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審決分類 審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する C12N
管理番号 1357942
審判番号 訂正2019-390111  
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-02-28 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2019-09-27 
確定日 2019-11-28 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6438119号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第6438119号の明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6438119号の手続の経緯は、次のとおりである。
平成27年 8月24日 特許出願(国際出願)
平成30年11月22日 特許権の設定登録
令和 1年 9月27日 訂正審判請求

第2 請求の要旨
1 請求の趣旨
本件審判の請求の趣旨は、特許第6438119号の明細書を本件審判請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを認める、との審決を求めるものである。

2 訂正の内容
本件訂正の内容は、以下のとおりである。
(1)訂正事項
配列表の
「SEQUENCE LISTING・・・
<210> 6
<211> 36
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Primer
<400> 6
caggaaacag ctatgaccca gcgctgcctg aaactc 36
・・・

<210> 10
<211> 36
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Primer
<400> 10
caggaaacag ctatgaccat cccccggctt gtgagt 36
・・・

<210> 14
<211> 38
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Primer
<400> 14
caggaaacag ctatgaccgg accaagccca tcaccatt 38
・・・」


「SEQUENCE LISTING・・・
<210> 6
<211> 18
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Primer
<400> 6
cagcgctgcc tgaaactc 18
・・・

<210> 10
<211> 18
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Primer
<400> 10
atcccccggc ttgtgagt 18
・・・

<210> 14
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Primer
<400> 14
ggaccaagcc catcaccatt 20
・・・」
と訂正する。

第3 当審の判断
1 訂正事項について
上記訂正事項は、配列番号6、配列番号10及び配列番号14の塩基配列に係るものであり、本件特許明細書において、【0031】段落の記載及び(表1A)によると、配列番号6は、TERTプロモーター配列のC250変異を検出するための共通プライマーの塩基配列に係るものであり、配列番号10は、IDH1配列のR132変異を検出するための共通プライマーの塩基配列に係るものであり、配列番号14は、IDH2配列のR172変異を検出するための共通プライマーの塩基配列に係るものである。そして、訂正事項は、いずれも共通プライマーの塩基配列の5’末端に付加されたM13タグの配列を削除することで、これらのプライマーの塩基配列を訂正しようとするものであるから、3者をあわせて判断する。

2 願書に最初に添付した明細書及び図面の記載事項
配列番号6、10、14のプライマーの塩基配列について、願書に最初に添付した明細書には、次の通りの事項が記載されている。
(1)「・・・本発明者らは、TERTプロモーター及びIDH1/2の両方において最も頻出する変異の検出のための診断法として使用するためのいくつかの対立遺伝子特異的プライマー、ならびに増幅に必要とされるそれらの対立遺伝子非特異的対立プライマーを設計及び試験した(表1A)。・・・」(【0030】段落)
(2)「(表1A)最も一般的なTERTプロモーター(C228T、C250T)、IDH1(R132H)、及びIDH2(R172K)ホットスポット変異の検出及び定量用の高性能対立遺伝子特異的プライマー(*注記:+が示す)。M13タグ(TGTAAAACGACGGCCAGT;配列番号28)及びCAG GAA ACA GCT ATG ACC;配列番号29)が、配列決定を容易にするために共通プライマーの5’末端に追加された。」(【0031】段落)
(3)

(【0031】段落の表1A)
(4)(配列表、配列番号6)
「<210> 6
<211> 36
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Primer
<400> 6
caggaaacag ctatgaccca gcgctgcctg aaactc 36」

(5)(配列表、配列番号10)
「<210> 10
<211> 36
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Primer
<400> 10
caggaaacag ctatgaccat cccccggctt gtgagt 36」

(6)(配列表、配列番号14)
「<210> 14
<211> 38
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Primer
<400> 14
caggaaacag ctatgaccgg accaagccca tcaccatt 38」

3 訂正の目的について
本件特許明細書の表1Aにおいて、配列番号6のプライマー「TERT C250共通2」は、「cagcgctgcctgaaactc」の18塩基からなるが、配列表では、「caggaaacag ctatgaccca gcgctgcctg aaactc」の36塩基からなる。そして、両者の差異は、表1Aに記載のプライマー「TERT C250共通2」の5’末端に、【0031】段落に記載の配列番号29のM13タグの配列「caggaaacag ctatgacc」が付加されているか否かである。
ここで、【0031】段落には、「M13タグ(TGTAAAACGACGGCCAGT;配列番号28)及びCAG GAA ACA GCT ATG ACC;配列番号29)が、配列決定を容易にするために共通プライマーの5’末端に追加された」と記載されている。そして、共通プライマー、「TERT C228共通」(配列番号3)、「TERT C250共通2」(配列番号6)、「IDH1 R132共通」(配列番号9)、「IDH1 R132共通2」(配列番号10)、「IDH2 R172共通」(配列番号13)、「IDH2 R172共通2」(配列番号14)のうち、配列表において、M13タグの配列が付加して記載されているのは、プライマー、「TERT C250共通2」(配列番号6)、「IDH1 R132共通2」(配列番号10)、「IDH2 R172共通2」(配列番号14)であり、プライマー、「TERT C228共通」(配列番号3)、「」IDH1 R132共通」(配列番号9)、「IDH2 R172共通」(配列番号13)は、表1Aの配列と配列表の配列が一致している。
これらの記載を勘案すると、当業者であれば、「TERT C250共通2」(配列番号6)プライマーについて、配列表の記載は誤って「配列決定を容易にするために共通プライマーの5’末端に追加された」M13タグを含めて記載したものと理解することができる。
「IDH1 R132共通2」(配列番号10)プライマー及び「IDH2 R172共通2」(配列番号14)プライマーについても同様に、配列表に記載の塩基配列は、表1Aに記載のプライマーの5’末端に、配列番号29のM13タグの配列「caggaaacag ctatgacc」が付加されたものである。したがって、配列番号10及び配列番号14についても、配列番号6と同様に、配列表の記載は誤って「配列決定を容易にするために共通プライマーの5’末端に追加された」M13タグを含めて記載したものであると理解できる。
よって、この配列番号29のM13タグの塩基配列を、配列表の配列番号6、配列番号10及び配列番号14の塩基配列の5’末端から削除し、本来の正しいプライマーの塩基配列とし、これに併せてそれぞれの塩基長から配列番号29の塩基長である18塩基を減じた値とする、上記訂正事項は、特許法第126条第1項ただし書第2号に規定される誤記の訂正を目的とするものである。

