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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08F
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08F
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08F
管理番号 1360479
異議申立番号 異議2018-701068  
総通号数 244 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-04-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-12-27 
確定日 2020-02-06 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6348840号発明「エネルギー線硬化型樹脂組成物及びこれを利用した耐候性ハードコートフィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6348840号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。 特許第6348840号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6348840号の請求項1?6に係る特許についての出願は、平成25年6月27日(優先権主張 平成24年6月29日)に特許出願され、平成30年6月8日に特許権の設定登録がされ、平成30年6月27日にその特許公報が発行され、平成30年12月27日に、その請求項1?6に係る発明の特許に対し、森田隼明(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年12月27日 特許異議申立書
令和 1年 5月 7日 取消理由通知書
同年 7月 8日 意見書・訂正請求書(特許権者)
同年 8月14日 意見書(申立人)
同年10月29日 訂正拒絶理由通知書
同年12月 6日 意見書・補正書(特許権者)

特許権者は、令和1年7月8日に提出した意見書に、乙第1号証を添付した。
乙第1号証:BASFジャパン株式会社(2010年7月)光重合開始剤総合カタログ

第2 訂正の適否についての判断
特許権者は、特許法第120条の5第1項の規定により審判長が指定した期間内である令和1年7月8日に訂正請求書を提出し、本件特許の特許請求の範囲及び明細書を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおり訂正後の請求項1?6について訂正することを求めた(以下「本件訂正」という。)。

その後、当審からの訂正拒絶理由通知に対して、特許権者は同年12月6日に手続補正書を提出して、本件訂正を手続補正書に記載のとおり補正することを求めたので、この手続補正が本件訂正の要旨を変更するものか否かを検討し、その上で訂正の適否について検討する。

1 訂正の補正
(1)補正の内容
ア 訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1を、
「(A)エネルギー線硬化型オリゴマーと、(B)ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤と、(C)ヒンダードアミン系光安定剤と、(D)光重合開始剤と、を含有するエネルギー線硬化型樹脂組成物であって、前記(B)成分を前記(A)成分100質量部に対し、2?12質量部添加するとともに、前記(D)成分が(D1)2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、ビス(η^(5)-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イル-フェニル)ブタン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、およびビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイドからなる群と、(D2)2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モリフォリノプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、オキソフェニル酢酸メチル、オリゴ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン}、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、オキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステル、オキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-ヒドロキシ-エトキシ]-エチルエステル、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、およびベンゾフェノンからなる群と、からそれぞれ少なくとも1種以上含有し、前記(A)成分が、エネルギー線硬化性官能基数が10?20の範囲である多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーであり、前記(D1)成分と前記(D2)成分の添加比が質量比で3:97?45:55の範囲であり、前記(A)成分100質量部に対し、前記(D)成分を1?12質量部添加することを特徴とするエネルギー線硬化型樹脂組成物。」と訂正するものであったところ、
手続補正書で、その訂正事項を、
「(A)エネルギー線硬化型オリゴマーと、(B)ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤と、(C)ヒンダードアミン系光安定剤と、(D)光重合開始剤と、を含有するエネルギー線硬化型樹脂組成物であって、前記(B)成分を前記(A)成分100質量部に対し、2?12質量部添加するとともに、前記(D)成分が(D1)2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、ビス(η^(5)-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イル-フェニル)ブタン-1-オン、および2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイドからなる群と、(D2)2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モリフォリノプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、オキソフェニル酢酸メチル、オリゴ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン}、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、オキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステルとオキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-ヒドロキシ-エトキシ]-エチルエステルとの混合物、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、および1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトンとベンゾフェノンとの共融混合物からなる群と、からそれぞれ少なくとも1種以上含有し、前記(A)成分が、エネルギー線硬化性官能基数が10?20の範囲である多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーであり、前記(D1)成分と前記(D2)成分の添加比が質量比で3:97?45:55の範囲であり、前記(A)成分100質量部に対し、前記(D)成分を1?12質量部添加することを特徴とするエネルギー線硬化型樹脂組成物。」と補正する(補正部分を下線で示した。以下同じである。)。

イ 訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の明細書の段落【0009】を、
「即ち、本発明のエネルギー線硬化型樹脂組成物は、
[1](A)エネルギー線硬化型オリゴマーと、(B)ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤と、(C)ヒンダードアミン系光安定剤と、(D)光重合開始剤と、を含有するエネルギー線硬化型樹脂組成物であって、前記(B)成分を前記(A)成分100質量部に対し、2?12質量部添加するとともに、前記(D)成分が(D1)2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、ビス(η^(5)-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イル-フェニル)ブタン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、およびビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイドからなる群と、(D2)2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モリフォリノプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、オキソフェニル酢酸メチル、オリゴ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン}、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、オキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステル、オキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-ヒドロキシ-エトキシ]-エチルエステル、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、およびベンゾフェノンからなる群と、からそれぞれ少なくとも1種以上含有し、前記(A)成分が、エネルギー線硬化性官能基数が10?20の範囲である多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーであり、前記(D1)成分と前記(D2)成分の添加比が質量比で3:97?45:55の範囲であり、前記(A)成分100質量部に対し、前記(D)成分を1?12質量部添加することを特徴とするものである。」と訂正するものであったところ、
手続補正書で、その訂正事項を、
「即ち、本発明のエネルギー線硬化型樹脂組成物は、
[1](A)エネルギー線硬化型オリゴマーと、(B)ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤と、(C)ヒンダードアミン系光安定剤と、(D)光重合開始剤と、を含有するエネルギー線硬化型樹脂組成物であって、前記(B)成分を前記(A)成分100質量部に対し、2?12質量部添加するとともに、前記(D)成分が(D1)2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、ビス(η^(5)-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イル-フェニル)ブタン-1-オン、および2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイドからなる群と、(D2)2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モリフォリノプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、オキソフェニル酢酸メチル、オリゴ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン}、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、オキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステルとオキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-ヒドロキシ-エトキシ]-エチルエステルとの混合物、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、および1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトンとベンゾフェノンとの共融混合物からなる群と、からそれぞれ少なくとも1種以上含有し、前記(A)成分が、エネルギー線硬化性官能基数が10?20の範囲である多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーであり、前記(D1)成分と前記(D2)成分の添加比が質量比で3:97?45:55の範囲であり、前記(A)成分100質量部に対し、前記(D)成分を1?12質量部添加することを特徴とするものである。」と補正する。

(2)判断
ア 訂正事項1について
訂正事項1についての上記補正は、補正前の(D1)成分の選択できる化合物の「ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド」を削除する補正(以下「補正1-1」という。)、補正前の(D2)成分として選択できる化合物の一つであった「オキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステル」及び「オキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-ヒドロキシ-エトキシ]-エチルエステル」のそれぞれを、「オキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステルとオキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-ヒドロキシ-エトキシ]-エチルエステルとの混合物」とする補正(以下「補正1-2」という。)及び補正前の(D2)成分の選択できる化合物の「ベンゾフェノン」を「1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトンとベンゾフェノンとの共融混合物」とする補正(以下「補正1-3」という。)である。
以下、補正1-1?1-3のそれぞれについて検討する。

(ア)補正1-1について
補正1-1は、補正前の(D1)成分の選択できる化合物の一つである「ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド」を削除する補正であり、減縮的変更といえるから、訂正の要旨を変更するものではない。

(イ)補正1-2について
補正1-2は、補正前の(D2)成分のとして選択できる化合物の一つであった「オキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステル」及び「オキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-ヒドロキシ-エトキシ]-エチルエステル」のそれぞれを、「オキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステルとオキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-ヒドロキシ-エトキシ]-エチルエステルとの混合物」とする補正であるが、補正前の(D2)は、「(D2)・・・1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、・・・オキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステル、オキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-ヒドロキシ-エトキシ]-エチルエステル、・・・ベンゾフェノンからなる群と、からそれぞれ少なくとも1種以上含有し」と記載され、例示された2つの化合物を2種含有するように補正したということができるから、減縮的変更といえ、訂正の要旨を変更するものではない。

(ウ)補正1-3について
補正1-3は、補正前の(D2)成分の選択できる化合物の「ベンゾフェノン」を「1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトンとベンゾフェノンとの共融混合物」とする補正であるが、補正前の(D2)は、上記(イ)で述べたように記載され、例示された2つの化合物を2種含有するように補正し、更に混合物の状態を共融混合物と限定したということができるから、減縮的変更といえ、訂正の要旨を変更するものではない。

(エ)小括
したがって、訂正事項1の補正は訂正の要旨を変更するものではない。

イ 訂正事項2について
訂正事項2の補正は、発明の詳細な説明の段落【0009】の訂正である訂正事項2の内容を、訂正事項1の補正と同様に補正をするものである。
この補正は、上記アで述べた理由と同じ理由により、訂正の要旨を変更するものではない。

(3)まとめ
以上のとおりであるから、特許権者が令和1年12月6日付けの手続補正でした補正は、本件訂正の要旨を変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第131条の2第1項の規定を満足するものである。

2 訂正の内容
上記1で述べたとおり、令和1年12月6日付けの手続補正でした本件訂正の補正は認められるので、その訂正内容は、令和1年12月6日付けで手続補正された同年7月8日付けの訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおりに訂正するものである。

(1)訂正事項1
訂正前の請求項1である「(A)エネルギー線硬化型オリゴマーと、(B)ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及びトリアジン系紫外線吸収剤の中から選ばれる少なくとも1種と、(C)ヒンダードアミン系光安定剤と、(D)光重合開始剤と、を含有するエネルギー線硬化型樹脂組成物であって、前記(B)成分を前記(A)成分100質量部に対し、2?12質量部添加するとともに、前記(D)成分が(D1)メタノール又はアセトニトリルに溶解させた0.01%質量溶液における340nm?400nmの波長範囲における吸光度の最大値が0.1以上である光重合開始剤と、前記(D1)成分とは異なる(D2)メタノール又はアセトニトリルに溶解させた0.001質量%溶液における220nm?280nmの波長範囲における吸光度の最大値が0.1以上である光重合開始剤と、をそれぞれ少なくとも1種以上含有し、前記(A)成分が、エネルギー線硬化性官能基数が10?20の範囲である多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーであり、前記(D1)成分と前記(D2)成分の添加比が質量比で3:97?45:55の範囲であり、前記(A)成分100質量部に対し、前記(D)成分を1?12質量部添加することを特徴とするエネルギー線硬化型樹脂組成物。」を、
「(A)エネルギー線硬化型オリゴマーと、(B)ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤と、(C)ヒンダードアミン系光安定剤と、(D)光重合開始剤と、を含有するエネルギー線硬化型樹脂組成物であって、前記(B)成分を前記(A)成分100質量部に対し、2?12質量部添加するとともに、前記(D)成分が(D1)2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、ビス(η^(5)-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イル-フェニル)ブタン-1-オン、および2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイドからなる群と、(D2)2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モリフォリノプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、オキソフェニル酢酸メチル、オリゴ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン}、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、オキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステルとオキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-ヒドロキシ-エトキシ]-エチルエステルとの混合物、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、および1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトンとベンゾフェノンとの共融混合物からなる群と、からそれぞれ少なくとも1種以上含有し、前記(A)成分が、エネルギー線硬化性官能基数が10?20の範囲である多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーであり、前記(D1)成分と前記(D2)成分の添加比が質量比で3:97?45:55の範囲であり、前記(A)成分100質量部に対し、前記(D)成分を1?12質量部添加することを特徴とするエネルギー線硬化型樹脂組成物。」と訂正する。

