• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  E04H
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  E04H
審判 全部申し立て (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降)  E04H
審判 全部申し立て 2項進歩性  E04H
審判 全部申し立て 判示事項別分類コード:857  E04H
審判 全部申し立て 発明同一  E04H
管理番号 1359530
異議申立番号 異議2018-700932  
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-03-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-11-21 
確定日 2019-12-10 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6329465号発明「機械式駐車設備における安全確認装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6329465号の明細書、特許請求の範囲を、令和1年10月3日付け訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-11〕について訂正することを認める。 特許第6329465号の請求項1ないし11に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6329465号の請求項1ないし11に係る特許についての出願は、平成26年9月5日に出願され、平成30年4月27日にその特許権の設定登録がされ、平成30年5月23日に特許掲載公報が発行されたものである。
その特許について、平成30年11月21日に特許異議申立人 小松珠美(以下、「申立人」という。)により、請求項1ないし11に対して特許異議の申立てがされ、その後の経緯は以下のとおりである。
平成31年 2月12日(発送日): 取消理由通知
平成31年 4月11日: 意見書の提出及び訂正の請求
(以下、「1次訂正請求」という。)
令和 1年 5月17日: 手続補正書(方式)の提出
(平成31年4月11日付け
訂正請求書について)
令和 1年 6月27日: 申立人による意見書の提出
令和 1年 8月 5日(発送日): 取消理由通知(決定の予告)
令和 1年10月 3日: 意見書の提出及び訂正の請求
(以下、「本件訂正請求」という。)
令和 1年11月14日: 申立人による意見書の提出

なお、1次訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。


第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。なお、各訂正事項について、当該訂正事項が訂正する請求項の記載を引用する訂正後請求項についても、同様に訂正する旨の付記は、当審が括弧書きで付した。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「駐車室内の検知エリアでセンサが物体を検知することで運転ロックがかかり、有効な安全確認操作部を操作することで前記運転ロックが解除される機械式駐車設備の安全確認装置であって、少なくとも前記駐車室内の車両配置部の周囲に設定された複数の検知エリアにおいて物体を検知するそれぞれのセンサと、前記複数の検知エリアをそれぞれ見渡せる位置に配置された各々の安全確認操作部と、前記複数の検知エリアにおける物体の検知状況に応じて前記各々の安全確認操作部を有効にし、有効な安全確認操作部が操作されると該安全確認操作部を無効にし、全ての安全確認操作部が無効になると前記運転ロックを解除する、制御装置と、を備えていることを特徴とする安全確認装置。」とあるのを、「駐車室内の検知エリアでセンサが物体を検知することで運転ロックがかかり、有効な安全確認操作部を操作することで前記運転ロックが解除される機械式駐車設備の安全確認装置であって、前記駐車室の入出庫口において人の入退室を検知する入出庫口センサを備え、さらに少なくとも前記駐車室内の車両配置部より外側の周囲に設定された複数の検知エリアにおいて物体を検知するそれぞれのセンサと、前記複数の検知エリアをそれぞれ見渡せる位置に配置された各々の安全確認操作部と、前記複数の検知エリアにおける物体の検知状況に応じて、該物体を検知した前記検知エリアを見渡せる位置に配置された前記各々の安全確認操作部を有効にし、有効な安全確認操作部が操作されると該安全確認操作部を無効にし、全ての安全確認操作部が無効になると前記運転ロックを解除する、制御装置と、を備えていることを特徴とする安全確認装置。」に訂正する。(請求項1の記載を引用する訂正後請求項2,4-6,8,10-11も同様に訂正する。)

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に「前記制御装置は、前記車両配置部の左側方における検知エリアで物体を検知すると前記左位置の安全確認操作部を有効にし、前記車両配置部の右側方における検知エリアで物体を検知すると前記右位置の安全確認操作部を有効にするように構成されている請求項2に記載の安全確認装置。」とあるのを、独立形式に改め、「駐車室内の検知エリアでセンサが物体を検知することで運転ロックがかかり、有効な安全確認操作部を操作することで前記運転ロックが解除される機械式駐車設備の安全確認装置であって、少なくとも前記駐車室内の車両配置部の周囲に設定された複数の検知エリアにおいて物体を検知するそれぞれのセンサと、前記複数の検知エリアをそれぞれ見渡せる位置に配置された各々の安全確認操作部と、前記複数の検知エリアにおける物体の検知状況に応じて前記各々の安全確認操作部を有効にし、有効な安全確認操作部が操作されると該安全確認操作部を無効にし、全ての安全確認操作部が無効になると前記運転ロックを解除する、制御装置と、を備え、前記複数の安全確認操作部は、入出庫口から駐車室内の車両左側方を見渡せる左位置と車両右側方を見渡せる右位置とに備えられており、前記制御装置は、前記車両配置部の左側方における検知エリアで物体を検知すると前記左位置の安全確認操作部を有効にし、前記車両配置部の右側方における検知エリアで物体を検知すると前記右位置の安全確認操作部を有効にするように構成されていることを特徴とする安全確認装置。」に訂正する。(請求項3の記載を引用する訂正後請求項11も同様に訂正する。)

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に「前記センサは、前記車両配置位置の前方位置において物体を検知するように配置された前部センサをさらに有し、前記前部センサが物体を検知する位置を見渡すことができる駐車室内の前部左右位置に前部安全確認操作部がそれぞれ配設されている請求項1?3のいずれか1項に記載の安全確認装置。」とあるのを「前記複数の検知エリアにおいて物体を検知するそれぞれの前記センサは、前記車両配置部より外側の前方位置において物体を検知するように配置された前部センサをさらに有し、前記前部センサが物体を検知する位置を見渡すことができる駐車室内の前部左右位置に前部安全確認操作部がそれぞれ配設されており、前記前部センサが物体を検知すると前部左右位置に配置されたそれぞれの前記前部安全確認操作部が有効となるように構成されている請求項1又は2に記載の安全確認装置。」に訂正する。(請求項4の記載を引用する訂正後請求項5-6,8,10-11も同様に訂正する。)

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1?4のいずれか1項に記載」とあるのを「請求項1、2、4のいずれか1項に記載」に訂正する。(請求項5の記載を引用する訂正後請求項6,8,10-11も同様に訂正する。)

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6に「請求項1?5のいずれか1項に記載」とあるのを「請求項1、2、4、5のいずれか1項に記載」に訂正する。(請求項6の記載を引用する訂正後請求項8,10-11も同様に訂正する。)

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項7に「前記駐車室内の車両を検知する車両検知センサをさらに備え、前記制御装置は、前記車両検知センサで車両が検知されないときは、前記複数の安全確認操作部のいずれかが操作されることで他の有効となっている全ての安全確認操作部を無効にするように構成されている請求項1?6のいずれか1項に記載の安全確認装置。」とあるうち、請求項1を引用するものについて独立形式に改め、「駐車室内の検知エリアでセンサが物体を検知することで運転ロックがかかり、有効な安全確認操作部を操作することで前記運転ロックが解除される機械式駐車設備の安全確認装置であって、少なくとも前記駐車室内の車両配置部の周囲に設定された複数の検知エリアにおいて物体を検知するそれぞれのセンサと、前記複数の検知エリアをそれぞれ見渡せる位置に配置された各々の安全確認操作部と、前記複数の検知エリアにおける物体の検知状況に応じて前記各々の安全確認操作部を有効にし、有効な安全確認操作部が操作されると該安全確認操作部を無効にし、全ての安全確認操作部が無効になると前記運転ロックを解除する、制御装置と、を備え、前記駐車室内の車両を検知する車両検知センサをさらに備え、前記制御装置は、前記車両検知センサで車両が検知されないときは、前記複数の安全確認操作部のいずれかが操作されることで他の有効となっている全ての安全確認操作部を無効にするように構成されていることを特徴とする安全確認装置。」に訂正する。(請求項7の記載を引用する訂正後請求項11も同様に訂正する。)

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項8に「請求項1?7のいずれか1項に記載」とあるのを「請求項1、2、4、5、6のいずれか1項に記載」に訂正する。(請求項8の記載を引用する訂正後請求項10-11も同様に訂正する。)

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項9に「前記複数の安全確認操作部は、出入口付近に備えられ、該安全確認操作部に近接する位置に扉閉鎖部が配設されている請求項1?8のいずれか1項に記載の安全確認装置。」とあるうち、請求項1を引用するものについて独立形式に改め、「駐車室内の検知エリアでセンサが物体を検知することで運転ロックがかかり、有効な安全確認操作部を操作することで前記運転ロックが解除される機械式駐車設備の安全確認装置であって、少なくとも前記駐車室内の車両配置部の周囲に設定された複数の検知エリアにおいて物体を検知するそれぞれのセンサと、前記複数の検知エリアをそれぞれ見渡せる位置に配置された各々の安全確認操作部と、前記複数の検知エリアにおける物体の検知状況に応じて前記各々の安全確認操作部を有効にし、有効な安全確認操作部が操作されると該安全確認操作部を無効にし、全ての安全確認操作部が無効になると前記運転ロックを解除する、制御装置と、を備え、前記複数の安全確認操作部は、出入口付近に備えられ、該安全確認操作部に近接する位置に扉閉鎖部が配設されていることを特徴とする安全確認装置。」に訂正する。(請求項9の記載を引用する訂正後請求項10-11も同様に訂正する。)

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項10に「請求項1?9のいずれか1項に記載」とあるのを「請求項1、2、4、5、6、8のいずれか1項に記載」に訂正する。(請求項10の記載を引用する訂正後請求項11も同様に訂正する。)

(10)訂正事項10
願書に添付した明細書の段落【0011】に「上記目的を達成するために、本発明に係る安全確認装置は、駐車室内の検知エリアでセンサが物体を検知することで運転ロックがかかり、有効な安全確認操作部を操作することで前記運転ロックが解除される機械式駐車設備の安全確認装置であって、少なくとも前記駐車室内の車両配置部の周囲に設定された複数の検知エリアにおいて物体を検知するそれぞれのセンサと、前記複数の検知エリアをそれぞれ見渡せる位置に配置された各々の安全確認操作部と、前記複数の検知エリアにおける物体の検知状況に応じて前記各々の安全確認操作部を有効にし、有効な安全確認操作部が操作されると該安全確認操作部を無効にし、全ての安全確認操作部が無効になると前記運転ロックを解除する、制御装置と、を備えている。この明細書及び特許請求の範囲の書類中における「運転ロック」は、機械式駐車設備の入口扉閉鎖操作や呼び操作を禁止することをいう。また、「安全確認操作の有効」は、安全が確認される前の状態、「安全確認操作部の無効」は、安全が確認された後の状態をいう。」とあるのを、「上記目的を達成するために、本発明に係る安全確認装置は、駐車室内の検知エリアでセンサが物体を検知することで運転ロックがかかり、有効な安全確認操作部を操作することで前記運転ロックが解除される機械式駐車設備の安全確認装置であって、前記駐車室の入出庫口において人の入退室を検知する入出庫口センサを備え、さらに少なくとも前記駐車室内の車両配置部より外側の周囲に設定された複数の検知エリアにおいて物体を検知するそれぞれのセンサと、前記複数の検知エリアをそれぞれ見渡せる位置に配置された各々の安全確認操作部と、前記複数の検知エリアにおける物体の検知状況に応じて、該物体を検知した前記検知エリアを見渡せる位置に配置された前記各々の安全確認操作部を有効にし、有効な安全確認操作部が操作されると該安全確認操作部を無効にし、全ての安全確認操作部が無効になると前記運転ロックを解除する、制御装置と、を備えている。この明細書及び特許請求の範囲の書類中における「運転ロック」は、機械式駐車設備の入口扉閉鎖操作や呼び操作を禁止することをいう。また、「安全確認操作の有効」は、安全が確認される前の状態、「安全確認操作部の無効」は、安全が確認された後の状態をいう。」に訂正する。

(11)訂正事項11
願書に添付した明細書の段落【0015】に「また、前記制御装置は、前記車両配置部の左側方における検知エリアで物体を検知すると前記左位置の安全確認操作部を有効にし、前記車両配置部の右側方における検知エリアで物体を検知すると前記右位置の安全確認操作部を有効にするように構成されていてもよい。」とあるのを、「また、本発明に係る安全確認装置は、駐車室内の検知エリアでセンサが物体を検知することで運転ロックがかかり、有効な安全確認操作部を操作することで前記運転ロックが解除される機械式駐車設備の安全確認装置であって、少なくとも前記駐車室内の車両配置部の周囲に設定された複数の検知エリアにおいて物体を検知するそれぞれのセンサと、前記複数の検知エリアをそれぞれ見渡せる位置に配置された各々の安全確認操作部と、前記複数の検知エリアにおける物体の検知状況に応じて前記各々の安全確認操作部を有効にし、有効な安全確認操作部が操作されると該安全確認操作部を無効にし、全ての安全確認操作部が無効になると前記運転ロックを解除する、制御装置と、を備え、前記複数の安全確認操作部は、入出庫口から駐車室内の車両左側方を見渡せる左位置と車両右側方を見渡せる右位置とに備えられており、前記制御装置は、前記車両配置部の左側方における検知エリアで物体を検知すると前記左位置の安全確認操作部を有効にし、前記車両配置部の右側方における検知エリアで物体を検知すると前記右位置の安全確認操作部を有効にするように構成されている。」に訂正する(当審注;下線は付されていないが、末尾の「構成されている。」の箇所も訂正されている)。

(12)訂正事項12
願書に添付した明細書の段落【0017】に「また、前記センサは、前記車両配置部よりの前方位置において物体を検知するように配置された前部センサをさらに有し、前記前部センサが物体を検知する位置を見渡すことができる駐車室内の前部左右位置に前部安全確認操作部がそれぞれ配設されていてもよい。」とあるのを、「また、前記複数の検知エリアにおいて物体を検知するそれぞれの前記センサは、前記車両配置部より外側の前方位置において物体を検知するように配置された前部センサをさらに有し、前記前部センサが物体を検知する位置を見渡すことができる駐車室内の前部左右位置に前部安全確認操作部がそれぞれ配設されており、前記前部センサが物体を検知すると前部左右位置に配置されたそれぞれの前記前部安全確認操作部が有効となるように構成されていてもよい。」に訂正する。

(13)訂正事項13
願書に添付した明細書の段落【0023】に「また、前記駐車室内の車両を検知する車両検知センサをさらに備え、前記制御装置は、前記車両検知センサで車両が検知されないときは、前記複数の安全確認操作部のいずれかが操作されることで他の有効となっている全ての安全確認操作部を無効にするように構成されていてもよい。」とあるのを、「また、本発明に係る安全確認装置は、駐車室内の検知エリアでセンサが物体を検知することで運転ロックがかかり、有効な安全確認操作部を操作することで前記運転ロックが解除される機械式駐車設備の安全確認装置であって、少なくとも前記駐車室内の車両配置部の周囲に設定された複数の検知エリアにおいて物体を検知するそれぞれのセンサと、前記複数の検知エリアをそれぞれ見渡せる位置に配置された各々の安全確認操作部と、前記複数の検知エリアにおける物体の検知状況に応じて前記各々の安全確認操作部を有効にし、有効な安全確認操作部が操作されると該安全確認操作部を無効にし、全ての安全確認操作部が無効になると前記運転ロックを解除する、制御装置と、を備え、前記駐車室内の車両を検知する車両検知センサをさらに備え、前記制御装置は、前記車両検知センサで車両が検知されないときは、前記複数の安全確認操作部のいずれかが操作されることで他の有効となっている全ての安全確認操作部を無効にするように構成されている。」に訂正する(当審注;下線は付されていないが、末尾の「構成されている。」の箇所も訂正されている。)。

(14)訂正事項14
願書に添付した明細書の段落【0027】に「また、前記複数の安全確認操作部は、出入口付近に備えられ、該安全確認操作部に近接する位置に扉閉鎖部が配設されていてもよい。」とあるのを、「また、本発明に係る安全確認装置は、駐車室内の検知エリアでセンサが物体を検知することで運転ロックがかかり、有効な安全確認操作部を操作することで前記運転ロックが解除される機械式駐車設備の安全確認装置であって、少なくとも前記駐車室内の車両配置部の周囲に設定された複数の検知エリアにおいて物体を検知するそれぞれのセンサと、前記複数の検知エリアをそれぞれ見渡せる位置に配置された各々の安全確認操作部と、前記複数の検知エリアにおける物体の検知状況に応じて前記各々の安全確認操作部を有効にし、有効な安全確認操作部が操作されると該安全確認操作部を無効にし、全ての安全確認操作部が無効になると前記運転ロックを解除する、制御装置と、を備え、前記複数の安全確認操作部は、出入口付近に備えられ、該安全確認操作部に近接する位置に扉閉鎖部が配設されている。」に訂正する(当審注;下線は付されていないが、末尾の「構成されている。」の箇所も訂正されている。)。


2 訂正要件
(1)訂正事項1について
ア 訂正目的、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、
(ア)訂正前の請求項1における「安全確認装置」が、「駐車室の入出庫口において人の入退室を検知する入出庫口センサを備え」たうえで、「さらに」訂正前に記載される「複数の検知エリアにおいて物体を検知するそれぞれのセンサ」を備えることを限定し、
(イ)訂正前の請求項1において、「それぞれのセンサ」が「物体を検知」する「複数の検知エリア」を、「車両配置部の周囲に設定」されたものから、「車両配置部より外側の周囲に設定」されたものへと限定し、
(ウ)訂正前の請求項1において、「制御装置」が「前記複数の検知エリアにおける物体の検知状況に応じて」有効とする「各々の安全確認操作部」について、「該物体を検知した前記検知エリアを見渡せる位置に配置された」ものであることを限定する、
というものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認めることができる。
また、訂正前の請求項1を減縮する上記訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

イ 新規事項の有無
(ア)訂正事項1における上記ア(ア)の限定事項に関連して、明細書の段落【0040】には、「左部センサ30」、「右部センサ31」、「前部センサ32」及び「後部センサ33」が設けられていることが記載されているとともに、「この実施形態では、入出庫口3の部分に、入出庫口センサ34が設けられている。なお、この実施形態を含む以下の実施形態の入出庫口センサ34は、入口扉4付近の安全も確認するように入口扉4の外側に配置されているが、入口扉4の内側に配置しても、入口扉4の閉鎖時当り面に埋め込むようにしてもよい。」と記載されている。また、明細書の段落【0049】には、「例えば、利用者が入出庫口3から入り、入出庫口センサ34又は後部センサ33が人を検知すると(S2)、運転ロックがかかり(S3)、左安全確認ボタン50と右安全確認ボタン51の両方が有効になる(S4)。」と記載され、段落【0085】には、「・・・、又はその人が後部センサ33及び入出庫口センサ34を通過して退出したことを検知するまでは、・・・。」と記載されている。
これらのことから、「入出庫口4」の箇所で入ったり退出する人を検知可能な「入出庫口センサ34」を備えたうえで、さらに「左部センサ30」、「右部センサ31」、「前部センサ32」及び「後部センサ33」を備える発明は、明細書に記載されていたものと認められる。

(イ)訂正事項1における上記ア(イ)の限定事項に関連して、図1には、左部センサ30、右部センサ31、前部センサ32、後部センサ33を示す線が、車両配置部5より外側となる様子が示されているから、左部センサ30による検知が行われる左検知エリア20、右部センサ31による検知が行われる右検知エリア21、前部センサ32による検知が行われる前部検知エリア22、後部センサ33による検知が行われる後部検知エリア23が、車両配置部5より外側に設定されることも、図1に示されていると言うことができる。このことから、「それぞれのセンサ」が「物体を検知」する「複数の検知エリア」を、「車両配置部より外側の周囲に設定」されたものとする発明は、明細書又は図面に記載されているものと認められる。

(ウ)訂正事項1における上記ア(ウ)の限定事項に関連して、明細書の段落【0041】-【0042】には、次のように記載されている。
「【0041】
そして、この実施形態では、入出庫口3付近の左位置に左安全確認ボタン50が設けられ、右位置に右安全確認ボタン51が設けられている。左安全確認ボタン50は、車両Vが停車した状態でも車両Vの左側方の左検知エリア20を見渡せる位置に設けられている。右安全確認ボタン51は、車両Vが停車した状態でも車両Vの右側方の右検知エリア21を見渡せる位置に設けられている。これら複数の安全確認ボタン50,51の配設位置は、他の安全確認ボタン51(又は50)の位置から死角になりうる検知エリアを補うように、それぞれの検知エリア20,21を見渡せる位置に配設されている。
【0042】
このように、車両配置部5の左右位置で車両Vから降りる人などを検知する位置にセンサ30,31が設けられ、入出庫口3付近で車両配置部5の左右位置への通路を通る人を検知する位置にセンサ33,34が設けられている。そして、安全確認ボタン50,51を入出庫口3付近の左右各々に配設し、左側の左部センサ30が検知したら左側の左安全確認ボタン50を有効にし、右側の右部センサ31が検知したら右側の右安全確認ボタン51を有効にするようにしている。これらの安全確認ボタン50,51は、上記車両検知センサ35の車両検知(実車検知)又は未検知により、左部センサ30の検知に対応して左安全確認ボタン50を、右部センサ31の検知に対応して右安全確認ボタン51を、それぞれ独立して有効にするか、一方のセンサ30,31の検知によって両方を有効にするようにしてもよい。」
また、明細書の段落【0080】及び【0082】にも、「・・・前部検知エリア22において前部センサ32が人などを検知すると(S60)、運転ロックがかかり(S61)、左前部安全確認ボタン53及び右前部安全確認ボタン54が有効になる(S62)。」、及び、「この例では、前部検知エリア22を左側方と右側方の両方から確認できるため、左前部安全確認ボタン53又は右前部安全確認ボタン54のいずれか一方が押されることで、両方が無効となるようにしている。」と記載されている。
これらのことから、物体の検知状況に応じて有効とする安全確認ボタンを、物体を検知した検知エリアを見渡せる位置に配置された安全確認ボタンとするよう制御する発明は、明細書又は図面に記載されているものと認められる。

ウ 小括
以上のとおり、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内で、訂正前の請求項1に係る発明を限定するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、同法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定にも適合するものである。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項3が、訂正前の請求項1を引用する請求項2をさらに引用するものであったところ、当該訂正前の請求項3を独立化するものであるから、訂正前の請求項3について、請求項1及び2の記載を引用しないものとするものである。そのため、上記訂正事項2は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を、当該他の請求項の記載を引用しないものとするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項3について
ア 訂正目的、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項3は、訂正前の請求項4において、
(ア)「前部センサ」が「前記複数の検知エリアにおいて物体を検知するそれぞれの」センサとして設けられていること、及び、「前部センサ」が「物体を検知」する位置を、「前記車両配置位置の前方位置」から「前記車両配置部より外側の前方位置」へと限定し、
(イ)「前部センサ」に関連する処理として、「前部センサが物体を検知すると前部左右位置に配置されたそれぞれの前記前部安全確認操作部が有効となる」ことを限定し、
(ウ)引用する請求項を、訂正前の「請求項1?3のいずれか1項」から、訂正後の「請求項1又は2」へと訂正するものである。
上記(ア)のうち、訂正前の「前記車両配置位置」を「前記車両配置部」へと訂正する点は、訂正前の請求項4が引用する請求項1に「車両配置位置」ではなく「車両配置部」と記載されていたことから、誤記の訂正を目的とするものであり、上記(ア)のその余の点、及び上記(イ)は、訂正前の請求項4における「前部センサ」について限定することを目的としたものと認めることができる。
上記(ウ)の点は、訂正前の請求項3を引用する選択肢を削除した点で、訂正前の請求項4に係る発明を限定したものと認めることができる。
したがって、訂正事項3は、誤記の訂正及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認めることができる。
また、訂正前の請求項4を減縮するとともに誤記の訂正を行う、上記訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

イ 新規事項の有無
(ア)訂正事項3における上記ア(ア)のうち、「前部センサ32」が複数の検知エリアのうち「前部検知エリア22」で物体を検出するものであることは、明細書の段落【0040】に記載されている。また、上記訂正事項3における上記ア(ア)のうち、「前部センサ」が「物体を検知」する位置を、車両配置位置の「前方位置」から、車両配置部「より外側の前方位置」とする点は、図6において「前部センサ32」を示す線が「車両配置部5」より外側に図示されていることから、明細書又は図面に記載されていた事項である。

(イ)訂正事項3における上記ア(イ)に関連して、明細書の段落【0080】には、「・・・前部検知エリア22において前部センサ32が人などを検知すると(S60)、運転ロックがかかり(S61)、左前部安全確認ボタン53及び右前部安全確認ボタン54が有効になる(S62)。」と記載されているから、「前部センサ」が物体を検知すると「前部左右位置に配置されたそれぞれの」安全確認操作部を有効とする発明は、明細書又は図面に記載されていた事項である。

(ウ)訂正事項3における上記ア(ウ)については、訂正前の請求項4が「請求項1?3のいずれか」を引用していたから、特許請求の範囲に記載されていた事項である。

ウ 小括
以上のとおり、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内で、訂正前の請求項4に係る発明を限定するとともに誤記の訂正を行うものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び誤記の訂正を目的とするものであり、また、同法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定にも適合するものである。

(4)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正前の請求項5が引用する請求項を、請求項1?4のいずれか1項から、訂正後の請求項1,2,4のいずれか1項へと訂正するものであり、引用する請求項の選択肢について訂正前の請求項5に係る発明を限定するものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、訂正事項4は、訂正前の請求項5が「請求項1?4のいずれか」を引用していたから、特許請求の範囲に記載されていた事項である。

(5)訂正事項5について
訂正事項5は、訂正前の請求項6が引用する請求項を、請求項1?5のいずれか1項から、訂正後の請求項1,2,4,5のいずれか1項へと訂正するものであり、引用する請求項の選択肢について訂正前の請求項6に係る発明を限定するものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、訂正事項5は、訂正前の請求項6が「請求項1?5のいずれか」を引用していたから、特許請求の範囲に記載されていた事項である。

(6)訂正事項6について
訂正事項6は、訂正前の請求項7が、訂正前の請求項1?6のいずれか1項を引用するものであったところ、訂正前の請求項1を引用するものを独立化するものであるから、訂正前の請求項7について、訂正前の請求項1のみを引用するものに限定するとともに、請求項1の記載を引用しないものへと記載を変更するものである。そのため、上記訂正事項6は、訂正前の請求項7に係る発明を限定するとともに、他の請求項の記載を引用しないものとするものであるから、特許請求の範囲の減縮、及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、訂正事項6は、訂正前の請求項7が「請求項1?6のいずれか」を引用していたから、特許請求の範囲に記載されていた事項である。

(7)訂正事項7について
訂正事項7は、訂正前の請求項8が引用する請求項を、請求項1?7のいずれか1項から、訂正後の請求項1,2,4,5,6のいずれか1項へと訂正するものであり、引用する請求項の選択肢について訂正前の請求項8に係る発明を限定するものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、訂正事項7は、訂正前の請求項8が「請求項1?7のいずれか」を引用していたから、特許請求の範囲に記載されていた事項である。

(8)訂正事項8について
訂正事項8は、訂正前の請求項9が、訂正前の請求項1?8のいずれか1項を引用するものであったところ、訂正前の請求項1を引用するものを独立化するものであるから、訂正前の請求項9について、訂正前の請求項1のみを引用するものに限定するとともに、請求項1の記載を引用しないものへと記載を変更するものである。そのため、上記訂正事項8は、訂正前の請求項9に係る発明を限定するとともに、他の請求項の記載を引用しないものとするものであるから、特許請求の範囲の減縮、及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、訂正事項8は、訂正前の請求項9が「請求項1?8のいずれか」を引用していたから、特許請求の範囲に記載されていた事項である。

(9)訂正事項9について
訂正事項9は、訂正前の請求項10が引用する請求項を、請求項1?9のいずれか1項から、訂正後の請求項1,2,4,5,6,8のいずれか1項へと訂正するものであり、引用する請求項の選択肢について訂正前の請求項10に係る発明を限定するものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、訂正事項9は、訂正前の請求項10が「請求項1?9のいずれか」を引用していたから、特許請求の範囲に記載されていた事項である。

