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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61H |
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管理番号 | 1359451 |
審判番号 | 不服2019-2841 |
総通号数 | 243 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-03-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-03-01 |
確定日 | 2020-02-06 |
事件の表示 | 特願2018-194115「椅子式マッサージ機」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 1月10日出願公開、特開2019- 738〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成28年2月26日に出願された特願2016-35902号(以下「原出願」という。)の一部を新たな特許出願として、平成30年10月15日に出願された特願2018-194115号(以下「本件出願」という。)であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成30年11月 8日付け:拒絶理由通知 平成30年12月13日 :意見書、手続補正書の提出 平成31年 1月23日付け:拒絶査定 平成31年 3月 1日 :審判請求書、同時に手続補正書の提出 平成31年 4月24日付け:拒絶理由通知 令和 1年 5月24日 :意見書、手続補正書の提出 令和 1年 6月 4日付け:拒絶理由通知<最後> 令和 1年 8月 1日 :意見書の提出 令和 1年 8月13日付け:拒絶理由通知 令和 1年 9月11日 :意見書の提出 第2 本願発明 令和1年5月24日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「椅子式マッサージ機であって、 背凭れ部と、 前記背凭れ部の開口部に被施療者の背中が落ち込むことを防止する落ち込み防止部材と、 ヒータ装置と、 施療子と、 を備え、 前記椅子式マッサージ機の正面視で前記落ち込み防止部材と前記ヒータ装置とが重なり、 前記落ち込み防止部材は、 前記施療子の移動可能方向に沿って延び前記開口部に張設されるベルト形状であって、 前記ヒータ装置よりも後方に配置され前記椅子式マッサージ機の正面視において前記ヒータ装置と重なっている第1領域と、 前記ヒータ装置よりも後方および前記第1領域の左隣に配置され前記椅子式マッサージ機の正面視において前記ヒータ装置と重なっていない第2領域と、 前記ヒータ装置よりも後方および前記第1領域の右隣に配置され前記椅子式マッサージ機の正面視において前記ヒータ装置と重なっていない第3領域と、を有し、 前記ヒータ装置と前記落ち込み防止部材とは互いに別部材であり、一体に形成されていない、 椅子式マッサージ機。」 第3 当審における拒絶の理由 本願発明について、令和1年8月13日付けの当審が通知した拒絶理由通知における拒絶の理由は、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、というものである。 引用文献1:特開2017-148410号公報 第4 当審の判断 1 分割要件の判断 本願の願書の記載によれば、本願は、特許法第44条第1項の規定による特許出願(いわゆる分割出願)として出願をしようとするものであるから、まず、本願が適法に分割されたものであるか否かを検討する。 (1)特許出願の分割は、二以上の発明を包含する特許出願の一部を新たな特許出願とするものである(特許法第44条第1項柱書き)から、適法に分割されたものというためには、以下の【要件1】及び【要件3】が満たされる必要がある。また、分割出願が原出願の時にしたものとみなされる(特許法第44条第2項本文)という特許出願の分割の効果を考慮すると、更に以下の【要件2】も満たされる必要がある。 (参考:特許・実用新案審査基準 第VI部第1章第1節「2.2 特許出願の分割の実体的要件」) 【要件1】 原出願の分割直前の明細書等に記載された発明の全部が分割出願の請求項に係る発明とされたものでないこと。 【要件2】 分割出願の明細書等に記載された事項が、原出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内であること。 【要件3】 分割出願の明細書等に記載された事項が、原出願の分割直前の明細書等に記載された事項の範囲内であること。 (2)そこで、まず、【要件2】が満たされているか否かを検討する。 