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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N |
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管理番号 | 1360015 |
審判番号 | 不服2018-11244 |
総通号数 | 244 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-04-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-08-17 |
確定日 | 2020-02-20 |
事件の表示 | 特願2014-513339「撮像装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年11月 7日国際公開、WO2013/164915〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成25年5月2日(国内優先権主張 平成24年5月2日、平成24年6月20日、平成24年6月25日、平成24年7月3日、平成24年7月3日)の出願であって、平成28年4月21日付けで手続補正がされ、平成29年6月19日付けで拒絶理由が通知され、平成29年10月26日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされ、平成30年3月2日付けで最後の拒絶理由が通知され、平成30年4月3日付けで意見書が提出されたが、平成30年5月16日付けで拒絶査定がされ、これを不服として平成30年8月17日に本件審判請求がされ、同時に手続補正がされ、その後、当審により、令和1年8月20日付けで拒絶理由が通知され、令和1年10月28日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされたものである。 第2 本願発明 本願発明は、令和1年10月28日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は次のとおりである。なお、本願発明の各構成について(A)?(F)の符号を付し、以下、構成A?Fと称する。 [本願発明] (A)1つ以上の画素を有する第1グループと、前記第1グループから行方向側の位置に配置され、前記第1グループを構成する画素とは異なる画素を1つ以上有する第2グループと、を有する撮像部と、 (B)前記撮像部が有する画素から信号を読み出す読み出し部と、 (C)前記読み出し部により読み出された信号から生成される画像に基づいて被写体を検出する検出部と、 (D)前記検出部により検出された被写体が前記第1グループで撮像された場合、前記検出部により検出された被写体の速度に基づいて、前記第1グループが有する画素から信号を読み出すフレームレートを、前記第2グループが有する画素から信号を読み出すフレームレートとは異なるフレームレートになるように制御する制御部と、を備え、 (E)前記制御部は、前記第1グループと前記第2グループとにそれぞれ異なる制御信号を出力することにより、前記第1グループのフレームレートと前記第2グループのフレームレートとをそれぞれ制御する (F)撮像素子。 第3 当審により通知した拒絶理由の概要 当審が通知した拒絶理由のうち、請求項1に対する理由1の概要は、次のとおりのものである。 「この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 1.特開2007-228019号公報 2.特開2007-134991号公報」 第4 引用文献、引用発明 1.引用文献1の記載事項 当審により通知した拒絶理由で引用された特開2007-228019号公報(以下、「引用文献1」という)には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は、当審により付与したものである。 「【発明の名称】撮像装置」 「【技術分野】 【0001】 本発明は、撮像素子の受光領域から信号を読み出す際の読み出し方法の改善を図った撮像装置に関する。 【背景技術】 【0002】 用途に応じてフレームレートを変更することが可能な撮像装置がある(例えば特許文献1参照)。動画撮影の際、被写体の動きに応じてフレームレートを変化させ、これを所定の表示レートに変換して再生することにより、自然なスローモーションあるいはハイスピードモーションでの映像表現が可能となる。例えば、表示フレームスピードよりも高速のフレームレートで撮影して得た映像を、表示レートに合わせてコマ変換して画像を表示すればスローモーション再生になり、その逆だとハイスピード再生になる。 