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審決分類 |
審判 全部申し立て 発明同一 C08F |
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管理番号 | 1360448 |
異議申立番号 | 異議2019-700201 |
総通号数 | 244 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2020-04-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2019-03-12 |
確定日 | 2020-01-27 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6420646号発明「着色硬化性樹脂組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6420646号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕、4について訂正することを認める。 特許第6420646号の請求項1?4に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6420646号の請求項1?4に係る特許についての出願は、平成26年12月2日に特許出願され、平成30年10月19日にその特許権の設定登録がされ、同年11月7日に特許公報が発行され、その後、その特許に対し、平成31年3月12日に特許異議申立人特許業務法人朝日奈特許事務所(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。 本件特許異議の申立てにおける手続の経緯は、以下のとおりである。 平成31年 3月12日 特許異議申立書 令和 1年 8月 9日付け 取消理由通知書 10月11日 意見書、訂正請求書の提出(特許権者) 10月18日付け 通知書(訂正請求があった旨の通知) なお、令和1年10月18日付けの通知書(訂正請求があった旨の通知)に対して、申立人から意見書は提出されなかった。 第2 訂正の請求について 1 訂正の内容 令和1年10月11日提出の訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の請求は、本件特許の特許請求の範囲を上記訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?4について訂正することを求めるものであり、その内容は、以下のとおりである(下線は、訂正箇所を示す。また、本件特許の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1の、「式(A1)で表される化合物(A1)と、式(A2)で表される化合物(A2)と、分散剤(B)と、有機溶媒(C)と、硬化性化合物(D)と、を含有する着色硬化性樹脂組成物。 【化1】 ![]() 〔式(A1)中、Xは二重結合を示し、幾何異性体としてそれぞれ独立にE体又はZ体であり、R^(11)は、各々独立に、水素原子、メチル基、又はメトキシ基を示し、R^(12)は、各々独立に、水素原子、メチル基、又はフェニル基を示し、R^(13)は、各々独立に、水素原子、又はメチル基を示す。〕 【化2】 ![]() 〔式(A2)中、R^(21)は、各々独立に水素原子又はメチル基を示し、R^(22)は、ハロゲン原子を示し、nは0?4の整数である。〕着色硬化性樹脂組成物」を、 「式(A1)で表される化合物(A1)と、式(A2)で表される化合物(A2)と、分散剤(B)と、有機溶媒(C)と、硬化性化合物(D)と、を含有する着色硬化性樹脂組成物であって、化合物(A1)と化合物(A2)との合計に対する、化合物(A2)の質量比〔化合物(A2)/(化合物(A1)+化合物(A2))〕が、0.12以上である、着色硬化性樹脂組成物。 【化1】 ![]() 〔式(A1)中、Xは二重結合を示し、幾何異性体としてそれぞれ独立にE体又はZ体であり、R^(11)は、各々独立に、水素原子、メチル基、又はメトキシ基を示し、R^(12)は、各々独立に、水素原子、メチル基、又はフェニル基を示し、R^(13)は、各々独立に、水素原子、又はメチル基を示す。〕 【化2】 ![]() 〔式(A2)中、R^(21)は、メチル基を示し、R^(22)は、ハロゲン原子を示し、nは0?4の整数である。〕」に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2の「化合物(A1)と化合物(A2)との合計に対する、化合物(A2)の質量比〔化合物(A2)/(化合物(A1)+化合物(A2))〕が、0.01以上0.5以下である」を「化合物(A1)と化合物(A2)との合計に対する、化合物(A2)の質量比〔化合物(A2)/(化合物(A1)+化合物(A2))〕が、0.12以上0.5以下である」に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項4の「式(A1)で表される化合物(A1)と、式(A2)で表される化合物(A2)と、分散剤(B)と、有機溶媒(C)と、を含有する分散体。 【化3】 ![]() 〔式(A1)中、Xは二重結合を示し、幾何異性体としてそれぞれ独立にE体又はZ体であり、R^(11)は、各々独立に、水素原子、メチル基、又はメトキシ基を示し、R^(12)は、各々独立に、水素原子、メチル基、又はフェニル基を示し、R^(13)は、各々独立に、水素原子、又はメチル基を示す。〕 【化4】 ![]() 〔式(A2)中、R^(21)は、各々独立に水素原子又はメチル基を示し、R^(22)は、ハロゲン原子を示し、nは0?4の整数である。〕」を、 「式(A1)で表される化合物(A1)と、式(A2)で表される化合物(A2)と、分散剤(B)と、有機溶媒(C)と、を含有する分散体であって、化合物(A1)と化合物(A2)との合計に対する、化合物(A2)の質量比〔化合物(A2)/(化合物(A1)+化合物(A2))〕が、0.12以上である、分散体。 【化3】 ![]() 〔式(A1)中、Xは二重結合を示し、幾何異性体としてそれぞれ独立にE体又はZ体であり、R^(11)は、各々独立に、水素原子、メチル基、又はメトキシ基を示し、R^(12)は、各々独立に、水素原子、メチル基、又はフェニル基を示し、R^(13)は、各々独立に、水素原子、又はメチル基を示す。〕 【化4】 ![]() 〔式(A2)中、R^(21)は、メチル基を示し、R^(22)は、ハロゲン原子を示し、nは0?4の整数である。〕」に訂正する。 訂正前の請求項2及び3は、訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、請求項1?3は一群の請求項であり、本件訂正は、一群の請求項について請求がされたものである。 