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審決分類 |
審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 H01L 審判 一部申し立て 2項進歩性 H01L 審判 一部申し立て 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降) H01L 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載 H01L 審判 一部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 H01L |
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管理番号 | 1358629 |
異議申立番号 | 異議2018-700873 |
総通号数 | 242 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2020-02-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-10-26 |
確定日 | 2019-12-06 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6327232号発明「発光装置及び発光モジュールの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6327232号の明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1?7]、11について訂正することを認める。 特許第6327232号の請求項1?7、11に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6327232号(以下「本件特許」という。請求項の数は10である。)についての経緯は、次のとおりである。 平成27年10月30日 :出願 平成30年 4月27日 :特許登録 平成30年 5月23日 :特許掲載公報の発行 平成30年10月26日 :特許異議申立人中野圭二(以下、単に「申立人」という。)による請求項1?7に係る特許に対する特許異議の申立て 平成31年 1月16日付け:取消理由通知 平成31年 3月22日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和 元年 5月16日 :申立人による意見書の提出 令和 元年 5月30日付け:取消理由通知(決定の予告) 令和 元年 8月 5日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和 元年10月24日 :申立人による意見書の提出 なお、請求項8?10に係る特許に対しては、特許異議の申立てがされていない。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和元年8月5日付け訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1?7及び明細書(以下、この明細書を「本件明細書」という。)を、次のとおり訂正しようとするものである(下線は、訂正箇所として、特許権者が付したものである。)。 なお、本件訂正は、一群の請求項である訂正後の請求項[1?7、11]について請求されたものであるが、訂正後の請求項11については、別の訂正単位とする求めがなされている。また、本件明細書に係る訂正は、一群の請求項である訂正後の請求項[1?7、11]について請求されたものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「基材と、前記基材の上面に配置された正負の配線層と、を有する配線基板と、」と記載されているのを、「平板状の基材と、前記基材の上面に配置された正負の配線層と、を有する配線基板と、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項4?7も同様に訂正する。)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に「前記配線層にフリップチップ実装される発光素子と、」と記載されているのを、「前記配線層にフリップチップ実装された一個の発光素子と、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項4?7も同様に訂正する。)。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項1に「前記基材と前記配線層と前記発光素子とを被覆し、発光装置の外表面を形成する無機材料からなり、上面が平坦である保護膜と、」と記載されているのを、「前記基材と前記配線層と前記発光素子とを被覆し、前記配線基板の上面と前記発光素子の表面に沿って形成され、かつ発光装置の外表面を形成する無機材料からなり、上面が平坦である保護膜と、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項4?7も同様に訂正する。)。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項1に「前記配線層の外縁は曲線であり、該曲線の曲率は略一定であり、」と記載されているのを、「前記配線層の外縁は曲線であり、該曲線の曲率は一定であり、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項4?7も同様に訂正する。)。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項1に「前記配線層が前記配線基板の外縁よりも内側であることを特徴とする発光装置。」と記載されているのを、「前記配線層が前記基材の外縁よりも内側であることを特徴とする発光装置。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項4?7も同様に訂正する。)。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項2に「前記配線層の平面形状が略円形である請求項1に記載の発光装置。」と記載されているのを、「平板状の基材と、前記基材の上面に配置された正負の配線層と、を有する配線基板と、 前記配線層にフリップチップ実装され、紫外線領域の波長の光を出射する一個の発光素子と、 前記基材と前記配線層と前記発光素子とを被覆し、前記配線基板の上面と前記発光素子の表面に沿って形成され、かつ発光装置の外表面を形成する無機材料からなり、上面が平坦であって前記配線層の外縁から0.05mm?0.25mm離間された保護膜と、を備え、 前記配線層の外縁は曲線であり、該曲線の曲率は一定であり、かつ前記配線層の平面形状が円形であり、 前記配線層が前記基材の外縁よりも内側である発光装置。」に訂正する(請求項2の記載を引用する請求項4?7も同様に訂正する。)。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項3に「前記発光素子の中心から前記配線層の前記外縁までの距離は略等しい請求項1又は2に記載の発光装置。」とあるうち、請求項2を引用するものについて、独立形式に改め、「平板状の基材と、前記基材の上面に配置された正負の配線層と、を有する配線基板と、 前記配線層にフリップチップ実装され、紫外線領域の波長の光を出射する一個の発光素子と、 前記基材と前記配線層と前記発光素子とを被覆し、前記配線基板の上面と前記発光素子の表面に沿って形成され、かつ発光装置の外表面を形成する無機材料からなり、上面が平坦である保護膜と、を備え、 前記配線層の外縁は曲線であり、該曲線の曲率は一定であり、かつ前記配線層の平面形状が突出部分のない円形であり、 前記配線層が前記基材の外縁よりも内側であり、 前記発光素子の中心から前記配線層の前記外縁までの距離は等しい発光装置。」に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項4?7も同様に訂正する。)。 (8)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項4に「前記保護膜の厚みは、30nm?200nmであり、前記発光素子と前記基板とを隙間なく被覆する請求項1?3のいずれか1項に記載の発光装置。」と記載されているのを、「前記保護膜の厚みは、30nm?200nmであり、前記発光素子と前記配線基板とを隙間なく被覆する請求項1?3のいずれか1項に記載の発光装置。」に訂正する(請求項4の記載を引用する請求項5?7も同様に訂正する)。 (9)訂正事項9 特許請求の範囲の請求項7に「前記発光素子は、紫外線領域の波長の光を出射する請求項1?6のいずれか1項に記載の発光装置。」と記載されているのを、「前記発光素子は、200nm?410nmの波長の光を出射する請求項1?6のいずれか1項に記載の発光装置。」に訂正する。 (10)訂正事項10 特許請求の範囲の請求項3に「前記発光素子の中心から前記配線層の前記外縁までの距離は略等しい請求項1又は2に記載の発光装置。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、「平板状の基材と、前記基材の上面に配置された正負の配線層と、を有する配線基板と、 前記配線層にフリップチップ実装され、紫外線領域の波長の光を出射する一個の発光素子と、 前記基材と前記配線層と前記発光素子とを被覆し、前記配線基板の上面と前記発光素子の表面に沿って形成され、かつ発光装置の外表面を形成する無機材料からなり、上面が平坦であって前記配線層の外縁から0.05mm?0.25mm以上離間された保護膜と、を備え、 前記配線層の外縁は曲線であり、該曲線の曲率は一定であり、 前記配線層が前記基材の外縁よりも内側であり、 前記発光素子の中心から前記配線層の前記外縁までの距離は略等しい発光装置。」と記載し、新たに請求項11とする。 (11)訂正事項11 願書に添付した明細書の段落【0006】に「本発明の実施形態に係る発光装置は、基材と、前記基材の上面に配置された正負の配線層と、を有する配線基板と、前記配線層にフリップチップ実装される発光素子と、前記基材と前記配線層と前記発光素子とを被覆し、発光装置の外表面を形成する無機材料からなり、上面が平坦である保護膜と、を備え、前記配線層の外縁は曲線であり、該曲線の曲率が略一定であり、前記配線層が前記配線基板の外縁よりも内側である。」と記載されているのを、「本発明の実施形態に係る発光装置は、平板状の基材と、前記基材の上面に配置された正負の配線層と、を有する配線基板と、前記配線層にフリップチップ実装された一個の発光素子と、前記基材と前記配線層と前記発光素子とを被覆し、前記配線基板の上面と前記発光素子の表面に沿って形成され、かつ発光装置の外表面を形成する無機材料からなり、上面が平坦である保護膜と、を備え、前記配線層の外縁は曲線であり、該曲線の曲率が一定であり、前記配線層が前記基材の外縁よりも内側である。」に訂正する。 2 各訂正事項の訂正要件の判断 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的 訂正事項1は、請求項1に特定された「基材」を「平板状の」ものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。 イ 新規事項追加の有無 本件明細書の【0012】には、「配線基板10は、平板状であり、基材11と、少なくとも基材11の上面に設けられた正負の配線層12と、を有する。」と記載されている。 そうすると、「基材」が「平板状」であることは、本件明細書の記載からみて自明であるといえる。 したがって、訂正事項1は、新規事項を追加するものではない。 ウ 実質拡張変更の有無 上記ア及びイに照らして、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的 訂正事項2は、請求項1に特定された「前記配線層にフリップチップ実装される発光素子」の個数を「一個」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。 イ 新規事項追加の有無 本件特許の願書に添付した図面(以下「本件図面」という。)である図1、図2A及び図2Bからは、発光素子の個数が一個であることが見て取れる。 そして、この発光素子がフリップチップ実装されていることは、本件明細書の【0011】に記載されている。すなわち、当該【0011】には、「・・・図1は、本発明の実施形態1に係る発光装置の概略斜視図である。図2Aは、本発明の実施形態1に係る発光装置の概略平面図である。図2Bは、図2Aと形状の異なる配線層を備える配線基板を用いた発光装置の概略平面図である。・・・図1に示されるように、実施形態1の発光装置100は、配線基板10上に、発光素子20がフリップチップ実装されている。」との記載がある。 そうすると、「前記配線層にフリップチップ実装される発光素子」の個数が一個であることは、本件明細書及び本件図面に記載されていることである。 したがって、訂正事項2は、新規事項を追加するものではない。 ウ 実質拡張変更の有無 上記ア及びイに照らして、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項3について ア 訂正の目的 訂正事項3は、請求項1に特定された「保護膜」を、「前記配線基板の上面と前記発光素子の表面に沿って形成され」るものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。 イ 新規事項追加の有無 本件明細書の【0020】には、「・・・保護膜40は、図3に示されるように、配線基板10の上面と発光素子とを、孔や切れ目等の隙間なく被覆して」いるとの記載がある。また、本件図面の図3及び図4からは、保護膜40が配線基板10の上面と発光素子20の表面(側面と上面)に沿って形成されていることが見て取れる。 よって、「保護膜」が「前記配線基板の上面と前記発光素子の表面に沿って形成され」るものであることは、本件明細書及び本件図面からみて自明であるといえる。 したがって、訂正事項3は、新規事項を追加するものではない。 ウ 実質拡張変更の有無 上記ア及びイに照らして、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4)訂正事項4について ア 訂正の目的 訂正事項4は、請求項1における「略一定」という明瞭でない記載を、「一定」という明瞭な記載にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。 イ 新規事項追加の有無 訂正事項4が新規事項を追加するものではないことは、明らかである。 ウ 実質拡張変更の有無 上記ア及びイに照らして、訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (5)訂正事項5について ア 訂正の目的 訂正事項5は、請求項1における「前記配線層が前記配線基板の外縁よりも内側である」という明瞭でない記載を、「前記配線層が前記基材の外縁よりも内側である」という明瞭な記載にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。 イ 新規事項追加の有無 本件明細書の【0034】には、「・・・基材と基材上の中央部に配置された配線層とを有する配線基板・・・」との記載がある。 そうすると、本件訂正前の「前記配線層が前記配線基板の外縁よりも内側である」という記載が、「前記配線層が前記基材の外縁よりも内側である」という意味であったことが明らかである。 よって、訂正事項5は、新規事項を追加するものではない。 ウ 実質拡張変更の有無 上記ア及びイに照らして、訂正事項5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (6)訂正事項6について ア 訂正の目的 訂正事項6は、次の事項、すなわち、 (i) 請求項1の記載を引用する請求項2の記載を請求項1の記載を引用しないものとすること、 (ii) 請求項1に特定された「基材」を「平板状の」ものに限定すること、 (iii) 請求項1に特定された「発光素子」を「紫外線領域の波長の光を出射する」ものに限定すること、 (iv) 請求項1に特定された「前記配線層にフリップチップ実装される発光素子」の個数を「一個」に限定すること、 (v) 請求項1に特定された「保護膜」を、「前記配線基板の上面と前記発光素子の表面に沿って形成され」るものに限定すること、 (vi) 請求項1に特定された「保護膜」を、「前記配線層の外縁から0.05mm?0.25mm離間された」ものに限定すること、 (vii) 請求項1における「略一定」という明瞭でない記載を、「一定」という明瞭な記載にすること、 (viii) 請求項1における「前記配線層が前記配線基板の外縁よりも内側である」という明瞭でない記載を、「前記配線層が前記基材の外縁よりも内側である」という明瞭な記載にすること、 (ix) 請求項2における「略円形」という明瞭でない記載を、「円形」という明瞭な記載にすること、 を目的とするものである。 よって、訂正事項6は、特許請求の範囲の減縮、明瞭でない記載の釈明及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。 イ 新規事項追加の有無 (ア)上記ア(i)に係る訂正について 当該訂正は、いわゆる引用関係を解消するものにすぎないから、新規事項を追加するものではない。 (イ)上記ア(ii)、(iv)、(v)、(vii)及び(viii)に係る訂正について 当該各訂正は、上記(1)イ?