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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H05B
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  H05B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H05B
審判 全部申し立て 2項進歩性  H05B
管理番号 1361470
異議申立番号 異議2019-700286  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-05-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-04-10 
確定日 2020-03-06 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6404496号発明「有機EL表示素子用封止剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6404496号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕について訂正することを認める。 特許第6404496号の請求項1?4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6404496号の請求項1?4に係る特許についての出願は、平成29年10月18日(優先権主張 平成28年10月19日)にしたものであって、平成30年9月21日にその特許権の設定登録がされ、平成30年10月10日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、以下のとおりである。

平成31年4月10日:特許異議申立人 岩村直(以下「特許異議申立人」という。)による請求項1?4に係る特許に対する特許異議の申立て
令和元年6月4日付け:取消理由通知書
令和元年8月1日:特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和元年9月9日:特許異議申立人による意見書の提出
令和元年10月10日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和元年12月13日:特許権者による意見書及び訂正請求書の提出(この訂正請求書による訂正の請求を、以下「本件訂正請求」という。)
令和2年1月23日:特許異議申立人による意見書の提出

なお、令和元年8月1日にした訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなされる。

第2 訂正の適否
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、次のとおりである(下線は当合議体が付したものであり、訂正箇所を示す。)。
なお、本件訂正は、一群の請求項である、請求項1?4を対象として請求された。

(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1及び2に「粘度が5?50mPa・s」と記載されているのを、「粘度が5?20mPa・s」に訂正する。
請求項3及び4は、請求項1及び2の記載を引用して記載されているから、上記訂正により、請求項3及び4についても、訂正されたこととなる。

(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1及び2に「表面張力が15?35mN/m」と記載されているのを、「表面張力が15?30mN/m」に訂正する。
請求項3及び4は、請求項1及び2の記載を引用して記載されているから、上記訂正により、請求項3及び4についても、訂正されたこととなる。

(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1及び2に「エチレン・プロピレン・ジエンゴム」と記載されているのを、「エチレン・プロピレン・ジエンゴム(AS568-009(森清化工社社製))」に訂正する。
請求項3及び4は、請求項1及び2の記載を引用して記載されているから、上記訂正により、請求項3及び4についても、訂正されたこととなる。

(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1及び2に「有機EL表示素子用封止剤」と記載されているのを、「有機EL表示素子用封止剤(但し、多官能ビニルエーテルを含有するものを除く)」に訂正する。
請求項3及び4は、請求項1及び2の記載を引用して記載されているから、上記訂正により、請求項3及び4についても、訂正されたこととなる。

(5) 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項1及び2に「有機EL表示素子用封止剤」と記載されているのを、「インクジェット法に用いる有機EL表示素子用封止剤」に訂正する。
請求項3及び4は、請求項1及び2の記載を引用して記載されているから、上記訂正により、請求項3及び4についても、訂正されたこととなる。

2 訂正の適否
以下、訂正前の請求項1?4に係る発明を「訂正前発明1?4」という。
(1) 訂正事項1
ア 訂正の目的
請求項1及び2についてした訂正は、訂正前発明1及び2における「粘度が5?50mPa・s」を、「粘度が5?20mPa・s」に限定するものである。また、請求項3及び4についても、同じことがいえる。
そうしてみると、上記の訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とする訂正である。

イ 新規事項について
請求項1及び2についてした訂正は、願書に添付した明細書の段落【0016】に基づくものである。また、請求項3及び4についても、同じことがいえる。
そうしてみると、訂正は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)によって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 拡張、変更について
請求項1及び2についてした訂正は、前記アで述べたとおりのものであるから、訂正前発明1及び2の範囲を狭くするものである。また、請求項3及び4についても、同じことがいえる。
そうしてみると、訂正により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が、訂正後の特許請求の範囲に含まれることにはならないといえる。
したがって、訂正事項1による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(2) 訂正事項2
ア 訂正の目的
請求項1及び2についてした訂正は、訂正前発明1及び2における「表面張力が15?35mN/m」を、「表面張力が15?30mN/m」に限定するものである。また、請求項3及び4についても、同じことがいえる。
そうしてみると、上記の訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とする訂正である。

イ 新規事項について
請求項1及び2についてした訂正は、願書に添付した明細書の段落【0017】に基づくものである。また、請求項3及び4についても、同じことがいえる。
そうしてみると、訂正は、当業者によって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項2による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 拡張、変更について
請求項1及び2についてした訂正は、前記アで述べたとおりのものであるから、訂正前発明1及び2の範囲を狭くするものである。また、請求項3及び4についても、同じことがいえる。
そうしてみると、訂正により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が、訂正後の特許請求の範囲に含まれることにはならないといえる。
したがって、訂正事項2による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(3) 訂正事項3
ア 訂正の目的
請求項1及び2についてした訂正は、訂正前発明1及び2における「エチレン・プロピレン・ジエンゴム」を、「エチレン・プロピレン・ジエンゴム(AS568-009(森清化工社社製))」と製品の型番で特定し、「エチレン・プロピレン・ジエンゴム」を具体的に特定するものである。また、請求項3及び4についても、同じことがいえる。
そうしてみると、上記の訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とする訂正である。

イ 新規事項について
請求項1及び2についてした訂正は、願書に添付した明細書の段落【0084】に基づくものである。また、請求項3及び4についても、同じことがいえる。
そうしてみると、訂正は、当業者によって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項3による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 拡張、変更について
請求項1及び2についてした訂正は、前記アで述べたとおりのものであるから、訂正前発明1及び2を明確にしたにとどまるものである。また、請求項3及び4についても、同じことがいえる。
そうしてみると、訂正により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が、訂正後の特許請求の範囲に含まれることにはならないといえる。
したがって、訂正事項3による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(4) 訂正事項4
ア 訂正の目的
請求項1及び2についてした訂正は、訂正前発明1及び2における「有機EL表示素子用封止剤」を、「有機EL表示素子用封止剤(但し、多官能ビニルエーテルを含有するものを除く)」に限定するものである。また、請求項3及び4についても、同じことがいえる。
そうしてみると、上記の訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とする訂正である。

