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審決分類 |
審判 全部無効 2項進歩性 A61K 審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 A61K |
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管理番号 | 1360760 |
審判番号 | 無効2018-800046 |
総通号数 | 245 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-05-29 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2018-04-24 |
確定日 | 2020-02-26 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第5047285号発明「シームレスカプセル」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第5047285号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-13、15-18〕、14について訂正することを認める。 特許第5047285号の請求項15に係る発明についての審判請求を却下する。 特許第5047285号の請求項1?14、16?18に係る発明についての審判請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件特許第5047285号の特許請求の範囲の請求項1?18に係る発明についての出願は、2008年6月27日(優先権主張 2007年6月29日、(JP)日本国)を国際出願日として、特願2009-521608号として出願され、平成24年7月27日に特許権の設定登録がなされた。 これに対して、請求人コンイル ファーマシューティカル カンパニー、リミテッドは、平成30年4月24日付け審判請求書によって、上記請求項1?18に係る発明の特許を無効にすることについて、本件特許無効審判を請求した。 以後の主な手続の経緯は、次のとおりである。 平成30年 8月 1日付け 審判請求書について手続補正書(請求 人) 同年10月19日付け 訂正請求書及び審判事件答弁書(被請 求人) 同年12月26日付け 弁駁書(請求人) 平成31年 4月22日付け 口頭審理陳述要領書(請求人) 同年 4月22日付け 口頭審理陳述要領書(被請求人) 令和 元年 5月14日 口頭審理 同年 5月28日付け 上申書(請求人) 同年 6月25日付け 上申書(被請求人) 第2 訂正請求について 1 訂正請求の趣旨 平成30年10月19日付けの訂正請求は、その請求の趣旨を「特許第5047285号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?18について訂正することを求める。」とするものである。 2 訂正の内容 本件訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、以下の訂正事項1?6からなるものである。なお、訂正前の請求項1?13、15?18は、一群の請求項である。 (1)一群の請求項1?13、15?18に係る訂正 ア 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「ここで、該温度制御が、以下の温度である、」とあるのを、 「ここで、該可塑剤が、グリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびソルビトールから選択される1種または2種以上であり、 シェルの厚みの最小/最大比が0.6以上であり、 該温度制御が、以下の温度である、」に訂正する。 イ 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項11に「医薬活性成分組成物が、欧州薬局方名OMEGA-3-ACID ETHYL ESTERS 90を含有するものである、」とあるのを、「カプセル内容物が、欧州薬局方名OMEGA-3-ACID ETHYL ESTERS 90を含有するものである、」に訂正する。 ウ 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項12に「医薬活性成分組成物と、「ゼラチンと可塑剤の合計」との重量比が10:1?1:10である、」とあるのを、「カプセル内容物と、「ゼラチンと可塑剤の合計」との重量比が10:1?1:10である、」に訂正する。 エ 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項15を削除する。 (2)請求項14に係る訂正 オ 訂正事項5(合議体注:訂正請求書において、(2)請求項14に係る訂正の訂正事項1とされているものを、本審決においては、便宜上、訂正事項5と整理した。) 特許請求の範囲の請求項14に「ゼラチンおよび可塑剤を含有し、」とあるのを、いずれも、 「ゼラチン、並びにグリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびソルビトールから選択される1種または2種以上の可塑剤を含有し、」に訂正する。 カ 訂正事項6(合議体注:訂正請求書において、(2)請求項14に係る訂正の訂正事項2とされているものを、本審決においては、便宜上、訂正事項6と整理した。) 特許請求の範囲の請求項14に「・・・からなるシームレスカプセルの製造方法」とあるのを、 「・・・からなる、シェルの厚みの最小/最大比が0.6以上であるシームレスカプセルの製造方法」に訂正する。 3 訂正の適否についての判断 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載の可塑剤の種類を「可塑剤が、グリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびソルビトールから選択される1種または2種以上であ」ることを特定するとともに、シームレスカプセルのシェルに関し「シェルの厚みの最小/最大比が0.6以上であ」ることを特定するものであるから、この訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 また、特定されることとなる可塑剤の種類は、明細書の段落【0016】に記載されており、シェルの厚みの最小/最大比については、訂正前の請求項15及び明細書の段落【0010】、【0035】に記載されているから、この訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてするものである。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、訂正前の請求項11に記載された「医薬活性成分組成物」という用語を、当該請求項が引用する請求項1?10に記載の発明との平仄をとるため、「カプセル内容物」と訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 また、本件特許の願書に添付した明細書には、以下の記載がある。 【0010】 本発明を具体的に述べると、以下の通りである。 〔1〕ゼラチンおよび可塑剤を含有し、かつ、界面張力調整剤またはゲル化促進剤を含有しないシェル組成物により形成されたシェル、および、界面張力調整剤またはゲル化促進剤を含有しないカプセル内容物からなるシームレスカプセル。 (中略) 〔10〕カプセル内容物が、医薬活性成分組成物である、〔1〕に記載のシームレスカプセル。 (中略) 〔16〕医薬活性成分組成物が、欧州薬局方名OMEGA-3-ACID ETHYL ESTERS 90を含有するものである、〔15〕に記載のシームレスカプセル。 〔17〕医薬活性成分組成物と、「ゼラチンと可塑剤の合計」との重量比が10:1?1:10である、〔10〕に記載のシームレスカプセル。 (以降省略) 【0018】 (カプセル内容物) 本発明のシームレスカプセルに封入されるべき内容物は、界面張力調整剤またはゲル化促進剤を含有しないものであれば、特に限定されない。当該内容物は目的に応じて、所望の材料が用いられる。例えば、医薬活性成分、食品、香料、種子、微生物、植物細胞、植物組織、動物細胞、動物組織(以下、主成分という)などが挙げられる。カプセル内容物は、主成分自体でもよく、また、主成分とその他の添加剤とを含有する組成物の形でもよい。シームレスカプセル中での主成分の含有量、添加剤の種類・含有量、等は、その使用目的に応じて、適宜決定することができる。以下、カプセル内容物として「医薬活性成分」を例にとって、より詳細に説明する。 【0019】 シームレスカプセルに内封されるべき医薬活性成分は、特に限定されないが、例えば、酸化されやすい性質を有する化合物や油状の化合物への適用が好ましい例と考えられる。 【0020】 このような医薬活性成分の一例として、ω3-脂肪酸アルキルエステル(例、ω3-脂肪酸C_(1-6)アルキルエステル;好ましくは、ω3-脂肪酸エチルエステル)が挙げられる。ここで、ω3-脂肪酸アルキルエステルの「ω3-脂肪酸」としては、例えば、C_(18-22)ω3-脂肪酸(例、オクタデカトリエン酸、オクタデカテトラエン酸、エイコサテトラエン酸、エイコサペンタエン酸、ヘンエイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸)が挙げられる。 ω3-脂肪酸エチルエステルの具体例としては、オクタデカトリエン酸エチルエステル、オクタデカテトラエン酸エチルエステル、エイコサテトラエン酸エチルエステル、エイコサペンタエン酸(EPA)エチルエステル、ヘンエイコサペンタエン酸エチルエステル、ドコサペンタエン酸エチルエステル、ドコサヘキサエン酸(DHA)エチルエステル、並びに、これらの2以上の混合物(例えば、高脂血症(例、高コレステロール血症、高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症、高トリグリセリド(TG)血症)などの治療、心血管イベントの防止などに有用な、欧州薬局方名OMEGA-3-ACID ETHYL ESTERS 90)が挙げられる。 シームレスカプセルに医薬活性成分を内封する場合には、「医薬活性成分組成物」の形で内封される。ここで、「医薬活性成分組成物」とは、医薬活性成分自体、もしくは、医薬活性成分と通常医薬品分野で使用される添加剤との混合物の両者が包含される。 上記の具体的な医薬活性成分組成物を例にとると、 1)ω3-脂肪酸アルキルエステルを90%w/w以上(例、90?100%w/w)含有する組成物; 2)EPAエチルエステルおよび/またはDHAエチルエステルを主成分とする、ω3-脂肪酸アルキルエステルを90%w/w以上(例、90?100%w/w)含有する、上記1)の組成物; 3)EPAエチルエステルおよびDHAエチルエステルの両成分を含有し、かつ、両成分の合計含有率が80%w/w以上(例、80?100%w/w;好ましくは80?90%w/w)である、上記2)の組成物(ここで、該組成物は、EPAエチルエステルおよびDHAエチルエステル以外のω3-脂肪酸アルキルエステルを含んでもよい); 4)EPAエチルエステルを40%w/w以上(例、40?66%w/w;好ましくは40?50%w/w)かつDHAエチルエステルを34%w/w(例、34?60%w/w;好ましくは34?45%w/w)以上含有する、上記3)の組成物(ここで、EPAエチルエステルとDHAエチルエステルとの合計含有率は80%w/w以上である。また、該組成物は、EPAエチルエステルおよびDHAエチルエステル以外のω3-脂肪酸アルキルエステルを含んでもよい); 5)欧州薬局方名OMEGA-3-ACID ETHYL ESTERS 90で特定される、上記4)の組成物; を挙げることができる(以上において、%w/wは、カプセル内容物の全重量に対する医薬活性成分の含有比率である)。 上記1)?5)の医薬活性成分組成物は、医薬活性成分であるω3-脂肪酸アルキルエステルのみで構成されていてもよいし、医薬活性成分以外の添加剤をさらに含んでいてもよい。 このような添加剤としては、後述するものが挙げられるが、なかでも、安定化剤(好ましくは、α-トコフェロール)が好ましい。安定化剤を用いる場合、医薬活性成分組成物におけるその含量は、0.3?0.5%w/wである。 【0021】 医薬活性成分組成物は、溶液、エマルション、サスペンジョン、その他の液剤の形でシームレスカプセルの製造に使用することができる。医薬活性成分自体が液状の場合には、そのまま使用することもできる。 【0022】 ここで、医薬活性成分組成物の重量と、「ゼラチンおよび可塑剤の合計重量」との重量比は、通常10:1?1:10、好ましくは10:1?1:3である。 【0023】 シェルの重量とカプセル内容物の重量との重量比は、通常10:1?1:10で、好ましくは3:1?1:10である。 これらの記載によれば、本件特許の願書に添付した明細書には、「カプセル内容物」の例として、「医薬活性成分」が記載され、シームレスカプセルに医薬活性成分を内封する場合は、「医薬活性成分組成物」の形で内封されること、そして、具体的な医薬活性成分組成物の例として、欧州薬局方名OMEGA-3-ACID ETHYL ESTERS 90で特定される組成物が記載されていることを踏まえると、この訂正事項2に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてするものである。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、訂正前の請求項12に記載された「医薬活性成分組成物」という用語を、当該請求項が引用する請求項1?11に記載の発明との平仄をとるため、「カプセル内容物」と訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 また、本件特許の願書に添付した明細書には、上記「(2)訂正事項2について」で摘示したとおりの記載がある。 これらの記載によれば、本件特許の願書に添付した明細書には、「カプセル内容物」の例として、「医薬活性成分」が記載され、シームレスカプセルに医薬活性成分を内封する場合は、「医薬活性成分組成物」の形で内封されること、具体的な医薬活性成分組成物の例として、欧州薬局方名OMEGA-3-ACID ETHYL ESTERS 90で特定される組成物が記載されていること、医薬活性成分組成物の重量と、「ゼラチンおよび可塑剤の合計重量」との重量比は、通常10:1?1:10、好ましくは10:1?1:3であることが記載されていることを踏まえると、この訂正事項3に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてするものである。 (4)訂正事項4 訂正事項4は、訂正前の請求項15を削除するものであるから、この訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。また、この訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてするものである。 (5)訂正事項5 訂正事項5は、訂正前の請求項14に記載の可塑剤について、その種類を「グリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびソルビトールから選択される1種または2種以上」のものであることを特定するものであるから、この訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 また、特定されることとなる可塑剤の種類は、明細書の段落【0016】に記載されているから、この訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてするものである。 (6)訂正事項6 訂正事項6は、訂正前の請求項14に記載のシームレスカプセルのシェルに関し、「シェルの厚みの最小/最大比が0.6以上である」ことを特定するものであるから、この訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 また、特定されることとなるシェルの厚みの最小/最大比については、訂正前の請求項15及び明細書の段落【0010】、【0035】に記載されているから、この訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてするものである。 4 小括 上記「3 訂正の適否についての判断」において述べたとおり、平成30年10月19日付け訂正請求書による訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項に規定する要件に適合するものである。 よって、結論のとおり本件訂正を認める。 第3 本件特許発明 上記訂正の結果、本件特許の請求項1?18に係る発明(以下、本件特許の請求項1?18に係る発明を、それぞれ、「本件特許発明1」?「本件特許発明18」といい、まとめて「本件特許発明」ということがある。)