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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H05B
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  H05B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H05B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H05B
管理番号 1361433
異議申立番号 異議2019-700553  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-05-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-07-16 
確定日 2020-02-17 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6451918号発明「着色感光性樹脂組成物、顔料分散液、隔壁、有機電界発光素子、画像表示装置及び照明」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6451918号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-11〕について訂正することを認める。 特許第6451918号の請求項1?11に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6451918号の請求項1?11に係る特許についての出願は、平成29年11月29日(優先権主張 平成28年12月2日)を国際出願日とする出願であって、平成30年12月21日にその特許権の設定登録がされ、平成31年1月16日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、以下のとおりである。

令和元年7月16日:特許異議申立人 加藤 浩志(以下「特許異議申立人」という。)による請求項1?11に係る特許に対する特許異議の申立て
令和元年9月24日付け:取消理由通知書
令和元年11月21日:特許権者による意見書及び訂正請求書の提出(この訂正請求書による訂正請求を、以下「本件訂正請求」という。)
なお、令和元年11月27日付けで通知書を送付したが、特許異議申立人による意見書の提出はなかった。

第2 訂正の適否
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、次のとおりである(下線は当合議体が付したものであり、訂正箇所を示す。)。なお、本件訂正請求は、一群の請求項である、請求項1?請求項11を対象として請求された。

(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、「(C1)エポキシ(メタ)アクリレート樹脂を75質量%以上含む」とあるのを、「(C1)主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂を85質量%以上含む」に訂正する。(請求項1の記載を直接または間接に引用する請求項2?11についても同様に訂正する。)

(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に、「(C1)エポキシ(メタ)アクリレート樹脂の含有割合が85質量%以上」とあるのを、「(C1)主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂の含有割合が90質量%以上」に訂正する。(請求項2の記載を直接または間接に引用する請求項3?11についても同様に訂正する。)

(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に、「前記(C1)エポキシ(メタ)アクリレート樹脂が」とあるのを、「前記(C1)主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂が」に訂正する。(請求項3の記載を直接または間接に引用する請求項4?11についても同様に訂正する。)

2 訂正の適否
以下、訂正前の請求項1?11に係る発明を、それぞれ、「訂正前発明1?11」という。
(1) 訂正事項1
ア 訂正の目的
訂正事項1による訂正は、訂正前発明1における「(C1)エポキシ(メタ)アクリレート樹脂」を、「(C1)主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂」と特定するとともに、その含有量を、「75質量%以上」から、「85質量%以上」に限定するものである。また、請求項2?請求項11についてみても、同じことがいえる。
そうしてみると、上記の訂正は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とする訂正である。

イ 新規事項について
訂正事項1による訂正は、願書に添付した明細書の段落【0165】、段落【0166】及び段落【0270】に基づくものである。
そうしてみると、訂正は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)によって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 拡張、変更について
訂正事項1による訂正は、前記アで述べたとおりのものであるから、訂正前発明1の範囲を狭くするものである。また、請求項2?請求項11についてみても、同じことがいえる。
そうしてみると、訂正により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が、訂正後の特許請求の範囲に含まれることにはならないといえる。
したがって、訂正事項1による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(2) 訂正事項2
ア 訂正の目的
訂正事項2による訂正は、訂正前発明2における「(C1)エポキシ(メタ)アクリレート樹脂」を、「(C1)主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂」と特定するとともに、その含有割合を「85質量%以上」から、「90質量%以上」に限定するものである。また、請求項3?請求項11についてみても、同じことがいえる。
そうしてみると、上記の訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とする訂正である。

イ 新規事項について
訂正事項2による訂正は、願書に添付した明細書の段落【0270】に基づくものである。
そうしてみると、訂正は、当業者によって願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項2による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 拡張、変更について
訂正事項2による訂正は、前記アで述べたとおりのものであるから、訂正前発明2の範囲を狭くするものである。また、請求項3?請求項11についてみても、同じことがいえる。
そうしてみると、訂正により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が、訂正後の特許請求の範囲に含まれることにはならないといえる。
したがって、訂正事項2による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(3) 訂正事項3
訂正事項3による訂正は、訂正事項1によって、「(C1)エポキシ(メタ)アクリレート樹脂」が「(C1)主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂」に訂正されたことに伴って、これと整合するように請求項3の記載を書き改めたものである。
そうしてみると、上記の訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項(明瞭でない記載の釈明)を目的とする訂正である。
また、訂正事項3による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

3 小括
本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号または第3号に掲げる事項を目的とするものである。また、訂正は、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?11〕について訂正することを認める。

第3 取消理由の概要
本件請求項1?11に係る特許に対して、当審が令和元年9月24日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、[A]本件特許の発明の詳細な説明及び特許請求の範囲の記載に不備があるから、本件特許は、特許法第36条第4項第1号及び同条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである、[B]請求項1?7に係る発明は、甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明と、発明の構成に差異がないから、請求項1?7に係る特許は、特許法第29条第1項第3号に該当する発明に対してされたものである、[C]請求項1?11に係る発明は、甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1?11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである、[D]したがって、本件請求項1?11に係る特許は、特許法第113条第1項第2号及び第4号に該当し、取り消されるべきものである、というものである。

第4 本件特許発明
上記「第2」で述べたとおり、本件訂正請求による訂正は認められることとなった。そうしてみると、本件特許の請求項1?請求項11に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」?「本件特許発明11」という。)は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1?請求項11に記載された事項によって特定されるとおりの、以下のものである。

「【請求項1】
(A)着色剤、(B)分散剤、(C)バインダー樹脂、(D)光重合性モノマー及び(E)光重合開始剤を含有する、有機電界発光素子の隔壁を形成するために用いられる着色感光性樹脂組成物であって、
前記(A)着色剤が、下記一般式(I)で表される化合物、前記化合物の幾何異性体、前記化合物の塩、及び前記化合物の幾何異性体の塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する(A1)有機黒色顔料を含み、
前記(B)分散剤が、アクリル系分散剤を含み、
前記(C)バインダー樹脂が、(C1)主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂を85質量%以上含むことを特徴とする着色感光性樹脂組成物。
【化1】

(式(I)中、R^(a1)及びR^(a6)は各々独立に、水素原子、CH_(3)、CF_(3)、フッ素原子又は塩素原子を表し;
R^(a2)、R^(a3)、R^(a4)、R^(a5)、R^(a7)、R^(a8)、R^(a9)及びR^(a10)は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、R^(a11)、COOH、COOR^(a11)、COO^(-)、CONH_(2)、CONHR^(a11)、CONR^(a11)R^(a12)、CN、OH、OR^(a11)、COCR^(a11)、OOCNH_(2)、OOCNHR^(a11)、OOCNR^(a11)R^(a12)、NO_(2)、NH_(2)、NHR^(a11)、NR^(a11)R^(a12)、NHCOR^(a12)、NR^(a11)COR^(a12)、N=CH_(2)、N=CHR^(a11)、N=CR^(a11)R^(a12)、SH、SR^(a11)、SOR^(a11)、SO_(2)R^(a11)、SO_(3)R^(a11)、SO_(3)H、SO_(3)^(-)、SO_(2)NH_(2)、SO_(2)NHR^(a11)又はSO_(2)NR^(a11)R^(a12)を表し;
且つ、R^(a2)とR^(a3)、R^(a3)とR^(a4)、R^(a4)とR^(a5)、R^(a7)とR^(a8)、R^(a8)とR^(a9)、及びR^(a9)とR^(a10)からなる群から選ばれる少なくとも1つの組み合わせは、互いに直接結合してもよく、又は酸素原子、硫黄原子、NH若しくはNR^(a11)ブリッジによって互いに結合してもよく;
R^(a11)及びR^(a12)は各々独立に、炭素数1?12のアルキル基、炭素数3?12のシクロアルキル基、炭素数2?12のアルケニル基、炭素数3?12のシクロアルケニル基又は炭素数2?12のアルキニル基を表す。)
【請求項2】
前記(C)バインダー樹脂における前記(C1)主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂の含有割合が90質量%以上である、請求項1に記載の着色感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(C1)主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂が、下記一般式(II)で表される繰り返し単位構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂及び下記一般式(III)で表される部分構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂の一方又は両方を含む、請求項1又は2に記載の着色感光性樹脂組成物。
【化2】

(式(II)中、R^(11)は水素原子又はメチル基を表し;
R^(12)は置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を表し;
式(II)中のベンゼン環は、更に任意の置換基により置換されていてもよく;
*は結合手を表す。)
【化3】

(式(III)中、R^(13)は各々独立に、水素原子又はメチル基を表し;
R^(14)は、環状炭化水素基を側鎖として有する2価の炭化水素基を表し;
R^(15)及びR^(16)は各々独立に、置換基を有していてもよい2価の脂肪族基を表し;
m及びnは各々独立に0?2の整数を表し;
*は結合手を表す。)
【請求項4】
前記アクリル系分散剤が、窒素原子を含有するアクリル系分散剤である、請求項1?3のいずれか1項に記載の着色感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(A)着色剤の含有割合が、前記着色感光性樹脂組成物の全固形分あたり60質量%以下である、請求項1?4のいずれか1項に記載の着色感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(A)着色剤が、さらに(A2)有機着色顔料及び(A3)カーボンブラックの一方又は両方を含む、請求項1?5のいずれか1項に記載の着色感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記(A)着色剤における(A1)有機黒色顔料の含有割合が10質量%以上である、請求項1?6のいずれか1項に記載の着色感光性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1?7のいずれか1項に記載の着色感光性樹脂組成物で構成される隔壁。
【請求項9】
請求項8に記載の隔壁を備える有機電界発光素子。
【請求項10】
請求項9に記載の有機電界発光素子を含む画像表示装置。
【請求項11】
請求項9に記載の有機電界発光素子を含む照明。」

第5 各甲号証の記載事項、各甲号証に記載された発明、引用文献の記載事項
1 甲第1号証の記載事項
甲第1号証(国際公開第2015/046178号)には、以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、甲第1号証に記載された発明の認定や判断に活用した箇所を示す(以下同様。)。

