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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 A23L 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 A23L 審判 全部申し立て 2項進歩性 A23L 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 A23L |
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管理番号 | 1357691 |
異議申立番号 | 異議2019-700699 |
総通号数 | 241 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2020-01-31 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2019-09-05 |
確定日 | 2019-12-06 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6478608号発明「柑橘類風味ノンアルコール飲料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6478608号の請求項1?10に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6478608号の請求項1?10に係る特許についての出願は、平成26年12月12日の出願であって、平成31年2月15日に特許権の設定登録がされ、同年3月6日に特許公報が発行され、令和1年9月5日にその請求項1?10に係る発明の特許に対し、山本美映子(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがなされたものである。 第2 本件発明 特許第6478608号の請求項1?10に係る発明(以下「本件発明1」?「本件発明10」といい、まとめて「本件発明」と言うことがある。)は、その特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により定められるものである。 「 【請求項1】 飲用水に、柑橘類の果皮を使用して製造された柑橘類のフレーバー、酸味物質、及び0.7?1.6w/v%の難消化性デキストリンを含有させる工程を包含する、柑橘類風味ノンアルコール飲料に発生する劣化臭を抑制する方法。 【請求項2】 果汁を含有しない、請求項1に記載の劣化臭を抑制する方法。 【請求項3】 前記酸味物質がクエン酸及びリンゴ酸からなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1又は2に記載の劣化臭を抑制する方法。 【請求項4】 前記柑橘類のフレーバーがレモンのフレーバー又はグレープフルーツのフレーバーである、請求項1?3のいずれか一項に記載の劣化臭を抑制する方法。 【請求項5】 柑橘類風味ノンアルコール飲料が2.8?3.9のpHである、請求項1?4のいずれか一項に記載の劣化臭を抑制する方法。 【請求項6】 レモン風味又はグレープフルーツ風味である、請求項1?5のいずれか一項に記載の劣化臭を抑制する方法。 【請求項7】 高甘味度甘味料を含有する、請求項1?6のいずれか一項に記載の劣化臭を抑制する方法。 【請求項8】 柑橘類のフレーバーの含有量が0.02?0.4w/v%である、請求項1?7いずれか一項に記載の劣化臭を抑制する方法。 【請求項9】 糖質が0.5g/100ml未満である、請求項1?8のいずれか一項に記載の劣化臭を抑制する方法。 【請求項10】 柑橘類のフレーバーがレモンフレーバーであり、劣化臭がクレゾール臭である、請求項1?9のいずれか一項に記載の劣化臭を抑制する方法。」 第3 申立理由の概要 特許異議の申立ての理由の概要は、以下のとおりである。 理由1a 本件発明1、3、8は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、本件発明1、3、8に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 理由1b 本件発明1?4、6、10は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、本件発明1?4、6、10に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 理由1c 本件発明1、3、8は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第3号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、本件発明1、3、8に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 理由1d 本件発明1、3は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第4号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、本件発明1、3に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 