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審決分類 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1357973
審判番号 不服2018-9366  
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-07-06 
確定日 2019-12-18 
事件の表示 特願2016- 88225「第1のデータサービスとのデータコンテキストの確立に関連付けられたフォールバック条件の存在に基づいて第2のデータサービスへのフォールバックをイネーブルにするための方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 9月29日出願公開、特開2016-174382〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2012年(平成24年)6月5日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2011年6月9日 米国, 2012年6月4日 米国)を国際出願日とする出願である特願2014-514562号の一部を平成28年4月26日に新たな特許出願としたものであって,その手続の経緯は以下のとおりである。

平成28年 5月26日 手続補正書の提出
平成29年 5月16日付け 拒絶理由通知書
平成29年 8月23日 意見書,及び手続補正書の提出
平成30年 2月28日付け 拒絶査定
平成30年 7月 6日 拒絶査定不服審判の請求,
及び手続補正書の提出


第2 平成30年7月6日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成30年7月6日にされた手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の概要
(1)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の,平成29年8月23日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1は,次のとおりである。

「 ワイヤレス通信の方法であって,
第1のデータシステムを介して第1のデータサービスとデータセッションを確立する前または確立中に,1つまたは複数のフォールバック条件が存在するか否かを決定することと,
前記1つまたは複数のフォールバック条件のうちの少なくとも1つが存在するとの前記決定に基づいて,前記第1のデータシステムを介して前記第1のデータサービスにアクセスするためにデータセッションを確立しようとするさらなる試みを禁止することと,
前記1つまたは複数のフォールバック条件のうちの少なくとも1つが存在するとの前記決定に基づいて第2のデータサービスへのフォールバックをイネーブルにすることと
を備え,
前記1つまたは複数のフォールバック条件のうちの1つは,ハードフォールバック失敗の発生,またはソフトフォールバック失敗の発生を示し,
前記1つまたは複数のフォールバック条件のうちの1つが,前記ハードフォールバック失敗の発生を示す場合に,前記第1のデータサービスは,発展型高速パケットデータ(eHRPD)サービスを備え,前記ハードフォールバック失敗は,認証失敗を備え,
前記1つまたは複数のフォールバック条件が,前記ソフトフォールバック失敗の発生を示す場合に,前記第1のデータサービスは,前記eHRPDサービスを備え,前記ソフトフォールバック失敗は,リンク制御プロトコル(LCP)交渉プロシージャ失敗を備える,
方法。」

(2)本件補正により,特許請求の範囲の請求項1は,次のとおり補正された。(下線は補正箇所を示す。)

「 ワイヤレス通信の方法であって,
第1のデータシステムを介して第1のデータサービスとデータセッションを確立する前または確立中に,1つまたは複数のフォールバック条件が存在するか否かを決定することと,
前記1つまたは複数のフォールバック条件のうちの少なくとも1つが存在するとの前記決定に基づいて,前記第1のデータシステムを介して前記第1のデータサービスにアクセスするためにデータセッションを確立しようとするさらなる試みを禁止することと,
前記1つまたは複数のフォールバック条件のうちの少なくとも1つが存在するとの前記決定に基づいて第2のデータサービスへのフォールバックをイネーブルにすることと
を備え,
前記1つまたは複数のフォールバック条件のうちの1つは,ハードフォールバック失敗の発生,ソフトフォールバック失敗の発生,またはユーザ機器(UE)が,前記UEに関連付けられたアプリケーションプロフィールで値が設定された場合に,前記第1のデータサービスにアクセスするために,前記データセッションを確立しようとする試みを禁止されることを示し,
前記1つまたは複数のフォールバック条件のうちの1つが,前記ハードフォールバック失敗の発生を示す場合に,前記第1のデータサービスは,発展型高速パケットデータ(eHRPD)サービスを備え,前記ハードフォールバック失敗は,認証失敗を備え,
前記1つまたは複数のフォールバック条件が,前記ソフトフォールバック失敗の発生を示す場合に,前記第1のデータサービスは,前記eHRPDサービスを備え,前記ソフトフォールバック失敗は,リンク制御プロトコル(LCP)交渉プロシージャ失敗を備える,
方法。」