イ 新規事項について
請求項1及び2についてした訂正は、「有機EL表示素子用封止剤」の発明から、「多官能ビニルエーテルを含有する」態様を除く訂正であるから、発明をなす構成要素を変更しないものである。また、請求項3及び4についても、同じことがいえる。
そうしてみると、訂正は、当業者によって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項4による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 拡張、変更について
請求項1についてした訂正は、前記アで述べたとおりのものであるから、訂正前発明1及び2の範囲を狭くするものである。また、請求項3及び4についても、同じことがいえる。
そうしてみると、訂正により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が、訂正後の特許請求の範囲に含まれることにはならないといえる。
したがって、訂正事項4による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(5) 訂正事項5
ア 訂正の目的
請求項1及び2についてした訂正は、訂正前発明1における「有機EL表示素子用封止剤」を、「インクジェット法に用いる有機EL表示素子用封止剤」に限定するものである。また、請求項3及び4についても、同じことがいえる。
そうしてみると、上記の訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とする訂正である。

イ 新規事項について
請求項1及び2についてした訂正は、願書に添付した明細書の段落【0009】に基づくものである。また、請求項3及び4についても、同じことがいえる。
そうしてみると、訂正は、当業者によって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項5による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 拡張、変更について
請求項1及び2についてした訂正は、前記アで述べたとおりのものであるから、訂正前発明1の範囲を狭くするものである。また、請求項3及び4についても、同じことがいえる。
そうしてみると、訂正により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が、訂正後の特許請求の範囲に含まれることにはならないといえる。
したがって、訂正事項5による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

3 小括
本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものである。また、訂正は、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?4〕について訂正することを認める。

第3 取消理由の概要
令和元年8月1日に提出した訂正請求書による訂正後の請求項1?4に係る特許に対して、当審が令和元年10月10日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、[A]本件特許は、発明の詳細な説明及び特許請求の範囲の記載に不備があるから、特許法第36条第4項第1号、同条第6項第1号及び第2号の規定に違反してされたものである、[B]本件請求項1?4に係る発明は、引用発明1と発明の構成に差異がないから、本件請求項1?4に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである、[C]本件請求項1?4に係る発明は、甲2-1発明、甲2-2発明または引用発明1に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1?4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである、[D]したがって、本件特許発明1?4に係る特許は、特許法第113条第2項に該当し、取り消されるべきものである、というものである。

第4 本件特許発明
上記「第2」で述べたとおり、本件訂正請求による訂正は認められることとなった。そうしてみると、本件特許の請求項1?4に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」?「本件特許発明4」という。)は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項によって特定されるとおりの、以下のものである。

「【請求項1】
重合性化合物と重合開始剤とを含有し、
25℃における粘度が5?20mPa・sであり、25℃における表面張力が15?30mN/mであり、かつ、
封止剤中にエチレン・プロピレン・ジエンゴム(AS568-009(森清化工社社製))を浸漬させたまま25℃で1週間静置する含浸試験を行った際、含浸試験前後におけるエチレン・プロピレン・ジエンゴム(AS568-009(森清化工社社製))の重量変化率が5%以下である
ことを特徴とするインクジェット法に用いる有機EL表示素子用封止剤(但し、多官能ビニルエーテルを含有するものを除く)。
【請求項2】
重合性化合物と重合開始剤とを含有し、
前記重合性化合物は、エポキシ化合物を含有し、
25℃における粘度が5?20mPa・sであり、25℃における表面張力が15?30mN/mであり、かつ、
封止剤中にエチレン・プロピレン・ジエンゴム(AS568-009(森清化工社社製))を浸漬させたまま25℃で1週間静置する含浸試験を行った際、含浸試験前後におけるエチレン・プロピレン・ジエンゴム(AS568-009(森清化工社社製))の重量変化率が10%以下である
ことを特徴とするインクジェット法に用いる有機EL表示素子用封止剤(但し、多官能ビニルエーテルを含有するものを除く)。
【請求項3】
重合性化合物は、分子内に酸素原子を17%以上含む化合物を、重合性化合物全体100重量部中に10?100重量部含有することを特徴とする請求項1又は2記載の有機EL表示素子用封止剤。
【請求項4】
溶剤を含有しない、又は、溶剤の含有量が0.05重量%以下であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の有機EL表示素子用封止剤。」

第5 各甲号証等の記載事項、各甲号証等に記載された発明
1 甲第2号証の記載事項
甲第2号証(国際公開第2014/013716号)には、以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、甲第2号証に記載された発明の認定や判断に活用した箇所を示す(以下同様。)。

(1) 「背景技術
[0001] エネルギー線硬化樹脂は、一般的に無溶剤で加工ができる為、作業性に優れる。また、硬化速度が早く、エネルギー必要量が低いことからエネルギー線硬化技術はディスプレイ周辺材料を始め、種々の産業において重要な技術である。近年、ディスプレイはフラットパネルディスプレイ(FPD)と称される薄型のディスプレイ、特にプラズマディスプレイ(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)が市場投入され広く普及している。また、次世代の自発光型薄膜ディスプレイとして有機ELディスプレイ(OLED)が期待されており、一部の商品では既に実用化されている。有機ELディスプレイの有機EL素子は、TFT等の駆動回路が形成されたガラス等の基板上に、陰極および陽極によって挟持された発光層を含む薄膜積層体からなる素子部本体が形成された構造を有している。素子部の発光層または電極といった層は、水分または酸素により劣化し易く、劣化によって輝度やライフの低下、変色が発生する。その為、有機EL素子は、外部からの水分または不純物の浸入を遮断するように封止されている。高品質で高信頼性の有機EL素子の実現に向けて、より高性能な封止材料が望まれており、従来から種々封止技術が検討されている。
・・・(省略)・・・
[0004] 一方、固体封止法は、有機EL素子の素子部全体を覆うようにパッシベーション膜を設け、その上に封止材料を介して封止用透明基板を設ける方法である。
・・・(省略)・・・
[0005] 有機EL素子の固体封止法による封止では、熱または光硬化性樹脂を封止用接着剤として使用することが可能であるが、それらの特性は素子の性能および封止作業の生産性に著しい影響を及ぼす可能性があるため非常に重要である。例えば、封止用接着剤の水蒸気透過率が十分でないとパッシベーション膜のピンホールから素子部に浸入し、素子の劣化を招く可能性がある。また、封止材料の硬化反応が遅ければ、硬化工程に時間がかかり、封止作業の生産性が低下する可能性がある。
[0006] これらに用いられる封止用接着剤には、可視光領域での高い透過率の他、発光に耐えうる耐光性、安定した成形性や残留応力抑制のための低硬化収縮性、発光素子を湿気から保護するための低水蒸気透過率などが求められる。有機EL素子の封止用接着剤として周知の接着剤を使用して固体封止法による封止を実施することは可能であるが、信頼性および生産性の双方で満足できる結果を得ることは難しいのが現状であり、固体封止法に好適に使用可能な封止用接着剤の開発が望まれている。
・・・(省略)・・・
発明の概要
発明が解決しようとする課題
[0008] 有機EL素子の封止材に適した樹脂組成物には、硬化収縮率の小さいこと、該樹脂組成物から得られる硬化物は、可視光透過率、耐光性、硬化性に優れ、Tgが高く、水蒸気透過度が低いという特性が要求されている。本発明の目的は、そのような要求を満たす、有機EL素子の封止材に適した樹脂組成物及び該樹脂組成物から得られる硬化物を提供することである。
課題を解決するための手段
[0009] 本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究の結果、分子中に2つ以上のオキセタン環を有する化合物(A)を少なくとも2種類含有するエネルギー線硬化型樹脂組成物及びその硬化物が前記課題を解決することを見出し、本発明を完成させた。
・・・(省略)・・・
発明の効果
[0014] 本発明の有機EL素子封止材用エネルギー線硬化型樹脂組成物(以下単に本発明の樹脂組成物とも云う)は硬化収縮率が小さく、該樹脂組成物の硬化物は、可視光透過率、耐光性に優れ、耐熱性が高く、水蒸気透過度が低いことから、特に有機EL素子の封止材に適している。」

