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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1361008
審判番号 不服2018-10631  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-08-03 
確定日 2020-03-18 
事件の表示 特願2015-549560「生物物質を吸引し除去すること」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 6月26日国際公開,WO2014/099905,平成28年 1月21日国内公表,特表2016-501628〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2013年(平成25年)12月17日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2012年(平成24年)12月20日 米国)を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成27年 8月 5日 :国際出願翻訳文提出書の提出
平成29年 8月22日付け:拒絶理由通知書
平成30年 4月 2日付け:拒絶査定
平成30年 8月 3日 :審判請求書,同時に手続補正書の提出
なお,平成27年8月5日に提出された国際出願翻訳文提出書の各翻訳文は,特許法第184条の6第2項の規定により,それぞれ本願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲,図面及び要約書とみなされる。したがって,当該翻訳文のうち特許請求の範囲の翻訳文を,以下「願書に最初に添付した特許請求の範囲」という。

第2 平成30年8月3日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年8月3日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により,特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおり補正された。(下線部は,補正箇所である。)
「脈管の内側を撮像し,そこから生物物質を吸引するためのデバイスであって,
脈管の管腔内に嵌合するように構成される本体であって,開口部を備える,本体と,
前記開口部に接続される遠位端を備える,前記本体内の吸引チャネルと,
前記本体に結合される撮像アセンブリと,
を備え,
前記撮像アセンブリは,前記開口部を通じて撮像するように位置され,前記開口部を介して,前記吸引チャネルに暴露される前記脈管の内側から生物物質が吸引される間,同時に撮像する,
デバイス。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の,願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「脈管の内側を撮像し,そこから生物物質を吸引するためのデバイスであって,
脈管の管腔内に嵌合するように構成される本体であって,開口部を備える,本体と,
前記開口部に接続される遠位端を備える,前記本体内の吸引チャネルと,
前記本体に結合される撮像アセンブリと,
を備える,デバイス。」

2 補正の適否
本件補正は,本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「撮像アセンブリ」について,上記のとおり限定するものであって,補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について,以下,検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は,上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である,米国特許出願公開第2010/0298850号明細書(2010年(平成22年)11月25日出願公開。以下「引用文献1」という。)には,図面とともに,次の記載がある。なお,日本語訳は当審において翻訳したものであり,下線は当審で付したものである。
「[0026] Referring now to FIG. 1 , a catheter 10 constructed in accordance with principles of the present invention, comprises a catheter body 12 having a proximal end and a distal end 16. In the embodiment shown in FIG. 1 , a telescoping cutting mechanism 18 is mounted on the distal end of the catheter body. The cutting mechanism or cutting blade 18 has a proximal pointing cutting edge 20 which may be spaced apart from the catheter body to define a cutting window 22. Preferably, the cutting mechanism 18 has an atraumatic distal tip 24 to facilitate the introduction of the catheter through a patient's vasculature. A proximal hub 30 is attached to the proximal end of the catheter body and comprises a perfusion/aspiration connector 32, a guidewire connector 34, and a slider 36. The slider 36 is attached to the proximal end of an actuator rod 37 which extends from the hub 30 through the lumen of catheter body 12 into the cutting mechanism 18 where it is attached at a proximal end of the inner cutter 22. In this way, manual actuation of slider 36 in the direction of arrow 38 moves inner cutter 22 in the direction of arrow 40.」
(日本語訳:[0026]ここで図1を参照すると,本発明の原理に従って構成されたカテーテル10は,近位端および遠位端16を有するカテーテル本体12を備える。図1に示す実施形態では,入れ子式切断機構18がカテーテル本体の遠位端部に取り付けられている。切断機構または切断刃18は,カテーテル本体から間隔を空けて切断窓22を画定し得る近位刃先端20を有し,好ましくは,切断機構18は,患者の脈管構造を通るカテーテルの導入を容易にするために非外傷性の遠位先端部24を有する。近位ハブ30は,カテーテル本体の近位端に取り付けられ,灌流/吸引コネクタ32と,ワイヤコネクタ34と,スライダ36とを備えている。スライダ36は,アクチュエータロッド37の近位端に取り付けられており,アクチュエータロッド37は,ハブ30からカテーテル本体12の管腔を通って切断機構18内に延び内刃22の近位端に取り付けられている。このようにして,矢印38の方向にスライダ36を手動で動かすと,内刃22が矢印40の方向に移動する。)