(5)イと同様の理由で、新規事項を追加するものではない。 (ウ)上記ア(iii)に係る訂正について 本件明細書の【0002】、【0028】及び【0045】には、発光素子が紫外線領域の波長の光を発することが記載されている。 よって、当該訂正は、新規事項を追加するものではない。 (エ)上記ア(vi)に係る訂正について 本件明細書の【0045】には、「例えば、ノズル60が、配線層12の外縁から0.05mm?0.25mm離間した基材11上の保護膜40と接触するように、発光装置100を吸着させることができる。」と記載されている。このように、本件明細書には、保護膜40が、配線層12の外縁から、少なくとも0.05mm?0.25mm離間した位置まで存在することが記載されているといえる。 よって、当該訂正は、新規事項を追加するものではない。 (オ)上記ア(ix)に係る訂正について 当該訂正が新規事項を追加するものではないことは、明らかである。 (カ)新規事項追加の有無についての小括 したがって、訂正事項6は、新規事項を追加するものではない。 ウ 実質拡張変更の有無 上記ア及びイに照らして、訂正事項6は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (7)訂正事項7について ア 訂正の目的 訂正事項7は、次の事項、すなわち、 (i) 請求項1又は請求項2の記載を引用する請求項3の記載を請求項1の記載を引用しないものとすること、 (ii) 請求項2が引用する請求項1に特定された「基材」を「平板状の」ものに限定すること、 (iii) 請求項2が引用する請求項1に特定された「発光素子」を「紫外線領域の波長の光を出射する」ものに限定すること、 (iv) 請求項2が引用する請求項1に特定された「前記配線層にフリップチップ実装される発光素子」の個数を「一個」に限定すること、 (v) 請求項2が引用する請求項1に特定された「保護膜」を、「前記配線基板の上面と前記発光素子の表面に沿って形成され」たものに限定すること、 (vi) 請求項2が引用する請求項1における「略一定」という明瞭でない記載を、「一定」という明瞭な記載にすること、 (vii) 請求項2における「平面形状が略円形である」「前記配線層」を「平面形状が突出部分のない円形であ」るものに限定するとともに、「略円形」という明瞭でない記載を「円形」という明瞭な記載にすること、 (viii) 請求項2が引用する請求項1における「前記配線層が前記配線基板の外縁よりも内側である」という明瞭でない記載を、「前記配線層が前記基材の外縁よりも内側である」という明瞭な記載にすること、 (ix) 請求項3における「略等しい」という明瞭でない記載を、「等しい」という明瞭な記載にすること、 を目的とするものである。 よって、訂正事項7は、特許請求の範囲の減縮、明瞭でない記載の釈明及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。 イ 新規事項追加の有無 (ア)上記ア(i)に係る訂正について 当該訂正は、いわゆる引用関係を解消するものにすぎないから、新規事項を追加するものではない。 (イ)上記ア(ii)?(vi)及び(viii)に係る訂正について 当該各訂正は、上記(1)イ?(5)イ及び上記(6)イ(ウ)と同様の理由で、新規事項を追加するものではない。 (ウ)上記ア(vii)に係る訂正について 本件明細書の【0015】には、図2Aについて、「平面形状が円形の配線層12」との記載がある。そして、図2Aからは、配線層に突出部分のないことが見て取れる。 よって、当該訂正は、新規事項を追加するものではない。 (エ)上記ア(ix)に係る訂正について 当該訂正が新規事項を追加するものではないことは、明らかである。 (オ)新規事項追加の有無についての小括 したがって、訂正事項7は、新規事項を追加するものではない。 ウ 実質拡張変更の有無 上記ア及びイに照らして、訂正事項7は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (8)訂正事項8について ア 訂正の目的 訂正事項8は、請求項4における「前記基板」という明瞭でない記載を、「前記配線基板」という明瞭な記載にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。 イ 新規事項追加の有無 訂正事項8が新規事項を追加するものではないことは、明らかである。 ウ 実質拡張変更の有無 上記ア及びイに照らして、訂正事項8は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (9)訂正事項9について ア 訂正の目的 訂正事項9は、「紫外線領域」を「200nm?410nm」であることに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項追加の有無 本件明細書の【0028】には、「可視光に比べて紫外光(例えば発光波長200nm?410nm)」との記載がある。 よって、訂正事項9は、新規事項を追加するものではない。 ウ 実質拡張変更の有無 上記ア及びイに照らして、訂正事項9は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (10)訂正事項10について ア 訂正の目的 訂正事項10は、次の事項、すなわち、 (i) 請求項1又は請求項2の記載を引用する請求項3の記載を請求項2の記載を引用しないものとすること、 (ii) 請求項3が引用する請求項1に特定された「基材」を「平板状の」ものに限定すること、 (iii) 請求項3が引用する請求項1に特定された「発光素子」を「紫外線領域の波長の光を出射する」ものに限定すること、 (iv) 請求項3が引用する請求項1に特定された「前記配線層にフリップチップ実装される発光素子」の個数を「一個」に限定すること、 (v) 請求項3が引用する請求項1に特定された「保護膜」を、「前記配線基板の上面と前記発光素子の表面に沿って形成され」るものに限定すること、 (vi) 請求項3が引用する請求項1に特定された「保護膜」を、「前記配線層の外縁から0.05mm?0.25mm離間された」ものに限定すること、 (vii) 請求項3が引用する請求項1における「略一定」という明瞭でない記載を、「一定」という明瞭な記載にすること、 (viii) 請求項3が引用する請求項1における「前記配線層が前記配線基板の外縁よりも内側である」という明瞭でない記載を、「前記配線層が前記基材の外縁よりも内側である」という明瞭な記載にすること、 を目的とするものである。 よって、訂正事項10は、特許請求の範囲の減縮、明瞭でない記載の釈明及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。 イ 新規事項追加の有無 (ア)上記ア(i)に係る訂正について 当該訂正は、いわゆる引用関係を解消するものにすぎないから、新規事項を追加するものではない。 (イ)上記ア(ii)?(viii)に係る訂正について 当該各訂正は、上記(1)イ?(5)イ並びに上記(6)イ(ウ)及び(エ)と同様の理由で、新規事項を追加するものではない。 (ウ)新規事項追加の有無についての小括 したがって、訂正事項10は、新規事項を追加するものではない。 ウ 実質拡張変更の有無 上記ア及びイに照らして、訂正事項10は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (11)訂正事項11について ア 訂正の目的 訂正事項11は、訂正事項1?5に係る請求項1の訂正に伴い、明細書の記載を訂正後の請求項1の記載と整合させるためのものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。 イ 新規事項追加の有無 訂正事項10は、上記アの目的をもつ訂正であるから、訂正事項1?5と同様の理由(上記(1)イ?(5)イ)で、新規事項を追加するものではない。 ウ 実質拡張変更の有無 上記ア及びイに照らして、訂正事項10は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 訂正の適否についての小括 以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 よって、明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1?7]、11について訂正することを認める。 第3 本件訂正発明の認定 本件訂正は、上記第2のとおり認められたので、本件訂正後の請求項1?7及び11に係る発明(以下「本件訂正発明1」?「本件訂正発明7」及び「本件訂正発明11」といい、これらを総称して「本件訂正発明」という。)は、本件訂正後の請求項1?7及び11に記載された事項により特定される、次のとおりのものと認められる。 [本件訂正発明1] 「平板状の基材と、前記基材の上面に配置された正負の配線層と、を有する配線基板と、 前記配線層にフリップチップ実装された一個の発光素子と、 前記基材と前記配線層と前記発光素子とを被覆し、前記配線基板の上面と前記発光素子の表面に沿って形成され、かつ発光装置の外表面を形成する無機材料からなり、上面が平坦である保護膜と、を備え、 前記配線層の外縁は曲線であり、該曲線の曲率は一定であり、 前記配線層が前記基材の外縁よりも内側であることを特徴とする発光装置。」 [本件訂正発明2] 「平板状の基材と、前記基材の上面に配置された正負の配線層と、を有する配線基板と、 前記配線層にフリップチップ実装され、紫外線領域の波長の光を出射する一個の発光素子と、 前記基材と前記配線層と前記発光素子とを被覆し、前記配線基板の上面と前記発光素子の表面に沿って形成され、かつ発光装置の外表面を形成する無機材料からなり、上面が平坦であって前記配線層の外縁から0.05mm?0.25mm離間された保護膜と、を備え、 前記配線層の外縁は曲線であり、該曲線の曲率は一定であり、かつ前記配線層の平面形状が円形であり、 前記配線層が前記基材の外縁よりも内側である 発光装置。」 [本件訂正発明3] 「平板状の基材と、前記基材の上面に配置された正負の配線層と、を有する配線基板と、 前記配線層にフリップチップ実装され、紫外線領域の波長の光を出射する一個の発光素子と、 前記基材と前記配線層と前記発光素子とを被覆し、前記配線基板の上面と前記発光素子の表面に沿って形成され、かつ発光装置の外表面を形成する無機材料からなり、上面が平坦である保護膜と、を備え、 前記配線層の外縁は曲線であり、該曲線の曲率は一定であり、かつ前記配線層の平面形状が突出部分のない円形であり、 前記配線層が前記基材の外縁よりも内側であり、 前記発光素子の中心から前記配線層の前記外縁までの距離は等しい発光装置。」 [本件訂正発明4] 「前記保護層の厚みは、30nm?200nmであり、前記発光素子と前記配線基板とを隙間なく被覆する請求項1?3のいずれか1項に記載の発光装置。」 [本件訂正発明5] 「前記保護膜は、Al_(2)O_(3)、SiO_(2)、AlN、Si_(3)N_(4)のいずれかで形成されている請求項1?4のいずれか1項に記載の発光装置。」 [本件訂正発明6] 「前記保護膜は、前記無機材料が複数層積層されてなる請求項1?5のいずれか1項に記載の発光装置。」 [本件訂正発明7] 「前記発光素子は、200nm?410nmの波長の光を出射する請求項1?6のいずれか1項に記載の発光装置。」 [本件訂正発明11] 「平板状の基材と、前記基材の上面に配置された正負の配線層と、を有する配線基板と、 前記配線層にフリップチップ実装され、紫外線領域の波長の光を出射する一個の発光素子と、 前記基材と前記配線層と前記発光素子とを被覆し、前記配線基板の上面と前記発光素子の表面に沿って形成され、かつ発光装置の外表面を形成する無機材料からなり、上面が平坦であって前記配線層の外縁から0.05mm?0.25mm以上離間された保護膜と、を備え、 前記配線層の外縁は曲線であり、該曲線の曲率は一定であり、 前記配線層が前記基材の外縁よりも内側であり、 前記発光素子の中心から前記配線層の前記外縁までの距離は略等しい発光装置。」 第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の概要 平成31年3月22日付け訂正請求書により訂正された請求項1?7に係る特許に対して、当審が令和元年5月30日付けで特許権者に通知した取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の要旨は、次のとおりである。 なお、以下、「甲第1号証」などは、「甲1」などと表記する。 1 請求項1?7に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲2に記載された技術的事項並びに必要であれば周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 2 請求項1?7に係る発明は、甲2に記載された発明及び甲1に記載された技術的事項並びに必要であれば甲2に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 甲1:特開2008-288543号公報 甲2:特表2013-514642号公報 第5 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由に対する当審の判断 1 証拠に記載された事項の認定 (1)甲1について ア 本件特許に係る出願前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1には、次の記載がある。 (ア)「【発明が解決しようとする課題】」、 「このように、特許文献3で、ガラス封止部の安定性が良好なガラスの組成が明らかにされた。さらに、本願出願人らは、固体素子デバイスの耐久性を向上させるべく、ガラス封止部の安定性に加えて耐候性についても鋭意検討を重ねていた。」(【0008】)、 「本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ガラス封止部の安定性に加えて耐候性についても良好な固体素子デバイスを提供することにある。」(【0009】) (イ)「【課題を解決するための手段】」、 「前記目的を達成するため、本発明では、固体素子と、前記固体素子をマウントするとともに電力の受供給を行う電力受供給部と、前記固体素子を封止し、B_(2)O_(3)-SiO_(2)-Li_(2)O-Na_(2)O-ZnO-Nb_(2)O_(5)系のガラスからなるガラス封止部と、を備え、前記ガラスは、21wt%?23wt%のB_(2)O_(3)と、11wt%?13wt%のSiO_(2)と、1wt%?1.5wt%のLi_(2)Oと、2wt%?2.5wt%のNa_(2)Oと、を含む固体素子デバイスが提供される。」(【0010】) (ウ)「(第1の実施形態)」、 「図1は、本発明の第1の実施形態に係る固体素子デバイスとしてのLEDを示し、(a)はLEDの縦断面図、(b)はLED素子の側面図である。」(【0035】) 「ガラス封止部6は、B_(2)O_(3)-SiO_(2)-Li_(2)O-Na_(2)O-ZnO-Nb_(2)O_(5)系の熱融着ガラスからなり、Al_(2)O_(3)基板3上に上面6A及び側面6Bを有する矩形状に形成される。側面6Bは、ホットプレス加工によってAl_(2)O_(3)基板3と接着された板ガラスが、Al_(2)O_(3)基板3とともにダイサー(dicer)でカットされることにより形成される。ここで、熱融着ガラスとは加熱により溶融状態又は軟化状態として成形したガラスであり、ゾルゲル法により成形されるガラスと異なる。ゾルゲルガラスでは成形時の体積変化が大きいのでクラックが生じやすくガラスによる厚膜を形成することが困難であるところ、熱融着ガラスはこの問題点を回避することができる。また、ゾルゲルガラスでは細孔を生じるので気密性を損なうことがあるが、熱融着ガラスはこの問題点を生じることもなく、LED素子2の封止を的確に行うことができる。」(【0040】)、 「一般に、アルカリ酸化物は、ガラス作製時の溶解性を改善し、ガラスの軟化温度を低下させる効果が非常に大きい成分である。しかし、アルカリ酸化物は、相当量を超えて含有させた場合には、耐候性を著しく悪化させる成分でもある。アルカリ酸化物であるNa_(2)O、Li_(2)O及びK_(2)Oの中では、Li_(2)Oはガラスの軟化温度を低下させる効果が大きく、耐候性に及ぼす影響が最も小さい成分である。この中で、K_(2)Oは耐候性の悪化が最も激しい。Na_(2)Oは、Li_(2)OとK_(2)Oの中間的な性質を有する。」(【0069】)、 「ここで、B_(2)O_(3)-SiO_(2)-Li_(2)O-Na_(2)O-ZnO-Nb_(2)O_(5)系の熱融着ガラスにおいて、Na_(2)Oのみで熱物性を満足させようとした場合には、ガラスにおけるNa_(2)Oの含有量が大きくなりすぎて、上記のように極めて良好な耐候性を達成することが不可能となる。そして、極めて良好な耐候性を得ようとする場合には、試料15の様に、封着に適した熱物性のガラスが得られなくなる。ここで、封着に適したTg、At等の熱物性は、ガラス転移温度Tgでいうと500℃以下、好ましくは490℃以下であり、屈伏点Atでいうと540℃以下、好ましくは530℃以下である。そこで、試料10?試料14のように、Na_(2)Oのうち所定量をLi_(2)Oとすることにより、極めて良好な耐候性(表1においてA)を維持しつつ、封着用のガラスとしての良好な熱物性を満足させることが実現された。」(【0070】) (エ)「また、UV硬化樹脂の硬化用光源として用いられてきた水銀ランプの代替として、発光ピーク波長が370nmのLED素子を用いたLED光源用の封止材料に、B_(2)O_(3)-SiO_(2)-Li_(2)O-Na_(2)O-ZnO-Nb_(2)O_(5)系の熱融着ガラスを用いてもよい。