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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B29C
管理番号 1359556
異議申立番号 異議2018-700830  
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-03-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-10-11 
確定日 2019-12-11 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6327517号発明「プリフォーム、プラスチックボトルおよびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6327517号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕及び3について訂正することを認める。 特許第6327517号の請求項1ないし3に係る特許を取り消す。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6327517号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし3に係る特許についての出願は、平成26年4月8日の出願であって、平成30年4月27日にその特許権の設定登録(請求項の数3)がされ、同年5月23日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年10月11日に特許異議申立人 小林 寛史(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされ、平成31年2月6日付けで取消理由が通知され、同年4月11日に特許権者 大日本印刷株式会社(以下、「特許権者」という。)から意見書が提出されるとともに訂正の請求がされ、同年同月17日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、令和1年5月16日に特許異議申立人から意見書が提出され、同年7月2日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年8月27日に特許権者から意見書が提出されるとともに訂正の請求がされたものである。
なお、平成31年4月11日にされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。

第2 訂正の適否について
1 訂正の内容
令和1年8月27日にされた訂正の請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「射出成形品であるポリエチレンテレフタレート製プリフォームにおいて、」と記載されているのを、「容量が500ml?600mlのプラスチックボトルを作製するために用いられる、射出成形品であるポリエチレンテレフタレート製プリフォームにおいて、
前記プラスチックボトルは、口部と、前記口部下方に設けられた円筒状の胴部と、前記胴部に連続して設けられた底部とを有し、前記底部は、ペタロイド底形状をなしている、周方向に等間隔に配置され下方へ突出する複数個のペタロイド脚を有し、前記プラスチックボトルの肉厚は、前記底部の前記ペタロイド脚において0.15mm?0.50mmであり、
前記プラスチックボトルの満注容量を測定した後、前記プラスチックボトルにガスボリュームが4になるよう炭酸水を充填して密栓し、その後、前記プラスチックボトルを22℃で24時間保存し、続いて38℃で24時間保存し、その後、前記プラスチックボトル内の炭酸水を排出し、前記プラスチックボトルの満注容量を測定したときの満注容量の増加量は、25ml以内である、プラスチックボトルを作製するプリフォームであって、」に訂正する。
併せて、特許請求の範囲の請求項1を直接引用する請求項2についても、請求項1を訂正したことに伴う訂正をする。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「前記胴中部の肉厚をTとし、前記胴部の長さをLとし、前記胴中部の径をDとしたとき、T×L/Dの値が12.7以上となる」と記載されているのを、「前記胴中部の肉厚をTとし、前記胴部の長さをLとし、前記胴中部の径をDとしたとき、T×L/Dの値が12.7以上16.47以下となる」に訂正する。
併せて、特許請求の範囲の請求項1を直接引用する請求項2についても、請求項1を訂正したことに伴う訂正をする。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「前記胴中部の肉厚をTとし、前記胴部の長さをLとし、前記胴中部の径をDとしたとき、T×L/Dの値が12.7以上となる射出成形品であるポリエチレンテレフタレート製プリフォーム」と記載されているのを、「前記胴中部の肉厚をTとし、前記胴部の長さをLとし、前記胴中部の径をDとしたとき、T×L/Dの値が12.7以上16.47以下となる射出成形品であるポリエチレンテレフタレート製プリフォーム」に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項3に「前記プリフォームを2軸延伸ブロー成形することによりプラスチックボトルを作製する工程」と記載されているのを、「前記プリフォームを2軸延伸ブロー成形することにより、容量が500ml?600mlのプラスチックボトルを作製する工程」に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項3に「前記プラスチックボトルは、口部と、前記口部下方に設けられた円筒状の胴部と、前記胴部に連続して設けられた底部とを有し、前記底部は、ペタロイド底形状をなしている」と記載されているのを、「前記プラスチックボトルは、口部と、前記口部下方に設けられた円筒状の胴部と、前記胴部に連続して設けられた底部とを有し、前記底部は、ペタロイド底形状をなし、周方向に等間隔に配置され下方へ突出する複数個のペタロイド脚を有し、前記プラスチックボトルの肉厚は、前記底部の前記ペタロイド脚において0.15mm?0.50mmであり、
前記プラスチックボトルの満注容量を測定した後、前記プラスチックボトルにガスボリュームが4になるよう炭酸水を充填して密栓し、その後、前記プラスチックボトルを22℃で24時間保存し、続いて38℃で24時間保存し、その後、前記プラスチックボトル内の炭酸水を排出し、前記プラスチックボトルの満注容量を測定したときの満注容量の増加量は、25ml以内である」に訂正する。

2 訂正の目的の適否、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1における「射出成形品であるポリエチレンテレフタレート製プリフォーム」が、「容量が500ml?600mlのプラスチックボトル」であって「口部と、前記口部下方に設けられた円筒状の胴部と、前記胴部に連続して設けられた底部とを有し、前記底部は、ペタロイド底形状をなしている、周方向に等間隔に配置され下方へ突出する複数個のペタロイド脚を有し、前記プラスチックボトルの肉厚は、前記底部の前記ペタロイド脚において0.15mm?0.50mmであり、前記プラスチックボトルの満注容量を測定した後、前記プラスチックボトルにガスボリュームが4になるよう炭酸水を充填して密栓し、その後、前記プラスチックボトルを22℃で24時間保存し、続いて38℃で24時間保存し、その後、前記プラスチックボトル内の炭酸水を排出し、前記プラスチックボトルの満注容量を測定したときの満注容量の増加量は、25ml以内である、プラスチックボトル」を「作製する」ために用いられるものであること、すなわち、その用途を具体的に特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項1は、本件特許明細書の【0032】、【0034】、【0035】、【0047】及び【0049】の記載に基づくものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
さらに、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項1において、「T×L/D」の値が「12.7以上」と下限だけが特定されていたのを、「12.7以上16.47以下」と上限も特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項2は、本件特許明細書の【0046】の記載に基づくものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
さらに、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項3において、「T×L/D」の値が「12.7以上」と下限だけが特定されていたのを、「12.7以上16.47以下」と上限も特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項3は、本件特許明細書の【0046】の記載に基づくものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
さらに、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正前の請求項3における「プラスチックボトル」について、「容量が500ml?600ml」と容量を特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項4は、本件特許明細書の【0035】の記載に基づくものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
さらに、訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(5)訂正事項5について
訂正事項5は、訂正前の請求項3における「プラスチックボトル」の「ペタロイド底形状」をなす「底部」について、「周方向に等間隔に配置され下方へ突出する複数個のペタロイド脚を有し、前記プラスチックボトルの肉厚は、前記底部の前記ペタロイド脚において0.15mm?0.50mmであ」ると、「底部」の形状と肉厚を特定すると共に、訂正前の請求項3における「プラスチックボトル」を「前記プラスチックボトルの満注容量を測定した後、前記プラスチックボトルにガスボリュームが4になるよう炭酸水を充填して密栓し、その後、前記プラスチックボトルを22℃で24時間保存し、続いて38℃で24時間保存し、その後、前記プラスチックボトル内の炭酸水を排出し、前記プラスチックボトルの満注容量を測定したときの満注容量の増加量は、25ml以内である」「プラスチックボトル」に特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項5は、本件特許明細書の【0034】、【0035】、【0047】及び【0049】の記載に基づくものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
さらに、訂正事項5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3 むすび
以上のとおり、訂正事項1ないし5は、それぞれ、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。
また、訂正事項1ないし5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないので、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。

