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審決分類 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  A61K
審判 一部申し立て 2項進歩性  A61K
管理番号 1360465
異議申立番号 異議2019-700377  
総通号数 244 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-04-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-05-07 
確定日 2020-02-03 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6419417号発明「自立性美容シート」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6419417号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?13〕について訂正することを認める。 特許第6419417号の請求項1、2、4?13に係る特許を維持する。 特許第6419417号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 【第1】手続の経緯
特許第6419417号の請求項1?14に係る特許についての出願は、平成25年5月24日に出願され、平成30年10月19日にその特許権の設定登録がなされ、同年11月7日に特許掲載公報が発行された。その後の手続は以下のとおりである。

・令和 1年 5月 7日 特許異議申立人 田口雅士(以下「申
立人」という)による請求項1?13
に係る特許に対する特許異議の申立て
・ 同 年 7月 4日付け 取消理由の通知
・ 同 年10月 7日付け 特許権者による意見書の提出及び訂正
の請求
・ 同 年11月20日付け 申立人による意見書の提出


【第2】訂正請求について

1.訂正の内容
本件訂正の請求による、請求項1?13からなる一群の請求項に係る訂正事項は、次のとおりである。(下線部は訂正箇所を示す。)

(1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に記載の
「少なくとも1種の生体適合性及び/又は生分解性の疎水性ポリマー層を含み、
30?1000nmの厚さを有し、
フェニルベンゾイミダゾールスルホン酸、テレフタリリデンジカンファースルホン酸、フェニルジベンゾイミダゾールテトラスルホン酸二ナトリウム、及び、金属酸化物からなる群から選択される少なくとも1種の親水性紫外線遮蔽剤を含む、
皮膚用自立性美容シート。」

「少なくとも1種の生体適合性及び/又は生分解性の疎水性ポリマー層を含み、
30?1000nmの厚さを有し、
フェニルベンゾイミダゾールスルホン酸、テレフタリリデンジカンファースルホン酸、フェニルジベンゾイミダゾールテトラスルホン酸二ナトリウム、及び、金属酸化物からなる群から選択される少なくとも1種の親水性紫外線遮蔽剤を含む、皮膚用自立性美容シートであって、
前記生体適合性及び/又は生分解性の疎水性ポリマー層が、少なくとも1種のカチオン性ポリマー及び少なくとも1種のアニオン性ポリマーを含む、皮膚用自立性美容シート。」
に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4?9及び11?13中の請求項の引用を下記の(3-1)?(3-9)のとおりに訂正する。
(3-1) 請求項4中の「請求項3に記載の」を「請求項1に記載の」に訂正する。
(3-2) 請求項5中の「請求項3又は4に記載の」を「請求項1又は4に記載の」に訂正する。
(3-3) 請求項6中の「請求項3から5のいずれか一項に記載の」を「請求項1、4及び5のいずれか一項に記載の」に訂正する。
(3-4) 請求項7中の「請求項3から6のいずれか一項に記載の」を「請求項1及び4から6のいずれか一項に記載の」に訂正する。
(3-5) 請求項8中の「請求項1から7のいずれか一項に記載の」を「請求項1、2及び4から7のいずれか一項に記載の」に訂正する。
(3-6) 請求項9中の「請求項1から8のいずれか一項に記載の」を「請求項1、2及び4から8のいずれか一項に記載の」に訂正する。
(3-7) 請求項11中の「請求項1から10のいずれか一項に記載の」を「請求項1、2及び4から10のいずれか一項に記載の」に訂正する。
(3-8) 請求項12中の「請求項1から10のいずれか一項に記載の」を「請求項1、2及び4から10のいずれか一項に記載の」に訂正する。
(3-9) 請求項13中の「請求項1から10のいずれか一項に記載の」を「請求項1、2及び4から10のいずれか一項に記載の」に訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、一群の請求項

(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1における「生体適合性及び/又は生分解性の疎水性ポリマー層」を、訂正前の請求項3に規定されていた「少なくとも1種のカチオン性ポリマー及び少なくとも1種のアニオン性ポリマーを含む」ものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、かかる訂正は新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
また、訂正事項1の訂正により、請求項1の記載を引用する請求項2、4?13についても同様に訂正されることとなるが、当該訂正もまた、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、請求項3を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そして、かかる訂正は新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正事項2の請求項3の削除に伴い、訂正前の請求項4?9及び11?13において、上記削除された請求項3を引用しているという不明瞭な状態を解消させるものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであるか、又は、請求項3との引用関係を解消するものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
そして、これらの訂正は新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

3.小活
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1、3又は4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものであるから、これを認める。


【第3】訂正後の請求項1、2、4?13に係る発明
本件訂正請求により訂正された請求項1、2及び4?13に係る発明(以下、順に「訂正発明1」、「訂正発明2」、「訂正発明4」?「訂正発明13」ということがあり、また、これらをまとめて単に「訂正発明」ということがある)は、訂正特許請求の範囲の請求項1、2、4?13に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「 【請求項1】
少なくとも1種の生体適合性及び/又は生分解性の疎水性ポリマー層を含み、
30?1000nmの厚さを有し、
フェニルベンゾイミダゾールスルホン酸、テレフタリリデンジカンファースルホン酸、フェニルジベンゾイミダゾールテトラスルホン酸二ナトリウム、及び、金属酸化物からなる群から選択される少なくとも1種の親水性紫外線遮蔽剤を含む、皮膚用自立性美容シートであって、
前記生体適合性及び/又は生分解性の疎水性ポリマー層が、少なくとも1種のカチオン性ポリマー及び少なくとも1種のアニオン性ポリマーを含む、皮膚用自立性美容シート。
【請求項2】
生体適合性及び/又は生分解性の疎水性ポリマーが、非架橋である、請求項1に記載の皮膚用自立性美容シート。
【請求項3】(削除)
【請求項4】
カチオン性ポリマーが、第四級アンモニウム基、グアニジン基、ビグアニド基、イミダゾール基、イミノ基、ピリジル基及びアミノ基からなる群から選択される少なくとも1つの正荷電性部分を有する、請求項1に記載の皮膚用自立性美容シート。
【請求項5】
カチオン性ポリマーが、キトサン、コラーゲン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリジアリルジアルキルアンモニウムクロリド、ポリアニリン、ポリビニルイミダゾール、ポリジメチルアミノエチレンメタクリレート、ポリ-1-メチル-2-ビニルピリジン、ポリアミン、ポリイミン、ポリエチレンイミン、ポリビニルピリジン、ポリ(第四級ピリジン)、ポリリシン、ポリオルニチン、ポリアルギニン、ポリヒスチジン、ポリアミノプロピルビグアニド、及び、それらの塩からなる群から選択される、請求項1又は4に記載の皮膚用自立性美容シート。
【請求項6】
アニオン性ポリマーが、硫酸基、スルフェート基、スルホン酸基、スルホネート基、リン酸基、ホスフェート基、ホスホン酸基、ホスホネート基、カルボキシル基及びカルボキシレート基からなる群から選択される少なくとも1つの負荷電性部分を有する、請求項1、4及び5のいずれか一項に記載の皮膚用自立性美容シート。
【請求項7】
アニオン性ポリマーが、アルギン酸、ヒアルロン酸、ポリグルタミン酸、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリアミド酸、ポリスチレンスルホネート、ポリ(ビニルスルフェート)、デキストランスルフェート、コンドロイチンスルフェート、ポリマレイン酸、ポリフマル酸、カルボキシメチルセルロース、スチレン無水マレイン酸誘導体及びそれらの塩からなる群から選択できる、請求項1及び4から6のいずれか一項に記載の皮膚用自立性美容シート。
【請求項8】
親水性紫外線遮蔽剤の量が、美容シートの総質量に対して、0.1から70質量%である、請求項1、2及び4から7のいずれか一項に記載の皮膚用自立性美容シート。
【請求項9】
基材シートに接着されている、請求項1、2及び4から8のいずれか一項に記載の皮膚用自立性美容シート。
【請求項10】
基材シートから取り外し可能である、請求項9に記載の皮膚用自立性美容シート。
【請求項11】
請求項1、2及び4から10のいずれか一項に記載の皮膚用自立性美容シートを皮膚上に適用する工程を含む、皮膚をケア及び/又はメーキャップする非治療的化粧方法。
【請求項12】
請求項1、2及び4から10のいずれか一項に記載の皮膚用自立性美容シートを皮膚上に適用する工程を含む、皮膚の黒ずみを制限し、肌の色及びむらを改善する非治療的化粧方法。
【請求項13】
請求項1、2及び4から10のいずれか一項に記載の皮膚用自立性美容シートを皮膚上に適用する工程を含む、皮膚のアンチエイジング美容処理方法。 」


【第4】特許異議申立書の異議申立理由について
申立人は、以下の甲第1?17号証を提出し、特許異議申立書において、訂正前の請求項1?13に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」?「本件特許発明13」ということがあり、また、これらをまとめて単に「本件特許発明」ということがある)に係る特許は、概要次の理由1.及び2.の「申立理由1」及び「申立理由2」により取り消されるべきものであることを主張している。

1.申立理由1(新規性)
本件特許発明1、2、8?13は、いずれも、甲第1号証に記載された発明と同一であって、これらの発明に係る特許は特許法第29条第1項第3号に該当する発明に対してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

2.申立理由2(進歩性)
本件特許発明1?13は、いずれも、甲第1号証に記載の発明及び甲第2号証?甲第17号証に記載の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、これらの発明に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

[証拠方法]
・甲第1号証:特開2013-1661号公報
・甲第2号証:特開2012-12606号公報
・甲第3号証:特開2007-153899号公報
・甲第4号証:特開2007-153900号公報
・甲第5号証:特開昭59-98009号公報
・甲第6号証:特表平11-505800号公報
・甲第7号証:特開平10-7520号公報
・甲第8号証:特開平4-193816号公報
・甲第9号証:特開平4-210617号公報
・甲第10号証:特開平9-323919号公報
・甲第11号証:鈴木一成監修、中央書院編集部編集「改訂・完全版 化粧品成分用語辞典2012」(2012年8月31日 第6刷発行) 中央書院 544?547頁、554?555頁
・甲第12号証:特開2011-32301号公報
・甲第13号証:特表2007-535537号公報
・甲第14号証:特表2011-505179号公報
・甲第15号証:特開2013-71906号公報
・甲第16号証:特開2013-71907号公報
・甲第17号証:再公表特許第2012/153682号

※合議体注:
・以下、申立人による上記「甲第1号証」?「甲第17号証」を順に「甲1」?「甲17」ということがある。
・甲17は、それ自体は本件特許出願日:平成25年(2013年)5月24日の後の平成26年(2014年)7月31日を発行日とする刊行物であるが、本件特許出願日より前の平成24年(2012年)11月15日に国際公開がされた国際公開第2012/153682号の内容を再掲載した再公表特許であることから、以下、甲17の記載事項は、本件特許出願前に当該国際公開第2012/153682号により既に公開されていたものと認められる公知の事項として取り扱う。


【第5】取消理由通知書に記載した取消理由について
訂正前の請求項1?13に係る特許に対して令和1年7月4日付けで特許権者に通知された取消理由通知書に記載された取消理由は、概要次の「取消理由1」及び「取消理由2」のとおりである。

1.取消理由1(新規性及び進歩性)
本件特許発明1、2、8?13は、いずれも、刊行物2?4に記載された技術常識を踏まえると、刊行物1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、若しくは、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

2.取消理由2(進歩性)
本件特許の請求項1?13に係る発明は、いずれも、刊行物2?4に記載された技術常識を踏まえつつ、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるか、若しくは、刊行物1に記載された発明と刊行物5及び/又は刊行物6の記載との組合せに基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