ア 原出願(特願2016-35902号)の出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)の記載 原出願の当初明細書等には、以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 椅子式マッサージ機であって、 背凭れ部の開口部に配置された施療子と、 前記開口部に張設される支持ベルトと、 前記支持ベルトに設けられたヒータ装置と、を含む椅子式マッサージ機。」 「【0009】 (1) 一局面に従う椅子式マッサージ機は、椅子式マッサージ機であって、背凭れ部の開口部に配置された施療子と、開口部に張設される支持ベルトと、支持ベルトに設けられたヒータ装置と、を含むものである。」 「【0012】 この場合、ヒータ装置は、1または複数のフィルムヒータおよび1または複数の面状発熱体の少なくとも一方からなるので、一部を加熱し、被施療者の身体の一部に温熱効果を供与したり、複数部を加熱し、被施療者の身体の複数部または全体に温熱効果を供与したりすることができる。」 「【0015】 (4) 第4の発明にかかる椅子式マッサージ機は、一局面から第3の発明にかかる椅子式マッサージ機において、ヒータ装置は、支持ベルトの袋部に挿入されるか、または支持ベルトの筒部に挿入されてもよい。 【0016】 この場合、ヒータ装置は、支持ベルトの袋部または筒部に収納することができる。その結果、ヒータ装置の位置を容易に確定することができる。」 「【0034】 また、図2に示すように、一対の施療子350は、矢印Vの方向に移動可能に形成されている。ここで、矢印Vの方向は、図1の上側(UP)から所定の角度傾斜している角度である。 次に、本実施の形態においては、図2における矢印Vの方向に沿って、一対の施療子350の間に支持ベルト360が設けられている。また、矢印Vの方向と垂直な方向に、支持ベルト361が水平方向に設けられている。 支持ベルト360,361は、開口部311において、被施療者の背中が落ち込まないように、背中を効果的に支持するために設けられている。 【0035】 なお、本実施の形態においては、支持ベルト360、361について説明を行うが、所定の幅を有するベルト形状に限定されず、被施療者の背中の落ち込みを防止することができる任意の部材、その他の形状であってもよい。 また、本実施の形態において図示略しているが、カバー部材320の裏面に支持ベルト360,361を収容する袋形状が形成されていることが好ましい。」 「【0037】 (実施の形態にかかる支持ベルト) 続いて、図3は、支持ベルト360の一例を示す模式図である。 図3に示すように、支持ベルト360は、ベルト部材362および面状ヒータ364から形成される。 ベルト部材362は、ポリ塩化ビニル素材、またはPET(ポリエチレンテレフタラート)からなる。」 「【0041】 図4に示す支持ベルト360aは、ベルト部材362に筒部366が形成され、面状ヒータ364が筒部366内に収容されるように形成される。 【0042】 (支持ベルトのさらに他の例) 図5は、図3および図4に示した支持ベルト360のさらに他の例を示す模式図である。 【0043】 図5に示す支持ベルト360bは、ベルト部材362に袋部368が形成され、面状ヒータ364が袋部368内に収容されるように形成される。」 「【0047】 以上のように、本実施の形態にかかるマッサージ機100においては、支持ベルト360のベルト部材362に面状ヒータ364が設けられているので、被施療者の背骨周辺を確実に温めることができる。特に、被施療者の背中に対して、一対の施療子350の動作および位置に関わらず、温熱効果を供与することができる。 【0048】 また、面状ヒータ364は、1または複数のPTCヒータからなるので、一部を加熱し、被施療者の身体の一部に温熱効果を供与したり、複数部を加熱し、被施療者の身体の複数部または全体に温熱効果を供与したりすることができる。 【0049】 さらに、不織布の面状ヒータ364からなることから、伸縮性および屈曲性が高いため、一対の施療子350に接触した場合、または被施療者の着座回数に関係なく、耐久力を維持することができる。 また、面状ヒータ364は、支持ベルト360の筒部366または袋部368に収納することができる。その結果、面状ヒータ364の位置を容易に確定することができる。」 「【0051】 (実施形態における各部と請求項の各構成要素との対応関係) 本発明において、椅子式マッサージ機100が、「椅子式マッサージ機」に相当し、座部200が「座部」に相当し、背凭れ部300が「背もたれ部」に相当し、開口部311が「開口部」に相当し、一対の施療子350が「施療子」に相当し、支持ベルト360,360a,360b,360c,361またはベルト部材362が「支持ベルト」に相当し、面状ヒータ364、PTCヒータが「ヒータ装置、1または複数のフィルムヒータ、1または複数の面状発熱体、1または複数の不織布のPTCヒータ」に相当し、袋部368が「袋部」に相当し、筒部366が「筒部」に相当する。」 