(10)訂正事項10について
訂正事項10は、上記訂正事項1に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の請求項1、及び請求項1を引用する請求項2,4-6,8,10-11の記載と、明細書の記載との整合を図るための訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。この訂正は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(11)訂正事項11について
訂正事項11は、上記訂正事項2に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の請求項3、及び請求項3を引用する請求項11の記載と、明細書の記載との整合を図るための訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。この訂正は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(12)訂正事項12について
訂正事項12は、上記訂正事項3に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の請求項4、及び請求項4を引用する請求項5-6,8,10-11の記載と、明細書の記載との整合を図るための訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。この訂正は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(13)訂正事項13について
訂正事項13は、上記訂正事項6に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の請求項7、及び請求項7を引用する請求項11の記載と、明細書の記載との整合を図るための訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。この訂正は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(14)訂正事項14について
訂正事項14は、上記訂正事項8に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の請求項9、及び請求項9を引用する請求項10-11の記載と、明細書の記載との整合を図るための訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。この訂正は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(15)一群の請求項、及び独立特許要件について
訂正前の請求項1?11について、請求項2?11はそれぞれ請求項1を直接又は間接に引用しているから、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正がされるものである。そのため、請求項1?11は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に該当する。
訂正事項1ないし9は、一群の請求項である訂正前の請求項1?11について、限定を行うか、誤記の訂正を行うか、あるいは他の請求項の記載を引用しないものとして、訂正後の請求項1?11とするものである。
また、訂正事項10ないし14は、訂正事項1ないし9による訂正がなされた請求項1?11について、明細書の記載を特許請求の範囲の記載と整合させるものである。
すなわち、訂正事項1ないし14の訂正は、一群の請求項[1?11]に対して請求されたものである。
そして、本件においては、訂正前の請求項1?11について特許異議の申立てがされているから、訂正事項1ないし14の訂正は、いずれも特許異議の申立てがされている請求項に係る訂正であり、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

3 まとめ
以上のとおり、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項第1号ないし第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項[1?11]について訂正を認める。


第3 本件訂正発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし11に係る発明(以下、各々を「本件訂正発明1」等といい、請求項1ないし11に係る発明をまとめて「本件訂正発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

本件訂正発明1
「【請求項1】
駐車室内の検知エリアでセンサが物体を検知することで運転ロックがかかり、有効な安全確認操作部を操作することで前記運転ロックが解除される機械式駐車設備の安全確認装置であって、
前記駐車室の入出庫口において人の入退室を検知する入出庫口センサを備え、さらに少なくとも前記駐車室内の車両配置部より外側の周囲に設定された複数の検知エリアにおいて物体を検知するそれぞれのセンサと、
前記複数の検知エリアをそれぞれ見渡せる位置に配置された各々の安全確認操作部と、
前記複数の検知エリアにおける物体の検知状況に応じて、該物体を検知した前記検知エリアを見渡せる位置に配置された前記各々の安全確認操作部を有効にし、有効な安全確認操作部が操作されると該安全確認操作部を無効にし、全ての安全確認操作部が無効になると前記運転ロックを解除する、制御装置と、を備えていることを特徴とする安全確認装置。」

本件訂正発明2
「【請求項2】
前記複数の安全確認操作部は、入出庫口から駐車室内の車両左側方を見渡せる左位置と車両右側方を見渡せる右位置とに備えられている請求項1に記載の安全確認装置。」

本件訂正発明3
「【請求項3】
駐車室内の検知エリアでセンサが物体を検知することで運転ロックがかかり、有効な安全確認操作部を操作することで前記運転ロックが解除される機械式駐車設備の安全確認装置であって、
少なくとも前記駐車室内の車両配置部の周囲に設定された複数の検知エリアにおいて物体を検知するそれぞれのセンサと、
前記複数の検知エリアをそれぞれ見渡せる位置に配置された各々の安全確認操作部と、
前記複数の検知エリアにおける物体の検知状況に応じて前記各々の安全確認操作部を有効にし、有効な安全確認操作部が操作されると該安全確認操作部を無効にし、全ての安全確認操作部が無効になると前記運転ロックを解除する、制御装置と、を備え、
前記複数の安全確認操作部は、入出庫口から駐車室内の車両左側方を見渡せる左位置と車両右側方を見渡せる右位置とに備えられており、
前記制御装置は、前記車両配置部の左側方における検知エリアで物体を検知すると前記左位置の安全確認操作部を有効にし、
前記車両配置部の右側方における検知エリアで物体を検知すると前記右位置の安全確認操作部を有効にするように構成されていることを特徴とする安全確認装置。」

本件訂正発明4
「【請求項4】
前記複数の検知エリアにおいて物体を検知するそれぞれの前記センサは、前記車両配置部より外側の前方位置において物体を検知するように配置された前部センサをさらに有し、
前記前部センサが物体を検知する位置を見渡すことができる駐車室内の前部左右位置に前部安全確認操作部がそれぞれ配設されており、
前記前部センサが物体を検知すると前部左右位置に配置されたそれぞれの前記前部安全確認操作部が有効となるように構成されている請求項1又は2に記載の安全確認装置。」

本件訂正発明5
「【請求項5】
前記制御装置は、前記複数の検知エリアの1つの検知エリアにおいてセンサが物体を検知することで、複数の安全確認操作部を有効にするように構成されている請求項1、2,4のいずれか1項に記載の安全確認装置。」

本件訂正発明6
「【請求項6】
前記制御装置は、それぞれの位置から同一検知エリアの安全確認ができる複数の安全確認操作部について、1つの安全確認操作部を操作することで他の安全確認操作部が無効となるように構成されている請求項1、2、4、5のいずれか1項に記載の安全確認装置。」

本件訂正発明7
「【請求項7】
駐車室内の検知エリアでセンサが物体を検知することで運転ロックがかかり、有効な安全確認操作部を操作することで前記運転ロックが解除される機械式駐車設備の安全確認装置であって、
少なくとも前記駐車室内の車両配置部の周囲に設定された複数の検知エリアにおいて物体を検知するそれぞれのセンサと、
前記複数の検知エリアをそれぞれ見渡せる位置に配置された各々の安全確認操作部と、
前記複数の検知エリアにおける物体の検知状況に応じて前記各々の安全確認操作部を有効にし、有効な安全確認操作部が操作されると該安全確認操作部を無効にし、全ての安全確認操作部が無効になると前記運転ロックを解除する、制御装置と、を備え、
前記駐車室内の車両を検知する車両検知センサをさらに備え、
前記制御装置は、前記車両検知センサで車両が検知されないときは、前記複数の安全確認操作部のいずれかが操作されることで他の有効となっている全ての安全確認操作部を無効にするように構成されていることを特徴とする安全確認装置。」

本件訂正発明8
「【請求項8】
前記複数の安全確認操作部は、一つが最終安全確認操作部として構成され、
前記最終安全確認操作部は、他の有効となっている全ての安全確認操作部を操作した後に操作することで無効となるように構成されている請求項1、2、4、5、6のいずれか1項に記載の安全確認装置。」

本件訂正発明9
「【請求項9】
駐車室内の検知エリアでセンサが物体を検知することで運転ロックがかかり、有効な安全確認操作部を操作することで前記運転ロックが解除される機械式駐車設備の安全確認装置であって、
少なくとも前記駐車室内の車両配置部の周囲に設定された複数の検知エリアにおいて物体を検知するそれぞれのセンサと、
前記複数の検知エリアをそれぞれ見渡せる位置に配置された各々の安全確認操作部と、
前記複数の検知エリアにおける物体の検知状況に応じて前記各々の安全確認操作部を有効にし、有効な安全確認操作部が操作されると該安全確認操作部を無効にし、全ての安全確認操作部が無効になると前記運転ロックを解除する、制御装置と、を備え、
前記複数の安全確認操作部は、出入口付近に備えられ、該安全確認操作部に近接する位置に扉閉鎖部が配設されていることを特徴とする安全確認装置。」

本件訂正発明10
「【請求項10】
前記複数の安全確認操作部は、点灯部を有し、
前記点灯部は、有効な安全確認操作部と無効な安全確認操作部とで点灯方法又は点灯色が異なるように構成されている請求項1、2、4、5、6、8のいずれか1項に記載の安全確認装置。」

本件訂正発明11
「【請求項11】
請求項1?10のいずれか1項に記載の安全確認装置を備えたことを特徴とする機械式駐車設備。」


第4 先の取消理由、及び異議申立理由の要旨
1 先の取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の要旨
当審が令和1年8月5日発送の取消理由通知(以下、「先の取消理由通知(決定の予告)」という。)により特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

(拡大先願)
一次訂正請求後の請求項1ないし2,4ないし6,8,及び10ないし11に係る発明は、本件特許の出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた甲第1号証の先願の、願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、これらの発明に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。

2 異議申立理由の要旨
申立人による異議申立理由の要旨は、次のとおりである。

(1)(拡大先願)
本件特許の請求項1ないし6及び8ないし11に係る発明は、本件特許の出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた甲第1号証の先願の、願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、これらの発明に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。

(2)(進歩性)
本件特許の請求項1、9及び11に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された甲第2号証に記載された発明及び甲第3号証の2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。
また本件特許の請求項2に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された甲第2号証に記載された発明及び甲第3号証の2に記載された発明並びに技術常識に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、当該発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。

(3)(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし11に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではないから、これらの発明に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものであり、同法第113条第4号に該当するから、取り消されるべきものである。

(4)(明確性)
本件特許の請求項1ないし11に係る発明は、明確でないから、これらの発明に係る特許は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してされたものであり、同法第113条第4号に該当するから、取り消されるべきものである。


第5 刊行物の記載
1 申立人が提出した証拠
申立人が提出した証拠は、以下のとおりである。
甲第1号証: 特開2015-48595号公報
(特願2013-179294号(以下、「先願1」
という。平成25年8月30日出願)の公開公報、
平成27年3月16日公開、申立書に添えて提出)
甲第2号証: 特開平8-93255号公報
(平成8年4月9日公開、申立書に添えて提出)
甲第3号証の1:「機械式駐車場技術基準の一部変更について」、
公益社団法人 立体駐車場工業会、
ウェブサイト URL http://www.ritchu.or.jp/news/
の平成26年7月15日の箇所、
平成26年7月15日(掲載日)
(申立書に添えて提出)
甲第3号証の2:「通達 立駐工発第59号 機械式駐車場技術基準
2013年版の一部変更新旧比較表」、
公益社団法人 立体駐車場工業会、
URL http://www.ritchu.or.jp/common/pdf/info20140
716-03.pdf(甲第3号証の1のウェブサイト
のリンク先)、第1頁、
平成26年7月15日(掲載日)
(申立書に添えて提出)
甲第4号証: 特開平7-62918号公報
(平成7年3月7日公開、申立書に添えて提出)
甲第5号証: 特開2006-307495号公報
(平成18年11月9日公開、申立書に添えて提出)
甲第6号証: 特開昭53-45883号公報
(昭和53年4月25日公開、申立書に添えて提出)
甲第7号証: 実願昭62-1860号のマイクロフィルム
(実開昭63-111562号、
昭和63年7月18日公開、申立書に添えて提出)
甲第8号証: 実公昭49-3738号公報
(昭和49年1月29日公告、申立書に添えて提出)
甲第9号証: 特開平5-187147号公報
(平成5年7月27日公開、
令和1年6月27日付け意見書に添えて提出)
甲第10号証: 特開平8-158690号公報
(平成8年6月18日公開、
令和1年6月27日付け意見書に添えて提出)
甲第11号証: 特開2005-68640号公報
(平成17年3月17日公開、
令和1年6月27日付け意見書に添えて提出)


2 刊行物に記載された事項
(1)甲第1号証(先願1)
ア 甲第1号証(先願1)の記載
甲第1号証によれば、先願1の願書に最初に添付された明細書及び図面(以下、「先願1の当初明細書等」という。)には、次の事項が記載されており、当該事項はその後出願公開されている(下線は、当審で付加した。以下、同様。)。
(ア)
「【0039】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態について説明する。
【0040】
図1は、本第1実施形態に係る機械式駐車装置10(立体駐車場)の外観図である。
【0041】
機械式駐車装置10は、車両12を乗入階14から入出庫させる。そして、機械式駐車装置10は、車両12を載置したパレット16を乗入階14と車両12を格納する格納庫18との間で昇降させる。なお、本第1実施形態に係る機械式駐車装置10の構成は、一例であり、乗入階14を格納庫18よりも上層とする等、他の構成であってもよい。
【0042】
乗入階14には、格納庫18へ搬送されるパレット16に車両12が載置され、車両12の運転者が車両12に乗降可能な乗降室20が設けられている。
【0043】
また、乗降室20(乗入階14)の外側には、機械式駐車装置10の操作盤22が設けられる。
操作盤22は、機械式駐車装置10の利用者が操作可能なように、例えば、スイッチ、タッチパネル、ICカード、リモコン装置等を介して各種操作(入庫又は出庫の指示等)の入力を受け付ける。また、操作盤22は、文字や画像等を表示する液晶ディスプレイ装置、表示ランプ等の表示装置、音声合成装置による音声、警報音を出すスピーカーによって、種々の情報を利用者のために提供する。
【0044】
図2は、乗降室20の構成を示した上面図である。
【0045】
車両12及び運転者等は、入出庫口30から乗降室20へ出入りする。入出庫口30には、入出庫扉32が設けられ、乗降室20の略中央には、車両12が載置されるパレット16が配置される。
【0046】
乗降室20内には、安全確認の実施位置の近辺に配置され、人による安全確認の実施状態が入力される入力手段である確認ボタン34A,34Bが備えられる。確認ボタン34A,34Bは、人によって押圧されるボタン(押ボタン)である。
本第1実施形態では、確認ボタン34A,34Bは、パレット16(車両12)を挟んだ位置、図2の例では左右の壁面35に備えられる。より具体的には、図2の例では、右奥(車両12右側前方)の壁面35に確認ボタン34Aが備えられ、左手前(車両12左側後方)の壁面35に確認ボタン34Bが備えられる。
なお、以下の説明において、各確認ボタン34を区別する場合は、符号の末尾にA,Bの何れかを付し、各確認ボタン34を区別しない場合は、A,Bを省略する。
【0047】
確認ボタン34は、入力が行われていない場合に入力を促す機能を有する。例えば、確認ボタン34は、入力が行われていない状態、すなわち押圧されていない状態で明滅する。具体的には、確認ボタン34の内部にLED(Light Emitting Diode)又は電球等の照明装置が設けられ、この照明装置が明滅する。なお、入力を促す機能は、明滅の他に、単に点灯するだけでもよい。
そして、確認ボタン34は、押圧されると消灯する。これにより、本第1実施形態に係る機械式駐車装置10は、確認ボタン34への押圧(入力)忘れや押圧(入力)ミスを防止できる。
【0048】
入出庫口30には、人の乗降室20への入退室を検知する入退室検知センサ36が設けられる。入退室検知センサ36は、一例として、センサ36Aが入出庫口30の内側に設けられ、センサ36Bが入出庫口30の外側に設けられる。
入退室検知センサ36は、センサ36Bからセンサ36Aの順で人を検知した場合、乗降室20へ人が入室したと検知し、センサ36Aからセンサ36Bの順で人を検知した場合、乗降室20から人が退室したと検知する。
【0049】
また、乗降室20は、人に音声で情報を報知するためのスピーカー38を備える。
【0050】
乗降室20外の操作盤22には、人に操作されることでパレット16の搬送の許可が入力される最終確認ボタン40が備えられている。
【0051】
図3は、機械式駐車装置10の制御装置50の電気的構成を示すブロック図である。
【0052】
制御装置50は、CPU(Central Processing Unit)52、各種プログラムや各種パラメータ等が予め記憶されたROM(Read Only Memory)54、CPU52による各種プログラムの実行時のワークエリア等として用いられるRAM(Random Access Memory)56、各種プログラム及び各種情報を記憶する記憶手段としてのHDD(Hard Disk Drive)58を備えている。
【0053】
なお、HDD58の代わりに、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、フラッシュメモリ、バッテリバックアップ付きのSRAM(Static Random Access Memory)等の記憶素子を用いてもよく、プログラム、利用者情報、及び設定値等のデータの種類に応じて記憶素子を使い分けて記憶させてもよい。
【0054】
制御装置50は、パレット16等を駆動させるための各種モータ(不図示)を制御するモータ制御部60、入退室検知センサ36からの信号を受信するセンサ信号受信部62を備える。また、制御装置50は、確認ボタン34,40の押圧状態を判定し、確認ボタン34,40の明滅を制御するボタン制御部64を備えている。
【0055】
これらCPU52、ROM54、RAM56、HDD58、モータ制御部60、センサ信号受信部62、ボタン制御部64、及び操作盤22は、システムバス66を介して相互に電気的に接続されている。従って、CPU52は、ROM54、RAM56、及びHDD58へのアクセス、モータ制御部60を介したモータの駆動、センサ信号受信部62を介した乗降室20内への人の入退室状態の把握、ボタン制御部64を介した安全確認状態の把握、並びに操作盤22に対する操作状態の把握及び画像の表示等、を行える。」

(イ)
「【0056】
次に、本第1実施形態に係る機械式駐車装置10の作用について説明する。
【0057】
機械式駐車装置10へ車両12を入庫させる場合、運転者以外の同乗者及び荷物等は、乗降室20へ車両12を進入させる前に車両12から降ろされる。そして、車両12を乗降室20へ進入させてパレット16に載置した後、運転者は、パレット16を動作させる前に乗降室20内の安全確認を必要とする。
【0058】
乗降室20内の安全確認は、人の有無やパレット16の搬送の障害になる物の有無等の確認である。すなわち、車両12から降りた運転者が安全確認者として、乗降室20内における安全確認の実施位置へ移動する。そして、安全確認者が安全確認を実施した後に、確認ボタン34を押圧する。これにより、安全確認終了という安全確認の実施状態が確認ボタン34に入力されることとなる。
【0059】
乗降室20内の安全確認は、運転者が乗降室20内に居るものの(時には同乗者が車両内に居残る場合がある)確実な検知方法がない。このため、乗降室20内の安全確認は、人による確認が最も効果的な方法であると考えられる。本第1実施形態によれば、確認ボタン34が安全確認の実施位置の近辺に配置されるため、安全確認者は確認ボタン34の配置位置へ移動しなければならない。安全確認者は、確認ボタン34までの移動を行う過程において必然的に周囲を目視するので、それにより安全確認が行われることとなる。なお、安全確認者は、車両12の運転者に限らず、機械式駐車装置10の管理者等でもよい。
【0060】
そして、確認ボタン34への入力が行われ、かつ乗降室20から人が退室した後に、制御装置50によって、パレット16の搬送が実行される。このため、確認ボタン34への入力が行われ、乗降室20から人が退室することで安全が確保されない限り、パレット16の搬送は行われず、車両12も格納庫18へ搬送されることは無い。
【0061】
従って、本第1実施形態に係る機械式駐車装置10は、より確実に乗降室20から人が退出した後に動作を行い、乗降室20内の安全性を確保できる。
【0062】
また、本第1実施形態に係る機械式駐車装置10は、乗降室20から人が退室し、最終確認ボタン40への押圧(操作)が行われた後に、制御装置50によってパレット16の搬送が実行される。すなわち、安全確認の実施状態を確認ボタン34に入力した安全確認者が、乗降室20外の操作盤22に備えられる最終確認ボタン40を操作した後に、パレット16の搬送が実行されるので、より確実に乗降室20内の安全性が確保される。
【0063】
なお、上記説明した本第1実施形態に係る確認ボタン34,40を用いた安全確認を安全確認処理という。
【0064】
図4は、安全確認処理を行う場合に、制御装置50によって実行される安全確認プログラムの流れを示すフローチャートである。安全確認プログラムは、HDD58の所定領域に予め記憶されている。
なお、安全確認プログラムは、車両12がパレット16に載置された後に、開始される。また、安全確認プログラムの開始と共に、確認ボタン34の明滅が開始される。また、最終確認ボタン40に対する操作は、安全確認プログラムの開始時には無効とされている。
【0065】
まず、ステップ100では、一つめの確認ボタン34、例えば確認ボタン34Aが押圧されたか否かをボタン制御部64によって判定する。確認ボタン34Aへの押圧は、確認ボタン34A近辺での安全確認の実施終了の入力を確認ボタン34Aが受け付けたこととなる。肯定判定の場合はステップ101へ移行する。
確認ボタン34Aは、押圧されるまでは明滅しているが、押圧された後、消灯する。
【0066】
ステップ101では、入退室検知センサ36が乗降室20内への人の入室を検知したか否かを判定し、肯定判定の場合はステップ112へ移行し、否定判定の場合はステップ102へ移行する。
【0067】
ステップ102では、二つめの確認ボタン34、例えば確認ボタン34Bが押圧されたか否かをボタン制御部64によって判定する。確認ボタン34Bへの押圧は、確認ボタン34B近辺での安全確認の実施終了の入力を確認ボタン34Bが受け付けたこととなる。肯定判定の場合はステップ103へ移行する。
確認ボタン34Bは、押圧されるまでは明滅しているが、押圧された後、消灯する。
【0068】
上述したように確認ボタン34A,34Bは、パレット16を挟んで配置されている。従って、本第1実施形態に係る機械式駐車装置10は、安全確認者である運転者が車両12の片側だけでなく、反対側の安全確認も行うこととなるので、より確実に乗降室20内の安全性が確保される。
【0069】
ステップ103では、入退室検知センサ36が乗降室20内への人の入室を検知したか否かを判定し、肯定判定の場合はステップ112へ移行し、否定判定の場合はステップ104へ移行する。
【0070】
ステップ104では、入退室検知センサ36の検知結果に基づいて、乗降室20から運転者が退室したか否かを判定し、肯定判定の場合はステップ106へ移行する。
【0071】
ステップ106では、操作盤22に備えられる最終確認ボタン40への操作を有効とする。
乗降室20へ入室した人の退室が検知された後に、最終確認ボタン40への操作が有効とされることで、例えば安全確認者が乗降室20から出る前に他者によって最終確認ボタン40が操作されても、パレット16の搬送が実行されることは無い。
従って、本第1実施形態に係る機械式駐車装置10は、より確実に乗降室20内の安全性が確保できる。
【0072】
次のステップ107では、入退室検知センサ36が乗降室20内への人の入室を検知したか否かを判定し、肯定判定の場合はステップ114へ移行し、否定判定の場合はステップ108へ移行する。
【0073】
ステップ108では、最終確認ボタン40が押圧されたか否かをボタン制御部64によって判定し、肯定判定の場合はステップ110へ移行する。
【0074】
ステップ110では、機械式駐車装置10の動作が開始され、本安全確認処理が終了する。具体的には、入出庫扉32が閉じられ、車両12が載置されたパレット16が格納庫18へ搬送される。
【0075】
なお、ステップ101及びステップ103で肯定判定となり、ステップ112へ移行すると、ステップ112において、確認ボタン34への入力が全て解除され、ステップ100へ戻る。確認ボタン34への入力の解除とは、それまでに行われた確認ボタン34への入力が取り消されることである。
【0076】
また、ステップ107で肯定判定となり、ステップ114へ移行すると、ステップ114において、確認ボタン34への入力が全て解除され、最終確認ボタン40への操作を無効とし、ステップ100へ戻る。
【0077】
ステップ112,114へ移行した場合、安全確認者は、再び確認ボタン34を押圧し、入退室検知センサ36によって退室を検知させ、最終確認ボタン40への操作を有効にしなければならない。このように、本第1実施形態に係る機械式駐車装置10は、新たに人が乗降室20内へ入室した場合に、再び乗降室20内の安全確認が必要とされるため、より確実に乗降室20内の安全性が確保される。」

(ウ)
「【0080】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態について説明する。
【0081】
本第2実施形態に係る機械式駐車装置10は、車両12の運転席側に対して反対側に配置された入力手段である確認ボタン34への入力を促す機能を備える。
【0082】
図5は、本第2実施形態に係る乗降室20の上面図である。なお、図5における図2と同一の構成部分については図2と同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0083】
本第2実施形態に係る機械式駐車装置10は、パレット16に対して車幅が広すぎる車両12のパレット16への載置を規制するために、車両12の車幅を検知する車幅規制センサ70を備える。
車幅規制センサ70は、一例として、車両12の両側に、光線を照射する照射部70A及び光線を受光する受光部70Bとを一対備えている。照射部70Aは、例えばパレット16に載置される車両12の前方に配置され、受光部70Bは照射部70Aに対向するように車両12の後方に配置される。そして、一対の照射部70A及び受光部70Bは、パレット16に載置可能な車両12の最大車幅に相当する間隔で配置される。
すなわち、照射部70Aから照射された光線が受光部70Bで受光されない場合は、パレット16に載置しようとする車両12の車幅が、最大車幅を超えている場合である。このような車両12をパレット16に載置しても、パレット16は搬送されない。
【0084】
図6は、本第2実施形態に係る機械式駐車装置10の制御装置50の電気的構成を示すブロック図である。
【0085】
車幅規制センサ70の受光部70Bによる光線の受光状態を示すセンサ信号が、センサ信号受信部62を介してCPU52へ入力される。
【0086】
本第2実施形態に係るCPU52は、最大車幅内の車幅の車両12がパレット16に載置された後に、受光部70Bによる光線の受光状態に基づいて、車両12の運転席側を判定する。
具体的には、パレット16に載置された車両12から運転者が降りる場合、開かれるドア、又は降車する運転者によって照射部70Aからの光線が遮られる。従って、運転席は、光線を受光しなくなった受光部70Bが配置されている側であると判定される。
【0087】
そして、CPU52は、車両12の運転席側に対して反対側に配置された確認ボタン34を明滅させることによって、その確認ボタン34への入力を運転者へ促す。すなわち、運転席が車両12の右側であると判定された場合は、確認ボタン34Bが明滅し、運転席が車両12の左側であると判定された場合は、確認ボタン34Aが明滅する。
これにより、車両12の運転者が運転席側から車両12の反対側まで移動することとなり、乗降室20内の安全確認がより広い範囲で行われる。
【0088】
なお、車両12の両側の光線が遮られたと判定された場合は、運転席側を判定できないため、確認ボタン34A,34B共に明滅する。」

(エ)
「【0089】
〔第3実施形態〕
以下、本発明の第3実施形態について説明する。
【0090】
図7は、本第3実施形態に係る乗降室20の上面図である。なお、図7における図2と同一の構成部分については図2と同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0091】
本第3実施形態に係る機械式駐車装置10は、確認ボタン34の近辺に配置され、車両12に対して反対側の安全確認を可能とする安全確認手段として、モニタ80A,80B及びカメラ82A,82Bを備える。確認ボタン34Aの近辺に配置されたモニタ80Aは、車両12に対して反対側に配置されたカメラ82Aで撮像された画像を表示する。一方、確認ボタン34Bの近辺に配置されたモニタ80Bは、車両12に対して反対側に配置されたカメラ82Bで撮像された画像を表示する。
【0092】
従って、本第3実施形態に係る機械式駐車装置10によれば、安全確認者が車両12に対して反対側へ移動しなくても、反対側の安全確認が可能となる。
例えば、安全確認者である運転者が車いすで移動する場合のように、乗降室20内の移動に困難を伴う場合がある。このような場合には、安全確認者が、一方のモニタ80Aの画像を目視し、確認ボタン34に入力を行うだけで、乗降室20内の安全確認が簡易にかつより広い範囲で行われる。」

