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審決分類 審判 全部申し立て 特17条の2、3項新規事項追加の補正  C09D
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C09D
審判 全部申し立て 2項進歩性  C09D
管理番号 1359609
異議申立番号 異議2019-700895  
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-03-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-11-12 
確定日 2020-02-25 
異議申立件数
事件の表示 特許第6512784号発明「軽量気泡コンクリート用塗料、並びに軽量気泡コンクリート構造体、軽量気泡コンクリート構造体の製造方法及び塗装方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6512784号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯・証拠の一覧
1 手続の経緯
本件特許に係る出願は、平成26年9月30日(国内優先権主張 平成25年9月30日(以下「本件優先日」という。))の出願であって、平成30年1月4日付で拒絶理由が通知され、同年3月19日に意見書の提出と共に手続補正がされ、同年8月7日付で拒絶理由が通知され、同年10月15日に意見書の提出と共に手続補正がされ、同年10月31日付で拒絶査定がされ(謄本発送は、同年11月6日)、平成31年2月6日に拒絶査定不服審判の請求と同時に手続補正がされ、同年3月1日付で特許法第162条の規定によるいわゆる前置審査により特許査定され、平成31年4月19日に特許権の設定登録がされ、令和元年5月15日にその特許掲載公報が発行され、同年11月12日に特許異議申立人 清水 すみ子(以下「申立人」という。)によって請求項1?6に係る特許発明について特許異議の申立てがなされたものである。
2 証拠の一覧
申立人が提示した証拠は以下のとおりである(以下「甲第1号証」を甲1などという。)。
甲1:特開2008-178854号公報
甲2:特開2002-103553号公報
甲3:特開2000-86942号公報

第2 本件特許について
本件特許発明は、登録時の特許請求の範囲の請求項1?6の記載により特定される以下のとおりの発明(以下「本件発明1」?「本件発明6」という。)である。
「【請求項1】
軽量気泡コンクリートと、第1の塗料によって前記軽量気泡コンクリートの表面上に形成された第1の層と、第2の塗料によって前記第1の層の表面上に形成された第2の層と、を備え、
前記第1の塗料が体質顔料および3質量%以上15質量%未満の着色顔料を有する下地塗料を含み、前記第2の塗料が少なくとも2種の着色高分子粒体を含有する多彩模様塗料を含み、
前記少なくとも2種の着色高分子粒体は、粒径が4mm未満の第1の着色高分子粒体と、粒径が4mm以上の第2の着色高分子粒体とを含み、
前記第2の塗料における、前記第1の着色高分子粒体の含有率は50質量%以上70質量%以下であり、前記第2の着色高分子粒体の含有率は10質量%より大きく30質量%以下である、軽量気泡コンクリート構造体。
【請求項2】
前記第2の着色高分子粒体の粒径は、8mm以下である、請求項1に記載の軽量気泡コンクリート構造体。
【請求項3】
軽量気泡コンクリート、第1の層及び第2の層を備える軽量気泡コンクリート構造体の製造方法であって、
前記軽量気泡コンクリートの表面上に、第1の塗料を塗布し、前記第1の層を形成する第1の工程と、
前記第1の層の表面上に、第2の塗料を塗布し、前記第2の層を形成する第2の工程と、を備え、
前記第1の塗料が体質顔料および3質量%以上15質量%未満の着色顔料を有する下地塗料を含み、前記第2の塗料が少なくとも2種の着色高分子粒体を含有する多彩模様塗料を含み、
前記少なくとも2種の着色高分子粒体は、粒径が4mm未満の第1の着色高分子粒体と、粒径が4mm以上の第2の着色高分子粒体とを含み、
前記第2の塗料における、前記第1の着色高分子粒体の含有率は50質量%以上70質量%以下であり、前記第2の着色高分子粒体の含有率は10質量%より大きく30質量%以下である、軽量気泡コンクリート構造体の製造方法。
【請求項4】
前記第2の着色高分子粒体の粒径は、8mm以下である、請求項3に記載の軽量気泡コンクリート構造体の製造方法。
【請求項5】
軽量気泡コンクリートを塗装する塗装方法であって、
前記軽量気泡コンクリートの表面上に、第1の塗料を塗布する工程と、
前記第1の塗料により形成された第1の層の表面上に、第2の塗料を塗布する工程と、を備え、
前記第1の塗料が体質顔料および3質量%以上15質量%未満の着色顔料を有する下地塗料を含み、前記第2の塗料が少なくとも2種の着色高分子粒体を含有する多彩模様塗料を含み、
前記少なくとも2種の着色高分子粒体は、粒径が4mm未満の第1の着色高分子粒体と、粒径が4mm以上の第2の着色高分子粒体とを含み、
前記第2の塗料における、前記第1の着色高分子粒体の含有率は50質量%以上70質量%以下であり、前記第2の着色高分子粒体の含有率は10質量%より大きく30質量%以下である、軽量気泡コンクリートの塗装方法。
【請求項6】
前記第2の着色高分子粒体の粒径は、8mm以下である、請求項5に記載の軽量気泡コンクリートの塗装方法。」

