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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 G02F 審判 全部申し立て 2項進歩性 G02F 審判 全部申し立て 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降) G02F |
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管理番号 | 1359555 |
異議申立番号 | 異議2018-700806 |
総通号数 | 243 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2020-03-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-10-04 |
確定日 | 2019-12-09 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6303265号発明「画像表示装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6303265号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1?4]について訂正することを認める。 特許第6303265号の請求項1?4に係る特許を取り消す。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6303265号(以下「本件特許」という。)についての主な経緯は次のとおりである。 平成25年 2月15日 :出願 平成30年 3月16日 :特許登録(請求項の数3) 平成30年 4月 4日 :特許公報発行 平成30年10月 4日 :特許異議申立人鈴木美香による請求項1? 3に係る特許に対する特許異議の申立て 平成30年11月12日付け:取消理由通知書 平成31年 1月11日 :意見書(特許権者)及び訂正請求書 平成31年 3月13日 :意見書(特許異議申立人) 平成31年 4月16日付け:取消理由通知書(決定の予告) 令和 元年 6月18日 :意見書(特許権者)及び訂正請求書 なお、令和元年6月18日付け訂正請求書による訂正の請求があったので、当審は、特許法第120条の5第5項の規定に基づき、特許異議申立人に対して、令和元年6月27日付け通知書により、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えたけれども、特許異議申立人は、その期間内に、意見書を提出しなかった。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和元年6月18日付け訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、次のとおりである(下線は、訂正箇所として特許権者が付したものである。)。 なお、本件訂正は、一群の請求項である訂正後の請求項1?4について請求されている。 (1)訂正事項1 請求項1に、 「(4)前記偏光子よりも視認側に配置される、透明導電層が積層された基材フィルム、及び (5)前記基材フィルムよりも視認側に配置される飛散防止フィルム を有し、 前記飛散防止フィルムは、3000nm未満のリタデーションを有する配向フィルムであり、 前記基材フィルムは、3000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムである、 画像表示装置。」 と記載されているのを、 「(4)前記偏光子よりも視認側に配置される、タッチパネルの透明導電層が積層された基材フィルム、及び (5)前記基材フィルムよりも視認側に配置される飛散防止フィルム を有し、 前記飛散防止フィルムは、100nm以上3000nm未満のリタデーションを有する配向フィルムであり、 前記基材フィルムは、6000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであり、その配向主軸が前記偏光子の偏光軸に対して45度±10度以下となるように配置される、 画像表示装置(但し、前記飛散防止フィルムの配向主軸と前記基材フィルムの配向主軸とが形成する角が0度又は90度である場合を除く)。」 に訂正する。 (2)訂正事項2 請求項2に、 「前記基材フィルムが、その配向主軸が前記偏光子の偏光軸に対して45度となるように配置される、請求項1に記載の画像表示装置。」 と記載されているのを、 「前記基材フィルムが、その配向主軸が前記偏光子の偏光軸に対して45度となるように配置される、請求項1に記載の画像表示装置(但し、前記飛散防止フィルムの配向主軸と前記基材フィルムの配向主軸とが形成する角が0度±3度以下又は90度±3度以下である場合を除く)。」 に訂正する。 (3)訂正事項3 請求項3に、 「前記連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードである、請求項1又は2に記載の画像表示装置。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、 「前記連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードである、請求項1に記載の画像表示装置(但し、前記飛散防止フィルムの配向主軸と前記基材フィルムの配向主軸とが形成する角が0度±1度以下又は90度±1度以下である場合を除く)。」 と記載し、請求項3とする。 (4)訂正事項4 請求項3に、 「前記連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードである、請求項1又は2に記載の画像表示装置。」とあるうち、請求項2を引用するものについて、 「前記連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードである、請求項2に記載の画像表示装置(但し、前記飛散防止フィルムの配向主軸と前記基材フィルムの配向主軸とが形成する角が0度±10度以下又は90度±10度以下である場合を除く)。」 と記載し、請求項4とする。 2 訂正要件の判断 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的 訂正事項1は、次の内容、すなわち、 (i) 「透明導電層が積層された基材フィルム」が「タッチパネルの透明導電層が積層された基材フィルム」であることに限定すること、 (ii) 「飛散防止フィルム」の「リタデーション」が「3000nm未満」であったのを「100nm以上3000nm未満」であることに限定すること、 (iii) 「基材フィルム」の「リタデーション」の範囲が「3000nm以上150000nm以下」であったのを「6000nm以上150000nm以下」であることに限定すること、 (iv) 「基材フィルム」の「配向主軸」と「前記偏光子の偏光軸」との配置関係について、「基材フィルム」「の配向主軸が前記偏光子の偏光軸に対して45度±10度以下となるように配置される」ことを限定すること、 (v) 「前記飛散防止フィルムの配向主軸と前記基材フィルムの配向主軸とが形成する角が0度又は90度である場合を除く」ことを限定すること、 からなるものである(下線は当審が付した。以下同じ。)。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項追加の有無 (ア)上記ア(i)について 本件特許に係る明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)の【0012】には、「・・・タッチパネル(6)は、2枚の透明導電性フィルム(11,12)がスペーサー(13)を介して配置された構造を有する。透明導電性フィルム(11,12)は、基材フィルム(11a,12a)と透明導電層(11b,12b)とを積層したものである。・・・」と記載されている。 よって、上記ア(i)の点は、新規事項を追加するものではない。 (イ)上記ア(ii)について 本件明細書等の【0025】には、「・・・低リタデーション配向フィルムのリタデーションの下限値は、それを単独で用いた場合に虹斑が生じ得るという観点から、50nm以上、100nm以上、200nm以上、300nm以上、400nm以上、又は500nm以上である。・・・」と記載されている。 よって、上記ア(ii)の点は、新規事項を追加するものではない。 (ウ)上記ア(iii)について 本件明細書等の【0022】には、「・・・高リタデーション配向フィルムのリタデーションの下限値は、好ましくは4500nm以上、好ましくは6000nm以上、好ましくは8000nm以上、好ましくは10000nm以上である。・・・」と記載されている。 よって、上記ア(iii)の点は、新規事項を追加するものではない。 (エ)上記ア(iv)について 本件明細書等の【0017】には、「高リタデーション配向フィルムの配向主軸と視認側偏光子の偏光軸とが形成する角度(高リタデーション配向フィルムと偏光子とが同一平面状にあると仮定する)は、特に制限されないが、虹斑を低減するという観点から、45度に近いことが好ましい。例えば、前記角度は、好ましくは45度±25度以下、好ましくは45度±20度以下である。特に、画像表示装置をサングラス等の偏光フィルムを介して斜め方向から観察する場合における虹斑の低減、低リタデーション配向フィルムの角度依存性をより小さくする観点から、前記角度は好ましくは45度±15度以下、好ましくは45度±10度以下、好ましくは45度±5度以下、好ましくは45度±3度以下、45度±2度以下、45度±1度以下、45度である。・・・」と記載されている。 よって、上記ア(iv)の点は、新規事項を追加するものではない。 (オ)上記ア(v)について a 本件明細書等の【0016】には、「低リタデーション配向フィルムの配向主軸と視認側偏光子の偏光軸(出射する偏光の振動方向と平行な軸)とが形成する角度(低リタデーション配向フィルムと偏光子とが同一平面状にあると仮定する)は、任意である。」と記載されている。そして、上記(エ)のとおり、本件明細書等の【0017】には、「高リタデーション配向フィルムの配向主軸と視認側偏光子の偏光軸とが形成する角度」が、「45度±10度以下」であってよいと記載されている。 