ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部申し立て 発明同一 B05D 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 B05D 審判 全部申し立て 2項進歩性 B05D |
---|---|
管理番号 | 1358622 |
異議申立番号 | 異議2019-700266 |
総通号数 | 242 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2020-02-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2019-04-08 |
確定日 | 2019-11-28 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6404606号発明「塗布方法、塗布装置、製造方法及び製造装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6404606号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-6、12-15]、[7-11、16]について訂正することを認める。 特許第6404606号の請求項1-3、5-9、11-16に係る特許を維持する。 特許第6404606号の請求項4及び10に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 主な手続の経緯等 特許第6404606号(設定登録時の請求項の数は16。以下、「本件特許」という。)は、平成26年6月16日を出願日とする特許出願である特願2014-123794号に係るものであって、平成30年9月21日に設定登録され、特許掲載公報が同年10月10日に発行された。 特許異議申立人 中村博章(以下、単に「申立人」という。)は、平成31年4月8日に本件特許の請求項1ないし16に係る発明についての特許に対して特許異議の申立てをした。 当審において、令和1年6月14日付けで取消理由を通知したところ、特許権者から、令和1年8月19日に訂正請求書(以下、当該訂正請求書による訂正請求を「本件訂正請求」という。)及び意見書が提出され、令和1年8月26日付けで申立人に対して特許法第120条の5第5項に基づく通知をしたところ、申立人からの応答はなかった。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は、以下の訂正事項1ないし14である。ここで、訂正事項1ないし8は、訂正前の請求項1?6、12?15という一群の請求項を訂正するものであり、訂正事項9ないし14は、訂正前の請求項7?11及び16という一群の請求項を訂正するものである。また、下線については訂正箇所に当審が付したものである。 訂正事項1 訂正前の特許請求の範囲の請求項1に 「前記制御工程では、前記第一の領域、前記第二の領域及び前記段差における前記光硬化性樹脂の表面全体が平坦となるよう、前記コントロールユニットは前記第二の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚を前記第一の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚よりも薄くなるように制御する、」 とあるのを、 「前記制御工程では、 前記第一の領域、前記第二の領域及び前記段差における前記光硬化性樹脂の表面全体が平坦となるよう、前記コントロールユニットは前記第一の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚を前記第二の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚よりも薄くなるように制御し、 前記制御工程では、 少なくとも前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さで、前記膜厚を制御する、」 に訂正する。 請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2、3、5、6、12?14についても同様の訂正を行う。 訂正事項2 訂正前の特許請求の範囲の請求項2に 「前記制御工程では、前記光硬化性樹脂の吐出液量で前記膜厚を制御する、」 とあるのを、 「前記制御工程では、 前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さと、前記光硬化性樹脂の吐出液量とで、前記膜厚を制御する、」 に訂正する。 請求項2を直接又は間接的に引用する請求項12?14についても同様の訂正を行う。 訂正事項3 訂正前の特許請求の範囲の請求項3に 「前記制御工程では、前記塗布ヘッド又は前記パネルの移動速度で前記膜厚を制御する、」 とあるのを、 「前記制御工程では、 前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さと、前記塗布ヘッド又は前記パネルの移動速度とで、前記膜厚を制御する、」 に訂正する。 請求項3を直接又は間接的に引用する請求項12?14についても同様の訂正を行う。 訂正事項4 訂正前の特許請求の範囲の請求項4を削除する。 訂正事項5 訂正前の特許請求の範囲の請求項5に 「前記制御工程では、 前記光硬化性樹脂の吐出液量、 前記塗布ヘッド又は前記パネルの移動速度、 前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さ、 の少なくともいずれか2つで前記膜厚を制御する、」 とあるのを、 「前記制御工程では、 前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さと、 前記光硬化性樹脂の吐出液量、及び、前記塗布ヘッド又は前記パネルの移動速度、の少なくともいずれか1つとで、前記膜厚を制御する、」 に訂正する。 請求項5を直接又は間接的に引用する請求項12?14についても同様の訂正を行う。 訂正事項6 訂正前の特許請求の範囲の請求項12に 「請求項1?6のいずれか1項に記載の塗布方法により、前記第一のパネルの一方面に、液状の光硬化性樹脂を塗布する工程と、」 とあるのを、 「請求項1?3、5及び6のいずれか1項に記載の塗布方法により、前記第一のパネルの一方面に、液状の光硬化性樹脂を塗布する工程と、」 に訂正する。 請求項12を直接又は間接的に引用する請求項13?14についても同様の訂正を行う。 訂正事項7 訂正前の特許請求の範囲の請求項15に 「請求項12?14のいずれか1項に記載の製造方法であって、 前記第一のパネルが光透過性を有するカバーパネルであり、 前記第二のパネルが画像表示パネルであり、 前記積層体が画像表示装置であり、 前記保持工程では、表面に光硬化性樹脂が塗布された前記カバーパネルを、前記表面が上向きの姿勢で保持し、 前記積層工程では、前記カバーパネルが貼り合わされる面が下向きの姿勢で前記画像表示パネルをその上側から吸着する吸着ユニットで保持し、かつ、前記画像表示パネルを前記カバーパネル上に重ね、 前記押圧工程では、 前記カバーパネルをその下側からフリーローラで前記画像表示パネル側に当接し、前記フリーローラを移動させることで、前記画像表示装置を厚み方向に押圧する、 ことを特徴とする製造方法。」 とあるのを、独立形式の請求項として、 「第一のパネルと第二のパネルとを備える積層体の製造方法であって、 所定の塗布方法により、前記第一のパネルの一方面に、液状の光硬化性樹脂を塗布する工程と、 光硬化性樹脂が塗布された前記第一のパネルを保持する保持工程と、 前記第二のパネルを前記第一のパネルの前記一方面に重ねる積層工程と、 前記第一のパネルと前記第二のパネルとの積層体に、厚み方向の押圧力を付与する押圧工程と、を備え、 前記所定の塗布方法は、前記第一のパネルの前記一方面に、液状で光透過性を有する光硬化性樹脂を塗布する塗布方法であって、 前記第一のパネルは、光透過性を有する本体と、前記本体の表面周縁に形成された遮光層と、を備え、 前記第一のパネルの前記一方面の周縁部には、前記遮光層が形成された第一の領域と前記遮光層が形成されていない第二の領域との境界部に段差が形成されており、 前記所定の塗布方法は、 光硬化性樹脂を吐出可能なスリット状のノズルを備えた塗布ヘッドが、前記第一のパネルの前記一方面上を相対的に移動するように、前記塗布ヘッド又は前記第一のパネルの一方を移動させる移動工程と、 前記移動工程中に、前記ノズルから前記光硬化性樹脂を前記第一のパネルの前記一方面に吐出する塗布工程と、 前記塗布工程中に、前記第一のパネル上の前記光硬化性樹脂の膜厚をコントロールユニットにて制御する制御工程と、を含み、 前記制御工程では、 前記第一の領域、前記第二の領域及び前記段差における前記光硬化性樹脂の表面全体が平坦となるよう、前記コントロールユニットは前記第一の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚を前記第二の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚よりも薄くなるように制御し、 前記第一のパネルが光透過性を有するカバーパネルであり、 前記第二のパネルが画像表示パネルであり、 前記積層体が画像表示装置であり、 前記保持工程では、表面に光硬化性樹脂が塗布された前記カバーパネルを、前記表面が上向きの姿勢で保持し、 前記積層工程では、前記カバーパネルが貼り合わされる面が下向きの姿勢で前記画像表示パネルをその上側から吸着する吸着ユニットで保持し、かつ、前記画像表示パネルを前記カバーパネル上に重ね、 前記押圧工程では、 前記カバーパネルをその下側からフリーローラで前記画像表示パネル側に当接し、前記フリーローラを移動させることで、前記画像表示装置を厚み方向に押圧する、 ことを特徴とする製造方法。」 に訂正する。 訂正事項8 訂正前の明細書の段落【0007】の 「本発明によれば、パネルの表面に、液状で光透過性を有する光硬化性樹脂を塗布する塗布方法であって、前記パネルは、光透過性を有する本体と、前記本体の表面周縁に形成された遮光層と、を備え、前記パネルの前記表面の周縁部には、前記遮光層が形成された第一の領域と前記遮光層が形成されていない第二の領域との境界部に段差が形成されており、前記塗布方法は、光硬化性樹脂を吐出可能なスリット状のノズルを備えた塗布ヘッドが、前記パネルの前記表面上を相対的に移動するように、前記塗布ヘッド又は前記パネルの一方を移動させる移動工程と、前記移動工程中に、前記ノズルから前記光硬化性樹脂を前記パネルの前記表面に吐出する塗布工程と、前記塗布工程中に、前記パネル上の前記光硬化性樹脂の膜厚をコントロールユニットにて制御する制御工程と、を含み、前記制御工程では、前記第一の領域、前記第二の領域及び前記段差における前記光硬化性樹脂の表面全体が平坦となるよう、前記コントロールユニットは前記第二の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚を前記第一の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚よりも薄くなるように制御する、ことを特徴とする塗布方法が提供される。」 を 「本発明によれば、パネルの表面に、液状で光透過性を有する光硬化性樹脂を塗布する塗布方法であって、前記パネルは、光透過性を有する本体と、前記本体の表面周縁に形成された遮光層と、を備え、前記パネルの前記表面の周縁部には、前記遮光層が形成された第一の領域と前記遮光層が形成されていない第二の領域との境界部に段差が形成されており、前記塗布方法は、光硬化性樹脂を吐出可能なスリット状のノズルを備えた塗布ヘッドが、前記パネルの前記表面上を相対的に移動するように、前記塗布ヘッド又は前記パネルの一方を移動させる移動工程と、前記移動工程中に、前記ノズルから前記光硬化性樹脂を前記パネルの前記表面に吐出する塗布工程と、前記塗布工程中に、前記パネル上の前記光硬化性樹脂の膜厚をコントロールユニットにて制御する制御工程と、を含み、前記制御工程では、前記第一の領域、前記第二の領域及び前記段差における前記光硬化性樹脂の表面全体が平坦となるよう、前記コントロールユニットは前記第一の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚を前記第二の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚よりも薄くなるように制御し、前記制御工程では、少なくとも前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さで、前記膜厚を制御する、ことを特徴とする塗布方法が提供される。」 に訂正する。 訂正事項9 訂正前の特許請求の範囲の請求項7に 「前記膜厚制御では、前記第一の領域、前記第二の領域及び前記段差における前記光硬化性樹脂の表面全体が平坦となるよう、前記コントロールユニットは前記第二の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚を前記第一の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚よりも薄くなるように制御する、」 とあるのを、 「前記膜厚制御では、 前記第一の領域、前記第二の領域及び前記段差における前記光硬化性樹脂の表面全体が平坦となるよう、前記コントロールユニットは前記第一の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚を前記第二の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚よりも薄くなるように制御し、 前記膜厚制御では、 少なくとも前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さで、前記膜厚を制御する、」 に訂正する。 請求項7を直接又は間接的に引用する請求項8、9、11及び16についても同様の訂正を行う。 訂正事項10 訂正前の特許請求の範囲の請求項8に 「前記膜厚制御では、前記光硬化性樹脂の吐出液量で前記膜厚を制御する、」 とあるのを、 「前記膜厚制御では、 前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さと、前記光硬化性樹脂の吐出液量とで、前記膜厚を制御する、」 に訂正する。 訂正事項11 訂正前の特許請求の範囲の請求項9に 「前記膜厚制御では、前記塗布ヘッド又は前記パネルの移動速度で前記膜厚を制御する、」 とあるのを、 「前記膜厚制御では、 前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さと、前記塗布ヘッド又は前記パネルの移動速度とで、前記膜厚を制御する、」 に訂正する。 訂正事項12 訂正前の特許請求の範囲の請求項10を削除する。 訂正事項13 訂正前の特許請求の範囲の請求項11に 「前記膜厚制御では、前記光硬化性樹脂の吐出液量、前記塗布ヘッド又は前記パネルの移動速度、前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さ、の少なくともいずれか2つで前記膜厚を制御する、」 とあるのを、 「前記膜厚制御では、 前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さと、 前記光硬化性樹脂の吐出液量、及び、前記塗布ヘッド又は前記パネルの移動速度、の少なくともいずれか1つとで、前記膜厚を制御する、」 に訂正する。 訂正事項14 訂正前の明細書の段落【0008】の 「また、本発明によれば、パネルの表面に、液状で光透過性を有する光硬化性樹脂を塗布する塗布装置であって、光硬化性樹脂を吐出可能なスリット状のノズルを備えた塗布ヘッドと、前記パネルの前記表面上を相対的に移動するように、前記塗布ヘッド及び前記パネルの少なくとも一方を移動させる移動機構と、前記塗布ヘッドと前記移動機構とを制御する制御ユニットと、を備え、前記パネルは、光透過性を有する本体と、前記本体の表面周縁に形成された遮光層と、を備え、前記パネルの前記表面の周縁部には、前記遮光層が形成された第一の領域と前記遮光層が形成されていない第二の領域との境界部に段差が形成されており、前記制御ユニットは、前記移動機構により前記塗布ヘッド及び前記パネルの少なくとも一方を移動させる移動制御と、前記移動制御中に、前記ノズルから前記光硬化性樹脂を前記パネルの前記表面に吐出する塗布制御と、前記塗布制御中に、前記パネル上の前記光硬化性樹脂の膜厚を制御する膜厚制御と、を実行し、前記膜厚制御では、前記第一の領域、前記第二の領域及び前記段差における前記光硬化性樹脂の表面全体が平坦となるよう、前記第二の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚を前記第一の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚よりも薄くなるように制御する、ことを特徴とする塗布装置が提供される。」 を 「また、本発明によれば、パネルの表面に、液状で光透過性を有する光硬化性樹脂を塗布する塗布装置であって、光硬化性樹脂を吐出可能なスリット状のノズルを備えた塗布ヘッドと、前記パネルの前記表面上を相対的に移動するように、前記塗布ヘッド及び前記パネルの少なくとも一方を移動させる移動機構と、前記塗布ヘッドと前記移動機構とを制御する制御ユニットと、を備え、前記パネルは、光透過性を有する本体と、前記本体の表面周縁に形成された遮光層と、を備え、前記パネルの前記表面の周縁部には、前記遮光層が形成された第一の領域と前記遮光層が形成されていない第二の領域との境界部に段差が形成されており、前記制御ユニットは、前記移動機構により前記塗布ヘッド及び前記パネルの少なくとも一方を移動させる移動制御と、前記移動制御中に、前記ノズルから前記光硬化性樹脂を前記パネルの前記表面に吐出する塗布制御と、前記塗布制御中に、前記パネル上の前記光硬化性樹脂の膜厚を制御する膜厚制御と、を実行し、前記膜厚制御では、前記第一の領域、前記第二の領域及び前記段差における前記光硬化性樹脂の表面全体が平坦となるよう、前記第一の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚を前記第二の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚よりも薄くなるように制御し、前記制御工程では、少なくとも前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さで、前記膜厚を制御する、ことを特徴とする塗布装置が提供される。」 に訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1) 訂正事項1について ア 訂正事項1のうち、「前記コントロールユニットは前記第一の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚を前記第二の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚よりも薄くなるように制御し、」の部分(以下、「訂正事項1-1」という。)は、「第一の領域」と「第二の領域」とを逆に書き違えたものを正すというものであるので、当該訂正が、誤記の訂正を目的とするといえるかどうか検討する。 