なお、訂正前の請求項2は訂正前の請求項1を引用するものであるから、訂正前の請求項1及び2は一群の請求項に該当するものである。そして、訂正事項1及び2は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
また、特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし3に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。

したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕及び3について訂正することを認める。

第3 本件特許発明
上記第2のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕及び3について訂正することを認めるので、本件特許の請求項1ないし3に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、令和1年8月27日に提出された訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
容量が500ml?600mlのプラスチックボトルを作製するために用いられる、射出成形品であるポリエチレンテレフタレート製プリフォームにおいて、
前記プラスチックボトルは、口部と、前記口部下方に設けられた円筒状の胴部と、前記胴部に連続して設けられた底部とを有し、前記底部は、ペタロイド底形状をなしている、周方向に等間隔に配置され下方へ突出する複数個のペタロイド脚を有し、前記プラスチックボトルの肉厚は、前記底部の前記ペタロイド脚において0.15mm?0.50mmであり、
前記プラスチックボトルの満注容量を測定した後、前記プラスチックボトルにガスボリュームが4になるよう炭酸水を充填して密栓し、その後、前記プラスチックボトルを22℃で24時間保存し、続いて38℃で24時間保存し、その後、前記プラスチックボトル内の炭酸水を排出し、前記プラスチックボトルの満注容量を測定したときの満注容量の増加量は、25ml以内である、プラスチックボトルを作製するプリフォームであって、
サポートリングを有する口部と、
前記口部に連結された胴部とを備え、
前記胴部は、前記サポートリング側の首部と、前記首部に連結された胴中部と、前記胴中部に連結された底部とを有し、
前記首部は、前記口部側から前記胴中部側に向けて肉厚が大きくなるとともに、前記首部の外径および内径がそれぞれ前記口部側から前記胴中部側に向けて徐々に縮径する形状からなり、
前記胴中部の肉厚をTとし、前記胴部の長さをLとし、前記胴中部の径をDとしたとき、T×L/Dの値が12.7以上16.47以下となることを特徴とするプリフォーム。
【請求項2】
前記胴中部の肉厚Tは、3.8mm以下であることを特徴とする請求項1記載のプリフォーム。
【請求項3】
サポートリングを有する口部と、前記口部に連結された胴部とを有し、前記胴部は、前記サポートリング側の首部と、前記首部に連結された胴中部と、前記胴中部に連結された底部とを有し、前記首部は、前記口部側から前記胴中部側に向けて肉厚が大きくなるとともに、前記首部の外径および内径がそれぞれ前記口部側から前記胴中部側に向けて徐々に縮径する形状からなり、前記胴中部の肉厚をTとし、前記胴部の長さをLとし、前記胴中部の径をDとしたとき、T×L/Dの値が12.7以上16.47以下となる射出成形品であるポリエチレンテレフタレート製プリフォームを準備する工程と、
前記プリフォームを2軸延伸ブロー成形することにより、容量が500ml?600mlのプラスチックボトルを作製する工程とを備え、
前記プラスチックボトルは、口部と、前記口部下方に設けられた円筒状の胴部と、前記胴部に連続して設けられた底部とを有し、前記底部は、ペタロイド底形状をなし、周方向に等間隔に配置され下方へ突出する複数個のペタロイド脚を有し、前記プラスチックボトルの肉厚は、前記底部の前記ペタロイド脚において0.15mm?0.50mmであり、
前記プラスチックボトルの満注容量を測定した後、前記プラスチックボトルにガスボリュームが4になるよう炭酸水を充填して密栓し、その後、前記プラスチックボトルを22℃で24時間保存し、続いて38℃で24時間保存し、その後、前記プラスチックボトル内の炭酸水を排出し、前記プラスチックボトルの満注容量を測定したときの満注容量の増加量は、25ml以内であることを特徴とするプラスチックボトルの製造方法。」

第4 取消理由(決定の予告)の概要
令和1年7月2日付けで通知した取消理由(決定の予告)の概要は、次のとおりである。

本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、下記の本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

甲第1号証:国際公開第96/33062号(以下、「甲1」という。)

第5 取消理由(決定の予告)についての当審の判断
1 甲1に記載された事項及び甲1発明
(1)甲1に記載された事項
甲1には、「PREFORM AND BOTTLE USING PET/PEN BLENDS AND COPOLYMERS」(訳:PETとPENの混合物及び共重合体を使用したプリフォームとボトル)に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、英文の摘記に続いて、訳を記載する。