そうすると、本件明細書等には、「高リタデーション配向フィルムの配向主軸と視認側偏光子の偏光軸とが形成する角度」が、「45度±10度以下」である場合において、低リタデーション配向フィルムの配向主軸と高リタデーション配向フィルムの配向主軸とが形成する角度が、任意であることが記載されているといえる。 b 加えて、本件明細書等の【0114】・【0115】及び図2?4には、試験例2として、高リタデーション配向フィルムと視認側偏光子の偏光軸とが形成する角度を45度の近傍にした場合において、低リタデーション配向フィルムの配向主軸と視認側偏光子の偏光軸とが形成する角度を0度?90度のいずれの角度にしても、虹斑が抑制され優れた視認性が得られることが記載されていると認められる。 そして、上記では、「低リタデーション配向フィルムの配向主軸と視認側偏光子の偏光軸とが形成する角度」に着目された表現がなされているところ、これを「低リタデーション配向フィルムの配向主軸と高リタデーション配向フィルムの配向主軸とが形成する角度」に着目して表現し直すことができ、そのようにすれば、本件明細書等には、高リタデーション配向フィルムと視認側偏光子の偏光軸とが形成する角度を45度の近傍にした場合において、低リタデーション配向フィルムの配向主軸と高リタデーション配向フィルムの配向主軸とが形成する角度を0度?90度のいずれの角度にしても、虹斑が抑制され優れた視認性が得られることが記載されているといえる。 c 上記a及びbを総合的に考慮すれば、上記ア(v)のように、「前記飛散防止フィルムの配向主軸と前記基材フィルムの配向主軸とが形成する角が0度又は90度である場合を除」いたことによって、新たな技術的事項が導入されることはないと解するのが相当である。 よって、上記ア(v)の点は、新規事項を追加するものではない。 (カ)小括 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の実質拡張変更の有無 上記ア及びイにも照らせば、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 エ 訂正事項1の小括 よって、訂正事項1は、訂正要件を満たす。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的 訂正事項2は、「但し、前記飛散防止フィルムの配向主軸と前記基材フィルムの配向主軸とが形成する角が0度±3度以下又は90度±3度以下である場合を除く」ことを限定するものである。 したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項追加の有無 上記(1)イ(オ)と同様の議論が成り立つ。 よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の実質拡張変更の有無 上記ア及びイにも照らせば、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 エ 訂正事項2の小括 よって、訂正事項2は、訂正要件を満たす。 (3)訂正事項3について ア 訂正の目的 訂正事項3は、次の内容、すなわち、 (i) 請求項1及び2の記載を引用する請求項3について、請求項2の記載を引用しないものとすること、 (ii) 「但し、前記飛散防止フィルムの配向主軸と前記基材フィルムの配向主軸とが形成する角が0度±1度以下又は90度±1度以下である場合を除く」ことを限定すること、 からなるものである。 したがって、(i)は、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に規定するいわゆる引用関係の解消を目的とするものであり、(ii)は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項追加の有無 (ア)上記ア(i)について 上記訂正は、引用関係の解消にすぎないから、これによって、新たな技術的事項が導入されることはない。 (イ)上記ア(ii)について 上記(1)イ(オ)と同様の議論が成り立つ。 (ウ)小括 よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の実質拡張変更の有無 上記ア及びイにも照らせば、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 エ 訂正事項3の小括 よって、訂正事項3は、訂正要件を満たす。 (4)訂正事項4について ア 訂正の目的 訂正事項4は、次の内容、すなわち、 (i) 請求項1及び2の記載を引用する請求項3について、請求項1の記載を引用しないものとすること、 (ii) 「但し、前記飛散防止フィルムの配向主軸と前記基材フィルムの配向主軸とが形成する角が0度±10度以下又は90度±10度以下である場合を除く」ことを限定すること、 からなるものである。 したがって、(i)は、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に規定するいわゆる引用関係の解消を目的とするものであり、(ii)は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項追加の有無 (ア)上記ア(i)について 上記訂正は、引用関係の解消にすぎないから、これによって、新たな技術的事項が導入されることはない。 (イ)上記ア(ii)について 上記(1)イ(オ)と同様の議論が成り立つ。 (ウ)小括 よって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の実質拡張変更の有無 上記ア及びイにも照らせば、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 エ 訂正事項4の小括 よって、訂正事項4は、訂正要件を満たす。 3 訂正の適否の小括 以上のとおり、本件訂正は、訂正要件を満たす。 よって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1?4]について訂正することを認める。 第3 本件発明の認定 本件訂正は上記第2のとおり認められたので、本件訂正後の請求項1?4に係る発明(以下、それぞれ、「本件発明1」?「本件発明4」といい、これらの発明を総称して、「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 [本件発明1] (1)連続的な発光スペクトルを有する白色光源、 (2)画像表示セル、 (3)前記画像表示セルよりも視認側に配置される偏光子、 (4)前記偏光子よりも視認側に配置される、タッチパネルの透明導電層が積層された基材フィルム、及び (5)前記基材フィルムよりも視認側に配置される飛散防止フィルム を有し、 前記飛散防止フィルムは、100nm以上3000nm未満のリタデーションを有する配向フィルムであり、 前記基材フィルムは、6000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであり、その配向主軸が前記偏光子の偏光軸に対して45度±10度以下となるように配置される、 画像表示装置(但し、前記飛散防止フィルムの配向主軸と前記基材フィルムの配向主軸とが形成する角が0度又は90度である場合を除く)。 [本件発明2] 前記基材フィルムが、その配向主軸が前記偏光子の偏光軸に対して45度となるように配置される、請求項1に記載の画像表示装置(但し、前記飛散防止フィルムの配向主軸と前記基材フィルムの配向主軸とが形成する角が0度±3度以下又は90度±3度以下である場合を除く)。 [本件発明3] 前記連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードである、請求項1に記載の画像表示装置(但し、前記飛散防止フィルムの配向主軸と前記基材フィルムの配向主軸とが形成する角が0度±1度以下又は90度±1度以下である場合を除く)。 [本件発明4] 前記連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードである、請求項2に記載の画像表示装置(但し、前記飛散防止フィルムの配向主軸と前記基材フィルムの配向主軸とが形成する角が0度±10度以下又は90度±10度以下である場合を除く)。 第4 取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 (1)はじめに 平成31年1月11日付け訂正請求書による訂正(以下「第1次訂正」という。)後の請求項1?3に係る特許に対して、当審が平成31年4月16日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告に係るものであり、以下、単に「取消理由」という。)の要旨は、後記(2)及び(3)のとおりである。 ここで、第1次訂正後の請求項は、次のとおりであった。 [請求項1] (1)連続的な発光スペクトルを有する白色光源、 (2)画像表示セル、 (3)前記画像表示セルよりも視認側に配置される偏光子、 (4)前記偏光子よりも視認側に配置される、タッチパネルの透明導電層が積層された基材フィルム、及び (5)前記基材フィルムよりも視認側に配置される飛散防止フィルム を有し、 前記飛散防止フィルムは、100nm以上3000nm未満のリタデーションを有する配向フィルムであり、 前記基材フィルムは、6000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであり、その配向主軸が前記偏光子の偏光軸に対して45度±25度以下となるように配置される、 画像表示装置(但し、前記飛散防止フィルムの配向主軸と、前記基材フィルムの配向主軸とが、平行又は垂直である場合を除く)。 [請求項2] 前記基材フィルムが、その配向主軸が前記偏光子の偏光軸に対して45度となるように配置される、請求項1に記載の画像表示装置。 [請求項3] 前記連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードである、請求項1又は2に記載の画像表示装置。 (2)明確性要件違反 第1次訂正後の請求項1?3に係る発明は、「(但し、前記飛散防止フィルムの配向主軸と、前記基材フィルムの配向主軸とが、平行又は垂直である場合を除く)」との特定事項を含むところ、当該特定事項の記載により、飛散防止フィルムの配向主軸と基材フィルムの配向主軸とのなす角について、どの角度が特定されたことになるのかが明確でない。 