2 補正の適否
上記補正は,本件補正前の請求項1の「前記1つまたは複数のフォールバック条件」について,「ユーザ機器(UE)が,前記UEに関連付けられたアプリケーションプロフィールで値が設定された場合に,前記第1のデータサービスにアクセスするために,前記データセッションを確立しようとする試みを禁止されること」との事項を選択肢として付加するものである。
そうすると,上記補正により,請求項1の「前記1つまたは複数のフォールバック条件」は,本件補正前の「ハードフォールバック失敗の発生,またはソフトフォールバック失敗の発生」だけではなく,さらに前記事項を選択肢として含むものであるから,上記補正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものとはいえない。
そして,請求項1についての上記補正が,特許法第17条の2第5項1号(請求項の削除),3号(誤記の訂正),4号(明りょうでない記載の釈明)に規定される事項を目的とするものでないことは明らかである。

したがって,本件補正は,特許法第17条の2第5項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しない。
以上のとおり,本件補正は,特許法第17条の2第5項の規定に違反するものである。


3 独立特許要件
上記2のとおり,本件補正は特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであるが,更に進めて,仮に,本件補正が特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとして,本件補正後の請求項に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのか否かについて検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は,上記「第2 1(2)」に記載したとおりのものと認める。

(2)引用例の記載事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された,米国特許出願公開第2010/0177629号明細書(以下,「引用例」という。)には以下の記載がある。

「[0010] A wireless communications device is configured with protocol fallback capability which allows for improved data service reliability. In an exemplary embodiment, the device establishes a radio level session with a network at a relatively high or highest protocol level among a plurality of protocol levels supported by the device and network. Upon a failure to establish a network level data communication session, or a failure during a network level session, the device closes the radio level session with the network. Thereafter, the device re-attempts to establish the network level session at a lower, fallback protocol level, by pretending that it is a legacy device incapable of supporting the high protocol level. In this manner, the network is likely to follow a different procedure in establishing data communications, whereby an error that caused the failure is less likely to be repeated.
(中略)

[0058] With continuing reference to FIG. 5 , after step 3 (location update procedure 506 ) the radio session is established between eAT 106 and eAN 122 . However, an eHRPD data session is not considered to be established until step 18 when the eAT obtains an IP address and is able to actually transfer data. Meanwhile, any of the steps between steps 4 and 18 (which are performed at the PPP/IP layer between the eAT 106 and the network) can fail. Some of these failures may be hard failures. As one example of such, in step 7 the EAP-AKA' authentication may fail with the 3GPP AAA server 146 (see FIG. 3 ). In this case, if operating according to known specifications (e.g. 3GPP2 X.50057-0), there are no means for the user to obtain data services. With embodiments of this disclosure, the user may obtain legacy data services in this case, albeit not necessarily the rich services available via the eHRPD route. For instance, eAT 106 may in this case close the radio session and thereafter pretend it's an AT to connect to the 3GPP2 core network (PDSN 128 , etc.) using PAP/CHAP (Password Authentication Protocol/Challenge Handshake Protocol) authentication.
(中略)

[0064] FIG. 7 illustrates a flow process in accordance with an embodiment for identifying an error condition during an eHRPD call attempt and attempting to provide fallback data service despite the error condition. The error condition occurs during the PPP LCP negotiation phase 512 or the EAP-AKA' authentication processes 514 , 516 just mentioned. Specifically, at 702 , an error condition is identified in which the network does not negotiate EAP-AKA' as the authentication protocol for PPP while bringing up an eHRPD call. Rather, at step 704 , the network proposes a PAP/CHAP authentication ("AUTH=NULL/PAP/CHAP"). In response, the eAT sends LCP Config Nak (i.e., the eAT does not acknowledge a PAP/CHAP authentication) and continues to propose EAP for the authentication protocol.

[0065] Next, at step 706 if the network does not confirm the EAP authentication protocol (AUTH=EAP), the flow proceeds to step 708 . Here, the eAT determines if a timeout condition for the EAT authentication verification has occurred. If so, the process gives up on attaining EAP authentication and the flow proceeds to step 720 . At 720 , the eAT ascertains that an eHRPD failure condition has occurred. The eAT then falls back to the HRPD or 1xRTT operation mode in the manner described previously. That is, the eAT closes the radio level session and thereafter, pretends it is an AT to obtain legacy HRPD/1xRTT data services.