第3 特許異議の申立てについて
1 異議申立て理由の概要
申立人の主張する取消理由の概要は以下のとおりである。
(1)理由1:特許法第17条の2第3項について
ア 平成30年10月15日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)により、本件補正前の請求項1に規定されていた「第2の塗料の隠蔽率が80%以上」という発明特定事項が削除されることによって、願書に最初に添付された明細書等に記載のなかった新規事項を追加されており、特許法第113条第1号に該当し、本件発明1?6に係る特許は取り消されるべきものである。
イ なお、申立人の主張する本件補正の補正の目的要件違反は、特許法第113条に規定された特許の取消理由となり得ないため、上記アのように解した。
(2)理由2:特許法第36条第6項第2号について
本件発明1、3、5において特定された「前記少なくとも2種の着色高分子粒体は、粒径が4mm未満の第1の着色高分子粒体と、粒径が4mm以上の第2の着色高分子粒体とを含み、前記第2の塗料における、前記第1の着色高分子粒体の含有率は50質量%以上70質量%以下であり、前記第2の着色高分子粒体の含有率は10質量%より大きく30質量%以下である」という特定は不明確であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たさないから、特許法第113条第4項に該当し、本件発明1?6に係る特許は取り消されるべきものである。
(3)理由3:特許法第29条第2項について
本件発明1?6は、本件優先日前に頒布された刊行物である甲1に記載された発明並びに甲2に記載された技術常識及び甲3に記載された周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許をうけることができない発明であるから、本件発明1?6に係る特許は特許法第113条第2項に該当し、取り消されるべきである。
2 理由1(特許法第17条の2第3項)について
(1)遮蔽率について
職権調査したところ、本件特許の願書に最初に添付した明細書(以下「当初明細書」という。)には、次のように記載されている。
ア 特許請求の範囲
(ア)「【請求項1】
第1の塗料及び第2の塗料を備える軽量気泡コンクリート用塗料であって、
前記第1の塗料が下地塗料を含み、前記第2の塗料が着色高分子粒体を含有し、
前記第2の塗料の隠蔽率が80%以上である、軽量気泡コンクリート用塗料。」
(イ)「【請求項6】
軽量気泡コンクリートと、第1の塗料によって前記軽量気泡コンクリートの表面上に形成された第1の層と、第2の塗料によって前記第1の層の表面上に形成された第2の層と、を備え、
前記第1の塗料が下地塗料を含み、前記第2の塗料が少なくとも2種の着色高分子粒体を含有する多彩模様塗料を含む、軽量気泡コンクリート構造体。」
(ウ)「【請求項7】
前記第2の塗料の隠蔽率が80%以上である、請求項6記載の軽量気泡コンクリート構造体。」
イ 発明の詳細な説明
(ア)「【0027】 本実施形態における第2の塗料は、少なくとも2種の着色高分子粒体を含有する塗料であって、隠蔽率が80%以上の塗料であれば特に制限なく用いることができる。第2の塗料は、多彩模様塗料であることが好ましい。ここで、多彩模様塗料とは、液状又はゲル状の2色以上の色の粒が懸濁した塗料であり、1回の塗装で色散らし模様ができる塗料をいう。第2の塗料の隠蔽率はより好ましくは85%以上である。なお、本発明では、第2の塗料に含まれる着色高分子粒体は、1種類であってもよい。」
(イ)「【0072】
本実施形態の少なくとも2種の着色高分子粒体は、粒径が4mm未満の第1の着色高分子粒体と、粒径が4mm以上の第2の着色高分子粒体とを含んでいる。第1の着色高分子粒体の粒径は、1mm以上4mm未満であることが好ましく、1.5mm以上4mm未満であることがより好ましく、2mm以上4mm未満であることがさらに好ましい。第2の着色高分子粒体の粒径は、4mm以上8mm以下であることが好ましく、4mm以上7mm以下であることがより好ましく、4mm以上6mm以下であることがさらに好ましい。第2の塗料において、少なくとも2種の着色高分子粒体の含有率は、60質量%を超え80質量%以内であることが好ましい。少なくとも2種の着色高分子粒体の含有率は、65質量%以上80質量%以内であることがより好ましく、70質量%以上80質量%以上であることがさらに好ましい。この場合、第2の塗料による隠蔽率が80%以上を維持できる。少なくとも2種の着色高分子粒体の含有率が80質量%を超える場合、当該着色高分子粒体が塗料に十分に分散せずに、第2の塗料による隠蔽率が80%以上を維持できなくなる。第2の塗料において、第1の着色高分子粒体の含有率は50質量%以上70質量%以内であり、第2の着色高分子粒体の含有率は10質量%以上30質量%以内であることが好ましい。第1の着色高分子粒体と、第2の着色高分子粒体とは、互いに異なった色が付されていてもよい。また、第1の着色高分子粒体と、第2の着色高分子粒体との少なくとも一方は、複数に着色されていてもよい。すなわち、第1の着色高分子粒体と、第2の着色高分子粒体との少なくとも一方には、2色以上の色の粒が含まれていてもよい。これらの場合、第2の塗料は多彩模様塗料となり、当該第2の塗料が塗布された軽量気泡コンクリート等の意匠性が向上する。なお、本発明においては、第2の塗料に第2の着色高分子粒体が含まれなくてもよい。この場合であっても、第2の塗料の隠蔽率が80%以上になり得る。この第1の着色高分子粒体は、単色の粒体から構成されてもよいし、複数色の粒体から構成されてもよい。」
(ウ)「【0095】
本実施例で用いた評価項目及びその評価方法は下記のとおりである。
(隠蔽率)
隠蔽率は、塗料が下地の色の差を覆い隠す度合を示し、以下の式で算出できる。なお、L値は明度を指す。
隠蔽率(%)=(ΔL1-ΔL2)/ΔL1×100
ΔL1:黒と白とに塗り分けて作った下地の黒白部分のΔL値
ΔL2:黒と白とに塗り分けて作った下地の上に塗装した場合の黒白部分のΔL値」
(2)当審の判断
ア 当初特許請求の範囲の記載を検討すると、前記(1)ア(ア)に摘記した請求項1に係る発明は、第2の塗料の隠蔽率が80%以上であることが必須であるともいえるが、同(イ)(ウ)に摘記した請求項6を引用する「第2の塗料の隠蔽率が80%以上である」ことを特定した請求項7の記載によれば、請求項6に係る発明は、第2の塗料の隠蔽率が80%未満のものも含まれるということができ、当初特許請求の範囲の請求項6には、第2の塗料の隠蔽率が80%以上であることを必須の発明特定事項としない発明が記載されているということができる。
イ 前記(1)イ(イ)に摘記した当初明細書の段落【0072】の記載によれば、第2の塗料の隠蔽率に影響するのは、「少なくとも2種の着色高分子粒体の含有率」であって、これは着色高分子粒体の合計含有率であると解され、合計含有率が60質量%以上80質量%以下である場合に、隠蔽率が80%以上が確保可能であるということが読み取れる。
ウ そして、同段落【0072】には、合計含有率は、60質量%を超え、80質量%以内であることが好ましい、と記載され、隠蔽率が80%以上であることを確保できない合計含有率である80質量%を超えるものも排除していない。
エ そうすると、本件補正により、「隠蔽率」の規定を削除したことにより、本件特許に係る特許請求の範囲は拡張していることになるが、前記ア?ウにおいて検討したように、本件発明における第2の塗料の隠蔽率を80%以上とすることは、必須であると当初明細書に記載されていたということはできないから、本件補正が新規事項を追加したものということはできない。
(3)小括
以上(1)(2)において検討したように、本件補正は特許法第17の2第3項の規定に違背するものではないから、本件発明1?6に係る特許は特許法第113条第1号により取り消すことはできない。
3 理由2(特許法第36条第6項第2号)について
(1)申立人の主張1
ア 本件明細書の段落【0076】、【0082】について
本件明細書の段落【0076】、【0082】には、以下のように記載されている。
「【0076】
かくして得られた着色高分子粒体であって、相互に色調の異なるものの2種以上を、水性合成樹脂エマルション系クリヤー塗料に配合し、本実施形態の水性多彩模様塗料組成物を得ることができる。」
「【0082】
着色高分子粒体の配合量は適宜設定することができるが、多彩模様塗料組成物の全量に基づいて、1?50重量%、好ましくは5?45重量%とするのが好ましい。配合量が上記上限値以下であると十分なクリヤー塗膜が形成されやすく、また、配合量が上記下限値以上であると特に優れた多彩感の意匠の塗膜が得られるので好ましい。」
イ 申立人は、特許異議申立書第34頁において、前記アの段落【0082】の記載と本件発明1、3、5における「第2の塗料」における「第1の着色高分子粒体」と「第2の着色高分子粒体」との合計が、60?100質量%となるはずであるが、数値範囲が一致しないことをもって、本願発明1、3、5の発明特定事項が不明確であると主張していると解される。
ウ 当審の判断
しかしながら、前記段落【0076】?【0082】は、クリアー塗料についての記載であり、段落【0082】の配合量は、クリアー塗膜を形成する場合について記載されていることが当業者には読み取れることである。そうすると、上記アの記載は、クリアー塗膜とはいえない本件発明1、3、5における配合量と矛盾するものではない。
(2)申立人の主張2
ア 本件明細書の段落【0094】には、次の記載がある。
「実施例及び比較例で用いた原料は下記のとおりである。 ゲル状粒子(小白):水500質量部、乳化安定剤25質量部、分散剤25質量部、増粘剤25質量部、増粘助剤50質量部、消泡剤3質量部を配合して水性媒体を調製した。また、アクリル樹脂エマルジョン100質量部、感熱ゲル化剤30質量部、水200質量部、白色顔料2.5質量部、増粘剤2質量部、消泡剤3質量部を配合して得られ感熱ゲル化エマルジョン組成物を調製した。次に、水性媒体を70℃で加熱し、撹拌速度500rpmで攪拌しながら、感熱ゲル化エマルジョン組成物を60分かけて滴下した。滴下終了後、10分間70℃に保つように加熱しながら攪拌を続け、加熱を終了してから30分後に攪拌を停止し、放冷した。その後、8メッシュの網でろ過し、着色高分子粒体であるゲル状粒子(小白)を得た。光学顕微鏡で無作為に選び観察したところ、粒径は2?4mmであった。
ゲル状粒子(大白):撹拌速度500rpmの点以外はゲル状粒子(小白)と同様にし、ゲル状粒子(大白)を得た。粒径は4?6mmであった。・・・」
イ 申立人は、ゲル粒子(小白)及びゲル粒子(大白)のいずれにも粒径が4mmの粒子が含まれているから、いずれの粒子が本件発明1、3、5に規定される「第1の着色高分子粒体」または「第2の着色高分子粒体」に相当するかが明らかでないと主張する。
ウ 当審の判断
前記(1)イ(ア)に摘記した本件明細書の段落【0072】における「4mm未満」、「4mm以上」という記載からみて、前記アの「4?6mm」は、4mm以上6mm未満を表すことが明らかである。また、本件発明1、3、5における「粒径が4mm以上の第2の着色高分子粒体」は、ゲル状粒子(大白)(粒径は4?6mm)に相当することは明らかである。そして、「粒径が4mm未満の第1の着色高分子粒体」は、前記アのゲル状粒子(小白)のうち、粒径が2mm以上4mm未満の粒子を特定したものと解される。前記アの記載により本件発明1、3、5が不明確になっているということはできない。
(3)小括
前記(1)(2)において検討したとおり、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定された要件を満たさないということはできず、本件特許が特許法第113条第4項に該当しないから、取り消すことはできない。
4 理由3について
(1)甲1の記載事項
甲1には、次の記載がある。
ア 「【請求項1】
複数の板状無機質建材が並設され、当該板状無機質建材間の目地部にはシーリング材または乾式目地材が充填されてなる壁面の塗装方法であって、
当該壁面に対し、下塗材を塗装した後、
透明被膜を形成する分散媒中に、平均粒子径0.2mm以上の斑点模様形成用着色粒子、及び当該斑点模様形成用着色粒子よりも平均粒子径が小さい背景色形成用着色粒子が分散されてなり、
当該斑点模様形成用着色粒子と当該背景色形成用着色粒子との重量比は1:2?1:200であり、
当該背景色形成用着色粒子は、当該斑点模様形成用着色粒子とは異色である上塗材を塗装することを特徴とする塗装方法。」
イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の板状無機質建材で構成された壁面の改装に適した塗装方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物の壁面を構成する材料として、サイディングボード、ALC板等の板状無機質建材が汎用的に使用されている。このような板状無機質建材においては、その意匠性を高めるため、塗装によって建材表面に種々の凹凸模様を付する手法や、斑点模様を付する手法等が採用されている。このうち、建材表面に斑点模様を付する場合は、建材間の目地部に充填するシーリング材や乾式目地材にも同様の斑点模様を付することで、全体的な意匠性を高めることができる。・・・」
ウ 「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述のような問題点に鑑みなされたものであり、建築現場における既設の板状無機質建材の壁面に対し、安定した斑点模様を付する簡便な塗装方法を提供することを目的とするものである。」
エ 「【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、建築現場における既設の板状無機質建材の壁面に対し、安定した斑点模様を形成することができ、美観性の高い仕上りを簡便に得ることができる。」
オ 「【0012】
本発明で塗装対象となる被塗面は、板状無機質建材が複数並設され、当該板状無機質建材間の目地部にはシーリング材または乾式目地材が充填された壁面である。
このうち、板状無機質建材としては、例えば、セメントボード、押出成形板、PC板、ALC板、繊維強化セメント板、金属系サイディングボード、窯業系サイディングボード、セラミック板等が挙げられる。これら板状無機質建材は、種々の凹凸模様による立体的な意匠性を有するものであってもよい。
このような板状無機質建材の表面には、通常、基材の保護等を目的として何らか塗膜が形成されているが、このような塗膜は、太陽光、降雨等の影響により、経時的に劣化が進行してしまう。本発明は、このように経時的に劣化した塗膜(旧塗膜)を有する板状無機質建材で構成された壁面の改装に適している。」
カ 「【0017】