イ 本件特許の請求項1に係る発明の解決すべき課題が「パネル表面の段差に起因する液膜表面の段差の発生の低減すること」(明細書の段落【0006】)であって、請求項1において「前記第一の領域、前記第二の領域及び前記段差における前記光硬化性樹脂の表面全体が平坦となるよう」との記載があること、及び、請求項1を引用する請求項6において、遮光層上(第一の領域に対応)では膜厚を相対的に薄く、遮光層間(第二の領域に対応)では膜厚を相対的に厚くするように制御することが規定されていて、明細書の段落【0064】にも同様な記載があることから、この出願の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)において、訂正前の請求項1の訂正事項1-1に係わる部分をみれば、本件特許の請求項1に係る発明が、当該発明の解決すべき課題が解決できないことは明らかであって、当該部分は「第一の領域」と「第二の領域」とを逆に書き違えていると解する以外にはないといえる。そうすうると、訂正事項1-1は、誤記の訂正を目的とするものである。 ウ 一方、訂正事項1のうち、「前記制御工程では、少なくとも前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さで、前記膜厚を制御する、」の部分(以下、「訂正事項1-2」という。)は、膜厚の制御内容を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 エ 訂正事項1-1については、明細書の段落【0064】の記載、訂正事項1-2については、明細書の段落【0067】、【0068】並びに設定登録時の請求項4の記載に基づくものであって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項の追加に該当しない。 オ 訂正事項1-1及び訂正事項1-2は、いずれも、第3者の利益を不当に害するものではないから、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 カ 以上のことから、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び2号に掲げる事項を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (2) 訂正事項2について ア 訂正事項2は、訂正前の請求項2において膜厚を吐出液量で制御することを規定していたところ、吐出液量とノズルの高さとで制御することに限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 訂正事項2は、明細書の段落【0065】、【0067】及び【0068】の記載に基づくものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項の追加に該当しない。 ウ 訂正事項2は、訂正前の膜厚の制御内容をさらに限定したものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 エ よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (3) 訂正事項3について ア 訂正事項3は、訂正前の請求項3において膜厚を塗布ヘッド又はパネルの移動速度で制御することを規定していたところ、移動速度とノズルの高さとで制御することに限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 訂正事項3は、明細書の段落【0066】、【0067】及び【0068】の記載に基づくものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項の追加に該当しない。 ウ 訂正事項3は、訂正前の膜厚の制御内容をさらに限定したものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 エ よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (4) 訂正事項4について ア 訂正事項4は、訂正前の請求項4を削除するものであるから、特許請求の範囲を減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 イ よって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (5) 訂正事項5について ア 訂正事項5は、訂正前の請求項5において膜厚を吐出液量、塗布ヘッド又はパネルの移動速度、ノズルの高さのうちの少なくとも2つで制御することを規定していたところ、ノズルの高さで制御することを必須とするものに限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 訂正事項5は、明細書の段落【0065】?【0068】の記載に基づくものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項の追加に該当しない。 ウ 訂正事項5は、訂正前の膜厚の制御内容をさらに限定したものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 エ よって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (6) 訂正事項6について ア 訂正事項6は、訂正前の請求項12の引用請求項から、訂正事項4により削除される請求項4を削除するものであるから、特許請求の範囲を減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 イ よって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (7) 訂正事項7について ア 訂正事項7は、訂正前の請求項15を、請求項間の引用関係を解消して、その引用先の訂正前の請求項12及び訂正前の請求項12の引用先の訂正前の請求項1の内容を含めて、独立形式請求項へ改めるための訂正と共に、訂正事項1で行っている誤記の訂正も合わせて行うものであって、誤記の訂正と他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 イ そして、当該訂正事項7は、上記で明らかなように、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ よって、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号及び第4号に掲げる事項を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (8) 訂正事項8について ア 訂正事項8は、訂正事項1による請求項1の訂正と、明細書の記載との整合を図るものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ そして、当該訂正事項8は、上記で明らかなように、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ よって、訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 (9) 訂正事項9について ア 訂正事項9のうち、「前記コントロールユニットは前記第一の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚を前記第二の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚よりも薄くなるように制御し、」の部分(以下、「訂正事項9-1」という。)は、「第一の領域」と「第二の領域」とを逆に書き違えた誤記を正す、誤記の訂正を目的とするものである。一方、訂正事項9のうち、「前記膜厚制御では、少なくとも前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さで、前記膜厚を制御する、」の部分(以下、「訂正事項1-2」という。)は、膜厚の制御内容を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 訂正事項9-1は、「第一の領域」と「第二の領域」とを逆に書き違えた誤記を正すものであって、これが、誤記であることは、明細書の段落【0064】の記載や、請求項7において「前記第一の領域、前記第二の領域及び前記段差における前記光硬化性樹脂の表面全体が平坦となるよう」との記載があること等から明らかである。また、訂正事項9-2は、明細書の段落【0067】、【0068】や設定登録時の請求項10に基づくものといえる。 したがって、訂正事項9は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項の追加に該当しない。 ウ そして、当該訂正事項9のうち、訂正事項9-1は、上記イのとおり、「第一の領域」と「第二の領域」とを逆に書き違えた誤記であることが明らかであるし、訂正事項9-2は、訂正前には限定されていなかった膜厚の制御内容を限定したものであるから、訂正事項9は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 エ よって、訂正事項9は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び2号に掲げる事項を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (10) 訂正事項10について ア 訂正事項10は、訂正前の請求項8において膜厚を吐出液量で制御することを規定していたところ、吐出液量とノズルの高さとで制御することに限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 訂正事項10は、明細書の段落【0065】、【0067】及び【0068】の記載に基づくものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項の追加に該当しない。 ウ 訂正事項10は、訂正前の膜厚の制御内容をさらに限定したものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 エ よって、訂正事項10は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (11) 訂正事項11について ア 訂正事項11は、訂正前の請求項9において膜厚を塗布ヘッド又はパネルの移動速度で制御することを規定していたところ、移動速度とノズルの高さとで制御することに限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 訂正事項11は、明細書の段落【0066】、【0067】及び【0068】の記載に基づくものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項の追加に該当しない。 ウ 訂正事項11は、訂正前の膜厚の制御内容をさらに限定したものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 エ よって、訂正事項11は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (12) 訂正事項12について ア 訂正事項12は、訂正前の請求項10を削除するものであるから、特許請求の範囲を減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 イ よって、訂正事項12は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (13) 訂正事項13について ア 訂正事項13は、訂正前の請求項11において膜厚を吐出液量、塗布ヘッド又はパネルの移動速度、ノズルの高さのうちの少なくとも2つで制御することを規定していたところ、ノズルの高さで制御することを必須とするものに限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 訂正事項13は、明細書の段落【0065】?【0068】の記載に基づくものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項の追加に該当しない。 ウ 訂正事項13は、訂正前の膜厚の制御内容をさらに限定したものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 エ よって、訂正事項13は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (14) 訂正事項14について ア 訂正事項14は、訂正事項9による請求項7の訂正と、明細書の記載との整合を図るものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ そして、当該訂正事項14は、上記で明らかなように、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ よって、訂正事項14は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 3 むすび 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-6、12-15]、[7-11、16]について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり、本件訂正請求による訂正は認められるので、本件特許の請求項1ないし16に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明16」のようにいう。)は、令和1年8月19日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された事項により特定される以下に記載のとおりのものである。 「【請求項1】 パネルの表面に、液状で光透過性を有する光硬化性樹脂を塗布する塗布方法であって、 前記パネルは、光透過性を有する本体と、前記本体の表面周縁に形成された遮光層と、を備え、 前記パネルの前記表面の周縁部には、前記遮光層が形成された第一の領域と前記遮光層が形成されていない第二の領域との境界部に段差が形成されており、 前記塗布方法は、 光硬化性樹脂を吐出可能なスリット状のノズルを備えた塗布ヘッドが、前記パネルの前記表面上を相対的に移動するように、前記塗布ヘッド又は前記パネルの一方を移動させる移動工程と、 前記移動工程中に、前記ノズルから前記光硬化性樹脂を前記パネルの前記表面に吐出する塗布工程と、 前記塗布工程中に、前記パネル上の前記光硬化性樹脂の膜厚をコントロールユニットにて制御する制御工程と、を含み、 前記制御工程では、 前記第一の領域、前記第二の領域及び前記段差における前記光硬化性樹脂の表面全体が平坦となるよう、前記コントロールユニットは前記第一の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚を前記第二の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚よりも薄くなるように制御し、 前記制御工程では、 少なくとも前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さで、前記膜厚を制御する、 ことを特徴とする塗布方法。 【請求項2】 請求項1記載の塗布方法であって、 前記制御工程では、 前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さと、前記光硬化性樹脂の吐出液量とで、前記膜厚を制御する、 ことを特徴とする塗布方法。 【請求項3】 請求項1記載の塗布方法であって、 前記制御工程では、 前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さと、前記塗布ヘッド又は前記パネルの移動速度とで、前記膜厚を制御する、 ことを特徴とする塗布方法。 【請求項4】(削除) 【請求項5】 請求項1記載の塗布方法であって、 前記制御工程では、 前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さと、 前記光硬化性樹脂の吐出液量、及び、前記塗布ヘッド又は前記パネルの移動速度、の少なくともいずれか1つとで、前記膜厚を制御する、 ことを特徴とする塗布方法。 【請求項6】 請求項1に記載の塗布方法であって、 前記パネルは方形であり、 前記ノズルは、前記パネルの互いに対向する一対の辺と平行に配置され、 前記移動工程では、 前記一対の辺と直交する方向に、前記塗布ヘッド又は前記パネルの一方を移動させ、 前記塗布工程では、 前記一対の辺に沿って形成された前記遮光層上では、前記光硬化性樹脂の膜厚が相対的に薄くなるように制御し、 前記一対の辺に沿って形成された前記遮光層間では、前記光硬化性樹脂の膜厚が相対的に厚くなるように制御する、 ことを特徴とする塗布方法。 【請求項7】 パネルの表面に、液状で光透過性を有する光硬化性樹脂を塗布する塗布装置であって、 光硬化性樹脂を吐出可能なスリット状のノズルを備えた塗布ヘッドと、 前記パネルの前記表面上を相対的に移動するように、前記塗布ヘッド及び前記パネルの少なくとも一方を移動させる移動機構と、 前記塗布ヘッドと前記移動機構とを制御する制御ユニットと、を備え、 前記パネルは、光透過性を有する本体と、前記本体の表面周縁に形成された遮光層と、を備え、 前記パネルの前記表面の周縁部には、前記遮光層が形成された第一の領域と前記遮光層が形成されていない第二の領域との境界部に段差が形成されており、 前記制御ユニットは、 前記移動機構により前記塗布ヘッド及び前記パネルの少なくとも一方を移動させる移動制御と、 前記移動制御中に、前記ノズルから前記光硬化性樹脂を前記パネルの前記表面に吐出する塗布制御と、 前記塗布制御中に、前記パネル上の前記光硬化性樹脂の膜厚を制御する膜厚制御と、を実行し、 前記膜厚制御では、 前記第一の領域、前記第二の領域及び前記段差における前記光硬化性樹脂の表面全体が平坦となるよう、前記コントロールユニットは前記第一の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚を前記第二の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚よりも薄くなるように制御し、 前記膜厚制御では、 少なくとも前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さで、前記膜厚を制御する、 ことを特徴とする塗布装置。 【請求項8】 請求項7記載の塗布装置であって、 前記膜厚制御では、 前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さと、前記光硬化性樹脂の吐出液量とで、前記膜厚を制御する、 ことを特徴とする塗布装置。 【請求項9】 請求項7記載の塗布装置であって、 前記膜厚制御では、 前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さと、前記塗布ヘッド又は前記パネルの移動速度とで、前記膜厚を制御する、 ことを特徴とする塗布装置。 【請求項10】(削除) 【請求項11】 請求項7記載の塗布装置であって、 前記膜厚制御では、 前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さと、 前記光硬化性樹脂の吐出液量、及び、前記塗布ヘッド又は前記パネルの移動速度、の少なくともいずれか1つとで、前記膜厚を制御する、 ことを特徴とする塗布装置。 