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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 G01R |
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管理番号 | 1357692 |
異議申立番号 | 異議2019-700689 |
総通号数 | 241 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2020-01-31 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2019-09-03 |
確定日 | 2019-12-06 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6477089号発明「電流センサ付バスバーモジュール」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6477089号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6477089号(請求項の数5。以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし請求項5に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明5」といい、本件発明1ないし本件発明5を併せて「本件発明」という。)は、平成26年5月23日(以下、「優先日」という。)にされた特許出願(特願2014-106982)に基づく特許法第41条第1項の優先権を主張して平成27年3月20日にされた特許出願(特願2015-57092)に係る発明である。そして、平成31年2月15日にその特許権の設定登録がされ、同年3月6日にその特許掲載公報が発行された。 特許異議申立人新井誠一は、令和元年9月3日に、本件発明1ないし本件発明5についての特許に対して特許異議の申立てをした。 第2 本件発明 本件発明1ないし本件発明5は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項5に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 なお、本件発明2ないし本件発明5は、本件発明1の構成を全て含む。 「【請求項1】 それぞれ電流が流れる複数本のバスバー(2)と、 該複数本のバスバー(2)を封止してこれらを一体化する封止部材(3)と、 上記複数本のバスバー(2)のうち少なくとも一部のバスバー(2)の電流値を測定する、複数の電流センサ(4)と、 該電流センサ(4)が取り付けられたセンサ用回路基板(7)とを備え、 個々の上記電流センサ(4)は磁気抵抗素子からなり、上記電流センサ(4)は、上記電流が流れることによって上記バスバー(2)の周囲に発生した磁界の強さを検出することにより、上記電流値を測定しており、 上記複数本のバスバー(2)は、該バスバー(2)の厚さ方向と上記バスバー(2)の延出方向との双方に直交する幅方向に配列し、 上記電流センサ(4)は、上記バスバー(2)から離隔しつつ、上記厚さ方向において上記バスバー(2)に隣り合う位置に配されており、 上記バスバー(2)及び上記電流センサ(4)を上記厚さ方向から挟む位置に、上記磁界を遮蔽する少なくとも一対の遮蔽板(5a,5b)が設けられ、 上記封止部材(3)には凹部(30)が形成され、該凹部(30)に上記電流センサ(4)が収容されており、上記封止部材(3)には、上記凹部(30)の開口を塞ぐ蓋部(6)が取り付けられ、上記一対の遮蔽板(5a,5b)のうち一方の上記遮蔽板(5a)は上記封止部材(3)に封止され、他方の上記遮蔽板(5b)は上記蓋部(6)に封止されており、 該蓋部(6)は上記センサ用回路基板(7)とは別体に形成され、上記凹部(30)に、上記センサ用回路基板(7)を上記電流センサ(4)と共に収容してあることを特徴とする電流センサ付バスバーモジュール(1)。 【請求項2】 上記電流センサ(4)と上記バスバー(2)との間に上記封止部材(3)の一部が介在していることを特徴とする請求項1に記載の電流センサ付バスバーモジュール(1)。 【請求項3】 上記電流センサ(4)と上記封止部材(3)との間に隙間(G)が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電流センサ付バスバーモジュール(1)。 【請求項4】 上記封止部材(3)は、上記凹部(30)内に形成され上記厚さ方向に突出した柱部(31)を有し、上記センサ用回路基板(7)には上記厚さ方向に貫通した貫通孔(79)が形成され、上記柱部(31)を上記貫通孔(79)に挿入し、上記柱部(31)の先端を熱かしめしてある、請求項1?3のいずれか一項に記載の電流センサ付バスバーモジュール(1)。 【請求項5】 上記幅方向において隣り合う2個の上記電流センサ(4)の間には、上記封止部材(3)の一部が介在しないよう構成されている、請求項1?4のいずれか一項に記載の電流センサ付バスバーモジュール(1)。」 第3 証拠 特許異議申立人は、甲第1号証ないし甲第8号証(枝番を含む。)として以下の文献を提出した。 甲第1号証:特開2013-32972号公報 甲第2号証:特開2009-168790号公報 甲第3号証の1:特開2001-332676号公報 甲第3号証の2:特開2009-117767号公報 甲第3号証の3:特開2014-183213号公報 (公開日:平成26年9月29日) 甲第4号証:特開2008-275321号公報 甲第5号証:特開2014-92478号公報 (公開日:平成26年5月19日) 甲第6号証:特開2005-300170号公報 甲第7号証:特開2003-167009号公報 甲第8号証:特開2000-258464号公報 以下では、これらの文献を、それぞれ書証番号を用いて「甲1文献」、「甲3の1文献」などという。 甲1文献ないし甲8文献は、いずれも公開特許公報であり、その公開日は、甲3の3文献を除き、いずれも優先日より前である。 第4 特許異議の申立ての理由の概要 1 理由1(甲1文献に基づく進歩性欠如) 本件発明1ないし本件発明3及び本件発明5は、甲1文献及び甲2文献に記載された発明に基づいて、又はさらに甲4文献、甲5文献及び甲8文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 本件発明4は、甲1文献、甲2文献及び甲5文献に記載された発明に基づいて、又は甲1文献、甲2文献、甲4文献、甲5文献及び甲8文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって、本件発明1ないし本件発明5についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 2 理由2(甲6文献に基づく進歩性欠如) 本件発明1ないし本件発明3は、甲6文献及び甲2文献に記載された発明に基づいて、又はさらに甲4文献、甲5文献及び甲8文献に記載された発明並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 本件発明4は、甲6文献、甲2文献及び甲5文献に記載された発明に基づいて、又はさらに甲4文献及び甲8文献に記載された発明並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって、本件発明1ないし本件発明4についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 3 理由3(甲4文献に基づく進歩性欠如) 本件発明1及び本件発明2は、甲4文献及び甲2文献に記載された発明に基づいて、又はさらに甲5文献及び甲8文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 本件発明4は、甲4文献、甲2文献及び甲5文献に記載された発明に基づいて、又はさらに甲8文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって、本件発明1、本件発明2及び本件発明4についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 第5 当合議体の判断 1 甲1文献ないし甲8文献に記載された発明等 前記第4のとおり、特許異議申立ての理由は、本件特許が特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるというものであるのに対して、前記第3のとおり、甲3の3文献は、その公開日が優先日より後であるから、甲3の3文献に記載された発明については、検討するまでもない。 (1)甲1文献 ア 甲1文献の記載 甲1文献には、以下の記載がある。下線は、当合議体が付した。 「【0001】 本発明は、電流検出装置に係り、特に、バスバの周囲に配置された環状磁性コアを通る磁束量によりバスバ電流を検出する電流検出装置に関する。」 「【0016】 図1は、電流検出装置10を構成する第1分割コア12および磁気センサ14を含むコアケース15が制御基板18に取り付けられてなる基板モジュール部20と、電流検出装置10を構成する第2分割コア16を含むパワーモジュール部24とを示す断面図である。 【0017】 電流検出装置10は、略コ字状断面(および側面)を有する第1分割コア12と、この第1分割コア12と連結されることにより環状磁性コア17を形成することとなる略コ字状断面(および側面)を有する第2分割コア16と、第1分割コア12の分断隙間に介挿されて環状磁性コア17を通る磁束量を検出する磁気センサ14とを備える。」 「【0019】 磁気センサ14には、例えば、ホール素子が好適に用いられるが、環状磁性コアを通る磁束量の変化に応じて出力が変化する他の磁気センサ、例えば、センサーコイル、磁気抵抗素子等が用いられてもよい。磁気センサ14からは検出結果を出力するワイヤ状の出力端子28が延びている。」 「【0028】 なお、ここでは制御基板18上に1つの第1分割コア12が固定される例を図示するが、後述するように複数本のバスバについて電流検出を行うために各バスバに対応して複数(具体的には2つ)の第1分割コア12が固定されている。」 「【0030】 パワーモジュール部24は、複数の電力変換用スイッチング素子(以下、単にスイッチング素子という)44(図6参照)および該スイッチング素子にそれぞれ電気接続された複数のバスバ46の一部を内部に埋設した樹脂モールド部材である。スイッチング素子44には、例えばIGBT等の電力変換用トランジスタ(インテリジェントパワーモジュール(IPM)とも称される)が好適に用いられる。スイッチング素子44は、制御基板18からの駆動信号を受けてオン・オフ制御され、これにより直流電圧を交流電圧に変換して出力するインバータ回路として機能する。」 「【0032】 本実施形態では、電流検出装置10がインバータ回路と3相交流モータとを接続する3本のバスバを流れる電流を検出するのに適用されるとした場合、パワーモジュール部24には、インバータを構成するU相、V相、W相に応じて各2つ(合計6つ)のスイッチング素子44と、各相スイッチング素子44の入力側にそれぞれ接続される入力用バスバ45u,45v,45wの接続端部に近い部分と、各相スイッチング素子44の出力側にそれぞれ接続される出力用バスバ46u,46v,46wの接続端部に近い部分とが含まれている(図6参照)。」 「【0037】 まず図4を参照すると、上記のような構成を有するパワーモジュール部24は、基板モジュール部20との組付け前に、樹脂ハウジング50の凹部52に嵌合された状態で、取付部48を介してネジ留めされることにより一体に組み付けられている。 【0038】 そして、樹脂ハウジング50の上面縁部には、複数のブラケット54がネジ留め等によって固定される。これらのブラケット54は、例えば金属板を曲げ加工して形成されており、パワーモジュール部24の表面25と水平になった上側部分にはネジ挿通穴または雌ネジ穴56が形成されている。 【0039】 このように樹脂ハウジング50に取り付けられたブラケット54の上に、上記のように組み付けられた基板モジュール部20を載置する。そして、制御基板18の縁部に穿設されたネジ挿通穴58にネジを上から挿入してブラケット54の上側部分に締め付ける。これにより、基板モジュール部20とパワーモジュール部24とが組み付けられる。」 「【0041】 上記のように環状磁性コア17によって取り囲まれたバスバ46wに電流Iwが流れると、バスバ周囲に形成される回転磁界の磁束を環状磁性コア17に効率よく集磁して通すことができる。なお、図示していないが、V相用バスバ46vの周囲にも同様に、環状磁性コア17および磁気センサ14が配置されている。」 「【0043】 図7は、互いに組み付けられた基板モジュール部20およびパワーモジュール部24を金属ケース60内に配置した状態を示す断面図である。樹脂ハウジング50に固定されたパワーモジュール部24および基板モジュール部20は、金属ケース60のうち略H型の断面を有する中ケース部62aの底板62b上にネジ留め固定される。この中ケース部62aの底板62bの裏面には、後述するコンバータ回路を構成するリアクトル74aが固定されている。」 「【図1】 ![]() 」 「【図4】 ![]() 【図5】 ![]() 【図6】 ![]() 【図7】 ![]() 」 イ 甲1文献に記載された発明 甲1文献の前記アの記載によれば、以下のことが認められる。 (ア)甲1文献には、バスバの周囲に配置された環状磁性コアを通る磁束量によりバスバ電流を検出する電流検出装置が記載されている(【0001】)。 (イ)電流検出装置10は、第1分割コア12及び磁気センサ14が制御基板18に取り付けられてなる基板モジュール部20と、第2分割コア16を含むパワーモジュール部24とで構成される(【0016】、図1)。 (ウ)磁気センサ14には、ホール素子が好適に用いられるが、磁気抵抗素子が用いられてもよいのであるから(【0019】)、甲1文献には、磁気センサ14が磁気抵抗素子である電流検出装置10も記載されている。 (エ)第1分割コア12と第2分割コア16とは、互いに連結されて環状磁性コア17を形成し、磁気センサ14は、第1分割コア12の分断隙間に介挿されて環状磁性コア17を通る磁束量を検出する(【0017】、図1)。 (オ)環状磁性コア17及び磁気センサ14は、出力用バスバ46vの周囲及び出力用バスバ46wの周囲に配置される(【0041】、図5)。 (カ)制御基板18には、各バスバに対応して2つの第1分割コア12が固定されている(【0028】)。このことと、前記(イ)、(エ)及び(オ)とを踏まえると、制御基板18には、2つの磁気センサ14が固定されていることが明らかであり、また、パワーモジュール部24は、2つの第2分割コア16を含むことが明らかである。 (キ)互いに組み付けられた基板モジュール部20及びパワーモジュール部24は、金属ケース60内に配置される(【0043】、図7)。これは、前記(イ)を踏まえると、電流検出装置10が金属ケース60内に配置されることにほかならない。 (ク)パワーモジュール部24は、複数のバスバ46の一部を内部に埋設した樹脂モールド部材であり、パワーモジュール部24には、出力用バスバ46u、46v、46wが含まれているのであるから(【0030】、【0032】、図6)、パワーモジュール部24は、複数の出力用バスバ46u、46v、46wを内部に埋設した樹脂モールド部材である。 (ケ)パワーモジュール部24は樹脂ハウジング50の凹部52に一体に組み付けられ、樹脂ハウジング50の上面縁部には複数のブラケット54が固定され、ブラケット54の上に基板モジュール部20が載置されて、基板モジュール部20とパワーモジュール部24とが組み付けられる(【0037】ないし【0039】、図4、図5)。 (コ)前記(ア)ないし(キ)から、甲1文献には、「2つの第1分割コア12及び磁気抵抗素子である2つの磁気センサ14が制御基板18に取り付けられてなる基板モジュール部20と、2つの第2分割コア16を含むパワーモジュール部24とで構成され、金属ケース60内に配置されて、バスバの周囲に配置された環状磁性コアを通る磁束量によりバスバ電流を検出する電流検出装置10」が記載されている。 (サ)図1及び図4ないし図7から、複数の出力用バスバ46u、46v、46wは、いずれも板状の部材であって、それらの幅方向に配列していることが見て取れる。また、出力用バスバ46wの周囲に配置される磁気センサ14は、出力用バスバ46wからその厚さ方向に離れて、出力用バスバ46wと隣り合っていることが見て取れる。そして、出力用バスバ46vの周囲に配置される磁気センサ14も、同様に、出力用バスバ46vからその厚さ方向に離れて、出力用バスバ46vと隣り合っているものと理解される。 (シ)以上のことをまとめると、甲1文献には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。 「2つの第1分割コア12及び磁気抵抗素子である2つの磁気センサ14が制御基板18に取り付けられてなる基板モジュール部20と、2つの第2分割コア16を含むパワーモジュール部24とで構成され、金属ケース60内に配置されて、バスバの周囲に配置された環状磁性コアを通る磁束量によりバスバ電流を検出する電流検出装置10であって、 パワーモジュール部24は、複数の出力用バスバ46u、46v、46wを内部に埋設した樹脂モールド部材であり、 第1分割コア12と第2分割コア16とは、互いに連結されて環状磁性コア17を形成し、 磁気センサ14は、第1分割コア12の分断隙間に介挿されて環状磁性コア17を通る磁束量を検出し、 環状磁性コア17及び磁気センサ14は、出力用バスバ46vの周囲及び出力用バスバ46wの周囲に配置され、 複数の出力用バスバ46u、46v、46wは、いずれも板状の部材であって、それらの幅方向に配列しており、 磁気センサ14は、出力用バスバ46v、46wからその厚さ方向に離れて、出力用バスバ46v、46wと隣り合っており、 パワーモジュール部24が樹脂ハウジング50の凹部52に一体に組み付けられ、樹脂ハウジング50の上面縁部に複数のブラケット54が固定され、ブラケット54の上に基板モジュール部20が載置されて、基板モジュール部20とパワーモジュール部24とが組み付けられた 電流検出装置10。」 (2)甲2文献 ア 甲2文献の記載 甲2文献には、以下の記載がある。下線は、当合議体が付した。 「【0001】 この発明は、被測定電流が印加されるU字型一次導体の、U字型形状部の近傍において、被測定電流を測定する電流センサに関するものである。」 「【発明の効果】 【0008】 一つの設置基板上に四つの磁気抵抗効果素子にて、設置基板上の中心線に対して分けられた一方の領域に第一のハーフブリッジ回路が配置されるとともに、他方の領域に第二のブリッジ回路が配置され、それぞれのハーフブリッジ回路に逆方向の磁界が印加される構造のため、一様な外部磁界を除去する効果、および一つの基板に磁気抵抗効果素子が構成されるため、工程が簡略化できる効果がある。 また、電流検知デバイスを含むセンサ基板を、開口部を有する絶縁性のケース内部に設置することで、一次導体との電気的な絶縁のための距離(沿面距離および空間距離)が確保される効果がある。 また、電流検知デバイスを含むセンサ基板を取り囲む形でシールド層を設置することで、外部のあらゆる方向からの電界ノイズを除去あるいは低減する効果がある。 また、ケースに開口部を設けたことで、素子や回路等に起因した製造後の調整が容易に可能となる効果がある。 さらにまた、ケースに少なくとも一組設けた、センサ基板を固定するための突起部の位置あるいは高さあるいは双方を変えること、またはケースあるいは一次導体あるいは双方の形状を変化させることで、電流検知デバイスは同一なまま電流検知範囲を容易に可変できる効果がある。」 「【0009】 実施の形態1. 図1は、この発明の実施の形態1による電流センサの斜視図を示すもので、図2は図1の平面図、図3は図1および図2におけるAA’断面(XZ面)を示す断面図、図4は図1および図2におけるBB’断面(YZ面)を示す断面図、図5は図1の電流センサにケースカバーを付与した斜視図である。図において、電流センサ1は、電流検知デバイス部6、センサ回路部7を有するセンサ基板2と、一次導体3及びケース4により構成される。 本実施の形態1では、一次導体3はケース4の1つの面の内部に一体化した構造となっており、センサ基板2は、ケース4の内部に設けられた突起部10を介して設置される。端子8はケース4の2つの外側面に分割して設置される。センサ基板2には1つの電流検知デバイス部6を配置する。ケース4の内壁面には、シールド層5が設置される。 まず、電流検知デバイス部6の構成について説明する。 図6は電流検知デバイス部6の平面図を示すもので、設置基板14上において、設置基板14の中心線9によって2つの領域に分けられ、それぞれの領域に磁気抵抗効果素子11a、11b、磁気抵抗効果素子11c、11dが線対称に等しく配置される。ここで、磁気抵抗効果素子11の感磁方向はX方向とする。4つの磁気抵抗効果素子11a?11dは、設置基板14の中心線9に対して相互に平行方向に配置され、磁気抵抗効果素子11a、11dは、互いに逆方向の磁界の増加に応じて抵抗値が共に増加する磁気抵抗効果特性を有するように、また、磁気抵抗効果素子11b、11cは、互いに逆方向の磁界の増加に応じて抵抗値が共に減少する磁気抵抗効果特性を有するように、図には省略したが、磁気抵抗効果素子上にはバーバーポール電極構造が形成されている。なお、4つの磁気抵抗効果素子11はそれぞれ1本で構成したが、クランク形状に複数の磁気抵抗効果素子を接続し、線路長を長く構成してもよい。また、中心線9上の中心点に対して点対称に構成してもよい。接続電流線12は、4つの磁気抵抗効果素子11間を接続することにより、ブリッジ回路15を構成するものであり、接続エリア13は、外部とブリッジ回路15の入出力用の端子部として用いる。」 「【0012】 次に、電流センサ1の全体構成について説明する。 図1または図3、図4に示すように、被測定電流を印加する一次導体3はケース4と一体となっており、図2に破線で示したように、一次導体3の形状はZ方向から見てU字型となっている。一体化の方法は特に図示しないが、接着剤や樹脂モールド化等により行うものとし、ここでは樹脂で一体成形した例を示した。なお本実施の形態1に示した図では、U字形状の底部の両脇部分が直角形状に構成されているが、電流検知デバイス部6にU字部の両側から安定して逆方向の磁界が印加される構造であれば丸みを帯びた形状などでもよく、これに限るものではないが、安定して逆方向の磁界を印加するためにはU字形状が少なくとも電流検知デバイス部6の近傍において左右対称であることが望ましい。 図2に示すように、破線で示したU字形状の一次導体3の対称軸、および電流検知デバイス部6の中心線9が略一致するように、センサ基板2はケース4の内部に設けた突起部10を介して設置される。本実施の形態においては、電流検知デバイス6をセンサ基板2の上面側に設置した例を示したが、設置位置は上面に限るものではない。電流検知デバイス部6を含むセンサ基板2の設置位置(特にZ方向)は、磁気抵抗効果素子11に付与したい磁界、つまりは被測定電流の大きさに応じて決定する。その決定された位置に応じてケースに突起部10を設け、センサ基板2を設置し、その固定方法は特に図示しないが、ねじ止めや接着剤等を利用する。また、一次導体3の断面積は、印加する被測定電流値に応じて決定される。このような一次導体3は、例えば銅などの金属による直線状のバー形状からの曲げ加工、または板材からの打ち抜き加工等により作製される。 図2にのみ示したが、センサ基板2上には、電流検知デバイス部6とともにセンサ回路部7を配置する。センサ回路部7は、電流検知デバイス部6の接続エリア13a、13bにブリッジ回路15の電圧を供給すると共に、ブリッジ回路15の出力電圧を適度な増幅を施して出力するが、電流センサ1と外部の入出力端を電気的に接続するには、端子8を利用する。本実施の形態においては、ケース4の対向する2つの側面に分けて端子8を下方向へ設置した例を示したがこれに限るものではない。端子8の分割かつ下方向設置の利点は、基板等へ安定的に電流センサ1を固定できることがある。 図3、図4の断面図にて特に明らかなように、ケース4の内壁面には導電性を有する電界シールド層5を設置する。電界シールド層5は、電流センサとしての性能を低下させるノイズとして、外部から磁気抵抗効果素子11やセンサ回路部7へ印加される電界ノイズを、除去あるいは低減するためのもので、少なくとも磁気抵抗効果素子11やセンサ回路部7と一次導体3の間に設置する必要があり、磁気抵抗効果素子11やセンサ回路部7を覆うように設置するのが望ましい。電界シールド層5の材料は、導電性を有すればよく、例えば銅、アルミニウム等が考えられ、センサ基板2に設けた電気的なグランドと接続される。設置の形態としては、板材を折り曲げて設置することも可能だが、製造工程の簡略化から、導電性塗料の内壁面への塗布でも構わない。 1つの開口面を有し直方体状であるケース4の開口面からケース4の内部に、電流検知デバイス部6ならびにセンサ回路部7を含むセンサ基板2を設置する構成となっており、開口面を介してセンサ回路部7等を調整する。また、一次導体3と電流検知デバイス部6ならびにセンサ回路部7までの距離は、直方体状であるケース4の側壁を介した距離が沿面距離となるため、絶縁のための距離は容易に確保された構成となっている。 なお図5に示すように、最終的に調整した後は、耐環境性向上等のためから、シールド層5を有するケースカバー4aにてケース4の開口面を覆うように設置するのが望ましい。その固定方法は特に図示しないが、ねじ止めや接着剤、又は凹凸部による嵌合等を利用する。」 「【図1】 ![]() 【図2】 ![]() 【図3】 ![]() 【図4】 ![]() 【図5】 ![]() 【図6】 ![]() 」 イ 甲2文献に記載された発明 甲2文献の前記アの記載によれば、以下のことが認められる。 (ア)甲2文献には、被測定電流が印加されるU字型一次導体のU字型形状部の近傍で被測定電流を測定する電流センサが記載されている(【0001】)。 (イ)電流センサ1は、電流検知デバイス部6とセンサ回路部7とを有するセンサ基板2と、一次導体3と、1つの開口面を有する直方体状のケース4とにより構成される(【0009】、【0012】、図1ないし図4)。 (ウ)センサ基板2は、ケース4の内部に設けられた突起部10を介して設置される(【0009】、図1ないし図4)。 (エ)センサ基板2には、1つの電流検知デバイス部6が配置され、電流検知デバイス部6は、設置基板14上にブリッジ回路15を構成する4つの磁気抵抗効果素子11a?11dが配置されたものである(【0009】、図1ないし図4、図6)。 (オ)一次導体3は、U字型の形状を有し、樹脂で一体成形することでケース4の1つの面の内部に一体化されている(【0009】、【0012】、図1、図3、図4)。 (カ)ケース4の内壁面には、導電性を有する電界シールド層5が設置され、これによって、外部から磁気抵抗効果素子11やセンサ回路部7へ印加される電界ノイズを除去又は低減するための電界シールド層5が、磁気抵抗効果素子11やセンサ回路部7と一次導体3との間に設置される(【0009】、【0012】、図1ないし図4)。 (キ)ケース4の開口面は、電界シールド層5を有するケースカバー4aで覆われる(【0012】、図5)。 (ク)以上のことをまとめると、甲2文献には、以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されている。 「電流検知デバイス部6とセンサ回路部7とを有するセンサ基板2と、一次導体3と、1つの開口面を有する直方体状のケース4とにより構成され、被測定電流が印加されるU字型一次導体のU字型形状部の近傍で被測定電流を測定する電流センサ1であって、 センサ基板2は、ケース4の内部に設けられた突起部10を介して設置され、 センサ基板2には、1つの電流検知デバイス部6が配置され、 電流検知デバイス部6は、設置基板14上にブリッジ回路15を構成する4つの磁気抵抗効果素子11a?11dが配置されたものであり、 一次導体3は、U字型の形状を有し、樹脂で一体成形することでケース4の1つの面の内部に一体化されており、 ケース4の内壁面には、導電性を有する電界シールド層5が設置され、これによって、外部から磁気抵抗効果素子11やセンサ回路部7へ印加される電界ノイズを除去又は低減するための電界シールド層5が、磁気抵抗効果素子11やセンサ回路部7と一次導体3との間に設置され、 ケース4の開口面は、電界シールド層5を有するケースカバー4aで覆われる 電流センサ1。」 (3)甲3の1文献及び甲3の2文献 甲3の1文献の請求項1には、「リードの一端面を露出して封止し、」という記載がある。 甲3の2文献の請求項1には、「半導体チップの上面を露出してその外周部を封止材で封止してなる半導体装置」という記載がある。 (4)甲4文献 ア 甲4文献の記載 甲4文献には、以下の記載がある。下線は、当合議体が付した。 「【0001】 本発明は、例えばハイブリッドカーや電気自動車のバッテリー電流やモータ駆動電流を測定する電流センサに関し、特に、ホール素子等の磁気検出素子を用いてバスバーに流れる電流を測定する電流センサに関する。」 「【0021】 (第1の実施の形態) 図1は、本発明の第1の実施の形態に係る電流センサ100の正断面図(図2の1-1’断面図)である。図2は、図1に示される電流センサ100の平面図である。図3は、図2の3-3’断面図である。 【0022】 電流センサ100は、バスバー12と、磁気検出素子としてのホール素子14と、第1フィードバックコイル16と、第2フィードバックコイル17と、制御回路18とを備え、それらは樹脂58でモールドされて一体化される。すなわち電流センサ100はバスバー一体型である。樹脂58の外側は磁気シールド体65で覆われる。なお、樹脂58は非磁性であるものとする。 【0023】 バスバー12は平板形状(例えば銅板)であり、取付穴22および24を介して被測定電流の経路をなすように取り付けられる。ホール素子14は、バスバー12に流れる電流によって発生する磁界(以下「第1の磁界」とも表記)が感磁面に印加されるようにバスバー12の幅広主面上に固定配置される。第1フィードバックコイル16および第2フィードバックコイル17は、ホール素子14と近接するようバスバー12の幅広主面上に固定配置され、ホール素子14の感磁面に印加される第1の磁界を相殺する磁界(以下「第2の磁界」とも表記)を発生する。制御回路18は、ホール素子14の検出出力がゼロとなるように第1フィードバックコイル16および第2フィードバックコイル17に電流を供給する。この供給された電流(以下「FBコイル電流」とも表記)に基づいて、バスバー12に流れる被測定電流(以下「バスバー電流」とも表記)が検出される。磁気シールド体65は、第1磁気シールド部材としての上側磁気シールド部材62および第2の磁気シールド部材としての下側磁気シールド部材63によってバスバー12とホール素子14と第1フィードバックコイル16と第2フィードバックコイル17とを環状に囲む環状囲み部を構成することで外部磁界から磁気遮蔽するものであり、その囲っている状態で上側磁気シールド部材62および下側磁気シールド部材63の間に空隙67、68が形成される。空隙67、68が形成されることにより、空隙67、68が形成されない場合と比較してホール素子14の感磁面に印加される第1の磁界の強度が減じられる。 【0024】 第1フィードバックコイル16は、これに限定されないが、巻線32を施したボビン26の内周孔に磁気コア(軟磁性体)28を配置して構成される。第2フィードバックコイル17も同様に、巻線33を施したボビン27の内側に磁気コア(軟磁性体)29を設けて構成される。ボビン26、27の鍔部は多角形(図では正方形)であり、鍔部外周の一面が制御回路18を組み立てたプリント基板38の配置面とされる。制御回路18はプリント基板38(絶縁基板)上に電子部品39を実装したものである。プリント基板38にはボビン26、27の鍔部外周の一面に植設された端子ピン36、37に対応する貫通孔(図示せず)が形成され、この貫通孔に端子ピン36、37を通すことによりプリント基板38がボビン26、27の鍔部外周の一面を相互に渡すように配置(搭載)される。 【0025】 第1フィードバックコイル16および第2フィードバックコイル17は、端面同士が当接するようにバスバー12の長手方向略中央に固着(例えば接着)され、その軸方向はバスバー12の長手方向と略垂直かつ幅方向と略平行である。第1フィードバックコイル16および第2フィードバックコイル17の一方の端面はそれぞれバスバー12の縁に位置し、他方の端面はそれぞれバスバー12の幅方向略中央に位置して互いに当接する。この当接した状態で空間が形成され、その空間にホール素子14が入れられて固定される。これにより第1フィードバックコイル16および第2フィードバックコイル17の当接している端面上略中央にホール素子14が位置する。ホール素子14の感磁面は第1フィードバックコイル16および第2フィードバックコイル17の端面(すなわち磁気コア28、29端面)に対向し、バスバー12の幅方向と略垂直である。したがって、バスバー電流によって発生する磁界(第1の磁界)とホール素子14の感磁面は略垂直となり、また、第1フィードバックコイル16および第2フィードバックコイル17に流れる電流によって発生する磁界(第2の磁界)とホール素子14の感磁面も略垂直となる。ホール素子14の出力電圧がゼロとなるように制御回路18により第1フィードバックコイル16および第2フィードバックコイル17に電流が供給されるため、ホール素子14の感磁面においては第1の磁界と第2の磁界とが相殺する。 【0026】 磁気シールド体65を構成する上側磁気シールド部材62および下側磁気シールド部材63は、コの字型(換言すれば、半四角筒状ないし半方形環状)の例えば高透磁率材である珪素銅板あるいはパーマロイ(低周波の磁気的干渉に好適)、フェライト(高周波の磁気的干渉に好適)であり、バスバー12と、第1フィードバックコイル16と、第2フィードバックコイル17と、ホール素子14と、制御回路18とを四角筒状ないし方形環状に囲って外部磁界から磁気遮蔽する。空隙67、68は、それを設けることでホール素子14の感磁面に印加される第1の磁界の強度が減じられる位置に形成される。図1では第1フィードバックコイル16および第2フィードバックコイル17の磁気コア28、29の軸延長上の近傍に空隙67、68が形成される場合を示している。」 「【0037】 本実施の形態によれば、以下の効果を奏することができる。 …(中略)… 【0042】 (5)ホール素子14と第1フィードバックコイル16と第2フィードバックコイル17とがバスバー12と一体になるように樹脂58でモールドされるため、バスバー12との一体化が確実なものとなり位置ずれを起こしにくい。 【0043】 (6)特許文献1のように一つの部材で筒状の磁気シールド体を構成すると磁気シールド体にバスバーを通す取付方法しかできないため作業性が良くないところ、本実施の形態の磁気シールド体65は上側磁気シールド部材62および下側磁気シールド部材63を組み合わせるものであるため樹脂58の外側を上側磁気シールド部材62および下側磁気シールド部材63で挟み込むようにして取り付けることができ作業性が良い。」 「【0050】 (第4の実施の形態) 図12は、本発明の第4の実施の形態に係る電流センサ400の一部分解斜視図である。電流センサ400は三相交流モータ用であり、U相、V相、W相のバスバー12U,12V,12Wの各々に対応して図1ないし図3に示される電流センサ100と同様の電流センサ100U、100V、100Wが設けられ、それらが樹脂58で図12のようにモールド一体化されてモールドユニット581を構成している。また、U相、V相、W相の各々に対応して磁気シールド体650U、650V、650Wが設けられる。磁気シールド体650U、650V、650Wはコの字型(換言すれば、半四角筒状ないし半方形環状)の上側磁気シールド部材620U、620V、620Wおよび下側磁気シールド部材630U、630V、630Wからなる。」 「【0055】 実施の形態ではバスバー12を平板形状としたが、これには限定されず、丸棒その他の形状であってもよい。また、ホール素子14と制御回路18とは別部品とすることに限定されず、それらを一体集積化したIC(Integrated Circuit)を用いてもよい。また、制御回路はセンサ出力として電圧を得たが、電流出力タイプとしてもよい。この場合、図8の検出抵抗Rsに替えてモニタ用電流計を設け、差動増幅回路54を取り除く。また、ホール素子は磁気検出素子の例示であるが、磁気検出素子はこれに限定されず、磁気抵抗効果素子等であってもよい。また、磁気シールド体65を構成する上側磁気シールド部材62および下側磁気シールド部材63は、コの字型に限定されず、モールドユニットの外形に合わせて、半円あるいは半楕円などの半筒型若しくはその他の形状としてもよい。」 「【図1】 ![]() 【図2】 ![]() 【図3】 ![]() 」 「【図12】 ![]() 」 イ 甲4文献に記載された発明 甲4文献の前記アの記載によれば、以下のことが認められる。 (ア)甲4文献には、磁気検出素子を用いてバスバーに流れる電流を測定する電流センサが記載されている(【0001】)。 (イ)電流センサ100は、バスバー12と、磁気検出素子としてのホール素子14と、第1フィードバックコイル16と、第2フィードバックコイル17と、制御回路18とを備え、これらが樹脂58でモールドされて一体化されたバスバー一体型のセンサであり、樹脂58の外側は磁気シールド体65で覆われる(【0022】、図1ないし図3)。 (ウ)バスバー12は、平板形状であり、被測定電流の経路をなす(【0023】)。 (エ)ホール素子14は、バスバー12の幅広主面上に固定配置され、第1フィードバックコイル16及び第2フィードバックコイル17の当接している端面上略中央に位置し、バスバー12に流れる電流によって発生する磁界が感磁面に印加される(【0023】、【0025】、図1ないし図3)。 (オ)第1フィードバックコイル16及び第2フィードバックコイル17は、バスバー12の幅広主面上に固定配置され、ホール素子14の感磁面に印加される磁界を相殺する磁界を発生する(【0023】、図1ないし図3)。 (カ)制御回路18は、プリント基板38上に電子部品39を実装したものであり、ホール素子14の検出出力がゼロとなるように第1フィードバックコイル16及び第2フィードバックコイル17に電流を供給し、この電流に基づいて、バスバー12に流れる被測定電流が検出される(【0023】、【0024】)。 (キ)磁気シールド体65は、コの字型の上側磁気シールド部材62及び下側磁気シールド部材63から構成され、上側磁気シールド部材62と下側磁気シールド部材63との間には空隙67、68が形成され、バスバー12とホール素子14と第1フィードバックコイル16と第2フィードバックコイル17と制御回路18とを環状に囲むことで外部磁界から磁気遮蔽する(【0023】、【0026】、図1ないし図3)。 (ク)電流センサ400は、U相、V相、W相のバスバー12U、12V、12Wのそれぞれに対応する電流センサ100U、100V、100Wが樹脂58でモールド一体化されて構成されるモールドユニット581と、U相、V相、W相のそれぞれに対応して設けられた磁気シールド体650U、650V、650Wとを備える(【0050】、図12)。 (ケ)磁気シールド体650U、650V、650Wは、コの字型の上側磁気シールド部材620U、620V、620W及び下側磁気シールド部材630U、630V、630Wから構成される(【0050】、図12)。 (コ)電流センサ100U、100V、100Wは、電流センサ100と同様のものである(【0050】)。 したがって、バスバー12U、12V、12Wは、バスバー12と同様に、平板形状であり、被測定電流の経路をなす。 ところで、電流センサ100に用いられる磁気シールド体65は、樹脂58の外側を覆い、コの字型の上側磁気シールド部材62及び下側磁気シールド部材63から構成され、上側磁気シールド部材62と下側磁気シールド部材63との間には空隙67、68が形成され、バスバー12とホール素子14と第1フィードバックコイル16と第2フィードバックコイル17と制御回路18とを環状に囲んで外部磁界から磁気遮蔽する(前記(イ)及び(キ))。 そうすると、同じくコの字型の上側磁気シールド部材620U、620V、620W及び下側磁気シールド部材630U、630V、630Wから構成される磁気シールド体650U、650V、650Wも、樹脂58の外側を覆い、上側磁気シールド部材620U、620V、620Wと下側磁気シールド部材630U、630V、630Wとの間には空隙が形成され、バスバーとホール素子と第1フィードバックコイルと第2フィードバックコイルと制御回路とを環状に囲んで外部磁界から磁気遮蔽するものと理解される。このことは、図12からも見て取れる。 (サ)図12から、平板形状であるバスバー12U、12V、12Wは、それらの幅方向に配列していることが見て取れる。 (シ)図1ないし図3から、ホール素子14は、バスバー12からその厚さ方向に離れていることが見て取れる。 (ス)磁気検出素子は、ホール素子に限定されず、磁気抵抗効果素子であってもよいのであるから(【0055】)、甲4文献には、磁気検出素子としてのホール素子14に代えて、磁気検出素子としての磁気抵抗効果素子を備えた電流センサ100も記載されている。 (セ)以上のことをまとめると、甲4文献には、電流センサ400として、以下の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されている。 