[引用刊行物]
・刊行物1:特開2013-1661号公報[申立人が特許異議申立書に添付した甲第1号証]
・刊行物2:特開2012-12606号公報[同甲第2号証]
・刊行物3:特表2007-535537号公報[同甲第13号証]
・刊行物4:鈴木一成監修、中央書院編集部編集「改訂・完全版 化粧品成分用語辞典2012」(2012年8月31日 第6刷発行) 中央書院 544?547頁、554?555頁[同甲第11号証]
・刊行物5:特開2013-71907号公報(2013.4.22公開)[同甲第16号証]
・刊行物6:特開2013-71906号公報(2013.4.22公開)[同甲第15号証]


【第6】合議体の判断

[6-1]甲1?甲17の記載事項
下線は合議体による。

(1)甲1

・甲1-1)特許請求の範囲
「 【請求項1】 粉末を担持させた厚さ10?500nmの基材膜と、水溶性高分子膜と、が積層していることを特徴とする薄膜。
・・・
【請求項5】
請求項1?4のいずれかに記載の薄膜において、基材膜にポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、あるいはこれらの共重合体を含むことを特徴とする薄膜。
【請求項6】
請求項1?5のいずれかに記載の薄膜において、水溶性高分子膜がポリビニルアルコールまたはその誘導体、ポリエーテルまたはその誘導体、ポリサッカライド類、高分子電解質あるいはその塩であることを特徴とする薄膜。
【請求項7】
請求項1?6のいずれかに記載の薄膜において、粉末が屈折率1.5?3.0、平均粒子径1?10μmであることを特徴とする薄膜。
【請求項8】
請求項7に記載の薄膜において、皮膚に貼付することを特徴とする皮膚の不均一性補正用薄膜化粧料。
【請求項9】
貼付直前に水溶性高分子膜を溶解除去し、得られた基材膜を皮膚に貼付し、長時間維持することを特徴とする、請求項8に記載の薄膜化粧料の使用方法。
【請求項10】
請求項8に記載の薄膜化粧料を皮膚に貼付することを特徴とする美容方法。 ・・・ 」

・甲1-2)【0001】?【0011】
「 【0001】 本発明は粉末担持薄膜に関し、特に、取り扱い性に優れながら、非常に薄い粉末担持薄膜に関する。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は・・・、その解決すべき課題は、顔に貼っても違和感がないくらい薄く、昼夜問わず長時間使用することのできる薄膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが前記課題に鑑み鋭意研究した結果、粉末を担持させた厚さ10?500nmの基材膜と、水溶性高分子膜と、を積層している薄膜は、貼付直前に水溶性高分子膜を溶解除去して用いることにより、取り扱い性に優れながら、非常に薄い薄膜が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。 ・・・
【発明の効果】
【0011】
本発明にかかる薄膜は、粉末を担持させた厚さ10?500nmの基材膜と、水溶性高分子膜と、を積層している薄膜であって、取り扱い性に優れながら、非常に薄い薄膜を提供することができる。 」

・甲1-3)【0014】?【0015】
「 【0014】 本発明に用いられる粉末は、特に限定されず、任意の粉末を用いることができる。粉末としては、例えば、無機粉末(例えば、タルク、カオリン、雲母、絹雲母(セリサイト)、白雲母、金雲母、合成雲母、紅雲母、黒雲母、パーミキュライト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、マグネシウム、シリカ、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム(焼セッコウ)、リン酸カルシウム、弗素アパタイト、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー、金属石鹸(例えば、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム)、窒化ホウ素等);有機粉末(例えば、ポリアミド樹脂粉末(ナイロン粉末)、ポリエチレン粉末、ポリメタクリル酸メチル粉末、ポリスチレン粉末、スチレンとアクリル酸の共重合体樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、ポリ四弗化エチレン粉末、セルロース粉末等);無機白色顔料(例えば、酸化亜鉛等);無機赤色系顔料(例えば、チタン酸鉄等);無機紫色系顔料(例えば、マンゴバイオレット、コバルトバイオレット等);無機緑色系顔料(例えば、酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト等);無機青色系顔料(例えば、群青、紺青等);パール顔料(例えば、酸化チタンコーテッドマイカ、酸化チタンコーテッドオキシ塩化ビスマス、酸化チタンコーテッドタルク、着色酸化チタンコーテッドマイカ、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔等);金属粉末顔料(例えば、アルミニウムパウダー、カッパーパウダー等);ジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機顔料(例えば、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色228号、赤色405号、橙色203号、橙色204号、黄色205号、黄色401号、及び青色404号などの有機顔料、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色227号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、緑色3号及び青色1号等);天然色素(例えば、クロロフィル、β-カロチン等)等が挙げられる。
【0015】
本発明にかかる薄膜を皮膚の不均一性補正用薄膜化粧料として用いる場合、粉末は、屈折率1.5?3.0、平均粒子径1?10μmの粉末であることが好ましい。このような粉末としては、例えば、顔料級酸化チタン、ポリメタクリル酸メチル等の粉末が挙げられる。
本発明において、皮膚の不均一性とは、皮膚上のあらゆる瑕疵のことであり、色彩上の瑕疵(しみ、ほくろ、あざ、くま等)や凹凸の瑕疵(しわ、ニキビ跡等)のいずれの瑕疵のことも示す。 」

・甲1-4)【0016】?【0017】
「 【0016】
基材膜の材料は、特に限定されないが、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、あるいはこれらの共重合体を用いることが好ましい。 ポリ乳酸は、生分解性樹脂と呼ばれ、堆肥の中では、1週間で二酸化炭素と水に分解されることが知られており、環境配慮のために、注目を集めている。また、ポリ乳酸は、トウモロコシやサツマイモなどの植物由来原料から大量生産可能でコストが安いため、有用である。
【0017】
本発明の基材膜(粉末担持基材膜)は、厚さ10?500nmで作製することが必要である。また、基材膜は厚さ30?200nmで作製することが好ましく、50?100nmで作製することが特に好ましい。厚くなりすぎると、適用する部分に違和感が生じてしまい、薄膜化粧料として用いる場合、汗や皮脂を通さないために、長時間皮膚に貼り付けておくことができなくなる。 」

・甲1-5)【0019】
「 【0019】
また、粉末を担持させた基材膜の作製方法は、任意の方法で行うことができる。例えば、粉末を基材膜材料に分散させた分散液を得た後、スピンコーティング法、(マイクロ)グラビア法、あるいはスプレーコーティング法等に用いられる基板に、該分散液を滴下する方法や、基材膜をスピンコーティング法、(マイクロ)グラビア法、あるいはスプレーコーティング法等により作製後、粉末含有溶液を滴下・乾燥させる方法等が挙げられる。」

・甲1-6)【0020】?【0021】
「 【0020】
本発明にかかる薄膜は、上記粉末を担持させた基材膜の他に、水溶性高分子膜を積層したものである。粉末担持基材膜のみでは、薄すぎて作製後の剥離等が難しく、取り扱い性も悪いが、水溶性高分子膜を積層することで、取り扱い性に優れた薄膜を得ることができる。
水溶性高分子膜の厚さは特に限定されないが、1?500μmが好ましい。
【0021】
水溶性高分子は特に限定されないが、ポリビニルアルコールまたはその誘導体、ポリエーテルまたはその誘導体、ポリサッカライド類、高分子電解質あるいはその塩が好ましい。
ポリビニルアルコールはポリ酢酸ビニルを加水分解して得られるもので、ビニルアルコールの直鎖重合物である。ポリビニルアルコールの分子量は、特に限定されないが、分子量2,000?10,000のポリビニルアルコールを用いることが好ましい。 」

・甲1-7)【0022】?【0023】
「 【0022】
本発明の薄膜は、皮膚に貼付する皮膚の不均一性補正用薄膜化粧料であることが好ましい。
薄膜化粧料の使用方法としては、貼付直前に水溶性高分子膜を溶解除去し、得られた基材膜を皮膚に貼付し、長時間維持することが好ましい。水溶性高分子膜は、例えば、水に浸漬させることで溶かし、皮膚に貼付することで皮膚の不均一性を補正することができる。
水溶性高分子膜を溶解することで、粉末を担持させた非常に薄い基材膜のみを、皮膚に貼り付けることができる。
なお、本発明において、長時間とは、5時間以上のことをいう。
【0023】
本発明にかかる皮膚の不均一性補正用薄膜化粧料は、貼り付け後に違和感がないため、夜ないし就寝前に素肌に短時間用いられる従来のパック化粧料としてではなく、日中用の薄膜化粧料として、乾燥等の気になる部分に貼り付け後に、任意の化粧料により化粧をして外出することができる。
なお、日中用の薄膜化粧料として用いた場合、任意のメイク落としや洗顔料により、通常の化粧料を落とす際と同時に、薄膜化粧料を落とすことができる。 」

・甲1-8)【0024】?【0025】
「 【実施例】
【0024】
・薄膜作製方法1
全ての操作は、クリーンルーム(クラス10,000)内にスピンコーター(Opticoat MS-A 150、MIKASA)を設置して行った。
シリコン基板(KST World社製)を4cm×4cmに切り取り、SPM(H2SO4/H2O 2.3:1(v/v))に120℃にて10分間浸漬した後、イオン交換水(抵抗率 18MΩcm)にて洗浄した。この基板をスピンコーターに設置した。ポリL乳酸ジクロロメタン溶液(Mw:100,000、ポリサイエンス社製、10mg/mL)溶液に、酸化チタン被膜微粒子7μmを分散させ、最終濃度を1、5、10、25、50、250、500mg/mLに調製した。スピンコーター上の基板にこの分散液を500μL滴下し、スピンコート(4000rpm、20秒)を行った。得られた膜を高精細クイックマイクロスコープ(VH-5000、キーエンス社製)にて観察したところ、粉末が均一に分散した粉末担持基材膜が製膜されていることが観察された(図1)。
上記のようにして得られた各粉末担持基材膜の厚さを原子間力顕微鏡(キーエンス社製)で測定したところ、60nmであった。
【0025】
この粉末担持基材膜の表面にポリビニルアルコール水溶液(以下PVA、Mw:22,000、関東化学社製、100mg/mL)を0.5mL滴下して乾燥(80℃、30分)させてPVAフィルムを粉末担持基材膜上に形成させ、薄膜を得た。この状態で基板から薄膜(PVAフィルムに支持された粉末担持基材膜)を剥離させることができる。 」

・甲1-9)【0026】?【0029】
「 【0026】
・薄膜作製方法2
シリコンウェーハ(4cm×4cm)上に100mg/mL PVAを滴下してスピンコート(4000rpm、20秒)し、フィルムを形成させた。その上に酸化チタン被覆微粒子をその濃度が250mg/mLあるいは500mg/mLとなる様に分散させたポリL乳酸ジクロロメタン溶液をスピンコート(4000rpm、20秒)し、乾燥(80℃、90秒)させた。
基板ごと水中に浸漬させて最下層のPVAフィルムを溶解させると、粉末担持基材膜が基板から剥離し、粉末担持基材膜が得られた(図2、図3)。
【0027】
上記の薄膜作製方法2により得られた薄膜(粉末濃度:250mg/mL)について、拡散透過光の測定を行った。結果を図4に示す。なお、図中の既存品は、弊社毛穴の目立ち抑制商品(エリクシール シュペリエル ポアケアエッセンス)である。
図4によれば、ぼかし効果に関わる拡散透過率は既存品よりやや低いが、隠ぺい力に関わる全透過率は既存品より高いことがわかる。本発明の薄膜は、全透過率が非常に高いことから、皮膚に貼付時には、素肌に近く、白浮きがないけれども、ぼかし効果を有していることが明らかになった。
【0028】
実際に、上記作製方法で得られた薄膜(粉末濃度:500mg/mL)を、皮膚に貼付する前後の写真を図5に示す。すなわち、図5の(A)は膜貼付前、(B)は膜貼付後(図中点に囲まれた四角形が貼付部分)の写真である。
また、従来のクリームタイプのしわ改善用美容液(酸化チタン濃度:8mg/mL)を塗布する前後の写真を図6に示す。すなわち、図6の(A)は美容液塗布前、(B)は美容液塗布後(図中円に囲まれた部分)の写真である。
【0029】
図5および図6によると、本発明にかかる皮膚の不均一性補正用薄膜化粧料は、従来のしわ改善用美容液と比較しても非常に優れた皮膚の不均一性補正効果を有することがわかる。 」