従来は、LED素子の封止材が劣化するので、発光素子をベアの状態でステム上にマウントしハーメチックシールを利用して気密性を確保していた。これにより、固体素子デバイスが大型となり製造コストが嵩んでいたが、B_(2)O_(3)-SiO_(2)-Li_(2)O-Na_(2)O-ZnO-Nb_(2)O_(5)系の熱融着ガラスを用いて発光素子を封止することにより、発光素子からの光の取り出し効率を向上させて高出力化を図るとともに、固体素子デバイスを小型として製造コストを低減することができる。」(【0095】) (オ)「(第2の実施形態)」、 「図5は、本発明の第2の実施形態に係る固体素子デバイスとしてのLEDを示し、(a)はLEDの平面図、(b)はLEDの縦断面図、(c)はLEDの底面図である。」(【0108】)、 「(LED1の構成) このLED1は、図5(a)および(b)に示すようにフリップチップ型の複数のGaN系のLED素子2と、平面視にて正方形状に形成され複数のLED素子2をマウントする多層構造のAl_(2)O_(3)基板3と、Al_(2)O_(3)基板3の表面および層内にタングステン(W)で構成される形成される回路パターン4と、を有している。尚、回路パターン4には、さらにNi、Auめっきが施される。また、LED1は、LED素子2と回路パターン4とを電気的に接続するAuスタッドバンプ5と、LED素子2を封止するとともにAl_(2)O_(3)基板3と接着されるB_(2)O_(3)-SiO_(2)-Li_(2)O-Na_(2)O-ZnO-Nb_(2)O_(5)系の熱融着ガラスからなるガラス封止部6と、Al_(2)O_(3)基板3の裏面の四隅において層内の中間層から露出した底面回路パターン16A、16Cと、を有している。B_(2)O_(3)-SiO_(2)-Li_(2)O-Na_(2)O-ZnO-Nb_(2)O_(5)系の熱融着ガラスは、第1の実施形態で説明したものと同様の組成を有する。また、本実施形態においては、LED1は、Al_(2)O_(3)基板3の裏面に、LED素子2にて生じた熱を外部へ放散し銅箔からなる放熱パターン17とを有している。」(【0109】)、 「円形の外形を有するようAl_(2)O_(3)基板3の表面にてパターン形成される回路パターン4に、縦横について3個×3個の配列で合計9個のLED素子2(340μm角)が、Auスタッドバンプ5を介して互いの縦横間の距離が600μmとなるように密集して実装されている。」(【0110】)、 「Al_(2)O_(3)基板3は、Wからなる層内配線を含む多層構造を有し、図5(b)に示すように横方向の3個のLED素子2を直列に接続して素子群を形成している。また、Al_(2)O_(3)基板3は、図5(c)に示すようにLED素子2の素子群のアノードを底面回路パターン16Aのひとつに接続するとともに、素子群のカソードを底面回路パターン16Cに接続して構成されている。ここで、Al_(2)O_(3)基板3の裏面の四隅のうち3つにアノード用の底面回路パターン16Aが形成され、残りの1つにカソード用の底面回路パターン16Cが形成されている。そして、アノード用の各底面回路パターン16Aには3つの素子群のアノードがそれぞれ別個に接続される。また、カソード用の底面回路パターン16Cには、3つの素子群のカソードが全て接続されている。」(【0111】)、 「(第2の実施形態の効果) 上記した第2の実施形態によると、以下の効果が得られる。」(【0112】)、 「(1)複数個のLED素子2をLED素子2の幅の2倍以下の配列ピッチで密集させて実装する構成であっても、LED素子2およびガラス封止部6の熱膨張率αが同等であるので、クラックを生じることなく信頼性に優れるLED1が得られる。また、ガラス封止部6とAl_(2)O_(3)基板3についても同等の熱膨張率で形成されることにより、ガラス接着強度に優れる。」(【0113】)、 「(2)Al_(2)O_(3)基板3を用いることにより、発熱量の大なるGaN系LED素子2を密集させて実装する構成としても安定した放熱性が得られる。また、容易に直並列回路をパターン形成することができ、電解めっきを施す際の配線引き回しも容易に形成できる。」(【0114】)、 「(3)層内の中間層から外部電気接続端子を取り出し、底面に放熱用金属パターンを設けることで、密実装された9個のLED素子2を発光させることに基づいて生じる熱を放熱パターン17からヒートシンク等へ速やかに熱伝導させることが可能になる。」(【0115】)、 「なお、第2の実施形態のLED1についても、樹脂材料で透明樹脂を形成し、図4に示すような発光装置100を形成することが可能である。」(【0116】) イ 上記アによれば、甲1に記載された第2の実施形態について、次の事実が認められる。 (ア)LED1は、フリップチップ型の9個のGaN系のLED素子2と、平面視にて正方形状に形成され9個のLED素子2をマウントする多層構造のAl_(2)O_(3)基板3と、Al_(2)O_(3)基板3の表面および層内にタングステン(W)で構成される回路パターン4と、を有している。(【0109】・【0110】) (イ)Al_(2)O_(3)基板3は、平板状である。(図5(a)・図5(b)) (ウ)Al_(2)O_(3)基板3の表面にタングステン(W)で構成された回路パターン4は、円形の外形を有する一対の電極が、縦横について3個×3個の合計9個設けられてなり、しかも、横方向に3個並んだ一対の電極は、LED素子2が直列に接続した素子群を形成するように、相互に接続されている。当該回路パターン4は、Al_(2)O_(3)基板3の外縁よりも内側である。(【0110】・【0111】・図5(a)) (エ)Al_(2)O_(3)基板3を用いることにより、発熱量の大なるGaN系LED素子2を密集させて実装する構成としても安定した放熱性が得られる。(【0114】) (オ)LED1は、9個のLED素子2を封止するとともにAl_(2)O_(3)基板3と接着されるB_(2)O_(3)-SiO_(2)-LiO-Na_(2)O-ZnO-Nb_(2)O_(5)系の熱融着ガラスからなるガラス封止部6を備える。(【0109】・【0110】) (カ)ガラス封止部6は、9個のLED素子2とAl_(2)O_(3)基板3上の回路パターン4とAl_(2)O_(3)基板3とを被覆しており、Al_(2)O_(3)基板3上に上面及び側面を有する矩形状に形成される。(図5(b)・【0040】・【0110】) ウ 上記イによれば、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「フリップチップ型の9個のGaN系のLED素子2と、平面視にて正方形状に形成され9個のLED素子2をマウントする多層構造のAl_(2)O_(3)基板3と、Al_(2)O_(3)基板3の表面および層内にタングステン(W)で構成される回路パターン4と、を有しているLED1であって、 Al_(2)O_(3)基板3は、平板状であり、 Al_(2)O_(3)基板3の表面にタングステン(W)で構成された回路パターン4は、円形の外形を有する一対の電極が、縦横について3個×3個の合計9個設けられてなり、しかも、横方向に3個並んだ一対の電極は、LED素子2が直列に接続した素子群を形成するように、相互に接続されており、当該回路パターン4は、Al_(2)O_(3)基板3の外縁よりも内側であり、 Al_(2)O_(3)基板3を用いることにより、発熱量の大なるGaN系LED素子2を密集させて実装する構成としても安定した放熱性が得られ、 9個のLED素子2を封止するとともにAl_(2)O_(3)基板3と接着されるB_(2)O_(3)-SiO_(2)-LiO-Na_(2)O-ZnO-Nb_(2)O_(5)系の熱融着ガラスからなるガラス封止部6を備え、 前記ガラス封止部6は、9個のLED素子2とAl_(2)O_(3)基板3上の回路パターン4とAl_(2)O_(3)基板3とを被覆しており、Al_(2)O_(3)基板3上に上面及び側面を有する矩形状に形成される、 LED1。」 (2)甲2について ア 本件特許に係る出願前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2には、次の記載がある。 (ア)「【特許請求の範囲】」、 「オプトエレクトロニクス素子において、 - 動作時に光を放射するかまたは受光するのに適した活性領域(3)を備えた少なくとも1つのオプトエレクトロニクス的に活性な無機半導体素子(10)と、 - 少なくとも1つの表面領域(7)に、前記表面領域(7)を気密に覆う、原子間堆積によって被着したシーリング材料(6)とを有する、 ことを特徴とする、オプトエレクトロニクス素子。」(【請求項1】)、 「請求項1に記載の素子において、 - 前記半導体素子(10)は少なくとも1つの電気コンタクト層(4)を有しており、 - 前記シーリング材料(6)は、前記コンタクト層(4)または該コンタクト層(4)の部分領域を除いて前記半導体素子(10)の露出したすべての表面を完全に覆う、 ことを特徴とする素子。」(【請求項2】)、 「請求項1または2に記載の素子において、 - 前記半導体素子(10)は、取り付け面(9)によって支持体(11)に載置されている、 ことを特徴とする素子。」(【請求項3】)、 「請求項3に記載の素子において、 - 前記シーリング材料(6)は前記半導体素子(10)の露出したすべての表面を覆う、 ことを特徴とする素子。」(【請求項4】)、 「請求項3または4に記載の素子において、 - 前記半導体素子(10)は、少なくとも1つの電気コンタクト素子(21)を介して前記支持体(11)に電気接続されており、 - 前記シーリング材料(6)は当該電気コンタクト素子(21)を覆っている ことを特徴とする素子。」(【請求項5】)、 「請求項3から5までのいずれか1項に記載の素子において、 - 前記シーリング材料(6)は、前記支持体(11)の表面(17)の少なくとも一部を覆っている、 ことを特徴とする素子。」(【請求項6】) (イ)「少なくとも1つの実施形態によれば、オプトエレクトロニクス素子は、例えば、動作時に光を放射するまたは受光するのに適した活性領域を備えた、少なくとも1つのオプトエレクトロニクス的に活性な無機半導体素子を有する。この半導体素子は、原子層堆積によってシーリング材料が被着された少なくとも1つの表面領域を有し、ここではこのシーリング材料により、上記の表面領域が気密に覆われる。」(【0018】)、 「ここおよび以下において光とは、殊に紫外線から赤外線のスペクトル領域における電磁ビーム、すなわち例えば可視のスペクトル領域における電磁ビームのことであるが、これに限定するわけではない。」(【0019】)、 「上記のオプトエレクトロニクス的に活性な無機半導体素子は、殊に動作時に光を放射し、このためにこの無機半導体素子は、発光ダイオード(LED)、端面放射型半導体レーザ、垂直放射型半導体レーザ(VCSEL)、レーザアレイまたはこれらの複数個またはその組み合わせを有することができるか、または上記の素子のうちの1つとすることが可能である。択一的または付加的に上記のオプトエレクトロニクス的に活性な無機半導体素子は、動作時に受光し、このためこの無機半導体素子は、フォトダイオード、太陽電池、太陽電池パネル、フォトトランジスタまたはその複数個またはその組み合わせを有することができるか、または上記の素子のうちの1つとすることが可能である。上記の半導体素子は、このために1つまたは複数の機能的な半導体積層体を有することができ、この半導体積層体は、材料群AlGaAs,InGaAlP,AlInGaNから、またはII-VI化合物半導体システムまたはその他の半導体材料から選択された2元、3元または4元のIII-V化合物半導体システムから選択される。上記の半導体積層体は、例えばpn接合部、ダブルヘテロ構造、単一量子井戸構造(SQW構造)あるいは多重量子井戸構造(MQW構造)などの少なくとも1つの光放射または受光性の活性領域ならびに例えば金属層などの電気コンタクト層を有することができる。上記のような半導体積層体および構造は、従来技術から公知であるため、ここではこれ以上に説明しない。」(【0020】)、 「上記のシーリング材料が被着される表面領域には、例えば、半導体レーザとして実施された半導体素子におけるレーザ端面か、またはLED、レーザダイオードまたはフォトダイオードの露出されたpn接合部を含めることができる。これらは、周囲環境の影響およびその他の経年変化作用に対して殊に影響を受け易い。 」(【0021】)、 「上記のシーリング材料により、上記の表面領域は気密に覆われ、これによってシーリングかつカプセリングされる。このことが意味し得るのは、例えば湿気および/または酸素がこのカプセリング装置に浸入できないことである。殊に上記のシーリング材料により、半導体素子の表面領域上に気密のシーリング層を形成することができ、このシーリング層により、半導体素子が湿気および/または酸素から保護されて、周囲環境からの湿気および/または酸素がこの表面領域を介して半導体素子に浸入することができず、この半導体素子の機能および/または組成が損なわれたり、損傷されることがないのである。湿気および/または酸素からの保護の他に上記のシーリング材料により、別の周囲の影響および殊に別の原子または分子材料に対し、効果的なバリアによる保護も提供される。」(【0022】)、 「さらに原子間堆積によって被着された気密のシーリング材料は、例えばCVD,スパッタリング、または蒸着などの方法によって被着された層に比べ、厚さおよび材料が同等の場合、機械的な安定度が高く、ひいては引っ掻きなどの機械的な影響に対する保護作用が高い。」(【0023】)、 「原子間堆積法("atomic layer deposition",ALD)では、気相で準備した少なくとも2つの出発材料または出発化合物(前駆物質"precursor")の化学反応により、上記の半導体素子の表面または表面領域に上記のシーリング材料からなる層を形成することができる。従来のCVD法と比較すると、原子間堆積では上記の複数の出発材料は、周期的に相前後して反応チャンバに入れられる。ここではまず、気相の少なくとも2つの出発化合物のうちの第1出発化合物を、上記の半導体素子が準備される反応チャンバに供給する。第1出発材料は、少なくとも1つの表面領域において吸収される。この際に殊に有利になり得るのは、第1出発化合物の分子が、不規則にまた長範囲規則度なしに上記の表面領域に吸収され、ひいては少なくとも部分的に非晶質のカバーが形成される場合である。少なくとも1つの表面領域を第1出発化合物によって有利には完全にまたはほぼ完全に覆った後、上記の少なくとも2つの出発化合物の第2出発化合物を供給することができる。第2出発化合物は、上記の表面領域において吸収される第1出発材料と反応することができ、これによって上記のシーリング材料の最大1つの単一層または準単一層を形成することができる。その後、再び第1出発化合物を供給する。この第1出発化合物は、形成された上記の準単一層または単一層上に堆積させることができ、または場合によっては、いまなお露出したままの、少なくとも1つの表面領域の領域上に堆積させることができる第2出発化合物をさらに供給することにより、別の準単一層または単一層を作製することができる。上記の複数の出発化合物のガスを入れる間に、上記の反応チャンバを洗浄ガスによって、殊に例えばアルゴンなどの不活性ガスによって洗い流し、出発化合物をそれぞれ入れる前に、有利にも前の出発材料がもはや反応チャンバに残っていないようにすることができる。これにより、上記の複数の部分反応を互いにはっきり分けて、少なくとも1つの表面領域に制限することができる。したがって原子間堆積の重要な特徴は、自己制限的な部分反応特性である。このことが意味するのは、部分反応の出発化合物がそれ自体または配位子と、それ自体から反応しないことであり、これにより、部分反応の層成長速度は、任意に長い時間においても制限され、またガス量は、上記の少なくとも1つの表面領域において上記のシーリング材料の最大で1つの単一層に制限されるのである。方法パラメタおよび反応チャンバに応じて、ならびにシーリング材料ないしは出発化合物の材料に依存して、1サイクルは数ミリ秒から数秒間持続する。この場合、1サイクル当たり、約0.1ないし約3オングストロームの厚さの、シーリング材料からなる層を形成することができる。」(【0024】)、 「上記のシーリング材料は、原子間堆積を用いて1ナノメートル以上、有利には5ナノメートル以上、殊に有利には10ナノメートル以上かつ500nm以下の厚さで被着することができる。殊にこのシーリング材料は、200ナノメートル以下、殊に有利には100ナノメートル以下、殊に有利には50ナノメートル以下の厚さを有し得る。このことが意味し得るのは、シーリング材料が、1単一層以上、有利には10単一層かつ5000単一層以下の層から形成されることである。シーリング材料を被着する層品質が高いことと厚さが大きいこととより、このような厚さは、その下にある少なくとも1つの半導体素子表面領域が湿気および/または酸素から有効に保護されることを保証するのに十分になり得る。シーリング材料の厚さが小さければ小さいほど、シーリング材料から層を作製するための時間的コストおよび材料コストが少なくなり、これによって高い経済性を得ることができる。シーリング材料からなる層が厚ければ厚いほど、それだけ例えば機械的な損傷に対してこのシーリング材料の抵抗力を大きくすることができ、またシーリング材料の気密のカプセリング特性の耐性をそれだけ強くすることができる。」(【0025】)、 「上で説明したように被着されかつ少なくとも1つの表面領域を覆うシーリング材料は、このように形成されるシーリング層の層厚が、反応サイクルの数だけに依存し、これにより、層厚を正確かつ簡単に制御することができるという利点を有する。さらに、有利にも上記の出発化合物を反応チャンバに供給する各ガス流の均一性にはわずかな要求しか課せられないため、シーリング材料は、殊に有利にも均一かつ一様に、殊に大きな面積上にも被着することができる。