(2)訂正事項2
訂正前の明細書の段落【0009】に記載された「即ち、本発明のエネルギー線硬化型樹脂組成物は、
[1](A)エネルギー線硬化型オリゴマーと、(B)ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及びトリアジン系紫外線吸収剤の中から選ばれる少なくとも1種と、(C)ヒンダードアミン系光安定剤と、(D)光重合開始剤と、を含有するエネルギー線硬化型樹脂組成物であって、前記(B)成分を前記(A)成分100質量部に対し、2?12質量部添加するとともに、前記(D)成分が(D1)メタノール又はアセトニトリルに溶解させた0.01%質量溶液における340nm?400nmの波長範囲における吸光度の最大値が0.1以上である光重合開始剤と、前記(D1)成分とは異なる(D2)メタノール又はアセトニトリルに溶解させた0.001質量%溶液における220nm?280nmの波長範囲における吸光度の最大値が0.1以上である光重合開始剤と、をそれぞれ少なくとも1種以上含有し、前記(A)成分が、エネルギー線硬化性官能基数が10?20の範囲である多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーであり、前記(D1)成分と前記(D2)成分の添加比が質量比で3:97?45:55の範囲であり、前記(A)成分100質量部に対し、前記(D)成分を1?12質量部添加することを特徴とするものである。」を、「即ち、本発明のエネルギー線硬化型樹脂組成物は、
[1](A)エネルギー線硬化型オリゴマーと、(B)ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤と、(C)ヒンダードアミン系光安定剤と、(D)光重合開始剤と、を含有するエネルギー線硬化型樹脂組成物であって、前記(B)成分を前記(A)成分100質量部に対し、2?12質量部添加するとともに、前記(D)成分が(D1)2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、ビス(η^(5)-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イル-フェニル)ブタン-1-オン、および2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイドからなる群と、(D2)2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モリフォリノプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、オキソフェニル酢酸メチル、オリゴ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン}、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、オキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステルとオキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-ヒドロキシ-エトキシ]-エチルエステルとの混合物、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、および1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトンとベンゾフェノンとの共融混合物からなる群と、からそれぞれ少なくとも1種以上含有し、前記(A)成分が、エネルギー線硬化性官能基数が10?20の範囲である多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーであり、前記(D1)成分と前記(D2)成分の添加比が質量比で3:97?45:55の範囲であり、前記(A)成分100質量部に対し、前記(D)成分を1?12質量部添加することを特徴とするものである。」と訂正する。

(3)訂正事項3
訂正前の明細書の段落【0074】に記載された「実施例2?13および参考例1?4」を、「実施例2?12および参考例1?5」と訂正する。

(4)訂正事項4
訂正前の明細書の段落【0078】に記載された「【表3】

」を、
「【表3】

」と訂正する。

(5)訂正事項5
訂正前の明細書の段落【0080】に記載された「(評価)
表1?3を見ると、実施例1?13および参考例1?4の何れにおいても・・・参考例1と4を見ると」を、
「(評価)
表1?3を見ると、実施例1?12および参考例1?5の何れにおいても・・・参考例1と5を見ると」と訂正する。

(6)一群の請求項について
訂正事項1に係る訂正前の請求項1について、請求項2?6はそれぞれ請求項1を直接的又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
また、明細書に係る訂正事項2?5は、請求項1?6について請求されたものである。
よって、本件訂正は、一群の請求項に対してなされたものである。

3 訂正の適否
事案に鑑み、まず、訂正事項1を検討し、つぎに、訂正事項2を検討し、そして、訂正事項4を検討した後で、訂正事項3及び5を検討する。

(1)訂正事項1について
訂正事項1は、請求項1に係るエネルギー線硬化型樹脂組成物のうちの(B)成分について「(B)ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及びトリアジン系紫外線吸収剤の中から選ばれる少なくとも1種」を、「(B)ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤」とする訂正(以下「訂正事項1-1」という。)と、同じく(D)成分について「(D1)メタノール又はアセトニトリルに溶解させた0.01%質量溶液における340nm?400nmの波長範囲における吸光度の最大値が0.1以上である光重合開始剤と、前記(D1)成分とは異なる(D2)メタノール又はアセトニトリルに溶解させた0.001質量%溶液における220nm?280nmの波長範囲における吸光度の最大値が0.1以上である光重合開始剤と、をそれぞれ少なくとも1種以上含有し」を、「(D1)2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、ビス(η^(5)-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イル-フェニル)ブタン-1-オン、および2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイドからなる群と、(D2)2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モリフォリノプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、オキソフェニル酢酸メチル、オリゴ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン}、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、オキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステルとオキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-ヒドロキシ-エトキシ]-エチルエステルとの混合物、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、および1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトンとベンゾフェノンとの共融混合物からなる群と、からそれぞれ少なくとも1種以上含有し、」とする訂正(以下「訂正事項1-2」という。)である。

ア 訂正の目的
訂正事項1-1は、(B)成分が「ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及びトリアジン系紫外線吸収剤の中から選ばれる少なくとも1種」という選択肢であったものを、選択肢の1つである「ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤」とするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
訂正事項1-2は、(D)成分中の(D1)成分の特定を、その特定に包含されるとして明細書の段落【0036】に記載された化合物である「2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1」と訂正し、また、同段落に記載された「ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム」という化合物名中の「η5」という誤記を「η^(5)」と訂正した上で、「ビス(η^(5)-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム」と訂正し、さらに、同【0037】に記載された「イルガキュア379」及び「ルシリンTPO」という商品名を、特許権者が提出した乙第1号証を参照してこれらの化合物である「2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イル-フェニル)ブタン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド」と訂正するものであり、具体的な化合物に減縮するものである。
また、(D)成分中の(D2)成分の特定を、その特定に包含されるとして明細書の段落【0038】に記載された化合物である「2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モリフォリノプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、オキソフェニル酢酸メチル」と訂正し、また、同【0039】に記載された「イサキュアKIP150」、「イルガキュア184」、「イルガキュア127」、「イルガキュア754」、「ダロキュアMBF」及び「イルガキュア500」という商品名を、特許権者が提出した乙第1号証を参照してこれらの化合物である「オリゴ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン}」、「1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン」、「2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン」、「オキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステルとオキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-ヒドロキシ-エトキシ]-エチルエステルとの混合物」、「フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル」及び「1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトンとベンゾフェノンとの共融混合物」と訂正するものであり、具体的な化合物に減縮するものである。
よって、訂正事項1-2は、特許請求の範囲の減縮及び誤記の訂正を目的とする訂正に該当する。

イ 実質上の特許請求の範囲の拡張・変更について
訂正事項1は、上記アで述べたとおり、いずれも特許請求の範囲を減縮する訂正及び誤記の訂正であるから、特許請求の範囲を実質上拡張又は変更するものではない。

新規事項の追加について
(ア)訂正事項1-1について
訂正事項1-1は、(B)成分の選択肢を減縮するものであるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内であることは明らかである。
(イ)訂正事項1-2について
まず、(D1)成分について、願書に添付した明細書の段落【0036】には、(D1)成分の具体例として、「2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム」が記載されている。この記載の中の「ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム」の「η5」は、「η^(5)」の誤記であることは明らかである。
また、同段落【0037】には、(D1)成分の具体例として、「イルガキュア379」及び「ルシリンTPO」が記載され、これらの商品名は、それぞれ「2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イル-フェニル)ブタン-1-オン」及び「2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド」であることは、上記アで述べたように特許権者が提出した乙第1号証の記載から明らかである。
つぎに、(D2)成分について、願書に添付した明細書の段落【0038】には、(D2)成分の具体例として、「2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モリフォリノプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、オキソフェニル酢酸メチル」が記載されている。
また、同段落【0039】には、「イサキュアKIP150」、「イルガキュア184」、「イルガキュア127」、「イルガキュア754」、「ダロキュアMBF」及び「イルガキュア500」が記載され、これらの商品名は、それぞれ「オリゴ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン}」、「1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン」、「2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン」、「オキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステルとオキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-ヒドロキシ-エトキシ]-エチルエステルとの混合物」、「フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル」及び「1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトンとベンゾフェノンとの共融混合物」であることは、上記アで述べたように特許権者が提出した乙第1号証の記載から明らかである。
(ウ)小括
以上のとおりであるから、訂正事項1は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内であるといえる。

(2)訂正事項2
訂正事項2は、訂正事項1により訂正された特許請求の範囲の記載内容と整合させるために、明細書の段落【0009】の記載を訂正事項1と同様に訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。また、上記(1)で述べたように、実質上の特許請求の範囲の拡張・変更するものでもないし、新規事項を追加するものでもない。

(3)訂正事項4
訂正事項4は、明細書の段落【0078】に記載された【表3】中の「実施例13」を「参考例4」とする訂正(以下「訂正事項4-1」という。)と、「参考例4」を「参考例5」とする訂正(以下「訂正事項4-2」という。)である。

ア 訂正の目的について
(ア)訂正事項4-1について
訂正前の実施例13は、(B)成分として(B2)(同【0066】によると、(B2)は、「トリアジン系紫外線吸収剤(商品名:チヌビン477、BASF社製」である。)を5質量部用いた例であるが、訂正事項1により、(B)成分から「トリアジン系紫外線吸収剤」が削除されたため、請求項1に係る発明の具体例でなくなったことに対応して「参考例4」とした訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。

(イ)訂正事項4-2について
訂正事項4-2は、訂正事項4-1により訂正前の「実施例13」が「参考例4」に訂正されたことにともない、参考例の番号を一つずらし、訂正前の「参考例4」を「参考例5」とする訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。

イ 実質上の特許請求の範囲の拡張・変更及び新規事項の追加について
訂正事項4-1及び同4-2は、実質上の特許請求の範囲の拡張・変更及び新規事項の追加に当たらないことは明らかである。

(4)訂正事項3及び5
訂正事項3及び5は、訂正事項4により、訂正前の表3中の「実施例13」が「参考例4」と訂正され、「参考例4」が「参考例5」と訂正されたことにともない、明細書の段落【0074】の「実施例2?13および参考例1?4」を、「実施例2?12および参考例1?5」と訂正し、同【0080】の「実施例1?13および参考例1?4の何れにおいても」及び「参考例1と4を見ると」を、それぞれ「実施例1?12および参考例1?5の何れにおいても」及び「参考例1と5を見ると」と訂正するものである。

ア 訂正の目的について
訂正事項3及び5は、訂正事項4により、訂正前の「実施例13」が「参考例4」と訂正され、また、訂正前の「参考例4」が「参考例5」と訂正されたことに整合させるため、明細書の段落【0074】及び【0080】の記載を訂正するものであるから、訂正事項3及び5は、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。

イ 実質上の特許請求の範囲の拡張・変更及び新規事項の追加について
訂正事項3及び5は、実質上の特許請求の範囲の拡張・変更及び新規事項の追加に当たらないことは明らかである。

(5)まとめ
以上のとおりであるから、訂正事項1?5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1?3号に掲げる目的に適合し、また、同法同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合するから、本件訂正を認める。