は、本件訂正特許請求の範囲の請求項1?18に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 液中滴下法により製造された、ゼラチンおよび可塑剤を含有し、かつ、界面張力調整剤またはゲル化促進剤を含有しないシェル組成物により形成されたシェル、および、界面張力調整剤またはゲル化促進剤を含有しないカプセル内容物からなるシームレスカプセルであって、該滴下法に用いられる装置の多重ノズル付近で、「界面張力調整剤またはゲル化促進剤を含有せず、EPAエチルエステル40%w/w以上、かつ、DHAエチルエステル34%w/w以上含有するカプセル内容物」、「ゼラチンおよび可塑剤を含有し、かつ、界面張力調整剤またはゲル化促進剤を含有しないシェル組成物により形成されたシェル組成物水溶液」、および、「キャリア液」の各々を温度制御することにより製造されたシームレスカプセル、 ここで、該可塑剤が、グリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびソルビトールから選択される1種または2種以上であり、 シェルの厚みの最小/最大比が0.6以上であり、 該温度制御が、以下の温度である、 「カプセル内容物」の温度を、5?25℃の範囲で設定値±2℃に制御すること; 「シェル組成物水溶液」の温度を、50?80℃の範囲で設定値±2℃に制御すること; 「キャリア液」の温度を、1?15℃の範囲で設定値±1℃に制御すること; 「カプセル内容物」の温度と「シェル組成物水溶液」の温度の差が、25℃以上75℃以下であること;および 「シェル組成物水溶液」の温度と「キャリア液」の温度の差が、35℃以上79℃以下であること。 【請求項2】 該温度制御が、以下の温度である、請求項1に記載のシームレスカプセル: 「カプセル内容物」の温度を、12℃?22℃の範囲で設定値±1℃に制御すること; 「シェル組成物水溶液」の温度を、60℃?70℃の範囲で設定値±1℃に制御すること; 「キャリア液」の温度を、3?11℃の範囲で設定値±0.5℃に制御すること; 「カプセル内容物」の温度と「シェル組成物水溶液」の温度の差が、38℃以上58℃以下であること; 「シェル組成物水溶液」の温度と「キャリア液」の温度の差が、49℃以上67℃以下であること。 【請求項3】 ゼラチンのゼリー強度が、200?300gである、請求項1または2に記載のシームレスカプセル。 【請求項4】 ゼラチンの粘度が、2?6mPa・sである、請求項1?3のいずれか1項に記載のシームレスカプセル。 【請求項5】 ゼラチンが、豚皮膚由来である、請求項1?4のいずれか1項に記載のシームレスカプセル。 【請求項6】 可塑剤が、グリセリンである、請求項1?5のいずれか1項に記載のシームレスカプセル。 【請求項7】 可塑剤が、ソルビトールである、請求項1?5のいずれか1項に記載のシームレスカプセル。 【請求項8】 可塑剤が、グリセリンとソルビトールとの混合物である、請求項1?5のいずれか1項に記載のシームレスカプセル。 【請求項9】 グリセリンとソルビトールとの重量比が、1:5?5:1である、請求項8に記載のシームレスカプセル。 【請求項10】 ゼラチンと可塑剤との重量比が、10:1?1:1である、請求項1?9のいずれか1項に記載のシームレスカプセル。 【請求項11】 カプセル内容物が、欧州薬局方名OMEGA-3-ACID ETHYL ESTERS 90を含有するものである、請求項1?10のいずれか1項に記載のシームレスカプセル。 【請求項12】 カプセル内容物と、「ゼラチンと可塑剤の合計」との重量比が10:1?1:10である、請求項1?11のいずれか1項に記載のシームレスカプセル。 【請求項13】 シェルとカプセル内容物との重量比が10:1?1:10である、請求項1?12のいずれか1項に記載のシームレスカプセル。 【請求項14】 以下の工程を含む、液中滴下法によりシームレスカプセルを製造する場合において、該滴下法に用いられる装置の多重ノズル付近で、「界面張力調整剤またはゲル化促進剤を含有せず、EPAエチルエステル40%w/w以上、かつ、DHAエチルエステル34%w/w以上含有するカプセル内容物」、「ゼラチン、並びにグリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびソルビトールから選択される1種または2種以上の可塑剤を含有し、かつ、界面張力調整剤またはゲル化促進剤を含有しないシェル組成物により形成されたシェル組成物水溶液」、および、「キャリア液」の各々を温度制御することを特徴とする、ゼラチン、並びにグリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびソルビトールから選択される1種または2種以上の可塑剤を含有し、かつ、界面張力調整剤またはゲル化促進剤を含有しないシェル組成物により形成されたシェル、および、界面張力調整剤またはゲル化促進剤を含有しないカプセル内容物からなる、シェルの厚みの最小/最大比が0.6以上であるシームレスカプセルの製造方法: 「界面張力調整剤またはゲル化促進剤を含有せず、EPAエチルエステル40%w/w以上、かつ、DHAエチルエステル34%w/w以上含有するカプセル内容物」の温度を、5℃?25℃の範囲で設定値±2℃に制御する工程、 「ゼラチン、並びにグリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびソルビトールから選択される1種または2種以上の可塑剤を含有し、かつ、界面張力調整剤またはゲル化促進剤を含有しないシェル組成物により形成されたシェル組成物水溶液」の温度を、50℃?80℃の範囲で設定値±2℃に制御する工程、 「キャリア液」の温度を、1℃?15℃の範囲で設定値±1℃に制御する工程、および 「界面張力調整剤またはゲル化促進剤を含有せず、EPAエチルエステル40%w/w以上、かつ、DHAエチルエステル34%w/w以上含有するカプセル内容物」の温度と「ゼラチン、並びにグリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびソルビトールから選択される1種または2種以上の可塑剤を含有し、かつ、界面張力調整剤またはゲル化促進剤を含有しないシェル組成物により形成されたシェル組成物水溶液」の温度との差が、25℃以上75℃以下である工程、 「ゼラチン、並びにグリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびソルビトールから選択される1種または2種以上の可塑剤を含有し、かつ、界面張力調整剤またはゲル化促進剤を含有しないシェル組成物により形成されたシェル組成物水溶液」の温度と「キャリア液」の温度との差が、35℃以上79℃以下である工程。 【請求項15】(削除) 【請求項16】 シェルにアイズが存在しない、請求項1?13のいずれか1項に記載のシームレスカプセル。 【請求項17】 カプセル化後、乾燥前のシェルに存在するアイズ径がシェルの平均厚みの1/2以下である、請求項1?13のいずれか1項に記載のシームレスカプセル。 【請求項18】 カプセル化後、乾燥前に測定した場合に、径がシェルの平均厚みの1/2を超えるアイズが存在しない、請求項1?13のいずれか1項に記載のシームレスカプセル。」 第4 当事者の主張及び証拠方法 1 請求人の主張する無効理由及び証拠方法 (1)請求人は、平成30年4月24日付け審判請求書及び平成30年8月1日付けで提出された審判請求書の手続補正書において、特許第5047285号の請求項1?18に係る特許は、これを無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めた。そして、請求人の主張する無効理由は、以下の無効理由1及び2であり、証拠方法として下記の書証を提出している(以下、甲第1号証、乙第1号証等を、甲1、乙1等として省略して記載する。)。 ・無効理由1(甲4を主引例とする進歩性欠如) 訂正後の請求項1?13、15?18及び請求項14に係る発明は、甲4記載の発明と、甲1?甲3、甲5?甲14及び甲20?甲22に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。したがって、訂正後の請求項1?13、15?18及び請求項14に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 ・無効理由2(サポート要件違反) 訂正後の請求項1?13、15?18及び請求項14に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえず、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。 なお、令和元年5月14日に開催された口頭審理の調書に記載されるとおり、請求人が審判請求時に主張していた、以下の二つの無効理由は撤回されている。 ・本件特許の請求項1?13に係る発明に対する、甲1、甲3及び甲5の組合せに基づく進歩性欠如の無効理由 ・本件特許の請求項1?13に対する明確性要件違反の無効理由 (2)証拠方法 甲1:欧州特許出願公開第1157692号明細書 甲2:国際公開第2004/056370号 甲3:国際公開第2005/079853号 甲4:特表2006-512944号公報 甲5:米国特許出願公開第2009/0304784号明細書 甲6:「Handbook of Pharmaceuetical Excipients」(2005年8月改訂)第295頁?第298頁 甲7:「Omega-3 acid Ethyl Esters90」(ヨーロッパ薬局方 第5版、2005年1月発行)第2142頁?第2143頁 甲8:米国特許出願公開第2006/0110442号明細書 甲9:米国特許第5362564号 甲10:特開2001-238934号公報 甲11:米国特許第5502077号 甲12:米国特許第5656667号 甲13:特開平8-026976号公報 甲14:浅田雅宣著「シームレスカプセルの基礎と応用」(食品ハイドロコロイドシンポジウム、2005年、第16巻)第34頁?第38頁 甲15:ω-3脂肪酸に関するWikipedia(中国語版) URL:https://zh.wikipedia.org/wiki/%CE%A9-3%E8%84%82%E8%82%AA%E9%85%B8 甲16:可塑剤に関するWikipedia URL:https://ja.wikipedia.org/wiki/可塑剤 (以上、平成30年4月24日付け 審判請求書に添付。) 甲17:甲第7号証の補足情報(出版元) URL:https://www.amazon.com/European-Pharmacopoeia-Main-2005-Supplements/dp/9287152810 甲18:甲第7号証の補足情報(インデックス) 甲19:甲第14号証が収載されているデータベースにおける書誌事項 URL: http://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=200902259689903911&q=%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%82%AB%E3%83%97%E3%82%BB%E3%83%AB%E3%81%AE%E5%9F%BA%E7%A4%8E%E3%81%A8%E5%BF%9C%E7%94%A8&t=0 (以上、平成30年8月1日付け 手続補正書に添付。) 甲20:シームレスカプセル製造装置の「キャリア液」温度の設定画面を示す写真 甲21:シームレスカプセル製造装置の各ユニット温度の管理画面を示す写真 (以上、平成31年4月22日付け 口頭審理陳述要領書に添付。) 甲22:第1試験、第2試験に関する実験成績証明書 (以上、令和元年5月28日付け 上申書に添付。) 2 被請求人の主張及び証拠方法 (1)被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、請求人が主張する上記無効理由1及び2はいずれも理由がない旨主張し、証拠方法として下記の書証を提出している。 (2)証拠方法 乙1:特許・実用新案審査基準の第III部第2章第4節6.2及び第II部第2章第3節4.3 乙2:宮下和夫、オレオサイエンス、第6巻第12号、p.585-591(2006) 乙3:高橋是太郎、油化学、第40巻第10号、p.931-941(1991) 乙4:Soon-Yeong Cho et al.、J.Am.Oil Chem.Soc.、64、p.876-879(1987)及びその抄訳文 乙5:斎藤衛郎、栄養学雑誌、Vol.59、No.1、p.1?18(2001) 乙6:本件特許の審査過程において平成24年6月8日付けで提出された意見書 乙7:特許・実用新案審査ハンドブック第II部第2章2205、p.12-19 (以上、平成30年10月19日付け 審判事件答弁書に添付。) 乙8:最新製剤学 第2版、平成19年3月10日第2版1刷発行、254頁 乙9:Australian Public Assessment Report for Omega-3-acid ethyl esters 90、 October 2010、 p.120-133 (公開日2010年11月3日) [https://www.tga.gov.au/sites/default/files/auspar-omacor.pdf]及びその抄訳文 (以上、平成31年4月22日付け 口頭審理陳述要領書に添付。) 乙10:株式会社フィスコホームページ、企業調査レポート、「フロイント産業」、2013年11月12日、https://cf.pfdata.fisco.jp/data/report/20140805/freundcorporation20131112.pdf 乙11:特開平5-200275号公報 (以上、令和元年6月25日付け 上申書に添付。) 第5 1 各甲号証の記載 甲1?甲14及び甲22には、それぞれ、以下の記載がある。外国語で記載された文献については、合議体の翻訳で示す。 (1)甲1 (1a)「1.少なくとも80重量%の5、8、11、14、17-エイコサペンタエン酸(EPA)酸C20:5ω-3(全ての二重結合がシス)及び酸4、7、10、13、16、19-ドコサヘキサエン酸(DHA)C22:6ω-3(二重結合はいずれもシス)を含み、上記EPA:DHAの比は、0.9:1.5であり、他のω-3酸C20、C21及びC22は、3%未満が構成され、かような酸は、遊離酸またはその塩または他の薬剤学的に許容される誘導体の形態で存在する組成物。」(請求項1) (1b)「実施例 11 [0096]軟質ゼラチンカプセル 1gの調製 組成物 -多重不飽和脂肪酸のエチルエステル(EPA+DHA >85%; mg1000 EPA/DHA = 0.9-1.5; その他ω-3 C20、C21及びC22、 総量 < 3%) -D、L-α-トコフェロール mg 0.3 -ゼラチンスクシネート mg 233 -グリセロール mg 67 -エチルp-ヒドロキシベンゾ酸ナトリウム mg 1.09 -プロピルp-ヒドロキシベンゾ酸ナトリウム mg 0.54 総量 約mg1300 調製方法 [0097]脂肪酸エステルと賦形剤の組成を秤量して高速撹拌機を有するタンクで均質化する。 [0098]次いで、混合物をコロイダルミル(colloidal mill)で処理してステンレス鋼容器で脱気させる。従来の装置及び方法を利用して軟質ゼラチンカプセルに含める。」 (2)甲2 (2a)「1. 少なくとも(全-Zオメガ-3)-5、8、11、14、17-エイコサペンタエン酸(EPA)及び(全-Zオメガ-3)-4、7、10、13、16、19-ドコサヘキサエン酸(DHA)を含み、ここで脂肪酸組成物中のEPA:DHAの重量比は、1:X(ここで、Xは>1)である、男性不妊の予防または治療用薬学組成物の製造のための脂肪酸組成物の用途。」(請求項1) (2b)「薬学的製剤の実施例 0.75 g/カプセルを含有する軟質ゼラチンカプセルの組成: EPA 180mg/カプセル DHA 420mg/カプセル コビトール F-1000 3mg/カプセル コビオックス T-70 1.1mg/カプセル トコフェロール 4mg/カプセル」(24ページ30?37行) (3)甲3 (3a)「1. オメガ-3多価不飽和脂肪酸の遊離酸型又は薬理学的に許容されるその誘導体の少なくとも一つを含む医薬製剤を含有する軟ゼラチンカプセルであって、コラーゲン源の酸による前処理工程を含む抽出プロセスによって抽出されるゼラチンを有することを特徴とする軟ゼラチンカプセル。 2. 製剤が5、8、11、14、17-エイコサペンタエン酸(すなわち「EPA」)を含む、請求項1に記載の軟ゼラチンカプセル。 3. EPAが製剤の少なくとも約50重量%の量存在する、請求項2に記載の軟ゼラチンカプセル。 4. EPAが製剤の約50重量%?約60重量%の間の量存在する、請求項2又は3に記載の軟ゼラチンカプセル。 5. EPAが製剤の少なくとも約90重量%の量存在する、請求項2又は3に記載の軟ゼラチンカプセル。 6. 製剤が4、7、10、13、16、19-ドコサヘキサエン酸(すなわち「DHA」)を含む、請求項1?5のいずれか1項に記載の軟ゼラチンカプセル。 7. 請求項1?4のいずれか1項から依存する範囲で、DHAが製剤の約20重量%?約30重量%の間の量存在する、請求項6に記載の軟ゼラチンカプセル。」(請求項1?7) (3b)「Aタイプゼラチンのカプセルを作製し、同時に公知の方法でオメガ-3多価不飽和脂肪酸製剤をその中に封入した。ブタのAタイプゼラチン粉末を水及び可塑剤と混合し、次いで加熱して、融解したゼラチンの塊を作製した。融解したゼラチンから二枚の薄いひも状のものを製造し、カプセルの形状を決定する二つのダイロールの間を通過させた。」(10ページ1?5行) (4)甲4 (4a)「【請求項1】 液体コアとこのコアを包囲しているシームレス固体シェルを有する球状カプセルであって、 - カプセルの直径が、4 - 8 mmの範囲にあり、 - シェルの厚みが、20 - 200 μmの範囲にあり、 - シェル厚とカプセル径との比が、0.004 - 0.04の範囲にあり、 - シェルが、シェルの固形分に基づいて、70 - 90 質量% のゼラチンと10 - 30 質量% の可塑剤を含有し、 - コアの香味剤含量が、コアの全質量に基づいて、1 - 100 質量% の範囲にある、 前記カプセル。 