(オ)
「【0095】
〔第4実施形態〕
以下、本発明の第4実施形態について説明する。
【0096】
本第4実施形態に係る機械式駐車装置10は、車両12内に居残りした人が最終確認ボタン40への操作の前に車両12外に出た場合に、確認ボタン34への入力を解除する機能を備える。
【0097】
なお、本第2実施形態に係る乗降室20及び制御装置50の構成は、上述した第2実施形態に係る図5及び図6と同様である。
【0098】
本第4実施形態に係るCPU52は、最大車幅内の車幅の車両12がパレット16に載置され、確認ボタン34への入力後から最終確認ボタン40への操作の間に車幅規制センサ70がセンサ信号を出力したか否かを判定する。
【0099】
車幅規制センサ70がセンサ信号を出力する場合とは、車両12に居残っていた同乗者が車両12から降りた場合である。この場合、乗降室20には、運転者以外に同乗者が居ることとなる。
具体的には、パレット16に載置された車両12から同乗者が降りる場合、開かれるドア、又は降車する同乗者によって照射部70Aからの光線が一旦遮られる。その後、車両12のドアが閉められ、同乗者が車両12から離れると、車幅規制センサ70は受光状態に戻る。
【0100】
本第4実施形態に係るCPU25は、図4のステップ100からステップ108の間、すなわち確認ボタン34への入力後から最終確認ボタン40への操作の間に、車幅規制センサ70の光線が遮られ、車幅規制センサ70がセンサ信号を出力した場合、運転者以外の人が乗降室20内に居残っていると判定する。そして、CPU25は、確認ボタン34への入力を全て解除する。
【0101】
機械式駐車装置10は、その後再び運転者により確認ボタン34への入力が行われ、入退室検知センサ36の検知結果が運転者の退室を検知し、さらに最終確認ボタン40への入力が行われた後に動作する。
このように、本実施形態に係る機械式駐車装置10は、同乗者が車両12に居残っていた場合、同乗者の乗降室20からの退室確認を含む乗降室20内の安全確認が再び必要とされるため、より確実に乗降室20内の安全性が確保される。」

(カ)
「【0102】
以上、本発明を、上記各実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記各実施形態に多様な変更又は改良を加えることができ、該変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0103】
例えば、上記各実施形態では、確認ボタン34が左右の壁面35に計2つ備えられる形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、確認ボタン34が1つ又は3つ以上備えられる形態としてもよい。
【0104】
確認ボタン34が一つの場合、例えば、確認ボタン34は図8に示されるように、車両12の左側となる壁面35の車両12前方側に配置される。この理由は、右側に運転席が配置される車両12が日本国内では多く、安全確認者である運転者は、確認ボタン34の配置位置へ移動する過程において、必然的に車両12の右側及び左側を目視して、さらに車両12の前方についても安全確認を行うこととなるためである。
【0105】
また、図9は、確認ボタン34が4つの場合の例を示す。
図9の例では、車両12の前方左右及び後方左右となる壁面35に確認ボタン34が配置される。これにより、安全確認者は、より広い範囲を目視して安全確認を行うこととなる。
【0106】
また、上記各実施形態では、確認ボタン34が壁面35に備えられる形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、確認ボタン34は乗降室20内における安全確認の実施位置の近辺に配置されるのであれば、壁面35以外に配置されてよい。」

(キ)
図5には、次の図示がある。

図5には、入出庫口30より左側の乗降室20内の手前側に、左手前の確認ボタン34Bが設けられ、入出庫口30の右外側に最終確認ボタン40を備える操作盤22が設けられた様子が、図示されている。
また図5から、入退室検知センサ36を構成するセンサ36Aとセンサ36Bについて、入出庫口30の内側に設けられたセンサ36Aは、乗降室20内の手前側かつパレット16より外側で検知を行い、入出庫口30の外側に設けられたセンサ36Bは、乗降室20外で検知を行う様子が、看て取れる。
また図5から、車幅規制センサ70について、検知のために照射部70Aが照射し受光部70Bが受光する光線が、乗降室20内で、かつパレット16の両側の外周近傍に位置するように配置される様子が、看て取れる。

(ク)
図7には、次の図示がある。

(ケ)
図9には、次の図示がある。

イ 先願1の当初明細書等に記載された発明の認定
先願1の当初明細書等には、上記ア(ア)?(ウ)及び(オ)並びに(キ)を踏まえると、第1実施形態、第2実施形態に付加構成を追加した第4実施形態を基礎として、次の発明(以下、「先願1発明」という。)が記載されていると認められる。

「乗降室20、入出庫扉32が設けられた入出庫口30、乗降室20の略中央で車両12が載置されるパレット16、パレット16が搬送される格納庫18、を有する機械式駐車装置10であり、
安全確認の実施位置の近傍に配置され、人による安全確認の実施状況が入力される、乗降室20内の右奥の確認ボタン34A及び入出庫口30左側で乗降室20内の左手前の確認ボタン34Bを含む確認ボタン34、並びに乗降室20外の入出庫口30右側の操作盤22に備えられる最終確認ボタン40と、
センサ36Bからセンサ36Aとを有する入退室検知センサ36であり、入出庫口30の内側に設けられたセンサ36Aは、乗降室20内の手前側かつパレット16より外側で検知を行い、入出庫口30の外側に設けられたセンサ36Bは、乗降室20外で検知を行い、センサ36Bからセンサ36Aの順で人を検知した場合、乗降室20へ人が入室したと検知し、センサ36Aからセンサ36Bの順で人を検知した場合、乗降室20から人が退室したと検知する、入退室検知センサ36と、
パレット16に載置しようとする車両12の車幅が、最大車幅を超えることを規制するとともに、開かれたドアまたは降車する運転手を検知する車幅規制センサ70であり、車両12の両側に、一対の光線を照射する照射部70A及び光線を受光する受光部70Bを、パレット16に載置可能な車両12の最大車幅に相当する間隔で配置し、検知のために照射部70Aが照射し受光部70Bが受光する光線が、乗降室20内で、かつパレット16の両側の外周近傍に位置する、車幅規制センサ70と、
CPU52を備える制御装置50と、を備え、
制御装置50のCPU52は、
安全確認のために、車両12がパレット16に載置された後に安全確認プログラムを開始し、確認ボタン34を明滅し、確認ボタン34,40を用いた安全確認処理が終了するまではパレット16の搬送は行わず、
車両12がパレット16に載置された後に、車幅規制センサ70が、開かれたドアまたは降車する運転手を検知して右側あるいは左側を運転席側と判定すると、運転席側に対して反対側の確認ボタン34を明滅させ、車両12の両側で検知が行われ運転席側を判定できない場合には両側の確認ボタン34A及び34Bを共に明滅させ、
明滅している確認ボタン34が押圧されると、当該確認ボタン34を消灯し、明滅する確認ボタン34が全て消灯すると、最終確認ボタン40への操作を有効とし、有効な最終確認ボタン40が押圧されると、安全確認処理を終了して、入出庫扉34を閉じパレット16を格納庫18へ搬送し、
有効とした最終確認ボタン40が操作される前に、入退室検知センサ36が入室を検知するか、あるいは車幅規制センサ70がセンサ信号を出力した場合、確認ボタン34への入力を全て解除して、再び運転者に確認ボタン34への入力を行わせる、
機械式駐車装置10。」

更に、先願1発明は、上記ア(カ)に摘記した各実施形態についての変形、及び上記ア(ケ)に示した図9の図示より、次の選択肢も有していると認められる。
「確認ボタン34を、車両12の前方左右及び後方左右に、計4つ設け、これにより安全確認者に、より広い範囲を目視して安全確認を行わせる」

また、先願1発明は、上記ア(エ)に摘記した第3実施形態、及び上記ア(ク)に示した図7の図示より、次の選択肢も有していると認められる。
「確認ボタン34Aの近辺に配置したモニタ80Aに、車両12の反対側に配置したカメラ82Aで撮像された画像を表示し、
確認ボタン34Bの近辺に配置したモニタ80Bに、車両12の反対側に配置したカメラ82Bで撮像された画像を表示し、
車いすで移動する運転者が車両12に対して反対側へ移動しなくても、一方のモニタの画像を目視して確認ボタン34に入力を行うだけで、乗降室20内の安全確認が簡易にかつより広い範囲で行われる」

(2)甲第2号証
ア 甲第2号証の記載
甲第2号証には、図面と共に次の事項が記載されている。
(ア)
「【0002】
【従来の技術】・・・・・(中略)・・・・・
【0008】次に、車両入退室110内部における、光電管130の配置について、図13を参照して説明する。
【0009】車両入退室110の内部には、入庫車10の入庫車入口90の入退室を確認するための車両入退室チェック光電管11が備えられている。さらに、パレット22上の所定の位置に、入庫車10が存在しているかどうかを確認するための、後部車長制限光電管12と、実車検知光電管13と、前部車長制限光電管14とがそれぞれ所定の位置に設けられている。なお、図中において、a?dは、それぞれの光電管の光軸を示している。
【0010】したがって、入庫車10が、パレット22の所定の位置に入庫された場合は、実車検知光電管13の光軸bのみが遮断され、後部車長制限光電管12および前部車長制限光電管14のそれぞれの光軸c,dは遮断されることはない。
【0011】しかし、パレット22に対して、入庫車10が前方または後方に位置した場合、光軸dまたは光軸cのいずれかを遮断することとなる。この場合、後部車長制限光電管12または前部車長制限光電管14からコントロールユニット75に所定の信号が発せられ、さらにこのコントロールユニット75から報知器95に信号が送られ、報知器95に、その旨を表示することで、入庫車10の運転者に注意を促すことができる。その後、入庫車10の運転者が車両入退室110から退出した後、入庫車入口90のドアが閉められ、パレット22が、自動的にパレット駆動装置60により循環移動を行なう。」

(イ)
「【0029】
【実施例】以下、この発明に基づいた実施例について説明する。なお、この実施例における立体駐車装置の全体的な構造は、図11で説明した従来の構造と同一であるため、ここでの説明は省略し、車両入退室内の構造についてのみ説明する。
【0030】まず、図1を参照して、この実施例における車両入退室110の構造について説明する。この実施例における車両入退室110の内部には、入庫車の入出庫を確認するための車両入退室チェック光電管11が設けられている。また、パレット22上の所定の位置に入庫車が位置しているかどうかを確認するための後部車長制限光電管12、実車検知光電管13および前部車長制限光電管14がそれぞれ設けられている。なお、図中実線a?dは、各光電管の光軸を示している。
【0031】さらに、本実施例においては、車両入退室110内の人の存在を検知するための前配置右側人検知センサ15、後配置右側人検知センサ16、前配置左側人検知センサ17、後配置左側人検知センサ18、右配置全体人検知センサ19および左配置全体人検知センサ20が設けられている。
【0032】
・・・・(中略)・・・・
【0033】車両入退室110内の入出庫口にごく近い位置には、車両入退室チェック光電管11が設けられ、車両の乗入れ方向に対し垂直な水平光軸a上で車両入退室110内に出入りする利用者や車両を検知する。また、パレット22のほぼ中央位置の左右両側部には、実車検知光電管13が設けられ、光軸bにより、車両がパレット22に載置されて、駐車されていることを検知する。さらに、パレット22に載置される車両の駐車許容範囲、つまりパレット22が移動しても、途中で立体駐車装置の他の機構部と車両とが接触事故を起こすおそれのない駐車範囲の後方限界位置は、パレット22の中間位置を設けた位置より所定の距離だけ後方に設定されている。この位置の左右両側部には、光軸aと平行な光軸cで、車両が駐車許容範囲から後方にはみ出しているのを検知するための後部車長制限光電管12が設けられている。
・・・・(中略)・・・・
【0035】次に、図2ないし図5を参照して、各人検知センサの検知エリアについて説明する。
【0036】まず、図2を参照して、前配置右側人検知センサ15と、前配置左側人検知センサ17との検知エリアについて説明する。この前配置右側人検知センサ15の検知エリア15Aは、図に示すように、パレット22の右側全体の領域である。また、前配置左側人検知センサ17の検知エリア17Aは、パレット22の右側全体の領域である。
【0037】次に、図3を参照して、後配置右側人検知センサ16と後配置左側人検知センサ18の検知エリアについて説明する。まず、後配置右側人検知センサ16の検知エリア16Aは、パレット22の右側全体の領域である。また、後配置左側人検知センサ18の検知エリア18Aは、パレット22の左側全体の領域である。
【0038】
・・・・(中略)・・・・
【0045】次に、車両を、パレットに載置し、車両の入庫を行なう。このとき、車両の進入により、車両入退室チェック光電管11が作動する。その後、パレット22の所定の位置に車両が載置された場合、実車検知光電管13のみが作動し、後部車長制限光電管12および前部車長制限光電管14は作動しない。
【0046】次に、車両が右ハンドルの場合、運転者が前配置右側人検知センサ15および後配置右側人検知センサ16の検知エリアに車両から降りる。その後、前配置右側人検知センサ15および後配置右側人検知センサ16が運転者を検知して、プログラマブルコントローラ2に信号を伝え、立体駐車装置が起動しないように処理する。
【0047】次に、運転者が車両入退室より退室し、前配置右側人検知センサ15および後配置右側人検知センサ16が作動しなくなる。その後、運転者が車両入退室内の安全を確認した後、操作盤7で安全確認ボタンを押す。
【0048】そのとき、前配置右側人検知センサ15、後配置右側人検知センサ16、前配置全体人検知センサ17、後配置左側人検知センサ18、右配置全体人検知センサ19および左配置全体人検知センサ20が作動していなければ、立体駐車装置が起動できるようにプログラマブルコントローラ2で処理を行なう。
【0049】その後、運転者が操作盤7で車両入退室のドア閉ボタンを押し、ドアを閉める。これにより車両の立体駐車装置への入庫が完了する。」

(ウ)
甲第2号証の実施例に関して、図1ないし3には、次の図示がある。

図2及び3には、前配置右側人検知センサ15の検知エリア15A、前配置左側人検知センサ17の検知エリア17A、後配置右側人検知センサ16の検知エリア16A、後配置左側人検知センサ18の検知エリア18Aが、それぞれパレット22より外側の右側又は左側、かつ車両入退室内に設定された様子が、図示されている。

(エ)
甲第2号証の従来技術に関して、図13には、次の図示がある。

図13には、駐車場の車両入退室110の内部で、パレット22の所定位置に入庫された入庫車により遮られる実車検知光電管13、及び当該入庫車の前方並びに後方に設けられ遮蔽を検知する前部車長制限光電管14並びに後部車長制限光電管12を設けた様子が、図示されている。
また、同図13には、前部車長制限光電管14の光軸d及び後部車長制限光電管12の光軸cが、それぞれパレット22より外側の前方位置及び後方位置を検知位置とするよう配置されている様子が、図示されている。

イ 甲第2号証に記載された発明
甲第2号証には、上記ア(イ)及び(ウ)より、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「操作盤7に安全確認ボタンを備えた立体駐車装置であり、
車両入退室110の内部には、入出庫口にごく近い位置に設けられ車両入退室110内に出入りする利用者や車両を検知する車両入退室チェック光電管11、パレット22上の所定の位置に入庫車が位置しているかどうかを確認するための後部車長制限光電管12、実車検知光電管13および前部車長制限光電管14がそれぞれ設けられており、
また、車両入退室110内の人の存在を検知するために、検知エリア15A及び16Aがパレット22より外側の右側かつ車両入退室110内に設定された前配置右側人検知センサ15及び後配置右側人検知センサ16、検知エリア17A及び18Aがパレット22より外側の左側かつ車両入退室110内に設定された前配置左側人検知センサ17及び後配置左側人検知センサ18、並びに右配置全体人検知センサ19及び左配置全体人検知センサ20が設けられており、
車両を、パレット22に載置し、車両の入庫を行なうとき、車両の進入により、車両入退室チェック光電管11が作動し、その後パレット22の所定の位置に車両が載置された場合、実車検知光電管13のみが作動し、後部車長制限光電管12および前部車長制限光電管14は作動せず、
車両が右ハンドルの場合、運転者が前配置右側人検知センサ15および後配置右側人検知センサ16の検知エリアに車両から降りると、前配置右側人検知センサ15および後配置右側人検知センサ16が運転者を検知して、プログラマブルコントローラ2に信号を伝え、立体駐車装置が起動しないように処理し、
運転者が車両入退室より退室すると、前配置右側人検知センサ15および後配置右側人検知センサ16が作動しなくなり、その後運転者が車両入退室内の安全を確認した後、操作盤7で安全確認ボタンを押し、
そのとき、前配置右側人検知センサ15、後配置右側人検知センサ16、前配置全体人検知センサ17、後配置左側人検知センサ18、右配置全体人検知センサ19および左配置全体人検知センサ20が作動していなければ、立体駐車装置が起動できるようにプログラマブルコントローラ2で処理を行ない、その後、運転者が操作盤7で車両入退室のドア閉ボタンを押し、ドアを閉めることにより、車両の立体駐車装置への入庫が完了する、
安全確認ボタンを備えた立体駐車装置。」

(3)甲第3号証
ア 甲第3号証の1の記載
甲第3号証の1には、「機械式駐車場技術基準の一部変更について」との見出しの後に「立駐工発第59号 平成26年7月15日」と記載されている。
また、甲第3号証の1の本文中には、「そして、昨日開催された臨時理事会で、本技術基準の一部変更について承認されましたので会員各位へ通知致します。」と記載されている。
そして、甲第3号証の1の「3.変更内容」の箇所には、「上記1.「主な変更項目」の内容詳細については、別添資料 「通達 立駐工発第59号 機械式駐車場技術基準2013年版の一部変更新旧比較表」をご確認願います。」と記載されたうえで、その下に「通達 立駐工発第59号 機械式駐車場技術基準2013年版の一部変更新旧比較表」と記されたリンク先が表示されている。

イ 甲第3号証の2の記載
甲第3号証の2は、上記アの甲第3号証の1中の「通達 立駐工発第59号 機械式駐車場技術基準2013年版の一部変更新旧比較表」と記されたリンクから参照されるウェブサイトであり、次の記載がある。
(ア)第1頁見出し
「通達 立駐工発第59号 機械式駐車場技術基準2013年版の一部変更新旧比較表 2014.07.15」

(イ)第1頁左欄第1行-第7行
「2014.07.10 国交省ガイドライン反映技術基準変更(赤字:変更箇所)
2.3.2 駐車装置の操作位置等
駐車装置および出入口扉の操作盤は、乗降室内の状況、並びに人および自動車の出入りの状況が目視によって確認できる位置に設けること。なお、部分的に目視できない領域については原則として反射鏡、ITVモニターを設け、これらが設けられない場合は、無人確認入力機、センサー等の安全装置を補助的に設け目視確認の補助を行うこと。
また、出入口扉が閉まった直後でも操作位置から乗降室内の状況が確認できること。」

ウ 甲第3号証の2の公知性、及び甲第3号証の2に記載された発明
上記アの甲第3号証の1の記載、及び、同甲第3号証の1のリンクから上記イの甲第3号証の2の内容が参照できることから、甲第3号証の2は本件出願日前の平成26年7月15日にはインターネットに掲載され、電気通信回線を通じて公知となっていたと認めることができる。
また、上記イの記載事項から、甲第3号証の2には、次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていたと認められる。

「駐車装置および出入口扉の操作盤は、乗降室内の状況、並びに人および自動車の出入りの状況が目視によって確認できる位置に設け、部分的に目視できない領域については、無人確認入力機、センサー等の安全装置を補助的に設け目視確認の補助を行う、駐車装置。」

(4)甲第4号証
甲第4号証には、図面と共に次の事項が記載されている。

「【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、機械式駐車装置の安全確認装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】・・・・・
【0005】即ち、図2は機械式駐車装置の代表例である垂直循環式駐車装置の乗入部の平面を示したもので、出入口1からケージ2に入庫された自動車3が投光器と受光器からなる複数個の光電装置PH1?PH4により正規の位置に格納されているかをチェックし、万一自動車3の停止位置が前方又は後方に偏っている場合には、案内灯4にその旨表示して適正位置に誘導させるように運用される。」


「【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところで、管理人などが駐車装置内(塔内)の人の有無などを確認する場合は飽くまで目視で行うことになるため、駐車装置内を隅々まで見渡して確実に安全確認を行うかは偏に確認を行う人の態度にかかっており、常に安全を確保する方法としては甚だ心許ない。又、構造上自動車3の影に隠れるような死角がどうしてもできてしまい、特に通常操作盤5の付近に位置する管理人にとっては、いちいち出入口1の反操作盤側までいって駐車場内を覗き込む手間をついつい面倒がってしまい、安全確認を疎かにする虞れも考えられる。本発明は、上記の点に鑑みなされたもので、安全確認を行う人がどのような人であっても間違いなく安全確認が行われる安全確認装置を提供することを目的とする。」


図2には、次の図示がある。

図2には、機械式駐車装置の乗入部の内部で、ケージ2の所定位置に入庫された自動車により遮られる光電装置PH4、及び当該自動車の前方並びに後方に設けられ遮蔽を検知する光電装置PH1並びにPH2を設けた様子が、図示されている。
また、同図2には、遮蔽を検知する光電装置PH1とPH2が、それぞれケージ2より外側の前方位置及び後方位置を検知位置とするよう配置されている様子が、図示されている。

(5)甲第5号証
甲第5号証には、次の記載及び図示がある。


「【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明すると、図1ないし図4に示されるように、機械式駐車装置の一例としての垂直循環式駐車装置1は、柱や梁等で構成された建物躯体2を有する駐車塔3を備え、駐車塔3内の上部および下部における入出庫口4側(前側)と奥側(後側)には、上下2対の上部スプロケット5および下部スプロケット6がそれぞれ対向配置された状態で回転自在に支持されている。
【0027】
そして、上下の上部スプロケット5および下部スプロケット6間にわたって前後2条の無端チェーン7がそれぞれ巻き掛けられ、これら無端チェーン7にアタッチメント8を介して複数(本実施形態では12機)の車両搭載用ケージ9が所定間隔を有して連鎖状に吊持された構造とされている。
【0028】
また、両上部スプロケット5は、駆動モータや伝動機構等からなる駆動装置10に連係されており、駆動装置10の駆動による上部スプロケット5の正逆回転操作により、ケージ9群が対応する方向に循環移動される構造とされている。
【0029】
前記各ケージ9は、車両Wが乗降される平面視略矩形の車台11と、該車台11の前側および後側にそれぞれ立設状に取り付けられた門型状の前・後のケージ枠12と、前・後のケージ枠12の上部を互いに連結する連結軸とを備え、前・後のケージ枠12の上端部が、前後の無端チェーン7に取り付けられたアタッチメント8にそれぞれ吊軸を介して揺動自在に支持されている。
【0030】
また、駐車塔3における地上階の入出庫部13には、乗り入れ床14よりも僅かに低く構成された利用者乗降用のピット15や、ピット15に到着したケージ9に対して車両Wが乗降するための入出庫口4が備えられ、入出庫口4には入出庫口扉16が開閉操作自在に備えられている。さらに、入出庫口4の上方部および入出庫口4に対向する駐車塔3内の奥壁面側には、電光表示器等による入出庫口案内表示器17や入出庫誘導案内表示器18が備えられている。
【0031】
また、地上階における駐車塔3内の建物躯体2側には、図2に示されるように、ケージ9に対する車両Wの入出庫状態や停止位置を検知して制御するための例えば、投光器と受光器との対からなる光電装置からなる複数の入庫誘導用検知器P1?P4、サイド食み出し検知器P5,P6が適宜高さ位置に配置されている。
【0032】
即ち、入出庫口4付近には、車両Wの進入方向に対して略直角な方向へ水平のビームを出射する入庫誘導用検知器P1,P2が、前記進入方向に対して適宜距離、離隔して配置されている。また、駐車塔3内の前記進入方向中央部には、前記進入方向に対して傾斜する横方向へ水平のビームを出射する入庫誘導用検知器P3が配置されている。さらに、駐車塔3内の前記進入方向奥側には、前記進入方向に対して略直角な方向へ水平のビームを出射する入庫誘導用検知器P4が、前記進入方向に対して適宜距離、離隔して配置されている。
【0033】
また、ケージ9の左右両側部に対応して、それぞれ車両Wの進入方向にビームを出射するサイド食み出し検知器P5,P6がそれぞれ配置されている。この際、サイド食み出し検知器P5,P6は、例えば、奥側の投光器が適宜高さ位置に配置され、入出庫口4側の受光器はピット15内等の低位置に配置された構造とされ、斜め下方に向けてビームを出射する配置構造とされている。
【0034】
そして、入庫誘導用検知器P1、P2のビームの遮光によって車両Wの入庫・出庫が検知されるように制御されており、例えば、入庫誘導用検知器P1を遮光した後、その状態で入庫誘導用検知器P2も遮光されれば、車両Wの入庫と判断され、入庫誘導用検知器P2を遮光した後、その状態で入庫誘導用検知器P1も遮光されれば、車両Wの出庫と判断される。また、入庫誘導用検知器P2は車両Wの後端食み出しを規制する後端食み出し検知器としての機能も発揮する構造とされ、入庫する車両Wが入庫誘導用検知器P2のビームを遮光していれば、前進を促すように制御される。
【0035】
前記入庫誘導用検知器P2、P3、P4は車両Wの停止位置規制用検知器として機能し、入庫誘導用検知器P2、P3共に遮光の状態から入庫誘導用検知器P2のみ受光となったときに、車両Wは正規位置に収まったと判断される。
【0036】
前記入庫誘導用検知器P4は車両Wの前端食み出しを規制する前端食み出し検知器として機能し、入庫する車両Wが入庫誘導用検知器P4のビームを遮光していれば、後退を促すように制御される。また、入庫誘導用検知器P2と入庫誘導用検知器P4の双方でビームを遮光していれば、車長オーバーとして出庫を促すように制御される。
【0037】
左右の前記サイド食み出し検知器P5,P6は、それぞれ車両Wの左端および右端の食み出しを規制するサイド食み出し検知器として機能し、ビームの遮光によりサイドドアWaの閉め忘れ報知やサイドミラーWbの食み出し報知や車幅オーバーによる出庫を促すように制御される。」


図2には、次の図示がある。

図2には、車両Wが前後方向で正規位置に収まったことを判断するための入庫誘導用検知器P2及びP4のビームが、ケージ9及び車台11の前後両端近傍に配置された設定が、示されている。
また図2には、ケージ9の左右両側部に対応して配置されたサイド食み出し検知部P5及びP6のビームが、ケージ9上の車台11の左右両端近傍で、車台11より内側から、車台11より外側へと移行するように配置された設定が、示されている。

(6)甲第6号証
摘記は省略するが、第6号証の図1には次の図示があり、機械式駐車場において、適正な位置へと駐車がされた車両により遮られる光電ビーム、及び当該車両の前方並びに後方に設けられ物体による遮蔽を検知する光電ビームを設けた様子が、示されている。


(7)甲第7号証
摘記は省略するが、甲第7号証の図1には次の図示があり、機械式駐車場において、適正な位置へと駐車がされた車両により遮られる光電ビーム、及び当該車両の前方並びに後方に設けられ物体による遮蔽を検知する光電ビームを設けた様子が、示されている。


(8)甲第8号証
摘記は省略するが、甲第8号証の図1には次の図示があり、機械式駐車場において、適正な位置へと駐車がされた車両により遮られる光電ビーム、及び当該車両の前方並びに後方に設けられ物体による遮蔽を検知する光電ビームを設けた様子が、示されている。