第3 特許請求の範囲の記載
上記のとおり、本件訂正は認められたので、特許第6348840号の特許請求の範囲の記載は、訂正後の特許請求の範囲の次のとおりのものである。(請求項1?6に記載された事項により特定される発明を、以下「本件発明1」?「本件発明6」といい、まとめて「本件発明」ともいう。)
「【請求項1】
(A)エネルギー線硬化型オリゴマーと、(B)ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤と、(C)ヒンダードアミン系光安定剤と、(D)光重合開始剤と、を含有するエネルギー線硬化型樹脂組成物であって、前記(B)成分を前記(A)成分100質量部に対し、2?12質量部添加するとともに、前記(D)成分が(D1)2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、ビス(η^(5)-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イル-フェニル)ブタン-1-オン、および2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイドからなる群と、(D2)2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モリフォリノプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、オキソフェニル酢酸メチル、オリゴ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン}、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、オキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステルとオキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-ヒドロキシ-エトキシ]-エチルエステルとの混合物、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、および1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトンとベンゾフェノンとの共融混合物からなる群と、からそれぞれ少なくとも1種以上含有し、前記(A)成分が、エネルギー線硬化性官能基数が10?20の範囲である多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーであり、前記(D1)成分と前記(D2)成分の添加比が質量比で3:97?45:55の範囲であり、前記(A)成分100質量部に対し、前記(D)成分を1?12質量部添加することを特徴とするエネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
(E)成分としてさらに、エネルギー線硬化型モノマーを用いる請求項1記載のエネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
基材フィルム上の少なくとも片面に請求項1または2記載のエネルギー線硬化型樹脂組成物を塗布硬化させ、ハードコート層として設けたハードコートフィルム。
【請求項4】
ASTMG-154に準拠した耐候性試験12サイクル後の黄変度(Δb)が1.0未満である請求項3記載のハードコートフィルム。
【請求項5】
ASTMG-154に準拠した耐候性試験12サイクル後のJIS K-5400に規定の基材密着性が90/100以上である請求項3記載のハードコートフィルム。
【請求項6】
温度60℃、湿度90%の環境下で500時間後のJIS K-5400に規定の基材密着性が90/100以上である請求項3記載のハードコートフィルム。」

第4 特許異議申立理由及び取消理由の概要
1 特許異議申立理由の概要
(1)申立理由1
訂正前の請求項1?6に係る発明は、本件優先日前に頒布された刊行物である下記の甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。
よって、訂正前の請求項1?6に係る発明の特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。

(2)申立理由2
訂正前の請求項1?6に係る発明は、本件優先日前に頒布された刊行物である下記の甲第1?3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、訂正前の請求項1?6に係る発明の特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。

甲第1号証:特開2010-215754号公報
甲第2号証:特開2003-26715号公報
甲第3号証:特開平11-77878号公報
(以下、「甲第1号証」等を「甲1」等という。)

(3)申立理由3
訂正前の請求項1?6に記載された特許を受けようとする発明は、下記の点で、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえないから、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。
よって、本件の請求項1?6に係る発明の特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。

光重合開始剤(D)成分について、明細書には、(D1)成分としてイルガキュア819、(D2)成分としてイルガキュア907を使用した実施例が記載されているだけであるから、特許請求の範囲の記載により特定された全ての範囲について、発明の課題が解決できると当業者が認識できない。

2 取消理由の概要
(1)取消理由1
訂正前の請求項1?6に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、その発明に係る特許は、同法113条2号に該当し、取り消すべきものである。

甲第1号証 特開2010-215754号公報

(2)取消理由2
訂正前の本件の特許請求の範囲の下記の請求項に記載された特許を受けようとする発明は、下記の点で、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえないから、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。
よって、訂正前の本件の下記の請求項に係る発明の特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

訂正前の請求項1に係る発明は、「(D)光重合開始剤」として、(D1)成分に対応する具体的な化合物と(D2)成分に対応する具体的な化合物を、質量比で3:97?45:55の範囲で添加するものである。
この点に関し、明細書には、(D1)成分及び(D2)成分として使用できる具体的な化合物として同じ商品名であるイルガキュア651、907、1800が記載されているところ、(D1)成分及び(D2)成分として上記イルガキュア651、907、1800の何れかを使用した場合には、どちらの成分が(D1)成分及び(D2)成分として使用したと解するのかが発明の詳細な説明には記載されていない。

第5 当審の判断
当審は、当審が通知した取消理由1及び2、並びに、特許異議申立人が申し立てた申立理由1?3よっては、いずれも、本件発明1?6に係る特許を取り消すことはできないと判断する。
その理由は以下のとおりである。
なお、申立理由1と取消理由1は同趣旨であるので、併せて検討する。

1 取消理由について
(1)取消理由1について
ア 甲1の記載事項及び甲1に記載された発明について
甲1の特許請求の範囲の請求項1には、
「塗膜形成成分として、分子中にウレタン結合を有し、且つ、4個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能オリゴマー(A)、1分子中に4個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能モノマー(B)、分子中にカーボネート結合を有し、且つ、1個以上の(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマー(C)、紫外線吸収剤(D)及び光安定剤(E)を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型組成物。」が記載され、また、発明の詳細な説明の段落【0001】、【0006】、【0010】、【0013】、【0061】?【0062】、【0073】?【0075】、【0077】?【0086】、【0096】?【0097】、【0101】、【0107】、【0109】、【0111】、【0113】、【0114】、表1、【0122】によれば、上記請求項1に記載された活性エネルギー線硬化型組成物の具体例として実験例2に着目すると、甲1には、以下の発明が記載されていると認められる。

「攪拌棒、冷却管、温度計、ガス導入管を備えた四つ口フラスコにイソシアヌレート変性イソホロンジイソシアネート(住化バイエルウレタン株式会社製ディスモジュールZ4470BA)317.8部、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(東亞合成株式会社製M-403)608.4部、酢酸エチル260.8部、パラメトキシフェノール(精工化学株式会社製メトキノン)0.42部、オクチル酸錫(日東化成株式会社製U-28)0.09部を仕込み、ガス導入官より乾燥空気を導入し攪拌しながら70度まで昇温し、イソシアネート含有率が0.2%以下(反応率95%以下)となるまで70℃で反応させ、不揮発分70%のウレタンアクリレート(A-2)を得て、このウレタンアクリレートA-2(不揮発分70.0%)を114.3質量部、DPA-600を10.0質量部、攪拌棒、冷却管、温度計、ガス導入管を備えた四つ口フラスコにプラクセルCD210(ダイセル化学工業株式会社製ポリカーボネートジオール)1000部、イソホロンジイソシアネート506.8部、2,6-ジターシャリーブチル-4-ヒドロキシトルエン(株式会社エービーアイコーポレーション製ヨシノックスBHT)0.89部、パラメトキシフェノール(精工化学株式会社製メトキノン)0.89部、オクチル酸錫(日東化成株式会社製U-28)0.08部を仕込み、ガス導入管より窒素を導入し攪拌しながら70度まで昇温し、イソシアネート含有率が6.1%以下(反応率95%以下)になるまで70℃で反応させ、さらに、ガス導入管より乾燥空気を導入し、ヒドロキシプロピルアクリレート273.2部、パラメトキシフェノール0.89部、オクチル酸錫0.09部を加え、イソシアネート含有率が0.2%以下(反応率95%以下)となるまで70℃で反応させウレタンアクリレート(C-1)を得て、このC-1はカーボネート結合含有2官能ウレタンアクリレートであり、このウレタンアクリレートC-1を10.0質量部、TINUVIN400(不揮発分85%)を10.0質量部、TINUVIN123を2.0質量部、IRGACURE184を3.0質量部、IRGACURE819を2.0質量部、及び酢酸エチルを60.2質量部含む活性エネルギー線硬化型組成物」(以下、「甲1発明A」という。)

イ 対比・判断
(ア)本件発明1について
甲1発明Aの、「活性エネルギー線硬化型樹脂組成物」は、本件発明1の「エネルギー線硬化型樹脂組成物」に相当する。
以下、エネルギー線硬化型樹脂組成物を構成する成分及び配合量について具体的に対比する。

a 組成物を構成する成分について
甲1発明AにおけるウレタンアクリレートA-2は、特許請求の範囲の請求項1に記載された「分子中にウレタン結合を有し、かつ、4個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能オリゴマー(A)」の具体例であり、ラジカル重合性不飽和結合を有するアクリレート基を含んでおり、このアクリレート基はエネルギー線により重合反応を生じるといえるから、ウレタンアクリレートA-2は、エネルギー線硬化型であるということができる。また、ウレタンアクリレートA-2は、15官能ウレタンアクリレートであることが記載されており(段落【0122】参照)、この15官能とは、エネルギー線により硬化する官能基の数であると解することが自然である。そうすると、甲1発明AにおけるウレタンアクリレートA-2は、本件発明1の「(A)エネルギー線硬化型オリゴマー」であって、「エネルギー線硬化性官能基数が10?20の範囲である多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー」に相当する。
甲1発明AのTINUVIN400は、段落【0122】には、「チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤」と記載されているから、本件発明1の「(B)ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤」と紫外線吸収剤という限りにおいて一致する。
甲1発明AのTINUVIN123は、段落【0122】には、「チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製ヒンダードアミン系光安定剤」と記載されているから、本件発明1の「(C)ヒンダードアミン系光安定剤」に相当する。
甲1発明AのIRGACURE819は、段落【0122】には、「チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製光重合開始剤ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドであり、380nm以上にも吸収を持つ長波長型光重合開始剤」と記載されており、これは、光重合開始剤であって本件発明1の(D1)成分として特定される化合物であるから、甲1発明AのIRGACURE184は、本件発明1の「(D)光重合開始剤」であり、(D1)成分として特定されるビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドに相当する。
甲1発明AのIRGACURE184は、段落【0122】には、 チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製光重合開始剤1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンと記載されており、これは、光重合開始剤であって、本件発明1の(D2)成分として特定される1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトンと同じであることは明らかであるから、甲1発明AのIRGACURE184は、本件発明1の「(D)光重合開始剤」であり、(D2)成分として特定される1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトンに相当する。

b 組成物を構成する成分の配合割合について
甲1発明AのウレタンアクリレートA-2(本件発明1の(A)に相当。)の配合量は114.3質量部であるが、不揮発分が70.0%であるから、ウレタンアクリレート自体としては80.0質量部であると換算できる。
甲1発明AのTINUVIN400(本件発明1の紫外線吸収剤に相当。)の配合量は10.0質量部であるが、不揮発分が85%であるから、紫外線吸収剤自体としては8.5質量部であると換算できる。
ここで、甲1発明Aにおいて、ウレタンアクリレートA-2を100質量部とすると、紫外線吸収剤自体は10.6質量部と算出され、これは、本件発明1における(B)成分を(A)成分100質量部に対し、2?12質量部添加する範囲と一致する。
甲1発明AのIRGACURE819(本件発明1の(D1)に相当。)の配合量は2.0質量部であり、甲1発明AのIRGACURE184(本件発明1の(D2)に相当。)の配合量は3.0質量部であるから、(D1)と(D2)の質量比は2.0:3.0であり、全体を100に換算すると、40:60と算出され、これは、本件発明1における(D1)成分と(D2)成分の添加比が質量比で3:97?45:55とする範囲と一致する。
甲1発明AのIRGACURE819(本件発明1の(D1)に相当。)の配合量とIRGACURE184(本件発明1の(D2)に相当。)との配合量の合計量は5.0質量部である。一方、上述のとおり、甲1発明AのウレタンアクリレートA-2の配合量は換算すると80.0質量部であるといえる。
ここで、甲1発明Aにおいて、ウレタンアクリレートA-2を100質量部とすると、IRGACURE184とIRGACURE819との合計量は6.3質量部と算出され、これは、本件発明1における(B)成分を(A)成分100質量部に対し、2?12質量部添加する範囲と一致する。