上記の出発化合物を別個に添加およびドーピングすることにより、上記の気相において反応を阻止することができるため、例えば蒸着またはCVDなどの方法では使用できない高反応性の出発化合物も使用することができる。上で説明した順序および安定したドーピングにより、各反応ステップには完成までに十分な時間が残っているため、有利にも比較的プロセス温度が低い場合であっても上記のシーリング材料から高純度の層を作製することができる。さらに第1出発化合物の吸収およびこれに続く第2出発化合物との化学反応は、上記のガスが到達できる表面全体で行われるため、この表面は、幾何学的な状態、また場合によって存在する粒子、例えばいわゆるピンホールなどの開口部、および孔には実質的に依存せずに、連続して行われる反応サイクルによって次第に覆われて密閉される。」(【0026】)、 「さらに上記のシーリング材料は、スパッタリング、蒸着またはCVDによって作製される層と比べ、上記の少なくとも1つの表面領域上に欠陥なしに作製することができる。このことが意味するのは、例えば、湿気および/または酸素および/または別の原子または分子材料が、シーリング材料を通って少なくとも1つの表面領域に移動し得るいわゆるピンホールまたはマイクロチャネルがシーリング材料にないことである。」(【0027】)、 「上記のシーリング材料は有利には電気的に絶縁性であり、光学的に透過であり、かつ例えばアルミニウム、シリコン、チタン、ジルコン、タンタルおよびハフニウムから選択された1つまたは複数との酸化物、窒化物または酸窒化物を有し得る。例えばシーリング材料は、Al_(2)O_(3),SiO_(2),Si_(3)N_(4),TiO_(2),ZrO_(2),Ta_(2)O_(5),HfO_(2),Y_(2)O_(3)の材料のうちの1つまたは複数の材料を有し得る。出発化合物としては、例えば上記の材料の水素化物または有機金属化合物が適しており、ならびに酸素ないしは窒素に対する出発化合物としての例えばアンモニウム、笑気ガスまたは水が適している。」(【0028】)、 「上記のシーリング材料によって半導体素子の可能な限りに効果的なカプセリングを得るために有利であり得るのは、シーリング材料が覆う少なくとも1つの表面領域に上記の半導体素子の1つまたは複数の表面、裏面および/または側面が含まれる場合である。」(【0029】)、 「さらに上記の半導体素子は、半導体素子を電気的に接続するのに適した少なくとも1つの電気コンタクト層を有することができる。この電気コンタクト層は、例えば1つまたは複数の金属層を含むか、またはこのような金属層とすることができる。ここで上記の少なくとも1つの表面領域は、上記のコンタクト層またはこのコンタクト層の部分領域を除いて半導体素子の露出したすべての表面を含むことができる。言い換えると上記のシーリング材料は、コンタクト層またはこのコンタクト層の部分領域を除いて半導体素子の露出したすべての表面を完全に覆うことができるのである。これにより、半導体素子の露出した表面のカプセリングおよびシーリングを達成することでき、ここで上記の電気コンタクト層は、シーリング材料を被着した後でも電気的に接触接続可能である。」(【0030】)、 「ここおよび以下で露出した表面とは、オプトエレクトロニクス素子を完成した後、例えば酸素および湿気などの周囲の原子または分子材料がこの表面に到達し得るという形態で、周囲と接触接続し得る表面および表面領域のことである。したがって酸素透過性および/または水透過性のプラスチック層などの気密でない層によって覆われている表面または表面領域も、ここでは上記の用語の下では露出していることになる。殊に、オプトエレクトロニクス素子が支持体を有しており、かつ表面または表面領域が、支持体への半導体素子の取り付けのために使用され、したがって取り付け面を構成している場合、表面または表面領域はここで使用している意味で露出していないのである。」(【0031】)、 「殊に上記の半導体素子は取り付け面によって支持体に載置することができる。この支持体は、例えばヒートシンク、プリント基板、導体フレーム、ケーシング体またはこれらの組み合わせを有するかそのようなものとすることが可能である。上記の半導体素子は、取り付け面により、例えばハンダ付け、陽極ボンディングまたは接着によって上記の支持体に機械的に取り付けることができる。付加的には半導体素子、上記の取り付け面を介して上記に支持体に電気的に接続することも可能である。この場合にこの取り付け面は、付加的に電気コンタクト層として構成することができる。」(【0032】)、 「支持体に載置される半導体素子では、シーリング材料によって気密に覆われる少なくとも1つの表面領域は、半導体素子の露出したすべての表面、殊に取り付け面以外のすべての表面を含むことができるため、シーリング材料は、半導体素子の露出したすべての表面を覆うのである。この実施形態では半導体素子は、上記の取り付け面を除いて全面がシーリング材料によって包囲されるため、この半導体素子の効果的なカプセリングが可能になる。」(【0033】)、 「さらに上記の半導体素子は付加的に、電気コンタクト素子を介して上記の支持体に接続することができる。このために半導体素子は、上記の取り付け面とは異なる表面に電気コンタクト層を有しており、この電気コンタクト層に電気コンタクト素子が接続される。この電気コンタクト素子は、例えばボンディングワイヤまたは金属層とすることができる。さらに殊に有利には半導体素子の電気コンタクト層と共に上記のシーリング材料により、この電気コンタクト素子を覆うことができる。」(【0034】)、 「さらに上記のシーリング材料は、上記の支持体の表面の少なくとも一部を覆うことができる。殊に上記のシーリング材料は、支持体の表面とつながって、半導体素子の少なくとも1つの表面領域に延在することができるため、シーリング材料は、半導体素子と支持体との間の取り付け領域も覆うことができる。」(【0035】)、 「さらに上記の支持体は、電気的な接続領域を有することができ、この接続領域により、例えば制御回路または電流供給部にオプトエレクトロニクス素子を接続することができる。シーリング材料は、支持体の接続領域を除いて支持体および半導体素子の露出したすべての表面を覆うことができるため、この支持体は半導体素子と共に、この支持体の接続領域を除いたすべての表面においてシーリング材料によって気密に覆われるのである。」(【0036】) (ウ)「殊に後者は、有害なガスなどの損傷を与える影響から保護しなければならない。それは、半導体積層体2の個々の層および殊に活性領域3が露出しているからである。したがって図1Bに示した後続の方法ステップにおいて、上記の一般的な説明部分で説明した原子間堆積によって表面領域7にシーリング材料6を被着する。このシーリング材料には図示の実施例において、電気絶縁性の光学的に透明な酸化物または窒化物、例えばチタン酸化物、シリコン酸化物または窒化ケイ素が含まれ、または一般的の説明部分で挙げた別の材料も含まれる。シーリング材料6は、500nm以下の厚さで、また有利には10nmないし100nmの厚さで被着される。原子間堆積を用いたこの被着により、シーリング材料6が表面領域7を気密にカバーするため、殊にトレンチ92によって露出した半導体積層体2の側面は、引っ掻きに強くまた気密にシーリングかつカプセリングされる。さらにシーリング材料6により、後に得られる半導体素子10において側面およびチップエッジを介する漏れ電流を回避することができる。この漏れ電流は、このようにしなければ、動作に対する安定性のリスクになり得るものである。受光式の半導体素子10として実施される半導体素子10に対しては、この半導体素子は、漏れ電流によって暗電流故障にもなり得る。」(【0066】) (エ)「図9には別の実施例による半導体素子10を有するオプトエレクトロニクス素子600が示されている。」(【0088】)、 「オプトエレクトロニクス素子600は、支持体11を有しており、この支持体は、その上に取り付けられる半導体素子10用のヒートシンクとして構成されており、また半導体素子10の電気的な接触接続のための電気接続層15,16を有する。半導体素子10は、取り付け面9により、電気接続層15上に取り付けられており、取り付け面9は、半導体素子10を電気接続するための(図示しない)電気コンタクト層も構成している。この取り付け面とは反対側の面において、半導体素子10は、導電層として構成された電気コンタクト素子21により、支持体の接続層16に電気的に接続されている。これに加え、電気コンタクト素子21と半導体素子10との間に電気絶縁層18が複数の領域に配置されており、これによって電気コンタクト素子1は、半導体素子10の側面において電気コンタクト素子21から電気的に絶縁されている。」(【0089】)、 「半導体素子10は、半導体素子10の露出したすべての表面および電気コンタクト素子21を含む表面領域7上で、原子間堆積法によって被着されたシーリング材料6によってカバーされて気密にシーリングされる。さらに上記の支持体の表面領域17もシーリング材料6によって覆われている。これによって半導体素子10の全面的なカプセリングが得られる。」(【0090】)、 「従来技術において公知のケーシングに比べ、シーリング材料6により、カプセル化されたオプトエレクトロニクス素子600の極めてコンパクトなサイズが得られる。有利であるのは、これがまさに、図示の層状の電気コンタクト層21を用いた電気コンタクトとの組み合わせにおいて行われることである。それは、半導体チップと電気給電部との間でふつう使用されるボンディングワイヤの形態の電気接続部は、公知のケーシングを省略する際には構造高さに大きく影響することになるからである。さらにボンディングワイヤとして実施される電気コンタクト素子21に比べて、図示したケーシングのない構造形態において、例えばボンディングワイヤが破損することによってオプトエレクトロニクス素子600が損傷してしまう危険性も低減される。」(【0091】) (オ)「図10には別の実施例による半導体素子10を有するオプトエレクトロニクス素子700が示されており、この素子は、上の実施例とは異なり、電気コンタクト素子21としてボンディングワイヤを有する。ここでは露出したすべての表面ないしは表面領域7における半導体素子10全体ならびにボンディングワイヤ21がシーリング材料6によって覆われている。さらに電気接続層15を有する支持体も、接続領域22を除いてすべての表面17がシーリング材料6に覆われているため、オプトエレクトロニクス素子700の包括的なシーリングが得られる。接触接続のために電気端子層15,16にアクセス可能な電気接続領域22により、オプトエレクトロニクス素子700を外部の電流供給部および/または制御電子装置に電気接続することができる。」(【0092】)、 「さらにオプトエレクトロニクス素子700は、透明なケーシング材料20を有しており、このケーシング材料により、半導体素子10および支持体11の一部が包囲される。ケーシング材料20は、気密性でないプラスチックを有する。」(【0093】)、 「これに対して気密のプラスチックケーシングまたは金属ケーシングにオプトエレクトロニクス素子を従来のようにカプセリングすることは、上で示した実施例に比べると極めて繁雑である。それは、周囲環境とのすべての境界面は、高々気密性についての要求を満たさなければならず、これは比較的繁雑な手法および材料でしか実現できないからである。上記のケーシングによって気密のシーリングも形成しなければならないのがふつうでないとしても、上記のケーシングそれ自体は、殊に、例えば扱いやすさ、熱放出および/または光学特性などの別の要求を満たすため、多くの場合に格段に簡単に実施することができる。シーリング材料6と組み合わせることにより、格段に簡単なケーシングを使用することができ、ここでは気密なシーリングが保証されるが、カプセリングのためにコストのかかる公知の方法および材料を同時に回避することができる。」(【0094】) (カ)「図11には別の実施例によるオプトエレクトロニクス素子800が示されており、このオプトエレクトロニクス素子は、ヒートシンク、導体フレーム、ボードまたは分割基板として実施された支持体11上に多数の半導体素子10を有する。図示の実施例において半導体素子10はLEDとして構成されているため、オプトエレクトロニクス素子800は発光高出力モジュールである。半導体素子10は、露出した各表面において支持体11と関連して一緒にシーリング材料6によって覆われている。このことは図11に略示したとおりである。」(【0095】)、 「電気接続路15,16だけが、図示した領域において電気接続領域として構成されているため、シーリング材料6がない。」(【0096】)、 「ここで示したオプトエレクトロニクス素子のようなオプトエレクトロニクス素子において、殊に半導体素子10が極めて密に並んで、例えばアレイ構成で配置されている場合にあっても原子間堆積によって被着したシーリング材料6により、殊に大きな利点が得られる。ここでは原子間堆積により、コスト的に有利であり、面積が大きく、光学的に透過性であり、かつ気密なシーリングないしはカプセリングの被着が可能であり、場合によって存在し得る半導体素子10間の狭いギャップも高い信頼性かつ均一にシーリングされる。ここでシーリング材料6は、有利には半導体素子10の光学的な機能に影響を及ぼさない光学的に透過性の材料を有することができる。」(【0097】)、 「択一的には半導体素子10は、少なくとも部分的にまたはすべてをレーザダイオードおよび/またはフォトダイオードとして構成することができる。さらにここでは、分割基板への半導体素子10およびそれらの電気接続路の取り付けの枠内において原子間堆積を用いたシーリング材料の被着を実行することも可能である。」(【0098】)、 「この場合、引き続いて、シーリングを必要としない光学的な構成部材などの付加的なコンポーネントの取り付けを行うことができる。」(【0099】) イ 上記アによれば、甲2の請求項6に記載された発明であって、請求項1,3及び4に従属する発明について、次の事実が認められる。 (ア)請求項6に記載された発明であって、請求項1,3及び4に従属する発明は、次のとおりである。 「オプトエレクトロニクス素子において、 - 動作時に光を放射するかまたは受光するのに適した活性領域(3)を備えた少なくとも1つのオプトエレクトロニクス的に活性な無機半導体素子(10)と、 - 少なくとも1つの表面領域(7)に、前記表面領域(7)を気密に覆う、原子間堆積によって被着したシーリング材料(6)とを有する、 オプトエレクトロニクス素子であって、 前記半導体素子(10)は、取り付け面(9)によって支持体(11)に載置されており、 前記シーリング材料(6)は前記半導体素子(10)の露出したすべての表面を覆い、 前記シーリング材料(6)は、前記支持体(11)の表面(17)の少なくとも一部を覆っている、 オプトエレクトロニクス素子。」 そして、上記の「オプトエレクトロニクス素子」の発明を、「支持体(11)」を構成として含めた「発光装置」の発明として整理すると、次のとおりである。 「オプトエレクトロニクス素子と支持体(11)とを備える発光装置において、 前記オプトエレクトロニクス素子は、 - 動作時に光を放射するかまたは受光するのに適した活性領域(3)を備えた少なくとも1つのオプトエレクトロニクス的に活性な無機半導体素子(10)と、 - 少なくとも1つの表面領域(7)に、前記表面領域(7)を気密に覆う、原子間堆積によって被着したシーリング材料(6)とを有する、 オプトエレクトロニクス素子であって、 前記半導体素子(10)は、取り付け面(9)によって支持体(11)に載置されており、 前記シーリング材料(6)は前記半導体素子(10)の露出したすべての表面を覆い、 前記シーリング材料(6)は、前記支持体(11)の表面(17)の少なくとも一部を覆っている、 オプトエレクトロニクス素子である、 発光装置。」 (イ)シーリング材料は、原子間堆積によって被着された気密のものである。このようなシーリング材料は、例えばCVD,スパッタリング、または蒸着などの方法によって被着された層に比べ、厚さおよび材料が同等の場合、機械的な安定度が高く、ひいては引っ掻きなどの機械的な影響に対する保護作用が高い。(【0023】) (ウ)シーリング材料は、原子間堆積を用いて1ナノメートル以上、有利には5ナノメートル以上、殊に有利には10ナノメートル以上かつ500nm以下の厚さで被着することができる。シーリング層の層厚は、反応サイクルの数だけに依存し、これにより、層厚を正確かつ簡単に制御することができる。(【0025】・【0026】) (エ)シーリング材料は、スパッタリング、蒸着またはCVDによって作製される層と比べ、少なくとも1つの表面領域上に欠陥なしに作製することができる。(【0027】) (オ)シーリング材料は、アルミニウム、シリコンから選択された1つまたは複数との酸化物、窒化物を有し得るものである。(【0028】) (カ)シーリング材料は、半導体素子の表面及び側面を覆うことができる。さらに、シーリング材料は、電気接続層を有する支持体の表面を、電気接続層を含めて、覆うことができる。(【0029】・【0033】・【0035】・【0089】・【0090】・【0092】・図9・図10) (キ)半導体素子は、動作時に、紫外線から赤外線のスペクトル領域に属する電磁ビームを放射する。(【0018】・【0019】) ウ 上記イによれば、甲2には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。 