(9)甲第9号証
甲第9号証には、次の記載及び図示がある。


「【0010】
【実施例】以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。図1に示す立体駐車場は、複数個の棚1を上下方向に並べたラック部分に車両Gを収納する車両収納ラックAと、その地上階部分に形成され外部連通口2有し、ドライバーによって前記車両Gが進入され、且つドライバーによって前記車両Gが退出される外部連通部Bと、昇降部3を備え前記車両収納ラックAと前記外部連通部Bとの間にわたり前記車両Gの搬送を行う車両搬送装置Cとを備えて成る。
【0011】以後、本実施例において、外部連通口2より外部連通部Bの奥を臨む方向を立体駐車場の奥行方向とし、前記奥行方向と直交し外部連通口2の開口の横幅にわたる方向を立体駐車場の横幅方向とする。
・・・・・(中略)・・・・
【0015】図3には、外部連通部Bの内部が示されている。昇降部3は、前記ピット4内に降下している。パレットPは、その長手方向を前記奥行方向に向け、入出庫位置としての外部連通部Bのほぼ中央部に載置されている。車両Gは、外部連通口2を通って外部連通部B内に進入し、そのまま直進してパレットP上に搭載される。車両Gが搭載されたパレットPは、その中央部の下方に位置する前記旋回装置5のターンテーブル5aによって持ち上げられ、90度旋回され、更に、図4に示すように、昇降部3が上昇するに伴って、昇降部3上に移載される。図3及び図4中には、各種のセンサーが示されている。これらのセンサーは、すべていわゆるフォト・カプラ型のセンサーで構成され、受光部及び発光部を有し、その光軸が点線で示してある。以下、これらのセンサーについて説明する。
・・・・・(中略)・・・・
【0018】ドア開きセンサー15L,15Rの光軸は、前記パレットPの長手方向両横側縁に沿い、且つ、一般的車両のドアの高さに設定されている。従って、前記パレットPに搭載された車両Gのドアが開いた状態になると、その光軸が遮られて、ドア開きが検出される。
【0019】車ズレセンサー16a,16bの光軸は、昇降部3の長手方向両端縁に沿い、且つ、一般的車両が存在する高さに設定されている。従って、パレットPが前記旋回装置5によって90度旋回された後に、搭載されている車両Gが前後にズレている場合には、その光軸が遮られて、車ズレが検出される。
【0020】左右はみ出しセンサー14L,14Rの光軸は、昇降部3の長手方向両横側縁に沿い、且つ、前記車両存在許容範囲W1の上限高さに設定されている。そして、両センサー14L,14Rの光軸間の間隔は、前記棚1の車両収納空間に基づいて定められた、車両横幅方向に沿う車両存在許容範囲W3の左限界及び右限界を規定している。図4には、昇降部3の上昇が開始された直後の、外部連通部Bの内部が示されている。車両Gは、昇降部3によって上昇されるに伴って、必ず、左右はみ出しセンサー14L,14Rの両光軸間の中間部分を通過する。従って、車両Gのいかなる高さにおいて車両存在許容範囲W3を越えるはみ出し部分が存在していても、昇降部3が上昇するに伴って必ずその光軸が遮られ、車両Gが車両存在許容範囲W3内に位置しないことが検出される。」


図3には、次の図示がある。

図3には、車両の昇降部3の長手方向両横側縁に沿って配置された左右はみ出しセンサー14L及び14Rの光軸が、車両の昇降部3の両横側縁より若干外側に配置された設定、及び、パレットPの長手方向両横側縁に沿って配置されたドア開きセンサー15L及び15Rの光軸が、パレットPの両横側縁より外側に配置された設定が、示されている。

(10)甲第10号証
甲第10号証には、次の記載及び図示がある。


「【0018】一方、車両Vの乗入れ階においては、車両Vが一方(図1で右側)の駐車棚4Rの下方を通って昇降路3に乗り込んで入庫するとともに、該駐車棚4Rの下方を通って出庫するようになっている。また、乗入れ階の昇降路3に対応した箇所には、昇降台2が埋没可能な大きさを有するピット21が形成され、該ピット21内には旋回装置22が設置されている。該旋回装置22は鉛直線廻りに回転可能なターンテーブル22aを有し、該ターンテーブル22aは、昇降台2上に載置されたパレット5が乗入れ階の床面より若干高い車両の乗降高さ位置に位置し昇降台2が更にピット21内に嵌り込むように下降したとき、該昇降台2の内側を通して突出した状態でパレット5を支持するようになっている。そして、パレット5を支持した状態でターンテーブル22aが回転することにより、パレット5及びその上に載置された車両Vの向きを転換する。この車両Vの向きの転換は、乗入れ階で車両Vがターンテーブル22a上のパレット5に対し前進で乗り降りの双方(つまり前進入庫及び前進出庫)をできるようにするとともに、その乗降時の車両Vの向きと昇降台2上に載置して昇降するとき及び駐車棚4L,4Rで駐車するときの車両Vの向きとが直交することに対応するためである。
【0019】そして、本発明の特徴として、上記昇降台2の四つの偶角部には、各々発光部31aと受光部31bとを有する左右一対の光ワイドセンサ31L,31Rの発光部31a及び受光部31bが設けられ、該各光ワイドセンサ31L,31Rの発光部31a及び受光部31bは、昇降台2上のパレット5の側縁から所定距離離れた位置で上下方向に所定の幅を有する光の帯を形成するようになっている。そして、車両Vの乗入れ階で車両Vが昇降台2上のパレット5の一方に片寄って載置され該車両Vの左右いずれか一方のドアミラーmがパレット5の側縁から所定距離以上はみ出したときには、上記光の帯がドアミラーmにより遮られることによりドアミラーmのはみ出しが光ワイドセンサ31L,31Rで検知される。この一対の光ワイドセンサ31L,31Rは、請求項1に係わる発明にいう、ドアミラーmのはみ出しを検出する検出手段を構成している。」


図2には、次の図示がある。

図2には、光ワイドセンサ31L、31Rの光の帯が、パレット5の側縁より外側に配置される設定が、示されている。

(11)甲第11号証
摘記は省略するが、甲第11号証の図1には次の図示があり、機械式駐車場において、適正な位置へと駐車がされた車両により遮られる光電ビーム、及び当該車両の前方並びに後方に設けられ物体による遮蔽を検知する光電ビームを設けた様子が、示されている。



第6 判断
1 本件訂正発明1
(1)先の取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
先の取消理由通知(決定の予告)に記載した、特許法第29条の2(拡大先願)に基く取消理由について、判断する。
ア 先願1発明との対比
先願1発明における「乗降室20」は、本件訂正発明1における「駐車室」に相当し、先願1発明における「機械式駐車装置10」は、本件訂正発明1における「機械式駐車設備」に相当する。
先願1発明において、「車両12がパレット16に載置された後に安全確認プログラムを開始」するからには、先願1発明は明記がなくとも「車両12がパレット16に載置された」ことを検出するセンサを有していると解され、先願1発明における当該センサは、車両がパレット16に載置されたことを検出するものであるから、乗降室20内の検知エリアで物体を検知すると言い得る。また、先願1発明において、「入退室検知センサ36」を構成する「入出庫口30の内側に設けられたセンサ36A」も、乗降室20内の手前側で検知を行うから、乗降室20内の検知エリアで検知を行うと言い得る。また、先願1発明において、「車幅規制センサ70」は、「検知のために照射部70Aが照射し受光部70Bが受光する光線」が「乗降室20内」に位置するから、乗降室20内で検知を行うと言い得る。そのため、先願1発明におけるこれらのセンサ群は、本件訂正発明1における「駐車室内の検知エリア」を有する「センサ」に相当する。そして、先願1発明において、「安全確認プログラム」が開始されると「安全確認処理が終了」するまで「パレット16の搬送」は行われないから、「車両12がパレット16に載置された」ことが前述したセンサにより検出され、その「後」に「安全確認プログラム」が「開始」されること、並びに、安全確認処理の途中で「入退室検知センサ36が入室を検知」したり「車幅規制センサ70がセンサ信号を出力」すれば「確認ボタン34への入力を全て解除」して「安全確認プログラムを開始」した時点に戻ることは、本件訂正発明1において「駐車室内の検知エリアでセンサが物体を検知する」ことで「運転ロック」がかかることに相当する。
そして、先願1発明において、「明滅している確認ボタン34が押圧されると、当該確認ボタン34を消灯し、明滅する確認ボタン34が全て消灯すると、最終確認ボタン40への操作を有効とし、有効な最終確認ボタン40が押圧されると、安全確認処理を終了」することは、本件訂正発明1において、「有効な安全確認操作部を操作することで前記運転ロックが解除される」ことに相当する。
先願1発明において、「機械式駐車装置10」が有する、安全確認のために用いられる「確認ボタン34」、「最終確認ボタン40」、「入退室検知センサ36」「車幅規制センサ70」「CPU52を備える制御装置50」「安全確認プログラム」を含む一連の手段は、本件訂正発明1における「安全確認装置」に相当する。
次に、先願1発明における、「センサ36Bからセンサ36Aとを有する入退室検知センサ36であり、入出庫口30の内側に設けられたセンサ36Aは、乗降室20内の手前側かつパレット16より外側で検知を行い、入出庫口30の外側に設けられたセンサ36Bは、乗降室20外で検知を行い、センサ36Bからセンサ36Aの順で人を検知した場合、乗降室20へ人が入室したと検知し、センサ36Aからセンサ36Bの順で人を検知した場合、乗降室20から人が退室したと検知する、入退室検知センサ36」は、本件訂正発明1における、「前記駐車室の入出庫口において人の入退室を検知する入出庫口センサ」に相当する。
そして、先願1発明における「車幅規制センサ70」は、「入退室検知センサ36」とは別途のセンサであるから、本件訂正発明1において「入出庫口センサ」を備えたうえで「さらに少なくとも前記駐車室内の車両配置部より外側の周囲に設定された複数の検知エリアにおいて物体を検知するそれぞれのセンサ」とは、まず「さらに少なくとも」備える「センサ」という点で、共通する。また、先願1発明における「車幅規制センサ70」は、「一対の光線を照射する照射部70A及び光線を受光する受光部70B」を、「車両12の両側」に、「パレット16に載置可能な車両12の最大車幅に相当する間隔で配置し、検知のために照射部70Aが照射し受光部70Bが受光する光線が、乗降室20内で、かつパレット16の両側の外周近傍に位置する」ものであるから、検知を行う箇所は、パレット16より外側かという点をひとまず措くとして、パレット16の周囲の複数箇所であり、かつ乗降室20内と言うことができる。そのため、先願1発明における「車幅規制センサ70」は、本件訂正発明1における「駐車室内の車両配置部」「の周囲に設定された複数の検知エリアにおいて物体を検知するそれぞれのセンサ」に相当する。すなわち、先願1発明が前述の「入退室検知センサ36」の他に、「一対の光線を照射する照射部70A及び光線を受光する受光部70B」を備えた「車幅規制センサ70」を有する構成と、本件訂正発明1が「入出庫口センサを備え、さらに少なくとも前記駐車室内の車両配置部より外側の周囲に設定された複数の検知エリアにおいて物体を検知するそれぞれのセンサ」を備える構成とは、「入出庫口センサを備え、さらに少なくとも前記駐車室内の車両配置部の周囲に設定された複数の検知エリアにおいて物体を検知するそれぞれのセンサ」を有する点で共通する。
先願1発明において、「安全確認の実施位置の近傍に配置され、人による安全確認の実施状況が入力される・・・・確認ボタン34、並びに・・・・最終確認ボタン40」は、本件訂正発明1における「複数の検知エリアをそれぞれ見渡せる位置に配置された各々の安全確認操作部」に相当する。
先願1発明において、「車両12がパレット16に載置された後に、車幅規制センサ70が、開かれたドアまたは降車する運転手を検知して右側あるいは左側を運転席側と判定すると、運転席側に対して反対側の確認ボタン34を明滅させ、車両12の両側で検知が行われ運転席側を判定できない場合には両側の確認ボタン34A及び34Bを共に明滅」させることと、本件訂正発明1において、「前記複数の検知エリアにおける物体の検知状況に応じて、該物体を検知した前記検知エリアを見渡せる位置に配置された前記各々の安全確認操作部を有効に」することとは、「前記複数の検知エリアにおける物体の検知状況に応じて前記各々の安全確認操作部を有効に」する点で共通する。
先願1発明において、「明滅している確認ボタン34が押圧されると、当該確認ボタン34を消灯し、明滅する確認ボタン34が全て消灯すると、最終確認ボタン40への操作を有効とし、有効な最終確認ボタン40が押圧されると、安全確認処理を終了」することは、本件訂正発明1において、「有効な安全確認操作部が操作されると該安全確認操作部を無効にし、全ての安全確認操作部が無効になると前記運転ロックを解除する」ことに相当する。また、先願1発明において、前述の安全確認処理が「CPU52を備える制御装置50」を用いて行われることは、本件訂正発明1が、安全確認のための処理を行う「制御装置」を備えることに相当する。

すなわち、先願1発明と本件訂正発明1とは、
「駐車室内の検知エリアでセンサが物体を検知することで運転ロックがかかり、有効な安全確認操作部を操作することで前記運転ロックが解除される機械式駐車設備の安全確認装置であって、
前記駐車室の入出庫口において人の入退室を検知する入出庫口センサを備え、さらに少なくとも前記駐車室内の車両配置部の周囲に設定された複数の検知エリアにおいて物体を検知するそれぞれのセンサと、
前記複数の検知エリアをそれぞれ見渡せる位置に配置された各々の安全確認操作部と、
前記複数の検知エリアにおける物体の検知状況に応じて前記各々の安全確認操作部を有効にし、有効な安全確認操作部が操作されると該安全確認操作部を無効にし、全ての安全確認操作部が無効になると前記運転ロックを解除する、制御装置と、を備えている、安全確認装置。」
の点で一致し、両者は次の点で相違または一応相違する。

<相違点1>
本件訂正発明1では、「車両配置部」の「周囲に設定された複数の検知エリアにおいて物体を検知するそれぞれのセンサ」について、検知エリアが「車両配置部より外側の周囲」に設定されたと特定されているのに対し、
先願1発明では、「一対」の「光線を照射する照射部70A及び光線を受光する受光部70B」を備えた「車幅規制センサ70」が、「パレット16に載置しようとする車両12の車幅が、最大車幅を超えることを規制するとともに、開かれたドアまたは降車する運転手を検知する」ために、「車両12の両側」に「パレット16に載置可能な車両12の最大車幅に相当する間隔」で、「検知のために照射部70Aが照射し受光部70Bが受光する光線」がパレット16の両側の外周近傍に位置するように配置されてはいるものの、当該検知のための光線がパレット16より外側に位置するようには設定されていない点。

<相違点2>
安全確認操作部を有効にする制御について、
本件訂正発明1では、「制御装置」が、上記相違点1の「それぞれのセンサ」が担当する「複数の検知エリアにおける物体の検知状況」に応じて、「該物体を検知した前記検知エリアを見渡せる位置に配置された」安全確認操作部を有効にするのに対し、
先願1発明では、「車幅規制センサ70」が「開かれたドアまたは降車する運転手を検知して右側あるいは左側を運転席側と判定すると、運転席側に対して反対側の確認ボタン34を明滅させ、車両12の両側で検知が行われ運転席側を判定できない場合には両側の確認ボタン34A及び34Bを共に明滅」させる制御が行われる点。

イ 相違点についての判断
(ア)相違点1について
上記相違点1について判断する。
先願1発明における「車幅規制センサ70」は、「パレット16に載置しようとする車両12の車幅が、最大車幅を超えることを規制」するものであるところ、例えば、
a 上記第5の2(2)ア(エ)に摘記した甲第2号証の図13に、パレット22に対して車長を制限する前部車長制限光電管14の光軸dが、パレット22より外側の前方位置に配置され、また後部車長制限光電管12の光軸cが、パレット22より外側の後部位置に配置された設定が図示され、
b 上記第5の2(4)ウに摘記した甲第4号証の図2に、ケージ2に対して自動車3の停止位置が前方又は後方に偏っていることを検知する光電装置PH1及びPH2が、ケージ2より外側の前方位置及び後方位置を検知位置とするよう配置された設定が図示され、
c 上記第5の2(5)イに摘記した甲第5号証の図2に、ケージ9の左右両側部に対応して配置されたサイド食み出し検知部P5及びP6のビームが、ケージ9上の車台11の左右両端近傍で、車台11より内側から、車台11より外側へと移行するように配置された設定が図示され、
d 上記第5の2(9)イに摘記した甲第9号証の図3に、車両の昇降部3の長手方向両横側縁に沿って配置された左右はみ出しセンサー14L及び14Rの光軸が、車両の昇降部3の両横側縁より若干外側に配置された設定、及び、パレットPの長手方向両横側縁に沿って配置されたドア開きセンサー15L及び15Rの光軸が、パレットPの両横側縁より外側に配置された設定が図示され、
e 上記第5の2(10)アに摘記した甲第10号証の段落【0019】に、パレット5の側縁から車両Vのドアミラーmが所定距離以上はみ出したことを検知する光ワイドセンサ31L、31Rを、パレット5の側縁から所定距離離れた位置で光の帯を形成するように配置することが記載され、また同イに摘記した甲第10号証の【図2】に、光ワイドセンサ31L、31Rの光の帯が、パレット5の側縁より外側に配置される設定が図示されるように、
車両の大きさ及び配置位置を適正な範囲へと規制するセンサの検知位置を、車両を配置するパレット、ケージあるいは昇降部の境界付近で、境界より若干内側と設定すること、及び境界より若干外側と設定することは、いずれも発明を具体的に実施する上で、状況に応じて適宜に選択される微差に過ぎない。
そのうえで、先願1発明における「車幅規制センサ70」について検討すると、「パレット16に載置しようとする車両12の車幅が、最大車幅を超えることを規制」するという機能からすれば、車両12の車幅が許容される最大車幅を超えることが検知できる範囲で、センサの光線をパレット16の端部付近でパレット16より内側に設定すること、及びパレット16より外側に設定することは、いずれも発明の実施に際して適宜に設定される具体的微差に過ぎない。また、先願1発明における「車幅規制センサ70」が有する、「開かれたドアまたは降車する運転手を検知する」という機能について検討しても、開かれたドアあるいは降車する運転手を検知するうえで、「車幅規制センサ70」の光線をパレット16より内側に配置する必然性はなく、当該検知が適切に行われる範囲でセンサの光線をパレット16より内側に設定すること、及びパレット16より外側に設定することは、いずれも発明の実施に際して適宜に設定される具体的微差に過ぎない。
したがって、上記相違点1は、一応の相違点として検討したが、先願1発明の実施に際して適宜に選択される具体的微差に過ぎず、実質的な相違点ではない。

(イ)相違点2について
上記相違点2について判断する。
先願1発明における、「車幅規制センサ70」が「開かれたドアまたは降車する運転手を検知して右側あるいは左側を運転席側と判定すると、運転席側に対して反対側の確認ボタン34を明滅させ、車両12の両側で検知が行われ運転席側を判定できない場合には両側の確認ボタン34A及び34Bを共に明滅させ」る、という制御は、上記第5の2(1)ア(ウ)に摘記した明細書の段落【0087】に、「そして、CPU52は、車両12の運転席側に対して反対側に配置された確認ボタン34を明滅させることによって、その確認ボタン34への入力を運転者へ促す。すなわち、運転席が車両12の右側であると判定された場合は、確認ボタン34Bが明滅し、運転席が車両12の左側であると判定された場合は、確認ボタン34Aが明滅する。これにより、車両12の運転者が運転席側から車両12の反対側まで移動することとなり、乗降室20内の安全確認がより広い範囲で行われる。」と記載されているように、物体を検知した検知エリアとは反対側の安全確認操作部を有効として、安全確認及び安全確認操作を行わせるための制御である。そのため、先願1発明の当該制御は、上記相違点2に係る本件訂正発明1における、「複数の検知エリアにおける物体の検知状況に応じて、該物体を検知した前記検知エリアを見渡せる位置に配置された前記各々の安全確認操作部を有効に」する制御とは、検知エリアの「検知状況」とそれに対して「有効」にする安全確認操作部との関係が、逆である。また、先願1発明において「車両12の両側で検知が行われ運転席側を判定できない場合」に「両側の確認ボタン34A及び34Bを共に明滅させ」る点について検討しても、この場合には、各検知が行われた箇所の反対側の確認ボタンを各々明滅させるという制御によって、検知が行われた箇所と同じ側の確認ボタンも結果的に明滅しているだけであるから、確認ボタンの明滅が当該確認ボタンと同じ側における検知に基づいてなされる、という制御が行われていることにはならない。
以上のとおり、相違点2は、「前記複数の検知エリアにおける物体の検知状況」に応じて、いずれの「安全確認操作部を有効」にするか、という「制御装置」の制御動作について、先願1発明における制御動作とは異なる関係を特定した構成であるから、単なる形式的な相違点ではない。
したがって、相違点2は実質的な相違点である。

(ウ)小括
上記(イ)のとおり、相違点2は実質的な相違点であるから、本件訂正発明1は先願1発明と同一ではない。

ウ 申立人の主張について
上記相違点2に係る申立人の主張について、検討する。

(ア)
申立人は、令和1年11月14日付けの意見書において、甲第1号証には、段落【0100】-【0101】に、「本第4実施形態に係るCPU25は、図4のステップ100からステップ108の間、すなわち確認ボタン34への入力後から最終確認ボタン40への操作の間に、車幅規制センサ70の光線が遮られ、車幅規制センサ70がセンサ信号を出力した場合、運転者以外の人が乗降室20内に居残っていると判定する。そして、CPU25は、確認ボタン34への入力を全て解除する。」、「機械式駐車装置10は、その後再び運転者により確認ボタン34への入力が行われ、入退室検知センサ36の検知結果が運転者の退室を検知し、さらに最終確認ボタン40への入力が行われた後に動作する。このように、本実施形態に係る機械式駐車装置10は、同乗者が車両12に居残っていた場合、同乗者の乗降室20からの退室確認を含む乗降室20内の安全確認が再び必要とされるため、より確実に乗降室20内の安全性が確保される。」と記載されるように、いずれかの検知エリアで物体が検知された場合には全ての確認ボタンを有効化する構成が示されている旨を主張している。そして申立人は、上記相違点2に係る本件訂正発明1の構成について、「物体を検知した前記検知エリアを見渡せる位置に配置された前記各々の安全確認操作部を有効にし」との記載は、物体を検知した検知エリアを見渡せない位置に配置された安全確認操作部の有効化については何ら規定していないから、いずれかの検知エリアで物体が検知された場合には全ての安全確認操作部を有効にする制御も、上記相違点2に係る本件訂正発明1の構成に相当するものであり、当該相違点2に係る構成に相当する構成は、甲第1号証に記載されている旨を主張している(同意見書第7頁第1行-第8頁第6行)。
しかしながら、甲第1号証の段落【0100】に記載される制御内容は、確認ボタン34への入力後から最終確認ボタン40への操作の間に、車幅規制センサ70がセンサ信号を検出した場合、「確認ボタン34への入力を全て解除する」というものであるから、車幅規制センサ70による当該検知より以前に有効化されており、かつ入力がされていた確認ボタン34について、入力が解除され再び有効化することを示しているとしても、車幅規制センサ70による当該検知より以前に有効化されかつ入力がされていたか否かに関係なく、全ての確認ボタン34を有効化することが、甲第1号証の当該段落【0100】に示されているものではない。また、甲第1号証の段落【0101】における「このように、本実施形態に係る機械式駐車装置10は、同乗者が車両12に居残っていた場合、同乗者の乗降室20からの退室確認を含む乗降室20内の安全確認が再び必要とされるため、より確実に乗降室20内の安全性が確保される。」との記載から、段落【0100】における「確認ボタン34への入力後から最終確認ボタン40への操作の間に、車幅規制センサ70の光線が遮られ、車幅規制センサ70がセンサ信号を出力した場合・・・CPU25は、確認ボタン34への入力を全て解除する。」という動作に際して、いずれの箇所の車幅規制センサ70が信号を出力したかによらず全ての確認ボタン34を有効化することが示唆されていたとしても、いずれの検知エリアで検知がされたかによらず全ての安全確認ボタンを有効とする、という制御は、本件訂正発明1における「前記複数の検知エリアにおける物体の検知状況に応じて、該物体を検知した前記検知エリアを見渡せる位置に配置された前記各々の安全確認操作部を有効に」する、という制御とは、検知が行われた検知エリアに対して有効にする安全確認操作部の関係が異なるから、制御内容として同一ということはできない。

(イ)
また、申立人は、仮に本件訂正発明1における「前記複数の検知エリアにおける物体の検知状況に応じて、該物体を検知した前記検知エリアを見渡せる位置に配置された前記各々の安全確認操作部を有効に」する、という構成が、物体を検知した検知エリアを見渡せる位置に配置された安全確認操作部のみを有効にする趣旨と限定的に解されるとしても、乗降室内の安全確保という目的を達成するために、乗降室内で物体が検知された場合に、全ての確認ボタンを有効化して全領域についての確認をまんべんなく行わせるのか、物体が検知された検知エリアを見渡せる位置に設けられた確認ボタンのみを有効化して安全確認の範囲を最小限にとどめるのかは、要求される安全確保のレベルに応じて適宜選択される具体的微差に過ぎないから、相違点2は実質的な相違点でない旨も主張している(同意見書第8頁第7行-第14行)。
しかしながら、先願1発明は、検知が行われた位置と明滅させる確認ボタンの位置との対応関係の選択については、上記イ(イ)に説示したとおり、物体を検知した検知エリアとは反対側の安全確認操作部を有効とするものであり、本件訂正発明1における「複数の検知エリアにおける物体の検知状況に応じて、該物体を検知した前記検知エリアを見渡せる位置に配置された前記各々の安全確認操作部を有効に」する制御とは逆の選択に基づく制御を行っているから、両者の相違を適宜選択される微差ということはできない。なお、申立人が主張する、検知が行われれば全ての確認ボタンを有効化する、という制御態様についても、検知がなされた場所と有効化する確認ボタンとの対応について、両者の位置関係を離れた制御内容となるから、仮にそのような制御を考慮に含めて検討しても、甲第1号証に記載された制御と、本件訂正発明1における「複数の検知エリアにおける物体の検知状況に応じて、該物体を検知した前記検知エリアを見渡せる位置に配置された前記各々の安全確認操作部を有効に」する制御とが、実質的に同一である旨をいう申立人の主張は、採用することができない。

(ウ)
さらに、申立人は、甲第1号証には、段落【0072】-【0077】に、「入退室検知センサ36」によって乗降室20内への人の入室が検知された場合に、確認ボタン34A、34Bが有効化されることが記載されており、図2における確認ボタン34Bや図9における左右後方部の確認ボタンは「入退室検知センサ36」が有する「センサ36A」によって物体が検知される検知エリアである乗降室内の後部を見渡せる位置にあるから、甲第1号証には「乗降室内の後部において物体を検知するセンサ36Aによって物体が検知された場合に、物体を検知した乗降室内の後部を見渡せる位置に配置された確認ボタン34を有効化させる」構成が記載されており、本件訂正発明1の上記相違点2に係る構成に相当する構成は甲第1号証に記載されている旨も主張している(同意見書第8頁下から1行-第9頁下から6行)。
しかしながら、本件訂正発明1においては、「前記駐車室の入出庫口において人の入退室を検知する入出庫口センサを備え、さらに少なくとも前記駐車室内の車両配置部より外側の周囲に設定された複数の検知エリアにおいて物体を検知するそれぞれのセンサ」と記載されたうえで、相違点2に係る「前記複数の検知エリアにおける物体の検知状況に応じて、該物体を検知した前記検知エリアを見渡せる位置に配置された前記各々の安全確認操作部を有効にし、」という構成を有するから、「複数の検知エリアにおいて物体を検知するそれぞれのセンサ」は「駐車室の入出庫口において人の入退室を検知する入出庫口センサ」とは区別されるものであり、甲第1号証における「入退室検知センサ36」に関する処理は、申立人が主張するように相違点2に係る本件訂正発明1の構成に相当するものではない。また、申立人が主張する甲第1号証の段落【0072】-【0077】及び図2、図9等を参照しても、検知を行うセンサの位置に応じて有効化する確認ボタンの位置の選択に関して、上記第5の2(1)イに認定したと反対の対応関係を示すような記載はなく、その点からも甲第1号証に相違点2に係る本件訂正発明1の構成が示されている旨をいう申立人の主張は採用することができない。

(エ)
以上のとおりであるから、上記相違点2に係る本件訂正発明1の構成に関して、申立人のいずれの主張を検討しても、上記イ(イ)と異なる判断をすべき事情を見いだすことはできない。

