• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01D
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 F01D
管理番号 1361244
審判番号 不服2019-7521  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-06-05 
確定日 2020-04-02 
事件の表示 特願2015-178900「蒸気タービン」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 3月16日出願公開、特開2017- 53287〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年9月10日の出願であって、平成30年7月25日付け(発送日:同年7月31日)で拒絶の理由が通知され、平成30年9月28日に意見書が提出されたが、平成31年2月21日付け(発送日:同年3月5日)で拒絶査定がされ、これに対し、令和元年6月5日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明は、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「ダイヤフラム外輪の内側に取付けられた外輪側ガイドベーンと、
外径側の端部が上記外輪側ガイドベーンに接合され、上記ダイヤフラム外輪の内側に配置された静翼と、を備える蒸気タービンであって、
上記蒸気タービンの外部から上記静翼の表面まで通じ、上記蒸気タービンの駆動に用いられる蒸気または外部から供給される蒸気を導入するための蒸気通路が、上記ダイヤフラム外輪の内部および上記外輪側ガイドベーンに形成されていることを特徴とする蒸気タービン。」

第3 拒絶理由通知及び拒絶査定の概要
1 拒絶査定の概要
拒絶査定の概要は、以下のとおりである。

請求項1、4に係る発明について、依然として上記理由1(特許法第29条第1項第3号;新規性)及び理由2(同法第29条第2項;進歩性)が解消していない。

2 拒絶の理由の概要
平成30年7月25日付け(発送日:同年7月31日)拒絶理由通知書の概要は以下のとおりである。

1.(新規性)この出願の請求項1、4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2.(進歩性)この出願の請求項1、4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

●理由1(新規性)、理由2(進歩性)について
・請求項 1、4
・引用文献等 1

<引用文献等一覧>
1.実願昭60-2885号(実開昭61-120002号)のマイクロフィルム
2.特開2010-180827号公報

第4 引用文献の記載事項
1 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である実願昭60-2885号(実開昭61-120002号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献」という。)には、「蒸気タービン」に関して、図面(特に、第1図、第2図、第5図及び第7図を参照。)とともに次の事項が記載されている(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。以下同様。)。

ア 「本考案は、ノズルの一側に集まる水滴等のドレンを良好に取り除くようにする蒸気タービンの改良に関する。」(明細書2ページ6ないし8行。)

イ 「一般に、蒸気タービンは、第7図に示されるように、静止部と回転部を有しており、回転部はロータ(8)に植設されている羽根(7)が環状体として設けられている。一方、静止部はケーシング(1)を有し、このケーシング(1)にはノズル(3)の一側を固設するノズル外輪(2)が係合されている。また、ノズル(3)の他側にはノズル内輪(4)が固設されていて、その端部は蒸気の漏れを防止するラビリンス(5)が着脱自在に装着されている。」(明細書2ページ10ないし18行。)

ウ 「ところで、蒸気タービンは、初段落から最終段落に向うにしたがつて、その蒸気は仕事をする関係上、圧力・温度が低下しており、途中の段階では蒸気の中に一部水滴等のドレンを含んだまま仕事をし、このドレンが蒸気タービンの構成機器に悪影響を与えている。すなわち、蒸気中に含まれるドレンは、比較的比重が乾き蒸気よりも高く、このため第7図示のように、羽根(7)を通過するとき、その遠心力によつて振り切られ、この振り切られたドレンはノズル外輪(2)の側壁やノズル(3)の一側に破線の如く寄せ集められている。このようにして集められたドレンは、次の段落を通過するときにだんだん成長し、成長とともに液滴化し、ついには次の段落に流れるとき、動翼(7)にまともに衝突し、その結果、動翼(7)の前縁部に浸食問題を起している。」(明細書3ページ4ないし19行。)

エ 「本考案は、上記欠点を解消するためになされたものであつて、ノズル外輪の側壁やノズルの一側に寄せ集められるドレンを良好に除去するために、外部から加熱蒸気を加えることによつてドレンを加温する蒸気タービンを提供することを目的とする。」(明細書4ページ6行ないし11行。)