本発明では、まず、上述の板状無機質建材で構成された壁面に下塗材を塗装する。この下塗材は、結合材を必須成分として含み、必要に応じ、着色顔料その他の添加剤を含むものである。このうち、結合材としては、例えば、水溶性樹脂、水分散性樹脂(樹脂エマルション)、溶剤可溶形樹脂、無溶剤形樹脂、非水分散形樹脂、粉末樹脂等の各種結合材、あるいはこれらを複合化した結合材等を使用することができる。これらは架橋反応性を有するものであってもよい。また、結合材の形態は特に限定されず、1液型、2液型のいずれであってもよい。本発明では特に、水溶性樹脂及び/または水分散性樹脂が好適に用いられる。使用可能な樹脂の種類としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂等、あるいはこれらの複合系等を挙げることができる。」
キ 「【0026】
下塗材における着色顔料としては、通常塗料に使用可能なものであれば特に制限されず、例えば酸化チタン、カーボンブラック、酸化第二鉄(弁柄)、黄色酸化鉄、オーカー、群青、コバルトグリーン等の無機系顔料、アゾ系、ナフトール系、ピラゾロン系、アントラキノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジスアゾ系、イソインドリノン系、ベンゾイミダゾール系、フタロシアニン系、キノフタロン系等の有機顔料等が使用できる。これら着色顔料の1種または2種以上を適宜使用することにより、下塗材を所望の色調に調整することができる。
着色顔料の混合比率は、結合材の固形分100重量部に対し、通常500重量部以下、好ましくは5?200重量部、より好ましくは10?100重量部程度である。着色顔料の混合比率がこのような範囲内であれば、下塗材の色調を任意色に調整することができる。
【0027】
下塗材には、上述の成分の他に通常塗料に使用可能な成分を混合することもできる。このような成分としては、例えば、体質顔料、レベリング剤、湿潤剤、造膜助剤、可塑剤、凍結防止剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、吸着剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、触媒、架橋剤等が挙げられる。下塗材はこのような成分を常法により均一に混合して得ることができる。」
ク 「【0030】
本発明では、上記下塗材の塗装後、特定の上塗材を塗装する。以下、本発明における上塗材につき説明する。
【0031】
本発明における上塗材は、透明被膜を形成する分散媒中に、平均粒子径0.2mm以上の斑点模様形成用着色粒子(p)(以下「斑点用粒子(p)」と略す)、及び当該斑点模様形成用着色粒子よりも平均粒子径が小さい背景色形成用着色粒子(q)(以下「背景用粒子(q)」と略す)が分散されてなるものである。本発明では、このような上塗材を使用することにより、斑点模様の大きさや分布におけるムラ、偏り等が抑制され、美観性の高い仕上状態を安定して得ることができる。本発明において、塗装対象となる壁面が斑点模様を有するものである場合は、その斑点模様を再現することもできるし、新たな斑点模様を形成することもできる。
【0032】
斑点用粒子(p)の平均粒子径は0.2mm以上であればよいが、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは0.8mm以上である。斑点用粒子(p)の平均粒子径の上限は、形成模様の美観性、塗装作業性等を勘案して適宜設定すればよいが、通常は8mm以下、好ましくは5mm以下である。背景用粒子(q)は、斑点用粒子(p)よりも相対的に平均粒子径が小さくなるように設定すればよいが、その平均粒子径は通常1mm以下、好ましくは0.8mm未満、より好ましくは0.5mm未満、さらに好ましくは0.2mm未満である。背景用粒子(q)の平均粒子径の下限は、特に限定されるものではないが、通常は0.001mm以上である。また、上塗材における斑点用粒子(p)と背景用粒子(q)との重量比は、1:2?1:200(好ましくは1:5?1:150)に設定する。各粒子の大きさと重量比をこのような値に設定しておくことにより、美観性に優れた斑点模様を安定した状態で形成することができる。なお、各粒子の平均粒子径は、光学顕微鏡での観察により算出することができる。
【0033】
本発明の上塗材では、背景用粒子(q)によって背景色が形成され、その中に斑点用粒子(p)による斑点模様が形成される。本発明では、明瞭な斑点模様を得るため、背景用粒子(q)が斑点用粒子(p)とは異色となるようにそれぞれの粒子の色調を設定する。具体的に、背景用粒子(q)と斑点用粒子(p)との色差は5以上(好ましくは10以上、より好ましくは20以上)となるように設定することが望ましい。なお、本発明における色差(△E)は、色差計を用いて測定される値である。
背景用粒子(q)による背景色は、巨視的に単色と認識できる程度であればよい。斑点用粒子(p)による斑点模様が認識可能であれば、2色以上の背景用粒子(q)を用いて背景色を構成することもできる。
【0034】
透明被膜を形成する分散媒は、上記斑点用粒子(p)及び背景用粒子(q)を上塗材塗膜に固定化する役割を担うものである。このような分散媒は、媒体中に1種以上の結合材を含むものであればよい。結合材としては、例えば、セルロース、ポリビニルアルコール、エチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂等、あるいはこれらの複合系等が使用できる。なお、この分散媒により形成される透明被膜の透明性は、上塗材塗膜において斑点用粒子(p)と背景用粒子(q)が視認でき、これら粒子の色の違いが認識可能な程度であればよい。
また、斑点用粒子(p)と背景用粒子(q)の合計量は、分散媒中の結合材の固形分100重量部に対し、通常100?2000重量部、好ましくは150重量部?1500重量部とすればよい。
【0035】
上塗材としては、上述のような条件を満足するものを使用することができるが、本発明では、特に、合成樹脂エマルション(a)、ゲル形成物質(b)、及び着色顔料(c)を含む着色水性塗料(I)を、合成樹脂エマルション(a’)及びゲル化剤(d)を含有する水性分散媒(II)に分散して得られるもの(以下「上塗材M」という)が好適である。このような上塗材Mでは、着色水性塗料(I)のゲル物が粒状に分散されたもの、すなわち着色ゲル粒子が生成し、これら着色ゲル粒子が斑点用粒子(p)と背景用粒子(q)を構成する。また、これら着色ゲル粒子は、水性分散媒(II)の合成樹脂エマルション(a’)によって、上塗材塗膜中に確実に固定化される。
このような上塗材Mは、水を媒体とする環境対応形の塗材であり、作業衛生上においても好ましいものである。また、上塗材Mでは、着色水性塗料(I)の色調を調製することで、所望の色調の粒子が得られるため、色調設定の自由度も高い。
【0036】
上塗材Mにおいては、とりわけ、合成樹脂エマルション(a)が、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするモノマー群の乳化重合物であり、該モノマー群におけるカルボキシル基含有モノマーの比率が3重量%以下の合成樹脂エマルションであれば、少量のゲル化剤で着色ゲル粒子が生成でき、塗膜の耐候性、耐水性等の塗膜物性において有利である。水性分散媒(II)における合成樹脂エマルション(a’)についても、これと同様の合成樹脂エマルションを使用することが望ましい。
【0037】
このような合成樹脂エマルション(a)(以下「(a)成分」という)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするモノマー群の乳化重合して得られるものである。」
ケ 「【実施例】
【0055】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。」
(ア)「【0056】
(下塗材の製造)
(下塗材1)
容器内に下記合成樹脂エマルション1を65.0重量部仕込み、攪拌羽根の回転速度を1800rpmとして攪拌を行いながら、造膜助剤6.5重量部、増粘剤2.5重量部、酸化チタン60重量%分散液4.2重量部、黄色酸化鉄60重量%分散液13.0重量部、黒色酸化鉄50重量%分散液0.2重量部、弁柄60重量%分散液1.8重量部、水6.0重量部、消泡剤0.8重量部を均一に混合することにより褐色の下塗材1を製造した。
【0057】
・合成樹脂エマルション1:多層構造型合成樹脂エマルション
外層;アクリル樹脂(Tg30℃、構成成分;t-ブチルメタクリレート,n-ブチルメタクリレート,n-ブチルアクリレート,2-エチルヘキシルアクリレート,メタクリル酸)、
内層;シリコーン樹脂(構成成分;ヘキサメチルシクロトリシロキサン,オクタメチルシクロテトラシロキサン,デカメチルシクロペンタシロキサン)、アクリル樹脂(Tg-50℃、構成成分;n-ブチルメタクリレート,n-ブチルアクリレート,2-エチルヘキシルアクリレート)、シリコーン樹脂と内層アクリル樹脂の重量比18:82、
外層と内層の重量比40:60、固形分50重量%、カルボキシル基含有モノマー3重量%(固形分中)
【0058】
(下塗材2)
容器内に下記合成樹脂エマルション2を65.0重量部仕込み、攪拌羽根の回転速度を1800rpmとして攪拌を行いながら、造膜助剤6.5重量部、増粘剤2.5重量部、酸化チタン60重量%分散液4.2重量部、黄色酸化鉄60重量%分散液13.0重量部、黒色酸化鉄50重量%分散液0.2重量部、弁柄60重量%分散液1.8重量部、水6.0重量部、消泡剤0.8重量部を均一に混合することにより褐色の下塗材2を製造した。
【0059】
・合成樹脂エマルション2:アクリル樹脂エマルション(Tg5℃、構成成分;t-ブチルメタクリレート,n-ブチルメタクリレート,n-ブチルアクリレート,2-エチルヘキシルアクリレート,メタクリル酸、固形分50重量%、カルボキシル基含有モノマー3重量%(固形分中))
【0060】
(下塗材3)
容器内に上記合成樹脂エマルション1を60.0重量部仕込み、攪拌羽根の回転速度を1800rpmとして攪拌を行いながら、造膜助剤6.5重量部、増粘剤2.5重量部、酸化チタン60重量%分散液28重量部、水2.2重量部、消泡剤0.8重量部を均一に混合することにより褐色の下塗材3を製造した。」
(イ)「【0061】
(上塗材の製造)
・黒色粒子分散液1
まず、容器内に合成樹脂エマルション3を85.0重量部仕込み、攪拌羽根の回転速度を1800rpmとして攪拌を行いながら、造膜助剤8.3重量部、水5.7重量部、ゲル化剤として硫酸アルミニウム0.5重量部、消泡剤0.5重量部を均一に混合することにより、水性分散媒1を製造した。
次に、別の容器内に合成樹脂エマルション3を40.0重量部仕込み、攪拌羽根の回転速度を1800rpmとして攪拌を行いながら、造膜助剤4.0重量部、黒色酸化鉄50重量%分散液12.0重量部、ゲル形成物質としてカルボキシメチルセルロース2重量%水溶液43.5重量部、消泡剤0.5重量部を均一に混合することにより黒色水性塗料1を製造した。
上述の水性分散媒1(100重量部)に対し、黒色水性塗料1を100重量部加えて分散(攪拌羽根の回転速度;600rpm)することにより、粒径約2mmの黒色粒子が分散した黒色粒子分散液1を得た。
【0062】
・褐色粒子分散液1
容器内に合成樹脂エマルション3を40.0重量部を仕込み、攪拌羽根の回転速度を1800rpmとして攪拌を行いながら、造膜助剤4.0重量部、酸化チタン60重量%分散液3.5重量部、黄色酸化鉄60重量%分散液11.5重量部、黒色酸化鉄50重量%分散液0.2重量部、弁柄60重量%分散液1.5重量部、ゲル形成物質としてカルボキシメチルセルロース2重量%水溶液43.5重量部、消泡剤0.5重量部を均一に混合することにより褐色水性塗料1を製造した。この褐色水性塗料1と上記黒色水性塗料1との色差は40であった。
上述の水性分散媒1(100重量部)に対し、褐色水性塗料1を100重量部加えて分散(攪拌羽根の回転速度;1600rpm)することにより、粒径約0.1mmの褐色粒子が分散した褐色粒子分散液1を得た。
【0063】
・上塗材1
黒色粒子分散液1と褐色粒子分散液1とを1:20の重量比率にて混合することにより、上塗材1を得た。
【0064】
なお、合成樹脂エマルション3としては、アクリル樹脂エマルション(メチルメタクリレート-シクロヘキシルメタクリレート-ブチルアクリレート-アクリル酸共重合体(モノマー重量比33:38:28.2:0.8)、乳化剤:反応性ノニオン性乳化剤、ガラス転移温度:35℃、固形分:50重量%)を使用した。
【0065】
(上塗材2?7)
表1に示す配合に従い、それぞれ黒色粒子分散液、褐色粒子分散液を製造し、これらを1:20の重量比率で混合することにより上塗材を製造した。なお、上塗材2?7では、上記合成樹脂エマルション3の他に、以下の合成樹脂エマルション4?9を使用した。
【0066】
(上塗材8)
容器内に合成樹脂エマルション4を30.0重量部仕込み、これに平均粒子径0.4mmの着色珪砂(黒色)2.0重量部、平均粒子径0.18mmの着色珪砂(褐色)60.0重量部、造膜助剤を3.0重量部、水3.5重量部、増粘剤1.0重量部、消泡剤0.5重量部を混合し、常法により均一に攪拌して上塗材8を製造した。
【0067】
(上塗材9)
容器内に合成樹脂エマルション4を30.0重量部仕込み、これに平均粒子径0.4mmの着色珪砂(黒色)1.0重量部、平均粒子径0.15mmの寒水石(光透過率16%)60.0重量部、造膜助剤を3.0重量部、水、4.3重量部、増粘剤1.2重量部、消泡剤0.5重量部を混合し、常法により均一に攪拌して上塗材9を製造した。
【0068】
・合成樹脂エマルション4
メチルメタクリレート-シクロヘキシルメタクリレート-ブチルアクリレート-アクリル酸共重合体(モノマー重量比33:38:28.7:0.3)、乳化剤:反応性ノニオン性乳化剤、ガラス転移温度:34℃、固形分:50重量%
【0069】
・合成樹脂エマルション5
メチルメタクリレート-シクロヘキシルメタクリレート-ブチルアクリレート-2-ヒドロキシエチルメタクリレート-アクリル酸共重合体(モノマー重量比33:38:26.7:2:0.3)、乳化剤:反応性ノニオン性乳化剤、ガラス転移温度:35℃、固形分:50重量%
【0070】
・合成樹脂エマルション6
メチルメタクリレート-シクロヘキシルメタクリレート-ブチルアクリレート-2-ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体(モノマー重量比33:38:27:2)、乳化剤:反応性ノニオン性乳化剤、ガラス転移温度:35℃、固形分:50重量%
【0071】
・合成樹脂エマルション7
メチルメタクリレート-シクロヘキシルメタクリレート-ブチルアクリレート-2-ヒドロキシエチルメタクリレート-アクリル酸共重合体(モノマー重量比33:38:26.7:2:0.3)、乳化剤:アニオン性乳化剤、ガラス転移温度:35℃、固形分:50重量%
【0072】
・合成樹脂エマルション8
メチルメタクリレート-シクロヘキシルメタクリレート-ブチルアクリレート-アクリル酸共重合体(モノマー重量比33:37:28:2)、乳化剤:反応性ノニオン性乳化剤、ガラス転移温度:35℃、固形分:50重量%
【0073】
・合成樹脂エマルション9
メチルメタクリレート-シクロヘキシルメタクリレート-ブチルアクリレート-アクリル酸共重合体(モノマー重量比32:36:28:4)、乳化剤:反応性ノニオン性乳化剤、ガラス転移温度:35℃、固形分:50重量%」
(ウ)「【0074】
【表1】


