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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G06Q
審判 全部申し立て 2項進歩性  G06Q
管理番号 1358666
異議申立番号 異議2019-700803  
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-02-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-10-03 
確定日 2020-01-20 
異議申立件数
事件の表示 特許第6493753号発明「医療データ分析システム及び医療データ分析プログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6493753号の請求項1?14に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6493753号の請求項1?14に係る特許についての出願は、平成27年6月15日に出願され、平成31年3月15日にその特許権の設定登録がされ、平成31年4月3日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和元年10月3日に特許異議申立人田口雅士(以下、「特許異議申立人」という。)より、特許異議の申立てがなされた。

2 本件発明
特許第6493753号の請求項1?14の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?14に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
急性期医療病院から提出され集計され公表される医療データに基づいて、急性期医療病院の分析を行う医療データ分析システムであって、
急性期医療病院データを記憶する急性期医療病院データベースと、
急性期医療病院の医療データを記憶する医療データベースと、
所定の任意のエリアを設定するエリア設定部と、
前記エリア設定部で設定されたエリア内の急性期医療病院から、任意の急性期医療病院を選択する急性期医療病院選択部と、
前記急性期医療病院選択部によって選択された急性期医療病院の医療データを取得する医療データ取得部と、
前記急性期医療病院データベースと、前記医療データ取得部で取得された医療データとに基づいて、着目する急性期医療病院において、1ヶ月間で1病床あたり何件の入院を取り扱ったかを算出する病床利用算出部と、
を有することを特徴とする医療データ分析システム。
【請求項2】
前記病床利用算出部によって、設定エリア内の全ての急性期医療病院の、1ヶ月間で1病床あたり何件の入院を取り扱ったかを算出することを特徴とする請求項1に記載の医療データ分析システム。
【請求項3】
前記医療データ取得部で取得された医療データに基づいて、着目する急性期医療病院において、疾病割合を算出する疾病割合算出部を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の医療データ分析システム。
【請求項4】
前記疾病割合算出部によって、設定エリア内の全ての急性期医療病院の、疾病割合を算出することを特徴とする請求項3に記載の医療データ分析システム。
【請求項5】
前記病床利用算出部で算出された1ヶ月間で1病床あたりの件数と、前記疾病割合算出部で算出された疾病割合と、を表示する表示部を有することを特徴とする請求項4に記載の医療データ分析システム。
【請求項6】
前記エリア設定部で設定される所定のエリアが、二次医療圏であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の医療データ分析システム。
【請求項7】
前記エリア設定部で設定される所定のエリアが、二次医療圏と当該二次医療圏に隣接するエリアであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の医療データ分析システム。
【請求項8】
急性期医療病院から提出され集計され公表される医療データに基づいて、急性期医療病院の分析をコンピューターに行わせる医療データ分析プログラムであって、
急性期医療病院データを記憶する急性期医療病院データベースと、
急性期医療病院の医療データを記憶する医療データベースと、を有し、
所定の任意のエリアを設定するエリア設定ステップと、
前記エリア設定ステップで設定されたエリア内の急性期医療病院から、任意の急性期医療病院を選択する急性期医療病院選択ステップと、
前記急性期医療病院選択ステップによって選択された急性期医療病院の医療データを取得する医療データ取得ステップと、
前記急性期医療病院データベースと、前記医療データ取得ステップで取得された医療データとに基づいて、着目する急性期医療病院において、1ヶ月間で1病床あたり何件の入院を取り扱ったかを算出する病床利用算出ステップと、
を実行することを特徴とする医療データ分析プログラム。
【請求項9】
前記病床利用算出ステップによって、設定エリア内の全ての急性期医療病院の、1ヶ月間で1病床あたり何件の入院を取り扱ったかを算出することを特徴とする請求項8に記載の医療データ分析プログラム。
【請求項10】
前記医療データ取得ステップで取得された医療データに基づいて、着目する急性期医療病院において、疾病割合を算出する疾病割合算出ステップを実行することを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の医療データ分析プログラム。
【請求項11】
前記疾病割合算出ステップによって、設定エリア内の全ての急性期医療病院の、疾病割合を算出することを特徴とする請求項10に記載の医療データ分析プログラム。
【請求項12】
前記病床利用算出ステップで算出された1ヶ月間で1病床あたりの件数と、前記疾病割合算出ステップで算出された疾病割合と、を表示する表示ステップを実行することを特徴とする請求項11に記載の医療データ分析プログラム。
【請求項13】
前記エリア設定ステップで設定される所定のエリアが、二次医療圏であることを特徴とする請求項8乃至請求項12のいずれか1項に記載の医療データ分析プログラム。
【請求項14】
前記エリア設定ステップで設定される所定のエリアが、二次医療圏と当該二次医療圏に隣接するエリアであることを特徴とする請求項8乃至請求項12のいずれか1項に記載の医療データ分析プログラム。」

3 申立理由の概要
特許異議申立人は、申立理由として、証拠として甲第1号証ないし甲第7号証の3を提出し、請求項1?14に係る特許は、甲第1号証、甲第1号証の2の文献記載の発明と周知技術から容易に想到できるものであって、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである旨(理由1)、請求項1?14に係る特許は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである旨(理由2)、及び請求項1?14に係る特許は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである旨(理由3)を主張している。

4 各甲号証の記載について
(1)甲第1号証と甲第1号証の2について
ア 甲第1号証
甲第1号証は、https://public.tableau.com/profile/kbishikawa#!/のWebページである。
作成者について、「Koichi B. Ishikawa」と記載されている(第1ページ)。
46のサムネイル画像とみられる図とそれぞれの図に対応するタイトルとみられるテキスト(「厚労省DPC調査(H28/2016)」、「再検証要請施設リスト(20190926版)」、「2017(H29)病床機能報告:病棟票」、等)が記載されており(第1ページ?第2ページ)、その中に、「H24地域病院ポートフォリオ」、「救急車搬送入院数(MDC別)」が含まれている(第2ページ)。