2 訂正の適否についての当審の判断 (1)訂正事項1について 訂正事項1に係る、化合物(A1)と化合物(A2)の割合を「化合物(A1)と化合物(A2)との合計に対する、化合物(A2)の質量比〔化合物(A2)/(化合物(A1)+化合物(A2))〕が、0.12以上である」ものに限定し、R^(21)をメチル基に限定する訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである(特許法第120条の5第2項ただし書1号)。また、同じく、式(A2)を新たな構造式にする訂正は、本件明細書の段落【0014】の記載からみて、化合物(A2)はペリレン環を有するものであり、訂正前の式(A2)はペリレン環が誤って記載されていることは明らかであるから、誤記の訂正を目的とするものである(同条同項ただし書2号)。 また、訂正事項1に係る、化合物(A1)と化合物(A2)の割合を「化合物(A1)と化合物(A2)との合計に対する、化合物(A2)の質量比〔化合物(A2)/(化合物(A1)+化合物(A2))〕が、0.12以上である」ものに限定し、R^(21)をメチル基に限定する訂正は、本件明細書の【0014】及び【0016】を基に、本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、同じく式(A2)を新たな構造式にする訂正は、本件特許の願書に最初に添付した明細書の段落【0014】の記載からみて、本件特許の願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない(同法第126条第5項及び第6項)。 (2)訂正事項2について 訂正事項2に係る、「化合物(A1)と化合物(A2)との合計に対する、化合物(A2)の質量比〔化合物(A2)/(化合物(A1)+化合物(A2))〕が、0.12以上0.5以下である」ものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり(特許法第120条の5第2項ただし書1号)、本件明細書の【0016】を基に、本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない(同法第126条第5項及び第6項)。 (3)訂正事項3について 訂正事項3に係る訂正は、訂正事項1と同内容であり、上記(1)で述べたように、特許請求の範囲の減縮及び誤記の訂正を目的とするものであり(特許法第120条の5第2項ただし書1号及び2号)、本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない(同法第126条第5項及び第6項)。 3 まとめ 上記2のとおり、訂正事項1?3に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書1号及び2号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものであるから、結論のとおり、本件訂正を認める。 第3 本件発明 前記第2で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1?4に係る発明は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、それぞれ「本件発明1」等という。)。 【請求項1】 式(A1)で表される化合物(A1)と、式(A2)で表される化合物(A2)と、分散剤(B)と、有機溶媒(C)と、硬化性化合物(D)と、を含有する着色硬化性樹脂組成物であって、化合物(A1)と化合物(A2)との合計に対する、化合物(A2)の質量比〔化合物(A2)/(化合物(A1)+化合物(A2))〕が、0.12以上である、着色硬化性樹脂組成物。 【化1】 ![]() 〔式(A1)中、Xは二重結合を示し、幾何異性体としてそれぞれ独立にE体又はZ体であり、R^(11)は、各々独立に、水素原子、メチル基、又はメトキシ基を示し、R^(12)は、各々独立に、水素原子、メチル基、又はフェニル基を示し、R^(13)は、各々独立に、水素原子、又はメチル基を示す。〕 【化2】 ![]() 〔式(A2)中、R^(21)は、メチル基を示し、R^(22)は、ハロゲン原子を示し、nは0?4の整数である。〕 【請求項2】 化合物(A1)と化合物(A2)との合計に対する、化合物(A2)の質量比〔化合物(A2)/(化合物(A1)+化合物(A2))〕が、0.12以上0.5以下である、請求項1に記載の着色硬化性樹脂組成物。 【請求項3】 アルカリ可溶性樹脂を更に含む、請求項1又は2に記載の着色硬化性樹脂組成物。 【請求項4】 式(A1)で表される化合物(A1)と、式(A2)で表される化合物(A2)と、分散剤(B)と、有機溶媒(C)と、を含有する分散体であって、化合物(A1)と化合物(A2)との合計に対する、化合物(A2)の質量比〔化合物(A2)/(化合物(A1)+化合物(A2))〕が、0.12以上である、分散体。 【化3】 ![]() 〔式(A1)中、Xは二重結合を示し、幾何異性体としてそれぞれ独立にE体又はZ体であり、R^(11)は、各々独立に、水素原子、メチル基、又はメトキシ基を示し、R^(12)は、各々独立に、水素原子、メチル基、又はフェニル基を示し、R^(13)は、各々独立に、水素原子、又はメチル基を示す。〕 【化4】 ![]() 〔式(A2)中、R^(21)は、メチル基を示し、R^(22)は、ハロゲン原子を示し、nは0?4の整数である。〕 第4 取消理由の概要 1 申立書に記載した特許異議申立ての申立理由 訂正前の本件発明1?4は、下記のとおりの取消理由があるから、本件特許の請求項1?4に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。証拠方法として、下記の甲第1?2号証(以下、それぞれ「甲1」等という。)を提出する。 申立理由1(拡大先願):訂正前の請求項1?4に係る発明は、本件特許出願の日前の日本語特許出願であって、その出願後に国際公開がされた下記の日本語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の日本語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記日本語特許出願の出願人と同一でもないから、請求項1?4に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。 よって、本件の請求項1?4に係る発明の特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 甲1:国際公開第2016/027798号 甲2:国際公開第2015/046178号 2 取消理由通知書に記載した取消理由 取消理由1.(拡大先願):訂正前の請求項1?4に係る発明は、本件特許出願の日前の日本語特許出願であって、その出願後に国際公開がされた下記の日本語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の日本語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記日本語特許出願の出願人と同一でもないから、請求項1?4に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。 