(エ)「【0075】
(試験例1)
窯業系サイディングボートが複数枚併設され、その間隙(目地部)にシリコーン系シーリング材が充填された壁面を塗装対象の基材とした。窯業系サイディングボートとしては、表面にアクリル系塗料の旧塗膜を有するものを用いた。
この基材の全面に対し、下塗材1を塗付け量0.3kg/m^(2)でスプレー塗装し、2時間養生後、上塗材1を塗付け量0.4kg/m^(2)でスプレー塗装し、7日間養生した。なお、以上の工程はすべて標準状態(気温23℃、相対湿度50%)下で行った。下塗材1と背景色との色差は2であった。
以上の工程により、褐色の背景色の中に黒色の斑点模様が散在した模様を有する仕上面が得られた。
【0076】
また、仕上面の塗膜物性を確認するため、以下の試験を実施した。
【0077】
・耐水性試験
・・・評価は、外観変化が認められなかったものを「A」、著しい外観変化(白化等)が認められたものを「D」とする4段階(A>B>C>D)で行った。試験結果を表2に示す。
【0078】
・耐候性試験
・・・評価は、初期色相に対する80サイクル後の色差を測定することによって行い、色差が1未満のものを「A」、1以上2未満のものを「B」、2以上5未満のものを「C」、5以上のものを「D」とした。試験結果を表2に示す。
【0079】
・追従性試験
・・・評価は、異常が認められなかったものを「A」、割れ、剥れ等の異常が認められたものを「C」とする3段階(A>B>C)で行った。試験結果を表2に示す。
【0080】
(試験例2)
上塗材1に替えて上塗材2(粒径約2mmの黒色粒子と粒径約0.1mmの褐色粒子が重量比1:20で混在)を使用した以外は、試験例1と同様の方法で試験を行った。
試験例2においても、褐色の背景色の中に黒色の斑点模様が散在した模様を有する仕上面が得られた。耐水性試験、耐候性試験、追従性試験の試験結果は表2に示す。
【0081】
(試験例3)
上塗材1に替えて上塗材3(粒径約2mmの黒色粒子と粒径約0.1mmの褐色粒子が重量比1:20で混在)を使用した以外は、試験例1と同様の方法で試験を行った。
試験例3においても、褐色の背景色の中に黒色の斑点模様が散在した模様を有する仕上面が得られた。耐水性試験、耐候性試験、追従性試験の試験結果は表2に示す。
【0082】
(試験例4)
上塗材1に替えて上塗材4(粒径約2mmの黒色粒子と粒径約0.1mmの褐色粒子が重量比1:20で混在)を使用した以外は、試験例1と同様の方法で試験を行った。
試験例4においても、褐色の背景色の中に黒色の斑点模様が散在した模様を有する仕上面が得られた。耐水性試験、耐候性試験、追従性試験の試験結果は表2に示す。
【0083】
(試験例5)
上塗材1に替えて上塗材5(粒径約2mmの黒色粒子と粒径約0.1mmの褐色粒子が重量比1:20で混在)を使用した以外は、試験例1と同様の方法で試験を行った。
試験例5においても、褐色の背景色の中に黒色の斑点模様が散在した模様を有する仕上面が得られた。耐水性試験、耐候性試験、追従性試験の試験結果は表2に示す。
【0084】
(試験例6)
上塗材1に替えて上塗材6(粒径約2mmの黒色粒子と粒径約0.1mmの褐色粒子が重量比1:20で混在)を使用した以外は、試験例1と同様の方法で試験を行った。
試験例6においても、褐色の背景色の中に黒色の斑点模様が散在した模様を有する仕上面が得られた。耐水性試験、耐候性試験、追従性試験の試験結果は表2に示す。
【0085】
(試験例7)
上塗材1に替えて上塗材7(粒径約2mmの黒色粒子と粒径約0.1mmの褐色粒子が重量比1:20で混在)を使用した以外は、試験例1と同様の方法で試験を行った。
試験例7においても、褐色の背景色の中に黒色の斑点模様が散在した模様を有する仕上面が得られた。耐水性試験、耐候性試験、追従性試験の試験結果は表2に示す。
【0086】
(試験例8)
下塗材1に替えて下塗材2を使用した以外は、試験例1と同様の方法で試験を行った。
試験例7においても、褐色の背景色の中に黒色の斑点模様が散在した模様を有する仕上面が得られた。耐水性試験、耐候性試験、追従性試験の試験結果は表2に示す。
【0087】
(試験例9)
試験例1と同様の基材の全面に対し、下塗材1を塗付け量0.3kg/m^(2)でスプレー塗装し、2時間養生後、上塗材8を塗付け量1.0kg/m^(2)でスプレー塗装し、7日間養生した。なお、以上の工程はすべて標準状態下で行った。下塗材1と背景色との色差は2であった。
以上の工程により、褐色の背景色の中に黒色の斑点模様が散在した模様を有する仕上面が得られた。耐水性試験、耐候性試験、追従性試験の試験結果は表2に示す。
【0088】
(試験例10)
試験例1と同様の基材の全面に対し、下塗材3を塗付け量0.3kg/m^(2)でスプレー塗装し、2時間養生後、上塗材9を塗付け量1.0kg/m^(2)でスプレー塗装し、7日間養生した。なお、以上の工程はすべて標準状態下で行った。下塗材3と背景色との色差は2であった。
以上の工程により、白色の背景色の中に黒色の斑点模様が散在した模様を有する仕上面が得られた。耐水性試験、耐候性試験、追従性試験の試験結果は表2に示す。
【0089】
【表2】