「[0027] Referring now to FIGS. 2 and 3 , the distal end 16 of the catheter shown in FIG. 1 will be described in further detail. FIG. 2 shows the cutter mechanism 18 in a first closed position relative to the catheter body 12. In this position, the sharpened edges of the cutting mechanism 18 is contained within the catheter body 12. The atraumatic distal tip 24 may be equipped with a material imaging device such as an ultrasound transducer array or an optical coherence tomography device. In other embodiments, a multiple, phased ultrasound array may be used to provide imaging. As can be seen in FIGS. 2 and 3 , the material imaging device 50 can provide images when the cutting blade or cutting mechanism 18 is in a first closed position as shown in FIG. 2 or in an open, material-engaging position as shown in FIG. 3 . As best seen in FIG. 2 , when the cutter mechanism 18 is closed, the imaging device 50 will lie adjacent to the leading edge of the catheter body 12, where the catheter body acts as the second blade to effect severing of the material. Thus, the material imaging device 50 will be positioned right at the point where material will be severed. The cutting edge 20 as shown in FIG. 3 , typically includes a penetrating point 52 to facilitate material capture. By locating the material imaging device 50 on the cutting blade 18, the present invention can move the imaging device through the various paths or cutting zones if the cutting blade were actuated. This ability to move the imaging device 50 allows for imaging and cutting of the targeted material without having to reposition the catheter body 12 which may cause misalignment of those materials imaged before cutting and the actual location of the cutting zone. Of course, the material imaging device 50 can be used at any point during the procedure, either before or after severing of the target material and an image could be produced even while the cutting blade is being moved between the open and closed positions of the cutting mechanism 18.」
(日本語訳:[0027]次に,図2及び図3を参照して,図1に示されるカテーテルの遠位端部16をさらに詳細に説明する。図2は,カテーテル本体12に対する第1の閉鎖位置で切断機構18を示している。この位置では,切断機構18の鋭利な端部は,カテーテル本体12内に収容されている。非外傷性遠位先端部24は,超音波トランスデューサアレイ又は光コヒーレンス断層撮影装置等の撮影装置を備えていてもよい。他の実施形態では,複数のフェーズド超音波アレイを画像化するために使用することができる。図2及び図3から分かるように,物質撮像装置50は,切断刃または切断機構18が図2に示すような第1の閉鎖位置,又は図3に示すような開位置である物質係合位置にあるときに画像を提供することができる。図2に最も良く示されるように,切断機構18が閉じられているときに,撮像装置50は,物質の切断をもたらす第2のブレードとして作用するカテーテル本体12の先端に隣接して位置する。このようにして,物質撮像装置50は,物質が切断される箇所に正確に配置される。切刃20は,図3に示すように,典型的には,物質の捕捉を容易にするために,穿孔点52を含む。物質撮像装置50を切断刃18の上に配置することにより,切断刃を作動させた場合,本発明は,様々なパスや切断領域を介して撮像素子を移動させることができる。撮像装置50を移動させるこの能力は,切断前の物質の不整合を引き起こす可能性のあるカテーテル本体12を再位置決めする必要なしに標的物質と切断ゾーンの実際の位置の画像形成および切断が可能である。もちろん,撮像装置50は,目的物質の切断の前または後のいずれかの手順中の任意の時点で使用でき,切断機構18の開位置と閉位置との間で切断刃が移動している間でも画像を生成することができる。)

「[0033]Referring now to FIGS. 9A through 10B , still further embodiments of a material excising catheter according to the present invention will be described. FIGS. 9A and 9B show a catheter 170 having a first material imaging device 172 coupled to the soft, atraumatic distal end 174. A second material imaging device 178 is positioned opposite a side-opening cutter window 180 on the catheter body 176. The distal-most imaging device 172 can be used to image the vessel and make an initial determination of where to cut material from the vessel wall. After making the initial determination, the inner cutter 182 is moved to an opened position ( FIG. 9B ) the cutter window 180 will be opened and the imaging device 178 exposed so that it may be used for imaging. The catheter will usually be repositioned so that the imaging device 178, which is located at the cutting position, is aligned with the material originally located with the distal-most imaging device 172. Once it is verified that the target material to be removed is positioned within the cutting aperture, the inner cutter 182 may be translated to sever the material.」
(日本語訳:[0033]ここで図9A乃至図10Bを参照して,本発明による物質切除カテーテルの更に別の実施形態について説明する。図9A,9Bは柔軟な,非外傷性遠位端174に結合された第1撮像装置172を有するカテーテル170を示している。第2撮像装置178は,カテーテル本体176の側部開口切断窓180の反対側に配置されている。最も遠位側の撮像装置172は,血管を画像化し,血管壁から物質を切断する場所の初期決定を行うために使用することができる。初期決定をした後に,内側刃182は,開位置(図9B)に移動され,切断窓180が開かれ,撮像装置178は露出され,撮影に使用することができる。カテーテルは,通常,切断位置に配置されており,撮像装置178が最初に最も遠位にある撮像装置172に配置された物質と位置合わせされるように再配置される。なお,除去される目標物質が,切断開口内に配置されていることが確認されると,内刃182は,物質を切断するために平行移動させることができる。)