(1) 「技術分野
[0001] 本発明は、感光性着色組成物、ブラックマトリクス、着色スペーサー及び画像表示装置に関するものである。詳しくは、遮蔽性及び製版特性に優れる感光性着色組成物と、その用途に関する。
背景技術
[0002] 液晶表示素子用ブラックマトリクスは、液晶表示素子において駆動電極間からの光のもれを防ぐために用いられる。一般的にブラックマトリクスは、TFT(Thin Film Transistor)素子基板と対をなすガラス又はプラスティックシートなどの透明基板上にフォトリソグラフィー法を用いて形成されるストライプ状又は格子状の遮光性材料のパターンである。
・・・(省略)・・・
発明が解決しようとする課題
[0006] 本発明者らが鋭意検討した結果、特許文献1に記載されている感光性組成物は、有機着色顔料の遮蔽率(光学濃度)が低く、十分な光学濃度を得るためには膜厚を厚くする必要があることがわかった。
また、特許文献2や3に記載されている、前記アニリンブラックやペリレンブラックは、分散性が悪く、分散するために多くの分散剤を使用する必要があり、製版性等に問題が生じる場合があることがわかった。加えて遮蔽率(光学濃度)も十分なものではないことが分かった。
[0007] さらに、特許文献4や5には、ビス-オキソジヒドロ-インドリレン-ベンゾフラン着色剤を画像表示装置に用いる遮蔽剤として用いることについては記載も示唆もなく、画像表示装置に用いる遮蔽剤として用いた際の光学濃度、分散性や製版性といった特性についても不明である。
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、遮光性に優れ、しかも、分散性や製版性に優れ、十分に低い比誘電率を示す感光性着色組成物を提供することを目的とする。
・・・(省略)・・・
発明の効果
[0018] 本発明の感光性着色組成物は、特定の構造を有する有機黒色顔料を含むことで、顔料分散体作製時に分散剤の量を少なくすることができるため優れた製版特性を示し、また分散性にも優れる。よって、本発明の感光性着色組成物から形成されるブラックマトリクスは、優れた遮光性を示す。また、本発明のブラックマトリクス及び着色スペーサーは、TFT素子基板上に形成されても短絡・誤動作等を起こさないだけの十分低い比誘電率を示す。本発明のブラックマトリクスを有する画像表示装置は、TFT故障や液晶駆動の乱れ等の問題がなく、信頼性に優れる。」

(2) 「発明を実施するための形態
・・・(省略)・・・
[0024] [感光性着色組成物]
本発明の感光性着色組成物(以下、「感光性着色組成物」又は「着色樹脂組成物」と称す場合がある)は、
(A)色材
(B)分散剤
(C)アルカリ可溶性樹脂
(D)光重合開始剤
を必須成分として含有し、必要に応じて、更に有機溶剤、シランカップリング剤等の密着向上剤、塗布性向上剤、現像改良剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性剤、顔料誘導体等、その他の配合成分を含むものであり、通常、各配合成分が、有機溶剤に溶解又は分散した状態で使用される。
[0025] <(A)色材>
本発明で用いる(A)色材は、(A-1)下記一般式(1)で表される化合物、その幾何異性体、その塩、またはその幾何異性体の塩である有機黒色顔料を含む。
[0026][化3]

[0027][式(1)中、R^(1)およびR^(6)は互いに独立して水素原子、CH_(3)、CF_(3)、フッ素原子または塩素原子である;
R^(2)、R^(3)、R^(4)、R^(5)、R^(7)、R^(8)、R^(9)およびR^(10)は他の全てから互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、R^(11)、COOH、COOR^(11)、COO^(-)、CONH_(2)、CONHR^(11)、CONR^(11)R^(12)、CN、OH、OR^(11)、COCR^(11)、OOCNH2、OOCNHR^(11)、OOCNR^(11)R^(12)、NO_(2)、NH_(2)、NHR^(11)、NR11R^(12)、NHCOR^(12)、NR^(11)COR^(12)、N=CH_(2)、N=CHR^(11)、N=CR^(11)R^(12)、SH、SR^(11)、SOR^(11)、SO_(2)R^(11)、SO_(3)R^(11)、SO_(3)H、SO_(3)^(-)、SO_(2)NH_(2)、SO_(2)NHR^(11)またはSO_(2)NR^(11)R^(12)である;
且つ、R^(2)とR^(3)、R^(3)とR^(4)、R^(4)とR^(5)、R^(7)とR^(8)、R^(8)とR^(9)、及びR^(9)とR^(10)からなる群から選ばれる少なくとも1つの組み合わせは、互いに直接結合し、または酸素原子、硫黄原子、NH若しくはNR^(11)ブリッジによって互いに結合することもできる;
R^(11)およびR^(12)は互いに独立して、炭素数1?12のアルキル基、炭素数3?12のシクロアルキル基、炭素数2?12のアルケニル基、炭素数3?12のシクロアルケニル基または炭素数2?12のアルキニル基である。]
・・・(省略)・・・
[0038] 好ましい(A-1)の有機黒色顔料は、下記一般式(2)で表される化合物である。
[0039][化5]

[0040] このような有機黒色顔料の具体例としては、商品名で、Irgaphor(登録商標) Black S 0100 CF(BASF社製)が挙げられる。
・・・(省略)・・・
[0064] <(B)分散剤>
本発明の感光性着色組成物においては、(A)色材を微細に分散させ、且つその分散状態を安定化させることが品質の安定性確保には重要なため、(B)分散剤を含み、特に、(A-1)有機黒色顔料の分散性の観点から、4級アンモニウム塩基を官能基として有する高分子分散剤を含む。
前記高分子分散剤は更に、分散安定性の面からカルボキシル基;リン酸基;スルホン酸基;又はこれらの塩基;一級、二級又は三級アミノ基;ピリジン、ピリミジン、ピラジン等の含窒素ヘテロ環由来の基、等の官能基を更に有するものであってもよい。中でも特に、一級、二級又は三級アミノ基;ピリジン、ピリミジン、ピラジン等の含窒素ヘテロ環由来の基、等の塩基性官能基を更に有する高分子分散剤が顔料を分散する際に少量の分散剤で分散することができるとの観点から好ましい。
これらの中でも、(A-1)有機黒色顔料の分散性の観点から、また、(A-2)有機着色顔料及び/又は(A-3)カーボンブラックの分散性の観点から、4級アンモニウム塩基及び3級アミノ基を官能基として有する高分子分散剤が好ましい。
[0065] また、高分子分散剤としては、例えばウレタン系分散剤、アクリル系分散剤、ポリエチレンイミン系分散剤、ポリアリルアミン系分散剤、アミノ基を持つモノマーとマクロモノマーからなる分散剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系分散剤、ポリオキシエチレンジエステル系分散剤、ポリエーテルリン酸系分散剤、ポリエステルリン酸系分散剤、ソルビタン脂肪族エステル系分散剤、脂肪族変性ポリエステル系分散剤等を挙げることができる。
・・・(省略)・・・
[0067] 高分子分散剤の重量平均分子量(Mw)は通常700以上、好ましくは1000以上であり、また通常100,000以下、好ましくは50,000以下である。
これらの内、密着性及び直線性の面から、(B)分散剤は官能基を有するウレタン系高分子分散剤及び/又はアクリル系高分子分散剤を含むことが好ましく、アクリル系高分子分散剤を含むことが特に好ましい。
・・・(省略)・・・
[0136] <(C)アルカリ可溶性樹脂>
本発明で用いる(C)アルカリ可溶性樹脂としては、カルボキシル基又は水酸基を含む樹脂であれば特に限定はなく、例えばエポキシ(メタ)アクリレート系樹脂、アクリル系樹脂、カルボキシル基含有エポキシ樹脂、カルボキシル基含有ウレタン樹脂、ノボラック系樹脂、ポリビニルフェノール系樹脂等が挙げられるが、中でもエポキシ(メタ)アクリレート系樹脂、アクリル系樹脂が好ましい。これらは1種を単独で、或いは複数種を混合して使用することができる。
[0137] 本発明で用いるアルカリ可溶性樹脂としては、特に下記アルカリ可溶性樹脂(c1)及び/又はアルカリ可溶性樹脂(c2)(以下「カルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレート樹脂」と称す場合がある。)が優れた製版性という観点から好適に用いられる。
<アルカリ可溶性樹脂(c1)>
エポキシ樹脂にα,β-不飽和モノカルボン酸又はカルボキシル基を有するα,β-不飽和モノカルボン酸エステルを付加させ、さらに、多塩基酸及び/又はその無水物を反応させることによって得られたアルカリ可溶性樹脂。
<アルカリ可溶性樹脂(c2)>
エポキシ樹脂にα,β-不飽和モノカルボン酸又はカルボキシル基を有するα,β-不飽和モノカルボン酸エステルを付加させ、さらに、多価アルコール、及び多塩基酸及び/又はその無水物と反応させることによって得られたアルカリ可溶性樹脂。
[0138] 原料となるエポキシ樹脂として、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(例えば、三菱化学社製の「エピコート(登録商標。以下同じ。)828」、「エピコート1001」、「エピコート1002」、「エピコート1004」等)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のアルコール性水酸基とエピクロルヒドリンの反応により得られるエポキシ(例えば、日本化薬社製の「NER-1302」(エポキシ当量323,軟化点76℃))、ビスフェノールF型樹脂(例えば、三菱化学社製の「エピコート807」、「EP-4001」、「EP-4002」、「EP-4004等」)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂のアルコール性水酸基とエピクロルヒドリンの反応により得られるエポキシ樹脂(例えば、日本化薬社製の「NER-7406」(エポキシ当量350,軟化点66℃))、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニルグリシジルエーテル(例えば、三菱化学社製の「YX-4000」)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(例えば、日本化薬社製の「EPPN-201」、三菱化学社製の「EP-152」、「EP-154」、ダウケミカル社製の「DEN-438」)、(o,m,p-)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(例えば、日本化薬社製の「EOCN(登録商標。以下同じ。)-102S」、「EOCN-1020」、「EOCN-104S」)、トリグリシジルイソシアヌレート(例えば、日産化学社製の「TEPIC(登録商標)」)、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂(例えば、日本化薬社製の「EPPN(登録商標。以下同じ。)-501」、「EPN-502」、「EPPN-503」)、脂環式エポキシ樹脂(ダイセル化学工業社製の「セロキサイド2021P」、「セロキサイド(登録商標。以下同じ。)EHPE」)、ジシクロペンタジエンとフェノールの反応によるフェノール樹脂をグリシジル化したエポキシ樹脂(例えば、DIC社製の「EXA-7200」、日本化薬社製の「NC-7300」)、下記一般式(C1)?(C4)で表されるエポキシ樹脂、等を好適に用いることができる。具体的には、下記一般式(C1)で表されるエポキシ樹脂として日本化薬社製の「XD-1000」、下記一般式(C2)で表されるエポキシ樹脂として日本化薬社製の「NC-3000」、下記一般式(C4)で表されるエポキシ樹脂として新日鐵化学社製の「ESF-300」等が挙げられる。
[0139][化12]

[0140] 上記一般式(C1)において、aは平均値を示し0?10の数を示す。R^(111)は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1?8のアルキル基、炭素数3?10のシクロアルキル基、フェニル基、ナフチル基、又はビフェニル基のいずれかを表す。なお、1分子中に存在する複数のR^(111)は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
[0141][化13]

[0142] 上記一般式(C2)において、bは平均値を示し0?10の数を示す。R^(121)は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1?8のアルキル基、炭素数3?10のシクロアルキル基、フェニル基、ナフチル基、又はビフェニル基のいずれかを表す。なお、1分子中に存在する複数のR^(121)は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
[0143][化14]

[0144] 上記一般式(C3)において、Xは下記一般式(C3-1)又は(C3-2)で表される連結基を示す。但し、分子構造中に1つ以上のアダマンタン構造を含む。cは2又は3の整数を示す。
[0145][化15]

[0146] 上記一般式(C3-1)及び(C3-2)において、R^(131)?R^(134)及びR^(135)?R^(137)は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアダマンチル基、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1?12のアルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基を示す。*は結合手を示す。
[0147][化16]

