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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04L |
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管理番号 | 1359923 |
審判番号 | 不服2018-16641 |
総通号数 | 244 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-04-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-12-13 |
確定日 | 2020-03-03 |
事件の表示 | 特願2017-506337「(x)GPONシステムにおけるダウンストリームフロー制御方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 2月11日国際公開、WO2016/020749、平成29年 8月17日国内公表、特表2017-523725、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件審判請求に係る出願(以下,「本願」という。)は,2015年7月29日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2014年8月4日(以下,「優先日」という。),中華人民共和国)を国際出願日とする出願であって,平成29年2月3日に特許法第184条の5第1項に規定される書面が提出され,平成29年3月22日付けで特許法第184条の4第1項の規定による国際出願日における明細書,請求の範囲,図面(図面の中の説明に限る。)及び要約の翻訳文が提出されるとともに,同日付けで審査請求がなされ,平成30年3月7日付けで拒絶理由通知(同年3月13日発送)がなされ,同年6月6日付けで意見書が提出されたが,平成30年8月6日付けで拒絶査定(同年8月14日謄本送達)がなされた。 これに対して,「原査定を取り消す。本願の発明は特許すべきものとする、との審決を求める。」ことを請求の趣旨として,平成30年12月13日付けで審判請求がなされるとともに,同日付けで手続補正がなされ,平成31年1月17日付けで審査官により特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成30年8月6日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願の請求項1ないし4,7ないし9,11,12,14に係る発明は,以下の引用文献1?3に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2007-194732号公報 2.国際公開第2013/189042号 3.MCGARRY, Michael P., GURROLA, Elliott I., LUO, Yuanqiu,On the reduction of ONU upstream buffering for PON/xDSL hybridaccess networks,In Global Communications Conference(GLOBECOM), 2013,IEEE,2013年,pp. 2667-2673 第3 審判請求時の補正について ア 審判請求時の補正(以下,「本件補正」という。)は,特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。 イ 本件補正によって,本件補正前の請求項1,7,11,15に「DS_フローコントロール_リクエストメッセージがPLOAMメッセージである」という事項を追加する補正は,本件補正前の請求項4に記載されている事項を追加するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 ウ そして,「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように,本件補正後の請求項1?14に係る発明は,独立特許要件を満たすものである。 第4 本願発明 本願請求項1?14に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」?「本願発明14」という。)は,平成30年12月13日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?14に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりの発明である。 「 【請求項1】 (x)GPONシステムのONUにおけるダウンストリームフロー制御方法であって、 DS_フローコントロール_リクエストメッセージをOLTに送信するステップであって、DS_フローコントロール_リクエストメッセージが送信抑止期間情報を含み、送信抑止期間情報に対応する送信抑止期間の間、ダウンストリーム送信を抑止することをOLTに要求するように用いられる、送信するステップを含み、 DS_フローコントロール_リクエストメッセージがPLOAMメッセージである、 方法。 【請求項2】 送信抑止期間が、OLTの所定の最大ダウンストリーム送信抑止時間より大きくない、請求項1に記載の方法。 【請求項3】 所定の最大ダウンストリーム送信抑止時間がOLTのバッファ深さに基づいて決定される、請求項2に記載の方法。 