イ 甲第1号証の2
甲第1号証の2は、https://public.tableau.com/profile/kbishikawa#!/vizhome/H24DPCmhlwPortfolio/sheet0のWebページである。
タイトルと作成者について「H24地域病院ポートフォリオ」、「Koichi B.Ishikawa」と記載され、「平成24年度保険局DPC調査の公開データを利用した地域病院ポートフォリオです。ワークブックのダウンロード:不可)」と記載されている。また、「最終保存日:2014/08/20」と記載されている。
Webページは、それぞれにタブが付された14のサブページを含み、それぞれのタブには、「傷病から始める」「→地図」「傷病別・地域別分析」「病院から始める」「症例数と病床数」「相対入院日数」「SWOT分析(症例数)」「傷病一覧(症例数)」「傷病一覧(病床数)」「占有率」「病院検索」「病院map」「傷病一覧(施設数等)」「傷病一覧(地域別)」のテキストが示されている。
「傷病から始める」のタブのサブページにおいては、「傷病別の入院治療施設/H24保険局DPC調査結果」とのタイトルが示され、「MDC」の選択入力に応じて入力された値に対応する傷病名毎の「病院数」と「症例数/月」の表が示され、また、「MDC」と「傷病名」または「(すべて)」の選択入力に応じて「傷病名」または「(すべて)」(MDC中のすべての傷病名)に係る都道府県及び2次医療圏毎の「病院数」と「症例数/月」の表、病院毎の「数/月」「←%」「B」「←%」「ALOS」「←相対」「施設数」の表が示され、「病床数」を共通の縦軸とし「症例数/月」と「相対入院日数」をそれぞれ横軸として病院を示すプロットを表示した2つのグラフと日本地図上の病院のプロットを示す図が示されるものと認められる。
「傷病別・地域別分析」のタブのサブページにおいては、「都道府県」「2次医療圏」「傷病名」「表示するグラフの選択」の選択入力に応じて、選択されたグラフとして(例えば「x:占有率/y:施設の症例数月」の選択に応じて「症例数/月」を縦軸とし「診療圏(30分)における、症例数ベースの占有率」を横軸とするグラフとして)病院を示すプロットを表示したグラフが示され、そのプロットにカーソルを移動すると「施設」「傷病」「症例数/月」「病床数」「LOS」の数値が示され、「症例数/月」「病床数」については「占有率」も示されるものと認められる。
「症例数と病床数」のタブのサブページにおいては、「病院名」「MDC」の選択入力に応じて、「病床数」を縦軸とし「症例数/月」を横軸として病院を示すプロットを表示したグラフが示され、そのプロットにカーソルを移動すると「施設」「傷病」「症例数/月」「病床数」の数値が示され、その際「症例数/月」「病床数」については「占有率」も示されるものと認められる。

(2)甲第2号証について
甲第2号証は、平成27年3月14日に一般社団法人診断群分類研究支援機構により香川中央病院で開催された「DPCセミナー」において配布された「DPCデータを利用した地域医療分析」と題する資料の写しである(甲第2号証の2)。
「地域医療分析のフレームワーク」を示すページ(第2ページ)において、「利用可能なデータ」として「国勢調査」「患者調査」「医療施設調査・病院報告」「社会医療診療報酬行為別調査」「DPC調査」が示されている。また、「データを活用した医療計画の策定手順」を示すページ(第26ページ)において「データの準備」として「(1)DPCデータを用いた病院の機能(医療提供体制)の把握」「(2)NDBを用いた患者の受療動向と地域医療指標の評価」「(3)GISによる分析」「(4)隣接医療圏のデータとの連結分析」「(5)介護保険関連データとの連結分析」が示されている。

(3)甲第3号証について
甲第3号証は、平成23年12月3日に一般社団法人診断群分類研究支援機構により北海道大学医学部第3講義室で開催された「DPCセミナー」において配布された「GIS分析の可能性」と題する資料の写しである。(甲第3号証の2)
「GISによる診療圏の可視化」を示すスライド(スライド番号2)において、「医療機関へのアクセスについて、地図上で確認する」「・単純な直線距離」「・鉄道距離」「道路距離・運転時間」等と記載され、その後に続くスライドでは、「直線距離による診療圏」(スライド番号3)、「鉄道時間による診療圏」(スライド番号4、5)、「運転時間による診療圏」(スライド番号6、7)の例が図示されている。その後の「診療圏の「空間情報」」を示すスライド(スライド番号8)において「境界の抽出方法 行政境界 直線距離による境界 交通を考慮した境界」「任意の形状のシェープ(境界データ)を作成して、GISを利用して”図形処理”を行う必要性がある」「↓」「”メッシュ”の利用 固定形状のシェープ(矩形境界)に、様々な値を関連づける 人工分布などの属性情報とのマッチングが容易になる データベース処理による集計が可能になる(高速化が容易) 地域内の人口分布に考慮した自治体統計の作成が可能」と記載され、続く「地域メッシュ統計の概要」を示すスライド(スライド番号8)において、「表3 基準地域メッシュの区分方法」として、「区画の種類」として「第1次地域区画」、「第2次地域区画」、「基準地域メッシュ(第3次地域区画)」が示され、それぞれに対応する「区分方法」が「全国の地域を偶数緯度及びその間隔(120分)を3等分した緯度における緯線並びに1度毎の経線とによって分割してできる区域」、「第1次地域区画を緯線方向及び経線方向に8等分してできる区域」、「第2次地域区画を緯線方向及び経線方向に10等分してできる区域」である旨、等が記載され、続くスライドにおいては「1Kmメッシュの人口」の例が図示されている。

(4)甲第4号証について
甲第4号証は、平成23年10月10日に一般社団法人診断群分類研究支援機構により名古屋市立大学病院大ホールで開催された「DPCセミナー」において配布された「DPCデータとGIS分析」と題する資料の写しである。(甲第3号証の2)
「DPCデータを利用したGIS分析」を示すスライド(スライド番号2)において、「病院に着目した分析」として「保険局から公開される”DPC調査結果報告”を利用 地域内の診療機能の配置状況に基づく分析 傷病別のアクセシビリティ・カバー率、地域の治療件数・病床数、(各病院の)診療圏内の人口構成、地域内での占有率(シェア)」と記載されている。
「GISを用いたDPC分析」を示すスライド(スライド番号27)において、「保険局DPC調査の公開データを利用 複数の病院の位置データから、地域内での施設の地理的な分布がわかる 複数の病院の傷病別診療実績から、地域内での傷病別のアクセシビリティがわかる 特定の病院に注目すると、近隣施設の中での占有率(地域への貢献度)がわかる」と記載されている。

(5)甲第5号証について
甲第5号証(特開2012-32920号公報)には、次の記載がある。(下線は当審で付与した。)
「【0023】〔構成〕図1は、医療機関評価装置1の全体構成を概念的に示す説明図である。医療機関評価装置1は、医療機関を評価するための装置であって、機能概念的に、記憶部10、制御部20、入力部30、出力部40、及び入出力インターフェース(以下、インターフェースは「IF」)50を、バスにて相互に通信可能に接続して構成されている。
【0024】記憶部10は、各種処理に必要な情報やパラメータを不揮発的に格納する格納手段であり、例えば、HD(Hard Disk)にて構成される。具体的には、この記憶部10は、機能概念的に、医療機関評価情報データベース(以下、データベースは「DB」)11、医療機関情報DB12、MDC疾患分類情報DB13、DPC疾患分類情報DB14、及び術式情報DB15を備える。・・・
【0025】制御部20は、医療機関評価装置1の各部を制御する制御手段であり、機能概念的に、医療機関評価情報取得部21と、医療機関評価値算定部22と、出力制御部23とを備える。医療機関評価情報取得部21は、医療機関評価情報を取得する医療機関評価情報取得手段である。医療機関評価値算定部22は、各医療機関の評価を行うための医療機関評価値を算定する医療機関評価値算定手段である。出力制御部23は、医療機関評価値算定部22にて算定された各医療機関の医療機関評価値を出力するように制御する出力制御手段である。・・・
【0026】入力部30は、医療機関評価装置1に対する各種の情報の入力を受け付ける入力手段であり、ここでは、図示しないキーボード及びマウスを含んで構成されている。
【0027】出力部40は、医療機関評価装置1から各種の情報を出力する出力手段であり、ここでは、図示しないモニタを含んで構成されている。」