【請求項2】 - カプセルの直径が、4.5 - 6.5 mm、好ましくは4.5 - 5.5 mmの範囲にあり、 - シェルの厚みが、50 - 150 μm、好ましくは50 - 90 μmの範囲にあり、 - シェル厚とカプセル径との比が、0.01 - 0.03、好ましくは0.01 - 0.02の範囲にあることを特徴とする、請求項1記載のカプセル。 【請求項3】 シェルが、ゼラチンと可塑剤を含有する混合物から調製され、ゲル化点が15℃?60℃、好ましくは20℃?40℃、特に好ましくは25℃?35℃の範囲にあることを特徴とする、請求項1又は2記載のカプセル。 【請求項4】 (a) ブルーム値が少なくとも200、好ましくはブルーム値が240 - 300の範囲にあるゼラチンを、シェルの調製に用いることを特徴とする、請求項1?3のいずれか1項に記載のカプセル。 【請求項5】 更に、(b) ブルーム値が0のゼラチン及び/又はブルーム値が < 200の魚ゼラチンを用いることを特徴とする、請求項4記載のカプセル。 【請求項6】 魚ゼラチンが冷水魚ゼラチンであり及び/又はゲル化点が < 20℃である、請求項1?5のいずれか1項に記載のカプセル。 【請求項7】 液体コアが、ソーマチン、ネオヘスペリジン、ミラキュリン及びその混合物からなる群より選ばれた甘味剤を含有することを特徴とする、請求項1?6のいずれか1項に記載のカプセル。 【請求項8】 シェル中の可塑剤の濃度が、シェルの全固形分に基づいて、10 - 30 質量% 、好ましくは15 - 20 質量% であることを特徴とする、請求項1?7のいずれか1項に記載のカプセル。 【請求項9】 可塑剤が、好ましくは、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール及びマルチトールからなる群より選ばれた1種以上のポリオールを含むことを特徴とする、請求項1?8のいずれか1項に記載のカプセル。 【請求項10】 ゼラチンが、ブタゼラチン、ウシゼラチン、ニワトリゼラチン、魚ゼラチン及びその混合物からなる群より選ばれたことを特徴とする、請求項1?9のいずれか1項に記載のカプセル。 【請求項11】 シェルが、好ましくは、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムK、ソーマチン、サッカリンNa、ネオヘスペリジン及びその混合物からなる群より選ばれた甘味剤を含有することを特徴とする、請求項1?10のいずれか1項に記載のカプセル。 【請求項12】 シェルが、ゲランゴムを含有することを特徴とする、請求項1?11のいずれか1項に記載のカプセル。 【請求項13】 シェルが、シェルの固形分に基づいて、0.4 - 3 質量% のゲランゴムを含有することを特徴とする、請求項1?12のいずれか1項に記載のカプセル。 【請求項14】 請求項1?13のいずれか1項に記載のカプセルの調製方法であって、液体コア材料とゼラチン含有硬化可能なシェル混合物が、同時に同心多成分ノズルにポンプで送りこまれ、その結果、冷却液へ滴下しカプセルが形成されることを特徴とする、前記方法。 【請求項15】 シェル混合物がゼラチンと可塑剤を含有することを特徴とする、請求項1?13のいずれか1項に記載のカプセルの調製に用いられる硬化可能なシェル混合物。 【請求項16】 液体コアとこのコアを包囲しているシームレス固体シェルを有する球状カプセルのシェルの硬度と溶解力を調製するための(a)ブルーム値が少なくとも200のゼラチンと(b)ブルーム値が0のゼラチン及び/又は魚ゼラチンからなる混合物の使用。」(特許請求の範囲) (4b)「【0001】 本発明は液体コアとこのコアを包囲しているシームレス固体シェルを有する球状カプセルに関する。これらのカプセルのコアは香味成分を含み、シェルはゼラチンを含んでいる。本発明は、また、そのようなカプセルを調製する方法及び本発明のカプセルの調製に用いられる硬化可能なシェル混合物(シェル製剤)に関する。本発明のカプセルは、それらが更に処理せずに直接の消費に適し、また、シェルが気にならずに飲み込むことができ口で噛むこともできることを特徴とする。 【0002】 香味剤は、食品においては食味効果を達成するために用いられている。本発明の意味においては、香味剤は1種又は複数の感覚受容特性を有する単一物質(1種の香味剤)又は複数の物質の混合物(複数の香味剤)であると理解すべきである。これらの感覚受容特性には特定のにおい又は味を混合物に与えるという特性や特定の刺激を引き起こすという特性が含まれ、それらは三叉神経を経て伝達されるので感知される。 香味剤の溶媒として用いられ、それ自体は中立のにおいと味をもつ、油、例えば、植物油や他のトリグリセリドは下記の香味剤としてみなされない。・・・」 (4c)「【0004】 液体コアとこのコアを包囲している固体シェルを有する球状カプセルは既知であり、直径が4mmを超えるカプセルは、例えば、回転ダイ法によって又は、特に興味があるシームレスシェルを有するカプセルの場合には、多成分ノズルを用いたドリップ法によって調製することができる(Bauer、 Froemming、 Fuehrer; Pharmazeutische Technologie; 1997を参照のこと)。この方法は、また、下記の多成分ノズル法と称される。これに関連して(異なることが何も生じない限り)多成分ノズル法に対する基準は、シームレスカプセルの調製のための多数の関連した方法の基準として理解すべきである。・・・ 【0005】 多成分ノズル法では、シームレスシェルを有するカプセルがドリップ法によって調製される。この方法においては、親油性コア材料と熱いゼラチン溶液が通常は同時に同心多成分ノズルによってポンプで送られるので、それらは冷たい親油性冷却液、例えば、植物油へ滴下する。この方法においては、ノズルが冷却液へ直接滴下させ得る。滴下したとき、カプセルは表面張力の結果としてボール形(球状形)をとる。冷却液との接触時の温度での落下の結果として、ゼラチン含有シームレスカプセルシェルが固化する。・・・」 (4d)「【0012】 シェルの組成物: シェル混合物の粘度/ゲル化点: 多成分ノズル法によって本発明のカプセルを成形する場合、硬化性シェル混合物の粘度とゲル化特性に特に注意を払われなければならない。低すぎる粘度又は低すぎるゲル化点は、湿潤状態において十分に固体であるカプセルシェルを妨げる。対応するカプセルは、処理段階、例えば、遠心分離で機械的に破壊される。高すぎる粘度と高すぎるゲル化点は、一方では、正しいカプセル成形を妨げ、更に、望まれていないかなりの付随形成を引き起こす。 【0013】 本発明のカプセルを調製するための好ましいシェル混合物の粘度は、CVO 120レオメータ(Bohlin Instruments GmbH, Pforzheim)を用いて求めた。測定系は、プレート直径が50mmのプレート-プレート系を用いた。測定は、回転を用いて行った。せん断速度は、50s^(-1)であった; 溝は、500μmに設定した。測定は等温で行った; 温度は、80℃であった。 80℃における好ましいシェル混合物の粘度は、30 mPas?300 mPas、好ましくは40 mPas?150 mPas、特に好ましくは50 mPas?90 mPasの範囲にある。 本発明のカプセルを調製するための好ましいシェル混合物のゲル化点は、同様に、CVO 120レオメータ(Bohlin Instruments GmbH, Pforzheim)を用いて求めた。測定系は、プレート直径が50mmのプレート-プレート系を用いた。測定は、振動を用いて行った。周波数は1Hzで一定であり、溝は500のμmに設定し、温度は5℃/minの勾配で80℃?10℃下げた。粘度又はメモリモジュールG'が弾性係数又は損失弾性係数G''に等しい温度はゲル化点、ゾル/ゲル転移点(Thomas Mezger, Das Rheologie Handbuch, 2000))として読み取った。 本発明の好ましいシェル混合物のゲル化点は、15℃?60℃、好ましくは20℃?40℃、特に好ましくは25℃?35℃である。 (4e)「【0014】 ゼラチン: 本発明のカプセルのシェルは、ゼラチンと可塑剤を含有する。ゼラチンと可塑剤のグレードと量は、口中でのシェルの溶解度速度論に対して影響する。 カプセル成形の場合、10 - 40 質量% 、好ましくは15 - 30 質量% 、特に好ましくは18 - 25 質量% のゼラチンを含有する水溶液をシェルに用いることが好ましい。 本発明のカプセルにおいて用いられるゼラチンは、多くの場合、動物、例えば、豚、牛、魚又は家禽からのコラーゲン含有材料の部分加水分解によって得られる。A型ゼラチンは、通常はブタ又は魚皮の酸消化によって得られ、B型ゼラチンは、通常は牛の骨や皮膚のアルカリの消化によって得られる。 ブルームという用語は、ゼラチンのゲル強度を特徴づけるするために用いられる。ブルーム値の定量においては、ブルームゲルメータ又はテクスチャアナライザの押し型直径12.7mm(0.5インチ)を測定の前に10℃で18時間熟成した6.67%のゼラチンゲルへ4mmの深さへ押圧する。結果は、“ブルーム"で示され、圧痕深さを達成するために押し型に加えるグラム重量に対応している(Schormueller、 Handbuch der Lebensmittelchemie、 Volume III、 1968 、British Standard Method for Sampling and Testing Gelatine (BS757; 1975))を参照のこと)。 【0015】 好ましくはブルーム値が200を超えるゼラチン、特に好ましくはブルーム値が240 - 300のゼラチン、特に好ましくはA型ゼラチンが本発明のカプセルの調製に用いられる。この手段によってカプセルシェルの厚みが薄いにもかかわらず、カプセル調製の間、また、輸送の間、シェルの十分な安定性を可能にする。 牛、家禽又は魚から得られたゼラチングレードもまた、本発明のカプセルの調製に適している。これに関連して、いずれにせよ、すでに述べたように、粘度とゲル化特性を正しく調整することに注意しなければならない。用いることができる魚ゼラチンは、冷水魚グレードと温水魚グレード双方である。異なるゼラチングレードの混合物も用いることができる。詳細は、実施例から取り出すことができる。」 (4f)「【0020】 可塑剤: 使用し得る可塑剤は、特に、ポリオール、例えば、ソルビトール、グリセロール、プロピレングリコール、ラクチトール、水和した加水分解デンプン、トレハロースである。可塑剤部分は、カプセルシェルの硬度を低下させ、口中での溶解性を改善するるという点でカプセルの消費特性を改善する。更に、可塑剤は、シェルの可撓性、従って、カプセル乾燥の間、また、輸送の間の安定性を促進させる。 本発明のカプセルに好ましい可塑剤含量は、シェルの全固形分に基づいて30 質量% 以下である。多量の可塑剤は、カプセルの乾燥を更に難しくし、大気中の湿気を除外する包装を用いることを必要とする。 可塑剤は、シェルにおいてシェルの固形分に基づいて好ましくは10 - 30 質量% 、特に好ましくは15 - 20 質量% の割合で用いられる。可塑剤、好ましくは1種以上のポリオールを含み、好ましくは、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール及びマルチトールからなる群より選ばれる。グリセロールは、好ましい可塑剤である。 30 質量% を超える可塑剤含量は、本発明のカプセルの乾燥が難しくなり、しばしば、シリカのような凝結防止剤を用いることを必要とする。しかしながら、光学的理由から本発明のカプセルが、一般に、透明な光沢のあるシェルを有することが企図されるので、シリカの使用は望ましくない。 10 質量% 未満の可塑剤含量は、本発明のカプセルのカプセルシェルをますますもろくすることを可能にする。 実験から、ソルビトールの場合、シェル中15 質量% を超える含量がカプセル乾燥による問題をすでに引き起こし得るものであり、更に凝結防止剤の望まない使用が必要となることがわかった。」 (4g)「【0028】 コア液: 本発明のカプセルが多成分ノズル法によって調製される場合、コア液は疎水性であり、水溶液と二相系を形成することができる。 本発明の大きなカプセル(カプセルの直径が4 - 8 mmの範囲、シェルの厚みが20 - 200 μmの範囲)の消費時に比較的多量の液体が直接口へ入る。これには、できる限り強い直接の香味圧痕が引き起こされなければならない。 それ故、香味剤と植物油又はトリグリセリドの混合物をコア液に用いることが好ましい。混合物は、室温で透明溶液であることが好ましく、10℃でもなお透明溶液であることが好ましい。適切な香味剤の例は、合成及び天然の香味剤及びその混合物、また、植物、葉、花、果物等の含油樹脂又はエキス、及びその組み合わせである。ハッカ油、スペアミント油、ユーカリ油、ケイ皮油、カッシア油、アニス油、ビターアーモンド油、丁字油、柑橘類の油、志向された味を有するフルーツのような香味剤組成物、例えば、リンゴ、洋梨、桃、ブドウ、イチゴ、キイチゴ、サクランボ又はパイナップル、個々の成分、例えば、メントール、メントン、酢酸メンチルを含む系列からの香味剤を用いることが好ましい。」 (4h)「【0031】 液体コア中の油: 香味剤を希釈するのに適した油は、特に、主にC6-C8脂肪酸基を含有する特定のヤシ油が用いられる。これらの油は、中立の味、また、酸化に対して良好な安定性を特徴とする。 液体コア(任意)のその他の成分: 着色物質、ビタミン及び/又は植物性抽出物が、コア液に添加し得る。」 (4i)「【0034】 外観: 本発明のカプセルは、球形(球状)である。本発明のカプセルは、多成分ノズル法によって調製し得る。本発明の球状カプセルの最大直径と最小直径間の比は1.2以下、好ましくは1.1以下である。比が大きくなるにつれて、シェル厚は不均一になり、カプセルは機械的に不安定になる。 本発明のカプセルのシェルは、好ましくは透明で光沢がある。それ故、分離剤は、乾燥の間又は乾燥後の充填の間、用いてはならない。透明なシェルを達成するために、添加剤が、有益な他の特性を有し、例えば、口中でシェルの溶解性に有益な効果を有する、例えば、セルロールとしても、シェル混合物にシェルを混濁させる添加剤を用いてはならない。」 (4j)「【実施例】 【0035】 本発明の好適実施態様を、実施例に基づいて以下更に詳細に説明する。 実施例1-29: 本発明のカプセルの調製方法-一般手順(浸漬したノズルによる多成分ノズル法)。 シェル混合物の添付の表“実施例1 - 29" に示された成分を共に添加し、気泡が本質的にない透明溶液が形成されるまで水浴中で80℃に加熱する。好ましくは、固形分が20 - 40 質量% の溶液を用いる。 コア液を、10 - 20℃で調製する。 シェル液体とコア液を、同心二成分ノズルにポンプ系によって供給する。シェル液体のためのラインは、この動作の間、60 - 80℃に保たれる。同心二成分ノズルは、植物油で充填された液浴の中に浸漬している。この油浴の温度は、約14℃である。 液体の追加の振動刺激からの支持により、ノズルから油浴へ出ている噴流が、コアとシェルからなるシームレスカプセルである個々の液滴に崩壊する。 付着している油は遠心分離によってカプセルから除去されるが、カプセルはなお湿っており、次に、カプセルを乾いた気流の連続運動によって乾燥する。従来の渦乾燥機又はドラム乾燥機が使用し得る。良好な乾燥結果の必要条件は、カプセルが回転によって又は乱気流によって動きを保ち得ることである。場合によっては、このためにアンチブロッキング剤を用いることが望ましい。 しかしながら、ほとんどの場合、アンチブロッキング剤の使用は望ましくない。特に、シェル混合物の組成物が、乾燥の間、アンチブロッキング剤、例えば、シリカを用いて調合することができるように選ばれる場合には、透明で光沢があるシェルが得られるが、それにもかかわらずカプセルの粘着がない。」 (4k)「【0036】【表1】 」 (4m)「*注:付着している残存水は大気中の湿度に左右されるので変化し得る」(【0040】【表5】の末尾) (4n)「【0041】【表4】 」 (5)甲5 (5a)「シームレスカプセルは、コア及びシェルを含み、前記コアは、少なくとも1つの多重不飽和脂肪酸及び少なくとも1つの香料成分を含む。前記カプセルを製造するための方法及び前記カプセルを含む製品も開示される。」(要約) (5b)[0008]多重不飽和脂肪酸(PUFA)は、8個以上の炭素脂肪族鎖上に2個以上の二重結合を有する脂肪酸を意味する。PUFAは、一般的に脂肪酸鎖の末端炭素原子から3Cまたは6Cである末端二重結合の位置に基づいて2個のシリーズにグループ化され、オメガ-3及びオメガ-6脂肪酸とも指称される。オメガ-3脂肪酸は、リノレン酸(LA)、アルファリノレン酸(ALA)、エイコサペンタエン酸(EPA)及びドコサヘキサエン酸(DHA)を含むが、それらに限定されない。オメガ-6脂肪酸は、リノレン酸(LA)、ガンマ-リノレン酸(GLA)、アラキドン酸(AA)及びジホモ-ガンマ-リノレン酸(DGLA)を含むが、それらに限定されない。本発明の意味において、「脂肪酸」、「多重不飽和脂肪酸」又は「PUFA」という用語は、前記酸の塩、エステル及びグリセリド、特にトリグリセリドを含む。」 (5c)「[0020]本発明の一実施形態によれば、カプセルのシェルは、ゼラチンを単独で含むか、あるいは他のゲル化剤及び可塑剤、例えば、ソルビトール、グリセリン、マンニトール、プロピレングリコールまたは任意の他のポリオールと組み合わせてゼラチンを含む。」 (5d)「実施例2 RASPBERRY PUFA カプセル [0044]コア溶液は、下記処方にしたがって製造される。 [0045]Lonza社製Lonza DHA-CL DHA-CLR 50% [0046]MANE社製ラスベリー香 17.82% [0047]Huls社製ミグリオール(Miglyol) 812S 27.18% [0048]エタノール 5% [0049]フィルム溶液は、下記処方にしたがって製造され、60℃で4時間加熱される。 [0050]ゼラチン豚型(Gelatine Pork type) 250 A 19.8% [0051]Roquette社製ソルビトールネオソルブ(Sorbitol Neosorb) 2.7% [0052]水 77.5% [0053]二溶液を押出して、コアの質量が68%で、1mmサイズの完璧なシームレス球形カプセルを得る。各カプセルの総重量は、0.7mgであり、1カプセル当り34%PUFAを供給することができる。カプセルは、快適なラスベリー香を有する。・・・」 (5e)「1. コア及びシェルを含み、前記コアが少なくとも1つの多重不飽和脂肪酸及び少なくとも1つの香料成分を含む、シームレスカプセル。 ・・・ 8.前記少なくとも1つの多重不飽和脂肪酸がDHA、EPA又はこれらの組合せを含む請求項1記載のシームレスカプセル。 ・・・ 18.前記シェルは、ゼラチンを単独で含むか、あるいは他のゲル化剤及び可塑剤、例えば、ソルビトール、グリセリン、マンニトール、プロピレングリコールまたは任意の他のポリオールと組合わせられるものである、請求項1記載のカプセル。」 (6)甲6 (6a)「11 安定性及び保存条件 乾燥ゼラチンは、空気中で安定している。また、水性ゼラチン溶液は、冷却されて、無菌状態で保管するならば、長期間安定している。約50℃以上の温度で、水性ゼラチン溶液は、リセット(resetting)時に、遅い解重合(depolymerization)及びゲル張力の減少が発生しうる。解重合は、65℃以上の温度でさらに速くなり、溶液を80℃で1時間加熱するとき、ゲル強度が半分に減少する。解重合の速度及び程度は、ゼラチンの分子量によって変わり、低分子量物質はさらに早く分解される。(10) ゼラチンは、乾燥熱(乾熱)で滅菌される。 大量の材料(bulk material)は、低温の乾燥した場所に密閉容器に保管せねばならない。」(296ページ右欄 項11) (6b)「13 製造方法 ゼラチンは、皮膚、筋肉及び骨のようなコラーゲンの豊富な動物組織から抽出される。熱湯を使用し、これら物質からゼラチンを抽出することが可能であるが、まず酸またはアルカリで動物組織を前処理することがさらに実用的である。酸工程で得たゼラチンをタイプAとし、アルカリ工程で得たゼラチンをタイプBとする。 米国では、ほとんどのA型ゼラチンが豚肌から得られる。」(297ページ左欄1?8行) (7)甲7 (7a)「オメガ-3酸エチルエステル90 ・・・ 成分: -EPA及びDHAエチルエステル:少なくとも80%、EPAエチルエステルの少なくとも40%及びEHAエチルエステルの少なくとも34%を有する。 -総オメガ3酸エチルエステル:少なくとも90%」(2142ページ右欄1?19行) (8)甲8 (8a)「【0050】本発明によるカプセルに使用されるゼラチンは、多くの場合、豚、牛、魚類または家擒類のような動物からのコラーゲン含有物質の部分加水分解によって収得される。タイプAゼラチンは、酸性分解によって得られ、通常、豚または魚類の皮膚であり、タイプBゼラチンは、アルカリ性分解によって得られ、通常、牛の皮膚と肌によって得られる。」 (8b)「【0069】シェルの製造に使用される可塑剤は、特にポリオール、例えば、ソルビトール、グリセロール、プロピレングリコール、ラクチトール、水和した加水分解澱粉及びトレハロースである。可塑剤分画は、コーティングのないカプセルのシェル(殻)の硬度を減少させ、口内の溶解度を改善するという点で、カプセルの消費特性を改善する。さらに、可塑剤は、シェルの柔軟性を促進させ、よって、コーティングのないカプセルの乾燥の間、及び運送中に安定性を促進させる。 【0070】望ましい可塑剤含量は、シェルの全体固形分含量を基準に30%(m/m)以下である。可塑剤の含量が高いほどコーティングのないカプセルを乾燥し難くなり、大気中の湿度を遮断する包装材を使用せねばならない。 【0071】可塑剤は、シェルの固形分含量を基準に10-30%(m/m)、特に望ましくは、15-20%(m/m)の割合でシェルで望ましく使用される。可塑剤は、望ましくは、1つ以上のポリオール、望ましくはグリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール及びマルチトールからなる群から選択されるポリオールを含む。グリセロールは、望ましい可塑剤である。」 (9)甲9 (9a)「実施例 1 溶液 Iとして水(100%)を使用し、4.2mmφのカプセルを製造した。 ______________________________________ (製剤1) 成分含量 含有率(%) ______________________________________ 溶液 I: 水(100%)100 70 溶液 II: 蔗糖脂肪酸エステル100 20 (SAIB) 溶液 III: ゼラチン20 D-ソルビトール5 10 水 75 ______________________________________ 同心三重ノズル(concentric triplex nozzle)を使用し、内部ノズルから水(100%)(溶液I)を押出し、中間ノズルから80℃で加熱したSAIB溶液(溶液II)を押出すると共に、ゼラチン溶液(溶液III)を外部ノズルから押出して製剤1に示すような比率の3相ジェット(three-phase jet)を形成させた後、流速0.18m/秒でジェットを、12℃に冷却した植物油にジェットを注入してシームレスカプセルを得た。かように得られたカプセルに対して、溶液Iは、乾燥中に揮発されなかった。また、軟化、液体漏れ、変形などが観察されていない。カプセルは、透明で、口内で良いテクスチャと味が感じられた。」 (9b)「実施例2 溶液Iとしてリキュール(liqueur)を使用し、3.2mmφのカプセルを製造した。 ______________________________________ (製剤2) 成分含量 含有率(%) ______________________________________ 溶液 I: リキュール 100 70 (アルコール含量 : 30%) 溶液 II: 蔗糖脂肪酸エステル100 20 (SAIB) 溶液 III: ゼラチン20 D-ソルビトール5 10 水75 ______________________________________ 実施例1の記述と同じ製造条件によって、3相ジェットが形成され、ジェットを0.30m/秒の流量で下降する12℃に冷却した植物油に注入して、シームレスカプセルを得た。 かように得られたカプセルに対して、溶液 Iは、乾燥中に揮発されなかった。また、軟化、液体漏れ、変形などが観察されていない。口内に良い感じを与える透明なリキュールカプセルを製造することができた。」 (9c)「実施例3 溶液 Iとして濃縮されたオレンジジュースを使用し、4.2mmφのカプセルを製造した。 ______________________________________ (製剤3) 成分含量 含有率(%) ______________________________________ 溶液 I: 濃縮オレンジジュース100 70 溶液 II: 蔗糖脂肪酸エステル100 20 (SAIB) 溶液 III: ゼラチン20 D-ソルビトール5 10 水75 ______________________________________ 実施例1の記述と同じ製造条件によって、3相ジェットが形成され、ジェットを 0.18 m/秒の流量で下降する12℃に冷却した植物油に注入して、シームレスカプセルを得た。 かように得られたカプセルに対して、溶液 Iは、乾燥中に揮発されていない。また、軟化、液体漏れ、変形などが観察されていない。口内に良い感じと酸度とを与える透明なオレンジジュースカプセルを製造することができた。」 (10)甲10 (10a)「【請求項1】 充填物質を皮膜物質で被覆してなるシームレスカプセルを製造する方法において、 中心ノズルと、その中心ノズルを同芯に囲む円環状ノズルとを有する同芯多重ノズルを用意するステップと、 液状の充填物質を第1のタンクにて貯溜するステップと、 液状の皮膜物質を第2のタンクにて、前記液状の皮膜物質の粘度を実質的に一定に維持する所定の第1の温度で貯溜するステップと、 液状の皮膜物質と接触することで当該皮膜物質を硬化させる硬化液を貯溜する硬化槽を用意するステップと、 前記第1のタンクから液状の充填物質を前記同芯多重ノズルの前記中心ノズルに供給すると共に、前記第2のタンクから液状の皮膜物質を前記同芯多重ノズルの前記円環状ノズルに供給するステップと、 前記中心ノズルから流出する液状の充填物質の流れと、前記円環状ノズルから流出して該充填物質の流れの周囲を流れる液状の皮膜物質の流れとを寸断して液滴を形成するステップと、 前記同芯多重ノズルからの液滴の皮膜物質を前記硬化槽に貯溜された硬化液と接触させて該皮膜物質を硬化させるステップと を含み、 前記第2のタンクから前記同芯多重ノズルの前記円環状ノズルに液状の皮膜物質を移送しながら加熱することにより該皮膜物質を徐々に昇温せしめて、前記円環状ノズルに導入時の温度が前記第1の温度よりも高い所定の第2の温度とすることを特徴とするシームレスカプセルの製造方法。」 (10b)「【0004】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来のシームレスカプセルの製造方法では、製造されたシームレスカプセルに種々の欠陥、例えば図3Aに示す大きなアイズ、図3Bに示す偏芯、図3Cに示す異形、図3Dに示すイボ付き等が生じる場合があった。本発明は、欠陥のないシームレスカプセルを効率よく製造する方法を提供することにある。 【0005】上記目的を達成するために、本発明者らは種々検討した結果、上記欠点は、同芯多重ノズルに供給された液状の皮膜物質の状態ないし物性が所望のものではない場合があることに起因することを見出した。特に、液状の皮膜物質の粘度は温度により定まるが、同芯多重ノズルに供給された皮膜物質の温度を所定温度としても、種々の要因でその粘度が極めて低くなっている場合があることを見出した。 【0006】 【課題を解決するための手段】そこで、本発明は、充填物質を皮膜物質で被覆してなるシームレスカプセルを製造する方法において、中心ノズルと、その中心ノズルを同芯に囲む円環状ノズルとを有する同芯多重ノズルを用意するステップと、液状の充填物質を第1のタンクにて貯溜するステップと、液状の皮膜物質を第2のタンクにて所定の第1の温度で貯溜するステップと、液状の皮膜物質と接触することで当該皮膜物質を硬化させる硬化液を貯溜する硬化槽を用意するステップと、第1のタンクから液状の充填物質を同芯多重ノズルの中心ノズルに供給すると共に、第2のタンクから液状の皮膜物質を同芯多重ノズルの円環状ノズルに供給するステップと、中心ノズルから流出する液状の充填物質の流れと、円環状ノズルから流出して当該充填物質の流れの周囲を流れる液状の皮膜物質の流れとを寸断して液滴を形成するステップと、同芯多重ノズルからの液滴の皮膜物質を硬化槽に貯溜された硬化液と接触させて該皮膜物質を硬化させるステップとを含み、第2のタンクから同芯多重ノズルの円環状ノズルに液状の皮膜物質を移送しながら当該皮膜物質を加熱す ることにより徐々に昇温せしめて、円環状ノズルに導入時の温度が前記第1の温度よりも高い所定の第2の温度とすることを特徴としている。 【0007】第1の温度は、第2のタンクに貯溜された液状の皮膜物質の粘度を実質的に一定に維持する温度であることが好ましい。このように、第2のタンクに貯留された液状の皮膜物質は、粘度がほぼ一定に保たれる。また、皮膜物質に対する加熱は、同芯多重ノズルに向って移送中の一定時間に限られ、かつ、最終的には常に所定の第2の温度とされるため、同芯多重ノズルから流出する液状の皮膜物質の粘度はほぼ一定となる。これにより、同芯多重ノズルから流出する液状の皮膜物質の物性ないしは状態は安定するため、欠陥の発生率が大幅に低減する。」 (10c)「【0016】 ゼラチン溶液はゼラチンタンク5内に貯溜されている間、このゼラチンタンク5の周囲に設けられている温水ジャケット9内を循環する温水により加熱されることによって、その物性、特に粘度を一定に維持することのできる温度(第1の温度)、例えば、50℃に維持されている。 【0017】(略) 【0018】(略) 【0019】(略) 【0020】(略) 【0021】(略) 【0022】かくして、ゼラチン溶液はゼラチンタンク5から同芯多重ノズル4までの移送管14a、16a、6a、17aを流れている間に、温水により加熱されることによって50℃から徐々に昇温して所定の第2の温度、例えば、80℃となって同芯多重ノズル4に流入する。 (10d)「【0033】ところで、シームレスカプセルの皮膜を構成するために用いられるゼラチン溶液は、温度が高い程、その粘度は低くなるが、高温度下に長時間置くと、加水分解によって分子が小さくなってゼラチン溶液自体が劣化する。また、ゼラチン溶液は、シームレスカプセルを形成するためには、同芯多重ノズル4から流出する際、粘度が200?500mPa・s程度であることが好ましいことが分かっている。 【0034】しかるに、ゼラチン溶液を例えば80℃の高い温度でゼラチンタンク5内に長時間貯溜すると、その分子構造が小さくなって劣化すると共に、粘度も大幅に低下する。これをそのまま同芯多重ノズル4から流出させると、シームレスカプセルの成形状態が悪くなり、図3A?図3Dに示すようなアイズ、偏芯、異形等の欠陥が多量に発生するとともに、ゼラチン溶液の硬化により形成された皮膜の強度も劣化する。 【0035】そこで、従来においては、ゼラチン溶液をタンク5内に常温で貯溜しておき、これを加熱槽内に導いてここでヒータにより加熱することによって約80℃に急速に昇温させた後、同芯多重ノズル4に供給することが提案された。しかし、この技術では、ゼラチン溶液を常温から約80℃に昇温させる際、ゼラチン溶液に局部的温度偏差や局部的な物性変化が発生し易いのみならず、同芯多重ノズル4に供給されるゼラチン溶液の温度や粘度を一定に維持するのが難しい。 【0036】この実施形態においては、ゼラチン溶液をゼラチンタンク5内に、ゼラチン溶液の物性に影響を与えない温度、少なくとも分子構造に変化を与えない温度、例えば50℃で貯溜しておくため、貯溜されている間の粘度を容易に一定に維持することができる。 【0037】そして、このゼラチン溶液を、同芯多重ノズル4への移送を行いながら、加熱することによって徐々に70℃?90℃に昇温させる。この状態でゼラチン溶液は同芯多重ノズル4に供給され、すぐにそこから流出するので、同芯多重ノズル4から流出するゼラチン溶液の温度及び粘度等の物性を一定に維持することができる。」 (11)甲11 (11a)「要約 少なくともオメガ-3-脂肪酸、その塩または誘導体を80重量%含み、ここでいずれも-Zオメガ-3)-5,8,11,14,17-エイコサペンタエン酸(EPA)及び(全-Zオメガ-3)-4,7,10,13,16,19-ドコサヘキサエン酸(DHA)は、総脂肪酸の少なくとも75%を含む脂肪酸組成物。前記組成物は、心血関係疾患に対する多数の危険因子の治療または予防に使用される。」(1ページ) (11b)「製剤の例 1g/1カプセルであるソフトゼラチンカプセル 配合: EPAエチルエーテル 525mg/カプセル DHAエチルエーテル 315mg/カプセル d-αトコフェロール 4mg/カプセル ゼラチン 346mg/カプセル グリセロール 118mg/カプセル 赤色酸化鉄 2.27mg/カプセル 黄色酸化鉄 2.27mg/カプセル 有効成分と賦形剤を計量し、高速攪拌機でホモジナイズする。得られた混合物をコロイドミルにかけ、ステンレススチール容器内で脱泡してカプセル化の準備をする。得られた混合物を標準のカプセル化マシーンを用い、サイズ20の長円形ソフトゼラチンカプセル(平均重量1.4g)に充填する。」(第11欄) (11c)「1. 必須的に(全-Zオメガ-3)-5,8,11,14,17-エイコサペンタエン酸(EPA)及び(全-Zオメガ-3)-4,7,10,13,16,19-ドコサヘキサエン酸(DHA)を活性成分として含む脂肪酸混合物を少なくとも80重量%含み、前記EPA:DHAの重量比は、1:2ないし2:1であり、前記脂肪酸混合物の1?10グラム(g)の1日投与量を提供する量で患者に薬学組成物を経口投与することを含む、ヒト患者における高中性脂肪の治療または予防のための方法。」(請求項1) (12)甲12 (12a)「要約 オメガ-3-脂肪酸、その塩または誘導体を80重量%含み、ここでいずれも-Zオメガ-3)-5,8,11,14,17-エイコサペンタエン酸(EPA)及び(全-Zオメガ-3)-4,7,10,13,16,19-ドコサヘキサエン酸(DHA)は、総脂肪酸の少なくとも75%を含む脂肪酸組成物。前記組成物は、心血関係疾患に対する多数の危険因子の治療または予防に使用される。」(1ページ) (12b)「製剤の例 1g/1カプセルであるソフトゼラチンカプセル 配合: EPAエチルエーテル 525mg/カプセル DHAエチルエーテル 315mg/カプセル d-αトコフェロール 4mg/カプセル ゼラチン 346mg/カプセル グリセロール 118mg/カプセル 赤色酸化鉄 2.27mg/カプセル 黄色酸化鉄 2.27mg/カプセル 有効成分と賦形剤を計量し、高速攪拌機でホモジナイズする。