢酸エチルを加えて、主剤(2)?(16)を得た。
【0055】
<3官能以上のアルコール成分(A2)>
トリメチロールプロパン:3官能アルコール、水酸基価:1256mgKOH/g
ペンタエリスリトール:4官能アルコール、水酸基価:1650mgKOH/g
<カルボキシル基と反応可能な成分(C)>
YD-012:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(新日鐵化学(株)製)
カルボジライトV-07:カルボジイミド化合物(日清紡ケミカル(株)製)
<その他の成分>
KBM-403:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン(株)製)
【0056】
(実施例1?16、比較例1?7)
各主剤と以下に示す各硬化剤とを、主剤中に含まれるポリオール(A)由来のヒドロキシル基とカルボキシル基の合計に対する硬化剤中に含まれるイソシアネート基の当量比[NCO]/([OH]+[COOH])が表2に示す値となるように配合した後、不揮発分が30%となるように酢酸エチルを加えて、ポリウレタン接着剤を得た。
主剤に含まれる水酸基価と酸価の合計に対する硬化剤中のイソシアネート基の当量[NCO]/([OH]+[COOH])は以下のようにして求める。
[NCO]/([OH]+[COOH])
=[561×(硬化剤のNCO%)×(主剤100gに対する硬化剤配合量(g))]/[(主剤の水酸基価と酸価の合計(mgKOH/g))×42×100]
【0057】
厚さ40μmのアルミニウム箔の一方の面に、外層用接着剤として上記ポリウレタン接着剤を塗布量:4g/平方メートルとなる量でドライラミネーターによって塗布し、溶剤を揮散させた後、厚さ30μmの延伸ポリアミドフィルムを積層した。
次に、得られた積層フィルムのアルミニウム箔の他方の面に下記内層用接着剤を塗布量:4g/平方メートルとなる量でドライラミネーターによって塗布し、溶剤を揮散させた後、厚さ30μmの未延伸ポリプロピレンフィルムを積層し、その後、60℃、7日間の硬化(エージング)を行い、外層用および内層用接着剤を硬化させて電池用包装材を得た。
*内層用接着剤
AD-502(東洋モートン株式会社製・ポリエステルポリオール)を主剤とし、CAT-10L(東洋モートン株式会社製・イソシアネート系硬化剤)を重量比で主剤/硬化剤=100/10で配合し、不揮発分が30%となるように酢酸エチルを加えて内層用接着剤とした。
【0058】
<硬化剤(1)>
4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネートにトリメチロールプロパンが付加したアダクト体を酢酸エチルで希釈して固形分70%の樹脂溶液としたものを硬化剤(1)とした。硬化剤(1)のNCO%は10.6%であった。」
「【0065】
上記のようにして得られた電池用包装材に対して下記評価法に基づいて性能評価を行った。
<高温高湿試験前・後のラミネート強度>
電池用包装材を200mm×15mmの大きさに切断し、温度20℃、相対湿度65%の環境下にて、引張り試験機を用いて荷重速度300mm/分でT型剥離試験をおこなった。延伸ポリアミドフィルムとアルミニウム箔間の剥離強度(N/15mm巾)を、それぞれ5個の試験片の平均値で示した(高温高湿試験前のラミネート強度)。

別途、電池用包装材を105℃、100%RH雰囲気の恒温恒湿槽に入れ、168時間静置した後、電池用包装材を恒温恒湿槽から取り出し、試験前と同様に、ラミネート強度を測定した(高温高湿試験後のラミネート強度)。 各剥離強度の平均値に応じて、次の4段階の評価を行なった。

◎:6N 以上(実用上優れる)
○:4N以上、6N未満(実用域)
△:2N以上、4N未満(実用下限)
×:2N 未満
以上の結果を表2に併せて示す。
【0066】
<成型性評価法>
電池用包装材を80×80mmの大きさに切断し、ブランク(被成型材、素材)とした。前記ブランクに対し、延伸ポリアミドフィルムが外側になるようにして、成型高さフリーのストレート金型にて張り出し1段成型を行い、アルミニウム箔の破断や、各層間の浮きが発生しない、最大の成型高さにより成型性を評価した。なお、使用した金型のポンチ形状は、一辺30mmの正方形、コーナーR2mm、ポンチ肩R1mm。使用した金型のダイス孔形状は一片34mmの正方形、ダイス孔コーナーR2mm、ダイス孔肩R:1mmであり、ポンチとダイス孔とのクリアランスは片側2mm。前記クリアランスにより成型高さに応じた傾斜が発生する。成型の高さに応じて、次の4段階の評価を行なった。
【0067】
◎:6mm 以上(実用上優れる)
○:4mm 以上、6mm 未満(実用域)
△:2mm 以上、4mm 未満(実用下限)
×:2mm 未満
以上の結果を表2に併せて示す。
(中略)
【0069】
【表1】