(2) 「発明を実施するための形態
[0015] 本発明における「有機EL素子封止材用」の語は、有機EL素子の封止、特に固体封止における、ガラス等の封止基板と有機EL素子の間に充填される固体封止剤としての用途を意味する。
本発明の樹脂組成物は、分子中に2つ以上のオキセタン環を有する化合物(A)を2種類以上含有することを特徴とする。
上記の構成により、2種類の2官能のオキセタン化合物が硬化時に相互に硬化系に導入されることとなり、1種類では達成できなかった、耐熱性、剛性、屈折率制御、耐水性、低収縮率の効果を同時に達成することが可能となる。
即ち、1種類の2官能のオキセタン化合物の使用、又は、単官能オキセタン化合物と1種類の2官能オキセタン化合物の併用では、上記の効果を同時に達成することは難しかった。しかし、2種類の2官能オキセタン化合物を使用することで、硬化時の低収縮率、高い剛性、高い屈折率、高い耐水性を維持しつつ、2種類以上のオキセタン化合物同士が硬化系に複雑に導入されていくため、相乗効果として1種類のみでは達成し得なかった極めて高い耐熱性(高いガラス転位点(Tg))を有する硬化物の提供が可能となる。更に、2種類以上使用することで、耐熱性、剛性、屈折率、収縮率について、制御を行うことが極めて容易になる。
・・・(省略)・・・
[0018] 本発明で2官能オキセタン化合物として使用される好ましい一つの化合物は、一般式(1)

(式中、R_(1)はそれぞれ独立に、直接結合または炭素数1?6の直鎖または分岐鎖状炭化水素基(炭化水素結合)を示し、R_(2)は炭素数1?15の直鎖若しくは分岐鎖状の炭化水素基(炭化水素結合)、または、脂環、芳香環、複素環若しくは縮合環を含む炭化水素基を示し、R_(3)はそれぞれ独立して炭素数1?6の直鎖または分岐鎖状炭化水素基を示し、nは平均値で1?5の整数を表す。)
で表されるオキセタン化合物である。
なお、上記式(1)におけるR_(1)及びR_(2)は上記構造式から明らかな通り、2価の炭化水素基であり、R_(3)は1価の炭化水素基である。
R_(1)としては、炭素数1?6の直鎖または分岐鎖状炭化水素基が好ましく、炭素数1?6のアルキレン基がより好ましく、炭素数1?3のアルキレン基が特に好ましい。
R_(2)としては、炭素数1?12の直鎖アルキレン基、炭素数1?12の分岐鎖状アルキレン基、炭素数3?12のフェニレン基またはシクロアルキレン基を有するアルキレン基が好ましく、炭素数6?12のフェニレン基を有するアルキレン基(好ましくは炭素数1?4のアルキレン基)が特に好ましい。
R_(3)としては、炭素数1?3のアルキル基が好ましい。
nとしては、1?3が好ましい。
尚、上記式(1)の化合物において、R_(2)に脂環、芳香環、複素環、縮合環といった環構造(例えば、フェニレン基、ナフタレン基、炭素数3?8のシクロアルキレン基)を有するオキセタン化合物を用いると、硬化収縮率が小さくなり、硬化物のTg(ガラス転移点)、剛性、屈折率が向上するため好ましい。
ここで、上記式(1)の化合物において、特に好ましい具体例としては、下記一般式(3)
[0019]

(式中、R_(3)は前記式(1)と同じ意味を表し、同一でも異なっていてもよい。Zは炭素数3?12の環状基を表し、該環は脂環(脂肪族環)、芳香環、複素環又は縮合環の何れでもよい。nは平均値で1?5の整数を表す。)
で表される化合物である。
Zの炭素数3?12の環状基としては2価の脂肪族環基又は芳香環基が好ましく、フェニレン基が特に好ましい。
上記式(3)の化合物を用いることで、硬化収縮率をより低く保つことが可能となる。
[0020] また、下記一般式(2)で表されるオキセタン化合物は下記の通りである。
[0021]