4 新規事項の追加、並びに実質上特許請求の範囲を拡張し若しくは変更するものか否かについて
上記2に摘記した事項は、いずれも国際出願であるPCT/US2015/046519(国際公開2016/032947号)に記載されている事項であるから、本件訂正事項の訂正は、いずれも、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面に記載された事項の範囲内においてなされたものといえ、同明細書、特許請求の範囲及び図面の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、新規事項を追加するものではない。
また、この訂正事項の訂正は、いずれも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、上記訂正事項の訂正は、特許法第126条第5項及び第6項に規定される要件に適合する。

5 独立特許要件
上記4で検討したとおり、上記訂正事項に係る訂正は、特許請求の範囲に記載される技術的事項を変更するものではないから、訂正後の特許請求の範囲の請求項1?19に係る発明は、特許された発明と同一であり、訂正後の特許請求の範囲の請求項1?19に記載された事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由は見当たらない。
したがって、上記訂正事項に係る訂正は、特許法第126条第7項に規定する要件に適合する。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本件審判の請求は、特許法第126条第1項ただし書き第2号に掲げる事項を目的とし、かつ同条第5項ないし第7項に規定される要件に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ホットスポット変異の迅速かつ高感度の検出のための方法
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、遺伝子アッセイ及び生化学アッセイの分野に関する。具体的には、それは、腫瘍性試料及びそれらの成分のアッセイに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
悪性神経膠腫は、成人における最も一般的な中枢神経系(CNS)原発悪性腫瘍であり、2012年の米国において14,000件を超える死亡の原因となっている2。世界保健機関(WHO)は、神経膠腫を種々の亜型に分類し、それらの悪性度を示すI?IVの等級をそれらに付けるために使用されるいくつかの組織学的及び臨床的基準を定めた。星状細胞腫、乏突起神経膠腫、乏突起星状細胞腫、及び神経膠芽腫(GBM)^(3)を含むびまん性神経膠腫(WHOグレードII?IV)は、それらが全ての原発性悪性脳腫瘍の80%を占めるため、臨床的に特に重要である。これらの腫瘍は、びまん性で浸潤性であり、これは治療的な外科的切除を不可能にする。加えて、グレードII?IIIのびまん性神経膠腫は、より高いWHOグレードIVのGBMに進行する能力も有する。GBMは、成人における最も一般的な悪性脳腫瘍であり、生存期間が最も短い(全生存期間の中央値は12?15カ月である)^(4)。加えて、同一の組織像を有する実体間であっても、患者の転帰は実質的に異なり得る。これは、より低いグレードから進行する二次性GBMと比較して、新たに発症する原発性GBMによって最もよく示される。両方の腫瘍は組織学的に区別できないが、二次性GBMを有する患者の生存率が原発性GBMのほぼ2倍であることから^(5)、これらの疾患は遺伝子的及び臨床的にはっきりと異なる。
【0003】
びまん性神経膠腫の正確な診断は、形態学的特徴の不均一性、侵襲性、反応性柔組織、及び曖昧さのために特に困難である。これらの診断上の困難は、これらの基準の臨床的使用の際に見られる観察者間での変動性が高いことを反映している。4人の神経病理学者によって独立して検討された244例の神経膠腫の研究において、合致率は52%と低かった^(6)。びまん性神経膠腫の正確な診断は、患者に対する臨床的判断のために臨床的に重要である。この診断は、治療レジメンを決定し、特定の亜型は、特定の化学療法(例えば、乏突起神経膠腫治療用のプロカルバジン、CCNU、及びビンクリスチン)に対して治療応答の増加を示すことが知られている。加えて、組織学的亜型は、患者予後を左右する。客観的な腫瘍特異的マーカーが、より正確な診断、予後判定、及び神経膠腫患者への個人的なケアの提供のために明らかに必要である。
【0004】
これらの必要性に対処するために、大規模な配列決定研究により、びまん性神経膠腫において見られる遺伝子変化の概略が明らかとなった。特にイソクエン酸脱水素酵素1及び2(IDH1/2)^(1)、テロメラーゼ逆転写酵素(TERT)のプロモーター^(7)、αサラセミア精神遅滞症候群X連鎖(ATRX)^(8、9)、ショウジョウバエ(Drosophila)のcapicua(CIC)の相同体、far upstream element binding protein 1(FUBP1)^(10)において頻発する変異等の多くの変化が確認された。これらの発見は、神経膠腫の明確で客観的な分子亜型の確立を助けた。診断への関連性の観点から、TERTプロモーター及びIDH1/2における変化が最も有望であり、その主な理由は、特定のゲノム遺伝子座(「ホットスポット」)における単一ヌクレオチド置換としてのそれらの頻度及びそれらの発生数である。びまん性神経膠腫において、本発明者らは、これらの変異が同時に発生するかまたは排他的に発生するかの度合いが、神経膠腫亜型を定義することを発見した。例えば、IDH1/2変異は、50%を超える二次性GBMにおいて発生するが、原発性GBMにおいては稀(5%未満)であり(図1)、一方TERTプロモーター変異は、80%を超える原発性GBMにおいて見られ、同様に70%を超える乏突起神経膠腫においても見られる(図2)。さらに、本発明者らは、TERT/IDH状態によって確立される神経膠腫の遺伝子学的亜型が、組織診断単独によるものよりも効果的に、神経膠腫患者を、はっきりと異なる予後を有する亜型に効果的に階層化することを発見し、これは医師に、より適切な治療に導く客観的試験を提供する(図3)。例えば、TERTプロモーター変異を有する神経膠腫を有する患者は、11.5カ月の全生存期間(OS)中央値を有し、一方、TERTプロモーター及びIDH1/2変異の両方を有するものは、125カ月のOS中央値を呈した。加えて、本発明者らの研究は、組織学的分類の曖昧さを最も反映し得る「混合組織像」を呈する乏突起星状細胞腫が、星状細胞(TERT^(WT)IDH^(MUT))または乏突起膠細胞(TERT^(MUT)IDH^(MUT))シグネチャのいずれかに遺伝学的に階層化されることを明らかにした(図3)。本発明者らは、本発明者らのこれらの変異の研究をいくつかの他の腫瘍型に拡大し、TERTプロモーター変異が、他の癌、中でも特に、早期診断、再発監視、及び治療応答監視が極めて重要である肝臓癌(44.2%)、膀胱癌(66%)、粘液性脂肪肉腫(79.1%)、及び髄芽細胞腫(21%)でも頻繁に起こることを発見した^(7、11)。(図2)同様に、IDH1及びIDH2変異は、軟骨肉腫(56%)^(12)、内軟骨腫(87%)、紡錘細胞血管腫(70%)^(13、14)、急性骨髄性白血病(15%)^(15)、及び肝内から生じる胆管細胞癌(22?28%)^(16)を含む他の型の癌でも同様に頻発することが分かっている。
【0005】