「FIG.1



「FIG.9A,FIG.9B



(イ)上記記載(特に下線部の記載)から,引用文献1には,次の技術的事項が記載されているものと認められる。
a 引用文献1には,血管壁の物質を撮影し,血管壁から物質を切断するためのカテーテル170が記載されている。([0033],FIG.9A,FIG.9B)
b FIG.9A,FIG.9Bに示される前記カテーテル170についても,FIG.1に示されるカテーテル10と同様にカテーテル本体の近位端に吸引コネクタ32を備えていることは明らかなので,前記カテーテル170は,吸引コネクタ32及び血管内に導入されるカテーテル本体176を備え,カテーテル本体176に側部開口切断窓180を備えているといえる。([0026],[0033],FIG.1,FIG.9A,FIG.9B)
c FIG.9A,FIG.9Bに示される前記カテーテル本体176についても,FIG.1に示されるカテーテル本体12と同様に管腔を備えていることは明らかなので,前記カテーテル本体176内には,側部開口切断窓180に接続される遠位端を備える,管腔を備えている。([0026],[0033],FIG.1,FIG.9A,FIG.9B)
d 前記カテーテル本体176内には撮像装置178が配置されている。([0033],FIG.9A,FIG.9B)
e 上記撮像装置178は,側部開口切断窓180を通じて撮像するように配置され,前記側部開口切断窓180を介して,切断開口内に配置される血管壁の物質を撮像する。([0033],FIG.9A,FIG.9B)

(ウ)上記(ア),(イ)から,引用文献1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「血管壁の物質を撮影し,血管壁から物質を切断するためのカテーテルであって,
血管内に導入されるカテーテル本体であって,側部開口切断窓を備える,カテーテル本体と,
カテーテル本体の近位端に備えられた吸引コネクタと,
側部開口切断窓に接続される遠位端を備える,カテーテル本体内の管腔と,
カテーテル本体に配置される撮像装置178と,
を備え,
撮像装置178は,側部開口切断窓を通じて撮像するように配置され,側部開口切断窓を介して,切断開口内に配置される血管壁の物質を撮像する,
カテーテル。」

(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「血管壁」は,本件補正発明の「脈管の内側」に相当し,以下同様に,「物質」は「生物物質」に,「カテーテル」は「デバイス」に,「血管内に導入される」は「脈管の管腔内に嵌合するように」に,「カテーテル本体」は「本体」に,「側部開口切断窓」は「開口部」に,「配置される」は「結合される」に,「撮像装置178」は「撮像アセンブリ」に,撮像するように「配置され」は「位置され」に,切断開口内に「配置され」は「暴露され」にそれぞれ該当する。
(イ)引用発明の「切断する」と本件補正発明の「吸引する」とは,どちらも血管内から生物物質を取り除くという技術的な意味を有するので,両者は「取り除く」という限りにおいて共通する。
(ウ)引用発明の「管腔」と本件補正発明の「吸引チャネル」とは,どちらもカテーテル本体内のチャネルであることは明らかなので,両者は「チャネル」という限りにおいて共通する。
(エ)引用発明の「切断開口内」は,引用発明の「管腔」の遠位端の一部であるので,上記(ウ)と同様に,両者は「チャネル」という限りにおいて共通する。
(オ)引用発明の「前記切断開口内に配置される血管壁の物質を撮像する」と本件補正発明の「吸引チャネルに暴露される前記脈管の内側から生物物質が吸引される間,同時に撮像する」とは,「前記チャネルに暴露される前記脈管の内側の生物物質を撮像する」という限りにおいて共通する。

イ 以上のことから,本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は,次のとおりである。
【一致点】
「脈管の内側を撮像し,そこから生物物質を取り除くためのデバイスであって,
脈管の管腔内に嵌合するように構成される本体であって,開口部を備える,本体と,
前記開口部に接続される遠位端を備える,前記本体内のチャネルと,
前記本体に結合される撮像アセンブリと,
を備え,
前記撮像アセンブリは,前記開口部を通じて撮像するように位置され,前記開口部を介して,前記チャネルに暴露される前記脈管の内側の生物物質を撮像する,
デバイス。」