(2)甲2

・甲2-1)特許請求の範囲
「 【請求項1】 生分解性ABAまたはBABタイプのトリブロックポリマーであって、前記ABAトリブロックは、式:
[化1]
PL(G)_(z-1) A-PEG-PL(G)_(z-1) A
を有し、前記BABトリブロックは、式:
[化2]
PEG-PL(G)_(z-1) A-PEG
[式中、・・・]を有し、前記ブロックコポリマーが約2000?4990の重量平均分子量を有しかつ逆熱的ゲル化特性を有するトリブロックポリマー。 」

・甲2-2)【0001】
「 【0001】
本発明は、疎水性ブロックの重量%濃度が高い水溶性低分子量感熱生分解性ブロックコポリマー、および薬剤を非経口、眼、局所、経皮、膣、口腔、経粘膜、肺、経尿道、直腸、鼻、口、または耳投与するためのそれらの使用に関する。本発明は、以下に詳しく記すポリ(ラクチド-co-グリコリド)またはポリ(ラクチド)およびポリエチレングリコールブロックに基づく感熱生分解性トリブロックポリマーの使用によって可能となる。・・・ 」

・甲2-3)【0003】
「 【0003】
薬剤添加ポリマー製剤および投与形態は・・・。このポリマーの重要な性質は生分解性であり、・・・。一般に、生分解性のインプラント可能な調整放出製剤は、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、またはグリコール酸と乳酸とのコポリマーのような固体ポリマーから製造される。これらのポリマーは疎水性であるため、これらの物質を用いる薬剤添加および製剤製造には有機溶媒、例えば塩化メチレン、クロロホルム、酢酸またはジメチルホルムアミドが必要である。・・・ 」

(3)甲3

・甲3-1)特許請求の範囲
「 【請求項1】 30℃以下の温度で水溶性である繊維を含む少なくとも1枚のシートの形の担体、および 20℃から30℃の温度の水中で、30秒未満で膨潤する少なくとも1つの水溶性ゲル化剤を含有する、担体に担持された組成物、を含む化粧用または外皮用物品。
・・・ 」

・甲3-2)【0001】
「 【0001】
本発明は、水溶性担体およびその担体によって担持されている組成物を含むパッチ、ならびに特に化粧品分野におけるそれらの使用に関する。 」

・甲3-3)【0008】
「 【0008】
「化粧用または外皮用物品」という表現は、この担体によって担持されている組成物を含む固体の担体を含有する化粧用または外皮用製品を意味するものとする。この物品は、特に湿潤して皮膚に貼付されるパッチを構成することができる。 」

・甲3-4)【0040】
「 【0040】
・・・、この担体は、完全に水溶性繊維のシートからなっていてもよく、または水溶性繊維と不溶性繊維の混合物を含むシートからなっていてもよく、その不溶性繊維は、本発明の定義によれば、30℃以下の温度で水不溶性である繊維である。不溶性繊維を有することにより、不溶性繊維が角質剥離性配合物を構成して、熱的効果を備えると同時にスクラブ製品である製品とすることができる。 」
・甲3-5)【0048】
「 【0048】
繊維のシートが不溶性繊維を含有しているとき、その不溶性繊維は、不溶性繊維として通常使用される任意の材料から形成可能であり、例えば、絹、木綿、羊毛、亜麻、特に木材、野菜または藻類から抽出されたセルロース、ポリアミド(ナイロン(登録商標))、ポリ乳酸、変性セルロース(レーヨン、ビスコース、アセテート、特に酢酸レーヨン)、・・・であり得る。・・・ 」

(4)甲4

・甲4-1)特許請求の範囲
「 【請求項1】
- 30℃以下の温度で水溶性の繊維を含む少なくとも1枚のシートの形態の支持体であって、密度が0.1g/cm^(3)以下である前記支持体と、
- 前記支持体に担持され、熱効果を有する少なくとも1種の化合物を含有する組成物とを含む化粧用または皮膚科用物品。
・・・ 」

・甲4-2)【0001】
「 【0001】
本発明は、少なくとも1つの水溶性の支持体と、吸熱性または発熱性反応を有する少なくとも1種の化合物とを含む熱効果を有する化粧用物品に関する。 」

・甲4-3)【0034】
「 【0034】
よって、本発明は、熱効果を有する化粧品のパッケージおよび配合物、ならびに例えば皮膚、粘膜、口もしくは毛髪の衛生用品もしくはケア用品としての、またはメイクアップ製品としてのそれらの使用の新たな可能性を提供する。 」

・甲4-4)【0044】
「 【0044】
支持体の繊維は一般に交錯して繊維のシートを形成している。上記の通り、「水溶性の繊維を含むシート」とは、水溶性の繊維のみで構成されていることができるシート、または溶解性の繊維の方が不溶性の繊維よりも多い量で、水溶性の繊維および非水溶性の繊維の両方を含むことができるシートを意味する。・・・。よって、支持体は溶解性の繊維のシートのみで構成されていることができ、または溶解性の繊維と不溶性の繊維の混合物を含むシートで構成されていることができ、不溶性の繊維とは、本発明で定義した通り、30℃以下の温度で水溶性でない繊維である。・・・ 」

・甲4-5)【0052】
「 【0052】
繊維のシートが不溶性の繊維を含有する場合、不溶性の繊維は不溶性の繊維として通常使用される任意の材料であることができ、例えば、絹、綿、羊毛、亜麻、特に羊毛、野菜もしくは藻類から抽出されたセルロース、ポリアミド(Nylon(登録商標))、ポリ乳酸、修飾セルロース(レーヨン、ビスコース、アセテート、特にレーヨンアセテート)、・・・であってよい。・・・ 」

(5)甲5

・甲5-1)特許請求の範囲
「 (1) 二酸化チタンの粒子表面がへマタイト、非晶質の含水酸化鉄からなる群から選択された少なくとも一つによって実質的に均一に被覆されており、
そして、色調における色相(H)、明度(V)及び彩度(C)が、マンセル色票系で表現した場合に下記式
0YR≦H≦8.5YR
4.5≦V≦8.5
2≦C≦7
及びC≦16.75-1.5V
の条件を満足し得る被覆顔料を、配合してなる皮膚化粧料。
・・・ 」

・甲5-2)2頁左上欄1?6行
「 本発明は二酸化チタンの粒子表面がへマタイト(α-Fe_(2)O_(3))、非晶質の含水酸化鉄(Fe_(2)O_(3)・nH_(2)O)の少なくとも一つによって実質的に均一に被覆されている肌色系統の有色顔料の配合によって改良された皮膚化粧料(とくにメークアップ化粧料、日焼け止め化粧料等)に関する。 」

・甲5-3)3頁左上欄14行?右上欄3行
「 本発明は、一般に行なわれている白色、赤色、黄色および黒色顔料の混合により調色するメークアップ化粧料又は日焼け止め化粧料で生じる色分かれ、外観色と塗布色の不一致性、塗布後の色くすみなどの諸問題を解決し、製造(調色、処方設計)しやすく、かつ広範囲の色調の自然な仕上がり効果、日焼け止め効果を有する皮膚化粧料(とくにメークアップ化粧料および日焼け止め化粧料)を提供することを目的としている。 」

・甲5-4)4頁左上欄15行?右欄17行
「 このように特異、良好な本発明の被覆顔料は次のような方法で容易に製造することができる。その製造法としては、水溶性鉄塩(塩化第一鉄、硫酸第一鉄、硝酸第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄等)の水溶液(通常0.1モル/l以下の水溶液)中に前記の二酸化チタン粉末(平均粒径は約0.01?1μm)を均一分散せしめた後、攪拌下このスラリーに酢酸ナトリウムの水溶液(1N以下の水溶液)を徐々に加え、PHを3?5とし次いで60℃以上の温度に加熱して鉄塩を加水分解することによって、非晶質の含水酸化物を前記二酸チタンの粒子表面に選択的に沈澱吸着(析出)せしめ、そしてスラリーの外観(色)が変化(変色)した時点でアルカリ(例えば苛性ソーダ、苛性カリ等のアルカリ金属水酸化物)の水溶液を添加して系(スラリー)のPHを加熱下に約8に調整することによって沈着皮膜の凹凸の平滑化、均一化及び安定化(皮膜状被覆層の固定化により剥離脱落を防止し、かつPHの変化時に起りやすい再溶解防止)せしめ、・・・残渣(被覆顔料)を水洗後、乾燥するかまたは更に焼成して粉砕する、この製造方法が特に好ましい。 」

・甲5-5)6頁左下欄18行?右欄5行
「 第四の特徴は本発明で使用する被覆顔料を日焼け止め化粧料に配合するとすぐれた日焼け止め効果を示すことである。その理由の第一は本被覆顔料と同色混合顔料(二酸化チタン、赤、黄、黒色酸化鉄の混合により得られる)とを比較すると顔料中の二酸化チタン含有比をより多くできることである(実施例4、比較例5参照)。・・・ 」

(6)甲6

・甲6-1)特許請求の範囲
「 1. TiO_(2)ヒドロゲルにおいて、該TiO_(2)ヒドロゲルは無定形TiO_(2)中に約20%?約90%のアナターゼ結晶を含有してなる固体を約20%?約60%含有してなり、且つ約3nm?約10nmの平均結晶領域寸法を有することを特徴とするTiO_(2)ヒドロゲル。
・・・
6. 局所組成物において、(a)(1)約3nm?約10nmの平均結晶領域寸法を有する無定形TiO_(2)中に約20%?約90%のアナターゼ結晶を含有してなる固体を約20%?約60%含有してなるTiO_(2)ヒドロゲル;及び(2)約20%?約90%がアナターゼ形態で、約50nm?約150nmの粒子寸法を有するTiO_(2)粒子から選択される無定形TiO_(2)のアナターゼ結晶を活性成分として約1%?約15%;及び(b)化粧品学的に許容できる局所キャリヤーを含有してなることを特徴とする局所組成物。
・・・ 」

・甲6-2)4頁7行?5頁8行
「 発明の背景
サンスクリーンに使用される紫外線吸収成分には2種の基本的なタイプがある。 (1)紫外線を吸収して熱エネルギーに変換する有機化合物。・・・
・・・
(2)入射紫外線光のエネルギーに相当するエネルギーギャップ(即ち、バンドギャップ)を有する無機化合物。紫外線は吸収及び/または散乱される。該無機物質の例は、酸化亜鉛、カオリンのような粘土類等を包含する。これらは通常安定であり且つ毒性はなく、通常大型の粒子よりなり、そのために紫外線を吸収及び/または散乱する所望の機能に加えて可視光線も散乱する。・・・
TiO_(2)は明るい色調であり、白色の無機物質である。サンスクリーンとして化粧品に使用する場合、無機物質に付随する光沢のない皮膚の外観や皮膚の損色がこれまで証明されている。TiO_(2)はルチル型及びアナターゼ型の結晶形態または非晶質形態(即ち、無定形)を含む種々の形態で存在することができる。
TiO_(2)の最も普通の結晶形態はルチル型である。ルチル型TiO_(2)は天然に見られ、10%までの鉄を含有していることがある。この形態のTiO_(2)はしばしは顔料として使用され、主としてその高屈折率及び青味がかった白色(bulish color)を与えるものとして知られている。高屈折率のために、精製されたルチル型TiO_(2)は塗料及び被膜中の主要な白色隠蔽顔料のひとつである。この高屈折率は紫外線及び可視光線から皮膚を保護するために有用であるが、皮膚へ塗布した際に水おしろいを塗ったような外観を与える。 」