式中、R_(4)はそれぞれ独立して炭素数1?6の直鎖または分岐鎖状の炭化水素基、及びR_(5)はそれぞれ独立して炭素数1?6の直鎖または分岐鎖状炭化水素基を表す。なお、R_(4)は上記構造式から明らかなとおり、2価の炭素数1?6の炭化水素基であり、R_(5)は1価の炭化水素基である。
上記式(2)において、R_(4)は炭素数1?6の直鎖炭化水素基、さらに好ましくは炭素数1?3のアルキレン基である。
R_(5)においては、炭素数1?3の直鎖炭化水素基が好ましく、特に好ましくは炭素数1?3のアルキル基である。
・・・(省略)・・・
[0023] 本発明の樹脂組成物に含有されるエポキシ基を有する化合物(B)(以下エポキシ化合物(B)又は成分(B)とも云う)としては、単官能エポキシ化合物及び多官能エポキシ化合物の何れでも良い。また、芳香環を含むエポキシ化合物(芳香族エポキシ化合物)や芳香環を含まない脂肪族エポキシ化合物の何れでも良い。本発明においては、芳香族エポキシ化合物又は脂肪族環を含むエポキシ化合物(脂肪族環含有エポキシ化合物)が好ましい。特に、脂肪族環環上にエポキシ基が形成されている脂環式エポキシが好ましい。
・・・(省略)・・・
[0026] 脂環式エポキシの例としては、シクロヘキセンオキサイド、あるいはシクロペンテンオキサイドを含有する化合物であれば全て用いることができる。該脂環式エポキシとしては具体的には下記構造を持つ化合物が例示される。
[0027]

(式中、nは平均値で1?5の正数を表す。)
・・・(省略)・・・
[0029] 本発明の樹脂組成物に含有される光カチオン重合開始剤(C)としては、例えば芳香族ヨードニウム錯塩や芳香族スルホニウム錯塩等を挙げることができる。
・・・(省略)・・・
[0031] 芳香族スルホニウム錯塩の具体例としては、・・・(省略)・・・、トリス[4-(4-アセチルフェニルスルファニル)フェニル]スルホニウムトリス[(トリフルオロメチル)スルホニル]メタニド等を挙げることができる。
・・・(省略)・・・
[0043] また本発明の樹脂組成物には、得られる本発明の樹脂組成物の粘度、屈折率、密着性などを考慮して、成分(A)、成分(B)以外に反応性の化合物を使用しても良い。具体的には、(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。
該(メタ)アクリレート化合物としては、単官能(メタ)アクリレート、2官能(メタ)アクリレート、分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等を使用することができる。
本発明においては、硬化収縮率を小さく保つ観点から、これらの(メタ)アクリレート化合物を含まないか、又は、含む場合には、硬化収縮率を大きくしない程度、例えば、溶剤を除く樹脂組成物の総量100質量部に対して、通常15質量部未満、好ましくは10質量部以下、更に好ましくは5質量部以下であり、最も好ましくは2質量部以下である。本発明においては、硬化収縮率を小さく保つ観点から、該(メタ)アクリレート化合物を含まない態様が最も好ましい。
・・・(省略)・・・
[0053] 本発明の樹脂組成物には、前記成分以外に取り扱い時の利便性等を改善するために、必要に応じて、離型剤、消泡剤、レベリング剤、光安定剤、酸化防止剤、重合禁止剤、可塑剤、帯電防止剤等の添加剤を状況に応じて併用して含有することができる。
・・・(省略)・・・
[0060] 本発明の樹脂組成物の粘度は、固体有機EL用封止材(例えばガラス等)を接着するための塗膜を形成することが出来れば良く、25℃で、10mPa・s以上であればよく、好ましくは10?3000mPa・s程度である。また、微粒子(D)を含まない本発明の樹脂組成物の粘度は、10?150mPa・s程度であり、20?120mPa・s程度が好ましい。微粒子(D)を含む本発明の樹脂組成物の粘度は、300?3000mPa・s程度が好ましく、より好ましくは500?2500Pa・s程度である。
また、基材上に成型する光学レンズを製造する際の形状の転写性や加工性の作業性に適した粘度としては、25℃で10mPa・s以上が好ましい。
・・・(省略)・・・
[0063] 本発明の樹脂組成物を用いる有機EL素子の固体封止は、通常、基板上に形成された有機EL素子上にパッシベーション膜を形成する工程、上記パッシベーション膜の上に、本発明の樹脂組成物(封止用接着剤)を塗布する工程、該塗布層上に、封止用透明基板を設ける工程、および上記塗布層を硬化させる工程を経ることにより行うことが出来る。通常、封止用透明基板としては、ガラスなどの透湿しない透明基板が用いられる。」

(3) 「実施例
[0067] 次に、実施例により本発明を更に詳細に説明する。本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、数値の単位「部」は質量部を示す。
[0068] 以下の実施例(表1)に示す組成にて本発明の樹脂組成物及び硬化物を得た。又、樹脂組成物及び硬化膜についての評価方法及び評価基準は以下の通り行った。なお、有機溶媒を含有する実施例については、エバポレーターで十分に有機溶媒を揮発させた後に評価を行った。
[0069] (1)粘度:E型粘度計(TV-200:東機産業株式会社製)を用いて25℃で測定した。
・・・(省略)・・・
[0074] (6)脆性:易接着PET(A4300 100μm厚み:東洋紡績株式会社製)上にメイヤーバーコーターにて20μm厚みで塗布し、高圧水銀灯(80W/cm、オゾンレス)で3000mJ/cm^(2)の照射を行い硬化させ試験片を得た。その後、試験片を180°折り曲げることで評価を行った。
○・・・クラックの発生無し
×・・・クラックの発生有り
・・・(省略)・・・
[0076] 表1

上表において、比較例1は高圧水銀灯(80W/cm、オゾンレス)で3000mJ/cm^(2)の照射でも硬化しなかった為、液状で測定可能な項目のみを記載した
[0077]OXT-121:東亞合成株式会社製キシリレンビスオキセタン
OXT-221:東亞合成株式会社製3-エチル-3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン
SEJ-01R:日本化薬株式会社製3,4-エポキシシクロヘキセニルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキセンカルボキシレート
GSID 26-1:BASFジャパン株式会社製(トリス[4-(4-アセチルフェニルスルファニル)フェニル]スルホニウムトリス[(トリフルオロメチル)スルホニル]メタニド
SZR-K:堺化学工業株式会社製MEK分散酸化ジルコニウム(固形分濃度30% 一次粒径4nm)
OXT-101:東亞合成株式会社製3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン
[0078] 実施例1?3及び比較例1?4の評価結果から明らかなように、特定の組成を有する本発明の樹脂組成物は硬化収縮率が小さく、その硬化物はTgが高く、水蒸気透過度が低い。そのため例えば各種封止材、特に、有機EL素子の封止材として適し、有機EL素子の固体封止における封止用透明基板の接着用の接着剤として用いることができる。」