「【0030】医療機関評価情報DB11は、医療機関評価情報を格納する医療機関評価情報格納手段である。医療機関評価情報とは、複数の医療機関を評価するための情報であり、例えば、複数の医療機関の各々の経営状態を把握するための指標を算定するために必要な基礎情報である。この医療機関評価情報は、図2に例示するように、項目「年度」、項目「医療機関ID」、項目「MDC疾患分類コード」、項目「DPC疾患分類コード」、項目「術式コード」、項目「患者数」、及び項目「在院日数」と、これら各項目に対応する情報を相互に関連付けて構成されている。
【0031】・・・項目「医療機関ID」に対応する情報は、複数の医療機関の各々を特定するための医療機関特定情報であり、ここでは、各医療機関を一意に特定するために付与された医療機関IDである。項目「MDC疾患分類コード」に対応する情報と、項目「DPC疾患分類コード」に対応する情報とは、複数の医療機関の各々における入院患者の病名を特定するための病名特定情報を構成する。このうち、項目「MDC疾患分類コード」に対応する情報は、所定のMDC疾患分類により定められたコード(MDC疾患分類コード)であり、具体的には、所定の1?18分類のいずれかとなる。項目「DPC疾患分類コード」に対応する情報は、所定のDPC疾患分類により定められたコード(DPC疾患分類コード)であり、具体的には、各MDC疾患分類コードに対して設定された約200種類のコードである。これらMDC疾患分類コードとDPC疾患分類コードの組み合わせにより、入院患者の病名が一意に特定される。項目「術式コード」に対応する情報は、複数の医療機関の各々において入院患者に対して行った手術の術式を特定するための術式特定情報であり、ここでは、手術の術式を一意に特定するためのコード(術式コード)であるが、手術が行われなかった場合には他の所定のコードが含まれる。項目「患者数」に対応する情報は、複数の医療機関の各々における入院患者の患者数を特定するための患者数特定情報であり、ここでは、患者数を示す数値情報である。項目「在院日数」に対応する情報は、複数の医療機関の各々における入院患者の在院日数を特定するための在院日数特定情報であり、ここでは、在院日数を示す数値情報である。
【0032】このような医療機関評価情報は、医療機関評価装置1のユーザが入力部30を介して医療機関評価情報DB11に入力することもできるが、ここでは、後述する医療機関評価情報取得処理において、図示しない公的機関のサーバのDBに格納された医療機関評価情報を、入出力IF50を介してネットワーク経由にて任意のタイミングで取得し、医療機関評価情報DB11に格納するものとする。
【0033】医療機関情報DB12は、医療機関情報を格納する医療機関情報格納手段である。医療機関情報とは、医療機関の属性情報であり、図3に例示するように、項目「医療機関ID」、項目「医療機関名」、項目「住所」、及び項目「ベッド数」と、これら各項目に対応する情報を相互に関連付けて構成されている。項目「医療機関ID」に対応する情報は、図2の同一項目名に対応する情報と同じである。項目「医療機関名」に対応する情報は、医療機関の名称である。項目「住所」に対応する情報は、医療機関の住所である。項目「ベッド数」に対応する情報は、医療機関において患者が入院した際に使用可能なベッドの総数(病床数)である。」

「【0041】(処理-経営状態評価処理)次に、経営状態評価処理について説明する。この経営状態評価処理は、各医療機関の経営状態の評価を行うための医療機関評価値として、三大経営指標と称される病床稼働率、平均在院日数、及び1ベッド当たりの患者数を算定して出力するための処理(病床稼働率等出力処理)である。図7は、経営状態評価処理のフローチャートである。
【0042】ユーザが入力部30を介して所定方法で医療機関評価画面の表示を指示すると、制御部20は、医療機関評価画面を生成してモニタに表示させる。図8には、この医療機関評価画面の表示例を示す。この医療機関評価画面は、「医療機関選択タブ」M1、「疾患選択タブ」M2、及び「情報表示エリア」M3を含んで構成されている。医療機関選択タブM1は、評価対象とする医療機関を選択するためのタブであり、疾患選択タブM2は、評価対象とする疾患を選択するためのタブであり、情報表示エリアM3は、評価情報を表示するためのエリアであり、医療機関選択タブM1が選択されている場合と、疾患選択タブM2が選択されている場合とで、異なる情報を表示する。
【0043】この経営状態評価処理においては、ユーザは、医療機関選択タブM1を入力部30を介して選択する。この医療機関選択タブM1は、「地域選択エリア」M4と、「医療機関選択エリア」M5を含んで構成されている。地域選択エリアM4は、評価対象とする医療機関の所在地域を選択するためのエリアであり、地方を選択するための地方選択エリアM6、県名を選択するための県名選択エリアM7、及び市区町村を選択するための市区町村選択エリアM8を含んで構成されている。これら「地方選択エリア」M6、「県名選択エリア」M7、及び「市区町村選択エリア」M8には、全国の全ての地方、県名、及び市区町村が予めそれぞれ表示されているが、その時点において医療機関評価情報DB11に含まれている医療機関評価情報から医療機関IDを抽出し、当該抽出した医療機関IDに対応する住所を医療機関情報DB12から抽出して、当該抽出した住所に対応する地方、県名、及び市区町村のみを表示するようにしてもよい。医療機関選択エリアM5には、地域選択エリアM4で選択された地方、県名、及び市区町村に該当する場所に所在する医療機関名が表示される。
【0044】・・・グラフ表示エリアM13は、グラフを表示するエリアであり、医療機関評価値としての平均在院日数、1ベッド当たりの患者数、及び病床稼働率を、評価対象として選択された2つ以上の医療機関の相互間で対比可能となるように表示するエリアである。
【0045】・・・ユーザは、地方選択エリアM6にドロップダウンリスト形式で表示されている地方の中から一つの地方を入力部30を介して選択する。この選択が行われると、制御部20は、当該選択された地方に含まれる県を公知の方法で特定して県名選択エリアM7に表示し、以降同様に、ユーザは、県名と市区町村を入力部30を介して順次選択する。この選択が行われると、制御部20は、このように地方、県、あるいは市区町村が選択される毎に、当該選択された地方、県、あるいは市区町村に含まれる医療機関の医療機関名を医療機関選択エリアM5に表示する。・・・
【0046】次いで、ユーザは、医療機関選択エリアM5に表示されている医療機関名の中から、評価対象としたい少なくとも2つ以上の医療機関名を入力部30を介して選択した後、病院選択ボタンM11を入力部30を介して選択する。この操作により、評価対象とする医療機関が固定される。次いで、ユーザは、年度選択ボタンM10を介して、評価対象としたい年度を選択する。そして、ユーザは、入力部30を介して評価開始ボタンM12を選択することで、評価の開始を指示する。
【0047】このように評価の開始が指示されると(SA1、Yes)、医療機関評価値算定部22は、ユーザによって選択された各医療機関及び年度を対象として、医療機関評価値(ここでは、平均在院日数及び1ベッド当たりの患者数)を算定する。具体的には、医療機関評価値算定部22は、ユーザによって選択された医療機関名に対応する医療機関IDを医療機関情報DB12から取得し、当該取得した医療機関IDと、ユーザによって選択された年度とに対応する医療機関評価情報を医療機関評価情報DB11から取得する。そして、当該取得した医療機関評価情報に基づいて、選択された年度における各医療機関の平均在院日数を算定し(SA2)、1ベッド当たりの患者数を算定する(SA3)。
・・・
【0052】次いで、出力制御部23は、このように算定された平均在院日数と1ベッド当たりの患者数を、評価対象として選択された2つ以上の医療機関の相互間で対比可能となるように、所定の出力手段(ここでは、出力部40のモニタ)を介して出力する(SA4)。具体的には、出力制御部23は、図8の医療機関評価画面のグラフ表示エリアM13において、横軸を平均在院日数(単位=日)、縦軸を1ベッド当たりの患者数(単位=人)とするグラフを生成し、このグラフ内における、上記算定した平均在院日数と1ベッド当たりの患者数が交差する位置に、評価対象として選択された医療機関を示す情報(ここでは、凡例表示エリアM9に表示された各記号。以下、表示記号)を出力する。・・・このように、評価対象として選択された2つ以上の医療機関の各々の平均在院日数と1ベッド当たりの患者数を示す記号が、同一のグラフに同時に表示されることで、これら2つ以上の医療機関の平均在院日数と1ベッド当たりの患者数の大小関係(優劣関係)を、容易かつ正確に把握することが可能となる。
【0053】また、出力制御部23は、このグラフにおいて各医療機関の平均在院日数及び1ベッド当たりの患者数を出力する際には、これら平均在院日数及び1ベッド当たりの患者数を、当該各医療機関の病床稼働率に関連付けて出力する。すなわち、グラフには、複数の代表的な病床稼働率(ここでは、20%、40%、60%、80%)を示す曲線(病床稼働率曲線)が、平均在院日数及び1ベッド当たりの患者数に関連付けて描画されているので、これら各病床稼働率曲線に対する表示記号の位置に基づいて、各医療機関の病床稼働率を把握することができる。」