「U相、V相、W相のバスバー12U、12V、12Wのそれぞれに対応する電流センサ100U、100V、100Wが樹脂58でモールド一体化されて構成されるモールドユニット581と、U相、V相、W相のそれぞれに対応して設けられた磁気シールド体650U、650V、650Wとを備え、磁気検出素子を用いてバスバーに流れる電流を測定する電流センサ400であって、 電流センサ100U、100V、100Wは、バスバー12U、12V、12Wと、磁気検出素子としての磁気抵抗効果素子と、第1フィードバックコイルと、第2フィードバックコイルと、制御回路とを備え、これらが樹脂58でモールドされて一体化されたバスバー一体型のセンサであり、樹脂58の外側は磁気シールド体650U、650V、650Wで覆われ、 バスバー12U、12V、12Wは、平板形状であり、被測定電流の経路をなし、それらの幅方向に配列しており、 磁気抵抗効果素子は、バスバー12U、12V、12Wの幅広主面上に、バスバー12U、12V、12Wからその厚さ方向に離れて固定配置され、第1フィードバックコイル及び第2フィードバックコイルの当接している端面上略中央に位置し、バスバー12U、12V、12Wに流れる電流によって発生する磁界が感磁面に印加され、 第1フィードバックコイル及び第2フィードバックコイルは、バスバー12U、12V、12Wの幅広主面上に固定配置され、磁気抵抗効果素子の感磁面に印加される磁界を相殺する磁界を発生し、 制御回路は、プリント基板上に電子部品を実装したものであり、磁気抵抗効果素子の検出出力がゼロとなるように第1フィードバックコイル及び第2フィードバックコイルに電流を供給し、この電流に基づいて、バスバー12U、12V、12Wに流れる被測定電流が検出され、 磁気シールド体650U、650V、650Wは、コの字型の上側磁気シールド部材620U、620V、620W及び下側磁気シールド部材630U、630V、630Wから構成され、上側磁気シールド部材620U、620V、620Wと下側磁気シールド部材630U、630V、630Wとの間には空隙が形成され、バスバーと磁気抵抗効果素子と第1フィードバックコイルと第2フィードバックコイルと制御回路とを環状に囲んで外部磁界から磁気遮蔽する 電流センサ400。」 (5)甲5文献 ア 甲5文献の記載 甲5文献には、以下の記載がある。下線は、当合議体が付した。 「【0022】 図1、2に示すように、電流センサ1は、絶縁基板2と、絶縁基板2に搭載される磁電変換素子3と、コネクタ4を介して絶縁基板2に設けられた配線パターンに電気的に接続されるケーブル5と、電流路6が挿通されると共に絶縁基板2が固定される内側ケース7と、内側ケース7を上下から挟んで覆う一対の磁気シールド(下側磁気シールド8及び上側磁気シールド9)と、これらの部材を収容する外側ケース10及びカバー11と、を含んで構成される。電流センサ1は、上側磁気シールド9に放電部94を設けることにより、静電気が発生したときに放電部94から絶縁基板2上の接地電極22に電流が流れるようにして、ESD対策を行うものである。」 「【0024】 磁電変換素子3は、電流路6に電流が流れたときに発生する磁界を検出する素子であって、例えば、巨大磁気抵抗効果を用いた磁気検出素子(GMR(Giant Magneto Resistive)素子ともいう)を用いることができる。電流センサ1において、磁電変換素子3は、リード端子が絶縁基板2の配線パターンにはんだ付けされて、電流路6と対向するように絶縁基板2上に1つ搭載される。」 「【図1】 ![]() 」 「【図4】 ![]() 【図5】 ![]() 」 イ 甲5文献に記載された発明 甲5文献の前記アの記載によれば、甲5文献には、以下の発明(以下、「甲5発明」という。)が記載されている。 「絶縁基板2と、 絶縁基板2に搭載される磁電変換素子3と、 電流路6が挿通されるとともに絶縁基板2が固定される内側ケース7と、 内側ケース7を上下から挟んで覆う一対の下側磁気シールド8及び上側磁気シールド9と、 これらの部材を収容する外側ケース10及びカバー11と を含んで構成される電流センサ1であって、 磁電変換素子3は、電流路6に電流が流れたときに発生する磁界を検出する素子であって、巨大磁気抵抗効果を用いた磁気検出素子である 電流センサ1。」 (6)甲6文献 ア 甲6文献の記載 甲6文献には、以下の記載がある。下線は、当合議体が付した。 「【0001】 この発明は、例えば電力変換装置の出力電流を検出するための電流検出装置の構造に関するものである。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0004】 従来の電流検出装置では、被検出電流が流れる通電経路が、プリント基板に形成された電流パターンであるため、通電経路の断面積を拡大して通電抵抗を小さくすることが困難であった。そのために通電時の通電経路での発熱が大きかった。また、磁気センサーとしてのホール素子が電流パターンに近接して同じプリント基板上に配置されているため、ホール素子は電流パターンの発熱の影響を受けやすい。さらに、集磁チップがホール素子の上下にしか設けられていないため磁束の漏れが大きく、ホール素子部の磁束密度を向上させるために、プリント基板の電流パターンは、ホール素子を囲むように形成されていた。そのため、電流パターン長が必要以上に長くなっていた。電流パターン長が長いと、電流パターンでの発熱量が増加し、温度上昇が大きくなる。ホール素子の温度が上昇すると、温度ドリフトにより、オフセット電圧や感度が変化するため、大電流通電時の電流検出精度が悪化するという課題があった。さらに、プリント基板の電流パターンを、ホール素子を囲むように形成する必要から、プリント基板の面積が大きくなり、電流検出装置の小型化が困難であった。 【0005】 この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、大電流を検出する場合でも通電経路の発熱を抑制し、ホール素子の温度上昇を抑え、検出精度の高い電流検出装置を得るものである。」 「【0008】 実施の形態1. 図1は、この発明を実施するための実施の形態1における電流検出装置の断面図である。図1において、本実施の形態の電流検出装置は、例えば銅などの導電率の高い金属板からなるバスバー1と、ホール素子からなる磁束検出部5が設けられたプリント基板2とが透磁率の高いブロック状の磁性体で挟まれている。この発明において、バスバー1に近接して配置される磁性体をバスバー側コア3、プリント基板2に近接して配置される磁性体を基板側コア4と表現する。 【0009】 次に本実施の形態における電流検出の原理について説明する。図1において、バスバー1に検出対象となる電流が紙面の前方から後方へ流れた場合、バスバー1の周囲には、図1の矢印で示す時計回りの方向にループ状の磁界が発生する。発生した磁界の多くは、磁気抵抗の小さいバスバー側コア3および基板側コア4の内部を通過するため、図1の矢印で示す磁界ループ上で最も磁束密度が高く、バスバー1に流れる電流の変化に応じてこの磁束密度が変化する。磁束検出部5は、図1の矢印で示す最も磁束密度の高い磁界ループが通過する位置に配置されており、磁束密度を電圧に変換する機能を有している。したがって、バスバー1に流れる電流は、磁束検出部5によって電圧に変換され、プリント基板2に設けられた検出回路(図示せず)において電圧増幅され、電流検出信号となる。」 「【0016】 実施の形態3. 図4は、実施の形態3に係る電流検出装置の断面図である。本実施の形態における電流検出装置は、バスバー1と突起31および32を設けたバスバー側コア3とを、例えばPPS(ポリフェニレンサルフィド)などの合成樹脂41で一体化したものである。ただし、突起31の上部は磁束検出部5と対向するために空間を設けており、もう一方の突起32の上部は磁束ループの対称性のために突起31の上部と同様の空間を設けている。一体化の方法は、例えば射出成型法などの方法を用いることができる。図5は本実施の形態における電流検出装置の構成を示す模式図である。図5において、構成を説明するために、それぞれの構成部材を離した位置で示しているが、実際には図4に示したように、プリント基板2は一体化された合成樹脂41と密着して配置され、また基板側コア4はプリント基板2に近接して配置される。 【0017】 本実施の形態においては、バスバー1とバスバー側コア3とが合成樹脂41で一体化されているため、バスバー1とバスバー側コア3との間隔が固定されており、かつ、合成樹脂41をスペーサとしてプリント基板2を密着させているため、突起31と磁束検出部5との間隔も固定されることになるので、振動などが加わっても、バスバー1、バスバー側コア3および磁束検出部5の相対位置が変化しないため、振動による磁束密度変化は発生せず、振動が多い環境下でも電流検出精度の低下は起こらない。 【0018】 実施の形態4. 図6は、実施の形態4に係る電流検出装置の構成を示す模式図である。本実施の形態における電流検出装置は、3本のバスバー1と、各バスバーに対応する3個のバスバー側コア3とを合成樹脂41で一体化し、さらに各バスバーに対応する3個の基板側コア4を別の合成樹脂42で一体化し、これらの一体化されたもので磁束検出部(図示せず)が設けられたプリント基板2を挟み込んだ構成である。このとき、合成樹脂41のバスバー側コア3が埋め込まれてない位置に突起状のピン61を形成し、プリント基板2および合成樹脂42に、ピン61に対応する位置に孔62および63をそれぞれ形成し、ピン61を孔62および63に挿入して、合成樹脂41、プリント基板2および合成樹脂42を密着させる。 【0019】 本実施の形態においては、バスバー1、プリント基板2およびバスバー側コア3が合成樹脂41で一体化され、基板側コア4が合成樹脂42により一体化され、これらの一体化された部材同士が密着固定されているので、振動などが加わっても、バスバー1、バスバー側コア3、基板側コア4および磁束検出部5の相対位置が変化しないため、振動による磁束密度変化は発生せず、振動が多い環境下でも電流検出精度の低下は起こらない。また、ピン61に対応した位置に形成されたプリント基板2および合成樹脂42のそれぞれの孔62と63とにピン61を挿入するため、各構成部材の位置が一義的に決まり、組立が容易となる。なお、本実施の形態では3本のバスバーを一体化した例を示したが、さらに多くのバスバーを一体化してもよい。」 「【図1】 ![]() 」 「【図4】 ![]() 【図5】 ![]() 【図6】 ![]() 」 イ 甲6文献に記載された発明 甲6文献の前記アの記載によれば、以下のことが認められる。 (ア)甲6文献には、電流検出装置が記載されている(【0001】)。 (イ)実施の形態1の電流検出装置は、バスバー1と、ホール素子からなる磁束検出部5が設けられたプリント基板2とが、バスバー側コア3と基板側コア4とで挟まれている。(【0008】、図1)。 (ウ)バスバー1に検出対象となる電流が流れると、バスバー1の周囲にループ状の磁界が発生し、その多くは、バスバー側コア3及び基板側コア4の内部を通過するため、図1の矢印で示す磁界ループ上で最も磁束密度が高く、バスバー1に流れる電流の変化に応じてこの磁束密度が変化する(【0009】、図1)。 ここで、図1を参照すると、図1の矢印で示す磁界ループとは、バスバー側コア3及び基板側コア4の内部を通過する磁界ループであることが読み取れるから、バスバー1に検出対象となる電流が流れると、バスバー側コア3及び基板側コア4の内部を通過する磁界ループ上の磁束密度がバスバー1に流れる電流の変化に応じて変化することになる。 そして、バスバー1の周囲に発生したループ状の磁界の多くは、バスバー側コア3及び基板側コア4の内部を通過するのであるから、バスバー側コア3及び基板側コア4の内部を通過する磁界ループ上の磁束密度がバスバー1に流れる電流の変化に応じて変化することは、バスバー1の周囲に発生したループ状の磁界の磁束密度がバスバー1に流れる電流の変化に応じて変化することにほかならない。 (エ)磁束検出部5は、図1の矢印で示す磁界ループが通過する位置に配置されて、磁束密度を電圧に変換することで、バスバー1に流れる電流を電圧に変換する(【0009】)。 ここで、前記(ウ)のとおり、図1の矢印で示す磁界ループとはバスバー側コア3及び基板側コア4の内部を通過する磁界ループであり、バスバー1の周囲に発生したループ状の磁界の多くはバスバー側コア3及び基板側コア4の内部を通過するのであるから、磁束検出部5は、バスバー1の周囲に発生したループ状の磁界の磁束密度を電圧に変換することで、バスバー1に流れる電流を電圧に変換することになる。 (オ)実施の形態4の電流検出装置は、3本のバスバー1と各バスバーに対応する3個のバスバー側コア3とを合成樹脂41で一体化したものと、各バスバーに対応する3個の基板側コア4を別の合成樹脂42で一体化したものとで、磁束検出部が設けられたプリント基板2を挟み込んで構成される(【0018】、図6)。 ここで、実施の形態4の電流検出装置ではバスバー1、バスバー側コア3、基板側コア4及び磁束検出部5の相対位置が変化しないとされているから(【0019】)、プリント基板2に設けられた磁束検出部は、ホール素子からなる磁束検出部5であることが明らかである。 また、バスバー1、バスバー側コア3、基板側コア4及び磁束検出部5の相対位置についての言及があることから、磁束検出部5は、バスバー側コア3及び基板側コア4と同様に、3本のバスバー1のそれぞれに対応して設けられているものと理解される。 このことは、図4ないし図6及びそれらについての説明(【0016】ないし【0019】)からも理解することができる。すなわち、図6に示された実施の形態4の電流検出装置は、実質的には、図5に示された実施の形態3の電流検出装置を3個並べて一体化したものである。そして、実施の形態3の電流検出装置は、1本のバスバー1に対して1個の磁束検出部5を設けたものであるから、それを3個並べて一体化したものである実施の形態4の電流検出装置には、3個の磁束検出部5があることになる。 (カ)図6から、3本のバスバー1は、いずれも板状の部材であって、それらの幅方向に配列していることが見て取れる。 (キ)図1から、磁束検出部5は、バスバー1からその幅方向に離れて配置されることが読み取れる。 (ク)以上のことをまとめると、甲6文献には、実施の形態4の電流検出装置として、以下の発明(以下、「甲6発明」という。)が記載されている。 