[0066] In step 706 , if the network confirms EAP authentication protocol, the flow proceeds to step 710 . If at 710 the eAT is nonetheless rejected by the network, then at step 716 , the eAT determines if a link layer timeout in establishing PPP has occurred. Unless the network accepts the eAT before the timeout does occur (as indicated by the return to 710 ), the timeout results in the judgment of an eHRPD failure condition at 720 and the consequent fallback to HRPD/lxRTT operation mode.

(当審訳:
[0010]ワイヤレス通信デバイスは,改良されたデータサービス信頼性を可能にするプロトコル・フォールバック機能を備えて構成される。例示的な実施形態では,デバイスは,デバイス及びネットワークがサポートするプロトコルの複数のレベルにおいて,比較的高い,又は最も高いプロトコルレベルで,ネットワークと無線段階のセッションを確立する。ネットワーク段階のデータ通信セッション確立の失敗,又は,ネットワーク段階のセッション中で失敗すると,デバイスは,ネットワークと共に無線段階のセッションを閉じる。その後,デバイスは,高いプロトコルレベルをサポートできない従来のデバイスになりすますことによって,プロトコルレベルをフォールバックし,低いプロトコルレベルで,ネットワーク段階のセッションの確立を試行する。このようにして,ネットワークでデータの通信を確立する際に異なる手順に追従しやすくなり,失敗の原因となったエラーが繰り返される可能性が低くなる。
(中略)

[0058] 図5を続けて参照すると,ステップ3(位置更新手順506)の後,無線セッションがeAT106及びeAN122との間で確立される。しかしながら,ステップ18において,eATがIPアドレスを取得して実際にデータを転送することができるまで,eHRPDセッションは確立されたとは見なされない。なお,ステップ4とステップ18の間の(eAT106とネットワークとの間のPPP/IP層で実施される)のいずれかのステップが失敗することがある。これら失敗のいくつかは,ハード失敗であってもよい。その一例として,ステップ7において,3GPPのAAAサーバ146を用いたEAP-AKA’認証ができないことがある(図3を参照のこと)。この場合,公知の規格(例えば,3GPP2X.50057-0)により操作するのであれば,ユーザがデータサービスを受けるための手段はない。本開示の実施形態では,この場合には,ユーザは,eHRPDルートを介したリッチなサップビースほどではないが,従来型データサービスを利用することが可能である。
例えば,eAT106が,この場合の無線セッションを閉じた後に,PAP/CHAP(パスワード認証プロトコル/チャレンジ・ハンドシェイク・プロトコル)を用い,3GPP2コアネットワーク(PDSN,128など)に接続できるように,ATになりすます。
(中略)

[0064] 図7は,eHRPD呼の試行中にエラー状態を識別し,エラー状態にも関わらず,フォールバック・データサービスの提供を試みる実施形態によるフロープロセスを示している。エラー状態は,PPP LCPネゴシエーションフェーズ512,又は,前述のEAP-AKA’認証プロセス514,516の間に発生する。具体的には702において,eHRPD呼の起動中にネットワークがPPPのための認証プロトコルとしてEAP-AKA’をネゴシエートしないとして,エラー状態が識別される。逆に,ステップ704において,ネットワークは,PAP/CHAP認証を提案する(”AUTH=NULL/PAP/CHAP”)。これに対応して,eATはLCP Config-Nakを送信し(すなわち,eATはPAP/CHAP認証を承認しない),認証プロトコルのためのEAPを提案する。

[0065] 次に,ステップ706で,ネットワークは,EAP認証プロトコル(AUTH=EAP)が確認されない場合,フローはステップ708に進む。ここでeATは,EAT認証の検証でタイムアウト条件が発生しているか否かを判定する。その場合,プロセスは,EAP認証を断念し,フローはステップ720に進む。720においてeATは,eHRPD失敗状態が発生したことを確認する。そこでeATは,上記のHRPDネットワーク又は1xRTT動作モードにフォールバックする。すなわち,eATは,無線レベルのセッションを閉じ,その後,従来型のHRPD/1xRTTデータサービスの提供を受けるため,ATになりすます。

[0066] ステップ706において,ネットワークは,EAP認証プロトコルを確認した場合,フローはステップ710に進む。710では,eATがネットワークによって拒否されると,ステップ716において,eATは,PPPを確立する際に,リンクレイヤのタイムアウトが発生したか否かを判定する。タイムアウトが発生する前に,ネットワークがeATを受け入れない限り(710へのリターンとして示される),720では,タイムアウトによりeHRPD失敗状態であると判定され,HRPD/1xRTT動作モードへのフォールバックが生じる。
)