理由2a 本件発明1?10は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第1号証に記載された発明に基いて、本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明1?10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 理由2b 本件発明1?10は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第2号証に記載された発明に基いて、本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明1?10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 理由2c 本件発明1?10は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第3号証に記載された発明に基いて、本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許1?10に係る発明は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 理由2d 本件発明1?10は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第4号証に記載された発明に基いて、本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明1?10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 理由3 この出願の、発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、本件発明1?10に係る特許は、同法第113条4項に該当し、取り消すべきものである。 理由4 この出願の、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、本件発明1?10に係る特許は、同法第113条4項に該当し、取り消すべきものである。 記 甲第1号証:特開平6-166622号公報 甲第2号証:特開2008-143843号公報 甲第3号証:特開2011-30483号公報 甲第4号証:特表2014-513965号公報 甲第5号証:R. M. Goodrich and R. J. Braddock, Major By-Products of the Florida Citrus Processing Industry, University of Florida IFAS Extension, 2006, Feb, pp.1-4 甲第6号証:特開2004-18613号公報 第4 当審の判断 1 各号証の記載 (1)甲第1号証の記載 (1a)「【請求項1】少なくとも30重量%の難消化性成分を含む難消化性デキストリンを、食品に対して1食分当り、1?30g添加することを特徴とする、食品に肥満、耐糖能障害を予防する作用を付与する方法。」 (1b)「【0006】 【発明が解決しようとする課題】従って本発明は、砂糖や澱粉質などの糖質の経口摂取による血糖値ならびにインスリン分泌の上昇を抑制することにより、肥満症の予防、耐糖能障害の予防を行うことができる作用を食品に付与する方法、同予防作用を有する食品およびその予防作用を有し且つ流動性と保存性が優れ、食品工業用のみならず家庭内でも容易に取扱うことができる砂糖調製品を提供することである。」 (1c)「【0074】 【実施例4】ファイバーソル2E(商品名(松谷化学工業株式会社製):コーンスターチを原料として前記(1)の方法により、2軸エクストルーダーを用いて加熱処理して製造した難消化性デキストリンの粉末で、難消化性成分の含量が90.7重量%のもの)を使用して次の実験を行った。 【0075】健康な男子10名について、空腹時の血糖値を測定したところ、平均80.5mg/dlであった。次いで、表7の組成のオレンジジュース200mlを服用させたところ、30分後の血糖値は平均146mg/dl、インスリン分泌は52.3μU/mlに上昇した。また、3gの難消化性デキストリンを添加したオレンジジュースを服用させたところ、30分後の血糖値およびインスリン分泌はそれぞれ平均121mg/dlおよび33μU/mlと有意に低値であった。さらに、難消化性デキストリン10gまたは30g(難消化性成分として約9gおよび約27g)を添加した表7のオレンジジュースを服用させたところ、30分経過後の血糖値およびインスリン分泌はそれぞれ平均118、112mg/dlおよび25、23μU/mlと有意に低下した。 【0076】 【表7】 」 (2)甲第2号証の記載 (2a)「【請求項1】 植物ステロールエステル、オクテニルコハク酸澱粉及び難消化性デキストリンを含有する粉末化植物ステロールエステル製剤。」 (2b)「【0009】 本発明の課題は、水への分散性、呈味性、非吸湿性及びバイオアベイラビリティに優れた粉末化植物ステロールエステル製剤、その製造方法及びこれを含む飲食品を提供することである。」 (2c)「【0028】 実施例1 表3に示す配合により、本発明の粉末化植物ステロールエステル製剤を製造した。 【0029】 【表3】 【0030】 ・・・(略)・・・ 【0031】 実施例2:レモンウォーター(スポーツ飲料風)の調製 表4の配合でレモンウォーターを調製したところ、分散性、風味は良好で、ざらつきもなかった。また、表4の配合で調製したレモンウォーターを100ml容量の飲料瓶に充填し、湯浴中で95℃達温あるいは85℃、30分間加熱殺菌後、流水で冷却、常温で3ヶ月間保存した。その結果、本発明品を添加することによる沈殿や浮遊物はみられなかった。 【0032】 【表4】 」 (3)甲第3号証の記載 (3a)「【請求項1】 キサンタンガム、・・・デキストリン、および澱粉からなる群から選択される1種又は2種の多糖類とネオテームを含有する甘味料組成物。」 (3b)「【0010】 本発明は、ボディ感又は濃厚感の不足を改善し、食品、医薬品又は医薬部外品等の経口的に用いられる製品に対して、良好な甘味を付与できる甘味組成物を提供することを目的とする。」 (3c)「【0035】 実施例1:難消化性デキストリンの添加効果 表3の処方に従い、オレンジジュースにネオテーム及び多糖類(難消化デキストリン(パインファイバーC:松谷化学工業株式会社製))を添加し、官能評価によりコクを評価した。 【0036】 【表3】 【0037】 難消化デキストリンを0.5?10%添加することでコクが付与され、ネオテームの甘味の後味が低減された。濃度が高いほどコクが付与されたが、風味がマスキングされる傾向がみられた。2%添加が最もコントロールに近い味質であった。」 (4)甲第4号証の記載 (4a)「【請求項1】 以下の食物繊維a)、b)およびc): ‐ 食物繊維a):フラクトオリゴ糖、 ‐ 食物繊維b):難消化性のデキストリンまたはマルトデキストリン、 ‐ 食物繊維c):ポリデキストロース の混合物を含む組成物であって、 ここで、食物繊維a)、b)およびc)の重量での相対量は、食物繊維a)、b)およびc)の重量での合計量に対して、以下の通り: ‐ 1%?98%の食物繊維a)、 ‐ 1%?98%の食物繊維b)、および ‐ 1%?50%の食物繊維c) であり、食物繊維a)、b)およびc)の合計量は100%である、前記組成物。」 (4b)「【0005】 食物繊維の使用は、いくつかの望ましくない副作用、例えば、大腸内での高いガス生成によって制限され得る。多量の食物繊維を含む食品組成物への耐性は影響を受け得る。したがって、経口摂取した場合に潜在的な副作用を軽減する食物繊維を含む組成物への需要が存在する。」 (4c)「【0045】 例8‐臨床評価 研究製品の耐性を、モノセントリック二重盲検のランダム化2パラレルアームコントロールされたプラセボ研究で、以下の参加者により調査した: 参加者:機能性消化器疾患を有さないか、または消化器疾患と診断されていない、200名の18?45歳の健康な女性。 【0046】 試験製品は、以下のものであった(100gあたりの量) 【表4】 【0047】 参加者は、21日間、研究製品またはコントロールを1日あたり200ml、2部摂取すること、およびスコアスケールで望ましくない副作用を評価することを求められた。」 (5)甲第5号証の記載(訳文で示す) (5a)「 」(第2頁左欄) (5b)「エッセンシャルオイル 柑橘果実の果皮は、オイルを含む多数の油胞を有しており、典型的には主要な副産物として回収される。各々のタイプの柑橘果実は、それぞれ特徴的な化合物のセットを有しており、この化合物はオイルを含み、そのフレーバーやアロマに関与する。エッセンシャルオイルの回収と利用は、有史以前から行われており、商業的には数100年間行われているが、今日の産業では技術を拡大して、エッセンシャルオイルをラージスケールで回収している。」(第2頁左欄、図1の下から第1行?第10行) (5c)「エッセンシャルオイルは飲食品のフレーバーとして用いられ、香水産業では、パーソナルケア製品及び消費者製品として用いられ、特殊化学物質商業に用いられている。コールドプレスオレンジオイルは、オレンジジュースの風味付けとして用いられ、オレンジジュースの特徴的なオレンジフレーバーに大きく関与している。」(第2頁右欄第20行?第26行) (6)甲第6号証の記載 (6a)「【0002】 【従来の技術】 シトラールはレモン様の特徴的な香りを有する重要な成分であるが、加熱もしくは経時的に減少しオフフレーバーが生成することが知られている〔Peter Schieberle and Werner Grosch; J. Agric. Food Chem., 36, 797-800(1988)〕。特に酸性条件下ではシトラール含有製品中のシトラールは、製造、流通、保存期間中の各段階で減少し、環化、水和、異性化等の反応によりその構造が変化し、その結果フレッシュ感の低下を引き起こす。さらにはシトラール由来の生成物の酸化反応により非常に強い劣化臭原因物質であるp-メチルアセトフェノン及びp-クレゾールが生成することにより著しい製品の品質低下を招く。従来、シトラールから生成する種々の劣化臭原因物質に関して、その発生防止の目的でイソアスコルビン酸等の酸化防止剤の添加〔Val E. Peacock and David W. Kuneman; J. Agric. Food Chem., 33, 330-335(1985)〕等様々な試みがなされたが、p-クレゾールおよびp-メチルアセトフェノンの生成抑制に関しては有効な方法は見出されていない。」 