【0070】
【表2】



「【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明に係る電池用包装材は、成型性に優れ、環境耐性が高い。従って、キャパシタ等の蓄電用包装材やPTP包装材や鋼板などの成型性を要する積層物や、防壁材、屋根材、太陽電池パネル材、窓材、屋外フローリング材、照明保護材、自動車部材などの建造物など屋外産業用途向けの積層体としても使用できる。」

(3) 引用発明
甲1には、請求項1に記載されている、外層側樹脂フィルム層(11)、外層側接着剤層(12)、金属箔層(13)、内層側接着剤層(14)およびヒートシール層(15)が順次積層されてなる電池用包装材の、外層側接着剤層(12)を形成する、ポリオール成分(A)を含有する主剤と、ポリイソシアネート成分(B)を含有する硬化剤とを含有するポリウレタン接着剤であって、前記ポリオール成分(A)が、ポリエステルポリオール(A1):85?99重量%、3官能以上のアルコール成分(A2):1?15重量%を含有し(但し、前記(A1)と(A2)の合計を100重量%とする)、前記ポリエステルポリオール(A1)が、多塩基酸成分と多価アルコール成分とから構成される数平均分子量5000?50000ポリエステルポリオールであって、前記多塩基酸成分100モル%中、芳香族多塩基酸成分を45?95モル%含み、前記主剤中に含まれるポリオール(A)由来のヒドロキシル基とカルボキシル基の合計に対する硬化剤中に含まれるイソシアネート基の当量比[NCO]/([OH]+[COOH])が0.5?10であるポリウレタン接着剤の具体的な態様として実施例7が記載されている。
また、実施例7は、主剤として「主剤(7)」、硬化剤として「硬化剤(1)」を含むものであり(【表2】)、
主剤(7)は、重量比で、ポリエステルポリオール溶液(A1)として「ポリエステルポリオール溶液(1)」を200部、多価アルコール成分(A2)として「トリメチロールプロパン」を4部、カルボン酸と反応可能な化合物(C)として「YD-012」を30部、その他の成分として「KBM-403」を1部、及び、「リン酸」を0.1部、希釈溶剤として「酢酸エチル」を67部含むものであり(【表1】)、
ポリエステルポリオール溶液(1)は、イソフタル酸232.4g、エチレングリコール42.7g、ネオペンチルグリコール71.8g、1,6-ヘキサンジオール108.6g、アジピン酸87.6gから、エステル化反応によって得た、芳香族多塩基酸成分70モル%、数平均分子量19,000のポリエステルポリオールを酢酸エチルにて不揮発分50%に調整したものであり(段落【0041】)、
硬化剤(1)は、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネートにトリメチロールプロパンが付加したアダクト体を酢酸エチルで希釈した、NCO%が10.6%である、固形分70%の樹脂溶液としたものであり(段落【0058】)、
YD-012は、「ビスフェノールA型エポキシ樹脂(新日鐵化学(株)製)」であり、KBM-403は、「3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン(株)製)」である(段落【0055】)。