よって、当該請求項1?3に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (3)進歩性欠如 第1次訂正後の請求項1?3に係る発明は、次の引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項1?3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 特許第5051328号(甲5、以下「引用例1」という。) 特開2011-107198号公報(甲1、以下「引用例2」という。) 特開2008-276729号公報(特許異議申立書23頁で引用された文献C、周知例) 特開2013-20130号公報(特許異議申立書23頁で引用された文献D、周知例) 特開2011-168652号公報(特許異議申立書23頁で引用された文献E、周知例) 特開2011-167914号公報(異議2018-700805事件の特許異議申立書25頁で引用された文献、周知例) 特開2008-192620号公報(甲2、周知例) 特開2010-244059号公報(異議2018-700805事件の甲6、周知例) 特開2004-170875号公報(特許異議申立書24頁で引用された文献、周知例) 特開2012-214026号公報(特許異議申立書24頁で引用された文献、周知例) 2 明確性要件についての判断 本件訂正により、「(但し、前記飛散防止フィルムの配向主軸と、前記基材フィルムの配向主軸とが、平行又は垂直である場合を除く)」との特定事項は存在しないこととなった。 そして、本件発明の特定事項のうち、他に不明確なものは見当たらない。 よって、本件発明の記載は、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしている。 この取消理由は解消した。 3 進歩性についての判断 当審は、上記1(3)に係る進歩性欠如の取消理由に基づいて、本件発明1?本件発明4が、次のとおり、進歩性を欠如するものと判断する。 (1)引用例の記載事項の認定 ア 引用例1について (ア)引用例1(特許第5051328号公報)には、次の事項が記載されている。 a 「【特許請求の範囲】」、 「ポリエステル基材上にプライマー層が形成され、前記プライマー層上にハードコート層が形成された光学積層体であって、 前記ポリエステル基材は、8000nm以上のリタデーションを有し、かつ、屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)との差(nx-ny)が、0.07?0.20であり、 前記プライマー層の屈折率(np)と、前記ポリエステル基材の遅相軸方向の屈折率(nx)及び進相軸方向の屈折率(ny)が、ny<np<nxなる関係を有し、 前記ハードコート層の屈折率(nh)と、前記ポリエステル基材の遅相軸方向の屈折率(nx)及び進相軸方向の屈折率(ny)が、ny<nh<nxなる関係を有する ことを特徴とする光学積層体。」(【請求項1】) b 「【背景技術】」、 「液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(OELD又はIELD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、タッチパネル、電子ペーパー等の画像表示装置は、画像表示パネルの表示画面側に偏光子が配置され、更に、最表面に反射防止性、ハードコート性等の機能を有する光学積層体が設けられている。」(【0002】) c 「図1は、本発明の光学積層体の一例を模式的に示す断面図である。 図1に示すように、本発明の光学積層体10は、ポリエステル基材11上にプライマー層12が形成され、プライマー層12上にハードコート層13が形成されている。 このような構成の本発明の光学積層体において、上記ポリエステル基材は、8000nm以上のリタデーションを有する。リタデーションが8000nm未満であると、本発明の光学積層体を用いた液晶表示装置の表示画像にニジムラが生じてしまう。一方、上記ポリエステル基材のリタデーションの上限としては特に限定されないが、3万nm程度であることが好ましい。3万nmを超えると、これ以上の表示画像のニジムラ改善効果の向上が見られず、また、膜厚が相当に厚くなるため好ましくない。 上記ポリエステル基材のリタデーションは、ニジムラ防止性及び薄膜化の観点から、1万?2万nmであることが好ましい。」(【0015】) d 「このような本発明の光学積層体を用いた本発明の偏光板において、上記光学積層体は、上記ポリエステル基材の遅相軸と後述する偏光素子(液晶セルの視認側に配置された偏光素子)の吸収軸とのなす角度が、0°±30°又は90°±30°となるように配設されることが好ましい。上記ポリエステル基材の遅相軸と偏光板の吸収軸とのなす角度が上記範囲内にあることで、本発明の偏光板を用いた液晶表示装置の表示画像にニジムラが生じることを極めて高度に抑制することができる。この理由は明確ではないが、以下の理由によると考えられる。すなわち、外光や蛍光灯の光のない環境下(以下、このような環境下を「暗所」ともいう)では、本発明の光学積層体のポリエステル基材の遅相軸と偏光板の吸収軸とのなす角度は、どのような角度であってもニジムラの発生を抑制できる。しかしながら、外光や蛍光灯の光のある環境下(以下、このような環境下を「明所」ともいう)においては、外光や蛍光灯の光は、連続的な幅広いスペクトルを有するものばかりではないため、ポリエステル基材の遅相軸と偏光素子の吸収軸とのなす角度を上述の範囲にしないと、ニジムラが生じてしまい表示品位が低下してしまう。 更に、液晶表示装置におけるカラーフィルターを透過したバックライトの光も連続的な幅広いスペクトルを有するものばかりではくなるため、ポリエステル基材の遅相軸と偏光素子の吸収軸とのなす角度を上述の範囲にしないと、ニジムラが生じてしまい表示品位が低下してしまうと推測している。」(【0086】)、 「本発明はまた、上記光学積層体又は上記偏光板を備えてなる画像表示装置でもある。上記画像表示装置は、LCD、PDP、FED、ELD(有機EL、無機EL)、CRT、タッチパネル、電子ペーパー、タブレットPC等が挙げられる。」(【0087】)、 「上記LCDは、透過性表示体と、上記透過性表示体を背面から照射する光源装置とを備えてなるものである。本発明の画像表示装置がLCDである場合、この透過性表示体の表面に、本発明の光学積層体又は本発明の偏光板が形成されてなるものである。」(【0088】)、 「本発明が上記光学積層体を有する液晶表示装置の場合、光源装置の光源は光学積層体の下側(基材側)から照射される。なお、STN型の液晶表示装置には、液晶表示素子と偏光板との間に、位相差板が挿入されてよい。この液晶表示装置の各層間には必要に応じて接着剤層が設けられてよい。」(【0089】)、 「上記PDPは、表面ガラス基板と当該表面ガラス基板に対向して間に放電ガスが封入されて配置された背面ガラス基板とを備えてなるものである。本発明の画像表示装置がPDPである場合、上記表面ガラス基板の表面、又はその前面板(ガラス基板又はフィルム基板)に上述した光学積層体を備えるものでもある。」(【0090】)、 「その他の画像表示装置は、電圧をかけると発光する硫化亜鉛、ジアミン類物質等の発光体をガラス基板に蒸着し、基板にかける電圧を制御して表示を行うELD装置、又は、電気信号を光に変換し、人間の目に見える像を発生させるCRTなどの画像表示装置であってもよい。この場合、上記のような各表示装置の表面又はその前面板の表面に上述した光学積層体を備えるものである。」(【0091】)、 「本発明の光学積層体は、いずれの場合も、テレビジョン、コンピュータなどのディスプレイ表示に使用することができる。特に、液晶パネル、PDP、ELD、タッチパネル、電子ペーパー等の高精細画像用ディスプレイの表面に好適に使用することができる。」(【0092】)、 「なかでも、本発明の光学積層体は、タッチパネルに好適に用いることができる。このような本発明の光学積層体を用いたタッチパネルもまた、本発明の一つである。 すなわち、本発明のタッチパネルは、本発明の光学積層体を用いたタッチパネルであって、上記光学積層体のハードコート層のプライマー層側と反対側の表面上に不可視電極が設けられていることを特徴とする。 ここで、一般的に、タッチパネルには、位置検出の方法により、光学方式、超音波方式、静電容量方式、抵抗膜方式などが知られている。 上記抵抗膜方式のタッチパネルは、透明導電性フィルムと透明導電体層付ガラスとがスペーサーを介して対向配置されており、透明導電性フィルムに電流を流し透明導電体層付ガラスにおける電圧を計測するような構造となっている。一方、静電容量方式のタッチパネルは、基材上に透明導電層を有するものを基本的構成とし、可動部分がないことが特徴であり、高耐久性、高透過率を有するため、液晶表示ディスプレイ、携帯電話及び車載用ディスプレイ等において適用されている。 上記タッチパネルにおいて、透明導電体層をパターン化する場合がある。しかしながら、上記透明導電体層をパターン化すると、パターン部と非パターン化部とでは、透明導電体層を構成する材料が一般的に高屈折率であるために、パターン部と非パターン部との屈折率差などの相違が明確化して、表示画面からパターン部分が見えてしまい、ディスプレイとしての外観を損なうだけではなく、表示画面の視認性も損なう。 特に、静電容量方式のタッチパネルにおいては、透明導電体層が入射表面側に用いられるためその影響が強く、透明導電体層をパターン化した場合にもそのパターンが表示画面から見えないようにする不可視化させた不可視電極であることが望まれている。」(【0093】)、 「なお、上記不可視電極とは、透明導電体層の電極パターンが表示画面側から視認できないようにするための光学機能層が積層された状態の電極であり、その構成としては、高屈折率層、低屈折率層及び透明導電体層がこの順に積層された構成が挙げられる。このような構成の不可視電極は、上記高屈折率層及び低屈折率層の屈折率と膜厚とを、後述する範囲で組み合わせることで不可視化することが可能になり、また、上述したハードコート層の表示画面側の表面に、上記透明導電体層が最表面となるように積層される。 