よって、本件の請求項1?4に係る発明の特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである(申立理由1と同旨)。 <引用文献等一覧> 1.特願2014-167326号(国際公開第2016/027798号) 2.PCT/JP2014/075144号(国際公開第2015/046178号) 3.CLARIANT, Hostaperm Red P2GL-WD,[online], [令和1年8月1日検索], インターネット、 4.東京化成工業株式会社,N,N'-Dimethyl-3,4,9,10-perylenetetracarboxylic Diimide, [online], [令和1年8月1日検索], インターネット 5.Wikipedia, Pigment Violet 29, [online],[令和1年8月1日], インターネット 第5 当審の判断 以下に述べるように、取消理由通知書に記載した取消理由1及び特許異議申立書に記載した申立理由1によっては、本件特許の請求項1?4に係る特許を取り消すことはできない。 1 先願1に基づく取消理由1について (1)引用文献等に記載された事項 ア 先願1の当初明細書等に記載された事項及び先願発明 特許法第41条第1項の規定による優先権の主張の基礎とされ、同法第184条の15第2項の規定により読み替えて適用される同法第41条第3項の規定により、出願公開されたものとみなされる特願2014-167326号(以下、「先願1」という。)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)には、以下の記載がある。 (ア)「【請求項1】 着色剤、光重合開始剤および光重合性成分を含有する固体撮像素子用組成物であって、該組成物を硬化して得られる厚さ1.0μmの膜において、波長400?700nmにおける分光透過率の最大値が10%以下であり、波長850?1200nmにおける分光透過率の最小値が85%以上であることを特徴とする、固体撮像素子用組成物。 【請求項2】 前記着色剤としてラクタム系顔料を含有する請求項1に記載の固体撮像素子用組成物。 【請求項3】 さらに、前記着色剤としてフタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料、イソインドリン系顔料またはインダントロン系顔料から選択される1種類以上の顔料を含有する請求項2に記載の固体撮像素子用組成物。」 (イ)「【発明の効果】 【0012】 本発明によれば、波長400?700nmにおける可視光領域の遮光性に優れ、波長850?1200nmにおける近赤外光の透過率が高い、撮像素子用組成物を提供することができる。本発明の撮像素子用組成物を用いて製造されるパターンを備える固体撮像素子は、高解像度で残渣の無い近赤外光検出画素パターンを得ることができ、固体撮像素子の画質に優れる。 ・・・ 【0014】 本発明の固体撮像素子用組成物は、着色剤、光重合開始剤および光重合性成分を含有し、該組成物を硬化して得られる厚さ1.0μmの膜において、波長400?700nmにおける分光透過率の最大値が10%以下であり、波長850?1200nmにおける分光透過率の最小値が85%以上である。これによって、前記撮像素子用組成物を用いて製造される近赤外光検出用画素パターンを備える固体撮像素子は、高解像度で残渣の無い近赤外光検出画素パターンを得ることができ、固体撮像素子の画質に優れる。」 (ウ)「【0018】 (着色剤) 本発明で用いられる着色剤としては、染料、顔料などが挙げられる。染料の例としては、フェロセン系染料、フルオレノン系染料、ペリレン系染料、トリフェニルメタン系染料、クマリン系染料、ジフェニルアミン系染料、キナクリドン系染料、キノフタロン系染料、フタロシアニン系染料、キサンテン系染料などが挙げられる。顔料の例としては、ラクタム系顔料、ペリレン系顔料、フタロシアニン系顔料、イソインドリン系顔料、ジアミノアントラキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、インダントロン系顔料などが挙げられる。 【0019】 耐熱性、可視光の遮光性、および近赤外光の透過性に優れることからラクタム系顔料を着色剤として含有することが好ましく、ラクタム系顔料が、下記一般式(1)?(3)のいずれかで表されるものであることがより好ましい。 【0020】 本発明では、下記一般式(1)?(3)のいずれかで表されるラクタム系顔料を着色剤として含有することが好ましい。 【0021】 ![]() 【0022】 一般式(1)?(3)中、R^(1)およびR^(2)は、それぞれ独立して、水素又は炭素数1?10のアルキル基を表し、R^(3)およびR^(4)は、それぞれ独立して、R^(11)、OR^(11)、SR^(11)、COR^(11)、CONR^(12)R^(13)、NR^(12)COR^(11)、OCOR^(11)、COOR^(11)、SCOR^(11)、OCSR^(11)、COSR^(11)、CSOR^(11)、CN、ハロゲン原子又は水酸基を表し、R^(11)、R^(11)およびR^(13)は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1?20のアルキル基、炭素原子数6?30のアリール基、炭素原子数7?30のアリールアルキル基又は炭素原子数2?20の複素環基を表し、aおよびbは、それぞれ独立して、0?4の整数を表す。」 (エ)「【0027】 本発明で用いられる着色剤としては、前記ラクタム系顔料に加えて、フタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料、イソインドリン系顔料またはインダントロン系顔料から選択される1種類以上の顔料を含有することが好ましい。これによって、可視光の遮光性および近赤外光の透過性をより向上させることができる。 ・・・ 【0029】 ペリレン系顔料の例としては、C.I.ピグメントレッド(PR)123、149、178、179、C.I.ピグメントブラック(PBk)32などが挙げられる。」 (オ)「【0033】 また、可視光の遮光性をさらに向上させるために、ラクタム系顔料およびフタロシアニン系顔料に加えて、ペリレン系顔料および/またはイソインドリン系顔料を少量含有することがさらに好ましい。着色剤中のペリレン系顔料とイソインドリン系顔料の合計量は、0?10質量%であることが好ましい。ペリレン系顔料とイソインドリン系顔料の合計量が10質量%より多いと、可視光の遮光性が低下する場合がある。 【0034】 本発明の固体撮像素子用組成物は、着色剤の分散安定性を向上させるために、高分子分散剤を含有することもできる。高分子分散剤の例としては、ポリエチレンイミン系高分子分散剤、ポリウレタン系高分子分散剤又はポリアリルアミン系高分子分散剤が挙げられる。これらの高分子分散剤はパターン加工性を低下させない程度に添加することが望ましい。 