2 理由1a及び理由2aについての判断 (1) 甲第1号証に記載された発明 甲第1号証には、摘記(1a)のとおり、難消化性デキストリンを添加して食品に肥満、耐糖能障害を予防する作用を付与する方法に関する発明が記載されており、その目的は、摘記(1b)のとおり、肥満症の予防、耐糖能障害の予防を行うことができる作用を食品に付与する方法等を提供することである。 具体的には摘記(1c)に「表7の組成のオレンジジュース200mlを服用させたところ、30分後の血糖値は平均146mg/dl、インスリン分泌は52.3μU/mlに上昇した。また、3gの難消化性デキストリンを添加したオレンジジュースを服用させたところ、30分後の血糖値およびインスリン分泌はそれぞれ平均121mg/dlおよび33μU/mlと有意に低値であった」と記載され、組成を示す表7も記載されている。 したがって、甲第1号証には下記の発明が記載されている。 「下記表7の組成を有するオレンジジュースに、3gの難消化性デキストリンを添加したオレンジジュースの製造。 【表7】 」(以下、「甲1発明」という。) (2) 甲1発明と本件発明1との対比 甲1発明は、オレンジフレーバーを添加しているので、柑橘類風味であり、アルコールを添加していないオレンジジュースなので、ノンアルコール飲料であるから、「柑橘類風味ノンアルコール飲料」である。そして、甲1発明の「クエン酸」、「オレンジフレーバー」、「水」は、本件発明1の「酸味物質」、「柑橘類のフレーバー」、「飲用水」に相当する。また、添加した難消化性デキストリンは、摘記(1c)から純度が90.7重量%で全体が200mlなので、1.36w/v%で配合されていることが分かる。 そうすると、本件発明1と甲1発明とは 「飲用水に、柑橘類のフレーバー、酸味物質、及び1.36w/v%の難消化性デキストリンを含有させる工程を包含する、柑橘類風味ノンアルコール飲料。」の点で一致するが、下記の点で相違する。 相違点ア 本件発明1は、柑橘類のフレーバーが柑橘類の果皮を使用しているのに対して、甲1発明は、柑橘類の果皮を使用しているか否か特定されていない点。 相違点イ 本件発明1は、ノンアルコール飲料に発生する劣化臭を抑制する方法であるのに対し、甲1発明は、劣化臭を抑制する方法について特定されていない点。 (3) 検討 相違点アについて検討すると、甲第1号証には、オレンジフレーバーが柑橘類の果皮を使用して得られることを示唆する記載はされていない。また甲第5号証には、柑橘果実の果皮からフレーバーが得られることや、そこから得られたものがオレンジジュース等に用いられることは記載されているが、当該記載を参酌したとしても、フレーバーとしては、化学合成により得られるものや果汁フレーバー等もあり、当業者が甲1発明においてそれら選択肢から柑橘類の果皮を使用したフレーバーを採用するといえる根拠はない。また、甲第1号証には、肥満症の予防、耐糖能障害の予防を行うことができる作用を食品に付与する方法等を提供することが課題であることが記載されており、当業者が甲1発明においてこれを解決するために、甲第5号証に記載された果皮のフレーバーを採用するという動機付けもない。さらに、シトラール由来の種々の劣化臭原因物質について説明されている甲第6号証の記載の事項を適用したとしても相違点アに至らないことは明らかである。 (4) 小括 上記のとおり、本件発明1は甲1発明に対して実質的な相違点である相違点ア及びイを有しているから、本件発明1は甲1発明とはいえない。また、上記のとおり、相違点アは、甲第1号証及び甲第5号証を参酌したとしても、当業者が甲1発明において採用することを容易に想到し得るものではないから、相違点イを検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 本件発明1を直接、間接に引用する本件発明2?10に関しても同様に、甲1発明ではなく、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 したがって、上記理由1a及び理由2aには、理由がない。 3 理由1b及び理由2bについての判断 (1) 甲第2号証に記載された発明 甲第2号証には、摘記(2a)、(2b)のとおり、水への分散性、呈味性、非吸湿性及びバイオアベイラビリティに優れた粉末化植物ステロールエステル製剤の提供等を課題とした、植物ステロールエステル、オクテニルコハク酸澱粉及び難消化性デキストリンを含有する粉末化植物ステロールエステル製剤に関する発明が記載されている。 具体的には、摘記(2c)において、表4の配合7(質量部)のレモンウォーターとして、フラクトース:5.000、クエン酸:0.100、レモン香料:0.100、クエン酸ナトリウム:0.050、ビタミンC:0.020、塩化カリウム:0.005、配合4:3.000、水:91.725のレモンウォーターが記載されており、上記配合4(質量部)は、植物ステロールエステル:33.30、オクテニルコハク酸澱粉:33.30、クエン酸:0.10、難消化性デキストリン:33.30と記載されている。 したがって、甲第2号証には、下記の発明が記載されている。 