2 甲2-1発明
甲第2号証の段落[0067]?段落[0078]には、実施例1として、「樹脂組成物」が開示されている。また、甲第2号証の段落[0078]の記載からみて、「樹脂組成物」は、「有機EL素子の封止材」に用いられるものであるといえる。
そうしてみると、甲第2号証には、次の発明(以下「甲2-1発明」という。)が記載されている。

「 以下の組成からなり樹脂組成物を用いる、
粘度が45mPa・sである
有機EL素子の封止材。
東亞合成株式会社製キシリレンビスオキセタン(以下、「OXT-121」という。) 50質量部
東亞合成株式会社製3-エチル-3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン(以下、「OXT-221」という。) 50質量部
BASFジャパン株式会社製(トリス[4-(4-アセチルフェニルスルファニル)フェニル]スルホニウムトリス[(トリフルオロメチル)スルホニル]メタニド(以下、「GSID 26-1」という。) 1質量部」

3 甲2-2発明
甲第2号証の段落[0067]?段落[0078]には、比較例3として、「樹脂組成物」が開示されている。また、甲第2号証の段落[0078]の記載からみて、「樹脂組成物」は、「有機EL素子の封止材」に用いられるものであるといえる。
そうしてみると、甲第2号証には、次の発明(以下「甲2-1発明」という。)が記載されている。

「 以下の組成からなり、
粘度が13mPa・sである樹脂組成物を用いる、
有機EL素子の封止材。
OXT-221 100質量部
GSID 26-1 1質量部」

4 引用文献1の記載事項
特開2014-225380号公報(以下、「引用文献1」という。)には、以下の記載がある。

(1) 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット法により容易に塗布することができ、硬化性、硬化物の透明性及びバリア性に優れる有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤に関する。また、本発明は、該有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤を用いた有機エレクトロルミネッセンス表示素子の製造方法に関する。
・・・(省略)・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、インクジェット法により容易に塗布することができ、硬化性、硬化物の透明性及びバリア性に優れる有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤を提供することを目的とする。また、本発明は、該有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤を用いた有機エレクトロルミネッセンス表示素子の製造方法を提供することを目的とする。」

(2) 「【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、環状エーテル化合物と、カチオン重合開始剤と、多官能ビニルエーテル化合物とを含有し、上記多官能ビニルエーテル化合物の含有量が、上記環状エーテル化合物100重量部に対して5?50重量部である有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤である。
・・・(省略)・・・
【0010】
本発明の有機EL表示素子用封止剤は、多官能ビニルエーテル化合物を含有する。上記多官能ビニルエーテル化合物を含有することにより、本発明の有機EL表示素子用封止剤は、インクジェットによる塗布に好適な粘度を有し、かつ、有機発光材料層の劣化やアウトガスの発生を抑制することができる。
・・・(省略)・・・
【0011】
上記多官能ビニルエーテル化合物としては、・・・(省略)・・・、粘度と反応性の観点から2官能又は3官能ビニルエーテル化合物が好ましく、粘度の観点から直鎖状の骨格を持つビニルエーテルがより好ましい。
・・・(省略)・・・
【0013】
本発明の有機EL表示素子用封止剤は、環状エーテル化合物を含有する。
上記環状エーテル化合物は、得られる有機EL表示素子用封止剤が接着性や硬化性に優れるものとなることから、エポキシ樹脂及び/又はオキセタン樹脂を含有することが好ましい。
【0014】
上記エポキシ樹脂としては、・・・(省略)・・・、低粘度で反応性が高いことから、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。
【0015】
・・・(省略)・・・
上記水添ビスフェノール型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、jER YL6753(三菱化学社製)、・・・(省略)・・・等が挙げられる。
【0016】
上記オキセタン樹脂としては、・・・(省略)・・・、低粘度の観点から、3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタンが好ましく、反応性の観点から、3-エチル-3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタンが好ましい。
【0017】
上記オキセタン樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、アロンオキセタンOXT-101、アロンオキセタンOXT-121、アロンオキセタンOXT-211、アロンオキセタンOXT-212、アロンオキセタンOXT-221(いずれも東亞合成社製)等が挙げられる。
【0018】
本発明の有機EL表示素子用封止剤は、カチオン重合開始剤を含有する。
上記カチオン重合開始剤は、光照射等によりプロトン酸又はルイス酸を発生するものであれば特に限定されず、イオン性光酸発生型であってもよいし、非イオン性光酸発生型であってもよい。
・・・(省略)・・・
【0053】
本発明の有機EL表示素子用封止剤は、E型粘度計を用いて、25℃、100rpmの条件で測定した粘度の好ましい下限が2cps、好ましい上限が12cpsである。上記有機EL表示素子用封止剤の粘度が2cps未満であると、塗工した有機EL表示素子用封止剤が硬化させる前に流れることがある。上記有機EL表示素子用封止剤の粘度が12cpsを超えると、インクジェットによる塗布が困難となることがある。上記有機EL表示素子用封止剤の粘度のより好ましい下限は5cps、より好ましい上限は10cpsである。
・・・(省略)・・・
【発明の効果】
【0070】
本発明によれば、インクジェット法により容易に塗布することができ、硬化性、硬化物の透明性及びバリア性に優れる有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤を提供することができる。また、本発明によれば、該有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤を用いた有機エレクトロルミネッセンス表示素子の製造方法を提供することができる。」