【0035】 (光重合開始剤) 本発明で用いられる光重合開始剤としては、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、オキサントン系化合物、イミダゾール系化合物、ベンゾチアゾール系化合物、ベンゾオキサゾール系化合物、オキシムエステル化合物、カルバゾール系化合物、トリアジン系化合物、リン系化合物又はチタネート等の無機系光重合開始剤が挙げられる。 【0036】 (光重合性成分) 本発明で用いられる光重合性成分としては、アルカリ可溶性樹脂および光重合性化合物が挙げられる。 【0037】 アルカリ可溶性樹脂としては、カルボキシル基やスルホン酸基を樹脂中に含有するものが挙げられる。樹脂としては、エポキシ樹脂、カルド樹脂、アクリル樹脂、シロキサン樹脂又はポリイミド樹脂が挙げられる。中でも、カルボキシル基が導入されたアクリル樹脂が好ましい。 ・・・ 【0040】 光重合性化合物としては、多官能若しくは単官能のアクリル系モノマー又はオリゴマー を用いることができる。」 (カ)「【0043】 (その他の成分) 本発明の固体撮像素子用組成物は、溶媒を含有してもよい。溶媒は、着色剤の分散安定性および光重合性成分の溶解性等を考慮して、水又は有機溶媒を適宜選択すればよい。本発明で用いられる溶媒の例とてしては、エステル類、脂肪族アルコール類、(ポリ)アルキレングリコールエーテル系溶媒、ケトン類、アミド系極性溶媒又はラクトン系極性溶媒が挙げられる。 【0044】 本発明の固体撮像素子用組成物は、塗布性および着色被膜の平滑性を向上させるために、界面活性剤を含有してもよい。」 (キ)「【0048】 本発明の固体撮像素子用組成物は、着色剤、高分子分散剤、溶媒を混合し、分散機を用いて分散させた後、光重合性化合物、光重合性成分、界面活性剤などを添加することで製造することができる。分散機の例としては、ボールミル、サンドグラインダー、3本ロールミル又は高速度衝撃ミルが挙げられる。」 (ク)「【0077】 (実施例1) 112.5gのラクタム系顔料(“Irgaphor”(登録商標)ブラックS0100CF;BASF社製、一般式(1)に含まれる)、37.5gのフタロシアニン系顔料PB15:6(“リオノール”(登録商標)ブルー7602;東洋インキ社製)、56.3gの高分子分散剤(BYK2000;樹脂濃度40質量%;ビックケミージャパン(株)製)、793.7gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを混合して、スラリーを調製した。スラリーを分散機ダイノーミルKDL-Aを用いて、直径0.3mmのジルコニアビーズを使用して、3200rpm、3時間の分散処理を行い、分散液を得た。 【0078】 この分散液73.20gに、5.70gのアルカリ可溶性樹脂(“サイクロマー”(登録商標)ACA250;樹脂濃度45質量%;ダイセル化学社製)、2.56gの光重合性化合物(“アロニックス”(登録商標)M520;東亜合成社製)、0.21gの光重合開始剤(“アデカ”(登録商標)クルーズNCI831;ADEKA社製)、0.04gのシリコーン系界面活性剤(BYK333;ビックケミージャパン(株)製)、18.29gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、を混合し固体撮像素子用組成物1を得た。この組成物における全固形分中の着色剤の含有量は61質量%であり、着色剤の質量比は、ラクタム系顔料:フタロシアニン系顔料=75:25であった。 ・・・ 【0086】 (実施例4) 75gのラクタム系顔料(S0100CF)、69gのフタロシアニン系顔料PB15:6(7602)、6gのペリレン系顔料PR179(“HOSTAPERM”(登録商標)レッドP2GL-WD;クラリアントジャパン社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、し固体撮像素子用組成物4を得た。この組成物を用いて各種評価を行った。」 (ケ)「【0096】 ![]() 」 摘記ア(ク)の実施例4には、着色剤として、75gのラクタム系顔料(S0100CF)、69gのフタロシアニン系顔料PB15:6(7602)、6gのペリレン系顔料PR179(“HOSTAPERM”(登録商標)レッドP2GL-WD;クラリアントジャパン社製)を用い、56.3gの高分子分散剤(BYK2000;樹脂濃度40質量%;ビックケミージャパン(株)製)、793.7gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを混合して、スラリーを調製し、分散処理を行って分散液を得て、該分散液73.20gに、5.70gのアルカリ可溶性樹脂(“サイクロマー”(登録商標)ACA250;樹脂濃度45質量%;ダイセル化学社製)、2.56gの光重合性化合物(“アロニックス”(登録商標)M520;東亜合成社製)、0.21gの光重合開始剤(“アデカ”(登録商標)クルーズNCI831;ADEKA社製)、0.04gのシリコーン系界面活性剤(BYK333;ビックケミージャパン(株)製)、18.29gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを混合し、固体撮像素子用組成物4を得たことが記載されている。 そうすると、先願1の優先基礎出願の当初明細書等には、以下の発明が記載されている。 「75gのラクタム系顔料(S0100CF)、69gのフタロシアニン系顔料PB15:6(7602)、6gのペリレン系顔料PR179(“HOSTAPERM”(登録商標)レッドP2GL-WD;クラリアントジャパン社製)を用い、56.3gの高分子分散剤、793.7gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを混合して、スラリーを調製し、分散処理を行って分散液を得て、該分散液73.20gに、5.70gのアルカリ可溶性樹脂、2.56gの光重合性化合物、0.21gの光重合開始剤、0.04gのシリコーン系界面活性剤、18.29gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを混合して得た固体撮像素子用組成物」(以下、「先願1発明A」という。) 「75gのラクタム系顔料(S0100CF)、69gのフタロシアニン系顔料PB15:6(7602)、6gのペリレン系顔料PR179(“HOSTAPERM”(登録商標)レッドP2GL-WD;クラリアントジャパン社製)を用い、56.3gの高分子分散剤、793.7gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを混合した分散液」(以下、「先願1発明B」という。) イ 引用文献3に記載された事項 引用文献3には、次の事項が記載されている。 ![]() ウ 引用文献4に記載された事項 引用文献4には、次の事項が記載されている。 ![]() (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と先願1発明Aとを対比する。 先願1発明Aの「ラクタム系顔料(S0100CF)」は、後述する先願2の当初明細書等の摘記2(1)ア(ウ)によると、下記式(2)で表される化学構造を有するものであり、本件発明1における式(A1)のR^(11)、R^(12)及びR^(13)がいずれも水素原子である化合物と同じものであるから、本件発明1の「化合物(A1)」に相当する。 