(7)甲7

・甲7-1)特許請求の範囲
「 【請求項1】 フィラー、脂肪バインダー、及び組成物の全重量に対して少なくとも2重量%の少なくとも1つの微小顔料を含有する化粧品組成物であって、
- 微小顔料とフィラーとを組み合わせた顔料の容積濃度(CPV)が、顔料の臨界容積濃度(CCPV)以下であり、
- フィラーの容積 Vf が、微小顔料の容積 Vn の2倍以上であることを特徴とする組成物。
・・・
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の組成物の、均質な色のメークアップ、強い着色および/または透明性のあるメークアップを行うための使用。 」

・甲7-2)【0001】?【0006】
「 【0001】
【発明の属する技術分野】本発明の主題は、微小粒子(ナノ粒子:nanoparticles)の顔料、フィラー、および脂肪バインダーを含有する新規の化粧品組成物で、光学および適用特性並びに紫外線放射からの保護特性が改善されている組成物にある。
【0002】
【従来の技術】顔料微小粒子、本質的には二酸化チタン微小粒子と、任意成分としてフィラーを含有する化粧品組成物[油または水が媒体の分散体、すなわち油中水型(W/O)または水中油型(O/W)のエマルション]は、日本国特許出願第06199636号、日本国特許出願第072615号、および欧州特許出願第523294号公報により公知である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】二酸化チタン(TiO_(2))の微小粒子を使用するかどうかは、通常の大きさの二酸化チタンの白色化特性に煩わされないで紫外線(UV)に対して良好な保護作用を得ることができるかによる。他の点では、微小粒子顔料をベースとした組成物は、顔料の分散性が乏しいために、通常の大きさの顔料をベースとした組成物よりも不均質であり、その結果、皮膚へ広げることがより困難であった。・・・
【0004】先行技術の公知組成物には、次のように欠点がないわけではなかった:微小粒子の量が多いと、特に紫外線に対して高い保護効果を有する製品の場合、若干の白色化が観察される。・・・
【0005】良好な分散性を有する微小粒子の顔料をベースとした組成物は、・・・、既に公知であるが、これらの組成物においては、経時的に微小粒子顔料の再凝集化が観察され、その結果、組成物を皮膚に展伸する際の感触が荒くなり、製品の美的特性の経時的な低下が認められた。
【0006】本発明の目的は、皮膚に適用したときに白色化がなく、完全に透明で、有機遮蔽剤を添加する必要なく、十分なUV遮蔽特性を有し、従来の組成物よりもより良好に分散し、この性質が、これらの組成物の優れた安定性によって経時的に維持される、微小粒子顔料ベースの新規化粧品組成物を提供することである。 」

(8)甲8

・甲8-1)特許請求の範囲
「 1.一般式( I )

〔式中、・・・〕で表されるパーフルオロアルキルシランで粉体を処理して得られる撥水撥油性化粧料用粉体。
2.請求項1記載の粉体を含有することを特徴とする化粧料。 」

・甲8-2)1頁左下欄下から1行?右下欄2行
「 本発明は、撥水撥油性に優れ、化粧崩れがなく、肌上での伸びがよく、使用感触の良好な化粧料用粉体及びこの粉体を含有する化粧料に関する。 」

・甲8-3)3頁左上欄下から11行?右上欄1行
「 また、本発明において上記パーフルオロアルキルシランで処理される粉体は、通常化粧料として用いられるものであれば特に限定されず、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛等の紫外線吸収顔料:ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、群青、亜鉛華、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、マイカ、セリサイト、タルク、シリカ、カオリン、水酸化クロム、カーボンブラック等の無機顔料;ナイロン、ポリエチレン、シルクパウダー等の有機顔料が挙げられる。この粉体の大きさ及び形状は特に制限されないが、直径0.01?80μmの平板上又は球状のものが好ましい。 」

(9)甲9

・甲9-1)特許請求の範囲
「 1.一般式(I)

〔式中、・・・〕で表されるパーフルオロアルキルエポキシ化合物で粉体を処理して得られる撥水撥油性化粧料用粉体。
2.請求項1記載の粉体を含有することを特徴とする化粧料。 」

・甲9-2)2頁第1欄11?14行
「 【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、撥水撥油性に優れ、化粧崩れがなく、肌上での伸びがよく、使用感触の良好な化粧料用粉体及びこの粉体を含有する化粧料に関する。 」

・甲9-3)3頁第3欄23?33行
「 ・・・。また、本発明において上記パーフルオロアルキルエポキシ化合物で処理される粉体は、通常化粧料として用いられるものであれば特に限定されず、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛等の紫外線吸収顔料;ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、群青、亜鉛華、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、マイカ、セリサイト、タルク、シリカ、カオリン、水酸化クロム、カーボンブラック等の無機顔料;ナイロン、ポリエチレン、シルクパウダー等の有機顔料が挙げられる。この粉体の大きさ及び形状は特に制限されないが、直径0.01?80μmの平板状又は球状のものが好ましい。・・・ 」

(10)甲10

・甲10-1)特許請求の範囲
「 【請求項1】下式Aおよび/または下式Bで表される化合物からなる化粧用粉体処理剤。ただし、式A・・・。式B・・・。
【化1】
(A^(f1)-B^(1)-)_(a)(R^(1))_(b)Si(NCO)_(4-a-b) ・・・ 式A
(OCN)_(3-c-d)(A^(f2)-B^(2)-)_(c)(R^(2))_(d)Si-Y-Si(R^(3))_(g)(-B^(3)-A^(f3))_(e)(NCO)_(3-e-g) ・・・式B
・・・
【請求項4】請求項1、2または3の化粧用粉体処理剤により処理された粉体からなる化粧用粉体。
【請求項5】請求項4の化粧用粉体を含有する化粧料。 」

・甲10-2)【0054】
「 【0054】本発明の化粧用粉体処理剤により処理される化粧用粉体は、有機粉体、無機粉体の種々の粉体が挙げられ、顔料粉体が好ましい。化粧用粉体の具体例としては、酸化チタン、酸化亜鉛等の紫外線吸収顔料、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、群青、亜鉛華、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、シリカ、セリサイト、カオリン、水酸化クロム、カーボンブラック等の無機顔料、ナイロン、ポリエチレン、シルクパウダー、デンプン等の有機顔料が挙げられる。粉体の大きさは特に制限されず、直径0.01?80μmのものが好ましい。・・・ 」

(11)甲11

・甲11-1)544頁19行?545頁5行
「 〔白色顔料〕
酸化亜鉛
工業品は金属亜鉛を強熱して酸化するか、あるいは炭酸亜鉛を熱分解して製造する。被覆力は酸化チタンに劣るが、紫外線遮断作用は酸化チタンをはじめほかの粉体原料に比較して高い。しかし、酸化チタンも微粒子化、薄片化、あるいは複合により紫外線遮断効果が高まり、優劣つけがたくなっている。被覆力がすぐれているので、白色顔料として、おしろい類、カラミンローションに用いられる。最近では、微粒子?超微粒子酸化亜鉛が紫外線遮断効果が大であるため、単独または、ポリマーや無機粉体と複合化して、サンスクリーン化粧品に応用されるようになった。 」

・甲11-2)545頁20行?546頁5行
「 酸化チタン
イルメナイト鉱を原料として、酸処理後、抽出などを行い化学処理をして製造される白色顔料である。被覆力、着色力にすぐれている。酸化チタンは酸化亜鉛より被覆力がすぐれ、紫外線遮断作用は微粒子化でより高くなり、サンスクリーン剤の主役である。皮膚に対し収れん性がなく、生理的に不活性である。酸化チタンは重要な原料として多用されているが、さらに物性を向上させるために表面をケイ酸や酸化アルミニウムなどで処理したものが使用されている。白色顔料としてクリーム、乳液、メイクアップ製品に広く使用され、紫外線遮断剤として日焼け止めクリームに使用される。」

・甲11-3)555頁10?17行
「 パーフルオロアルキルシリル化マイカ
無機顔料であるマイカ(雲母)の表面を有機物で疎水性を有するパーフルオロアルキル基で被覆した機能性顔料。メイクアップに使用される酸化チタン、酸化鉄、雲母類など無機顔料は、表面が親水性であるため水や汗に弱い。撥水性の本物質は撥水のみならず撥油性を顔料に与え、ファンデーションなどのメイクアップ類を汗や皮脂によるくずれから防止する。 」

(12)甲12

・甲12-1)特許請求の範囲
「 【請求項1】 ポリ乳酸骨格が官能基に由来する結合種を介して互いに繋がっている、乳酸系重合体。
・・・
【請求項6】
請求項1から5までのいずれかに記載の乳酸系重合体を含む、乳酸系組成物。
【請求項7】
造膜成分として、加水分解性を有しない単量体と乳酸マクロモノマーとの共重合体を含み、前記乳酸マクロモノマーの共重合割合が5?95重量%である、ことを特徴とする、環境適応型コーティング剤。
・・・
【請求項15】
請求項7から14までのいずれかに記載の環境適応型コーティング剤を表面にコーティングしてなる、コーティング物。 」

・甲12-2)【0001】?【0006】
「 【技術分野】
【0001】
本発明は、地球環境の汚染に配慮した乳酸系重合体およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、石油由来の成分を用いる種々の分野において、環境上の問題点が指摘されていた。以下では、これを、コーティング剤の例について見る。
・・・
そこで、上記環境への影響を配慮した技術として、従来、植物由来のポリマーを用いたコーティング物が提案されている。・・・
・・・
【0003】
このような植物由来のポリマーとしてポリ乳酸系樹脂を用いたコーティング剤が知られている(特許文献1参照)。
しかし、従来のポリ乳酸系樹脂は、上記利点を有するものの、加水分解性が高く、コーティング剤としての実用性が低いという問題があった。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、耐加水分解性に優れる乳酸系重合体とその用途を提供することにあり、その中心とするところは、コーティング剤の使用による環境への負荷を軽減するとともに、環境非適応の従来のコーティング剤と同等の機能をも発揮させることのできる、環境適応型コーティング剤およびそのコーティング物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った。 その結果、ポリ乳酸骨格が官能基に由来する結合種を介して互いに繋がっている乳酸系重合体であれば、ポリ乳酸骨格以外の構造部分は加水分解を受けないので、ポリ乳酸構造のみの場合に比べて、全体として加水分解を受ける構造の比率が減り、耐加水分解性が向上することを見出した。・・・ 」

・甲12-3)【0064】
「 【0064】
・・・
本発明にかかる乳酸系重合体、あるいは、これを含む乳酸系組成物の用途としては、上述したコーティング剤の用途以外にも、例えば、化粧剤、繊維加工処理、フィルム加工処理、臨床試験診断薬担体、電子写真現像剤などの用途に適用できる。 」

(13)甲13

・甲13-1)特許請求の範囲
「 【請求項1】 プロスタミド成分、およびインプラントを眼に配置してから少なくとも約1週間、治療有効量のプロスタミド成分の放出を持続させるのに有効な速度で薬剤を放出する生分解性ポリマーマトリックスを含んでなる、生分解性眼内インプラント。
・・・ 」

・甲13-2)【0001】
「 【0001】 本発明は、一般に、患者の眼を治療する器具および方法に関し、特に、眼圧を低下または少なくとも維持することにより高眼圧症を治療するために、インプラントを配置した眼に治療薬の長時間放出を与える眼内インプラント、ならびに、そのようなインプラントの製造法および使用法に関する。 」

・甲13-3)【0022】?【0023】
「 【0022】
・・・眼内インプラントは、プロスタミド成分および生分解性ポリマーマトリックスを含んで成る。・・・
【0023】
上記インプラントの生分解性ポリマー成分は、少なくとも1種の生分解性ポリマーが64キロダルトン(kD)未満の分子量を有するポリ乳酸ポリマーである生分解性ポリマーの混合物であってよい。加えてまたは代えて、上記インプラントは、ポリ乳酸の第一生分解性ポリマーと、異なるポリ乳酸の第二生分解性ポリマーとの混合物を含んでもよい。更に、上記インプラントは、各生分解性ポリマーが約0.2dl/g?約1.0dl/gの範囲の固有粘度を有する異なる生分解性ポリマーの混合物を含んでもよい。 」