オ 「第1図において、符号(1)はケーシングを示し、このケーシング(1)にはノズル(3)を有するノズル外輪(2)が脱着自在に係合する。ノズル外輪(2)内には、噴口(10)が設けられており、この噴口(10)は蒸気室(11)とこれに連通する噴出孔(12)とよりなる。噴口(10)の入口は導管(15)及びケーシング(1)に穿設された通路口(14)に結ばれている。また、導管(15)には継手(13)が適宜に設けられていて、保守修理のために取外し可能になつている。
一方、噴口(10)の出口は、噴射孔(12)を有するも、この噴射孔(12)は例えば第2図に示されるように、長穴等の透口(12a)を有し、この透孔(12a)は傾斜をもたせ、加温蒸気がノズル外輪(2)の側壁及びノズル(3)に流れるようにしてある。
このように、ノズル外輪(2)、ノズル(3)の一側に集まるドレンは、外部から噴口(10)を通して送られてくる加温蒸気によつて加温されるから、その熱によつて再蒸発し、水滴等のドレンはなくなる。」(明細書5ページ1ないし18行。)

カ 「しかして、本発明は、上述スチームシールヘツダ(21)に集められた比較的高温高圧の漏れ蒸気を加温蒸気として利用するものであつて、チームシールヘツダ(21)と低圧タービン(20)、(20)とは、導管(15)を介して互に結ばるようにしてある。」(明細書6ページ12行ないし17行。)

キ 上記イ及びオの記載事項、並びに第1図及び第7図の図示内容からみて、ノズル外輪(2)はケーシング(1)の内側に係合したノズル外輪(2)であり、ノズル(3)はケーシング(1)の内側に配置されたノズル(3)であるといえる。

ク 上記イ及びオの記載事項、並びに第1図及び第7図の図示内容からみて、ノズル(3)は、ノズル(3)の外径側の端部がノズル外輪(2)に固設されているといえる。

ケ 上記オの記載事項、並びに第1図及び第2図の図示内容からみて、ノズル(3)に流れる加温蒸気は、ノズル(3)の表面に流れていると理解できる。そうすると、長穴等の透口(12a)を有する噴射孔(12)は、ノズル(3)の表面まで通じた噴射孔(12)であるといえる。

これらの記載事項及び認定事項並びに図面の図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則り整理すると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「ケーシング(1)の内側に係合するノズル外輪(2)と、
外径側の端部が上記ノズル外輪(2)に固設され、上記ケーシング(1)の内側に配置されたノズル(3)と、を備える蒸気タービンであって、
外部から上記ノズル(3)の表面まで通じ、スチームシールヘツダ(21)に集められた加温蒸気を送るための通路口(14)がケーシング(1)に穿設され、蒸気室(12)と噴出孔(12)とよりなる噴口(10)が上記ノズル外輪(2)に設けられた蒸気タービン。」

第5 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「ケーシング(1)」はその機能、構成及び技術的意義からみて前者の「ダイヤフラム外輪」に相当し、以下同様に、「係合する」は「取付けられた」に、「固設」は「接合」に、「ノズル(3)」は「静翼」に、「外部」は「蒸気タービンの外部」に、「加温蒸気」は「蒸気」に、「送る」は「導入する」にそれぞれ相当する。
また、後者の「ノズル外輪(2)」と前者の「外輪側ガイドベーン」とは、その機能、構成及び技術的意義からみて「外輪側の部材」という限りで一致する。
後者の「スチームシールヘツダ(21)に集められた加温蒸気」は、その機能、構成及び技術的意義からみて前者の「外部から供給される蒸気」に相当するものであるから、「蒸気タービンの駆動に用いられる蒸気または外部から供給される蒸気」との事項を満たすことは明らかである。そして、後者の「通路口(14)」及び「蒸気室(12)と噴出孔(12)とよりなる噴口(10)」は、いずれも「蒸気通路」に相当するものであるから、後者の「スチームシールヘツダ(21)に集められた加温蒸気を送るための通路口(14)がケーシング(1)に穿設され、蒸気室(12)と噴出孔(12)とよりなる噴口(10)がノズル外輪(2)に設けられた」と前者の「蒸気タービンの駆動に用いられる蒸気または外部から供給される蒸気を導入するための蒸気通路が、上記ダイヤフラム外輪の内部および上記外輪側ガイドベーンに形成されている」とは、「蒸気タービンの駆動に用いられる蒸気または外部から供給される蒸気を導入するための蒸気通路が、上記ダイヤフラム外輪の内部および上記外輪側の部材に形成されている」という限りで一致する。