先願1発明Aの「ペリレン系顔料PR179」は、引用文献3及び4によると、上記(1)ウに記載された化合物であり、本件発明1における式(A2)の2つのR^(21)がメチル基であり、nが0である化合物と同じものであるから、本件発明1の「化合物(A2)」に相当する。 先願1発明Aの「高分子分散剤」、「プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート」及び「光重合性化合物」は、それぞれ、本件発明1の「分散剤(B)」、「有機溶媒(C)」及び「硬化性化合物(D)」に相当する。 そうすると、本件発明1と先願1発明Aとは、 「式(A1)で表される化合物(A1)と、式(A2)で表される化合物(A2)と、分散剤(B)と、有機溶媒(C)と、硬化性化合物(D)と、を含有する組成物。 【化1】 (当審注:構造式は省略する。以下、同様。) 【化2】」 である点で一致し、次の点で相違する。 [相違点1a]本件発明1は「着色硬化性樹脂組成物」であるのに対して、先願1発明Aは「固体撮像素子用組成物」である点。 [相違点1b]本件発明1は、「化合物(A1)と化合物(A2)との合計に対する、化合物(A2)の質量比〔化合物(A2)/(化合物(A1)+化合物(A2))〕が、0.12以上である」のに対して、先願1発明Aは、「75gのラクタム系顔料(S0100CF)、69gのフタロシアニン系顔料PB15:6(7602)、6gのペリレン系顔料PR179(“HOSTAPERM”(登録商標)レッドP2GL-WD;クラリアントジャパン社製)を用い」ている点。 イ 検討 上記相違点について検討する。 相違点1aに関して、先願1発明Aは、ラクタム系顔料等の着色剤を含有し、これにより、可視光領域の遮光性に優れるものであるから、着色されたものであるし、光重合性化合物及び光重合開始剤を含有して上記組成物を硬化するものである。これらのことから、先願1発明Aの「固体撮像素子用組成物」は、着色硬化性樹脂組成物であるということができ、相違点1aは実質的なものではない。 次に、相違点1bについて検討する。上記アで述べたように、先願1発明Aの「ラクタム系顔料(S0100CF)」及び「ペリレン系顔料PR179」は、それぞれ「化合物(A1)」及び「化合物(A2)」に相当するから、先願1発明Aのラクタム系顔料とペリレン系顔料の配合量に基づき、本件発明1における上記質量比を算出すると、おおよそ0.07(=6/(75+6))であって、本件発明1において特定する「0.12以上」の範囲外となり、相違点1bは実質的な相違点である。 そして、先願1発明Aにおける上記質量比を、本件発明1と同じく0.12以上とすることが、課題解決のための具体化手段における微差(周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等であって、新たな効果を奏するものでないもの)であると解することもできない。 そうすると、本件発明1は、先願1発明Aと同一又は実質同一であるとはいえず、取消理由1によっては、本件発明1に係る特許を取り消すことはできない。 (3)本件発明2及び3について 本件発明2及び3は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1について上記(2)で述べたのと同じ理由により、先願1に記載された発明と同一であるとはいえない。 (4)本件発明4について 本件発明4と先願1発明Bを対比すると、本件発明1について上記(2)アで述べたとおり、先願1発明Bの「ラクタム系顔料(S0100CF)」及び「ペリレン系顔料PR179」は、本件発明4の「化合物(A1)」及び「化合物(A2)」に相当する。 また、先願1発明Bの「高分子分散剤」、「プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート」及び「分散液」は、それぞれ、本件発明1の「分散剤(B)」、「有機溶媒(C)」及び「分散体」に相当する。 そうすると、本件発明4と先願1発明Bは、 「式(A1)で表される化合物(A1)と、式(A2)で表される化合物(A2)と、分散剤(B)と、有機溶媒(C)と、を含有する分散体。 【化3】 (当審注:(A1)の構造式は省略。) 【化4】 (当審注:(A2)の構造式は省略。)」 である点で一致し、次の点で相違する。 [相違点1c]本件発明4は、「化合物(A1)と化合物(A2)との合計に対する、化合物(A2)の質量比〔化合物(A2)/(化合物(A1)+化合物(A2))〕が、0.12以上である」のに対して、先願1発明Bは、「75gのラクタム系顔料(S0100CF)、69gのフタロシアニン系顔料PB15:6(7602)、6gのペリレン系顔料PR179(“HOSTAPERM”(登録商標)レッドP2GL-WD;クラリアントジャパン社製)を用い」ている点。 そして、相違点1cは、上記(2)イで相違点1bについて述べたのと同じ理由により、本件発明4は、先願1発明Bと同一又は実質同一であるとはいえず、取消理由1によっては、本件発明4に係る特許を取り消すことはできない。 (5)小括 以上のとおりであるから、先願1を先願とする取消理由1によっては、本件特許の請求項1?4に係る特許を取り消すことはできない。 2 先願2に基づく取消理由1について (1)引用文献等に記載された事項 ア 先願2の当初明細書等に記載された事項及び先願発明 PCT/JP2014/075144号(以下、先願2」という。)の国際出願日における明細書、請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)には、以下の記載がある。 (ア)「[請求項1] (A)色材、(B)分散剤、(C)アルカリ可溶性樹脂、及び(D)光重合開始剤を少なくとも含有する感光性着色組成物であって、 前記(A)色材が(A-1)下記一般式(1)で表される化合物、その幾何異性体、その塩、またはその幾何異性体の塩である有機黒色顔料を含み、かつ、 前記(B)分散剤が4級アンモニウム塩基を官能基として有する高分子分散剤を含む感光性着色組成物。 ![]() [式(1)中、R^(1)およびR^(6)は互いに独立して水素原子、CH_(3)、CF_(3)、フッ素原子または塩素原子である;R^(2)、R^(3)、R^(4)、R^(5)、R^(7)、R^(8)、R^(9)およびR^(10)は他の全てから互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、R^(11)、COOH、COOR^(11)、COO-、CONH_(2)、CONHR^(11)、CONR^(11)R^(12)、CN、OH、OR^(11)、COCR^(11)、OOCNH_(2)、OOCNHR^(11)、OOCNR^(11)R^(12)、NO_(2)、NH_(2)、NHR^(11)、NR^(11)R^(12)、NHCOR^(12)、NR^(11)COR^(12)、N=CH_(2)、N=CHR^(11)、N=CR^(11)R^(12)、SH、SR^(11)、SOR^(11)、SO_(2)R^(11)、SO_(3)R^(11)、SO_(3)H、SO_(3)-、SO_(2)NH_(2)、SO_(2)NHR^(11)またはSO_(2)NR^(11)R^(12)である;且つ、R^(2)とR^(3)、R^(3)とR^(4)、R^(4)とR^(5)、R^(7)とR^(8)、R^(8)とR^(9)、及びR^(9)とR^(10)からなる群から選ばれる少なくとも1つの組み合わせは、互いに直接結合し、または酸素原子、硫黄原子、NH若しくはNR^(11)ブリッジによって互いに結合することもできる;R^(11)およびR^(12)は互いに独立して、炭素数1?12のアルキル基、炭素数3?12のシクロアルキル基、炭素数2?12のアルケニル基、炭素数3?12のシクロアルケニル基または炭素数2?12のアルキニル基である。] ・・・・ [請求項6] 前記(A-2)有機着色顔料が、以下の顔料のうち少なくとも1種以上を含有する、請求項5に記載の感光性着色組成物。 