(a)上記段落0010によると,ワイヤレス通信デバイスが,ネットワークと無線段階のセッションを確立することが記載されているから,引用例には,ワイヤレス通信の方法が記載されているといえる。

(b)eHRPD呼の試行は,eHRPDシステムを介して行われるものであることは,当業者の技術常識であるから,上記段落0064によると,eHRPDシステムを介したeHRPD呼の試行中にエラー状態の発生を識別し,フォールバック・データサービスの提供を試みること,及びエラー状態は,PPP LCPネゴシエーションフェーズ512,又は,前述のEAP-AKA’認証プロセス514,516の間に発生するエラーであることが記載されているといえる。
そして,上記段落0065-0066に記載されたeHRPD失敗状態を確認することは,上記段落0064のeHRPD呼の試行中のエラー状態を識別することに対応するものであることが明らかであるところ,上記段落0065-0066の記載によると,eATは,eHRPD失敗状態を確認すると,HRPDネットワーク動作モードへのフォールバックを行うものであるといえるから,引用例には,eATは,eHRPDシステムを介したeHRPD呼の試行中に,EAP-AKA’認証プロセスの間に発生するエラー,又は,PPP LCPネゴシエーションフェーズの間に発生するエラーを識別することと,前記識別に基づいて,HRPDネットワーク動作モードへのフォールバックを行うことが記載されているといえる。

(c)上記段落0058の記載によると,EAP-AKA’認証できないことは,ハード失敗であるから,引用例のEAP-AKA’認証プロセスの間に発生するエラーは,ハード失敗であるといえる。


したがって,引用例には以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「 ワイヤレス通信の方法であって,
eHRPDシステムを介したeHRPD呼の試行中に,
EAP-AKA’認証プロセスの間に発生するエラー,又は,PPP LCPネゴシエーションフェーズの間に発生するエラーを識別することと,
前記識別に基づいて,HRPDサービスへのフォールバック手続を行うことと,を備え,
EAP-AKA’認証プロセスの間に発生するエラーは,ハード失敗である,
方法。」


(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。

ア 本件補正発明は,「第1のデータシステムを介して第1のデータサービスを確立」するものであり,「第1のデータサービスは,発展型高速パケットデータ(eHRPD)サービス」である。
そして,引用発明の「eHRPD呼の試行」は,eHRPDデータサービスのデータセッションを確立する試行であることは明らかである。そうすると,引用発明の「eHRPDシステムを介したeHRPD呼の試行中」は,本願補正発明の「第1のデータサービスは,発展型高速パケットデータ(eHRPD)サービス」を備え,「第1のデータシステムを介して第1のデータサービスとデータセッションを確立する前または確立中」に含まれる。

イ 引用発明の「HRPDサービス」は,HRPDデータサービスであり,第2のデータサービスと称することは任意であるところ,引用発明においては,「EAP-AKA’認証プロセスの間に発生するエラー,又は,PPP LCPネゴシエーションフェーズの間に発生するエラーを識別」し,「前記識別に基づいて,HRPDサービスへのフォールバック手続を行う」から,「EAP-AKA’認証プロセスの間に発生するエラー,又は,PPP LCPネゴシエーションフェーズの間に発生するエラーを識別する」ことは,第2のデータサービスであるHRPDデータサービスへのフォールバック条件が存在するか否かを決定することであるといえる。
よって,引用発明の「EAP-AKA’認証プロセスの間に発生するエラー,又は,PPP LCPネゴシエーションフェーズの間に発生するエラーを識別する」ことは,本件補正発明の「1つまたは複数のフォールバック条件が存在するか否かを決定すること」に含まれる。