【特許文献1】特許第3129599号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0003】 このとき、1フレーム画像中の全てのエリアを同一のフレームレートで撮影する必要がないことも多い。例えば、ほぼ静止している背景の中で特定の被写体が動くとき等である。動く被写体のスピードに応じて、高速フレームレートで撮影したいがために、1フレーム画像中の全撮影エリアから信号を均一に高速フレームレートで読み出した場合、撮影期間中にほとんど動きのない背景に対しても、ほぼ同一の映像データを数フレームにわたり何度も取得し、立て続けに後段の回路で処理することになる。 【0004】 この結果、撮像装置において取り扱える処理のスピード的なボトルネックになっていることが多い記録や圧縮などの際に、ほとんど同じ情報に対する同じ処理をフレーム単位で繰り返しているだけであるにも係わらず、単位時間当たりのフレーム数、すなわち情報量が増した結果、処理スピードが追いつかなくなってしまうことがある。実際、現存している撮像装置の多くは、所持している記録や圧縮の処理スピードが制約となって、所定フレームレート以上の高速撮影ができないことが多い。 【0005】 さらに、記録の点では、ほとんど変化のない情報を複数フレームにわたり記録し続けることになるため、記録手段を搭載したカメラ等、記録容量の制限が厳しい撮像装置にとって、このような記録の仕方が効率良いとは言い難い。これに対処するため、動画記録において、複数フレーム間同様な情報を記録することの負荷を軽減する考え方に、MPEGによる画像圧縮手法が知られている。しかしながら、この画像圧縮手法を実現する手段の規模と消費電力は、撮像装置にとって非常に大きなものとなっているため、他の手法によって信号処理の負荷を軽減することが望ましい。 【0006】 フレームレートを変化させることができる撮像装置のみではなく、単純に高速撮影を行う撮像装置など、具備する圧縮や記録等の信号処理手段の能力を凌駕する撮像能力を有した撮像装置には、常に上述のような問題が潜在している。 【0007】 本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであって、信号処理に破綻を来たすことなく高速フレームレートで撮像することができる撮像装置を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、受光領域に入射した光を光電変換し、前記受光領域から信号を読み出して撮像信号として出力する撮像素子と、前記受光領域に複数の撮像領域を設定する分割領域設定手段と、前記撮像領域毎にフレームレートを設定するフレームレート設定手段と、前記フレームレート設定手段によって設定されたフレームレートに応じて、前記受光領域から信号を読み出すタイミングを前記撮像領域毎に制御する読出し制御手段とを有することを特徴とする撮像装置である。」 「【発明の効果】 【0014】 本発明によれば、撮像領域毎に異なるフレームレートの撮像信号を得ることが可能となるので、撮像領域毎に単位時間当たりの画像情報量を調整することで、信号処理に破綻を来たすことなく高速フレームレートで撮像することができるという効果が得られる。」 「【発明を実施するための最良の形態】 【0015】 以下、図面を参照し、本発明の実施形態を説明する。まず、本発明の第1の実施形態を説明する。図1は、本実施形態による撮像装置の構成を示している。撮像素子1は、受光領域に入射した光を光電変換し、受光領域から信号を読み出して撮像信号として出力する。撮像素子1の受光領域は2つの領域(撮像領域A,B)に分割されている。それぞれの撮像領域から読み出された信号は、個別に出力A,B(撮像信号)として後段へ送出される。 【0016】 この撮像素子1からの信号読出しは、分割領域設定手段2、フレームレート設定手段3、読出し制御手段4により制御される。分割領域設定手段2は撮像素子1の受光領域に複数の撮像領域を設定する。撮像領域の設定は、ユーザの指示に基づいて、あるいは第5の実施形態で説明するように自動的に行われる。フレームレート設定手段3は、分割領域設定手段2によって設定された撮像領域毎にフレームレートを設定する。読出し制御手段4は、フレームレート設定手段3によって設定されたフレームレートに応じて、受光領域から信号を読み出すタイミングを撮像領域毎に制御する。」 「【0031】 動き検出および動き量計算部16は、画像メモリ18に記憶された被圧縮データを読み出して撮影した画像の動きを検出するとともに、画面の動き量を算出し、積算動き量とあらかじめ設定した動き閾値MTHとを比較してフレームレートを決定し、決定したフレームレート情報を画像圧縮部17に出力する。 【0032】 本実施形態では、受光領域を垂直方向に2分割する例を述べたが、水平方向に分割することもできる。また、撮像領域の数は2つに限らず、さらに撮像領域の数を増やしてもよい。