青:カラーインデックスピグメントブルー60、又は15:6 赤:カラーインデックスピグメントレッド177、254、又は272 紫:カラーインデックスピグメントバイオレット23、又は29 橙:カラーインデックスピグメントオレンジ43、64、又は72」 (イ)「[0001]本発明は、感光性着色組成物、ブラックマトリクス、着色スペーサー及び画像表示装置に関するものである。詳しくは、遮蔽性及び製版特性に優れる感光性着色組成物と、その用途に関する。 [0002]液晶表示素子用ブラックマトリクスは、液晶表示素子において駆動電極間からの光のもれを防ぐために用いられる。一般的にブラックマトリクスは、TFT(Thin Film Transistor)素子基板と対をなすガラス又はプラスティックシートなどの透明基板上にフォトリソグラフィー法を用いて形成されるストライプ状又は格子状の遮光性材料のパターンである。 最近では、カラー液晶表示素子のより高精細・高輝度化に対応するために、アクティブマトリクス型液晶ディスプレイにおいて、カラーフィルターをTFT素子基板側に設けたカラーフィルター・オン・アレイ方式(COA方式)やブラックマトリクスだけをTFT素子基板側に設けたブラックマトリクス・オン・アレイ方式(BOA方式)が提案されている。この方式によれば、カラーフィルター側にブラックマトリクスを形成する場合に比べ、アクティブ素子側との位置合わせマージンを取る必要がなくなるため、開口率を高くすることができ、その結果、高輝度化を図ることができる。 [0003] ただし、この様な構造を取る場合にブラックマトリクスには、TFT素子の上に直接搭載させても電気回路の短絡を起こさない様に一定以上の体積抵抗率や一定以下の比誘電率を持つものが求められる。 このようなブラックマトリクスとしては、顔料に複数種の有機着色顔料とカーボンブラックを用いたブラックマトリクスが提案されている(例えば特許文献1参照)。」 (ウ)「[0274] 次に、合成例、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。 以下の実施例及び比較例で用いた感光性着色組成物の構成成分は次の通りである。 <(A-1)有機黒色顔料> BASF社製、Irgaphor(登録商標) Black S 0100 CF(下記式(2)で表される化学構造を有する) [0275] ![]() ・・・ [0283] <分散剤-I> ビックケミー社製「DISPERBYK-LPN21116」(側鎖に4級アンモニウム塩基及び3級アミノ基を有するAブロックと、4級アンモニウム塩基及びアミノ基を有さないBブロックからなる、アクリル系A-Bブロック共重合体。アミン価は70mgKOH/g。酸価は1mgKOH/g以下。) 分散剤-Iの全繰り返し単位に占める下記式(1a)、(2a)、及び(3a)の繰り返し単位の含有割合はそれぞれ11.1モル%、22.2モル%、6.7モル%である。 ・・・ [0286] <顔料誘導体> ルーブリゾール社製「Solsperse12000」 <溶剤-I> PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート <溶剤-II> MB:3-メトキシブタノール ・・・ [0299] <光重合性モノマー-I> DPHA:日本化薬(株)製 ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート ・・・ <添加剤-I> 日本化薬(株)製、KAYAMER PM-21(メタクリロイル基含有ホスフェート) <界面活性剤-I> DIC(株)製 メガファック F-559」 (エ)「[0300] <顔料分散液-1?7の調製> 表1に記載の顔料、分散剤、分散助剤、アルカリ可溶性樹脂、及び溶剤を、表1に記載の質量比となるように混合した。この溶液をペイントシェーカーにより25?45℃の範囲で3時間分散処理を行った。ビーズとしては、0.5mmφのジルコニアビーズを用い、分散液の2.5倍の質量を加えた。分散終了後、フィルターによりビーズと分散液を分離して、顔料分散液-1?7を調製した。 [0301] ここで、ペリレンブラックを顔料分散液-1と同じ条件で分散したところ、ペリレンブラックは粘度が大きく増加した。そのため、これらの顔料を分散するには、顔料分散液-6の様に分散剤の量を大きく増やす必要があった。 [0302] [表1] ![]() ・・・ [0306] [実施例1?8及び比較例1?4] 上記調製した顔料分散液、被覆カーボンブラック分散液を用いて、固形分中の比率が表2の配合割合となるように各成分を加え、さらに固形分が17質量%となるようにPGMEAを加え、攪拌、溶解させて、感光性着色組成物を調製した。実施例1?8及び比較例1、2及び4は固形分中の顔料濃度を40質量%とし、比較例3は固形分中の顔料濃度を30質量%とした。また、全ての感光性着色組成物において、光重合性モノマーに対するアルカリ可溶性樹脂(分散液中の樹脂も含む)の質量比率を3とし、光重合開始剤を固形分中4質量%、添加剤を0.5質量%、界面活性剤を0.1質量%とした。得られた感光性着色組成物を用いて、後述する方法で評価を行った。 [0307][表2] ![]() 」 摘記ア(エ)の表1には、以下の成分組成からなる顔料分散液-1、顔料分散液-2、及び顔料分散液-4が記載されている。 顔料分散液-1 式(2)で表される化学構造を有する(A-1)有機黒色顔料(BASF社製、Irgaphor(登録商標) Black S 0100 CF)100部、分散剤Iであるアクリル系A-Bブロック共重合体(ビックケミー社製「DISPERBYK-LPN21116」)20部、アルカリ可溶性樹脂I 33部、溶剤Iであるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)367部、及び、溶剤IIである3-メトキシブタノール(MB)92部。 顔料分散液-2 式(2)で表される化学構造を有する(A-1)有機黒色顔料(BASF社製、Irgaphor(登録商標)Black S 0100 CF)100部、分散剤Iであるアクリル系A-Bブロック共重合体(ビックケミー社製「DISPERBYK-LPN21116」20部、分散助剤1部、アルカリ可溶性樹脂I33部、及び、溶剤Iであるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)462部。 