したがって、両者は、
「ダイヤフラム外輪の内側に取付けられた外輪側の部材と、
外径側の端部が上記外輪側の部材に接合され、上記ダイヤフラム外輪の内側に配置された静翼と、を備える蒸気タービンであって、
上記蒸気タービンの外部から上記静翼の表面まで通じ、上記蒸気タービンの駆動に用いられる蒸気または外部から供給される蒸気を導入するための蒸気通路が、上記ダイヤフラム外輪の内部および上記外輪側の部材に形成されている蒸気タービン。」
である点で一致し、次の点で一応相違する。

[相違点]
「外輪側の部材」に関し、前者は「外輪側ガイドベーン」であるのに対し、後者は「ノズル外輪(2)」である点。

第6 判断
相違点について検討する。
本願発明における「外輪側ガイドベーン」がどのようなものか、本願の発明の詳細な説明の記載を参酌すると、本願の発明の詳細な説明の段落【0018】には、「外輪側ガイドベーン6は、ダイヤフラム外輪3の内側に取り付けられている。」との記載があり、段落【0019】には「静翼5は、ダイヤフラム外輪3の内側(ダイヤフラム外輪3およびダイヤフラム内輪4の間)に配置されており、その外径側(外側)の端部が外輪側ガイドベーン6に接合され、接合部7が形成されている。」との記載がある。そして、段落【0022】には「静翼5の外径側の端部は、外輪側ガイドベーンに6にシール溶接される」との記載がある。そして、外輪側ガイドベーン6そのものの構造及び機能についての記載は、段落【0018】、【0019】及び【0022】以外に見出すことはできない。してみると、本願発明の「外輪側ガイドベーン」は、ダイヤフラム外輪の内側に取り付けられ、静翼の外形側の端部が接合されている部材であるといえる。
そして、引用発明のノズル外輪(2)は、ケーシング(1)(「ダイヤフラム外輪」に相当。)の内側に取り付けられ、ノズル(3)(「静翼」に相当。)が接合されるものである。
すなわち、本願発明の「外輪側ガイドベーン」と引用発明の「ノズル外輪(2)」との間に、構造および機能に係る相違を見出すことはできない。この理解においては、引用発明の「ノズル外輪(2)」は本願発明の「外輪側ガイドベーン」に相当するから、上記相違点は実質的な相違ではない。

他方、「ガイドベーン」についてのタービンの技術分野の技術常識を踏まえれば、「外輪側ガイドベーン」は、蒸気を「ガイド」する「ベーン」であるから、上記相違点は実質的な相違であると理解できる。
そこで、当該理解に立って検討すると、上記第4 1 ウにおける「この振り切られたドレンはドレン外輪(2)の側壁やノズル(3)の一側に破線の如く寄せ集められている。」との記載及び第7図及び第1図の図示事項におけるドレンの流れに係る破線とノズル外輪(2)の関係からみて、引用文献は、引用発明のノズル外輪(2)のノズル(3)側の部分がドレンあるいはドレンを含む蒸気をガイドする機能を備えていることを示唆するものといえる。そして、蒸気タービンにおいて、蒸気をガイドするベーン、すなわちガイドベーンを備えるよう構成することは例示するまでもない慣用手段にすぎず、当業者の通常の創作能力の範囲で想起し得たものである。
してみると、引用発明のノズル外輪(2)をガイドベーンとすることは、当業者の通常の創作能力の範囲で容易になし得たことである。
そうすると、上記相違点が実質的な相違点であると理解しても、引用発明において、当業者の通常の創作能力の範囲で上記相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、容易になし得たことである。