【請求項12】 一のパネルと第二のパネルとを備える積層体の製造方法であって、 請求項1?3、5及び6のいずれか1項に記載の塗布方法により、前記第一のパネルの一方面に、液状の光硬化性樹脂を塗布する工程と、 光硬化性樹脂が塗布された前記第一のパネルを保持する保持工程と、 前記第二のパネルを前記第一のパネルの前記一方面に重ねる積層工程と、 前記第一のパネルと前記第二のパネルとの積層体に、厚み方向の押圧力を付与する押圧工程と、を備える、 ことを特徴とする製造方法。 【請求項13】 請求項12に記載の製造方法であって、 前記押圧工程では、 前記第一のパネル及び前記第二のパネルの一方にローラを当接し、前記積層体又は前記ローラの一方を移動させることで、前記積層体を厚み方向に押圧する、 ことを特徴とする製造方法。 【請求項14】 請求項12又は13に記載の製造方法であって、 前記積層体に紫外線を照射して前記光硬化性樹脂を硬化させる工程を更に備える、 ことを特徴とする製造方法。 【請求項15】 第一のパネルと第二のパネルとを備える積層体の製造方法であって、 所定の塗布方法により、前記第一のパネルの一方面に、液状の光硬化性樹脂を塗布する工程と、 光硬化性樹脂が塗布された前記第一のパネルを保持する保持工程と、 前記第二のパネルを前記第一のパネルの前記一方面に重ねる積層工程と、 前記第一のパネルと前記第二のパネルとの積層体に、厚み方向の押圧力を付与する押圧工程と、を備え、 前記所定の塗布方法は、前記第一のパネルの前記一方面に、液状で光透過性を有する光硬化性樹脂を塗布する塗布方法であって、 前記第一のパネルは、光透過性を有する本体と、前記本体の表面周縁に形成された遮光層と、を備え、 前記第一のパネルの前記一方面の周縁部には、前記遮光層が形成された第一の領域と前記遮光層が形成されていない第二の領域との境界部に段差が形成されており、 前記所定の塗布方法は、 光硬化性樹脂を吐出可能なスリット状のノズルを備えた塗布ヘッドが、前記第一のパネルの前記一方面上を相対的に移動するように、前記塗布ヘッド又は前記第一のパネルの一方を移動させる移動工程と、 前記移動工程中に、前記ノズルから前記光硬化性樹脂を前記第一のパネルの前記一方面に吐出する塗布工程と、 前記塗布工程中に、前記第一のパネル上の前記光硬化性樹脂の膜厚をコントロールユニットにて制御する制御工程と、を含み、 前記制御工程では、 前記第一の領域、前記第二の領域及び前記段差における前記光硬化性樹脂の表面全体が平坦となるよう、前記コントロールユニットは前記第一の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚を前記第二の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚よりも薄くなるように制御し、 前記第一のパネルが光透過性を有するカバーパネルであり、 前記第二のパネルが画像表示パネルであり、 前記積層体が画像表示装置であり、 前記保持工程では、表面に光硬化性樹脂が塗布された前記カバーパネルを、前記表面が上向きの姿勢で保持し、 前記積層工程では、前記カバーパネルが貼り合わされる面が下向きの姿勢で前記画像表示パネルをその上側から吸着する吸着ユニットで保持し、かつ、前記画像表示パネルを前記カバーパネル上に重ね、 前記押圧工程では、 前記カバーパネルをその下側からフリーローラで前記画像表示パネル側に当接し、前記フリーローラを移動させることで、前記画像表示装置を厚み方向に押圧する、 ことを特徴とする製造方法。 【請求項16】 第一のパネルと第二のパネルとを備える積層体の製造装置であって、 請求項7に記載の塗布装置と、 前記塗布装置により、一方面に光硬化性樹脂が塗布された前記第一のパネルを保持する保持ユニットと、 前記第二のパネルを前記第一のパネルの前記一方面に重ねる積層ユニットと、 前記第一のパネルと前記第二のパネルとの積層体を厚み方向に押圧する押圧ユニットと、を備える、 ことを特徴とする製造装置。」 第4 特許異議申立書に記載した申立理由の概要 平成31年4月8日に申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した理由の概要は次のとおりである。 1 申立理由1(特許法第36条第6項第1号:サポート要件) 本件特許の請求項1ないし16に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではないから特許法第36条第6項第1号の規定により特許を受けることができないものであり、その発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 2 申立理由2(特許法第29条の2:拡大先願) 本件特許の請求項1?16に係る発明は、その出願前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた特許出願の願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(甲第1号証)に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は、同法113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 3 申立理由3(特許法第29条第2項:進歩性) 本件特許の請求項1ないし16に係る発明は、下記の本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第2号証に記載された発明、甲第3号証?甲第6号証に記載の技術事項に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 4 証拠方法 甲第1号証:特開2014-134789号公報 甲第2号証:特開2014-81642号公報 甲第3号証:国際公開第2009/054168号 甲第4号証:特開2010-175919号公報 甲第5号証:特開平11-156271号公報 甲第6号証:特開2009-40617号公報 以後、甲第1号証から甲第6号証については、それぞれ「甲1」から「甲6」という。 第5 取消理由の概要 令和1年6月14日付けで通知した取消理由は、 「【理由1】(サポート要件)本件特許の請求項1ないし16についての特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 【理由2】(拡大先願)本件特許の請求項1?3、5?9、11?14及び16に係る発明は、その出願前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた下記の特許出願の願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 【理由3】(進歩性)本件特許の請求項1?3、5?9、11?14及び16に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、その発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 ・・・ 理由2(拡大先願) (1)先願 先願:特願2013-258803号(特開2014-134789号、甲1) 先願の出願日:平成25年12月16日 先願の優先日:平成24年12月14日 先願の公開日:平成26年 7月24日 先願に係る発明の発明者:小川康一、渡辺明彦、今野彰、遠藤貴、谷正之 先願の出願人:デクセリアルズ株式会社 ・・・ 理由3(進歩性) (1)刊行物 甲2?甲6」 なお、当審からの取消理由の理由1、2、3は、申立理由2、3について、請求項4、10、15に対して採用していない点を除き、特許異議申立書に記載の申立理由と同趣旨である。 第6 取消理由についての当審の判断 1 取消理由1(サポート要件)について 取消理由1は、本件発明1及び7は、「パネル表面の段差に起因する液膜表面の段差の発生を低減すること」(段落【0006】)を発明が解決しようとする課題としており、発明の詳細な説明の記載においては、請求項1及び7の記載と全く同じ記載は存在するものの(段落【0007】【0008】)、この部分は、請求項1及び7の記載と同様の記載があるにとどまるものであり、技術的な説明ではないから実質的な記載とはいえないし、発明の詳細な説明においての具体的な記載においては、遮光層が形成された領域の光硬化性樹脂の膜厚を遮光層が形成されていない領域の光硬化性樹脂の膜厚よりも薄くなるように光硬化樹脂の塗布量を調整して、遮光層が形成された領域と遮光層が形成されていない領域との段差における光硬化性樹脂の表面全体が平坦となるようにしたものが記載されているものの(段落【0059】?【0068】)、「前記第二の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚を前記第一の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚よりも薄くなるように制御する」ものは記載されていないし、そのようなものが、上記発明が解決しようとする課題を解決できないことは当業者において明らかであるというものであったが、取消理由の原因となった誤記が、本件訂正請求により正されたので、当該取消理由1は理由がない。 2 取消理由2(拡大先願)について (1) 先願の願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「先願明細書等」という。)の記載 職権で確認したところ、特許出願後補正がされずに公開された先願の公報である甲1には、以下の記載がある。 ア 「【課題を解決するための手段】 【0013】 上述した課題を解決するために、本発明に係る画像表示装置の製造方法は、画像表示部材と、周縁部に遮光層が形成されることにより該周縁部と主面部との間に段差部が形成された光透過性カバー部材とが、液状の光学樹脂組成物から形成された光透過性樹脂層を介し、上記光透過性カバー部材の上記遮光層形成面が上記画像表示部材側に配置されるように積層された画像表示装置の製造方法において、樹脂用ディスペンサーを上記光透過性カバー部材の上記遮光層形成面の表面の一端側から他端側に掛けて移動させ、液状の上記光学樹脂組成物を上記光透過性カバー部材の上記遮光層形成面の表面に塗布し、上記光透過性カバー部材の上記遮光層形成面の表面と、画像表示部材とを貼り合わせ、上記画像表示部材と上記光透過性カバー部材との間に挟持されている上記光学樹脂組成物を硬化させ、上記樹脂用ディスペンサーは、上記光透過性カバー部材の上記遮光層形成面の主面部上と上記遮光層上とで、光学的樹脂組成物の塗布量を変えるものである。」 イ 「【発明の効果】 【0016】 本発明によれば、樹脂用ディスペンサーは、光透過性カバー部材の上記遮光層形成面の主面部上と上記遮光層上とで、光学樹脂組成物の塗布量を変える。これにより、樹脂用ディスペンサー10は、遮光層3上と主面部4上とで同じ高さで塗布することができ、光透過性カバー部材6の長手方向に亘って平坦な塗布面を形成することができる。例えば、高い凸部が形成される場合は、遮光層上での移動速度を主面部上よりも速めることで、遮光層上での光学樹脂組成物の塗布量が主面部上よりも減少し、その結果、平坦に塗布することができる。」 ウ 「【0019】 本発明を適用して製造される画像表示装置1は、図1に示すように、画像表示部材2と、周縁部に遮光層3が形成されることにより該遮光層3と主面部4との間に段差部5が形成された光透過性カバー部材6とが、液状の光学樹脂組成物7から形成された光透過性樹脂層8を介して積層されている。」 エ 「【0041】 [第1の実施の形態] 次いで、上述した画像表示装置1の製造方法について説明する。第1の実施の形態に係る画像表示装置の製造方法は、図2に示すように、樹脂用ディスペンサー10を光透過性カバー部材6の遮光層形成面である表面6aの長手方向の一端側から他端側に掛けて移動させ、液状の光硬化性樹脂組成物7を光透過性カバー部材6の表面6aに塗布する際に、光透過性カバー部材6の表面6aの主面部4上と遮光層3上とで、移動速度を変化させるものである。 【0042】 [塗布工程] 光硬化性樹脂組成物7を光透過性カバー部材6の表面6aに塗布する樹脂用ディスペンサー10は、図3に示すように、光硬化性樹脂組成物7を貯留する貯留部11と、貯留部11の光硬化性樹脂組成物7を光透過性カバー部材6の表面6aに吐出する吐出口12とを有する。 【0043】 樹脂用ディスペンサー10は、吐出口12が光透過性カバー部材6の主面部4の幅よりも広い幅を有し、幅方向の両側に形成された各遮光層3,3と主面部4とを跨ぐ幅を有する。これにより、樹脂用ディスペンサー10は、図4に示すように、光透過性カバー部材6の幅方向の両側に形成された各遮光層3,3と主面部4とに跨って光硬化性樹脂組成物7を塗布するようになっている。 【0044】 また、樹脂用ディスペンサー10は、吐出口12が光硬化性樹脂組成物7の吐出方向Xに向かって同じ幅で形成されている。これにより、樹脂用ディスペンサー10は、吐出口12の全幅に亘って均一に光硬化性樹脂組成物7を吐出することができる。 【0045】 そして、樹脂用ディスペンサー10は、図2に示すように、吐出口12の幅方向を光透過性カバー部材6の幅方向と平行にし、光透過性カバー部材6の表面6aを長手方向の一端側から他端側に掛けて移動しながら、図示しないポンプによって液状の光硬化性樹脂組成物7を押し出し、遮光層3,3と主面部4とに跨って塗布していく。 【0046】 この塗布の際、樹脂用ディスペンサー10は、移動方向の中央部に形成された主面部4上と、移動方向の両端に形成された遮光層3上とで、移動速度を変化させる。これにより、樹脂用ディスペンサー10は、光透過性カバー部材6の長手方向に亘って、遮光層3上と主面部4上とで同じ高さで塗布することができ、遮光層3,3と主面部4とに亘って平坦な塗布面を形成することができる。」 オ 「【0049】 移動速度は、光硬化性樹脂組成物7の粘度や段差部5の高さ等に応じて、遮光層3,3と主面部4とに亘って平坦に塗布できる最適な速度を設定することができる。高い凸部が形成される場合は、より遮光層3上での移動速度を主面部4上よりも速めることで、遮光層3上での光硬化性樹脂組成物7の塗布量が主面部4上よりも減少し、その結果、平坦に塗布することができる。」 カ 「【0056】 また、上述した光硬化性樹脂組成物7の塗布工程では、樹脂用ディスペンサー10の移動速度を調整することにより平坦化したが、樹脂用ディスペンサー10を一定の速度で移動するとともに、ポンプを調整することで遮光層3上での吐出量を主面部4上での吐出量よりも減少させ、平坦化させてもよい。しかし、ポンプ調整による吐出量の制御は、移動速度の制御よりも複雑であり、塗布工程の簡便さや歩留まりの点で、樹脂用ディスペンサー10の移動速度を制御する工法の方が優れる。 【0057】 また、上述したように樹脂用ディスペンサー10を固定された光透過性カバー部材6に対して移動させる他にも、樹脂用ディスペンサー10を固定し、光透過性カバー部材6を上述のような速度制御によって移動させてもよい。」 キ 「【0064】 [貼り合わせ工程] 次に、図9に示すように、画像表示部材2に、光透過性カバー部材6をその仮硬化樹脂層13側から貼り合わせる。貼り合わせは、公知の圧着装置を用いて、10℃?80℃で加圧することにより行うことができる。 【0065】 [本硬化工程] 次に、図10に示すように、画像表示部材2と光透過性カバー部材6との間に挟持されている仮硬化樹脂層13に対し紫外線を照射して本硬化させる。さらに必要に応じて,光透過性カバー部材6の遮光層と画像表示部材2との間の樹脂層に紫外線を照射することにより、該樹脂層を本硬化させる。これにより、画像表示部材2と光透過性カバー部材6とを光透過性硬化樹脂層8を介して積層して画像表示装置1を得る。」 ク 「 」 (2) 先願明細書等に記載された発明 上記ク(図2、3)の記載から、樹脂用ディスペンサー10の吐出口12が、樹脂用ディスペンサー10の相対移動方向の長さに対して当該方向に直交する幅方向の長さが十分長いことが看取できるから、この吐出口12はスリット状であるといえる。 また、上記カ(段落【0056】)に、樹脂用ディスペンサー10の移動速度や光硬化性樹脂組成物7の吐出量の制御を行うことが明記されていることから、先願明細書等に記載された発明が、これらを制御するための制御ユニットを備えていることは、当該明細書等の記載から明らかな事項といえる。 さらに、上記エ(段落【0041】)及びカ(段落【0057】)等に、樹脂用ディスペンサー10又は光透過性カバー部材6を移動させることが明記されていることから、この甲1に記載された発明が、これらの移動を実現するための移動機構を備えていることは、当該明細書等の記載から明らかな事項といえる。 加えて、上記キ(段落【0064】、【0065】)等に、画像表示部材2と光透過性カバー部材6とを光学樹脂組成物7を用いて積層し貼り合わせることが明記されていることから、先願明細書等に記載された発明は、画像表示部材2と光透過性カバー部材6とを積層するための積層ユニット、及び積層した状態で貼り合わせる際等にこの光透過性カバー部材6を支持するための保持ユニットを備えているといえる。 そうすると、先願明細書等には、上記アないしクの記載から、次の発明(以下、「甲1先願発明A」という。)が記載されていると認める。 <甲1先願発明A> 「光透過性カバー部材6の表面に、液状で光透過性を有する光学樹脂組成物7を塗布する塗布方法であって、 光透過性カバー部材6は、光透過性を有し、その表面周縁に遮光層3を備え、 光透過性カバー部材6の表面の周縁部には、遮光層3が形成された領域と遮光層が形成されていない主面部4との境界部に段差部5が形成されており、 前記塗布方法は、光学樹脂組成物7を吐出可能なスリット状の吐出口12を備えた樹脂用ディスペンサー10が、光透過性カバー部材6の表面上を相対的に移動するように、樹脂用ディスペンサー10又は光透過性カバー部材6の一方を移動させる移動工程と、 前記移動工程中に、吐出口12から光学樹脂組成物7を光透過性カバー部材6の表面に吐出する塗布工程と、 前記塗布工程中に、光透過性カバー部材6上の光学樹脂組成物7の膜厚を制御ユニットにて制御する制御工程と、を含み、 前記制御工程では、遮光層3が形成された領域、主面部4及び段差部5における光学樹脂組成物7の表面全体が平坦となるよう、制御ユニットは遮光層3が形成された領域の光学樹脂組成物7の膜厚を主面部4の光学樹脂組成物7の膜厚よりも薄くなるように制御する、塗布方法。」 また、甲1先願発明Aの塗布方法をおこなう塗布装置として、次の発明(以下、「甲1先願発明B」という。)が記載されていると認める。 <甲1先願発明B> 「光透過性カバー部材6の表面に、液状で光透過性を有する光学樹脂組成物7を塗布する塗布装置であって、 光学樹脂組成物7を吐出可能なスリット状の吐出口12を備えた樹脂用ディスペンサー10と、 光透過性カバー部材6の表面上を相対的に移動するように、樹脂用デイスペンサー10又は光透過性カバー部材6を移動させる移動機構と、 樹脂用ディスペンサー10と前記移動機構とを制御する制御ユニットと、を備え、 光透過性カバー部材6は光透過性を有し、その表面周縁に遮光層3を備え、 光透過性カバー部材6の表面の周縁部には、遮光層3が形成された領域と遮光層3が形成されていない主面部4との境界部に段差部5が形成されており、 前記制御ユニットは、前記移動機構により樹脂用ディスペンサー10及び光透過性カバー部材6の少なくとも一方を移動させる移動制御と、 前記移動制御中に、吐出口12から光学樹脂組成物7を光透過性カバ一部材6の表面に吐出する塗布制御と、 前記塗布制御中に、光透過性カバー部材6上の光学樹脂組成物7の膜厚を制御する膜厚制御と、を実行し、 前記膜厚制御では、遮光層3が形成された領域、主面部4及び段差部5における光学樹脂組成物7の表面全体が平坦となるよう、遮光層3が形成された領域の光学樹脂組成物7の膜厚を主面部4の光学樹脂組成物7の膜厚よりも薄くなるように制御する、塗布装置。」 (3) 本件発明1と甲1先願発明Aとの対比・判断 本件発明1と甲1先願発明Aとを対比する。 甲1先願発明Aの「遮光層3」を有する「光透過性カバー部材6」は、本件発明1における「パネル」に相当する。 また、甲1先願発明Aの「光学樹脂組成物7」、「光透過性カバー部材6」、「遮光層3」、「主面部4」、「段差部5」は、それぞれ、本件発明1における「光硬化性樹脂」、「本体」、「遮光層」、「第二の領域」、「段差」に相当する。 加えて、甲1先願発明Aの「吐出口12」、「樹脂ディスペンサー10」は、それぞれ、本件発明1における「ノズル」、「塗布ヘッド」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲1先願発明Aとの一致点及び相違点はそれぞれ次のとおりである。 ・ 一致点 「パネルの表面に、液状で光透過性を有する光硬化性樹脂を塗布する塗布方法であって、 前記パネルは、光透過性を有する本体と、前記本体の表面周縁に形成された遮光層と、を備え、 前記パネルの前記表面の周縁部には、前記遮光層が形成された第一の領域と前記遮光層が形成されていない第二の領域との境界部に段差が形成されており、 前記塗布方法は、 光硬化性樹脂を吐出可能なスリット状のノズルを備えた塗布ヘッドが、前記パネルの前記表面上を相対的に移動するように、前記塗布ヘッド又は前記パネルの一方を移動させる移動工程と、 前記移動工程中に、前記ノズルから前記光硬化性樹脂を前記パネルの前記表面に吐出する塗布工程と、 前記塗布工程中に、前記パネル上の前記光硬化性樹脂の膜厚をコントロールユニットにて制御する制御工程と、を含み、 前記制御工程では、 前記第一の領域、前記第二の領域及び前記段差における前記光硬化性樹脂の表面全体が平坦となるよう、前記コントロールユニットは前記第一の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚を前記第二の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚よりも薄くなるように制御する塗布方法。」 ・ 相違点 <相違点1> 制御工程に関し、本件発明1は「少なくとも前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さで、前記膜厚を制御する」と特定するのに対し、甲1先願発明Aは、この点を特定しない点。 以下、相違点1について検討する。 先願明細書等には、膜厚制御についての具体的な方法として、樹脂ディスペンサー又は光透過性カバー部材の移動速度を調整することにより行うこと、樹脂ディスペンサーは一定の速度で移動するとともに、ポンプを調整することで行うこと(段落【0056】)は記載されているが、ノズルの高さで膜厚を制御することについての記載ないし示唆はない。 そして、当業者において、甲1先願発明Aの膜厚制御を行う場合に、ノズルの高さで膜厚制御をすることが自明な事項ということもできないし、ノズル高さで膜厚制御することが、課題解決のための具体的手段における微差であるともいえない。 そうすると、本件発明1と甲1先願発明Aとは同一ということはできない。 (4) 本件発明2ないし3、5ないし6、12ないし14について 本件発明2ないし3、5ないし6、12ないし14は、本件発明1を直接又は間接的に引用し、それぞれの請求項に記載の事項で本件発明1を更に限定する発明であるから、これらの発明と甲1先願発明Aとを対比すると、少なくとも上記(3)における相違点1で相違するから、本件発明2ないし3、5ないし6、12ないし14は、甲1先願発明Aと同一ということはできない。 (5) 本件発明7と甲1先願発明Bとの対比・判断 本件発明7と甲1先願発明Bとを対比すると、上記(3)と同様であって、本件発明1と甲1先願発明Bとの一致点及び相違点はそれぞれ次のとおりである。 ・ 一致点 「パネルの表面に、液状で光透過性を有する光硬化性樹脂を塗布する塗布装置であって、 光硬化性樹脂を吐出可能なスリット状のノズルを備えた塗布ヘッドと、 前記パネルの前記表面上を相対的に移動するように、前記塗布ヘッド及び前記パネルの少なくとも一方を移動させる移動機構と、 前記塗布ヘッドと前記移動機構とを制御する制御ユニットと、を備え、 前記パネルは、光透過性を有する本体と、前記本体の表面周縁に形成された遮光層と、を備え、 前記パネルの前記表面の周縁部には、前記遮光層が形成された第一の領域と前記遮光層が形成されていない第二の領域との境界部に段差が形成されており、 前記制御ユニットは、 前記移動機構により前記塗布ヘッド及び前記パネルの少なくとも一方を移動させる移動制御と、 前記移動制御中に、前記ノズルから前記光硬化性樹脂を前記パネルの前記表面に吐出する塗布制御と、 前記塗布制御中に、前記パネル上の前記光硬化性樹脂の膜厚を制御する膜厚制御と、を実行し、 前記膜厚制御では、 前記第一の領域、前記第二の領域及び前記段差における前記光硬化性樹脂の表面全体が平坦となるよう、前記コントロールユニットは前記第一の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚を前記第二の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚よりも薄くなるように制御する塗布装置。」 ・相違点 <相違点2> 膜厚制御に関し、本件発明7は「少なくとも前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さで、前記膜厚を制御する」と特定するのに対し、甲1先願発明Bは、この点を特定しない点。 以下、相違点2について検討すると、上記(3)における相違点1と同様であり、本件発明7と甲1先願発明Bとは同一ということはできない。 (6) 本件発明8ないし9、11及び16について 本件発明8ないし9、11及び16は、本件発明7を直接又は間接的に引用し、それぞれの請求項に記載の事項で本件発明7を更に限定する発明であるから、これらの発明と甲1先願発明Bとを対比すると、少なくとも上記(5)における相違点2で相違するから、本件発明8ないし9、11及び16は、甲1先願発明Bと同一ということはできない。 (7) まとめ 以上のとおり、本件特許の請求項1?3、5?9、11?14、16に係る発明は、先願明細書等に記載された発明と同一ではないから、当審からの取消理由2は、理由がない。 3 取消理由3(進歩性)について (1) 甲2の記載 甲2には、以下の記載がある。 ア 「【請求項1】 画像表示部材と、周縁部に遮光層が形成された光透過性カバー部材とが、液状の光硬化性樹脂組成物から形成された光透過性硬化樹脂層を介し、光透過性カバー部材の遮光層形成面が画像表示部材側に配置されるように積層された画像表示装置の製造方法において、 以下の工程(A)?(D): <工程(A)> 液状の光硬化性樹脂組成物を、光透過性カバー部材の遮光層形成側表面又は画像表示部材の表面に、遮光層と光透過性カバー部材の遮光層形成側表面とで形成される段差がキャンセルされるように、遮光層の厚さより厚く塗布する工程; <工程(B)> 塗布された光硬化性樹脂組成物に対し紫外線を照射して仮硬化させることにより仮硬化樹脂層を形成する工程; <工程(C)> 画像表示部材に、遮光層と仮硬化樹脂層とが内側になるように光透過性カバー部材を貼り合わせる工程; <工程(D)> 画像表示部材と光透過性カバー部材との間に挟持されている仮硬化樹脂層に対し紫外線を照射して本硬化させることにより、画像表示部材と光透過性カバー部材とを光透過性硬化樹脂層を介して積層して画像表示装置を得る工程 を有する製造方法。」 イ 「【0007】 本発明の目的は、以上の従来の技術の問題点を解決することであり、画像表示部材とその表面側に配される光透過性カバー部材とを光硬化性樹脂組成物の硬化樹脂層を介して積層して画像表示装置を製造する際に、熱重合プロセスを利用することなく、遮光層と画像表示部材との間の光硬化性樹脂組成物を、そこから排除されることなく十分に光硬化させ且つ遮光層と光透過性カバー部材表面との間の段差をキャンセルできるようにすると共に、光重合プロセスだけで画像表示装置を製造できるようにすることである。」 ウ 「【0017】 <工程(A)(塗布工程)> まず、図1Aに示すように、片面の周縁部に形成された遮光層1を有する光透過性カバー部材2を用意し、図1Bに示すように、光透過性カバー部材2の表面2aに、液状の光硬化性樹脂組成物3を、遮光層1と光透過性カバー部材2の遮光層形成側表面2aとで形成される段差4がキャンセルされるように、遮光層1の厚さより厚く塗布する。具体的には、遮光層1の表面も含め、光透過性カバー部材2の遮光層形成側表面2aの全面に光硬化性樹脂組成物3を平坦になるように塗布し、段差が生じないようにする。従って、光硬化性樹脂組成物3を、遮光層1の厚さの好ましくは1.2?50倍、より好ましくは2?30倍の厚さで塗布する。」 エ 「【0041】 <工程(C)(貼り合わせ工程)> 次に、図1Eに示すように、画像表示部材6に、光透過性カバー部材2をその仮硬化樹脂層5側から貼り合わせる。貼り合わせは、公知の圧着装置を用いて、10℃?80℃で加圧することにより行うことができる。 【0042】 <工程(D)(本硬化工程)> 次に、図1Fに示すように、画像表示部材6と光透過性カバー部材2との間に挟持されている仮硬化樹脂層5に対し紫外線を照射して本硬化させる。さらに必要に応じて、光透過性カバー部材2の遮光層と画像表示部材6との間の樹脂層に紫外線を照射することにより、該樹脂層を本硬化させる。これにより、画像表示部材6と光透過性カバー部材2とを光透過性硬化樹脂層7を介して積層して画像表示装置10(図1G)を得る。」 オ 「【0044】 また、本工程において本硬化させるのは、仮硬化樹脂層5を十分に硬化させて、画像表示部材6と光透過性カバー部材2とを接着し積層するためである。このような本硬化のレベルは、光透過性硬化樹脂層7の硬化率(ゲル分率)が好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上となるようなレベルである。」 カ 「【0056】 実施例1 (工程(A)(塗布工程)) まず、45(w)×80(l)×0.4(t)mmのサイズのガラス板を用意し、このガラス板の周縁部全域に、乾燥厚で40μmとなるように4mm幅の遮光層を、熱硬化タイプの黒色インク(MRXインキ、帝国インキ製造社)を用いて、スクリーン印刷法により塗布し、乾燥させることにより、遮光層付きガラス板を用意した。 ・・・ 【0058】 次に、この光硬化性樹脂組成物を、樹脂用ディスペンサーを用いて遮光層付きガラス板の遮光層形成面の全面に吐出し、平均200μmの光硬化性樹脂組成物膜を形成した。この光硬化性樹脂組成物膜は、図1(B)のように遮光層のほぼ全域に跨るように形成されており、40μm厚mの遮光層よりも160μmほど厚く形成されていた。」 キ 「【0063】 (工程(C)(貼り合わせ工程)) 次に、40(W)×70(L)mmのサイズの液晶表示素子の偏光板が積層された面に、工程(B)で得たガラス板をその仮硬化樹脂層側が偏光板側となるように載置し、ガラス板側からゴムローラで加圧して、ガラス板を貼り付けた。貼り付けられた状態でガラス板側から液晶表示素子を目視観察した場合、遮光層の周囲に気泡は確認されなかった。 【0064】 (工程(D)(本硬化工程)) 次に、この液晶表示素子に対し、ガラス板側から、紫外線照射装置(LC-8、浜松ホトニクス製)を使って紫外線(50mW/cm2)を60秒照射することにより仮硬化樹脂層を完全に硬化させ、光透過性硬化樹脂層を形成した。光透過性硬化樹脂層の硬化率は97%であった。これにより、液晶表示素子に、光透過性カバー部材としてのガラス板が光透過性硬化樹脂層を介して積層された液晶表示装置が得られた。」 ク 「 」 (2) 甲2に記載された発明 甲2には、上記(1)アないしクの記載から、特許請求の範囲の請求項1における<工程A)>に関わる塗布方法として、次の塗布方法の発明(以下、「甲2発明A」という。)及び塗布装置の発明(以下、「甲2発明B」という。)が記載されていると認める。 <甲2発明A> 「画像表示部材と、周縁部に遮光層が形成された光透過性カバー部材とが、液状の光硬化性樹脂組成物から形成された光透過性硬化樹脂層を介し、光透過性カバー部材の遮光層形成面が画像表示部材側に配置されるように積層された画像表示装置を製造するための塗布方法であって、 液状の光硬化性樹脂組成物を、光透過性カバー部材の遮光層形成側表面又は画像表示部材の表面に、遮光層と光透過性カバー部材の遮光層形成側表面とで形成される段差がキャンセルされるように、遮光層の厚さより厚く塗布する工程を有する、 塗布方法。」 <甲2発明B> 「液状の光硬化性樹脂組成物を、光透過性カバー部材の遮光層形成側表面又は画像表示部材の表面に、遮光層と光透過性カバー部材の遮光層形成側表面とで形成される段差がキャンセルされるように、遮光層の厚さより厚く塗布するため、樹脂用ディスペンサーを用いて遮光層付きガラス板の遮光層形成面の全面に吐出する塗布装置。」 (3) 甲3ないし甲6に記載の事項 ア 甲3の記載事項 甲3には、以下の記載がある。 「本実施形態の表示装置100は、図1(a)に示すように、液晶表示パネル10と、液晶表示パネル10の表示面側に配置されたカバー基板30と、液晶表示パネル10及びカバー基板30間に設けられた接着剤層21と、液晶表示パネル10の後方側に配置されたバックライトユニット(図示せず)と、このような構成部材を保持する筐体(図示せず)とを備える液晶表示装置である。すなわち、表示装置100は、液晶表示パネル10とカバー基板30とが接着剤層21により貼り合わされた、すなわち固着(固定)された構造を有する。」(段落【0037】) 「また、カバー基板30は、少なくとも表示領域に対応する領域が透明である。より具体的には、カバー基板30は、図1に示すように、表示領域に対応して形成された透光部分である窓部32と、窓部の周囲に設けられた遮光部分である黒縁部31とを有する。これにより、表示装置100のデザイン性をより向上することができるとともに、液晶表示パネル10の隠されるべき部分をカバー基板30により効果的に視認されなくすることができる。」(段落【0044】) 「接着剤層21の材料である接着剤は、紫外線の照射により硬化が開始される紫外線硬化型接着剤でもある。」(段落【0048】) 「カチオン重合型樹脂のような樹脂は、通常、空気に比べて高い光透過率を有する。」(段落【0049】) 「次に、窓部32及び黒縁部31を有するカバー基板30を準備する。なお、カバー基板30の材質としてはある程度の強度を有し、かつ透明であり得るものであれば特に限定されないが、ガラス、樹脂等が好適である。黒縁部31の形成方法としては特に限定されないが、カバー基板30の接着剤層21側の主面上に黒色インクを印刷する方法が好適である。」(段落【0055】) 「次に、図4(a)に示すように、スリットコーター等のノズル40を用いて、厚さ50?200μm程度の接着剤20aを液晶表示パネル10の偏光板13aに塗布する。なお、接着剤20aは、カバー基板30に塗布してもよい」(段落【0056】) イ 甲4の記載事項 甲4には、以下の記載がある。 「本発明のスピンレスコート装置は、図示しない装置ベースの上に、ガラス基板1を載置する石常盤からなる基板ステージ2と、フォトレジスト等の塗布液5を吐出する少なくとも1台以上のスリットノズル3と、このスリットノズル3を基板ステージ上に支持するとともに基板ステージに沿って移動させる門型のガントリ4と、スリットノズル3に接続して塗布液充填槽50から塗布液を供給する送液ポンプ6を有する塗料供給装置60を基本として構成され、ガラス基板の面内の任意の位置で、複数の狙い膜厚に対応する塗布膜厚への膜厚変更制御機構を備えている。」(段落【0018】) 「図3、図4、図5に示す塗布動作プログラムを参照して、上記のように構成された本発明のスピンレスコート装置の動作を説明する。図3、図4、図5は、それぞれ、『ガラス基板に対する相対的なノズルの走行速度を変える』、『送液ポンプの送液量を変える』、および『上記2つを組み合わせて実施する』の3つの手法を実施した場合に得られる膜厚の変化量を表す。」(段落【0026】) ウ 甲5の記載事項 甲5には、以下の記載がある。 「スロット型の塗布ヘッド部(A)に、被塗布物(3)の表面の高さの変動にあわせて塗布ヘッド部高さを追従させるためのヘッド高さ追従機構(B)を具備することで、そりや厚み変動による被塗布物(3)の表面の高さに変動がある場合でも、被塗布物(3)と塗布ヘッド部(A)のスロット部(As)との隙間を常に一定に保持することができ、結果として被塗布物(3)に均一かつ平滑な塗膜を形成することができる。」(段落【0014】) エ 甲6の記載事項 甲6には、以下の記載がある。 「本発明における板ガラスの貼合方法は、調整テーブル2に設けた複数組の吸着体3でベースガラスGを吸着固定し、固定台1の外側方の待機位置において貼合対象Fを可動テーブル4に吸着固定する工程と、可動テーブル4を待機位置から貼合位置へ変位操作して、貼合対象FをベースガラスGに対して上下隙間Eを介して正対させる工程と、固定台1に設けたずれ検知装置20で貼合対象FとベースガラスGの位置ずれを光学的に検知し、ずれ検知装置20からの出力信号に応じて調整テーブル2の位置を位置調整装置6で調整操作して、貼合対象FとベースガラスGを位置決めする工程と、接着ローラー5を待機位置から押圧位置へ移動させてベースガラスGの接着始端を貼合対象Fに押し付け、接着ローラー5を接着始端から接着終端へ向かって移動させて、ベースガラスGを貼合対象Fに押圧接着する工程とからなり、接着ローラー5を接着始端から接着終端へ向かって移動する過程で、接着ローラー5の接着移動に先行して各吸着体3を吸着位置から退避位置へ退避させながら、ベースガラスGを貼合対象Fに押圧接着する」(段落【0009】) 「図1および図2において貼合装置は、横長の直方体状に組まれた枠体からなる固定台1と、固定台1で位置調整可能に支持される調整テーブル2と、調整テーブル2上に設けられる3組の吸着体3と、貼合対象Fを吸着固定する可動テーブル4と、吸着体3で支持されたベースガラスGを貼合対象Fに押し付け操作する接着ローラー5などで構成してある。貼合対象Fの片面には、予め接着材層8が形成してあり、その外面が剥離紙で覆ってある。」(段落【0018】) 「位置決めが終了したのち、図8に示すように接着ローラー5をベースガラスGの下方の待機位置から押圧位置へ上昇移動させて、ベースガラスGの接着始端を貼合対象Fに押し付け、その状態のままで接着ローラー5を接着始端から接着終端へ向かって移動させて、ベースガラスGを貼合対象Fに押圧接着する。このとき、図10に示すように接着ローラー5の押圧接着動作に先行して各吸着体3を吸着位置から退避位置へ退避させながら、ベースガラスGを貼合対象に押圧接着する。」(段落【0030】) (4) 本件発明1について 本件発明1と甲2発明Aとを対比する。 甲2発明Aの「周縁部に遮光層が形成された光透過性カバー部材」は、本件発明1における「パネル」に相当する。 また、甲2発明Aの「光硬化性樹脂組成物」、「光透過性カバー部材」は、それぞれ、本件発明1における「光硬化性樹脂」、「本体」に相当し、当該「光硬化性樹脂組成物」は、硬化されて光透過性硬化樹脂層を形成するものであるから、液状で光透過性を有するといえる。 