本発明のタッチパネルは、上記不可視電極が設けられており、特に、静電容量方式のタッチパネルであることが好ましい。」(【0094】)、 「また、本発明の光学積層体が、ポリエステル基材の両面にプライマー層及びハードコート層が形成された構成の場合、本発明のタッチパネルは、上記不可視電極は、該光学積層体の少なくとも一方のハードコート層の、プライマー層側と反対側の表面上に不可視電極が設けられている。このような構成のタッチパネルもまた、本発明の一つである。 図3は、本発明のタッチパネルの一例を模式的に示す断面図である。 図3に示した本発明のタッチパネル30において、本発明の光学積層体は、ポリエステル基材31の両面にプライマー層32が形成され、このプライマー層32のそれぞれポリエステル基材31側と反対側面上にハードコート層33が形成されている。そしてこのような本発明の光学積層体は、粘着層300介して2層積層されている(以下、表示画面側の光学積層体を上層の光学積層体、他方の光学積層体を下層の光学積層体ともいう)。更に、上層の光学積層体及び下層の光学積層体は、それぞれ、表示画面側のハードコート層33の面上に不可視電極34が積層されている。この不可視電極34は、ハードコート層33側から高屈折率層35、低屈折率層36及び透明導電体層37がこの順に積層されている。 このような本発明のタッチパネル30は、粘着層300を介して、下層の光学積層体の不可視電極34と、上層の光学積層体の表示画面側と反対側のハードコート層33とが積層されている。 また、上層の光学積層体のハードコート層33のプライマー層32側と反対側に積層された不可視電極34は、粘着層38を介してカバーガラス39が設けられ、このカバーガラス39が最表面を構成している。」(【0095】) e 「(ニジムラ評価) 実施例、比較例にて作製した光学積層体を、液晶モニター(FLATORON IPS226V(LG Electronics Japan社製))の観察者側の偏光素子上に配置し、液晶表示装置を作製した。なお、ポリエステル基材の遅相軸と液晶モニターの観察者側の偏光素子の吸収軸とのなす角度が0°となるように配置した。 そして、暗所及び明所(液晶モニター周辺照度400ルクス)にて、正面及び斜め方向(約50度)から目視及び偏光サングラス越しに表示画像の観察を行い、ニジムラの有無を以下の基準に従い評価した。偏光サングラス越しの観察は、目視よりも非常に厳しい評価法である。観察は10人で行い、最多数の評価を観察結果としている。 ◎:偏光サングラス越しでニジムラが観察されない。 ○:偏光サングラス越しでニジムラが観察されるが、薄く、目視ではニジムラが観察されない、実使用上問題ないレベル。 △:偏光サングラス越しでニジムラが観察され、目視ではニジムラがごく薄く観察される。 ×:偏光サングラス越しでニジムラが強く観察され、目視でもニジムラが観察される。」(【0136】) (イ)上記(ア)によれば、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。なお、引用発明の認定に用いた記載箇所等を、参考までに括弧内に示してある(以下、同じ。)。 「液晶表示ディスプレイに適用されているタッチパネルを備える装置であって、 (【0093】)、 前記タッチパネルは、透明導電体層37が積層されているポリエステル基材31(【0095】)、及び、 最表面を構成しているカバーガラス39(【0095】)、 を有し、 前記ポリエステル基材は、8000nm以上のリタデーションを有し、リタデーションの上限としては、3万nm程度であり、3万nmを超えると、これ以上の表示画像のニジムラ改善効果の向上が見られず、また、膜厚が相当に厚くなるため好ましくない、(【0015】) 装置。」 イ 引用例2について (ア)引用例2(特開2011-107198号公報)には、次の事項が記載されている。 a 「【特許請求の範囲】」、 「バックライト光源と、液晶セルと、液晶セルの視認側に配した偏光板とを少なくとも有する液晶表示装置において、 バックライト光源として白色発光ダイオードを用いるとともに、 前記偏光板の視認側に、3000?30000nmのリタデーションを有する高分子フィルムを、前記偏光板の吸収軸と前記高分子フィルムの遅相軸とのなす角が凡そ45度となるように配して用いることを特徴とする液晶表示装置の視認性改善方法。」(【請求項1】) b 「本発明では、前記偏光板の視認側に特定範囲のリタデーションを有する高分子フィルムを配することを特徴とする。本発明者は複屈折体を透過した透過光による干渉色スペクトルの包絡線形状に着目し、本発明の着想を得たものである。すなわち、光源の発光スペクトルと複屈折体を透過した透過光による干渉色スペクトルの包絡線形状とが相似形となることで視認性が顕著に改善することを見出し、本発明に至ったものである。具体的に、本発明の構成により視認性が改善するという効果は以下の技術思想による。」(【0020】)、 「直交する2つの偏光板の間に複屈折性を有する高分子フィルムを配した場合、偏光板から出射した直線偏光が高分子フィルムを通過する際に乱れが生じ、光が透過する。透過した光は高分子フィルムの複屈折と厚さの積であるリタデーションに特有の干渉色を示す。本発明では、連続的な発光スペクトルを有する白色LEDを光源とする。このため、高分子フィルムによっても達成可能な特定のリタデーション範囲に制御することにより、干渉色を示す透過光のスペクトルの包絡線形状が光源の発光スペクトルに近似させることが可能となる。本発明はこれにより視認性の向上を図るに至ったものである。(図3参照)」(【0021】)、 「上記効果を奏するために、本発明に用いられる高分子フィルムは、3000?30000nmのリタデーションを有していなければならない。リタデーションが3000nm未満では、サングラスなどの偏光板を通して画面を観察した時、強い干渉色を呈するため、包絡線形状が光源の発光スペクトルと相違し、良好な視認性を確保することができない。好ましいリタデーションの下限値は4500nm、より好ましい下限値は6000nm、更に好ましい下限値は8000nm、より更に好ましい下限値は10000nmである。」(【0022】)、 「一方、リタデーションの上限は30000nmである。それ以上のリタデーションを有する高分子フィルムを用いたとしても更なる視認性の改善効果は実質的に得られないばかりか、フィルムの厚みも相当に厚くなり、工業材料としての取り扱い性が低下するので好ましくない。」(【0023】)、 「なお、本発明のリタデーションは、2軸方向の屈折率と厚みを測定して求めることもできるし、KOBRA-21ADH(王子計測機器株式会社)といった市販の自動複屈折測定装置を用いて求めることもできる。」(【0024】)、 「本発明は幅広い発光スペクトルを有する白色LEDを光源に用いるため、高分子フィルムのリタデーションを上記範囲に設定することで、比較的簡便な構成のみで透過光のスペクトルの包絡線形状を光源の発光スペクトルに近似させることが可能となる。すなわち、従来技術では不連続な発光スペクトルを有する光源を用いるがために、極めて高いリタデーション(100000nm超)を有する複屈折体を用いなければ、視認性の改善ができなかったところ、連続的な発光スペクトルを有するという白色LED光源の性質を利用して上記のように比較的簡便な構成で視認性を向上させるという特異な効果を奏する。」(【0025】)、 「本発明に用いられる高分子フィルムは、液晶セルの視認側に配した偏光板の視認側に、前記偏光板の吸収軸と前記高分子フィルムの遅相軸とのなす角が凡そ45度となるように配して使用される。高分子フィルムを偏光板の視認側に配する方法は、偏光板の最外層に直接に高分子フィルムを積層しても構わないし、他の透明部材を介して配しても構わない。また、液晶表示装置の視認側最表面に高分子フィルムを設置、貼り合わせてもよい。高分子フィルムを直接、または他の透明部材を介して配する際は、粘着層を設けた高分子フィルムを用いることも好ましい態様である。」(【0026】)、 「高分子フィルムを配する際は、偏光板の吸収軸と前記高分子フィルムの遅相軸とのなす角が凡そ45度となるようにすることが望ましい。これによりサングラスなどの偏光板がどのような角度であっても高い透過光を得ることができる。なお、上記角度は厳密に45度である必要はなく、本発明の効果を損なわない範囲であれば、必要に応じて適宜調節しても良い。前記角度の好ましい範囲は30?60度、より好ましくは40?50度である。」(【0027】) c 「本発明における高分子フィルムは、粘着剤層、離型層、帯電防止層などの当該フィルム上に形成される層との接着性、耐水性、耐薬品性等を改良する目的で、フィルム表面を公知の方法で表面処理、すなわちコロナ放電処理(空気中、窒素中、炭酸ガス中など)や易接着処理を行なってもよい。易接着処理は、公知の各種の方法を用いることができ、フィルム製造工程中で、あるいは一軸または二軸延伸後のフィルムに公知の各種易接着剤を塗布する方法などが好適に採用される。」(【0034】) (イ)上記(ア)によれば、引用例2には、次の技術的事項が記載されていると認められる。 「直交する2つの偏光板の間に複屈折性を有する高分子フィルムを配した場合、偏光板から出射した直線偏光が高分子フィルムを通過する際に乱れが生じ、光が透過すること、(【0021】) 透過した光は高分子フィルムの複屈折と厚さの積であるリタデーションに特有の干渉色を示すこと、(【0021】) そこで、連続的な発光スペクトルを有する白色LEDを光源とすると、高分子フィルムによっても達成可能な特定のリタデーション範囲に制御することにより、干渉色を示す透過光のスペクトルの包絡線形状が光源の発光スペクトルに近似させることが可能となり、視認性の向上を図ることができること、(【0021】) 高分子フィルムは、強い干渉色を呈さず、良好な視認性を確保するとの観点から3000nm以上のリタデーションを有していなければならず、より好ましい下限値は6000nmであること、(【0022】) 高分子フィルムを配する際は、偏光板の吸収軸と前記高分子フィルムの遅相軸とのなす角が凡そ45度となるようにすることが望ましく、これによりサングラスなどの偏光板がどのような角度であっても高い透過光を得ることができること、(【0027】) 上記角度は厳密に45度である必要はなく、本発明の効果を損なわない範囲であれば、必要に応じて適宜調節しても良いのであり、前記角度の好ましい範囲は30?60度、より好ましくは40?50度であること。