顔料分散液-4 C.Iピグメントブルー60 50部、C.Iピグメントオレンジ64 33部、C.Iピグメントバイオレット29 17部、分散剤Iであるアクリル系A-Bブロック共重合体(ビックケミー社製「DISPERBYK-LPN21116」)20部、アルカリ可溶性樹脂I 33部、溶剤Iであるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)367部、及び、溶剤IIである3-メトキシブタノール(MB)92部。 そして、摘記ア(エ)の表2に記載された実施例4及び実施例8に着目すると、先願2の当初明細書等には、それぞれ、以下の発明が記載されている。 「顔料分散液-1 30.7部、顔料分散液-4 30.7部、アルカリ可溶性樹脂-III 22.2部、光重合性モノマーIであるジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)11.9部、光重合開始剤-I 4.0部、添加剤-Iであるメタクリロイル基含有ホスフェート(日本化薬(株)製、KAYAMER PM-21)0.5部、及び、界面活性剤-1 0.1部からなる感光性着色組成物。」(以下、「先願2発明A」という。) 「顔料分散液-2 16.4部、顔料分散液-4 46.0部、アルカリ可溶性樹脂-III 11.1部、光アルカリ可溶性樹脂-IV 11.1部、光重合性モノマーIであるジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA) 5.9部、光重合性モノマーIIであるウレタンアクリレート(DPHA-40H)5.9部、光重合開始剤-I 2.0部、光重合開始剤-II 2.0部、添加剤-Iであるメタクリロイル基含有ホスフェート(日本化薬(株)製、KAYAMER PM-21)0.5部、及び、界面活性剤-1 0.1部からなる感光性着色組成物」(以下、「先願2発明B」という。) イ 引用文献5に記載された事項 引用文献5には、次の事項が記載されている。 ![]() (2)先願2発明Aを引用発明とする検討 ア 本件発明1について (ア)対比 先願2発明Aは、「顔料分散液-1」及び「顔料分散液-4」を含有するものであり、「顔料分散液-1」に含有される「(A-1)有機黒色顔料(BASF社製、Irgaphor(登録商標) Black S 0100 CF)」は、上記(1)ア(ウ)によると、下記式(2)で表される化学構造を有する化合物であって、本件発明1における式(A1)のR^(11)、R^(12)及びR^(13)がいずれも水素原子である化合物と同じものであるから、本件発明1の「化合物(A1)」に相当する。 更に、先願2発明Aの「顔料分散液-1」は「分散剤I」、「溶剤I」、「溶剤II」及び「アルカリ可溶性樹脂I」を含有し、同じく「顔料分散液-4」は「溶剤I」、「溶剤II」及び「アルカリ可溶性樹脂I」を含有する。そして、先願2発明Aの「分散剤I」並びに「溶剤I」及び「溶剤II」は、本件発明1の「分散剤(B)」及び「有機溶媒(C)」に相当する。また、先願2発明Aの「光重合性モノマーIであるジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)」及び「感光性着色組成物」は、本件発明1の「硬化性化合物(D)」及び「着色硬化性樹脂組成物」に相当する。 そして、先願2発明Aの「顔料分散液-4」に含有される「C.Iピグメントバイオレット29」は、上記(1)イに記載された構造式で表される化合物であり、これは本件発明1における化合物(A2)と同じく、ペリレン環を骨格とするペリレン系顔料である。 そうすると、本件発明1と先願2発明Aとは、 「式(A1)で表される化合物(A1)と、ペリレン系顔料と、分散剤(B)と、有機溶媒(C)と、硬化性化合物(D)と、を含有する組成物。 【化1】 (当審注:構造式は省略。)」である点で一致し、次の点で相違する。 [相違点2a]ペリレン系顔料に関して、本件発明1は、「式(A2)で表される化合物(A2)」を含有し、化合物(A1)と化合物(A2)との合計に対する、化合物(A2)の質量比〔化合物(A2)/(化合物(A1)+化合物(A2))〕が、0.12以上である」のに対して、先願2発明Aは、「C.Iピグメントバイオレット29」を含有し、本件発明1の上記質量比を満たすものでない点。 (イ)検討 相違点2aについて検討すると、先願2発明Aの「C.Iピグメントバイオレット29」は、上記(ア)で述べたように、上記(1)イに記載された構造式で表され、本件発明1における式(A2)の2つのR^(21)が水素原子である化合物であるから、本件発明1の「化合物(A2)」と同じものではないし、本件発明1の上記質量比を満たすものではないから、相違点2aは実質的な相違点である。 そして、先願2発明Aの「C.Iピグメントバイオレット29」を、本件発明1の式(A2)の2つのR^(21)が水素原子である化合物にし、本件発明1の上記質量比を満たすことが、課題解決のための具体化手段における微差(周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等であって、新たな効果を奏するものでないもの)であると解することもできない。 そうすると、本件発明1は、先願2発明Aと同一又は実質同一であるとはいえず、取消理由1によっては、本件発明1に係る特許を取り消すことはできない。 イ 本件発明2及び3について 本件発明2及び3は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1について上記イで述べたのと同じ理由により、先願2に記載された発明と同一であるとはいえない。 ウ 本件発明4について 本件発明4と先願2発明Aを対比すると、先願2発明Aは「顔料分散液-1」及び「顔料分散液-4」を含み、顔料は組成物中に分散しており、分散体であるといえる。 そして、上記(1)で本件発明1について述べたのと同様に、先願2発明Aの「(A-1)有機黒色顔料」、「分散剤I」、並びに「溶剤I」及び「溶剤II」は、それぞれ、本件発明4の「化合物(A1)」、「分散剤(B)」及び「有機溶媒(C)」に相当する。 そうすると、本件発明4と先願2発明Aは、 「式(A1)で表される化合物(A1)と、ペリレン系顔料と、分散剤(B)と、有機溶媒(C)と、を含有する分散体。 【化3】 (当審注:(A1)の構造式は省略。)」である点で一致し、次の点で相違する。 [相違点2b]ペリレン系顔料に関して、本件発明4は、「式(A2)で表される化合物(A2)」を含有し、化合物(A1)と化合物(A2)との合計に対する、化合物(A2)の質量比〔化合物(A2)/(化合物(A1)+化合物(A2))〕が、0.12以上である」のに対して、先願2発明Aは、「C.Iピグメントバイオレット29」を含有し、本件発明1の上記質量比を満たすものでない点。 そして、相違点2bは相違点2aと同様の相違点であり、上記ア(イ)において本件発明1について述べたのと同じ理由により、本件発明4は、先願2発明Aと同一又は実質同一であるとはいえず、取消理由1によっては、取り消すことはできない。 