「オプトエレクトロニクス素子と支持体(11)とを備える発光装置において、 前記オプトエレクトロニクス素子は、 - 動作時に光を放射するかまたは受光するのに適した活性領域(3)を備えた少なくとも1つのオプトエレクトロニクス的に活性な無機半導体素子(10)と、 - 少なくとも1つの表面領域(7)に、前記表面領域(7)を気密に覆う、原子間堆積によって被着したシーリング材料(6)とを有する、 オプトエレクトロニクス素子であって、 前記半導体素子(10)は、取り付け面(9)によって支持体(11)に載置されており、 前記シーリング材料(6)は前記半導体素子(10)の露出したすべての表面を覆い、 前記シーリング材料(6)は、前記支持体(11)の表面(17)の少なくとも一部を覆っており、 シーリング材料は、アルミニウム、シリコンから選択された1つまたは複数との酸化物、窒化物を有し得るものであり、 シーリング材料は、原子間堆積を用いて1ナノメートル以上、有利には5ナノメートル以上、殊に有利には10ナノメートル以上かつ500nm以下の厚さで被着することができ、シーリング層の層厚は、反応サイクルの数だけに依存し、これにより、層厚を正確かつ簡単に制御することができ、 原子間堆積によって被着された気密のシーリング材料は、例えばCVD,スパッタリング、または蒸着などの方法によって被着された層に比べ、厚さおよび材料が同等の場合、機械的な安定度が高く、ひいては引っ掻きなどの機械的な影響に対する保護作用が高く、 シーリング材料は、半導体素子の表面及び側面を覆うことができ、さらに、シーリング材料は、電気接続層を有する支持体の表面を、電気接続層を含めて、覆うことができ、 シーリング材料は、スパッタリング、蒸着またはCVDによって作製される層と比べ、上記の少なくとも1つの表面領域上に欠陥なしに作製することができる、 オプトエレクトロニクス素子である、 発光装置。」 2 甲1発明を主引用発明とする進歩性欠如について (1)本件訂正発明1について ア 対比 (ア)本件訂正発明1の「平板状の基材と、前記基材の上面に配置された正負の配線層と、を有する配線基板と、」との特定事項について a 甲1発明の「平板状」の「Al_(2)O_(3)基板3」は、本件訂正発明1の「平板状の基材」に相当する。 b 甲1発明の「Al_(2)O_(3)基板3の表面にタングステン(W)で構成される回路パターン4」は、上記aにも照らせば、本件訂正発明1の「前記基材の上面に配置された」「配線層」に相当する。そして、甲1発明の「配線層」は、「一対の電極が、縦横について3個×3個の合計9個設けられてなり、しかも、横方向に3個並んだ一対の電極は、LED素子2が直列に接続した素子群を形成するように、相互に接続されて」いるから、本件訂正発明1でいう「正負の配線層」であるといえる。 c 甲1発明の「Al_(2)O_(3)基板3」とその「表面にタングステン(W)で構成される回路パターン4」は、上記a及びbにも照らせば、本件訂正発明1の「配線基板」に相当する。 d よって、甲1発明は、本件訂正発明1の「平板状の基材と、前記基材の上面に配置された正負の配線層と、を有する配線基板と、」との特定事項を備える。 (イ)本件訂正発明1の「前記配線層にフリップチップ実装された一個の発光素子と、」との特定事項について a 甲1発明の「LED素子2」は、本件訂正発明1の「発光素子」に相当する。 b 甲1発明の「発光素子」は、「フリップチップ型」であるから、上記(ア)にも照らせば、本件訂正発明1でいう「前記配線層にフリップチップ実装された」ものといえる。 c よって、甲1発明は、本件訂正発明1の「前記配線層にフリップチップ実装され」た「発光素子と、」との特定事項を備える。 しかし、甲1発明は、LED素子2を「9個」備えるから、本件訂正発明1の「一個の」との特定事項を備えない。 (ウ)本件訂正発明1の「前記基材と前記配線層と前記発光素子とを被覆し、前記配線基板の上面と前記発光素子の表面に沿って形成され、かつ発光装置の外表面を形成する無機材料からなり、上面が平坦である保護膜と、を備え、」との特定事項について a 甲1発明の「9個のLED素子2を封止するとともにAl_(2)O_(3)基板3と接着されるB_(2)O_(3)-SiO_(2)-LiO-Na_(2)O-ZnO-Nb_(2)O_(5)系の熱融着ガラスからなるガラス封止部6」であって、「9個のLED素子2とAl_(2)O_(3)基板3上の回路パターン4とAl_(2)O_(3)基板3とを被覆しており、Al_(2)O_(3)基板3上に上面及び側面を有する矩形状に形成される」「ガラス封止部6」は、本件訂正発明1の「前記基材と前記配線層と前記発光素子とを被覆し、前記配線基板の上面と前記発光素子の表面に沿って形成され、かつ発光装置の外表面を形成する無機材料からなり、上面が平坦である保護膜」とは、上記(ア)及び(イ)にも照らせば、「前記基材と前記配線層と前記発光素子とを被覆し、」「光装置の外表面を形成する無機材料からなり、上面が平坦である保護」部材である点で一致する。 b しかし、甲1発明の保護部材は、本件訂正発明1でいう「前記配線基板の上面と前記発光素子の表面に沿って形成され」る「膜」ではなく、「Al_(2)O_(3)基板3上に上面及び側面を有する矩形状に形成される」「B_(2)O_(3)-SiO_(2)-LiO-Na_(2)O-ZnO-Nb_(2)O_(5)系の熱融着ガラスからなる」ものである。 c 上記bの認定に対し、申立人は、令和元年10月24日付け意見書及び同年5月16日付け意見書において、本件訂正発明1が「保護膜」について「前記配線基板の上面と前記発光素子の表面に沿って形成され」ると特定するのみでは、当該保護膜は、甲1の図1、図3及び図5等に記載された構成と差異がない旨主張する。 しかしながら、甲1発明(図5に係るものである。)の「ガラス封止部6」は、以下のとおり、「前記配線基板の上面と前記発光素子の表面に沿って形成され」る保護「膜」とはいえないというべきである。 まず、本件訂正発明1の「前記配線基板の上面と前記発光素子の表面に沿って形成され」る「保護膜」との特定事項において、「『沿』う」の字義は、「線条的なもの、または線条的に移動するものに、近い距離を保って離れずにいる意。」(広辞苑)であるとともに、「膜」の字義は、「物の表面を覆う薄い物」(広辞苑)である。そうすると、ある保護手段が、「前記配線基板の上面と前記発光素子の表面に沿って形成され」る「膜」であるというためには、「発光素子の表面」を線条的なものと評価した上で、その線条的なものから、その保護手段の外縁が、近い距離を保って離れずにいることが必要であると解するのが相当である。そして、このような理解は、本件図面の図3から看取できる保護膜40の形状にも沿う。 これを甲1発明についてみる。甲1発明における(本件訂正発明1でいう)「発光素子の表面」は、各LED素子2の上面及び側面であると解される。そうすると、「線条的なもの」とは、この上面と側面とに対応するものであるところ、これは、具体的には、甲1の図5(b)のような断面図により看取される、鉛直方向の線分と水平方向の線分(との結合体)に該当する。 その上で、これらの線分とガラス封止部6の外縁との関係をみると、ガラス封止部6の外縁は、鉛直方向の線分と水平方向の線分から、近い距離を保っているとはいえない。すなわち、甲1発明における、(i)鉛直方向の線分とガラス封止部6の外縁との関係と(ii)水平方向の線分とガラス封止部6の外縁との関係をみると、両者は、その状況を異にしていると言わざるを得ないから、これをもって、これらの線分とガラス封止部6の外縁とが、近い距離を保っていると評価することは困難である。 よって、甲1発明のガラス封止部6は、「前記配線基板の上面と前記発光素子の表面に沿って形成され」る保護「膜」とはいえない。そして、甲1の図1及び図3についても同様の議論が成り立つ。 したがって、申立人の主張は成り立たない。 (エ)本件訂正発明1の「前記配線層の外縁は曲線であり、該曲線の曲率は一定であり、」との特定事項について 甲1発明は、「Al_(2)O_(3)基板3の表面にタングステン(W)で構成された回路パターン4は、円形の外形を有する一対の電極が、縦横について3個×3個の合計9個設けられてなり、しかも、横方向に3個並んだ一対の電極は、LED素子2が直列に接続した素子群を形成するように、相互に接続されて」いるから、「一対の電極」同士を相互に接続する部分が存在する。そして、その相互に接続する部分も、本件訂正発明1でいう「前記配線層」に相当するけれども、その「外縁」が「曲線」であるとはいえない。 よって、甲1発明は、本件訂正発明1の「前記配線層の外縁は曲線であり、該曲線の曲率は一定であり、」との特定事項を備えない。 (オ)本件訂正発明1の「前記配線層が前記基材の外縁よりも内側である」との特定事項について 甲1発明は、「Al_(2)O_(3)基板3の表面にタングステン(W)で構成される回路パターン4」「は、Al_(2)O_(3)基板3の外縁よりも内側であ」る。よって、上記(ア)にも照らせば、甲1発明は、本件訂正発明1の「前記配線層が前記基材の外縁よりも内側である」との特定事項を備える。 (カ)本件訂正発明1の「発光装置」について 甲1発明の「LED1」は、「LED素子2」と「Al_(2)O_(3)基板3」と「回路パターン4」を含むから、本件訂正発明1の「発光装置」に相当する。 イ 一致点及び相違点の認定 上記アによれば、本件訂正発明1と甲1発明とは、 「平板状の基材と、前記基材の上面に配置された正負の配線層と、を有する配線基板と、 前記配線層にフリップチップ実装された発光素子と、 前記基材と前記配線層と前記発光素子とを被覆し、発光装置の外表面を形成する無機材料からなり、上面が平坦である保護部材と、を備え、 前記配線層が前記基材の外縁よりも内側である発光装置。」である点で一致し、次の点で相違する。 [相違点1] 「前記配線層にフリップチップ実装された発光素子」が、本件訂正発明1は「一個」であるのに対し、甲1発明は「9個」である点。 [相違点2] 本件訂正発明1は、「前記配線層の外縁は曲線であり、該曲線の曲率は一定であ」るのに対し、甲1発明はそうなっていない点。 [相違点3] 前記基材と前記配線層と前記発光素子とを被覆し、発光装置の外表面を形成する無機材料からなり、上面が平坦である保護部材について、本件訂正発明1は、「前記配線基板の上面と前記発光素子の表面に沿って形成され」る「膜」であるのに対し、甲1発明は「Al_(2)O_(3)基板3上に上面及び側面を有する矩形状に形成される」「B_(2)O_(3)-SiO_(2)-LiO-Na_(2)O-ZnO-Nb_(2)O_(5)系の熱融着ガラスからなる」部材である点。 ウ 相違点3の判断 事案にかんがみ、相違点3から判断する。 「前記基材と前記配線層と前記発光素子とを被覆し、発光装置の外表面を形成する無機材料からなり、上面が平坦である保護部材」について、甲1発明は、「Al_(2)O_(3)基板3上に上面及び側面を有する矩形状に形成される」「B_(2)O_(3)-SiO_(2)-LiO-Na_(2)O-ZnO-Nb_(2)O_(5)系の熱融着ガラスからなる」部材を用いるものであるところ、この部材を、甲2発明における「表面領域(7)を気密に覆う、原子間堆積によって被着したシーリング材料(6)」に置換することは、以下のとおり、当業者が容易に想到し得たものではない。 すなわち、甲1発明の技術的意義は、ガラス封止部の安定性に加えて耐候性についても良好な固体素子デバイスを提供するという目的を達成するために、B_(2)O_(3)-SiO_(2)-Li_(2)O-Na_(2)O-ZnO-Nb_(2)O_(5)系のガラスからなるガラス封止部において、Na_(2)Oのうち所定量をLi_(2)Oとすることにより、極めて良好な耐候性を得るようにしたものと認められる(甲1の【0009】・【0010】・【0069】・【0070】)。そうすると、甲1発明において、封止部として「B_(2)O_(3)-SiO_(2)-LiO-Na_(2)O-ZnO-Nb_(2)O_(5)系」のガラスを用いることは、甲1発明の前提というべきである。 これに対し、甲2発明は、「表面領域(7)を気密に覆う、原子間堆積によって被着したシーリング材料(6)」を用いるものであるから、甲2発明は、甲1発明の前提、すなわち、「B_(2)O_(3)-SiO_(2)-LiO-Na_(2)O-ZnO-Nb_(2)O_(5)系」のガラスを用いること、を備えないものである。 よって、甲1発明に接した当業者が、甲2発明に接するとは言い難い上、それを措くとしても、かかる当業者が、甲1発明の「B_(2)O_(3)-SiO_(2)-LiO-Na_(2)O-ZnO-Nb_(2)O_(5)系の熱融着ガラス」からなる部材として、甲2発明の「表面領域(7)を気密に覆う、原子間堆積によって被着したシーリング材料(6)」を採用する動機があるとは言い難い。 したがって、相違点3は、当業者が容易に想到し得たものではない。 エ 相違点1の判断 相違点1は、発光素子の個数に関するものであるところ、甲1発明のLED素子2の個数を9個から1個にすることができれば、相違点1の構成に至る。しかしながら、以下のとおり、そのようにすることが容易とはいえない。 まず、甲1発明がLED素子2を9個備えている技術的な理由についてみる。 甲1の【0113】は、複数個のLED素子2をLED素子2の幅の2倍以下の配列ピッチで密集させて実装する構成であっても、LED素子2およびガラス封止部6の熱膨張率αが同等であるので、クラックを生じることなく信頼性に優れるLED1が得られると記載する。さらに、同【0114】は、Al_(2)O_(3)基板3を用いることにより、発熱量の大なるGaN系LED素子2を密集させて実装する構成としても安定した放熱性が得られると記載する。 そうすると、甲1発明がLED素子2を9個備えているのは、LED素子2を複数個密集させて実装する構成であっても、クラックを生じることなく信頼性に優れるとともに、安定した放熱性を得ることを明らかにするためであるといえる。 このように、甲1発明がLED素子2を9個備えていることには、一定の技術的な理由が存在するのであるから、甲1発明においてLED素子2を1個にすることは、特段の動機がない限り、容易とは言い難い。しかるところ、甲1の記載や甲2の記載をみても、そのような動機を見いだせない。 したがって、相違点1は、当業者が容易に想到し得たものではない。 オ 申立人の主張について 申立人は、令和元年10月24日付け意見書(1頁下から4行?2頁2行)において、特表2015-500570号公報の図6には、本件訂正発明1の「一個の発光素子」に該当する1個のLEDチップを備えるデバイスが開示されているから、相違点1は格別ではない旨主張する。 (ア)そこで検討するに、同公報の図6は、申立人が主張するとおり、1個のLEDチップ68を備えるデバイスを開示する。 しかしながら、甲1発明から出発した当業者が相違点1に係る構成に至るためには、上記エで説示したとおり、甲1発明がLEDを9個備える技術的な理由(LED素子2を複数個密集させて実装する構成であっても、クラックを生じることなく信頼性に優れるとともに、安定した放熱性を得ることを明らかにすること)を克服することが必要である。しかるところ、同公報は、LEDチップが1個あることを示しているにすぎないから、上記技術的な理由を克服するに足りない。 よって、甲1発明から出発した当業者が、同公報に記載された発明を採用して、相違点1に係る構成に至ることはない。 (イ)上記(ア)でした判断の妥当性は、以下のとおり、同公報に記載された発明の技術的意義を踏まえれば、さらに明らかである。 すなわち、同公報に記載された発明の技術的意義は、次のとおりである。 従来の発光体デバイスには、抽出される光の量を向上させるためにレンズが利用されているが、従来のレンズは、サブマウントの縁部に近い又は近接する場所まで延びていないため、デバイスのサブマウントの角部において光抽出が十分に改善されないという課題があった。そこで、発光体デバイスのサブマウントの角部からの光抽出を向上させるために、レンズ30が、サブマウントの1つ以上の角部と面一に、又は略面一になるように、延びるようにする。(【0001】・【0027】) このような同公報に記載された発明の技術的意義に照らすと、当該発明は、レンズを備えることを前提とするものということができる。 他方で、甲1発明は、レンズを備えるものとはいえない。そうすると、甲1発明から出発した当業者がレンズを備えた技術に係る同公報記載の技術的事項をあえて採用するためには、積極的な動機が必要であるというべきところ、そのようなものを見いだせない。 よって、同公報に記載された発明の技術的意義に照らせば、甲1発明から出発した当業者が同公報に記載された発明を採用して相違点1に係る構成に至ることはないのが、さらに明らかである。 (ウ)したがって、申立人の主張は採用できない。 オ 本件訂正発明1についての小括 上記ウ及びエでした判断は、甲1及び甲2に記載されたその余の技術的事項を踏まえても左右されない。 よって、相違点2について判断するまでもなく、本件訂正発明1は、甲1に記載された発明及び甲2に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件訂正発明2?7及び11について 本件訂正発明2?7及び11は、本件訂正発明1同様に、相違点1に係る構成及び相違点3に係る構成を備えるものである。 そうすると、本件訂正発明2?7及び11は、上記(1)と同様の理由で、甲1に記載された発明及び甲2に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)甲1発明を主引用発明とする進歩性欠如の小括 このように、本件訂正発明1?7及び11は、甲1に記載された発明及び甲2に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 甲2発明を主引用発明とする進歩性欠如について (1)本件訂正発明1について ア 対比 (ア)本件訂正発明1の「平板状の基材と、前記基材の上面に配置された正負の配線層と、を有する配線基板と、」との特定事項について a 甲2発明の「支持体(11)」は、本件訂正発明1の「基材」に相当する。また、この「支持体(11)」が「平板状」であることは、明らかである。 b 甲2発明の「支持体の表面」に設けられた「電気接続層」が、本件訂正発明1でいう「前記基材の上面に配置された正負の配線層」に相当することは、明らかである。 