・甲13-4)【0059】?【0064】
「 【0059】
インプラントに使用される好適なポリマー材料または組成物は、眼に適合性、即ち生体適合性であり、それによって、眼の機能または生理機能に実質的障害を生じない材料を包含する。そのような材料は、好ましくは少なくとも部分的に、より好ましくは実質的に完全に生分解性または生体内分解性である。
【0060】
有用なポリマー材料の例は、有機エステルおよび有機エーテルから誘導され、かつ/またはそれらを含有する材料であって、分解した際に、生理学的に許容される分解生成物を生じる材料(モノマーを含む)であるが、それらに限定されない。・・・
・・・
【0061】
他に関心がもたれるものは、ヒドロキシ脂肪族カルボン酸のポリマー(ホモポリマーまたはコポリマー)、および多糖類である。関心がもたれるポリエステルは、D-乳酸、L-乳酸、ラセミ乳酸、グリコール酸、ポリカプロラクトンおよびそれらの組合せのポリマーを包含する。一般に、L-ラクテートまたはD-ラクテートを使用することによって、ゆっくり侵食されるポリマーまたはポリマー材料が得られ、一方、ラクテートラセミ体を使用することによって、侵食が実質的に促進される。
・・・
【0064】
本発明に使用されるポリマーまたはポリマー材料のいくつかの好ましい特徴は、生体適合性、治療成分との適合性、本発明の薬物送達システムの製造におけるポリマーの使い易さ、少なくとも約6時間の、好ましくは約1日より長い、生理環境における半減期、硝子体の粘度を有意に増加させないこと、および水不溶性を包含しうる。 」

(14)甲14

・甲14-1)特許請求の範囲
「 【請求項1】 a)一般式(I)から(III)のうちの1の化合物から独立に選択される、5から100重量%の1以上のビニルエステルモノマー:
【化1】

(・・・);
b)(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、ビニルピロリドン及びα-オレフィンモノマーから選択される、0から50重量%の1以上のエチレン性不飽和コモノマー;
c)熱開始剤及び光開始剤から選択される、0から10重量%の1以上の重合開始剤;並びに
d)水、低級アルコール、エーテル、ケトン、エステル、アミド及び炭化水素溶媒から選択される、0から95重量%の1以上の溶媒を含む、好ましくはポリビニルアルコールベースの、生分解性、生体適合性、架橋ポリマーの調製用重合硬化性組成物。
・・・
【請求項11】
硬化した状態の、請求項1から10のいずれか1項に記載の組成物からなる、ポリビニルアルコールベースの、生分解性、生体適合性、架橋ポリマー。
【請求項12】
請求項1から10のいずれか1項に記載の組成物を重合させることによる、請求項11に記載のポリビニルアルコールベースの、生分解性、生体適合性、架橋ポリマーの調製方法。
・・・
【請求項28】
生分解性、生体適合性、架橋ポリマー調製用の、請求項1から10のいずれか1項に記載の組成物、又は請求項12から16のいずれか1項に記載の方法における、ビニルエステルモノマーとしての、請求項17から27のいずれか1項に記載の化合物の使用。 」

・甲14-2)【0001】
「 【0001】 本発明は、ポリビニルアルコールベースの生分解性、生体適合性、架橋ポリマーの調製用重合硬化性組成物に関する。 」

・甲14-3)【0002】?【0003】
「 【背景技術】
【0002】
技術水準
長年、ヒト及び動物の生体のためのインプラントとして使用され得、例えば、組織(骨など)用の支持材又は構成材として働き得る、生分解性塑性材料及びそれから作製される成形品を開発するために、医化学の分野において努力がなされてきた。・・・
【0003】
過去には、ポリ乳酸及びポリグリコール酸をベースとするポリマー、並びにポリラクトン及びポリラクタムをベースとするポリマーの使用により、ある程度の成功が達成され得たが、これらのポリマーは、一般に架橋されず、従って、機械的に比較的不安定であり、いくつかの用途においては速く溶解し過ぎる(バルク侵食)。・・・ 」

(15)甲15

・甲15-1)特許請求の範囲
「 【請求項1】 キトサン若しくはキトサン誘導体又はこれらの塩を含む溶液を用いて形成されるA層と、ヒアルロン酸若しくはヒアルロン酸誘導体又はこれらの塩を含む溶液を用いて形成されるB層と、を有し、膜厚が20?280nmである、薄膜フィルム。
【請求項2】
前記A層と前記B層とが交互に積層されたものである、請求項1に記載の薄膜フィルム。
【請求項3】
皮膚貼合用である、請求項1又は2に記載の薄膜フィルム。
【請求項4】
化粧用である、請求項1?3のいずれか一項に記載の薄膜フィルム。 ・・・ 」

・甲15-2)【0008】
「 【0008】
そこで、本発明は、貼付時に目立ちにくく、かつ違和感がなく、接着剤又は粘着剤を使用しなくても貼付することのできる薄膜フィルムを提供することを目的とする。本発明はまた、貼付時に目立ちにくく、かつ違和感がなく、接着剤又は粘着剤を使用しなくても貼付することのできる薄膜フィルムの製造方法を提供することを目的とする。 」

・甲15-3)【0010】
「 【0010】
上記薄膜フィルムは、上記構成を有するため、強靭性(機械的強度)、透明性及び保湿性に優れ、かつ皮膚に対する自己密着性を有する。このため、膜厚が上記範囲内であっても十分な強度を有しており、さらに透明性が高いため、上記薄膜フィルムは、貼付時に目立ちにくく、かつ貼付時の違和感が低減されている。また、皮膚に対する自己密着性を有するため、上記薄膜フィルムは、接着剤又は粘着剤を使用する必要がなく、かぶれや肌荒れを引き起こしにくい。さらに、キトサン等及びヒアルロン酸等は、生分解性又は生体適合性の高い材料であるため、上記薄膜フィルムは皮膚アレルギーを起こしにくいという利点がある。 」

・甲15-4)【0046】
「 【0046】
本実施形態に係る薄膜フィルムの膜厚は、20?280nmである。また、自己密着性、吸水性、乾燥状態での柔軟性等の特性がより優れたものとなることから、50?250nmであることが好ましく、80?200nmであることがより好ましい。 」

(16)甲16

・甲16-1)特許請求の範囲
「 【請求項1】
ポリリジン若しくはポリリジン誘導体又はこれらの塩を含む溶液を用いて形成されるA層と、アルギン酸若しくはアルギン酸誘導体又はこれらの塩を含む溶液を用いて形成されるB層と、を有する薄膜フィルム。
【請求項2】
前記A層と前記B層とが交互に積層されたものである、請求項1に記載の薄膜フィルム。
【請求項3】
皮膚貼合用である、請求項1又は2に記載の薄膜フィルム。
【請求項4】
化粧用である、請求項1?3のいずれか一項に記載の薄膜フィルム。
・・・ 」

・甲16-2)【0010】
「 【0010】
・・・本発明は、貼付時に目立ちにくく、かつ違和感がなく、非動物由来材料を用いて形成される薄膜フィルムを提供することを目的とする。本発明はまた、貼付時に目立ちにくく、かつ違和感がなく、非動物由来材料を用いて形成される薄膜フィルムの製造方法を提供することを目的とする。 」

・甲16-3)【0012】
「 【0012】
上記薄膜フィルムは、上記構成を有しているため、強靭性(機械的強度)、透明性及び保湿性に優れ、かつ皮膚に対する自己密着性を有する。このため、貼付時に目立ちにくく、かつ貼付時の違和感が低減されている。また、ポリリジン等及びアルギン酸等は、非動物由来材料であるため、上記薄膜フィルムは安全性が高い。さらに、ポリリジン等及びアルギン酸等は生分解性又は生体適合性の高い材料であるため、上記薄膜フィルムは皮膚アレルギーを起こしにくいという利点がある。 」

・甲16-4)【0052】
「 【0052】
本実施形態に係る薄膜フィルムの膜厚は特に制限されないが、自己密着性、吸水性、及び乾燥状態での柔軟性等の特性がより優れたものとなることから、1nm?300nmの範囲内であることが好ましく、20nm?250nmの範囲内であることがより好ましく、40nm?200nmの範囲内であることが更に好ましく、60nm?150nmの範囲内であることが更により好ましい。 」

(17)甲17

・甲17-1)特許請求の範囲
「 【請求項1】
基材と、該基材上に形成された薄膜フィルムとを備え、 前記薄膜フィルムが、ポリカチオンを含む溶液を用いて形成されるA層と、ポリアニオンを含み、pHが1.6?5.4である溶液を用いて形成されるB層と、を有する、 基材付き薄膜フィルム。
・・・
【請求項10】
ポリカチオンを含む溶液、又はポリアニオンを含み、pHが1.6?5.4である溶液に基材を接触させて、該基材の表面にポリカチオン又はポリアニオンに由来する層を形成する層形成工程と、
(i)ポリカチオンに由来する層に、ポリアニオンを含み、pHが1.6?5.4である溶液を接触させて、前記ポリカチオンに由来する層上にポリアニオンに由来する層を形成するステップと、
(ii)ポリアニオンに由来する層に、ポリカチオンを含む溶液を接触させて、前記ポリアニオンに由来する層上にポリカチオンに由来する層を形成するステップと、を繰り返す積層工程と、を備える、基材付き薄膜フィルムの製造方法。
・・・ 」

・甲17-2)【0010】
「 【0010】
そこで本発明は、汎用可能な基材付き薄膜フィルム及びその製造方法を提供することを目的とする。 」

・甲17-3)【0023】?【0027】
「 【0023】
〔ポリカチオン〕
・・・
【0024】
ポリカチオンとしては、カチオン性ポリマーが好ましい。・・・
【0025】
カチオン性ポリマーとしては、水の存在下で後述するアニオン性ポリマーとゲル状のポリイオンコンプレックスを形成することができ、そのポリイオンコンプレックスが生体組織接着作用を発揮することができ、生体に対して無害のものが好ましい。また、カチオン性ポリマーとしては、患部の組織が治癒した後に生分解して生体内に吸収されるように、生体吸収性を有する物質であることがより好ましい。
【0026】
カチオン性ポリマーとしては、酸性の水溶液に溶解又は膨潤することが可能な程度の親水性を有し、酸性の水溶液中でカチオン性基がプロトンと結合することにより正電荷を帯びるという特性を有するものが好適に使用される。カチオン性ポリマーとしては、特に1分子中に2個以上のアミノ基を有するポリマーが好ましい。
【0027】
カチオン性ポリマーの好ましい例としては、コラーゲン、ポリヒスチジン、アイオネン、キトサン、アミノ化セルロース等の塩基性多糖類;ポリリジン、ポリアルギニン、リジンとアルギニンとの共重合体等の塩基性アミノ酸の単独重合体及び共重合体;ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリジビニルピリジン等の塩基性ビニルポリマー;並びにそれらの塩類(塩酸塩、酢酸塩等)、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリドが挙げられる。 」