(2)先の取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
ア 特許法第36条第6項第2号について
申立人は申立書において、訂正前の本件発明1では、「駐車室内」で「複数の検知エリアにおいて物体を検知するそれぞれのセンサ」を有し、「前記複数の検知エリアをそれぞれ見渡せる位置に配置された各々の安全確認操作部と、前記複数の検知エリアにおける物体の検知状況に応じて前記各々の安全確認操作部を有効にし、有効な安全確認操作部が操作されると該安全確認操作部を無効にし、全ての安全確認操作部が無効になると前記運転ロックを解除する、制御装置と」を備えているところ、物体を検知したセンサと有効化される安全確認操作部との関係を特定しておらず、安全確認操作部の設置位置についても特定していないから、例えば、全ての安全確認操作部が駐車室の内部にあり、入出庫口センサ34が退出しようとする運転手を検知して安全確認操作部を有効化し、無限ループに陥る場合を含むから、どのようにすれば「複数の検知エリアにおける物体の検知状況に応じて各々の安全確認操作部を有効化」することができるのか不明である旨を主張していた。そして、訂正前の本件発明1では、明らかに必要とされる発明特定事項が欠落しており、発明特定事項に技術的な不備があることが明らかであるから、本件発明1は不明確である旨を主張している(申立書第26頁第3行-第27頁第4行)。
しかしながら、本件訂正発明1において、駐車室内に安全確認操作部を設け、入出庫口に設けたセンサにより駐車室から退出しようとする運転手を検知し、退出しようとする運転手が検知されれば全ての安全確認操作部を無条件に必ず有効化することが特定されているものではないから、申立人の当該主張は、請求項1に特定されていない複数の条件を互いに矛盾が生じる形で同時に追加した場合に依拠した仮想上のものであって、請求項1の記載を離れており失当である。
またこれに関して、本件明細書の段落【0085】には、「左前部安全確認ボタン53又は右前部安全確認ボタン54を押した人が退出するまでの一定時間、又はその人が後部センサ33及び入出庫口センサ34を通過して退出したことを検知するまでは、左部センサ30及び右部センサ31を無効化して再び検知しないように制御すればよい。」として、安全確認ボタンを押した者が退出する経路上にセンサがある場合の一つの解決法が示されている。また、センサと安全確認ボタンの配置及び対応関係を適宜に選択することにより、申立人が主張するような矛盾を生じないように、安全確認装置を動作させることも可能であることは明らかであるとともに、動作時に矛盾を生じないセンサ及び安全確認操作部の配置や対応関係を請求項において全て個別に限定することなく、発明を実施する者の選択に任せていることによって、本件訂正発明1が第三者の利益を不当に害する程に不明確になっているものではない。
また、申立人は令和1年6月27日付け意見書において、本件訂正発明1も有する「車両配置部より外側」との特定事項について、「車両配置部」は車両が実際に配置された領域であり、車両の大きさによって変化するから、かように変化する「車両配置部」より外側とは、どの範囲を特定しているのか明確でない旨も主張している(同意見書第2頁第21行-第3頁第3行)。
しかしながら、本件訂正発明1は「機械式駐車設備」の「安全確認装置」であり、「車両配置部」も駐車する車の大きさに応じて定まるものではなく、「機械式駐車設備」の有する「車両配置部」であると解することが自然である。またそのような解釈は、明細書の段落【0038】における「・・・中央部に設けられた車両配置部(例えば、パレット)5・・・」との記載、並びに図面の図1,4,6,8-11の全てにおいて「車両配置部5」と車両Vが実際に占める領域とが区別されている様子とも整合する。したがって、本件訂正発明1における「車両配置部」及び「車両配置部より外側」なる事項について、申立人が主張する不明確はない。
したがって、本件訂正発明1は、申立人が主張する点で発明が不明確ということはできず、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしている。

イ 特許法第36条第6項第1号について
申立人は申立書において、訂正前の本件発明1について、「全ての安全確認操作部が無効になると前記運転ロックを解除する」から、全ての安全確認操作部が駐車室内に配置され、かつ運転手が駐車室内に残ったまま、全ての安全確認操作部を無効として運転ロックが解除され、安全性を確保できない場合も生じ得る旨を主張している。そして、本件発明1は、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えているから、発明の詳細な説明に記載したものではないと主張している(申立書第26頁第3行-第27頁第4行)。
しかしながら、当該申立人の主張も、上記アの主張と同様、請求項1に特定されていない不利な条件を追加すれば、完全な安全性が確保できない状況を創出し得るというものに止まり、請求項1の記載を離れたものである。また当該申立人の主張は、本件訂正発明1が解決しようとする課題について、請求項に特定のないどのような不利な条件を追加しても必ず完全な安全性を確保することであると、極端に狭く解することに依拠したものであるところ、本件訂正発明1が解決しようとする課題を、そのように狭く解することについても、根拠が無い。
そして、本件訂正発明1においては、請求項1に特定されるようにセンサと安全確認操作部とを組み合わせた安全確認装置を採用すれば、明細書の段落【0002】-【0006】に記載される背景技術との関係で、何らかの点で有利な安全確認が可能になると理解することができるから、発明の課題が解決できると当業者が認識できる範囲を超えているものではない。
また、申立人は令和1年6月27日付け意見書において、本件訂正発明1も有する「車両配置部」との構成について、明細書には「車両配置部」の具体例としてパレットのみが記載されているから、パレット以外のものを含む「車両配置部」は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えている旨も主張している(同意見書第3頁第21行-第16行)。
しかしながら、本件明細書には、段落【0037】にも「・・・車両配置部(例えば、パレット)5・・・」と記載されるとおり、「車両配置部」自体が明記されたうえで、その例示として「パレット」が示されているものであり、例示の一つとしてパレットを示したことにより、「車両配置部」自体が本件明細書に記載されていないこととなるような事情はないから、申立人の主張は失当である。
したがって、本件訂正発明1は、申立人が主張する点で、発明の詳細な説明に記載されていないものではなく、特許法第36条第6項第1号の要件を満たしている。

ウ 特許法第29条第2項について
申立人は申立書において、訂正前の本件発明1は、甲2発明及び甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正発明1に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである旨を主張している(申立書第14頁第20行-第17頁第4行、第19頁第14行-第21頁第8行)。
上記第2のとおり、本件訂正請求による訂正は認められたので、本件訂正発明1の進歩性について判断する。

(ア)本件訂正発明1と甲2発明との対比
本件訂正発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明における「立体駐車装置」は、「プログラマブルコントローラ2」により「起動」したり「ドアを閉める」処理が可能であるから、機械式の設備を備えた駐車装置ということができ、本件訂正発明1における「機械式駐車設備」に相当する。
甲2発明における「立体駐車装置」が備える「安全確認ボタン」及び「操作盤7」は、安全のための装置群と把握することができ、当該安全のための装置群は、本件訂正発明1における「安全確認装置」に相当する。
甲2発明における「車両入退室110」は、本件訂正発明1における「駐車室」に相当し、甲2発明における「車両入退室110の内部」は、本件訂正発明1における「駐車室内」に相当する。甲2発明における「パレット22」は、本件訂正発明1における「車両配置部」に相当する。
甲2発明における「入出庫口にごく近い位置に設けられ車両入退室110内に出入りする利用者や車両を検知する車両入退室チェック光電管11」は、本件訂正発明1における「駐車室の入出庫口において人の入退室を検知する入出庫口センサ」に相当する。
甲2発明において、「車両入退室110内の人の存在を検知するために、検知エリア15A及び16Aがパレット22より外側の右側かつ車両入退室110内に設定された前配置右側人検知センサ15及び後配置右側人検知センサ16、検知エリア17A及び18Aがパレット22より外側の左側かつ車両入退室110内に設定された前配置左側人検知センサ17及び後配置左側人検知センサ18」は、本件訂正発明1における「駐車室内の検知エリア」を有する「センサ」、及び、「さらに少なくとも前記駐車室内の車両配置部より外側の周囲に設定された複数の検知エリアにおいて物体を検知するそれぞれのセンサ」に相当する。
甲2発明において、「車両が右ハンドルの場合、運転者が前配置右側人検知センサ15および後配置右側人検知センサ16の検知エリアに車両から降りると、前配置右側人検知センサ15および後配置右側人検知センサ16が運転者を検知して、プログラマブルコントローラ2に信号を伝え、立体駐車装置が起動しないように処理」することは、車両が左ハンドルの場合に「前配置左側人検知センサ17および後配置左側人検知センサ18」が「運転者を検知」した場合も同様と解され、甲2発明における当該構成は、本件訂正発明1における「駐車室内の検知エリアでセンサが物体を検知することで運転ロックがかか」る構成に相当する。
甲2発明において、「操作盤7」に備えて「運転者」が押す「安全確認ボタン」は、本件訂正発明1における「安全確認操作部」に相当し、甲2発明が「運転者」が押す「安全確認ボタン」を備える構成と、本件訂正発明1が「操作」される「安全確認操作部」を備えることは、「操作される安全確認操作部」を備える点で共通する。
甲2発明において、「プログラマブルコントローラ2」は、立体駐車装置を起動しないように処理したり、起動できるように処理したりするから、制御を行っており、本件訂正発明1における「制御装置」に相当する。
甲2発明において、「立体駐車装置」の「ドアを閉めることにより、車両の立体駐車装置への入庫が完了」する前に、「プログラマブルコントローラ2」が「立体駐車装置が起動できるように」「処理」を行うことは、本件訂正発明1において、「制御装置」が「前記運転ロックを解除する」ことに相当する。また、甲2発明において、「プログラマブルコントローラ2」が「立体駐車装置が起動できるように」「処理」を行う前に「安全確認ボタン」が「押」されることと、本件訂正発明1において「有効な安全確認操作部を操作することで前記運転ロックが解除される」こととは、「前記運転ロックの解除のために操作される安全確認操作部」を備える点で、共通する。

以上より、甲2発明と本件訂正発明1とは、
「駐車室内の検知エリアでセンサが物体を検知することで運転ロックがかかり、前記運転ロックの解除のために操作される安全確認操作部を有する、機械式駐車設備の安全確認装置であって、
前記駐車室の入出庫口において人の入退室を検知する入出庫口センサを備え、さらに少なくとも前記駐車室内の車両配置部より外側の周囲に設定された複数の検知エリアにおいて物体を検知するそれぞれのセンサと、
前記運転ロックを解除する制御装置とを備えている、安全確認装置。」
の点で一致し、両者は次の点で相違する。

<相違点3>
本件訂正発明1では、「前記複数の検知エリアをそれぞれ見渡せる位置に配置された各々の安全確認操作部」を備えたうえで、「前記複数の検知エリアにおける物体の検知状況に応じて、該物体を検知した前記検知エリアを見渡せる位置に配置された前記各々の安全確認操作部を有効に」し、「有効な安全確認操作部が操作されると該安全確認操作部を無効にし、全ての安全確認操作部が無効になると前記運転ロックを解除する」形で「有効な安全確認操作部を操作することで前記運転ロックが解除される」のに対し、
甲2発明では、操作盤7に安全確認ボタンが存在するものの、「各々の安全確認操作部」が「前記複数の検知エリアをそれぞれ見渡せる位置に配置され」ておらず、「前記複数の検知エリアにおける物体の検知状況に応じて、該物体を検知した前記検知エリアを見渡せる位置に配置された前記各々の安全確認操作部を有効にし、有効な安全確認操作部が操作されると該安全確認操作部を無効にし、全ての安全確認操作部が無効になると前記運転ロックを解除する」形で「有効な安全確認操作部を操作することで前記運転ロックが解除される」という制御を行っていない点。

(イ)相違点についての判断
上記相違点3について判断する。
上記第5の2(3)ウに認定した甲3発明は、駐車装置において、操作盤を乗降室内の状況、並びに人および自動車の出入りの状況が目視によって確認できる位置に設けたうえで、「部分的に目視できない領域については、無人確認入力機、センサー等の安全装置を補助的に設け目視確認の補助を行う」構成を有しており、当該構成が有する「無人確認入力機」は、「無人」である「確認」を「入力」するものであるから、相違点3に係る本件訂正発明1の構成における「安全確認操作部」に相当すると解される。
しかしながら、甲3発明の上記構成は、「目視確認」の「補助」として「無人確認入力機」や「センサー等」の使用を示すに止まるところ、甲2発明はセンサとして「前配置右側人検知センサ15、後配置右側人検知センサ16、前配置全体人検知センサ17、後配置左側人検知センサ18、右配置全体人検知センサ19および左配置全体人検知センサ20」を備え、かつ運転者が「操作盤7で安全確認ボタンを押し」た際に、これらのセンサが「作動していなければ、立体駐車装置が起動できるようにプログラマブルコントローラ2で処理を行な」うという形で、センサを目視確認の補助として使用しているから、当該甲2発明において、さらに甲3発明が有する「無人確認入力機」を追加して採用し、かつ甲2発明が有する「センサ」と連動させて相違点3に係る本件訂正発明1の処理を行う動機付けがあるということはできない。また、甲第2号証、甲第3号証の1及び2、並びにその他の証拠の記載を検討しても、甲2発明に甲3発明の「無人確認入力機」を追加し、かつ相違点3に係る本件訂正発明1の処理を行う形でセンサと「無人確認入力機」とを連携させることが、示唆されていたということはできない。
したがって、本件訂正発明1は、甲2発明及び甲3発明に基いて、本願出願日前に当業者が容易に発明をすることができたものではなく、本件訂正発明1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

2 本件訂正発明2
(1)先の取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
先の取消理由通知(決定の予告)に記載した、特許法第29条の2(拡大先願)に基く取消理由について、検討する。
本件訂正発明2は、本件訂正発明1の構成を全て有したうえで、さらに限定を加えたものであるところ、本件訂正発明1が有する上記1(1)アに認定した相違点2に係る構成は、上記1(1)イ(イ)に判断したとおり、先願1発明との実質的な相違点である。
したがって、本件訂正発明2における付加的限定について検討することを要さず、本件訂正発明2は、先願1発明と同一でない。

(2)先の取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
ア 特許法第36条第6項第2号について
申立人は申立書において、訂正前の本件発明2は、訂正前の本件発明1と同様の理由により、不明確である旨を主張している(申立書第26頁第3行-第27頁第4行)。
しかしながら、上記1(2)アで指摘したとおり、本件訂正発明1について、申立人が主張する点で不明確ということはできないから、本件訂正発明2についても、同様に申立人が主張する点で不明確ということはできない。
したがって、本件訂正発明2は、申立人が主張する点で発明が不明確ということはできず、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしている。

イ 特許法第36条第6項第1号について
申立人は申立書において、訂正前の本件発明2は、訂正前の本件発明1と同様の理由により、発明の詳細な説明に記載したものではない旨を主張している(申立書第26頁第3行-第27頁第4行)。
しかしながら、上記1(2)イで指摘したとおり、本件訂正発明1について、申立人が主張する点で発明の詳細な説明に記載されていないものではないから、本件訂正発明2についても、同様に申立人が主張する点で発明の詳細な説明に記載されていないものではない。
したがって、本件訂正発明2は、申立人が主張する点で発明の詳細な説明に記載されていないものではなく、特許法第36条第6項第1号の要件を満たしている。

ウ 特許法第29条第2項について
申立人は申立書において、訂正前の本件発明1を引用する本件発明2は、甲2発明及び甲3発明、並びに、駐車装置内で構造上自動車3の影に隠れるような死角の安全確認がつい疎かになりがちであるという、例えば甲第4号証の段落【0007】にも示される技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨を主張する(申立書第17頁第6行-第18頁第3行、第21頁第17行-第22頁第23行)。
上記第2のとおり、本件訂正請求による訂正は認められたので、本件訂正発明2の進歩性について判断する。
上記1(2)ウで判断したとおり、本件訂正発明1が甲2発明に対して有する上記相違点3に係る構成について、甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということができず、また駐車装置内で構造上自動車の影に隠れるような死角の安全確認がつい疎かになりがちであるということが技術常識であったとしても、上記相違点3に係る本件訂正発明1の構成に至ることが甲3発明及び当該技術常識に基いて容易ということはできないから、本件訂正発明1をさらに限定した本件訂正発明2について、甲2発明及び甲3発明並びに申立人が主張する技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、本件訂正発明2は、甲2発明及び甲3発明並びに甲第4号証に示される技術常識に基いて、本願出願日前に当業者が容易に発明をすることができたものではなく、本件訂正発明2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

3 本件訂正発明3
先の取消理由通知(決定の予告)において、本件訂正発明3については取消理由を通知していない。先の取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について、以下に判断する。

(1)特許法第36条第6項第2号について
申立人は申立書において、訂正前の本件発明3は、訂正前の本件発明1と同様の理由により、不明確である旨を主張している(申立書第26頁第3行-第27頁第4行)。
しかしながら、上記1(2)アで指摘したとおり、本件訂正発明1について、申立人が主張する点で不明確ということはできないと同様に、本件訂正発明3についても、申立人が主張する点で不明確ということはできない。
したがって、本件訂正発明3は、申立人が主張する点で発明が不明確ということはできず、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしている。

(2)特許法第36条第6項第1号について
申立人は申立書において、訂正前の本件発明3は、訂正前の本件発明1と同様の理由により、発明の詳細な説明に記載したものではない旨を主張している(申立書第26頁第3行-第27頁第4行)。
しかしながら、上記1(2)イで指摘したとおり、本件訂正発明1について、申立人が主張する点で発明の詳細な説明に記載されていないものではないと同様に、本件訂正発明3についても、申立人が主張する点で発明の詳細な説明に記載されていないものではない。
したがって、本件訂正発明3は、申立人が主張する点で発明の詳細な説明に記載されていないものではなく、特許法第36条第6項第1号の要件を満たしている。

(3)特許法第29条の2について
申立人は申立書において、訂正前の本件発明1又は2を引用する本件発明3は、先願1発明と同一である旨を主張している(申立書第8頁下から2行-第14頁第19行、第22頁第24行-第23頁第4行)。
上記第2のとおり、本件訂正請求による訂正は認められたので、本件訂正発明3が先願1発明と同一であるかについて判断する。

ア 先願1発明との対比
先願1発明における「乗降室20」は、本件訂正発明3における「駐車室」に相当し、先願1発明における「機械式駐車装置10」は、本件訂正発明3における「機械式駐車設備」に相当する。
先願1発明において、「車両12がパレット16に載置された後に安全確認プログラムを開始」するからには、先願1発明は明記がなくとも「車両12がパレット16に載置された」ことを検出するセンサを有していると解され、先願1発明における当該センサは、車両がパレット16に載置されたことを検出するものであるから、乗降室20内の検知エリアで物体を検知すると言い得る。また、先願1発明において、「入退室検知センサ36」を構成する「入出庫口30の内側に設けられたセンサ36A」も、乗降室20内の手前側で検知を行うから、乗降室20内の検知エリアで検知を行うと言い得る。また、先願1発明において、「車幅規制センサ70」は、「検知のために照射部70Aが照射し受光部70Bが受光する光線」が「乗降室20内」に位置するから、乗降室20内で検知を行うと言い得る。そのため、先願1発明におけるこれらのセンサ群は、本件訂正発明3における「駐車室内の検知エリア」を有する「センサ」に相当する。そして、先願1発明において、「安全確認プログラム」が開始されると「安全確認処理が終了」するまで「パレット16の搬送」は行われないから、「車両12がパレット16に載置された」ことが前述したセンサにより検出され、その「後」に「安全確認プログラム」が「開始」されること、並びに、安全確認処理の途中で「入退室検知センサ36が入室を検知」したり「車幅規制センサ70がセンサ信号を出力」すれば「確認ボタン34への入力を全て解除」して「安全確認プログラムを開始」した時点に戻ることは、本件訂正発明3において「駐車室内の検知エリアでセンサが物体を検知する」ことで「運転ロック」がかかることに相当する。
そして、先願1発明において、「明滅している確認ボタン34が押圧されると、当該確認ボタン34を消灯し、明滅する確認ボタン34が全て消灯すると、最終確認ボタン40への操作を有効とし、有効な最終確認ボタン40が押圧されると、安全確認処理を終了」することは、本件訂正発明3において、「有効な安全確認操作部を操作することで前記運転ロックが解除される」ことに相当する。
先願1発明において、「機械式駐車装置10」が有する、安全確認のために用いられる「確認ボタン34」、「最終確認ボタン40」、「入退室検知センサ36」「車幅規制センサ70」「CPU52を備える制御装置50」「安全確認プログラム」を含む一連の手段は、本件訂正発明3における「安全確認装置」に相当する。
先願1発明における「車幅規制センサ70」は、「一対の光線を照射する照射部70A及び光線を受光する受光部70B」を、「車両12の両側」に、「パレット16に載置可能な車両12の最大車幅に相当する間隔で配置し、検知のために照射部70Aが照射し受光部70Bが受光する光線が、乗降室20内で、かつパレット16の両側の外周近傍に位置する」ものであるから、検知を行う箇所はパレット16の周囲の複数箇所であり、かつ乗降室20内と言うことができる。そのため、先願1発明における「車幅規制センサ70」は、本件訂正発明3における「少なくとも駐車室内の車両配置部の周囲に設定された複数の検知エリアにおいて物体を検知するそれぞれのセンサ」に相当する。
先願1発明において、「安全確認の実施位置の近傍に配置され、人による安全確認の実施状況が入力される・・・・確認ボタン34、並びに・・・・最終確認ボタン40」は、本件訂正発明3における「複数の検知エリアをそれぞれ見渡せる位置に配置された各々の安全確認操作部」に相当する。
先願1発明において、「車両12がパレット16に載置された後に、車幅規制センサ70が、開かれたドアまたは降車する運転手を検知して右側あるいは左側を運転席側と判定すると、運転席側に対して反対側の確認ボタン34を明滅させ、車両12の両側で検知が行われ運転席側を判定できない場合には両側の確認ボタン34A及び34Bを共に明滅」させることは、本件訂正発明3において、「前記複数の検知エリアにおける物体の検知状況に応じて前記各々の安全確認操作部を有効に」することに相当する。
先願1発明において、「明滅している確認ボタン34が押圧されると、当該確認ボタン34を消灯し、明滅する確認ボタン34が全て消灯すると、最終確認ボタン40への操作を有効とし、有効な最終確認ボタン40が押圧されると、安全確認処理を終了」することは、本件訂正発明3において、「有効な安全確認操作部が操作されると該安全確認操作部を無効にし、全ての安全確認操作部が無効になると前記運転ロックを解除する」ことに相当する。また、先願1発明において、前述の安全確認処理が「CPU52を備える制御装置50」を用いて行われることは、本件訂正発明3が、安全確認のための処理を行う「制御装置」を備えることに相当する。

すなわち、先願1発明と本件訂正発明3とは、
「駐車室内の検知エリアでセンサが物体を検知することで運転ロックがかかり、有効な安全確認操作部を操作することで前記運転ロックが解除される機械式駐車設備の安全確認装置であって、
少なくとも前記駐車室内の車両配置部の周囲に設定された複数の検知エリアにおいて物体を検知するそれぞれのセンサと、
前記複数の検知エリアをそれぞれ見渡せる位置に配置された各々の安全確認操作部と、
前記複数の検知エリアにおける物体の検知状況に応じて前記各々の安全確認操作部を有効にし、有効な安全確認操作部が操作されると該安全確認操作部を無効にし、全ての安全確認操作部が無効になると前記運転ロックを解除する、制御装置と、を備えている、安全確認装置。」
の点で一致し、両者は次の点で相違する。

<相違点4>
本件訂正発明3では、「前記複数の安全確認操作部」が、「入出庫口から駐車室内の車両左側方を見渡せる左位置と車両右側方を見渡せる右位置とに備えられ」ており、「前記制御装置は、前記車両配置部の左側方における検知エリアで物体を検知すると前記左位置の安全確認操作部を有効にし、前記車両配置部の右側方における検知エリアで物体を検知すると前記右位置の安全確認操作部を有効にするように構成されている」のに対し、
先願1発明では、「乗降室20内の右奥の確認ボタン34A及び入出庫口30左側で乗降室20内の左手前の確認ボタン34Bを含む確認ボタン34、並びに乗降室20外の入出庫口30右側の操作盤22に備えられる最終確認ボタン40」を有しており、右側の確認ボタン34A及び最終確認ボタン40、並びに左側の確認ボタン34Bを有するものの、検知に応じていずれの確認ボタンを明滅させるかの制御については、「車幅規制センサ70が、開かれたドアまたは降車する運転手を検知して右側あるいは左側を運転席側を判定すると、運転席側に対して反対側の確認ボタン34を明滅させ、車両12の両側で検知が行われ運転席側を判定できない場合には両側の確認ボタン34A及び34Bを共に明滅させ」るものであり、検知に対応して有効化する確認ボタンの左右位置関係が、本件訂正発明3とは逆である点。

イ 判断
上記相違点4について判断する。
先願1発明においては、上記第5の2(1)イに認定したとおり、「車両12がパレット16に載置された後に、車幅規制センサ70が、開かれたドアまたは降車する運転手を検知して右側あるいは左側を運転席側を判定すると、運転席側に対して反対側の確認ボタン34を明滅させ、車両12の両側で検知が行われ運転席側を判定できない場合には両側の確認ボタン34A及び34Bを共に明滅させ」るものであるから、本件訂正発明3における「車両配置部の左側方における検知エリア」に相当する位置で検知を行った際に有効とする「安全確認操作部」、及び、本件訂正発明3における「車両配置部の右側方における検知エリア」に相当する位置で検知を行った際に有効とする「安全確認操作部」は、それぞれ検知を行った側とは「反対側」であり、本件訂正発明3における特定とは逆である。このように、物体が検知された検知エリアに対して、物体の検知状況に応じて有効とする安全確認操作部の位置関係を、互いに逆のものとする制御は、制御の内容が相違するから、単なる形式的な相違ということができず、上記1(1)イ(イ)において本件訂正発明1と先願1発明との相違点2について判断したと同様に、上記相違点4は実質的な相違点である。
したがって、本件訂正発明3は、先願1発明と同一ではない。

ウ 申立人の主張について
申立人は、令和1年11月14日付けの意見書において、上記相違点4に係る本件訂正発明3の構成は、上記相違点2に係る本件訂正発明1の構成について主張したと同様の理由により、甲第1号証に記載された構成であるか、実質的な相違点ではない旨を主張している(同意見書第10頁下から4行-第12頁第12行)。
しかしながら、上記相違点2に係る本件訂正発明1の構成に関する申立人の主張について、上記1(1)ウにおいて指摘したと同様の理由で、当該申立人の主張は採用することができない。そして、意見書における申立人の主張を考慮しても、上記相違点4に係る本件訂正発明3の構成について、上記イと異なる判断をすべき事情を見いだすことはできない。

4 本件訂正発明4
(1)先の取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
先の取消理由通知(決定の予告)に記載した、特許法第29条の2(拡大先願)に基く取消理由について、検討する。
本件訂正発明4は、本件訂正発明1の構成を全て有したうえで、さらに限定を加えたものであるところ、本件訂正発明1が有する上記1(1)アに認定した相違点2に係る構成は、上記1(1)イ(イ)に判断したとおり、先願1発明との実質的な相違点である。
したがって、本件訂正発明4における付加的限定について検討することを要さず、本件訂正発明4は、先願1発明と同一でない。

(2)先の取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
ア 特許法第36条第6項第2号について
申立人は申立書において、訂正前の本件発明4は、訂正前の本件発明1と同様の理由により、不明確である旨を主張している(申立書第26頁第3行-第27頁第4行)。
しかしながら、上記1(2)アで指摘したとおり、本件訂正発明1について、申立人が主張する点で不明確ということはできないから、本件訂正発明4についても、同様に申立人が主張する点で不明確ということはできない。
したがって、本件訂正発明4は、申立人が主張する点で発明が不明確ということはできず、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしている。

イ 特許法第36条第6項第1号について
申立人は申立書において、訂正前の本件発明4は、訂正前の本件発明1と同様の理由により、発明の詳細な説明に記載したものではない旨を主張している(申立書第26頁第3行-第27頁第4行)。
しかしながら、上記1(2)イで指摘したとおり、本件訂正発明1について、申立人が主張する点で発明の詳細な説明に記載されていないものではないから、本件訂正発明4についても、同様に申立人が主張する点で発明の詳細な説明に記載されていないものではない。
したがって、本件訂正発明4は、申立人が主張する点で発明の詳細な説明に記載されていないものではなく、特許法第36条第6項第1号の要件を満たしている。