【請求項4】 ONUの各ANI-Gに関して、対応するダウンストリームフロー制御メッセージをOLTから受信するステップであって、ダウンストリームフロー制御メッセージが、ANI-Gに対応するONUのフロー制御機能を有効にするか無効にするかを示す、ANI-Gに対応する管理状態情報、および、ANI-Gに対応するOLTの所定の最大ダウンストリーム送信抑止時間を含む、受信するステップをさらに含む、 請求項1に記載の方法。 【請求項5】 ダウンストリームフロー制御メッセージがOMCIメッセージである、請求項4に記載の方法。 【請求項6】 (x)GPONシステムのOLTにおけるダウンストリームフロー制御方法であって、 DS_フローコントロール_リクエストメッセージをONUから受信するステップであって、DS_フローコントロール_リクエストメッセージが送信抑止期間情報を含み、送信抑止期間情報に対応する送信抑止期間の間、ダウンストリーム送信を抑止することをOLTに要求するように用いられる、受信するステップ、 DS_フローコントロール_リクエストメッセージに含まれる送信抑止期間情報に基づいて、送信抑止期間情報に対応する送信抑止期間の間、ダウンストリーム送信を抑止するステップ、および、 送信抑止期間情報に対応する送信抑止期間の間、ダウンストリーム送信を抑止した後に、ONUへのダウンストリーム送信を再開するステップを含み、 DS_フローコントロール_リクエストメッセージがPLOAMメッセージである、 方法。 【請求項7】 送信抑止期間が、OLTの所定の最大ダウンストリーム送信抑止時間より大きくない、請求項6に記載の方法。 【請求項8】 所定の最大ダウンストリーム送信抑止時間がOLTのバッファ深さに基づいて決定される、請求項7に記載の方法。 【請求項9】 ONUの各ANI-Gに関して、対応するダウンストリームフロー制御メッセージをONUへ送信するステップであって、ダウンストリームフロー制御メッセージが、ANI-Gに対応するONUのフロー制御機能を有効にするか無効にするかを示す、ANI-Gに対応する管理状態情報、および、ANI-Gに対応するOLTの所定の最大ダウンストリーム送信抑止時間を含む、送信するステップをさらに含む、 請求項6に記載の方法。 【請求項10】 (x)GPONシステムのONUにおけるダウンストリームフロー制御装置であって、 DS_フローコントロール_リクエストメッセージをOLTに送信する第1の送信ユニットであって、DS_フローコントロール_リクエストメッセージが、送信抑止期間情報を含み、送信抑止期間情報に対応する送信抑止期間の間、ダウンストリーム送信を抑止することをOLTに要求するように用いられる、第1の送信ユニットを含み、 DS_フローコントロール_リクエストメッセージがPLOAMメッセージである、 装置。 【請求項11】 送信抑止期間がOLTの所定の最大ダウンストリーム送信抑止時間より大きくなく、所定の最大ダウンストリーム送信抑止時間がOLTのバッファ深さに基づいて決定される、 請求項10に記載の装置。 【請求項12】 ONUの各ANI-Gに関して、対応するダウンストリームフロー制御メッセージをOLTから受信する第1の受信ユニットであって、ダウンストリームフロー制御メッセージが、ANI-Gに対応するONUのフロー制御機能を有効にするか無効にするかを示す、ANI-Gに対応する管理状態情報、および、ANI-Gに対応するOLTの所定の最大ダウンストリーム送信抑止時間を含む、第1の受信ユニットをさらに含む、 請求項10に記載の装置。 【請求項13】 (x)GPONシステムのOLTにおけるダウンストリームフロー制御装置であって、 DS_フローコントロール_リクエストメッセージをONUから受信する第2の受信ユニットであって、DS_フローコントロール_リクエストメッセージが、送信抑止期間情報を含み、送信抑止期間情報に対応する送信抑止期間の間、ダウンストリーム送信を抑止することをOLTに要求するように用いられる、第2の受信ユニット、 DS_フローコントロール_リクエストメッセージに含まれる送信抑止期間情報に基づいて、送信抑止期間情報に対応する送信抑止期間の間、ダウンストリーム送信を抑止する送信抑止ユニット、および、 送信抑止期間情報に対応する送信抑止期間の間、ダウンストリーム送信を抑止した後に、ONUへのダウンストリーム送信を再開する再送信ユニットを含み、 DS_フローコントロール_リクエストメッセージがPLOAMメッセージである、 装置。 【請求項14】 ONUの各ANI-Gに関して、対応するダウンストリームフロー制御メッセージをONUに送信する第2の送信ユニットであって、ダウンストリームフロー制御メッセージが、ANI-Gに対応するONUのフロー制御機能を有効にするか無効にするかを示す、ANI-Gに対応する管理状態情報、および、ANI-Gに対応するOLTの所定の最大ダウンストリーム送信抑止時間を含む、第2の送信ユニットをさらに含む、 請求項13に記載の装置。」 第5 引用文献,引用発明等 1 引用文献1について ア 本願の優先日前に頒布(又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である)され,原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には,図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。 (当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。) A 「【請求項13】 請求項3記載の加入者線終端装置(ONU)において、 前記上り優先度クラスキュー毎にデータ蓄積状態を監視し、ユーザ宅内側のネットワークに対し、ポーズフレームを送信し、ユーザ宅内側のネットワークに対し、上りトラヒックの転送の一時停止又は再開を要求した際に、 前記加入者収容装置(OLT)に対する上りトラヒックの送信要求に使用されるレポートフレームを使用し、前記データ蓄積状態によってポーズフレームを送信する条件に該当した優先度クラスキューの番号に該当するキューセットの領域へ、前記ポーズ時間に関する情報を設定する手段と、 前記レポートフレームを前記加入者収容装置(OLT)へ送信する手段と、 備えたことを特徴とする加入者線終端装置(ONU)。」 B 「【0001】 本発明は、サービス毎にネットワーク上の転送優先度が割り当てられた複数種のトラヒックを収容し、該複数種のトラヒックを個別に優先度クラスキューに格納して、該ネットワーク上の転送優先度に応じ、優先度クラスキューからの転送の待ち行列制御を行いながら、ギガビットイーサネット(登録商標)技術を用いたGEPON(GigabitEthernet(登録商標) Passive Optical Network)方式によってデータ通信を行うシステムにおけるトラヒック制御機能を有する加入者線終端装置(ONU:OpticalNetwork Unit)及び加入者収容装置(OLT:Optical Line Terminator)に関する。」 C 「【0094】 また、(13)加入者線終端装置(ONU)において、下り優先度クラスキュー毎にデータ蓄積状態を監視し、加入者収容装置(OLT)に対し、加入者線終端装置(ONU)の上り送信帯域の割り当てのために必然的に使用される、IEEE802.3ahClause64で規定されるレポート(Report)フレームを使用し、該レポート(Report)フレームのキュー(Queue)セットを使用して、上記データ蓄積状態によってポーズフレームを送信する条件に該当した上記優先度クラスキューの番号に該当する該キュー(Queue)セットの領域へ情報として設定することによって、フロー制御が行われる加入者線終端装置(ONU)からのポーズフレーム送信により、他のフロー制御が行われない加入者線終端装置(ONU)の上り帯域が奪われ、システム全体のスループットを低下させることなく、PON区間において加入者収容装置(OLT)に対し、下りトラヒックの転送の一時停止/再開を、優先度クラス単位に要求することが可能となる。 【0095】 また、(14)前記(13)記載の加入者線終端装置(ONU)において、下り優先度クラスキューのデータ蓄積状態によってポーズフレームを送信する条件に該当した上記優先度クラスキューの番号に該当する該キュー(Queue)セットの領域へ設定する情報として、IEEE802.3Annex31Bに準じたポーズ時間を、予めIEEE802.3ahGEPONシステムにおける時間管理、データ量管理の統一単位(TQ)時間量子化変換することによって、加入者線終端装置(ONU)?加入者収容装置(OLT)間における情報の取り扱いを平易にすることができるとともに、複数の加入者線終端装置(ONU)の情報を個別に扱わなければならない加入者収容装置(OLT)における、単位換算の処理の負担を回避することが可能となる。」 イ 上記AないしCの記載内容(特に,下線部を参照)からすると,上記引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「GEPON方式によってデータ通信を行うシステムにおけるトラヒック制御機能を有する加入者線終端装置(ONU)及び加入者収容装置(OLT)において, 加入者線終端装置(ONU)は,IEEE802.3ahClause64で規定されるレポートフレームを使用し,該レポートフレームのキューセットを使用して,該キューセットの領域へ情報(IEEE802.3Annex31Bに準じたポーズ時間)として設定し,前記レポートフレームを加入者収容装置(OLT)に送信することで,加入者収容装置(OLT)に対し,下りトラヒックの転送の一時停止/再開を要求する, 方法。」 2 引用文献2について ア 本願の優先日前に頒布(又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である)され,原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には,図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。 (当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。) D 「DEVICES AND METHODS FOR FLOW CONTROL OF MESSAGES IN ANPASSIVE OPTICAL NETWORK (PON) AND METHODS THEREIN(当審訳:PON(Passive Optical Network)におけるメッセージのフロー制御のための装置及び方法)」(発明の名称) E 「Figure 1 is aschematic block diagram illustrating embodiments in a network architecturereference model and access network for a Gigabit-Passive Optical Network(G-PON)(当審訳:図1は,G-PON(Gigabit-PassiveOptical Network)のためのネットワーク参照モデル及びアクセスネットワークにおける実施形態を示す概略ブロック図)」(4頁29?31行) F 