「フラクトース:5.000、クエン酸:0.100、レモン香料:0.100、クエン酸ナトリウム:0.050、ビタミンC:0.020、塩化カリウム:0.005、配合4:3.000、水:91.725のレモンウォーターの製造であって、 配合4は、植物ステロールエステル:33.30、オクテニルコハク酸澱粉:33.30、クエン酸:0.10、難消化性デキストリン:33.30の組成物(数字は質量部)。」(以下、「甲2発明」という。) (2) 甲2発明と本件発明1との対比 甲2発明は、レモン香料を添加しているので、柑橘類風味であり、アルコールを添加していないレモンウォーターなので、ノンアルコール飲料であるから、「柑橘類風味ノンアルコール飲料」である。そして、甲2発明の「クエン酸」、「レモン香料」、「水」は、本件発明1の「酸味物質」、「柑橘類のフレーバー」、「飲用水」に相当する。 また、添加した難消化性デキストリンは、甲2発明の配合4と併せてみると、3×0.333=0.999からレモンウォーター100.000質量部に0.999質量部含まれる。そして、甲2発明のレモンウォーター中に水は、91.725質量部含まれることから考えて、甲2発明における難消化デキストリンの配合量は、0.7?1.6w/v%の範囲に含まれるといえる。 そうすると、本件発明1と甲2発明とは 「飲用水に、柑橘類のフレーバー、酸味物質、及び0.7?1.6w/v%の難消化性デキストリンを含有させる工程を包含する、柑橘類風味ノンアルコール飲料。」の点で一致するが、下記の点で相違する。 相違点ア 本件発明1は、柑橘類のフレーバーが柑橘類の果皮を使用しているのに対して、甲2発明は、柑橘類の果皮を使用しているか否か特定されていない点。 相違点イ 本件発明1は、ノンアルコール飲料に発生する劣化臭を抑制する方法であるのに対し、甲2発明は、劣化臭を抑制する方法について特定されていない点。 (3) 検討 相違点アについて検討すると、甲第2号証には、レモン香料が柑橘類の果皮を使用して得られることを示唆する記載はされていない。また甲第5号証には、柑橘果実の果皮からフレーバーが得られることや、そこから得られたものがオレンジジュース等に用いられることは記載されているが、当該記載を参酌したとしても、フレーバーとしては、化学合成により得られるものや果汁フレーバー等もあり、当業者が甲2発明においてそれら選択肢から柑橘類の果皮を使用したフレーバーを採用するといえる根拠はない。また、甲第2号証には、水への分散性、呈味性、非吸湿性及びバイオアベイラビリティに優れた粉末化植物ステロールエステル製剤の提供等が課題であることが記載されており、当業者が甲2発明においてこれを解決するために、甲第5号証に記載された果皮のフレーバーを採用するという動機付けもない。さらに、シトラール由来の種々の劣化臭原因物質について説明されている甲第6号証の記載の事項を適用したとしても相違点アに至らないことは明らかである。 (4) 小括 上記のとおり、本件発明1は甲2発明に対して実質的な相違点である相違点ア及びイを有しているから、本件発明1は甲2発明とはいえない。また、上記のとおり、相違点アは、甲第2号証及び甲第5号証を参酌したとしても、当業者が甲2発明において採用することを容易に想到し得るものではないから、相違点イを検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 本件発明1を直接、間接に引用する本件発明2?10に関しても同様に、甲2発明ではなく、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 したがって、上記理由1b及び理由2bには、理由がない。 4 理由1c及び理由2cについての判断 (1) 甲第3号証に記載された発明 甲第3号証には、摘記(3a)、(3b)のとおり、ボディ感又は濃厚感の不足を改善し、食品等の製品に対して、良好な甘味を付与できる甘味組成物の提供を課題とした、デキストリン等を含む群から選択される1種又は2種の多糖類とネオテームを含有する甘味料組成物に関する発明が記載されている。 具体的には、摘記(3c)のとおり、オレンジジュースにネオテーム及び多糖類(難消化デキストリン(パインファイバーC:松谷化学工業株式会社製))を添加した例で、液糖:7.5、ネオテーム:0.00017、多糖類:※、クエン酸(無水):0.08、オレンジ濃縮果汁(6倍):5.00、香料:0.10、脱イオン水:残部(数字は重量%)を含むオレンジジュースにデキストリンを0.5?10%添加した例が記載されている。 したがって、甲第3号証には、下記の発明が記載されている。 「液糖:7.5、ネオテーム:0.00017、難消化デキストリン:0.5?10、クエン酸(無水):0.08、オレンジ濃縮果汁(6倍):5.00、香料:0.10、脱イオン水:残部(数字は重量%)を含むオレンジジュースの製造。」(以下、「甲3発明」という。)。 (2) 甲3発明と本件発明1との対比 甲3発明は、オレンジ濃縮果汁を添加しているので、柑橘類風味であり、アルコールを添加していないオレンジジュースなので、ノンアルコール飲料であるから、「柑橘類風味ノンアルコール飲料」である。また、用いている香料はオレンジジュースに用いているので「柑橘類のフレーバー」であるのは明らかといえる。そして、甲3発明の「クエン酸(無水)」、「脱イオン水」は、本件発明1の「酸味物質」、「飲用水」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲3発明とは 「飲用水に、柑橘類のフレーバー、酸味物質、及び難消化性デキストリンを包含した柑橘類風味ノンアルコール飲料。」