得られた混合物をコロイドミルにかけ、ステンレススチール容器内で脱泡してカプセル化の準備をする。得られた混合物を標準のカプセル化マシーンを用い、サイズ20の長円形ソフトゼラチンカプセル(平均重量1.4g)に充填する。」(第10欄) (12c)「1. 必須的に(全-Zオメガ-3)-5,8,11,14,17-エイコサペンタエン酸(EPA)及び(全-Zオメガ-3)-4,7,10,13,16,19-ドコサヘキサエン酸(DHA)を活性成分つぃて含む脂肪酸混合物を少なくとも80重量%含み、前記EPA:DHAの重量比は、1:2ないし2:1であり、前記脂肪酸混合物の1?10グラム(g)の1日投与量を提供する量で患者に薬学組成物を経口投与することを含む、ヒト患者における高中性脂肪の治療または予防のための方法。」(請求項1) (13)甲13 (13a)「【請求項1】 薬効成分を封入したシームレスカプセルと、ゲルまたは高粘度液体の少なくとも一方とからなり、前記シームレスカプセルは、その粒径(d)が0.5?5mmの範囲にあり、かつその膜厚(θ)と粒径(d)とが0.01d≦θ≦0.05dの関係にあり、さらにその長径と短径との比(ρ)が1.3以下であることを特徴とする食品状医薬品。」 (14)甲14 (14a)「1.シームレスカプセルの製造方法 ・・・シームレスカプセルは、滴下式製法が主体で、・・・ある。・・・ 滴下式製法では、界面張力により充填物質を皮膜物質が溶液状態(ゾル)で包み込んでゲル化するために、球形で皮膜に継ぎ目のないシームレスカプセルが形成される。カプセル形成には、内容液と皮膜液の特性にある範囲が必要である。内容液が製油等の親油性物質である場合には、比重0.85?1.10、粘度100cps(60℃)以下、親油性-疎水性バランス(HLB)13以上、融点は60℃以下となる。留意点は、界面形成のために、皮膜物質と内容液とのあいだの極性の差が必要なことと、皮膜の厚みに偏り(偏肉)を起こさないために比重差を少なくする必要があることである。直径は量産レベルで0.3?10mm程度の範囲で自由に設定が可能である。さらに膜厚も、皮膜に継ぎ目がないので、直径3mmの場合で約30μmまで薄くできる。この時の充填物質や皮膜の重量バラツキはCV値で0.8%以下であり、極めて均一なカプセルが得られる。この滴下式製法では、ノズルを二重から多重にすることにより、比較的容易に多層構造のシームレスカプセルを作ることが出来る。すなわち、同心多重ノズルを用いると、カプセルの中心の充填物質と最外殻の皮膜との間に新たな物質層を複数介在させることが可能となる。」(34ページ18行?35ページ15行) (15)甲22 (22a)「[試験概要] 平成31年3月15日付けの審理事項通知書における求釈明事項「3(1)イ」について、甲4の段落【0034】では、以下の記載がある。 「本発明の球状カプセルの最大直径と最小直径間の比は1.2以下、好ましくは1.1以下である。比が大きくなるにつれて、シェル厚は不均一になり、カプセルは機械的に不安定になる。」 段落【0034】の記載から、甲4発明では、球状シームレスカプセルの寸法的な安定性に関し、シェル厚を均一とするために、最大直径と最小直径間の比をより小さくすることが求められている。 そうすると、甲4では、シェルの厚みの最小/最大比を実際に計測した数値や、製造したシームレスカプセルの写真等は開示されていないが、シェル厚を均一とすることが技術的思想として開示されている。 シェル厚を均一とすることの記載は、即ち、シェルの厚みの最小/最大比が1に近づいていくことを意味しており、甲4に従って製造されたシームレスカプセルは、「シェルの厚みの最小/最大比が0.6以上」となる蓋然性が極めて高い。 この点につき、第1試験では、シェル組成物水溶液の温度を、60?80℃の数値範囲の間で、65℃、70℃、75℃、80℃の4温度点にて温度管理を行い、甲4実施例に記載の製造条件にて、シームレスカプセルを製造した場合、「シェルの厚みの最小/最大比が0.6以上」となることを実験により証明した。 第2試験では、シェル組成物水溶液の温度を、62℃にて温度管理を行い、油浴の温度を、14℃て温度管理を行い、甲4実施例に記載の製造条件にて、シームレスカプセルを製造した場合、「シェルの厚みの最小/最大比が0.6以上」となることを実験により証明した。 カプセル内容物としては、いずれの試験においても、本件特許のカプセル内容物を想定し、「オメガ-3-酸エチルエステル 90」を用いた。」(1ページ) (22b)「IV. 評価目標 第1試験:シームレスカプセル成形の際、ゼラチン温度条件を60?80℃の数値範囲の間で、65℃、70℃、75℃、80℃の4温度点にて温度管理を行い、温度条件の変化による性状変化を観察し、以下の基準に基づき評価を行う。 第2試験:シームレスカプセル成形の際、ゼラチン温度条件を62℃にて温度管理を行い、油浴の温度を、14℃にて温度管理を行い、性状変化を観察し、以下の基準に基づき評価を行う。 具体的な分析方法は、以下の分析方法にて詳述する。 基準:乾燥前のシームレスカプセルのシェルの厚さの最小/最大比を確認し、その値が、0.6以上であれば、シェル厚が安定であるとする。 V. 実験の方法 下の原薬分量及び製造方法により、原料を称量して製造する。製造の際、第1試験では、ゼラチンの温度は65度/70度/75度/80度の4つの条件で成形する。第2試験では、ゼラチンの温度は62度の条件で成形する。シームレスカプセルの成形直後、顕微鏡を使って観察し,シームレスカプセルシェルの厚さを測定する。測定時、光学顕微鏡(モデル名;HA101)を使用して70倍率で観察する。 ・原薬の分量 原料名 規格許可量 基準量 オメガ-3-酸エチルエステル EP2,000mg 5,400g 90 ゼラチン(250BL) KP736mg 1,866g ゼラチン(280BL) KP 518g 濃グリセリン KP128mg 415g 精製水 EP適量 7,569g Total 2,880mg 15,768g ・製造方法 甲4の記載、及び、大韓民国薬典の製剤総則の中でカプセル製剤項目に準じて製造する。 1) 原料の測量 カプセル内容物 : オメガ-3-酸エチルエステル90 カプセルの基材 : ゼラチン カプセルの基材 : 濃グリセリン 溶剤 : 精製水 <主成分の製造元及び所在地> 製造元 : Pronova BioPharma Norge AS, Framnesveien 41, No-3222, Sandefjord, Norway 2)カプセルのシェル(皮膜)の製造 カプセルの基材 : ゼラチン カプセルの基材 : 濃グリセリン 溶剤 : 精製水 3)成形 主成分 : オメガ-3-酸エチルエステル 90」 第6 合議体の判断 1 無効理由1について (1)甲4に記載された発明 甲4の記載事項(4j)及び(4k)の実施例1を踏まえると、甲4には、以下の発明が記載されていると認める。 「液体コア材料とシェル混合物とを、同時に同心多成分ノズルに送り込み、冷却液へ滴下することで形成されるシームレス固体シェルを有する球状カプセルであって、 前記液体コア材料は、イチゴ香味剤及び植物油を含有し、 前記シェル混合物は、ブタゼラチン260ブルーム及びグリセロールを含有し、 前記液体コア材料は、10?20℃で調製され、 前記シェル混合物は、60?80℃に保たれ、 前記冷却液の温度は、約14℃である、 球状カプセル。」(甲4発明A) 「液体コア材料と、シェル混合物とを、同時に同心多成分ノズルに送り込み、冷却液へ滴下することでシームレス固体シェルを有する球状カプセルを製造する方法であって、 前記液体コア材料は、イチゴ香味剤及び植物油を含有し、 前記シェル混合物は、ブタゼラチン260ブルーム及びグリセロールを含有し、 前記液体コア材料は、10?20℃で調製され、 前記シェル混合物は、60?80℃に保たれ、 前記冷却液の温度は、約14℃である、 前記球状カプセルを製造する方法。」(甲4発明B) (2)本件特許発明1について (2-1)本件特許発明1と甲4発明Aとの対比 甲4発明Aにおける「液体コア材料」及び「冷却液」は、それぞれ本件特許発明1における「カプセル内容物」及び「キャリア液」に相当する。 また、甲4の記載事項(4d)には、多成分ノズル法によって本発明のカプセルを成形する場合、硬化性シェル混合物の粘度とゲル化特性に特に注意を払われなければならないこと、好ましいシェル混合物の粘度は、80℃において30 mPas?300 mPas、好ましくは40 mPas?150 mPas、特に好ましくは50 mPas?90 mPasであること、好ましいシェル混合物のゲル化点は、15℃?60℃、好ましくは20℃?40℃、特に好ましくは25℃?35℃であることが記載され、記載事項(4n)の【表6】には、上記好ましい粘度及びゲル化点を有するシェル混合物としていずれも水溶液が記載されていること、さらに記載事項(4m)には実施例1-29の結果を示す【表1】?【表5】の「シェルの組成」の項目に記載される成分としての水は「付着している残存水」であると記載されていること等を踏まえると、甲4発明Aにおける「シェル混合物」は水溶液であると認められるから、本件特許発明1における「シェル組成物水溶液」に相当する。 さらに、甲4発明Aにおける「液体コア材料とシェル混合物とを、同時に同心多成分ノズルに送り込み、冷却液へ滴下することで形成」するは、技術常識を踏まえれば、本件特許発明1における「液中滴下法により製造」するに相当する。 また、「液体コア材料」の温度が10?20℃で、「シェル混合物」の温度が60?80℃であることから、両者の温度差は40?70℃と算定される。さらに、「シェル混合物」の温度が60?80℃であり、「冷却液」の温度が約14℃であることから、これらの温度差は約46?66℃と算定される。 そうしてみると、本件特許発明1と甲4発明Aとは、 「液中滴下法により製造された、ゼラチンおよび可塑剤を含有し、かつ、界面張力調整剤またはゲル化促進剤を含有しないシェル組成物により形成されたシェル、および、界面張力調整剤またはゲル化促進剤を含有しないカプセル内容物からなるシームレスカプセルであって、該滴下法に用いられる装置の多重ノズル付近で、「界面張力調整剤またはゲル化促進剤を含有しないカプセル内容物」、「ゼラチンおよび可塑剤を含有し、かつ、界面張力調整剤またはゲル化促進剤を含有しないシェル組成物により形成されたシェル組成物水溶液」、および、「キャリア液」の各々を温度制御することにより製造されたシームレスカプセル、 ここで、該可塑剤が、グリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびソルビトールから選択される1種または2種以上であり、 該温度制御が、以下の温度である、 「カプセル内容物」の温度を、5?25℃の範囲とすること; 「シェル組成物水溶液」の温度を、50?80℃の範囲とすること; 「キャリア液」の温度を、1?15℃の範囲とすること; 「カプセル内容物」の温度と「シェル組成物水溶液」の温度の差が、25℃以上75℃以下であること;および 「シェル組成物水溶液」の温度と「キャリア液」の温度の差が、35℃以上79℃以下であること。」 点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点1)本件特許発明1では、「カプセル内容物」の温度を5?25℃の範囲で設定値±2℃に制御し、「シェル組成物水溶液」の温度を50?80℃の範囲で設定値±2℃に制御し、「キャリア液」の温度を1?15℃の範囲で設定値±1℃に制御することとされているのに対し、甲4発明Aでは、これらの温度をそれぞれ10?20℃、60?80℃及び約14℃とすることされている点 (相違点2)本件特許発明1では、シェルの厚みの最小/最大比が0.6以上であるとされているのに対し、甲4発明Aではかかる特定はされていない点 (相違点3)「カプセル内容物」が、本件特許発明1では「EPAエチルエステル40%w/w以上、かつ、DHAエチルエステル34%w/w以上含有する」ものであるのに対し、甲4発明Aでは「イチゴ香味剤及び植物油を含有する」ものである点 (2-2)判断 (2-2-1)相違点1について 甲4におけるシームレスカプセル製造時の温度条件に関する記載は、上記記載事項(4i)のとおりである。当該記載箇所において、コア液を、10 - 20℃で調製すること、シェル液体とコア液を、同心二成分ノズルにポンプ系によって供給する際のシェル液体のためのラインは、この動作の間、60 - 80℃に保たれること、油浴(冷却液)の温度は、約14℃であることが記載されているものの、コア液、シェル液体及び冷却液の温度を、それぞれ、5?25℃の範囲で設定値±2℃、50?80℃の範囲で設定値±2℃及び1?15℃の範囲で設定値±1℃に制御することについては記載されていない。 物を製造する際に温度を制御することは一般的に行われていることであるとしても、甲4の記載事項(4i)から、相違点1に係る温度制御を導くことは、当業者であっても容易に想到しうることとはいえない。 この相違点1に関連して、請求人は、以下のように主張する。 (ア)甲4発明Aにおいて、カプセル内容物の温度は、5-25±2℃で制御される数値範囲内の数値である、「10-20℃」において制御されている。 また、甲4発明Aにおいて、シェル組成物水溶液の温度は、50-80±2℃で制御される数値範囲内の数値である、「60-80℃」において制御されている。シェル組成物水溶液の温度については、甲4の段落【0035】に「60-80℃に保たれる」と記載されているように、「60-80℃」において制御されていることの直接的な記載がある。 更に、甲4発明Aにおいて、キャリア液の温度は、1-15±1℃で制御される数値範囲内の数値である、「14℃」において制御されている。 よって、本件特許発明1の温度条件は、甲4発明Aの温度制御条件のいずれも含んでいるため、被請求人が主張する相違点1は、相違点とならない。 (イ)甲4の段落【0005】には、ゼラチン含有シームレスカプセルを多成分ノズル法にて調製する際の温度条件に関して、以下の記載がある。 「多成分ノズル法では、シームレスシェルを有するカプセルがドリップ法によって調製される。この方法においては、親油性コア材料と熱いゼラチン溶液が通常は同時に同心多成分ノズルによってポンプで送られるので、それらは冷たい親油性冷却液、例えば、植物油へ滴下する。この方法においては、ノズルが冷却液へ直接滴下させ得る。滴下したとき、カプセルは表面張力の結果としてボール形(球状形)をとる。冷却液との接触時の温度での落下の結果として、ゼラチン含有シームレスカプセルシェルが固化する。」 このように、シームレスカプセルの調製において、温度条件が重要であることは本件特許出願前の当業者の技術常識である。よって、シームレスカプセルの製造工程の各段階において温度管理が厳密になされ、制御されていることは甲4に記載されているに等しい事項である。 (ウ)温度条件の重要性から、工業的に利用されている、シームレスカプセルの製造装置では、各訂正発明の構成にかかわる、「カプセル内容物」の温度、「シェル組成物水溶液」の温度、及び、「キャリア液」の温度等の温度設定につき、厳密に制御される機能を有しており、1℃毎や、0.1℃毎に設定温度を定める仕様になっている。 一例として、工業的に利用されているシームレスカプセルの製造装置において、「キャリア液」の温度が、0.1℃単位で細かく設定されることを、甲第20号証として示す。シームレスカプセルの調製においては温度条件が重要であることが本件特許出願前の技術常識であるため、「キャリア液」等の温度が、0.1℃単位で温度が設定され、0.1℃単位で温度管理がなされていることが理解される。 また、このようなシームレスカプセルの製造装置の使用者が、温度設定を行えば、当該製造装置は、少なくとも±1℃の範囲内で温度管理がなされることが通常であり、±5℃や±10℃の範囲で温度がバラつくことは起こり得ない。また、±5℃や±10℃の範囲で温度範囲を管理する方が、製造方法が煩雑となり、更に、製造物であるシームレスカプセルの品質保証にも悖るため、このような管理手法が採られることは想定されないことが、当業者の技術常識である。 一例として、工業的に利用されているシームレスカプセルの製造装置において、各ユニットの温度管理が、0.1℃単位で細かくモニタリングされていることを、甲第21号証として示す。 このような管理画面を通じて使用者は温度制御を行うため、各訂正発明の構成にかかわる、「カプセル内容物」の温度、「シェル組成物水溶液」の温度、及び、「キャリア液」の温度等が±5℃や±10℃の範囲で温度がバラつくことは起こり得ないことが理解される。 (エ)上述した当業者の技術常識を考慮すると、コア液の調製時に、10℃から20℃まで流動的に温度変化を起こさせながら調製することは考えにくく、甲4の上記記載に接した当業者であれば、10-20℃の範囲で、1点の温度設定を行い、コア液を調製することができるものと認識する。 また、シェル液体のためのラインの温度管理についても、60℃から80℃まで流動的に温度変化を起こさせながら管理することは、製造方法が煩雑となるため、甲4の上記記載に接した当業者であれば、60-80℃の範囲で、1点の温度設定を行い、シェル液体のためのラインの温度管理を行うことができるものと認識する。 仮に、相違点1が、訂正発明1又は訂正発明14と甲4発明との相違点であると認められた場合であっても、カプセル内容物の温度を、特定の範囲で設定値を「±2℃」に制御すること、シェル組成物水溶液の温度を、特定の範囲で設定値を「±2℃」に制御すること、及び、キャリア液の温度を、特定の範囲で設定値を「±1℃」に制御することは、単なる設計事項であり、当業者が容易に想到し得る。 (オ)甲20及び甲21で示したシームレスカプセル製造装置は、本件特許優先日前のモデルではないが、「シームレスカプセルの調製において、温度条件が重要であることが本件特許出願前の当業者の技術常識であること」の主張自体については、甲10により示されている。 甲10は、ゼラチンを皮膜(シェル)に用い得るシームレスカプセルの製造方法に関する特許文献であるが、図3(A)ではアイズが欠陥として示され、図3(B)では偏芯(肉)が欠陥として示されている(図3、段落【0004】)。このような欠陥を防止するため、甲10に記載される発明では、同心多重ノズルから流出するゼラチン溶液の温度を一定に維持することで、このような欠陥を防止している。 すなわち、甲10は、シームレスカプセル製造装置の多重ノズル付近でのシェル組成物の温度を一定に維持・制御することの重要性は、本件特許出願前の当業者の技術常識であることを示している。 上記請求人の主張(ア)?(オ)について、検討する。 ・請求人の主張(ア)について 請求人は、本件特許発明1と甲4発明Aとの間で、カプセル内容物、シェル組成物水溶液及びキャリア液の温度範囲は、重複している(本件特許発明1における温度範囲に甲4発明Aの温度範囲は包含されている)ことから、上記相違点1は相違点とならない旨主張している。 しかしながら、甲4には、上記相違点1に係る温度制御、すなわち、所定の温度範囲で設定値±2℃あるいは設定値±1℃に制御することは、記載されていないから、上記主張(ア)は当を得ないものである。 ・請求人の主張(イ)について 請求人は、甲4の段落【0005】の記載を根拠に、シームレスカプセルの調製において、温度条件が重要であることは本件特許出願前の当業者の技術常識であり、シームレスカプセルの製造工程の各段階において温度管理が厳密になされ制御されていることは甲4に記載されているに等しい事項である旨主張している。 しかしながら、甲4の段落【0005】には、シームレスカプセルの製造に当たり厳密な温度管理を行うことについて示唆する記載は一切見受けられず、請求人の上記主張(イ)も失当である。 ・請求人の主張(ウ)について 請求人は、甲20を例示しつつ、工業的に利用されている、シームレスカプセルの製造装置では、「カプセル内容物」、「シェル組成物水溶液」及び「キャリア液」の温度等を厳密に制御される機能を有しており、1℃毎や、0.1℃毎に設定温度を定める仕様になっていること、また、甲21を例示しつつ、このようなシームレスカプセルの温度設定を行えば、当該製造装置は、少なくとも±1℃の範囲内で温度管理がなされることが通常であり、±5℃や±10℃の範囲で温度がバラつくことは起こり得ないし、想定されないことが技術常識である旨主張する。 しかしながら、請求人の提出した甲20及び甲21は、本件特許の優先日(2007年6月29日)以降である2014年12月2日に製造されたシームレスカプセル装置に関するものであり、かかる証拠に基づいて、本件特許の優先日前における技術常識を立証することはできないし、本件優先日当時において、シームレスカプセルの製造装置では、「カプセル内容物」、「シェル組成物水溶液」及び「キャリア液」の設定温度を定める仕様であったことや、これらの設定温度を±2℃ないし±1℃の範囲内で温度管理することが通常であったと認めるに足る証拠は提出されていない。 よって、請求人の上記主張(ウ)も失当である。 ・請求人の主張(エ)について 上記請求人の主張(ア)?(ウ)が採用できないことは、上述のとおりであり、上記主張(ア)?(ウ)を前提とする請求人の上記主張(エ)についても採用することはできない。また、カプセル内容物、シェル組成物水溶液及びキャリア液の温度を、特定の範囲で設定値を「±2℃」ないし「±1℃」に制御することは単なる設計事項であるとの主張も、採用できない。 ・請求人の主張(オ)について 甲10(特に、記載事項(10d)を参照)には、シームレスカプセルの皮膜を構成するために用いられるゼラチン溶液は、高温度下に長時間置くと、加水分解によって分子が小さくなってゼラチン溶液自体が劣化すると共に、粘度も大幅に低下し、シームレスカプセルの成形状態が悪くなることから、ゼラチン溶液をタンクに貯留しておく際の温度を、ゼラチン溶液の物性に影響を与えない温度、少なくとも分子構造に変化を与えない温度、例えば50℃とし、そして、このゼラチン溶液を、同芯多重ノズルへの移送を行いながら、加熱することによって徐々に70℃?90℃に昇温させることで、同芯多重ノズルから流出するゼラチン溶液の温度及び粘度等の物性を一定に維持することができることが記載されている。 たしかに、請求人の主張するように、甲10には、シームレスカプセル製造時にゼラチン溶液(本件特許発明における「シェル組成物水溶液」に相当)の温度を管理することが記載されているものの、「カプセル内容物」の温度を5?25℃の範囲で設定値±2℃に制御し、「シェル組成物水溶液」の温度を50?80℃の範囲で設定値±2℃に制御し、「キャリア液」の温度を1?15℃の範囲で設定値±1℃に制御することについては、記載も示唆もなく、甲10の記載に基づいて、相違点1を当業者が容易に想到しうることとなるとは認められない。 (2-2-2)相違点2について 甲4には、シームレスカプセルの最大直径と最小直径間の比は1.2以下、好ましくは1.1以下であること、この比が大きくなるにつれて、シェル厚は不均一になり、カプセルは機械的に不安定になることが記載されている(記載事項(4h)参照)。 かかる記載によれば、甲4のカプセルは、最大直径と最小直径の比が1に近いことから、その形状は球に近いこと、また、最大直径と最小直径間の比が1に近くなると、シェル厚は不均一ではなくなると認められるが、甲4発明Aの球状カプセルのシェルの厚みの最小/最大比が0.6以上であるかどうかは定かでない。 この相違点2に関して、請求人は、以下のように主張する。 (カ)甲4の段落【0034】に基づくと、甲4発明の球状カプセルの最大直径と最小直径間の比は、1.2以下、好ましくは1.1以下であるため、シェル厚は均一であることが開示されている。よって、シェルの厚みの最小/最大比は、0.6以上となることが当然に推測される。 従って、甲4発明においても、シェルの厚みの最小/最大比は0.6以上であることが記載されていることに等しく、被請求人が主張する相違点2は、相違点とならない。 (キ)段落【0034】の記載から、甲4発明では、球状シームレスカプセルの寸法的な安定性に関し、シェル厚を均一とするために、最大直径と最小直径間の比をより小さくすることが求められている。 そうすると、甲4では、シェルの厚みの最小/最大比を実際に計測した数値や、製造したシームレスカプセルの写真等は開示されていないが、シェル厚を均一とすることが技術的思想として開示されている。 シェル厚を均一とすることの記載は、即ち、シェルの厚みの最小/最大比が1に近づいていくことを意味しており、甲4に従って製造されたシームレスカプセルは、「シェルの厚みの最小/最大比が0.6以上」となる蓋然性が極めて高い。本件特許発明1又は本件特許発明14の「シェルの厚みの最小/最大比が0.6以上」とは、甲4におけるシェル厚を均一とすることの記載を、単に数値的に表現したものに過ぎない。 (ク)さらに、請求人は、実験成績証明書(甲22)を提出して、甲4発明Aの球状シームレスカプセルの「シェルの厚みの最小/最大比が0.6以上」となることを証明した旨も主張している。 上記請求人の主張について、検討する。 請求人の主張(カ)(キ)は、甲4に「シェルの厚みの最小/最大比」について記載がなくても、甲4発明Aのシェルの厚みの最小/最大比が0.6以上である蓋然性が高いこと、主張(ク)はそれを実験で裏付けたことをその要旨とするものである。 請求人も認めるとおり、甲4には、「シェルの厚みの最小/最大比が0.6以上である」ことについて記載されていない。段落【0034】の記載から、カプセルの最大直径と最小直径間の比が1に近くなると、シェル厚の不均一さは低減することとなると認められるが、「シェルの厚みの最小/最大比が0.6以上である」ことは何ら保証されてはいない。また、以下のとおり、実験成績証明書(甲22)は、甲4の実施例とは実験条件が相違しており、甲4の実施例を追試したものとはいえないが、仮に甲4の実施例を追試したものであったとしても、例えば、第1試験の結果を示す表3及び表5において、得られたサンプルの「シェルの厚みの最小/最大比」の値は、それぞれ0.60?0.93及び0.60?0.90と大きくばらついているうえ、下限値の0.6という値をとっている場合もあることを踏まえると、実験成績証明書の結果をもってしても、甲4発明Aの「シェルの厚みの最小/最大比が」必ず0.6以上であるということが立証されたことにはなっていない。 また、実験成績証明書(甲22)の記載内容についてみてみると、以下の点で、甲4の実施例とは条件が相違しており、甲4の実施例を追試したものとはいえないから、かかる結果をもって甲4発明Aの「シェルの厚みの最小/最大比が0.6以上である」ことが証明されたとは認められない。 ・コア液の温度に関し、甲4の実施例では、10?20℃で調製したとされているのに対し、請求人の第1試験及び第2試験では、20℃で調製したとされている点 ・シェル液体の温度に関し、甲4の実施例では、60?80℃に保たれるとされているのに対し、請求人の第1試験では65℃、70℃、75℃、80℃にて温度管理を行い、第2試験では62℃で温度管理を行っている点。また、シェル液体の温度とは、甲4の実施例では、シェル液体を同心二成分ノズルにポンプで供給する際の温度であるが、請求人の実験成績証明書の「V.実験の方法」に記載されるのは、第1試験、第2試験ともに、同心二成分ノズルに供給する際のラインの温度であるとされるのに対し、「VI.第1試験の実験結果」、「VII.第2試験の実験結果」に記載されるのは第1試験も第2試験もゼラチンのタンク温度であるとされ、そのいずれであるか不明である。 ・油浴の温度に関し、甲4の実施例では、約14℃であったのに対し、請求人の第1試験では6.5℃であった点 ・請求人が第1試験及び第2試験で用いたシームレスカプセルの原料、すなわち「カプセル内容物」(オメガ-3-酸エチルエステル90)及び「カプセルの基材」(ゼラチン(250BL)、ゼラチン(280BL)及び濃グリセリン)は、甲4の表1-6の記載からみて、甲4のいずれの実施例とも一致しない点 そうしてみると、甲4発明Aの「シェルの厚みの最小/最大比が0.6以上である」との上記請求人の主張(カ)?(ク)は、採用できない。 (2-2-3)相違点3について 甲4発明Aの「液体コア材料」中の植物油は、記載事項(4b)(特に段落【0002】)、(4h)によれば、香味剤を希釈するためのものであり、それ自体は中立のにおいと味を有するとともに、酸化に対して良好な安定性を有するものである。 ここで、相違点3に係る本件特許発明1における「EPAエチルエステル40%w/w以上、かつ、DHAエチルエステル34%w/w以上含有する」ものは、甲1?3、7、11、12等に記載されている。しかしながら、EPAエチルエステルやDHAエチルエステルが分子内に二重結合(不飽和結合)を多数有するために酸化されやすく、また、酸化されると風味劣化の主因となることは、乙2?5にも記載されるとおり、本件特許の優先日前に周知の技術的事項であった。 そうしてみると、香味剤の希釈油として中立のにおいと味及び酸化に対する良好な安定性が求められる甲4発明Aの植物油を、「EPAエチルエステル40%w/w以上、かつ、DHAエチルエステル34%w/w以上含有する」ものに変更することは、阻害要因があると言わざるを得ない。 この相違点3に関して、請求人は、以下のように主張する。 (ケ)EPA及びDHAは、魚油であるため、魚特有の臭気を有する原料であることは、本件特許出願前の技術常識である。臭気として知覚されるということは、感覚器により知覚されていることは明らかであり、1種又は複数の感覚受容特性を有する物質である。また、EPA及びDHAが、香味剤の溶媒として通常用いられているとの特許出願前の技術常識は被請求人から示されておらず、「中立のにおいと味をもつ」とも言えないため、「香味剤を希釈するための油」には該当しない。 甲4の段落【0002】の記載からすると、甲4の明細書で言う香味剤には、EPA及びDHAも含まれるため、相違点3に関する被請求人の主張は失当である。 (コ)本件特許の国際公開WO2009/004999号公報に記載された、請求項1では、そもそもカプセル内容物の成分については、何ら特定されておらず、段落0018では、「本発明のシームレスカプセルに封入されるべき内容物は、界面張力調整剤またはゲル化促進剤を含有しないものであれば、特に限定されない。」との記載がある。 「界面張力調整剤またはゲル化促進剤を含有せず、EPAエチルエステル40%w/w以上、かつ、DHAエチルエステル34%w/w以上」の成分 は、甲1や甲7等に具体的に開示され、通常のソフトカプセルである、軟質ゼラチンカプセルの内容物として周知である。 (サ)よって、当業者であれば、甲4におけるカプセル内容物として、「界面張力調整剤またはゲル化促進剤を含有せず、EPAエチルエステル40%w/w以上、かつ、DHAエチルエステル34%w/w以上」の成分を用いることも容易に想到し得る。 上記請求人の主張について、検討する。 上記請求人の主張は、要するに、甲4発明Aにおける香味剤として、魚油であり、魚特有の臭気を有する「EPAエチルエステル40%w/w以上、かつ、DHAエチルエステル34%w/w以上」の成分を用いることも容易に想到し得るというものである。 ところで、甲4発明Aのカプセルは、口において香味剤を含有する液体コアの放出が起こることが想定されているものであり(段落【0003】、口中で本発明のカプセルのシェルを急速に溶解するために、シェル厚はできるだけ薄くなければならない(段落【0011】、段落【0028】)、香味剤として、香り・臭いや味を有するものであれば何でも使用可能というものではなく、酸化により生臭い魚特有の臭気を発生することとなる魚油のようなものは想定されていないと解するのが自然である。このことは、適切な香味剤の例として段落【0028】に記載されているものや、実施例1-29において使用されている香味剤の種類からみても明らかである。 そうしてみると、甲4発明Aにおける香味剤として、魚油であり、魚特有の臭気を有する「EPAエチルエステル40%w/w以上、かつ、DHAエチルエステル34%w/w以上」の成分を用いることも容易に想到し得るという上記請求人の主張(ケ)?(サ)は、採用できない。 (2-3)小括 以上のことから、本件特許発明1は、効果について検討するまでもなく、甲4に記載された発明及び甲1?3、甲7、甲10?12及び甲20?22に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。また、甲5、甲6、甲8、甲9、甲13及び甲14の記載事項を参酌しても、本件特許発明1の進歩性についての判断は変わらない。 (3)本件特許発明2?13、16?18について 本件特許発明2?13、16?18は、いずれも本件特許発明1の全ての発明特定事項を含むものである。そして、上記(2)で説示したとおり、本件特許発明1が甲4号証に記載された発明及び甲1?3、甲5?14及び甲20?22に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件特許発明2?13、16?18も、甲4号証に記載された発明及び甲1?3、甲5?14及び甲20?22に記載された事項に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4)本件特許発明14について (4-1)本件特許発明14と甲4発明Bとの対比 甲4発明Bにおける「液体コア材料」及び「冷却液」は、それぞれ本件特許発明14における「カプセル内容物」及び「キャリア液」に相当する。 また、甲4の記載事項(4d)には、多成分ノズル法によって本発明のカプセルを成形する場合、硬化性シェル混合物の粘度とゲル化特性に特に注意を払われなければならないこと、好ましいシェル混合物の粘度は、80℃において30 mPas?300 mPas、好ましくは40 mPas?150 mPas、特に好ましくは50 mPas?90 mPasであること、好ましいシェル混合物のゲル化点は、15℃?60℃、好ましくは20℃?40℃、特に好ましくは25℃?35℃であることが記載され、記載事項(4n)の【表6】には、上記好ましい粘度及びゲル化点を有するシェル混合物としていずれも水溶液が記載されていること、さらに記載事項(4m)には実施例1-29の結果を示す【表1】?【表5】の「シェルの組成」の項目に記載される成分としての水は「付着している残存水」であると記載されていること等を踏まえると、甲4発明Bにおける「シェル混合物」は水溶液であると認められるから、本件特許発明14における「シェル組成物水溶液」に相当する。 さらに、甲4発明Bにおける「液体コア材料とシェル混合物とを、同時に同心多成分ノズルに送り込み、冷却液へ滴下することで形成」するは、技術常識を踏まえれば、本件特許発明14における「液中滴下法により製造」するに相当する。 また、「液体コア材料」の温度が10?20℃で、「シェル混合物」の温度が60?80℃であることから、両者の温度差は40?70℃と算定される。さらに、「シェル混合物」の温度が60?80℃であり、「冷却液」の温度が約14℃であることから、これらの温度差は約46?66℃と算定される。 