これらの神経膠腫亜型の特異的かつ高再発性の変異は、IDH1/2及びTERTプロモーターにおけるこれらの変異を迅速に、高感度に、かつ特異的に検出することができる診断アッセイを必要とする。このようなツールは、これらの困難な診断において神経病理学者を助け、患者により正確な予後情報を提供し、医師が患者の腫瘍の固有の分子シグネチャに療法を適応させることを可能にするだろう。加えて、これらの遺伝子座のIDH1/2及びTERTプロモーターにおいて頻発する変異を有する多くの他の前述の癌型に関して、このような診断ツールは、これらの変異の迅速かつ高感度な検出にも役立つだろう。
【0006】
変異検出に対する現在の診断努力は、サンガー配列決定法に基づいており、これは時間がかかり、高価であり、さらに最も重要なことには、不十分な感度により制限される(検出限界は約20%の突然変異遺伝子)^(17)。腫瘍割合が低い試料(40%未満の腫瘍、ヘテロ接合型変異に関しては20%未満の突然変異遺伝子を意味する)は、感度が限定されているために変異がないと誤診されることがある(図4、5)。腫瘍割合が低い場合のこのようなシナリオは、びまん性神経膠腫及び他の悪性腫瘍に関して非常に現実的である。びまん性神経膠腫の固有の不均一性及び浸潤性質に加えて、腫瘍生検材料は最低限の腫瘍組織しか含有しないことがあり、不十分な試料採取をもたらす。壊死は、多くの癌に共通した特徴であり、使用可能な組織が限定されることもある。これらの制限は、診断及び予後に大きな影響を与え、誤った療法をもたらすことがあり、それらを臨床使用に不適切にする。
【0007】
当分野では、臨床分析をより速く、より高感度に、かつより特異的にすることが継続して必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
本発明の一態様に従って、腫瘍を有するヒトの身体試料を試験するための方法が提供される。ヒトの身体試料の腫瘍DNAは、増幅プライマーのセットを用いて増幅される。各増幅プライマーは、配列番号1?14から選択される配列を含む。それによって、TERTプロモーターならびにIDH1及びIDH2配列を含む増幅産物が生成される。その後、この増幅産物が検出される。
【0009】
本発明の別の態様に従って、TERT/IDH1用ヘテロ接合型キャリブレータプラスミドが提供される。プラスミドは、(a)TERT C228Tセグメント及びTERT C250Tセグメント、ならびに(b)IDH1 R132Hセグメント及びIDH1野生型セグメントを含み、TERTセグメントの各々は等しい量及びサイズで存在し、IDH1セグメントの各々は等しい量及びサイズで存在する。プラスミドは、各セグメント間に制限部位を有し、これらに限定されないが他のIDH1及びIDH2変異等の他の目的とする座、ならびに他の目的とする遺伝子座の選択的な直線化及び追加を可能にする。
【0010】
本発明の一態様は、(a)対象から少なくとも1つの腫瘍DNAを含む身体試料を得ることと、(b)少なくとも1つの核酸プライマーを試料に提供することと、(c)少なくとも1つのプライマーを使用する少なくとも1つのDNA鋳型の増幅のための酵素及び試薬を提供することと、(d)少なくとも1つのDNA鋳型の増幅に適した条件下で試料、酵素、試薬、少なくとも1つのプライマーをインキュベートすることと、(e)増幅されたヌクレオチドを検出することと、(f)IDH1/2及び/またはTERTプロモーターにおける変異を識別することと、を含む、それらからなる、またはそれらから本質的になる、対象中のIDH1/2及び/またはTERTプロモーターにおける変異を検出するための方法を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのプライマーは、表1A、表1B、及び表2に含まれるプライマーならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0012】
他の実施形態では、酵素及び試薬は、表4に含まれるものを含む。
【0013】
さらに別の実施形態では、試料は、表3に記載の条件下でインキュベートされる。
【0014】
いくつかの実施形態では、対象は哺乳動物である。他の実施形態では、対象はヒトである。
【0015】
他の実施形態では、生体試料は、脳脊髄液(CSF)、組織、細胞、生検材料、血液、リンパ液、血清、血漿、尿、唾液、粘液、及び涙からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、試料は組織生検材料を含む。いくつかの実施形態では、生体試料はCSFを含む。いくつかの実施形態では、生体試料は尿を含む。いくつかの実施形態では、生体試料は血漿を含む。
【0016】
本明細書を理解することによって当業者に明らかになるこれらの実施形態及び他の実施形態は、堅牢で、迅速で、かつ再現性のあるアッセイを当分野に提供する。
[本発明1001]
以下の段階を含む、腫瘍を有するヒトの身体試料を試験する方法:
増幅プライマーのセットを用いて前記ヒトの身体試料の腫瘍DNAを増幅する段階であって、各プライマーが、TERTプロモーターならびにIDH1及びIDH2配列を含む増幅産物を生成するための配列番号1?14から選択される配列を含む、増幅する段階と、
前記増幅産物を検出する段階。
[本発明1002]
配列番号15?21を含む増幅プライマーのセットを用いて前記身体試料中の腫瘍DNAを増幅する段階をさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1003]
前記腫瘍DNAがゲノムDNAである、本発明1001の方法。
[本発明1004]
前記腫瘍DNAが、事前増幅に供されたゲノムDNAである、本発明1001の方法。
[本発明1005]
前記増幅のサイクルの少なくとも一部が、66℃以上で行われる、本発明1001の方法。
[本発明1006]
前記増幅の前記サイクルの一部が、60℃以下で行われる、本発明1005の方法。
[本発明1007]
前記身体試料の前記腫瘍DNAの別個のアリコートが、(a)配列番号1?3、(b)配列番号4?6、(c)配列番号3及び6、(d)配列番号7?9、(e)配列番号9及び10、(f)配列番号11?13、(g)配列番号13?14を含む、プライマーの複数のセットを用いて増幅される、本発明1001の方法。
[本発明1008]
前記増幅が定量的PCRとして実施される、本発明1001の方法。
[本発明1009]
前記事前増幅が、高忠実度のDNAポリメラーゼを用いる、本発明1004の方法。
[本発明1010]
前記事前増幅が、66℃以上のアニーリング温度を用いる、本発明1004の方法。
[本発明1011]
前記事前増幅が、68℃以上のアニーリング温度を用いる、本発明1004の方法。
[本発明1012]
前記事前増幅が、多重反応として行われる、本発明1004の方法。
[本発明1013]
前記身体試料が、脳脊髄液(CSF)、血液、リンパ液、血清、血漿、尿、唾液、粘液、及び涙からなる群から選択される、本発明1001の方法。
[本発明1014]
前記身体試料が生検試料である、本発明1001の方法。
[本発明1015]
前記身体試料が針吸引物である、本発明1001の方法。
[本発明1016]
配列番号1、2、4、5、7、8、11、及び12の前記プライマーのうちの少なくとも1つが、その3’末端にLNA修飾ヌクレオチドを含む、本発明1001の方法。
[本発明1017]
配列番号1、2、4、5、7、8、11、及び12の前記プライマーの各々が、その3’末端にLNA修飾ヌクレオチドを含む、本発明1001の方法。
[本発明1018]
配列番号15?21の前記プライマーのうちの少なくとも1つが、その3’末端にLNA修飾ヌクレオチドを含む、本発明1002の方法。
[本発明1019]
配列番号15?21の前記プライマーの各々が、その3’末端にLNA修飾ヌクレオチドを含む、本発明1002の方法。