その場合、撮像領域の数だけ、垂直・水平走査回路および垂直・水平走査制御回路を設ければよい。また、本実施形態では、X-Yアドレス型の撮像素子を例に挙げたが、本発明の基本概念がこれに特化されるものではない。 【0033】 上述したように、本実施形態によれば、撮像領域毎に異なるフレームレートの撮像信号を得ることが可能となる。撮像領域毎に単位時間当たりの画像情報量を調整することで、撮像装置自体が有するフレーム単位での圧縮処理能力や記録能力等に対応して、信号処理に破綻を来たすことなく高速フレームレートで撮像することができる。また、例えばフレームレートを高速化することで、後段の信号処理の負荷が増大するが、撮影者の意図として、1フレーム内のうち撮影効果を求めない領域に対してはフレームレートを下げるなど、撮像領域毎に個別に情報量を設定することで、信号処理の軽減を図ることができる。 【0034】 次に、本発明の第2の実施形態を説明する。図4は、本実施形態によるフレームレート設定手段3aの構成を示している。図示しない設定キーあるいはPCからのリモート制御等により、ユーザが所定の情報を入力することで、撮像領域A,Bそれぞれのフレームレートの情報がフレームレート設定テーブル生成手段31に入力される。フレームレート設定テーブル生成手段31は、入力された情報に基づいて、撮像領域毎の各フレームのフレームレートの一覧であるフレームレート設定テーブルを生成し、読出し制御手段4へ出力する。これによって、撮影フレーム単位で各領域のフレームレートを個別に変化させることが可能になる。 【0035】 図5はフレームレート設定の一例を示している。図5において、撮像領域Aではa[fps]のフレームレートで撮影が開始され、nフレーム撮影した後、フレームレートがx[fps]になる。また、撮影領域Bでは、b[fps]のフレームレートから撮影が開始され、nフレーム撮影した後、フレームレートがx[fps]になる。フレームレートの変更は、第1の実施形態で示したように、水平・垂直ブランキング期間の長さを変更することにより実現される。 【0036】 フレームレートを、α[fps]からスタートしてβ秒後にγ[fps]にする場合、ユーザは、例えば、(α,β,γ)のパラメータを設定すればよい。フレームレート設定テーブル生成手段31には、これらのパラメータの値が通知される。フレームレート設定テーブル生成手段31は、これらのパラメータの値に基づいて、図5のようなフレームレート変化を表すテーブルを作成し、これをパルスあるいはレジスタデータとして読出し制御手段4が展開できる情報として出力する。読出し制御手段4は、フレームレート設定手段3aから受けた情報に基づいて、撮像素子1の読出しを制御する。」 2.引用発明 (1)引用文献1には、【0002】-【0005】の下線部の記載によれば、 撮像装置による動画撮影の際、動く被写体のスピードに応じて、高速フレームレートで撮影したい場合、撮影期間中にほとんど動きのない背景に対しても、ほぼ同一の映像データを数フレームにわたり何度も取得し、立て続けに後段の回路で処理することになり、この結果、処理スピードが追いつかなくなってしまい、さらに、記録の点では効率良いとは言い難いという課題があることが記載されている。 (2)引用文献1には、【0008】の下線部の記載によれば、上記の課題を解決するための具体的な装置として、 受光領域に入射した光を光電変換し、前記受光領域から信号を読み出して撮像信号として出力する撮像素子と、 前記受光領域に複数の撮像領域を設定する分割領域設定手段と、 前記撮像領域毎にフレームレートを設定するフレームレート設定手段と、 前記フレームレート設定手段によって設定されたフレームレートに応じて、前記受光領域から信号を読み出すタイミングを前記撮像領域毎に制御する読出し制御手段と を有することを特徴とする撮像装置が記載されている。 (3)また、引用文献1には、【0015】、【0016】、【0032】の下線部の記載によれば、上記撮像装置をより特定した、 撮像素子1の受光領域は2つの領域(撮像領域A,B)に分割されており、 撮像素子1からの信号読出しは、分割領域設定手段2、フレームレート設定手段3、読出し制御手段4により制御され、 分割領域設定手段2は撮像素子1の受光領域に複数の撮像領域を設定し、 フレームレート設定手段3は、分割領域設定手段2によって設定された撮像領域毎にフレームレートを設定し、 読出し制御手段4は、フレームレート設定手段3によって設定されたフレームレートに応じて、受光領域から信号を読み出すタイミングを撮像領域毎に制御し、 受光領域を水平方向に分割することもできるもの(第1の実施形態)が記載されている。 (4)さらに、引用文献1には、【0034】の下線部の記載によれば、上記第1の実施形態のフレームレート設定手段3をフレームレート設定手段3aとしてより特定した、 フレームレート設定手段3aは、ユーザが所定の情報を入力することで、撮像領域A,Bそれぞれのフレームレートの情報がフレームレート設定テーブル生成手段31に入力され、 フレームレート設定テーブル生成手段31は、入力された情報に基づいて、撮像領域毎の各フレームのフレームレートの一覧であるフレームレート設定テーブルを生成し、読出し制御手段4へ出力し、 これによって、撮影フレーム単位で各領域のフレームレートを個別に変化させることが可能になるもの(第2の実施形態)が記載されている。 (5)以上、(1)?(4)をまとめると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、引用発明の各構成について符号を付し、以下、構成ア?構成サと称する。 [引用発明] (ア)撮像装置で動画撮影の際、動く被写体のスピードに応じて、高速フレームレートで撮影したい場合、撮影期間中にほとんど動きのない背景に対しても、ほぼ同一の映像データを数フレームにわたり何度も取得し、立て続けに後段の回路で処理することになり、この結果、処理スピードが追いつかなくなってしまい、さらに、記録の点では効率良いとは言い難いという課題を解決するため、 (イ)受光領域に入射した光を光電変換し、前記受光領域から信号を読み出して撮像信号として出力する撮像素子と、 (ウ)前記受光領域に複数の撮像領域を設定する分割領域設定手段と、 (エ)前記撮像領域毎にフレームレートを設定するフレームレート設定手段と、 (オ)前記フレームレート設定手段によって設定されたフレームレートに応じて、前記受光領域から信号を読み出すタイミングを前記撮像領域毎に制御する読出し制御手段と (カ)を有することを特徴とする撮像装置であって、 (キ)撮像素子1の受光領域は2つの領域(撮像領域A,B)に分割されており、 (ク)撮像素子1からの信号読出しは、分割領域設定手段2、フレームレート設定手段3、読出し制御手段4により制御され、 (ケ)分割領域設定手段2は撮像素子1の受光領域に複数の撮像領域を設定し、 (コ)フレームレート設定手段3は、分割領域設定手段2によって設定された撮像領域毎にフレームレートを設定し、 (サ)読出し制御手段4は、フレームレート設定手段3によって設定されたフレームレートに応じて、受光領域から信号を読み出すタイミングを撮像領域毎に制御し、 (シ)受光領域を水平方向に分割することもでき、 (ス)フレームレート設定手段3aは、 (セ)ユーザが所定の情報を入力することで、撮像領域A,Bそれぞれのフレームレートの情報がフレームレート設定テーブル生成手段31に入力され、 (ソ)フレームレート設定テーブル生成手段31は、入力された情報に基づいて、撮像領域毎の各フレームのフレームレートの一覧であるフレームレート設定テーブルを生成し、読出し制御手段4へ出力し、 (タ)これによって、撮影フレーム単位で各領域のフレームレートを個別に変化させることが可能になる、 (チ)撮像装置。 3.引用文献2の記載事項 当審により通知した拒絶理由で引用された特開2007-134991号公報(以下、「引用文献2」という)には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は、当審により付与したものである。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、連続画像を処理する画像信号処理装置、撮像装置、および画像信号処理方法に関するものである。」 「【0005】 一方、連続画像を動画として記録する場合は、予め設定したフレームレートに従って一定の時間間隔で各フレームを記録しつづけることになり、動画シーケンス中の途中のフレームが1枚でも欠損することは許されない。 このため、各フレーム間の動きの増減にかかわらず常に各フレームをコマ落ちすることなく記録することが要求される。 つまりこの方法においても、フレーム間の動きがほとんどなく非常に似た画像同士であっても、フレームレート一定のため、高フレームレートになると記録データ量の増加は免れない。 たとえば、MotionJPEGやMPEG系のコーデック(Codec)がこれに当たる。」 「【0007】 このように、従来技術でさらに記録データ量を削減するためには、以下の問題点がある。 静止画として記録する方法では、フレーム間の相関性が利用できない。 動画として記録する方法では、フレーム間の動き量の増減によらずに常に一定のフレームレートとなってしまう。 【0008】 また、既存の動画記録方式(MotionJPEG, MPEG2/4/H.264 AVC, etc)では、フレームレートは予め静的な値(30fps/60fps etc)に固定されている。 したがって、一般的な画像撮像装置においては、動画で秒間あたり30または60フレーム記録であり、高速で移動する物体に対して、滑らかな画像を記録することができない。 