5 本件訂正発明5
(1)先の取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
先の取消理由通知(決定の予告)に記載した、特許法第29条の2(拡大先願)に基く取消理由について、検討する。
本件訂正発明5は、本件訂正発明1の構成を全て有したうえで、さらに限定を加えたものであるところ、本件訂正発明1が有する上記1(1)アに認定した相違点2に係る構成は、上記1(1)イ(イ)に判断したとおり、先願1発明との実質的な相違点である。
したがって、本件訂正発明5における付加的限定について検討することを要さず、本件訂正発明5は、先願1発明と同一でない。

(2)先の取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
ア 特許法第36条第6項第2号について
申立人は申立書において、訂正前の本件発明5は、訂正前の本件発明1と同様の理由により、不明確である旨を主張している(申立書第26頁第3行-第27頁第4行)。
しかしながら、上記1(2)アで指摘したとおり、本件訂正発明1について、申立人が主張する点で不明確ということはできないから、本件訂正発明5についても、同様に申立人が主張する点で不明確ということはできない。
したがって、本件訂正発明5は、申立人が主張する点で発明が不明確ということはできず、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしている。

イ 特許法第36条第6項第1号について
申立人は申立書において、本件訂正発明5は本件訂正発明1と同様の理由により、発明の詳細な説明に記載したものではない旨を主張している(申立書第26頁第3行-第27頁第4行)。
しかしながら、上記1(2)イで指摘したとおり、本件訂正発明1について、申立人が主張する点で発明の詳細な説明に記載されていないものではないから、本件訂正発明5についても、同様に申立人が主張する点で発明の詳細な説明に記載されていないものではない。
したがって、本件訂正発明5は、申立人が主張する点で発明の詳細な説明に記載されていないものではなく、特許法第36条第6項第1号の要件を満たしている。

6 本件訂正発明6
(1)先の取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
先の取消理由通知(決定の予告)に記載した、特許法第29条の2(拡大先願)に基く取消理由について、検討する。
本件訂正発明6は、本件訂正発明1の構成を全て有したうえで、さらに限定を加えたものであるところ、本件訂正発明1が有する上記1(1)アに認定した相違点2に係る構成は、上記1(1)イ(イ)に判断したとおり、先願1発明との実質的な相違点である。
したがって、本件訂正発明6における付加的限定について検討することを要さず、本件訂正発明6は、先願1発明と同一でない。

(2)先の取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
ア 特許法第36条第6項第2号について
申立人は申立書において、訂正前の本件発明6は、訂正前の本件発明1と同様の理由により、不明確である旨を主張している(申立書第26頁第3行-第27頁第4行)。
しかしながら、上記1(2)アで指摘したとおり、本件訂正発明1について、申立人が主張する点で不明確ということはできないから、本件訂正発明6についても、同様に申立人が主張する点で不明確ということはできない。
したがって、本件訂正発明6は、申立人が主張する点で発明が不明確ということはできず、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしている。

イ 特許法第36条第6項第1号について
申立人は申立書において、訂正前の本件発明6は、訂正前の本件発明1と同様の理由により、発明の詳細な説明に記載したものではない旨を主張している(申立書第26頁第3行-第27頁第4行)。
しかしながら、上記1(2)イで指摘したとおり、本件訂正発明1について、申立人が主張する点で発明の詳細な説明に記載されていないものではないから、本件訂正発明6についても、同様に申立人が主張する点で発明の詳細な説明に記載されていないものではない。
したがって、本件訂正発明6は、申立人が主張する点で発明の詳細な説明に記載されていないものではなく、特許法第36条第6項第1号の要件を満たしている。

7 本件訂正発明7
先の取消理由通知(決定の予告)において、本件訂正発明7については取消理由を通知していない。先の取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について、以下に判断する。

(1)特許法第36条第6項第2号について
申立人は申立書において、訂正前の本件発明7は、訂正前の本件発明1と同様の理由により、不明確である旨を主張している(申立書第26頁第3行-第27頁第4行)。
しかしながら、上記1(2)アで指摘したとおり、本件訂正発明1について、申立人が主張する点で不明確ということはできないと同様に、本件訂正発明7についても、申立人が主張する点で不明確ということはできない。
したがって、本件訂正発明7は、申立人が主張する点で発明が不明確ということはできず、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしている。

(2)特許法第36条第6項第1号について
申立人は申立書において、訂正前の本件発明7は、訂正前の本件発明1と同様の理由により、発明の詳細な説明に記載したものではない旨を主張している(申立書第26頁第3行-第27頁第4行)。
しかしながら、上記1(2)イで指摘したとおり、本件訂正発明1について、申立人が主張する点で発明の詳細な説明に記載されていないものではないと同様に、本件訂正発明7についても、申立人が主張する点で発明の詳細な説明に記載されていないものではない。
したがって、本件訂正発明7は、申立人が主張する点で発明の詳細な説明に記載されていないものではなく、特許法第36条第6項第1号の要件を満たしている。

8 本件訂正発明8
(1)先の取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
先の取消理由通知(決定の予告)に記載した、特許法第29条の2(拡大先願)に基く取消理由について、検討する。
本件訂正発明8は、本件訂正発明1の構成を全て有したうえで、さらに限定を加えたものであるところ、本件訂正発明1が有する上記1(1)アに認定した相違点2に係る構成は、上記1(1)イ(イ)に判断したとおり、先願1発明との実質的な相違点である。
したがって、本件訂正発明8における付加的限定について検討することを要さず、本件訂正発明8は、先願1発明と同一でない。

(2)先の取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
ア 特許法第36条第6項第2号について
申立人は申立書において、訂正前の本件発明8は、訂正前の本件発明1と同様の理由により、不明確である旨を主張している(申立書第26頁第3行-第27頁第4行)。
しかしながら、上記1(2)アで指摘したとおり、本件訂正発明1について、申立人が主張する点で不明確ということはできないから、本件訂正発明8についても、同様に申立人が主張する点で不明確ということはできない。
したがって、本件訂正発明8は、申立人が主張する点で発明が不明確ということはできず、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしている。

イ 特許法第36条第6項第1号について
申立人は申立書において、訂正前の本件発明8は、訂正前の本件発明1と同様の理由により、発明の詳細な説明に記載したものではない旨を主張している(申立書第26頁第3行-第27頁第4行)。
しかしながら、上記1(2)イで指摘したとおり、本件訂正発明1について、申立人が主張する点で発明の詳細な説明に記載されていないものではないから、本件訂正発明8についても、同様に申立人が主張する点で発明の詳細な説明に記載されていないものではない。
したがって、本件訂正発明8は、申立人が主張する点で発明の詳細な説明に記載されていないものではなく、特許法第36条第6項第1号の要件を満たしている。

9 本件訂正発明9
先の取消理由通知(決定の予告)において、本件訂正発明9については取消理由を通知していない。先の取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について、以下に判断する。

(1)特許法第36条第6項第2号について
申立人は申立書において、訂正前の本件発明9は、訂正前の本件発明1と同様の理由により、不明確である旨を主張している(申立書第26頁第3行-第27頁第4行)。
しかしながら、上記1(2)アで指摘したとおり、本件訂正発明1について、申立人が主張する点で不明確ということはできないと同様に、本件訂正発明9についても、申立人が主張する点で不明確ということはできない。
したがって、本件訂正発明9は、申立人が主張する点で発明が不明確ということはできず、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしている。

(2)特許法第36条第6項第1号について
申立人は申立書において、訂正前の本件発明9は、訂正前の本件発明1と同様の理由により、発明の詳細な説明に記載したものではない旨を主張している(申立書第26頁第3行-第27頁第4行)。
しかしながら、上記1(2)イで指摘したとおり、本件訂正発明1について、申立人が主張する点で発明の詳細な説明に記載されていないものではないと同様に、本件訂正発明9についても、申立人が主張する点で発明の詳細な説明に記載されていないものではない。
したがって、本件訂正発明9は、申立人が主張する点で発明の詳細な説明に記載されていないものではなく、特許法第36条第6項第1号の要件を満たしている。

(3)特許法第29条の2について
申立人は申立書において、訂正前の本件発明9は、訂正前の本件発明7を引用するものを除き、先願1発明と同一である旨を主張している(申立書第8頁下から2行-第14頁第19行、第24頁下から2行-第25頁第5行)。
上記第2のとおり、本件訂正請求による訂正は認められたので、本件訂正発明9が先願1発明と同一であるかについて判断する。

ア 先願1発明との対比
先願1発明における「乗降室20」は、本件訂正発明9における「駐車室」に相当し、先願1発明における「機械式駐車装置10」は、本件訂正発明9における「機械式駐車設備」に相当する。
先願1発明において、「車両12がパレット16に載置された後に安全確認プログラムを開始」するからには、先願1発明は明記がなくとも「車両12がパレット16に載置された」ことを検出するセンサを有していると解され、先願1発明における当該センサは、車両がパレット16に載置されたことを検出するものであるから、乗降室20内の検知エリアで物体を検知すると言い得る。また、先願1発明において、「入退室検知センサ36」を構成する「入出庫口30の内側に設けられたセンサ36A」も、乗降室20内の手前側で検知を行うから、乗降室20内の検知エリアで検知を行うと言い得る。また、先願1発明において、「車幅規制センサ70」は、「検知のために照射部70Aが照射し受光部70Bが受光する光線」が「乗降室20内」に位置するから、乗降室20内で検知を行うと言い得る。そのため、先願1発明におけるこれらのセンサ群は、本件訂正発明9における「駐車室内の検知エリア」を有する「センサ」に相当する。そして、先願1発明において、「安全確認プログラム」が開始されると「安全確認処理が終了」するまで「パレット16の搬送」は行われないから、「車両12がパレット16に載置された」ことが前述したセンサにより検出され、その「後」に「安全確認プログラム」が「開始」されること、並びに、安全確認処理の途中で「入退室検知センサ36が入室を検知」したり「車幅規制センサ70がセンサ信号を出力」すれば「確認ボタン34への入力を全て解除」して「安全確認プログラムを開始」した時点に戻ることは、本件訂正発明9において「駐車室内の検知エリアでセンサが物体を検知する」ことで「運転ロック」がかかることに相当する。
そして、先願1発明において、「明滅している確認ボタン34が押圧されると、当該確認ボタン34を消灯し、明滅する確認ボタン34が全て消灯すると、最終確認ボタン40への操作を有効とし、有効な最終確認ボタン40が押圧されると、安全確認処理を終了」することは、本件訂正発明9において、「有効な安全確認操作部を操作することで前記運転ロックが解除される」ことに相当する。
先願1発明において、「機械式駐車装置10」が有する、安全確認のために用いられる「確認ボタン34」、「最終確認ボタン40」、「入退室検知センサ36」「車幅規制センサ70」「CPU52を備える制御装置50」「安全確認プログラム」を含む一連の手段は、本件訂正発明9における「安全確認装置」に相当する。
先願1発明における「車幅規制センサ70」は、「一対の光線を照射する照射部70A及び光線を受光する受光部70B」を、「車両12の両側」に、「パレット16に載置可能な車両12の最大車幅に相当する間隔で配置し、検知のために照射部70Aが照射し受光部70Bが受光する光線が、乗降室20内で、かつパレット16の両側の外周近傍に位置する」ものであるから、検知を行う箇所はパレット16の周囲の複数箇所であり、かつ乗降室20内と言うことができる。そのため、先願1発明における「車幅規制センサ70」は、本件訂正発明9における「少なくとも駐車室内の車両配置部の周囲に設定された複数の検知エリアにおいて物体を検知するそれぞれのセンサ」に相当する。
先願1発明において、「安全確認の実施位置の近傍に配置され、人による安全確認の実施状況が入力される・・・・確認ボタン34、並びに・・・・最終確認ボタン40」は、本件訂正発明9における「複数の検知エリアをそれぞれ見渡せる位置に配置された各々の安全確認操作部」に相当する。
先願1発明において、「車両12がパレット16に載置された後に、車幅規制センサ70が、開かれたドアまたは降車する運転手を検知して右側あるいは左側を運転席側と判定すると、運転席側に対して反対側の確認ボタン34を明滅させ、車両12の両側で検知が行われ運転席側を判定できない場合には両側の確認ボタン34A及び34Bを共に明滅」させることは、本件訂正発明9において、「前記複数の検知エリアにおける物体の検知状況に応じて前記各々の安全確認操作部を有効に」することに相当する。
先願1発明において、「明滅している確認ボタン34が押圧されると、当該確認ボタン34を消灯し、明滅する確認ボタン34が全て消灯すると、最終確認ボタン40への操作を有効とし、有効な最終確認ボタン40が押圧されると、安全確認処理を終了」することは、本件訂正発明9において、「有効な安全確認操作部が操作されると該安全確認操作部を無効にし、全ての安全確認操作部が無効になると前記運転ロックを解除する」ことに相当する。また、先願1発明において、前述の安全確認処理が「CPU52を備える制御装置50」を用いて行われることは、本件訂正発明9が、安全確認のための処理を行う「制御装置」を備えることに相当する。

すなわち、先願1発明と本件訂正発明9とは、
「駐車室内の検知エリアでセンサが物体を検知することで運転ロックがかかり、有効な安全確認操作部を操作することで前記運転ロックが解除される機械式駐車設備の安全確認装置であって、
少なくとも前記駐車室内の車両配置部の周囲に設定された複数の検知エリアにおいて物体を検知するそれぞれのセンサと、
前記複数の検知エリアをそれぞれ見渡せる位置に配置された各々の安全確認操作部と、
前記複数の検知エリアにおける物体の検知状況に応じて前記各々の安全確認操作部を有効にし、有効な安全確認操作部が操作されると該安全確認操作部を無効にし、全ての安全確認操作部が無効になると前記運転ロックを解除する、制御装置と、を備えている、安全確認装置。」
の点で一致し、両者は次の点で相違する。

<相違点5>
本件訂正発明9では、「前記複数の安全確認操作部は、出入口付近に備えられ、該安全確認操作部に近接する位置に扉閉鎖部が配設されている」のに対し、
先願1発明では、「複数の安全確認操作部」が「出入口付近に備え」られたうえで、かつ「該安全確認操作部に近接する位置」に「扉閉鎖部が配設」されてはいない点。

イ 判断
上記相違点5について判断する。
相違点5は、「複数の安全確認操作部」を「出入口付近に備え」たうえで、かつ「該安全確認操作部に近接する位置」に「扉閉鎖部が配設」する、という具体的構成の組み合せであり、また複数の安全確認操作部が出入口付近に存在したうえで、かつ出入口付近の該複数の安全確認操作部に近接する位置に扉閉鎖部も存在するという構成により、明細書の段落【0091】-【0092】の記載も参酌すると、複数の安全確認操作部の存在を前提とした利用者の操作の利便性が向上する、という所定の効果を奏するものと解される。そのため、上記相違点5に係る本件訂正発明9の構成を、単なる形式的な相違点ということはできず、相違点5は実質的な相違点である。

ウ 申立人の主張について
申立人は、上記相違点5に係る本件訂正発明9における「前記複数の安全確認操作部は、出入口付近に備えられ、該安全確認操作部に近接する位置に扉閉鎖部が配設されている」という構成について、甲第1号証の図9では、複数の確認ボタン34,40が入出庫口30付近に設けられており、かつ確認ボタン34に近接する位置に最終確認ボタン40が設けられているから、本件訂正発明9における前述の構成に相当する構成を先願1発明が有している旨を主張している(申立書第24頁最終行-第25頁第5行)。また申立人は、甲第1号証には複数の確認ボタン34を設けることが開示されており、また段落【0094】には、確認ボタン34を操作盤22に組み入れたり、操作盤22の近傍に設置してもよい旨が記載されているから、甲第1号証には、複数の確認ボタン34を出入口近くの操作盤22またはその近傍に設置し、更に扉閉を指示する最終確認ボタン40も操作盤22に設ける構成が開示されており、本件訂正発明9における前述の構成に相当する構成を先願1発明が有している旨を主張している(令和1年6月27日付け意見書第10頁第14行-第11第7行)。そして申立人は、令和1年11月14日付け意見書においても、同様の主張を行っている(同意見書第14頁下から9行-第15頁下から7行)。
しかしながら、先願1発明においては、上記第5の2(1)ア(ケ)に摘記した甲第1号証の図9において、乗降室20の内部の左右の壁に設けられた安全確認ボタン34をもって「複数の安全確認操作部」が「出入口付近に備えられ」ているということはできず、また甲第1号証の操作盤22に設けられた最終安全確認ボタン40をもって「複数の安全確認操作部」が「出入口付近に備えられ」ているということもできない。また、申立人が主張する甲第1号証の段落【0094】の記載は、「確認ボタン34」とその近傍の「モニタ80」とを対で設ける第3実施形態について、「また、本第3実施形態では、確認ボタン34とモニタ80を乗降室20内に設けた場合を例示したが、確認ボタン34とモニタ80が操作盤22に組み入れられたり、操作盤22の近傍に設置されてもよいし、さらに確認ボタン34とモニタ80が乗降室20の内、外に複数設けられてもよい。」との変形に言及するものであるから、確認ボタン34とモニタ80とを操作盤22内又は操作盤22の近傍に設けること、あるいは確認ボタン34とモニタ80とを乗降室の内、外に複数設けることまでは示していても、「確認ボタン34」を「操作盤22」内に複数設けたり、「操作盤22」の近傍で「出入口」の近傍と言い得る箇所に複数設けることを示すものではない。さらに、仮に甲第1号証における操作盤22が、最終安全確認ボタン40とは別に、扉の閉鎖を指示するボタンを有しており、当該扉の閉鎖を指示するボタンと最終安全確認ボタン40とをもって、本件訂正発明9における「出入口付近に備えられ」た「安全確認操作部」及び「該安全確認操作部に近接する位置」の「扉閉鎖部」に相当する構成を有したとしても、当該構成を維持したうえでさらに操作盤22内に別途の安全確認ボタン34を増設したり、あるいは当該構成を維持したうえでさらに「出入口付近」に別途の安全確認ボタン34を増設することまで、甲第1号証に記載されているということはできない。
したがって、本件訂正発明9について、申立人の主張を検討しても、上記イと異なる判断をすべき事情を見いだすことはできない。

(4)特許法第29条第2項について
申立人は申立書において、訂正前の本件発明1又は2を引用する本件発明9は、甲2発明及び甲3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨を主張する(申立書第25頁第7行-第11行)。
上記第2のとおり、本件訂正請求による訂正は認められたので、本件訂正発明9の進歩性について判断する。

(ア)本件訂正発明9と甲2発明との対比
本件訂正発明9と甲2発明とを対比する。
甲2発明における「立体駐車装置」は、「プログラマブルコントローラ2」により「起動」したり「ドアを閉める」処理が可能であるから、機械式の設備を備えた駐車装置ということができ、本件訂正発明9における「機械式駐車設備」に相当する。
甲2発明における「立体駐車装置」が備える「安全確認ボタン」及び「操作盤7」は、安全のための装置群と把握することができ、当該安全のための装置群は、本件訂正発明9における「安全確認装置」に相当する。
甲2発明における「車両入退室110」は、本件訂正発明9における「駐車室」に相当し、甲2発明における「車両入退室110の内部」は、本件訂正発明9における「駐車室内」に相当する。甲2発明における「パレット22」は、本件訂正発明9における「車両配置部」に相当する。
甲2発明において、「車両入退室110内の人の存在を検知するために、検知エリア15A及び16Aがパレット22より外側の右側かつ車両入退室110内に設定された前配置右側人検知センサ15及び後配置右側人検知センサ16、検知エリア17A及び18Aがパレット22より外側の左側かつ車両入退室110内に設定された前配置左側人検知センサ17及び後配置左側人検知センサ18」は、本件訂正発明9における「駐車室内の検知エリア」を有する「センサ」、及び、「少なくとも前記駐車室内の車両配置部の周囲に設定された複数の検知エリアにおいて物体を検知するそれぞれのセンサ」に相当する。
甲2発明において、「車両が右ハンドルの場合、運転者が前配置右側人検知センサ15および後配置右側人検知センサ16の検知エリアに車両から降りると、前配置右側人検知センサ15および後配置右側人検知センサ16が運転者を検知して、プログラマブルコントローラ2に信号を伝え、立体駐車装置が起動しないように処理」することは、車両が左ハンドルの場合に「前配置左側人検知センサ17および後配置左側人検知センサ18」が「運転者を検知」した場合も同様と解され、甲2発明における当該構成は、本件訂正発明9における「駐車室内の検知エリアでセンサが物体を検知することで運転ロックがかか」る構成に相当する。
甲2発明において、「操作盤7」に備えて「運転者」が押す「安全確認ボタン」は、本件訂正発明9における「安全確認操作部」に相当し、甲2発明が「運転者」が押す「安全確認ボタン」を備える構成と、本件訂正発明9が「操作」される「安全確認操作部」を備えることは、「操作される安全確認操作部」を備える点で共通する。
甲2発明において、「プログラマブルコントローラ2」は、立体駐車装置を起動しないように処理したり、起動できるように処理したりするから、制御を行っており、本件訂正発明9における「制御装置」に相当する。
甲2発明において、「立体駐車装置」の「ドアを閉めることにより、車両の立体駐車装置への入庫が完了」する前に、「プログラマブルコントローラ2」が「立体駐車装置が起動できるように」「処理」を行うことは、本件訂正発明9において、「制御装置」が「前記運転ロックを解除する」ことに相当する。また、甲2発明において、「プログラマブルコントローラ2」が「立体駐車装置が起動できるように」「処理」を行う前に「安全確認ボタン」が「押」されることと、本件訂正発明9において「有効な安全確認操作部を操作することで前記運転ロックが解除される」こととは、「前記運転ロックの解除のために操作される安全確認操作部」を備える点で、共通する。

以上より、甲2発明と本件訂正発明9とは、
「駐車室内の検知エリアでセンサが物体を検知することで運転ロックがかかり、前記運転ロックの解除のために操作される安全確認操作部を有する、機械式駐車設備の安全確認装置であって、
前記駐車室内の車両配置部の周囲に設定された複数の検知エリアにおいて物体を検知するそれぞれのセンサと、
前記運転ロックを解除する制御装置とを備えている、安全確認装置。」
の点で一致し、両者は次の点で相違する。

<相違点6>
本件訂正発明9では、「前記複数の検知エリアをそれぞれ見渡せる位置に配置された各々の安全確認操作部」を備えたうえで、「前記複数の検知エリアにおける物体の検知状況に応じて前記各々の安全確認操作部を有効に」し、「有効な安全確認操作部が操作されると該安全確認操作部を無効にし、全ての安全確認操作部が無効になると前記運転ロックを解除する」形で、「有効な安全確認操作部を操作することで前記運転ロックが解除される」のに対し、
甲2発明では、操作盤7に安全確認ボタンが存在するものの、「各々の安全確認操作部」が「前記複数の検知エリアをそれぞれ見渡せる位置に配置され」ておらず、「前記複数の検知エリアにおける物体の検知状況に応じて前記各々の安全確認操作部を有効にし、有効な安全確認操作部が操作されると該安全確認操作部を無効にし、全ての安全確認操作部が無効になると前記運転ロックを解除する」形で、「有効な安全確認操作部を操作することで前記運転ロックが解除される」という制御を行っていない点。

(イ)相違点についての判断
上記相違点6について判断する。
上記第5の2(3)ウに認定した甲3発明は、駐車装置において、操作盤を乗降室内の状況、並びに人および自動車の出入りの状況が目視によって確認できる位置に設けたうえで、「部分的に目視できない領域については、無人確認入力機、センサー等の安全装置を補助的に設け目視確認の補助を行う」構成を有しており、当該構成が有する「無人確認入力機」は、「無人」である「確認」を「入力」するものであるから、相違点6に係る本件訂正発明9の構成における「安全確認操作部」に相当すると解される。
しかしながら、甲3発明の上記構成は、「目視確認」の「補助」として「無人確認入力機」や「センサー等」の使用を示すに止まるところ、甲2発明はセンサとして「前配置右側人検知センサ15、後配置右側人検知センサ16、前配置全体人検知センサ17、後配置左側人検知センサ18、右配置全体人検知センサ19および左配置全体人検知センサ20」を備え、かつ運転者が「操作盤7で安全確認ボタンを押し」た際に、これらのセンサが「作動していなければ、立体駐車装置が起動できるようにプログラマブルコントローラ2で処理を行な」うという形で、センサを目視確認の補助として使用しているから、当該甲2発明において、さらに甲3発明が有する「無人確認入力機」を追加して採用し、かつ甲2発明が有する「センサ」と連動させて相違点6に係る本件訂正発明9の処理を行う動機付けがあるということはできない。また、甲第2号証、甲第3号証の1及び2、並びにその他の証拠の記載を検討しても、甲2発明に甲3発明の「無人確認入力機」を追加し、かつ相違点6に係る本件訂正発明9の処理を行う形でセンサと「無人確認入力機」とを連携させることが、示唆されていたということはできない。
したがって、本件訂正発明9は、甲2発明及び甲3発明に基いて、本願出願日前に当業者が容易に発明をすることができたものではなく、本件訂正発明9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

10 本件訂正発明10
(1)先の取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
先の取消理由通知(決定の予告)に記載した、特許法第29条の2(拡大先願)に基く取消理由について、検討する。
本件訂正発明10は、本件訂正発明1の構成を全て有したうえで、さらに限定を加えたものであるところ、本件訂正発明1が有する上記1(1)アに認定した相違点2に係る構成は、上記1(1)イ(イ)に判断したとおり、先願1発明との実質的な相違点である。
したがって、本件訂正発明10における付加的限定について検討することを要さず、本件訂正発明10は、先願1発明と同一でない。

(2)先の取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
ア 特許法第36条第6項第2号について
申立人は申立書において、訂正前の本件発明10は、訂正前の本件発明1と同様の理由により、不明確である旨を主張している(申立書第26頁第3行-第27頁第4行)。
しかしながら、上記1(2)アで指摘したとおり、本件訂正発明1について、申立人が主張する点で不明確ということはできないから、本件訂正発明10についても、同様に申立人が主張する点で不明確ということはできない。
したがって、本件訂正発明10は、申立人が主張する点で発明が不明確ということはできず、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしている。

イ 特許法第36条第6項第1号について
申立人は申立書において、訂正前の本件発明10は、訂正前の本件発明1と同様の理由により、発明の詳細な説明に記載したものではない旨を主張している(申立書第26頁第3行-第27頁第4行)。
しかしながら、上記1(2)イで指摘したとおり、本件訂正発明1について、申立人が主張する点で発明の詳細な説明に記載されていないものではないから、本件訂正発明10についても、同様に申立人が主張する点で発明の詳細な説明に記載されていないものではない。
したがって、本件訂正発明10は、申立人が主張する点で発明の詳細な説明に記載されていないものではなく、特許法第36条第6項第1号の要件を満たしている。

11 本件訂正発明11
(1)先の取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
先の取消理由通知(決定の予告)に記載した、特許法第29条の2(拡大先願)に基く取消理由について、検討する。
本件訂正発明11は、本件訂正発明1、本件訂正発明3、本件訂正発明7又は本件訂正発明9の構成を全て有したうえで、さらに限定を加えたものであるところ、本件訂正発明1が有する上記1(1)アに認定した相違点2に係る構成、本件訂正発明3が有する上記3(3)アに認定した相違点4に係る構成、及び、本件訂正発明9が有する上記9(3)アに認定した相違点5に係る構成は、上記1(1)イ(イ)、上記3(3)イ、及び上記9(3)イに判断したとおり、いずれも先願1発明との実質的な相違点である。
なお、本件訂正発明11のうち、本件訂正発明7に従属する発明については、先の取消理由通知(決定の予告)において拡大先願の取消理由を通知しておらず、異議申立理由としても拡大先願の理由に基づく異議申立はなされていないところ、本件訂正発明7が有する「前記駐車室内の車両を検知する車両検知センサをさらに備え、前記制御装置は、前記車両検知センサで車両が検知されないときは、前記複数の安全確認操作部のいずれかが操作されることで他の有効となっている全ての安全確認操作部を無効にするように構成されている」という構成は、先願1発明が有する構成ではなく、当該構成の有無は実質的な相違点であるから、本件訂正発明7に従属する本件訂正発明11についても、先願1発明と実質的な相違点を有する。
したがって、本件訂正発明11における付加的限定について検討することを要さず、本件訂正発明11は、先願1発明と同一でない。