・甲17-4)【0038】?【0042】
「 【0038】
〔ポリアニオン〕
・・・
【0039】
ポリアニオンとしては、アニオン性ポリマーが好ましい。・・・
【0040】
アニオン性ポリマーとしては、水の存在下で上記カチオン性ポリマーとゲル状のポリイオンコンプレックスを形成することができ、そのポリイオンコンプレックスが生体組織接着作用を発揮することができ、生体に対して有害反応の少ないものが好ましい。また、アニオン性ポリマーとしては、患部の組織が治癒した後に生分解して生体内に吸収されるように、生体吸収性を有する物質であることがより好ましい。
【0041】
アニオン性ポリマーとしては、水に溶解又は膨潤することが可能な程度の親水性を有し、水中でアニオン性基のプロトン又は金属イオンが解離することにより負電荷を帯びるという特性を有するものが好適に使用される。アニオン性ポリマーとしては、特に1分子中に2個以上のカルボキシル基又はカルボキシレート基を有するポリマーが好ましい。
【0042】
アニオン性ポリマーの好ましい例としては、アルギン酸、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デキストラン硫酸、ペクチン、サクラン等のカルボキシル基、カルボキシレート基又は硫酸基等のアニオン性基を有する天然の酸性多糖類及びその誘導体;セルロース、デキストラン、デンプン等の天然ではカルボキシル基、カルボキシレート基又は硫酸基等のアニオン性基を有しない多糖類にアニオン性基を結合させて人工的に合成された酸性多糖類及びその誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルデキストラン、カルボキシメチルデンプン、カルボキシメチルキトサン、硫酸化セルロース及び硫酸化デキストラン並びにそれらの誘導体);ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、グルタミン酸とアスパラギン酸との共重合体等の酸性アミノ酸の単独重合体及び共重合体;ポリアクリル酸等の酸性ビニルポリマー;並びにそれらの塩(例えば、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩)が挙げられる。 」

・甲17-5)【0074】?【0077】
「 【0074】
〔薄膜フィルム〕
本実施形態の薄膜フィルムは、ポリカチオンを含む溶液を用いて形成されるA層と、ポリアニオンを含み、pHが1.6?5.4である溶液を用いて形成されるB層と、を有する。また、本実施形態の薄膜フィルムは、A層とB層が交互に積層された交互積層薄膜であることが好ましい。
・・・
【0077】
本実施形態の薄膜フィルムの厚みは特に制限されないが、自己密着性、吸水性、乾燥状態での柔軟性等の特性がより優れたものとなることから、1nm?300nmの範囲内であることが好ましく、10nm?250nmの範囲内であることがさらに好ましく、20nm?200nmの範囲内であることがより好ましい。 」

・甲17-6)【0082】
「 【0082】 本実施形態の薄膜フィルムは、生体接着性を有しており、特にシート状の接着材として好適に用いられる。例えば、細胞、組織、臓器、血管壁、粘膜、角膜、皮膚、毛髪、爪、又は皮膚の接着、肝臓、脾臓等の実質臓器の切開部の接着、腸管、卵管等の吻合、硬膜、胸膜、筋膜、腹膜等の膜の接着、実質臓器からの湧出性出血を止める止血用接着材、縫合時の縫合糸穴からの出血等を止める縫合補助材、肺からの空気漏洩の防止用の接着材等として用いられる。 」


[6-2]申立理由1及び2について(甲1を主引例とする新規性及び進歩性の判断)

1.訂正発明1の「皮膚用自立性美容シート」全体の厚さについて

訂正発明1に係る「皮膚用自立性美容シート」(以下、単に「美容シート」又は「シート」等ということがある)は、上の【第3】の訂正後の請求項1に規定されるとおりのものであるところ、当該請求項1では、次の発明特定事項(i)?(iii):
(i)「少なくとも1種の生体適合性及び/又は生分解性の疎水性ポリマー層を含み、」
(ii)「30?1000nmの厚さを有し、」
(iii)「フェニルベンゾイミダゾールスルホン酸・・・及び、金属酸化物からなる群から選択される少なくとも1種の親水性紫外線遮蔽剤を含む、」
なる事項が並列して記載されているから、これら(i)?(iii)はいずれも、それぞれ独立して後段の「皮膚用自立性美容シート」を限定する事項である、と解するのが自然である。
即ち、訂正発明1においては、「30?1000nmの厚さを有」するのが「疎水性ポリマー層」及び/又は「親水性紫外線遮断剤」であることが規定されているのではなく、それら「疎水性ポリマー層」及び「親水性紫外線遮断剤」を併せ含む「皮膚用自立性美容シート」全体が「30?1000nmの厚さを有し」ていることが規定されているものと解される。
訂正発明1に係るシートを直接又は間接的に引用して規定されている訂正発明2、4?13の各「皮膚用自立性美容シート」についても同様である。

なお、上述のような解釈は、本件特許明細書の例えば次の記載:
「 【0031】
本発明の自立性美容シートは、紫外線遮蔽剤をシート中に含有する。したがって、紫外線遮蔽剤は、直接皮膚に接触できない。そのため、刺激等の使用時の不都合な感触を、日焼け止め剤等紫外線遮蔽剤を含有する化粧料を皮膚上に直接適用する場合と比較して、回避又は低減することができる。更に、本発明の美容シートを皮膚にしっかりと接着させることができ、したがって本発明の美容シートを皮膚から剥がすことは容易ではない。そのため、本発明の美容シートは、長持ちするUV遮蔽効果を提供することができる。本発明の美容シートが水に容易には溶けないため、特に水に不溶なため、UV遮蔽の長持ち効果は、更に強化され得る。更に、本発明の美容シートが紫外線遮蔽剤を一様に又は均一に含有することができるため、消費者にとって、本発明の美容シートを適用することによって一様な又は均一なUV遮蔽効果を受けることは容易である。」(下線は合議体による)
などとも整合するものである。

以上の解釈を踏まえつつ、以下判断する。

2.甲1に記載された発明
甲1における「粉末を担持させた厚さ10?500nmの基材膜」及びその化粧料としての用途に係る記載(甲1-1の請求項1、7?9); 並びに、「基材膜」の材料として「ポリ乳酸」が挙げられ、また実施例の項において「ポリL乳酸」が採用されたことの記載(甲1-1の請求項5、甲1-4、甲1-8?甲1-9); 及び、「粉末」として「酸化チタンコーテッドマイカ」等の各種酸化チタン被覆「パール顔料」を例とする「顔料級酸化チタン」が挙げられ、また実施例の項において「酸化チタン被膜微粒子」が採用されたことの記載(甲1-3、甲1-8?甲1-9);
を併せ踏まえると、甲1には次の発明:
「 粉末を担持させた厚さ10?500nmのポリ乳酸基材膜を含む化粧料であって、粉末が屈折率1.5?3.0、平均粒子径1?10μmの酸化チタン被膜微粒子粉末であり、
水溶性高分子膜が積層された薄膜として作製され、貼付直前に水溶性高分子膜を溶解除去して得られた基材膜を皮膚に貼付して使用する、
皮膚の不均一性補正用化粧料 」
(以下、「甲1発明」ということがある)が記載されているといえる。

3.対比・判断

(1)訂正発明1について
(i)申立理由1(新規性)についての対比・判断
訂正発明1と、甲1発明を対比する。
次の事項ア)?オ):
ア) 甲1発明における「粉末」、即ち「屈折率1.5?3.0、平均粒子径1?10μmの酸化チタン被膜微粒子粉末」は、
・酸化チタンそれ自体が親水性であって紫外線遮断剤として機能する成分であることは、例えば甲11(甲11-2、甲11-3)等の記載にみられるとおり、当業者にとり周知であったと認められ; また、
・本件特許明細書中でも、「無機紫外線遮断剤」について、例えば
「 【0061】
無機紫外線遮蔽剤は、炭化ケイ素、被覆されていても被覆されていなくてもよい金属酸化物・・・から選択されるものでよい。
【0062】
無機紫外線遮蔽剤は、金属酸化物で構成された顔料(一次粒子の平均サイズ:一般に5nm?50nm、好ましくは10nm?50nm)、例えば、すべてそれ自体がよく知られたUV光防護剤である、酸化チタン(非晶質又はルチル型及び/もしくはアナターゼ型の結晶質)、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、又は、酸化セリウムで構成された顔料から選択されることが好ましい。好ましくは、無機紫外線遮蔽剤は、酸化チタン、酸化亜鉛から選択され、より好ましくは酸化チタンである。」(下線は合議体による。以下同様)
とされている;
から、訂正発明1における「金属酸化物」である「親水性紫外線遮蔽剤」に相当すること;
イ) 甲1発明における「ポリ乳酸基材膜」は、「ポリ乳酸」それ自体が生体適合性及び/又は生分解性であり疎水性(不溶性)であることが例えば甲2(甲2-3)、甲3(甲3-5)や甲4(甲4-5)の各記載からみて本件特許出願前当業者にとり周知であったと認められることから、訂正発明1における「生体適合性及び/又は生分解性の疎水性ポリマー層」に相当すること;
ウ) 甲1発明における「粉末を担持させた厚さ10?500nmのポリ乳酸基材膜」は、「貼付直前に水溶性高分子膜を溶解除去して」、即ち、基材又は担体に相当する「水溶性高分子膜」から独立させて「皮膚に貼付して使用する」ものであって、本件特許明細書の次の記載:
「 【0034】
[美容シート]
本発明の美容シートは自立性である。本明細書中の用語「自立性」は、本発明の美容シートをシートの形態とすることができ、基材又は担体の補助なしで独立したシートとして取り扱うことができることを意味する。すなわち、用語「自立性」は、「自己支持性」と同じ意味を持つことができる。 」
により説明されている「自立性」を有するものと認められることから、訂正発明1の「皮膚用自立性美容シート」に相当すること;
エ) 甲1発明においては、「酸化チタン被膜微粒子」粉末は「平均粒子径1?10μm」のものであって「10?500nm」の範囲をはるかに超えていることから、「10?500nm」は「基材膜」それ自体のみの厚さを規定したものであって、これに上記「酸化チタン被膜微粒子粉末」を「担持」させてなるもの全体の厚さを規定したものとは解されないこと;
オ) 甲1発明は、「粉末を担持させた厚さ10?500nmのポリ乳酸基材膜」以外にも「水溶性高分子膜」も含むものであるが、
・訂正発明1も「少なくとも1種の・・・疎水性ポリマー層を含み、・・・少なくとも1種の親水性紫外線遮蔽剤を含む、皮膚用自立性美容シート」と記載されており、「生体適合性及び/又は生分解性の疎水性ポリマー層」及び「親水性紫外線遮蔽剤」以外の構成要素を含むことを排除するものではなく; また、
・訂正発明1を直接又は間接的に引用する従属発明である訂正発明9,10において、甲1発明の「水溶性高分子膜」に相当する構成要素である「基材シート」に接着されてなる皮膚用自立性美容シートの態様が記載されている;
から、この点は相違点にはならないこと;
を併せ踏まえると、両者は
「 少なくとも1種の生体適合性及び/又は生分解性の疎水性ポリマー層を含み、
少なくとも1種の金属酸化物である親水性紫外線遮蔽剤を含む、
皮膚用自立性美容シート 」
の点で一致するが、次の1)?3)の点:
1) 「シート」の「厚さ」について、
・訂正発明1では、「疎水性ポリマー層」及び「親水性紫外線遮断剤」の各厚さ又は粒子径について特段の限定はないが、両者を併せ含む「シート」全体が「30?1000nmの厚さを有し」ている; のに対し、
・甲1発明では、「疎水性ポリマー層」に相当する「ポリ乳酸基材膜」が「厚さ10?500nm」であり、かつ、「親水性紫外線遮断剤」に相当する「酸化チタン被膜微粒子粉末」が「平均粒子径1?10μm」であることの限定はあるものの、当該「ポリ乳酸基材膜」に「酸化チタン被膜微粒子粉末」を「担持」させてなるものが「30?1000nmの厚さ」であることの限定はない;
2) 「少なくとも1種の親水性紫外線遮蔽剤」成分の種類が、
・訂正発明1では「フェニルベンゾイミダゾールスルホン酸、テレフタリリデンジカンファースルホン酸、フェニルジベンゾイミダゾールテトラスルホン酸二ナトリウム、及び、金属酸化物からなる群から選択される」; のに対し、
・甲1発明では「屈折率1.5?3.0、平均粒子径1?10μmの酸化チタン被膜微粒子粉末」である;
3) 「少なくとも1種の生体適合性及び/又は生分解性の疎水性ポリマー層」が、
・訂正発明1では「少なくとも1種のカチオン性ポリマー及び少なくとも1種のアニオン性ポリマーを含む」; のに対し、
・甲1発明では「ポリ乳酸」である;
(以下、1)?3)を順に「相違点1」?「相違点3」ということがある)において、相違する。