c 甲2発明の「電気接続層を有する支持体」は、上記a及びbにも照らせば、本件訂正発明1の「配線基板」に相当する。 d よって、甲2発明は、本件訂正発明1の上記特定事項を備える。 (イ)本件訂正発明1の「前記配線層にフリップチップ実装された一個の発光素子と、」との特定事項について a 甲2発明の「無機半導体素子」は、本件訂正発明1の「発光素子」に相当する。そして、甲2発明の「無機半導体素子」は、「少なくとも1つ」であるから、甲2発明は、本件訂正発明1でいう「一個の発光素子」を備える場合を、明らかに含んでいる。 b 甲2発明の「取り付け面(9)によって支持体(11)に載置され」た「半導体素子(10)」は、上記(ア)にも照らせば、本件訂正発明1の「前記配線層にフリップチップ実装される発光素子」とは、「前記配線層に」「実装された一個の発光素子」である点で一致する。 c よって、甲2発明は、本件訂正発明1の「前記配線層に」「実装された一個の発光素子と、」との特定事項を備えるが、その実装は「フリップチップ」ではない。 (ウ)本件訂正発明1の「前記基材と前記配線層と前記発光素子とを被覆し、前記配線基板の上面と前記発光素子の表面に沿って形成され、かつ発光装置の外表面を形成する無機材料からなり、上面が平坦である保護膜と、を備え、」との特定事項について a 甲2発明の「原子間堆積によって被着された気密のシーリング材料」であって、「1ナノメートル以上、有利には5ナノメートル以上、殊に有利には10ナノメートル以上かつ500nm以下の厚さで被着することができ」る「シーリング材料」は、本件訂正発明1の「保護膜」に相当する。 b 甲2発明の「シーリング材料」は、「半導体素子の表面及び側面を覆うことができ、さらに、シーリング材料は、電気接続層を有する支持体の表面を、電気接続層を含めて、覆うことができ」るものであるとともに、「シーリング層の層厚は、反応サイクルの数だけに依存し、これにより、層厚を正確かつ簡単に制御することができ」るものであるから、本件訂正発明1でいう「前記基材と前記配線層と前記発光素子とを被覆し、前記配線基板の上面と前記発光素子の表面に沿って形成され」るものといえる。 c 甲2発明の「シーリング材料」は、「アルミニウム、シリコンから選択された1つまたは複数との酸化物、窒化物を有し得るものであ」るから、本件訂正発明1でいう「無機材料」であるといえる。 d 甲2発明の「シーリング材料」が、本件訂正発明1でいう「発光装置の外表面を形成」していることは、明らかである。 e 甲2発明の「シーリング材料」は、「半導体素子の表面及び側面を覆うことができ」るものであり、「層厚を正確かつ簡単に制御することができ」るものであるから、本件訂正発明1でいう「上面が平坦である」ものといえる。 f よって、甲2発明は、本件訂正発明1の上記特定事項を備える。 (エ)本件訂正発明1の「前記配線層の外縁は曲線であり、該曲線の曲率は一定であり、前記配線層が前記基材の外縁よりも内側である」との特定事項について 甲2発明は、上記特定事項を備えない。 (オ)本件訂正発明1の「発光装置」との特定事項について 甲2発明の「オプトエレクトロニクス素子と支持体(11)とを備える発光装置」は、本件訂正発明1の「発光装置」に相当する。 イ 一致点及び相違点の認定 上記アによれば、本件訂正発明1と甲2発明とは、 「平板状の基材と、前記基材の上面に配置された配線層と、を有する配線基板と、 前記配線層に実装された一個の発光素子と、 前記基材と前記配線層と前記発光素子とを被覆し、前記配線基板の上面と前記発光素子の表面に沿って形成され、かつ発光装置の外表面を形成する無機材料からなり、上面が平坦である保護膜と、を備えた、 発光装置。」である点で一致し、次の点で相違する。 [相違点4]「配線基板」について、本件訂正発明1は、「前記基材の上面に配置された正負の配線層」を有し、「前記配線層の外縁は曲線であり、該曲線の曲率は一定であり」、「前記配線層が前記基材の外縁よりも内側である」のに対し、甲2発明は、そのように特定されていない点。 [相違点5]「配線層」への「発光素子」の「実装」について、本件訂正発明1は、「フリップチップ実装」であるのに対し、甲2発明は、そのように特定されていない点。 ウ 相違点4及び5の判断 相違点4及び5をまとめて判断する。 甲2発明は、発光装置に係る発明であるところ、シーリング材料を原子間堆積によって形成するところが課題解決手段であると解されるから、支持体や電気接続層に係る構造については、任意であると解される。よって、当業者であれば、かかる構造について公知の構造を適宜採用できるということができる。 他方、甲1発明は、LED素子2を9個備えるものであるから、少なくともその点で、相違点4に係る構成を開示しない。さらに、甲1発明は、上記2(1)ウ(相違点3の判断)のとおり、封止部として「B_(2)O_(3)-SiO_(2)-LiO-Na_(2)O-ZnO-Nb_(2)O_(5)系」のガラスを用いることが前提となっており、この点で、甲2発明とは異なる。 以上を総合的に勘案すると、当業者が、甲2発明において甲1発明を採用して、相違点4及び5の構成に至ることは、困難であるというべきである。 エ 本件訂正発明1についての小括 上記ウでした判断は、甲1及び甲2に記載されたその余の技術的事項を踏まえても、左右されない。 したがって、本件訂正発明1は、甲2に記載された発明及び甲1に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件訂正発明2?7及び11について 本件訂正発明2?7及び11は、本件訂正発明1同様に、相違点4に係る構成及び相違点5に係る構成を備えるものである。 そうすると、本件訂正発明2?7及び11は、上記(1)と同様の理由で、甲2に記載された発明及び甲1に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)甲2発明を主引用発明とする進歩性欠如の小括 このように、本件訂正発明1?7及び11は、甲2に記載された発明及び甲1に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由対する当審の判断についての小括 以上のとおりであるから、本件訂正発明1?7及び11に係る特許は、取消理由(決定の予告)によっては、取り消すことができない。 第6 取消理由通知書で採用しなかった特許異議申立理由に対する当審の判断 1 甲1に記載された発明に基づく新規性欠如についての特許異議申立理由 申立人は、本件訂正前の請求項1?3,5及び7に係る発明が、甲1に記載された発明である旨主張する(特許異議申立書9頁下から9行?10頁末行)。 しかしながら、上記第5の2(1)ア(ウ)のとおり、甲1に記載された発明は、本件訂正発明でいう「前記配線基板の上面と前記発光素子の表面に沿って形成され」る保護「膜」を備えない。 よって、本件訂正発明は、いずれも、甲1に記載された発明ではない。 申立人のかかる申立理由は、成り立たない。 2 明確性要件違反についての特許異議申立理由 (1)申立人は、本件訂正前の請求項1の「前記配線層が前記配線基板の外縁よりも内側である」との記載が明確でない旨主張する(特許異議申立書13頁下から12行?末行)。 しかしながら、本件訂正により、請求項1の当該記載は「前記配線層が前記基材の外縁よりも内側である」と訂正されたのであり、当該記載は明確である。そして、このことは、請求項2?7及び11についても同様である。 申立人のかかる申立理由は、成り立たない。 (2)申立人は、本件訂正前の請求項1の「該曲線の曲率は略一定であり」との記載が明確でない旨主張する(特許異議申立書14頁1行?17行)。 しかしながら、本件訂正により、請求項1の当該記載は「該曲線の曲率は一定であり」と訂正されたのであり、当該記載は明確である。そして、このことは、請求項2?7及び11についても同様である。 申立人のかかる申立理由は、成り立たない。 (3)申立人は、本件訂正前の請求項2の「略円形」との記載が明確でない旨主張する(特許異議申立書14頁18行?下から7行)。 しかしながら、本件訂正により、請求項2の当該記載は「円形」と訂正されたのであり、当該記載は明確である。そして、このことは、請求項2?4についても同様である。 申立人のかかる申立理由は、成り立たない。 (4)申立人は、本件訂正前の請求項4の「前記基板」との記載が明確でない旨主張する(特許異議申立書14頁下から6行?15頁3行)。 しかしながら、本件訂正により、請求項4の当該記載は「前記配線基板」と訂正されたのであり、当該記載は明確である。 申立人のかかる申立理由は、成り立たない。 (5)申立人は、本件訂正発明1?7及び11の「発光装置の外表面」との記載が明確でない旨主張する(令和元年5月16日付け申立人意見書7頁(3-2))。 しかしながら、「発光装置の外表面」とは、その文言のとおりに解すれば足り、特段不明確であるとはいえない。 申立人のかかる申立理由は、成り立たない。 (6)申立人は、本件訂正発明1?7及び11の「前記配線基板の上面と前記発光素子の表面に沿って形成され」る保護膜との記載が明確でない旨主張する(令和元年10月24日付け申立人意見書2頁18行?末行)。具体的には、申立人は、本件訂正後の明細書【0020】に記載されている作用効果に鑑みれば、本件訂正発明1の保護膜は、発光素子の配線基板側の開口部も全て被覆されている必要があると考えられる一方、保護膜が、発光素子の奥行き方向(例えば、発光素子の対角における中心部分)まで形成されているものか否かが明確でない旨主張する。 しかしながら、本件訂正発明1?7及び11の「前記配線基板の上面と前記発光素子の表面に沿って形成され」る保護膜との記載は、その文言のとおりに解すれば足り、特段不明確であるとはいえない。 この点、申立人の主張は、本件訂正発明1の保護膜が、発光素子の配線基板側の開口部も全て被覆されている必要があると解することを前提とするけれども、この前提が失当である。すなわち、本件訂正後の明細書【0030】は、保護膜について、「保護膜40は、発光素子が配線基板に実装された後に、原子堆積法(以下、「ALD」(Atomic Layer Deposition)と記載することがある)、スパッタ、CVD等によって形成することができる。」と記載する。この記載からすれば、本件訂正発明1の保護膜が発光素子の配線基板側の開口部にも全て被覆されている必要はないと解される。よって、申立人の主張は、その前提が失当である。 申立人のかかる申立理由は、成り立たない。 (7)申立人は、本件訂正発明2、4?7及び11の「配線層の外縁から0.05mm?0.25mm離間された保護膜」の記載が明確でない旨主張する(令和元年10月24日付け申立人意見書3頁10行?21行)。 しかしながら、本件訂正後の明細書の【0045】の「例えば、ノズル60が、配線層12の外縁から0.05mm?0.25mm離間した基材11上の保護膜40と接触するように、発光装置100を吸着させることができる。」との記載にも照らせば、「配線層の外縁から0.05mm?0.25mm離間された保護膜」とは、保護膜が、配線層の外縁から、少なくとも0.05mm?0.25mm離間した位置まで存在することを特定していると解される。よって、当該記載が、特段不明確であるとはいえない。 申立人は、「配線層の外縁から0.05mm?0.25mm離間された保護膜」の記載では、配線層が保護膜で被覆されていない構成が含まれるのか含まれないのか特定することができない旨も主張する。しかしながら、当該記載は、上記のとおり解されるのであり、この理解によれば、当該記載は、保護膜のうち、配線層の外縁よりも外側に存在している保護膜を対象とした特定であって、配線層上に保護膜があるか否かとは無関係であるといえる。よって、申立人が主張する理由によって、当該記載が不明確になるということはない。 申立人のかかる申立理由は、成り立たない。 (8)申立人は、本件訂正発明11の「略等しい」の記載が明確でない旨主張する(令和元年10月24日付け申立人意見書3頁下から3行?4頁1行)。 しかしながら、本件訂正後の明細書の【0019】には、「・・・発光素子20は、発光素子20の中心から配線層の外縁12Sまでの距離が略等しくなるように配置されている。なお、“発光素子20の中心から配線層の外縁12Sまでの距離が略等しい”とは、0.05mm?0.25mm程度の距離の差があるものも含む。 以上のように、配線層12の平面形状を、略円形とすることで、発光素子20の中心から配線層の外縁12Sまでの距離を略等しくすることができ、発光素子20の熱を配線基板10の外側方向へ均等に拡散させることができる。・・・」と記載されている。 よって、「略等しい」との記載が、明確でないとまではいえない。 申立人のかかる申立理由は、成り立たない。 3 実施可能要件違反についての特許異議申立理由 申立人は、上記2(6)の特許異議申立理由に関連して、仮に、「前記配線基板の上面と前記発光素子の表面に沿って形成され、」との事項に、保護膜が発光素子の奥行方向まで成膜されている構成が含まれるとした場合、かかる構成は、スパッタ等の周知の方法では成膜できないから、実施可能要件違反である旨主張する(令和元年10月24日付け申立人意見書3頁1行?5行)。 しかしながら、上記2(6)で判断したとおり、本件訂正発明の保護膜が発光素子の配線基板側の開口部にも全て被覆されている必要はないと解される。 そして、本件訂正後の明細書の記載は、本件訂正発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであると認められる。 申立人のかかる申立理由は、成り立たない。 4 サポート要件違反についての特許異議申立理由 申立人は、本件訂正発明2,4?7及び11の「配線層の外縁から0.05mm?0.25mm離間された保護膜」との事項が、本件訂正後の明細書に記載されていない旨主張する。 しかしながら、当該事項は、本件訂正後の明細書の【0045】の「例えば、ノズル60が、配線層12の外縁から0.05mm?0.25mm離間した基材11上の保護膜40と接触するように、発光装置100を吸着させることができる。」に記載されている。 本件訂正発明2、4?7及び11のその余の記載も、本件訂正後の明細書に記載されていると認められる。 よって、本件訂正発明2、4?7及び11の記載は、サポート要件を満たしている。 申立人のかかる申立理由は、成り立たない。 5 取消理由通知書で採用しなかった特許異議申立理由に対する当審の判断の小括 以上のとおりであるから、本件訂正発明1?7及び11に係る特許は、取消理由通知書で採用しなかった特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由並びに特許異議申立書及び申立人が提出した意見書に記載した特許異議申立理由によっては、本件訂正発明1?7及び11に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件訂正発明1?7及び11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 発光装置及び発光モジュールの製造方法 【技術分野】 【0001】 本発明は、発光装置及び発光モジュールの製造方法に関する。 【背景技術】 【0002】 発光ダイオード(LED)は、低消費電力・長寿命・高信頼性など多くの特長を有し、発光素子として各種照明やバックライト用光源等の発光装置に広く利用されている。特許文献1に示される発光装置は、紫外線領域の波長の光(以下、紫外光と記載することがある)を発する発光素子が、凹部を有する基板に実装されており、凹部の開口がガラス等の透明ボードによって封止されている。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0003】 【特許文献1】特開2008-78586号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 しかしながら、特許文献1に示される発光装置は、基板が凹部を有するため、発光装置を小型化することが困難である。さらに、透明ボードを基板に固定するために、構成が複雑になったり、材料コストが高くなる恐れがある。 【0005】 そこで、本発明の実施形態は、小型でシンプルな構造でありながら、信頼性の高い発光装置を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0006】 本発明の実施形態に係る発光装置は、平板状の基材と、前記基材の上面に配置された正負の配線層と、を有する配線基板と、前記配線層にフリップチップ実装された一個の発光素子と、前記基材と前記配線層と前記発光素子とを被覆し、前記配線基板の上面と前記発光素子の表面に沿って形成され、かつ発光装置の外表面を形成する無機材料からなり、上面が平坦である保護膜と、を備え、前記配線層の外縁は曲線であり、該曲線の曲率が一定であり、前記配線層が前記基材の外縁よりも内側である。 【0007】 また、本発明の実施形態に係る発光モジュールの製造方法は、基材と前記基材上の中央部に配置された配線層とを有する配線基板と、前記配線層に接合された発光素子と、前記基材と前記配線層と前記発光素子とを被覆する無機材料からなり、上面が平坦である保護膜と、を備える発光装置を準備する工程と、前記発光装置を配置するための実装基板を準備する工程と、開口径が平面視で前記配線層以上の大きさのノズルを準備する工程と、前記ノズルが前記基材上の前記保護膜と接触し、前記配線層が前記ノズルの接触位置よりも内側にくるように調整しつつ、前記ノズルで前記発光装置を吸着し、前記発光装置を前記実装基板上に配置する工程と、を有する。 【発明の効果】 【0008】 本発明の実施形態に係る構成によれば、小型でシンプルな構造でありながら、信頼性の高い発光装置とすることができる。また、本発明の実施形態に係る製造方法によれば、信頼性の高い発光モジュールを形成することができる。 