そうしてみると、本件特許発明14と甲4発明Bとは、 「以下の工程を含む、液中滴下法によりシームレスカプセルを製造する場合において、該滴下法に用いられる装置の多重ノズル付近で、「界面張力調整剤またはゲル化促進剤を含有しないカプセル内容物」、「ゼラチン、並びにグリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびソルビトールから選択される1種または2種以上の可塑剤を含有し、かつ、界面張力調整剤またはゲル化促進剤を含有しないシェル組成物により形成されたシェル組成物水溶液」、および、「キャリア液」の各々を温度制御することを特徴とする、ゼラチン、並びにグリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびソルビトールから選択される1種または2種以上の可塑剤を含有し、かつ、界面張力調整剤またはゲル化促進剤を含有しないシェル組成物により形成されたシェル、および、界面張力調整剤またはゲル化促進剤を含有しないカプセル内容物からなる、シームレスカプセルの製造方法: 「界面張力調整剤またはゲル化促進剤を含有しないカプセル内容物」の温度を、5℃?25℃の範囲とする工程、 「ゼラチン、並びにグリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびソルビトールから選択される1種または2種以上の可塑剤を含有し、かつ、界面張力調整剤またはゲル化促進剤を含有しないシェル組成物により形成されたシェル組成物水溶液」の温度を、50℃?80℃の範囲とする工程、 「キャリア液」の温度を、1℃?15℃の範囲とする工程、および 「界面張力調整剤またはゲル化促進剤を含有しないカプセル内容物」の温度と「ゼラチン、並びにグリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびソルビトールから選択される1種または2種以上の可塑剤を含有し、かつ、界面張力調整剤またはゲル化促進剤を含有しないシェル組成物により形成されたシェル組成物水溶液」の温度との差が、25℃以上75℃以下である工程、 「ゼラチン、並びにグリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびソルビトールから選択される1種または2種以上の可塑剤を含有し、かつ、界面張力調整剤またはゲル化促進剤を含有しないシェル組成物により形成されたシェル組成物水溶液」の温度と「キャリア液」の温度との差が、35℃以上79℃以下である工程。」 で一致し、以下の点で相違する。 (相違点4)本件特許発明14では、「カプセル内容物」の温度を5?25℃の範囲で設定値±2℃に制御し、「シェル組成物水溶液」の温度を50?80℃の範囲で設定値±2℃に制御し、「キャリア液」の温度を1?15℃の範囲で設定値±1℃に制御することとされているのに対し、甲4発明Bでは、これらの温度をそれぞれ10?20℃、60?80℃及び約14℃とすることされている点 (相違点5)本件特許発明14は、シェルの厚みの最小/最大比が0.6以上であるとされているのに対し、甲4発明Bではかかる特定はされていない点 (相違点6)「カプセル内容物」が、本件特許発明14では「EPAエチルエステル40%w/w以上、かつ、DHAエチルエステル34%w/w以上含有する」ものであるのに対し、甲4発明Bでは「イチゴ香味剤及び植物油を含有する」ものである点 (4-2)判断 上記相違点4?6は、本件特許発明1と甲4発明Aとを対比した際の相違点1?3と同じである。 そして、上記(2)において説示したと同様の理由により、上記相違点4?6も、当業者が容易に想到しえたものとはいえない。 (4-3)小括 以上のことから、本件特許発明14は、効果について検討するまでもなく、甲4に記載された発明及び甲1?3、甲7、甲10?12及び甲20?22に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。また、甲5、甲6、甲8、甲9、甲13及び甲14の記載事項を参酌しても、本件特許発明14の進歩性についての判断は変わらない。 2 無効理由2について いわゆるサポート要件については、特許請求の範囲がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくても、当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 本件特許明細書には、以下の記載がある。 (a)「【発明が解決しようとする課題】 【0008】 本発明の課題は、カプセル内容物の安定性に優れ、またカプセル内容物が高含有化されうるシームレスカプセル、それらの製造方法、しかもアイズがないか、または存在しても極めて小さく、また偏肉が極めて少ないシームレスカプセルを提供することである。」 (b)「【課題を解決するための手段】 【0009】 本発明者らは、シェル組成物、カプセル内容物の構成成分やシームレスカプセル製造時の条件を種々検討した結果、ゼラチンおよび可塑剤を含有し、かつ、界面張力調整剤またはゲル化促進剤を含有しないシェル組成物により形成されたシェル(皮膜)、および、界面張力調整剤またはゲル化促進剤を含有しないカプセル内容物からなるシームレスカプセルが、上記課題を解決することを見出すと共にその製造方法を確立することによって本発明を完成するに至った。」 (c)「【0014】 (シェル組成物の組成) 本発明のシームレスカプセルにおけるカプセル内容物を被覆するシェル(皮膜)は、ゼラチンおよび可塑剤を含有し、かつ、界面張力調整剤またはゲル化促進剤を実質的に含有しないシェル組成物により形成される。 【0015】 ここで「ゼラチン」とは、シームレスカプセルの製造において通常使用されるものが挙げられ、例えば、第15改正日本薬局方で規定される医薬用ゼラチンが挙げられる。ここに、ゼラチンは、例えば、コハク化ゼラチン等のようにゼラチンの修飾物を含む概念である。 中でも、本発明を実施するに当たって好ましいものとしては、以下の性質を有するものが挙げられる。 1)ゼラチンのゼリー強度(JIS記載の方法に基づいて測定)が、200?300gのもの、好ましくは240?300gのもの、より好ましくは240?280gのもの。 2)ゼラチンの粘度(JIS記載の方法に基づいて測定)が、2?6mPa・sのもの、好ましくは3?6mPa・sのもの、より好ましくは3?5mPa・sのもの。 3)ゼラチンが、豚皮膚由来のもの。 本発明のシームレスカプセルの製造においては、1以上のゼラチンを組合わせて用いてもよい。この場合、混合されたゼラチンが、上記1)のゼリー強度および/または上記2)のゼラチン粘度を有することが好ましい。 最も好ましいものとしては、以上の諸条件の1もしくは2以上を満たすものが挙げられる。 【0016】 ここで「可塑剤」とは、シームレスカプセルの製造において通常使用されるものが挙げられ、例えば、グリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等の多価アルコール、あるいは、ソルビトール等の糖アルコールが好ましい。これらの可塑剤は、1種または2種以上が組み合わせて用いられる。 中でも、本発明を実施するに当たって好ましいものとしては、グリセリンおよびソルビトールが挙げられる。 また、両者を混合して使用することも好ましい。この場合、グリセリンとソルビトールの重量比を、1:5?5:1の範囲で使用することが本発明の実施に当たっては好ましく、1:3?3:1の範囲で使用することが特に好ましい。 【0017】 本発明の実施上、シェル組成物は、ゼラチンと可塑剤とを、その重量比において10:1?1:10の範囲で含有することが好ましく、10:1?1:1の範囲で含有することが特に好ましい。」 (d)「【0035】 本発明のシームレスカプセルは、ゼラチンおよび可塑剤を含有し、かつ、界面張力調整剤またはゲル化促進剤を含有しない(界面張力調整剤も存在しないし、ゲル化促進剤も存在しない)シェル組成物により形成されたシェルを有するシームレスカプセルである。本発明のシームレスカプセルは、好ましくはそのカプセル内容物にも界面張力調整剤またはゲル化促進剤を含有しない(界面張力調整剤も存在しないし、ゲル化促進剤も存在しない)ものであって、カプセル化直後(カプセル化後、乾燥前)の1つのカプセルにおけるシェルの厚みの最小値/最大値比が0.6以上であるシームレスカプセルである。即ち、界面張力調整剤もゲル化促進剤も含有しないシェル、好ましくはカプセル内容物にもこれらの成分を含有しないものであるにも拘わらず、偏肉が極めて少ない新規なシームレスカプセルである。 具体的には、本発明のシームレスカプセルにおける偏肉の程度は、カプセル化直後に顕微鏡で観察する時、乾燥前のシェルの厚みの最小/最大比が0.6以上、より好ましくは0.8以上、さらに好ましくは0.9以上である。厚みの測定は、一般的な画像解析法により実施できる。シェルの厚みの最小/最大比が0.6未満であると偏肉が大きく、乾燥時および乾燥後の保管時にシェルにひび割れを生じ、カプセル内容物が漏れ出すという欠点がある。 なお、乾燥時にシェルは均等に収縮するため、乾燥前のシェルの厚みの最小/最大比は、乾燥後においても維持される。 【0036】 また、本発明のシームレスカプセルは、ゼラチンおよび可塑剤を含有し、かつ、界面張力調整剤またはゲル化促進剤を含有しないシェル組成物により形成されたシェルを有するシームレスカプセル、好ましくはそのカプセル内容物にも界面張力調整剤またはゲル化促進剤を含有しないものであって、アイズが存在しないか、または存在しても、そのアイズは極めて小さいものである。アイズが存在する場合においては、カプセル化直後、乾燥前に顕微鏡で観察する時、アイズ径が乾燥前シェルの平均厚み((最大+最小)/2)の1/2以下、より好ましくは1/4以下、さらに好ましくは1/8以下である。特に、本願発明はゼラチンおよび可塑剤を含有し、かつ、界面張力調整剤またはゲル化促進剤を含有しない(界面張力調整剤も存在しないし、ゲル化促進剤も存在しない)シェル組成物により形成されたシェルを有するシームレスカプセルであって、カプセル化後、乾燥前に測定した場合に、径がシェルの平均厚みの1/2を超えるアイズが存在しないシームレスカプセルであり、好ましくは界面張力調整剤またはゲル化促進剤を含まない(界面張力調整剤も存在しないし、ゲル化促進剤も存在しない)カプセル内容物を有する、シームレスカプセルである。アイズ径が、シェルの平均厚み((最大+最小)/2)の1/2を超える場合は、乾燥時および乾燥後の保管時にシェルにひび割れを生じ、カプセル内容物が漏れ出すという欠点がある。 ここで、アイズとは、シェルに生じた球形状の空泡状の欠陥を指し、空泡内にはカプセル内容物を含んでいても良い。アイズは、通常、歪みの少ない球状であるが、歪んだ球状であることもあり得る。ここに真球でないアイズにおいて「アイズ径」は、最大方向の径のことを指す。アイズは、シームレスカプセル中に複数個生じていても良いが、それぞれの径は上記範囲内である。厚みおよびアイズ径の測定は、偏肉と同様、一般的な画像解析法により実施できる。 本明細書中では、シェルの平均厚みの1/2以下の径のアイズについては、シェルに存在していても「アイズがない」と表現する場合がある。」 (e)「【実施例】 【0039】 以下の実施例および試験例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。 なお、下記の実施例で使用される各種のゼラチンは、市販されているか、仮に市販されていない場合でも、ゼラチン製造メーカーに製造依頼することで容易に入手することが可能である。 また、製剤添加物としては、日本薬局方第15改正、日本薬局方外医薬品規格または医薬品添加物規格2003の収載品を用いた。 【0040】 実施例1 ゼラチン1(ゼリー強度245g、粘度4.3mPa・s)3158g、ゼラチン2(ゼリー強度297g、粘度5.3mPa・s)1579g、濃グリセリン559.0g、ソルビトール液399.2g(固形分:299.4g)、および黄色色素5号1.17gを、52℃に加温した精製水16610gに入れ、溶解し、減圧脱気した(シェル組成物水溶液)。OMEGA-3-ACID ETHYL ESTERS 90を1000.00重量部とした時の組成比を表1に示す。 シームレスカプセル製造装置(スフェレックス、フロイント産業社製)を用いてシームレスカプセルを調製した。ノズル付近の「OMEGA-3-ACID ETHYL ESTERS 90」(カプセル内容物)の温度は16.3?18.9℃、シェル水溶液は67.8?68.3℃、キャリア液にはMCTオイルを用い、その温度は5.9?7.1℃で制御し、秒速25個の速度でカプセル化した。 温度制御を厳密に管理することでカプセル化工程は定常的に安定して稼動することができた。 得られたカプセルは、冷蔵庫で冷却(5℃、14時間)し、乾燥機で水分活性0.2以下になるまで乾燥した。その後、カプセル表面についたキャリア液をふき取り、1カプセルあたり、OMEGA-3-ACID ETHYL ESTERS 90を25mg含む、シームレスカプセルを得た。 得られたカプセルのサイズは、中心値約4mmφ(バラツキ3.5?4.5mmφの範囲内)であった。 【0041】 【0042】 実施例2 ゼラチン3(ゼリー強度255g、粘度3.5mPa・s)5096.7g、濃グリセリン601.4g、ソルビトール液429.2g(固形分:300.4g)、および黄色色素5号1.26gを55℃に加温した精製水13999.9gに入れ、溶解し、減圧脱気した(シェル組成物水溶液)。OMEGA-3-ACID ETHYL ESTERS 90を1000.00重量部とした時の組成比を表2に示す。 シームレスカプセル製造装置(スフェレックス、フロイント産業社製)を用いてシームレスカプセルを調製した。ノズル付近の「OMEGA-3-ACID ETHYL ESTERS 90」(カプセル内容物)の温度は16.3?16.7℃、シェル水溶液は70.3?70.4℃に制御した。キャリア液にはMCTオイルを用い、その温度は6.8?7.1℃で制御し、秒速25個でカプセル化した。 温度制御を厳密に管理することで、カプセル化工程は定常的に安定して稼動することができた。 得られたカプセルは、冷蔵庫で冷却(4℃、28時間)し、乾燥機で水分活性0.2以下になるまで乾燥した。その後、カプセル表面についたキャリア液をふき取り、1カプセルあたり、OMEGA-3-ACID ETHYL ESTERS 90を25mg含む、シームレスカプセルを得た。 得られたカプセルのサイズは、中心値約4mmφ(バラツキ3.5?4.5mmφの範囲内)であった。 【0043】 【0044】 実施例3 ゼラチン1(ゼリー強度245g、粘度4.3mPa・s)3158g、ゼラチン2(ゼリー強度297g、粘度5.3mPa・s)1579g、濃グリセリン559.0g、ソルビトール液399.2g(固形分:299.4g)、および黄色色素5号1.17gを、52℃に加温した精製水16610gに入れ、溶解し、減圧脱気した(シェル組成物水溶液)。OMEGA-3-ACID ETHYL ESTERS 90を1000.00重量部とした時の組成比を表3に示す。 シームレスカプセル製造装置(スフェレックス、フロイント産業社製)を用いてシームレスカプセルを調製した。ノズル付近の「OMEGA-3-ACID ETHYL ESTERS 90」(カプセル内容物)の温度は17.7?18.8℃、シェル水溶液は67.5?68.1℃に制御した。キャリア液にはMCTオイルを用い、その温度は6.4?6.8℃で制御し、秒速25個の速度でカプセル化した。 温度制御を厳密に管理することで、カプセル化工程は定常的に安定して稼動することができた。 得られたカプセルは、冷蔵庫で冷却(5℃、14時間)し、乾燥機で水分活性0.2以下になるまで乾燥した。その後、カプセル表面についたキャリア液をふき取り、1カプセルあたり、OMEGA-3-ACID ETHYL ESTERS 90を25mg含む、シームレスカプセルを得た。 得られたカプセルのサイズは、中心値約4mmφ(バラツキ3.5?4.5mmφの範囲内)であった。 【0045】 【0046】 実施例4 ゼラチン4(ゼリー強度264g、粘度4.2mPa・s)3398g、濃グリセリン401g、ソルビトール液286g(固形分:200.2g)、および黄色色素5号0.84gを55℃に加温した精製水15914gに入れ、溶解し、減圧脱気した(シェル組成物水溶液)。OMEGA-3-ACID ETHYL ESTERS 90を1000.00重量部とした時の組成比を表4に示す。 シームレスカプセル製造装置(スフェレックス、フロイント産業社製)を用いてシームレスカプセルを調製した。ノズル付近の「OMEGA-3-ACID ETHYL ESTERS 90」(カプセル内容物)の温度は14.7℃、シェル水溶液は56.7℃に制御した。キャリア液にはMCTオイルを用い、その温度は4.4℃で制御し、秒速7個でカプセル化した。 温度制御を厳密に管理することで、カプセル化工程は定常的に安定して稼動することができた。 得られたカプセルは、冷蔵庫で冷却(4℃、21時間)し、乾燥機で水分活性0.2以下になるまで乾燥した。その後、カプセル表面についたキャリア液をふき取り、1カプセルあたり、OMEGA-3-ACID ETHYL ESTERS 90を200mg含む、シームレスカプセルを得た。 得られたカプセルのサイズは、中心値約8mmφ(バラツキ7.5?8.5mmφの範囲内)であった。 【0047】 【0048】 実施例5 ゼラチン4(ゼリー強度264g、粘度4.2mPa・s)9568.125g、濃グリセリン1128.75gおよび、ソルビトール液806.1g(固形分:564.3g)を55℃に加温した精製水33541.5gに入れ、溶解し、減圧脱気した(シェル組成物水溶液)。OMEGA-3-ACID ETHYL ESTERS 90を1000.00重量部とした時の組成比を表5に示す。 シームレスカプセル製造装置(富士カプセル社製)を用いてシームレスカプセルを調製した。