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審決分類 審判 査定不服 発明同一 取り消して特許、登録 F16H
管理番号 1358250
審判番号 不服2019-926  
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-01-24 
確定日 2020-01-15 
事件の表示 特願2014-155513「車両用自動変速機」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 3月10日出願公開、特開2016- 33374、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年7月30日の出願であって、平成30年3月28日付けで拒絶理由通知がされ、平成30年5月29日に手続補正がされ、平成30年10月23日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成31年1月24日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。

第2 本願発明
本願請求項1-7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明7」という。)は、平成31年1月24日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-7に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
カップリングスリーブの移動により係合クラッチを噛み合い締結/解放し、所定の変速段を選択する変速機構と、パーキングポールをパークギヤに噛み合い締結し、駆動輪への回転系を変速機ケースに固定するパーク機構と、前記カップリングスリーブと前記パーキングポールを共に動作させる一つのアクチュエータと、を備えた車両用自動変速機において、
走行駆動源と駆動輪を連結する駆動力伝達軸を設け、
前記変速機構は、前記駆動力伝達軸と同方向に延在し、前記カップリングスリーブを移動させるシフトフォークを設けたフォークロッドと、前記フォークロッドに連結されると共に、前記アクチュエータの駆動力で動作して前記フォークロッドをスライド移動させるブラケットと、を有し、
前記変速機構と前記パーク機構とを、前記駆動力伝達軸の軸方向に重複する位置に配置し、
前記シフトフォークと前記パークギヤとを前記駆動力伝達軸の軸方向に沿って配列し、前記フォークロッドと前記ブラケットとの連結位置を、前記シフトフォークと、前記シフトフォークとは反対側の前記パークギヤの側面との間の領域に配置する
ことを特徴とする車両用自動変速機。」

なお、本願発明2-7は、概略、本願発明1を減縮した発明である。

第3 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

本願発明1-7は、その出願の日前の日本語特許出願であって、その出願後に国際公開がされた以下の日本語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の日本語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記日本語特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない(同法第184条の13参照)。

引用文献等一覧
1.特願2013-230679号(国際公開第2015/068474号)

第4 先願明細書等の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前の特許出願(特願2013-230679号。以下、「先願1」という。)であって、その特許出願を優先権主張の基礎とする日本語特許出願が、本願の出願後に国際公開(国際公開第2015/068474号。以下、「引用文献1」という。)された、特許出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「先願明細書等」という。)には、次の事項が記載されている。
なお、以下の摘記事項は、引用文献1におけるものであるが、先願明細書等にも、同内容の記載がなされている。

「[請求項1]
変速機構の移動による締結で、所定の変速段を選択する締結要素と、
パークロッドの移動によるパーキングポールとパークギヤの噛み合い締結で、駆動輪への回転系を変速機ケースに固定するパーク機構と、
を備えた車両用自動変速機において、
前記変速機構と前記パークロッドを共に移動させる一つのアクチュエータを設け、
前記アクチュエータは、前記パーク機構を前記パーキングポールと前記パークギヤの噛み合い締結を解除したパークロック解除状態にしているとき、前記変速機構を移動させて所定の変速段を選択する
ことを特徴とする車両用自動変速機。」

「[0012]
前記電気自動車(車両)の駆動系構成としては、図1に示すように、駆動用モータジェネレータ2と、自動変速機(車両用自動変速機)3と、駆動輪14と、を備えている。」

「[0014]
……この自動変速機3は、駆動用モータジェネレータ2から変速機入力軸6及び変速機出力軸7を順次経てモータ動力を出力する際の変速に用いられ、低速段を実現するロー側変速機構8及び高速段を実現するハイ側変速機構9により構成される。」

「[0015]
前記ロー側変速機構8は、上記モータ動力の出力に際し、ロー側伝動経路を選択するためのもので、変速機出力軸7上に配置している。このロー側変速機構8は、低速段ギヤ対(ギヤ8a,ギヤ8b)が、変速機入出力軸6,7間を駆動結合するように、変速機出力軸7に対するギヤ8aの噛み合い係合/開放を行う係合クラッチ(締結要素)8cにより構成する。ここで、低速段ギヤ対は、変速機出力軸7上に回転自在に支持したギヤ8aと、該ギヤ8aと噛み合い、変速機入力軸6と共に回転するギヤ8bと、から構成される。」

「[0017]
……変速機出力軸7に達した駆動用モータジェネレータ2のモータ動力がファイナルドライブギヤ組11,12及びディファレンシャルギヤ装置13を経て、左右のドライブシャフト16から駆動輪14(なお、図1では一方の駆動輪のみを示した)に伝達されるようにする。」