エ 小括 以上のとおりであるから、先願2発明Aに基づく取消理由1によっては、本件特許の請求項1?4に係る特許を取り消すことはできない。 (3)先願2発明Bを引用発明とする検討 ア 本件発明1について 先願2発明Bは、「顔料分散液-2」及び「顔料分散液-4」を含有するものであり、「顔料分散液-2」は「(A-1)有機黒色顔料(BASF社製、Irgaphor(登録商標) Black S 0100 CF)」、「分散剤I」、「溶剤I」及び「アルカリ可溶性樹脂I」を含有する。 そして、上記(1)アで先願2発明Aについて述べたように、先願2発明Bの「(A-1)有機黒色顔料」、「分散剤I」、「溶剤I」及び「溶剤II」、「光重合性モノマーI」、「感光性着色組成物」は、それぞれ、本件発明1の「化合物(A1)」、「分散剤(B)」、「有機溶媒(C)」、「硬化性化合物(D)」及び「着色硬化性樹脂組成物」に相当する。 そうすると、本件発明1と先願2発明Bは、 「式(A1)で表される化合物(A1)と、ペリレン系顔料と、分散剤(B)と、有機溶媒(C)と、硬化性化合物(D)と、を含有する組成物。 【化1】 (当審注:構造式は省略。)」である点で一致し、次の点で相違する。 [相違点2c]本件発明1は、「式(A2)で表される化合物(A2)」を含有し、化合物(A1)と化合物(A2)との合計に対する、化合物(A2)の質量比〔化合物(A2)/(化合物(A1)+化合物(A2))〕が、0.12以上である」のに対して、先願2発明Bは、「C.Iピグメントバイオレット29」を含有し、本件発明1の上記質量比を満たすものでない点。 そして、相違点2cは相違点2aと同様の相違点であり、上記(2)ア(イ)において本件発明1について述べたのと同じ理由により、本件発明1は、先願2発明Bと同一又は実質同一であるとはいえず、取消理由1によっては、取り消すことはできない。 イ 本件発明2及び3について 本件発明2及び3は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1について上記イで述べたのと同じ理由により、先願2に記載された発明と同一であるとはいえない。 ウ 本件発明4について 本件発明4と先願2発明Bを対比すると、先願2発明Bは「顔料分散液-1」及び「顔料分散液-4」を含み、顔料は組成物中に分散しており、分散体であるといえる。 そして、上記アで本件発明1について述べたのと同様に、先願2発明Aの「(A-1)有機黒色顔料」、「分散剤I」、並びに「溶剤I」及び「溶剤II」は、それぞれ、本件発明4の「化合物(A1)」、「分散剤(B)」及び「有機溶媒(C)」に相当する。 そうすると、本件発明4と先願2発明Bは、 「式(A1)で表される化合物(A1)と、ペリレン系顔料と、分散剤(B)と、有機溶媒(C)と、を含有する分散体。 【化3】 (当審注:(A1)の構造式は省略。)」である点で一致し、次の点で相違する。 [相違点2d]ペリレン系顔料に関して、本件発明4は、「式(A2)で表される化合物(A2)」を含有し、化合物(A1)と化合物(A2)との合計に対する、化合物(A2)の質量比〔化合物(A2)/(化合物(A1)+化合物(A2))〕が、0.12以上である」のに対して、先願2発明Bは、「C.Iピグメントバイオレット29」を含有し、本件発明1の上記質量比を満たすものでない点。 そして、相違点2dは相違点2aと同様の相違点であり、上記(2)ア(イ)において本件発明1について述べたのと同じ理由により、本件発明4は、先願2発明Bと同一又は実質同一であるとはいえず、取消理由1によっては、取り消すことはできない。 エ 小括 以上のとおりであるから、先願2発明Bに基づく取消理由1によっては、本件特許の請求項1?4に係る特許を取り消すことはできない。 第6 むすび 以上のとおり、取消理由通知書に記載した取消理由及び申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1?4に係る特許を取り消すことはできない。 他に本件特許の請求項1?4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 式(A1)で表される化合物(A1)と、式(A2)で表される化合物(A2)と、分散剤(B)と、有機溶媒(C)と、硬化性化合物(D)と、を含有する着色硬化性樹脂組成物であって、化合物(A1)と化合物(A2)との合計に対する、化合物(A2)の質量比〔化合物(A2)/(化合物(A1)+化合物(A2))〕が、0.12以上である、着色硬化性樹脂組成物。 【化1】 ![]() 〔式(A1)中、Xは二重結合を示し、幾何異性体としてそれぞれ独立にE体又はZ体であり、R^(11)は、各々独立に、水素原子、メチル基、又はメトキシ基を示し、R^(12)は、各々独立に、水素原子、メチル基、又はフェニル基を示し、R^(13)は、各々独立に、水素原子、又はメチル基を示す。〕 【化2】 ![]() 〔式(A2)中、R^(21)は、メチル基を示し、R^(22)は、ハロゲン原子を示し、nは0?4の整数である。〕 【請求項2】 化合物(A1)と化合物(A2)との合計に対する、化合物(A2)の質量比〔化合物(A2)/(化合物(A1)+化合物(A2))〕が、0.12以上0.5以下である、請求項1に記載の着色硬化性樹脂組成物。 【請求項3】 アルカリ可溶性樹脂を更に含む、請求項1又は2に記載の着色硬化性樹脂組成物。 【請求項4】 式(A1)で表される化合物(A1)と、式(A2)で表される化合物(A2)と、分散剤(B)と、有機溶媒(C)と、を含有する分散体であって、化合物(A1)と化合物(A2)との合計に対する、化合物(A2)の質量比〔化合物(A2)/(化合物(A1)+化合物(A2))〕が、0.12以上である、分散体。 【化3】 ![]() 〔式(A1)中、Xは二重結合を示し、幾何異性体としてそれぞれ独立にE体又はZ体であり、R^(11)は、各々独立に、水素原子、メチル基、又はメトキシ基を示し、R^(12)は、各々独立に、水素原子、メチル基、又はフェニル基を示し、R^(13)は、各々独立に、水素原子、又はメチル基を示す。〕 【化4】 ![]() 〔式(A2)中、R^(21)は、メチル基を示し、R^(22)は、ハロゲン原子を示し、nは0?4の整数である。〕 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2020-01-15 |
出願番号 | 特願2014-244104(P2014-244104) |
審決分類 |
P
1
651・
161-
YAA
(C08F)
|
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 柳本 航佑 |
特許庁審判長 |
佐藤 健史 |
特許庁審判官 |
橋本 栄和 近野 光知 |
登録日 | 2018-10-19 |
登録番号 | 特許第6420646号(P6420646) |
権利者 | 花王株式会社 |
発明の名称 | 着色硬化性樹脂組成物 |
代理人 | 大谷 保 |
代理人 | 片岡 誠 |
代理人 | 片岡 誠 |
代理人 | 大谷 保 |