ウ 引用発明の「EAP-AKA’認証プロセスの間に発生するエラー,又は,PPP LCPネゴシエーションフェーズの間に発生するエラーを識別することと,前記識別に基づいて,HRPDサービスへのフォールバック手続を行うこと」において,少なくとも1つの条件が成立し,HRPDサービスへフォールバックが行われると,「eHRPD呼の試行」を中断し,さらなる試行を禁止した状態とすることは明らかであるから,引用発明は,「1つまたは複数のフォールバック条件」のうち,少なくとも1つの条件が成立すると,第1のデータサービスである「eHRPD呼の試行」を禁止するといえる。
そうすると,引用発明の「EAP-AKA’認証プロセスの間に発生するエラー,又は,PPP LCPネゴシエーションフェーズの間に発生するエラーを識別することと,前記識別に基づいて,HRPDサービスへのフォールバック手続を行うこと」における,少なくとも1つの条件が成立し,HRPDサービスへフォールバックが行われると,「eHRPD呼の試行」を中断し,さらなるeHRPD呼の試行を禁止した状態とすることは,本件補正発明の「前記1つまたは複数のフォールバック条件のうちの少なくとも1つが存在するとの前記決定に基づいて,前記第1のデータシステムを介して前記第1のデータサービスにアクセスするためにデータセッションを確立しようとするさらなる試みを禁止すること」に含まれる。

エ 引用発明における「EAP-AKA’認証プロセスの間に発生するエラー,又は,PPP LCPネゴシエーションフェーズの間に発生するエラーを識別」した場合に,「前記識別に基づいて,HRPDサービスへのフォールバック手続を行う」ことは,前記HRPDサービスへのフォールバックをイネーブルにしているといえる。
そうすると,引用発明の「EAP-AKA’認証プロセスの間に発生するエラー,又は,PPP LCPネゴシエーションフェーズの間に発生するエラーを識別」した場合に,「前記識別に基づいて,HRPDサービスへのフォールバック手続を行」い,前記HRPDサービスをイネーブルにすることは,本願補正発明の「前記1つまたは複数のフォールバック条件のうちの少なくとも1つが存在するとの前記決定に基づいて第2のデータサービスへのフォールバックをイネーブルにすること」に含まれる。

オ 引用発明の「EAP-AKA’認証プロセスの間に発生するエラー」は,ハード失敗であり,かつフォールバックを決定するための条件であるから,「ハードフォールバック失敗」であるといえる。
したがって,引用発明の「EAP-AKA’認証プロセスの間に発生するエラー,又は,PPP LCPネゴシエーションフェーズの間に発生するエラーを識別」することと,本件補正発明の「前記1つまたは複数のフォールバック条件のうちの1つは,ハードフォールバック失敗の発生,ソフトフォールバック失敗の発生,またはユーザ機器(UE)が,前記UEに関連付けられたアプリケーションプロフィールで値が設定された場合を示」すこととは,「前記1つまたは複数のフォールバック条件のうちの1つは,ハードフォールバック失敗の発生を示」すことで共通する。

カ 引用発明の「ハードフォールバック失敗」は,認証プロセスに関するエラーであるから,認証失敗を示すものであるといえる。
そうすると,引用発明のeHRPDデータサービスにおける「前記1つまたは複数のフォールバック条件のうちの1つが,前記ハードフォールバック失敗の発生を示す」ことは,本件補正発明の「前記1つまたは複数のフォールバック条件のうちの1つが,前記ハードフォールバック失敗の発生を示す場合に,前記第1のデータサービスは,発展型高速パケットデータ(eHRPD)サービスを備え,前記ハードフォールバック失敗は,認証失敗を備え」ることに相当する。


したがって,本件補正発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,相違している。

[一致点]
「 ワイヤレス通信の方法であって,
第1のデータシステムを介して第1のデータサービスとデータセッションを確立する前または確立中に,1つまたは複数のフォールバック条件が存在するか否かを決定することと,
前記1つまたは複数のフォールバック条件のうちの少なくとも1つが存在するとの前記決定に基づいて,前記第1のデータシステムを介して前記第1のデータサービスにアクセスするためにデータセッションを確立しようとするさらなる試みを禁止することと,
前記1つまたは複数のフォールバック条件のうちの少なくとも1つが存在するとの前記決定に基づいて第2のデータサービスへのフォールバックをイネーブルにすることと
を備え,
前記1つまたは複数のフォールバック条件のうちの1つは,ハードフォールバック失敗の発生を示し,
前記1つまたは複数のフォールバック条件のうちの1つが,前記ハードフォールバック失敗の発生を示す場合に,前記第1のデータサービスは,発展型高速パケットデータ(eHRPD)サービスを備え,前記ハードフォールバック失敗は,認証失敗を備える,
方法。」