[0148] 上記一般式(C4)において、p及びqはそれぞれ独立に0?4の整数を表し、R^(141)及びR^(142)はそれぞれ独立して炭素数1?4のアルキル基又はハロゲン原子を表す。R^(143)及びR^(144)はそれぞれ独立して炭素数1?4のアルキレン基を表す。x及びyはそれぞれ独立して0以上の整数を表す。
[0149] これらの中で、一般式(C1)?(C4)のいずれかで表されるエポキシ樹脂を用いるのが好ましい。
・・・(省略)・・・
[0151] エポキシ樹脂にα,β-不飽和モノカルボン酸又はカルボキシル基を有するα,β-不飽和モノカルボン酸エステルを付加させる方法としては、公知の手法を用いることができる。例えば、エステル化触媒の存在下、50?150℃の温度で、α,β-不飽和モノカルボン酸又はカルボキシル基を有するα,β-不飽和モノカルボン酸エステルとエポキシ樹脂とを反応させることができる。ここで用いるエステル化触媒としては、トリエチルアミン、トリメチルアミン、ベンジルジメチルアミン、ベンジルジエチルアミン等の3級アミン、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド等の4級アンモニウム塩等を用いることができる。
・・・(省略)・・・
[0158] カルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、1種を単独で用いても、2種以上の樹脂を混合して用いてもよい。
また、本発明で用いる(C)アルカリ可溶性樹脂は、前述のカルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレート樹脂の一部を、本発明の性能を損なわない限り、他のバインダー樹脂に置き換えてもよい。即ち、カルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレート樹脂と他のバインダー樹脂を併用してもよい。この場合において、アルカリ可溶性樹脂(C)アルカリ可溶性樹脂におけるカルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレート樹脂の割合を、50質量%以上、特に80質量%以上とすることが好ましい。
・・・(省略)・・・
[0161] <(D)光重合開始剤>
(D)光重合開始剤は、光を直接吸収し、分解反応又は水素引き抜き反応を起こし、重合活性ラジカルを発生する機能を有する成分である。必要に応じて重合促進剤(連鎖移動剤)、増感色素等の付加剤を添加して使用してもよい。
・・・(省略)・・・
[0273] [有機ELディスプレイ]
本発明のブラックマトリクスを用いて本発明の有機ELディスプレイを作製することができる。
本発明のブラックマトリクスを用いて有機ELディスプレイを作製する場合、例えば図1に示すように、まず透明支持基板10上に、着色樹脂組成物により形成されたパターン(すなわち、画素20、及び隣接する画素20の間に設けられたブラックマトリクス(図示せず))が形成されてなるカラーフィルターを作製し、該カラーフィルター上に有機保護層30及び無機酸化膜40を介して有機発光体500を積層することによって、有機EL素子100を作製することができる。なお、画素20及びブラックマトリクスの内、少なくとも一つは本発明の感光性着色組成物を用いて作製されたものである。有機発光体500の積層方法としては、カラーフィルター上面へ透明陽極50、正孔注入層51、正孔輸送層52、発光層53、電子注入層54、及び陰極55を逐次形成していく方法や、別基板上へ形成した有機発光体500を無機酸化膜40上に貼り合わせる方法などが挙げられる。このようにして作製された有機EL素子100を用い、例えば「有機ELディスプレイ」(オーム社,2004年8月20日発光,時任静士、安達千波矢、村田英幸著)に記載された方法等にて、有機ELディスプレイを作製することができる。
なお、本発明のブラックマトリクスは、パッシブ駆動方式の有機ELディスプレイにもアクティブ駆動方式の有機ELディスプレイにも適用可能である。」

(3) 「実施例
[0274] 次に、合成例、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例で用いた感光性着色組成物の構成成分は次の通りである。
<(A-1)有機黒色顔料>
BASF社製、Irgaphor(登録商標) Black S 0100 CF(下記式(2)で表される化学構造を有する)
[0275][化30]

[0276] <有機黒色顔料:ペリレンブラック>
BASF社製、Lumogen(登録商標) Black FK4281
<有機黒色顔料:アニリンブラック>
BASF社製、Paliotol(登録商標) Black L0080
[0277] <アルカリ可溶性樹脂-I>
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート145質量部を窒素置換しながら攪拌し、120℃に昇温した。ここにスチレン10質量部、グリシジルメタクリレート85.2質量部およびトリシクロデカン骨格を有するモノアクリレート(日立化成社製FA-513M)66質量部を滴下し、および2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル8.47質量部を3時間かけて滴下し、更に90℃で2時間攪拌し続けた。次に反応容器内を空気置換に変え、アクリル酸43.2質量部にトリスジメチルアミノメチルフェノール0.7質量部およびハイドロキノン0.12質量部を投入し、100℃で12時間反応を続けた。その後、テトラヒドロ無水フタル酸(THPA)56.2質量部、トリエチルアミン0.7質量部を加え、100℃3.5時間反応させた。こうして得られたアルカリ可溶性樹脂-IのGPCにより測定した重量平均分子量Mwは約8400、酸価は80mgKOH/gであった。
[0278] <アルカリ可溶性樹脂-II>
日本化薬(株)製「ZCR-1664H」(重量平均分子量Mw=5000?6000、酸価=約60mg-KOH/g)
<アルカリ可溶性樹脂-III>
[0279][化31]

[0280]
上記構造のエポキシ化合物(エポキシ当量247)50g、アクリル酸14.3g、メトキシブチルアセテート59.5g、トリフェニルホスフィン1.29g、及びパラメトキシフェノール0.05gを、温度計、攪拌機、冷却管を取り付けたフラスコに入れ、攪拌しながら90℃で酸価が5mgKOH/g以下になるまで反応させた。反応には12時間を要し、エポキシアクリレート溶液を得た。
[0281] 上記エポキシアクリレート溶液25質量部及び、トリメチロールプロパン(TMP)0.8質量部、ビフェニルテトラカルボン酸2無水物(BPDA)4.1質量部、テトラヒドロフタル酸無水物(THPA)2.8質量部を、温度計、攪拌機、冷却管を取り付けたフラスコに入れ、攪拌しながら105℃までゆっくり昇温し反応させた。
樹脂溶液が透明になったところで、メトキシブチルアセテートで希釈し、固形分50質量%となるよう調製し、酸価131mgKOH/g、GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)4000のカルボキシル基含有エポキシアクリレート樹脂(c1)を得た。
[0282] <アルカリ可溶性樹脂-IV>
日本化薬(株)製「ZCR-1642H」(MW=6500、酸価=98mg-KOH/g)
[0283] <分散剤-I>
ビックケミー社製「DISPERBYK-LPN21116」(側鎖に4級アンモニウム塩基及び3級アミノ基を有するAブロックと、4級アンモニウム塩基及びアミノ基を有さないBブロックからなる、アクリル系A-Bブロック共重合体。アミン価は70mgKOH/g。酸価は1mgKOH/g以下。)
分散剤-Iの全繰り返し単位に占める下記式(1a)、(2a)、及び(3a)の繰り返し単位の含有割合はそれぞれ11.1モル%、22.2モル%、6.7モル%である。
[0284][化32]

[0285] <分散剤-II>
ビックケミー社製「DISPERBYK-2000」(側鎖に4級アンモニウム塩基を有するAブロックと、4級アンモニウム塩基を有さないBブロックからなる、アクリル系A-Bブロック共重合体)
<分散剤-III>
EFKA社製「EFKA-4300」(側鎖に3級アミノ基とブチル基を有する、アクリル系高分子分散剤。側鎖に4級アンモニウム塩基を有さない。)
・・・(省略)・・・
[0299] <光重合性モノマー-I>
DPHA:日本化薬(株)製 ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
<光重合性モノマーII>
DPHA-40H:日本化薬(株)製 ウレタンアクリレート
<添加剤-I>
日本化薬(株)製、KAYAMER PM-21(メタクリロイル基含有ホスフェート)
<界面活性剤-I>
DIC(株)製 メガファック F-559
[0300] <顔料分散液-1?7の調製>
表1に記載の顔料、分散剤、分散助剤、アルカリ可溶性樹脂、及び溶剤を、表1に記載の質量比となるように混合した。この溶液をペイントシェーカーにより25?45℃の範囲で3時間分散処理を行った。ビーズとしては、0.5mmφのジルコニアビーズを用い、分散液の2.5倍の質量を加えた。分散終了後、フィルターによりビーズと分散液を分離して、顔料分散液-1?7を調製した。
[0301] ここで、ペリレンブラックを顔料分散液-1と同じ条件で分散したところ、ペリレンブラックは粘度が大きく増加した。そのため、これらの顔料を分散するには、顔料分散液-6の様に分散剤の量を大きく増やす必要があった。
[0302][表1]

・・・(省略)・・・
[0306] [実施例1?8及び比較例1?4]
上記調製した顔料分散液、被覆カーボンブラック分散液を用いて、固形分中の比率が表2の配合割合となるように各成分を加え、さらに固形分が17質量%となるようにPGMEAを加え、攪拌、溶解させて、感光性着色組成物を調製した。実施例1?8及び比較例1、2及び4は固形分中の顔料濃度を40質量%とし、比較例3は固形分中の顔料濃度を30質量%とした。また、全ての感光性着色組成物において、光重合性モノマーに対するアルカリ可溶性樹脂(分散液中の樹脂も含む)の質量比率を3とし、光重合開始剤を固形分中4質量%、添加剤を0.5質量%、界面活性剤を0.1質量%とした。得られた感光性着色組成物を用いて、後述する方法で評価を行った。
[0307][表2]

[0308] [1μm当たりの光学濃度(OD)の測定]
調製した感光性着色組成物を最終的な膜厚が2μmとなるようにスピンコーターにてガラス基板に塗布し、1分間減圧乾燥した後に、ホットプレートで100℃にて90秒間乾燥した。230℃で30分間加熱する事で、レジスト塗工基板(基板-1)を得た。得られた基板の光学濃度(OD)を透過濃度計グレタグマクベスD200-IIによって測定し、膜厚を(株)菱化システム製非接触表面・層断面形状計測システム VertScan(R)2.0により測定した。膜厚1μm当たりの光学濃度(OD)を表3に示す。
[0309] [比誘電率の測定]
基板-1の作製方法において、ガラス基板の代わりにクロム蒸着膜を有するガラス基板を用いる以外は同様にして基板(基板-2)を作製した。このサンプルのクロム膜を主電極として、レジスト塗膜上に金の対向電極を蒸着法により形成した。また、HP(現Agilent)社製「LCRメーター4284A」を用いて、1kHz・1Vにおける比誘電率を測定した。結果を表3に示す。
[0310] [製版特性]
基板-1と同様の方法でホットプレートによる乾燥を行った。このサンプルを開口20μmの直線パターンのあるネガタイプのマスクを通して高圧水銀灯で像露光した(照度30mW/cm^(2)、露光量20mJ/cm^(2))。この時、サンプルとマスクとの距離は200μmとした。その後、温度25℃で、KOH濃度0.05質量%の現像液を用いてスプレー現像した。現像時間は未露光部の溶解時間の1.5倍とした。得られた線状パターンの線幅の結果を表3に示す。ただし、比較例1及び2のレジストを用いた場合、10分間現像してもパターンが得られなかった。
[0311][表3]