「図2 」 「図3 」 「図4 」 「図5 」 イ 判断 本願発明を特定する請求項1には「椅子式マッサージ機の正面視で前記落ち込み防止部材と前記ヒータ装置とが重なり」と記載されており、落ち込み防止部材とヒータ装置との位置関係は、椅子式マッサージ機の正面視で重なる、ものと解される。 また請求項1には「前記ヒータ装置と前記落ち込み防止部材とは互いに別部材であり、一体に形成されていない」と記載されており、これらの記載を踏まえると、落ち込み防止部材とヒータ装置は、椅子式マッサージ機の正面視で重なりつつ、落ち込み防止部材が背凭れ部に設けられた開口部に配置される一方、ヒータ装置は支持ベルト及び支持ベルトに設けられた別部材に拘束されることなく、支持ベルトからは独立して移動可能なように、例えばクッション部材に配置される態様(以下「本件態様」という。)も本願発明に含まれるといえる。 そこで、本件態様が原出願の当初明細書等に記載された事項の範囲内のものであるか否かについて検討する。 まず、原出願の当初明細書等において、請求項1には「背凭れ部の・・・開口部に張設される支持ベルト」と記載されていることから、支持ベルトは背凭れ部の開口部に張設されている、といえる。 次に、原出願の当初明細書等において、段落【0009】には「背凭れ部の開口部に配置された施療子と、開口部に張設される支持ベルトと、支持ベルトに設けられたヒータ装置と、を含むものである。」と記載され、段落【0010】には「支持ベルトにヒータ装置が設けられているので、開口部においても被施療者へ温熱効果を供与することができる。」と記載され、段落【0015】には「ヒータ装置は、支持ベルトの袋部に挿入されるか、または支持ベルトの筒部に挿入されてもよい。」と記載され、段落【0016】には「ヒータ装置は、支持ベルトの袋部または筒部に収納することができる。」と記載され、段落【0034】には「支持ベルト360,361は、開口部311において、被施療者の背中が落ち込まないように、背中を効果的に支持するために設けられている。」と記載され、段落【0035】には「なお、本実施の形態においては、支持ベルト360、361について説明を行うが、所定の幅を有するベルト形状に限定されず、被施療者の背中の落ち込みを防止することができる任意の部材、その他の形状であってもよい。」と記載され、段落【0041】には「図4に示す支持ベルト360aは、ベルト部材362に筒部366が形成され、面状ヒータ364が筒部366内に収容されるように形成される。」と記載され、段落【0043】には「図5に示す支持ベルト360bは、ベルト部材362に袋部368が形成され、面状ヒータ364が袋部368内に収容されるように形成される。」と記載されていることから、支持ベルトは、背中が落ち込まないように、背中を効果的に支持するものであり、ヒータ装置と支持ベルトとは一体もしくは別体であり、ヒータ装置と支持ベルトが別体であってもヒータ装置は支持ベルトに設けられた筒部もしくは袋部内に収容される、といえる。 このように、原出願の当初明細書等全体の記載を参酌すると、支持ベルトは背凭れ部の開口部に張設され、ヒータ装置は支持ベルトとは別体で支持ベルトに設けられた筒部もしくは袋部内に収容される態様が記載されているといえるものの、本件態様、すなわちヒータ装置は支持ベルト及び支持ベルトに設けられた別部材に拘束されることなく、支持ベルトからは独立して移動可能なように、例えばクッション部材に配置される態様は明示的に記載されているとはいえない。 したがって、本件態様が原出願の当初明細書等に明示的に記載されているとはいえないことから、本件態様を含む本願発明が原出願の当初明細書等に明示的に記載されたものとはいえない。 さらに、原出願の当初明細書等において、段落【0037】の「図3に示すように、支持ベルト360は、ベルト部材362および面状ヒータ364から形成される。」との記載、段落【0041】の「図4に示す支持ベルト360aは、ベルト部材362に筒部366が形成され、面状ヒータ364が筒部366内に収容されるように形成される。」との記載、段落【0043】の「図5に示す支持ベルト360bは、ベルト部材362に袋部368が形成され、面状ヒータ364が袋部368内に収容されるように形成される。」との記載及び図3?図5の記載を踏まえると、当業者であれば、落ち込み防止部材(支持ベルト)と面状ヒータとが一体に形成される、もしくは別体であっても面状ヒータは落ち込み防止部材(支持ベルト)に設けられた別部材内に配置される態様が記載されているものと理解できるものの、当業者といえども、原出願の当初明細書等に本件態様が記載されているに等しいとまで理解することはできない。 