(3) 「【発明を実施するための形態】
【0071】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0072】
(実施例1)
環状エーテル化合物として、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱化学社製、「jER YL6753」)16重量部、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル化学工業社製、「セロキサイド2021」)4重量部、及び、3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(東亞合成社製、「アロンオキセタンOXT-212」)80重量部と、カチオン重合開始剤として芳香族スルホニウム塩(みどり化学社製、「DTS-200」)1.0重量部と、多官能ビニルエーテル化合物として1,4-ブタンジオールジビニルエーテル(日本カーバイド工業社製、「BDVE」)20重量部と、増感剤として2,4-ジエチルチオキサントン(日本化薬社製、「DETX-S」)0.1重量部と、シランカップリング剤としてγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製、「KBM-403」)1.0重量部と、フッ素系レベリング剤(AGCセイミケミカル社製、「サーフロンS-611」)0.5重量部とを混合し、80℃に加熱した後、ホモディスパー型攪拌混合機(プライミクス社製、「ホモディスパーL型」)を用い、攪拌速度3000rpmで均一に攪拌混合して、有機EL表示素子用封止剤を作製した。
【0073】
(実施例2)
環状エーテル化合物として、「セロキサイド2021」を配合せず、「エピコートYL6753」の配合量を20重量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして有機EL表示素子用封止剤を作製した。
【0074】
(実施例3)
環状エーテル化合物として、「エピコートYL6753」を配合せず、「セロキサイド2021」の配合量を20重量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして有機EL表示素子用封止剤を作製した。
・・・(省略)・・・
【0076】
(実施例5)
多官能ビニルエーテル化合物として、「BDVE」20重量部に代えて、ジエチレングリコールジビニルエーテル(日本カーバイド社製、「DEGDVE」)20重量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして有機EL表示素子用封止剤を作製した。
【0077】
(実施例6)
多官能ビニルエーテル化合物として、「BDVE」20重量部に代えて、トリエチレングリコールジビニルエーテル(日本カーバイド社製、「TEGDVE」)20重量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして有機EL表示素子用封止剤を作製した。
【0078】
(実施例7)
「BDVE」)の配合量を5重量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして有機EL表示素子用封止剤を作製した。
・・・(省略)・・・
【0080】
(実施例9)
カチオン重合開始剤として、「DTS-200」1.0重量部に代えて、芳香族ヨードニウム塩(ローディア社製、「PI2074」)1.0重量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして有機EL表示素子用封止剤を作製した。
【0081】
(実施例10)
「DTS-200」の配合量を0.1重量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして有機EL表示素子用封止剤を作製した。
【0082】
(実施例11)
「DTS-200」の配合量を10重量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして有機EL表示素子用封止剤を作製した。
・・・(省略)・・・
【0089】
(1)粘度
各実施例及び各比較例で得られた有機EL表示素子用封止剤について、E型粘度計(東機産業社製、「VISCOMETER TV-22」)を用いて、25℃、100rpmの条件における粘度を測定した。
・・・(省略)・・・
【0099】
【表1】

【0100】
【表2】



5 引用発明1
引用文献1に記載の「有機EL表示素子用封止剤」は、引用文献1の段落【0070】の記載からみて、「インクジェット法により容易に塗布することができ」るものであると認められる。そうしてみると、引用文献1の段落【0072】には、実施例1として、次の発明(以下「引用発明1-1」という。)が記載されている。

「 水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱化学社製、「jER YL6753」)16重量部、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル化学工業社製、「セロキサイド2021」)4重量部、及び、3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(東亞合成社製、「アロンオキセタンOXT-212」)80重量部と、カチオン重合開始剤として芳香族スルホニウム塩(みどり化学社製、「DTS-200」)1.0重量部と、多官能ビニルエーテル化合物として1,4-ブタンジオールジビニルエーテル(日本カーバイド工業社製、「BDVE」)20重量部と、増感剤として2,4-ジエチルチオキサントン(日本化薬社製、「DETX-S」)0.1重量部と、シランカップリング剤としてγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製、「KBM-403」)1.0重量部と、フッ素系レベリング剤(AGCセイミケミカル社製、「サーフロンS-611」)0.5重量部とを混合して作製され、
25℃における粘度が6.5cpsである
インクジェット法により容易に塗布することができる有機EL表示素子用封止剤。」

同様に、引用文献1に記載の実施例2、3、5?7、9?11から把握される発明を、それぞれ「引用発明1-2」?「引用発明1-9」といい、「引用文献1-1」?「引用発明1-9」を総称して、「引用発明1」という。

6 甲第1号証の記載事項
甲第1号証(特開2013-185013号公報)には、以下の記載がある。

(1) 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子内に脂環式エポキシ基を有する脂環式エポキシ基含有重合体、その製造方法、該脂環式エポキシ基含有重合体を含む硬化性樹脂組成物、及びその硬化物に関する。本発明の脂環式エポキシ基含有重合体、硬化性樹脂組成物及びその硬化物は、例えば、層間絶縁膜(絶縁層)、画像形成材料(レジストポリマー等)、ナノインプリントなどの電気・電子材料、透明封止材、導波路等の光学材料、塗料、接着剤、又はこれらの原材料などとして有用である。
【背景技術】
【0002】
分子内にエポキシ基を有するエポキシ化合物は、カチオン硬化性を有しており、耐薬品性、密着性、透明性等に優れた硬化物が得られるため、電子材料、光学材料、塗料、接着剤等の分野で広く用いられている。
・・・(省略)・・・
【0005】
このように、従来のエポキシ化合物は、硬化反応性、硬化物の耐熱性、耐候性等の物性を考慮した場合、一長一短があり、これれらの要求性能を全て満足することはなかった。このため、用途に応じた使い分けが必要であった。
・・・(省略)・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
・・・(省略)・・・
【0009】
本発明の目的は、カチオン硬化性に優れた新規な脂環式エポキシ基含有重合体と、その製造方法、該脂環式エポキシ基含有重合体を含む硬化性組成物、及びその硬化物を提供することにある。
本発明の他の目的は、カチオン硬化性に優れるとともに、耐熱性や耐候性等の諸物性に優れた硬化物を得ることができる新規な脂環式エポキシ基含有重合体と、その製造方法、該脂環式エポキシ基含有重合体を含む硬化性組成物、及びその硬化物を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、幅広い用途に使用できる汎用性の高い新規な脂環式エポキシ基含有重合体と、その製造方法、該脂環式エポキシ基含有重合体を含む硬化性組成物、及びその硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記目的を解決するため鋭意検討した結果、側鎖又は主鎖に環状オレフィン構造を有するオレフィン系重合体をエポキシ化すると、基本骨格(主鎖)が炭化水素骨格であり、且つ分子内に脂環式エポキシ基を有する新規な脂環式エポキシ基含有重合体が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、下記式(1)で表される構成単位及び下記式(2)で表される構成単位から選ばれる少なくとも1種の構成単位を少なくとも有する脂環式エポキシ基含有重合体を提供する。
【化1】