[0312] 実施例1と比較例1、2及び4との比較から、同じ顔料濃度であれば、本発明の感光性着色組成物から得られる基板のほうがODが高く、遮蔽性が高いことが確認された。また、比較例1、2は10分間現像しても線状パターンが得られなかった。これは、比較例1、2は顔料としてペリレンブラックを含むものであるが、ペリレンブラックを分散する際に多くの分散剤を用いる必要があり、それが製版特性に悪影響を及ぼしたと思われる。また、線幅は値が大きい程、感度が高いことを示すが、(A-1)有機黒色顔料と(A-2)有機着色顔料を併用する事で、ODを大きく下げることなく、感度を上げる事が出来る事が実施例4及び5から確認された。
・・・(省略)・・・
[0314] [分散性評価]
<顔料分散液-8?11の調製>
表4に記載の顔料、分散剤、分散助剤、アルカリ可溶性樹脂、及び溶剤を、表4に記載の質量比となるように混合した。この溶液をペイントシェーカーにより25?45℃の範囲で3時間分散処理を行った。ビーズとしては、0.5mmφのジルコニアビーズを用い、分散液の2.5倍の質量を加えた。分散終了後、フィルターによりビーズと分散液を分離して、顔料分散液-8?11を調製した。
[0315][表4]

[0316] [実施例9及び比較例5?7]
上記調製した顔料分散液を用いて、固形分中の比率が表5の配合割合となるように各成分を加え、さらに固形分が17質量%となるようにPGMEAを加え、攪拌、溶解させて、感光性着色組成物を調製した。
また、得られた各感光性着色組成物について東機産業株式会社製 RC80L型粘度計(測定条件:23℃、50rpm)によりその粘度を測定した。結果を表5に示す。
[0317][表5]

[0318] 一般に、有機顔料を感光性着色組成物中に分散させるために、4級アンモニウム塩基を有する塩基性高分子分散剤も、4級アンモニウム塩基を有さない塩基性高分子分散剤も同等に扱われており、同等の分散性を示すことが知られている。実際、表5の比較例6及び7では、有機黒色顔料であるペリレンブラックは分散剤Iを用いた場合も、分散剤IIIを用いた場合も、感光性着色組成物の粘度に有意差はない。
[0319] 意外なことに(A-1)有機黒色顔料を含む感光性着色組成物においては、表5の実施例9と比較例5との比較から、4級アンモニウム塩基を官能基として有する高分子分散剤(分散剤I)を用いることで、4級アンモニウム塩基を官能基として有さない高分子分散剤(分散剤III)を用いた場合に比較して、感光性着色組成物の粘度が半分程度となり、(A-1)有機黒色顔料が均一に分散したものとなった。
[0320] また、表6に実施例1?8の感光性着色組成物について、実施例9と同じ方法で測定した粘度の値を示す。
[0321][表6]

[0322] 表6に示すとおり、顔料として(A-1)有機黒色顔料を単独で用いた実施例1及び2だけでなく、(A-1)有機黒色顔料と(A-2)有機着色顔料を併用した実施例3?5、及び8、(A-1)有機黒色顔料と(A-3)カーボンブラックを併用した実施例6、(A-1)有機黒色顔料と(A-2)有機着色顔料と(A-3)カーボンブラックを併用した実施例7のいずれにおいても実施例1及び2と同等の粘度となり、いずれの感光性着色組成物においても顔料が均一に分散したものとなった。」

2 甲第1号証に記載された発明
甲第1号証の段落[0274]?段落[0307]には、実施例1として、「感光性着色組成物」が開示されている。また、甲第1号証の[0273]の記載からみて、「感光性着色組成物」は、「有機ELディスプレイにも適用可能」な「パターン(すなわち、画素20、及び隣接する画素20の間に設けられたブラックマトリックス(図示せず))」に用いられるものであるといえる。
そうしてみると、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1-1発明」という。)が記載されている。

「 表1に記載の顔料、分散剤、分散助剤、アルカリ可溶性樹脂、及び溶剤を、表1に記載の質量比となるように混合し、分散処理を行って顔料分散液を調製し、
調製した顔料分散液を用いて、固形分中の比率が表2の配合割合となるように各成分を加え、さらに固形分が17質量%となるようにPGMEAを加え、攪拌、溶解させて調製される、
有機ELディスプレイにも適用可能なパターン(すなわち、画素20、及び隣接する画素20の間に設けられたブラックマトリックス)に用いられる感光性着色組成物。
[表1]

[表2]

表1に記載の「(A-1)有機黒色顔料」:
BASF社製、Irgaphor(登録商標) Black S 0100 CF(下記式(2)で表される化学構造を有する)
[化30]

表1に記載の「樹脂-I」:
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを窒素置換しながら攪拌し、120℃に昇温し、ここにスチレン、グリシジルメタクリレートおよびトリシクロデカン骨格を有するモノアクリレートを滴下し、および2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリルを滴下し、更に90℃で2時間攪拌し続け、次に反応容器内を空気置換に変え、アクリル酸にトリスジメチルアミノメチルフェノールおよびハイドロキノンを投入し、反応を続けた。その後、テトラヒドロ無水フタル酸、トリエチルアミンを加え、反応させて得られるアルカリ可溶性樹脂-I。
表2に記載の「アルカリ可溶性樹脂-III」:
[化31]

上記構造のエポキシ化合物、アクリル酸、メトキシブチルアセテート、トリフェニルホスフィン及びパラメトキシフェノールを反応させ、エポキシアクリレート溶液を得、
上記エポキシアクリレート溶液、トリメチロールプロパン、ビフェニルテトラカルボン酸2無水物、テトラヒドロフタル酸無水物を反応させ、
樹脂溶液が透明になったところで、メトキシブチルアセテートで希釈し、固形分50質量%となるよう調製して得られる、カルボキシル基含有エポキシアクリレート樹脂(c1)。
表1に記載の「分散剤-I」:
ビックケミー社製「DISPERBYK-LPN21116」(側鎖に4級アンモニウム塩基及び3級アミノ基を有するAブロックと、4級アンモニウム塩基及びアミノ基を有さないBブロックからなる、アクリル系A-Bブロック共重合体。)」

3 甲第2号証の記載事項
甲第2号証(国際公開第2016/143878号)には以下の記載がある。

(1) 「技術分野
[0001] 本発明は、感光性着色組成物等に関する。詳しくは、例えば液晶ディスプレイ等のカラーフィルターにおいて着色スペーサー等の形成に好ましく用いられる感光性着色組成物、この感光性着色組成物を硬化して得られる着色スペーサー、この着色スペーサーを備える画像表示装置に関する。
背景技術
[0002] 液晶ディスプレイ(LCD)は液晶への電圧のオン・オフにより液晶分子の並び方が切り替わる性質を利用している。一方、LCDのセルを構成する各部材は、フォトリソグラフィー法に代表される、感光性組成物を利用した方法によって形成されるものが多い。この感光性組成物は、微細な構造を形成し易く、大画面用の基板に対しての処理もし易いといった理由から、今後さらにその適用範囲は広がる傾向にある。
・・・(省略)・・・
発明が解決しようとする課題
[0008] 近年、パネル構造の変化に伴い、着色スペーサーの遮光性を更に高くする要求がある。遮光性を高くする方法としては、遮光性の高い顔料を用いる方法や、感光性着色組成物中の顔料含有割合を高くする方法などが挙げられる。本発明者らが検討したところ、特許文献2?4に記載されている感光性着色組成物において、遮光性の高い顔料を併用するなどして着色スペーサーの遮光性を更に高くしたところ、膜表面近傍と膜底部近傍とで架橋密度差が大きくなり、熱硬化過程の熱収縮により塗膜表面にしわが発生して表面平滑性が不十分となることが見出された。
・・・(省略)・・・
[0010] 本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明は、遮光性が高く、表面平滑性に優れたパターンを形成することが可能な感光性着色組成物を提供することを目的とする。」

(2) 「発明を実施するための形態
・・・(省略)・・・
[0025] [感光性着色組成物]
本発明の感光性着色組成物は、
(a)着色剤
(b)アルカリ可溶性樹脂
(c)光重合開始剤
(d)エチレン性不飽和化合物
(e)溶剤
(f)分散剤
を必須成分として含有する。また、本発明の感光性着色組成物は、必要に応じて、更にシランカップリング剤等の密着向上剤、塗布性向上剤、現像改良剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性剤、顔料誘導体等、その他の配合成分を含むものであり、通常、各配合成分が、溶剤に溶解又は分散した状態で使用される。
[0026] 本発明の感光性着色組成物は、遮光性が高く、表面平滑性に優れたパターンを形成することが可能なため、着色スペーサーの形成に好ましく用いることができる、つまり、着色スペーサー形成用感光性着色組成物として好適に用いることができる。
[0027] 一方で、遮光性や表面平滑性等の特性は、例えば有機EL表示装置の発光部の隔壁、特に着色隔壁(着色バンク)などの着色スペーサー以外の用途においても要求されるものであるため、着色スペーサーに限られず用いることができる。以下に本発明の感光性着色組成物について詳述するが、特に断りがない限りは、着色スペーサー用途と着色スペーサー以外の用途の両者を併せて説明する。
・・・(省略)・・・
[0033] <(a)着色剤>
本発明の第1の態様に係る感光性着色組成物で用いる(a)着色剤は、赤色顔料及び橙色顔料からなる群から選ばれる少なくとも1種と、青色顔料及び紫色顔料からなる群から選ばれる少なくとも1種とを含有する。このように本発明の第1の態様に係る感光性着色組成物は、特定の有機着色顔料を含有することにより高遮光性を達成することができる。
・・・(省略)・・・
[0054] さらに、これらの着色顔料に加えて、さらに黒色色材を用いることができる。
黒色色材の中でも、液晶の電圧保持率の低下を抑制し、また、紫外線の吸収を抑制して形状や段差をコントロールしやすくするとの観点からは、有機黒色顔料を用いることが好ましく、特に遮光性の観点からは、下記式(1)で表される化合物、その幾何異性体、その塩、またはその幾何異性体の塩である有機黒色顔料を用いることが好ましい。
[0055] [化3]

[0056] 式(1)中、R^(11)およびR^(16)は互いに独立して水素原子、CH_(3)、CF_(3)、フッ素原子または塩素原子である;
R^(12)、R^(13)、R^(14)、R^(15)、R^(17)、R^(18)、R^(19)およびR^(20)は他の全てから互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、R^(21)、COOH、COOR^(21)、COO^(-)、CONH_(2)、CONHR^(21)、CONR^(21)R^(22)、CN、OH、OR^(21)、COCR^(21)、OOCNH_(2)、OOCNHR^(21)、OOCNR^(21)R^(22)、NO_(2)、NH_(2)、NHR^(21)、NR^(21)R^(22)、NHCOR^(22)、NR^(21)COR^(22)、N=CH_(2)、N=CHR^(21)、N=CR^(21)R^(22)、SH、SR^(21)、SOR^(21)、SO2R^(21)、SO_(3)R^(21)、SO_(3)H、SO_(3)^(-)、SO_(2)NH_(2)、SO_(2)NHR^(21)またはSO_(2)NR^(21)R^(22)である;
且つ、R^(12)とR^(13)、R^(13)とR^(14)、R^(14)とR^(15)、R^(17)とR^(18)、R^(18)とR^(19)、及びR^(19)とR^(20)からなる群から選ばれる少なくとも1つの組み合わせは、互いに直接結合し、または酸素原子、硫黄原子、NH若しくはNR^(21)ブリッジによって互いに結合することもできる;
R^(21)およびR^(22)は互いに独立して、炭素数1?12のアルキル基、炭素数3?12のシクロアルキル基、炭素数2?12のアルケニル基、炭素数3?12のシクロアルケニル基または炭素数2?12のアルキニル基である。
・・・(省略)・・・
[0070] 前記一般式(1)で表される有機黒色顔料は、好ましくは下記一般式(2)で表される化合物である。
[0071] [化5]