(【0027】)」 (ウ)さらに、上記(ア)によれば、引用例2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 「連続的な発光スペクトルを有する白色LEDからなるバックライト光源、(【0025】、請求項1) 液晶セル、(請求項1) 前記液晶セルの視認側に配した偏光板、(請求項1) 前記偏光板の視認側に配された、3000?30000nmのリタデーションを有し、好ましいリタデーションの下限値は6000nmである高分子フィルム、(請求項1、【0022】) とを含む液晶表示装置であって、 前記高分子フィルムは、帯電防止層を有しており、(【0034】) 前記偏光板の吸収軸と前記高分子フィルムの遅相軸とのなす角が凡そ45度となるように配されている、(請求項1) 液晶表示装置。」 (2)本件発明1の進歩性欠如 ア 本件発明1と引用発明1との対比 (ア)本件発明1の「連続的な発光スペクトルを有する白色光源」との特定事項について a 引用発明1は、「液晶表示ディスプレイに適用されているタッチパネルを備える装置」であるとともに、「表示画像のニジムラ改善効果」があるものであるから、本件発明1でいう「白色光源」を備えることが明らかである。 b しかしながら、引用発明1は、その「白色光源」が「連続的な発光スペクトルを有する」ことを明記しない。 (イ)本件発明1の「画像表示セル」との特定事項について a 引用発明1は、「液晶表示ディスプレイ」を備えるから、本件発明1でいう「画像表示セル」を備えることが明らかである。 b よって、引用発明1は、本件発明1の「画像表示セル」との特定事項を備える。 (ウ)本件発明1の「前記画像表示セルよりも視認側に配置される偏光子」との特定事項について a 引用発明1は、「液晶表示ディスプレイ」を備えるから、本件発明1でいう「前記画像表示セルよりも視認側に配置される偏光子」を備えることが明らかである。 b よって、引用発明1は、本件発明1の「前記画像表示セルよりも視認側に配置される偏光子」との特定事項を備える。 (エ)本件発明1の「前記偏光子よりも視認側に配置される、タッチパネルの透明導電層が積層された基材フィルム」及び「前記基材フィルムは、6000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであり、その配向主軸が前記偏光子の偏光軸に対して45度±10度以下となるように配置される」との特定事項について a 引用発明1の「タッチパネル」は、本件発明1の「タッチパネル」に相当する。 b 引用発明1の「タッチパネル」が、本件発明1でいう「前記偏光子よりも視認側に配置され」ていることは、明らかである。 c 引用発明1の「タッチパネル」が有する「透明導電体層37が積層されているポリエステル基材31」は、本件発明1の「タッチパネルの透明導電層が積層された基材フィルム」に相当する。 d 引用発明1の「タッチパネル」が有する「透明導電体層37が積層されているポリエステル基材31」は、「8000nm以上のリタデーションを有し、リタデーションの上限としては、3万nm程度であ」るから、本件発明1でいう「6000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであ」るといえる(以下「6000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルム」を「高リタデーション配向フィルム」という。)。 e よって、引用発明1は、本件発明1の「前記偏光子よりも視認側に配置される、タッチパネルの透明導電層が積層された基材フィルム」及び「前記基材フィルムは、」高リタデーション配向フィルムであるとの特定事項を備える。 しかし、引用発明1の「ポリエステル基材31」(高リタデーション配向フィルム)は、「その配向主軸が前記偏光子の偏光軸に対して45度±10度以下となるように配置される」とは特定されていない。 (オ)本件発明1の「前記基材フィルムよりも視認側に配置される飛散防止フィルム」、「前記飛散防止フィルムは、100nm以上3000nm未満のリタデーションを有する配向フィルムであ」ること(以下「100nm以上3000nm未満のリタデーションを有する配向フィルム」を「低リタデーション配向フィルム」という。)、及び、「(但し、前記飛散防止フィルムの配向主軸と前記基材フィルムの配向主軸とが形成する角が0度又は90度である場合を除く)」との特定事項について 引用発明1は、本件発明1の上記特定事項を備えない。 (カ)本件発明1の「画像表示装置」との特定事項について 引用発明1の「液晶表示ディスプレイに適用されているタッチパネルを備える装置」は、本件発明1の「画像表示装置」に相当する。 イ 一致点及び相違点の認定 上記アによれば、本件発明1と引用発明1とは、 「白色光源、 画像表示セル、 前記画像表示セルよりも視認側に配置される偏光子、 前記偏光子よりも視認側に配置される、タッチパネルの透明導電層が積層された基材フィルム、 を有し、 前記基材フィルムは、高リタデーション配向フィルムである、 画像表示装置。」 である点で一致し、次の点で相違する。 [相違点1] 「白色光源」について、本件発明1は「連続的な発光スペクトルを有する」のに対し、引用発明1は、そのように明記しない点。 [相違点2] 高リタデーション配向フィルムである基材フィルムについて、本件発明1は、「その配向主軸が前記偏光子の偏光軸に対して45度±10度以下となるように配置される」のに対し、引用発明1は、そのような特定をしない点。 [相違点3] 本件発明1は、「前記基材フィルムよりも視認側に配置される飛散防止フィルム」を有し、「前記飛散防止フィルム」は、低リタデーション配向フィルムであり、「前記飛散防止フィルムの配向主軸と前記基材フィルムの配向主軸とが形成する角が0度又は90度である場合」が除かれているのに対し、 引用発明1は、飛散防止フィルムを備えない点。 ウ 相違点1の判断 (ア)引用例1の【0086】には、「・・・外光や蛍光灯の光のない環境下(以下、このような環境下を「暗所」ともいう)では、本発明の光学積層体のポリエステル基材の遅相軸と偏光板の吸収軸とのなす角度は、どのような角度であってもニジムラの発生を抑制できる。しかしながら、外光や蛍光灯の光のある環境下(以下、このような環境下を「明所」ともいう)においては、外光や蛍光灯の光は、連続的な幅広いスペクトルを有するものばかりではないため、ポリエステル基材の遅相軸と偏光素子の吸収軸とのなす角度を上述の範囲にしないと、ニジムラが生じてしまい表示品位が低下してしまう。・・・」と記載されている。 よって、引用例1には、引用発明1の「液晶表示ディスプレイ」が備えるはずの光源(バックライト)が、外光や蛍光灯の光とは異なり、連続的な幅広いスペクトルを有するものであることが示唆されているといえる。 (イ)また、引用発明1は、引用例1の【0007】にあるとおり、光学積層体の光透過性基材として、ある程度高いリタデーション値を有するポリエステルフィルムを用いることで、従来のポリエステルフィルムからなる光透過性基材を備えた光学積層体を用いた場合と比較して、ニジムラの問題を改善できるものである。 そうすると、引用発明1は、引用例2に記載された技術的事項(上記(1)イ(イ))と同様の課題解決原理に基づいているものと解される。 (ウ)上記(ア)及び(イ)によれば、当業者であれば、引用発明1の白色光源についても、連続的な発光スペクトルを有する光源を採用するものといえるし、また、引用例2に記載された技術的事項と同様に、連続的な発光スペクトルを有する白色LEDを採用するものともいえる。 したがって、相違点1は、引用発明1、引用例1の記載及び引用例2に記載された技術的事項を踏まえ、格別ではない。 エ 相違点2の判断 (ア)引用例1の【0086】には、「ポリエステル基材の遅相軸と後述する偏光素子(液晶セルの視認側に配置された偏光素子)の吸収軸とのなす角度が、0°±30°又は90°±30°となるように配設されることが好ましい。」と記載されているところ、この記載は、当該角度が0°±30°又は90°±30°(以下、「0°±30°又は90°±30°」を「特定範囲角度値」という。)であることが、「好ましい」としているにとどまる。さらに、同段落には、「・・・外光や蛍光灯の光のない環境下・・・では、本発明の光学積層体のポリエステル基材の遅相軸と偏光板の吸収軸とのなす角度は、どのような角度であってもニジムラの発光を抑制できる。」と記載されている。 このような引用例1の記載からみると、引用発明1では、ポリエステル基材の遅相軸と(「液晶表示ディスプレイ」に含まれる視認側の)偏光板の吸収軸とのなす角度(以下「本件角度」という。)が、どのような角度であることも排除されていないと解される。 (イ)また、引用例1の【0136】には、実施例及び比較例に係る構造につき、偏光サングラス越しの観察を行ってニジムラを評価することが記載されているから、引用発明1においては、偏光サングラス越しの観察も想定されていると認められる。 (ウ)他方、引用例2に記載された技術的事項(上記(1)イ(イ))は、サングラスなどの偏光板がどのような角度であっても高い透過光を得ることができるようにするために、偏光板の吸収軸と高リタデーションの高分子フィルムの遅相軸とのなす角を凡そ45度とすることが望ましいというものである。 そして、偏光板の吸収軸と高リタデーションの高分子フィルムの遅相軸とのなす角は、本件角度に対応するといえる。 (エ)そうすると、引用発明1において、偏光サングラス越しの観察を偏光サングラスの偏光板がどのような角度であっても高い透過光を得られるようにするべく、本件角度につき、引用例2に記載された技術的事項のような「凡そ45度」という角度を採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。 オ 相違点3の判断 (ア)引用発明1は、「最表面」に「カバーガラス39」を有するものであるところ、当該「カバーガラス39」の視認側に、ポリエステル等からなる飛散防止フィルムを設けることは、当業者が容易に想到し得たことである。 なぜならば、ガラス板の表面にポリエステル等からなる飛散防止フィルムを貼り付けたタッチパネルは周知技術(以下「周知技術1」という。)であり(必要ならば、例えば、特開2008-276729号公報の【0037】・【0030】等、特開2013-20130号公報の【0005】等、特開2011-168652号公報の【0011】・【0012】等)、そのような飛散防止フィルムを引用発明1の「最表面」にある「カバーガラス39」に設けるならば、当該「カバーガラス39」の視認側に設けることが、自然であるからである。 (イ)そして、その際に設ける飛散防止フィルムとして、低リタデーション配向フィルム(「100nm以上3000nm未満のリタデーションを有する配向フィルム」)を用いるとともに、「前記飛散防止フィルムの配向主軸と前記基材フィルムの配向主軸とが形成する角が0度又は90度である場合」を除いて用いる点は、引用発明1の技術的意義に照らして、次のとおり、格別なことではない。 a 引用発明1の技術的意義は、引用例1の【0015】の記載からすると、ニジムラが発生するとの課題を解決するために、「ポリエステル基材」が「8000nm以上のリタデーションを有する」との手段を採用したことであると認められる。 そして、引用発明1は、「ポリエステル基材の」「リタデーションの上限としては、3万nm程度であり、3万nmを超えると、これ以上の表示画像のニジムラ改善効果の向上が見られ」ないものであるから、「ポリエステル基材」のリタデーションを3万nm上限で大きくするほど、ニジムラ改善効果を向上できると解される。 b 他方で、周知技術1に係る飛散防止フィルムは、ポリエステル等からなるのであるから、一般に、強度確保等の観点から延伸されている(必要ならば、例えば、特開2011-167914号公報の【0030】、特開2008-192620号公報(甲2)の【0002】、特開2010-244059号公報の【0040】)。 そうすると、当業者は、当該飛散防止フィルムが、一般に配向フィルムであるとともに、リタデーション作用もあることを当然に認識する。そして、このリタデーション値が100nm以上3000nmを超えないフィルムも、通常に存在するものと認められる(必要ならば、例えば、特開2004-170875号公報の【0003】、特開2012-214026号公報の【0002】、【0068】の表1を参照。)。 c 上記aのとおり、引用発明1は、「ポリエステル基材」のリタデーションを3万nm上限で大きくするほど、ニジムラ改善効果を向上できる。そして、周知技術1に係る飛散防止フィルムは、当該「ポリエステル基材」よりも視認側に配置される(後置される)ことになるところ、このことは、飛散防止フィルムの配置が、ニジムラが改善された後になされるということを意味する。 そうであれば、当業者は、引用発明1の「ポリエステル基材」の配向主軸と、それより後置される飛散防止フィルムの配向主軸との関係につき、略平行に限らず、ニジムラを改善できる範囲で適宜の角度となるようにすることができる。すなわち、当該関係については、当該飛散防止フィルムが、「ポリエステル基材」のリタデーション作用から得られたニジムラ改善効果を阻害しないものであることが望まれるところ、その観点からは、両者の配向主軸の配置が略平行であることが最も望ましいとはいえる。もっとも、上記のとおり、引用発明1において、「ポリエステル基材」のリタデーションを3万nm上限で大きくしたときのことを考慮すれば、それにより「ポリエステル基材」のニジムラ改善効果が既に向上したのであるから、飛散防止フィルムが、両者の配向主軸が略平行から多少ずれた状態で後置されたとしても、ニジムラ改善効果が依然として十分に存在することが明らかである。このようにして、当業者は、両者の配向主軸の関係につき、略平行に限らず、ニジムラが改善できる範囲で適宜設定して差し支えないことを認識できる。 そして、両者の配向主軸の関係として適宜設定できる範囲は、引用発明1の「ポリエステル基材」のリタデーションが大きいほど大きくなることが、明らかである。 d 上記cによれば、当業者は、引用発明1の「ポリエステル基材」に後置される飛散防止フィルムとして、通常に存在するものを採用しても差し支えないことも認識できる。 なぜならば、飛散防止フィルムとして通常に存在するものを採用しても、上記cの議論が同様に成り立つからである。 e 上記c及びdを踏まえ、具体的に検討すると、引用発明1の「ポリエステル基材」のリタデーションは、その最小値が8000nmであるから、当該リタデーションが1万nm程度ないしそれを多少超えるだけで、(後置される)通常存在する飛散防止フィルムの配向主軸の配置が略平行から90度ずれた(すなわち、略垂直となった)としても、ニジムラ改善効果が依然として十分に存在することが理解できる。 f 以上によれば、引用発明1において、「ポリエステル基材」のリタデーションを3万nm上限で大きくしつつ、後置する飛散防止フィルムとして、低リタデーション配向フィルム(「100nm以上3000nm未満のリタデーションを有する配向フィルム」)を用いるとともに、「前記飛散防止フィルムの配向主軸と前記基材フィルムの配向主軸とが形成する角が0度又は90度である場合」を除いて用いることは、当業者が適宜なし得たことにすぎないというべきである。 (ウ)したがって、相違点3は、引用発明1、引用例1の記載、周知技術1及び技術常識に基づき、格別困難なものではない。 カ 本件発明1の効果について 本件発明1の効果は、引用発明1、引用例1の記載、引用例2に記載された技術的事項、周知技術1及び技術常識に基づき、当業者が予測し得たものにすぎない。 キ 特許権者の主張について (ア)特許権者は、相違点2の判断について、引用発明1で本件角度を45度付近に設定することはない旨主張し、その根拠として、種々主張するので、以下、検討する。 a 特許権者は、引用例1の【0008】には、「液晶表示装置の表示画像にニジムラ及び干渉縞が生じることを高度に抑制することができる・・・画像表示装置を提供することを目的とする」と記載されるとともに、同【0086】には、ポリエステル基材の遅相軸と偏光素子の吸収軸とのなす角度が、0°±30°又は90°±30°となるように配設されることで、「液晶表示装置の表示画像にニジムラが生じることを極めて高度に抑制することができる」と記載されているから、引用例1が、本件角度を0°±30°又は90°±30°(以下、「0°±30°又は90°±30°」を「特定範囲角度値」という。)とするのは、課題を解決するための条件としてそうしている旨主張する(令和元年6月18日付け意見書(特許権者が提出したもの。以下、この意見書を単に「意見書」という。)8頁3行?17行)。 しかしながら、上記エ(ア)で説示したとおり、引用例1の【0086】は、本件角度につき特定範囲角度値が「好ましい」としているにとどまる。そして、このことは、引用例1に記載された請求項1が、本件角度が特定範囲角度値である点を特定していないこととも整合する。 そうすると、引用例1に記載された技術思想が、本件角度を特定範囲角度値にすることを必須としているとはいえない。 特許権者の主張は、失当である。 b 特許権者は、引用文献1の【0086】は、暗所では本件角度がどのような角度でよい旨記載するものの、液晶表示装置が、暗所でのみ使用されるということは事実上なく、通常、外光や蛍光灯がある明所で使用されるから、当業者は、当然に明所での使用も想定して液晶表示装置を設計するはずであり、よって、同【0086】の記載は、ニジムラの発生を高度に抑制するために、本件角度を特定範囲角度値にすべきことを教示する旨主張する(意見書8頁下から10行?9頁3行)。 ここで、同【0086】の当該記載を再掲すると、次のとおりである。 「すなわち、外光や蛍光灯の光のない環境下(以下、このような環境下を「暗所」ともいう)では、本発明の光学積層体のポリエステル基材の遅相軸と偏光板の吸収軸とのなす角度は、どのような角度であってもニジムラの発生を抑制できる。しかしながら、外光や蛍光灯の光のある環境下(以下、このような環境下を「明所」ともいう)においては、外光や蛍光灯の光は、連続的な幅広いスペクトルを有するものばかりではないため、ポリエステル基材の遅相軸と偏光素子の吸収軸とのなす角度を上述の範囲(当審注:「上述の範囲」とは、特定角度範囲値である。)にしないと、ニジムラが生じてしまい表示品位が低下してしまう。」 (a)しかしながら、上記aで説示したとおり、引用例1に記載された技術思想は、本件角度を特定範囲角度値にすることを必須とはしない。 (b)そして、同【0086】の当該記載は、明所での使用も想定される液晶表示装置において本件角度を特定角度範囲値以外にすることを、次のとおり、排除まではしていないと解される。 液晶表示装置は、通常、明所で使用されるのであり、このことは、特許権者が主張するとおりである。よって、同【0086】の当該記載は、明所での使用も想定される液晶表示装置を前提に解するのが相当である。 そうすると、当該記載は、明所での使用も想定される液晶表示装置において外光や蛍光灯の光の影響を考慮しない設計をした場合に生じる状況を述べていると解される。すなわち、当該記載は、明所での使用も想定される液晶表示装置において、外光や蛍光灯の光の影響を考慮しない設計をすると、バックライトの光に由来するニジムラを生じないようにすることはできるけれども、本件角度を特定角度範囲値にしなければ、外光や蛍光灯の光に由来するニジムラを生じないようにはできない、と述べていると解される。 しかるに、明所での使用も想定される液晶表示装置において、バックライトの光に由来するニジムラを生じないようにできれば、外光や蛍光灯の光に由来するニジムラを生じないようにできないとしても、意味があることである。よって、当該記載は、明所での使用も想定される液晶表示装置について、本件角度を特定角度範囲以外にすることを、排除まではしていないと解される。 これに対し、特許権者の主張する論理は、要するに、液晶表示装置を、暗所でのみ使用されるものと明所での使用も想定されるものとに二分した上で、前者が事実上存在しないことをもって、【0086】の当該記載は後者に対応するものに限定される(すなわち、当該記載は、明所での使用も想定される液晶表示装置について、本件角度を特定範囲角度値にすることしか述べていない。)、というものと解される。しかしながら、上記したとおり、液晶表示装置は、通常、明所で使用されるものであることからすれば、特許権者が主張するように、当該記載を解する際に、液晶表示装置を、暗所でのみ使用されるものと明所での使用も想定されるものとに二分して解すること自体が、相当でないというべきである。 (c)このように、引用例1の記載は、明所での使用も想定される液晶表示装置において、本件角度を特定角度範囲値以外にすることを排除しない。