[本発明1020]
タグ配列が、前記プライマーのうちの少なくとも1つの5’末端に結合している、本発明1001の方法。
[本発明1021]
タグ配列が、前記プライマーのうちの少なくとも1つの5’末端に結合している、本発明1002の方法。
[本発明1022]
(a)TERT C228Tセグメント及びTERT C250Tセグメント、ならびに(b)IDH1 R132Hセグメント及びIDH1野生型セグメントを含む、TERT/IDH1用ヘテロ接合型キャリブレータプラスミドであって、前記TERTセグメントの各々が等しい量及びサイズで存在し、前記IDH1セグメントの各々が等しい量及びサイズで存在する、ヘテロ接合型キャリブレータプラスミド。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】異なる腫瘍型にわたるIDH1及びIDH2における変異。IDH1及びIDH2変異は、びまん性神経膠腫(WHOグレードII?III)及び二次性GBM(WHOグレードIV)において頻繁に発生する。^(1)
【図2】大規模な腫瘍亜型にわたるTERTプロモーター変異の頻度。^(7)
【図3】びまん性神経膠腫に対するTERT/IDHに基づく遺伝子分類。優勢な遺伝子シグネチャには、主に組織学的乏突起神経膠腫で構成されているTERT^(MUT)IDH^(MUT)、進行性星状細胞腫で構成されているTERT^(WT)IDH^(MUT)、原発性GBMで構成されているTERT^(MUT)IDH^(WT)、及びGBMで構成されているTERT^(WT)IDH^(WT)が挙げられる。赤は、C228TまたはC250TのいずれかのTERTプロモーター変異を示し、緑は、IDH1のR132またはIDH2のR172のいずれかの変異を示す。
【図4】癌患者からの組織の試料採取における潜在的な課題。偽陰性は、正常組織のバックグラウンド下での低い割合の腫瘍細胞によって、または他の癌細胞のバックグラウンド下でのサブクローンの腫瘍細胞集団によって生じることがある。
【図5】特定の変異を有するゲノムDNAの複数の希釈度でのサンガー配列決定クロマトグラム。20%未満の突然変異遺伝子画分では、突然変異遺伝子に関するピークがバックグラウンドから区別できなくなり、臨床試料に対して、特に不均一性及び浸潤性のびまん性神経膠腫に対してこの手法の使用を制限する。
【図6】LNAプライマーを使用する対立遺伝子特異的qPCRの概要を示す概略図である。
【図7】pGL3エンハンサーベクターに基づくTERTプロモーターC228/C250T及びIDH1 R132Hヘテロ接合型キャリブレータプラスミドを示す概略図である。TERT C228T、C250T、及びIDH1 R132Hは、各プラスミド中に50%の割合で存在し、300bpの各標的がpGL3エンハンサープラスミドにクローニングされている。遺伝子座は互いから3kb離れており、プライマーの交差反応を制限する。変異の再現可能な突然変異遺伝子画分を生成するために、これらのセグメントに沿って目的とする追加の遺伝子座が追加されてもよい。
【図8】pGL3エンハンサーベクターに、互いに約3kb離れた部位にクローニングされたTERTプロモーターC228T/C250T及びIDH1 R132Hヘテロ接合型キャリブレータプラスミドの詳細な模式図である。
【図9】種々の突然変異遺伝子画分に応じた標的変異の希釈(10%、1%、0.1%)。これらの範囲に渡って、対立遺伝子特異的アッセイは優れた直線性を示す(R^(2)>0.994)。
【図10】TERT/IDH対立遺伝子特異的LNA qPCR試験は、0.1%の突然変異遺伝子画分(約15の変異体コピー)を検出する。
【図11】ネステッド方式のTERT/IDH対立遺伝子特異的LNA qPCRは、高い判別性を保ちながら、鋳型として事前に増幅されたgDNAを50ngしか使用しない。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な説明
本発明者らは、TERTプロモーター、IDH1/2のホットスポット変異を、迅速に、特異的に、かつ高感度に検出することができる高感度な定量的PCR(qPCR)基づくアッセイを開発した。このqPCRに基づく診断アッセイは、変異体DNAが0.1%の突然変異遺伝子まで低い場合等、正常DNAのバックグラウンドが高い場合も変異体DNAを検出することができる。これは、サンガー配列決定法に基づく従来の方法よりも200倍高感度である。検出限界は、放射(BEAMing)等の他の高価な時間のかかる複雑な技法と同様であるが、qPCRアッセイは、ほんの数時間で終えることができ、単一のPCRステップを必要とする。このアッセイの高感度のため、それは循環腫瘍DNA(ctDNA)における変異の検出を可能にする。ctDNAは、癌患者の血液、尿、及びCSF中でごく限られた量で発見されることが多いが、外科的介入を伴わずに患者を診断することができる「液体生検材料」として使用されることが期待されている。腫瘍再発または薬物耐性発現は、これらの体液を検査することによって監視され得る。しかしながら、本アッセイは体液の使用に限定されず、より伝統的な組織及び生検試料上でも同様に使用することができる。
【0019】
この技術を適用して、CSF、血漿、血清、尿、及び他の体液から抽出されたDNAを含む、腫瘍組織ならびに「液体生検」試料から抽出されたDNA中のIDH1、IDH2、TERTプロモーター変異におけるホットスポット変異を検出することができる。さらに、これらの変異の識別は、脳腫瘍だけではなく、肝臓癌及び膀胱癌、皮膚癌(黒色腫、扁平上皮癌、及び基底細胞癌)、急性骨髄性白血病、胆管細胞癌、軟部組織腫瘍(外軟骨腫、軟骨肉腫、紡錘細胞血管腫、粘液性脂肪肉腫、非定型的線維黄色腫、粘液性脂肪肉腫)、ならびに甲状腺癌を含む、これらの変異が頻繁に生じる多くの他の腫瘍型にも関係している。
【0020】
身体試料は、腫瘍DNAを含有する身体の好都合で消費されてもよい任意の部分であり得る。これは、腫瘍組織、周辺組織、生検試料、転移性試料、リンパ液、大脳髄液、血清または血漿を含む血液、尿、唾液、粘液、ならびに涙であってもよい。腫瘍を含有する特定の器官から排出される他の体液も、試料採取され、試験されてもよい。DNAは、身体試料中で試験されてもよく、または当技術分野で既知の技法を使用して抽出されてもよい。DNAは、TERTプロモーター、IDH1、及びIDH2における変異を試験するための増幅の前に事前増幅されてもよい。標的配列を分析物のより大きな割合にするために、DNAは外来配列を使い尽くしてもよい。試験されるDNAは、限定されないが、ミトコンドリアDNA、増幅されたDNA、及びcDNAを含む、ゲノムDNAであってもよい。
【0021】
アッセイの一部として、高レベルのストリンジェンシー及び特異性を導入するために、増幅サイクルは、PCRで慣習的な、より高い温度で行われてもよい。より高い温度は、例えば、少なくとも66℃、少なくとも67℃、少なくとも68℃、少なくとも69℃、少なくとも70℃、少なくとも71℃、少なくとも72℃、少なくとも73℃、少なくとも74℃、または少なくとも75℃であり得る。同様に、事前増幅ステップが用いられる場合は、そのような高温で行なうことが望ましい場合がある。低温増幅サイクルが、最初の、より高温でのサイクルの後に使用されてもよい。低温サイクルは、例えば、60度、60℃未満、59℃未満、58℃未満、57℃未満、56℃未満、55℃未満、54℃未満、53℃未満、52℃未満、または51℃未満で行われ得る。
【0022】