また、静止画画像における連写機能は手動で行うため、高速で移動する物体に対して確実に撮像画像を記録することができない。 【0009】 本発明は、動き量に応じて適応的(動的)にフレームレートを増減させることができ、連続画像記録を実現でき、滑らかな動画記録や、高速物体に追従した静止画記録を可能にする画像信号処理装置、撮像装置、および画像信号処理方法を提供することにある。」 「【0031】 動き検出および動き量計算部16は、画像メモリ18に記憶された被圧縮データを読み出して撮影した画像の動きを検出するとともに、画面の動き量を算出し、積算動き量とあらかじめ設定した動き閾値MTHとを比較してフレームレートを決定し、決定したフレームレート情報を画像圧縮部17に出力する。 【0032】 動き検出および動き量計算部16における動き量の算出、たとえば図2(A)に示すように行われる。 図2(A)の例は、車が図中の右方向へ直線的に加速しながら発車するシーンを見た図である。 このような場合、移動する車に着目すると一定時間内に車が動いた量を動き量と定義することができる。 たとえば、車が発車していない相対的な時刻T=0のときを動き量を「0」、発車後の時刻T=10のときの動き量を「10」、時刻T=20のときの動き量を「20」、時刻T=30のときの動き量を「40」、時刻T=40のときの動き量を「80」として定義することができる。 【0033】 このように、本実施形態に係る動き検出および動き量計算部16は、動き量の時間的積算量からフレームレートの設定値を算出する。 動き検出および動き量計算部16は、画面の動き量の大きさを、フレームレートの設定に反映させる機能を有し、たとえば、前画面のフレームレートを参照に現フレームレートを決定する機能を有する。 動き検出および動き量計算部16は、積算動き量とあらかじめ設定した動き閾値MTHと比較してフレームレートを決定する。 動き閾値MTHは、たとえば操作デバイス22のスイッチ操作により、たとえばCPU21のレジスタに設定される。 動き閾値MTHは、たとえば50、100、200、400等の値に設定され、図2(A)のように動き量に応じた積算動き量と比較されて、フレームレートが決定される。」 「【図2】 」 「【0046】 図8は、本発明の第2の実施形態に係るカメラシステムの構成例を示すブロック図である。 【0047】 本第2の実施形態のカメラシステム10Aが第1の実施形態のカメラシステム10と異なる点は、CPU21Aによって、イメージセンサ12Aを制御可能としてフレームレートを自動的に上げるように構成したことにある。 【0048】 さらに具体的には、本カメラシステム10Aは、基本構成は図1と略同様であり、高フレームレートでの撮影を行う機能と、各フレーム間の動き量を算出する機能と、各フレーム時点での動き量を積算・蓄積する機能と、一定時間の高フレームレート撮影データを一時的に保存できるデータ領域を備えており、撮影画像の動き量積算値が一定量に達した時点で、自律的に高フレームレート撮影を開始することで、急に撮影範囲に現れた移動量の大きい物体の撮り逃しを回避する機能を実現している。 また、カメラシステム10Aは、撮影可能範囲に入ってきた高速の移動物体を、その移動量、大きさなどから撮影に値する物体であるとの判断を下すための判定基準値を各フレームごとに算出する機能(アルゴリズム)を備えている。 また、カメラシステム10Aは、高フレームレート撮影を実行中に、撮影画像の動き量を算出・監視し、動き量の一定以上の減衰が認められた場合は、高フレームレート撮影を停止する機能を備えている。 【0049】 動き検出および動き量計算部16の機能は、第1の実施形態と同様であり、動き量の時間的積算量からフレームレートの設定値を算出する。 動き検出および動き量計算部16は、画面の動き量の大きさを、フレームレートの設定に反映させる機能を有し、たとえば、前画面のフレームレートを参照に現フレームレートを決定する機能を有する。 動き検出および動き量計算部16は、積算動き量とあらかじめ設定した動き閾値MTHと比較してフレームレートを決定する。 そして、CPU21Aがイメージセンサ12Aの制御を行う。 【0050】 以下に、動き量が動き閾値MTHとの比較に応じたCPU21Aの制御例を図9?図11に関連付けて説明する。 【0051】 まず、図9のフローチャートに関連付けて第1制御例を説明する。 この場合、撮像画像内に動き量が動き閾値MTHを超えた時点から(ST11)、制御CPU21Aを介してイメージセンサ12Aに対してフレームレートを上げる指示を与え(ST12)、撮像および記録のフレームレートを自動的に上げる。 次に、撮像画像内の動き量が動き閾値MTHを下回った時点から(ST13)、制御CPU21Aを介し、イメージセンサ12Aに対してフレームレートを通常値に戻す指示を与え、撮像および記録のフレームレートを通常値に戻す(ST14)。」 「【図8】 」 「【図9】 」 4.