c 一致点及び相違点について
以上のとおりであるので、本件発明1と甲1発明Aとは、
「(A)エネルギー線硬化型オリゴマーと、(B)紫外線吸収剤と、(C)ヒンダードアミン系光安定剤と、(D)光重合開始剤と、を含有するエネルギー線硬化型樹脂組成物であって、前記(B)成分を前記(A)成分100質量部に対し、2?12質量部添加するとともに、前記(D)成分が(D1)2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、ビス(η^(5)-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イル-フェニル)ブタン-1-オン、および2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイドからなる群と、(D2)2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モリフォリノプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、オキソフェニル酢酸メチル、オリゴ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン}、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、オキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステルとオキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-ヒドロキシ-エトキシ]-エチルエステルとの混合物、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、および1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトンとベンゾフェノンとの共融混合物からなる群と、からそれぞれ少なくとも1種以上含有し、前記(A)成分が、エネルギー線硬化性官能基数が10?20の範囲である多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーであり、前記(D1)成分と前記(D2)成分の添加比が質量比で3:97?45:55の範囲であり、前記(A)成分100質量部に対し、前記(D)成分を1?12質量部添加することを特徴とするエネルギー線硬化型樹脂組成物」である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)紫外線吸収剤が、本件発明1では、ベンゾトリアゾール系であるのに対して、甲1発明Aではヒドロキシフェニルトリアジン系である点

d 判断
(a)相違点1が実質的な相違点であるか否かについて検討する。
紫外線吸収剤が、本件発明1ではベンゾトリアゾール系であることと、甲1発明Aではヒドロキシフェニルトリアジン系であることとは、化合物自体の化学構造式が異なるのであるから、この相違点が実質的な相違点でないとはいえない。

そうすると、本件発明1は、甲1発明Aと同一であるとはいえないから、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえない。

(b)念のため、相違点1についての容易想到性について検討する。
甲1の段落【0073】には、活性エネルギー線硬化性組成物に使用する紫外線吸収剤(D)として、ベンゾトリアゾール系もベンゾトリアジン系と並んで例示の一つとして記載され、また、同段落には、中でも長期間化学的な変化を生じ難い点で、ベンゾトリアジン系の有機化合物を用いることが好ましいことが記載されている。このように、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤は、使用することができる紫外線吸収剤の例示の一つとして記載されているだけであるといえ、積極的に使用することが記載されているということはいえない。また、好ましい紫外線吸収剤として記載されたベンゾトリアジン系化合物が使用された実験例2である甲1発明Aにおいて、敢えてベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤を使用する動機付けがあるということはいえない。
そうすると、甲1の上記記載からは、当業者であったとしても相違点1に係る本件発明1の構成を備えたものとすることを容易に想到できたということはいえない。

e 小括
以上によれば、本件発明1は甲1に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当するものではない。

(イ)本件発明2?6について
本件発明2?6は、本件発明1を直接又は間接的に引用する発明であるから、上記(ア)で述べた理由と同じ理由により、甲1に記載された発明ではない。

ウ まとめ
よって、本件発明1?6に係る特許は、同法第29条の規定に違反してなされたものとはいえず、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものとはいえない。

(2)取消理由2について
ア 取消理由2は、上記第4 2(2)に示したとおり、訂正前の請求項1に係る発明は、「(D)光重合開始剤」として、(D1)成分に対応する具体的な化合物と(D2)成分に対応する具体的な化合物を、質量比で3:97?45:55の範囲で添加するものであるところ、この点に関し、明細書には、(D1)成分及び(D2)成分として使用できる具体的な化合物として同じ商品名であるイルガキュア651、907、1800が記載されており、(D1)成分及び(D2)成分として上記イルガキュア651、907、1800の何れかを使用した場合には、どちらの成分が(D1)成分及び(D2)成分として使用したと解するのかが発明の詳細な説明には記載されていない、というものである。

イ 検討
本件訂正により、本件発明1における(D1)成分は、「2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、ビス(η^(5)-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イル-フェニル)ブタン-1-オン、および2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイドからなる群」から「少なくとも1種以上含有し」と特定され、また、(D2)成分は、「2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モリフォリノプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、オキソフェニル酢酸メチル、オリゴ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン}、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、オキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステルとオキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-ヒドロキシ-エトキシ]-エチルエステルとの混合物、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、および1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトンとベンゾフェノンとの共融混合物からなる群」から「少なくとも1種以上含有し」と特定された結果、(D1)成分と(D2)成分とが同じ成分であることはなくなった。
そうすると、取消理由2の前提である(D1)成分及び(D2)成分として同じ成分を使用する場合はなくなった。
以上のとおりであるので、取消理由2は解消したということができる。

ウ まとめ
よって、本件発明1?6に係る特許は、特許法第36条第6項の規定を満たさない特許出願に対してなされたものであるとはいえず、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものとはいえない。

2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立人が申し立てた申立理由について
上記1で述べたとおり、申立理由1は取消理由1と同趣旨であり、理由及び結論は上記1(1)で述べたとおりであるから、ここでは、申立理由2及び3について述べる。

(1)申立理由2について
ア 申立理由2は、上記第4 1(2)に示したとおり、概略、甲1には、(D1)成分が、訂正前の特許請求の範囲に記載された所定の測定条件下における「340nm?400nmの波長範囲における吸光度の最大値が0.1以上である光重合開始剤」と、(D2)成分が、「前記(D1)成分とは異なる」本件特許請求の範囲に記載された所定の測定条件下における「220nm?280nmの波長範囲における吸光度の最大値が0.1以上である光重合開始剤」とを「それぞれ少なくとも1種以上含有」する点については記載がないとした上で、この点について、甲2又は甲3の記載をみれば、当業者が容易になし得るといえ、また、顕著な効果を奏さない、というものである。

イ この申立理由2について検討すると、上記第3で述べたように、本件訂正により、本件発明1の(D)光重合開始剤は、(D1)成分及び(D2)成分とも、それぞれ具体的な化合物から選ばれるものに限定された。
この本件発明1と甲1発明Aとを対比すると、第5 1(1)イ(ア)cで述べたように、(D)光重合開始剤の(D1)成分及び(D2)成分は相違点ではない。そうすると、申立人が主張するように(D1)成分と(D2)成分について、甲2及び甲3の記載事項をみた上で進歩性の検討をする必要はないといえる。
そして、本件発明1は、甲1に記載された発明に対して進歩性を有することは、上記第5 1(1)イ(ア)d(b)で述べたとおりであり、このことは、申立人の上記主張を考え合わせても覆らないことは明らかである。

ウ 念のため、第5 1(1)イ(ア)cで述べた相違点1に関する甲2及び甲3の記載事項を検討してみる。

(ア)甲2の記載事項
甲2には、以下の事項が記載されている。
(2a)「【請求項5】 光重合性オリゴマー(A)、光重合性モノマー(B)、第一成分の光重合開始剤(Ca)、第二成分の光重合開始剤(Cb)、光安定剤(D)、紫外線吸収剤(E)、酸化防止剤(F)及び帯電防止剤(G)からなり、前記第一成分の光重合開始剤(Ca)は、吸収波長が220?360nm、モル吸収係数が50以上であり、前記第二成分の光重合開始剤(Cb)は、吸収波長が340?500nm、モル吸収係数が100以上、前記紫外線吸収剤の最大吸収波長が350nm以下であり、光重合性オリゴマー(A)100重量部に対して、前記光重合性モノマー(B)が0.1?900重量部、前記第一成分の光重合開始剤(Ca)が0.01?30重量部、前記第二成分の光重合開始剤(Cb)が0.001?10重量部配合され、前記光安定剤(D)、前記紫外線吸収剤(E)、前記酸化防止剤(F)及び前記帯電防止剤(G)は、光重合性オリゴマー(A)100重量部に対して、総重量合計が0.05?30重量部配合されており、液体の粘度が50?100000mPa・S(23℃)で、チクソトロピー(TI)値が0.5?3の耐候性付与紫外線硬化型成形用材料。
・・・
【請求項10】 前記紫外線吸収剤(E)が、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(E1)、サリシレート系紫外線吸収剤(E2)、シアノアクリレート系紫外線吸収剤(E3)、ニッケル錯塩系紫外線吸収剤(E4)、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(E5)及びベンゾエート系紫外線吸収剤(E6)から選択された少なくとも一種である請求項5?9のいずれかに記載の耐候性付与紫外線硬化型成形用材料。」

(2b)「【0049】[紫外線吸収剤(E)]本発明に用いることができる紫外線吸収剤(E)は、最大吸収波長が、350nm以下の化合物で、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(E1)、サリシレート系紫外線吸収剤(E2)、シアノアクリレート系紫外線吸収剤(E3)、ニッケル錯塩系紫外線吸収剤(E4)、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(E5)及びベンゾエート系紫外線吸収剤(E6)から選択された少なくとも一種である。ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(E1)として、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン(商品名:SEESORB100、SEESORBは、シプロ化成(株)製商品名。以下同じ)、2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシベンゾフェノン(商品名:SEESORB102)、4-ドデシルオキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン(商品名:SEESORB103)、4-ベンジルオキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン(商品名:SEESORB105)等が挙げられる。サリシレート系紫外線吸収剤(E2)として、例えば、・・・等が挙げられる。シアノアクリレート系紫外線吸収剤(E3)として、例えば、・・・等が挙げられる。ニッケル錯塩系紫外線吸収剤(E4)として、・・・等が挙げられる。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(E5)として、例えば、・・・等が挙げられる。ベンゾエート系紫外線吸収剤(E6)として、・・・等が挙げられる。」

(2c)段落【0088】以降の実施例では、紫外線吸収剤(E)として、SEESORB102:シプロ化成(株)製商品名、2-ヒドロキシ-4-オクリルオキシベンゾフェノン、融点:49℃、分子量:326、又は、SEESORB704:シプロ化成(株)製商品名、2-(3,5-ジ-t-フェニル-2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、融点:83℃、分子量:352を使用したことが記載されている。

(イ)甲3の記載事項
(3a)「【請求項2】透明合成樹脂成形基材および透明合成樹脂成形基材表面の少なくとも一部に設けられた活性エネルギー線硬化性被覆組成物の透明硬化物層を含む透明被覆成形品において、活性エネルギー線硬化性被覆組成物が活性エネルギー線硬化性の重合性官能基を2以上有する多官能性化合物、365?400nmに最大吸収波長のピークを有する光重合開始剤(C1)、並びに、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オン、4’,4”-ジエチルイソフタロフェノンおよび3,3’,4,4’-テトラキス(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンから選ばれる1種以上の光重合開始剤(C2)、を含む被覆組成物であることを特徴とする透明被覆成形品。」