「The ONU/T device 130, 140 should here be interpreted asat least one ONU/T device 130, 140 or one or more ONU/T devices 130, 140. Theflow control message may, for example, be a Physical Layer Operations,Administration and Maintenance, PLOAM, message. It should here be notedthat the wording "exceeds a first threshold" may be5 interpreted asincreasing above or decreasing below the first threshold depending on thespecifics of the particular implementation. The first threshold may also bereferred to as a first message queue threshold, an upper message queuethreshold, or similar.(当審訳:ONU/T装置130,140は,ここでは,少なくとも1つのONU/T装置,または,1つ以上のONU/T装置として解釈されるべきである。フロー制御メッセージは,例えば,PLOAM (PhysicalLayer Operations, Administration and Maintenance)メッセージであっても良い。ここで,「第1の閾値を超える」という文言は,特定の実装の詳細に応じて,第1の閾値を超えて増加または減少すると解釈される場合があることに留意すべきである。第1の閾値は,第1のメッセージキュー閾値,または,同様のものと呼ばれることもある。)」(9頁21?27行) 第6 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 ア 本願発明1と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明の「加入者線終端装置(ONU)」及び「加入者収容装置(OLT)」は,それぞれ,本願発明1の「ONU」及び「OLT」に相当する。 (イ)引用発明の「GEPON方式によってデータ通信を行うシステムにおけるトラヒック制御機能を有する加入者線終端装置(ONU)及び加入者収容装置(OLT)」,「加入者線終端装置(ONU)は,」「加入者収容装置(OLT)に対し,下りトラヒックの転送の一時停止/再開を要求する」との記載からすると,引用発明は,GEPONシステムのONUにおけるダウンストリームフロー制御方法に関する発明であるといえる。 してみると,本願発明1と引用発明とは,“PONシステムのONUにおけるダウンストリームフロー制御方法”である点で共通する。 (ウ)引用発明の「レポートフレーム」は,「加入者収容装置(OLT)に対し,下りトラヒックの転送の一時停止/再開を要求する」ものであることから,本願発明1の「DS_フローコントロール_リクエストメッセージ」に相当するといえる。また,引用発明の「ポーズ時間」は,下りトラヒックの転送の一時停止/再開を制御するための情報であるから,本願発明1の「送信抑止期間情報」に相当する。そして,引用発明の「加入者線終端装置(ONU)は,IEEE802.3ahClause64で規定されるレポートフレームを使用し,該レポートフレームのキューセットを使用して,該キューセットの領域へ情報(IEEE802.3Annex31Bに準じたポーズ時間)として設定し,前記レポートフレームを加入者収容装置(OLT)に送信することで,加入者収容装置(OLT)に対し,下りトラヒックの転送の一時停止/再開を要求する」ことは,レポートフレームを加入者収容装置(OLT)に送信するものであって,該レポートフレームがポーズ時間を含み,当該ポーズ時間の間,下りトラヒックの転送の一次停止/再開を加入者収容装置(OLT)に要求するものであるといえる。 してみると,本願発明1と引用発明とは,“DS_フローコントロール_リクエストメッセージをOLTに送信するステップであって、DS_フローコントロール_リクエストメッセージが送信抑止期間情報を含み、送信抑止期間情報に対応する送信抑止期間の間、ダウンストリーム送信を抑止することをOLTに要求するように用いられる、送信するステップを含”むものである点で一致するといえる。 イ 以上(ア)ないし(ウ)から,本願発明1と引用発明とは,以下の点で一致し,また,以下の点で相違する。 (一致点) PONシステムのONUにおけるダウンストリームフロー制御方法であって, DS_フローコントロール_リクエストメッセージをOLTに送信するステップであって、DS_フローコントロール_リクエストメッセージが送信抑止期間情報を含み、送信抑止期間情報に対応する送信抑止期間の間、ダウンストリーム送信を抑止することをOLTに要求するように用いられる、送信するステップを含む, 方法。 (相違点1) PONシステムにおいて,本願発明1が,「(x)GPONシステム」であるのに対し,引用発明は,「GEPON方式」である点。 (相違点2) 本願発明1において,「DS_フローコントロール_リクエストメッセージがPLOAMメッセージである」のに対し,引用発明の「レポートフレーム」は,どのようなものであるか明記されていない点。 (2)相違点についての判断 事例に鑑み,先に相違点2について検討する。 