また、本願発明は、全体としてみても、引用発明から予測し得ない格別な効果を奏するものではない。

したがって、本願発明は、引用発明と同一である。
または、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 審判請求人の主張について
請求人は、審判請求書において以下のように主張する。
ア 本願発明の「外輪側ガイドベーン」は、「ダイヤフラム外輪」の内側に独立して設置されているのに対して、引用文献には、「外輪側ガイドベーン」に相当するものは記載も示唆もされていない。また、引用文献記載のノズル外輪2のノズル3側の部分が、蒸気タービンにおいて流れをガイドするベーンとしての機能を有するか否かは不知である。

イ 本願発明の「蒸気通路」は、「上記蒸気タービンの外部から上記静翼の表面まで通じ」るもの、つまり、本願発明の「蒸気通路」の先端は、静翼の表面まで達しているのに対し、引用文献記載の発明は、蒸気通路(第1図の導管15→噴口10→蒸気室11→噴出孔12の通路)が、その先端である噴出孔12がノズル3(静翼に相当)の表面まで達していない。

そこで、請求人の主張について検討する。
主張アについて検討すると、引用発明の「ノズル外輪(2)」が、本願の発明の詳細な説明の記載から導き出せる、本願発明の「外輪側ガイドベーン」と同様の構成及び機能を有していることは、第6において上述したとおりである。すなわち、引用発明の「ノズル外輪(2)」は本願発明の「外輪側ガイドベーン」に相当する構成および機能を備えたものといえる。
また、上記第4 1 ウの記載及び図7及び図1の図示内容からノズル外輪(2)のノズル(3)側の部分が蒸気タービンにおける蒸気の流れをガイドする機能を備えていることも第6において上述したとおりである。そして、第6に上述したとおり、蒸気タービンの技術分野において、蒸気の流れをガイドするガイドベーンを備えることは慣用手段であり、該慣用手段を踏まえてノズル外輪(2)をガイドベーンとすることは、当業者であれば容易になし得たことである。
したがって、請求人の主張アに係る主張は当を得ない。

主張イについて検討すると、第4 1 ケにおいて上述したとおり、第4 1 オの記載事項、並びに第1図及び第2図の図示内容からみて、ノズル(3)に流れる加温蒸気は、ノズル(3)の表面に流れていると理解できるから、引用発明の噴射孔(12)は、ノズル(3)の表面まで通じた噴射孔(12)である。そうすると、引用発明は、「『蒸気通路』の先端は、静翼の表面まで達している」か否かに関わらず、「上記蒸気タービンの外部から上記静翼の表面まで通じ」に係る事項を備えているといえる。
そして、本願発明の「蒸気通路」は、「上記蒸気タービンの外部から上記静翼の表面まで通じ」るものであるが、「『蒸気通路』の先端は、静翼の表面まで達している」に係る事項について、何ら特定はされていない。
そうすると、請求人の主張イに係る主張は、本願発明に基づく主張ではないから、当を得ない主張である。

以上のとおり、請求人の主張ア及びイに係る主張は当を得ない主張であるので採用することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることはできない、または、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-01-28 
結審通知日 2020-02-04 
審決日 2020-02-18 
出願番号 特願2015-178900(P2015-178900)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (F01D)
P 1 8・ 121- Z (F01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西中村 健一  
特許庁審判長 渋谷 善弘
特許庁審判官 水野 治彦
鈴木 充
発明の名称 蒸気タービン  
代理人 特許業務法人雄渾  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