また、本願発明において本件態様をとった場合には、ヒータ装置は支持ベルト及び支持ベルトに設けられた別部材に拘束されることなく、支持ベルトからは独立して移動可能である一方で、当初明細書等に記載されたヒータ装置は、支持ベルトに設けられた筒部もしくは袋部内に収容されることから、支持ベルトの移動に際して、支持ベルト及び支持ベルトに設けられた筒部もしくは袋部に拘束されることで、支持ベルトと常に移動を共にするといえるところ、本願発明は令和1年5月24日に提出された意見書に記載されるように「「ヒータ装置」が「施療子の移動可能方向に沿って延び開口部に張設されるベルト形状の落ち込み防止部材」に拘束されていることになるので、「施療子の移動可能方向に沿って延び開口部に張設されるベルト形状の落ち込み防止部材」が撓んだときに、「ヒータ装置」と「施療子の移動可能方向に沿って延び開口部に張設されるベルト形状の落ち込み防止部材」との特性の違いによって、「ヒータ装置」に余計な余分なストレスがかかって「ヒータ装置」が断線し易いという問題が起こ」ることを回避したものと認められる。 そうすると、本願発明は当初明細書等にない、ヒータ装置と落ち込み防止部材との特性の違いによるヒータ装置の断線を回避できるという新たな課題を解決し、また、格別な効果を生ずるものであるから、新たな技術的事項を導入するものというべきである。 したがって、本願発明は原出願の当初明細書等に記載した事項との関係において、新たな技術的事項が導入されているものと認められることから、分割出願の明細書等に記載された事項が、原出願の当初明細書等に記載された事項の範囲内であるとはいえず、上記【要件2】を満たしていない。 よって、上記【要件1】及び【要件3】について検討するまでもなく、本願は適法に分割されたものではない。 請求人は、令和1年9月11日に提出された意見書において、ヒータ装置と落ち込み防止部材とは互いに別部材であり、一体に形成されていない構成と両立する構成が本願発明の課題を解決するために不可欠な限定でないこと、および原出願の出願当初の明細書の段落【0036】に記載されている効果が本願発明の課題とは無関係であることを考慮すると、ヒータ装置の配置として、ヒータ装置を落ち込み防止部材に設けない状態でヒータ装置をカバー部材に設ける構成は、原出願の出願当初の明細書等から自明な事項である、旨主張する。 しかし、上述のとおり当初明細書等の記載から、ヒータ装置と落ち込み防止部材とを一体に形成しない、すなわち別体とする構成は記載されているといえるものの、ヒータ装置は落ち込み防止部材に設けられた別部材内に配置される態様を限度とするものであり、原出願の発明が解決しようとする課題を踏まえても、ヒータ装置と落ち込み防止部材とを独立して移動可能な態様まで記載されているとはいえないし、自明であるともいえない。 したがって、請求人が原出願の明細書等から自明とする主張は、その前提において当を得たものとはいえないことから、これを採用することはできない。 (3)小括 以上のとおり、本願は適法に分割されたものではないから、本願について特許法第44条第2項本文の規定は適用されない。 よって、本願の出願日は現実の出願日である平成30年10月15日である。 2 特許法第29条第1項第3号の判断 (1)引用文献1の記載事項 上記のとおり、本願の出願日は平成30年10月15日であり、令和1年8月13日付けの当審が通知した拒絶理由通知に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である上記第3に示した引用文献1には、上記1(2)アで摘記した事項が記載されている。 (2)上記記載事項から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。 ア 段落【0009】の「一局面に従う椅子式マッサージ機は、椅子式マッサージ機であって、背凭れ部の開口部に配置された施療子と、開口部に張設される支持ベルトと、支持ベルトに設けられたヒータ装置と、を含むものである。」との記載、段落【0034】の「・・・図2に示すように、一対の施療子350は、矢印Vの方向に移動可能に形成されている。・・・次に、本実施の形態においては、図2における矢印Vの方向に沿って、一対の施療子350の間に支持ベルト360が設けられている。」との記載及び図2から、支持ベルト360は、施療子350の移動可能方向に沿って設けられ、開口部に張設される、といえる。 イ 段落【0012】の「この場合、ヒータ装置は、1または複数のフィルムヒータおよび1または複数の面状発熱体の少なくとも一方からなるので、一部を加熱し、被施療者の身体の一部に温熱効果を供与したり、複数部を加熱し、被施療者の身体の複数部または全体に温熱効果を供与したりすることができる。」との記載及び図3?5にはベルト部材362の前面側に重なるように面状ヒータ364が設けられている点が見て取れることから、ベルト部材362の前面側に重なるように面状ヒータ364が設けられている、といえる。 ウ 段落【0043】の「図5に示す支持ベルト360bは、ベルト部材362に袋部368が形成され、面状ヒータ364が袋部368内に収容されるように形成される。」