の点で一致するが、下記の点で相違する。 相違点ア 本件発明1は、柑橘類のフレーバーが柑橘類の果皮を使用しているのに対して、甲3発明は、柑橘類の果皮を使用しているか否か特定されていない点。 相違点イ 本件発明1は、「0.7?1.6w/v%」の難消化性デキストリンを含有するのに対して、甲3発明は、「0.5?10%」の難消化デキストリンを含有する点。 相違点ウ 本件発明1は、ノンアルコール飲料に発生する劣化臭を抑制する方法であるのに対し、甲3発明は、劣化臭を抑制する方法について特定されていない点。 (3) 検討 相違点アについて検討すると、甲第3号証には、香料が柑橘類の果皮を使用して得られることを示唆する記載はされていない。また甲第5号証には、柑橘果実の果皮からフレーバーが得られることや、そこから得られたものがオレンジジュース等に用いられることは記載されているが、当該記載を参酌したとしても、フレーバーとしては、化学合成により得られるものや果汁フレーバー等もあり、当業者が甲3発明においてそれら選択肢から柑橘類の果皮を使用したフレーバーを採用するといえる根拠はない。また、甲第3号証には、ボディ感又は濃厚感の不足を改善し、食品等の製品に対して、良好な甘味を付与できる甘味組成物の提供を課題とした、デキストリン等を含む群から選択される1種又は2種の多糖類とネオテームを含有する甘味料組成物の提供を課題とするものであることが記載されており、当業者が甲3発明においてこれを解決するために、甲第5号証に記載された果皮のフレーバーを採用するという動機付けもない。さらに、シトラール由来の種々の劣化臭原因物質について説明されている甲第6号証の記載の事項を適用したとしても相違点アに至らないことは明らかである。 (4) 小括 上記のとおり、本件発明1は甲3発明に対して実質的な相違点である相違点ア、イ及びウを有しているから、本件発明1は甲3発明とはいえない。また、上記のとおり相違点アは、甲3号証及び甲第5号証を参酌したとしても、当業者が甲3発明において採用することを容易に想到し得るものではないから、相違点イ及びウを検討するまでもなく、本件発明1は、甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 本件発明1を直接、間接に引用する本件発明2?10に関しても同様に、甲3発明ではなく、甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 したがって、上記理由1c及び理由2cには、理由がない。 5 理由1d及び理由2dについての判断 (1) 甲第4号証に記載された発明 甲第4号証には、摘記(4a)、(4b)のとおり、経口摂取した場合に潜在的な副作用を軽減する食物繊維を含む組成物の提供を課題として、食物繊維a):フラクトオリゴ糖、食物繊維b):難消化性のデキストリンまたはマルトデキストリン、食物繊維c):ポリデキストロースの混合物を含む組成物に関する発明が記載されている。 具体的には、摘記(4c)のとおり、「水:100gまで、濃縮オレンジジュース:7.3g、砂糖7.7g、フレーバー:0.0025g、クエン酸:0.25g、FOS:1.06g、難消化デキストリン1.25g、ポリデキストロース:0.29gを含む食物繊維入りオレンジジュースの製造。」(以下、「甲4発明」という。)が記載されている。 (2) 甲4発明と本件発明1との対比 甲4発明は、濃縮オレンジジュースを添加しているので柑橘類風味であり、アルコールを添加していない食物繊維入りオレンジジュースなので、ノンアルコール飲料であるから、「柑橘類風味ノンアルコール飲料」である。甲4発明の「フレーバー」は、オレンジジュースに用いられることから「柑橘類のフレーバー」であることは明らかといえる。 また、甲4発明の「クエン酸」、「水」は、本件発明1の「酸味物質」、「飲用水」に相当する。 また、添加した難消化性デキストリンは、オレンジジュース100g当たり1.25gが添加されており、このうち水は82.15g程度であることから計算すると、甲4発明における難消化デキストリンの配合量は、0.7?1.6w/v%の範囲に含まれるといえる。 そうすると、本件発明1と甲4発明とは 「飲用水に、柑橘類のフレーバー、酸味物質、及び0.7?1.6w/v%の難消化性デキストリンを含有した、柑橘類風味ノンアルコール飲料。」の点で一致するが、下記の点で相違する。 相違点ア 本件発明1は、柑橘類のフレーバーが柑橘類の果皮を使用しているのに対して、甲4発明は、柑橘類の果皮を使用しているか否か特定されていない点。 相違点イ 本件発明1は、ノンアルコール飲料に発生する劣化臭を抑制する方法であるのに対し、甲4発明は、劣化臭を抑制する方法について特定されていない点。 (3) 検討 相違点アについて検討すると、甲第4号証には、香料が柑橘類の果皮を使用して得られることを示唆する記載はされていない。また甲第5号証には、柑橘果実の果皮からフレーバーが得られることや、そこから得られたものがオレンジジュース等に用いられることは記載されているが、当該記載を参酌したとしても、フレーバーとしては、化学合成により得られるものや果汁フレーバー等もあり、当業者が甲4発明において、それら選択肢から柑橘類の果皮を使用したフレーバーを採用するといえる根拠はない。