(2)甲2の記載事項
甲2には次の記載がある。
ア 「【請求項1】建築物表面を被覆する積層体であって、厚み0.3mm以上、JIS A6909(1995) 6.31「伸び試験」の「20℃時の伸び試験」による伸び率が50?800%である合成樹脂エマルション系弾性塗膜層上に、エナメル粒子、及びガラス転移温度-20?50℃の水性樹脂を含有する多彩模様塗料によって形成される多彩模様塗膜層が積層されたことを特徴とする多彩模様塗膜積層体。」
イ 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、建築物内外壁等の表面に形成される多彩模様塗膜積層体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、建築物の表面に対し塗装仕上げを行う材料としては各種のものがある。このうち、意匠性の高い多彩感を付与する塗料の一つとして、JIS K5667に規定されている多彩模様塗料があげられる。この多彩模様塗料は、液状またはゲル状の、2色以上の色粒が懸濁した構成となっており、一回の塗装で様々な多彩模様を表出できることから、人気が高まっている。」
ウ 「【0008】[適用面]本発明の積層体は、建築物の表面に適用するものである。このような建築物表面に用いられる基材としては、例えば、コンクリート、モルタル等のセメント基材、軽量コンクリート板、気泡コンクリート板、サイディングボード、石綿コンクリート板等の各種建材があげられる。また、これら基材に何らかの表面処理(シーラー、サーフェーサー、フィラー等による下地処理等)を施した面に適用することもできる。」
エ 「【0009】[合成樹脂エマルション系弾性塗膜層]合成樹脂エマルション系弾性塗膜層(以下「弾性塗膜層」という)は、合成樹脂エマルションを必須成分として含み、さらに充填材、着色材料等を含有する塗料組成物から形成されるものである。その厚みは0.3mm以上、好ましくは0.5mm?5mmである。厚みが0.3mm以上であることにより、基材の変位を十分に緩和することができる。厚みが0.3mmより小さい場合は、基材の変位に対する追従性が不十分となり、塗膜に割れが生じやすくなる。
【0010】合成樹脂エマルションの種類としては特に限定されず、例えば、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、等を使用することができる。合成樹脂エマルションのガラス転移温度(以下、「Tg」という)は、-50?30℃であることが望ましい。
【0011】充填材としては、重質炭酸カルシウム、カオリン、けい藻土、ホワイトカーボン、クレー、タルク、バライト粉、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、珪砂、ウォラストナイト、マイカ等の公知のものが使用できる。
【0012】着色材料は、弾性塗膜層が多彩模様塗膜の色相の背景色となるために配合するものである。着色材料は公知のものが使用でき、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、シリカ、カオリン、カーボンブラック、黒鉛、鉄黒、べんがら、パーマネントカーミン、ペリレンレッド、キナクリドンレッド、黄色酸化鉄、チタンイエロー、ファーストイエロー、ベンツイミダゾロンイエロー、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット等があげられる。」
オ 「【0046】
【実施例】以下に実施例、比較例をあげて本発明の効果を明確にする。」
(ア)「【0047】[合成樹脂エマルション系弾性塗料製造]表1に示す原料を使用して、合成樹脂エマルション系弾性塗料1(以下、「弾性塗料1」という)を製造した。配合比率は、樹脂45重量部、着色顔料8.0重量部、体質顔料36重量部、分散剤0.8重量部、増粘剤4.9重量部、造膜助剤5.0重量部、消泡剤0.3重量部とした。この塗料によって形成された塗膜のJIS A6909 6.31「伸び試験」の「20℃時の伸び試験」による伸び率は、300%であった。
【0048】
【表1】