そうすると、引用発明1で本件角度を特定角度範囲値以外に設定することにより、外光や蛍光灯の光に由来するニジムラを生じないようにできないのだとしても、その代わりとして他の目的が達成できるのであれば、その設定は、取捨選択の問題として、当業者が適宜なし得ることといえる。そして、他の目的が存在し、それが達成できることについては、上記エ(ウ)及び(エ)で説示したとおりである。 特許権者の主張は、失当である。 c 特許権者は、引用例1の【0086】には、暗所では、本件角度がどのような角度でもよいと記載されているが、暗所でわざわざ偏光サングラスを使うことはないから、当該記載は、偏光サングラスを想定したものではない旨主張する(意見書9頁4行?13行)。 しかしながら、上記bで説示したとおり、当該記載は、本件角度を特定角度範囲値以外にした上で、液晶表示装置を明所で使用する場合を排除していない。 特許権者の主張は失当である。 d 特許権者は、引用例1の【0136】では、偏光サングラスがニジムラ発生の評価手段として用いられているにすぎないから、引用例1では、偏光サングラス越しの観察が想定されているとはいえない旨主張する(意見書9頁14行?19行・9頁下から4行?下から2行)。 しかしながら、評価手段の設定は、現実を踏まえてなされなければ意味がない。そうすると、引用例1において偏光サングラスがニジムラ発生の評価手段として用いられるということは、偏光サングラスが現実に使用され得るからであるとみて差し支えないというべきである。 特許権者の主張は失当である。 e 特許権者は、引用例1の【0136】のニジムラ評価では、偏光サングラス越しの観察でも暗所での観察でも、本件角度を0°に設定しているから、仮に、引用例1において、偏光サングラス越しの観察が想定されているとしても、本件角度を45°にすることはない旨主張する(意見書9頁19行?10頁2行)。 しかしながら、引用例1の当該記載は、一例にすぎないものである。しかも、引用例1は、引用例2に記載された技術的事項のような観点、すなわち、偏光サングラスがどのような角度であっても高い透過光を得ることができるか否かといった観点、を評価していない。よって、引用例1の【0136】において、本件角度が0°に設定されていることは、上記エの判断を左右しない。 (イ)特許権者は、相違点3の判断について、本件発明1では、飛散防止フィルムの配向主軸と基材フィルムの配向主軸とが形成する角度から0度(四捨五入により0度となる角度)を除外しているし、仮に、最善の状態(平行)にする動機があるとしても、あえて最善の状態からずらすこともそれに至る動機も引用例1に記載ないし示唆されていない旨主張する(意見書10頁5行?下から5行)。 しかしながら、上記オ(イ)で検討したとおりである。 ク 本件発明1の小括 以上のとおりであるから、本件発明1は、引用発明1、引用例1の記載、引用例2に記載された技術的事項、周知技術1及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)本件発明2の進歩性欠如 ア 本件発明2と引用発明1との対比、一致点及び相違点の認定 本件発明2は、本件発明1とは、 (i) 「前記基材フィルム」「の配向主軸が前記偏光子の偏光軸に対」する角度について、「45度±10度以下」から「45度」に限定したこと、 (ii) 「前記飛散防止フィルムの配向主軸と前記基材フィルムの配向主軸とが形成する角」について除かれる角が「0度又は90度」から「0度±3度又は90度±3度以下」に拡張されたこと、 で異なる。 よって、本件発明2と引用発明1とは、上記(2)イと同様の一致点並びに相違点1で一致及び相違するとともに、次の点で相違する。 [相違点4] 高リタデーション配向フィルムである基材フィルムについて、本件発明2は、「その配向主軸が前記偏光子の偏光軸に対して45度となるように配置される」のに対し、引用発明1は、そのような特定をしない点。 [相違点5] 本件発明2は、「前記基材フィルムよりも視認側に配置される飛散防止フィルム」を有し、「前記飛散防止フィルム」は、低リタデーション配向フィルムであり、「前記飛散防止フィルムの配向主軸と前記基材フィルムの配向主軸とが形成する角が0度±3度以下又は90度±3度以下である場合」が除かれているのに対し、 引用発明1は、飛散防止フィルムを備えない点。 イ 相違点4の判断 上記(2)エ(相違点2の判断)と同様の理由で、相違点4は格別ではない。 ウ 相違点5の判断 上記(2)オ(相違点3の判断)と同様の理由で、相違点5は格別ではない。 エ 本件発明2の小括 したがって、上記(2)ウ(相違点1の判断)をも踏まえれば、本件発明2は、引用発明1、引用例1の記載、引用例2に記載された技術的事項、周知技術1及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)本件発明3の進歩性欠如 ア 本件発明3と引用発明1との対比、一致点及び相違点の認定 本件発明3は、本件発明1とは、 (i) 「前記連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードである」点を限定したこと、 (ii) 「前記飛散防止フィルムの配向主軸と前記基材フィルムの配向主軸とが形成する角」について除かれる角が「0度又は90度」から「0度±1度又は90度±1度以下」に拡張されたこと、 で異なる。 よって、本件発明3と引用発明1とは、上記(2)イと同様の一致点並びに相違点1及び相違点2で一致及び相違するとともに、次の点で相違する。 [相違点6] 本件発明3は、「前記連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードである」のに対し、引用発明1は、そのように明記しない点。 [相違点7] 本件発明3は、「前記基材フィルムよりも視認側に配置される飛散防止フィルム」を有し、「前記飛散防止フィルム」は、低リタデーション配向フィルムであり、「前記飛散防止フィルムの配向主軸と前記基材フィルムの配向主軸とが形成する角が0度±1度以下又は90度±1度以下である場合」が除かれているのに対し、 引用発明1は、飛散防止フィルムを備えない点。 ウ 相違点6の判断 上記(2)ウ(相違点1の判断)と同様の理由で、相違点6は格別でない。 エ 相違点7の判断 上記(2)オ(相違点3の判断)と同様の理由で、相違点7は格別ではない。 オ 本件発明3の小括 したがって、上記(2)ウ(相違点1の判断)及びエ(相違点2の判断)をも踏まえれば、本件発明3は、引用発明1、引用例1の記載、引用例2に記載された技術的事項、周知技術1及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (5)本件発明4の進歩性欠如 ア 本件発明4と引用発明1との対比、一致点及び相違点の認定について 本件発明4は、本件発明1とは、 (i) 「前記連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードである」点を限定したこと、 (ii) 「前記基材フィルム」「の配向主軸が前記偏光子の偏光軸に対」する角度について、「45度±10度以下」から「45度」に限定したこと、 (iii) 「前記飛散防止フィルムの配向主軸と前記基材フィルムの配向主軸とが形成する角」について除かれる角が「0度又は90度」から「0度±10度又は90度又は10度以下」に拡張されたこと、 で異なる。 よって、本件発明4と引用発明1とは、上記(2)イと同様の一致点並びに相違点1で一致及び相違するとともに、次の点で相違する。 [相違点8] 本件発明4は、「前記連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードである」のに対し、引用発明1は、そのように明記しない点。 [相違点9] 高リタデーション配向フィルムである基材フィルムについて、本件発明4は、「その配向主軸が前記偏光子の偏光軸に対して45度となるように配置される」のに対し、引用発明1は、そのような特定をしない点。 [相違点10] 本件発明4は、「前記基材フィルムよりも視認側に配置される飛散防止フィルム」を有し、「前記飛散防止フィルム」は、低リタデーション配向フィルムであり、「前記飛散防止フィルムの配向主軸と前記基材フィルムの配向主軸とが形成する角が0度±10度以下又は90度±10度以下である場合」が除かれているのに対し、 引用発明1は、飛散防止フィルムを備えない点。 ウ 相違点8の判断 上記(4)ウ(相違点6の判断)と同様の理由で、相違点8は格別でない。 エ 相違点9の判断 上記(2)エ(相違点2の判断)と同様の理由で、相違点9は格別ではない。 オ 相違点10の判断 上記(2)オ(相違点3の判断)と同様の理由で、相違点10は格別ではない。 カ 本件発明4の小括 したがって、上記(2)ウ(相違点1の判断)をも踏まえれば、本件発明4は、引用発明1、引用例1の記載、引用例2に記載された技術的事項、周知技術1及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (6)進歩性についての判断の小括 よって、本件発明1?本件発明4は、引用発明1、引用例1の記載、引用例2に記載された技術的事項、周知技術1及び技術常識に基づき、進歩性を欠如する。 4 取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由についての小括 以上のとおりであるから、本件発明1?4は、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由によって、取り消されるべきものである。 第5 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について 1 引用発明2に基づく進歩性 (1)本件発明1について ア 本件発明1と引用発明2との対比 (ア)本件発明1の「連続的な発光スペクトルを有する白色光源」との特定事項について 引用発明2の「連続的な発光スペクトルを有する白色LEDからなるバックライト光源」は、本件発明1の「連続的な発光スペクトルを有する白色光源」に相当する。 (イ)本件発明1の「画像表示セル」との特定事項について 引用発明2の「液晶セル」は、本件発明1の「画像表示セル」に相当する。 (ウ)本件発明1の「前記画像表示セルよりも視認側に配置される偏光子」との特定事項について 引用発明2の「前記液晶セルの視認側に配した偏光板」は、本件発明1の「前記画像表示セルよりも視認側に配置される偏光子」に相当する。 (エ)本件発明1の「前記偏光子よりも視認側に配置される、タッチパネルの透明導電層が積層された基材フィルム」及び「前記基材フィルムは、6000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであり、その配向主軸が前記偏光子の偏光軸に対して45度±10度以下となるように配置される」との特定事項について 引用発明2の「高分子フィルム」は、「前記偏光板の視認側に配された、3000?30000nmのリタデーションを有し、好ましいリタデーションの下限値は6000nmである」ものである。そして、引用発明2では、「前記偏光板の吸収軸と前記高分子フィルムの遅相軸とのなす角が凡そ45度となるように配されている」。 そうすると、引用発明2の「高分子フィルム」は、本件発明1の「基材フィルム」とは、高リタデーション配向フィルムである点で共通する。そして、引用発明2は、本件発明1でいう「前記偏光子よりも視認側に配置される、」高リタデーション配向フィルム、及び、前記高リタデーション配向フィルムは、「6000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであり、その配向主軸が前記偏光子の偏光軸に対して45度±10度以下となるように配置される」との特定事項を備える。 しかし、引用発明2の「高分子フィルム」(高リタデーション配向フィルム)は、「タッチパネルの透明導電層が積層された基材フィルム」ではなく、「帯電防止層を有して」いる「高分子フィルム」である。 (オ)本件発明1の「前記基材フィルムよりも視認側に配置される飛散防止フィルム」及び「前記飛散防止フィルムは、100nm以上3000nm未満のリタデーションを有する配向フィルムであり、」との特定事項について 引用発明2は、本件発明1の上記特定事項を備えない。 (カ)本件発明1の「(但し、前記飛散防止フィルムの配向主軸と前記基材フィルムの配向主軸とが形成する角が0度又は90度である場合を除く)」との特定事項について 引用発明2は、本件発明1の上記特定事項を備えない。 イ 一致点及び相違点の認定 上記アによれば、本件発明1と引用発明2とは、 「連続的な発光スペクトルを有する白色光源、 画像表示セル、 前記画像表示セルよりも視認側に配置される偏光子、 前記偏光子よりも視認側に配置される、高リタデーション配向フィルム、 を有し、 前記高リタデーション配向フィルムは、6000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであり、その配向主軸が前記偏光子の偏光軸に対して45度±10度以下となるように配置される、 画像表示装置。」 である点で一致し、次の点で相違する。 [相違点1] 高リタデーション配向フィルムについて、本件発明1は「タッチパネルの透明導電層が積層された基材フィルム」であるのに対し、引用発明2は「帯電防止層を有して」いる「高分子フィルム」である点。 [相違点2] 本件発明1は、「前記基材フィルムよりも視認側に配置される飛散防止フィルム」を有し、「前記飛散防止フィルムは、100nm以上3000nm未満のリタデーションを有する配向フィルムであり」、「但し、前記飛散防止フィルムの配向主軸と前記基材フィルムの配向主軸とが形成する角が0度又は90度である場合を除く」とされているのに対し、引用発明2は、そうではない点。 ウ 相違点1の判断 (ア)引用発明2の高リタデーション配向フィルムが有している「帯電防止層」は、相違点1に係る構成のような「タッチパネルの透明導電層」と同じとはいえないし、このように置換する動機もない。 よって、当業者は、相違点1に係る構成に至らない。 (イ)これに対し、特許異議申立人は、平成31年3月13日付け意見書2頁?3頁において、本件発明1の「タッチパネルの透明導電層」は、タッチした位置の検出に関与しない、タッチパネルの背面に配置される帯電防止層を含んでいる旨主張する。 しかしながら、「タッチパネルの透明導電層」との文言が、タッチした位置の検出に関与しない、タッチパネルの背面に配置される帯電防止層を意味するとは、通常解されないし、本件明細書等にもそのように解することができる根拠となる記載はない。 特許異議申立人の主張は失当である。 エ 本件発明1についての小括 以上のとおりであるから、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明2?4について 本件発明2?4も、本件発明1と同様に相違点1に係る構成を備える。よって、上記(1)ウと同様の理由で、本件発明2は、引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)引用発明2に基づく進歩性についての小括 よって、本件発明1?4に係る特許を、この異議申立理由によって取り消すことはできない。 2 サポート要件 (1)その1 ア 特許異議申立人は、本件特許の請求項1?3に係る発明が基材フィルムと飛散防止フィルムとのリタデーション差並びに基材フィルムの配向主軸と飛散防止フィルムの配向主軸との方向の関係を何ら特定していないので、当該リタデーション差や方向次第によっては、全体のリタデーション値が中途半端な値となり、課題を解決できないことがある旨主張する(特許異議申立書36頁13行?37頁2行)。 イ しかしながら、本件訂正により、基材フィルムのリタデーションの最小値が6000nmであることが特定されたため、基材フィルムのリタデーションと飛散防止フィルムのリタデーションとの差が、最低でも3000nm存在することが明らかとなった。 そのため、本件発明が、課題を解決できないことがあるとはいえない。 (2)その2 特許異議申立人は、本件特許の請求項1?3に係る発明が基材フィルムのリタデーションが3000nm未満であることを特定するのみであって、下限値を限定していないため、基材フィルムを単独で用いた場合であっても、干渉色(虹斑)による視認性の低下の問題を生じない構成を含んでいる旨主張する(特許異議申立書37頁3行?末行)。 しかしながら、(本件訂正後の)本件発明は、基材フィルムのリタデーションの下限値が100nmであることを特定する。 よって、本件発明は、干渉色(虹斑)による視認性の低下の問題を生じない構成を含んでいない。 (3)サポート要件についての小括 したがって、本件発明の記載は、特許法第36条第6項第1号の要件を満たす。 特許異議申立人の主張は、採用できない。 3 明確性要件 特許異議申立人は、本件特許の請求項1?3に係る発明が、基材フィルム及び飛散防止フィルムのリタデーションを特定しているところ、これらのリタデーションがいかなる波長のリタデーションを意味するのか不明である旨主張する(特許異議申立書38頁1行?下から3行)。 しかしながら、リタデーションを特定するために必要となる「屈折率」は、通常、ナトリウムD線(589.3nm)の波長で測定するのが技術常識であるから、リタデーションについても、特に断りがなければ、ナトリウムD線で測定したものと解するのが相当である。 よって、本件発明の記載は、明確であって、特許法第36条第6項第2号の要件を満たす。 特許異議申立人の主張は、採用できない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、本件発明1?本件発明4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 したがって、本件発明1?本件発明4に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 (1)連続的な発光スペクトルを有する白色光源、 (2)画像表示セル、 (3)前記画像表示セルよりも視認側に配置される偏光子、 (4)前記偏光子よりも視認側に配置される、タッチパネルの透明導電層が積層された基材フィルム、及び (5)前記基材フィルムよりも視認側に配置される飛散防止フィルム を有し、 前記飛散防止フィルムは、100nm以上3000nm未満のリタデーションを有する配向フィルムであり、 前記基材フィルムは、6000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであり、その配向主軸が前記偏光子の偏光軸に対して45度±10度以下となるように配置される、 画像表示装置(但し、前記飛散防止フィルムの配向主軸と前記基材フィルムの配向主軸とが形成する角が0度又は90度である場合を除く)。 【請求項2】 前記基材フィルムが、その配向主軸が前記偏光子の偏光軸に対して45度となるように配置される、請求項1に記載の画像表示装置(但し、前記飛散防止フィルムの配向主軸と前記基材フィルムの配向主軸とが形成する角が0度±3度以下又は90度±3度以下である場合を除く)。 【請求項3】 前記連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードである、請求項1に記載の画像表示装置(但し、前記飛散防止フィルムの配向主軸と前記基材フィルムの配向主軸とが形成する角が0度±1度以下又は90度±1度以下である場合を除く)。 【請求項4】 前記連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードである、請求項2に記載の画像表示装置(但し、前記飛散防止フィルムの配向主軸と前記基材フィルムの配向主軸とが形成する角が0度±10度以下又は90度±10度以下である場合を除く)。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2019-10-28 |
出願番号 | 特願2013-27754(P2013-27754) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
ZAA
(G02F)
P 1 651・ 832- ZAA (G02F) P 1 651・ 537- ZAA (G02F) |
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 磯野 光司 |
特許庁審判長 |
瀬川 勝久 |
特許庁審判官 |
山村 浩 星野 浩一 |
登録日 | 2018-03-16 |
登録番号 | 特許第6303265号(P6303265) |
権利者 | 東洋紡株式会社 |
発明の名称 | 画像表示装置 |
代理人 | 特許業務法人三枝国際特許事務所 |
代理人 | 特許業務法人三枝国際特許事務所 |