ノズル付近の「OMEGA-3-ACID ETHYL ESTERS 90」(カプセル内容物)の温度は22.8?23.2℃、シェル水溶液は69.9?70.3℃に制御した。キャリア液にはMCTオイルを用い、その温度は6.4?6.7℃で制御し、秒速25個でカプセル化した。 温度制御を厳密に管理することで、カプセル化工程は定常的に安定して稼動することができた。 得られたカプセルは、冷蔵庫で冷却(5℃、15時間)し、乾燥機で水分活性0.2以下になるまで乾燥した。その後、カプセル表面についたキャリア液をふき取り、1カプセルあたり、OMEGA-3-ACID ETHYL ESTERS 90を25mg含む、シームレスカプセルを得た。 得られたカプセルのサイズは、中心値約4mmφ(バラツキ3.5?4.5mmφの範囲内)であった。 【0049】 【0050】 実施例6 実施例5で得られたシームレスカプセルを用いて、着香したシームレスカプセルを製造した。OMEGA-3-ACID ETHYL ESTERS 90を1000.00重量部とした時の組成比を表6に示す。 エチルアルコール22.4gおよびブルーベリーフレーバー5.6gを混合し着香液を調製した。実施例5で得られたシームレスカプセルをタンブラー式のコーティング機(ハイコーター:フロイント産業製)を用い着香液をシームレスカプセル300gあたり1.47g散布し、着香した。着香後、タンブラー式のコーティング機(ハイコーター:フロイント産業製)を用いシームレスカプセル中のエチルアルコールが5000ppm以下になるまで除去し、着香したシームレスカプセルを得た。 【0051】 【0052】 実施例7 ゼラチン1(ゼリー強度245g、粘度4.3mPa・s)3158g、ゼラチン2(ゼリー強度297g、粘度5.3mPa・s)1579g、濃グリセリン559.0g、ソルビトール液399.2g(固形分:299.4g)、および黄色色素5号1.17gを52℃に加温した精製水16610gに入れ、溶解し、減圧脱気した(シェル組成物水溶液)。OMEGA-3-ACID ETHYL ESTERS 90を1000.00重量部とした時の組成比を表7に示す。 シームレスカプセル製造装置(スフェレックス、フロイント産業社製)を用いてシームレスカプセルを調製した。ノズル付近の「OMEGA-3-ACID ETHYL ESTERS 90」(カプセル内容物)の温度は17.7?18.8℃、シェル水溶液は67.5?68.1℃に制御した。キャリア液にはMCTオイルを用い、その温度は6.4?6.8℃で制御し、秒速25個の速度でカプセル化した。 温度制御を厳密に管理することで、カプセル化工程は定常的に安定して稼動することができた。 得られたカプセルは、冷蔵庫で冷却(5℃、21時間)し、乾燥機で水分活性0.2以下になるまで乾燥した。その後、カプセル表面についたキャリア液をふき取り、1カプセルあたり、OMEGA-3-ACID ETHYL ESTERS 90を25mg含む、シームレスカプセルを得た。 ここまでの操作を3回繰り返し、得られたシームレスカプセルをタンブラー式の乾燥機(フロイント産業製)を用い混合した。エチルアルコール224gおよびブルーベリーフレーバー56gを混合し着香液を調製した。混合したシームレスカプセルをタンブラー式の乾燥機(フロイント産業製)を用い着香液をシームレスカプセル40655gあたり199.1g散布し、着香した。着香後、タンブラー式の乾燥機(フロイント産業製)を用いシームレスカプセル中のエチルアルコールが5000ppm以下になるまで除去し、着香したシームレスカプセルを得た。 得られたカプセルのサイズは、中心値約4mmφ(バラツキ3.5?4.5mmφの範囲内)であった。 【0053】 」 (f)「【0056】 試験例1 実施例3で得られたシームレスカプセル(200g)を画像式粒度分布測定装置(カムサイザー、堀場製作所製)で評価したところ、アスペクト比0.95以上であり、ほぼ真球であることを確認した。 【0057】 試験例2 実施例3では、内容物として、OMEGA-3-ACID ETHYL ESTERS 90が100%と高含有化が達成できた。また、デジタルマイクロスコープ(VHX-200、キーエンス)を使用した乾燥前のカプセルの評価では、図1に示すようにアイズがなく(このことから、シェルの平均厚みの1/2を超える大きさのアイズは存在しないと判断できる)、かつ偏肉の極めて少ない良好なシェルによりカプセル化ができていることを観察した。シェルの厚みは最大0.84mm、最小0.82mm(最小/最大0.98)であった。」 上記の記載(a)によれば、本件特許発明1?13,16?18及び14の課題は、カプセル内容物の安定性に優れ、またカプセル内容物が高含有化されうるシームレスカプセル、それらの製造方法、しかもアイズがないか、または存在しても極めて小さく、また偏肉が極めて少ないシームレスカプセルを提供することであり、上記の記載(b)、(c)(特に段落【0016】)、(d)によれば、上記の課題は、ゼラチンおよび可塑剤を含有し、かつ、界面張力調整剤またはゲル化促進剤を含有しないシェル組成物によりシェルを形成することにより達成されることとされている。 そして、実施例1?7においては、シェル組成物水溶液として、ゼラチン、濃グリセリン及びソルビトールを含有し、界面張力調整剤もゲル化促進剤も含有しないものを使用し、カプセル内容物として、OMEGA-3-ACID ETHYL ESTERS 90を使用し、本件特許発明1又は14の所定の温度制御下においてシームレスカプセルを製造しており、特に実施例3に関して、得られたシームレスカプセルはほぼ真球であり、また、アイズがなく、かつ偏肉の極めて少ない良好なシェルによりカプセル化ができていたことが記載されている。 この点に関し、請求人は、以下のように主張する。 本件特許明細書の実施例(表1?表7参照)を含め、全ての処方は、可塑剤としてグリセリンとソルビトールとを混合して用いた例のみである。更に、全ての処方は、グリセリンとソルビトールとの重量比が、約2:1で配合された例である。 すなわち、可塑剤としてグリセリンとソルビトールとを一定の配合(重量比で約2:1)で混合して用いた例でしか、本件特許発明1及び14の効果を実証していない。 被請求人は、「グリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、および、ソルビトール」がシームレスカプセルの製造において通常使用される可塑剤であることを述べただけである。 確かに、ゼラチンに対する可塑剤として、「グリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、および、ソルビトール」が知られているが、これらの可塑剤の構造や分子量は、グリセリン、グリコール類、又は糖アルコールで各々異なる。可塑剤は、構造や分子量等の違いにより、特性も異なることが技術常識である。 可塑剤としてグリセリンとソルビトールと一定の配合(重量比で約2:1)で混合して用いた例しか開示されていない本件特許明細書からでは、グリセリンを単独で使用する場合や、吸湿性が強く成形後の取り扱いが困難となり易いグリコール類を単独で使用する場合等においても、本件特許発明1等の効果を奏するものとまで認識することはできず、請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとは言えない。 たしかに請求人が主張するように、本件特許明細書の実施例に記載されるのは、可塑剤としてグリセリンとソルビトールとを重量比で約2:1で配合した例のみであるが、少なくとも、そのような組成の可塑剤とゼラチンを含有し、かつ、界面張力調整剤またはゲル化促進剤を含有しないシェル組成物を用いて、訂正後の請求項1記載の所定の温度制御下でシェルを形成することで、本件特許発明の課題が達成されることは、現に実施例3において確認されている。 そして、本件特許発明におけるグリセリン等の可塑剤は、記載事項(4f)、(4k)、(4n)、(5c)、(5e)を踏まえると、シームレスカプセルの製造にあたって一般的に使用されるものにすぎず、請求人が技術常識であると主張する「可塑剤は、構造や分子量等の違いにより、特性も異なる」との一般論を考慮しても、可塑剤の特性の相違が本件特許発明1の所定の温度制御下で製造されたシームレスカプセルの最終的な性状に多大な影響を与えるようなものであるとは認められない。 そうしてみると、本件特許明細書の実施例に記載されているシェル組成物を、本件特許発明1における「シェル組成物」の範囲まで拡張ないし一般化したとしても、本件特許発明1の課題が解決されないこととなるとはいえない。 したがって、本件特許発明1は、サポート要件を満たすものである。 また、本件特許発明2?13、16?18、14についても、同様である。 第7 むすび 以上のとおり、請求項15は訂正により削除されたので、請求項15に係る発明に対する無効審判請求は不適法な請求であり、その補正をすることができないものであるから、特許法第135条の規定により却下する。 無効理由1及び2によって、請求項1?13、16?18及び14に係る発明の特許を無効にすることはできない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とすべきものである。 よって結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 液中滴下法により製造された、ゼラチンおよび可塑剤を含有し、かつ、界面張力調整剤またはゲル化促進剤を含有しないシェル組成物により形成されたシェル、および、界面張力調整剤またはゲル化促進剤を含有しないカプセル内容物からなるシームレスカプセルであって、該滴下法に用いられる装置の多重ノズル付近で、「界面張力調整剤またはゲル化促進剤を含有せず、EPAエチルエステル40%w/w以上、かつ、DHAエチルエステル34%w/w以上含有するカプセル内容物」、「ゼラチンおよび可塑剤を含有し、かつ、界面張力調整剤またはゲル化促進剤を含有しないシェル組成物により形成されたシェル組成物水溶液」、および、「キャリア液」の各々を温度制御することにより製造されたシームレスカプセル、 ここで、該可塑剤が、グリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびソルビトールから選択される1種または2種以上であり、 シェルの厚みの最小/最大比が0.6以上であり、 該温度制御が、以下の温度である、 「カプセル内容物」の温度を、5?25℃の範囲で設定値±2℃に制御すること; 「シェル組成物水溶液」の温度を、50?80℃の範囲で設定値±2℃に制御すること; 「キャリア液」の温度を、1?15℃の範囲で設定値±1℃に制御すること; 「カプセル内容物」の温度と「シェル組成物水溶液」の温度の差が、25℃以上75℃以下であること;および 「シェル組成物水溶液」の温度と「キャリア液」の温度の差が、35℃以上79℃以下であること。 【請求項2】 該温度制御が、以下の温度である、請求項1に記載のシームレスカプセル: 「カプセル内容物」の温度を、12℃?22℃の範囲で設定値±1℃に制御すること; 「シェル組成物水溶液」の温度を、60℃?70℃の範囲で設定値±1℃に制御すること; 「キャリア液」の温度を、3?11℃の範囲で設定値±0.5℃に制御すること; 「カプセル内容物」の温度と「シェル組成物水溶液」の温度の差が、38℃以上58℃以下であること; 「シェル組成物水溶液」の温度と「キャリア液」の温度の差が、49℃以上67℃以下であること。 【請求項3】 ゼラチンのゼリー強度が、200?300gである、請求項1または2に記載のシームレスカプセル。 【請求項4】 ゼラチンの粘度が、2?6mPa・sである、請求項1?3のいずれか1項に記載のシームレスカプセル。 【請求項5】 ゼラチンが、豚皮膚由来である、請求項1?4のいずれか1項に記載のシームレスカプセル。 【請求項6】 可塑剤が、グリセリンである、請求項1?5のいずれか1項に記載のシームレスカプセル。 【請求項7】 可塑剤が、ソルビトールである、請求項1?5のいずれか1項に記載のシームレスカプセル。 【請求項8】 可塑剤が、グリセリンとソルビトールとの混合物である、請求項1?5のいずれか1項に記載のシームレスカプセル。 【請求項9】 グリセリンとソルビトールとの重量比が、1:5?5:1である、請求項8に記載のシームレスカプセル。 【請求項10】 ゼラチンと可塑剤との重量比が、10:1?1:1である、請求項1?9のいずれか1項に記載のシームレスカプセル。 【請求項11】 カプセル内容物が、欧州薬局方名OMEGA-3-ACID ETHYL ESTERS 90を含有するものである、請求項1?10のいずれか1項に記載のシームレスカプセル。 【請求項12】 カプセル内容物と、「ゼラチンと可塑剤の合計」との重量比が10:1?1:10である、請求項1?11のいずれか1項に記載のシームレスカプセル。 【請求項13】 シェルとカプセル内容物との重量比が10:1?1:10である、請求項1?12のいずれか1項に記載のシームレスカプセル。 【請求項14】 以下の工程を含む、液中滴下法によりシームレスカプセルを製造する場合において、該滴下法に用いられる装置の多重ノズル付近で、「界面張力調整剤またはゲル化促進剤を含有せず、EPAエチルエステル40%w/w以上、かつ、DHAエチルエステル34%w/w以上含有するカプセル内容物」、「ゼラチン、並びにグリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびソルビトールから選択される1種または2種以上の可塑剤を含有し、かつ、界面張力調整剤またはゲル化促進剤を含有しないシェル組成物により形成されたシェル組成物水溶液」、および、「キャリア液」の各々を温度制御することを特徴とする、ゼラチン、並びにグリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびソルビトールから選択される1種または2種以上の可塑剤を含有し、かつ、界面張力調整剤またはゲル化促進剤を含有しないシェル組成物により形成されたシェル、および、界面張力調整剤またはゲル化促進剤を含有しないカプセル内容物からなる、シェルの厚みの最小/最大比が0.6以上であるシームレスカプセルの製造方法: 「界面張力調整剤またはゲル化促進剤を含有せず、EPAエチルエステル40%w/w以上、かつ、DHAエチルエステル34%w/w以上含有するカプセル内容物」の温度を、5℃?25℃の範囲で設定値±2℃に制御する工程、 「ゼラチン、並びにグリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびソルビトールから選択される1種または2種以上の可塑剤を含有し、かつ、界面張力調整剤またはゲル化促進剤を含有しないシェル組成物により形成されたシェル組成物水溶液」の温度を、50℃?80℃の範囲で設定値±2℃に制御する工程、 「キャリア液」の温度を、1℃?15℃の範囲で設定値±1℃に制御する工程、および 「界面張力調整剤またはゲル化促進剤を含有せず、EPAエチルエステル40%w/w以上、かつ、DHAエチルエステル34%w/w以上含有するカプセル内容物」の温度と「ゼラチン、並びにグリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびソルビトールから選択される1種または2種以上の可塑剤を含有し、かつ、界面張力調整剤またはゲル化促進剤を含有しないシェル組成物により形成されたシェル組成物水溶液」の温度との差が、25℃以上75℃以下である工程、 「ゼラチン、並びにグリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびソルビトールから選択される1種または2種以上の可塑剤を含有し、かつ、界面張力調整剤またはゲル化促進剤を含有しないシェル組成物により形成されたシェル組成物水溶液」の温度と「キャリア液」の温度との差が、35℃以上79℃以下である工程。 【請求項15】(削除) 【請求項16】 シェルにアイズが存在しない、請求項1?13のいずれか1項に記載のシームレスカプセル。 【請求項17】 カプセル化後、乾燥前のシェルに存在するアイズ径がシェルの平均厚みの1/2以下である、請求項1?13のいずれか1項に記載のシームレスカプセル。 【請求項18】 カプセル化後、乾燥前に測定した場合に、径がシェルの平均厚みの1/2を超えるアイズが存在しない、請求項1?13のいずれか1項に記載のシームレスカプセル。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2019-09-24 |
結審通知日 | 2019-09-27 |
審決日 | 2019-10-18 |
出願番号 | 特願2009-521608(P2009-521608) |
審決分類 |
P
1
113・
537-
YAA
(A61K)
P 1 113・ 121- YAA (A61K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 原田 隆興 |
特許庁審判長 |
光本 美奈子 |
特許庁審判官 |
穴吹 智子 滝口 尚良 |
登録日 | 2012-07-27 |
登録番号 | 特許第5047285号(P5047285) |
発明の名称 | シームレスカプセル |
代理人 | 田村 弥栄子 |
代理人 | 高島 一 |
代理人 | 當麻 博文 |
代理人 | 當麻 博文 |
代理人 | 田村 弥栄子 |
代理人 | 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所 |
代理人 | 高島 一 |
代理人 | 鎌田 光宜 |
代理人 | 鎌田 光宜 |