(イ)「【0049】[多彩模様塗料製造]
(1)エナメル分散液の製造
表2に示した原料を使用して、表3に示した配合にて各エナメル分散液を製造した。製造手順としては、分散安定剤含有水溶液を攪拌しながら、各エナメル組成物を分散させた後に、架橋剤を混合した。次に、製造したエナメル分散液1?3を重量比率1:1:1にて混合してエナメル分散液Aを得た。なお表3の数値は、すべて重量部で示した。
【0050】
【表2】

【0051】
【表3】


(ウ)「【0052】(2)水性樹脂の製造
表4に示したモノマー構成比率にて、以下の合成例に基づいて各水性樹脂を合成した。なお表4の原料モノマーの数値は、すべて重量部で示した。
【0053】・合成例1 水性樹脂1合成例
攪拌機と温度計がセットされたガラス製の重合容器を、窒素置換した後、エチレングリコールモノブチルエーテルを200重量部仕込み、80℃に昇温した。その後、メチルメタクリレート65重量部、ブチルアクリレート35重量部、及びメタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド5重量部と、重合開始剤として2,2’-アゾビス-(2-アミノジプロパン)1.0重量部を、6時間かけて滴下し、2時間熟成させ溶液重合を行った。このようにして合成した樹脂を、水で希釈して固形分15%に調整し、水性樹脂1を得た。
【0054】・合成例2 水性樹脂2合成例
攪拌機と温度計がセットされたガラス製の重合容器を、窒素置換した後、エチレングリコールモノブチルエーテルを200重量部仕込み、80℃に昇温した。その後、メチルメタクリレート65重量部、ブチルアクリレート35重量部、及びジエチルアミノエチルメタクリレート10重量部と、重合開始剤として2,2’-アゾビス-(2-アミノジプロパン)1.0重量部を、6時間かけて滴下し、2時間熟成させ溶液重合を行った。このようにして合成した樹脂に対し、第3級アミノ基と第4級アンモニウム塩基とのモル比率が30:70となるように硫酸ジメチルを加え、その後水で希釈して固形分15%に調整し、水性樹脂2を得た。
【0055】・合成例3 水性樹脂3合成例
第3級アミノ基と第4級アンモニウム塩基とのモル比率が70:30となるように硫酸ジメチルを加えた以外は、合成例2と同様にして水性樹脂3を得た。
【0056】・合成例4 水性樹脂4合成例
攪拌機と温度計がセットされたガラス製の重合容器を、窒素置換した後、エチレングリコールモノブチルエーテルを200重量部仕込み、80℃に昇温した。その後、メチルメタクリレート84重量部、ブチルアクリレート16重量部、ジエチルアミノエチルメタクリレート9重量部、及びメタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド6重量部と、重合開始剤として2,2’-アゾビス-(2-アミノジプロパン)1.0重量部を、6時間かけて滴下し、2時間熟成させ溶液重合を行った。その後水で希釈して固形分15%に調整し、水性樹脂4を得た。
【0057】
【表4】


(エ)「【0058】(3)多彩模様塗料の製造
エナメル分散液1?3を混合したエナメル分散液Aに対し、表4に示した各水性樹脂を表5の組み合わせにて混合し、多彩模様塗料を製造した。このとき、多彩模様塗料中の水性樹脂は、固形分比率で1.0重量%になるように混合した。
【0059】
【表5】


(オ)「【0060】[試験方法]
(1)割れ防止性試験
70×35×12mmのALC板2枚を長辺が隣接するように並べ、これらの間隔を10mmとり、その間隙に一液湿気硬化型ウレタン樹脂シーリング材を充填し、温度20℃、相対湿度65%下(以下、「標準状態」という)で7日間養生した。このようなALC板の表面にシーリング材を跨ぎ、各ALC板の表面の約半分まで塗装を行った。塗装においては、合成樹脂エマルション系弾性塗料を万能ガンにて塗付し、標準状態で4時間養生後、多彩模様塗料をリシンガンにて塗付した。標準状態で7日間養生後、試験片を20℃下で、チャック間距離40mm、引張スピード1mm/minにて引張り試験を行い、塗膜に割れが生じた時点の伸びを読み取った。評価は以下の通り。
○:5mm以上
△:3mm以上5mm未満
×:3mm未満
・・・
【0062】
【表6】

【0063】[試験結果]塗装における合成樹脂エマルション系弾性塗料、多彩模様塗料の組合せ、及びその試験結果を表6に示す。本発明の塗膜積層体である実施例1?3では、いずれの試験においても優れた結果となった。合成樹脂エマルション系弾性塗料を塗付しなかった比較例1、合成樹脂エマルション系弾性塗膜層の厚みが小さい比較例2、多彩模様塗料の水性樹脂のTgが高い比較例3では、いずれも十分な結果を得ることができなかった。」
(3)甲3の記載事項
甲3には次の記載がある。
ア 「【請求項1】 (A)水溶性樹脂及び/又は水分散樹脂、(B)比重0.8?1.2の着色粒子、及び(C)大きさ0.2?5mmの着色フレ-クを主成分とし、該着色粒子(B)を塗料中に20?60重量%、着色フレ-ク(C)を塗料中に0.1?20重量%の割合で含有することを特徴とする水性石材調多彩模様塗料組成物。
【請求項2】 着色粒子(B)が、粒径の中央値0.2?5mmの球状粒子である請求項1記載の塗料組成物。
・・・」
イ 「【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記問題を解決すべく鋭意検討した結果、塗料比重とほぼ同じ比重にコントロ-ルされた着色粒子を特定濃度で主な模様成分として使用し、さらに形状の異なる着色フレ-クを併用することにより、素地隠蔽性に優れ、模様の多様性に富んだ石材調仕上げが可能であることを見出し本発明に到達した。」
ウ 「【0008】本発明において着色粒子(B)は、比重0.8?1.2、好ましくは0.9?1.1であり、ロ-ラ-塗装時のシェアに十分耐え得る強度を有していれば特に制限はないが、粒径の中央値が0.2?5mm、好ましくは0.5?3mmの球状粒子が好適である。該粒径が5mmを越える着色粒子が多くなると模様としては目立つが、塗装作業性が悪く模様の均一性が得られなくなるので好ましくない。該着色粒子の比重が0.8未満では、塗装時の模様均一性と素地隠蔽性が低下し、1.2を越えると貯蔵時に沈降するだけでなく、該着色粒子が部分的に凝集して模様の均一性や素地隠蔽性が低下するので好ましくない。
【0009】該着色粒子(B)としては、例えばアクリルビ-ズ、ウレタンビ-ズなどの各種樹脂によるカラ-ビ-ズなどが挙げられる。特に該着色粒子(B)としては、模様設計の自由度や製造のし易さ、耐候性などから、重量平均分子量5,000?200,000の架橋性官能基を有する共重合体(i)、顔料(ii)、有機溶剤(iii )を主成分とする組成物を混合分散してエナメルとし、これを水系分散媒に分散した後、必要に応じて架橋剤及び/又は硬化触媒(iv)を配合して得られるエナメル分散粒子を1種以上含む水分散液として塗料中に配合されることが好適である。」
エ 「【0039】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。以下において、「部」及び「%」は夫々「重量部」及び「重量%」を意味する。」
(ア)「【0040】(1)着色粒子の製造
共重合体の製造
5リットルのフラスコに、温度計、撹拌機、還流冷却器、滴下ポンプを備え付け、ミネラルスピリット900部を仕込み撹拌しながら100℃まで昇温した後、スチレン200部、i-ブチルメタクリレ-ト970部、n-ブチルアクリレ-ト630部、ヒドロキシエチルアクリレ-ト200部及びt-ブチルパ-オキシ-2-エチルヘキサノエ-ト2.6部の混合物を100℃に保った反応器に滴下ポンプを利用して3時間かけて一定速度で滴下した。滴下終了後2時間100℃に保ち、撹拌を続けた。その後、t-ブチルパ-オキシ-2-エチルヘキサノエ-ト10部をミネラルスピリット600部に溶解させたものを1時間かけて一定速度で滴下し、さらに1時間100℃に保ち反応を終了させ、ミネラルスピリット960部を添加して、固形分45重量%の均一で透明な共重合体溶液を得た。この共重合体の重量平均分子量は172,000、Tgは0℃であった。」
(イ)「【0041】エナメルの製造
上記で得られた共重合体溶液を用いて、表2に示す配合組成で、容量2リットルのステンレス容器に仕込み、撹拌機にて15分間撹拌した後、ガラスビ-ズを用いて卓上サンドミルで15分間分散して租粒40μm以下の各エナメル○1(当審注:1は○の中である。以下同じ)?○7を得た。
【0042】
【表1】


(ウ)「【0043】着色粒子の製造
1リットルのステンレス容器に、上水300部、メチルセルロ-ス1.5部、防腐剤0.3部、及び消泡剤0.6部を攪拌しながら配合し、30分間経過後、湯浴で30℃まで上げて、低速撹拌しながら上記で得た各エナメルを200部添加し、粒子径の平均が表2に示すような0.2?5mmの範囲となるように、攪拌速度を調節した。さらに30分間経過後、ヘキサメチレンジイソシアネ-ト3.5部を添加し、同温度で60分間撹拌を続けて各水分散着色球状粒子(B-1)?(B-9)を得た。各水分散液の粒子濃度は、40%であった。尚、表中の粒子径は目視による概算値である。
【0044】
【表2】