(式中、R^(1)、R^(2)、R^(3)は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1?4のアルキル基を示し、Aは、単結合又は炭素数1?20の2価の炭化水素基を示し、環Zは、該環を構成する隣接する2つの炭素原子を含んで形成されたエポキシ基を有する単環又は多環の脂環式炭素環を示す)
【0012】
この脂環式エポキシ基含有重合体は、下記式(3)で表される構成単位及び下記式(4)で表される構成単位から選ばれる少なくとも1種の構成単位を少なくとも有する重合体を、エポキシ化剤によりエポキシ化して得られたものであってもよい。
【化2】

(式中、R^(1)、R^(2)、R^(3)は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1?4のアルキル基を示し、Aは、単結合又は炭素数1?20の2価の炭化水素基を示し、環Z′は、環内に炭素-炭素二重結合を有する単環又は多環の脂環式炭素環を示す)
【0013】
また、前記式(3)で表される構成単位及び下記式(4)で表される構成単位から選ばれる少なくとも1種の構成単位を少なくとも有する重合体は、下記式(5)で表される環状オレフィン構造を有するオレフィン系炭化水素を少なくとも含むモノマーを、カチオン重合触媒の存在下で重合して得られた重合体であってもよい。
【化3】

(式中、R^(1)、R^(2)、R^(3)は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1?4のアルキル基を示し、Aは、単結合又は炭素数1?20の2価の炭化水素基を示し、環Z′は、環内に炭素-炭素二重結合を有する単環又は多環の脂環式炭素環を示す)
・・・(省略)・・・
【発明の効果】
【0023】
本発明の新規な脂環式エポキシ基含有重合体は、脂環式エポキシ基を有するとともに、該脂環式エポキシ基を有する構成単位の主鎖は炭素-炭素結合であり、しかも前記脂環式エポキシ基が主鎖を構成しているか又は直接若しくは炭素鎖を介して主鎖に結合しているため、カチオン硬化性(反応性)に優れるとともに、硬化により、耐熱性、耐候性、透明性、柔軟性、耐薬品性、密着性等に優れた硬化物(硬化樹脂)が得られる。この硬化物(硬化樹脂)は、硬化収縮が小さく、吸水性も小さいという特性も有する。このため、電気・電子部品用途、光学部品用途、塗料、接着剤等幅広い分野において利用可能である。」

(2) 「【発明を実施するための形態】
【0024】
[脂環式エポキシ基含有重合体]
本発明の脂環式エポキシ基含有重合体は、前記式(1)で表される構成単位(モノマー単位)及び前記式(2)で表される構成単位(モノマー単位)から選ばれる少なくとも1種の構成単位を少なくとも有している。本発明の脂環式エポキシ基含有重合体は、式(1)で表される構成単位と式(2)で表される構成単位のうち、一方の構成単位のみを有していてもよく、両方の構成単位を有していてもよい。また、式(1)で表される構成単位を2種以上有していてもよく、式(2)で表される構成単位を2種以上有していてもよい。
・・・(省略)・・・
【0028】
これらの中でも、硬化物の着色を抑える観点から、芳香環を含まない2価の炭化水素基、例えば、前記直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、直鎖状又は分岐鎖状のアルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルキリデン基、又はこれらが2以上結合した2価の炭化水素基が好ましい。また、Aとしては、分子内のエポキシ基含量を高める観点から、単結合、又は炭素数1?6の2価の炭化水素基が好ましく、特に、単結合が好ましい。
・・・(省略)・・・
【0033】
本発明の脂環式エポキシ基含有重合体において、式(1)で表される構成単位と式(2)で表される構成単位の両方を有する場合、その割合は、例えば、前者/後者(重量比)=1/99?99/1、好ましくは5/95?95/5、さらに好ましくは10/90?90/10、特に好ましくは20/80?80/20である。
【0034】
本発明の脂環式エポキシ基含有重合体は、前記式(1)及び/又は(2)で表される構成単位(モノマー単位)とともに、他の構成単位(モノマー単位)を有していてもよい。このような他の構成単位として、下記式(6)又は(7)
【化7】