との記載及び図5には、面状ヒータ364は支持ベルト360bと別部材であるとともに、長辺方向の長さは支持ベルト360bより短く、かつ短辺方向の幅が細く構成され、支持ベルト360bの両端部を固着することにより袋部368が設けられている点が見て取れることから、面状ヒータ364の長辺方向の長さは支持ベルト360bより短く、かつ短辺方向の幅が細く構成され、支持ベルト360bの両端部を固着することにより袋部368が設けられ、面状ヒータ364は袋部368内に収容され、面状ヒータ364と支持ベルト360bとは別部材である、といえる。 (3)引用発明 上記(1)、(2)及び段落【0051】の「支持ベルト360,360a,360b,360c,361またはベルト部材362が「支持ベルト」に相当し・・・面状ヒータ364、PTCヒータが「ヒータ装置、1または複数のフィルムヒータ、1または複数の面状発熱体、1または複数の不織布のPTCヒータ」に相当し」との記載を踏まえると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「椅子式マッサージ機であって、 背凭れ部の開口部に配置された施療子と、 開口部において、被施療者の背中が落ち込まないように、背中を効果的に支持するために設けられ、施療子の移動可能方向に沿って設けられ、開口部に張設される支持ベルトと、 支持ベルトに設けられたヒータ装置と、 を備え、 支持ベルトの前面側に重なるようにヒータ装置が設けられており、 ヒータ装置の長辺方向の長さは支持ベルトより短く、かつ短辺方向の幅が細く構成され、支持ベルトの両端部を固着することにより袋部が設けられ、ヒータ装置は袋部内に収容され、ヒータ装置と支持ベルトとは別部材である 椅子式マッサージ機。」 (4)対比・判断 本願発明と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。 ア 引用発明の「椅子式マッサージ機」は、その文言の意味、機能または構成等からみて、本願発明の「椅子式マッサージ機」に相当する。以下同様に、「背凭れ部」は「背凭れ部」に、「開口部」は「開口部」に、「被施療者」は「被施療者」に、「背中が落ち込まないように、背中を効果的に支持する」は「背中が落ち込むことを防止する」に、「支持ベルト」は「支持ベルト」に、「ヒータ装置」は「ヒータ装置」にそれぞれ相当する。 イ 引用発明の「支持ベルトの前面側に重なるようにヒータ装置が設けられ」た態様は、椅子式マッサージ機の支持ベルトにおける背中が接触する側にヒータ装置が設けられていることから、本願発明の「正面視で落ち込み防止部材とヒータ装置とが重な」り、「落ち込み防止部材は、」「ヒータ装置よりも後方に配置され前記椅子式マッサージ機の正面視において前記ヒータ装置と重なっている第1領域」を有する態様に相当する。 ウ 引用発明の「ヒータ装置の長辺方向の長さは支持ベルトより短く、かつ短辺方向の幅が細く構成され、支持ベルトの両端部を固着することにより袋部が設けられ、ヒータ装置は袋部内に収容され」る態様は、支持ベルトよりも長辺方向は短く、短辺方向には幅が細いヒータ装置が、支持ベルトに設けられた袋部に収容され、当該袋部は支持ベルトの両端部において固着されているところ、支持ベルトとヒータ装置との配置関係として、支持ベルトの長手方向にヒータ装置が重ならない部分があるとともに、幅方向にも支持ベルトと袋部との固着部位があることから、両側に重ならない部分があることは明らかであるから、本願発明の「前記ヒータ装置よりも後方および前記第1領域の左隣に配置され前記椅子式マッサージ機の正面視において前記ヒータ装置と重なっていない第2領域と、前記ヒータ装置よりも後方および前記第1領域の右隣に配置され前記椅子式マッサージ機の正面視において前記ヒータ装置と重なっていない第3領域と、を有」する態様に相当する。 エ 引用発明の「ヒータ装置と支持ベルトとは別部材である」態様は、ヒータ装置と支持ベルトとが一体に形成されていないことが明らかであるから、本願発明における「前記ヒータ装置と前記落ち込み防止部材とは互いに別部材であり、一体に形成されていない」態様に相当する。 以上のことから、本願発明と引用発明とに相違するところはないから、本願発明は、引用文献1に記載された発明である。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明は引用文献1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2019-11-25 |
結審通知日 | 2019-11-26 |
審決日 | 2019-12-09 |
出願番号 | 特願2018-194115(P2018-194115) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(A61H)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 村上 勝見 |
特許庁審判長 |
内藤 真徳 |
特許庁審判官 |
沖田 孝裕 林 茂樹 |
発明の名称 | 椅子式マッサージ機 |
代理人 | 特許業務法人 佐野特許事務所 |