(エ)「【0045】(2)塗料の製造
実施例1?6及び比較例1?6
上記で得た各着色粒子水分散液を用いて、表3に示す配合・組成で、各成分を攪拌機で攪拌しながら配合した後、「BYK-023」(消泡剤)0.5部、テキサノ-ル2.5部,エチレングリコ-ル1.5部を配合し、さらに「ヨドゾ-ルKA-10」(カネボウ・エヌエスシ-社製、増粘剤)0.5?1.2部を配合して表3に示す塗料粘度に調整し、各塗料を得た。比較例4については、配合する各着色粒子水分散液をあらかじめ濾過により水を切り粒子濃度が40%から80%となるように調整して用いた。尚、表3中の(注1)?(注11)は下記の通りである。
【0046】(注1)「アクロナ-ルYJ-2770D」:三菱油化バ-ディッシェ社製、カルボニル/ヒドラジド架橋型エマルション、固形分48.5%
(注2)「サンモ-ルEW-102」:三洋化成社製、シリコ-ン系エマルション、固形分40%
(注3)「COLDECフレ-ク黒」:COLDEC社製、着色塗膜フレ-ク、大きさ(径)2?3mm、比重約1.5
(注4)「ダイヤチップDM-2黒」:ダイヤ工業社製、アルミナ系着色フレ-ク、大きさ(径)約1mm、比重約2.7(かさ比重0.3)
(注5)「ダイヤチップDM-5黒」:ダイヤ工業社製、アルミナ系着色フレ-ク、大きさ(径)3mm、比重約2.7(かさ比重0.25)
(注6)「ARVORCOLOR M6」:COMPAGNIE DES PRODUITS CALCAIRES社製、青色着色マイカフレ-ク、大きさ(径)約0.04?0.8mm、比重2.8
(注7)塗膜フレ-クD:関西ペイント社製塗料「アレスレタン黒」を離形紙の上に塗装し、乾燥後に粉砕し、大きさ(径)3?5mmになるように篩って得られた着色塗膜フレ-ク、比重1.2
(注8)「着色5号 赤」:新東陶料社製、珪砂骨材、比重2.6、粒度0.5?1.5mm
(注9)「セラサンドA粒 茶」:美州興産社製、硬質磁器骨材、比重2.3、粒度1?2mm
(注10)「BYK-348」:ビックケミ-社製、シリコ-ン系レベリング剤
(注11)「エストップEF-112」:ト-ケムプロダクト製、フッ素系レベリング剤
性能試験
上記実施例及び比較例で得られた多彩模様塗料を下記性能試験に共した。結果を表3に併せて示す。尚、試験方法は次の通りである。
【0047】(*1)塗料状態(貯蔵性)
塗料の製造直後、容器を密閉し、室温で2か月間放置後に、容器中の塗料の状態を確認し、さらに攪拌して塗料の状態を評価した。
【0048】
◎:初期と比べて遜色なく、全く問題ない
○:着色粒子、フレ-ク又は骨材などの沈降・浮き、或いは水浮き等がみられるが攪拌すれば問題ない
△:着色粒子、フレ-ク又は骨材などの沈降・浮き、或いは水浮き等がみられ攪拌しても完全には元に戻らない
×:着色粒子、フレ-ク又は骨材などの沈降・浮き、或いは水浮き等がみられ攪拌しても全く元に戻らない
(*2)ロ-ラ-塗装時の模様性
各塗料を表3に示す塗装粘度に必要に応じて上水にて希釈し、砂骨ロ-ラ-にて900×600×4mmのスレ-ト板上に800?1200g/m2の塗布量で2回塗装し、乾燥後の塗膜の模様性を目視により評価した。
【0049】
◎:模様が均一に塗装され、隠蔽性も全く問題ない
○:模様が均一に塗装されているが、一部スケが見られる
△:模様に偏りが見られ、スケも目立つ
×:模様の偏り、スケが著しい
・・・
【0051】
【表3】