甲2発明Aの「光透過性カバー部材」には、「遮光層」によって、「パネルの前記表面の周縁部には、前記遮光層が形成された第一の領域と前記遮光層が形成されていない第二の領域との境界部に段差」が形成されているといえる。 加えて、甲2発明Aの「樹脂ディスペンサー」は、本件発明1における「ノズルを備えた塗布ヘッド」に相当する。また、甲2発明Aでは、「樹脂ディスペンサー」(塗布ヘッド)を利用して、「遮光層付きガラス板の遮光層形成面の全面に吐出し、平均200μmの光硬化性樹脂組成物膜を形成した。この光硬化性樹脂組成物膜は、図1(B)のように遮光層のほぼ全域に跨るように形成されており、40μm厚mの遮光層よりも160μmほど厚く形成されていた。」(段落【0058】)のように塗布されるのであるから、当該甲2発明Aの「樹脂ディスペンサー」も、本件発明1と同様に「光硬化性樹脂を吐出可能なノズルを備えた塗布ヘッドが、前記パネルの前記表面上を相対的に移動するように、前記塗布ヘッド又は前記パネルの一方を移動させる移動工程と、前記移動工程中に、前記ノズルから前記光硬化性樹脂を前記パネルの前記表面に吐出する塗布工程と、前記塗布工程中に、前記パネル上の前記光硬化性樹脂の膜厚をコントロールユニットにて制御する制御工程」を有するといえる。 また、甲2発明Aは、「遮光層と光透過性カバー部材の遮光層形成側表面とで形成される段差がキャンセルされるように」「塗布する」のであるから、本件発明1と同様に「前記第一の領域、前記第二の領域及び前記段差における前記光硬化性樹脂の表面全体が平坦となるよう」「制御する」ものといえる。 そうすると、本件発明1と甲2発明Aとの一致点及び相違点はそれぞれ次のとおりである。 ・ 一致点 「パネルの表面に、液状で光透過性を有する光硬化性樹脂を塗布する塗布方法であって、 前記パネルは、光透過性を有する本体と、前記本体の表面周縁に形成された遮光層と、を備え、 前記パネルの前記表面の周縁部には、前記遮光層が形成された第一の領域と前記遮光層が形成されていない第二の領域との境界部に段差が形成されており、 前記塗布方法は、 光硬化性樹脂を吐出可能なノズルを備えた塗布ヘッドが、前記パネルの前記表面上を相対的に移動するように、前記塗布ヘッド又は前記パネルの一方を移動させる移動工程と、 前記移動工程中に、前記ノズルから前記光硬化性樹脂を前記パネルの前記表面に吐出する塗布工程と、 前記塗布工程中に、前記パネル上の前記光硬化性樹脂の膜厚をコントロールユニットにて制御する制御工程と、を含み、 前記制御工程では、 前記第一の領域、前記第二の領域及び前記段差における前記光硬化性樹脂の表面全体が平坦となるよう、前記コントロールユニットは制御する、 塗布方法。」 ・相違点 <相違点A> 塗布ヘッドのノズルに関し、本件発明1は「スリット状の」と特定するのに対し、甲2発明Aは、この点を特定しない点。 <相違点B> 光硬化性樹脂の表面全体が平坦となるよう塗布する制御工程に関し、本件発明1は、「前記第一の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚を前記第二の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚よりも薄くなるように」と特定するのに対して、甲2発明Aは、遮光層の厚さより厚く塗布するとの特定である点。 <相違点C> 制御工程に関し、本件発明1は「少なくとも前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さで、前記膜厚を制御する」と特定するのに対し、甲2発明Aは、この点を特定しない点。 事案に鑑み、相違点Cから検討する。 甲2には、塗布工程における膜厚制御については、具体的な記載は存在しない。 そして、申立人の提示する甲3ないし甲6においても、塗布工程における膜厚制御を、パネルの表面からのノズル高さで行うものは提示されていない。 また、甲2発明Aの「液状の光硬化性樹脂組成物を、光透過性カバー部材の遮光層形成側表面又は画像表示部材の表面に、遮光層と光透過性カバー部材の遮光層形成側表面とで形成される段差がキャンセルされるように、遮光層の厚さより厚く塗布する」ことの具体的な方法として、当業者において、塗布工程における膜厚制御を、パネルの表面からのノズル高さで行うことが自明であったということはできない。 そうすると、相違点Cは、当業者においても想到容易でない。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明Aに基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (5) 本件発明2ないし3、5ないし6、12ないし14について 本件発明2ないし3、5ないし6、12ないし14は、本件発明1を直接又は間接的に引用し、それぞれの請求項に記載の事項で本件発明1を更に限定する発明であるから、これらの発明と甲2発明Aとを対比すると、少なくとも上記(4)における相違点Cで相違し、当該相違点Cは、上記(4)のとおり想到容易でないから、本件発明2ないし3、5ないし6、12ないし14は、甲2発明Aに基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (6) 本件発明7について 本件発明7と甲2発明Bとを対比する。 上記(4)における本件発明1と甲2発明Aとの対比と同様であって、甲2発明Bの装置も、光硬化性樹脂を吐出可能なノズルを備えた塗布ヘッドと、パネルの前記表面上を相対的に移動するように、前記塗布ヘッド及び前記パネルの少なくとも一方を移動させる移動機構と、前記塗布ヘッドと前記移動機構とを制御する制御ユニットとを備えているといえる。 また、甲2発明Bにおいても、「光透過性カバー部材」には、「遮光層」によって、「パネルの前記表面の周縁部には、前記遮光層が形成された第一の領域と前記遮光層が形成されていない第二の領域との境界部に段差」が形成されているといえる。 さらに、上記(4)での検討と同様に、甲2発明Bは、制御ユニットを有することは明らかであり、該制御ユニットは、移動機構により前記塗布ヘッド及び前記パネルの少なくとも一方を移動させる移動制御と、移動制御中に、前記ノズルから前記光硬化性樹脂を前記パネルの前記表面に吐出する塗布制御と、塗布制御中に、前記パネル上の前記光硬化性樹脂の膜厚を制御する膜厚制御とを実行するものであって、表面の周縁部の前記遮光層が形成された第一の領域と前記遮光層が形成されていない第二の領域及び前記段差における前記光硬化性樹脂の表面全体が平坦となるよう、制御するものといえる。 そうすると、本件発明7と甲2発明Bとの一致点及び相違点はそれぞれ次のとおりである。 ・ 一致点 「パネルの表面に、液状で光透過性を有する光硬化性樹脂を塗布する塗布装置であって、 光硬化性樹脂を吐出可能なノズルを備えた塗布ヘッドと、 前記パネルの前記表面上を相対的に移動するように、前記塗布ヘッド及び前記パネルの少なくとも一方を移動させる移動機構と、 前記塗布ヘッドと前記移動機構とを制御する制御ユニットと、を備え、 前記パネルは、光透過性を有する本体と、前記本体の表面周縁に形成された遮光層と、を備え、 前記パネルの前記表面の周縁部には、前記遮光層が形成された第一の領域と前記遮光層が形成されていない第二の領域との境界部に段差が形成されており、 前記制御ユニットは、 前記移動機構により前記塗布ヘッド及び前記パネルの少なくとも一方を移動させる移動制御と、 前記移動制御中に、前記ノズルから前記光硬化性樹脂を前記パネルの前記表面に吐出する塗布制御と、 前記塗布制御中に、前記パネル上の前記光硬化性樹脂の膜厚を制御する膜厚制御と、を実行し、 前記膜厚制御では、 前記第一の領域、前記第二の領域及び前記段差における前記光硬化性樹脂の表面全体が平坦となるよう、制御する、 塗布装置。」 ・相違点 <相違点D> 塗布ヘッドのノズルに関し、本件発明7は「スリット状の」と特定するのに対し、甲2発明Bは、この点を特定しない点。 <相違点E> 制御ユニットが行う光硬化性樹脂の表面全体が平坦となるよう塗布する制御に関し、本件発明7は、「前記第一の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚を前記第二の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚よりも薄くなるように」と特定するのに対して、甲2発明Bは、遮光層の厚さより厚く塗布するとの特定である点。 <相違点F> 塗布制御における膜厚制御に関し、本件発明1は「少なくとも前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さで、前記膜厚を制御する」と特定するのに対し、甲2発明Bは、この点を特定しない点。 事案に鑑み、相違点Fから検討する。 甲2には、塗布制御における膜厚制御については、具体的な記載は存在しない。 そして、申立人の提示する甲3ないし甲6においても、塗布制御における膜厚制御を、パネルの表面からのノズル高さで行うものは提示されていない。 また、甲2発明Bの「液状の光硬化性樹脂組成物を、光透過性カバー部材の遮光層形成側表面又は画像表示部材の表面に、遮光層と光透過性カバー部材の遮光層形成側表面とで形成される段差がキャンセルされるように、遮光層の厚さより厚く塗布する」ことの具体的な方法として、当業者において、塗布制御における膜厚の制御をパネルの表面からのノズル高さで行うことが自明であったということはできない。 そうすると、相違点Fは、当業者においても想到容易でない。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明7は、甲2発明Bに基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (7) 本件発明8ないし9、11及び16について 本件発明8ないし9、11及び16は、本件発明7を直接又は間接的に引用し、それぞれの請求項に記載の事項で本件発明7を更に限定する発明であるから、これらの発明と甲2発明Bとを対比すると、少なくとも上記(6)における相違点Fで相違し、その判断は上記(6)のとおりであるから、本件発明8ないし9、11及び16は、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (8) まとめ 以上のとおり、本件特許の請求項1ないし3、5ないし9、11ないし14、16に係る発明は、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、当審からの取消理由3は、理由がない。 第7 取消理由で採用しなかった特許異議申立書に記載の申立理由について 当審からの取消理由で採用しなかった特許異議申立書に記載の申立理由は、訂正前の請求項4、10、15に対する申立理由2(拡大先願)と訂正前の請求項4、10、15に対する申立理由3(進歩性)であり、本件訂正請求によって、訂正前の請求項4及び10は削除されているので、本件発明15に対する申立理由2及び3について判断を示す。 1 本件発明15に対する申立理由2について (1) 先願明細書等に記載の発明 上記第6 2(1)の記載から、次の発明(以下、「甲1先願発明C」という。)が記載されていると認める。 <甲1先願発明C> 「画像表示部材2と光透過性カバー部材6を備える画像表示装置の製造方法であって、 光透過性カバー部材6は、光透過性を有し、その表面周縁に遮光層3を備え、 光透過性カバー部材6の表面の周縁部には、遮光層3が形成された領域と遮光層が形成されていない主面部4との境界部に段差部5が形成されており、 光透過性カバー部材6の表面に、液状で光透過性を有する光硬化性樹脂を塗布する工程と、 画像表示部材に、光透過性カバー部材を仮硬化樹脂層側から圧着装置を用いて貼り合わせる工程とを有し、 前記塗布方法は、光学樹脂組成物7を吐出可能なスリット状の吐出口12を備えた樹脂用ディスペンサー10が、光透過性カバー部材6の表面上を相対的に移動するように、樹脂用ディスペンサー10又は光透過性カバー部材6の一方を移動させる移動工程と、 前記移動工程中に、吐出口12から光学樹脂組成物7を光透過性カバー部材6の表面に吐出する塗布工程と、 前記塗布工程中に、光透過性カバー部材6上の光学樹脂組成物7の膜厚を制御ユニットにて制御する制御工程と、を含み、 前記制御工程では、遮光層3が形成された領域、主面部4及び段差部5における光学樹脂組成物7の表面全体が平坦となるよう、制御ユニットは遮光層3が形成された領域の光学樹脂組成物7の膜厚を主面部4の光学樹脂組成物7の膜厚よりも薄くなるように制御する塗布方法である、 画像表示装置の製造方法。」 (2) 本件発明15と甲1先願発明Cとの対比・判断 本件発明15と甲1先願発明Cとを対比すると、上記第6 2(3)に記載に加えて、次のことがいえる。 甲1先願発明Cの「画像表示装置2」、「光透過性カバ-部材6」、「画像表示装置」は、それぞれ、本件発明15の「第二のパネル」、「第一のパネル」、「積層体」にも相当する。 甲1先願発明Cにおける「画像表示部材に、光透過性カバー部材を仮硬化樹脂層側から圧着装置を用いて貼り合わせる工程」において、光学樹脂組成物が塗布された光透過性カバー部材6を保持する工程が存在すること、及び、厚み方向に押圧力を付与する押圧工程が存在することは当業者において明らかである。 そうすると、本件発明15と甲1先願発明Cとの一致点と相違点はそれぞれ次のとおりである。 ・ 一致点 「第一のパネルと第二のパネルとを備える積層体の製造方法であって、 所定の塗布方法により、前記第一のパネルの一方面に、液状の光硬化性樹脂を塗布する工程と、 光硬化性樹脂が塗布された前記第一のパネルを保持する保持工程と、 前記第二のパネルを前記第一のパネルの前記一方面に重ねる積層工程と、 前記第一のパネルと前記第二のパネルとの積層体に、厚み方向の押圧力を付与する押圧工程と、を備え、 前記所定の塗布方法は、前記第一のパネルの前記一方面に、液状で光透過性を有する光硬化性樹脂を塗布する塗布方法であって、 前記第一のパネルは、光透過性を有する本体と、前記本体の表面周縁に形成された遮光層と、を備え、 前記第一のパネルの前記一方面の周縁部には、前記遮光層が形成された第一の領域と前記遮光層が形成されていない第二の領域との境界部に段差が形成されており、 前記所定の塗布方法は、 光硬化性樹脂を吐出可能なスリット状のノズルを備えた塗布ヘッドが、前記第一のパネルの前記一方面上を相対的に移動するように、前記塗布ヘッド又は前記第一のパネルの一方を移動させる移動工程と、 前記移動工程中に、前記ノズルから前記光硬化性樹脂を前記第一のパネルの前記一方面に吐出する塗布工程と、 前記塗布工程中に、前記第一のパネル上の前記光硬化性樹脂の膜厚をコントロールユニットにて制御する制御工程と、を含み、 前記制御工程では、 前記第一の領域、前記第二の領域及び前記段差における前記光硬化性樹脂の表面全体が平坦となるよう、前記コントロールユニットは前記第一の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚を前記第二の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚よりも薄くなるように制御し、 前記第一のパネルが光透過性を有するカバーパネルであり、 前記第二のパネルが画像表示パネルである、 前記積層体が画像表示装置である、 積層体の製造方法。」 ・ 相違点 <相違点3> 本件発明15は、パネルの保持工程、積層工程及び押圧工程に関し、「前記保持工程では、表面に光硬化性樹脂が塗布された前記カバーパネルを、前記表面が上向きの姿勢で保持し、前記積層工程では、前記カバーパネルが貼り合わされる面が下向きの姿勢で前記画像表示パネルをその上側から吸着する吸着ユニットで保持し、かつ、前記画像表示パネルを前記カバーパネル上に重ね、前記押圧工程では、前記カバーパネルをその下側からフリーローラで前記画像表示パネル側に当接し、前記フリーローラを移動させることで、前記画像表示装置を厚み方向に押圧する」と特定するのに対し、甲1先願発明Cは、この点について特定しない点。 以下、相違点3について検討する。 先願明細書等には、画像表示装置の製造におけるパネルの保持工程、積層工程及び押圧工程についての記載は存在しない。そして、画像表示装置であれば、相違点3において特定されている保持工程、積層工程及び押圧工程を有するとの技術常識も存在しないし、相違点3において特定されている保持工程、積層工程及び押圧工程を行うことが、課題解決のための具体的手段における微差であるともいえない。 そうすると、本件発明15と甲1先願発明Cとは同一ということはできない。 (3) まとめ よって、本件発明15に対する特許異議申立書に記載の申立理由2は、理由がない。 2 本件発明15に対する申立理由3について (1) 甲2に記載の発明 上記第6 3(1)の記載から、次の発明(以下、「甲2発明C」という。)が記載されていると認める。 <甲2発明C> 「画像表示部材と光透過性カバー部材を備える画像表示装置の製造方法であって、 光透過性カバー部材は、光透過性を有し、その表面周縁に遮光層を備え、 光透過性カバー部材の表面の周縁部には、遮光層が形成された領域と遮光層が形成されていない主面部との境界部に段差部が形成されており、 光透過性カバー部材の表面に、液状で光透過性を有する光硬化性樹脂を塗布する工程と、 画像表示部材に、塗工後仮硬化された光硬化性樹脂側が画像表示部材側となるように載置し、光透過性カバー部材の塗布されていない面側からゴムローラで加圧する貼り合わせる工程と、 前記塗布する方法は、液状の光硬化性樹脂組成物を、光透過性カバー部材の遮光層形成側表面又は画像表示部材の表面に、遮光層と光透過性カバー部材の遮光層形成側表面とで形成される段差がキャンセルされるように、遮光層の厚さより厚く塗布する工程を有する、 塗布方法である、 画像表示装置の製造方法。」 (2) 本件発明15と甲2発明Cとの対比・判断 本件発明15と甲2発明Cとを対比すると、上記第6 3(4)の記載に加えて、次のことがいえる。 甲2発明Cの「画像表示装置」、「光透過性カバ-部材」、「画像表示装置」は、それぞれ、本件発明15の「第二のパネル」、「第一のパネル」、「積層体」にも相当する。 甲2発明Cにおける「画像表示部材に、光透過性カバー部材を光透過性カバー部材側からゴムローラで加圧して貼り合わせる工程」において、光硬化性樹脂組成物が塗布された光透過性カバー部材を保持する工程が存在すること、及び、厚み方向に押圧力を付与する押圧工程が存在することは当業者において明らかである。 そうすると、本件発明15と甲2発明Cとの一致点と相違点はそれぞれ次のとおりである。 ・ 一致点 「第一のパネルと第二のパネルとを備える積層体の製造方法であって、 所定の塗布方法により、前記第一のパネルの一方面に、液状の光硬化性樹脂を塗布する工程と、 光硬化性樹脂が塗布された前記第一のパネルを保持する保持工程と、 前記第二のパネルを前記第一のパネルの前記一方面に重ねる積層工程と、 前記第一のパネルと前記第二のパネルとの積層体に、厚み方向の押圧力を付与する押圧工程と、を備え、 前記所定の塗布方法は、前記第一のパネルの前記一方面に、液状で光透過性を有する光硬化性樹脂を塗布する塗布方法であって、 前記第一のパネルは、光透過性を有する本体と、前記本体の表面周縁に形成された遮光層と、を備え、 前記第一のパネルの前記一方面の周縁部には、前記遮光層が形成された第一の領域と前記遮光層が形成されていない第二の領域との境界部に段差が形成されており、 前記所定の塗布方法は、 光硬化性樹脂を吐出可能なスリット状のノズルを備えた塗布ヘッドが、前記第一のパネルの前記一方面上を相対的に移動するように、前記塗布ヘッド又は前記第一のパネルの一方を移動させる移動工程と、 前記移動工程中に、前記ノズルから前記光硬化性樹脂を前記第一のパネルの前記一方面に吐出する塗布工程と、 前記塗布工程中に、前記第一のパネル上の前記光硬化性樹脂の膜厚をコントロールユニットにて制御する制御工程と、を含み、 前記制御工程では、 前記第一の領域、前記第二の領域及び前記段差における前記光硬化性樹脂の表面全体が平坦となるように制御し、 前記第一のパネルが光透過性を有するカバーパネルであり、 前記第二のパネルが画像表示パネルである、 前記積層体が画像表示装置である、 積層体の製造方法。」 ・ 相違点 <相違点A> 塗布ヘッドのノズルに関し、本件発明1は「スリット状の」と特定するのに対し、甲2発明Cは、この点を特定しない点。 <相違点B> 光硬化性樹脂の表面全体が平坦となるよう塗布する制御工程に関し、本件発明1は、「前記第一の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚を前記第二の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚よりも薄くなるように」と特定するのに対して、甲2発明Cは、遮光層の厚さより厚く塗布するとの特定である点。 <相違点G> パネルの保持工程、積層工程及び押圧工程に関し、本件発明15は、「前記保持工程では、表面に光硬化性樹脂が塗布された前記カバーパネルを、前記表面が上向きの姿勢で保持し、前記積層工程では、前記カバーパネルが貼り合わされる面が下向きの姿勢で前記画像表示パネルをその上側から吸着する吸着ユニットで保持し、かつ、前記画像表示パネルを前記カバーパネル上に重ね、前記押圧工程では、前記カバーパネルをその下側からフリーローラで前記画像表示パネル側に当接し、前記フリーローラを移動させることで、前記画像表示装置を厚み方向に押圧する」と特定するのに対し、甲2発明Cは、貼り合わせ工程及び押圧工程として、画像表示部材に、塗工後仮硬化された光硬化性樹脂側が画像表示部材側となるように載置し、光透過性カバー部材の塗布されていない面側からゴムローラで加圧している点。 事案に鑑み、まず、相違点Gについて検討する。 甲2の保持、積層、押圧工程における、ガラス板(カバーパネル)と液晶表示素子(画像表示パネル)との配置関係は、吸着ユニットを利用していないことから、逆であって、押圧するローラの配置も異なるものである。そして、申立人の提示する何れの証拠にも、相違点Gに係る保持、積層、押圧工程に相当するものは、記載されていない。 してみれば、甲2発明Cの保持、積層、押圧工程を、相違点Gの工程とすることは、当業者においても想到容易でない。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明15は、甲2発明Cに基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3) まとめ よって、本件発明15に対する特許異議申立書に記載の申立理由3は、理由がない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、当審において通知した取消理由及び申立人が主張する申立理由によっては、本件特許の請求項1ないし3、5ないし9、11ないし16に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1ないし3、5ないし9、11ないし16に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 本件特許の請求項4及び10に係る特許は、上記のとおり、本件訂正請求により削除された。これにより、請求項4及び10に係る特許に対する申立人による特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 塗布方法、塗布装置、製造方法及び製造装置 【技術分野】 【0001】 本発明は、主に、パネルに液状の光硬化性樹脂を塗布する技術に関する。 【背景技術】 【0002】 テレビ、パソコン、携帯端末等のディスプレイとして、液晶表示パネル等の画像表示パネルと、カバーパネルと、を接着して貼り合せたものが知られている(例えば特許文献1)。これらのパネルを貼り合せる接着剤としては、光硬化性樹脂を用いることが知られている。光硬化性樹脂は、例えば、カバーパネル表面に塗布され、画像表示パネルと貼り合わされる。その後、光硬化性樹脂に紫外線を照射し、光硬化性樹脂が硬化される。 【0003】 光硬化性樹脂を塗布するパネルの表面に段差がある場合がある。例えば、上述したカバーパネルの場合、パネル本体の表面周縁に遮光層が形成されており、遮光層がある部分と無い部分との境界に段差が生じる。カバーパネルの表面に光硬化性樹脂の液膜を塗布すると、この段差の部分において液膜表面にも段差が生じる場合がある。液膜に段差が生じている状態で画像表示パネルを貼り合せると、気泡の混入や剥離の要因となりえる。そこで、遮光層の厚さよりも厚く光硬化性樹脂を塗布することで、液膜表面の段差をキャンセルすることが提案されている(特許文献1?3)。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0004】 【特許文献1】 特許第5138820号公報 【特許文献2】 特許第5218802号公報 【特許文献3】 特開2013-156641号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 しかし、光硬化性樹脂を遮光層の厚さよりも厚く塗布するだけでは、液膜表面の段差が残ってしまう場合がある。 【0006】 本発明の目的は、パネル表面の段差に起因する液膜表面の段差の発生を低減することにある。 【課題を解決するための手段】 【0007】 本発明によれば、パネルの表面に、液状で光透過性を有する光硬化性樹脂を塗布する塗布方法であって、前記パネルは、光透過性を有する本体と、前記本体の表面周縁に形成された遮光層と、を備え、前記パネルの前記表面の周縁部には、前記遮光層が形成された第一の領域と前記遮光層が形成されていない第二の領域との境界部に段差が形成されており、前記塗布方法は、光硬化性樹脂を吐出可能なスリット状のノズルを備えた塗布ヘッドが、前記パネルの前記表面上を相対的に移動するように、前記塗布ヘッド又は前記パネルの一方を移動させる移動工程と、前記移動工程中に、前記ノズルから前記光硬化性樹脂を前記パネルの前記表面に吐出する塗布工程と、前記塗布工程中に、前記パネル上の前記光硬化性樹脂の膜厚をコントロールユニットにて制御する制御工程と、を含み、前記制御工程では、前記第一の領域、前記第二の領域及び前記段差における前記光硬化性樹脂の表面全体が平坦となるよう、前記コントロールユニットは前記第一の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚を前記第二の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚よりも薄くなるように制御し、前記制御工程では、少なくとも前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さで、前記膜厚を制御する、ことを特徴とする塗布方法が提供される。 【0008】 また、本発明によれば、パネルの表面に、液状で光透過性を有する光硬化性樹脂を塗布する塗布装置であって、光硬化性樹脂を吐出可能なスリット状のノズルを備えた塗布ヘッドと、前記パネルの前記表面上を相対的に移動するように、前記塗布ヘッド及び前記パネルの少なくとも一方を移動させる移動機構と、前記塗布ヘッドと前記移動機構とを制御する制御ユニットと、を備え、前記パネルは、光透過性を有する本体と、前記本体の表面周縁に形成された遮光層と、を備え、前記パネルの前記表面の周縁部には、前記遮光層が形成された第一の領域と前記遮光層が形成されていない第二の領域との境界部に段差が形成されており、前記制御ユニットは、前記移動機構により前記塗布ヘッド及び前記パネルの少なくとも一方を移動させる移動制御と、前記移動制御中に、前記ノズルから前記光硬化性樹脂を前記パネルの前記表面に吐出する塗布制御と、前記塗布制御中に、前記パネル上の前記光硬化性樹脂の膜厚を制御する膜厚制御と、を実行し、前記膜厚制御では、前記第一の領域、前記第二の領域及び前記段差における前記光硬化性樹脂の表面全体が平坦となるよう、前記第一の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚を前記第二の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚よりも薄くなるように制御し、前記膜厚制御では、少なくとも前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さで、前記膜厚を制御する、ことを特徴とする塗布装置が提供される。 【0009】 また、本発明によれば、上記塗布方法を用いた製造方法、及び、上記塗布装置を用いた製造装置が提供される。 【発明の効果】 【0010】 本発明によれば、パネル表面の段差に起因する液膜の段差の発生を低減することができる。 【図面の簡単な説明】 【0011】 【図1】本発明の一実施形態に係る製造装置の平面図。 【図2】図1の製造装置の図1における矢印D1方向矢視図。 【図3】図1の製造装置の図1における矢印D2方向矢視図。 【図4】(A)は図1の製造装置の図2における矢印D3方向矢視図、(B)は積層体の説明図。 【図5】制御ユニットのブロック図。 【図6】(A)?(C)は図1の製造装置の動作説明図。 【図7】(A)?(C)は図1の製造装置の動作説明図。 【図8】(A)及び(B)は図1の製造装置の動作説明図。 【図9】(A)及び(B)は図1の製造装置の動作説明図。 【図10】(A)はパネル表面の段差の説明図、(B)は液膜表面の段差の説明図、(C)?(E)は膜厚の制御例を示す図。 【図11】(A)?(D)は図1の製造装置の動作説明図。 【図12】(A)?(C)は図1の製造装置の動作説明図。 【図13】図1の製造装置の動作説明図。 【図14】(A)?(C)は図1の製造装置の動作説明図。 【図15】(A)?(C)は図1の製造装置の動作説明図。 【図16】図1の製造装置の動作説明図。 【図17】別例の製造装置の平面図。 【図18】別例の製造装置の平面図。 【発明を実施するための形態】 【0012】 以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。各図において、矢印X及びYは互いに直交する水平方向を示し、矢印Zは上下方向を示す。 【0013】 <第1実施形態> <装置の概要> 図1は本発明の一実施形態に係る製造装置Aの平面図、図2は製造装置Aの図1における矢印D1方向矢視図、図3は製造装置Aの図1における矢印D2方向矢視図、図4(A)は製造装置Aの図2における矢印D3方向矢視図である。図4(B)は製造対象となる積層体の分解斜視図である。 【0014】 製造装置Aは、2枚のパネルの積層体を製造する装置である。本実施形態の場合、図4(B)に示すように、方形のパネルP1と方形のパネルP2との積層体LBを製造する。パネルP1はカバーパネル、パネルP2は画像表示パネルであり、その積層体LBは画像表示装置を構成するものである。画像表示パネルであるパネルP2は例えば液晶表示パネル(例えば、LCD)であり、その表示面側(図4(B)では下面である)にカバーパネル(例えば、カバーガラス)であるパネルP1が貼り付けられる。パネルP1は光透過性を有するパネル本体MBを備える。パネル本体MBは例えばガラス板や樹脂板である。パネルP2が貼り付けられる、パネル本体MBの表面(図4(B)では上面である)の周縁には遮光層LSが形成されている。 【0015】 製造装置Aは、装置のレイアウト上、搬入領域R1と、処理領域R2と、搬出領域R3とを備える。搬入領域R1では、パネルP1の供給元の装置からパネルP1が受け渡され、パネルP1が搬入される。処理領域R2ではパネルP1に対する光硬化性樹脂の塗布と、パネルP2の貼り合わせとを行う。搬出領域R3では処理領域R2で貼り合わされた2枚のパネルP1及びP2の積層体LBが供給先の装置に受け渡され、積層体LBが搬出される。 【0016】 製造装置Aは、塗布装置1と、保持ユニット2と、積層ユニット3と、押圧ユニット4と、搬入台5と、を備える。 【0017】 <塗布装置> 塗布装置1は、パネルP1の表面に、液状の光硬化性樹脂を塗布する装置であり、塗布ヘッド10と、移動機構11及び12と、を備える。まず、移動機構12の構成から説明する。 【0018】 移動機構12は、パネルP1を水平姿勢でY方向に移動させる機構であり、製造装置A全体のパネル搬送機構を兼ねている。移動機構12は、本実施形態の場合、複数のエア浮上テーブル121と、複数のスライドユニット123と、スライドユニット123毎に設けられたレール122と、を備える。 【0019】 エア浮上テーブル121は空気孔が多数形成された水平な上面を備えている。空気孔は、エア浮上テーブル121内部の通路を介して不図示のエア装置に連通している。エア装置は、ポンプに代表される空気供給装置又は空気吸引装置である。空気孔から空気を噴出することで、パネルP1を浮遊状態で支持することができる。また、エア浮上テーブル121の一部を、一部の空気孔から空気を噴出し、他の一部の空気孔から空気を吸引し、ベルヌーイチャックとすることで、パネルP1を安定して、かつ精密に浮遊状態で支持することができる。 【0020】 エア浮上テーブル121は、パネルP1の搬送方向であるY方向に延設されている。より詳しくは、搬入領域R1から搬出領域R3に渡って延設されている。したがって、製造装置Aの全領域においてパネルP1及び積層体LBを非接触で支持可能である。エア浮上テーブル121は、2つ設けられており、互いに平行に延設され、かつ、X方向に離間して配置されている。2つのエア浮上テーブル121のX方向の隙間は複数のスライドユニット123の移動空間を形成している。エア浮上テーブル121の上面には、溝121aが形成されている。溝121aは後述する昇降ユニット13のピン131の退避空間となっている。 【0021】 スライドユニット123は、エア浮上テーブル121上で浮遊状態で支持されているパネルP1を、搬入領域R1から搬出領域R3に渡って搬送する。スライドユニット123は、Y方向に延設されたレール122の案内により、不図示の駆動機構によりY方向に往復移動可能である。駆動機構は、例えば、ボールネジ機構、ベルト伝動機構等を採用可能である。スライドユニット123は2つ設けられている。スライドユニット123毎に駆動機構を設けて独立して移動可能とすることで、1つのパネルの搬送途中で次のパネルの搬送を開始すること、すなわち別々の領域に位置する2枚のパネルを別々のタイミングで搬送することが可能となる。 【0022】 スライドユニット123は、吸着部1231と、当接部1232と、スライダ1233と、昇降機構1234とを備える。吸着部1231は、吸着孔1231aが形成された上面を備えている。この上面はパネルP1の下面に吸着可能な水平な吸着面を構成している。吸着孔1231aは、吸着部1231内部の通路を介して不図示の空気装置に連通している。空気装置は、ポンプに代表される空気吸引装置である。吸着孔1231aから空気を吸引することでパネルP1を吸着保持することが可能となる。 【0023】 当接部1232は、パネルP1の端縁に当接可能である。本実施形態の場合、当接部1232は吸着部1231の上部に支持軸を介して回転自在に設けられたローラである。当接部1232は主として、パネル搬入時にパネルP1の姿勢を調整する際に、パネルP1の端縁(上流側の端縁)に当接する。吸着部1231の吸着面のZ方向の位置は、当接部1232のZ方向下端から上端までの範囲内に設定されている。このため、吸着部1231の吸着面は、当接部1232の支持軸が立設している部位よりも一段高い位置に位置している。 【0024】 スライダ1233はレール122と係合し、レール122に案内されてY方向に移動可能である。昇降機構1234は、スライダ1233上に搭載されている。昇降機構1234は例えばエアシリンダ、電動シリンダ、電磁ソレノイド等のアクチュエータをその駆動源として含む。吸着部1231は昇降機構1234に搭載されており、昇降機構1234により昇降される。吸着部1231は、吸着面がエア浮上テーブル121の上面よりも上方に位置する吸着位置と、吸着部1231全体がエア浮上テーブル121の上面よりも下方に位置する退避位置との間で昇降される。吸着位置は吸着部1231をパネルP1に吸着保持させる位置であり、吸着部1231はエア浮上テーブル121の上面よりも僅かに上方に位置する。 【0025】 次に、塗布ヘッド10と移動機構11について説明する。塗布ヘッド10は処理領域R2においてエア浮上テーブル121の上方に配置されており、エア浮上テーブル121の上面に対向するように配置されたノズル101を備える。ノズル101は液状で光透過性を有する光硬化性樹脂を吐出可能である。 【0026】 ノズル101はX方向に延在するスリット状のノズルであり、光硬化性樹脂はX方向に広がる幕状に下方へ連続的に吐出される。パネルを搬送しながら光硬化性樹脂を吐出することでパネルP1の表面に光硬化性樹脂の液膜を形成することができる。 【0027】 移動機構11は、塗布ヘッド10のX方向の両端部にそれぞれ設けられており、塗布ヘッド10を水平姿勢で支持する。各移動機構11は、不図示の駆動機構を備え、互いに同期的に制御されて塗布ヘッド10をZ方向に移動する。換言すると、移動機構11は塗布ヘッド10を水平姿勢に保持したまま、昇降する。塗布ヘッド10はY方向及びX方向には移動不能である。駆動機構は、例えば、ボールネジ機構、ベルト伝動機構等を採用可能である。 【0028】 次に、塗布装置1周辺の構成について説明する。搬入領域R1には昇降ユニット13と、調整ユニット14及び15とが設けられている。 【0029】 昇降ユニット13は、外部の装置と製造装置Aとの間でパネルP1の受け渡しを行うユニットである。搬入領域R1における昇降ユニット13の数は2つである。昇降ユニット13は搬出領域R3にも設けられており、その数は2つである。ここでは外部の装置と製造装置Aとの間で積層体LBの受け渡しを行う。 【0030】 昇降ユニット13は、複数のピン131と、支持部材132と、昇降機構133と、を備える。複数のピン131は支持部材132に支持されて上方向に延びている。各ピン131は、エア浮上テーブル121の溝121aに設けられた上下方向の貫通孔に挿入されている。複数のピン131は等長であり、それらの先端(上端)の高さは面一である。 【0031】 支持部材132はエア浮上テーブル121の下方に位置し、ピン131の下端が固定されている。昇降機構133は、例えばエアシリンダ、電動シリンダ、電磁ソレノイド等のアクチュエータをその駆動源として含み、支持部材132を昇降する。支持部材132の昇降によりピン131も昇降する。ピン131は、その先端がエア浮上テーブル121の上面10よりも上方に突出した上昇位置と、ピン131の先端がエア浮上テーブル121の上面よりも下方に位置する降下位置と、の間で昇降される。図2、図3及び図4(A)はピン131が降下位置にある場合を示しており、ピン131の先端は溝121a内に位置している。 【0032】 調整ユニット14及び15は、搬入領域R1においてパネルP1の姿勢を調整してその位置決めを行う。調整ユニット14はX方向におけるパネルP1の姿勢を調整し、調整ユニット15はY方向におけるパネルP1の姿勢を調整する。 