(2)先の取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
ア 特許法第36条第6項第2号について
申立人は申立書において、訂正前の本件発明11は、訂正前の本件発明1と同様の理由により、不明確である旨を主張している(申立書第26頁第3行-第27頁第4行)。
しかしながら、上記1(2)アで指摘したとおり、本件訂正発明1について、申立人が主張する点で不明確ということはできないと同様に、本件訂正発明11についても、申立人が主張する点で不明確ということはできない。
したがって、本件訂正発明11は、申立人が主張する点で発明が不明確ということはできず、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしている。

イ 特許法第36条第6項第1号について
申立人は申立書において、訂正前の本件発明11は、訂正前の本件発明1と同様の理由により、発明の詳細な説明に記載したものではない旨を主張している(申立書第26頁第3行-第27頁第4行)。
しかしながら、上記1(2)イで指摘したとおり、本件訂正発明1について、申立人が主張する点で発明の詳細な説明に記載されていないものではないと同様に、本件訂正発明11についても、申立人が主張する点で発明の詳細な説明に記載されていないものではない。
したがって、本件訂正発明11は、申立人が主張する点で発明の詳細な説明に記載されていないものではなく、特許法第36条第6項第1号の要件を満たしている。

ウ 特許法第29条第2項について
申立人は申立書において、訂正前の本件発明1、2又は9を引用する本件発明11は、訂正前の本件発明1-2及び9と同じ理由で、甲2発明及び甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである旨を主張している(申立書第25頁第24行-第26頁第1行)。
上記第2のとおり、本件訂正請求による訂正は認められたので、本件訂正発明1、2又は9を引用する本件訂正発明11の進歩性について判断する。
本件訂正発明1、2又は9を引用する本件訂正発明11は、本件訂正発明1、2又は9の構成を全て含んでおり、さらに限定を加えたものであるところ、上記1(2)ウ、上記2(2)ウ及び上記9(4)において判断したとおり、本件訂正発明1-2及び9は、甲2発明及び甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、本件訂正発明1、2又は9を引用する本件訂正発明11も、甲2発明及び甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。