(4)当審の判断
ア 甲1発明について
(ア)前記(1)ケ(エ)に摘記した甲1の試験例1に注目する。記載によれば、窯業系サイディングボートに下塗材1及び上塗材1を順次塗装した構造物が把握できる。
(イ)下塗材1について
a 前記(1)ケ(ア)に摘記したように、下塗材1には、酸化チタン60重量%分散液4.2重量部、黄色酸化鉄60重量%分散液13.0重量部、黒色酸化鉄50重量%分散液0.2重量部、弁柄60重量%分散液1.8重量部を含むものである。酸化チタン、黄色酸化鉄、弁柄については、前記(1)キに摘記した甲1の段落【0026】の記載から、いずれも着色顔料であると認められる。また、黒色酸化鉄に関しては、前記(2)エに摘記した甲2の段落【0012】の「鉄黒」に相当し、やはり着色顔料であるといえる。
b 含有量について
下塗材1に含まれる合成樹脂エマルジョンが65.0重量部、造膜助剤6.5重量部、増粘剤2.5重量部、前記bの着色顔料の分散液を合計19.2重量部、水6.0重量部、消泡剤0.8重量部を合計すると、100重量部となる。
一方、着色顔料の固形分の含有量を計算すると、0.6×4.2+0.6×13.0+0.5×0.2+0.6×1.8=11.5重量部となる。
c 含有率について
上記から、下塗材1は、11.5質量%の着色顔料を有しているといえる。
(ウ)上塗材1について
a 前記(1)ケ(イ)に摘記した甲1の段落【0063】にあるように、上塗材は、黒色粒子分散液1と褐色粒子分散液1とを1:20の重量比で混合したものである。
b 黒色粒子分散液1は、黒色水性塗料1と水性分散媒1を、重量部で1:1の比に混合したものであって、粒径約2mmの黒色粒子が分散したものである。
c 黒色水性塗料1の全体の重量部は、エマルション溶液40.0重量部、造膜助剤4.0重量部、黒色酸化鉄分散液12.0重量部、カルボキシメチルセルロース水溶液43.5重量部、消泡剤0.5重量部の計100重量部となり、黒色粒子分散液1は、水性分散媒1と同量混合することにより、200重量部となる。
d ここで、前記(1)クに摘記した甲1の段落【0035】の記載を参照すると、「合成樹脂エマルション(a)、ゲル形成物質(b)、及び着色顔料(c)を含む着色水性塗料(I)」における「着色水性塗料(I)のゲル物が粒状に分散されたもの、すなわち着色ゲル粒子」が生成するので、その重量部は、(a)+(b)+(c)であることがわかる。これを、甲1の段落【0061】に当てはめると、黒色粒子の含有量は、黒色水性塗料1における、合成樹脂エマルション3とゲル形成物質であるカルボキシメチルセルロースと黒色酸化鉄を含む含有量になるといえる。
e 以上から、黒色粒子塗料1中の黒色粒子を固形分換算すると、合成樹脂エマルションが、0.5×40.0重量部であり、黒色酸化鉄が0.5×12.0重量部、ゲル化剤であるカルボキシメチルセルロースが0.02×43.5重量部であるから、合計で26.9重量部になる。
f 含有率について
前記a?eから、黒色粒子の含有率は、黒色水性塗料1においては、26.9質量%であり、黒色粒子分散液1においては、前記bの質量比から26.9質量%に1/2を乗じて、13.45質量%であり、上塗材1においては、前記aの質量比から、13.45質量%に1/21を乗じて0.64質量%であると計算できる。
g 褐色粒子分散液1について
前記(1)ケ(イ)に摘記した甲1の段落【0062】に記載されたように、褐色粒子分散液についても、褐色水性塗料と水性分散媒とを1:1の重量比で混合したものであって、粒径約0.1mmの褐色粒子が分散したものである。
h 褐色水性塗料1の全体の重量部は、エマルション溶液40.0重量部、造膜助剤4.0重量部、酸化チタン分散液3.5重量部、黄色酸化鉄11.5重量部、黒色酸化鉄分散液0.2重量部、弁柄分散液1.5重量部、カルボキシメチルセルロース水溶液43.5重量部、消泡剤0.5重量部を合計すると、104.7重量部となる。
i 褐色粒子の含有量については、前記dと同様であるから、固形分を計算すると、合成樹脂エマルションが、0.5×40重量部、酸化チタンが0.6×3.5重量部、黄色酸化鉄が0.5×0.2重量部、弁柄が0.6×1.5重量部、カルボキシメチルセルロースが0.02×43.5重量部であるから、合計で20+2.1+0.1+0.9+0.87=24.0重量部になる。
j 含有率について
前記g?iから、褐色粒子の含有率は、褐色水性塗料1においては、23.0質量%であり、褐色粒子分散液1においては、前記bの質量比から23.0質量%に1/2を乗じて11.5質量%であり、上塗材1においては、前記aの質量比から、11.5質量%に20/21を乗じて10.95質量%であると計算できる。
(エ)甲1発明の認定
以上から、甲1の試験例1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「窯業系サイディングボードと、その表面に塗装された下塗材と、下塗材の上に塗装された上塗材を有し、
下塗材は、11.5質量%の着色顔料を有し、上塗材は、褐色粒子と黒色粒子とが分散された塗料を含み、
褐色粒子の粒径が、約0.1mmであり、黒色粒子の粒径が、約2mmであり、
上塗材における、褐色粒子の含有率は、10.95質量%であり、黒色粒子の含有率は、0.64質量%である、窯業系サイディングボード。」の発明
イ 対比
(ア)相当関係
a 甲1発明における「下塗材」及び「上塗材」が、本件発明1における「第1の塗料」及び「第2の塗料」に相当する。
b 甲1発明における下塗材による層及び上塗材による層は、「第1の塗料によって」「形成される第1の層」及び「第2の塗料によって」「形成される第2の層」に相当する。
c 第1の塗料(下塗材)について
甲1発明における着色顔料は、本件発明1における「着色顔料」に相当し、甲1発明におけるその含有率11.5質量%は、本件発明1の「3質量%以上15質量%未満」に含まれる。
d 第2の塗料(上塗材)について
(a)甲1発明における「褐色粒子」及び「黒色粒子」は、前記(1)クに摘記した甲1における「着色水性塗料(I)のゲル物が粒状に分散されたもの、すなわち着色ゲル粒子」という記載から、いずれも着色高分子粒体であるといえる。
(b)褐色粒子と黒色粒子とを比較すると、褐色粒子の粒径が黒色粒子より小さいため、甲1発明における褐色粒子及び黒色粒子は、本願発明1における「第1の着色高分子粒体」及び「第2の着色高分子粒体」にそれぞれ対応するといえる。
(c)そして、褐色粒子の粒径が約0.1mmであるから、第1の着色高分子粒体の粒径の「4mm未満」という条件を満たしている。
e 甲1発明における「窯業系サイディングボード」と「軽量気泡コンクリート構造体」とは、「無機物」である点で共通する。
(イ)一致点
本件発明1と甲1発明とは次の点で一致する。
「板状体と、第1の塗料によって前記板状体の表面上に形成された第1の層と、第2の塗料によって前記第1の層の表面上に形成された第2の層と、を備え、
前記第1の塗料が、3質量%以上15質量%未満の着色顔料を有する下地塗料を含み、前記第2の塗料が少なくとも2種の着色高分子粒体を含有する多彩模様塗料を含み、
前記少なくとも2種の着色高分子粒体は、粒径が4mm未満の第1の着色高分子粒体を含む
無機物。」
f 相違点
本件発明1と甲1発明とは次の点で相違する。
(a)相違点1-1
無機物について、本件発明1においては、「軽量気泡コンクリート構造体」であるのに対して、甲1発明においては、「サイディングボード」である点。
(b)相違点1-2
第1の塗料について、本件発明1においては、「体質顔料」を含むのに対して、甲1発明においては、体質顔料が含まれていない点。
(c)相違点1-3
第2の塗料における第2の着色高分子粒体について、本件発明1においては、粒径が4mm以上であり、「前記第2の着色高分子粒体の含有率は10質量%より大きく30質量%以下」と規定されているのに対して、甲1発明においては、粒径が約2mmであって、含有率が0.64質量%である点。
(d)相違点1-4
第2の塗料における第1の着色高分子粒体について、本件発明1においては、「前記第1の着色高分子粒体の含有率は50質量%以上70質量%以下」であるのに対して、甲1発明においては、10.9質量%である点。
ウ 検討
(ア)相違点1-1について
前記(1)イの段落【0002】、同エの段落【0012】に摘記したように甲1には、無機質建材としてALC板が記載されており、ALC板は軽量気泡コンクリートである。また、同段落【0012】には、構造体として用いられるPC板も例示されていることから、甲1発明の「窯業系サイディングボード」は、構造体としても用いられることが示唆されているといえる。そうすると、甲1発明に対して、甲1の当該記載事項を適用することにより、相違点1-1は当業者が容易に想到し得ることである。
(イ)相違点1-2について
前記(1)キに摘記したように、甲1の段落【0027】には、下塗材に体質顔料を混合することも示唆されている。そして、甲1発明に対して、甲1に記載の前記示唆にしたがって、体質顔料を付加することは、当業者が容易に想到し得ることといえる。
(ウ)相違点1-3について
a 甲1について
(a)粒径について
前記(1)クに摘記した甲1の段落【0032】には、「斑点用粒子(p)の平均粒子径は0.2mm以上であればよいが、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは0.8mm以上である。斑点用粒子(p)の平均粒子径の上限は、形成模様の美観性、塗装作業性等を勘案して適宜設定すればよいが、通常は8mm以下、好ましくは5mm以下である。」と記載されている。このことから、粒径を5mm程度にすることが、示唆されているとはいえる。
(b)含有率について
前記(1)クに摘記した甲1の段落【0032】には、「上塗材における斑点用粒子(p)と背景用粒子(q)との重量比は、1:2?1:200(好ましくは1:5?1:150)に設定する。」と記載されているが、上塗材に対するそれぞれの含有率を示すものではない。
そして、本件発明1の第2の着色高分子粒子の含有率である「10質量%より大きく30質量%以下」と甲1発明における含有率である0.64質量%とは、10倍以上大きく相違しており、当業者が容易に変更し得る程度ということはできない。
b 甲2について
(a)粒径について
前記(2)オ(イ)に摘記したように、甲2には、多彩模様塗料として、エナメル分散液1?3を混合したエナメル分散液Aについて記載されているものの、エナメル粒子の粒径については、何ら記載されていない。
(b)含有率について
前記(2)オ(ウ)に摘記したように、甲2のエナメル分散液に含有されたエナメル組成物(着色高分子粒子に対応)は「固形分」である15質量%程度と認められる。しかしながら、甲2におけるエナメル固形物の粒径が明らかでない以上、これが、本件発明における「第1の着色高分子粒子」か「第1の着色高分子粒子」かは明らかでないから、相違点1-3に係る本件発明の構成に対応するものであるともいうことができない。
c 甲3について
(a)粒径について
前記(3)ウに摘記したように、甲3の段落【0008】における「粒径の中央値が0.2?5mm、好ましくは0.5?3mmの球状粒子が好適である。該粒径が5mmを越える着色粒子が多くなると模様としては目立つが、塗装作業性が悪く模様の均一性が得られなくなるので好ましくない。」という記載がある。また、前記(3)エ(ウ)の表2にB-2と記載された水分散着色粒子は、平均粒径4.5mmとされており、また、同(エ)の【表3】に記載された実施例2及び4において、B-2を配合する例が記載されている。
しかしながら、これらは、塗布を一回で済ませる塗料であって、上塗用の塗料ではなく、甲1発明における上塗材のみに対して適用しようとする動機付けがあるとはいえない。
(b)含有率について
前記(3)エ(エ)の【表3】に記載された実施例2においては、全体の重量部が124重量部であるのに対し、B-2の重量部が40重量部である。また、B-2は水分散液であって、同段落【0043】に記載されているように、40質量%の粒子濃度であるから、塗料中の配合率は、0.4×(40/124)=12.9%と計算できる。
しかしながら、これらは、塗布を一回で済ませる塗料であって、上塗用の塗料ではなく、甲1発明における上塗材のみに対して適用しようとする動機付けがあるとはいえない。
d 以上から、相違点1-3に係る本件発明1の構成は、当業者が、甲1?3の記載事項に基いて容易に想到し得るものということはできない。
(エ)相違点1-4
a 甲1について
前記(1)クに摘記した甲1の段落【0032】には、「上塗材における斑点用粒子(p)と背景用粒子(q)との重量比は、1:2?1:200(好ましくは1:5?1:150)に設定する。」と記載されているが、上塗材に対するそれぞれの含有率を示すものではない。
そして、本件発明1の第1の着色高分子粒子の含有率である「50質量%以上70質量%以下」と甲1発明における含有率である10.95質量%とは、大きく相違しており、当業者が容易に変更し得る程度ということはできない。
b 甲2について
前記(2)オ(ウ)に摘記したように、甲2のエナメル分散液に含有されたエナメル組成物は20質量%程度と認められる。本件発明1のように、「第1の着色高分子粒体の含有率は50質量%以上70質量%以下」という構成には、甲1発明に甲2に記載された事項に基いても当業者が容易に想到できるとはいえない。
c 甲3について
(a)前記(3)アに摘記したように、甲3には、「該着色粒子(B)を塗料中に20?60重量%・・・の割合で含有」させることが記載されているものの、前記(3)エ(エ)の【表3】に記載された各実施例においては、同段落【0043】に記載のように着色粒子は40質量%の水分散液で配合されているため、塗料中の含有率は、40質量%を超えることはない。したがって、甲3を総合すると、着色粒子を塗料中に50質量%以上の含有量とすることが実現可能に開示されているということはできない。
また、甲3は上塗用の塗料ではなく、甲1発明における上塗材のみに対して適用しようとする動機付けがあるとはいえない。
d 以上から、相違点1-4に係る本件発明1の構成は、当業者が甲1?3の記載事項に基いて容易に想到し得るものということはできない。
(オ)本件発明1の効果について
本件発明1は、上記相違点1-3、1-4に係る発明特定事項を備えることで、2回の塗布工程で隠蔽率に優れた軽量気泡コンクリート用塗料を提供するすることが可能となる、という(本件明細書の段落【0010】)、格別顕著な作用効果を奏するものであり、実施例においても、当該作用効果は確認されている。
(カ)以上のとおり、本件発明1の甲1発明との相違点のうち、相違点1-3、相違点1-4については、当業者が容易に想到し得るということはできない。したがって、本件発明1に係る特許は、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものではない。
エ 本件発明2?9について
本件発明2?9に関する検討も前記本件発明1における相違点の検討と同様に、本件発明2?9に係る特許は、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものではない。

第4 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1?6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2020-02-14 
出願番号 特願2014-201479(P2014-201479)
審決分類 P 1 651・ 537- Y (C09D)
P 1 651・ 561- Y (C09D)
P 1 651・ 121- Y (C09D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 磯貝 香苗  
特許庁審判長 川端 修
特許庁審判官 門前 浩一
日比野 隆治
登録日 2019-04-19 
登録番号 特許第6512784号(P6512784)
権利者 旭化成建材株式会社 大橋化学工業株式会社
発明の名称 軽量気泡コンクリート用塗料、並びに軽量気泡コンクリート構造体、軽量気泡コンクリート構造体の製造方法及び塗装方法  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 清水 義憲  
代理人 上村 勇太  
代理人 清水 義憲  
代理人 西本 博之  
代理人 上村 勇太  
代理人 西本 博之  

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