「3本のバスバー1と各バスバー1に対応する3個のバスバー側コア3とを合成樹脂41で一体化したものと、各バスバー1に対応する3個の基板側コア4を別の合成樹脂42で一体化したものとで、各バスバー1に対応する3個の磁束検出部5が設けられたプリント基板2を挟み込んで構成される電流検出装置であって、 3本のバスバー1は、いずれも板状の部材であって、それらの幅方向に配列しており、 磁束検出部5は、ホール素子からなり、バスバー1からその幅方向に離れて配置されており、 バスバー1に検出対象となる電流が流れると、バスバー1の周囲に発生したループ状の磁界の磁束密度がバスバー1に流れる電流の変化に応じて変化し、 磁束検出部5は、バスバー1の周囲に発生したループ状の磁界の磁束密度を電圧に変換することで、バスバー1に流れる電流を電圧に変換する 電流検出装置。」 (7)甲7文献 甲7文献には、以下の記載がある。 「【0035】図1において、1はPWB(プリント板)として回路配線パターンが形成されたプリント基板、2は所望の被検出電流(ここでは大電流)が流れる大電流パターンで、プリント基板1の適当な位置に形成されている。3は大電流パターン2の近傍に配置された磁気センサとしてのホール素子で、このホール素子3の出力から大電流パターン2に流れる電流が検出される。 【0036】4は大電流パターン2の周囲に配されるコア、5は大電流パターン2をプリント基板1と共に箱状のケース6の接続端子7に固定接続するねじで、接続端子7はケース6の内側から外側に貫通して設けられている。8はプリント基板1と他の装置とを電気的に接続するためのコネクタ端子である。」 「【0052】図5は本発明の第2の実施例の構成を示す分解斜視図であり、図1と同一符号は同一構成要素を示している。 【0053】図5において、11はケース6と溶着もしくは接着により一体固定される蓋、12aは蓋11にインサート成形された集磁チップ、12bはケース6にインサート成形された集磁チップである。 【0054】本実施例では、プリント基板1上に大電流パターン2を、ホール素子3を中心にして該ホール素子3を囲むように形成している。その他の構成は図1の実施例と同様であるので、説明は省略する。」 「【図5】 ![]() 」 (8)甲8文献 ア 甲8文献の記載 甲8文献には、以下の記載がある。下線は、当合議体が付した。 「【0038】以上説明した第1実施形態は、図8、図9に示したような形態で実施することができる。図8において、電流センサ1は、非磁性体からなる匡体部11と、この匡体部11内部に設けられた磁気インピーダンス素子2と、同じく匡体部11内部に固定された回路部5とを備えている。 【0039】匡体部11は上下に2つ分割された部材11a、11bから構成されており、これらを突き合わせることにより一体的になるように設けられている。また、これらの部材11a、11bを突き合わせることにより突き合わせ面に貫通孔である被検出電線保持部12が形成されるように、それぞれの部材11a、11bには円弧部12a、12bが形成されている。被検出電線保持部12は、保持されるべき被検出電線Dとほぼ同じ径を有しており、被検出電線Dは匡体部11に安定して保持されるようになっている。 【0040】匡体部11の外周部分には、被検出電線D及び磁気インピーダンス素子2と演算部9に接続された回路部5とを内包するように磁気シールド13が設けられており、匡体部11の上下の部材11a、11bを突き合わせることにより、磁気インピーダンス素子2と回路部5とに作用する外部からの外乱磁界を遮断するようになっている。」 「【0044】また、匡体部11の外周には、外乱磁界を遮断するための磁気シールド13が設けられたため、被検出電線Dから生じる磁界Hiの検出を正確に行うことができ、安定した電流Iの検出を行うことができる。」 「【図8】 ![]() 」 イ 甲8文献に記載された発明 甲8文献の前記アの記載によれば、甲8文献には、以下の発明(以下、「甲8発明」という。)が記載されている。 「非磁性体からなる匡体部11と、 匡体部11内部に設けられた磁気インピーダンス素子2と、 匡体部11内部に固定された回路部5と を備える電流センサ1であって、 被検出電線Dは、匡体部11に保持され、 匡体部11の外周部分には、被検出電線Dと磁気インピーダンス素子2と回路部5とを内包する磁気シールド13が設けられて、磁気インピーダンス素子2と回路部5とに作用する外部からの外乱磁界を遮断する 電流センサ1。」 2 理由1(甲1文献に基づく進歩性欠如)について (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明(前記1(1)イ(シ))とを対比すると、以下のとおりである。 (ア)甲1発明の「複数の出力用バスバ」「46v、46w」は、本件発明1の「それぞれ電流が流れる複数本のバスバー(2)」に相当する。 (イ)甲1発明の「パワーモジュール部24」は、「複数の出力用バスバ46u、46v、46wを内部に埋設した樹脂モールド部材」であるから、「複数の出力用バスバ46u、46v、46w」は、「樹脂」によって封止され、一体化されていることになる。 したがって、甲1発明の「パワーモジュール部24」の「複数の出力用バスバ46u、46v、46wを内部に埋設」している「樹脂」は、前記(ア)を踏まえると、本件発明1の「該複数本のバスバー(2)を封止してこれらを一体化する封止部材(3)」に相当する。 (ウ)甲1発明は、「環状磁性コア17及び磁気センサ14」が「出力用バスバ46vの周囲及び出力用バスバ46wの周囲に配置され」、「磁気センサ14」が「環状磁性コア17を通る磁束量を検出」して、「バスバの周囲に配置された環状磁性コアを通る磁束量によりバスバ電流を検出する電流検出装置10」であるから、甲1発明の「2つの磁気センサ14」は、「出力用バスバ46v」及び「出力用バスバ46w」の電流値を測定するセンサである。 したがって、前記(ア)を踏まえると、甲1発明の「2つの磁気センサ14」は、本件発明1の「上記複数本のバスバー(2)のうち少なくとも一部のバスバー(2)の電流値を測定する、複数の電流センサ(4)」に相当する。 (エ)甲1発明の「2つの第1分割コア12及び」「2つの磁気センサ14が制御基板18に取り付けられてなる基板モジュール部20」の「制御基板18」は、前記(ウ)を踏まえると、本件発明1の「該電流センサ(4)が取り付けられたセンサ用回路基板(7)」に相当する。 (オ)甲1発明の「2つの磁気センサ14」が「磁気抵抗素子である」ことは、本件発明1の「個々の上記電流センサ(4)は磁気抵抗素子からな」ることに相当する。 (カ)甲1発明の「複数の出力用バスバ」「46v、46w」は、電流が流れるものであり、電流が流れればその周囲に磁界が生じることは明らかである。そして、甲1発明の「環状磁性コア17」は、「出力用バスバ46vの周囲及び出力用バスバ46wの周囲に配置され」るから、「環状磁性コア17を通る磁束量」が「出力用バスバ46vの周囲及び出力用バスバ46wの周囲」に生じる磁界の強さを示すことも明らかである。そうすると、「磁気センサ14」が「検出」する「環状磁性コア17を通る磁束量」は、「複数の出力用バスバ」「46v、46w」に電流が流れることによって「出力用バスバ46vの周囲及び出力用バスバ46wの周囲」に生じる磁界の強さを示すものにほかならない。そして、甲1発明は、「バスバの周囲に配置された環状磁性コアを通る磁束量によりバスバ電流を検出する電流検出装置10」であるから、「磁気センサ14」が「検出」する「環状磁性コア17を通る磁束量」により、換言すれば、「出力用バスバ46vの周囲及び出力用バスバ46wの周囲」に生じる磁界の強さにより、「バスバ電流を検出する」ものである。 以上のことをまとめると、甲1発明の「磁気センサ14」は、「複数の出力用バスバ」「46v、46w」に電流が流れるときにその周囲に生じる磁界の強さを検出して「バスバ電流を検出する」ものである。これは、前記(ア)及び(ウ)を踏まえると、本件発明1の「電流センサ(4)」が「上記電流が流れることによって上記バスバー(2)の周囲に発生した磁界の強さを検出することにより、上記電流値を測定して」いることに相当する。 (キ)甲1発明の「複数の出力用バスバ」「46v、46w」が「いずれも板状の部材であって、それらの幅方向に配列して」いることは、前記(ア)を踏まえると、本件発明1の「上記複数本のバスバー(2)」が「該バスバー(2)の厚さ方向と上記バスバー(2)の延出方向との双方に直交する幅方向に配列し」ていることに相当する。 (ク)甲1発明の「磁気センサ14」が「出力用バスバ46v、46wからその厚さ方向に離れて、出力用バスバ46v、46wと隣り合って」いることは、前記(ア)及び(ウ)を踏まえると、本件発明1の「上記電流センサ(4)」が「上記バスバー(2)から離隔しつつ、上記厚さ方向において上記バスバー(2)に隣り合う位置に配されて」いることに相当する。 (ケ)甲1発明の「電流検出装置10」は、「金属ケース60内に配置されて」いるから、甲1発明の「磁気センサ14」及び「複数の出力用バスバ46u、46v、46w」は、「金属ケース60」の天井面と底面との間に存在する。そうすると、甲1発明の「金属ケース60」は、その天井面と底面とが「磁気センサ14」及び「複数の出力用バスバ」「46v、46w」を「複数の出力用バスバ」「46v、46w」の厚さ方向から挟んでいることになる。そして、金属製の障壁が遮蔽に用いられることは技術常識であるから、甲1発明の「金属ケース60」も、遮蔽のためのものと理解される。 したがって、甲1発明の「金属ケース60」は、前記(ア)、(ウ)、(キ)及び(ク)を踏まえると、本件発明1の「上記バスバー(2)及び上記電流センサ(4)を上記厚さ方向から挟む位置に」「設けられ」た「少なくとも一対の遮蔽板(5a,5b)」に相当する。 (コ)甲1発明の「電流検出装置10」は、本件発明1の「電流センサ付バスバーモジュール(1)」に相当する。 イ 一致点及び相違点 前記アの対比の結果をまとめると、本件発明1と甲1発明とは、以下の一致点で一致し、以下の相違点1-1及び相違点1-2で相違する。 (ア)一致点 「それぞれ電流が流れる複数本のバスバー(2)と、 該複数本のバスバー(2)を封止してこれらを一体化する封止部材(3)と、 上記複数本のバスバー(2)のうち少なくとも一部のバスバー(2)の電流値を測定する、複数の電流センサ(4)と、 該電流センサ(4)が取り付けられたセンサ用回路基板(7)とを備え、 個々の上記電流センサ(4)は磁気抵抗素子からなり、上記電流センサ(4)は、上記電流が流れることによって上記バスバー(2)の周囲に発生した磁界の強さを検出することにより、上記電流値を測定しており、 上記複数本のバスバー(2)は、該バスバー(2)の厚さ方向と上記バスバー(2)の延出方向との双方に直交する幅方向に配列し、 上記電流センサ(4)は、上記バスバー(2)から離隔しつつ、上記厚さ方向において上記バスバー(2)に隣り合う位置に配されており、 上記バスバー(2)及び上記電流センサ(4)を上記厚さ方向から挟む位置に、少なくとも一対の遮蔽板(5a,5b)が設けられている電流センサ付バスバーモジュール(1)。」 (イ)相違点1-1 本件発明1は、「上記バスバー(2)及び上記電流センサ(4)を上記厚さ方向から挟む位置に」「設けられ」た「少なくとも一対の遮蔽板(5a,5b)」が「上記磁界を遮蔽する」、すなわち、「電流が流れることによって」「複数本のバスバー(2)」「の周囲に発生した磁界」「を遮蔽する」のに対し、 甲1発明は、「電流検出装置10」が「金属ケース60内に配置されて」いる結果、「複数の出力用バスバ46u、46v、46w」も全て「金属ケース60」の内部に存在するので、「金属ケース60」(本件発明1の「少なくとも一対の遮蔽板(5a,5b)」に相当する。)が「複数の出力用バスバ46u、46v、46w」(本件発明1の「複数本のバスバー(2)」に相当する。)の周囲に発生した磁界を遮蔽することはない点。 (ウ)相違点1-2 本件発明1は、「上記封止部材(3)には凹部(30)が形成され、該凹部(30)に上記電流センサ(4)が収容されており、上記封止部材(3)には、上記凹部(30)の開口を塞ぐ蓋部(6)が取り付けられ、上記一対の遮蔽板(5a,5b)のうち一方の上記遮蔽板(5a)は上記封止部材(3)に封止され、他方の上記遮蔽板(5b)は上記蓋部(6)に封止されており、」「該蓋部(6)は上記センサ用回路基板(7)とは別体に形成され、上記凹部(30)に、上記センサ用回路基板(7)を上記電流センサ(4)と共に収容してある」のに対し、 甲1発明は、そのような構成を有しない点。 ウ 相違点1-1についての判断 以下に述べるとおり、相違点1-1に係る本件発明1の構成は、甲1文献及び甲2文献に記載された発明に基づいて、又はさらに証拠として提出されたその他の文献に記載された発明に基づいても、当業者が容易に思い付くものであるということはできない。また、相違点1-1に係る本件発明1の構成が周知技術であるとか、当業者にとって自明であると認めるに足りる証拠もない。 (ア)甲2発明(前記1(2)イ(ク))では、「ケース4の内壁面に」「導電性を有する電界シールド層5が設置され」る。 a しかし、この「電界シールド層5」は、「磁気抵抗効果素子11やセンサ回路部7と一次導体3との間に設置され」るから、いかなる方向からであれ、「一次導体3」(本件発明1の「バスバー(2)」に対応する。)と「磁気抵抗効果素子11」(本件発明1の「電流センサ(4)」に対応する。)とを挟むものにはなり得ない。 すなわち、甲2発明は、本件発明1の「上記バスバー(2)及び上記電流センサ(4)を上記厚さ方向から挟む位置に、上記磁界を遮蔽する少なくとも一対の遮蔽板(5a,5b)が設けられ」に相当する構成を備えていないし、そのような構成を示唆するものでもない。 b また、甲2発明の「電界シールド層5」は、「外部から磁気抵抗効果素子11やセンサ回路部7へ印加される電界ノイズを除去又は低減するための」もの、すなわち、外部からの電界を遮蔽するシールドである。 ところで、甲1発明の「金属ケース60」は、その中に「2つの磁気センサ14」が配置されている。そして、甲2発明に「外部から磁気抵抗効果素子11やセンサ回路部7へ印加される電界ノイズを除去又は低減するための電界シールド層5が」「設置され」ていたり、甲4発明が「バスバー12とホール素子14と第1フィードバックコイル16と第2フィードバックコイル17と制御回路18とを環状に囲んで外部磁界から磁気遮蔽する」「磁気シールド体650U、650V、650W」を備えていたり、甲8発明に「磁気インピーダンス素子2と回路部5とに作用する外部からの外乱磁界を遮断する」「磁気シールド13が設けられて」いたりすることからすれば、磁気センサを外部の電界又は磁界から遮蔽するためのシールドを設けることは、優先日前に周知の技術であると認められる。