そうすると、訂正発明1は甲1発明と同一であるとはいえない。
したがって、訂正発明1は、甲1に記載された発明ではない。

(ii)申立理由2(進歩性)についての対比・判断
以下、上記相違点1?3について検討する。

(ii-1)(相違点1及び2について)
事案に鑑み、まず、相違点1及び相違点2についてまとめて検討する。

ア) 甲1には、甲1発明において、酸化チタン被膜微粒子粉末をポリ乳酸基材膜に担持せしめてなるものの厚さを30?1000nmの範囲内とすることについて、具体的に記載乃至示唆する記載を見出すことはできない。

即ち、そもそも、甲1発明における酸化チタン被膜微粒子粉末は、それ自体が平均粒子径1?10μmのものであって、最小径の場合でも平均1μm、即ち1000nm、であることから、基材膜それ自体の厚さが10?500nmであるとはいえ、当該基材膜に上記酸化チタン被膜微粒子粉体を「担持」させてなるものの厚さは既に(酸化チタン微粒子粉末の最小平均粒子径である)1μm(1000nm)を超えているものと認められ、これを30?1000nmの範囲内とすることはできない。
また、甲1発明における酸化チタン被膜微粒子粉体に代表される、基材膜に担持させる甲1記載の粉体は、甲1の記載によれば、皮膚の不均一性(即ち、色彩上の瑕疵(しみ、ほくろ、あざ、くま等)や凹凸の瑕疵(しわ、ニキビ跡等)といった、皮膚上のあらゆる瑕疵)の補正(甲1-3)、より具体的には、隠ぺい力関わる全透過率の向上、並びに、薄膜の皮膚への貼付時には素肌に近く白浮きは生じないがぼかし効果をもたらすものである(甲1-9【0027】?【0028】)ところ、かかる効果の付与のためには(屈折率が1.5?3.0であると共に)平均粒子径が1?10μmである顔料級の酸化チタンを採用することが好ましいとされている(甲1-3【0015】)のであって、このような好ましい平均粒子径に係る記載を踏まえた上でなお、担持させる粉体として平均粒子径が1μmより小さいサブミクロン粒径のものを採用すると共に、当該サブミクロン粒径の粉体を担持」させることにより得られる基材膜全体の厚さを30?1000nmの範囲とすることの積極的な動機付けは、当業者といえども甲1の記載から得ることができたとはいえない。

イ) また、
・イ1) 甲2?甲4には、ポリ乳酸が生体適合性で疎水性/不溶性のポリマーであることが記載されており(甲2-3、甲3-5、甲4-5);
・イ2) 甲5には、優れた日焼け止め効果を示す被覆顔料を含む皮膚化粧料であって、当該被覆顔料は二酸化チタンの粒子表面をヘマタイト又は非晶質含水酸化鉄により均一に被覆してなる、色相(H)、明度(V)及び彩度(C)において特定範囲の条件を満たすものであって、当該被覆顔料の製造法において、水溶性鉄塩の水溶液中に平均粒径約0.01?1μmの二酸化チタン粉末を均一分散せしめ、酢酸ナトリウムを加えてpHをを3?5として60℃以上に加熱し鉄塩を加水分解することにより、上記二酸化チタンの表面に非常質の含水酸化物を選択的に沈殿吸着させること等が記載されており(甲5-1?甲5-5);
・イ3) 甲6には、サンスクリーン成分として化粧品に使用され得る白色隠蔽顔料TiO_(2)のヒドロゲルであって、無定形TiO_(2)中に約20%?約90%のアナターゼ結晶を含有してなる固体を約20%?約60%含有してなり、且つ約3nm?約10nmの平均結晶領域寸法を有するものについて記載されており(甲6-1?甲6-2);
・イ4) 甲7には、皮膚に適用したときに白色化がなく、完全に透明で、有機遮蔽剤を添加する必要なく、十分なUV遮蔽特性を有し、従来の組成物よりもより良好に分散し、この性質が、これらの組成物の優れた安定性によって経時的に維持される、微小粒子顔料ベースの化粧品組成物であって、 -フィラー、脂肪バインダー、及び組成物の全重量に対して少なくとも2重量%の少なくとも1つの微小顔料を含有する化粧品組成物であり、微小顔料とフィラーとを組み合わせた顔料の容積濃度(CPV)が、顔料の臨界容積濃度(CCPV)以下であり、フィラーの容積 Vf が、微小顔料の容積 Vn の2倍以上であることを特徴とする、組成物 について記載されており。ここでいう微小顔料、即ち微小粒子(ナノ粒子:nanoparticles)の顔料として二酸化チタン微小粒子が挙げられること等が併せて記載されており(甲7-1?甲7-2);
・イ5) 甲8、甲9には、各一般式(I)(甲8-1、甲9-1)で表されるパーフルオロアルキルシラン又はパーフルオロアルキルエポキシ化合物で粉体を処理して得られる撥水撥油性化粧料用粉体について記載されており、併せて、ここでいう粉体としては例えば酸化チタン、酸化亜鉛等の紫外線吸収顔料が挙げられることが記載されており(甲8-1?甲8-3、甲9-1?甲9-3);
また、甲10にも、甲10-1の式A及び/又は式Bの化合物からなる化粧用粉体処理剤について記載されており、併せて、ここでいう粉体の例として酸化チタン、酸化亜鉛等の紫外線吸収顔料が挙げられており(甲10-1?甲10-2);
・イ6) 甲11には、白色顔料である酸化亜鉛や酸化チタンが紫外線遮蔽作用を有し、当該作用は微粒子化又は超微粒子化により大きくなることも記載されており(甲11-1?甲11-2)、また、酸化チタン等の,無機顔料はそれ自体表面が親水性であることが記載されており(甲11-3);
・甲12には、造膜成分として加水分解性を有しない単量体と乳酸マクロモノマーとの共重合体であるポリ乳酸系樹脂を含む、環境適応型であって耐加水分解性が向上されてなるコーティング剤について記載されており(甲12-1?甲12-3);
・イ7) 甲13には、プロスタミド及び生分解性ポリマーマトリックスを含んでなる生分解性眼内インプラントについて記載されており、ここでいうポリマー材料としてD-乳酸やL-乳酸をモノマーとするポリエステル等が挙げられることが併せて記載されており(甲13-1?甲13-4);
・イ8) 甲14には、甲14-1のa)に規定される一般式(I)?(iii)のいずれかのビニルエステルモノマー及びb)に規定されるいずれかのエチレン性不飽和コモノマーをモノマー成分として含む、好ましくはPVAベースの生分解性、生体適合性架橋ポリマー調製用の重合硬化性組成物について記載されており(甲14-1?甲14-3);
・イ9) 甲15には、キトサン若しくはキトサン誘導体又はこれらの塩を含む溶液を用いて形成されるA層と、ヒアルロン酸若しくはヒアルロン酸誘導体又はこれらの塩を含む溶液を用いて形成されるB層とを有し、膜厚が20?280nmである薄膜フィルム、及び、これらA層及びB層を交互に積層してなる薄膜フィルム、並びに、前記いずれかの薄膜フィルムを皮膚貼合用又は化粧用に用いることについて記載されており、これらの薄膜フィルムは貼付時に目立ちにくくかつ違和感がなく、接着剤又は粘着剤を使用しなくても貼付することのできることや、強靭性(機械的強度)、透明性及び保湿性に優れかつ皮膚に対する自己密着性を有することが併せて記載されており(甲15-1?甲15-4);
・イ10) 甲16には、ポリリジン若しくはポリリジン誘導体又はこれらの塩を含む溶液を用いて形成されるA層と、アルギン酸若しくはアルギン酸誘導体又はこれらの塩を含む溶液を用いて形成されるB層とを有する薄膜フィルム、及び、これらA層及びB層を交互に積層してなる薄膜フィルム、並びに、前記いずれかの薄膜フィルムを皮膚貼合用又は化粧用に用いることについて記載されており、これらの薄膜フィルムは貼付時に目立ちにくくかつ違和感がないことや、強靭性(機械的強度)、透明性及び保湿性に優れかつ皮膚に対する自己密着性を有することが記載されており、また、膜厚保は特に制限されないが、接着剤又は粘着剤を使用しなくても貼付することのできることや、自己密着性、吸水性、及び乾燥状態での柔軟性等の特性がより優れたものとなることから、1nm?300nmの範囲内であることが好ましく、、20nm?250nmの範囲内であることがより好ましいこと等も併せて記載されており(甲16-1?甲16-4);
・イ11)甲17には、ポリカチオンを含む溶液を用いて形成されるA層と、ポリアニオンを含みpHが1.6?5.4である溶液を用いて形成されるB層とを積層して形成してなる薄層フィルムであって、自己密着性、吸水性、乾燥状態での柔軟性等において優れ、また生体接着性を有しており特にシート上の接着材として好適に用いられ得る薄膜フィルムについて記載されている(甲17-1?甲17-6)。

しかしながら、これら甲2?甲17にも、甲1発明において担持させる二酸化チタン被膜微粒子粉体の平均粒子径を1μmより小さいサブミクロン粒径とすると共に、当該サブミクロン粒径の粉体を担持させることにより得られる基材膜全体の厚さを30?1000nmの範囲内とすることを積極的に動機付ける程の具体的な記載乃至示唆は、見出すことができない。

してみると、甲1?甲17の記載事項を併せ踏まえても、甲1発明に係る皮膚の不均一性補正用化粧料における、酸化チタン被膜微粒子粉末を担持させたポリ乳酸基材膜に代えて、当該粉体を担持させて得られるポリ乳酸基材膜全体の厚さを30?1000nmとすることが、当業者にとり容易に想到し得たとはいえない。

また、甲1発明における酸化チタン被膜微粒子粉末に代えて、フェニルベンゾイミダゾールスルホン酸、テレフタリリデンジカンファースルホン酸、フェニルジベンゾイミダゾールテトラスルホン酸二ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種の親水性紫外線遮蔽剤を用いることについても、甲1?甲17のいずれにもそのことを容易に想到させる記載乃至示唆を見出すことはできない。

(ii-2)(相違点3について)
甲1には、甲1発明における基材膜の材料には特段の限定はない旨記載されている(甲1-4【0016】)ものの、甲15?甲17のいずれかに記載されるような、少なくとも1種のカチオン性ポリマー及び少なくとも1種のアニオン性ポリマーの組合せを採用し得ることを具体的に動機づける記載乃至示唆を見出すことはできない。甲2?甲17の記載を併せ踏まえても同様である。

(ii-3) 以上の(ii-1)?(ii-2)での検討結果は、次のようにまとめられる。
・(ii-1)で述べたとおり、甲1発明において、屈折率1.5?3.0、平均粒子径1?10μmの酸化チタン被膜微粒子粉末に代えて、フェニルベンゾイミダゾールスルホン酸、テレフタリリデンジカンファースルホン酸、フェニルジベンゾイミダゾールテトラスルホン酸二ナトリウム、及び金属酸化物からなる群から選択される少なくとも1種の親水性紫外線遮蔽剤を採用し、これを厚さ10?500nmの(ポリ乳酸)基材膜に担持させて、得られる基材膜全体の厚さを30?1000nmとすることは、甲1?甲17の記載に基づいて当業者が容易に想到し得たとはいえないし;
・さらに、甲1発明の基材膜の材料であるポリ乳酸に代えて、又は加えて、少なくとも1種のカチオン性ポリマー及び少なくとも1種のアニオン性ポリマーを併せ用いることについては、(ii-2)で述べた点を併せ踏まえれば、甲1?甲17の記載に基づいて当業者が容易に想到し得たとはいえない。