「【0058】(処理-サービス品質評価処理)最後に、サービス品質評価処理について説明する。このサービス品質評価処理は、各医療機関のサービスの品質(特に、手術の技術品質)の評価を行うための医療機関評価値として、手術件数を算定して出力するための処理である。図10は、サービス品質評価処理のフローチャートである。
【0059】ユーザが入力部30を介して所定方法で医療機関評価画面の表示を指示すると、制御部20は、図8の医療機関評価画面を生成してモニタに表示させる。この手術件数出力処理においては、ユーザは、医療機関選択タブM1を入力部30を介して選択し、経営状態評価処理の場合と同様に、評価対象とする2つ以上の医療機関を選択する。この状態の医療機関評価画面を図11に示す。
【0060】次いで、ユーザは、疾患選択タブM2を入力部30を介して選択する。この疾患選択タブM2は、「MDC疾患選択エリア」M14、「DPC疾患選択エリア」M15、及び「術式表示エリア」M16を含んで構成されている。MDC疾患選択エリアM14は、MDC疾患分類に基づいて、疾患を選択するためのエリアであり、DPC疾患選択エリアM15は、MDC疾患選択エリアM14で選択されたMDC疾患分類に対応するDPC疾患分類に基づいて、疾患を選択するためのエリアである。術式表示エリアM16は、DPC疾患選択エリアM15で選択された術式に対応する術式コード及び術式名を表示するエリアである。・・・
【0061】また、このように疾患選択タブM2が選択されている場合においては、情報表示エリアM3は、図12に示すように、「凡例表示エリア」M17、「表示方法選択ボタン」M18、「年度選択ボタン」M19、「病院選択ボタン」M20、「評価開始ボタン」M21、及び「グラフ表示エリア」M22を含んで構成される。凡例表示エリアM17、年度選択ボタンM19、病院選択ボタンM20、及び評価開始ボタンM21の機能は、図8の場合における同一名のエリア又はボタンと同様である。表示方法選択ボタンM18は、医療機関評価値の表示方法を選択するためのボタンであり、ここでは、患者数とシェアのいずれかを選択することが可能となっている。グラフ表示エリアM22は、グラフを表示するエリアであり、医療機関評価値としての手術の件数を、評価対象として選択された2つ以上の医療機関の相互間で対比可能となるように表示するエリアである。
【0062】次いで、ユーザは、MDC疾患選択エリアM14にドロップダウンリスト形式で表示されているMDC疾患分類コード及びMDC疾患分類名の中から一つのMDC疾患分類コード及びMDC疾患分類名を入力部30を介して選択する。この選択が行われると、制御部20は、当該選択されたMDC疾患分類コードに対応するDPC疾患分類名をDPC疾患分類情報DB14から抽出し、当該抽出したDPC疾患分類名をDPC疾患選択エリアM15に表示する。また、ユーザは、必要に応じて医療機関選択タブM1において、経営状態評価処理の場合と同様に評価対象とする2つ以上の医療機関を選択した後、疾患選択タブM2の病院選択ボタンM20を入力部30を介して選択する。この操作により、評価対象とする医療機関が固定される。次いで、ユーザは、表示方法選択ボタンM18を介して表示方法を選択し、年度選択ボタンM19を介して、評価対象としたい年度を選択する。そして、ユーザは、入力部30を介して評価開始ボタンM21を選択することで、評価の開始を指示する。
【0063】このように評価の開始が指示されると(SB1、Yes)、医療機関評価値算定部22は、ユーザによって選択された各医療機関、年度、及びMDC疾患分類コードを対象として、医療機関評価値(ここでは、手術の件数)を算定する(SB2)。具体的には、医療機関評価値算定部22は、ユーザによって選択された医療機関名に対応する医療機関IDを医療機関情報DB12から取得し、当該取得した医療機関IDと、ユーザによって選択されたMDC疾患分類コード及び年度とに対応する医療機関評価情報を医療機関評価情報DB11から取得する。そして、当該取得した医療機関評価情報に基づいて、選択された年度における各医療機関の手術の件数を算定する。具体的には、各医療機関ID毎に、各MDC疾患分類コードに対応付けられた患者数の総和を算定する。ただし、各MDC疾患分類コードに対応付けられた術式コードが、所定の「手術なし」を示すコードである場合には、当該術式コードに対応付けられた患者数は除外して、患者数の総和を算定する。そして、当該算定した患者数の総和を、当該各MDC疾患分類コードに対応する手術の件数とする。また、医療機関評価値算定部22は、表示方法選択ボタンM18によってシェアの表示が選択されている場合には、各MDC疾患分類コード毎に患者数の総和を算定し、当該患者数の総和に対する、各医療機関ID毎の患者数の総和の比率を算定することで、当該各MDC疾患分類コード毎における各医療機関のシェアを算定する。
【0064】次いで、出力制御部23は、このように算定された手術の件数(表示方法選択ボタンM18によって患者数の表示が選択されている場合には患者数の総和、表示方法選択ボタンM18によってシェアの表示が選択されている場合にはシェア。以下、本処理において同じ。)を、評価対象として選択された2つ以上の医療機関の相互間で対比可能となるように、所定の出力手段(ここでは、出力部40のモニタ)を介して出力する(同じく、SB2)。具体的には、出力制御部23は、図12の医療機関評価画面のグラフ表示エリアM22において、横軸をMDC疾患分類コード、縦軸を手術の件数とするグラフを生成し、このグラフ内に、各MDC疾患分類コードに対する手術の件数を棒グラフ形式で表示する。この際、異なる医療機関における同一のMDC疾患分類コードの手術の件数は、同一のMDC疾患分類コードに対応する位置に色分けして表示する。例えば、医療機関Xに関して、MDC疾患分類コード01の手術の件数が2件であり、医療機関Yに関して、MDC疾患分類コード01の手術の件数が4件であった場合、MDC疾患分類コード01に対応する6件分の高さの棒グラフを生成し、この棒グラフの内部を、4件分と2件分の各々の件数に応じた高さで色分けする。また、このように色分けした表示の凡例を生成して、凡例表示エリアM17に表示する。このように、評価対象として選択された2つ以上の医療機関の各々の各MDC疾患分類毎の手術の件数が、同一のグラフに同時に表示されることで、これら2つ以上の医療機関の手術の件数であって、MDC疾患分類レベルでの手術の件数の大小関係(優劣関係)を、容易かつ正確に把握することが可能となる。」