[0072] このような有機黒色顔料の具体例としては、商品名で、Irgaphor(登録商標) Black S 0100 CF(BASF社製)が挙げられる。
この有機黒色顔料は、好ましくは後述される分散剤、溶剤、方法によって分散して使用される。また、分散の際に前記一般式(2)のスルホン酸誘導体が存在すると、分散性や保存性が向上する場合がある。
・・・(省略)・・・
[0106] <(b)アルカリ可溶性樹脂>
本発明で用いる(b)アルカリ可溶性樹脂としては、カルボキシル基又は水酸基を含む樹脂であれば特に限定はなく、例えばエポキシ(メタ)アクリレート系樹脂、アクリル系樹脂、カルボキシル基含有エポキシ樹脂、カルボキシル基含有ウレタン樹脂、ノボラック系樹脂、ポリビニルフェノール系樹脂等が挙げられるが、中でもエポキシ(メタ)アクリレート系樹脂、アクリル系樹脂が好ましい。これらは1種を単独で、或いは複数種を混合して使用することができる。
[0107] 本発明で用いる(b)アルカリ可溶性樹脂としては、特に下記アルカリ可溶性樹脂(b1)及び/又はアルカリ可溶性樹脂(b2)(以下「カルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレート樹脂」と称す場合がある。)が優れた製版性という観点から好適に用いられる。
[0108] <アルカリ可溶性樹脂(b1)>
エポキシ樹脂にα,β-不飽和モノカルボン酸又はカルボキシル基を有するα,β-不飽和モノカルボン酸エステルを付加させ、さらに、多塩基酸及び/又はその無水物を反応させることによって得られたアルカリ可溶性樹脂。
<アルカリ可溶性樹脂(b2)>
エポキシ樹脂にα,β-不飽和モノカルボン酸又はカルボキシル基を有するα,β-不飽和モノカルボン酸エステルを付加させ、さらに、多価アルコール、及び多塩基酸及び/又はその無水物と反応させることによって得られたアルカリ可溶性樹脂。
・・・(省略)・・・
[0138] また、前述のカルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレート樹脂の一部を、他のバインダー樹脂に置き換えて用いてもよい。即ち、カルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレート樹脂と他のバインダー樹脂を併用してもよい。この場合において、(b)アルカリ可溶性樹脂におけるカルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレート樹脂の割合を、50質量%以上、特に80質量%以上とすることが好ましい。
・・・(省略)・・・
[0149] <(c)光重合開始剤>
(c)光重合開始剤は、光を直接吸収し、分解反応又は水素引き抜き反応を起こし、重合活性ラジカルを発生する機能を有する成分である。必要に応じて重合促進剤(連鎖移動剤)、増感色素等の付加剤を添加して使用してもよい。
[0150] 本発明の感光性着色組成物における(c)光重合開始剤は、下記式(I)で表されるオキシムエステル系化合物を含む。このように、下記式(I)で表されるオキシムエステル系化合物を含むことにより、そのカルバゾール骨格中に含まれるナフタレン環によって長波長光に対する吸光性が高くなり、塗膜内部の架橋密度を高めることができ、また、構造中にハロゲン原子を有しているため塗膜表面に当該化合物が分布しやすく、酸素阻害の影響によって膜表面の架橋密度が過度に高くなるのを抑制できるものと考えられる。
[0151] [化12]

[0152] 上記一般式(I)中、
R^(1)は、置換基を有していてもよい芳香族環基を表す。
R^(2)は、置換基を有していてもよいアルカノイル基、又は置換基を有していてもよいアリーロイル基を表す。
R^(3)は、水素原子、又は置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
R^(4)は、置換基を有していてもよい芳香族環基を表す。
R^(5)及びR^(6)は各々独立に、置換基を有していてもよいベンゼン環、又は置換基を有していてもよいナフタレン環を表す。ただし、R^(5)及びR^(6)の少なくともいずれか1つは、置換基を有していてもよいナフタレン環である。
R^(1)及びR^(4)の少なくともいずれか1つは、置換基として-OR^(7)基を有する。ただしR^(7)はハロゲノアルキル基を表す。
Xは、直接結合、又はカルボニル基を表す。
Zは、直接結合、又はカルボニル基を表す。
・・・(省略)・・・
[0226] <(f)分散剤>
本発明の感光性着色組成物においては、(a)着色剤を微細に分散させ、且つその分散状態を安定化させることが品質の安定性確保には重要なため、(f)分散剤を含む。
[0227] (f)分散剤としては、官能基を有する高分子分散剤が好ましく、更に、分散安定性の面からカルボキシル基;リン酸基;スルホン酸基;又はこれらの塩基;一級、二級又は三級アミノ基;四級アンモニウム塩基;ピリジン、ピリミジン、ピラジン等の含窒素ヘテロ環由来の基、等の官能基を有する高分子分散剤が好ましい。
[0228] 中でも特に、一級、二級又は三級アミノ基;四級アンモニウム塩基;ピリジン、ピリミジン、ピラジン等の含窒素ヘテロ環由来の基、等の塩基性官能基を有する高分子分散剤が顔料を分散する際に少量の分散剤で分散することができるとの観点から特に好ましい。
[0229] また、高分子分散剤としては、例えばウレタン系分散剤、アクリル系分散剤、ポリエチレンイミン系分散剤、ポリアリルアミン系分散剤、アミノ基を持つモノマーとマクロモノマーからなる分散剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系分散剤、ポリオキシエチレンジエステル系分散剤、ポリエーテルリン酸系分散剤、ポリエステルリン酸系分散剤、ソルビタン脂肪族エステル系分散剤、脂肪族変性ポリエステル系分散剤等を挙げることができる。
・・・(省略)・・・
[0408] [カラーフィルター]
本発明のカラーフィルターは、上述のような本発明の着色スペーサーを備えるものであり、例えば透明基板としてのガラス基板上に、ブラックマトリクスと、赤色、緑色、青色の画素着色層と、オーバーコート層とが積層されて、着色スペーサーを形成した後配向膜を形成して製造される。
[0409] このような本発明の着色スペーサーを有するカラーフィルターと液晶駆動側基板とを貼り合わせて液晶セルを形成し、形成した液晶セルに液晶を注入することで、本発明の着色スペーサーを備えた、液晶表示装置等の画像表示装置を製造することができる。」

(3) 「実施例
[0410] 次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例で用いた感光性着色組成物の構成成分は次の通りである。
[0411] <有機黒色顔料>
BASF社製、Irgaphor(登録商標) Black S 0100 CF(下記式(2)で表される化学構造を有する)
[0412] [化30]

[0413] <アルカリ可溶性樹脂-I>
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート145質量部を窒素置換しながら攪拌し、120℃に昇温した。ここにスチレン10質量部、グリシジルメタクリレート85.2質量部およびトリシクロデカン骨格を有するモノアクリレート(日立化成社製FA-513M)66質量部を滴下し、および2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル8.47質量部を3時間かけて滴下し、更に90℃で2時間攪拌し続けた。次に反応容器内を空気置換に変え、アクリル酸43.2質量部にトリスジメチルアミノメチルフェノール0.7質量部およびハイドロキノン0.12質量部を投入し、100℃で12時間反応を続けた。その後、テトラヒドロ無水フタル酸(THPA)56.2質量部、トリエチルアミン0.7質量部を加え、100℃3.5時間反応させた。こうして得られたアルカリ可溶性樹脂-IのGPCにより測定した重量平均分子量Mwは約8400、酸価は80mgKOH/gであった。
[0414] <アルカリ可溶性樹脂-II>
日本化薬(株)製「ZCR-1642H」(MW=6500、酸価=98mg-KOH/g)
[0415] <分散剤-I>
ビックケミー社製「DISPERBYK-LPN21116」(側鎖に4級アンモニウム塩基及び3級アミノ基を有するAブロックと、4級アンモニウム塩基及びアミノ基を有さないBブロックからなる、アクリル系A-Bブロック共重合体。アミン価は70mgKOH/g。酸価は1mgKOH/g以下。)
・・・(省略)・・・
[0418] <顔料誘導体>
ルーブリゾール社製「Solsperse12000」
<溶剤-I>
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
<溶剤-II>
MB:3-メトキシブタノール
・・・(省略)・・・
[0429] <顔料分散液1の調製>
表1に記載の顔料、分散剤、分散助剤、アルカリ可溶性樹脂、及び溶剤を、表1に記載の質量比となるように混合した。この溶液をペイントシェーカーにより25?45℃の範囲で3時間分散処理を行った。ビーズとしては、0.5mmφのジルコニアビーズを用い、分散液の2.5倍の質量を加えた。分散終了後、フィルターによりビーズと分散液を分離して、顔料分散液1を調製した。
[0430] [表1]

[0431] <顔料分散液2及び3の調製>
表1に記載の顔料、分散剤、分散助剤、アルカリ可溶性樹脂、及び溶剤を、表1に記載の質量比となるように混合した以外は、顔料分散液1と同様にして顔料分散液2及び3を調製した。
[0432] <顔料分散液4(被覆カーボンブラック分散液)>
カーボンブラックは、通常のオイルファーネス法で製造した。但し、原料油としては、Na、Ca、S分量の少ないエチレンボトム油を用い、燃焼用にはコークス炉ガスを用いた。更に、反応停止水としては、イオン交換樹脂で処理した純水を用いた。得られたカーボンブラック540gを純水14500gと共にホモミキサーを用い5,000?6,000rpmで30分撹拌しスラリーを得た。このスラリーをスクリュー型撹拌機付容器に移し約1,000rpmで混合しながらエポキシ樹脂「エピコート828」(三菱化学(株)製)60gを溶解したトルエン600gを少量ずつ添加していった。約15分で、水に分散していたカーボンブラックは全量トルエン側に移行し、約1mmの粒となった。
[0433] 次に、60メッシュ金網で水切りを行った後、真空乾燥機に入れ、70℃で7時間乾燥し、トルエンと水を完全に除去した。
得られた被覆カーボンブラック、分散剤、顔料誘導体及び溶剤を、表2に記載の質量比となるように混合した。
[0434] これを攪拌機により十分に攪拌し、プレミキシングを行った。次に、ペイントシェーカーにより25?45℃の範囲で6時間分散処理を行った。ビーズとしては、0.5mmφのジルコニアビーズを用い、分散液と同じ質量を加えた。分散終了後、フィルターによりビーズと分散液を分離して調製した。
[0435] [実施例1及び2、比較例1?3]
上記調製した顔料分散液1?4を用いて、表2の配合割合となるように各成分を加え、さらに固形分が22質量%となるようにPGMEAを加え、攪拌、溶解させて、感光性着色組成物を調製した。得られた感光性着色組成物を用いて、後述する方法で評価を行った。なお、表2中の上段の値は各成分の使用量を示している。他方、下段の値は各成分の固形分量を、感光性着色組成物の全固形分量に対する含有割合で示している。
[0436] [表2]