このことを踏まえると、甲1発明の「金属ケース60」も、外部からの電界又は磁界を遮蔽するためのシールドであると解される。 すなわち、甲1発明は、外部からの電界又は磁界を遮蔽するためのシールドを既に備えている。 そうすると、甲1発明に、外部からの電界又は磁界を遮蔽するためのシールドを追加する理由が見当たらない。したがって、甲1発明に甲2発明の「電界シールド層5」を追加する動機付けがあるということはできない。 (イ)甲4発明(前記1(4)イ(ス))では、「上側磁気シールド部材620U、620V、620W及び下側磁気シールド部材630U、630V、630W」が設けられる。 これは、「バスバー12とホール素子14と第1フィードバックコイル16と第2フィードバックコイル17と制御回路18とを環状に囲んで」いるから、「バスバー12」(本件発明1の「バスバー(2)」に相当する。)と「磁気抵抗効果素子14」(本件発明1の「電流センサ(4)」に相当する。)とを「バスバー12」の厚さ方向から挟む部材ということもできる。 しかし、これは、「外部磁界から磁気遮蔽する」ためのもの、すなわち、外部からの磁界を遮蔽するためのシールドである。 そうすると、甲2発明の「電界シールド層5」について前記(ア)bで述べたことは、甲4発明の「上側磁気シールド部材620U、620V、620W及び下側磁気シールド部材630U、630V、630W」にも当てはまる。 すなわち、甲1発明に甲4発明の「上側磁気シールド部材620U、620V、620W及び下側磁気シールド部材630U、630V、630W」を追加する動機付けがあるということはできない。 (ウ)甲5発明(前記1(5)イ)では、「内側ケース7を上下から挟んで覆う一対の下側磁気シールド8及び上側磁気シールド9」が設けられる。 ここで、「内側ケース7」は「電流路6が挿通されるとともに絶縁基板2が固定される」ものであり、「磁電変換素子3」は「絶縁基板2に搭載される」から、「一対の下側磁気シールド8及び上側磁気シールド9」は、「電流路6」(本件発明1の「バスバー(2)」に相当する。)と「磁電変換素子3」(本件発明1の「電流センサ(4)」に相当する。)とを「上下から挟んで覆う」(すなわち、「電流路6」の厚み方向から挟む)ことになる。 ところで、本件発明1の「少なくとも一対の遮蔽板(5a,5b)」は、「上記磁界を遮蔽する」もの、すなわち、「電流が流れることによって上記バスバー(2)の周囲に発生した磁界」を遮蔽するものである。そして、これは、本件特許の明細書に記載されているとおり、「電流センサが、電流を測定するバスバーの隣に配されたバスバーから発生した磁界の影響を受けてしまい、電流値を正確に測定しにくいという問題」(【0007】)を解決するためのものものである。 これに対して、甲5発明の「電流センサ1」には「電流路6」が一つしかなく、甲5発明の「一対の下側磁気シールド8及び上側磁気シールド9」は、その一つしかない「電流路6」を「上下から挟んで覆う」ものであるから、「電流路6」の周囲に発生した磁界を遮蔽するものと解することはできない。 むしろ、前記(ア)bで述べたとおり、磁気センサを外部の電界又は磁界から遮蔽するためのシールドを設けることが優先日前に周知の技術であると認められることを踏まえると、甲5発明の「一対の下側磁気シールド8及び上側磁気シールド9」も、外部からの電界又は磁界を遮蔽するためのものと解するのが自然である。 そうすると、甲2発明の「電界シールド層5」について前記(ア)bで述べたことは、甲5発明の「一対の下側磁気シールド8及び上側磁気シールド9」にも当てはまる。 すなわち、甲1発明に甲5発明の「一対の下側磁気シールド8及び上側磁気シールド9」を追加する動機付けがあるということはできない。 (エ)甲8発明(前記1(8)イ)では、「匡体部11の外周部分に」「被検出電線Dと磁気インピーダンス素子2と回路部5とを内包する磁気シールド13が設けられ」る。 この「磁気シールド13」は、「磁気インピーダンス素子2と回路部5とに作用する外部からの外乱磁界を遮断する」もの、すなわち、外部からの磁界を遮蔽するシールドである。 そうすると、甲2発明の「電界シールド層5」について前記(ア)bで述べたことは、甲8発明の「磁気シールド13」にも当てはまる。 すなわち、甲1発明に甲8発明の「磁気シールド13」を追加する動機付けがあるということはできない。 (オ)甲3の1文献及び甲3の2文献、甲6文献及び甲7文献のいずれにも、遮蔽板に関する記載はない。 エ 特許異議申立人の主張について (ア)特許異議申立人は、甲2文献には「一次導体(3)」及び「電流検知デバイス部(6)」を厚さ方向から挟む位置に磁界を遮蔽する「電界シールド層(5)」を設けることが記載されていると主張する(特許異議申立書、第28ページ)。 しかし、甲2発明の「電界シールド層5」は、「磁気抵抗効果素子11やセンサ回路部7と一次導体3との間に設置され」るものである。そして、甲2発明の「電流検知デバイス部6」は、「設置基板14上にブリッジ回路15を構成する4つの磁気抵抗効果素子11a?11dが配置されたもの」であるから、「シールド層5」が「一次導体(3)」と「電流検知デバイス部(6)」との間に設置されることは明らかである。 また、甲2文献には、「電界シールド層5は、…(中略)…磁気抵抗効果素子11やセンサ回路部7と一次導体3の間に設置する必要があり」(【0012】)と記載されている。すなわち、甲2発明の「電界シールド層5」は、「磁気抵抗効果素子11やセンサ回路部7と一次導体3との間」に設置しなければならないのであるから、これを別の位置、例えば「一次導体(3)」及び「電流検知デバイス部(6)」を厚さ方向から挟む位置に移動させることは想定されていない。 したがって、特許異議申立人の主張は、採用することができない。 (イ)特許異議申立人は、当業者には甲1発明の「金属ケース60」に代えて甲2発明の「ケース4」を採用する動機付けがあり、その場合には甲1発明の「制御基板18」を甲2発明の「ケース4の内部に設けられた突起部10」に載置することになると主張する(特許異議申立書、第29ページ及び第30ページ)。 しかし、以下に述べるとおり、特許異議申立人の主張は、採用することができない。 甲1発明の「制御基板18」は、「2つの第1分割コア12及び磁気抵抗素子である2つの磁気センサ14が」「取り付けられて」「基板モジュール部20」になるものである。一方、甲1発明の「パワーモジュール部24」は、「2つの第2分割コア16を含」み、「複数の出力用バスバ46u、46v、46wを内部に埋設した」ものである。すなわち、甲1発明では、「互いに連結されて環状磁性コア17を形成」する「第1分割コア12」及び「第2分割コア16」のうち、「第1分割コア12」は「制御基板18」に、「第2分割コア16」は「複数の出力用バスバ46u、46v、46w」とともに「パワーモジュール部24」に、それぞれ取り付けられている。 したがって、仮に、甲1発明の「制御基板18」を甲2発明の「ケース4の内部に設けられた突起部10」に載置するとすれば、甲1発明の「互いに連結されて環状磁性コア17を形成」する「第1分割コア12」及び「第2分割コア16」のうち、「第1分割コア12」だけを甲2発明の「ケース4の内部に」設けることになる。その結果、「環状磁性コア17」が形成されなくなることは明らかである。 ところで、甲1発明は、「バスバの周囲に配置された環状磁性コアを通る磁束量によりバスバ電流を検出する電流検出装置10」である。そして、甲1文献には、「バスバ周囲に形成される回転磁界の磁束を環状磁性コア17に効率よく集磁して通すことができる。」(【0041】)と記載されている。したがって、甲1発明は、バスバの周囲に形成される回転磁界の磁束を効率よく集磁して通す「環状磁性コア17」が存在することを前提として、「バスバ電流を検出する」という機能を果たす装置の発明である。 既に述べたとおり、甲1発明の「制御基板18」を甲2発明の「ケース4の内部に設けられた突起部10」に載置すると、「環状磁性コア17」が形成されなくなる。そのようなことをすれば、甲1発明の装置が「バスバ電流を検出する」という機能を果たすための前提が失われることになる。これが甲1発明の目的に反することは、明らかである。 したがって、甲1発明の「制御基板18」を甲2発明の「ケース4の内部に設けられた突起部10」に載置することには、阻害要因があるというべきであり、そのようなことをする動機付けが当業者にあるということはできない。 オ 本件発明1についてのまとめ 以上のとおりであるから、相違点1-2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1文献及び甲2文献に記載された発明に基づいて、又はさらに証拠として提出されたその他の文献に記載された発明に基づいても、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 したがって、本件発明1についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるということはできず、理由1によって取り消すべきであるということはできない。 (2)本件発明2ないし本件発明5について 本件発明2ないし本件発明5は、本件発明1の構成を全て含むから、少なくとも本件発明1と甲1発明との相違点1-1及び相違点1-2(前記(1)イ(イ)及び(ウ))において甲1発明と相違する。そして、前記(1)ウのとおり、相違点1-1に係る本件発明1の構成は、甲1文献及び甲2文献に記載された発明に基づいて、又はさらに証拠として提出されたその他の文献に記載された発明に基づいても、当業者が容易に思い付くものであるということはできないから、相違点1に係る本件発明2ないし本件発明5の構成も同様である。 そうすると、本件発明2ないし本件発明5は、甲1文献及び甲2文献に記載された発明に基づいて、又はさらに証拠として提出されたその他の文献に記載された発明に基づいても、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 したがって、本件発明2ないし本件発明5についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるということはできず、理由1によって取り消すべきであるということはできない。 3 理由2(甲6文献に基づく進歩性欠如)について (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲6発明(前記1(6)イ(ク))とを対比すると、以下のとおりである。 (ア)甲6発明は、「バスバー1に検出対象となる電流が流れる」ものであるから、甲6発明の「3本のバスバー1」は、本件発明1の「それぞれ電流が流れる複数本のバスバー(2)」に相当する。 (イ)甲6発明の「3本のバスバー1」を「一体化」する「合成樹脂41」は、前記(ア)を踏まえると、本件発明1の「該複数本のバスバー(2)を封止してこれらを一体化する封止部材(3)」に相当する。 (ウ)甲6発明の「磁束検出部5」は、「バスバー1に流れる電流を電圧に変換する」から、甲6発明の「各バスバー1に対応する3個の磁束検出部5」は、前記(ア)を踏まえると、本件発明1の「上記複数本のバスバー(2)のうち少なくとも一部のバスバー(2)の電流値を測定する、複数の電流センサ(4)」に相当する。 (エ)甲6発明の「各バスバー1に対応する3個の磁束検出部5が設けられたプリント基板2」は、前記(ウ)を踏まえると、本件発明1の「該電流センサ(4)が取り付けられたセンサ用回路基板(7)」に相当する。 (オ)甲6発明の「バスバー1に検出対象となる電流が流れると」「バスバー1の周囲に発生」する「ループ状の磁界の磁束密度」は、前記(ア)を踏まえると、本件発明1の「上記電流が流れることによって上記バスバー(2)の周囲に発生した磁界の強さ」に相当する。 (カ)甲6発明の「磁束検出部5」が「バスバー1の周囲に発生したループ状の磁界の磁束密度を電圧に変換することで、バスバー1に流れる電流を電圧に変換する」ことは、前記(ア)及び(オ)を踏まえると、本件発明1の「上記電流センサ(4)」が「上記電流が流れることによって上記バスバー(2)の周囲に発生した磁界の強さを検出することにより、上記電流値を測定して」いることに相当する。 (キ)甲6発明の「3本のバスバー1」が「いずれも板状の部材であって、それらの幅方向に配列して」いることは、前記(ア)を踏まえると、本件発明1の「上記複数本のバスバー(2)」が「該バスバー(2)の厚さ方向と上記バスバー(2)の延出方向との双方に直交する幅方向に配列」することに相当する。 (ク)甲6発明の「電流検出装置」は、「3本のバスバー1」及び「3個の磁束検出部5」を備えているから、前記(ア)及び(ウ)を踏まえると、本件発明1の「電流センサ付バスバーモジュール(1)」に相当する。 イ 一致点及び相違点 前記アの対比の結果をまとめると、本件発明1と甲6発明とは、以下の一致点で一致し、以下の相違点6-1ないし相違点6-3で相違する。 (ア)一致点 「それぞれ電流が流れる複数本のバスバー(2)と、 該複数本のバスバー(2)を封止してこれらを一体化する封止部材(3)と、 上記複数本のバスバー(2)のうち少なくとも一部のバスバー(2)の電流値を測定する、複数の電流センサ(4)と、 該電流センサ(4)が取り付けられたセンサ用回路基板(7)とを備え、 上記電流センサ(4)は、上記電流が流れることによって上記バスバー(2)の周囲に発生した磁界の強さを検出することにより、上記電流値を測定しており、 上記複数本のバスバー(2)は、該バスバー(2)の厚さ方向と上記バスバー(2)の延出方向との双方に直交する幅方向に配列してある電流センサ付バスバーモジュール(1)。」 (イ)相違点6-1 本件発明1は、「個々の」「電流センサ(4)」が「磁気抵抗素子から」なるのに対し、 甲6発明は、「磁束検出部5」(本件発明1の「電流センサ(4)」に相当する。)が「ホール素子から」なる点。 (ウ)相違点6-2 本件発明1は、「電流センサ(4)」が「上記バスバー(2)から離隔しつつ、上記厚さ方向において上記バスバー(2)に隣り合う位置に配されて」いるのに対し、 甲6発明は、「磁束検出部5」(本件発明1の「電流センサ(4)」に相当する。)が「バスバー」(本件発明1の「バスバー(2)」に相当する。)から「その幅方向に離れて配置されて」いる点。 (エ)相違点6-3 本件発明1は、「上記バスバー(2)及び上記電流センサ(4)を上記厚さ方向から挟む位置に、上記磁界を遮蔽する少なくとも一対の遮蔽板(5a,5b)が設けられ、」「上記封止部材(3)には凹部(30)が形成され、該凹部(30)に上記電流センサ(4)が収容されており、上記封止部材(3)には、上記凹部(30)の開口を塞ぐ蓋部(6)が取り付けられ、上記一対の遮蔽板(5a,5b)のうち一方の上記遮蔽板(5a)は上記封止部材(3)に封止され、他方の上記遮蔽板(5b)は上記蓋部(6)に封止されており、」「該蓋部(6)は上記センサ用回路基板(7)とは別体に形成され、上記凹部(30)に、上記センサ用回路基板(7)を上記電流センサ(4)と共に収容してある」のに対し、 甲6発明は、本件発明1の「上記バスバー(2)及び上記電流センサ(4)を上記厚さ方向から挟む位置に、上記磁界を遮蔽する少なくとも一対の遮蔽板(5a,5b)が設けられ」に相当する構成を有しない点。 ウ 相違点についての判断 事案に鑑み、相違点6-1及び相違点6-3について検討する。 (ア)相違点6-1について 甲6文献には、従来の電流検出装置は、被検出電流が流れる通電経路と磁気センサーとしてのホール素子とが互いに近接して同じプリント基板上に配置されているので、電流パターンの発熱の影響を受けてホール素子の温度が上昇し、ホール素子のオフセット電圧や感度が温度ドリフトにより変化する結果、大電流通電時の電流検出精度が悪化するという課題があった旨の記載がある(【0004】)。そして、甲6文献に記載された発明は、ホール素子の温度上昇を抑えて検出精度の高い電流検出装置を得ることを目的とする旨の記載がある(【0005】)。 このように、甲6文献に記載された発明は、磁気センサーとしてホール素子を使用することを前提として、その温度上昇に起因する不具合を解決しようとするものであるから、磁気センサーとしてホール素子以外の素子を使用することは、想定されていない。 甲6発明も、甲6文献に記載された発明である以上、磁気センサーとしてのホール素子を使用することを前提として、その温度上昇に起因する不具合を解決しようとするものである。現に、甲6発明の「電流検出装置」が有する「磁束検出部5」は、「ホール素子」からなるものである。 そうすると、甲6発明において、ホール素子からなる磁束検出部5をホール素子以外の素子からなるものに変更することは、甲6発明の前提を失わせることになるから、そもそも想定されていない。 したがって、相違点6-1に係る本件発明1の構成は、甲6文献及び甲2文献に記載された発明に基づいて、又はさらに証拠として提出されたその他の文献に記載された発明に基づいても、当業者が容易に思い付くものであるということはできない。 (イ)相違点6-3について 前記2(1)ウ(ア)bで述べたとおり、磁気センサを外部の電界又は磁界から遮蔽するためのシールドを設けることは、優先日前に周知の技術であると認められる。 そして、甲4発明は、「U相、V相、W相のバスバー12U、12V、12W」と「U相、V相、W相のそれぞれに対応して設けられた磁気シールド体650U、650V、650W」とを備えるから、複数のバスバーのそれぞれに磁気シールドを設けることを示唆するものである。さらに、甲4発明の「磁気シールド体650U、650V、650W」を構成する「上側磁気シールド部材620U、620V、620W及び下側磁気シールド部材630U、630V、630W」は、前記2(1)ウ(イ)で述べたとおり、「バスバー12」(本件発明1の「バスバー(2)」に相当する。)と「磁気抵抗効果素子14」(本件発明1の「電流センサ(4)」に相当する。)とを「バスバー12」の厚さ方向から挟む部材ということもできる。 そうすると、甲6発明の「3本のバスバー1」(甲4発明の「バスバー12U、12V、12W」に相当する。)のそれぞれと「各バスバー1に対応する3個の磁束検出部5」(甲4発明の「磁気抵抗効果素子14」に相当する。)とを「バスバー1」の厚さ方向から挟む磁気シールドを設けることは、甲4発明に基づいて当業者が容易に思い付くことである。 その結果、甲6発明は、本件発明1の「上記バスバー(2)及び上記電流センサ(4)を上記厚さ方向から挟む位置に、上記磁界を遮蔽する少なくとも一対の遮蔽板(5a,5b)が設けられ」に相当する構成を備えるようになると認められる。 しかし、甲4発明は、本件発明1の「上記封止部材(3)には凹部(30)が形成され、該凹部(30)に上記電流センサ(4)が収容されており、上記封止部材(3)には、上記凹部(30)の開口を塞ぐ蓋部(6)が取り付けられ、上記一対の遮蔽板(5a,5b)のうち一方の上記遮蔽板(5a)は上記封止部材(3)に封止され、他方の上記遮蔽板(5b)は上記蓋部(6)に封止されており、」「該蓋部(6)は上記センサ用回路基板(7)とは別体に形成され、上記凹部(30)に、上記センサ用回路基板(7)を上記電流センサ(4)と共に収容してある」に相当する構成を備えるものではないし、この構成を示唆するものでもない。また、この構成は、証拠として提出されたその他の文献のいずれにも記載されていないし、示唆されてもいない。 したがって、相違点6-3に係る本件発明1の構成は、甲6文献及び甲2文献に記載された発明に基づいて、又はさらに証拠として提出されたその他の文献に記載された発明に基づいても、当業者が容易に思い付くものであるということはできない。 エ 特許異議申立人の主張について (ア)特許異議申立人は、甲6文献には磁気抵抗素子からなる「磁束検出部5」が記載されていると主張する(特許異議申立書、第40ページ)。 しかし、甲6文献に記載されているのは、「ホール素子からなる磁束検出部5」(【0008】)であって、磁気抵抗素子についての記載はない。 したがって、特許異議申立人の主張は、採用することができない。 (イ)特許異議申立人は、甲2文献には「一次導体(3)」及び「電流検知デバイス部(6)」を厚さ方向から挟む位置に磁界を遮蔽する「電界シールド層(5)」を設けることが記載されていると主張する(特許異議申立書、第41ページ)。 しかし、この主張が採用できないことは、前記2(1)エ(ア)のとおりである。 (ウ)特許異議申立人は、当業者には甲6発明に甲2発明の「ケース4」を採用する動機付けがあり、その場合には甲6発明の「センサ基板2」を甲2発明の「ケース4の内部に設けられた突起部10」に載置することになるから、甲6発明の「バスバー1」及び「磁束検出部5」を厚さ方向から挟む位置に甲2発明の「電界シールド層5」が設けられることになると主張する(特許異議申立書、第43ページ)。 しかし、甲6発明に甲2発明の「ケース4」を採用する動機付けの有無は措くとして、仮に、甲6発明の「センサ基板2」を甲2発明の「ケース4の内部に設けられた突起部10」に載置したとすると、甲2発明の「電界シールド層5」は、甲6発明の「センサ基板2」と甲2発明の「一次導体3」との間に設置されることになる。したがって、甲6発明の「バスバー1」及び「磁束検出部5」を厚さ方向から挟む位置に甲2発明の「電界シールド層5」が設けられることにはならない。 したがって、特許異議申立人の主張は、採用することができない。 特許異議申立人の主張は、甲6発明の「センサ基板2」ではなく、甲6発明の「電流検出装置」全体を甲2発明の「ケース4の内部に設けられた突起部10」に載置するという趣旨かとも思われる。 しかし、その場合には、甲6発明の「3本のバスバー1」も甲2発明の「ケース4」に収納される。したがって、甲6発明の「電流検出装置」全体を甲2発明の「ケース4の内部に設けられた突起部10」に載置して得られるものには、甲2発明の「被測定電流が印加されるU字型一次導体」である「一次導体3」に加えて、甲6発明の「検出対象となる電流が流れる」「バスバー1」が存在するという不合理なことになる。 そのような不合理を招く動機付けが当業者にあると認めることはできないから、特許異議申立人の主張は、採用することができない。 オ 本件発明1についてのまとめ 以上のとおりであるから、相違点6-2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲6文献及び甲2文献に記載された発明に基づいて、又はさらに証拠として提出されたその他の文献に記載された発明に基づいても、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 したがって、本件発明1についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるということはできず、理由2によって取り消すべきであるということはできない。 (2)本件発明2ないし本件発明5について 本件発明2ないし本件発明5は、本件発明1の構成を全て含むから、少なくとも本件発明1と甲6発明との相違点6-1ないし相違点6-3(前記(1)イ(イ)ないし(エ))において甲6発明と相違する。そして、前記(1)ウ(ア)及び(イ)のとおり、相違点6-1及び相違点6-3に係る本件発明1の構成は、甲6文献及び甲2文献に記載された発明に基づいて、又はさらに証拠として提出されたその他の文献に記載された発明に基づいても、当業者が容易に思い付くものであるということはできないから、相違点6-1及び相違点6-3に係る本件発明2ないし本件発明5の構成も同様である。 そうすると、本件発明2ないし本件発明5は、甲6文献及び甲2文献に記載された発明に基づいて、又はさらに証拠として提出されたその他の文献に記載された発明に基づいても、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない したがって、本件発明2ないし本件発明5についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるということはできず、理由2によって取り消すべきであるということはできない。 4 理由3(甲4文献に基づく進歩性欠如)について (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲4発明(前記1(4)イ(セ))とを対比すると、以下のとおりである。 (ア)甲4発明は、「バスバーに流れる電流を測定する」ものであるから、甲4発明の「U相、V相、W相のバスバー12U、12V、12W」に電流が流れることは明らかである。 したがって、甲4発明の「U相、V相、W相のバスバー12U、12V、12W」は、本件発明1の「それぞれ電流が流れる複数本のバスバー(2)」に相当する。 (イ)甲4発明は、「U相、V相、W相のバスバー12U、12V、12Wのそれぞれに対応する電流センサ100U、100V、100Wが樹脂58でモールド一体化されて」「モールドユニット581」を「構成」している。そして、「電流センサ100U、100V、100W」は、「バスバー12U、12V、12W」「が樹脂58でモールドされて一体化されたバスバー一体型のセンサ」であるから、甲4発明の「バスバー12U、12V、12W」は、「樹脂58でモールド一体化されて」「モールドユニット581」を「構成」していることになる。 したがって、甲4発明の「樹脂58」は、前記(ア)を踏まえると、本件発明1の「該複数本のバスバー(2)を封止してこれらを一体化する封止部材(3)」に相当する。 (ウ)甲4発明は、「U相、V相、W相のバスバー12U、12V、12Wのそれぞれに対応する電流センサ100U、100V、100Wが樹脂58でモールド一体化されて構成されるモールドユニット581」「を備え」ており、「電流センサ100U、100V、100W」は、「磁気検出素子としての磁気抵抗効果素子」「を備え」ているから、甲4発明は、「U相、V相、W相のバスバー12U、12V、12Wのそれぞれに対応する」「磁気検出素子としての磁気抵抗効果素子」を備えている。そして、甲4発明は、「磁気検出素子を用いてバスバーに流れる電流を測定する電流センサ400」であるから、甲4発明の「磁気検出素子としての磁気抵抗効果素子」は、バスバーに流れる電流を測定するセンサである。 したがって、甲4発明の「磁気検出素子としての磁気抵抗効果素子14」は、前記(ア)を踏まえると、本件発明1の「上記複数本のバスバー(2)のうち少なくとも一部のバスバー(2)の電流値を測定する、複数の電流センサ(4)」に相当する。 (エ)甲4発明の「プリント基板上に電子部品を実装したもの」である「制御回路」は、「磁気抵抗効果素子の検出出力がゼロとなるように第1フィードバックコイル及び第2フィードバックコイルに電流を供給し、この電流に基づいて、バスバー12U、12V、12Wに流れる被測定電流が検出され」るものであるから、「バスバー12U、12V、12Wに流れる被測定電流」を測定する「磁気検出素子としての磁気抵抗効果素子」用の基板である。 したがって、甲4発明の「プリント基板上に電子部品を実装したもの」である「制御回路」は、前記(ウ)を踏まえると、本件発明1の「センサ用回路基板(7)」に相当する。 (オ)甲4発明の「磁気検出素子」が「磁気抵抗効果素子」であることは、前記(ウ)を踏まえると、本件発明1の「個々の上記電流センサ(4)」が「磁気抵抗素子からな」ることに相当する。 (カ)甲4発明の「磁気抵抗効果素子」は、「バスバー12U、12V、12Wに流れる電流によって発生する磁界が感磁面に印加され」るものである。この「磁界」は、「バスバー12U、12V、12W」の周囲に「発生する」ことが明らかである。そして、「第1フィードバックコイル及び第2フィードバックコイル」が「磁気抵抗効果素子の感磁面に印加される磁界を相殺する磁界を発生し」、「制御回路」が「磁気抵抗効果素子の検出出力がゼロとなるように第1フィードバックコイル及び第2フィードバックコイルに電流を供給し、この電流に基づいて、バスバー12U、12V、12Wに流れる被測定電流が検出され」ることから、甲4発明の「磁気検出素子としての磁気抵抗効果素子」は、「バスバー12U、12V、12W」の周囲に「発生する」「磁界」の強さを検出することにより、「バスバー12U、12V、12Wに流れる被測定電流」を測定するものである。 