これらの記載からみて、甲第5号証には、
「医療機関評価情報DBや医療機関情報DB等のデータベースを記憶する記憶部、医療機関評価値算定部や出力制御部等である制御部、等を含み構成された医療機関評価装置であって、
医療機関評価情報DBは、例えば、複数の医療機関の各々の経営状態を把握するための指標を算定するために必要な基礎情報である医療機関評価情報を記憶し、例えば、「年度」、「医療機関ID」、「MDC疾患分類コード」、「DPC疾患分類コード」、「術式コード」、「患者数」、及び「在院日数」の各項目に対応する情報を相互に関連付けて構成されているものであり、ここで「MDC疾患分類コード」の項目に対応する情報は、所定のMDC疾患分類により定められたコード(MDC疾患分類コード)であり、具体的には、所定の1?18分類のいずれかとなるものであり、
医療機関情報DBは、医療機関の属性情報を記憶し、例えば「医療機関ID」、「医療機関名」、「住所」、及び「ベッド数」の各項目に対応する情報を相互に関連付けて構成されているものであり、
医療機関の経営状態を評価するために、情報表示エリアとともに地域選択エリアと医療機関選択エリアを含む医療機関選択タブ及び疾患選択タブを含んで構成されている医療機関評価画面において、地域選択エリアで選択された地方、県名及び市区町村に該当する場所に所在する医療機関からのユーザにより評価対象としたい2以上の医療機関として選択された医療機関について、平均在院日数及び1ベッド当たりの患者数である医療機関評価値を算定し、算定された平均在院日数と1ベッド当たりの患者数を、評価対象として選択された2つ以上の医療機関の相互間で対比可能となるようにモニタを介して出力し、その際、グラフ表示エリアに複数の代表的な病床稼働率を示す病床稼働率曲線が平均在院日数及び1ベッド当たりの患者数に関連付けて描画されて、各病床稼働率曲線に対する表示記号の位置に基づいて各医療機関の病床稼働率を把握することができるものであり、
また、医療機関のサービスの品質の評価を行うために、情報表示エリアとともに地域選択エリアと医療機関選択エリアを含む医療機関選択タブ及び疾患選択タブを含んで構成されている医療機関評価画面において、地域選択エリアで選択された地方、県名及び市区町村に該当する場所に所在する医療機関からのユーザにより評価対象としたい2以上の医療機関として選択された医療機関について、対応する医療機関IDと、ユーザによって選択されたMDC疾患分類コード及び年度とに対応する医療機関評価情報を医療機関評価情報DBから取得し、取得した医療機関評価情報に基づいて、選択された年度における各医療機関の手術の件数として、各医療機関ID毎に、各MDC疾患分類コードに対応付けられた患者数の総和を算定し、さらに、シェアの表示が選択されている場合には、各MDC疾患分類コード毎に患者数の総和を算定し、当該患者数の総和に対する、各医療機関ID毎の患者数の総和の比率を算定することで、当該各MDC疾患分類コード毎における各医療機関のシェアを算定し、算定されたシェアを、評価対象として選択された2つ以上の医療機関の相互間で対比可能となるようにモニタを介して出力する、
医療機関評価装置」
の発明(以下、「甲5発明」という。)が記載されている。

(6)甲第6号証について
甲第6号証は、独立行政法人統計センターにより平成24年1月に発行された「統計GISシステム-操作説明書」の抜粋であり、次の旨が記載されている。
・「GIS機能」を示す「プロット」「エリア」「統計データ」「レポート」のボタンのうち、「エリア操作」にあたっては「エリア」ボタンから操作を行い、「グラフ操作(統計データ)」にあたっては「統計データ」ボタンから操作を行う旨(4-27頁、5-42頁)。
・「エリア操作」では、「エリア」は「面の情報」であり、「用途としては自店を中心とした実商圏の描画や、仮想商圏の描画など、商圏に関する利用を想定」しているものであり、「グループを作成した上で、そのグループ内に1つ1つのエリアを登録する」ものである旨(4-27頁)、エリアの作成方法としては、地図上を連続クリックして描かれた多角形をエリアとする「多角形」(4-28?29頁)、クリックした地点を中心して描かれた円をエリアとする「円(フリー円、半径指定円、同心円)」(4-30?32頁)、線路などの沿線の半径500m範囲をエリアとする「ラインバッファエリア」(4-33?34頁)、到達圏種類(徒歩か車)、到達時間を入力することにより徒歩や車での到達可能な範囲をエリアとする「到達圏」(4-35頁)があり、いずれについても、エリア名を入力した上で、エリアを指定する旨(4-28?35頁)。
・「グラフ操作(統計データ)」では、「エリア(商圏)単位」での集計について、「商圏エリアなどを描いている場合、”商圏内にどれだけの世帯があるのか”といった集計を行うことができ」る旨、「エリア単位で集計する場合」は「集計単位の選択」において「エリア」にチェックを入れ、集計した「エリアグループ」を反転選択した上で集計開始する旨、「エリアが全国に散らばっていても、集計されるのは地図表示範囲周辺のみ」となる旨(5-52頁)、「按分しない」「按分する」のいずれかのチェックに従って、例えば「新宿7」という小地域の世帯数が3000世帯だとし、自店の1次商圏が50%程度「新宿7」に掛かっていた場合に「按分しない」とした場合は、1次商圏の集計結果には「新宿7」の3000世帯がすべて含まれ、「按分する」とした場合は、3000世帯の50%程度で按分され、1500世帯として算出される旨(5-53頁)、「エリア(商圏)範囲」での集計について、「エリア」でなく「小地域」単位で集計を行う場合において表示範囲内でも商圏以外の部分を集計したくない場合に、画面表示範囲内で同心円等のエリアを選択することで商圏以外を集計されなくすることができる旨(5-54頁)、「プロット」集計では、「単位が明確になっている指標(国際調査の小地域やメッシュデータ等)の選択を促される旨、(5-48頁)、「ユーザデータ」指標を利用した集計にあたっては、CSVファイル形式で小地域コードやメッシュ番号を1列目とし、2列目以降をデータとするフォーマットによるユーザデータを投入して集計することが可能である旨(5-50?51頁)。