[相違点1]
一致点の「前記1つまたは複数のフォールバック条件のうちの1つ」に関し,本件補正発明は,「ソフトフォールバック失敗の発生を示し」,「前記1つまたは複数のフォールバック条件が,前記ソフトフォールバック失敗の発生を示す場合に,前記第1のデータサービスは,前記eHRPDサービスを備え,前記ソフトフォールバック失敗は,リンク制御プロトコル(LCP)交渉プロシージャ失敗を備える」ものであるのに対して,引用発明では,「PPP LCPネゴシエーションフェーズの間に発生するエラー」を識別
しているが,ソフトフォールバック失敗と特定していない点。

[相違点2]
一致点の「前記1つまたは複数のフォールバック条件のうちの1つ」に関し,本件補正発明は,「またはユーザ機器(UE)が,前記UEに関連付けられたアプリケーションプロフィールで値が設定された場合に,前記第1のデータサービスにアクセスするために,前記データセッションを確立しようとする試みを禁止されること」を備えるものであるのに対し,引用発明では,当該発明特定事項を備えていない点。

(4)判断
ア 相違点1について
引用発明の「前記1つまたは複数のフォールバック条件」に含まれる,「PPP LCPネゴシエーションフェーズの間に発生するエラー」は,リンク制御プロトコル(LCP)交渉プロシージャ失敗によるエラーであり,エラーをどのように分類するかは,設計的事項にすぎない。
そうすると,引用発明において,「前記1つまたは複数のフォールバック
条件のうちの1つ」に関し,「ソフトフォールバック失敗の発生を示し」,「前記1つまたは複数のフォールバック条件が,前記ソフトフォールバック失敗の発生を示す場合に,前記第1のデータサービスは,前記eHRPDサービスを備え,前記ソフトフォールバック失敗は,リンク制御プロトコル(LCP)交渉プロシージャ失敗を備える」ことは,当業者が容易に想到できたことである。

イ 相違点2について
本件補正発明の「前記1つまたは複数のフォールバック条件のうちの1つ」において,「またはユーザ機器(UE)が,前記UEに関連付けられたアプリケーションプロフィールで値が設定された場合に,前記第1のデータサービスにアクセスするために,前記データセッションを確立しようとする試みを禁止されること」は,択一的な選択を行う記載であり,引用発明は,他の選択肢を備えているから,当該相違点2は実質的な相違点とはいえない。

そして,本件補正発明の作用効果も,引用発明に基づいて当業者が予測し得る範囲のものであり,格別なものではない。

したがって,本件補正発明は,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。


4 本件補正についてのむすび
上記のとおり,本件補正は特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであり,仮に,本件補正を特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとしても,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものである。
したがって,本件補正は,特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について

1 本願発明
平成30年7月6日にされた手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,平成29年8月23日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし54に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,その請求項1に記載された事項により特定される,上記「第2 1(1)」に記載のとおりのものと認める。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,「(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものであり,本願の請求項1に係る発明に対して,引用例(米国特許出願公開第2010/0177629号明細書)が引用されている。


3 引用例の記載事項及び引用発明
引用例の記載事項及び引用発明は,上記「第2 3(2)」で認定したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は本件補正後の発明から本件補正に係る構成を省いたものである

そうすると,相違点は上記「第2 3(3)」の相違点1であるところ,本件補正発明が,上記「第2 3」の「独立特許要件」の項で検討したとおり,引用例に記載された発明に基づき,当業者が容易に想到できたものであるから,本願発明も同様の理由により,引用例に記載された発明に基づき,当業者が容易に発明をすることができたものである。


第4 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用例に記載された発明に基づき,当業者が容易に想到できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。
したがって,本願は,他の請求項について検討するまでもなく,拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-07-19 
結審通知日 2019-07-23 
審決日 2019-08-05 
出願番号 特願2016-88225(P2016-88225)
審決分類 P 1 8・ 57- Z (H04W)
P 1 8・ 575- Z (H04W)
P 1 8・ 121- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 桑原 聡一  
特許庁審判長 中木 努
特許庁審判官 脇岡 剛
長谷川 篤男
発明の名称 第1のデータサービスとのデータコンテキストの確立に関連付けられたフォールバック条件の存在に基づいて第2のデータサービスへのフォールバックをイネーブルにするための方法および装置  
代理人 福原 淑弘  
代理人 岡田 貴志  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 中丸 慶洋  
代理人 井関 守三  
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