特定の設定において好都合である場合、アッセイにおいて多重反応が使用されてもよい。多重設定では、2セット以上のプライマー対が同じ反応混合物中で同時に使用される。場合によっては、より少ないプライマー対を使用して、またはさらには単一のプライマー対を使用して、反応の複雑さが減少するように増幅を分けることが好ましい場合がある。以下に記載されるように、アッセイの単一反応は、例えば、野生型及び変異体特異的プライマーならびに共通プライマーを有する三つ組のプライマーを使用してもよい。これは、複数の異なるゲノムセグメントに対する、多重ではなくむしろ単一反応であると見なされ得る。
【0023】
特異性を強化するために、アッセイにおいてLNA修飾ヌクレオチドが典型的にプライマーの3’末端で使用される。プライマーは、標的のゲノムセグメントに相補的ではない追加の配列も有し得る。アッセイの都合上、追加の配列またはタグが使用されてもよい。一例として、また以下で考察されるように、プライマーを使用して形成される増幅産物の配列決定を容易にするために、M13配列がプライマーの5’末端に追加される。タグ配列は、識別及び/または定量するためのハイブリダイゼーションタグとして使用されてもよい。タグ配列は、任意の追加の機能性のために、または機能性のためではなく、使用されてもよい。標的に相補的である追加のヌクレオチドがまた、プライマーの5’末端に追加されてもよく、感度への影響は最小限である。
【0024】
増幅反応の正確さをもたらすために、高忠実度のポリメラーゼが使用され得る。多くのそのようなポリメラーゼは、当技術分野で既知であり、当分野の技術者によって選択され得る。例示的なDNAポリメラーゼには、FideliTaq(商標)DNAポリメラーゼ、Easy-A(商標)High-Fidelity PCR Cloning Enzyme、Herculase(登録商標)II Fusion DNAポリメラーゼ、Herculase(登録商標)Enhanced DNAポリメラーゼ、PfuUltra(商標)High-fidelity DNAポリメラーゼ、ACCUZYME(商標)DNAポリメラーゼ、VELOCITY(商標)DNAポリメラーゼ、Vent(商標)(exo-)DNAポリメラーゼ、KAPA HiFi HotStart(商標)DNAポリメラーゼ、及びPfx50(商標)DNAポリメラーゼが挙げられる。
【0025】
アッセイの標的である変異は、TERT C228T及びC250Tと称されるが、これらの特定の変異の相補物もまた、相補的なヌクレオチドを評価するために同じ位置でアッセイされ得る。全体を通してR132及びR172に言及しているものの、IDH1/IDH2に関しても同様に、アッセイを相補鎖上で行なって、センス鎖で挙げられた変異の相補的なヌクレオチドを検出することができる。
【0026】
上述の開示は、全体として本発明を記述する。本明細書で開示される全ての参考文献は、参照により明示的に組み込まれる。以下の特定の実施例を参照することによって、より完全な理解を得ることができ、これらは例示のみを目的として本明細書に提供され、本発明の範囲を制限することを意図するものではない。
【実施例】
【0027】
TERTプロモーター及びIDH1/2ホットスポット変異のAS LNA q-PCRアッセイ:
A.バックグラウンド:
対立遺伝子特異的PCRは、目的とするバリエーションを含有する鋳型の選択的増幅のために使用されるDNA鋳型増幅の一形態であり、このため、SNP遺伝子型決定のための方法である^(18)。ほとんどの方法は、目的とする遺伝子型を有する標的配列により高い相補性を有する判別用プライマーに依存している。これはほとんどの場合、プライマーの3’を変異の位置に配置させて、標的バリアントまたは野生型ヌクレオチドのみに相補的であるようにさせることによって行われる。この方法では、プライマーが非標的対立遺伝子に結合し、選択的増幅をもたらす場合、PCR効率が低減する(図6)。
【0028】
この分野における大きな進歩は、ロックド核酸(LNA)として既知である、これらの対立遺伝子特異的プライマーの3’末端における代替の核酸の使用であった。LNAは、核酸の2’-Oと4’-Cとの間にメチレン架橋を有する核酸類似体であり、リボース部分がC3’末端立体構造中にロックする二環式構造をとる。これは、LNA塩基がその相補物とハイブリッド形成するときにT_(m)を上昇させ、その標的変異または一塩基多型に対するプライマーの特異性を大きく上昇させる(ほとんどの情報源では、LNA対DNAで少なくとも9サイクル大きい差を測定している)^(19)。このプラットフォームは、数ある用途の中でも特に、細菌種の識別^(20)、嚢胞性線維症遺伝子変化^(19)、BRAF変異^(21)、HBV薬物耐性変異^(22)、ミトコンドリア変異(MELAS及びNARPにおける)^(23)に関連して、対立遺伝子判別のために用いられている。
【0029】
TERTプロモーター及びIDH1/2における変異を検出するために、サンガー配列決定法の代替として、TaqMan LNAプローブ^(24)、高解像度融解曲線分析(従来のもの^(25)及びFRET系^(26))、SNaPshot^(27、28)、ピロ配列決定^(29)、COLD PCR HRM^(30)、及びSafeSeq^(31)を含む他の手法が使用されてきたが、これらの技法は、リソースを多く消費する(resource intensive)か、または感度に欠けるため、真の臨床診断法としては実用的ではない。
【0030】
B.TERTプロモーター及びIDH1/2ホットスポット変異のAS LNA q-PCRアッセイ:
プライマー設計
本発明者らは、TERTプロモーター及びIDH1/2の両方において最も頻発する変異の検出のための診断法として使用するためのいくつかの対立遺伝子特異的プライマー、ならびに増幅に必要とされるそれらの対立遺伝子非特異的対立プライマーを設計及び試験した(表1A)。注目すべきは、これらの高性能対立遺伝子特異的(AS)プライマーを確立するために、本発明者らは、これらのプライマーの判別を改善するための種々の長さ、導入された強制ミスマッチ(3’-1及び-2位)、ならびに様々なLNAの位置を有する10を超える異なる候補となるASプライマーを設計した。この判別能力を試験するために、本発明者らは、正常DNAのバックグラウンド下で15コピーつまり0.1%までの腫瘍DNAの標準希釈法を使用し、依然として特定の産物を生成しながらqPCR上で最も大きいΔCtを有するプライマーを評価した。加えて、本発明者らは、TERTプロモーターのこの領域を特異的に増幅し、断片化したDNAソース(すなわち、ホルムアルデヒド固定パラフィン包埋(FFPE)、ctDNA)を増幅することができる十分に小さい増幅産物(160bp未満)を生成するPCR産物をもたらすために、再び20を超える異なる候補となる対立プライマーをバックグラウンドなしで試験した。他の対立プライマーも候補となるASプライマーと連携したが、本発明者らは、qPCRを容易にするために最も小さい増幅産物を選択した(表1、2)。最後に、本発明者らは、極めて稀なIDH1 R132変異(R132C,G,S,L)及びIDH2 R172変異(R172M,W,G)用の同様の対立遺伝子特異的プライマーも開発したが、これらは神経膠腫での用途で使用し得るものの、IDH1 R132Hプライマーセットが最も有用である。
【0031】
(表1A)最も一般的なTERTプロモーター(C228T、C250T)、IDH1(R132H)、及びIDH2(R172K)ホットスポット変異の検出及び定量用の高性能対立遺伝子特異的プライマー(^(*)注記:+が示す)。M13タグ(TGTAAAACGACGGCCAGT;配列番号28)及びCAG GAA ACA GCT ATG ACC;配列番号29)が、配列決定を容易にするために共通プライマーの5’末端に追加された。