・「BACKGROUND OF THE INVENTION
This invention relates to new and useful improvements in manufacturing preforms for containers, such as plastic bottles, and to preforms and containers per se. More particularly, the invention relates to a preform used to produce a plastic bottle which is recyclable, but preferably non-refillable.」(第1ページ第6ないし12行)(訳:発明の属する技術分野
本発明は、容器のためのプリフォームの製造における新規且つ有用な改良に関する。容器として、プラスチックボトル等がある。本発明は、プリフォームおよび容器自体に関する。より具体的には、本発明は、リサイクル可能な、好ましくは再充填されないプラスチックボトルを製造するために使用されるプリフォームに関する。)

・「FIGS. 1 and 2 are injection mold preforms of the invention.」(第6ページ第8及び9行)(訳:図1及び2は、本発明の射出成形プリフォームを示す。)

・「FIG. 12 shows a preform of the prior art.
FIG. 13 shows a generic preform of the inventions.
FIG. 14 shows a container of the invention.All values are in millimeters.」(第6ページ第26ないし29行)(訳:図12は、従来技術のプリフォームを示す。
図13は、本発明の一般的なプリフォームを示す。
図14は、本発明の容器を示す。全ての値はミリメートル単位である。)

・「As shown in FIG. 8, the preform 82 is placed in a blow molding apparatus 896 having an upper mold section 896A which engages the neck finish 812, a middle mold section 896B having an interior cavity forming the shape of the container side wall, and a lower mold section 896 having an upper surface forming the outwardly concave dome portion of the container base. In accordance with a standard reheat stretch blow mold process, the injection-molded preform 82 is first reheated to a temperature suitable for stretching and orientation, placed in the blow mold, and an axial stretch rod 97 is then inserted into the open upper end 811 and moved downwardly to axially stretch the preform. Subsequently or simultaneously an expansion gas 890 is introduced into the interior of the preform to radially expand the shoulder, sidewall and base forming portions outwardly into contact with the interior surfaces of mold sections 896B and 896C. 」(第21ページ第17ないし34行)(訳:図8に示すように、プリフォーム82は、ブロー成形装置896内に配置される。ブロー成形装置896は上端部を有する。ネック812の端部は上端部に係合する。ブロー成形装置896は中間モールド部896Bを有する。中間モールド部896Bは、容器の側壁の形状を形成する内部空洞を有する。ブロー成形装置896は下側モールド部896Cを有する。下側モールド部896Cは、容器ベースの外側に凹状ドームを形成する上面を有する。標準の再加熱延伸ブロー成形方法によれば、射出成形プリフォーム82は、まず、延伸と配向に適した温度に再加熱され、ブロー金型に入れられ、軸方向延伸ロッド97は、次に、開放上端部811に挿入され、下降し、軸方向にプリフォームを延伸する。その後または同時に、膨張ガス890は、プリフォームの内部に導入され、肩、サイドウォール及びベースを半径方向に拡大し、金型部分896B及び896Cの内面と接触させる。)

・「an initial wall thickness of 0.200 inch and a final bottle wall thickness of 0.025 inch」(第23ページ第5ないし7行)(訳:0.200インチの初期壁厚と0.025インチの最終ボトル壁厚)

・「EXAMPLE
Sample 1 - (Control) PET resin
Step A: 21.5 grams of Shell 8006 resin obtained from Shell Polyester Akron, Ohio is injection molded in a mold to produce a preform as shown in Fig. 12. The preform contains PET copolymer with an IV of about .80. Injection molding conditions include a temperature range of 280-290°C with a cycle time of 35 seconds in a single cavity Arburg 320 Injection Press.
Step B: The resulting preform is blow molded with an LB01 blow molding machine to produce a bottle similar to Figure 14, resulting in an overall stretch ratio of 9:1. Blow molding conditions include preform reheat time of 60 seconds and a blow pressure of 38 bar. More specifically, a preform reheat time of 15 seconds is for 2 heating locations and 2 equilibration locations for a total reheating time of 60 seconds.」(第25ページ第14ないし30行)(訳:実施例
サンプル1-(コントロール)PET樹脂
ステップA:図1に示すように、シェルポリエステルアクロン社(オハイオ州)から得られたシェル8006樹脂21.5グラムを、金型内で射出成形し、図12に示すプリフォームを製造する。プリフォームは、約0.80のIVとともにPETの共重合体を含有する。射出成形条件は、単一のキャビティのArburg320射出プレスで、35秒のサイクル時間で280?290°である。
ステップB:得られたプリフォームを、LB01ブロー成形機を用いてブロー成形し、図14と同様のボトルを製造する。結果として、全体的な延伸倍率は9:1である。ブロー成形条件には、60秒のプリフォームの再加熱時間と、38バールのブロー圧力が含まれる。より具体的には、2つの加熱位置と、2つの平衡位置とを、それぞれ、15秒間再加熱し、総再加熱時間は60秒である。)

・「What is claimed is:
1. An injection molded preform comprising an open ended mouth forming portion, an intermediate body forming portion, and a closed base forming portion, wherein said preform comprises:・・・and said preform having a stretch ratio in the range of 18:1 to 25:1 in order to form a bottle having a volume in the range of 250 ml to 850 ml, ・・・」(第29ページ第1ないし18行)(請求項1.開口口部形成部、中間体形成部、閉鎖ベース形成部を有する射出成形プリフォームであって、前記プリフォームは、・・・からなり、前記プリフォームは、18:1から25:1の範囲の延伸倍率を有し、250mlから850mlの範囲の体積を有するボトルを形成するためのものであり、・・・)

・「



・「



・「



・「



(2)甲1のFIGURE 12(以下、「FIGURE]を「図」と表記し、「FIGURE 12」を「図12」のように表記する。)から導かれる事項
ア 甲1の図12には、開口部(図12において、プリフォームの左端)からの距離が所定値である位置でのプリフォームの外径及び内径が記載されている。
具体的には、次のとおりである。
開口部からの距離が0.831インチの位置:プリフォームの外径は1.012インチ
開口部からの距離が1.100インチの位置:プリフォームの外径は1.012インチ
開口部からの距離が1.594インチの位置:プリフォームの外径は0.771インチ
開口部からの距離が3.300インチの位置:プリフォームの外径は0.754インチ
開口部からの距離が0.883インチの位置:プリフォームの内径は0.854インチ
開口部からの距離が1.150インチの位置:プリフォームの内径は0.852インチ
開口部からの距離が1.544インチの位置:プリフォームの内径は0.487インチ
開口部からの距離が3.310インチの位置:プリフォームの内径は0.470インチ