・・・(省略)・・・
[0444] [実施例3及び比較例4]
上記調製した顔料分散液3及び4を用いて、固形分中の比率が表3の配合割合となるように各成分を加え、さらに固形分が22質量%となるようにPGMEAを加え、攪拌、溶解させて、感光性着色組成物を調製した。得られた感光性着色組成物を用いて、露光処理における露光量を40mJ/cm^(2)とした以外は実施例1と同様の手順で評価を行った。なお、表3中の上段の値は各成分の使用量を示している。他方、下段の値は各成分の固形分量を、感光性着色組成物の全固形分量に対する含有割合で示している。また、表面平滑性の評価の視野は5cm×5cmとした。
[0445] [表3]

[0446] 実施例3の感光性着色組成物を用いた塗布基板は、単位ODが高く遮光性に優れ、表面平滑性に優れることが確認された。また、中間透過開口部の基板密着性も良好であった。
他方、比較例4は実施例3と単位ODの値は同じであるが、表面平滑性が悪く、表面粗度の値も大きく、さらに、中間透過開口部の基板密着性が悪いことが確認された。」

4 甲第2号証に記載された発明
甲第2号証の段落[0410]?段落[0445]には、実施例3として、「感光性着色組成物」が開示されている。また、甲第2号証の[0027]の記載からみて、「感光性着色組成物」は、「有機EL表示装置の発光部の隔壁、特に着色隔壁(着色バンク)などの着色スペーサー」に用いられるものであるといえる。
そうしてみると、甲第2号証には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されている。

「 表1に記載の顔料、分散剤、分散助剤、アルカリ可溶性樹脂、及び溶剤を、表1に記載の質量比となるように混合して顔料分散液3を調製し、
カーボンブラック540gを純水14500gと共に撹拌しスラリーを得、このスラリーをエポキシ樹脂60gを溶解したトルエン600gを少量ずつ添加し、トルエンと水を完全に除去し、得られた被覆カーボンブラック、分散剤、顔料誘導体及び溶剤を、表2に記載の質量比となるように混合し、プレミキシング、分散処理を行って顔料分散液4を調製し、
上記調製した顔料分散液3及び4を用いて、固形分中の比率が表3の配合割合となるように各成分を加え、さらに固形分が22質量%となるようにPGMEAを加え、攪拌、溶解させて調製した、
有機EL表示装置の発光部の隔壁、特に着色隔壁(着色バンク)などの着色スペーサーに用いられる感光性着色組成物。
[表1]

[表2]

[表3]

表1に記載の「顔料」:
BASF社製、Irgaphor(登録商標) Black S 0100 CF(下記式(2)で表される化学構造を有する)
[化30]

表1に記載の「アルカリ可溶性樹脂-I」:
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを窒素置換しながら攪拌し、120℃に昇温し、ここにスチレン、グリシジルメタクリレートおよびトリシクロデカン骨格を有するモノアクリレートを滴下し、および2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリルを滴下し、更に90℃で2時間攪拌し続け、次に反応容器内を空気置換に変え、アクリル酸にトリスジメチルアミノメチルフェノールおよびハイドロキノンを投入し、反応を続け、その後、テトラヒドロ無水フタル酸、トリエチルアミンを加え、反応させ、得られたアルカリ可溶性樹脂-I。
表2に記載の「アルカリ可溶性樹脂-II」:
日本化薬(株)製「ZCR-1642H」
表1に記載の「分散剤-I」:
ビックケミー社製「DISPERBYK-LPN21116」(側鎖に4級アンモニウム塩基及び3級アミノ基を有するAブロックと、4級アンモニウム塩基及びアミノ基を有さないBブロックからなる、アクリル系A-Bブロック共重合体。)」

第6 特許法第29条についての当審の判断
1 甲1-1発明との対比及び判断
(1)本件特許発明1
ア 対比
(ア) 着色感光性樹脂組成物
甲1-1発明は、「顔料」、「分散剤」、「アルカリ可溶性樹脂」、「光重合性モノマー-I」及び「光重合開始剤-I」を含有する「感光性着色組成物」である。
技術的にみて、甲1-1発明の「分散剤」、「光重合性モノマー-I」及び「光重合開始剤-I」は、それぞれ、本件特許発明1でいう「(B)分散剤」、「(D)光重合性モノマー」及び「(E)光重合開始剤」に相当する。同様に、甲1-1発明の「顔料」は、本件特許発明1の「(A)着色剤」に相当する(甲第1号証の段落[0025]の、「本発明で用いる(A)色材は、(A-1)下記一般式(1)で表される化合物、その幾何異性体、その塩、またはその幾何異性体の塩である有機黒色顔料を含む。」という記載からも確認できる事項である。)。加えて、甲1-1発明の「アルカリ可溶性樹脂」は、技術常識からみて、本件特許発明1でいう「(C)バインダー樹脂」に該当する。さらに、甲1-1発明の「感光性着色組成物」は、その材料組成からみて、本件特許発明1の「感光性樹脂組成物」に該当する。
そうしてみると、甲1-1発明の「感光性着色組成物」と本件特許発明1の「感光性樹脂組成物」は、「(A)着色剤、(B)分散剤、(C)バインダー樹脂、(D)光重合性モノマー及び(E)光重合開始剤を含有する」という点で共通する。

(イ) 有機黒色顔料
甲1-1発明の「感光性着色組成物」は、「顔料として」、「有機黒色顔料」である「BASF社製、Irgaphor(登録商標) Black S 0100 CF(下記式(2)で表される化学構造を有する)」「

」を含有するものである。
甲1-1発明の「有機黒色顔料」は、その化学構造について、本件特許発明1の「一般式(I)」の要件を満たす。
そうしてみると、甲1-1発明の「感光性着色組成物」は、本件特許発明1でいう「前記(A)着色剤が、下記一般式(I)で表される化合物、前記化合物の幾何異性体、前記化合物の塩、及び前記化合物の幾何異性体の塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する(A1)有機黒色顔料を含み」という要件を満たす。

(ウ) 分散剤
甲1-1発明の「感光性着色組成物」は、「分散剤」として「ビックケミー社製「DISPERBYK-LPN21116」(側鎖に4級アンモニウム塩基及び3級アミノ基を有するAブロックと、4級アンモニウム塩基及びアミノ基を有さないBブロックからなる、アクリル系A-Bブロック共重合体)」を含有するものである。
甲1-1発明の「ビックケミー社製「DISPERBYK-LPN21116」」は、「アクリル系A-Bブロック共重合体」であるから、本件特許発明1でいう「アクリル系分散剤」に相当する。
そうしてみると、甲1-1発明の「感光性着色組成物」は、本件特許発明1でいう「前記(B)分散剤が、アクリル系分散剤を含み」という要件を満たす。

(エ) バインダー樹脂
甲1-1発明の「感光性着色組成物」は、「アクリル可溶性樹脂」として「アルカリ可溶性樹脂-I」及び「アルカリ可溶性樹脂-III」を含有するものである。
甲1-1発明の「アルカリ可溶性樹脂-III」は、「カルボキシル基含有エポキシアクリレート樹脂」である。そして、甲1-1発明の「アルカリ可溶性樹脂-III」は、その材料組成からみて、「主鎖に芳香族環を有する」から、本件特許発明1でいう「主鎖に芳香族環を有するエポキシアクリレート樹脂」に相当する。
そうしてみると、甲1-1発明の「感光性着色組成物」は、本件特許発明1でいう「(C1)主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂を」「含む」という要件を満たす。

イ 一致点
以上のことから、本件特許発明1と甲1-1発明は、次の構成で一致する。

「 (A)着色剤、(B)分散剤、(C)バインダー樹脂、(D)光重合性モノマー及び(E)光重合開始剤を含有する、着色感光性樹脂組成物であって、
前記(A)着色剤が、下記一般式(I)で表される化合物、前記化合物の幾何異性体、前記化合物の塩、及び前記化合物の幾何異性体の塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する(A1)有機黒色顔料を含み、
前記(B)分散剤が、アクリル系分散剤を含み、
前記(C)バインダー樹脂が、(C1)主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂を含む着色感光性樹脂組成物。
【化1】

(式(I)中、R^(a1)及びR^(a6)は各々独立に、水素原子、CH_(3)、CF_(3)、フッ素原子又は塩素原子を表し;
R^(a2)、R^(a3)、R^(a4)、R^(a5)、R^(a7)、R^(a8)、R^(a9)及びR^(a10)は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、R^(a11)、COOH、COOR^(a11)、COO^(-)、CONH_(2)、CONHR^(a11)、CONR^(a11)R^(a12)、CN、OH、OR^(a11)、COCR^(a11)、OOCNH_(2)、OOCNHR^(a11)、OOCNR^(a11)R^(a12)、NO_(2)、NH_(2)、NHR^(a11)、NR^(a11)R^(a12)、NHCOR^(a12)、NR^(a11)COR^(a12)、N=CH_(2)、N=CHR^(a11)、N=CR^(a11)R^(a12)、SH、SR^(a11)、SOR^(a11)、SO_(2)R^(a11)、SO_(3)R^(a11)、SO_(3)H、SO_(3)^(-)、SO_(2)NH_(2)、SO_(2)NHR^(a11)又はSO_(2)NR^(a11)R^(a12)を表し;
且つ、R^(a2)とR^(a3)、R^(a3)とR^(a4)、R^(a4)とR^(a5)、R^(a7)とR^(a8)、R^(a8)とR^(a9)、及びR^(a9)とR^(a10)からなる群から選ばれる少なくとも1つの組み合わせは、互いに直接結合してもよく、又は酸素原子、硫黄原子、NH若しくはNR^(a11)ブリッジによって互いに結合してもよく;
R^(a11)及びR^(a12)は各々独立に、炭素数1?12のアルキル基、炭素数3?12のシクロアルキル基、炭素数2?12のアルケニル基、炭素数3?12のシクロアルケニル基又は炭素数2?12のアルキニル基を表す。)」

ウ 相違点
本件特許発明1と甲1-1発明は、以下の点で相違、又は一応相違する。
(相違点1)
「着色感光性樹脂組成物」が、本件特許発明1は、「有機電界発光素子の隔壁を形成するために用いられる」のに対し、甲1-1発明は、これが、一応、明らかではない点。

(相違点2)
「(C)バインダー樹脂」が、本件特許発明1は、「(C1)主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂を85質量%以上含む」のに対し、甲1-1発明は、「(C1)主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂」を含むものの、その含有量は、次の「エ 判断」で述べるとおり、「85質量%以上」ではない点。