【0032】
(表1B)稀なIDH1及びIDH2変異の検出用の高性能対立遺伝子特異的プライマー(これらのプライマーセットは、1Aと同じ対立共通プライマーを使用することに注意されたい)。

【0033】
(表2)TERTプロモーター及びIDH1/2の遺伝子型決定のための対立遺伝子特異的qPCRアッセイ用プライマーセット

^(*)増幅される標的領域は、M13配列タグが追加されるため、AS増幅産物に関して18bp短く、非AS増幅産物に関して36bp短いことに注意されたい
【0034】
C.高性能PCRプログラム及び試薬
PCRプログラム及び試薬は、対立遺伝子特異的及び非AS様式で、ならびに2つの異なる状況((1)ゲノムDNAのPCR及び(2)事前増幅されたゲノムDNAのネステッドPCR)において、TERTプロモーター及びIDH1/2エクソン4の両方を効率的に増幅する。変異状態が迅速に必要とされ、複製物でのPCRを実施するために十分な試料が存在する用途に対しては、第1のプログラムが推奨される。限られたDNAが存在する、またはDNAの品質が不十分である用途に対しては、第2のプログラムが推奨される。
【0035】
a.TERT/IDH状態のためのゲノムDNAの1ステップAS-LNA qPCR
効率的な対立遺伝子特異的PCRを可能にするPCRプログラムを創出することは、特にプライマーの位置の制限のため困難である。TERTプロモーターは、その高いGC含量(目的とする領域を通して80%超、及びC228からC250の区間において88%)及び反復配列(目的とする領域における4つのGの10回反復)のため、増幅が困難であることで有名である。野生型と突然変異遺伝子とを最大限判別するために、本発明者らが用いる増幅プログラムは、高アニーリング温度(66℃以上)での初期段階の増幅、続いてより低いアニーリング温度(60℃以下)での第2段階の増幅を使用する。5℃/秒の傾斜率を有する本発明者らのサーモサイクラーでは、このプログラムは、融解曲線を除いて1時間未満である(表3)。これは、さらにより迅速な検出を容易にするために、より高温(例えば、98℃で1分間)でのより短い変性及びより短いアニーリング時間を用いて調整することができ、それは術中診断のシナリオに適用可能であり得る。本発明者らは、より高いアニーリング温度(66℃以上)で最も有効である従来の単一アニーリング温度プログラムも使用したが、これらは感度が低い。本発明者らは、全てのプライマーセットに対して最も有効である最大限の判別のためのプログラムを以下に列記した。対立遺伝子特異的(AS)プライマーは、二重HPLC精製に供された特別注文のオリゴヌクレオチドとしてExiqon(Woburn,MA,USA)から購入された。非ASプライマーは、標準精製された特別注文のオリゴヌクレオチドとしてIDT(Coralville,Iowa,USA)から購入された。
【0036】
(表3)AS-qPCRベースの遺伝子型決定のためのPCRプログラム1