なお、甲1の図14に記載された値の単位はミリメートルであるものの、図12に記載された値の単位がインチであることは、次の理由から明らかである。
・図12に記載された値の単位がインチでなくミリメートルであるとすると、プリフォームの長さが3.677mm(=3.300mm+0.377mm)となってしまい、技術常識から考えられず、また、「延伸倍率9:1」(「resulting in an overall stretch ratio of 9:1.」(第25ページ第25行)(訳:結果として、全体的な延伸倍率は9:1である。)との記載とも矛盾する。
・第23ページ第5ないし7行には、値の単位がインチであるとの記載がある。

以下、「開口部からの距離がXインチの位置」を単に「Xインチの位置」という。

イ 甲1の図12に記載された位置は、技術常識から、次の技術的意義を有することは明らかである。
0.831インチの位置は、その付近にある、径方向に突出した部分の底面を意味する。
1.100インチの位置は、プリフォームの外径の縮径が始まる位置を意味する。
1.150インチの位置は、プリフォームの内径の縮径が始まる位置を意味する。
1.594インチの位置は、プリフォームの外径の縮径が終了する位置を意味する。
1.544インチの位置は、プリフォームの内径の縮径が終了する位置を意味する。
3.300インチの位置は、底部の外周面を構成する球の中心の位置を意味する。
3.310インチの位置は、底部の内周面を構成する球の中心の位置を意味する。

ウ 甲1の図12に記載されたプリフォームについて、次のことがいえる。
(ア)0.831インチの位置の付近にある、径方向に突出した部分は、明らかに「サポートリング」である。
また、開口部から「サポートリング」までの部分は、明らかに「口部」である。
よって、甲1の図12に記載されたプリフォームは、「サポートリングを有する口部」を有している。

(イ)甲1の図12に記載されたプリフォームにおいて、「サポートリング」の底面よりも右側の部分は、明らかに「胴部」であって、「口部」に連結している。

(ウ)「胴部」のうち、0.831インチの位置から、1.594インチの位置までの部分は、「胴部」のうち「サポートリング」の側にある。
また、1.594インチの位置から、3.300インチの位置までの部分は、「胴中部」であって、0.831インチの位置から、1.594インチの位置までの部分は、「胴中部」に連結されている。
よって、0.831インチの位置から、1.594インチの位置までの部分は、「サポートリング側の首部」である。
1.594インチの位置から、3.300インチの位置までの部分は、「首部」に連結されている。
また、1.594インチの位置から、3.300インチの位置までの部分では、円筒形状からなり、胴径及び肉厚がほとんど変化しない形状になっている。
さらに、本件特許明細書の【0019】には、「胴中部22は、略円筒形状からなっており、その胴径及び肉厚がほとんど変化しない形状からなっている。」との記載がある。
よって、明らかに1.594インチの位置から、3.300インチの位置までの部分は、「首部に連結された胴中部」である。
3.300インチの位置よりも右側の部分は、「胴中部」に連結されている。
また、3.300インチの位置よりも右側の部分の形状は、半球状である。
さらに、本件特許明細書の【0020】には、「底部23は、図1の例ではほぼ半球状であるが、円錐形状であったり、角に丸みを持った円柱形状であったり、その他の形状であっても良い。」との記載がある。
よって、3.300インチの位置よりも右側の部分は、明らかに「胴中部に連結された底部」である。
したがって、甲1の図12に記載されたプリフォームにおける「胴部」は、「サポート側の首部」、「首部に連結された胴中部」及び「胴中部に連結された底部」を有する。

エ 上記アないしウから、甲1の図12に記載されたプリフォームの形状及び寸法について、次のことがいえる。
(ア)1.100インチの位置から、1.594インチの位置までの部分は、「首部」の一部である。
0.883インチの位置から、1.150インチの位置まで、内径はほとんど変化しないので、1.100インチの位置における内径は、0.852インチ(1.150インチの位置における内径)であると近似できる。
1.100インチの位置における外径は、1.012インチである。
1.100インチの位置における肉厚は、以下の式により算出できる。
1.100インチの位置における肉厚(インチ)=(1.012-0.852)/2=0.080
1.544インチの位置から、3.310インチの位置まで、内径の変化はゆるやかであり、1.544インチの位置と1.594インチの位置とは近いので、1.594インチの位置における内径は、0.487インチ(1.544インチの位置における内径)であると近似できる。
1.594インチの位置における外径は、0.771インチである。1.594インチの位置における肉厚は、以下の式により算出できる。
1.594インチの位置における肉厚(インチ)=(0.771-0.487)/2=0.142
1.594インチの位置は、1.100インチの位置に比べて、「口部」側から「胴中部」に向けて移動した位置である。
よって、甲1の図12に記載されたプリフォームにおいて、「首部」の一部である、1.100インチの位置から、1.594インチの位置までの部分では、「首部」の肉厚は、「口部」側から「胴中部」に向けて大きくなっている。

(イ)1.100インチの位置から、1.594インチの位置までの部分は、「首部」の一部である。
1.100インチの位置での外径は、1.012インチである。
1.594インチの位置での外径は、0.771インチである。
1.594インチの位置は、1.100インチの位置に比べて、「口部」側から「胴中部」に向けて移動した位置である。
よって、「首部」のうち、1.100インチの位置から、1.594インチの位置までの部分において、プリフォームの外径は、「口部」側から「胴中部」に向けて徐々に縮径している。
1.150インチの位置から、1.544インチの位置までの部分は、「首部」の一部である。
1.150インチの位置での内径は0.852インチである。
1.544インチの位置での内径は0.487インチである。
1.544インチの位置は、1.150インチの位置に比べて、「口部」側から「胴中部」に向けて移動した位置である。
よって、「首部」のうち、1.150 インチの位置から、1.544インチの位置までの部分において、プリフォームの内径は、「口部」側から「胴中部」に向けて徐々に縮径している。
したがって、甲1の図12に記載されたプリフォームにおいて、「首部」のうち、少なくとも、1.150インチの位置から1.544インチの位置までの部分では、プリフォームの外径及び内径は、「口部」側から「胴中部」に向けて徐々に縮径している。