【相違点1】
本体内の「チャネル」について,本件補正発明は「吸引チャネル」であるのに対して,引用発明は「管腔」であり,吸引の機能を有するか否か不明である点。

【相違点2】
生物物質を「取り除く」ためのデバイスについて,本件補正発明は「吸引する」ためのデバイスであるのに対して,引用発明は「切断する」ためのデバイスであり,吸引機能を有するか否か不明である点。

【相違点3】
生物物質を撮像する撮像アセンブリについて,本件補正発明は,「生物物質が吸引される間,同時に撮像する」ものであるのに対して,引用発明は,そのようなものか否か不明である点。

(4)判断
以下,各相違点について検討する。
ア 相違点1について
血管内の血栓等の異物もしくは異物を取り除くカテーテルにおいて,カテーテル本体の管腔内に負圧を発生させることで,管腔の遠位端に備えられた開口部から血栓等の異物もしくは異物を吸引することは周知技術である(原査定の拒絶理由で引用された特開2010-22566号公報の段落【0032】,【0048】,図1等参照。)。
そして,引用発明は,カテーテル本体内に側部開口切断窓につながる管腔を備え,カテーテル本体の近位端に吸引コネクタを備えているのであるから,上記周知技術を踏まえると,引用発明の管腔は切断した物質を吸引する機能を有すると考えられる。
したがって,引用発明の「管腔」は本件補正発明の「吸引チャネル」に相当し,相違点1は実質的な相違点ではない。
例え,実質的な相違点であったとしても,引用発明の「管腔」を「吸引チャネル」とすることは,上記周知技術に基いて当業者が容易になし得ることである。

イ 相違点2について
上記相違点1で検討したように,引用発明の「管腔」は吸引の機能を有するので,引用発明のデバイスは血管内の生物物質を吸引するためのものといえる。
したがって,上記相違点2は実質的な相違点ではない。
例え,実質的な相違点であったとしても,引用発明に吸引機能を備えるように構成することは,上記周知技術に基いて当業者が容易になし得ることである。

ウ 相違点3について
引用文献1の[0027]に「撮像装置50は,目的物質の切断の前または後のいずれかの手順中の任意の時点で使用でき,切断機構18の開位置と閉位置との間で切断刃が移動している間でも画像を生成することができる。」と記載されており,この記載に基づけば,撮像装置50は,物質を切断する間,同時に撮像するものであるといえる。ただし,この記載は,引用発明であるFIG.9A及びFIG.9Bに記載された実施例の撮像装置178についての記載ではないので,撮像装置178が,物質を切断する間,同時に撮像するものであるか否かは一見して明らかとはいえないが,側部開口切断窓を通じて撮像する撮像装置178の配置から考えると,物質を切断する間,同時に撮像することは可能であるから,切断時のズレ防止という課題や確実に切断されたことを確認する等の目的で,撮像装置50と同様に,撮像装置178においても物質を切断する間,同時に撮像するように構成することは当業者が適宜なし得る事項である。
そして,上記相違点1,2で検討したように,引用発明は吸引機能を有するものであり,切除した物質を逃さないように吸引しながら切除することは,この分野において周知技術であることを鑑みると,引用発明の撮像装置において,吸引しながら物質を切断する間,同時に撮像することは,当業者が適宜なし得る事項であって何ら困難性は認められない。
したがって,引用発明において,上記相違点3に係る本件補正発明の構成とすることは,当業者が容易になし得ることである。

エ そして,上記相違点を総合的に勘案しても,本件補正発明の奏する作用効果は,引用発明の奏する作用効果から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。

オ したがって,本件補正発明は,引用発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
よって,本件補正は,特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので,同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成30年8月3日にされた手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし26に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ,その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,その請求項1に記載された事項により特定される,前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,この出願の請求項1に係る発明は,本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された周知技術に基いて,その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

引用文献1:米国特許出願公開第2010/0298850号明細書
引用文献2:特開2010-22566号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献及びその記載事項は,前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は,前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から,「 前記撮像アセンブリは,前記開口部を通じて撮像するように位置され,前記開口部を介して,前記吸引チャネルに暴露される前記脈管の内側から生物物質が吸引される間,同時に撮像する,」という限定事項を削除したものである。
そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が,前記第2の[理由]2(3),(4)に記載したとおり,引用発明及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,引用発明及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-10-18 
結審通知日 2019-10-23 
審決日 2019-11-06 
出願番号 特願2015-549560(P2015-549560)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
P 1 8・ 575- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 近藤 利充  
特許庁審判長 内藤 真徳
特許庁審判官 寺川 ゆりか
林 茂樹
発明の名称 生物物質を吸引し除去すること  
代理人 笛田 秀仙  
代理人 五十嵐 貴裕  

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