したがって、甲1には、以下の発明(以下、「甲1接着剤発明」という。)が記載されていると認められる。

<甲1接着剤発明>
「外層側樹脂フィルム層(11)、外層側接着剤層(12)、金属箔層(13)、内層側接着剤層(14)およびヒートシール層(15)が順次積層されてなる電池用包装材の、外層側接着剤層(12)を形成する、ポリオール成分(A)を含有する主剤と、ポリイソシアネート成分(B)を含有する硬化剤とを含有するポリウレタン接着剤であって、
前記ポリオール成分(A)が、ポリエステルポリオール(A1):85?99重量%、3官能以上のアルコール成分(A2):1?15重量%を含有し(但し、前記(A1)と(A2)の合計を100重量%とする)、前記ポリエステルポリオール(A1)が、多塩基酸成分と多価アルコール成分とから構成される数平均分子量5000?50000ポリエステルポリオールであって、前記多塩基酸成分100モル%中、芳香族多塩基酸成分を45?95モル%含み、前記主剤中に含まれるポリオール(A)由来のヒドロキシル基とカルボキシル基の合計に対する硬化剤中に含まれるイソシアネート基の当量比[NCO]/([OH]+[COOH])が0.5?10であるポリウレタン接着剤であって、
ポリオール成分(A)を含有する主剤が、重量比で、
ポリエステルポリオール溶液(A1)として「ポリエステルポリオール溶液(1)」を200部、
多価アルコール成分(A2)として「トリメチロールプロパン」を4部、
カルボン酸と反応可能な化合物(C)として「YD-012」を30部、
その他の成分として「KBM-403」を1部、及び、「リン酸」を0.1部、希釈溶剤として「酢酸エチル」を67部含むものであり、
ポリエステルポリオール溶液(1)は、イソフタル酸232.4g、エチレングリコール42.7g、ネオペンチルグリコール71.8g、1,6-ヘキサンジオール108.6g、アジピン酸87.6gから、エステル化反応によって得た、芳香族多塩基酸成分70モル%、数平均分子量19,000のポリエステルポリオールを酢酸エチルにて不揮発分50%に調整したものであり、
YD-012は、「ビスフェノールA型エポキシ樹脂(新日鐵化学(株)製)」であり、
KBM-403は、「3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン(株)製)」であり、
ポリイソシアネート成分(B)を含有する硬化剤が、
4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネートにトリメチロールプロパンが付加したアダクト体を酢酸エチルで希釈した、NCO%が10.6%である、固形分70%の樹脂溶液としたものである、
ポリウレタン接着剤。」

また、甲1には、甲1接着剤発明の接着剤(実施例7の接着剤)について、厚さ40μmのアルミニウム箔の一方の面に、実施例7の接着剤を塗布し、溶剤を揮散させた後、厚さ30μmの延伸ポリアミドフィルムを積層し、最終的に電池用包装材を得たことが記載されている(段落【0057】)から、以下の発明(以下、「甲1積層体発明」という。)が記載されていると認められる。

<甲1積層体発明>
「厚さ40μmのアルミニウム箔の一方の面に、外層用接着剤として甲1接着剤発明の接着剤を塗布量:4g/平方メートルとなる量でドライラミネーターによって塗布し、溶剤を揮散させた後、厚さ30μmの延伸ポリアミドフィルムを積層して得た、
電池用包装材用積層体。」

(4) 対比、判断
ア 本件訂正発明1について
(ア) 対比
本件訂正発明1と甲1接着剤発明を対比する。
甲1接着剤発明の「ポリオール成分(A)」は、本件訂正発明1の「ポリオール」に相当する。

甲1接着剤発明の「ポリエステルポリオール(A1) 前記ポリエステルポリオール(A1)が、多塩基酸成分と多価アルコール成分とから構成される数平均分子量5000?50000ポリエステルポリオールであって、前記多塩基酸成分100モル%中、芳香族多塩基酸成分を45?95モル%含み イソフタル酸232.4g、エチレングリコール42.7g、ネオペンチルグリコール71.8g、1,6-ヘキサンジオール108.6g、アジピン酸87.6gから、エステル化反応によって得た、芳香族多塩基酸成分70モル%、数平均分子量19,000のポリエステルポリオール」は、本件訂正発明1の「ポリエステルポリオール」に相当する。

甲1接着剤発明の「ビスフェノールA型エポキシ樹脂(新日鐵化学(株)製)」は、本件訂正発明1の「ビスフェノールA型エポキシ化合物」に相当する。

甲1接着剤発明の「ポリオール成分(A)を含有する主剤」は、本件訂正発明1の「ポリオールとしてポリエステルポリオールのみを含有し、及びビスフェノールA型エポキシ化合物を含有する主剤」に対応する。

甲1接着剤発明の「ポリイソシアネート成分(B)を含有する硬化剤が、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネートにトリメチロールプロパンが付加したアダクト体を酢酸エチルで希釈した、NCO%が10.6%である、固形分70%の樹脂溶液としたものである」は、本件訂正発明1の「芳香族系のイソシアネート化合物を含有する硬化剤」に相当する。

甲1接着剤発明の「ポリエステルポリオール溶液(1)」は、「酢酸エチルにて不揮発分50%に調整したもの」であるから、甲1接着剤発明の「ポリエステルポリオール溶液(A1)として「ポリエステルポリオール溶液(1)」を200部」は、「ポリエステルポリオール」を100部含むものである。したがって、甲1接着剤発明について、主剤中のポリエステルポリオールとビスフェノールA型エポキシ化合物の固形分質量比は、100/30となるから、甲1接着剤発明は、本件訂正発明1の「前記主剤中のポリエステルポリオールとビスフェノールA型エポキシ化合物の固形分質量比が100/20?100/60である」を充足する。