【0033】 調整ユニット14は搬入領域R1に複数設けられており、2つのエア浮上テーブル121を挟んでX方向の両側に配置されている。調整ユニット14は、円柱状の当接部141と、駆動部142とを備える。駆動部142は、例えばエアシリンダ、電動シリンダ、電磁ソレノイド等のアクチュエータをその駆動源として含み、当接部141をX方向に往復移動する。駆動部142の駆動により、当接部141は、エア浮上テーブル121からより離れた退避位置からエア浮上テーブル121により近づく位置決め位置へ移動可能である。位置決め位置において当接部141はパネルのX方向の端縁に当接してその姿勢調整及び位置決めが可能である。調整ユニット15も調整ユニット14と同様の構成であるが、その当接部はパネルP1のY方向の端縁(下流側端縁)に当接してその姿勢調整及び位置決めが可能である。 【0034】 <保持ユニット> 次に、保持ユニット2について説明する。保持ユニット2は、塗布装置1により、一方面に光硬化性樹脂が塗布されたパネルP1を保持するユニットである。保持ユニット2にパネルP1が保持された状態でパネルP2が積層される。 【0035】 保持ユニット2は、複数の保持機構20と、複数の支持部材24及び25とを備える。保持機構20は4つ設けられており、そのうちの2つが2つのエア浮上テーブル121のX方向の一方側方において、Y方向に互いに離間して配置されている。残りの2つは2つのエア浮上テーブル121のX方向の他方側方において、Y方向に互いに離間して配置されている。 【0036】 保持機構20は、保持部21と、支持部22と、昇降機構23とを備える。保持部21は、パネルP1の隅部下面に当接するように配置された爪状の部材である。支持部22は保持部21を支持する部材である。昇降機構23は例えばエアシリンダ、電動シリンダ、電磁ソレノイド等のアクチュエータをその駆動源として含み、支持部22を昇降する機構である。支持部22を昇降することで保持部21も昇降することになる。各保持機構20の保持部21は、同じ高さに位置し、それらの昇降動作は同期的に行われる。 【0037】 支持部材24は保持機構20を支持する梁部材であり、1つの支持部材24に2つの保持機構20が、吊り下げられるようにして支持される。支持部材25は支持部材24の両端部に設けられ、支持部材24を水平姿勢で支持する柱部材である。 【0038】 <積層ユニット> 積層ユニット3は、搬入台5に搬入されたパネルP2を保持ユニット2に保持されたパネルP1の上方に搬送し、降下して重ねる機構である。積層ユニット3は、吸着ユニット31と、支持部材32と、可動ユニット33と、レール部材34と、複数の支柱35とを備える。 【0039】 吸着ユニット31は、その下面が水平な吸着面を構成している。この吸着面には空気孔が形成されており、吸着ユニット31内部の通路を介して不図示の空気吸引装置に接続されている。空気吸引装置は例えばポンプである。空気孔から空気を吸引することで、吸着ユニット31はパネルP2の上面を負圧吸引して吸着する。 【0040】 支持部材32は、可動ユニット33によって昇降されるZ方向に延びる昇降軸であり、吸着ユニット31は支持部材32の下端に固定されている。可動ユニット33は支持部材32を昇降する昇降機構を備える。昇降機構は例えばボールねじ機構やベルト伝動機構等を採用可能である。レール部材34はX方向に水平に延設されており、その両端部が支柱35により支持されている。可動ユニット33は不図示の駆動機構によってレール部材34の案内によってX方向に往復移動可能である。駆動機構は例えばボールねじ機構やベルト伝動機構等を採用可能である。可動ユニット33のX方向の移動と、支持部材32の昇降とによって吸着ユニット31はX-Z平面上を移動可能である。 【0041】 <押圧ユニット> 押圧ユニット4は、保持ユニット2の各保持部21上で水平保持されて重ねられたパネルP1とパネルP2の積層体LBに、その厚み方向(ここではZ方向)の押圧力を付与する機構である。なお、パネルP1とパネルP2とは互いに接して重ねられてもよいし、僅かに離間して重ねられてもよい。押圧ユニット4は、ローラ41と、複数の支持部42と、複数の昇降機構43と、複数のスライダ44と、複数のレール45とを備える。支持部42と昇降機構43とスライダ44とレール45とは2組設けられており、昇降機構43はスライダ44に搭載され、支持部42は昇降機構43に搭載されている。 【0042】 ローラ41は、2つのエア浮上テーブル121を跨るようにX方向に水平に延設されている。ローラ41は、その両端部が支持部42に回転自在に支持されて自由回転可能なフリーローラである。レール45は、2つのエア浮上テーブル121を挟んで両側にそれぞれ配置されており、Y方向に水平に延設されている。スライダ44はレール45と係合してレール45の案内によりY方向に移動可能である。スライダ44は不図示の駆動機構によってY方向に往復移動可能である。2つのスライダ44を同期的に移動させることで、ローラ41をY方向に平行移動することができる。 【0043】 昇降機構43は例えばエアシリンダ、電動シリンダ、電磁ソレノイド等のアクチュエータをその駆動源として含み、支持部42を昇降する。2つの支持部42を同期的に昇降移動させることで、ローラ41をZ方向に平行移動(昇降)することができる。 【0044】 <搬入台> 搬入台5は、外部の装置と製造装置Aとの間でパネルP2の受け渡しを行うユニットである。搬入台5は、エア浮上テーブル51と、昇降ユニット52とを備える。エア浮上テーブル51は、エア浮上テーブル121と同様の構成であり、空気孔が多数形成された水平な上面を備え、空気孔から空気を噴出することでパネルP2を浮遊状態で支持することができる。 【0045】 昇降ユニット52は昇降ユニット13と同様の構成であり、複数のピン521と、支持部材522と、昇降機構523と、を備える。複数のピン521は支持部材522に支持されて上方向に延びている。各ピン521は、エア浮上テーブル51の溝51aに設けられた上下方向の貫通孔に挿入されている。複数のピン521は等長であり、それらの先端(上端)の高さは面一である。 【0046】 支持部材522はエア浮上テーブル51の下方に位置し、ピン521の下端が固定されている。昇降機構523は、例えばエアシリンダ、電動シリンダ、電磁ソレノイド等のアクチュエータをその駆動源として含み、支持部材522を昇降する。支持部材522の昇降によりピン521も昇降する。ピン521は、その先端がエア浮上テーブル51の上面10よりも上方に突出した上昇位置と、ピン521の先端がエア浮上テーブル51の上面よりも下方に位置する降下位置と、の間で昇降される。 【0047】 エア浮上テーブル51の周囲には、調整ユニット53及び54が配設されている。調整ユニット53及び54は、エア浮上テーブル51上でパネルP2の姿勢を調整してその位置決めを行う。調整ユニット53はY方向におけるパネルP2の姿勢を調整し、調整ユニット54はX方向におけるパネルP2の姿勢を調整する。調整ユニット53及び54は、調整ユニット14又は15と同様の構成であり、姿勢調整及び位置決めの原理も同様である。 【0048】 <制御ユニット> 図5は製造装置Aの制御を行う制御ユニット6のブロック図である。制御ユニット6は、CPU等の処理部61と、RAM、ROM等の記憶部62と、外部デバイスと処理部61とをインターフェースするインターフェース部63と、を含む。インターフェース部63には、ホストコンピュータとの通信を行う通信インターフェースも含まれる。ホストコンピュータは、例えば、製造装置Aが配置された製造設備全体を制御するコンピュータである。 【0049】 処理部61は記憶部62に記憶されたプログラムを実行し、各種のセンサ65の検出結果や上位のコンピュータ等の指示に基づいて、各種のアクチュエータ64を制御する。各種のセンサ65には、例えば、スライドユニット123の位置を検出するセンサ、塗布ヘッド10の位置を検出するセンサ、支持部42の位置を検出するセンサ、吸着ユニット31の位置を検出するセンサ等、各種のセンサが含まれる。各種アクチュエータ64には、例えば、エア浮上テーブル121、51用の空気装置、吸着部1231用の空気装置、吸着ユニット21用の空気装置、塗布ヘッド10の駆動源、各種機構の駆動源等が含まれる。 【0050】 <制御例> 処理部61の制御例について図6(A)?図16を参照して説明する。ここでは製造装置AへのパネルP1、P2の搬入、パネルP1に対する搬送、パネルP1に対する光硬化性樹脂の塗布、パネルP1とパネルP2との貼り合わせ、及び、積層体LBの搬出という一連の動作について説明する。 【0051】 図6(A)は外部の装置により搬入領域R1にパネルP1が搬入される直前の状態を示している。搬入領域R1に設けられた2台の昇降ユニット13は、各ピン131が上昇位置に位置している。吸着部1231は搬入領域R1の上流端の位置(初期位置という)において退避位置に位置している。調整ユニット14の当接部141は退避位置に位置している。図示していないが調整ユニット15も同様である。エア浮上テーブル121の空気孔12から空気が噴出される。 【0052】 図6(B)は外部の装置により搬入領域R1にパネルP1が搬入された状態を示している。パネルP1は、遮光層LSが形成された表面を上面として、水平姿勢で複数のピン131上に載置される。その後、図6(C)に示すように搬入領域R1に設けられた2台の昇降ユニット13は、各ピン131を降下位置に降下する。これによりパネルP1が複数のピン131からエア浮上テーブル121に移載される。このとき、パネルP2はエア浮上テーブル121の上面に密着するのではなく、上面から若干浮き上がった浮遊状態で支持される。 【0053】 次に、パネルP1の姿勢調整及び位置決めを行う。図7(A)に示すように、各調整ユニット14が駆動され、当接部141が位置決め位置に移動する。位置決め位置における当接部141間のX方向の離間距離は、パネルP1のX方向の幅に略等しい。このため、パネルP1の姿勢が乱れていた場合は、パネルP1の側縁に当接部141が当接し、姿勢及び位置が調整される。これにより、パネルP1の四辺のうち、Y方向両側に位置する互いに対向する一対の辺は、X方向(ノズル101の延設方向)と平行になる。また、X方向両側に位置する残りの一対の辺はY方向と平行になる。 【0054】 並行して、パネルP1のスライドユニット123に対するY方向の位置決めを行う。調整ユニット15は、駆動部152の駆動によりその当接部151が位置決め位置に移動する。パネルP1の移動には2つのスライドユニット123のうちの一方を用いる。図7(B)に示すように吸着部1231が昇降機構1234によって吸着位置に上昇される。 【0055】 図7(C)に示すように、スライドユニット123をパネルP1のサイズに応じて設定された距離だけY方向に移動して停止する。このとき、吸着部1231の当接部1232がパネルP1の搬送方向上流側端縁(搬送方向後端縁)に当接し、パネルP1がY方向に移動する。吸着部1231の停止時における当接部1232と当接部151とのY方向の離間距離は、パネルP1のY方向の幅に略等しい。これにより、パネルP1がスライドユニット123に対してY方向に位置決めされる。 【0056】 以上により、パネルP1の姿勢調整及び位置決めが完了する。この段階で吸着部1231の吸着孔1231aからの空気の吸引を行い、吸着部1231にパネルP1を吸着保持させる。図8(A)に示すように、調整ユニット14及び15の各当接部141、151を退避位置に戻す。 【0057】 次に、パネルP1に光硬化性樹脂を塗布する工程に移る。図8(B)に示すように塗布ヘッド10を降下位置に降下させる。続いて図9(A)に示すようにパネルP1を吸着しているスライドユニット123を搬送方向下流側に向かって走行させ、パネルP1を塗布ヘッド10下方へ移動する。 【0058】 図9(B)に示すように、パネルP1を塗布ヘッド10のノズル101に臨ませてこれを通過するようにパネルP1を移動する。これにより、塗布ヘッド10はパネルP1の表面上を相対的にY方向に移動することになる。この移動工程中に図9(B)に示すように、ノズル101から光硬化性樹脂RG(単に樹脂RGという場合がある)を吐出することで、樹脂RGの液膜がパネルP1の表面に塗布される。パネルP1上の、樹脂RGの吐出開始位置SPと吐出終了位置EPとは、貼り合わされるパネルP2の面積に応じて設定される。これらの位置とノズル101から吐出する樹脂RGの幕の幅は、パネルP1とパネルP2とを貼り付けたときに、パネルP2の周囲に余剰の樹脂RGがはみ出さないように設定される。 【0059】 ここで、パネルP1上には、遮光層LSが形成された部分と、形成されていない部分との境界で遮光層LSの厚さ分の段差が生じている。この段差に起因して、パネルP1上の樹脂RGの液膜表面にも段差が生じることは好ましくない。そこで、段差が生じないようにパネルP1上の樹脂RGの膜厚を制御する。 【0060】 遮光層LSの段差は、その部位にしたがって、図10(A)に示すように2種類に大別できる。遮光層LSはパネルP1の各辺に沿って形成されるので、方形の枠状をなしている。段差BP1はX方向に延びる部分であり、段差BP2はY方向に延びる部分である。段差BP2においては、樹脂RGの粘度調整によって樹脂RGの段差の発生を抑制できる。その理由は以下の通りである。 【0061】 ノズル101から吐出される樹脂RGの幕は、図10(A)に示すようにX方向に延びている。段差BP2においては、樹脂RGの幕に対する遮光層LSの塗布面積が極めて小さい。したがって、遮光層LSが形成されていない部分と遮光層LSとの間での樹脂RGの流動によって、段差の発生を抑制することが可能である。 【0062】 また、段差BP2においては、塗布ヘッド10に挟み込むシムの形状や厚み等の調整によって樹脂RGの段差の発生を抑制することも可能である。 【0063】 一方、段差BP1においては、段差BP1を通過する際、樹脂RGの幕に対する遮光層LSの塗布面積と遮光層LSが形成されていない部分の塗布面積とが半々になる。このため、遮光層LSが形成されていない部分と遮光層LSとの間での樹脂RGの流動だけでは、段差の発生を抑制することが困難であり、図10(B)に示すように、樹脂RGの表面に段差が生じやすい。 【0064】 そこで、段差BP1を通過する前後で樹脂RGの膜厚を変化させることで、段差の発生を抑制する。基本的な考え方としては、パネルP1の搬送方向上流側及び下流側の各辺に沿って形成された遮光層LS上の樹脂RGの膜厚と比較して、これらの遮光層LS-LS間(本体MBが露出している部分)では樹脂RGの膜厚が相対的に厚くなるように膜厚を制御する。換言すると、遮光層LS上では遮光層LS-LS間と比較して、樹脂RGの膜厚が相対的に薄くなるように膜厚を制御する。 【0065】 図10(C)?(E)は膜厚の制御例を示している。図10(C)は、樹脂RGの吐出量で膜厚を制御する例を示している。同図の例では、パネルP1とノズル101との位置に対する樹脂RGの吐出量を例示している。パネルP1の移動方向(Y方向)で前側、後側の各遮光層LS上では吐出量を少なくし、遮光層LS-LSの間では吐出量を多くする。遮光層LS上と比較し、これらの遮光層LS-LS間では相対的に膜厚を厚くでき、樹脂RGの段差の発生を抑制できる。 【0066】 図10(D)は塗布ヘッド10とパネルP1との相対移動速度で膜厚を制御する例を示している。本実施形態の場合、塗布ヘッド10はY方向に固定されているので、パネルP1の移動速度を変化させることになる。同図の例では、パネルP1とノズル101との位置に対するパネルP1の移動速度を例示している。パネルP1の移動方向(Y方向)で前側、後側の各遮光層LSがノズル101下を通過する場合には、パネルP1の移動速度を速く、遮光層LS-LSの間では移動速度を遅くする。遮光層LS上と比較し、これらの遮光層LS-LS間では相対的に膜厚を厚くでき、樹脂RGの段差の発生を抑制できる。 【0067】 図10(E)はパネルP1の表面からのノズル101の高さで膜厚を制御する例を示している。本実施形態の場合、塗布ヘッド10は移動機構11により昇降できるので、パネルP1の表面からのノズル101の高さを変更することができる。同図の例では、パネルP1とノズル101との位置に対するノズル101の高さを例示している。パネルP1の移動方向(Y方向)で前側(図11(E)では一点鎖線で図示)、後側の各遮光層LSがノズル101下を通過する場合には、高さh1とし、遮光層LS-LSの間(図11(E)では実線で図示)では高さh2(<h1)とする。高さが高い方が樹脂RGがパネルP1上で広がり易く膜厚が薄くなる。よって、遮光層LS上と比較し、これらの遮光層LS-LS間では相対的に膜厚を厚くでき、樹脂RGの段差の発生を抑制できる。 【0068】 なお、図10(C)?図10(E)の膜厚制御例は、単独で採用してもよいし、少なくともいずれか2つ以上を組み合わせてもよい。組み合わせることで調整可能な膜厚の範囲を広げることが可能となる。 【0069】 次に、パネルP1とパネルP2とを貼り合わせる工程に移る。パネルP1に対する上記の処理に並行して、外部の装置により搬入台5にパネルP2が搬入される。昇降ユニット52は、各ピン521が上昇位置に位置した状態にあり、エア浮上テーブル51の空気孔12から空気が噴出される。そして、図1における矢印11A方向矢視図を図11(A)に示すように、エア浮上テーブル51上にパネルP2が搬入される。パネルP2はパネルP1と貼り合わされる面を下向きとした水平姿勢で複数のピン521上に載置される。この姿勢でパネルP2を搬入、搬送し、パネルP1はパネルP2と貼り合わせる面を上向きの姿勢で、搬入、搬送することにより、両者を貼り合わせる際に、パネルP1やパネルP2の上下面の姿勢を変更するための、”持ち替え”が不要となる。 【0070】 図11(B)に示すように昇降ユニット52により、各ピン521を降下位置に降下させる。これによりパネルP2が複数のピン521からエア浮上テーブル51に移載される。このとき、パネルP2はエア浮上テーブル51の上面に密着するのではなく、若干浮き上がった浮遊状態で支持される。 【0071】 続いて、パネルP2の姿勢調整及び位置決めを行う。図11(B)及び図11(C)に示すように、各調整ユニット53、54の駆動部532、542が駆動され、当接部531、541が位置決め位置に移動する。位置決め位置における当接部531間のY方向の離間距離は、パネルP2のY方向の幅に略等しい。また、位置決め位置における当接部541間のX方向の離間距離は、パネルP2のX方向の幅に略等しい。このため、パネルP2の姿勢が乱れていた場合は、パネルP2の側縁に当接部531、541が当接し、姿勢及び位置が調整される。樹脂RGが塗布されたパネルP1は保持ユニット2へ移動している。 【0072】 以上により、パネルP2の姿勢調整及び位置決めが完了する。その後、図11(D)に示すように、駆動部532、542が、調整ユニット53、54の各当接部531、541を退避位置に戻すと共に、昇降ユニット52が、各ピン521を上昇位置に上昇させ、パネルP2が持ち上げられる。 【0073】 パネルP2の搬入に並行して、樹脂RGが塗布されたパネルP1を保持ユニット2で保持する。図12(A)に示すように、保持ユニット2の各保持部21はエア浮上テーブル121の上面よりも下側の待機位置に位置している。図12(B)に示すようにパネルP1が各保持部21上の位置に移動される。スライドユニット123の吸着部1231での吸着を解除し、図12(C)に示すように各昇降機構23を同期的に駆動して各保持部21を同期的に上昇する。これによりパネルP1がスライドユニット123から保持部21に移載される。各保持部21はパネルP1の四隅の樹脂RGが塗布されていない部分を下から支え、ローラ41よりも高い保持位置まで上昇される。 