第7 むすび
以上のとおり、本件訂正は全て認められるとともに、本件訂正発明1ないし11に係る特許は、先の取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に本件訂正発明1ないし11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
機械式駐車設備における安全確認装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械式駐車設備の駐車室に人が居ないことなどを確認して運転ロックを解除する安全確認装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、機械式駐車設備の駐車室内には、人や車両のはみ出しを検知するために複数の検知センサ(以下、単に「センサ」という)が設置されている。そして、これらのセンサが車両の入出庫や利用者の出入りを検知すると、制御装置が運転ロックをかけるようにした安全確認装置が備えられている。この安全確認装置によって運転ロックがかかった状態では、入口扉閉鎖操作や呼び操作(出庫車又は空のパレットなどの自動車搬送手段を駐車室に移動させる操作)ができないロック状態が保たれる。そして、入出庫が完了して利用者が駐車室から出て、駐車室内の安全を確認し、安全確認ボタンを押すと安全確認装置による運転ロックが解除されて、入口扉閉鎖操作や呼び操作が可能となる。
【0003】
上記安全確認ボタンは、通常、操作盤又は操作盤付近に1個が設置されている。そのため、安全確認ボタンを押す位置から駐車室内が見渡せなかったり、入庫車両の反対側などが死角になる場合には、利用者が移動して安全確認をするために多くの時間を要する場合がある。
【0004】
一方、上記入口扉開閉操作をリモコンで車両内から行うものがある。しかし、車両内からのリモコン操作の場合、十分な安全確認をしないまま入口扉閉鎖操作をして駐車室内に人が閉じ込められるおそれがある。
【0005】
そこで、本出願人が先に出願した発明では、リモコンによる入口扉閉鎖操作を、入出庫口の外部付近から駐車室内の内部リモコン受信機に対して行うようにすることで、入出庫口の外部付近で停車して駐車室内を目視確認して入口扉を閉めるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、他の先行技術として、入庫作業が完了した後、場内から退出する前に押す場内安全確認釦と、場内から退出後入庫作業が完了した後に押す終了扉閉鎖釦とを備えさせたものもある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009-91799号公報
【特許文献2】特開2003-97076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記特許文献1のように、入出庫口の外部付近から内部リモコン受信機に向けてリモコン操作で入口扉を閉める方法を採用したとしても、死角の存在を考慮した多角的な目視確認は利用者の自主性に頼らざるを得ず、内部に人などがいる状態で入出庫口を閉めてしまうおそれがある。
【0009】
また、上記特許文献2では、車両が無い場合でも場内安全確認釦を押す必要があり、利用者によっては、退出後に気づいて場内に戻って押すことになるなど、煩雑な操作と時間を要する場合もある。
【0010】
そこで、本発明は、機械式駐車設備の駐車室内における安全確認を、状況に応じて適切かつ迅速に行うことができる安全確認装置と、それを備えた機械式駐車設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る安全確認装置は、駐車室内の検知エリアでセンサが物体を検知することで運転ロックがかかり、有効な安全確認操作部を操作することで前記運転ロックが解除される機械式駐車設備の安全確認装置であって、前記駐車室の入出庫口において人の入退室を検知する入出庫口センサを備え、さらに少なくとも前記駐車室内の車両配置部より外側の周囲に設定された複数の検知エリアにおいて物体を検知するそれぞれのセンサと、前記複数の検知エリアをそれぞれ見渡せる位置に配置された各々の安全確認操作部と、前記複数の検知エリアにおける物体の検知状況に応じて、該物体を検知した前記検知エリアを見渡せる位置に配置された前記各々の安全確認操作部を有効にし、有効な安全確認操作部が操作されると該安全確認操作部を無効にし、全ての安全確認操作部が無効になると前記運転ロックを解除する、制御装置と、を備えている。この明細書及び特許請求の範囲の書類中における「運転ロック」は、機械式駐車設備の入口扉閉鎖操作や呼び操作を禁止することをいう。また、「安全確認操作の有効」は、安全が確認される前の状態、「安全確認操作部の無効」は、安全が確認された後の状態をいう。
【0012】
この構成により、駐車室内の複数の検知エリアのいずれかにおいて物体を検知すると運転ロックがかかり、その検知エリアを見渡せる位置に配設された安全確認操作部が有効になり、物体を検知した検知エリアを見渡しながら対応した安全確認操作部を操作して全て無効にすることで運転ロックを解除するようにできる。そのため、各検知エリアにおいて迅速に見渡しながら安全確認操作部を操作することができ、効率良く安全確認を行うことができる。
【0013】
また、前記複数の安全確認操作部は、入出庫口から駐車室内の車両左側方を見渡せる左位置と車両右側方を見渡せる右位置とに備えられていてもよい。
【0014】
このように構成すれば、車両の左側方又は右側方の検知エリアを安全確認操作部の位置から見渡しながら安全確認操作部を操作して運転ロックを解除するようにできる。
【0015】
また、本発明に係る安全確認装置は、駐車室内の検知エリアでセンサが物体を検知することで運転ロックがかかり、有効な安全確認操作部を操作することで前記運転ロックが解除される機械式駐車設備の安全確認装置であって、少なくとも前記駐車室内の車両配置部の周囲に設定された複数の検知エリアにおいて物体を検知するそれぞれのセンサと、前記複数の検知エリアをそれぞれ見渡せる位置に配置された各々の安全確認操作部と、前記複数の検知エリアにおける物体の検知状況に応じて前記各々の安全確認操作部を有効にし、有効な安全確認操作部が操作されると該安全確認操作部を無効にし、全ての安全確認操作部が無効になると前記運転ロックを解除する、制御装置と、を備え、前記複数の安全確認操作部は、入出庫口から駐車室内の車両左側方を見渡せる左位置と車両右側方を見渡せる右位置とに備えられており、前記制御装置は、前記車両配置部の左側方における検知エリアで物体を検知すると前記左位置の安全確認操作部を有効にし、前記車両配置部の右側方における検知エリアで物体を検知すると前記右位置の安全確認操作部を有効にするように構成されている。
【0016】
このように構成すれば、車両配置部の左右位置におけるいずれかで物体を検知した場合、その検知エリアに対応した左右位置のいずれかの安全確認操作部を有効にして、安全確認が必要な側の安全確認操作部のみで運転ロックを解除するようにできる。
【0017】
また、前記複数の検知エリアにおいて物体を検知するそれぞれの前記センサは、前記車両配置部より外側の前方位置において物体を検知するように配置された前部センサをさらに有し、前記前部センサが物体を検知する位置を見渡すことができる駐車室内の前部左右位置に前部安全確認操作部がそれぞれ配設されており、前記前部センサが物体を検知すると前部左右位置に配置されたそれぞれの前記前部安全確認操作部が有効となるように構成されていてもよい。
【0018】
このように構成すれば、例えば、駐車室内の奥の方の車両配置部前方で、車両によって隠れるエリアでかつ左右に行き来しづらい場合でも、車両前方を目視で確認して駐車室内の前部左右位置に配設された前部安全確認操作部を操作することで安全確認を行なうことができ、車両前方の安全確認を迅速に行なうことができる。
【0019】
また、前記制御装置は、前記複数の検知エリアの1つの検知エリアにおいてセンサが物体を検知することで、複数の安全確認操作部を有効にするように構成されていてもよい。
【0020】
このように構成すれば、1つの検知エリアにおいて安全センサが検知することで複数の安全確認操作部が有効になるので、それら複数の安全確認操作部の位置から駐車室内全体を目視で確認しながら安全確認操作部を操作するようにできる。
【0021】
また、前記制御装置は、それぞれの位置から同一検知エリアの安全確認ができる複数の安全確認操作部について、1つの安全確認操作部を操作することで他の安全確認操作部が無効となるように構成されていてもよい。
【0022】
このように構成すれば、駐車室内の状況に応じて1つの安全確認操作部を操作することで他の安全確認操作部を無効にすることができるので、利用者が安全確認のために移動する距離を短縮することができる。
【0023】
また、本発明に係る安全確認装置は、駐車室内の検知エリアでセンサが物体を検知することで運転ロックがかかり、有効な安全確認操作部を操作することで前記運転ロックが解除される機械式駐車設備の安全確認装置であって、少なくとも前記駐車室内の車両配置部の周囲に設定された複数の検知エリアにおいて物体を検知するそれぞれのセンサと、前記複数の検知エリアをそれぞれ見渡せる位置に配置された各々の安全確認操作部と、前記複数の検知エリアにおける物体の検知状況に応じて前記各々の安全確認操作部を有効にし、有効な安全確認操作部が操作されると該安全確認操作部を無効にし、全ての安全確認操作部が無効になると前記運転ロックを解除する、制御装置と、を備え、前記駐車室内の車両を検知する車両検知センサをさらに備え、前記制御装置は、前記車両検知センサで車両が検知されないときは、前記複数の安全確認操作部のいずれかが操作されることで他の有効となっている全ての安全確認操作部を無効にするように構成されている。
【0024】
このように構成すれば、車両検知センサによって車両が検知されていない場合は、有効となっている複数の安全確認操作部の一部が操作されることで他の有効となっている全ての安全確認操作部を無効にして、利用者の利便性を向上させることができる。
【0025】
また、前記複数の安全確認操作部は、一つが最終安全確認操作部として構成され、前記最終安全確認操作部は、他の有効となっている全ての安全確認操作部を操作した後に操作することで無効となるように構成されていてもよい。
【0026】
このように構成すれば、複数の箇所で安全確認を行なって有効となっている安全確認操作部を全て押したことを、最終安全確認操作部を操作することで確認することができる。つまり、最終安全確認操作部は、他の有効な安全確認操作部の位置で安全確認をして安全確認操作部を操作した後に操作しないと運転ロックが解除されないので、有効な安全確認操作部の操作忘れを防ぐことができる。
【0027】
また、本発明に係る安全確認装置は、駐車室内の検知エリアでセンサが物体を検知することで運転ロックがかかり、有効な安全確認操作部を操作することで前記運転ロックが解除される機械式駐車設備の安全確認装置であって、少なくとも前記駐車室内の車両配置部の周囲に設定された複数の検知エリアにおいて物体を検知するそれぞれのセンサと、前記複数の検知エリアをそれぞれ見渡せる位置に配置された各々の安全確認操作部と、前記複数の検知エリアにおける物体の検知状況に応じて前記各々の安全確認操作部を有効にし、有効な安全確認操作部が操作されると該安全確認操作部を無効にし、全ての安全確認操作部が無効になると前記運転ロックを解除する、制御装置と、を備え、前記複数の安全確認操作部は、出入口付近に備えられ、該安全確認操作部に近接する位置に扉閉鎖部が配設されている。
【0028】
このように構成すれば、出入口付近に備えられた安全確認操作部を操作して運転ロックが解除されたら、その場で扉閉鎖部を操作して迅速に入口扉を閉鎖することができる。
【0029】
また、前記複数の安全確認操作部は、点灯部を有し、前記点灯部は、有効な安全確認操作部と無効な安全確認操作部とで点灯方法又は点灯色が異なるように構成されていてもよい。
【0030】
このように構成すれば、運転ロックを解除するために複数の安全確認操作部を操作する必要がある場合と、1つ操作すれば解除できる場合などの区別を、安全確認操作部における点灯部の点灯方法や点灯色で判断するようにできる。例えば、複数の安全確認操作部を操作する必要がある場合は点灯部を点灯させ、1つを押せば運転ロックが解除できる場合は点灯部を点滅させることなどで区別できる。この点灯部は、点灯色を異ならせることでも有効/無効の区別ができる。
【0031】
一方、本発明に係る機械式駐車設備は、前記いずれかの安全確認装置を備えている。
【0032】
この構成により、入出庫時における目視による安全確認後に行なう安全確認操作部の操作を迅速に行なうことができるので、効率良く入出庫作業を行なうことができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、機械式駐車設備の駐車室内における安全確認をより適切かつ迅速に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1実施形態に係る安全確認装置の構成を示す模式図である。
【図2A】図1に示す安全確認装置による制御の一部分を示すフロー図である。
【図2B】図1に示す安全確認装置による制御の他の部分を示すフロー図である。
【図3】図1に示す安全確認装置による制御の他の部分を示すフロー図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る安全確認装置の構成を示す模式図である。
【図5】図4に示す安全確認装置による制御の一部分を示すフロー図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る安全確認装置の構成を示す模式図である。
【図7】図6に示す安全確認装置による制御の一部分を示すフロー図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係る安全確認装置の構成を示す模式図である。
【図9】本発明の第5実施形態に係る安全確認装置の構成を示す模式図である。
【図10】本発明の第6実施形態に係る安全確認装置の構成を示す模式図である。
【図11】本発明の第7実施形態に係る安全確認装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の実施形態では、駐車室の一面に入出庫口が設けられ、駐車室内に車両を駐車した場合、車両の左右位置に利用者が移動するエリアがある例を説明する。この明細書及び特許請求の範囲の書類中における前後左右方向の概念は、図1に示す駐車室2の入出庫口3に向かった状態における前後左右方向の概念と一致するものとする。
【0036】
また、以下の実施形態では、安全確認操作部として安全確認ボタンを例にし、この安全確認ボタンを押す操作を例に説明する。安全確認操作部としては、引く操作、レバー式のように傾ける操作の操作部であってもよく、押す操作に限定されるものではない。
【0037】
図1に示すように、この実施形態の機械式駐車設備1における駐車室2は、一面に設けられた入出庫口3から車両V(以下の図では、四角で示す)を入出庫させ、中央部に設けられた車両配置部(例えば、パレット)5に停車させるようになっている。入口扉4が設けられた入出庫口3の一側方には、操作盤6が設けられており、この操作盤6によって入出庫操作が行なわれる。この実施形態では、操作盤6と制御装置7とが一体となった例としている。
【0038】
そして、この機械式駐車設備1の以下に説明する安全確認装置10?16には、上記駐車室2の内部に設定された複数の検知エリア20?23と、それぞれの検知エリア20?23毎に設けられた物体を検知するセンサ30?33(34?37)と、運転ロックを解除するために設けられた複数の安全確認ボタン50,51(52?54)とが備えられている。
【0039】
<第1実施形態>
図1に示す第1実施形態の安全確認装置10は、車両Vを入庫させる車両配置部5の左側方に左検知エリア20が設定され、右側方に右検知エリア21が設定されている。また、車両配置部5の奥側である前部に前部検知エリア22が設定され、入出庫口3と車両配置部5との間の後部に後部検知エリア23が設定されている。このように車両配置部5の周囲である左右位置と、前後位置に複数の検知エリア20?23が設定されている。
【0040】
上記左検知エリア20には、左部センサ30が設けられ、右検知エリア21には右部センサ31が設けられている。この例では、左部センサ30及び右部センサ31として2本のセンサがそれぞれ設けられている。左部センサ30及び右部センサ31は、いずれか1本でも検知可能である。また、前部検知エリア22には、駐車室2の左右方向全長で物体を検知する前部センサ32が設けられている。さらに、入口側の後部検知エリア23には、駐車室2の左右方向全長で物体を検知する後部センサ33が設けられている。この実施形態では、入出庫口3の部分に、入出庫口センサ34が設けられている。なお、この実施形態を含む以下の実施形態の入出庫口センサ34は、入口扉4付近の安全も確認するように入口扉4の外側に配置されているが、入口扉4の内側に配置しても、入口扉4の閉鎖時当り面に埋め込むようにしてもよい。また、車両配置部5には、車両Vの有無を検知するための車両検知センサ35が設けられている。
【0041】
そして、この実施形態では、入出庫口3付近の左位置に左安全確認ボタン50が設けられ、右位置に右安全確認ボタン51が設けられている。左安全確認ボタン50は、車両Vが停車した状態でも車両Vの左側方の左検知エリア20を見渡せる位置に設けられている。右安全確認ボタン51は、車両Vが停車した状態でも車両Vの右側方の右検知エリア21を見渡せる位置に設けられている。これら複数の安全確認ボタン50,51の配設位置は、他の安全確認ボタン51(又は50)の位置から死角になりうる検知エリアを補うように、それぞれの検知エリア20,21を見渡せる位置に配設されている。
【0042】
このように、車両配置部5の左右位置で車両Vから降りる人などを検知する位置にセンサ30,31が設けられ、入出庫口3付近で車両配置部5の左右位置への通路を通る人を検知する位置にセンサ33,34が設けられている。そして、安全確認ボタン50,51を入出庫口3付近の左右各々に配設し、左側の左部センサ30が検知したら左側の左安全確認ボタン50を有効にし、右側の右部センサ31が検知したら右側の右安全確認ボタン51を有効にするようにしている。これらの安全確認ボタン50,51は、上記車両検知センサ35の車両検知(実車検知)又は未検知により、左部センサ30の検知に対応して左安全確認ボタン50を、右部センサ31の検知に対応して右安全確認ボタン51を、それぞれ独立して有効にするか、一方のセンサ30,31の検知によって両方を有効にするようにしてもよい。
【0043】
このような安全確認装置10によれば、上記複数の検知エリア20?23においてセンサ30?34のいずれかが人(以下、「利用者」ともいう)などの物体を検知すると運転ロックがかかり、入口扉4の閉鎖操作や呼び操作が不可能になる。これにより、安全確認ボタン50,51の一方又は両方が有効になる。複数の安全確認ボタン50,51は、運転ロックがかかるといずれかの安全確認ボタン50,51又は両方の安全確認ボタン50,51が有効になる。各々の安全確認ボタン50,51は、そのボタンを押すと無効になる。上記センサ30?34による複数の検知エリア20?23における人などの検知状態に応じて、上記複数の安全確認ボタン50,51を有効にし、有効な安全確認ボタン50,51の全てが押されて無効になることで運転ロックが解除されて、入口扉4の閉鎖操作や呼び操作が可能になる。これらの、検知エリアにおける物体検知に応じて各々の安全確認ボタン50,51を有効にし、有効な安全確認ボタン50,51が操作されるとその安全確認ボタン50,51を無効にし、全ての安全確認ボタン50,51が無効になると運転ロックを解除する制御は、制御装置7によって制御されている。詳細な制御の説明は後述する。
【0044】
この安全確認装置10を備えた機械式駐車設備1によれば、それぞれのセンサ30?34の検知エリア20?23に対応して見渡せる位置の安全確認ボタン50,51が有効になると、利用者はその位置まで行って安全確認ボタン50,51を押す必要があり、検知エリア20?23内を見渡せる位置で安全確認をすることになり、より適切な安全確認が迅速にできる。つまり、例えば、操作盤6に安全確認ボタンを設置した場合、駐車室2内に車両Vがあると操作盤6と反対側が車両Vによって死角になる。そこで、操作盤6と反対側の出入口付近に安全確認ボタンを設置し、操作盤6と反対側のセンサが検知したらその反対側の安全確認ボタンを有効にする。これにより、利用者は操作盤6の反対側まで行って検知エリア内を安全確認して安全確認ボタンを押すことになり、より適切な安全確認を行なうことが可能となる。また、反対側の安全確認ボタンが無効な場合は安全確認のため反対側に行く必要がなく、安全確認を迅速に行うことが可能となる。
【0045】
次に、図2A、図2Bに基づいて、上記第1実施形態の安全確認装置10による制御を説明する。図2Aの左端に利用者の行動を示し、右側に安全確認装置10における各ステップを示している。なお、以下の説明において、フロー図では、「左安全確認ボタン」は「左ボタン」、「右安全確認ボタン」は「右ボタン」、「最終安全確認ボタン」は「最終ボタン」、「左前部安全確認ボタン」は「左前ボタン」、「右前部安全確認ボタン」は「右前ボタン」、「左扉閉鎖ボタン」及び「右扉閉鎖ボタン」は「扉閉鎖ボタン」、と省略して記載する。
【0046】
また、「有効状態1」とは、有効になった安全確認ボタン50,51を、個別に押して無効にする状態をいう。「有効状態2」とは、有効になった安全確認ボタン50,51のうち、どちらか一方を押して無効にすればもう一方のボタンも無効になる状態をいう。この場合、他のセンサが検知し、個別に安全確認ボタンが有効になった場合は、有効状態2は解除される。
【0047】
このように、複数の安全確認ボタン50,51の全てが無効になることは、全ての安全確認ボタン50,51が各々押された場合の他、1つの安全確認ボタン50(51)が押されたことにより、条件によって他の安全確認ボタン51(50)が無効になることも含まれる。
【0048】
図2Aに示すように、入出庫を開始するための呼び操作を行なう。これにより入口扉4が開放する(S1)。そして、利用者が駐車室2内に入ることで、複数のセンサ30?34の内のいずれかによって検知(ON)される。
【0049】
例えば、利用者が入出庫口3から入り、入出庫口センサ34又は後部センサ33が人を検知すると(S2)、運転ロックがかかり(S3)、左安全確認ボタン50と右安全確認ボタン51の両方が有効になる(S4)。この有効状態は、入出庫口センサ34又は後部センサ33による検知のみであるため、有効状態2となる。つまり、入出庫口3付近のセンサ34,33のみが検知した場合は、左安全確認ボタン50及び右安全確認ボタン51の両方を有効にするが、どちらの安全確認ボタン50,51からでも駐車室2内を見渡せるので、どちらか一方の安全確認ボタン50(51)が押されたら、もう一方も押されたことにして無効としている。
【0050】
そして、利用者が駐車室2内から出ることで、全てのセンサ34,33が未検知(OFF)となる(S5)。この状態で、有効となっている安全確認ボタン50,51の表示切替えが行なわれる(S6)。安全確認ボタン50,51の表示切替えとしては、例えば、有効な安全確認ボタン50,51の点灯部(例えば、「ランプ」などであり、以下、「ランプ」ともいう)を点灯等させる。この安全確認ボタン50,51の表示切替えとしては、押しても他の安全確認ボタンが有効で運転ロックが解除しない場合と、押したら運転ロックが解除する場合とで、表示方法を変えることができる。表示方法を変える例としては、1つでは運転ロックが解除しない安全確認ボタンはランプの点灯や黄色ランプとすることができる。また、1つで運転ロックが解除する安全確認ボタンはランプの点滅や緑色ランプとすることができる。
【0051】
その後、この例では、有効状態2で左安全確認ボタン50と右安全確認ボタン51との両方が有効になっているため(S4)、左安全確認ボタン50又は右安全確認ボタン51のいずれか一方を押すことで(S7)、両方の安全確認ボタン50,51が無効となり(S8)、全ての安全確認ボタンが無効となる(S9)。これにより、運転ロックが解除される(S10)。
【0052】
その後、入口扉閉鎖ボタン(操作盤6)が押されることで(S11)、入口扉4が閉鎖して入出庫完了となる(S12)。なお、用途などにより入口扉4を閉鎖しなくても呼び操作できる場合などは、入口扉閉鎖ボタンを押して入口扉4を閉鎖する操作は不要である。この点は、以下の実施形態においても同様である。
【0053】
次に、例えば、入口扉4が開放した後、利用者が左検知エリア20に入った場合を説明する。利用者が左検知エリア20に入ると、左部センサ30によって検知される(S13)。これにより、運転ロックされる(S14)。そして、左検知エリア20における人の検知であるため、左安全確認ボタン50が有効になる(S15)。なお、車両Vが停車している場合などは右安全確認ボタン51の位置から左検知エリア20が見渡せないため、有効状態2となっている場合には、右安全確認ボタン51は無効にされ、有効状態2が解除される(S16)。つまり、左検知エリア20の左部センサ30が人を検知したら、同じ側にある左安全確認ボタン50を有効にし、かつ右安全確認ボタン51を押しても左安全確認ボタン50を無効にできないようにする。
【0054】
その後、利用者が駐車室2から出ることで、全てのセンサ30?34が未検知(OFF)となる(S17)。この状態で、有効となっている安全確認ボタン50の表示切替えが行なわれる(S18)。安全確認ボタン50の表示切替えとしては、例えば、有効な安全確認ボタン50のランプを点灯等させるなどが行なわれる。表示切替え例としては上記した例と同一であるため、説明は省略する。
【0055】
そして、この例では、左安全確認ボタン50が押されることで(S19)、左安全確認ボタン50が無効となり(S20)、全ての安全確認ボタンが無効となる(S9)。これにより、運転ロックが解除される(S10)。その後、入口扉閉鎖ボタン(図示略:操作盤6)が押されることで(S11)、入口扉4が閉鎖して作業完了となる(S12)。
【0056】
次に、図2Bに基づいて、利用者が車両配置部5の右検知エリア21に入り、右部センサ31で検知された場合を説明する。図2Bにおける記号「A」と図2Aの記号「A」は連続した部分を示し、記号「B」と記号「B」は連続した部分を示している。
【0057】
図示するように、右検知エリア21において人を検知した場合、上記左検知エリア20に人が入った場合と同様である。この場合には、右検知エリア21と同じ側にある右安全確認ボタン51が有効となり、かつ左安全確認ボタン50を押しても右安全確認ボタン51を無効にできないようにする。この例の場合、上記左検知エリア20において人を検知した場合と逆となるのみであり、ステップ(S13)と(S21)、ステップ(S14)と(S22)、ステップ(S15)と(S23)、ステップ(S16)と(S24)、ステップ(S17)と(S25)、ステップ(S18)と(S26)、ステップ(S19)と(S27)、及びステップ(S20)と(S28)とが左右逆となる。これらのステップの説明は省略する。
【0058】
一方、前部検知エリア22において前部センサ32が人を検知すると(S29)、運転ロックがかかり(S30)、左安全確認ボタン50と右安全確認ボタン51の両方が有効になる(S31)。この有効状態は、車両配置部5の前方で利用者から見えにくい部分であるため、有効状態1となる。つまり、前部センサ32が人などを検知した場合は、左安全確認ボタン50及び右安全確認ボタン51の両方を有効にし、両方のボタンが押されないと無効にならないようにする。そのため、有効状態2の場合は、有効状態2が解除される(S32)。
【0059】
なお、この例の場合、例えば、車両Vがなく、一方の安全確認ボタン50(51)の位置からもう一方の安全確認ボタン51(50)の検知エリアを見渡せる場合は、一方の安全確認ボタン50(51)が押されたらもう一方の安全確認ボタン51(50)も押されたことにする、有効状態2としてもよい。
【0060】
その後、利用者が駐車室2から出ることで、全てのセンサ30?34が未検知(OFF)となる(S33)。この状態で、有効となっている安全確認ボタン50,51の表示切替えが行なわれる(S34)。この安全確認ボタン50,51の表示切替えも、上記した例と同一であるため、詳細な説明は省略する。
【0061】
そして、この例の場合には、左安全確認ボタン50が押されることで(S35)、左安全確認ボタン50が無効となり(S36)、右安全確認ボタン51が押されることで(S37)、右安全確認ボタン51が無効となり(S38)、全ての安全確認ボタンが無効となる(S9)。これにより、運転ロックが解除される(S10)。その後、入口扉閉鎖ボタン(図示略:操作盤6)が押されることで(S11)、入口扉4が閉鎖して作業完了となる(S12)。
【0062】
なお、上記図2A及び図2Bでは、各検知エリア20?23において人を検知した例を説明したが、複数の検知エリア20?23において人を検知した場合には、上記各検知エリア20?23において人を検知した場合の複数のステップが並行して実行される。
【0063】
次に、図3に基づいて、車両Vを出庫させる場合の、上記安全確認装置10による安全確認例を説明する。この場合、利用者の検知後に上記駐車室2の車両配置部5から車両Vが無くなる。なお、図2Aと同一のステップには同一符号を付して説明する。このフロー図では、「車両検知センサ」は「車両センサ」と省略して記載する。
【0064】
利用者が出庫開始の呼び操作をすることで、入口扉4が開放する。この時、車両配置部5には車両Vが停車しているため、車両検知センサ35はONの状態である(S40)。そして、人が駐車室2内に入ることでセンサ30?34のいずれかによって検知される(S41)。これにより、運転ロックがかかり(S42)、人を検知したセンサに応じて左安全確認ボタン50又は右安全確認ボタン51が有効になる(S43)。その後、人が車両Vに乗り込んで出庫することにより、車両検知センサ35が未検知(OFF)の状態になる(S44)。車両Vが車両配置部5に無くなって車両検知センサ35がOFFになると、安全確認ボタン50,51のいずれの位置からも駐車室2内の全体が見渡せるようになる。そのため、センサ30?34のいずれかの検知によって有効になった両方の安全確認ボタン50,51の内、いずれか一方の安全確認ボタン50(51)を無効にすれば、もう一方の安全確認ボタン51(50)も無効になる有効状態2となる(S45)。
【0065】
つまり、この例のように、安全確認ボタン50,51を入出庫口3付近の左右に設置した場合、車両Vが無い状態であれば、左右どちらの安全確認ボタン50,51の位置からも駐車室2内全体を見渡して同一の検知エリアの安全確認ができるので、どちらか一方の安全確認ボタン50(51)を押したら、もう一方の安全確認ボタン51(50)も押されたことにしている。
【0066】
そして、利用者が車両Vに乗り込んで駐車室2内から出ることで、全てのセンサ30?34が未検知(OFF)となる(S46)。これにより、この例でも、有効となっている安全確認ボタン50,51の表示切替えが行なわれる(S47)。この安全確認ボタン50,51の表示切替えとしては、上記した例と同一であるため、詳細な説明は省略する。
【0067】
その後、左安全確認ボタン50又は右安全確認ボタン51が押されることで(S48)、左安全確認ボタン50及び右安全確認ボタン51が無効となる(S49)。これにより、全ての安全確認ボタン50,51が無効となって、運転ロックが解除される(S50)。その後、入口扉閉鎖ボタン(図示略:操作盤6)が押されることで(S11)、入口扉4が閉鎖して作業完了となる(S12)。
【0068】
このように、例えば、車両Vが有る場合は左右片側のセンサ30又は31が検知したときのみ安全確認ボタン50,51を個別に有効にし、車両Vが無い場合は、駐車室2内すべてのセンサ30?34のいずれかが検知したら安全確認ボタン50,51の両方を有効にすることができる。
【0069】
なお、上記いずれの場合も、全ての安全確認ボタン50,51が無効となるまで運転ロックを継続している説明をしたが、有効な安全確認ボタン50,51の表示切替が行なわれたステップ以降は、その有効な安全確認ボタン50,51を押して無効化できるようになる。
【0070】
また、上記実施形態では、個々のセンサによるフローを別々に説明したが、センサ30?34の検知状況に応じて複数のフローが並行して実行される場合もある。また、複数の実施形態における構成を組み合わせることも可能であり、組み合わせた場合には複数の処理が並行して実行される。
【0071】
さらに、駐車室2内の車両Vの有無等、状況により目視できるエリアが異なるので、駐車室2内の状況に応じて、安全確認ボタン50,51が有効になるセンサ30?34の組合せを変更してもよい。
【0072】
<第2実施形態>
次に、図4に基づいて、第2実施形態に係る安全確認装置11を説明する。この実施形態の安全確認装置11は、上記第1実施形態の安全確認装置10に備えられた左安全確認ボタン50及び右安全確認ボタン51に加え、操作盤6に最終安全確認ボタン52が設けられた例である。なお、上記図1に示す第1実施形態と同一の構成には、同一符号を付して、それらの説明は省略する。
【0073】
図示するように、第2実施形態の安全確認装置11には、上記図1に示す構成に加えて、操作盤6に最終安全確認ボタン52が付加されている。この最終安全確認ボタン52は、入口扉付近の安全確認、駐車車両内の無人確認等、駐車室2全体の安全の最終確認のために、最後に押して運転ロックを解除するものである。最終安全確認ボタン52は、他の安全確認ボタン50,51が有効である間は押しても運転ロックが解除されない(無効にならない)ようになっている。最終安全確認ボタン52を設ける位置としては、操作盤6又はその近辺が操作上好ましい。
【0074】
図5は、図4に示す安全確認装置11の制御の一部を示すフロー図である。なお、この実施形態は、一点鎖線C,Dで示す部分が変更された部分であり、前後のステップは上記第1実施形態における図2A、図2Bのステップの一部を示し、他の同一ステップの記載は省略している。
【0075】
図示するように、第2実施形態の安全確認装置11によれば、上記図2A,図2Bで説明したように、運転ロックがかかった後(S3,S14,S22,S30)、これらのステップにおける左安全確認ボタン50、右安全確認ボタン51の有効と同時に最終安全確認ボタン52も有効になる(S51,S52,S53,S54)。その後、図2A又は図2Bのステップを経た後、最終安全確認ボタン52以外の安全確認ボタン50,51が無効にされた後(S55)、最終的に最終安全確認ボタン52を押すことで(S56)、全ての安全確認ボタン50?52が無効となって運転ロックが解除される(S57)。このように、この例では、左安全確認ボタン50と右安全確認ボタン51とが無効となる前に最終安全確認ボタン52を押しても、最終安全確認ボタン52は無効になることはない。
【0076】
従って、第2実施形態の安全確認装置11によれば、最終安全確認ボタン52以外の有効な安全確認ボタン50,51の位置で安全確認をして安全確認ボタン50,51を押した後に最終安全確認ボタン52を押さないと運転ロックが解除されないので、入口扉4付近の安全確認、駐車車両V内の無人確認等、駐車室2全体の安全の最終確認をさせたい場合などに利用できる。
【0077】
<第3実施形態>
次に、図6に基づいて、第3実施形態に係る安全確認装置12を説明する。この実施形態の安全確認装置12は、駐車室2の前部(奥部)でも安全確認をするようにしている。なお、上記第1実施形態と同一の構成、及び上記第2実施形態と同一の構成には、同一符号を付して、それらの説明は省略する。
【0078】
図示するように、第3実施形態の安全確認装置12には、上記第2実施形態の安全確認装置11の構成に加え、左検知エリア20の前部に左前部安全確認ボタン53が設けられ、右検知エリア21の前部に右前部安全確認ボタン54が設けられている。
【0079】
図7は、図6に示す安全確認装置12の制御の一部分を示すフロー図である。なお、この実施形態は、一点鎖線Eで示す部分が第1実施形態と異なる部分であり、図示する記号「A」と「B」は上記第1実施形態の図2Aに示す記号「A」と「B」に連続した部分を示している。
【0080】
図示するように、この実施形態の場合、前部検知エリア22において前部センサ32が人などを検知すると(S60)、運転ロックがかかり(S61)、左前部安全確認ボタン53及び右前部安全確認ボタン54が有効になる(S62)。なお、先に有効状態2となっている場合には、有効状態2が解除される(S63)。
【0081】
その後、利用者が前部検知エリア22から移動することで前部センサ32はOFFとなり(S64)、有効となっている左前部安全確認ボタン53又は右前部安全確認ボタン54の表示切替えが行なわれる(S65)。この安全確認ボタン53,54の表示切替えとしては、例えば、有効な安全確認ボタン53,54のランプを点灯等させるなどが行なわれる。上記した例と同一であるため、説明は省略する。
【0082】
そして、左前部安全確認ボタン53又は右前部安全確認ボタン54が押されることで(S66)、左前部安全確認ボタン53及び右前部安全確認ボタン54が無効となる(S67)。この例では、前部検知エリア22を左側方と右側方の両方から確認できるため、左前部安全確認ボタン53又は右前部安全確認ボタン54のいずれか一方が押されることで、両方が無効となるようにしている。
【0083】
その後は、図2Aに示すように、入出庫口3で安全確認ボタン50,51を押すことで全ての安全確認ボタン50,51,53,54が無効となり(S9)、運転ロックが解除される(S10)。そして、入口扉閉鎖ボタン(図示略:操作盤6)が押されることで(S11)、入口扉4が閉鎖して作業完了となる(S12)。
【0084】
なお、この例では、駐車室2内の前部で左右の行き来が困難な場合などのために、両側に前部安全確認ボタン53,54を設置したが、左右の行き来が可能な場合は安全確認ボタン53,54はどちらか一方にのみ設置してもよい。また、鏡等で目視できるエリアを補うことで、一方にのみ前部安全確認ボタンを設置するようにしてもよい。
【0085】
さらに、上記左前部安全確認ボタン53と右前部安全確認ボタン54は、左部センサ30又は右部センサ31が検知した場合に有効とするようにしてもよい。この場合、左前部安全確認ボタン53又は右前部安全確認ボタン54を押した人が退出するまでの一定時間、又はその人が後部センサ33及び入出庫口センサ34を通過して退出したことを検知するまでは、左部センサ30及び右部センサ31を無効化して再び検知しないように制御すればよい。
【0086】
また、この第3実施形態において、図6に示すように第2実施形態と同様に最終安全確認ボタン52を備えるようにしてもよい。この場合、図7の「左前ボタン及び右前ボタン有効」(S62)は図5のCと同様に「最終ボタン、左前ボタン及び右前ボタン有効」となり、さらに記号「B」以降は図5のDに置き換えられる。
【0087】
<第4実施形態>
次に、図8に基づいて、第4実施形態における安全確認装置13を説明する。この実施形態の安全確認装置13は、上記第2実施形態における操作盤6に設けられた最終安全確認ボタン52を右安全確認ボタンとした例である。なお、上記第2実施形態と同一の構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0088】
図示するように、操作盤6には最終安全確認ボタン52が設けられ、出入口付近の操作盤6と反対側には左安全確認ボタン50が設けられている。この場合、駐車室2内のいずれかのセンサ30?34が検知すると操作盤6の最終安全確認ボタン52が有効になる。一方、左安全確認ボタン50と同じ側にある左部センサ30が検知すると左安全確認ボタン50が有効になる。
【0089】
操作盤6の最終安全確認ボタン52は、入口扉付近の安全確認、駐車車両内の無人確認等、駐車室全体の安全の最終確認のため最後に押すよう、左安全確認ボタン50が有効である間は押しても無効にならなくてもよい。
【0090】
この例では、操作盤6には最終安全確認ボタン52を設けた例を説明したが、操作盤6に第1実施形態における右安全確認ボタン51を設けるようにしてもよい。この場合、車両配置部5に車両Vがなくなり、操作盤6の右安全確認ボタン51の位置から、左安全確認ボタン50が有効になる左部センサ30のエリアが見渡せる場合は、右安全確認ボタン51が押されたら、左安全確認ボタン50も押されたことにしてもよい。
【0091】
<第5実施形態>
次に、図9に基づいて、第5実施形態における安全確認装置14を説明する。この実施形態の安全確認装置14は、上記第1実施形態における左安全確認ボタン50の近傍に扉閉鎖部である左扉閉鎖ボタン60を設け、右安全確認ボタン51の近傍に扉閉鎖部である右扉閉鎖ボタン61を設けた例である。なお、上記第1実施形態と同一の構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0092】
この安全確認装置14の場合も、左部センサ30が検知すると出入口付近の左位置に設けられた左安全確認ボタン50が有効となり、右部センサ31が検知すると出入口付近の右位置に設けられた右安全確認ボタン51が有効となる。そして、この実施形態では、これらの左安全確認ボタン50と右安全確認ボタン51とを無効にした後、その場で左扉閉鎖ボタン60又は右扉閉鎖ボタン61を押すことで、迅速に入口扉4を閉鎖することができる。従って、利用者は迅速な安全確認と扉閉鎖を行なうことが可能となり、利便性向上を図ることができる。
【0093】
<第6実施形態>
次に、図10に基づいて、第6実施形態における安全確認装置15を説明する。この実施形態の安全確認装置15は、上記第1実施形態における後部センサ33に代えて、入出庫口3と車両Vとの間で人を検知するための左後部センサ36と右後部センサ37とを設けた例である。なお、上記第1実施形態と同一の構成には同一符号を付して説明する。
【0094】
図示するように、この第6実施形態の安全確認装置15は、左部センサ30と右部センサ31とをそれぞれ1つのセンサとし、これらのセンサ30,31を車両Vの近い位置で検知するようにしている。これにより、車両Vから降りる人を検知するようにしている。また、これらのセンサ30,31を、前部における検知エリアを前部検知エリア22まで延ばして、前部センサ32を無くしている。さらに、左後部センサ36を左部センサ30と入出庫口センサ34との間に設け、右後部センサ37を右部センサ31と入出庫口センサ34との間に設け、これらの間を通過する人を検知するようにしている。左後部センサ36及び右後部センサ37としては、例えば、マット式のセンサを用いることができる。
【0095】
この安全確認装置15の場合、入出庫口センサ34のみで検知した場合は左安全確認ボタン50及び右安全確認ボタン51の両方を有効にし、どちらか一方の安全確認ボタン50,51が押されて無効になったら、もう一方も無効にする。
【0096】
また、左安全確認ボタン50と同じ側にある左部センサ30又は左後部センサ36が検知したら左安全確認ボタン50を有効にし、かつ右安全確認ボタン51では左安全確認ボタン50を無効にできないようにする。右安全確認ボタン51と同じ側にある右部センサ31又は右後部センサ37が検知したら右安全確認ボタン51を有効にし、かつ左安全確認ボタン50では右安全確認ボタン51を無効にできないようにする。さらに、両側のセンサ30,31,36,37が検知したら、両方の安全確認ボタン50,51を有効にし、各々別々に安全確認ボタン50,51を押して無効にするようにする(有効状態1)。
【0097】
このような安全確認装置15によれば、両側のセンサ30,31,36,37で人の侵入を適切に検知するとともに、検知した側のエリアを見渡せる位置で安全確認をし、安全確認ボタン50,51を押すようになり、より迅速で適切な安全確認を行なうことが可能となる。
【0098】
なお、この実施形態において、上記第3実施形態における、前部検知エリア22において物体を検知する前部センサ32と、この前部センサ32の検知によって有効となる左前部安全確認ボタン53及び右前部安全確認ボタン54を設けるようにしてもよい。このようにすれば、駐車室2内の前部における安全確認を強化することができる。
【0099】
<第7実施形態>
次に、図11に基づいて、第7実施形態における安全確認装置16を説明する。この実施形態の安全確認装置16は、上記第6実施形態における左後部センサ36と右後部センサ37とを無くした例である。なお、上記第6実施形態及び第1実施形態と同一の構成には、同一符号を付して、その説明は省略する。
【0100】
図示するように、この第7実施形態の安全確認装置16は、左部センサ30と右部センサ31とをそれぞれ1つのセンサとし、前部検知エリア22から後部検知エリア23まで延ばしている。
【0101】
この第7実施形態に係る安全確認装置16によれば、車両Vの左側から降りる人、及び入出庫口3から車両左側に入る人を左部センサ30で検知し、車両Vの右側から降りる人、及び入出庫口3から車両右側に入る人を右部センサ31で検知することができる。この構成によれば、上記第6実施形態の安全確認装置15に比べて装置費用を抑えることができる。
【0102】
この実施形態の安全確認装置16でも、入出庫口センサ34のみで検知した場合は左安全確認ボタン50及び右安全確認ボタン51の両方を有効にし、どちらか一方の安全確認ボタン50,51が押されて無効になったら、もう一方も無効にする。
【0103】
また、左安全確認ボタン50と同じ側にある左部センサ30が検知したら左安全確認ボタン50を有効にし、かつ右安全確認ボタン51では左安全確認ボタン50を無効にできないようにする。右安全確認ボタン51と同じ側にある右部センサ31が検知したら右安全確認ボタン51を有効にし、かつ左安全確認ボタン50では右安全確認ボタン51を無効にできないようにする。さらに、両側のセンサ30,31が検知したら、両方の安全確認ボタン50,51を有効にし、各々別々に安全確認ボタン50,51を押して無効にするようにする(有効状態1)。
【0104】
このような安全確認装置16によれば、両側のセンサ30,31で人の侵入を適切に検知するとともに、検知した側のエリアを見渡せる位置で安全確認をし、安全確認ボタン50,51を押すようになり、迅速で適切な安全確認を行なうことが可能となる。
【0105】
なお、この実施形態においても、上記第3実施形態における、前部検知エリア22において物体を検知する前部センサ32と、この前部センサ32の検知によって有効となる左前部安全確認ボタン53及び右前部安全確認ボタン54を設けるようにしてもよい。このようにすれば、駐車室2内の前部における安全確認を強化することができる。
【0106】
以上のように、上記いずれの安全確認装置10?16によっても、機械式駐車設備1の駐車室2において、駐車室2内に設定された複数の検知エリア20?23におけるいずれかのセンサ30?37の検知に応じて、その検知した検知エリア20?23のいずれかを見渡すことができる位置に設けられた各々の安全確認ボタン50?54によって安全確認を適切にできるので、迅速な入出庫作業を行なうことが可能となる。
【0107】
つまり、駐車室2内の見渡しにくいエリアに対応して各々センサを設けたので、駐車室2への入庫時に車両Vに乗って人が入る場合でも、出庫時に車両Vがある状態で入出庫口3から車両Vの左右位置に人が入る場合でも、効果的に人の出入りの検知を行い、利用者はそれらの出入りしたエリアが見渡せる場所に設けられた複数の安全確認ボタン50?54のいずれかの位置で安全確認をすることになり、より適切な安全確認を迅速に行なうことが可能となる。
【0108】
しかも、車両Vが駐車した状態でも駐車室2の内部を見渡して安全確認ボタン50?54のいずれかを押すことができるので、駐車室2内に人を閉じ込めるおそれもなくなる。
【0109】
なお、上記した実施形態では、駐車室2の中央部に車両Vを駐車する車両配置部5が設けられた駐車室2を例に説明したが、他の形状の駐車室であっても適用でき、駐車室の形態、検知エリアの設定、センサの種類や配置などは、上記実施形態に限定されるものではない。
【0110】
また、上記した複数の実施形態における構成、又は一部の構成を組み合わせてもよく、上記各実施形態の構成に限定されるものではない。
【0111】
さらに、上記した実施形態は一例を示しており、各実施形態を組み合わせることも可能であり、本発明の要旨を損なわない範囲で種々の構成を変更してもよく、本発明は上記した実施形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明に係る安全確認装置は、入出庫部における安全確認を適切かつ迅速に行って効率良く入出庫したい機械式駐車設備において利用できる。
【符号の説明】
【0113】
1 機械式駐車設備
2 駐車室
3 入出庫口
4 入口扉
5 車両配置部(パレット)
6 操作盤
7 制御装置
10 安全確認装置(第1実施形態)
11 安全確認装置(第2実施形態)
12 安全確認装置(第3実施形態)
13 安全確認装置(第4実施形態)
14 安全確認装置(第5実施形態)
15 安全確認装置(第6実施形態)
16 安全確認装置(第7実施形態)
20 左検知エリア
21 右検知エリア
22 前部検知エリア
23 後部検知エリア
30 左部センサ
31 右部センサ
32 前部センサ
33 後部センサ
34 入出庫口センサ
35 車両検知センサ
36 左後部センサ
37 右後部センサ
50 左安全確認ボタン(安全確認操作部)
51 右安全確認ボタン(安全確認操作部)
52 最終安全確認ボタン(最終安全確認操作部)
53 左前部安全確認ボタン(前部安全確認操作部)
54 右前部安全確認ボタン(前部安全確認操作部)
60 左扉閉鎖ボタン(扉閉鎖部)
61 右扉閉鎖ボタン(扉閉鎖部)
V 車両
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駐車室内の検知エリアでセンサが物体を検知することで運転ロックがかかり、有効な安全確認操作部を操作することで前記運転ロックが解除される機械式駐車設備の安全確認装置であって、
前記駐車室の入出庫口において人の入退室を検知する入出庫口センサを備え、さらに少なくとも前記駐車室内の車両配置部より外側の周囲に設定された複数の検知エリアにおいて物体を検知するそれぞれのセンサと、
前記複数の検知エリアをそれぞれ見渡せる位置に配置された各々の安全確認操作部と、
前記複数の検知エリアにおける物体の検知状況に応じて、該物体を検知した前記検知エリアを見渡せる位置に配置された前記各々の安全確認操作部を有効にし、有効な安全確認操作部が操作されると該安全確認操作部を無効にし、全ての安全確認操作部が無効になると前記運転ロックを解除する、制御装置と、を備えていることを特徴とする安全確認装置。
【請求項2】
前記複数の安全確認操作部は、入出庫口から駐車室内の車両左側方を見渡せる左位置と車両右側方を見渡せる右位置とに備えられている請求項1に記載の安全確認装置。
【請求項3】
駐車室内の検知エリアでセンサが物体を検知することで運転ロックがかかり、有効な安全確認操作部を操作することで前記運転ロックが解除される機械式駐車設備の安全確認装置であって、
少なくとも前記駐車室内の車両配置部の周囲に設定された複数の検知エリアにおいて物体を検知するそれぞれのセンサと、
前記複数の検知エリアをそれぞれ見渡せる位置に配置された各々の安全確認操作部と、
前記複数の検知エリアにおける物体の検知状況に応じて前記各々の安全確認操作部を有効にし、有効な安全確認操作部が操作されると該安全確認操作部を無効にし、全ての安全確認操作部が無効になると前記運転ロックを解除する、制御装置と、を備え、
前記複数の安全確認操作部は、入出庫口から駐車室内の車両左側方を見渡せる左位置と車両右側方を見渡せる右位置とに備えられており、
前記制御装置は、前記車両配置部の左側方における検知エリアで物体を検知すると前記左位置の安全確認操作部を有効にし、
前記車両配置部の右側方における検知エリアで物体を検知すると前記右位置の安全確認操作部を有効にするように構成されていることを特徴とする安全確認装置。
【請求項4】
前記複数の検知エリアにおいて物体を検知するそれぞれの前記センサは、前記車両配置部より外側の前方位置において物体を検知するように配置された前部センサをさらに有し、
前記前部センサが物体を検知する位置を見渡すことができる駐車室内の前部左右位置に前部安全確認操作部がそれぞれ配設されており、
前記前部センサが物体を検知すると前部左右位置に配置されたそれぞれの前記前部安全確認操作部が有効となるように構成されている請求項1又は2に記載の安全確認装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記複数の検知エリアの1つの検知エリアにおいてセンサが物体を検知することで、複数の安全確認操作部を有効にするように構成されている請求項1、2、4のいずれか1項に記載の安全確認装置。
【請求項6】
前記制御装置は、それぞれの位置から同一検知エリアの安全確認ができる複数の安全確認操作部について、1つの安全確認操作部を操作することで他の安全確認操作部が無効となるように構成されている請求項1、2、4、5のいずれか1項に記載の安全確認装置。
【請求項7】
駐車室内の検知エリアでセンサが物体を検知することで運転ロックがかかり、有効な安全確認操作部を操作することで前記運転ロックが解除される機械式駐車設備の安全確認装置であって、
少なくとも前記駐車室内の車両配置部の周囲に設定された複数の検知エリアにおいて物体を検知するそれぞれのセンサと、
前記複数の検知エリアをそれぞれ見渡せる位置に配置された各々の安全確認操作部と、
前記複数の検知エリアにおける物体の検知状況に応じて前記各々の安全確認操作部を有効にし、有効な安全確認操作部が操作されると該安全確認操作部を無効にし、全ての安全確認操作部が無効になると前記運転ロックを解除する、制御装置と、を備え、
前記駐車室内の車両を検知する車両検知センサをさらに備え、
前記制御装置は、前記車両検知センサで車両が検知されないときは、前記複数の安全確認操作部のいずれかが操作されることで他の有効となっている全ての安全確認操作部を無効にするように構成されていることを特徴とする安全確認装置。
【請求項8】
前記複数の安全確認操作部は、一つが最終安全確認操作部として構成され、
前記最終安全確認操作部は、他の有効となっている全ての安全確認操作部を操作した後に操作することで無効となるように構成されている請求項1、2、4、5、6のいずれか1項に記載の安全確認装置。
【請求項9】
駐車室内の検知エリアでセンサが物体を検知することで運転ロックがかかり、有効な安全確認操作部を操作することで前記運転ロックが解除される機械式駐車設備の安全確認装置であって、
少なくとも前記駐車室内の車両配置部の周囲に設定された複数の検知エリアにおいて物体を検知するそれぞれのセンサと、
前記複数の検知エリアをそれぞれ見渡せる位置に配置された各々の安全確認操作部と、
前記複数の検知エリアにおける物体の検知状況に応じて前記各々の安全確認操作部を有効にし、有効な安全確認操作部が操作されると該安全確認操作部を無効にし、全ての安全確認操作部が無効になると前記運転ロックを解除する、制御装置と、を備え、
前記複数の安全確認操作部は、出入口付近に備えられ、該安全確認操作部に近接する位置に扉閉鎖部が配設されていることを特徴とする安全確認装置。
【請求項10】
前記複数の安全確認操作部は、点灯部を有し、
前記点灯部は、有効な安全確認操作部と無効な安全確認操作部とで点灯方法又は点灯色が異なるように構成されている請求項1、2、4、5、6、8のいずれか1項に記載の安全確認装置。
【請求項11】
請求項1?10のいずれか1項に記載の安全確認装置を備えたことを特徴とする機械式駐車設備。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-11-29 
出願番号 特願2014-181108(P2014-181108)
審決分類 P 1 651・ 841- YAA (E04H)
P 1 651・ 161- YAA (E04H)
P 1 651・ 537- YAA (E04H)
P 1 651・ 857- YAA (E04H)
P 1 651・ 121- YAA (E04H)
P 1 651・ 851- YAA (E04H)
最終処分 維持  
前審関与審査官 新井 夕起子  
特許庁審判長 秋田 将行
特許庁審判官 大塚 裕一
有家 秀郎
登録日 2018-04-27 
登録番号 特許第6329465号(P6329465)
権利者 新明和工業株式会社
発明の名称 機械式駐車設備における安全確認装置  
代理人 特許業務法人 有古特許事務所  
代理人 特許業務法人有古特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