エ 判断
事案に鑑み、相違点2について検討する。
(ア) 甲1-1発明の「感光性着色組成物」は、「アルカリ可溶性樹脂」として、「アルカリ可溶性樹脂-I」及び「アルカリ可溶性樹脂-III」を含有する。
ここで、既に述べたとおり、甲1-1発明の「アルカリ可溶性樹脂-III」は、「主鎖に芳香族環を有する」「エポキシ(メタ)アクリレート樹脂」と認められる。一方、甲1-1発明の「アルカリ可溶性樹脂-I」は、スチレン、グリシジルメタクリレートおよびトリシクロデカン骨格を有するモノアクリレートを反応させた後、その反応物に対して、テトラヒドロ無水フタル酸及びトリエチルアミンを反応させて得られる樹脂であることから、その主鎖は、スチレン、グリシジルメタクリレートおよびトリシクロデカン骨格を有するモノアクリレートの不飽和部分が反応して構成される炭素-炭素結合と認められる。したがって、甲1-1発明の「アルカリ可溶性樹脂-I」は、「主鎖に芳香族環を有する」「エポキシ(メタ)アクリレート樹脂」に当たらない。
そして、甲1-1発明の「感光性着色組成物」の「アルカリ可溶性樹脂」における「アルカリ可溶性樹脂-III」の含有割合は、62.7%程度である(当合議体注:甲1-1発明の「感光性着色組成物」は、顔料分散液-1及びアルカリ可溶性樹脂-IIIを、固形分中の比率で61.3質量部及び22.2質量部含有するものである。また、顔料分散液-1の固形分は、顔料100質量部、分散剤(固形分換算)20質量部及びアルカリ可溶性樹脂-I(固形分換算)33質量部を含むものである。そうしてみると、「感光性着色組成物」におけるアルカリ可溶性樹脂-Iの含有量は、61.2×(33÷(100+20+33))=13.2質量部、アルカリ可溶性樹脂-IIIの含有量は22.2質量部となるから、「感光性着色組成物」の「アルカリ可溶性樹脂」における「アルカリ可溶性樹脂-III」の含有割合は、22.2÷(13.2+22.2)=0.627程度となる。)。

(イ) 甲第1号証の段落[0158]には、「(C)アルカリ可溶性樹脂におけるカルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレート樹脂の割合を、50質量%以上、特に80質量%以上とすることが好ましい。」と記載されている。しかしながら、甲第1号証には、「カルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレート樹脂」として、「主鎖に芳香族環を有する」「エポキシ(メタ)アクリレート樹脂」を使用すること、及びその含有割合を「85質量%以上」とすることについて、記載も示唆もない。したがって、甲1-1発明において、「アルカリ可溶性樹脂」における「主鎖に芳香族環を有する」「エポキシ(メタ)アクリレート樹脂」を「85質量%以上」とする動機づけがない。

(ウ) 甲第2号証の段落[0138]には、「(b)アルカリ可溶性樹脂におけるカルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレート樹脂の割合を、50質量%以上、特に80質量%以上とすることが好ましい。」と記載されている。しかしながら、甲第2号証には、「カルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレート樹脂」として、「主鎖に芳香族環を有する」「エポキシ(メタ)アクリレート樹脂」を使用すること、及びその含有割合を「85質量%以上」とすることについて、記載も示唆もない。したがって、甲1-1発明に甲第2号証の記載を適用しても、本件特許発明1には到らない。加えて、甲1発明にその他の周知技術を適用しても、本件特許発明1には到らない。

(エ) 本件特許発明は、「硬化物形成後のアウトガス量が少なく信頼性に優れており、また硬化物作成時の現像工程における微細パターンの密着性が良好である着色感光性樹脂組成物を提供する」(段落【0011】)ために、本件特許発明1に係る構成を採用したものであり、これにより、特に、「アウトガス特性に優れる」(段落【0452】)という効果が得られるものである。そして、この効果は、本件明細書の段落【0446】【表2】及び段落【0450】に記載された実施例1?5及び比較例1の「室温?400℃の重量変化(質量%)」の相違によっても裏付けられているといえる(なお、特許権者も、令和元年9月24日に提出した意見書において、「そして、本件特許の実施例1?5と比較例1との比較から明らかなように、本件特許発明1は「(C)バインダー樹脂が、(C1)主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂を85質量%以上含む」という特徴的な構成により、硬化物形成後のアウトガス量が少なく信頼性に優れるという甲第1号証に記載されていない予想外の効果を奏するものである」と主張している。)。
一方、甲第1及び2号証には、「感光性着色組成物」の「アルカリ可溶性樹脂」における、「主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂を85質量%以上」含ませることにより、「アウトガス特性」が改善することについて記載がなく、甲第1及び2号証の記載事項からは、上記効果について、当業者であれば容易に予測し得たということはできない。
したがって、本件特許発明の効果は、甲第1及び2号証の記載事項からみて、顕著なものということができる。

オ 小括
したがって、その余の相違点を検討するまでもなく、本件特許発明1は、当業者であっても、甲1-1発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたということはできない。

(2) 本件特許発明2?11
本件特許発明2?11は、前記(1)ウの(相違点1)及び(相違点2)で述べた構成と同一の構成を備えるものである。したがって、本件特許発明2?11も、本件特許発明1と同じ理由により、当業者であっても、甲1-1発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたということはできない。

2 甲1-2発明?甲1-9発明との対比及び判断
同様に、甲第1号証の段落[0274]?段落[0307]に実施例2?8として開示されている発明及び段落[0314]?段落[0318]に実施例9として開示されている発明を、それぞれ、「甲1-2?1-9発明」といい、「甲1-1発明」?「甲1-9発明」を、総称して「甲1発明」という。
前記1で述べた事項と同様の理由で、本件特許発明1?11は、当業者であっても、甲1-2発明?甲1-9発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたということはできない。

3 甲2発明との対比及び判断
(1) 本件特許発明1について
(ア) 着色感光性樹脂組成物
甲2発明は、「顔料」、「分散剤」、「アルカリ可溶性樹脂」、「光重合性モノマー」及び「光重合開始剤-I」を含有する「感光性着色組成物」である。
技術的にみて、甲2発明の「分散剤」、「光重合性モノマー」及び「光重合開始剤-I」は、それぞれ、本件特許発明1でいう「(B)分散剤」、「(D)光重合性モノマー」及び「(E)光重合開始剤」に相当する。同様に、甲2発明の「顔料」は、本件特許発明1の「(A)着色剤」に相当する(甲第2号証の段落[0054]の、「黒色色材の中でも、液晶の電圧保持率の低下を抑制し、また、紫外線の吸収を抑制して形状や段差をコントロールしやすくするとの観点からは、有機黒色顔料を用いることが好ましく、特に遮光性の観点からは、下記式(1)で表される化合物、その幾何異性体、その塩、またはその幾何異性体の塩である有機黒色顔料を用いることが好ましい。」という記載からも確認できる事項である。)。加えて、甲2発明の「アルカリ可溶性樹脂」は、技術常識からみて、本件特許発明1でいう「(C)バインダー樹脂」に該当する。さらに、甲2発明の「感光性着色組成物」は、その材料組成からみて、本件特許発明1の「感光性樹脂組成物」に該当する。
そうしてみると、甲2発明の「感光性着色組成物」と本件特許発明1の「感光性樹脂組成物」は、「(A)着色剤、(B)分散剤、(C)バインダー樹脂、(D)光重合性モノマー及び(E)光重合開始剤を含有する」という点で共通する。

(イ) 有機黒色顔料
甲2発明の「感光性着色組成物」は、「顔料として」、「有機黒色顔料」である「BASF社製、Irgaphor(登録商標) Black S 0100 CF(下記式(2)で表される化学構造を有する)」「

」を含有するものである。
甲2発明の「有機黒色顔料」は、その化学構造について、本件特許発明1の「一般式(I)」の要件を満たす。
そうしてみると、甲2発明の「感光性着色組成物」は、本件特許発明1でいう「前記(A)着色剤が、下記一般式(I)で表される化合物、前記化合物の幾何異性体、前記化合物の塩、及び前記化合物の幾何異性体の塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する(A1)有機黒色顔料を含み」という要件を満たす。

(ウ) 分散剤
甲2発明の「感光性着色組成物」は、「分散剤」として「ビックケミー社製「DISPERBYK-LPN21116」(側鎖に4級アンモニウム塩基及び3級アミノ基を有するAブロックと、4級アンモニウム塩基及びアミノ基を有さないBブロックからなる、アクリル系A-Bブロック共重合体)」を含有するものである。
甲2発明の「ビックケミー社製「DISPERBYK-LPN21116」」は、「アクリル系A-Bブロック共重合体」であるから、本件特許発明1でいう「アクリル系分散剤」に相当する。
そうしてみると、甲2発明の「感光性着色組成物」は、本件特許発明1でいう「前記(B)分散剤が、アクリル系分散剤を含み」という要件を満たす。

(エ) バインダー樹脂
甲2発明の「感光性着色組成物」は、「アクリル可溶性樹脂」として「アルカリ可溶性樹脂-I」及び「アルカリ可溶性樹脂-II」を含有するものである。
甲2発明の「アルカリ可溶性樹脂-II」は、本件明細書の段落【0420】の記載からみて、本件特許発明1でいう「主鎖に芳香族環を有するエポキシアクリレート樹脂」に相当する。
そうしてみると、甲1-1発明の「感光性着色組成物」は、本件特許発明1でいう「(C1)主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂を」「含む」という要件を満たす。

イ 一致点
本件特許発明1と甲2発明とは、次の構成で一致する。

「 (A)着色剤、(B)分散剤、(C)バインダー樹脂、(D)光重合性モノマー及び(E)光重合開始剤を含有する、着色感光性樹脂組成物であって、
前記(A)着色剤が、下記一般式(I)で表される化合物、前記化合物の幾何異性体、前記化合物の塩、及び前記化合物の幾何異性体の塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する(A1)有機黒色顔料を含み、
前記(B)分散剤が、アクリル系分散剤を含み、
前記(C)バインダー樹脂が、(C1)主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂を含む着色感光性樹脂組成物。
【化1】

(式(I)中、R^(a1)及びR^(a6)は各々独立に、水素原子、CH_(3)、CF_(3)、フッ素原子又は塩素原子を表し;
R^(a2)、R^(a3)、R^(a4)、R^(a5)、R^(a7)、R^(a8)、R^(a9)及びR^(a10)は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、R^(a11)、COOH、COOR^(a11)、COO^(-)、CONH_(2)、CONHR^(a11)、CONR^(a11)R^(a12)、CN、OH、OR^(a11)、COCR^(a11)、OOCNH_(2)、OOCNHR^(a11)、OOCNR^(a11)R^(a12)、NO_(2)、NH_(2)、NHR^(a11)、NR^(a11)R^(a12)、NHCOR^(a12)、NR^(a11)COR^(a12)、N=CH_(2)、N=CHR^(a11)、N=CR^(a11)R^(a12)、SH、SR^(a11)、SOR^(a11)、SO_(2)R^(a11)、SO_(3)R^(a11)、SO_(3)H、SO_(3)^(-)、SO_(2)NH_(2)、SO_(2)NHR^(a11)又はSO_(2)NR^(a11)R^(a12)を表し;
且つ、R^(a2)とR^(a3)、R^(a3)とR^(a4)、R^(a4)とR^(a5)、R^(a7)とR^(a8)、R^(a8)とR^(a9)、及びR^(a9)とR^(a10)からなる群から選ばれる少なくとも1つの組み合わせは、互いに直接結合してもよく、又は酸素原子、硫黄原子、NH若しくはNR^(a11)ブリッジによって互いに結合してもよく;
R^(a11)及びR^(a12)は各々独立に、炭素数1?12のアルキル基、炭素数3?12のシクロアルキル基、炭素数2?12のアルケニル基、炭素数3?12のシクロアルケニル基又は炭素数2?12のアルキニル基を表す。)」