【図面の簡単な説明】 【0009】 【図1】図1は、本発明の実施形態1に係る発光装置の概略斜視図である。 【図2A】図2Aは、本発明の実施形態1に係る発光装置の概略平面図である。なお、図2Aでは、図の明瞭化のため、保護膜は透過して示す。 【図2B】図2Bは、図2Aと形状の異なる配線層を備える配線基板を用いた発光装置の概略平面図である。なお、図2Bでは、図の明瞭化のため、保護膜は透過して示す。 【図2C】図2Cは、本発明の実施形態1に係る発光装置を裏面側から見た概略平面図である。 【図3】図3は、図1に示される発光装置のA-A´における概略断面図である。 【図4】図4は、本発明の実施形態1に係る発光モジュールの概略断面図である。 【図5A】図5Aは、本発明の実施形態1に係る発光モジュールの製造方法において、発光装置準備工程を示す概略断面図である。 【図5B】図5Bは、本発明の実施形態1に係る発光モジュールの製造方法において、実装基板準備工程を示す概略断面図である。 【図5C】図5Cは、本発明の実施形態1に係る発光モジュールの製造方法において、ノズル準備工程を示す概略側面図である。 【図5D】図5Dは、本発明の実施形態1に係る発光モジュールの製造方法において、発光装置配置工程を示す概略断面図である。 【図5E】図5Eは、本発明の実施形態1に係る発光モジュールの製造方法において、発光装置配置工程を示す概略断面図である。 【図6A】図6Aは、本発明の実施形態1に係る発光モジュールの製造方法において、発光装置の配線基板の配線層の平面形状と、配線基板上におけるノズルの接触位置とを示す概略平面図である。 【図6B】図6Bは、本発明の実施形態1に係る発光モジュールの製造方法において、発光装置の配線基板の配線層の平面形状と、配線基板上におけるノズルの接触位置とを示す概略平面図である。 【図6C】図6Cは、本発明の実施形態1に係る発光モジュールの製造方法において、発光装置の配線基板の配線層の平面形状と、配線基板上におけるノズルの接触位置とを示す概略平面図である。 【図7】図7は、図5Dと異なる開口形状のノズルを用いた実施形態2に係る発光装置配置工程を示す概略断面図である。 【発明を実施するための形態】 【0010】 以下、本発明の実施形態について適宜図面を参照して説明する。ただし、以下に説明する発光装置及び発光モジュールの製造方法は、実施形態の技術的思想を具現化するためのものであって、以下に限定されるものではない。特に、構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定するものではない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。なお、以下に記載される実施形態及び実施例は、各構成等を適宜組み合わせて適用できる。 【0011】 <実施形態1> (発光装置) 図1は、本発明の実施形態1に係る発光装置の概略斜視図である。図2Aは、本発明の実施形態1に係る発光装置の概略平面図である。図2Bは、図2Aと形状の異なる配線層を備える配線基板を用いた発光装置の概略平面図である。なお、図2A及び図2Bでは、図の明瞭化のため、保護膜は透過して示す。図2Cは、本発明の実施形態1に係る発光装置を裏面側から見た概略平面図である。図3は、図1に示される発光装置のA-A´における概略断面図である。図1に示されるように、実施形態1の発光装置100は、配線基板10上に、発光素子20がフリップチップ実装されている。 【0012】 配線基板10は、平板状であり、基材11と、少なくとも基材11の上面に設けられた正負の配線層12と、を有する。このように、平板状の配線基板10を用いることで、凹部を有する配線基板を用いる場合に比べ、発光装置を小型化することが可能である。 【0013】 配線層12は、図2Aに示されるように、平面視で配線基板10の外側に面する辺(以降、“配線層の外縁12S”と記載する)が曲線であり、該曲線の曲率は略一定である。また、配線層の外縁12Sの全周が前述のような曲線であることが好ましいが、配線層の外縁12Sの少なくとも80%以上、より好ましくは90%以上が前述のような曲線であればよく、一部が前述の曲線とは異なる曲率の曲線や直線であってもよい。 【0014】 実施形態1では、配線層12の平面形状は、例えば略円形とすることができる。ここで、“配線層12の平面形状”とは、離間して配置される正と負の配線層12の個々の平面形状を指すのではなく、図2Aに点線で示されるように、正負の配線層12を1つの集合としてみた場合の平面形状、すなわち、平面視で配線層の外縁12Sを組み合わせてできる形状のことを指す。 【0015】 実施形態1では、図2Aに示されるように、前述のような平面形状が円形の配線層12が、平面視が矩形の配線基板10の上面の中央部に配置されている。したがって、配線基板10の上面は、中央部の正負の配線層12と、正負の配線層12の間及び配線層12の外側の基材11によって構成される。 より具体的には、実施形態1では、図1及び図2Aに示されるように、基材11上に正と負の2つの配線層12が設けられている。正負の配線層12は、それぞれ配線基板10の外側に面する辺が曲線であり、該曲線の曲率は略等しく、配線層12の平面形状は円形である。このように、正負一対の配線層12が設けられた配線基板10は、配線層12の形状が複雑でなく、パターンの形成が容易である。さらに、複数対の配線層が設けられた配線基板に比べて、1つの配線層の面積を大きく設けることができるので、配線層1つあたりの放熱性を向上させることができ、放熱性の良い発光装置とすることができる。 なお、前述のものに限らず、実装される発光素子の電極パターンによって、適宜所望の形状及び数の配線層を備えた配線基板を用いることができる。例えば、図2Bに示されるように、正の配線層12x_(1)と負の配線層12x_(2)からなる一対の配線層が2つ以上設けられた配線基板10xを用いてもよい。 【0016】 また、配線基板20の上面には、配線層12のギャップ間及び配線層12よりも外側の領域以外に、基材11が露出していてもよい。例えば、図1及び図2Aに示されるように、実装される発光素子20の外縁の少なくとも一部、例えば発光素子20の角部に沿って基材11が露出する構成としてもよい。これにより、発光素子11の実装位置が視認しやすく、所望の位置に発光素子11を実装しやすい。また、発光素子11を接合するための接着剤の広がりを抑制することが可能である。さらに、正負の配線層12を判断するために、平面視で配線層の内側に基材を露出させてアノードマーク、カソードマーク等を設け てもよい。 【0017】 また、実施形態1では、図2Cに示されるように、発光素子が実装される配線基板の上面と反対側の裏面には、配線層が裏面配線層121として設けられている。裏面配線層121は、発光装置100を実装基板等に実装する際に、実装基板と電気的に接続するためのものであり、実装基板の配線パターン等によって適宜所望の範囲に設けることができる。 【0018】 発光素子20は、図3に示されるように、発光層22を含む半導体層21と、同一面側に設けられた正負の電極23と、を有する。実施形態1の発光素子20は、導電性接着剤30によって正負の配線層12にフリップチップ実装されている。これにより、ワイヤ等を用いて実装する場合に比べて、発光装置を小型化しやすい。 【0019】 実施形態1では、図2Aに示されるように、発光素子20は平面視で矩形であり、配線層の外縁12Sは発光素子20よりも外側にある。これにより、発光素子20からの熱を発光装置の外側へ効率的に放熱させることができる。また、実施形態1では、発光素子20は、配線層12の集合の中央部に配置されている。すなわち、発光素子20は、発光素子20の中心から配線層の外縁12Sまでの距離が略等しくなるように配置されている。なお、“発光素子20の中心から配線層の外縁12Sまでの距離が略等しい”とは、0.05mm?0.25mm程度の距離の差があるものも含む。 以上のように、配線層12の平面形状を、略円形とすることで、発光素子20の中心から配線層の外縁12Sまでの距離を略等しくすることができ、発光素子20の熱を配線基板10の外側方向へ均等に拡散させることができる。したがって、例えば、配線層の平面形状が矩形の配線基板を用いる場合と比べて、発光素子20の熱を均一に放熱させることが可能となり、円滑に発光装置の放熱が行われやすい。また、発光素子20の近傍で熱がこもりにくく、発光素子20の劣化を抑えることができる。 【0020】 保護膜40は、無機材料からなり、基材11と配線層12と発光素子20とを被覆する。保護膜40は、図1及び図3に示されるように、発光素子20を封止しており、発光装置100の外表面を形成する。保護膜40は、それのみで発光素子20を封止していると、発光装置100の小型化の観点から好ましい。実施形態1の保護膜40は、図3に示されるように、配線基板10の上面と発光素子20とを、孔や切れ目等の隙間なく被覆しており、発光素子20と基材11及び配線層12の間も被覆している。これにより、発光素子20及び配線基板10を外部からの塵や埃、水分から保護することができ、発光素子20や配線基板10の劣化、特に発光素子20の酸化を防ぐことができる。したがって、発光装置100の信頼性を高めることができる。なお、実施形態1の保護膜40は、図3に示されるように発光素子20が接合される部分以外の配線基板10の上面全てを被覆しているが、例えば、配線基板の上面の外縁よりも内側までを覆うように設けられていてもよい。すなわち、配線基板10の上面の外縁付近が、保護膜40から一部露出していてもよい。また、基材11と配線層12と発光素子20とを隙間なく被覆していることが好ましいが、例えば、スパッタ等で保護膜を形成する場合にできる微細な隙間があってもよい。また、実施形態1の保護膜40は、配線基板10の上面だけでなく、配線基板10の側面や裏面を被覆していてもよい。保護膜40が配線基板10の裏面を覆うように設けられる場合は、裏面配線層121が保護膜40から露出するように設けられる。 保護膜40の厚みは、1nm?10μm程度、より好ましくは30nm?200nmであることが好ましい。このように、保護膜を比較的薄くすることで、発光装置を小型化しやすい。 【0021】 その他、発光装置100は、図1に示すように、発光素子20の通電や駆動に関連する電子部品50を搭載していてもよい。特に、電子部品50としてツェナーダイオード等の保護素子を備えると、通電及び駆動における信頼性が高い発光装置を提供することができる。なお、電子部品50は、配線基板にフリップチップ実装されていてもよいし、ワイヤ等で電気的に接続されていてもよい。電子部品50が配置される場合は、保護膜40によって、基材11と配線層12と発光素子20と電子部品50とが隙間なく被覆されていることが好ましい。 【0022】 以上のように、平板状の配線基板に発光素子がフリップチップ実装され、配線基板及び発光素子が無機材料からなる保護膜で封止されていることで、小型でシンプルな構造の発光装置とすることができる。さらに、配線基板の配線層の外縁が曲率が一定の曲線であり、発光素子の中心から配線層の外縁までの距離が等しくなるように発光素子が配置されることで、発光素子の熱を配線基板へ均一に拡散させることができる。したがって、発光素子の熱を外部へ効率的に放熱させやすく、熱による部材の劣化を抑制することができるので、小型でシンプルな構成でありながら、信頼性の高い発光装置とすることができる。 【0023】 以下、実施形態1の発光装置100を構成する部材について詳述する。 【0024】 (配線基板) 配線基板10は、その上面に実装される発光素子20からの出射光を遮光可能な材料からなることが好ましい。 【0025】 基材11の材料としては、セラミックス、樹脂、ガラス等の絶縁材料が挙げられる。特に、放熱性の観点から、無機材料であるセラミックスが好ましい。また、基材21として無機材料を用いることで、無機材料からなる保護膜との密着性を向上させることができる。セラミックスとしては、特に放熱性の高い窒化アルミニウムが好ましい。 配線層12の材料は、発光素子20と電気的に接続可能なものであれば特に限定されず、当該分野で公知の材料によって形成することができる。例えば、銅、アルミニウム、金、銀等の金属を用いることができる。配線層12は、めっき、スパッタ、その他の公知の方法で形成してもよいし、リードフレーム等を用いてもよい。 【0026】 配線基板10の平面形状は、略矩形、円形、三角形や六角形等の多角形など適宜選択することができる。 【0027】 (発光素子) 発光素子20は、当該分野で一般的に用いられている発光ダイオード、レーザダイオード等を用いることができる。例えば、窒化物系半導体(In_(X)Al_(Y)Ga_(1-X-Y)N、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)、GaP、GaAsなどのIII-V族化合物半導体等、種々の半導体を利用することができる。電極の材料としては、例えばAu、Ag、Cu、Pt、Al、Rh、W、Ti、Ni、Pd等の金属を用いることができ、これらの金属を単層又は複数層積層して用いてもよい。 発光素子20は、上述の半導体層21及び一対の電極23の他、半導体層21を成長させるための基板を有していてもよい。基板としては、サファイアのような絶縁性基板、SiC、ZnO、Si、GaAs、ダイヤモンド、及び窒化物半導体と格子接合するニオブ酸リチウム、ガリウム酸ネオジム等の酸化物基板が挙げられる。基板は、透光性であることが好ましい。なお、基板はレーザリフトオフ法等を利用して除去されていてもよい。 【0028】 発光素子20の発光波長は特に限定されず、所望の発光波長のものを適宜選択することができる。特に、可視光に比べて紫外光(例えば発光波長200nm?410nm)のような強いエネルギーを発する発光素子を用いる場合、発生する熱が多くなるため、熱をより効率的に拡散させる必要がある。したがって、実施形態1のように、発光素子20の中心から配線層の外縁12Sまでの距離を略等しくし、熱を配線基板10へ均等に拡散させて発光装置の放熱性を高めるような構成とすることが好ましい。これにより、熱による構成部材の劣化を抑制することが可能である。 【0029】 発光素子20の平面形状は、矩形に限定されず、六角形等の多角形であってもよい。特に、正六角形の発光素子を平面形状が略円形の配線層上に配置すると、発光素子の中央から配線層の外縁までの距離が略等しくなるだけでなく、矩形の発光素子を平面形状が略円形の配線層上に配置する場合と比べて、発光素子の外縁から配線層の外縁までの距離が等しくなる領域が増えるので、さらに発光素子の熱を外側方向へ均一に拡散させることができる。発光素子20の寸法は、平面視で配線層12よりも小さければ、特に限定されない。 【0030】 (保護膜) 保護膜40の材料としては、例えば、酸化アルミニウム(Al_(2)O_(3))、二酸化珪素(SiO_(2))、窒化アルミニウム(AlN)、窒化珪素(Si_(3)N_(4))等の無機材料が挙げられ、特に酸化アルミニウムが好ましい。これにより、発光素子20からの光が吸収されにくく、発光素子20を水分等から保護できる緻密な保護膜40を形成しやすい。 保護膜40は、発光素子が配線基板に実装された後に、原子堆積法(以下、「ALD」(Atomic Layer Deposition)と記載することがある)、スパッタ、CVD等によって形成することができる。特に、ALDで形成すると、隙間なく均一な厚みの保護膜を形成することができる。したがって、外部から水分等が透過しにくく、発光素子10が酸化しにくい信頼性の高い発光装置を形成することができる。 【0031】 保護膜は、単層膜又は2以上の異なる材料による多層膜としてもよい。多層膜にすると、発光素子の光の取り出しを向上させることが可能である。例えば、Al_(2)O_(3)とSiO_(2)とを交互に所望の膜厚で積層することができる。 【0032】 (発光モジュール) 図4は、本発明の実施形態1に係る発光モジュールの概略断面図である。実施形態1の発光モジュール1000は、上述した発光装置100が、実装基板200に実装されたものである。発光モジュール1000は、例えば印刷、硬化、センサー用の光源として用いることができる。 実装基板200は、その表面に少なくとも正負の配線201を有しており、該正負の配線201と、発光装置100の正負の配線層12とが、それぞれ電気的に接続される。実施形態1では、発光装置100の裏面、すなわち、配線基板10において発光素子20が実装される面と反対側の面に設けられた正負の裏面配線層121と、実装基板200の正負の配線201とが、導電性の接着剤によってそれぞれ接合されている。なお、これに限らず、発光装置の配線層と、実装基板の配線とは、ワイヤ等で電気的に接続されていてもよい。 【0033】 次に、発光モジュール1000の製造方法について説明する。 【0034】 (発光モジュールの製造方法) 図5Aは、本発明の実施形態1に係る発光モジュールの製造方法において、発光装置準備工程を示す概略断面図である。図5Bは、本発明の実施形態1に係る発光モジュールの製造方法において、実装基板準備工程を示す概略断面図である。図5Cは、本発明の実施形態1に係る発光モジュールの製造方法において、ノズル準備工程を示す概略側面図である。図5D及び図5Eは、本発明の実施形態1に係る発光モジュールの製造方法において、発光装置配置工程を示す概略断面図である。図6A?図6Cは、本発明の実施形態1に係る発光モジュールの製造方法において、発光装置の配線基板の配線層の平面形状と、配線基板上におけるノズルの接触位置とを示す概略平面図である。 実施形態1に係る発光モジュール1000の製造方法では、まず、基材と基材上の中央部に配置された配線層とを有する配線基板と、配線層に接合された発光素子と、基材と配線層と発光素子とを被覆する無機材料からなる保護膜と、を備える発光装置を準備する。また、該発光装置を配置するための実装基板を準備する。さらに、開口径が、平面視で発光装置の配線基板の配線層よりも大きいノズルを準備する。