「[0018]
さらに、変速機出力軸7には、ギヤ11の反対側に、パークギヤ17が固定され、このパークギヤ17と噛み合い可能に図外の変速機ケースに設けられたパーキングポール18が配置されることで、パーク機構が設けられている。前記パーキングポール18は、自動変速機3のレンジ位置においてパーキングレンジ位置Pが選択されたとき、係合クラッチ8cと兼用の第1電動アクチュエータ41の駆動により、パークギヤ17に噛み合う。つまり、パーキングレンジ位置Pが選択されると、パークギヤ17とパーキングポール18の噛み合い締結により、変速機出力軸7が回転しないようにケース固定されたパークロック状態になる。」

「[0024]
前記係合クラッチ8cは、シンクロ式の噛み合い係合によるクラッチであり、ギヤ8aに設けたクラッチギヤ8dと、変速機出力軸7に結合したクラッチハブ8eと、カップリングスリーブ8fと、を有する(図1を参照)。そして、第1電動アクチュエータ(アクチュエータ)41により、カップリングスリーブ8fをストローク駆動(移動)させることでシンクロ締結/開放する。この係合クラッチ8cのシンクロ締結と開放は、カップリングスリーブ8fの位置によって決まり、……。そして、カップリングスリーブ8fがクラッチギヤ8d及びクラッチハブ8eの外周クラッチ歯の双方に噛合した図1に示す噛み合い位置にあるとき、ギヤ8aを変速機出力軸7に駆動連結し、ローギヤ段を選択する。」

「[0026]
前記パークギヤ17は、自動変速機3のレンジ位置がパーキングレンジ位置Pの選択時、係合クラッチ8cの駆動アクチュエータと共用化した第1電動アクチュエータ(アクチュエータ)41により、後述するパークロッド67を移動させて、パーキングポール18をパークギヤ17に噛み合わせることで、駆動輪14に繋がる変速機出力軸7が回転しないようにケース固定する。すなわち、第1電動アクチュエータ41は、係合クラッチ8cの噛み合い位置と、係合クラッチ8c及びパークギヤ17の非噛み合い位置と、パークギヤ17の噛み合い位置と、の3つの位置の動作を管理する。」

「[0041]
前記パーク機構は、図5に示すように、パーキングポール18のパークギヤ17側にパークギヤ17と噛み合う凸部18aを有する。そして、パーキングポール18のパークギヤ17と反対側にパークサポート68が配置され、パーキングポール18とパークサポート68の間にパークロッド67が配置される。すなわち、パークロッド67のウエッジ部67aの外径によりパーキングポール18をパークサポート68から引き離すようにポール軸18bを中心として回動させることでパークギヤ17と噛み合い締結させる。」

「[0042]
前記シンクロ機構は、図6に示すように、一端の溝部70aがシフトプレート65に連結されたシフト動作変換プレート70と、カップリングスリーブ8fの溝部に連結されたシフトフォーク71と、シフト動作変換プレート70とシフトフォーク71を固定するフォークロッド72と、を有する構成である。……、このシンクロ機構が、第1電動アクチュエータ41によって移動し、係合クラッチ8cを締結/開放する変速機構に相当する。」

図1には、カップリングスリーブ8fとパークギヤ17とが変速機出力軸7の軸方向に沿って配列された構成が示されている。

図9、10、12、13には、フォークロッド72とシフト動作変換プレート70との連結位置は、シフトフォーク71に隣接しており、該連結位置の近傍にパーキングポール18が配置された構成が示されている。

したがって、これらの記載を総合し、本願発明1の記載ぶりに則って整理すると、先願明細書等には次の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されていると認められる。
「カップリングスリーブ8fの移動により係合クラッチ8cを噛み合い締結/解放し、所定の変速段を選択する変速機構と、パーキングポール18をパークギヤ17に噛み合い締結し、駆動輪14への回転系を変速機ケースに固定するパーク機構と、カップリングスリーブ8fとパーキングポール18を共に動作させる一つの第1電動アクチュエータ41と、を備えた車両用自動変速機3において、
駆動用モータジェネレータ2と駆動輪14を連結する変速機出力軸7を設け、
変速機構は、変速機出力軸7と同方向に延在し、カップリングスリーブ8fを移動させるシフトフォーク71を設けたフォークロッド72と、フォークロッド72に連結されると共に、第1電動アクチュエータ41の駆動力で動作してフォークロッド72をスライド移動させるシフト動作変換プレート70と、を有し、
シフトフォーク71とパークギヤ17とを変速機出力軸7の軸方向に沿って配列し、
フォークロッド72とシフト動作変換プレート70との連結位置を、シフトフォーク71の隣接位置に配置する車両用自動変速機3。」

第5 当審の判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と先願発明とを対比すると、先願発明における「カップリングスリーブ8f」、「係合クラッチ8c」、「パーキングポール18」、「パークギヤ17」、「駆動輪14」、「第1電動アクチュエータ41」、「駆動用モータジェネレータ2」、「変速機出力軸7」、「シフトフォーク71」、「フォークロッド72」、「シフト動作変換プレート70」は、本願発明1の「カップリングスリーブ」、「係合クラッチ」、「パーキングポール」、「パークギヤ」、「駆動輪」、「アクチュエータ」、「走行駆動源」、「駆動力伝達軸」、「シフトフォーク」、「フォークロッド」、「ブラケット」にそれぞれ相当する。