(ウ)1.594インチの位置から、3.300インチの位置までの部分は、「胴中部」である。
「胴中部」の長さ方向の中央の位置は、1.594インチの位置と、3.300インチの位置との中間の位置であって、2.447(=(1.594+3.300)/2)インチの位置である。
甲1の図12には、1.594インチの位置での外径と、3.300インチの位置での外径とが記載されている。
甲1の図12の記載から、明らかに、1.594インチの位置と、3.300インチの位置との間において、外径は、ゆるやかに且つ一定の割合で変化しているので、以下の式により、2.447インチの位置での外径を算出することができ、その値は0.763インチである。
2.447インチの位置での外径(インチ)=0.771-((2.447-1.594)/1.706)×0.017
上記の式において、0.771インチは、1.594インチの位置での外径である。
1.706インチは、1.594インチの位置と、3.300インチの位置との長さ方向における距離である。
0.017インチは、1.594インチの位置での外径と、3.300インチの位置での外径との差である。
甲1の図12には、1.544インチの位置での内径と、3.310インチの位置での内径とが記載されている。
甲1の図12の記載から、明らかに、1.544インチの位置と、3.310インチの位置との間において、内径は、ゆるやかに且つ一定の割合で変化しているので、以下の式により、2.447インチの位置での内径を算出することができ、その値は0.478インチである。
2.447インチの位置での内径(インチ)=0.487-((2.447-1.544)/1.766)×0.017
上記の式において、0.487インチは、1.544インチの位置での内径である。
1.766インチは、1.544インチの位置と、3.310インチの位置との長さ方向における距離である。
0.017インチは、1.544インチの位置での内径と、3.310インチの位置での内径との差である。
2.447インチの位置での肉厚Tは、以下の式により算出でき、その値は、0.143インチである。
肉厚T(インチ)=(0.763-0.478)/2
1インチ=25.4mmとして、肉厚Tをmm単位に換算すると、3.63mmである。
2.447インチの位置での、肉厚中心における直径Dは、以下の式により算出することができ、その値は0.621インチである。
直径D(インチ)=(0.763十0.478)/2
1インチ=25.4mmとして、直径Dをmm単位に換算すると、15.8mmである。
なお、本件特許明細書の【0021】に「なお、胴中部22における肉厚が長さ方向に変化する場合、肉厚Tは、胴中部22の長さ方向中央部における肉厚によって定義する。」との記載があり、【0023】に「なお、胴中部22における径が長さ方向に変化する場合、径Dは、胴中部22の長さ方向中央部における肉厚中心径によって定義する。」との記載があるから、「胴中部」の長さ方向の中央の位置で、直径D及び肉厚Tを算出している。

(エ)「胴部」は、「サポートリング」の底面よりも右側の部分である。
「胴部」の長さLは、以下の式により算出することができ、その値は2.846インチである。
長さL(インチ)=(3.300-0.831)十0.377
上記の式において、0.377インチは、甲1の図12に記載された「底部」の半径である。
1インチ=25.4mmとして、長さLをmm単位に換算すると、72.3mmである。

(オ)T、D及びLから、甲1の図12に記載されたプリフォームにおける「T×L/D」の値を算出すると、16.6(=3.63×72.3/15.8)である。
仮に、胴中部の長さ方向の中央の位置が、2.447インチの位置から外れた位置であったとしても、上記と同様の方法で、「T×L/D」の値を算出することができ、その値は、16.6に近い値となる。

オ 甲1に記載された事項、特に「Sample 1 - (Control) PET resin」に関する記載から、甲1には、次のことが記載されているといえる。
甲1の図12に記載されたプリフォームを準備する工程及び該プリフォームを2軸延伸ブロー成形することにより図14と同様のボトルを作製する工程を備えること。
なお、該ボトルがプラスチックボトルであることは、プリフォームが、シェルポリエステルアクロン社(オハイオ州)から得られたシェル8006樹脂から製造されることからみて、明らかである。

カ 甲1の図14から、次のことが看取される。
甲1の図14に記載されたボトルは、口部と、前記口部下方に設けられた円筒状の胴部と、前記胴部に連続して設けられた底部とを有し、前記底部は、周方向に等間隔に配置され下方へ突出する複数個のペタロイド脚を有するペタロイド底形状をなしていること。

(3)甲1発明
上記(1)及び(2)を整理すると、甲1には次の2つの発明(以下、順に「甲1発明1」のようにいう。)が記載されていると認める。

<甲1発明1>
「プラスチックボトルを作製するために用いられる、シェルポリエステルアクロン社(オハイオ州)から得られたシェル8006樹脂21.5グラムを、金型内で射出成形して製造した約0.80のIVとともにPETの共重合体を含有するプリフォームにおいて、
前記プラスチックボトルは、口部と、前記口部下方に設けられた円筒状の胴部と、前記胴部に連続して設けられた底部とを有し、前記底部は、ペタロイド底形状をなしている、周方向に等間隔に配置され下方へ突出する複数個のペタロイド脚を有している、プラスチックボトルを作製するプリフォームであって、
サポートリングを有する口部と、
前記口部に連結された胴部とを備え、
前記胴部は、前記サポートリング側の首部と、前記首部に連結された胴中部と、前記胴中部に連結された底部とを有し、
前記首部は、前記口部側から前記胴中部側に向けて肉厚が大きくなるとともに、前記首部の外径および内径がそれぞれ前記口部側から前記胴中部側に向けて徐々に縮径する形状からなり、
前記胴中部の肉厚をTとし、前記胴部の長さをLとし、前記胴中部の径をDとしたとき、T×L/Dの値が16.6となるプリフォーム。」