【0074】 次に、積層ユニット3により搬入台5に搬入されたパネルP2を保持ユニット2に保持されたパネルP1の上方に搬送して積層する。まず、図13で一点鎖線及び矢印A131,A132で示すように、吸着ユニット31を搬入台5上に移動し、パネルP2上に降下させてパネルP2を吸着する。 【0075】 続いて、図13で実線及び矢印A133?A135で示すように、吸着ユニット31を上昇してパネルP1上に移動し、吸着ユニット31を降下してパネルP1上にパネルP2を重ねる。このとき、パネルP1とパネルP2とは僅かに接触するか或いは僅かに離間した状態にあり、パネルP2は吸着ユニット31に支持されたままである。 【0076】 次に、パネルP1とパネルP2の積層体LBに厚み方向の押圧力を付与する。まず、図14(A)に示すように、ローラ41をパネルP1の下へ移動する。ローラ41は、後に保持部21と干渉しないよう、保持部21の真下を避けた上で、パネルP1の搬送方向で下流側端縁近傍に移動される。スライドユニット123は上流側へ後退される。 【0077】 続いて、図14(B)に示すように、昇降機構43によりローラ41を上昇させ、パネルP1の下面に当接して上方(パネルP2側)へ押圧する。押圧の反力は吸着ユニット31を介して積層ユニット3により受けられる。積層体LBはローラ41と吸着ユニット31とで挟持された状態となる。この状態で、図14(C)に示すようにローラ41をY方向に移動し、保持部21と干渉しない範囲でパネルP1の搬送方向で上流側の端縁近傍まで移動する。ローラ41はフリーローラであるので、転動しながらパネルP1の下面を搬送方向下流側から上流側にかけて押圧する。これにより、積層体LBの全域に渡ってパネルP1とパネルP2とが樹脂RGを挟んで圧着された状態となり、樹脂RGの粘性でパネルP1とパネルP2とが仮接着された状態となる。この状態では、積層体LBは吸着ユニット31に実質的に支持されている。 【0078】 次に、積層体LBを吸着ユニット31からスライドユニット123へ移載する。まず、図15(A)に示すように昇降機構43によりローラ41を降下させる。図15(B)に示すようにローラ41を元の位置へY方向に移動する。また、スライドユニット123を積層体LBの下方へ移動する。図15(C)に示すように、保持ユニット2の各保持部21を待機位置に降下させ、吸着ユニット31を降下させて積層体LBをエア浮上テーブル121上に位置させる。スライドユニット123の吸着部1231での吸着を再開し、保持ユニット31の吸着を解除することで、積層体LBが保持ユニット31からスライドユニット123へ移載される。 【0079】 次に、積層体LBを搬出する工程に移る。図16に示すように、スライドユニット123を移動して、積層体LBを搬出エリアR3の昇降ユニット13上に移動する。吸着ユニット31は次の処理を行うべく、上昇後、X方向に移動される。積層体LBが搬出エリアR3の昇降ユニット13上に到達すると、各ピン131を上昇させて積層体LBの下面に当接させた後、スライドユニット123の吸着部1231による積層体LBの吸着を解除する。これにより積層体LBはエア浮上テーブル121からピン131に移載され、供給先の装置に受け渡し可能な状態となる。 【0080】 このように本実施形態の製造装置Aでは、パネルP1に対する樹脂RGの塗布においては、遮光層LSの存在による段差の影響を抑制して、表面が平坦な液膜を形成でき、パネルP1とパネルP2との貼り合わせを良好に行える。その結果、良好な品質の積層体LBを効率よく製造することができる。また、パネルP1に対する樹脂RGの塗布からパネルP1とパネルP2との貼り合わせまでの動作を連続的に行うことができ、積層体LBの製造効率を向上できる。 【0081】 なお、本実施形態では、パネルP1とパネルP2として、カバーパネル及び画像表示パネルを例示したが、本発明はこれ以外のパネルにも適用可能である。パネルP1とパネルP2の形状も方形に限られず、各種の形状に対応可能である。樹脂RGの段差の要因として、遮光層LSの存在による段差を例示したが、本発明はこれ以外の段差を要因とする樹脂RGの段差の抑制にも適用可能である。 【0082】 本実施形態では、パネルP1に対する樹脂の塗布の際、パネルP1をY方向に移動する構成としたが、塗布ヘッド10をY方向に移動する構成としてもよい。図10(E)を参照して説明したノズル101の高さ変更は、塗布ヘッド10を昇降するのではなく、パネルP1を昇降するようにしてもよい。 【0083】 本実施形態では、パネルP1の移動機構12として、エア浮上テーブル121とスライドユニット123とを組み合わせた構成としたが、これに限られず、ベルトコンベアやローラコンベア等、各種の移動機構を採用可能である。 【0084】 本実施形態では、積層ユニット3が吸着ユニット31によってパネルP2を吸着保持する構成としたが、保持機構はこれに限られずクランプ機構等の機械式保持機構等、他の保持機構を採用してもよい。 【0085】 本実施形態では、積層体LBの押圧に際して、ローラ41を採用したが、これ以外の押圧機構も採用可能である。また、積層体LBの押圧に際して、ローラ41をY方向に移動する構成としたが、積層体LBをY方向に移動する構成としてもよい。更に、ローラ41をパネルP1下面に当接する構成としたが、これとは逆に、積層体LBを下側から支えてパネルP2上面側からパネルP1側へ押圧する構成としてもよい。 【0086】 本実施形態では、保持ユニット2によるパネルP1の保持機構として、保持部21上にパネルP1を載せる構成としたが、吸着保持やクランプ機構等の機械式保持機構等、他の保持機構も採用可能である。 【0087】 <第2実施形態> 積層体LBの樹脂RGの硬化を促進する構成を設けてもよい。図17は本実施形態の製造装置Bの平面図である。製造装置Bは製造装置Aに硬化促進装置7を追加したものであり、他の構成は製造装置Aと同じである。 【0088】 硬化促進装置7は、処理領域R2において、塗布ヘッド10よりもY方向の下流側に配置されている。硬化促進装置7は、X方向に延設され、その両端部が支柱72で支持されてエア浮上テーブル121の上面よりも上方に水平に配置されている。 【0089】 硬化促進装置7は、X方向に延設された光源71を備える。光源71は紫外線を照射する。積層体LBが硬化促進装置7の下方を移動する際、光源71により積層体LBに紫外線を照射する工程を実行することで、樹脂RGの硬化が促進され、パネルP1とパネルP2との接着を強固なものとすることができる。 【0090】 <第3実施形態> パネルP1の樹脂RGの硬化を促進する構成を設けてもよい。図18は本実施形態の製造装置Cの平面図である。製造装置Cは製造装置Bに硬化促進装置8とシャッタ装置9とを追加したものであり、他の構成は製造装置Bと同じである。なお、製造装置Cにおいて硬化促進装置7を設けない構成も採用可能である。 【0091】 硬化促進装置8は、処理領域R2において、塗布ヘッド10よりもY方向の下流側で、保持ユニット2等よりも上流側に配置されている。つまり、パネルP1とパネルP2との貼り合わせ位置よりも上流側に位置している。 【0092】 硬化促進装置8の構成は硬化促進装置7と同じである。つまり、硬化促進装置8は、X方向に延設され、その両端部が支柱82で支持されてエア浮上テーブル121の上面よりも上方に水平に配置されている。硬化促進装置8は、X方向に延設された光源81を備える。光源81は紫外線を照射する。パネルP1が硬化促進装置8の下方を移動する際、光源81によりパネルP1に紫外線を照射する工程を実行することで、樹脂RGを半硬化させることができる。これにより、パネルP1とパネルP2とを貼り合わせる際に、気泡の混入を防ぎ、両者の位置ずれ等を防止して積層体LBの取扱いを容易化することができる。 【0093】 シャッタ装置9は、塗布ヘッド10と硬化促進装置8との間に配置されている。シャッタ装置9は、X方向に延設され、その両端部が支柱92で支持されてエア浮上テーブル121の上面よりも上方に水平に配置されている。シャッタ装置9は、塗布ヘッド10と硬化促進装置8との間を遮光可能な可動のシャッタ91を備える。 【0094】 シャッタ装置9は、パネルP1がシャッタ装置9の下方を通過するとシャッタ91を降下して塗布ヘッド10と硬化促進装置8との間を遮光する。その後、硬化促進装置8が駆動され紫外線が照射される。シャッタ91の存在により塗布ヘッド10は紫外線から遮光され、ノズル101に付着している樹脂RGが固化することを抑制できる。パネルP1が硬化促進装置8を通過して光源91の駆動が停止されるとシャッタ91は上昇される。 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 パネルの表面に、液状で光透過性を有する光硬化性樹脂を塗布する塗布方法であって、 前記パネルは、光透過性を有する本体と、前記本体の表面周縁に形成された遮光層と、を備え、 前記パネルの前記表面の周縁部には、前記遮光層が形成された第一の領域と前記遮光層が形成されていない第二の領域との境界部に段差が形成されており、 前記塗布方法は、 光硬化性樹脂を吐出可能なスリット状のノズルを備えた塗布ヘッドが、前記パネルの前記表面上を相対的に移動するように、前記塗布ヘッド又は前記パネルの一方を移動させる移動工程と、 前記移動工程中に、前記ノズルから前記光硬化性樹脂を前記パネルの前記表面に吐出する塗布工程と、 前記塗布工程中に、前記パネル上の前記光硬化性樹脂の膜厚をコントロールユニットにて制御する制御工程と、を含み、 前記制御工程では、 前記第一の領域、前記第二の領域及び前記段差における前記光硬化性樹脂の表面全体が平坦となるよう、前記コントロールユニットは前記第一の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚を前記第二の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚よりも薄くなるように制御し、 前記制御工程では、 少なくとも前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さで、前記膜厚を制御する、 ことを特徴とする塗布方法。 【請求項2】 請求項1記載の塗布方法であって、 前記制御工程では、 前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さと、前記光硬化性樹脂の吐出液量とで、前記膜厚を制御する、 ことを特徴とする塗布方法。 【請求項3】 請求項1記載の塗布方法であって、 前記制御工程では、 前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さと、前記塗布ヘッド又は前記パネルの移動速度とで、前記膜厚を制御する、 ことを特徴とする塗布方法。 【請求項4】(削除) 【請求項5】 請求項1記載の塗布方法であって、 前記制御工程では、 前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さと、 前記光硬化性樹脂の吐出液量、及び、前記塗布ヘッド又は前記パネルの移動速度、の少なくともいずれか1つとで、前記膜厚を制御する、 ことを特徴とする塗布方法。 【請求項6】 請求項1に記載の塗布方法であって、 前記パネルは方形であり、 前記ノズルは、前記パネルの互いに対向する一対の辺と平行に配置され、 前記移動工程では、 前記一対の辺と直交する方向に、前記塗布ヘッド又は前記パネルの一方を移動させ、 前記塗布工程では、 前記一対の辺に沿って形成された前記遮光層上では、前記光硬化性樹脂の膜厚が相対的に薄くなるように制御し、 前記一対の辺に沿って形成された前記遮光層間では、前記光硬化性樹脂の膜厚が相対的に厚くなるように制御する、 ことを特徴とする塗布方法。 【請求項7】 パネルの表面に、液状で光透過性を有する光硬化性樹脂を塗布する塗布装置であって、 光硬化性樹脂を吐出可能なスリット状のノズルを備えた塗布ヘッドと、 前記パネルの前記表面上を相対的に移動するように、前記塗布ヘッド及び前記パネルの少なくとも一方を移動させる移動機構と、 前記塗布ヘッドと前記移動機構とを制御する制御ユニットと、を備え、 前記パネルは、光透過性を有する本体と、前記本体の表面周縁に形成された遮光層と、を備え、 前記パネルの前記表面の周縁部には、前記遮光層が形成された第一の領域と前記遮光層が形成されていない第二の領域との境界部に段差が形成されており、 前記制御ユニットは、 前記移動機構により前記塗布ヘッド及び前記パネルの少なくとも一方を移動させる移動制御と、 前記移動制御中に、前記ノズルから前記光硬化性樹脂を前記パネルの前記表面に吐出する塗布制御と、 前記塗布制御中に、前記パネル上の前記光硬化性樹脂の膜厚を制御する膜厚制御と、を実行し、 前記膜厚制御では、 前記第一の領域、前記第二の領域及び前記段差における前記光硬化性樹脂の表面全体が平坦となるよう、前記第一の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚を前記第二の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚よりも薄くなるように制御し、 前記膜厚制御では、 少なくとも前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さで、前記膜厚を制御する、 ことを特徴とする塗布装置。 【請求項8】 請求項7記載の塗布装置であって、 前記膜厚制御では、 前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さと、前記光硬化性樹脂の吐出液量とで、前記膜厚を制御する、 ことを特徴とする塗布装置。 【請求項9】 請求項7記載の塗布装置であって、 前記膜厚制御では、 前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さと、前記塗布ヘッド又は前記パネルの移動速度とで、前記膜厚を制御する、 ことを特徴とする塗布装置。 【請求項10】(削除) 【請求項11】 請求項7記載の塗布装置であって、 前記膜厚制御では、 前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さと、 前記光硬化性樹脂の吐出液量、及び、前記塗布ヘッド又は前記パネルの移動速度、の少なくともいずれか1つとで、前記膜厚を制御する、 ことを特徴とする塗布装置。 【請求項12】 第一のパネルと第二のパネルとを備える積層体の製造方法であって、 請求項1?3、5及び6のいずれか1項に記載の塗布方法により、前記第一のパネルの一方面に、液状の光硬化性樹脂を塗布する工程と、 光硬化性樹脂が塗布された前記第一のパネルを保持する保持工程と、 前記第二のパネルを前記第一のパネルの前記一方面に重ねる積層工程と、 前記第一のパネルと前記第二のパネルとの積層体に、厚み方向の押圧力を付与する押圧工程と、を備える、 ことを特徴とする製造方法。 【請求項13】 請求項12に記載の製造方法であって、 前記押圧工程では、 前記第一のパネル及び前記第二のパネルの一方にローラを当接し、前記積層体又は前記ローラの一方を移動させることで、前記積層体を厚み方向に押圧する、 ことを特徴とする製造方法。 【請求項14】 請求項12又は13に記載の製造方法であって、 前記積層体に紫外線を照射して前記光硬化性樹脂を硬化させる工程を更に備える、 ことを特徴とする製造方法。 【請求項15】 第一のパネルと第二のパネルとを備える積層体の製造方法であって、 所定の塗布方法により、前記第一のパネルの一方面に、液状の光硬化性樹脂を塗布する工程と、 光硬化性樹脂が塗布された前記第一のパネルを保持する保持工程と、 前記第二のパネルを前記第一のパネルの前記一方面に重ねる積層工程と、 前記第一のパネルと前記第二のパネルとの積層体に、厚み方向の押圧力を付与する押圧工程と、を備え、 前記所定の塗布方法は、前記第一のパネルの前記一方面に、液状で光透過性を有する光硬化性樹脂を塗布する塗布方法であって、 前記第一のパネルは、光透過性を有する本体と、前記本体の表面周縁に形成された遮光層と、を備え、 前記第一のパネルの前記一方面の周縁部には、前記遮光層が形成された第一の領域と前記遮光層が形成されていない第二の領域との境界部に段差が形成されており、 前記所定の塗布方法は、 光硬化性樹脂を吐出可能なスリット状のノズルを備えた塗布ヘッドが、前記第一のパネルの前記一方面上を相対的に移動するように、前記塗布ヘッド又は前記第一のパネルの一方を移動させる移動工程と、 前記移動工程中に、前記ノズルから前記光硬化性樹脂を前記第一のパネルの前記一方面に吐出する塗布工程と、 前記塗布工程中に、前記第一のパネル上の前記光硬化性樹脂の膜厚をコントロールユニットにて制御する制御工程と、を含み、 前記制御工程では、 前記第一の領域、前記第二の領域及び前記段差における前記光硬化性樹脂の表面全体が平坦となるよう、前記コントロールユニットは前記第一の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚を前記第二の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚よりも薄くなるように制御し、 前記第一のパネルが光透過性を有するカバーパネルであり、 前記第二のパネルが画像表示パネルであり、 前記積層体が画像表示装置であり、 前記保持工程では、表面に光硬化性樹脂が塗布された前記カバーパネルを、前記表面が上向きの姿勢で保持し、 前記積層工程では、前記カバーパネルが貼り合わされる面が下向きの姿勢で前記画像表示パネルをその上側から吸着する吸着ユニットで保持し、かつ、前記画像表示パネルを前記カバーパネル上に重ね、 前記押圧工程では、 前記カバーパネルをその下側からフリーローラで前記画像表示パネル側に当接し、前記フリーローラを移動させることで、前記画像表示装置を厚み方向に押圧する、 ことを特徴とする製造方法。 【請求項16】 第一のパネルと第二のパネルとを備える積層体の製造装置であって、 請求項7に記載の塗布装置と、 前記塗布装置により、一方面に光硬化性樹脂が塗布された前記第一のパネルを保持する保持ユニットと、 前記第二のパネルを前記第一のパネルの前記一方面に重ねる積層ユニットと、 前記第一のパネルと前記第二のパネルとの積層体を厚み方向に押圧する押圧ユニットと、を備える、 ことを特徴とする製造装置。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2019-11-19 |
出願番号 | 特願2014-123794(P2014-123794) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(B05D)
P 1 651・ 537- YAA (B05D) P 1 651・ 161- YAA (B05D) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 赤澤 高之 |
特許庁審判長 |
加藤 友也 |
特許庁審判官 |
大島 祥吾 植前 充司 |
登録日 | 2018-09-21 |
登録番号 | 特許第6404606号(P6404606) |
権利者 | 平田機工株式会社 デクセリアルズ株式会社 |
発明の名称 | 塗布方法、塗布装置、製造方法及び製造装置 |
代理人 | 高柳 司郎 |
代理人 | 大塚 康弘 |
代理人 | 大塚 康徳 |
代理人 | 木村 秀二 |
代理人 | 高柳 司郎 |
代理人 | 木村 秀二 |
代理人 | 高柳 司郎 |
代理人 | 大塚 康徳 |
代理人 | 大塚 康徳 |
代理人 | 大塚 康弘 |
代理人 | 木村 秀二 |
代理人 | 大塚 康弘 |