(ii-4)(訂正発明の新たな効果について)
ア) 本件特許明細書には、従来の紫外線遮断剤を含有する化粧料に関し、
「 【0008】
・・・多くの化粧料は、紫外線をシールドするために1種又はそれ以上の紫外線遮蔽剤を含有する。特に、皮膚用化粧料は、典型的に、紫外線から皮膚を保護するために紫外線遮蔽剤を含有する。
【0009】
しかし、いくつかの紫外線遮蔽剤は、皮膚に浸透し、刺激する可能性がある。更に、皮膚上の紫外線遮蔽剤を含有する化粧料は、例えば、水で皮膚を洗浄することによって、又は、皮膚を摩擦することによって、容易に皮膚から除去され得る。この容易な除去は、特に、日焼け止め剤等の紫外線遮蔽剤を含有する化粧料が、汗、雨、海水等によって引き起こされる湿潤状態で使用される場合、特に浜辺で使用される場合に主要な問題となり得る。更に、消費者にとって、日焼け止め剤等の紫外線遮蔽剤を含有する化粧料を皮膚上に一様に又は均一に適用することは困難なことがある。」(下線は合議体による)
といった技術課題が存在することが記載されている。

イ) 一方、本件特許明細書の【0115】?【0133】の【実施例】の項には、
・イ1) (ii-1)の相違点1?3に係る要件を併せ具備する、訂正発明に係る皮膚用自立性美容シートの製造例として、概要次のa)、b)の工程:
a) spin-assisted layer-by-layer法(4500rpm、15秒)によってカチオン性ポリマー層であるポリリシン層及びアニオン性ポリマー層であるアルギン酸ナトリウム層の形成を繰り返し、階層化後毎に水で濯ぐことによって、所望の厚さの多層ナノシートを調製し、アルギン酸ナトリウムのスピンコーティング段階で終結させ、多層ナノシートの表面を窒素ガスで乾燥させる工程
b) この多層ナノシートをテレフタリデンジカンファースルホン酸(Mexoryl SX(商標))水溶液に1日浸してから水で3回洗浄し、PVA担持膜と共に乾燥する工程を経てなる、PVA担持膜により担持されたポリリシン、アルギン酸ナトリウム及びMexoryl SXから構成される多層ナノシートを製造したこと、及び、当該多層ナノシートの厚さが約350nmであることをSEMを用いた断面解析により決定したこと(【0115】?【0121】);
・イ2) 上記イ1)の工程を経て得られる多層ナノシート及びPVA担持膜から構成される複合膜を、PMMAプレート上に乗せPVA担持膜を水で溶解して得られる単一ナノシート(1層のナノシート)、及び、その上に更に第2、第3の複合膜を貼ってPVA担持膜を水で溶解して得られる2層のナノシート、3層のナノシートが、Mexoryl SXを含まない点以外はイ1)の多層ナノシートと同構造の多層ナノシート(比較例1)に比して、シートの積み重ねに応じて増加したSPF値を示したこと; 及び、それら「実施例」の1?3層のナノシートのSPF値は、各ナノシートで覆われたPMMAプレートを水で洗浄した後に再度測定しても「変化しなかった」のに対し、同じMexoryl SXを含む流体状の日焼け止め剤(比較例2)については、PMMAプレート状への適用後のSPF値が2であったが水で洗浄した後のSPF値は1に減少したこと(【0122】?【0133】);が、記載されている。

ウ) 即ち、これらイ)の現実の試験結果を含む本件特許明細書の記載によれば、訂正発明に係るシートは、親水性紫外線遮蔽剤を例えば単なる含浸により含有せしめて製造してなるものであっても、製造時及び使用時に水に曝されても親水性紫外線遮断剤が流出・除去されることがない、という、ア)の技術課題を解決し得、かつ、甲1?甲17に記載も示唆もされていない、優れた耐水性に係る効果をもたらすものであることが把握できる。
そして、このような訂正発明により奏される優れた効果は、親水性紫外線遮断剤として、上記テレフタリデンジカンファースルホン酸(Mexoryl SX)に代えて、フェニルベンゾイミダゾールスルホン酸、フェニルジベンゾイミダゾールテトラスルホン酸二ナトリウム及び/又は金属酸化物を用いた場合に、も同様に奏されるものと推測される。

(iii) 以上の(i)?(ii)の検討のとおりであるから、訂正発明1は、甲1に記載された発明に基づいて、又は、甲1に記載された発明と甲1?17のいずれかに記載された事項との組合せに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)訂正発明2、4?13について
訂正発明2、4?13は、いずれも訂正発明1を直接又は間接的に引用してなる発明である。
そうすると、これらの訂正発明2、4?13についてはいずれも、訂正発明1に係る上記相違点1?3以外の相違点の有無、並びにその容易想到性等について検討するまでもなく、訂正発明1について(1)(i)?(iii)で述べたのと同様の理由により、甲1に記載された発明であるとはいえないし、また、甲1に記載された発明に基づいて、又は、甲1に記載された発明及び甲1?甲17のいずれかに記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

(3)小活
以上、(1)?(2)で述べたとおりであるから、
・本件訂正後の請求項1、2、8?13に係る発明は、そのいずれも、甲第1号証に記載された発明ではなく、これらの請求項についての特許は、特許法第29条第1項第3号に該当する発明に対してされたものではない。
・また、本件訂正後の請求項1、2、4?13に係る発明は、そのいずれも、甲第1号証に記載の発明及び甲第2号証?甲第17号証に記載の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、これらの請求項についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

したがって、申立人による申立理由1及び2は、いずれも理由がない。

[6-3]取消理由1及び2について

1.取消理由通知書に記載された取消理由1及び2の概要は、[第5]1.及び2.で挙げたとおりのものであるところ、これらはいずれも甲1を主引例とするものである。
しかしながら、[6-2]で検討・説示したとおり、訂正発明1、2、4?13については、甲1を主引例とする新規性否定及び進歩性否定に係る申立理由1及び2は、そのいずれも理由がないのであるから、同じ甲1を主引例とする取消理由1及び2のいずれもまた、[6-2]で述べたのと同様の理由により、理由がない。

2.なお、申立人は、訂正発明1、2、4?13について、11月20日付けの意見書において、主として次の点:
・刊行物1(甲1)記載の基材膜の材料として、刊行物5(甲16)及び/又は刊行物6(甲15)のカチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーの組合せを使用することは、当業者が容易に推考し得たこと;
・刊行物1(甲1)における例えば実施例の酸化チタン被膜微粒子粉末は、紫外線遮蔽剤として機能し得ないものではないこと;
から、訂正発明1、2、4?13に係る発明は依然として甲1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、取消理由通知書に記載された取消理由2により取り消されるべきものである旨主張している。
しかしながら、[6-2]で検討したとおり、
・訂正発明1、2、4?13のいずれも、少なくとも上記[6-2]3.(1)(i)の相違点1?3において甲1に記載された発明と相違しており;
・[6-2](1)(i)?(iii)及び(2)で述べたとおり、上記相違点1?3に係る要件を併せ具備する訂正発明の皮膚用自立性美容ナノシートは、甲1?甲17のいずれの記載を併せ参酌しても、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものではなく、そして、訂正発明は、当該相違点1?3に係る要件を併せ具備する皮膚用自立性美容ナノシートとすることにより、甲1?甲17の記載から予期し得ない優れた効果を奏するのである;
から、上記申立人の主張は採用できない。

[6-4]むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件訂正後の請求項1、2、4?13に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件訂正後の請求項1、2、4?13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件特許の請求項3に係る特許に対する特許異議申立てについては、本件訂正により当該請求項3が削除されたことから、特許異議の申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。

よって、結論のとおり決定する。


 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の生体適合性及び/又は生分解性の疎水性ポリマー層を含み、
30?1000nmの厚さを有し、
フェニルベンゾイミダゾールスルホン酸、テレフタリリデンジカンファースルホン酸、フェニルジベンゾイミダゾールテトラスルホン酸二ナトリウム、及び、金属酸化物からなる群から選択される少なくとも1種の親水性紫外線遮蔽剤を含む、皮膚用自立性美容シートであって、
前記生体適合性及び/又は生分解性の疎水性ポリマー層が、少なくとも1種のカチオン性ポリマー及び少なくとも1種のアニオン性ポリマーを含む、皮膚用自立性美容シート。
【請求項2】
生体適合性及び/又は生分解性の疎水性ポリマーが、非架橋である、請求項1に記載の皮膚用自立性美容シート。
【請求項3】(削除)
【請求項4】
カチオン性ポリマーが、第四級アンモニウム基、グアニジン基、ビグアニド基、イミダゾール基、イミノ基、ピリジル基及びアミノ基からなる群から選択される少なくとも1つの正荷電性部分を有する、請求項1に記載の皮膚用自立性美容シート。
【請求項5】
カチオン性ポリマーが、キトサン、コラーゲン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリジアリルジアルキルアンモニウムクロリド、ポリアニリン、ポリビニルイミダゾール、ポリジメチルアミノエチレンメタクリレート、ポリ-1-メチル-2-ビニルピリジン、ポリアミン、ポリイミン、ポリエチレンイミン、ポリビニルピリジン、ポリ(第四級ピリジン)、ポリリシン、ポリオルニチン、ポリアルギニン、ポリヒスチジン、ポリアミノプロピルビグアニド、及び、それらの塩からなる群から選択される、請求項1又は4に記載の皮膚用自立性美容シート。
【請求項6】
アニオン性ポリマーが、硫酸基、スルフェート基、スルホン酸基、スルホネート基、リン酸基、ホスフェート基、ホスホン酸基、ホスホネート基、カルボキシル基及びカルボキシレート基からなる群から選択される少なくとも1つの負荷電性部分を有する、請求項1、4及び5のいずれか一項に記載の皮膚用自立性美容シート。
【請求項7】
アニオン性ポリマーが、アルギン酸、ヒアルロン酸、ポリグルタミン酸、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリアミド酸、ポリスチレンスルホネート、ポリ(ビニルスルフェート)、デキストランスルフェート、コンドロイチンスルフェート、ポリマレイン酸、ポリフマル酸、カルボキシメチルセルロース、スチレン無水マレイン酸誘導体及びそれらの塩からなる群から選択できる、請求項1及び4から6のいずれか一項に記載の皮膚用自立性美容シート。
【請求項8】
親水性紫外線遮蔽剤の量が、美容シートの総質量に対して、0.1から70質量%である、請求項1、2及び4から7のいずれか一項に記載の皮膚用自立性美容シート。
【請求項9】
基材シートに接着されている、請求項1、2及び4から8のいずれか一項に記載の皮膚用自立性美容シート。
【請求項10】
基材シートから取り外し可能である、請求項9に記載の皮膚用自立性美容シート。
【請求項11】
請求項1、2及び4から10のいずれか一項に記載の皮膚用自立性美容シートを皮膚上に適用する工程を含む、皮膚をケア及び/又はメーキャップする非治療的化粧方法。
【請求項12】
請求項1、2及び4から10のいずれか一項に記載の皮膚用自立性美容シートを皮膚上に適用する工程を含む、皮膚の黒ずみを制限し、肌の色及びむらを改善する非治療的化粧方法。
【請求項13】
請求項1、2及び4から10のいずれか一項に記載の皮膚用自立性美容シートを皮膚上に適用する工程を含む、皮膚のアンチエイジング美容処理方法。
【請求項14】
少なくとも1種の非架橋ポリ(乳酸)及びその誘導体から選択される非架橋ポリマー層を含み、
30?1000nmの厚さを有し、
少なくとも1種の親油性紫外線遮蔽剤を含む、
皮膚用自立性美容シート。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-01-23 
出願番号 特願2013-109546(P2013-109546)
審決分類 P 1 652・ 113- YAA (A61K)
P 1 652・ 121- YAA (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 井上 典之中村 俊之  
特許庁審判長 關 政立
特許庁審判官 大久保 元浩
岡崎 美穂
登録日 2018-10-19 
登録番号 特許第6419417号(P6419417)
権利者 ロレアル
発明の名称 自立性美容シート  
代理人 志賀 正武  
代理人 実広 信哉  
代理人 村山 靖彦  
代理人 志賀 正武  
代理人 実広 信哉  
代理人 村山 靖彦  

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