また、甲第4号証には、経口摂取した場合に潜在的な副作用を軽減する食物繊維を含む組成物の提供を課題とするものであることが記載されており、当業者が甲4発明においてこれを解決するために、甲第5号証に記載された果皮のフレーバーを採用するという動機付けもない。さらに、シトラール由来の種々の劣化臭原因物質について説明されている甲第6号証の記載の事項を適用したとしても相違点アに至らないことは明らかである。 (4) 小括 上記のとおり、本件発明1は甲4発明に対して実質的な相違点である相違点ア及びイを有しているから、本件発明1は甲4発明とはいえない。また、上記のとおり相違点アは、甲第4号証及び甲第5号証を参酌したとしても、当業者が甲4発明において採用することを容易に想到し得るものではないから、相違点イを検討するまでもなく、本件発明1は、甲4発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 本件発明1を直接、間接に引用する本件発明2?10に関しても同様に、甲4発明ではなく、甲4発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 したがって、上記理由1d及び理由2dには、理由がない。 6 実施可能要件について (1)実施可能要件の考え方 方法の発明について実施をすることができるとは、その方法を使用できることであり、実施可能要件を満たすためには、以下の(ア)及び(イ)の要件を満たすように記載されなければならない。 (ア)「方法の発明」について明確に説明されていること この要件を満たすためには、一の請求項から発明が把握でき(すなわち、請求項に係る発明が認定でき)、その発明が発明の詳細な説明の記載から読み取れなければならない。 (イ)「その方法を使用できる」ように記載されていること 物を生産する方法以外の方法(いわゆる単純方法)の発明には、物の使用方法、測定方法、制御方法等、様々なものがある。そして、いずれの方法の発明についても、明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識に基づき、当業者がその方法を使用できるように記載されなければならない。 (2)本願発明の詳細な説明の記載 (2-1)「【0037】 本発明の柑橘類風味ノンアルコール飲料に含まれる難消化性デキストリンの量は、一般に、0.7?1.6w/v%である。難消化性デキストリンの含有量が0.7w/v%未満であると、製造後短期間のうちに柑橘類風味ノンアルコール飲料における劣化臭が認識され易くなる。また、その場合、アルコール飲料らしいボディ感が不足し易い。難消化性デキストリンの含有量が1.6w/v%を超えると、べたつき感、重い後味感が目立ち、柑橘類風味ノンアルコール飲料の風味が悪くなることがある。難消化性デキストリンの含有量は、好ましくは0.8?1.5w/v%であり、より好ましくは0.85?1.45w/v%である。」 (2-2)「【0054】 表1に掲げる原料について数値で示した配合量を秤量し水に溶解、完成量1リットル、ガス圧2.3VOLになるよう調整しレモンテイスト飲料を製造した。 【0055】 [表1] 」 (2-3)「【0060】 表2に掲げる原料について数値で示した配合量を秤量し水に溶解、完成量1リットル、ガス圧2.3VOLになるよう調整しグレープフルーツテイスト飲料を製造した。 【0061】 [表2] 」 (2-4)「【0064】 官能試験 実施例1、比較例1、実施例2及び比較例2で得られた飲料の官能試験は次のようにして行った。 【0065】 スピリッツ・リキュール類専門パネル6人が上記飲料を試飲し、劣化臭の有無について官能評価した。その際、試験対象の各飲料は、製造直後の劣化臭がないものの点数が7、劣化臭が強いものの点数が1になるように、7段階に採点した。評価点は6人の採点の平均値を採用した。また、6人のコメントをまとめた。結果を表3に示す。 【0066】 [表3] 【0067】 後味のスッキリ感は、全ての飲料が優れていた。」 (3) 検討 本願の発明の詳細な説明の記載をみると、「難消化性デキストリンの含有量が0.7w/v%未満であると、製造後短期間のうちに柑橘類風味ノンアルコール飲料における劣化臭が認識され易くなる。また、その場合、アルコール飲料らしいボディ感が不足し易い。難消化性デキストリンの含有量が1.6w/v%を超えると、べたつき感、重い後味感が目立ち、柑橘類風味ノンアルコール飲料の風味が悪くなることがある。」と記載され、実施例においては、1L中に純度90%の難消化性デキストリンを加えた例において、劣化臭が弱められたと理解できる記載がされている。 そうすると、難消化性デキストリンについては、劣化臭を抑える目的のためにその下限値が定められ、べたつき感、重い後味感を抑えるためにその上限値が定められており、その数値範囲も明確といえる。 さらに、定められた数値範囲内で実際に実験を行って劣化臭を弱めるという効果が得られたことも明記されていることから、上記6(1)の(ア)及び(イ)の要件を満たすといえる。 よって、本願発明の詳細な説明の記載は、本件発明1の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。 (4) 小括 上記のとおりであるから、本願発明の詳細な説明の記載は本件発明1及びこれを直接間接に引用する本件発明2?10の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであり、上記理由3には、理由がない。 