(3b)「【0027】本発明における被覆組成物は、紫外線吸収剤を含むことが好ましい。被覆組成物が紫外線吸収剤を含む場合、その含有量は活性エネルギー線硬化性の重合性官能基を2以上有する多官能性化合物100重量部に対して50重量部以下であることが好ましい。50重量部を超えると紫外線吸収剤が硬化被膜表面にブリードしやすくなり、また被覆組成物の硬化性の低下を招くおそれを生じる。紫外線吸収剤の量の下限はとくにはないが、それを含有させた効果を発揮させるためには0.1重量部以上であることが好ましい。より好ましい紫外線吸収剤の使用量は多官能性化合物100重量部に対して1?20重量部である。
【0028】紫外線吸収剤としては、種々の紫外線吸収剤を使用でき、たとえば市販されているような公知または周知の紫外線吸収剤を使用できる。そのような紫外線吸収剤としては、たとえばベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、フェニルトリアジン系紫外線吸収剤などがある。また、紫外線吸収剤の一部または全部として重合性紫外線吸収剤を使用することもできる。重合性紫外線吸収剤の使用は組成物中に比較的多量の紫外線吸収剤を配合しても紫外線吸収剤の表面へのブリードや耐擦傷性等の著しい低下を伴わないという効果が発揮される。」

(3c)段落【0102】以降の実施例では、紫外線吸収剤として、2-{2-ヒドロキシ-5-(2-アクリロイルオキシエチル)フェニル}ベンゾトリアゾールを使用したことが記載されている。

(ウ)検討
甲2には、特許請求の範囲の請求項5に記載された成分を含む紫外線硬化型成形用材料の発明が記載され、紫外線吸収剤を配合することが記載されている(摘記(2a))。そして、発明の詳細な説明の段落【0049】には、具体的な紫外線吸収剤としてベンゾトリアゾール系が例示の一つとして記載され(摘記(2b))、実施例においても具体的に使用されていることが記載されている(摘記(2c))。

甲3には、特許請求の範囲の請求項2に記載された成分を含む活性エネルギー線硬化性被覆組成物の透明硬化物層を含む透明被覆成形品の発明が記載され(摘記(3a))、明細書の段落【0027】には、被覆組成物には紫外線吸収剤を含むことが好ましいと記載され(摘記(3b))、同【0028】には、具体的な紫外線吸収剤としてベンゾトリアゾール系が例示の一つとして記載され(摘記(3b))、実施例においても具体的に使用されていることが記載されている(摘記(3c))。

しかしながら、甲2及び甲3に、紫外線吸収剤としてのベンゾトリアゾール系化合物が実施例において具体的に使用されることが記載されていたとしても、甲2又は甲3に記載された成分を含む組成物の中で使用することが記載されているだけであって、甲1発明Aにおいて、ベンゾトリアゾール系化合物を使用することを示唆する記載であるとはいえない。

したがって、甲2及び甲3の記載をみても、甲1発明Aにおいて、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤を使用する動機付けがあるということはできず、当業者であったとしても、相違点1に係る本件発明1の構成を備えたものとすることを容易に想到できたということはいえない。

よって、本件発明1?6は、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないということはいえない。

(2)申立理由3について
ア 申立理由3は、上記第4 1(3)に示したとおり、概略、光重合開始剤(D)成分について、明細書には、(D1)成分としてイルガキュア819、(D2)成分としてイルガキュア907を使用した実施例が記載されているだけであるから、特許請求の範囲の記載により特定された全ての範囲について、発明の課題が解決できると当業者が認識できない、というものである。

イ この申立理由3について検討する。
(ア)特許法第36条第6項第1号の考え方について
特許法第36条第6項は、「第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し、その第1号において「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。同号は、明細書のいわゆるサポート要件を規定したものであって、特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
以下、この観点に立って検討する。

(イ)特許請求の範囲の記載について
上記「第3」に記載したとおりである。

(ウ)発明の詳細な説明の記載について
本願の発明の詳細な説明には、以下の事項が記載されている。
(a)「【0006】
このため、紫外線吸収剤や光安定剤を多量に添加した場合や促進試験下においても塗膜硬度、耐擦傷性、耐候性及び耐湿性に優れたハードコートフィルムが産業界から強く要望されている。
【0007】
そこで、本発明の目的は、前記の欠点を改善し、硬化させた際に塗膜硬度、耐擦傷性、耐候性及び耐湿性に優れたエネルギー線硬化型樹脂組成物及びこれを利用した耐候性ハードコートフィルムを提供することにある。」

(b)「【発明の効果】
【0019】
本発明により、硬化させた際には塗膜硬度、耐擦傷性、耐候性及び耐湿性に優れるエネルギー線硬化型樹脂組成物及びこれを利用した耐候性ハードコートフィルムを提供することができる。」

(c)「【0034】
[(D)成分]
本発明で使用される(D)成分は(D1)メタノール又はアセトニトリルに溶解させた0.01%質量溶液における340nm?400nmの波長範囲における吸光度の最大値が0.1以上である光重合開始剤と、(D2)メタノール又はアセトニトリルに溶解させた0.001質量%溶液における220nm?280nmの波長範囲における吸光度の最大値が0.1以上である光重合開始剤と、をそれぞれ少なくとも1種以上含有するものである。これら2種類の光重合吸収剤を添加することにより、各々単独で用いた場合よりも耐湿性に関して大幅な相乗効果が見られる点が本発明の特徴の一つである。
【0035】
本発明で使用される(D)成分の添加量は、前記(A)成分の合計100質量部あたり、1?15質量部の範囲であることが好ましい。1質量部未満では塗膜硬度及び基材密着性が不足するからであり、また、15質量部を超える場合は、この成分同士の再結合による硬化阻害に伴い基材密着性が不足するからである。塗膜硬度、基材密着性の点から3?12質量部の範囲であることが更に好ましい。なお、前記(A)成分の他(E)成分として更にエネルギー線硬化型モノマーを用いた場合には、前記(D)成分の配合量は、(A)成分であるエネルギー線硬化型オリゴマーと(E)成分であるエネルギー線硬化型モノマーの合計量100質量部あたりの添加量を指す。
【0036】
[(D1)成分]
本発明で使用される(D1)成分は、メタノール又はアセトニトリルに溶解させた0.01%質量溶液における340nm?400nmの波長範囲における吸光度の最大値が0.1以上である光重合開始剤をいう。例えば、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタノン、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド等を挙げることができる。これらのものは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0037】
(D1)成分は市販品を使用することができ、例えばイルガキュア651、907、819、369、379、1800、784、ダロキュア4265、ルシリンTPO(以上、BASF社製)等を挙げることができる。
【0038】
[(D2)成分]
本発明で使用される(D2)成分は、メタノール又はアセトニトリルに溶解させた0.001質量%溶液における220nm?280nmの波長範囲における吸光度の最大値が0.1以上である光重合開始剤をいう。例えば、2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モリフォリノプロパン-1-オン2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、オキソフェニル酢酸メチル、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-[1-(4-メチルビニル)フェニル]プロパノン等を挙げることができる。これらのものは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0039】
(D2)成分は市販品を使用することができ、例えばイルガキュア184、651、500、2959、127、754、907、1800、ダロキュア1173、MBF(以上、BASF社製)、イサキュアKIP150、KIP100F、ONE、(以上、ランベルティ社製)等を挙げることができる。
【0040】
このような(D)成分は、耐湿性向上の観点から、前記(D1)成分を有する光重合開始剤の添加量が前記(D2)成分を有する光重合開始剤の添加量と同量若しくは少量とすることが好ましい。(D1)成分と(D2)成分の添加割合は質量比で3:97?45:55の範囲であることが特に好ましい。なお、(D)成分は、1種類の光重合開始剤で、(D1)成分と(D2)成分の光重合開始波長領域を有するものもあるが、本発明においては少なくとも(D1)成分を有するものと(D2)成分を有するものの2種類を用いる必要がある。よって、このような(D1)成分と(D2)成分を有する1種類の光重合開始剤を用いる場合であっても、もう1種類別の光重合開始剤を用いらなければならない。このように2種類の光重合開始剤を含有することにより、紫外線吸収性能を有するエネルギー線硬化型樹脂組成物であっても、硬化させた際に耐擦傷性に優れ、耐湿性に優れた塗膜を得ることができる。」

(d)「【実施例】
【0057】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。又、実施例中、特に断りがない限り部は質量部を示す。
【0058】
(塗膜硬度)
JIS K-5400に従い、鉛筆引っかき試験機を用いて、ハードコートフィルムの鉛筆硬度を測定した。詳しくは、測定する硬化皮膜を有するポリエステルフィルム上に、鉛筆を45度の角度でセットし、上から1000gの荷重をかけて5mm程度引っかき、5回中4回以上傷の付かなかった鉛筆の硬さで表した。
【0059】
(耐擦傷性)
耐スチールウール試験として、#0000のスチールウールを3cm^(2)円柱治具へ被せて巻いたものを本発明のハードコート層上に載せ、加重500gをかけた状態で往復させた。キズが最初に発生した直前の回数を記録した。
【0060】
(耐候性)
ASTM G-154に準拠し、QUV紫外線蛍光促進機(Q-LAB社製)を使用して60℃の環境下で8時間UVA340ランプを用い紫外線を照射後、50℃の環境下で4時間結露させる。これを1サイクルとして12サイクル行った。12サイクル後の黄変度(Δb)を分光測色計(商品名:CM-5、コニカミノルタセンシング社製)を用いて測定(後述する表1?4において耐候性(Δb)と記載)すると共に、基材密着性(後述する表1?4において耐候性(密着)と記載)をJIS K-5400に基づき評価した。
【0061】
(耐湿性)
温度60℃、湿度90%R.H.(相対湿度)の環境下で500時間後の基材密着性をJIS K-5400に基づき評価した。
【0062】
各実施例、比較例で用いた(A)成分?(E)成分は以下のとおりである。
【0063】
(A1)成分:脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー(商品名:アートレジンUN-904、根上工業社製、エネルギー線硬化性官能基数:10、質量平均分子量4900)である。
【0064】
(A2)成分:脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー(商品名:アートレジンUN-3320HS、根上工業社製、エネルギー線硬化性官能基数:15、質量平均分子量4900)である。
【0065】
(B1)成分:ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(商品名:ULS-1933D、一方社油脂工業社製)である。
【0066】
(B2)成分:トリアジン系紫外線吸収剤(商品名:チヌビン477、BASF社製)である。
【0067】
(C)成分:ヒンダードアミン系光安定剤(商品名:チヌビン765、BASF社製)である。
【0068】
(D1)成分:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(商品名:イルガキュア819、BASF社製)である。
【0069】
(D2)成分:2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モリフォリノプロパン-1-オン(商品名:イルガキュア907、BASF社製)である。
【0070】
(E)成分:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートモノマー(商品名:A-DPH、新中村化学工業社製、エネルギー線硬化性官能基数:6、質量平均分子量578)である。
【0071】
他の紫外線吸収剤:ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(商品名:LS-907、一方社油脂工業社製)である。
【0072】
レベリング剤:ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン(商品名:BYK-331、ビックケミー・ジャパン社製)
【0073】
実施例1
(A1)100質量部、(B1)5質量部、(C)1質量部、(D1)3質量部、(D2)4質量部に、レベリング剤0.25質量部、メチルエチルケトン(MEK)75質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)75質量部を加え、撹拌、添加することにより固形分が43%のハードコート液を調製した。次に、この塗工液を、厚さ188μmのPETフィルム(商品名:コスモシャインA4300、東洋紡社製)の表面に、ワイヤーバーを用いて塗布し、80℃で2分乾燥、高圧水銀等を300mJ/cm^(2)照射で硬化することにより膜厚6μmのハードコート層を形成した。このものの物性を表1に示す。
【0074】
実施例2?12および参考例1?5
表1?3に示す組成のエネルギー線硬化型樹脂組成物をそれぞれ用い、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを作製した。これらのハードコートフィルムの物性を表1?3に示す。
【0075】
比較例1?6
表4に示す組成のハードコート液をそれぞれ用い、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを作製した。これらのハードコートフィルムの物性を表4に示す。
【0076】
【表1】