したがって、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「カップリングスリーブの移動により係合クラッチを噛み合い締結/解放し、所定の変速段を選択する変速機構と、パーキングポールをパークギヤに噛み合い締結し、駆動輪への回転系を変速機ケースに固定するパーク機構と、前記カップリングスリーブと前記パーキングポールを共に動作させる一つのアクチュエータと、を備えた車両用自動変速機において、
走行駆動源と駆動輪を連結する駆動力伝達軸を設け、
前記変速機構は、前記駆動力伝達軸と同方向に延在し、前記カップリングスリーブを移動させるシフトフォークを設けたフォークロッドと、前記フォークロッドに連結されると共に、前記アクチュエータの駆動力で動作して前記フォークロッドをスライド移動させるブラケットと、を有し、
前記シフトフォークと前記パークギヤとを前記駆動力伝達軸の軸方向に沿って配列している車両用自動変速機。」

<相違点1>
本願発明1は、「前記変速機構と前記パーク機構とを、前記駆動力伝達軸の軸方向に重複する位置に配置」するのに対し、先願発明は、変速機構とパーク機構とを、変速機出力軸7の軸方向に重複する位置に配置しているか不明な点。

<相違点2>
本願発明1は、「前記フォークロッドと前記ブラケットとの連結位置を、前記シフトフォークと、前記シフトフォークとは反対側の前記パークギヤの側面との間の領域に配置する」のに対し、先願発明は、フォークロッド72とシフト動作変換プレート70との連結位置を、シフトフォーク71と、シフトフォーク71とは反対側のパークギヤ17の側面との間の領域に配置しているか不明な点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点2について先に検討する。
先願明細書等の段落[0041]及び図1、5の記載から見て、パークギヤ17は、パーキングポール18の凸部18aと噛み合う位置に配置されるものであるから、図9、10、12、13において、明示されていないパークギヤ17は、フォークロッド72とシフト動作変換プレート70との連結位置の近傍に配置されると認められる。
しかしながら、先願明細書等には、パークギヤ17のシフトフォーク71とは反対側の側面の位置について一切記載がなく、判然としないといわざるを得ないから、図9、10、12、13を参酌しても、上記連結位置が、シフトフォーク71と、シフトフォーク71とは反対側のパークギヤ17の側面との間の領域に配置されるとはいえない。
よって、先願明細書等に記載された事項から、上記相違点2に係る本願発明1の構成が把握できるとはいえない。そして、本願発明1は、かかる構成を具備することにより、本願明細書の段落[0072]に記載のような、「ブラケットプレート63bとシフトフォーク63cとを、互いに干渉することなくフォークロッド63dに取り付けると共に、機構全体の駆動力伝達軸(変速機出力軸7)の軸方向長さの短縮化を図り、機構全体の小型化をさらに図ることができる」という効果を奏するものであるから、かかる構成は、課題解決のための具体化手段における微差ということもできない。
したがって、上記相違点1について判断するまでもなく、本願発明1は、先願発明と同一とはいえない。

2 本願発明2-7について
本願発明2-7も、本願発明1と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、先願発明と同一とはいえない。

第6 原査定について
原査定は、先願明細書等の図1には、パークギヤ(図1の17)は、駆動力伝達軸(図1の7)上にあって、パーキングポール(図1の18)と噛み合う位置に配置されることが図示されており、当該図1を参酌すれば、先願明細書等の図13において、パークギヤは、ブラケット70より左側の位置に配置されることは、当業者が導き出せる事項であるとし、先願明細書等には、フォークロッド(図9,13の72)とブラケット(図9,13の70)との連結位置を、シフトフォーク(図9,13の71)と、前記シフトフォークとは反対側のパークギヤ(図1の17)の側面との間の領域に配置するもの(図13)が記載されていると判断している。
しかしながら、上記第5の1(2)のとおり、先願明細書等の記載からは、フォークロッド72とシフト動作変換プレート70との連結位置が、シフトフォーク71とは反対側のパークギヤ17の側面と、どのような位置関係にあるか判然としないといわざるを得ず、上記連結位置が、シフトフォーク71と、シフトフォーク71とは反対側のパークギヤ17の側面との間の領域に配置されるということはできない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-12-02 
出願番号 特願2014-155513(P2014-155513)
審決分類 P 1 8・ 161- WY (F16H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 前田 浩  
特許庁審判長 田村 嘉章
特許庁審判官 内田 博之
井上 信
発明の名称 車両用自動変速機  
代理人 西脇 民雄  
代理人 西脇 民雄  
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