上記引用文献2は,GPONシステムにおけるフロー制御メッセージに関する発明であるところ,上記Fに「The flow control message may, for example, be a PhysicalLayer Operations, Administration and Maintenance, PLOAM, message(当審訳:フロー制御メッセージは,例えば,PLOAM (PhysicalLayer Operations, Administration and Maintenance)メッセージであっても良い)」と記載されるように,フロー制御メッセージとしてPLOAMを用いる技術については,本願の優先日前において周知技術であったといえる。 しかしながら,フロー制御メッセージとしてPLOAMを用いる技術が周知技術であったとしても,当該周知技術をDS_フローコントロール_リクエストメッセージに適用することについてまでは,当業者にとって容易であったとは言えず,すなわち,上記相違点2に係る本願発明1の「DS_フローコントロール_リクエストメッセージがPLOAMメッセージである」構成が,本願の優先日前において周知技術であったとは言えない。 したがって,他の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても,引用発明に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2 本願発明2ないし本願発明5について 本願発明2ないし本願発明5は,いずれも本願発明1を減縮した発明であり,本願発明1と同様に「DS_フローコントロール_リクエストメッセージがPLOAMメッセージである」構成を備えるものであるから,上記「1 本願発明1について」と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 3 本願発明6について 本願発明6は,本願発明1をOLTを主体として記載した発明であり,本願発明1と同様に「DS_フローコントロール_リクエストメッセージがPLOAMメッセージである」構成を備えるものであるから,上記「1 本願発明1について」と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 4 本願発明7ないし本願発明9について 本願発明7ないし本願発明9は,いずれも本願発明6を減縮した発明であり,本願発明1と同様に「DS_フローコントロール_リクエストメッセージがPLOAMメッセージである」構成を備えるものであるから,上記「1 本願発明1について」と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 5 本願発明10について 本願発明10は,本願発明1に対応する装置の発明であり,本願発明1と同様に「DS_フローコントロール_リクエストメッセージがPLOAMメッセージである」構成を備えるものであるから,上記「1 本願発明1について」と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 6 本願発明11及び本願発明12について 本願発明11及び本願発明12は,いずれも本願発明10を減縮した発明であり,本願発明1と同様に「DS_フローコントロール_リクエストメッセージがPLOAMメッセージである」構成を備えるものであるから,上記「1 本願発明1について」と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 7 本願発明13について 本願発明13は,本願発明6に対応する装置の発明であり,本願発明1と同様に「DS_フローコントロール_リクエストメッセージがPLOAMメッセージである」構成を備えるものであるから,上記「1 本願発明1について」と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 8 本願発明14について 本願発明14は,本願発明13を減縮した発明であり,本願発明1と同様に「DS_フローコントロール_リクエストメッセージがPLOAMメッセージである」構成を備えるものであるから,上記「1 本願発明1について」と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 第7 原査定について 1 理由1(特許法第29条第2項)について 審判請求時の補正により,本願発明1?14は,「DS_フローコントロール_リクエストメッセージがPLOAMメッセージである」という事項を有するものとなっており,当業者であっても,拒絶査定において引用された引用文献1?3に基づいて,容易に発明できたものとはいえない。 したがって,原査定の理由1を維持することはできない。 第8 むすび 以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2020-02-13 |
出願番号 | 特願2017-506337(P2017-506337) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H04L)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 速水 雄太、玉木 宏治 |
特許庁審判長 |
石井 茂和 |
特許庁審判官 |
松平 英 田中 秀人 |
発明の名称 | (x)GPONシステムにおけるダウンストリームフロー制御方法および装置 |
代理人 | 特許業務法人川口國際特許事務所 |