注記:プレートの読み取りは、ステップ5及びステップ6で生じる(FAM)
【0037】
このPCRの反応条件を表4に示す。多くのGCに富んだキット及び他のポリメラーゼを使用したが、特にTERTプロモーターにおいて困難があった。本発明者らのアッセイの読み出しはSYBRグリーンのシグナルであり、KAPA SYBR Fast 2X MasterMix(KK4600,Boston,MA,USA)を使用する。プライマー濃度は様々であり、広範囲の濃度にわたって有効である。さらに、50ngを超える投与量が使用されてもよいが、反応を阻害し始める。
【0038】
(表4)TERT/IDH変異検出のためにSYBRを使用する1ステップqPCR用のPCR試薬

【0039】
b.TERT/IDH状態用に事前増幅されたDNAのネステッドAS LNA qPCR
変異検出のための第2の手法は、ネステッドqPCR手法であり、これは低品質試料(すなわち、ctDNA、FFPE gDNA)、及び必要な複製物に不十分である分析物含量の少ない試料(すなわち、細針生検材料)に非常に有効である。このネステッドqPCRアッセイも、PCR阻害として信頼性の高い定量性を有し、プライマー効率の差は、ネステッドPCR環境においてはるかに重要ではない。この手法を使用するために、目的とする遺伝子座は、高アニーリング温度(66℃以上)で、限定されたサイクル数(20サイクル未満)に対する高忠実度の酵素を使用して、TERTプロモーター、IDH1、もしくはIDH2において、または多重様式で3つ全てにおいて、非バイアス(NB)プライマーセットを用いて増幅される(表5、6)。次いで、結果として得られるPCR産物は、精製され(カラムベースまたはビーズベースの手法のいずれかを使用する)、希釈され(通常は1:1000)、上述の対立遺伝子特異的LNA修飾プライマーを使用する次のラウンドの増幅のための鋳型として機能する。ネステッドPCRは、それが最も高い判別を提供するため、66℃以上のアニーリング温度で実施される(表7、8)。このネステッド手法の利益は、全てが1?50ngのgDNAから生成される、はるかに多くの鋳型の供給があることであり、これらは、さもなければ生じ得るより多くの変異に対してスクリーニングされ得る。本発明者らは、ネステッドqPCRのための高性能PCRプログラムを以下に記載する。事前増幅反応を複数の反応に分けることは有益であり(例えば、50μlを5×10μlに分割する)、これは次いでプールされてもよい。このステップに続いて、カラムまたはビーズベースの手法を使用してPCR産物を精製することができる。
【0040】
(表5)高忠実度の事前増幅のためのPCRプログラム

【0041】
(表6)TERT/IDH遺伝子座の高忠実度の事前増幅のためのPCR試薬

【0042】
(表7)非バイアスPCR産物のネステッド対立遺伝子特異的qPCR用のPCRプログラム

プレートの読み取りは、ステップ3で、及びSYBR及び融解曲線を使用する場合は、FAM/SYBRに対してステップ5で生じる
【0043】
(表8)LNA修飾プライマーを使用する対立遺伝子特異的qPCR用のPCR試薬

【0044】
ネステッドqPCRにおいて検出のためにプローブを使用する場合、プロトコールは、表8で言及される2つのプローブ混合物のいずれか、及びTERTまたはIDH検出に応じて、次のプローブのいずれかを使用するべきである:
TERTプローブ:

IDH1プローブ:

。TERTプローブは、C228TとC250Tとの間の共通領域内に設計される一方、IDH1プローブは、対立遺伝子特異的プライマーと共通プライマーとの間の領域に設計され、したがって全ての対立遺伝子特異的IDH反応(R132S、C、L、G、及びH)に対して使用することができる。
【0045】
D.標準物質、コピー数、及び変異%定量
AS TERT及びIDH1/2プライマーセットと同時に、本発明者らは、対立遺伝子非特異的様式で、2つの変異(C228T及びC250T)を有するTERTプロモーター領域、R132H変異を有するIDH1エクソン4を増幅するプライマー、及び高反復性ヒトline-1要素を増幅するように設計されるプライマー:

も使用する。この情報を使用して、WTまたはMUT対立遺伝子を増幅する対立遺伝子特異的PCRからのCt値を正規化し、突然変異遺伝子画分の定量的読取値を提供することができ、試料の相互比較が可能となる。E章で言及されるように、試料が全て同一濃度である場合は、これは必要ではない。これに加えて、検証のため、50%変異体試料(陽性対照)、1%変異体試料(低変異陽性対照)、0%野生型試料(陰性対照)、及び鋳型を含まない対照等の試料を含む、いくつかの標準化された試料が、試験される試料とともに実行される。これらの標準物質は、既知のTERT/IDH状態を有する細胞株からゲノムDNA(gDNA)を単離することによって生成された。一例として、本発明者らは、以下の細胞株:DAOY(C228T)、A375(C250T)、HCT116(野生型)、及びHCT116 IDH1 R132Hノックイン#2(IDH1 R132H)からのgDNAを使用する。標的となる遺伝子座におけるgDNA野生型でのこれらの試料の希釈は、1%以下の必要とされる標準物質をもたらす。標準物質の別のソースは、標的変異を有するプラスミドDNAであり、本発明者らは、TOPOクローニング(K4810-01、Life technologies)を使用して「100%標準物質」として生成した。本発明者らは、目的とする変異を有する腫瘍試料からのTERTプロモーター/IDH1/2の一部分のPCR増幅によって生成された挿入断片を使用した。加えて、現実的な定量対照として機能させるために、本発明者らは、これらの遺伝子座を同じプラスミドに、または同様の様式で別個のプラスミドにクローニングすることによって他の標的変異に拡張され得る、TERT及びIDH1の目的とする変異の両方を有する完全なヘテロ接合体プラスミドを生成した(詳細は以下を参照されたい、図7)。
【0046】
各プライマーセットは、試料上で三つ組みで実行される。TERT及びIDH1に対する突然変異遺伝子(すなわち、最も一般的な神経膠腫関連変異)を検出するために実行される一例は、表9の以下のプライマーセットを使用することである。野生型ASプライマーセットが、より正確な定量のために非バイアス(NB)増幅産物の代用として使用されてもよい。非バイアス増幅産物用のプライマーは、特定の対立遺伝子(変異体または野生型)に対して特異性を示さず、両方の型の対立遺伝子を等しく増幅するはずである。
【0047】
(表9)TERTプロモーターC228T、C250T、及びIDH1 R132Hを試験するためのプライマーの組み合わせ