【0077】
【表2】

【0078】
【表3】

【0079】
【表4】



(エ)本件発明の課題について
発明の詳細な説明の段落【0004】、【0005】及び明細書全体の記載からみて、本件発明1及び2の課題は、硬化させた際に塗膜硬度、耐擦傷性、耐候性及び耐湿性に優れたエネルギー線硬化型樹脂組成物を提供すること、及び、本件発明3?6の課題は、本件発明1又は2のエネルギー線硬化型樹脂組成物を利用した耐候性ハードコートフィルムを提供することであると認める。

(オ)判断
発明の詳細な説明の【0019】には、本発明により、硬化させた際には塗膜硬度、耐擦傷性、耐候性及び耐湿性に優れるエネルギー線硬化型樹脂組成物及びこれを利用した耐候性ハードコートフィルムを提供することができることが記載され(摘記(b))、(D)成分については、特定の吸収波長を特定の値以上有する2種類の光重合開始剤を特定の割合で使用することにより、硬化させた際に耐擦傷性、耐湿性に優れる旨の記載がされ(摘記(c)の【0034】、【0040】)、(D1)成分及び(D2)成分に使用できる具体的な化合物が記載され(摘記(c))、実施例では、上記課題が解決できたことが、具体的な試験結果により裏付けられている(摘記(d))。
このように、本願の発明の詳細な説明には、本件発明1のうちの具体例として、本件発明1の課題が解決できたことが記載されており、また、具体的に記載がない範囲においても、発明の詳細な説明の記載や本願出願時の技術常識に基づき、発明の課題が解決できることが当業者に認識できるということができる。
これに対して、申立人は、具体的な反証を挙げた上で発明の課題が解決できるといえないことを主張している訳ではない。

したがって、本件発明1?6が発明の詳細な説明に記載されたものでないとはいえないから、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合しないとはいえない。

3 令和1年8月14日に提出した意見書における申立人の主張について
(1)申立人の主張
申立人は、令和1年8月14日に提出した意見書において、概略以下のような主張をしている。
ア 訂正請求が認められるべきではないこと
訂正請求のうちの以下の3点は新規事項を含むから、訂正請求は認めるべきではない、と主張する(以下「主張ア」という。)。
(ア)(D1)成分のうち、「ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド」とする訂正。
(イ)(D2)成分のうち、「オキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステル」及び「オキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-ヒドロキシ-エトキシ]-エチルエステル」とする訂正。
(ウ)(D2)成分のうち、「ベンゾフェノン」とする訂正。

新規性及び進歩性
本件発明1において、(B)成分をベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤と限定しても、甲1の段落【0073】には、紫外線吸収剤としてベンゾトリアゾール系、ベンゾトリアジン系が同列に明記されており、両者は同等物であるから、本件発明は新規性または進歩性を有さず、また、有利な効果も奏さない、と主張する(以下「主張イ」という。)。

ウ サポート要件
本件発明1において、(D1)成分及び(D2)成分を具体的な化合物に限定したとしても、実施例において効果が示されているのは、それぞれ1種類の化合物のみにすぎず、本件発明の範囲にわたり拡張ないし一般化できない、と主張する(以下「主張ウ」という。)。

(2)申立人の主張の検討
ア 主張アについて
上記第2 1で述べたように、訂正請求は補正され、この補正は認められた。そして、この訂正請求の補正により、申立人が主張する上記3点の理由はなくなったことは明らかである。
よって、主張アは採用できない。

イ 主張イについて
上記第5 1(1)イ(ア)d(a)で述べたように、紫外線吸収剤が、本件発明1では、ベンゾトリアゾール系としているのに対して、甲1発明Aではヒドロキシフェニルトリアジン系であるとした点は、実質的な相違点であり、本件発明1は新規性を有する。また、同(b)で述べたように、甲1の段落【0073】の記載をみても、甲1発明Aにおいて(B)成分としてベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤を使用する動機付けがあるとはいえないから、当業者が容易に想到できたということはいえない。
よって、主張イは採用できない。

ウ 主張ウについて
上記第5 2(2)イ(オ)で述べたように、本件発明は、本願の発明の詳細な説明の記載及び技術常識から、当業者が発明の課題が解決できると認識できるということができ、一方、申立人は、意見書においても、具体的な反証を挙げた上で発明の課題が解決できるといえないことを主張している訳ではない。
よって、主張ウは採用できない。