<甲1発明2>
「サポートリングを有する口部と、前記口部に連結された胴部とを有し、前記胴部は、前記サポートリング側の首部と、前記首部に連結された胴中部と、前記胴中部に連結された底部とを有し、前記首部は、前記口部側から前記胴中部側に向けて肉厚が大きくなるとともに、前記首部の外径および内径がそれぞれ前記口部側から前記胴中部側に向けて徐々に縮径する形状からなり、前記胴中部の肉厚をTとし、前記胴部の長さをLとし、前記胴中部の径をDとしたとき、T×L/Dの値が16.6となるシェルポリエステルアクロン社(オハイオ州)から得られたシェル8006樹脂21.5グラムを、金型内で射出成形して製造した約0.80のIVとともにPETの共重合体を含有するプリフォームを準備する工程と、
前記プリフォームを2軸延伸ブロー成形することによりプラスチックボトルを作製する工程とを備え、
前記プラスチックボトルは、口部と、前記口部下方に設けられた円筒状の胴部と、前記胴部に連続して設けられた底部とを有し、前記底部は、ペタロイド底形状をなし、周方向に等間隔に配置され下方へ突出する複数個のペタロイド脚を有しているプラスチックボトルの製造方法。」

2 対比・判断
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲1発明1を対比する。
甲1発明1における「シェルポリエステルアクロン社(オハイオ州)から得られたシェル8006樹脂21.5グラムを、金型内で射出成形して製造した約0.80のIVとともにPETの共重合体を含有するプリフォーム」は、本件特許発明1における「射出成形品であるポリエチレンテレフタレート製プリフォーム」に相当する。

したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「プラスチックボトルを作製するために用いられる、射出成形品であるポリエチレンテレフタレート製プリフォームにおいて、
前記プラスチックボトルは、口部と、前記口部下方に設けられた円筒状の胴部と、前記胴部に連続して設けられた底部とを有し、前記底部は、ペタロイド底形状をなしている、周方向に等間隔に配置され下方へ突出する複数個のペタロイド脚を有している、プラスチックボトルを作製するプリフォームであって、
サポートリングを有する口部と、
前記口部に連結された胴部とを備え、
前記胴部は、前記サポートリング側の首部と、前記首部に連結された胴中部と、前記胴中部に連結された底部とを有し、
前記首部は、前記口部側から前記胴中部側に向けて肉厚が大きくなるとともに、前記首部の外径および内径がそれぞれ前記口部側から前記胴中部側に向けて徐々に縮径する形状からなるプリフォーム。」

そして、両者は次の点で相違する。
<相違点1-1>
「プラスチックボトル」に関して、本件特許発明1においては、その「容量」が「500ml?600ml」であって、その「肉厚」は「底部」の「ペタロイド脚」において「0.15mm?0.50mm」であるのに対し、甲1発明1においては、そのようには特定されていない点。

<相違点1-2>
「プラスチックボトル」に関して、本件特許発明1においては、「前記プラスチックボトルの満注容量を測定した後、前記プラスチックボトルにガスボリュームが4になるよう炭酸水を充填して密栓し、その後、前記プラスチックボトルを22℃で24時間保存し、続いて38℃で24時間保存し、その後、前記プラスチックボトル内の炭酸水を排出し、前記プラスチックボトルの満注容量を測定したときの満注容量の増加量は、25ml以内である」と特定されているのに対し、甲1発明1においては、そのようには特定されていない点。

<相違点1-3>
本件特許発明1においては、「前記胴中部の肉厚をTとし、前記胴部の長さをLとし、前記胴中部の径をDとしたとき、T×L/Dの値が12.7以上16.47以下となる」と特定されているのに対し、甲1発明1においては、「前記胴中部の肉厚をTとし、前記胴部の長さをLとし、前記胴中部の径をDとしたとき、T×L/Dの値が16.6となる」と特定されている点。

イ 相違点についての判断
(ア)相違点1-1について
甲1の請求項1には、250mlから850mlの範囲の体積、すなわち容量を有するプラスチックボトルを形成するためのプリフォームについての記載があるから、甲1発明1のプリフォームは250mlから850mlの範囲の容量を有するプラスチックボトルを作製するためのものであるといえる。
また、プラスチックボトルの底部のペタロイド脚の肉厚をどの程度にするかは、強度と軽量化の兼ね合いで決めるべき設計的事項であり、また、その厚みとして、「0.15mm?0.50mm」の範囲内の値は通常設定される厚み条件の範囲にすぎない(必要であれば、特開2012-51623号公報及び特開2013-78887号公報の下記の記載を参照。)。
したがって、甲1発明1のプリフォームを用いてプラスチックボトルを作製するにあたり、この「プラスチックボトル」の容量を250mlから850mlの範囲に含まれる「500ml?600ml」とし、「プラスチックボトル」の肉厚を「底部」の「ペタロイド脚」において「0.15mm?0.50mm」として、相違点1-1に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

・特開2012-51623号公報の記載
「【請求項6】
ペタロイド脚の接地部における厚みが、0.03mm?0.40mmであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項記載のプラスチックボトル。」

・特開2013-78887号公報の記載
「【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項記載のプリフォームを用いて作製されたプラスチックボトルであって、その底部先端肉厚が0.04mm?0.25mmである事を特徴とするプラスチックボトル。」

また、本件特許発明1は「プリフォーム」の発明であるところ、相違点1-1は、「プリフォーム」ではなく、この「プリフォーム」を用いて作製される「プラスチックボトル」に関する事項であるから、そもそも、「相違点1-1は実質的な相違点とはならないともいえる。

(イ)相違点1-2について
相違点1-2にかかる本件特許発明1の発明特定事項に関して、本件特許の発明の詳細な説明及び図面には、次の記載がある。なお、下線は当審で付したものである。

・「【実施例】
【0044】
次に、本実施の形態の具体的実施例を説明する。
【0045】
まず、以下に挙げる8種類のプリフォーム10(実施例1?実施例4、および比較例1?比較例4)を射出成形により作製した。各プリフォーム10の胴中部22における肉厚T、胴部20の重量(胴部重量)、胴部20の長さ(胴部長さ)L、胴中部22の径(胴径)D、及び肉厚T×胴部20の長さL/胴中部22の径Dの値は、それぞれ表1に示すとおりである。なお、各プリフォーム10の口部11の形状は、従来一般的なPCO1810規格に対応するものを用いた。
【0046】
【表1】