(7)甲第7号証について
甲第7号証は、国土交通省により電気通信回線を介して公衆に利用可能とされた「「高齢福祉関係の計画策定/政策立案のための基礎分析(1)」別添マニュアル 地方公共団体福祉部門のためのQuantumGIS操作マニュアル」の抜粋であり、平成26年4月に更新されたものが国土交通省のWebサイトに掲載されることによって利用可能とされたものと認められる(甲第7号証の2、甲第7号証の3)。
甲第7号証には、
「GIS」では「あるポイントやポリゴン、ラインなどから一定の距離の圏域」である「バッファ」を作成することができる旨、「医療機関(診療所)の分布からバッファ圏域(施設から一定距離の圏域)を作成し、そこに含まれないメッシュ単位の人口を集計する」ことで「医療到達困難人口を把握」する旨、そのための、バッファ圏域やボロノイ分割圏域のもととなる「医療機関(診療所)の分布データ」を準備するにあたって、「診療所は一般に、行政区に関わらず最も近い施設を利用するものである」と考えられることから、「稲城市だけでなくその周辺市町村のデータ」や「神奈川県のデータ」を用意し「1つのファイルに結合したうえで処理を行う必要がある旨(86頁)、国土数値情報から医療機関データの東京都・神奈川県データをダウンロードし(87?88頁)、ダウンロードされた都道府県ごとに分割された医療機関データを1つのShapeファイルに統合する旨(89頁)が記載されている。
さらに、表示された稲城市とその周辺において「長方形領域による地物選択」「フリーハンドによる地物選択」等によって抽出する周辺エリアを設定し、設定したエリア内の医療機関のみを選択して保存することができる旨(90?92頁)、保存されたエリア内の医療機関の中から「属性テーブルウインドウ」で「アドバンストサーチ」を選択して所定の検索式を入力することで、表示された稲城市とその周辺において、「医療機関」のうち「診療所」のみを表示することが可能である旨(93?96頁)が記載されている。

5 理由1についての当審の判断
(1)請求項1に係る発明(本件発明)について
ア 対比
(ア)本件の異議申立理由においては、甲第1号証及び甲第1号証の2を「文献公知発明」に係る引用文献と扱っている。
このうち、甲第1号証は、サムネイル画像とタイトルを記載するものであり、本件発明と対比することが可能な発明が記載されたものと認められない。
本件では、事案に鑑み、甲第1号証の2に記載された発明(以下、「甲1の2発明」という。)がこの「最終保存日」において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であると仮定し、これを主引用発明とした場合の検討を行う。

(イ)「4(1)イ」に上述したところによれば、甲第1号証の2には、次の発明(甲1の2発明)が記載されている。
<甲1の2発明>
「「傷病から始める」「→地図」「傷病別・地域別分析」「病院から始める」「症例数と病床数」「相対入院日数」「SWOT分析(症例数)」「傷病一覧(症例数)」「傷病一覧(病床数)」「占有率」「病院検索」「病院map」「傷病一覧(施設数等)」「傷病一覧(地域別)」のテキストが示されたタブが付されたサブページを含むWebページを表示し、
これらのサブページのうち「傷病から始める」のタブのサブページにおいて、
「傷病別の入院治療施設/H24保険局DPC調査結果」とのタイトルが示され、「MDC」の選択入力に応じて入力された値に対応する傷病名毎の「病院数」と「症例数/月」の表が示され、また、「MDC」と「傷病名」または「(すべて)」の選択入力に応じて「傷病名」または「(すべて)」(MDC中のすべての傷病名)に係る都道府県及び2次医療圏毎の「病院数」と「症例数/月」の表、病院毎の「数/月」「←%」「B」「←%」「ALOS」「←相対」「施設数」の表が示され、「病床数」を共通の縦軸とし「症例数/月」と「相対入院日数」をそれぞれ横軸として病院を示すプロットを表示した2つのグラフと日本地図上の病院のプロットを示す図が示され、
「傷病別・地域別分析」のタブのサブページにおいては、「都道府県」「2次医療圏」「傷病名」「表示するグラフの選択」の選択入力に応じて、選択されたグラフとして(例えば「x:占有率/y:施設の症例数月」の選択に応じて「症例数/月」を縦軸とし「診療圏(30分)における、症例数ベースの占有率」を横軸とするグラフとして)病院を示すプロットを表示したグラフが示され、そのプロットにカーソルを移動すると「施設」「傷病」「症例数/月」「病床数」「LOS」の数値が示され、「症例数/月」「病床数」については「占有率」も示され、
「症例数と病床数」のタブのサブページにおいては、「病院名」「MDC」の選択入力に応じて、「病床数」を縦軸とし「症例数/月」を横軸として病院を示すプロットを表示したグラフが示され、そのプロットにカーソルを移動すると「施設」「傷病」「症例数/月」「病床数」の数値が示され、その際「症例数/月」「病床数」については「占有率」も示される、システム。」

本件発明と甲1の2発明とを対比する。
甲1の2発明において明示されていないものの、「傷病別の入院治療施設/H24保険局DPC調査結果」とのタイトルからみて、甲1の2発明の「病院」は、本件発明の「急性期医療病院」を含み、甲1の2発明の「システム」は、DPCデータである「急性期医療病院から提出され集計される医療データ」に基づいて「急性期医療病院の分析を行う医療データ分析システム」である点で、本件発明と共通するものといえる。
甲1の2発明の「症例数と病床数」のタブのサブページにおける、「病院名」「MDC」の選択入力に応じて表示されるグラフの病院を示すプロットにカーソルを移動すると示される「症例数/月」の数値は、当該急性期医療病院における1ヶ月間の取り扱い量である点において、本件発明の「1ヶ月間で1病床あたり何件の入院を取り扱ったか」に対応するといえるものの、甲1の2発明は、この取り扱い量を算出する算出部を有するか否かが明らかでなく、また、仮にこの取り扱い量を算出する算出部を有するとしても、算出される「着目する急性期医療病院」に係る取り扱い量は、「症例数」であって1病床あたりの入院数でないから、本件発明の「病床利用算出部」に対応する構成を有するといえない。

してみると、本件発明と甲1の2発明との一致点と相違点は、次のとおりである。
<一致点>
急性期医療病院から提出され集計され公表される医療データに基づいて、急性期医療病院の分析を行う医療データ分析システム。

<相違点>
(相違点1-1)
本件発明は「急性期医療病院データを記憶する急性期医療病院データベース」と「急性期医療病院の医療データを記憶する医療データベース」とを有するのに対し、甲1の2発明は、これらを有するか否かが明らかでない点
(相違点1-2)
本件発明は、「所定の任意のエリアを設定するエリア設定部」、「前記エリア設定部で設定されたエリア内の急性期医療病院から、任意の急性期医療病院を選択する急性期医療病院選択部」、「前記急性期医療病院選択部によって選択された急性期医療病院の医療データを取得する医療データ取得部」を有するのに対し、甲1の2発明は、これらを有していない点
(相違点1-3)
本件発明は、「前記急性期医療病院データベースと、前記医療データ取得部で取得された医療データとに基づいて、着目する急性期医療病院において、1ヶ月間で1病床あたり何件の入院を取り扱ったかを算出する病床利用算出部」を有するのに対し、甲1の2発明は、当該急性期医療病院における1ヶ月間の取り扱い量である「症例数/月」を表示するものの、「前記急性期医療病院データベースと、前記医療データ取得部で取得された医療データとに基づいて、着目する急性期医療病院において、1ヶ月間で1病床あたり何件の入院を取り扱ったかを算出する病床利用算出部」を有するものでない点