ノズルは、例えば電子部品などの実装に用いられる表面実装機(マウンター)において、電子部品を吸着させる吸着ノズルである。そして、ノズルによって発光装置を吸着し、発光装置を実装基板上に配置する。このとき、ノズルが基材上の保護膜と接触するように、発光装置を吸着する。 【0035】 このように、発光装置をノズルで吸着する際、発光素子及び配線層上の保護膜と接触しないようにすることで、ノズルが接触する際の衝撃によって発光素子及び配線層上の保護膜が割れることを防ぐことができる。このように、発光素子上の保護膜の割れを防ぐことで、発光素子の酸化を防ぐことができる。さらに、配線層上の保護膜の割れを防ぐことで、配線層の劣化を防ぐことができ、劣化した配線層による発光素子の光の吸収等を防止することができる。 以下、実施形態1に係る発光モジュール1000の製造方法の各工程について、詳細に説明する。 【0036】 (発光装置準備工程) 発光装置準備工程では、実装基板上に配置する発光装置100を準備する。発光装置100は、図5Aに示されるように、例えばエンボスキャリアテープ80の凹部81に配置された状態のものを準備し、後の発光装置配置工程でノズルによって吸着可能な状態にしておくことができる。これにより、発光装置100が等間隔で配置されているので、後の発光装置配置工程において発光装置100を吸着させやすい。 発光装置100として、具体的には、基材11と基材11上の中央部に配置された配線層12とを有する平板状の配線基板10に、発光素子20が実装されたものを準備する。ここで、“基材11上の中央部に配置された配線層12”とは、平面視で配線層12が基材11によって囲まれた状態を指す。配線基板10の配線層12は、平面視で後述するノズルの開口径以下の大きさで設けられている。 【0037】 発光装置準備工程では、配線基板10の配線層12の平面形状が、ノズル準備工程で準備するノズルの開口形状と同じ又はそれよりも小さい相似形状である発光装置100を準備することが好ましい。例えば、一般的に広く用いられる開口形状が円形のノズルを準備する場合は、図6Aに示されるように、平面形状がノズルの接触位置60aよりも内側にくる円形の配線層12a、言い換えると、平面形状がノズルの開口径以下の大きさの円形である配線層12aを備える発光装置100aを準備することができる。その他、開口形状が矩形のノズルを準備する場合は、図6Bに示されるように、平面形状がノズルの接触位置60bよりも内側にくる矩形の配線層12b、言い換えると、平面形状がノズルの開口径以下の大きさの矩形である配線層12bを備える発光装置100bを準備することが好ましい。これにより、後の発光装置配置工程においてノズルが配線層12上の保護膜に接触しない範囲内で、配線層が広く設けられた発光装置を準備することができる。したがって、配線層上の保護膜の割れを防いで信頼性を確保しつつ、放熱性が高い発光モジュールを形成しやすい。 なお、平面視でノズルの開口径以下の大きさで設けられていれば、ノズルの開口形状と異なる平面形状の配線層を有する発光装置を準備してもよい。例えば、開口形状が円形のノズルを準備する場合、図6Cに示されるように、平面形状がノズルの接触位置60cよりも内側にくる矩形の配線層12c、言い換えると、平面形状がノズルの開口径以下である矩形の配線層12cを有する発光装置100cを準備してもよい。また、図6Cに示されるように、配線層12cがノズルの接触位置と重ならないように、矩形の角部が一部ない形状の配線層12cとしてもよい。 【0038】 ここで、図6A?図6Cに示されるノズルの接触位置の外縁、すなわちノズルの外縁は、いずれも発光装置の配線基板の外縁よりも内側にくるように図示されているが、配線基板の外縁よりも外側にくるように接触させてもよい。また、図6A?図6Cでは、ノズルの開口形状とノズルの外縁とが同じ形状で示されているが、ノズルの外縁の平面形状は、特に限定されない。 【0039】 実施形態1で準備する発光装置100は、配線基板10の裏面、すなわち、発光素子20が実装される面と反対側の面に、実装基板と電気的に接続するための正負の裏面配線層121が設けられている。 【0040】 実施形態1では、発光層22を含む半導体層21と、同一面上に設けられた正負の電極23と、を有する発光素子20が、配線基板10の配線層12にフリップチップ実装された発光装置100を準備する。これにより、ワイヤを用いて発光素子20を配線基板10に接合する場合と比べ、後の発光装置配置工程において、ノズルの接触による断線が発生しにくい。したがって、歩留まりよく発光モジュール1000を形成することができる。 さらに、準備する発光装置100は、配線基板10の基材11及び配線層12と、配線層12に接合された発光素子20とを被覆し、発光装置100の外表面を形成する無機材料からなる保護膜40を備える。 【0041】 (実装基板準備工程) 実装基板準備工程では、発光装置100を実装するための実装基板200を準備する。図5Bに示されるように、実装基板200は、その表面に、実装基板200上に配置される発光装置100とそれぞれ電気的に接続するための正負の配線201を有する。配線201は、発光装置100と電気的に接続が可能であれば、その構成は特に限定されない。実施形態1では、上面に配置される発光装置100の正負の裏面配線層121と対応する位置に、正負の配線201を有する実装基板200を準備する。 【0042】 ここで、実装基板200の上面の発光装置100を配置する位置に、発光装置100を接合する接着剤70を配置しておいてもよい。接着剤は、一般的に用いられる導電性、絶縁性のものを適宜選択することができる。導電性の接着剤としては、例えば、Au、Ag、Bi、Cu、In、Pb、Sn、Znから選択された少なくとも一種を含む金属ペーストや共晶材、カーボンペースト、ろう材等が挙げられる。絶縁性の接着剤としては、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂等の樹脂やガラス等が挙げられる。その他、異方性導電部材等を用いてもかまわない。実施形態1では、実装基板200の正負の配線201上に、それぞれ導電性の接着剤70を配置しておく。接着剤70は、塗布、印刷、スプレー等の公知の方法で適宜配置することができる。 【0043】 (ノズル準備工程) ノズル準備工程では、後の発光装置配置工程で発光装置100を実装基板200上に配置するために、発光装置100を吸着させてピックアップするノズル60を準備する。ノズル60としては、電子部品の実装に一般的に用いられる表面実装機(マウンター)に使用可能な公知のものを適宜用いることができる。ノズル準備工程では、図5Cに示されるように、開口径Kが、平面視で発光装置100の配線基板10よりも小さく、且つ、平面視で配線基板10の配線層12以上の大きさであるノズル60を準備する。これにより、発光装置配置工程において、ノズル60を配線基板10の基材11上の保護膜40と接触させて発光装置100を吸着させることができる。したがって、ノズル60によって発光装置100を吸着する際に、配線層12上の保護膜40とノズル60とが接触しないので、ノズル接触時の衝撃によって配線層12上の保護膜40が割れる可能性を低減することができる。 【0044】 実施形態1では、例えば、開口径Kが配線層12よりも0.05mm?0.25mm大きいノズル60を準備することが好ましい。これにより、配線層12上の保護膜40が割れる可能性をさらに低減させることができる。なお、開口径Kが配線基板10の配線層12以上の大きさであれば、ノズルの開口形状は特に限定されず、一般的に用いられる円形のものの他、三角形、矩形、六角形等の多角形のもの等、適宜選択することができる。 発光装置準備工程、実装基板準備工程、ノズル準備工程を行う順番は特に限定されず、適宜所望の順番で行うことができる。 【0045】 (発光装置配置工程) 発光装置準備工程、実装基板準備工程、ノズル準備工程の後、準備したノズル60によって発光装置100を吸着してピックアップし、実装基板200上に配置する発光装置配置工程を行う。発光装置実装工程では、図5Dに示されるように、ノズル60が発光装置100の発光素子20上の保護膜40及び配線層12上の保護膜40と接触しないように位置合わせし、発光装置100をノズル60で吸着する。すなわち、ノズル60が、配線層12よりも外側の基材11上の保護膜40と接触するように位置合わせし、ノズル60によって発光装置100を吸着する。例えば、ノズル60が、配線層12の外縁から0.05mm?0.25mm離間した基材11上の保護膜40と接触するように、発光装置100を吸着させることができる。このように、配線層12よりも外側の基材11上の保護膜40とノズル60とを接触させて発光装置100を吸着することで、配線層12上の保護膜40とノズル60とが接触しないので、ノズル60によって発光装置100を吸着したときの衝撃によって、発光素子20及び配線層12上の保護膜40が割れることを防ぐことができる。特に、紫外光を発する発光素子を備える発光装置を用いる場合、その熱や光によって配線層が劣化しやすいところ、配線層上の保護膜の割れを防ぐことで劣化の進行を抑制することが可能である。 【0046】 ノズル60によって発光装置100を吸着した後、実装基板200上の所望の位置に発光装置100を配置する。実施形態1では、図5Eに示されるように、発光装置100を実装基板200の配線201(接着剤70)上に配置する。このとき、ノズル60と発光装置100の基材11上の保護膜40とが接触するように発光装置100を吸着していることで、発光装置100を実装基板200に配置する際の衝撃で、配線層12上の保護膜40が割れることを防ぐことができる。 【0047】 そして、発光装置配置工程の後、適宜加熱等によって発光装置100と実装基板200とを接合することで、発光モジュール1000を形成することができる。 【0048】 以上のように、ノズルの開口径と発光装置の配線基板の配線層の平面視における大きさとを調整し、ノズルの接触位置を発光装置の配線基板の基材上の保護膜とすることで、配線層上の保護膜の割れを防ぐことができる。したがって、配線層上及びその近傍の保護膜40の割れに起因する、発光素子20の酸化や配線層12の劣化を抑制することができ、信頼性の高い発光モジュール1000を形成することができる。 【0049】 <実施形態2> 図7は、図5Dと異なる開口形状のノズルを用いた実施形態2に係る発光装置配置工程を示す概略側面図である。実施形態2では、実施形態1で用いたノズルと異なる形状のノズルを用いる。なお、準備する発光装置の構成、ノズル準備工程及び発光装置配置工程以外の工程、その製造方法によって形成される発光モジュールの構成は、実施形態1と同様であるため、詳細な説明は省略する。 【0050】 具体的には、実施形態2では、ノズル準備工程において、開口径Kがノズル61の先端と内部とで異なるノズル61を準備する。より詳細には、準備するノズル61内部の開口径K_(1)は、平面視で発光装置100の配線層12よりも大きく、配線基板10よりも小さい。また、準備するノズル61先端の開口径K_(2)は、平面視でノズル61内部の開口径K_(1)よりも大きければ特に限定されないが、例えば、配線基板10よりも大きく、発光素子準備工程で発光素子が配置されているエンボスキャリアテープの凹部の直径以下とすることができる。 そして、図7に示されるように、前述のノズル61を用い、発光装置配置工程においてノズル61が配線基板10の基材11上の保護膜40と接触するように、ノズル61で発光装置100を吸着し、実施形態1と同様に実装基板上に配置する。 【0051】 以上のような開口を備えるノズル61を用いることで、実施形態1の発光モジュールの製造方法で用いたノズルを用いるよりも、さらに安定的に発光装置100を吸着、配置することが可能である。 【符号の説明】 【0052】 10、10x…配線基板 11…基材 12、12a、12b、12c…配線層 12x1…正の配線層 12x2…負の配線層 12S…配線層の外縁 121…裏面配線層 20…発光素子 21…半導体層 22…発光層 23…電極 30…導電性接着剤 40…保護膜 50…保護素子 60、61…ノズル 60a、60b、60c…ノズルの接触位置 K、K_(1)、K_(2)…開口径 70…接着剤 80…エンボスキャリアテープ 81…凹部 100、100a、100b、100c…発光装置 200…実装基板 201…配線 1000…発光モジュール (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 平板状の基材と、前記基材の上面に配置された正負の配線層と、を有する配線基板と、 前記配線層にフリップチップ実装された一個の発光素子と、 前記基材と前記配線層と前記発光素子とを被覆し、前記配線基板の上面と前記発光素子の表面に沿って形成され、かつ発光装置の外表面を形成する無機材料からなり、上面が平坦である保護膜と、を備え、 前記配線層の外縁は曲線であり、該曲線の曲率は一定であり、 前記配線層が前記基材の外縁よりも内側であることを特徴とする発光装置。 【請求項2】 平板状の基材と、前記基材の上面に配置された正負の配線層と、を有する配線基板と、 前記配線層にフリップチップ実装され、紫外線領域の波長の光を出射する一個の発光素子と、 前記基材と前記配線層と前記発光素子とを被覆し、前記配線基板の上面と前記発光素子の表面に沿って形成され、かつ発光装置の外表面を形成する無機材料からなり、上面が平坦であって前記配線層の外縁から0.05mm?0.25mm離間された保護膜と、を備え、 前記配線層の外縁は曲線であり、該曲線の曲率は一定であり、かつ前記配線層の平面形状が円形であり、 前記配線層が前記基材の外縁よりも内側である発光装置。 【請求項3】 平板状の基材と、前記基材の上面に配置された正負の配線層と、を有する配線基板と、 前記配線層にフリップチップ実装され、紫外線領域の波長の光を出射する一個の発光素子と、 前記基材と前記配線層と前記発光素子とを被覆し、前記配線基板の上面と前記発光素子の表面に沿って形成され、かつ発光装置の外表面を形成する無機材料からなり、上面が平坦である保護膜と、を備え、 前記配線層の外縁は曲線であり、該曲線の曲率は一定であり、かつ前記配線層の平面形状が突出部分のない円形であり、 前記配線層が前記基材の外縁よりも内側であり、 前記発光素子の中心から前記配線層の前記外縁までの距離は等しい発光装置。 【請求項4】 前記保護膜の厚みは、30nm?200nmであり、前記発光素子と前記配線基板とを隙間なく被覆する請求項1?3のいずれか1項に記載の発光装置。 【請求項5】 前記保護膜は、Al_(2)O_(3)、SiO_(2)、AlN、Si_(3)N_(4)のいずれかで形成されている請求項1?4のいずれか1項に記載の発光装置。 【請求項6】 前記保護膜は、前記無機材料が複数層積層されてなる請求項1?5のいずれか1項に記載の発光装置。 【請求項7】 前記発光素子は、200nm?410nmの波長の光を出射する請求項1?6のいずれか1項に記載の発光装置。 【請求項8】 基材と前記基材上の中央部に配置された配線層とを有する配線基板と、前記配線層に接合された発光素子と、前記基材と前記配線層と前記発光素子とを被覆する無機材料からなり、上面が平坦である保護膜と、を備える発光装置を準備する工程と、 前記発光装置を配置するための実装基板を準備する工程と、 開口径が平面視で前記配線層以上の大きさのノズルを準備する工程と、 前記ノズルが前記基材上の前記保護膜と接触し、前記配線層が前記ノズルの接触位置よりも内側にくるように調整しつつ、前記ノズルで前記発光装置を吸着し、前記発光装置を前記実装基板上に配置する工程と、を有することを特徴とする発光モジュールの製造方法。 【請求項9】 前記配線層が平面視で円形の前記配線基板を準備し、 開口形状が円形の前記ノズルを準備する請求項8に記載の発光モジュールの製造方法。 【請求項10】 前記ノズルが、前記配線層から0.05mm?0.25mm以上離間した前記基材上の前記保護膜と接触するように、前記ノズルで前記発光装置を吸着する請求項8又は9に記載の発光モジュールの製造方法。 【請求項11】 平板状の基材と、前記基材の上面に配置された正負の配線層と、を有する配線基板と、 前記配線層にフリップチップ実装され、紫外線領域の波長の光を出射する一個の発光素子と、 前記基材と前記配線層と前記発光素子とを被覆し、前記配線基板の上面と前記発光素子の表面に沿って形成され、かつ発光装置の外表面を形成する無機材料からなり、上面が平坦であって前記配線層の外縁から0.05mm?0.25mm以上離間された保護膜と、を備え、 前記配線層の外縁は曲線であり、該曲線の曲率は一定であり、 前記配線層が前記基材の外縁よりも内側であり、 前記発光素子の中心から前記配線層の前記外縁までの距離は略等しい発光装置。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2019-11-27 |
出願番号 | 特願2015-213765(P2015-213765) |
審決分類 |
P
1
652・
832-
YAA
(H01L)
P 1 652・ 121- YAA (H01L) P 1 652・ 537- YAA (H01L) P 1 652・ 536- YAA (H01L) P 1 652・ 113- YAA (H01L) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 島田 英昭 |
特許庁審判長 |
瀬川 勝久 |
特許庁審判官 |
星野 浩一 山村 浩 |
登録日 | 2018-04-27 |
登録番号 | 特許第6327232号(P6327232) |
権利者 | 日亜化学工業株式会社 |
発明の名称 | 発光装置及び発光モジュールの製造方法 |
代理人 | 豊栖 康弘 |
代理人 | 豊栖 康弘 |
代理人 | 豊栖 康司 |
代理人 | 豊栖 康司 |