7 サポート要件について (1)サポート要件の考え方 特許請求の範囲の記載がサポート要件を満たすか否かの判断は、請求項に係る発明と、発明の詳細な説明に発明として記載されたものとを対比、検討してなされ、請求項において、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決する為の手段が反映されていないため、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求することになる場合、サポート要件を満たさないと判断される。 (2)本件発明における課題について 本願発明の詳細な説明には次のとおり記載されている。 「【発明が解決しようとする課題】 【0016】 本発明は、上記従来の問題を解決するものであり、その目的とするところは、アルコール飲料らしいボディ感と複雑味のあるバランスのよい味わいを呈し、スッキリ感に優れ、製造後経時的に劣化臭が発生し難い柑橘類風味ノンアルコール飲料を提供することにある。」 したがって、本件発明の課題は、アルコール飲料らしいボディ感と複雑味のあるバランスのよい味わいを呈し、スッキリ感に優れ、製造後経時的に劣化臭が発生し難い柑橘類風味ノンアルコール飲料の提供といえる。 (3)検討 上記6 (2-2)、(2-3)、(2-4)のとおり、実施例において、本件発明の方法により、クレゾール臭、劣化臭が弱く、ボディ感、スッキリ感がある飲料が得られたことが記載され、これは、上記の課題に合致している。 そうすると、本件発明の方法は、発明の詳細な説明に記載された発明の課題を解決する為の手段が反映されており、サポート要件は満たしているといえる。 一方で、本願発明の詳細な説明には、 「【0007】 柑橘類の果汁は糖質、クエン酸、アミノ酸等の成分によって味に厚み、ボディ感を付与し、炭酸の苦味を軽減する効果を有し、美味しさの向上に有益である。その一方、果汁含有ノンアルコール飲料はボディ感が後を引くように残り、香味にべたつき感が生じることがある。 【0008】 甘味と酸味のバランスがよく、美味しさに優れ、スッキリ感にも優れたノンアルコール飲料を提供するためには、柑橘類の果汁を使用することなく柑橘類風味を再現することが好ましく、柑橘類については果汁ではなく果皮成分を使用することが考えられる。柑橘類の果皮成分は柑橘類のフレーバーとして市販されている。」 及び 「【0030】 本発明の柑橘類風味ノンアルコール飲料は果汁を含有しないことが好ましい。その場合、ボディ感が後を曳かなくなり、香味にべたつき感がなく、また、果汁由来成分の劣化による苦味、渋味の増大が防止される。その結果、飲用後の清涼感、スッキリ感が増強される。」 等の記載がされている。 そして、特許異議申立人は、果汁を含む場合、スッキリ感に優れたものが得られると説明されておらず、実施例でも、果汁を含む場合のものは示されていないこと等を理由として、本件発明はサポート要件を満たさない旨主張するが、果汁を含むことで香味のべたつき、劣化による苦味、渋味の増大等が出現することが分かっているならば、果汁の利点として発明の詳細な説明に挙げられた、ボディ感の付与や炭酸の苦味を軽減する効果が感じられる程度で、果汁を少量含んでも本件発明の課題は達成できると理解するのが自然である。 また、特許異議申立人は、難消化性デキストリンについても、実施例で示された、純度90%9.6g/Lの難消化性デキストリンを用いた場合のみ実施例に記載されており、それを超える範囲については、課題が解決できると当業者が認識できない旨主張する。 しかし、上記6 (2-1)のとおり、「難消化性デキストリンの含有量が1.6w/v%を超えると、べたつき感、重い後味感が目立ち、柑橘類風味ノンアルコール飲料の風味が悪くなることがある」と本願発明の詳細な説明で記載されており、当該記載に接した当業者は、難消化性デキストリンの含有量は1.6w/v%を上限として用いた場合に、本件発明の課題を解決できる程度にべたつき感、重い後味感等を抑制できると理解できる。 (4) 小括 上記のとおりであるから、本件発明は、発明の詳細な説明に記載されたものであり、上記理由4には、理由がない。 第5 むすび したがって、特許異議の申立の理由及び証拠によっては、本件特許1?10を取消すことができない。 また、他に本件特許1?10を取消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2019-11-27 |
出願番号 | 特願2014-251588(P2014-251588) |
審決分類 |
P
1
651・
113-
Y
(A23L)
P 1 651・ 121- Y (A23L) P 1 651・ 537- Y (A23L) P 1 651・ 536- Y (A23L) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 西村 亜希子 |
特許庁審判長 |
村上 騎見高 |
特許庁審判官 |
関 美祝 神野 将志 |
登録日 | 2019-02-15 |
登録番号 | 特許第6478608号(P6478608) |
権利者 | アサヒビール株式会社 |
発明の名称 | 柑橘類風味ノンアルコール飲料 |
代理人 | 鮫島 睦 |
代理人 | 山田 卓二 |
代理人 | 山尾 憲人 |
代理人 | 佐藤 剛 |
代理人 | 西下 正石 |