【0047】
〔クリープ耐性〕
表1に示す各プリフォーム10を用いて、内容量500mlのペタロイド形状のプラスチックボトル40(図3参照)をブロー成形して得た。このプラスチックボトル40は、口部41を除いたボトルの胴部42の高さが184.57mmであり、最大胴径φが67mmであった。各プラスチックボトル40について、満注容量を測定した後、プラスチックボトル40にガスボリュームが4になるよう炭酸水を充填し、密栓した。このプラスチックボトル40を22℃で24時間保存し、続いて38℃で24時間保存した。その後、プラスチックボトル40内の炭酸水を排出し、プラスチックボトル40の満注容量を測定した。このときの満注容量の増加量(表1参照)に基づいてクリープ耐性を評価した。
【0048】
ここで、肉厚T×胴部の長さL/胴中部の径Dの値と、上述した満注容量の増加量とをグラフにプロットした結果、負の相関(相関係数:-0.91)が観察された(図5参照)。
【0049】
上述した満注容量の増加量は、プラスチックボトル40の内容量(500ml)の5%以内に収まることが好ましいため、クリープ変形の基準は、満注容量の増加量が25ml以上増加したか否かに設定した。クリープ変形の基準を満たすものは、実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、及び比較例1と比較例3となった。そして図5に示す近似直線に基づき、満注容量の増加量25ml以下を満足する肉厚×胴部長さ/胴径(T×L/D)の値は、12.7以上となった。」

・「【図5】



これらの記載から、「肉厚×胴部長さ/胴径(T×L/D)の値」が「12.7以上」であれば、「前記プラスチックボトルの満注容量を測定した後、前記プラスチックボトルにガスボリュームが4になるよう炭酸水を充填して密栓し、その後、前記プラスチックボトルを22℃で24時間保存し、続いて38℃で24時間保存し、その後、前記プラスチックボトル内の炭酸水を排出し、前記プラスチックボトルの満注容量を測定したときの満注容量の増加量」が「25ml以内」となること、すなわち相違点1-2にかかる本件特許発明1の発明特定事項の条件を満足することが理解できる。
他方、甲1発明1は、「前記胴中部の肉厚をTとし、前記胴部の長さをLとし、前記胴中部の径をDとしたとき、T×L/Dの値が16.6」であって、この値は「12.7以上」という上記の条件を満足するから、相違点1-2に係る構成(条件)を満足するといえる。
したがって、甲1発明1も、相違点1-2にかかる本件特許発明1の発明特定事項を有するといえる。

また、本件特許発明1は「プリフォーム」の発明であるところ、相違点1-2は、「プリフォーム」ではなく、この「プリフォーム」を用いて作製される「プラスチックボトル」に関する事項であるから、そもそも、「相違点1-2は実質的な相違点とはならないともいえる。
よって、相違点1-2は実質的な相違点であるとはいえない。

(ウ)相違点1-3について
上記(ア)のとおり、甲1発明1のプリフォームは250mlから850mlの範囲の容量を有するプラスチックボトルを作製するためのものである。
そして、プラスチックボトルの容量を変更するためには、使用する金型を変更するか、プラスチックボトルを作製するプリフォームの長さ(L)、径(D)及び厚み(T)のいずれか1つ以上を変更するものである。
また、本件特許明細書の記載からみて、本件特許発明1における「T×L/Dの値が12.7以上16.47以下」の「16.47」という数値には、臨界的意義はない。
したがって、甲1発明1において、プラスチックボトルを作製するプリフォームの長さ(L)、径(D)及び厚み(T)を適宜調整して、「T×L/D」を16.6の近傍の値である「16.47以下」の値として、相違点1-3に係る本件特許発明1の発明特定事項することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

(エ)効果について
本件特許発明1の奏する「クリープ変形が発生することを押さえることができる。」(本件特許明細書の【0011】)という効果は、「T×L/D」が12.7以上としたことによるものであるから、「T×L/D」が16.6である甲1発明1も奏する効果であるといえる。
また、本件特許発明1の奏する「プラスチックボトルの軽量化を図ることができる」(平成31年4月11日提出の意見書)という効果は、プラスチックボトルの肉厚を薄くしたことによるものであるが、プラスチックボトルの肉厚を薄くすれば軽量化を図れることは当然のことにすぎず、上記効果は当業者が予測可能なものである。
したがって、本件特許発明1の奏する効果は、甲1発明1からみて、格別顕著なものであるとはいえない。

ウ まとめ
したがって、本件特許発明1は、甲1発明1、すなわち甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)本件特許発明2について
甲1発明1において、「T×L/D」の値を求めた際の「T」は3.63mmであるから、甲1発明1は、本件特許発明2における「前記胴中部の肉厚Tは、3.8mm以下である」という発明特定事項を有するといえる。
したがって、本件特許発明2も、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)本件特許発明3について
ア 対比
本件特許発明3と甲1発明2を対比する。
甲1発明2における「シェルポリエステルアクロン社(オハイオ州)から得られたシェル8006樹脂21.5グラムを、金型内で射出成形して製造した約0.80のIVとともにPETの共重合体を含有するプリフォーム」は、本件特許発明3における「射出成形品であるポリエチレンテレフタレート製プリフォーム」に相当する。

したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「サポートリングを有する口部と、前記口部に連結された胴部とを有し、前記胴部は、前記サポートリング側の首部と、前記首部に連結された胴中部と、前記胴中部に連結された底部とを有し、前記首部は、前記口部側から前記胴中部側に向けて肉厚が大きくなるとともに、前記首部の外径および内径がそれぞれ前記口部側から前記胴中部側に向けて徐々に縮径する形状からなる射出成形品であるポリエチレンテレフタレート製プリフォームを準備する工程と、
前記プリフォームを2軸延伸ブロー成形することにより、プラスチックボトルを作製する工程とを備え、
前記プラスチックボトルは、口部と、前記口部下方に設けられた円筒状の胴部と、前記胴部に連続して設けられた底部とを有し、前記底部は、ペタロイド底形状をなし、周方向に等間隔に配置され下方へ突出する複数個のペタロイド脚を有するプラスチックボトルの製造方法。」