第6 むすび
したがって、当審が通知した取消理由及び特許異議申立の申立理由によっては、本件発明1?6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (54)【発明の名称】
エネルギー線硬化型樹脂組成物及びこれを利用した耐候性ハードコートフィルム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー線硬化型樹脂組成物及びこれを利用した耐候性ハードコートフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ、タッチパネル、携帯電話等の表示画面等にハードコートフィルムは広く使用されているが、特に、携帯電話、スマートフォン等のモバイル製品は屋外で使用される機会が多くなっている。このような屋外用途のハードコートフィルムでは、紫外線に長時間曝露されても黄変せず、ハードコート層と基材フィルムとの剥れを生じない、優れた耐候性が必要とされる。このため、耐候性を付与する目的で、ハードコート層に紫外線吸収剤や光安定剤を添加することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】 特開平9-157315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1で提案されているハードコートフィルムは、紫外線吸収剤や光安定剤を添加することにより硬化阻害が生じ、塗膜硬度、耐擦傷性及び基材密着性が低下するという問題が生じている。この問題は、より高い耐候性のレベルに対応するため紫外線吸収剤や光安定剤を多量に添加した場合に顕著である。
【0005】
一方、前記モバイル製品は生産コストを抑えるために各構成部品の生産拠点とモバイル製品の組み立て拠点が異なることが多く、各種構成部品の製造、輸送時における高温多湿の環境下やモバイル製品の長期保存性を考慮し、耐湿性や耐候性に関する促進試験が行われるのが通常である。このような場合においてもハードコート層と基材フィルムとの剥れを生じない優れた基材密着性を有することが必要とされる。
【0006】
このため、紫外線吸収剤や光安定剤を多量に添加した場合や促進試験下においても塗膜硬度、耐擦傷性、耐候性及び耐湿性に優れたハードコートフィルムが産業界から強く要望されている。
【0007】
そこで、本発明の目的は、前記の欠点を改善し、硬化させた際に塗膜硬度、耐擦傷性、耐候性及び耐湿性に優れたエネルギー線硬化型樹脂組成物及びこれを利用した耐候性ハードコートフィルムを提供することにある。
【0008】
本発明者らは前記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、特定の化合物を特定の割合で含有する樹脂組成物及びこれを利用したハードコートフィルムが前記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明のエネルギー線硬化型樹脂組成物は、
[1](A)エネルギー線硬化型オリゴマーと、(B)ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤と、(C)ヒンダードアミン系光安定剤と、(D)光重合開始剤と、を含有するエネルギー線硬化型樹脂組成物であって、前記(B)成分を前記(A)成分100質量部に対し、2?12質量部添加するとともに、前記(D)成分が(D1)2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、ビス(η^(5)-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン、および2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイドからなる群と、(D2)2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モリフォリノプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、オキソフェニル酢酸メチル、オリゴ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン}、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、オキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステルとオキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-ヒドロキシ-エトキシ]-エチルエステルとの混合物、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、および1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトンとベンゾフェノンとの共融混合物からなる群と、からそれぞれ少なくとも1種以上含有し、前記(A)成分が、エネルギー線硬化性官能基数が10?20の範囲である多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーであり、前記(D1)成分と前記(D2)成分の添加比が質量比で3:97?45:55の範囲であり、前記(A)成分100質量部に対し、前記(D)成分を1?12質量部添加することを特徴とするものである。
【0011】
[2](E)成分としてさらに、エネルギー線硬化型モノマーを用いる[1]記載のエネルギー線硬化型樹脂組成物である。
【0015】
本発明のハードコートフィルムは、
[3]基材フィルム上の少なくとも片面に[1]又は[2]記載のエネルギー線硬化型樹脂組成物を塗布硬化させ、ハードコート層として設けたことを特徴とするものである。
【0016】
[4]ASTM G-154に準拠した耐候性試験12サイクル後の黄変度(Δb)が1.0未満である[3]記載のハードコートフィルムである。
【0017】
[5]ASTM G-154に準拠した耐候性試験12サイクル後のJIS K-5400に規定の基材密着性が90/100以上である[3]記載のハードコートフィルムである。
【0018】
[6]温度60℃、湿度90%の環境下で500時間後のJIS K-5400に規定の基材密着性が90/100以上である[3]記載のハードコートフィルムである。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、硬化させた際には塗膜硬度、耐擦傷性、耐候性及び耐湿性に優れるエネルギー線硬化型樹脂組成物及びこれを利用した耐候性ハードコートフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明のエネルギー線硬化型樹脂組成物、耐候性ハードコートフィルムの各形態について具体的に説明するが、本発明は以下の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し、適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲のものである。
[エネルギー線硬化型樹脂組成物]
【0021】
本発明のエネルギー線硬化型樹脂組成物は、(A)エネルギー線硬化型オリゴマーと、(B)ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及びトリアジン系紫外線吸収剤の中から選ばれる少なくとも1種と、(C)ヒンダードアミン系光安定剤と、(D)光重合開始剤と、を含有するものである。各成分について以下に詳細に説明する。
【0022】
[(A)成分]
本発明で使用される(A)成分は、エネルギー線硬化型オリゴマーである。
【0023】
ここでエネルギー線硬化型オリゴマーとしては、1分子中に2個以上のアクリロイル基を有し、架橋硬化することにより3次元網目構造となる(メタ)アクリル系オリゴマーが特に好ましく使用される。この(メタ)アクリル系オリゴマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらのものは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。なお、(メタ)アクリルとはアクリル又はメタクリルを、(メタ)アクリレートはアクリレート又はメタクリレートを指す。
【0024】
(A)成分において使用されるエネルギー線硬化型オリゴマーは、質量平均分子量は1,000?20,000が好ましい。質量平均分子量が1,000未満である場合には柔軟性が不足するからであり、20,000を超えた場合には塗膜硬度が不足するからである。柔軟性と塗膜硬度の観点から質量平均分子量は、1,000?10,000であることが更に好ましい。
【0025】
(A)成分において使用されるエネルギー線硬化型オリゴマーは、エネルギー線硬化性官能基数が10?20である多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーからなるものであることが好ましい。このオリゴマーを使用することにより、塗膜硬度を保ちながら柔軟性も保持する効果が奏される。エネルギー線硬化性官能基数が10未満の場合には塗膜硬度が不足し、20を超えた場合には柔軟性が不足するからである。エネルギー線硬化性官能基数は、塗膜硬度と柔軟性の観点から10?16の範囲が更に好ましい。
【0026】
[(E)成分]
本発明のエネルギー線硬化型樹脂組成物においては、(A)成分に加えて、(E)成分として更にエネルギー線硬化型モノマーを用いることもできる。この場合、(E)成分の割合は、(A)成分と(E)成分の合計に対して40質量%未満となるようにするのが好ましい。このような範囲とすることにより、後述する耐湿性試験における基材密着性をより向上させることができるからである。(E)成分としては、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレングルコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート等を好適に挙げることができる。これらのものは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0027】
上記の(E)成分以外にも、(E)成分として、ジペンタエリスリトールポリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレートといった疎水性の2官能以上の(メタ)アクリレートモノマーを使用することも好ましい。これらのモノマーを使用することにより後述する耐湿性試験における基材密着性をより向上させることができるからである。
【0028】
[(B)成分]
本発明で使用される(B)成分は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及びトリアジン系紫外線吸収剤の中から選ばれる少なくとも1種である。これらのものは、UVA(波長320?400nm)領域に吸収を有するものであるため、後述するUVA340ランプを用いた耐候性試験で良好な結果を示すことができる。なお、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の方がUVA領域の吸収が大きいため、耐候性試験において良好な結果を得ることができる。なお、
【0029】
ベンゾトリアゾール系化合物としては、例えば、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5’-(2-(オクチルオキシカルボニル)エチル)フェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-ドデシル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-(ジメチルベンジル)フェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-4’-オクチルオキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレン-ビス(2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール)2-(2’-ヒドロキシ-3’-(3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミジルメチル)-5’-メチルベンジル)フェニル)ベンゾトリアゾール等を挙げることができる。これらのものは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0030】
トリアジン系化合物の代表例としては、2-(4-ヘキシロキシ-2-ヒドロキシフェニル)-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン、2-(4-オクチロキシ-2-ヒドロキシフェニル)-4,6-ジ(2,5-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-ブトキシ-2-ヒドロキシフェニル)-4,6-ジ(4-ブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-ブトキシ-2-ヒドロキシフェニル)-4,6-ジ(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-(3-(2-エチルヘキシロキシ)-2-ヒドロキシプロポキシ)-2-ヒドロキシフェニル)-4,6-ジ(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-(3-ドデシロキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)-2-ヒドロキシフェニル)-4,6-ジ(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジ(4-ブトキシ-2-ヒドロキシフェニル)-6-(4-ブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジ(4-ブトキシ-2-ヒドロキシフェニル)-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン等を挙げることができる。これらのものは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0031】
(B)成分の添加量は、前記(A)成分100質量部に対して2?12質量部の範囲であることが必要である。2質量部未満では耐候性が劣ることとなるからであり、また、12質量部を超える場合は、塗膜硬度及び基材密着性が劣ることとなるからである。耐候性、塗膜硬度と基材密着性の観点から2.5?10質量部の範囲であることが好ましく、3?8質量部であることが更に好ましい。なお、前記(A)成分の他、(E)成分としてエネルギー線硬化型モノマーを用いた場合には、前記(B)成分の配合量は、(A)成分であるエネルギー線硬化型オリゴマーと(E)成分であるエネルギー線硬化型モノマーの合
計量100質量部あたりの添加量を指す。
【0032】
[(C)成分]
本発明で使用される(C)成分は、ヒンダードアミン系化合物である。このものを添加することにより、紫外線照射により発生したラジカルを効率的に補足することができるので耐候性を向上させることができる。(C)成分としては、例えば、4-ペゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ヘキサノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-オクタノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ステアロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、コハク酸-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン)、サバシン酸-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン)、サバシン酸-ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジン)、8-アセチル-3-ドデシル-7,7,9,9-テトラメチル-1,3,8-トリアザスピロ[4,5]デカン-2,4-ジオン、N-メチル-3-ドデシル-1-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)ピロリジン-2,5-ジオン、N-アセチル-3-ドデシル-1-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)ピロリジン-2,5-ジオン、フタル酸-ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジン)、トリメシン酸-トリス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)等を挙げることができる。これらのものは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0033】
(C)成分の添加量は、前記(A)成分100質量部に対して0.05?5質量部の範囲であることが好ましい。0.05質量部未満では耐候性が劣るからであり、また、5質量部を超える場合は、耐擦傷性が劣ることとなるからである。耐候性と耐擦傷性の観点から0.5?3質量部の範囲であることが好ましい。なお、前記(A)成分の他、(E)成分としてエネルギー線硬化型モノマーを用いた場合には、前記(C)成分の配合量は、(A)成分であるエネルギー線硬化型オリゴマーと(E)成分であるエネルギー線硬化型モノマーの合計量100質量部あたりの添加量を指す。
【0034】
[(D)成分]
本発明で使用される(D)成分は(D1)メタノール又はアセトニトリルに溶解させた0.01%質量溶液における340nm?400nmの波長範囲における吸光度の最大値が0.1以上である光重合開始剤と、(D2)メタノール又はアセトニトリルに溶解させた0.001質量%溶液における220nm?280nmの波長範囲における吸光度の最大値が0.1以上である光重合開始剤と、をそれぞれ少なくとも1種以上含有するものである。これら2種類の光重合吸収剤を添加することにより、各々単独で用いた場合よりも耐湿性に関して大幅な相乗効果が見られる点が本発明の特徴の一つである。
【0035】
本発明で使用される(D)成分の添加量は、前記(A)成分の合計100質量部あたり、1?15質量部の範囲であることが好ましい。1質量部未満では塗膜硬度及び基材密着性が不足するからであり、また、15質量部を超える場合は、この成分同士の再結合による硬化阻害に伴い基材密着性が不足するからである。塗膜硬度、基材密着性の点から3?12質量部の範囲であることが更に好ましい。なお、前記(A)成分の他(E)成分として更にエネルギー線硬化型モノマーを用いた場合には、前記(D)成分の配合量は、(A)成分であるエネルギー線硬化型オリゴマーと(E)成分であるエネルギー線硬化型モノマーの合計量100質量部あたりの添加量を指す。
【0036】
[(D1)成分]
本発明で使用される(D1)成分は、メタノール又はアセトニトリルに溶解させた0.01%質量溶液における340nm?400nmの波長範囲における吸光度の最大値が0.1以上である光重合開始剤をいう。例えば、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタノン、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド等を挙げることができる。これらのものは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0037】
(D1)成分は市販品を使用することができ、例えばイルガキュア651、907、819、369、379、1800、784、ダロキュア4265、ルシリンTPO(以上、BASF社製)等を挙げることができる。
【0038】
[(D2)成分]
本発明で使用される(D2)成分は、メタノール又はアセトニトリルに溶解させた0.001質量%溶液における220nm?280nmの波長範囲における吸光度の最大値が0.1以上である光重合開始剤をいう。例えば、2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モリフォリノプロパン-1-オン2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、オキソフェニル酢酸メチル、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-[1-(4-メチルビニル)フェニル]プロパノン等を挙げることができる。これらのものは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0039】
(D2)成分は市販品を使用することができ、例えばイルガキュア184、651、500、2959、127、754、907、1800、ダロキュア1173、MBF(以上、BASF社製)、イサキュアKIP150、KIP100F、ONE、(以上、ランベルティ社製)等を挙げることができる。
【0040】
このような(D)成分は、耐湿性向上の観点から、前記(D1)成分を有する光重合開始剤の添加量が前記(D2)成分を有する光重合開始剤の添加量と同量若しくは少量とすることが好ましい。(D1)成分と(D2)成分の添加割合は質量比で3:97?45:55の範囲であることが特に好ましい。なお、(D)成分は、1種類の光重合開始剤で、(D1)成分と(D2)成分の光重合開始波長領域を有するものもあるが、本発明においては少なくとも(D1)成分を有するものと(D2)成分を有するものの2種類を用いる必要がある。よって、このような(D1)成分と(D2)成分を有する1種類の光重合開始剤を用いる場合であっても、もう1種類別の光重合開始剤を用いらなければならない。このように2種類の光重合開始剤を含有することにより、紫外線吸収性能を有するエネルギー線硬化型樹脂組成物であっても、硬化させた際に耐擦傷性に優れ、耐湿性に優れた塗膜を得ることができる。
【0041】
更に、本発明のエネルギー線硬化型樹脂組成物には、必要に応じて、他の樹脂、溶剤や光重合開始助剤、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤、重合禁止剤、架橋剤、顔料、防汚剤、微粒子、滑剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、難燃剤、抗菌剤、防カビ剤、可塑剤、流動調整剤、分散剤、離型剤等の添加剤等を添加し、それぞれ目的とする機能を付与することも可能である。
【0042】
光重合開始助剤としては、例えば、アミン化合物、カルボン酸化合物、多官能チオール化合物等を挙げることができる。これらのものは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。溶剤については特に限定はないが、前記(A)成分と反応し得る官能基を含まないものであれば好適に用いることができる。
【0043】
好ましい溶媒としてはトルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、メトキシプロピルアセテート等のエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、1,4-ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒:その他の公知の有機溶剤を挙げることができる。
【0044】
使用する有機溶媒の種類は同時に添加される前記(A)、(B)、(C)、(D)成分等との溶解性を考慮して決められるが、乾燥時の残存溶媒の残りにくさの点からメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン等の沸点が120℃以下の有機溶媒が好ましい。これらのものは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。溶剤使用量は特に限定はないが、組成物粘度が採用する塗工方式に適した粘度になるように調整することが好ましい。好ましい使用量としては組成物全体の5?90質量%であり、より好ましくは10?85質量%、更に好ましくは20?80質量%である。
【0045】
レベリング剤としてはアクリル系化合物、高沸点溶剤、フッ素系化合物、シリコーン系化合物等を挙げることができるが、表面を鏡面に仕上げる点でフッ素系化合物、シリコーン系化合物が好ましい。酸化防止剤としてはフェノール系化合物等を、重合禁止剤としては、メトキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノン等が挙げられ、架橋剤としては、前記イソシアネート類、メラミン化合物等を挙げることができる。微粒子は、シリカ、炭酸カルシウム等の無機微粒子及びポリメチルメタクリレートやポリスチレン等の有機微粒子等を挙げることできる。防汚剤はフッ素系化合物、ケイ素系化合物、またはこれらの混合物を挙げることができ、防汚性能よりフッ素系化合物が好ましい。
【0046】
本発明のエネルギー線硬化型樹脂組成物は上述した(A)、(B)、(C)、(D)成分、さらには必要に応じて、(E)成分、溶剤、並びに添加剤を任意の順序で添加することにより得ることができる。以下、本発明において前記各種成分を添加した液をハードコート液と呼ぶことがある。
【0047】
[ハードコートフィルム]
本発明のハードコートフィルムは本発明のエネルギー線硬化型樹脂組成物を基材フィルムの少なくとも片面に塗布する工程を含む製法で得ることが出来る。このため、本発明のハードコートフィルムには、ハードコート層を両面に塗布したもの、ハードコート層を塗布していない基材フィルム面に粘着剤層、印刷層を塗布したものも含まれることになる。
【0048】
基材フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッソ樹脂フィルム、ナイロンフィルム、アクリル樹脂フィルム等を用いることが出来る。なお、エネルギー線硬化型樹脂組成物との密着性を向上させる目的で、易接着層の塗布による処理、サンドブラスト法や溶剤処理法等による表面の凹凸化処理、あるいはコロナ放電処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、プラズマ処理、オゾン・紫外線照射処理等の表面処理を施してもよい。基材フィルムにはエネルギー線硬化型樹脂組成物を塗布する前にあらかじめ片面又は両面に粘着剤層や意匠性付与のための印刷やコーティングが付与されていてもよい。
【0049】
塗布には公知の方法、例えば、グラビアコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、スピンコート法、フローコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、刷毛塗り等を用いることができる。
【0050】
エネルギー線硬化型樹脂組成物の粘度が塗布に適した粘度より高ければ溶剤を用いて粘度調整をしてもよい。使用可能な溶剤は上述のとおりである。
【0051】
エネルギー硬化型樹脂組成物で溶剤を含む場合には、塗布後に乾燥を行う必要がある。乾燥温度は乾燥ラインの長さ、ライン速度、塗布量、残存溶剤量、基材の種類等を考慮して決めればよい。基材がポリエチレンテレフタレートフィルムであれば、一般的な乾燥温度は50?100℃である。1ラインに複数の乾燥機がある場合は、それぞれの乾燥機を異なる温度、風速に設定してもよい。塗工外観の良好な塗膜を得るためには、入り口側の乾燥条件をマイルドにするのが好ましい。塗布厚みに特に制限はないが乾燥後膜厚が1?20μmになるように塗工するのが好ましい。より好ましくは1?15μm、更に好ましくは1?10μmである。
【0052】
本発明のエネルギー線硬化型樹脂組成物を硬化させる活性エネルギー線としては、紫外線、電子線等を挙げることができる。紫外線により硬化させる場合、光源としてはキセノンランプ、高圧水銀灯、メタルハライドランプ等を有する紫外線照射装置が使用され、必要に応じて光量、光源の配置等が調整される。高圧水銀灯を使用する場合、80?160W/cm^(2)のエネルギーを有するランプ1灯に対して搬送速度5?60m/分で硬化させるのが好ましい。電子線により硬化させる場合、100?500eVのエネルギーを有する電子線加速装置を使用するのが好ましい。
【0053】
本発明のハードコートフィルムのハードコート層は、JIS K-5400に規定の鉛筆硬度が、2H以上、さらには、3H以上に調整されていることが好ましい。鉛筆硬度が所定値以上に調整されていることにより、ハードコート層の表面が傷つくことを効果的に防止することができる。
【0054】
このようなハードコート層は#0000のスチールウールを3cm^(2)円柱治具へかぶせて巻いたものを、加重500gをかけた状態で、30往復、より好ましくは50往復、特に好ましくは70往復以上させたときに傷を生じることがないように調整されていることが好ましい。このように調整することで、必要な耐擦傷性を確保することができる。
【0055】
本発明のハードコートフィルムは、ASTM G-154に規定の耐候性試験の12サイクル経過後の黄変度(Δb)が1.0未満、より好ましくは、0.5未満であることが望ましい。黄変度(Δb)とは耐候性試験後のb値(b1)から試験前のb値(b0)を減じた値を示す。また、ASTM G-154に規定の耐候性試験の12サイクル経過後の基材密着性がJIS K-5400に基づき90/100以上であることが好ましい。黄変度(Δb)と基材密着性をこのように調整することにより耐候性の良好なハードコートフィルムを得ることができる。
【0056】
本発明のハードコートフィルムは、温度60℃、湿度90%の環境下で500時間後のJIS K-5400に規定の基材密着性が90/100以上、より好ましくは100/100であることが好ましい。このように調整することにより耐湿性の良好なハードコートフィルムを得ることができる。
【実施例】
【0057】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。又、実施例中、特に断りがない限り部は質量部を示す。
【0058】
(塗膜硬度)
JIS K-5400に従い、鉛筆引っかき試験機を用いて、ハードコートフィルムの鉛筆硬度を測定した。詳しくは、測定する硬化皮膜を有するポリエステルフィルム上に、鉛筆を45度の角度でセットし、上から1000gの荷重をかけて5mm程度引っかき、5回中4回以上傷の付かなかった鉛筆の硬さで表した。
【0059】
(耐擦傷性)
耐スチールウール試験として、#0000のスチールウールを3cm^(2)円柱治具へ被せて巻いたものを本発明のハードコート層上に載せ、加重500gをかけた状態で往復させた。キズが最初に発生した直前の回数を記録した。
【0060】
(耐候性)
ASTM G-154に準拠し、QUV紫外線蛍光促進機(Q-LAB社製)を使用して60℃の環境下で8時間UVA340ランプを用い紫外線を照射後、50℃の環境下で4時間結露させる。これを1サイクルとして12サイクル行った。12サイクル後の黄変度(Δb)を分光測色計(商品名:CM-5、コニカミノルタセンシング社製)を用いて測定(後述する表1?4において耐候性(Δb)と記載)すると共に、基材密着性(後述する表1?4において耐候性(密着)と記載)をJIS K-5400に基づき評価した。
【0061】
(耐湿性)
温度60℃、湿度90%R.H.(相対湿度)の環境下で500時間後の基材密着性をJIS K-5400に基づき評価した。
【0062】
各実施例、比較例で用いた(A)成分?(E)成分は以下のとおりである。
【0063】
(A1)成分:脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー(商品名:アートレジンUN-904、根上工業社製、エネルギー線硬化性官能基数:10、質量平均分子量4900)である。
【0064】
(A2)成分:脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー(商品名:アートレジンUN-3320HS、根上工業社製、エネルギー線硬化性官能基数:15、質量平均分子量4900)である。
【0065】
(B1)成分:ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(商品名:ULS-1933D、一方社油脂工業社製)である。
【0066】
(B2)成分:トリアジン系紫外線吸収剤(商品名:チヌビン477、BASF社製)である。
【0067】
(C)成分:ヒンダードアミン系光安定剤(商品名:チヌビン765、BASF社製)である。
【0068】
(D1)成分:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(商品名:イルガキュア819、BASF社製)である。
【0069】
(D2)成分:2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モリフォリノプロパン-1-オン(商品名:イルガキュア907、BASF社製)である。
【0070】
(E)成分:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートモノマー(商品名:A-DPH、新中村化学工業社製、エネルギー線硬化性官能基数:6、質量平均分子量578)である。
【0071】
他の紫外線吸収剤:ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(商品名:LS-907、一方社油脂工業社製)である。
【0072】
レベリング剤:ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン(商品名:BYK-331、ビックケミー・ジャパン社製)
【0073】
実施例1
(A1)100質量部、(B1)5質量部、(C)1質量部、(D1)3質量部、(D2)4質量部に、レベリング剤0.25質量部、メチルエチルケトン(MEK)75質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)75質量部を加え、撹拌、添加することにより固形分が43%のハードコート液を調製した。次に、この塗工液を、厚さ188μmのPETフィルム(商品名:コスモシャインA4300、東洋紡社製)の表面に、ワイヤーバーを用いて塗布し、80℃で2分乾燥、高圧水銀等を300mJ/cm^(2)照射で硬化することにより膜厚6μmのハードコート層を形成した。このものの物性を表1に示す。
【0074】
実施例2?12および参考例1?5
表1?3に示す組成のエネルギー線硬化型樹脂組成物をそれぞれ用い、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを作製した。これらのハードコートフィルムの物性を表1?3に示す。
【0075】
比較例1?6
表4に示す組成のハードコート液をそれぞれ用い、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを作製した。これらのハードコートフィルムの物性を表4に示す。
【0076】
【表1】