そうすると、本件訂正発明1と甲1接着剤発明の一致点、相違点は、以下のとおりである。

<一致点>
「ポリオールとしてポリエステルポリオールを含有し、及びビスフェノールA型エポキシ化合物を含有する主剤と、芳香族系のイソシアネート化合物を含有する硬化剤とを有し、前記主剤中のポリエステルポリオールとビスフェノールA型エポキシ化合物の固形分質量比が100/20?100/60である接着剤。」

<相違点1>
ポリオールについて、本件訂正発明1は、「ポリオールとしてポリエステルポリオールのみを含有し」と特定されているのに対し、甲1接着剤発明の「ポリオール成分(A)」は、「前記ポリオール成分(A)が、ポリエステルポリオール(A1):85?99重量%、3官能以上のアルコール成分(A2):1?15重量%を含有し(但し、前記(A1)と(A2)の合計を100重量%とする)」と特定されている点

<相違点2>
接着剤について、本件訂正発明1は、「ブリスターパック積層体用」と特定されているのに対し、甲1接着剤発明は、「外層側樹脂フィルム層(11)、外層側接着剤層(12)、金属箔層(13)、内層側接着剤層(14)およびヒートシール層(15)が順次積層されてなる電池用包装材の、外層側接着剤層(12)を形成する」と特定されている点

(イ) 検討
相違点1について検討する。
甲1接着剤発明の「ポリオール成分(A)」は、「ポリエステルポリオール(A1):85?99重量%、3官能以上のアルコール成分(A2):1?15重量%を含有し(但し、前記(A1)と(A2)の合計を100重量%とする)」と特定されているのであるから、「3官能以上のアルコール成分(A2)」を、必ず含有することを要するものである。
また、甲1には、甲1接着剤発明の「3官能以上のアルコール成分(A2)」について、「3官能以上のアルコール(A2)を上記の割合で含有することにより、105℃、100%RHの高温高湿試験後のラミネート強度と高温高湿試験前のラミネート強度とをバランスよく両立することができる。即ち、3官能以上のアルコール(A2)が1重量%未満の場合、接着剤層の架橋密度不足により、高温高湿試験の際、接着剤層が膨潤して加水分解が促進され、でラミネート強度が高温高湿試験前に比して低下する。一方、3官能以上のアルコール(A2)が15重量%を超えると接着剤層の架橋密度が高くなりすぎて、金属箔層(13)に対する濡れ性が低下し、高温高湿試験前のラミネート強度が不足する。」(【0022】)と説明されている。
そして、甲1には、甲1接着剤発明の必須の成分である「3官能以上のアルコール成分(A2)」を、あえて含有させないことを当業者に着想せしめるような動機付けとなる事項を、見出すことはできない。

(ウ) 効果について
効果について検討する。
甲1には、甲1接着剤発明の「電池用包装材」の成型性を評価したところ、「◎」すなわち、「アルミニウム箔の破断や、各層間の浮きが発生しない、最大の成型高さ」が「6mm 以上(実用上優れる)」であることが記載されている(甲1の【表2】、段落【0066】?【0067】)。
これに対し、本件訂正発明1のブリスターパック積層体用接着剤に関する成型性は、「浮き面積」及び「金属破断の個数」で評価した結果0個であって優れたものであることが理解できる(本件特許明細書の段落【0062】?【0068】(必要であれば、上記1(3)イ(ア)の摘記を参照。)。

また、甲1には 「電池用包装材を105℃、100%RH雰囲気の恒温恒湿槽に入れ、168時間静置した後、電池用包装材を恒温恒湿槽から取り出し、ラミネート強度を測定したところ、実施例7について評価が「○」(4N以上、6N未満(実用域))であったことが記載されている(段落【0065】、【表2】)。
これに対し、本件訂正発明1のブリスターパック積層体用接着剤に関する耐熱性は、成型物に収納物を充填し、ヒートシール剤を塗布したアルミニウム箔(厚さ25μm)を蓋材として、180℃2秒間の加熱により貼り合わせる事でブリスターパックを作製した後に、成型物の角部分のポリアミドがアルミ面から浮き上がる箇所の個数と面積を比較評価するものであり、「ポリアミドとアルミ面との間の浮きがなく良好であった」というものである。
そうすると、本件訂正発明1と甲1接着剤発明は、成形性及びラミネート強度の点で概ね効果に差がないと認められるが、上述のとおり、甲1接着剤発明は、「3官能以上のアルコール成分(A2):1?15重量%を含有」することを必須とするものであるから、「3官能以上のアルコール成分(A2)」を含有しない(本件訂正発明1の)態様においては、同様の効果を奏することができない(効果が劣るものになる)と予測することが合理的である。
そうすると、甲1発明と概ね同等の効果を奏するという本件訂正発明1の効果は、当業者といえども、甲1に記載された事項から予測できたとはいえない。