<相違点3-1>
「プラスチックボトル」に関して、本件特許発明3においては、その「容量」が「500ml?600ml」であって、その「肉厚」は「底部」の「ペタロイド脚」において「0.15mm?0.50mm」であるのに対し、甲1発明2においては、そのようには特定されていない点。

<相違点3-2>
本件特許発明3においては、「前記胴中部の肉厚をTとし、前記胴部の長さをLとし、前記胴中部の径をDとしたとき、T×L/Dの値が12.7以上16.47以下となる」と特定されているのに対し、甲1発明2においては、「前記胴中部の肉厚をTとし、前記胴部の長さをLとし、前記胴中部の径をDとしたとき、T×L/Dの値が16.6となる」と特定されている点。

<相違点3-3>
本件特許発明3においては、「前記プラスチックボトルの満注容量を測定した後、前記プラスチックボトルにガスボリュームが4になるよう炭酸水を充填して密栓し、その後、前記プラスチックボトルを22℃で24時間保存し、続いて38℃で24時間保存し、その後、前記プラスチックボトル内の炭酸水を排出し、前記プラスチックボトルの満注容量を測定したときの満注容量の増加量は、25ml以内である」と特定されているのに対し、甲1発明2においては、そのようには特定されていない点。

イ 相違点についての判断
相違点3-1、3-2及び3-3は、それぞれ、相違点1-1、1-3及び1-2と同旨であるから、相違点1-1、1-3及び1-2についての上述の判断と同様である。
そして、本件特許発明3の奏する効果についても、本件特許発明1の効果についての上述の判断と同様の理由により、甲1発明2からみて、格別顕著なものであるとはいえない。

ウ まとめ
したがって、本件特許発明3は、甲1発明2、すなわち甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
したがって、本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容量が500ml?600mlのプラスチックボトルを作製するために用いられる、射出成形品であるポリエチレンテレフタレート製プリフォームにおいて、
前記プラスチックボトルは、口部と、前記口部下方に設けられた円筒状の胴部と、前記胴部に連続して設けられた底部とを有し、前記底部は、ペタロイド底形状をなしている、周方向に等間隔に配置され下方へ突出する複数個のペタロイド脚を有し、前記プラスチックボトルの肉厚は、前記底部の前記ペタロイド脚において0.15mm?0.50mmであり、
前記プラスチックボトルの満注容量を測定した後、前記プラスチックボトルにガスボリュームが4になるよう炭酸水を充填して密栓し、その後、前記プラスチックボトルを22℃で24時間保存し、続いて38℃で24時間保存し、その後、前記プラスチックボトル内の炭酸水を排出し、前記プラスチックボトルの満注容量を測定したときの満注容量の増加量は、25ml以内である、プラスチックボトルを作製するプリフォームであって、
サポートリングを有する口部と、
前記口部に連結された胴部とを備え、
前記胴部は、前記サポートリング側の首部と、前記首部に連結された胴中部と、前記胴中部に連結された底部とを有し、
前記首部は、前記口部側から前記胴中部側に向けて肉厚が大きくなるとともに、前記首部の外径および内径がそれぞれ前記口部側から前記胴中部側に向けて徐々に縮径する形状からなり、
前記胴中部の肉厚をTとし、前記胴部の長さをLとし、前記胴中部の径をDとしたとき、T×L/Dの値が12.7以上16.47以下となることを特徴とするプリフォーム。
【請求項2】
前記胴中部の肉厚Tは、3.8mm以下であることを特徴とする請求項1記載のプリフォーム。
【請求項3】
サポートリングを有する口部と、前記口部に連結された胴部とを有し、前記胴部は、前記サポートリング側の首部と、前記首部に連結された胴中部と、前記胴中部に連結された底部とを有し、前記首部は、前記口部側から前記胴中部側に向けて肉厚が大きくなるとともに、前記首部の外径および内径がそれぞれ前記口部側から前記胴中部側に向けて徐々に縮径する形状からなり、前記胴中部の肉厚をTとし、前記胴部の長さをLとし、前記胴中部の径をDとしたとき、T×L/Dの値が12.7以上16.47以下となる射出成形品であるポリエチレンテレフタレート製プリフォームを準備する工程と、
前記プリフォームを2軸延伸ブロー成形することにより、容量が500ml?600mlのプラスチックボトルを作製する工程とを備え、
前記プラスチックボトルは、口部と、前記口部下方に設けられた円筒状の胴部と、前記胴部に連続して設けられた底部とを有し、前記底部は、ペタロイド底形状をなし、周方向に等間隔に配置され下方へ突出する複数個のペタロイド脚を有し、前記プラスチックボトルの肉厚は、前記底部の前記ペタロイド脚において0.15mm?0.50mmであり、
前記プラスチックボトルの満注容量を測定した後、前記プラスチックボトルにガスボリュームが4になるよう炭酸水を充填して密栓し、その後、前記プラスチックボトルを22℃で24時間保存し、続いて38℃で24時間保存し、その後、前記プラスチックボトル内の炭酸水を排出し、前記プラスチックボトルの満注容量を測定したときの満注容量の増加量は、25ml以内であることを特徴とするプラスチックボトルの製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-10-28 
出願番号 特願2014-79665(P2014-79665)
審決分類 P 1 651・ 121- ZAA (B29C)
最終処分 取消  
前審関与審査官 辰己 雅夫  
特許庁審判長 須藤 康洋
特許庁審判官 植前 充司
加藤 友也
登録日 2018-04-27 
登録番号 特許第6327517号(P6327517)
権利者 大日本印刷株式会社
発明の名称 プリフォーム、プラスチックボトルおよびその製造方法  
代理人 村田 卓久  
代理人 永井 浩之  
代理人 堀田 幸裕  
代理人 高田 泰彦  
代理人 堀田 幸裕  
代理人 佐藤 泰和  
代理人 朝倉 悟  
代理人 宮嶋 学  
代理人 村田 卓久  
代理人 永井 浩之  
代理人 朝倉 悟  
代理人 中村 行孝  
代理人 高田 泰彦  
代理人 佐藤 泰和  
代理人 中村 行孝  
代理人 宮嶋 学  
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