相違点の判断
事案に鑑み、相違点1-2について検討する。
(ア)本件発明は、「周辺の競合病院」との間における「自病院の位置づけ」を把握し、「今後の自病院の診療機能拡充計画の策定などに有効な情報を得る」という課題(本件特許の明細書段落【0004】)を解決するための手段として急性期医療病院の選択にかかる対象となるエリアについて「所定の任意のエリアを設定するエリア設定部」を有するものである。
これに対し、甲第1号証の2は、「周辺の競合病院」との間における「自病院の位置づけ」を把握し、「今後の自病院の診療機能拡充計画の策定などに有効な情報を得る」という課題を欠くものである。
このことに照らせば、甲1の2発明においてこの技術を採用して「所定の任意のエリアを設定するエリア設定部」を有するものへと変更する動機付けはない。
(イ)甲第2号証ないし甲第7号証について
甲第2号証ないし甲第7号証は、いずれも「周辺の競合病院」との間における「自病院の位置づけ」を把握し、「今後の自病院の診療機能拡充計画の策定などに有効な情報を得る」という課題の解決手段として急性期医療病院の選択にかかる対象となるエリアについて「所定の任意のエリアを設定するエリア設定部」を設けることを示すものでない。
甲第2号証と甲第4号証は、いずれも、都道府県、市町村、2次医療圏のような行政による区分を用いたエリアの指定や、距離、運転時間、鉄道時間のような診療圏によるエリアの指定を行うことを前提としたものであり、「所定の認定のエリアを設定する設定部」に対応する開示は見当たらない。
甲第3号証は、「任意の形状のシェープ(境界データ)を作成して、GISを利用して”図形処理”を行う必要性」を示すのといえるものの、そのために「基準地域メッシュ」のようなメッシュデータを用いることを記載するにとどまり、「所定の認定のエリアを設定する設定部」に対応する開示は見当たらない。
甲第5号証は、「8(1)ア」で後述するとおりであって、「所定の認定のエリアを設定する設定部」に対応する開示は見当たらない。
甲第6号証は、商圏を想定したエリアについて「所定の任意のエリアを設定するエリア設定部」を開示するということはできるものの、「エリア」の集計は、「小地域」単位の量であって「エリア」に「按分」可能であるものを想定した内容となっており、「プロット」や「ユーザデータ」の集計についても、小地域コードが示す「小地域」やメッシュ番号が示す「メッシュデータ」を想定したものとなっており、「自病院の位置づけ」を把握するために急性期医療病院の選択にかかる対象となるエリアを設定するという観点を踏まえた転用が困難なものであるから、急性期医療病院の選択にかかる対象となるエリアの設定のためのものとして転用するために必要な技術的事項を示すものでない。
甲第7号証は、統計処理の対象を示すエリアを指定するにあたって、表示された地図上での「フリーハンドによる地物選択」等による抽出によるエリアの設定を介在させるものであるものの、「医療到達困難人口の把握」のような統計処理の個々の要素(居住者)の対象を示すエリアは「医療機関(診療所)の分布データ」をもととした「バッファ圏域やボロノイ分割圏域」として示される範囲であって「所定の任意のエリア」ではないから、「所定の任意のエリアを設定するエリア設定部」を開示するものではないし、「自病院の位置づけ」を把握するために急性期医療病院の選択にかかる対象となるエリアを設定するという観点を踏まえた転用が困難なものであるから、急性期医療病院の選択にかかる対象となるエリアの設定のためのものとして転用するために必要な技術的事項を示すものでもない。
(ウ)してみると、相違点1-2について容易想到であるということはできないから、相違点1-1及び1-3について検討するまでもなく、本件発明は、甲1の2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
よって、請求項1に係る特許について、甲第1号証を主引用文献とする進歩性要件違反はない。

(2)請求項2?7に係る発明について
請求項2?7は、いずれも請求項1を引用する請求項であり、これらに係る発明と甲1の2発明とを対比すると、いずれについても相違点1-1?1-3があり、このうち相違点1-2は容易想到でないから、請求項2?7に係る特許についても、甲第1号証を主引用文献とする進歩性要件違反はない。

(3)請求項8?14に係る発明について
請求項8?14に係る発明は、請求項1?7のシステム発明に対応するプログラム発明であって、これらに係る発明と甲1の2発明とを対比すると、いずれについても相違点1-2に対応する相違点があり、この相違点は容易想到でないから、請求項8?14に係る特許についても、甲第1号証を主引用文献とする進歩性要件違反はない。

(4)特許異議申立人は、本件発明における、「所定の任意のエリアを設定するエリア設定部」を有し、急性期医療病院の選択にかかる対象となる範囲が「設定」された「所定の任意のエリア」にかかる「エリア内の」急性期医療病院である旨について、甲1の2発明との一致点であるとしている。
しかし、上述したとおり、この点は相違点であり、甲第2号証ないし甲第7号証によってこの相違点について容易想到であるということはできないから、特許異議申立人の主張を採用することはできない。

6 理由2についての当審の判断
(1)請求項1?14には、「所定の任意のエリアを設定するエリア設定部(エリア設定ステップ)」について、任意の急性期医療病院の選択に係る被選択対象となる範囲を示す「所定の任意のエリア」を「設定」する旨が記載されている。
他方、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、「従来技術」において「周辺の競合病院との間における自病院の位置づけなど」を把握することができないことから拡充計画作成などに有効な情報を得ることができないという問題等の解決を課題とする旨(段落【0004】ないし【0006】)が記載されるとともに、その段落【0041】ないし【0043】において、任意の広さや形状のエリアを設定すること、そのような所定のエリアの例として、ユーザが任意に設定する例に加え、二次医療圏や二次医療圏とともにその隣接エリアを設定する例が記載されており、これらの例においては、ユーザーによって入力されたエリアをシステムが受け入れて「所定の任意のエリア」を設定するものである。
してみると、上記の請求項1?14の「所定の任意のエリアを設定するエリア設定部(エリア設定ステップ)」についての記載は、明細書の段落【0041】ないし【0043】に記載された本件特許の課題の解決手段の記載に対応するものとなっており、「エリア設定部」が「エリアを設定する」ことに対応する内容が明細書に記載されているといえるから、この点においてサポート要件違反はない。
(2)特許異議申立人は、「エリア設定部」が「エリアを設定する」ことに対応する内容が明細書に記載されていない、明細書の記載上、「認定のエリア」を設定しているのは「ユーザー」であって「医療データ分析システム」は「ユーザーが設定したエリア」を受け入れているにすぎない、等と主張している。
しかし、特許請求の範囲の「所定の任意のエリア」を「設定」する旨の記載は、「ユーザーが設定したエリア」を受け入れて「所定の任意のエリア」の「設定」を行うものを含み、これを排除していないことが明らかであり、(1)で上記したとおり、「エリア設定部」が「エリアを設定する」ことに対応する内容は明細書に記載されているといえる。特許異議申立人の主張は、特許請求の範囲の記載に即したものでなく、採用できない。