(エ) 小括
以上のとおりであるから、相違点2について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。

イ 本件訂正発明4?7について
本件訂正発明4?6は、本件訂正発明1を直接又は間接的に引用し、さらに限定した積層体の発明であり、本件訂正発明7は、本件訂正発明1を間接的に引用し、さらに限定したブリスターパックの発明であるが、上記アのとおり、本件訂正発明1は、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められないものである。
そうすると、本件訂正発明4?7も、本件訂正発明1と同様の理由により、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められないものである。

(5)まとめ
以上のとおり、本件訂正発明1、4ないし7は、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。

第6 取消理由通知書に記載しなかった特許異議の申立ての理由について
1 特許異議申立人が申し立てた取消理由の概要

特許異議申立人が申し立てた取消理由1?4の概要は、以下のとおりである(特許異議申立書の特に16頁9-19行)。

取消理由1
特許法第36条第6項第1号について(同法第113条第4号)
本件特許の請求項2は、本件特許の発明の詳細な説明に記載されてない。
取消理由2
特許法第36条第6項第2号について(同法第113条第4号)
本件特許の請求項2に記載の発明は、規定されている数値範囲が一義的ではないため、不明確である。
取消理由3
特許法第29条第1項第3号について(同法第113条第2号)
本件特許発明1-7は、甲第1号証に記載された発明である。
取消理由4
特許法第29条第2項について(同法第113条第2号)
本件特許発明1-7は、甲第1号証に基づいて、当業者が容易に想到することができたものである。

2 判断
上記第2のとおり、本件訂正により請求項2、3が削除されたので、取消理由1、2は、その対象となる請求項が存在しないものとなったから、理由がない。
また、取消理由3、4についても、請求項2、3を対象とするものは、同様の理由により、理由がない。

また、取消理由3のうち、請求項1を対象とするものについては、上記第5 3(4)ア(ア)のとおり、本件訂正発明1と甲1接着剤発明を対比すると、相違点1、2があり、本件訂正発明1は、甲1に記載された発明ではないから、理由がない。
また、請求項4?7を対象とするものについては、本件訂正発明4?7は、本件訂正発明1を直接又は間接的に引用する発明であるから、本件訂正発明1と同様の理由により、甲1に記載された発明ではない。

取消理由4のうち、請求項1、4?7を対象とするものについては、上記上記第5 3のとおりであるから、理由がない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1、4ないし7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、4ないし7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項2及び3に係る特許は、上記のとおり、本件訂正により削除された。これにより、請求項2及び3に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 ポリオールとしてポリエステルポリオールのみを含有し、及びビスフェノールA型エポキシ化合物を含有する主剤と、芳香族系のイソシアネート化合物を含有する硬化剤とを有し、前記主剤中のポリエステルポリオールとビスフェノールA型エポキシ化合物の固形分質量比が100/20?100/60であることを特徴とするブリスターパック積層体用接着剤。
【請求項2】 削除
【請求項3】 削除
【請求項4】 基材層と金属箔とを請求項1に記載の接着剤を塗布し貼り合わせたブリスターパック用積層体。
【請求項5】 前記基材層がポリアミドである請求項4に記載のブリスターパック用積層体。
【請求項6】 金属箔がアルミニウム箔である請求項4または5に記載のブリスターパック用積層体。
【請求項7】 請求項4?6のいずれかに記載のブリスターパック用積層体を用いたブリスターパック。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-11-01 
出願番号 特願2017-561023(P2017-561023)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (C09J)
P 1 651・ 537- YAA (C09J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 吉岡 沙織  
特許庁審判長 冨士 良宏
特許庁審判官 蔵野 雅昭
天野 宏樹
登録日 2018-03-23 
登録番号 特許第6308413号(P6308413)
権利者 DIC株式会社
発明の名称 接着剤、ブリスターパック用積層体及びそれを用いたブリスターパック  
代理人 河野 通洋  
代理人 河野 通洋  
代理人 小川 眞治  
代理人 小川 眞治  
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