【0077】
【表2】

【0078】
【表3】

【0079】
【表4】

【0080】
(評価)
表1?3を見ると、実施例1?12および参考例1?5の何れにおいても鉛筆硬度は3Hであり、塗膜硬度に優れていることが理解できる。また、耐擦傷性の評価においても何れも30回を超えており、耐擦傷性に優れていることが理解できる。実施例4を見ると、(C)成分の添加量が少量であるため他の実施例と比較して耐候性の点でやや不足する結果となった。参考例1においては、(D1)成分の配合量が(D2)成分の配合量よりも多いため耐湿性がやや不足していることが理解できる。参考例1と5を見ると、(A1)成分の一部を(E)成分に置き換えたことにより、耐湿性が向上していることが理解できる。
【0081】
一方、表4を見ると比較例1では(B1)成分の配合量が少ないため、耐候性に劣ることが理解できる。比較例2においては、(B1)成分の配合量が多いため、耐擦傷性、耐候性の基材密着性、耐湿性に劣ることが理解できる。比較例3においては、(C)成分を添加していないため耐候性の黄変度(Δb)の評価において劣ることが理解できる。比較例4、5において、(D1)成分と(D2)成分とを併用していないため、耐湿性、耐擦傷性が著しく劣ることが理解できる。なお、比較例4、5と実施例1とを比較すると、実施例1は(D1)成分と(D2)成分を併用することにより、耐擦傷性と耐湿性が著しく向上することも理解できる。比較例6を見ると他の紫外線吸収剤を使用したことにより、耐候性、耐湿性において劣っていることが理解できる。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エネルギー線硬化型オリゴマーと、(B)ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤と、(C)ヒンダードアミン系光安定剤と、(D)光重合開始剤と、を含有するエネルギー線硬化型樹脂組成物であって、前記(B)成分を前記(A)成分100質量部に対し、2?12質量部添加するとともに、前記(D)成分が(D1)2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、ビス(η^(5)-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン、および2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイドからなる群と、(D2)2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モリフォリノプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、オキソフェニル酢酸メチル、オリゴ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン}、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、オキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステルとオキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-ヒドロキシ-エトキシ]-エチルエステルとの混合物、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、および1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトンとベンゾフェノンとの共融混合物からなる群と、からそれぞれ少なくとも1種以上含有し、前記(A)成分が、エネルギー線硬化性官能基数が10?20の範囲である多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーであり、前記(D1)成分と前記(D2)成分の添加比が質量比で3:97?45:55の範囲であり、前記(A)成分100質量部に対し、前記(D)成分を1?12質量部添加することを特徴とするエネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
(E)成分としてさらに、エネルギー線硬化型モノマーを用いる請求項1記載のエネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
基材フィルム上の少なくとも片面に請求項1または2記載のエネルギー線硬化型樹脂組成物を塗布硬化させ、ハードコート層として設けたハードコートフィルム。
【請求項4】
ASTM G-154に準拠した耐候性試験12サイクル後の黄変度(Δb)が1.0未満である請求項3記載のハードコートフィルム。
【請求項5】
ASTM G-154に準拠した耐候性試験12サイクル後のJIS K-5400に規定の基材密着性が90/100以上である請求項3記載のハードコートフィルム。
【請求項6】
温度60℃、湿度90%の環境下で500時間後のJIS K-5400に規定の基材密着性が90/100以上である請求項3記載のハードコートフィルム。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-01-29 
出願番号 特願2014-522690(P2014-522690)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (C08F)
P 1 651・ 537- YAA (C08F)
P 1 651・ 113- YAA (C08F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 内田 靖恵  
特許庁審判長 大熊 幸治
特許庁審判官 武貞 亜弓
佐藤 健史
登録日 2018-06-08 
登録番号 特許第6348840号(P6348840)
権利者 ソマール株式会社
発明の名称 エネルギー線硬化型樹脂組成物及びこれを利用した耐候性ハードコートフィルム  
代理人 本多 一郎  
代理人 本多 一郎  

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