7 理由3についての当審の判断
(1)「6(1)」において上述したとおり、請求項1?14には、「所定の任意のエリアを設定するエリア設定部(エリア設定ステップ)」について、任意の急性期医療病院の選択に係る被選択対象となり、かつ、主要診断群毎のシェアの算出のための「除する」数(分母)となる「全ての急性期医療病院」を示すものとなる範囲を示す「所定の任意のエリア」を「設定」する旨が記載されており、また、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、これに対応する記載があることが認められる。これらの記載に照らせば、「所定の任意のエリア」とは、ユーザが任意にその広さや形状を設定したエリア、二次医療圏、二次医療圏とその隣接エリア等によってユーザが任意に設定した所定のエリアのことであって、「所定の任意のエリアを設定する」とは、このような「所定の任意のエリア」をシステムにおいて設定する旨を示していることをが明らかであるから、請求項1?10の「所定の任意のエリアを設定するエリア設定部(エリア設定ステップ)」についての記載は、明確性要件に違反するものではない。
(2)特許異議申立人は、平成31年1月28日付け意見書の記載を根拠として、「「所定の任意のエリアを設定する」の意味は、「所定のエリア」の中から「任意のエリアを選択あるいは設定する」と解釈される」と主張している。
しかし、「所定の任意のエリアを設定する」の意味は(1)において上述したとおりであり、該意見書の記載内容は明確性要件の判断を左右するものでない。また、仮に、該意見書の記載を考慮するにしても、「所定の任意のエリアを設定する」の意味が「所定のエリア」の中から「任意のエリアを選択あるいは設定する」ことであるとは認められない。特許異議申立人の主張は、特許請求の範囲の記載に即したものでなく、採用できない。

8 甲第5号証を主引用文献とする進歩性要件違反の有無について
事案に鑑み、甲第5号証を主引用文献とする進歩性要件違反の有無を検討する。
(1)請求項1に係る発明(本件発明)について
ア 本件発明と甲5発明(「4(5)」において上述)との対比
甲5発明の医療機関は、診療報酬の算定方式としてDPC方式が導入された医療機関であって、本件発明の「急性期医療病院」に相当し、「医療機関評価情報DB」、「医療機関情報DB」は、それぞれ、本件発明の「医療データベース」、「急性期医療病院データベース」に相当する。
また、甲5発明の「地方、県名及び市区町村に該当する場所」は、ユーザによって任意に設定されたものではないものの、そこに含まれる急性期医療病院が選択されるエリアである点で本件発明の「エリア」に対応するものである。
また、甲5発明の、「選択された医療機関」について「1ベッド当たりの患者数」を算定することは、本件発明の「着目する急性期医療病院において、1ヶ月間で1病床あたり何件の入院を取り扱ったかを算出する」ことに相当するといえる。

してみると、両者の一致点及び相違点(相違点2)は、次のとおりである。
<一致点>
急性期医療病院から提出され集計され公表される医療データに基づいて、急性期医療病院の分析を行う医療データ分析システムであって、
急性期医療病院データを記憶する急性期医療病院データベースと、
急性期医療病院の医療データを記憶する医療データベースと、
エリア内の急性期医療病院から、任意の急性期医療病院を選択する急性期医療病院選択部と、
前記急性期医療病院選択部によって選択された急性期医療病院の医療データを取得する医療データ取得部と、
前記急性期医療病院データベースと、前記医療データ取得部で取得された医療データとに基づいて、着目する急性期医療病院において、1ヶ月間で1病床あたり何件の入院を取り扱ったかを算出する病床利用算出部と、
を有する医療データ分析システム。

<相違点(相違点2)>
本件発明は、「所定の任意のエリアを設定するエリア設定部」を有し、急性期医療病院の選択にかかる対象となる範囲が「設定」された「所定の任意のエリア」にかかる「エリア内の」急性期医療病院であるのに対し、甲5発明は、エリアとして「地方、県名及び市区町村に該当する場所」を選択するものであって「所定の任意のエリア」を「設定」するものでなく、急性期医療病院の選択にかかる対象となる範囲も「設定」された「所定の任意のエリア」にかかる「エリア内の」急性期医療病院でない点。

イ 相違点(相違点2)の判断
(ア)「5(1)イ」において上述したとおり、本件発明は、「周辺の競合病院」との間における「自病院の位置づけ」を把握し、「今後の自病院の診療機能拡充計画の策定などに有効な情報を得る」という課題(本件特許の明細書段落【0004】)を解決するための手段として「所定の任意のエリアを設定するエリア設定部」を有するものである。
これに対し、甲第5号証は、「地方、県名及び市区町村に該当する場所」から評価対象とする2以上の医療機関を個別に設定し、これらを対比することによって、医療機関の経営状態やサービス品質を評価するものであって、「周辺の競合病院」との間における「自病院の位置づけ」を把握し、「今後の自病院の診療機能拡充計画の策定などに有効な情報を得る」という課題を欠くものである。
(イ)「5(1)イ(イ)」において上述したとおり、甲第2号証ないし甲第4号証、甲第6号証、甲第7号証は、いずれも「周辺の競合病院」との間における「自病院の位置づけ」を把握し、「今後の自病院の診療機能拡充計画の策定などに有効な情報を得る」という課題の解決手段として急性期医療病院の選択にかかる対象となるエリアについて「所定の任意のエリアを設定するエリア設定部」を設けることを示すものでない。
(ウ)してみると、本件発明は、甲5発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということはできないから、請求項1に係る特許について、甲第5号証を主引用文献とする進歩性要件違反はない。

(2)請求項2?7に係る発明について
請求項2?7は、いずれも請求項1を引用する請求項であり、これらに係る発明と甲5発明とを対比すると、いずれについても相違点2があり、この相違点2は容易想到でないから、請求項2?7に係る特許についても、甲第5号証を主引用文献とする進歩性要件違反はない。

(3)請求項8?14に係る発明について
請求項8?14に係る発明は、請求項1?7のシステム発明に対応するプログラム発明であって、これらに係る発明と甲5発明とを対比すると、いずれについても相違点2に対応する相違点があり、この相違点は容易想到でないから、請求項8?14に係る特許についても、甲第5号証を主引用文献とする進歩性要件違反はない。

9 むすび
以上のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?14に係る特許を取り消すことはできない。
また、甲第5号証を主引用文献とし、甲第2号証?甲第4号証、甲第6号証?甲第7号証を副引用文献ないし周知例とする進歩性要件違反もなく、他に請求項1?14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2020-01-10 
出願番号 特願2015-120257(P2015-120257)
審決分類 P 1 651・ 537- Y (G06Q)
P 1 651・ 121- Y (G06Q)
最終処分 維持  
前審関与審査官 ▲高▼瀬 健太郎  
特許庁審判長 佐藤 聡史
特許庁審判官 田内 幸治
相崎 裕恒
登録日 2019-03-15 
登録番号 特許第6493753号(P6493753)
権利者 清水建設株式会社
発明の名称 医療データ分析システム及び医療データ分析プログラム  
代理人 韮澤 弘  
代理人 田中 貞嗣  
代理人 青木 健二  
代理人 米澤 明  
代理人 小山 卓志  
代理人 片寄 武彦  

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