ウ 相違点
本件特許発明1と甲2発明は、以下の点で相違、又は一応相違する。
(相違点1)
「着色感光性樹脂組成物」が、本件特許発明1は、「有機電界発光素子の隔壁を形成するために用いられる」のに対し、甲2発明は、これが、一応、明らかではない点。

(相違点2)
「(C)バインダー樹脂」が、本件特許発明1は、「(C1)主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂を85質量%以上含む」のに対し、甲2発明は、「(C1)主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂」を含むものの、その含有量は、次の「エ 判断」で述べるとおり、「85質量%以上」ではない点。

エ 判断
事案に鑑み、相違点2について検討する。
前記1(1)エで述べた事項と同様の理由で、本件特許発明1は、当業者であっても、甲2発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたということはできない。
本件特許発明の効果は、甲第1及び2号証の記載事項からみて、顕著なものということができる。

(2) 本件特許発明2?11
本件特許発明2?11は、前記(1)ウの(相違点1)及び(相違点2)で述べた構成と同一の構成を備えるものである。したがって、本件特許発明2?11も、本件特許発明1と同じ理由により、当業者であっても、甲2発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたということはできない。

第7 特許法第36条についての当審の判断
1 特許法第36条第6項第1号
本件明細書の段落【0011】の記載によると、本件特許発明の課題は、「硬化物形成後のアウトガス量が少なく信頼性に優れており、また硬化物作成時の現像工程における微細パターンの密着性が良好である着色感光性樹脂組成物を提供することにある」と認められる。
そして、発明の詳細な説明には、上記課題を解決するための具体物として、請求項1に「(A)着色剤、(B)分散剤、(C)バインダー樹脂、(D)光重合性モノマー及び(E)光重合開始剤を含有する、有機電界発光素子の隔壁を形成するために用いられる着色感光性樹脂組成物であって」、「前記(A)着色剤が、下記一般式(I)で表される化合物、前記化合物の幾何異性体、前記化合物の塩、及び前記化合物の幾何異性体の塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する(A1)有機黒色顔料を含み」、「前記(B)分散剤が、アクリル系分散剤を含み」、「前記(C)バインダー樹脂が、(C1)主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂を85質量%以上含むことを特徴とする着色感光性樹脂組成物」が記載されている。
加えて、発明の詳細な説明には、バインダー樹脂(C)に占める(C1)主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂の含有割合が72質量%である着色感光性樹脂組成物が比較例1として記載されており(段落【0446】【表2】を参照。)、当該組成物はアウトガス特性が悪いことが記載されている(段落【0452】を参照。)。
ここで、本件明細書の段落【0444】【表1】及び段落【0446】【表2】の記載によると、比較例1の着色感光性樹脂組成物は、バインダー樹脂(C)として、「バインダー樹脂-I」と「バインダー樹脂-V」を含有する。
そして、「バインダー樹脂-I」は、本件明細書の段落【0197】及び段落【0420】の記載からみて、「主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂」である。
一方、「バインダー樹脂-V」は、「プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート145質量部を窒素置換しながら攪拌し、120℃に昇温し」、「ここにスチレン10質量部、グリシジルメタクリレート85.2質量部及びトリシクロデカン骨格を有するモノメタクリレート(日立化成社製FA-513M)66質量部を滴下し、及び2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル8.47質量部を3時間かけて滴下し、更に90℃で2時間攪拌し続け」、「次に反応容器内を空気置換に変え、アクリル酸43.2質量部にトリスジメチルアミノメチルフェノール0.7質量部及びハイドロキノン0.12質量部を投入し、100℃で12時間反応を続け」、「その後、テトラヒドロ無水フタル酸(THPA)56.2質量部、トリエチルアミン0.7質量部を加え、100℃3.5時間反応させ」て得られる樹脂である(段落【0431】を参照)。
そうしてみると、上記バインダー樹脂-Vの主鎖は、スチレン、グリシジルメタクリレートおよびトリシクロデカン骨格を有するモノアクリレートの不飽和部分が反応して構成される炭素-炭素結合と認められるから「主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂」に当たらない。
したがって、比較例1の着色感光性樹脂組成物のバインダー樹脂(C)における、「主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂」の含有割合は、段落【0446】【表2】に記載のとおり、「72質量%」程度である(当合議体注:比較例1の着色感光性樹脂組成物における顔料分散液6中のバインダー樹脂-Vの含有量は、段落【0444】【表1】によると、55.20×(12÷(36+7.2+12))=12質量部だから、樹脂全量におけるバインダー樹脂-Iの含有割合は、30.18÷(12+30.18)=0.72となる。)。そして、比較例1の着色感光性樹脂組成物は、アウトガス特性が悪いものであるから、「(C)バインダー樹脂」における「(C1)主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂」の含有割合を本件特許の請求項1の範囲に設定することにより、本件特許発明の課題を解決できることが、具体的に確認されていると認められる。
以上より、本件特許発明の範囲は、発明の詳細な説明に記載された事項から、課題を解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲内にあるといえる。

2 特許法第36条第4項第1号
前記1で述べたとおり、「(C)バインダー樹脂」における「(C1)主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂」の含有割合を本件特許の請求項1の範囲に設定することによる作用効果を明確に確認することができる。
したがって、発明の詳細な説明の記載は、本件特許発明の全体について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものである。

第8 むすび
したがって、取消理由通知書に記載した取消しの理由(特許異議申立書に記載された特許異議申立ての理由)によっては、本件特許発明1?11を取り消すことはできない。
また、他に本件特許発明1?11を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)着色剤、(B)分散剤、(C)バインダー樹脂、(D)光重合性モノマー及び(E)光重合開始剤を含有する、有機電界発光素子の隔壁を形成するために用いられる着色感光性樹脂組成物であって、
前記(A)着色剤が、下記一般式(I)で表される化合物、前記化合物の幾何異性体、前記化合物の塩、及び前記化合物の幾何異性体の塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する(A1)有機黒色顔料を含み、
前記(B)分散剤が、アクリル系分散剤を含み、
前記(C)バインダー樹脂が、(C1)主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂を85質量%以上含むことを特徴とする着色感光性樹脂組成物。
【化1】

(式(I)中、R^(a1)及びR^(a6)は各々独立に、水素原子、CH_(3)、CF_(3)、フッ素原子又は塩素原子を表し;
R^(a2)、R^(a3)、R^(a4)、R^(a5)、R^(a7)、R^(a8)、R^(a9)及びR^(a10)は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、R^(a11)、COOH、COOR^(a11)、COO^(-)、CONH_(2)、CONHR^(a11)、CONR^(a11)R^(a12)、CN、OH、OR^(a11)、COCR^(a11)、OOCNH_(2)、OOCNHR^(a11)、OOCNR^(a11)R^(a12)、NO_(2)、NH_(2)、NHR^(a11)、NR^(a11)R^(a12)、NHCOR^(a12)、NR^(a11)COR^(a12)、N=CH_(2)、N=CHR^(a11)、N=CR^(a11)R^(a12)、SH、SR^(a11)、SOR^(a11)、SO_(2)R^(a11)、SO_(3)R^(a11)、SO_(3)H、SO_(3)^(-)、SO_(2)NH_(2)、SO_(2)NHR^(a11)又はSO_(2)NR^(a11)R^(a12)を表し;
且つ、R^(a2)とR^(a3)、R^(a3)とR^(a4)、R^(a4)とR^(a5)、R^(a7)とR^(a8)、R^(a8)とR^(a9)、及びR^(a9)とR^(a10)からなる群から選ばれる少なくとも1つの組み合わせは、互いに直接結合してもよく、又は酸素原子、硫黄原子、NH若しくはNR^(a11)ブリッジによって互いに結合してもよく;
R^(a11)及びR^(a12)は各々独立に、炭素数1?12のアルキル基、炭素数3?12のシクロアルキル基、炭素数2?12のアルケニル基、炭素数3?12のシクロアルケニル基又は炭素数2?12のアルキニル基を表す。)
【請求項2】
前記(C)バインダー樹脂における前記(C1)主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂の含有割合が90質量%以上である、請求項1に記載の着色感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(C1)主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂が、下記一般式(II)で表される繰り返し単位構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂及び下記一般式(III)で表される部分構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂の一方又は両方を含む、請求項1又は2に記載の着色感光性樹脂組成物。
【化2】

(式(II)中、R^(11)は水素原子又はメチル基を表し;
R^(12)は置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を表し;
式(II)中のベンゼン環は、更に任意の置換基により置換されていてもよく;
*は結合手を表す。)
【化3】

(式(III)中、R^(13)は各々独立に、水素原子又はメチル基を表し;
R^(14)は、環状炭化水素基を側鎖として有する2価の炭化水素基を表し;
R^(15)及びR^(16)は各々独立に、置換基を有していてもよい2価の脂肪族基を表し;
m及びnは各々独立に0?2の整数を表し;
*は結合手を表す。)
【請求項4】
前記アクリル系分散剤が、窒素原子を含有するアクリル系分散剤である、請求項1?3のいずれか1項に記載の着色感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(A)着色剤の含有割合が、前記着色感光性樹脂組成物の全固形分あたり60質量%以下である、請求項1?4のいずれか1項に記載の着色感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(A)着色剤が、さらに(A2)有機着色顔料及び(A3)カーボンブラックの一方又は両方を含む、請求項1?5のいずれか1項に記載の着色感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記(A)着色剤における(A1)有機黒色顔料の含有割合が10質量%以上である、請求項1?6のいずれか1項に記載の着色感光性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1?7のいずれか1項に記載の着色感光性樹脂組成物で構成される隔壁。
【請求項9】
請求項8に記載の隔壁を備える有機電界発光素子。
【請求項10】
請求項9に記載の有機電界発光素子を含む画像表示装置。
【請求項11】
請求項9に記載の有機電界発光素子を含む照明。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-02-07 
出願番号 特願2018-553266(P2018-553266)
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (H05B)
P 1 651・ 113- YAA (H05B)
P 1 651・ 121- YAA (H05B)
P 1 651・ 537- YAA (H05B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 外川 敬之  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 高松 大
宮澤 浩
登録日 2018-12-21 
登録番号 特許第6451918号(P6451918)
権利者 三菱ケミカル株式会社
発明の名称 着色感光性樹脂組成物、顔料分散液、隔壁、有機電界発光素子、画像表示装置及び照明  
代理人 大浪 一徳  
代理人 田▲崎▼ 聡  
代理人 伏見 俊介  
代理人 伏見 俊介  
代理人 田▲崎▼ 聡  
代理人 大浪 一徳  

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