引用文献2に記載された技術 引用文献2には、【0005】、【0008】、【0009】、【0031】-【0033】、【0046】-【0051】(特に下線部)の記載、及び、【図2】、【図8】、【図9】によれば、次の技術が記載されていると認められる。 連続画像を動画として記録する場合、フレーム間の動きがほとんどなく非常に似た画像同士であっても、フレームレート一定のため、高フレームレートになると記録データ量が増加することを課題として、 撮像装置において、動き量に応じて適応的(動的)にフレームレートを増減させ、滑らかな動画記録を可能にする技術であって、 撮影した画像の動きを検出するとともに、一定時間内に高速物体が動いた量である動き量の時間的積算量である積算動き量とあらかじめ設定した動き閾値MTHとを比較してフレームレートを決定し、イメージセンサを制御可能としてフレームレートを自動的に上げるように構成し、撮影画像の動き量積算値が一定量に達した時点で、自律的に高フレームレート撮影を開始し、高フレームレート撮影を実行中に、撮影画像の動き量を算出・監視し、動き量の一定以上の減衰が認められた場合は、高フレームレート撮影を停止する技術。 第5 本願発明と引用発明との対比 1.本願発明の構成Aについて 構成イ、構成キ、構成シによれば、引用発明の「撮像領域A」、「撮像領域B」、「撮像素子」は、それぞれ、本願発明の「1つ以上の画素を有する第1グループ」、「前記第1グループから行方向側の位置に配置され、前記第1グループを構成する画素とは異なる画素を1つ以上有する第2グループ」、「撮像部」に相当する。 よって、本願発明と引用発明とは、構成Aの点で一致する。 2.本願発明の構成Bについて 構成イによれば、引用発明は、「受光領域から信号を読み出して撮像信号として出力する」から、本願発明の構成Bの「前記撮像部が有する画素から信号を読み出す読み出し部」に相当する構成を備えている。 よって、本願発明と引用発明とは、構成Bの点で一致する。 3.本願発明の構成C、Dについて 引用発明は、本願発明の構成Cに相当する構成を備えていない。 構成オ、構成ケ、構成コ、構成サによれば、引用発明は、複数の撮像領域毎に設定されたフレームレートに応じて、受光領域から信号を読み出すタイミングを撮像領域毎に制御する読出し制御手段を有するから、本願発明の構成Dのうち、「前記第1グループが有する画素から信号を読み出すフレームレートを、前記第2グループが有する画素から信号を読み出すフレームレートとは異なるフレームレートになるように制御する制御部」に相当する構成(以下、構成D’という。)を備えている。 よって、本願発明と引用発明とは、構成D’の点では共通する。 しかしながら、本願発明は、構成Dを備えるのに対し、引用発明は、「制御部」が、「前記検出部により検出された被写体が前記第1グループで撮像された場合、前記検出部により検出された被写体の速度に基づいて」制御するものではなく、構成ス、構成セ、構成ソ、構成タによれば、ユーザが入力した所定の情報に基づくフレームレート設定テーブルの出力により制御するものである点で相違する。 4.本願発明の構成Eについて 構成ス、構成セ、構成ソ、構成タによれば、引用発明の「フレームレート設定手段3a」は、撮像領域A,Bそれぞれのフレームレートの情報に基づいて、各領域のフレームレートを個別に変化させることが可能なものであるから、このことは、本願発明の構成Eの「前記制御部は、前記第1グループと前記第2グループとにそれぞれ異なる制御信号を出力することにより、前記第1グループのフレームレートと前記第2グループのフレームレートとをそれぞれ制御する」ことに相当する。 よって、本願発明と引用発明とは、構成Eの点で一致する。 5.本願発明の構成Fについて 構成チの「撮像装置」は、本願発明の構成Fの「撮像素子」に相当する。 よって、本願発明と引用発明とは、構成Fの点で一致する。 6.一致点、相違点 以上によれば、本願発明と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 [一致点] (A)1つ以上の画素を有する第1グループと、前記第1グループから行方向側の位置に配置され、前記第1グループを構成する画素とは異なる画素を1つ以上有する第2グループと、を有する撮像部と、 (B)前記撮像部が有する画素から信号を読み出す読み出し部と、 (D’)前記第1グループが有する画素から信号を読み出すフレームレートを、前記第2グループが有する画素から信号を読み出すフレームレートとは異なるフレームレートになるように制御する制御部と、を備え、 (E)前記制御部は、前記第1グループと前記第2グループとにそれぞれ異なる制御信号を出力することにより、前記第1グループのフレームレートと前記第2グループのフレームレートとをそれぞれ制御する (F)撮像素子。 [相違点] 本願発明は、 「(C)前記読み出し部により読み出された信号から生成される画像に基づいて被写体を検出する検出部と、 (D)前記検出部により検出された被写体が前記第1グループで撮像された場合、前記検出部により検出された被写体の速度に基づいて、前記第1グループが有する画素から信号を読み出すフレームレートを、前記第2グループが有する画素から信号を読み出すフレームレートとは異なるフレームレートになるように制御する制御部と、」 を備えるのに対し、 引用発明は、 「(C)前記読み出し部により読み出された信号から生成される画像に基づいて被写体を検出する検出部」を備えておらず、 「(D’)前記第1グループが有する画素から信号を読み出すフレームレートを、前記第2グループが有する画素から信号を読み出すフレームレートとは異なるフレームレートになるように制御する制御部」 を備えるとはいえるものの、 該制御部は、「前記検出部により検出された被写体が前記第1グループで撮像された場合、前記検出部により検出された被写体の速度に基づいて」制御するものではなく、ユーザが入力した所定の情報に基づくフレームレート設定テーブルの出力により制御するものである点。 第6 判断 相違点について検討する。 引用発明と引用文献2に記載された技術は、動く被写体(高速物体)の動画撮影の際の、数フレームにわたりほとんど動きのない情報を記録する際の課題を解決するために、被写体の動きに応じてフレームレートを変化させる技術である点で、共通の課題及び共通の技術を有するものであるから、引用発明に引用文献2に記載の技術を採用することには動機付けがあるといえる。 よって、引用発明の、ユーザが入力した所定の情報に基づく制御に代えて、上記引用文献2に記載された技術を適用し、分割領域設定手段によって設定された撮像領域のフレームレートの制御を、撮影した画像の動きを検出するとともに、一定時間内に高速物体が動いた量である動き量の時間的積算量である積算動き量とあらかじめ設定した動き閾値MTHとを比較してフレームレートを決定し、イメージセンサを制御可能としてフレームレートを自動的に上げるように構成し、撮影画像の動き量積算値が一定量に達した時点で、自律的に高フレームレート撮影を開始し、高フレームレート撮影を実行中に、撮影画像の動き量を算出・監視し、動き量の一定以上の減衰が認められた場合は、高フレームレート撮影を停止する制御とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。そして、一定時間内に高速物体(被写体)が動いた量である動き量を得る際に、周知の「被写体を検出する検出部」を備えることは適宜なし得ることである。 ここで、引用発明に引用文献2に記載された技術を適用した発明における、高フレームレート撮影を実行中である分割領域、及び、高フレームレート撮影を実行中でない分割領域は、それぞれ、本願発明の構成Dの「第1グループ」、「第2グループ」に相当するといえる。さらに、引用発明に引用文献2に記載された技術を適用した発明における、高フレームレート撮影を実行中である分割領域のフレームレートは、「被写体の速度に基づいて」、高フレームレート撮影を実行中でない分割領域のフレームレートとは「異なるフレームレートになるように」制御するといえる。 したがって、引用発明において、引用文献2に記載された技術を適用し、「(C)前記読み出し部により読み出された信号から生成される画像に基づいて被写体を検出する検出部と、(D)前記検出部により検出された被写体が前記第1グループで撮像された場合、前記検出部により検出された被写体の速度に基づいて、前記第1グループが有する画素から信号を読み出すフレームレートを、前記第2グループが有する画素から信号を読み出すフレームレートとは異なるフレームレートになるように制御する制御部と、」を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。また、そのことにより奏する効果は当業者が予測し得るものである。 以上のことから、本願発明は、引用発明および引用文献2に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第7 むすび 以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2019-12-19 |
結審通知日 | 2019-12-24 |
審決日 | 2020-01-07 |
出願番号 | 特願2014-513339(P2014-513339) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H04N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 鈴木 明 |
特許庁審判長 |
清水 正一 |
特許庁審判官 |
樫本 剛 千葉 輝久 |
発明の名称 | 撮像装置 |
代理人 | 龍華国際特許業務法人 |