したがって、甲4発明の「磁気抵抗効果素子」が「バスバー12U、12V、12Wに流れる電流によって発生する磁界が感磁面に印加され」るものであり、「第1フィードバックコイル及び第2フィードバックコイル」が「磁気抵抗効果素子の感磁面に印加される磁界を相殺する磁界を発生し」、「制御回路」が「磁気抵抗効果素子の検出出力がゼロとなるように第1フィードバックコイル及び第2フィードバックコイルに電流を供給し、この電流に基づいて、バスバー12U、12V、12Wに流れる被測定電流が検出され」ることは、前記(ア)及び(ウ)を踏まえると、本件発明1の「上記電流センサ(4)は、上記電流が流れることによって上記バスバー(2)の周囲に発生した磁界の強さを検出することにより、上記電流値を測定しており」に相当する。 (キ)甲4発明の「バスバー12U、12V、12W」が「平板形状であり、被測定電流の経路をなし、それらの幅方向に配列して」いることは、前記(ア)を踏まえると、本件発明1の「上記複数本のバスバー(2)は、該バスバー(2)の厚さ方向と上記バスバー(2)の延出方向との双方に直交する幅方向に配列」することに相当する。 (ク)甲4発明の「磁気抵抗効果素子14」が「バスバー12U、12V、12Wの幅広主面上に、バスバー12U、12V、12Wからその厚さ方向に離れて固定配置され」ることは、前記(ア)及び(ウ)を踏まえると、本件発明1の「上記電流センサ(4)」が「上記バスバー(2)から離隔しつつ、上記厚さ方向において上記バスバー(2)に隣り合う位置に配されて」いることに相当する。 (ケ)甲4発明の「U相、V相、W相のそれぞれに対応して設けられた磁気シールド体650U、650V、650W」が「コの字型の上側磁気シールド部材620U、620V、620W及び下側磁気シールド部材630U、630V、630Wから構成され、上側磁気シールド部材620U、620V、620Wと下側磁気シールド部材630U、630V、630Wとの間には空隙が形成され、バスバーと磁気抵抗効果素子と第1フィードバックコイルと第2フィードバックコイルと制御回路とを環状に囲んで外部磁界から磁気遮蔽する」ことは、前記(ア)及び(ウ)を踏まえると、本件発明1の「上記バスバー(2)及び上記電流センサ(4)を上記厚さ方向から挟む位置に、上記磁界を遮蔽する少なくとも一対の遮蔽板(5a,5b)が設けられ」ることに相当する。 (コ)甲4発明の「電流センサ400」は、「U相、V相、W相のバスバー12U、12V、12Wのそれぞれに対応する電流センサ100U、100V、100Wが」「モールド一体化されて構成されるモールドユニット581」「を備え」、「電流センサ100U、100V、100W」が「バスバー12U、12V、12Wと、磁気検出素子としての磁気抵抗効果素子14と」「を備え」るから、前記(ア)及び(ウ)を踏まえると、本件発明1の「電流センサ付バスバーモジュール(1)」に相当する。 イ 一致点及び相違点 前記アの対比の結果をまとめると、本件発明1と甲4発明とは、以下の一致点で一致し、以下の相違点4-1及び相違点4-2で相違する。 (ア)一致点 「それぞれ電流が流れる複数本のバスバー(2)と、 該複数本のバスバー(2)を封止してこれらを一体化する封止部材(3)と、 上記複数本のバスバー(2)のうち少なくとも一部のバスバー(2)の電流値を測定する、複数の電流センサ(4)と、 センサ用回路基板(7)とを備え、 個々の上記電流センサ(4)は磁気抵抗素子からなり、上記電流センサ(4)は、上記電流が流れることによって上記バスバー(2)の周囲に発生した磁界の強さを検出することにより、上記電流値を測定しており、 上記複数本のバスバー(2)は、該バスバー(2)の厚さ方向と上記バスバー(2)の延出方向との双方に直交する幅方向に配列し、 上記電流センサ(4)は、上記バスバー(2)から離隔しつつ、上記厚さ方向において上記バスバー(2)に隣り合う位置に配されており、 上記バスバー(2)及び上記電流センサ(4)を上記厚さ方向から挟む位置に、上記磁界を遮蔽する少なくとも一対の遮蔽板(5a,5b)が設けられている電流センサ付バスバーモジュール(1)。」 (イ)相違点4-1 本件発明1は、「電流センサ(4)」が「センサ用回路基板(7)」に「取り付けられた」ものであるのに対し、 甲4発明は、「磁気抵抗効果素子14」(本件発明1の「電流センサ(4)」に相当する。)が「第1フィードバックコイル16及び第2フィードバックコイル17の当接している端面上略中央に位置し」ており、「制御回路18」(本件発明1の「センサ用回路基板(7)」に相当する。)には取り付けられていない点。 (ウ)相違点4-2 本件発明1は、「一対の遮蔽板(5a,5b)」について、「上記封止部材(3)には凹部(30)が形成され、該凹部(30)に上記電流センサ(4)が収容されており、上記封止部材(3)には、上記凹部(30)の開口を塞ぐ蓋部(6)が取り付けられ、上記一対の遮蔽板(5a,5b)のうち一方の上記遮蔽板(5a)は上記封止部材(3)に封止され、他方の上記遮蔽板(5b)は上記蓋部(6)に封止されており」、「該蓋部(6)は上記センサ用回路基板(7)とは別体に形成され、上記凹部(30)に、上記センサ用回路基板(7)を上記電流センサ(4)と共に収容してある」とされているのに対し、 甲4発明は、「磁気シールド体650U、650V、650W」(本件発明1の「一対の遮蔽板(5a,5b)」に相当する。)について、「樹脂58の外側は磁気シールド体650U、650V、650Wで覆われ」るとされている点。 ウ 相違点4-2についての判断 事案に鑑み、相違点4-2について検討する。 以下に述べるとおり、相違点4-2に係る本件発明1の構成は、甲4文献及び甲2文献に記載された発明に基づいて、又はさらに証拠として提出されたその他の文献に記載された発明に基づいても、当業者が容易に思い付くものであるということはできない。また、相違点4-2に係る本件発明1の構成が周知技術であるとか、当業者にとって自明であると認めるに足りる証拠もない。 (ア)甲4発明が相違点4-2に係る本件発明1の構成を備えるようにするためには、「磁気検出素子としての磁気抵抗効果素子14」を「樹脂58でモールド」して「一体化」する代わりに、「樹脂58」(本件発明1の「封止部材(3)」に相当する。)に凹部を形成し、その凹部に「磁気検出素子としての磁気抵抗効果素子14」(本件発明1の「電流センサ(4)」に相当する。)を収容する必要がある。 しかし、甲4発明は、甲4文献の「ホール素子14と第1フィードバックコイル16と第2フィードバックコイル17とがバスバー12と一体になるように樹脂58でモールドされるため、バスバー12との一体化が確実なものとなり位置ずれを起こしにくい。」(【0042】)という記載から明らかなように、「バスバー12U、12V、12Wと、磁気検出素子としての磁気抵抗効果素子14と、第1フィードバックコイル16と、第2フィードバックコイル17と」「が樹脂58でモールドされて一体化された」ことで、位置ずれを起こしにくいという効果を奏するものである。 甲4発明において、「樹脂58」に凹部を形成し、その凹部に「磁気検出素子としての磁気抵抗効果素子14」を収容すると、「磁気検出素子としての磁気抵抗効果素子14」「が樹脂58でモールドされて一体化された」ことによる前記の効果が失われることになるから、そのようなことをする動機付けが当業者にあるということはできない。 また、甲2文献にも、証拠として提出されたその他の文献のいずれにも、甲4発明が前記の効果を失うことになっても、なお、「樹脂58」に凹部を形成し、その凹部に「磁気検出素子としての磁気抵抗効果素子14」を収容することの動機付けとなるような記載は見いだせない。 (イ)甲4発明が相違点4-2に係る本件発明1の構成を備えるようにするためには、「磁気シールド体650U、650V、650W」を構成する「コの字型の」「下側磁気シールド部材630U、630V、630W」(本件発明1の「上記一対の遮蔽板(5a,5b)のうち一方の上記遮蔽板(5a)」に相当する。)を「樹脂58」(本件発明1の「封止部材(3)」に相当する。)に封止する必要がある。 しかし、甲4発明は、甲4文献の「本実施の形態の磁気シールド体65は上側磁気シールド部材62および下側磁気シールド部材63を組み合わせるものであるため樹脂58の外側を上側磁気シールド部材62および下側磁気シールド部材63で挟み込むようにして取り付けることができ作業性が良い。」(【0043】)という記載から明らかなように、甲4発明の「樹脂58の外側」が「磁気シールド体650U、650V、650Wで覆われ」ることで、「磁気シールド体650U、650V、650W」を構成する「コの字型の上側磁気シールド部材620U、620V、620W及び下側磁気シールド部材630U、630V、630W」を取り付けるときの作業性がよいという効果を奏するものである。 甲4発明において、「磁気シールド体650U、650V、650W」を構成する「コの字型の」「下側磁気シールド部材630U、630V、630W」を「樹脂58」に封止すると、「樹脂58の外側」が「磁気シールド体650U、650V、650Wで覆われ」ることによる前記の効果が失われることになるから、そのようなことをする動機付けが当業者にあるということはできない。 また、甲2文献にも、証拠として提出されたその他の文献のいずれにも、甲4発明が前記の効果を失うことになっても、なお、「磁気シールド体650U、650V、650W」を構成する「コの字型の」「下側磁気シールド部材630U、630V、630W」を「樹脂58」に封止することの動機付けとなるような記載は見いだせない。 エ 特許異議申立人の主張について (ア)特許異議申立人は、甲2文献には「一次導体(3)」及び「電流検知デバイス部(6)」を厚さ方向から挟む位置に磁界を遮蔽する「電界シールド層(5)」を設けることが記載されていると主張する(特許異議申立書、第51ページ及び第52ページ)。 しかし、この主張が採用できないことは、前記2(1)エ(ア)のとおりである。 (イ)特許異議申立人は、当業者には甲4文献に示されている「磁気シールド体650U、650V、650W」で覆われた部材を甲2文献に示されている「ケース4」内に載置する動機付けがあり、その場合には甲4発明の「モールドユニット581」を甲2発明の「ケース4の内部に設けられた突起部10」に載置することになると主張する(特許異議申立書、第53ページ)。 しかし、仮に、甲4発明の「モールドユニット581」を甲2発明の「ケース4の内部に設けられた突起部10」に載置したとすると、甲4発明の「U相、V相、W相のバスバー12U、12V、12W」も甲2発明の「ケース4」に収納される。したがって、甲4発明の「モールドユニット581」を甲2発明の「ケース4の内部に設けられた突起部10」に載置して得られるものには、甲2発明の「被測定電流が印加されるU字型一次導体」である「一次導体3」に加えて、甲4発明の「被測定電流」が流れる「U相、V相、W相のバスバー12U、12V、12W」が存在するという不合理なことになる。 そのような不合理を招く動機付けが当業者にあると認めることはできないから、特許異議申立人の主張は、採用することができない。 オ 本件発明1についてのまとめ 以上のとおりであるから、相違点4-1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲4文献及び甲2文献に記載された発明に基づいて、又はさらに証拠として提出されたその他の文献に記載された発明に基づいても、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 したがって、本件発明1についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるということはできず、理由3によって取り消すべきであるということはできない。 (2)本件発明2ないし本件発明5について 本件発明2ないし本件発明5は、本件発明1の構成を全て含むから、少なくとも本件発明1と甲4発明との相違点4-1及び相違点4-2(前記(1)イ(イ)及び(ウ))において甲4発明と相違する。そして、前記(1)ウのとおり、相違点4-2に係る本件発明1の構成は、甲4文献及び甲2文献に記載された発明に基づいて、又はさらに証拠として提出されたその他の文献に記載された発明に基づいても、当業者が容易に思い付くものであるということはできないから、相違点4-2に係る本件発明2ないし本件発明5の構成も同様である。 そうすると、本件発明2ないし本件発明5は、甲4文献及び甲2文献に記載された発明に基づいて、又はさらに証拠として提出されたその他の文献に記載された発明に基づいても、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 したがって、本件発明2ないし本件発明5についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるということはできず、理由3によって取り消すべきであるということはできない。 5 むすび 以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由によっては、本件発明1ないし本件発明5についての特許を取り消すべきであるということはできない。 また、他に、本件発明1ないし本件発明5についての特許を取り消すべきであるとする理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2019-11-25 |
出願番号 | 特願2015-57092(P2015-57092) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(G01R)
|
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 菅藤 政明 |
特許庁審判長 |
中塚 直樹 |
特許庁審判官 |
濱野 隆 小林 紀史 |
登録日 | 2019-02-15 |
登録番号 | 特許第6477089号(P6477089) |
権利者 | 株式会社デンソー |
発明の名称 | 電流センサ付バスバーモジュール |
代理人 | 特許業務法人あいち国際特許事務所 |