【0048】
本発明者らは、希釈が突然変異遺伝子画分及び野生型対立遺伝子画分の相対比率しか概算できないため、50%変異/50%WT試料として機能するヘテロ接合体キャリブレータを設計した。この標準物質は、前に言及されたネステッドPCR手法に対する標準物質として最も有効である。ヘテロ接合型キャリブレータプラスミドは、BRAF V600E変異^(32)等の単一変異用に以前に生成されていたが、本明細書で、本発明者らは、定量及びワークフローを大幅に容易にする複数の変異(IDH1 R132H及びTERT C228T/C250T)のための単一キャリブレータを作製した(図7)。2つの標的領域は3100bpを超えて離され、それぞれの変異は、限定されたプライマー干渉が確保されるように互いからほぼ等距離のところにある。これらの標準物質は、GENEWIZによる合成のためにまず遺伝子を設計することによって生成され、ここで、pUC-57-ampRプラスミド内のTERTプロモーター(228及び250遺伝子座+/-約150bp)の部分ならびにIDH1エクソン4(R132またはc.395G遺伝子座+/-約150bp)の部分は、遺伝子座を互いに分離することが望まれる場合、各遺伝子断片を分けている合成された制限酵素部位と並んでいる(一部の著者は、これを標準物質としてのその性能を改善するとして言及している)。互いにほぼ等距離にあるクローニング部位を有し、「ヘテロ接合体」を構成する2つのTERT-IDHブロックが最大限に分離されることを確実にするように、ベクターpGL3-エンハンサー(Promega)にこれらをクローニングし、専ら使用した。さらに本発明者らは、陰性対照として、全ての遺伝子座が野生型であり、各遺伝子座の2コピーを有する同等のプラスミドを生成した。このシステムは、目的とする他の変異、例えば、より稀なIDH1変異及びIDH2変異に拡張され得る。本発明者らは、他の遺伝子座への拡張を容易にし、選択的直線化を可能にするために、各遺伝子座の周囲に制限酵素部位を導入した。
【0049】
E.データ分析
データ分析にはいくつかのオプションが存在する。最も簡単な一つの手法は、全試料を確実に同じ濃度にして、種々の変異割合に応じた標準細胞株DNAの希釈から生成される傾向線を使用し、突然変異遺伝子画分を逆算することである(図9)。以下に示されるように、傾向線は、優れた直線性を有する(R^(2)>0.994)。
【0050】
種々のDNA投入量を有する試料の使用に関して、本発明者らは、Ct値を試料のコピー数の測定値に対して正規化し(非バイアス/共通増幅産物のCt値またはhline1のCt値を使用する)、突然変異遺伝子割合標準物質として陽性対照試料を使用する手法を用いた。(Ct(サイクル閾値)は、蛍光シグナルが閾値を超える(すなわち、バックグラウンドレベルを超える)ために必要とされるサイクル数として定義される。このタイプの正規化計算は、さらにプライマー効率の推定も必要とする。ゲノムDNAの希釈に基づいて、本発明者らは、各プライマーの組み合わせに対するプライマー効率を推定した(表10)。
【0051】
(表10)プライマーの組み合わせ及びその効率

【0052】
三つ組のCt値は、各プライマーセットについて平均化され、プライマー効率値で正規化される。各試料について、AS変異体プライマーの平均Ct値は次いで、それぞれの共通(NB)プライマーセットに関する平均Ct値で正規化される。以下の(Pfafflらによる)式が使用され、式中、E_(AS)は、AS変異体プライマーの組み合わせの効率を指し、対照は、既知の変異割合(この場合50%)の陽性対照に関する平均Ct値を指し、試料は、評価される試料に関する平均Ct値を指す。同じ情報が分母中にあるが、適切なNBプライマーセット(例えば、TERT共通、IDH1共通、line1)を参照する全てが正規化に使用される。より正確な値のために、本発明者らは、対照用のAS野生型に対するAS変異体を使用して式を調整することを推奨する。これは突然変異対立遺伝子画分:野生型対立遺伝子画分の比率をもたらし、突然変異対立遺伝子画分単体を得るために調整されてもよい。

【0053】
これらの手法は、gDNAの対立遺伝子特異的qPCR、及び事前増幅され精製されたPCR産物のネステッドqPCRの両方に有効である。ネスティングqPCRに関連して、既知の変異割合の事前増幅されたゲノムDNAも使用し得るが、事前増幅されたヘテロ接合型キャリブレータプラスミドを、各標的変異の50%を有する高度に正確な標準物質として使用し、基準としてこれに対して正規化することを、本発明者らは推奨する。
【0054】
F.性能
上記プライマーセット及び条件を使用して、本発明者らは、高レベルのバックグラウンド下でのこれらのプライマーの検出の限界を試験し、15,000の野生型コピーのバックグラウンド下で15の変異体ゲノムDNAコピー(0.1%)まで確実に検出し、これを0%(野生型)試料と区別することができることを発見した(図10)。ネステッドqPCRを使用して、対立遺伝子特異的PCRで高い判別性も達成することができる(図11)。
【0055】
G.qPCR診断の適用
臨床に関連する状況下で本発明者らのアッセイを試験するために、本発明者らは、サンガー配列決定法を使用して以前に遺伝子型決定された43の神経膠腫試料からDNAを採取し、この方法を使用してTERTプロモーターWT及びIDH1 R132 WTを識別した。本発明者らは、本発明者らのqPCRアッセイを使用し、TERTプロモーターC228T変異を有する9個の試料及びIDH1 R132H変異を有する3個の試料、合計12個の試料つまり全体の28%を識別した。いずれも10%未満の割合を有し、これらは以前、従来の方法では検出不可能であった(表11)。加えて、このアッセイは、定量的結果を伴って約1時間以内に完了した一方で、サンガー配列決定法では、PCRの後にさらなる配列決定ステップを伴う。
【0056】
(表11)qPCRでは検出されるが、サンガー配列決定法では検出されない(偽陰性)低レベルの変異を有するケース

【0057】
参照文献
引用される各参考文献の開示は、本明細書に明示的に組み込まれる。



【配列表】










 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2019-11-01 
結審通知日 2019-11-07 
審決日 2019-11-19 
出願番号 特願2017-511219(P2017-511219)
審決分類 P 1 41・ 852- Y (C12N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 西 賢二  
特許庁審判長 田村 聖子
特許庁審判官 高堀 栄二
松岡 徹
登録日 2018-11-22 
登録番号 特許第6438119号(P6438119)
発明の名称 ホットスポット変異の迅速かつ高感度の検出のための方法  
代理人 清水 初志  
代理人 清水 初志  

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