(式中、R^(4)、R^(5)及びR^(6)は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1?4のアルキル基を示し、Xは、ハロゲン原子を有していてもよい炭化水素基を示す。環Z′′は、単環又は多環の脂環式炭素環を示す)
で表される構成単位が挙げられる。
・・・(省略)・・・
【0037】
これらの中でも、硬化物(硬化樹脂)の着色を抑える観点から、芳香環を含まない2価の炭化水素基、例えば、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、これらが2以上結合した基が好ましい。また、Xにおける炭化水素基としては、硬化物の機械的強度、透明性等の観点から、脂環式炭化水素基、又は脂環式炭化水素基と脂肪族炭化水素基が結合した基が好ましい。
・・・(省略)・・・
【0042】
本発明の脂環式エポキシ基含有重合体において、前記式(1)及び(2)で表される構成単位(モノマー単位)の総量の該脂環式エポキシ基含有重合体を構成する全モノマー単位に占める割合は、例えば、1?100重量%、好ましくは5?100重量%、さらに好ましくは30?100重量%、特に好ましくは50?100重量%であり、80重量%以上(例えば、100重量%)であってもよい。
・・・(省略)・・・
【0048】
[脂環式エポキシ基含有重合体の製造]
本発明の脂環式エポキシ基含有重合体は、例えば、前記式(3)で表される構成単位及び下記式(4)で表される構成単位から選ばれる少なくとも1種の構成単位を少なくとも有する重合体(以下、「原料重合体」あるいは「環状オレフィン構造を有する構成単位を有する重合体」と称する場合がある)を、エポキシ化剤を用いてエポキシ化することにより製造できる。式(3)、式(4)で表される構成単位は、エポキシ化により、それぞれ、式(1)、式(2)で表される構成単位に変換される。
・・・(省略)・・・
【0066】
[原料重合体の製造]
前記式(3)で表される構成単位及び下記式(4)で表される構成単位から選ばれる少なくとも1種の構成単位を少なくとも有する重合体(原料重合体;環状オレフィン構造を有する構成単位を有する重合体)は、例えば、前記式(5)で表される環状オレフィン構造を有するオレフィン系炭化水素を少なくとも含むモノマーを、カチオン重合触媒の存在下で重合することにより製造できる。
・・・(省略)・・・
【0082】
[溶媒]
前記環状オレフィン構造を有する構成単位を有する重合体(原料重合体)の製造においては、必要に応じて、溶媒を使用することもできる。
・・・(省略)・・・
【0083】
上記溶媒の使用量は、特に限定されないが、カチオン重合触媒及び生成する重合体の溶解度の観点で、前記環状オレフィン構造を有する構成単位を含む重合体を構成するモノマー成分全量100重量部に対し、10?2000重量部が好ましく、より好ましくは100?1500重量部である。
・・・(省略)・・・
【0089】
[硬化性樹脂組成物]
本発明の硬化性樹脂組成物は、前記本発明の脂環式エポキシ基含有重合体を少なくとも含む。脂環式エポキシ基含有重合体は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。本発明の硬化性樹脂組成物は、前記脂環式エポキシ基含有重合体を含むので、カチオン硬化性に優れ、硬化速度が速く、しかも、耐熱性、耐候性、透明性、柔軟性、耐薬品性、密着性等に優れた硬化物を得ることができる。また、本発明の硬化性樹脂組成物は、塗布性に優れ、均一な塗膜を形成できるとともに、硬化して得られる硬化物は剥離性(例えば、ナノインプリントに用いた場合のナノスタンパからの剥離性等)に優れる。前記硬化物は、さらに、硬化収縮が小さく、吸水性も小さいという特性も有する。
【0090】
本発明の硬化性樹脂組成物は、前記脂環式エポキシ基含有重合体とともに、他のカチオン硬化性化合物を含んでいてもよい。他のカチオン硬化性化合物としては、例えば、脂環式エポキシ化合物[例えば、3,4-エポキシシクロへキシルメチル(3,4-エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル化学工業社製、「セロキサイド2021P」)、(3,3’,4,4’-ジエポキシ)ビシクロヘキシル(ダイセル化学工業社製、「セロキサイド8000」)、1,2:8,9-ジエポキシリモネン(ダイセル化学工業社製、「セロキサイド3000」)など]、ビスフェノール型ジエポキシ化合物、脂肪族多価アルコールポリグリシジルエーテルなどのエポキシ化合物;オキセタン化合物(東亞合成社製の「アロンオキセタンOXT-121」等のアロンオキセタンシリーズなど);ビニルエーテル化合物などが挙げられる。
【0091】
本発明の硬化性樹脂組成物中の前記脂環式エポキシ基含有重合体の含有量は、用途によっても異なるが、カチオン硬化性化合物の全量、又はエポキシ化合物(エポキシ基を有する化合物)の全量に対して、例えば、5重量%以上、好ましくは10重量%以上、特に好ましくは20重量%以上である。
【0092】
また、本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化物の物性(光学物性、物理特性等)を損なわない範囲で、用途に応じて、硬化剤、硬化促進剤、カチオン硬化触媒(カチオン重合開始剤)、光増感剤、各種添加剤を含んでいてもよい。
・・・(省略)・・・
【0099】
カチオン硬化触媒としては、光カチオン重合開始剤、熱カチオン重合開始剤を使用することができる。これらのカチオン硬化触媒は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0100】
光カチオン重合開始剤として、例えば、トリアリルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリアリールスルホニウムヘキサフウルオロアンチモネート等のスルホニウム塩;ジアリールヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ヨードニウム[4-(4-メチルフェニル-2-メチルプロピル)フェニル]ヘキサフルオロホスフェート等のヨードニウム塩;テトラフルオロホスホニウムヘキサフウルオロホスフェート等のホスホニウム塩;ピリジウム塩等が使用できる。
【0101】
熱カチオン重合開始剤として、例えば、アリールジアゾニウム塩、アリールヨードニウム塩、アリールスルホニウム塩、アレン-イオン錯体などが挙げられる。また、アルミニウムやチタンなどの金属とアセト酢酸若しくはジケトン類とのキレート化合物とトリフェニルシラノール等のシラノールとの化合物、又は、アルミニウムやチタンなどの金属とアセト酢酸若しくはジケトン類とのキレート化合物とビスフェノールS等のフェノール類との化合物などを用いることもできる。
・・・(省略)・・・
【0105】
本発明の硬化性樹脂組成物は、例えば、塗料、コーティング材料、インクジェット用インクなどのインキ、接着剤、レジスト、製版材、成形材料、カラーフィルター、フレキシブル基板、封止材料等の他、導波路(光導波路、混載基板など)、光ファイバー等の光学分野など、広範な分野に利用できる。また、透明封止剤、ナノインプリント技術に用いる樹脂組成物(ナノインプリント用硬化性樹脂組成物)として好ましく用いることができる。
【0106】
[硬化物]
本発明の硬化物は、本発明の硬化性樹脂組成物を基板又は基材に塗布し、あるいは所望の型に注入し、光を照射したり、加熱することにより得ることができる。例えば、上記本発明の硬化性樹脂組成物を用いて、インクジェット法、リソグラフィー法等の慣用の方法により所望の画像や形状を形成後、露光することにより製造することができる。
・・・(省略)・・・
【0110】
本発明の硬化物は透明性、耐熱性、柔軟性、熱処理後の屈曲性(柔軟性)等に優れる。また、硬化収縮が小さく、吸水性も小さい。そのため、導波路(光導波路、電気光混載配線基板など)、光ファイバー、太陽電池用基材フィルム及び保護フィルム、フレキシブルディスプレイ用基材フィルム及び保護フィルム、有機EL用基材フィルム及び保護フィルム、透明封止材、接着剤、インクジェット用インク、カラーフィルター、ナノインプリント、フレキシブル基板などの分野、特にフレキシブル光導波路、光ファイバー、透明封止剤、ナノインプリントの分野で極めて有用である。」

(3) 「【実施例】
【0112】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0113】
合成例1(4-ビニルシクロヘキセン重合体の合成)
1Lの3口フラスコに、エチルクロリド200mLを入れ、ジクロロメタン350mLに溶解させ、室温にした後、2.5gのAlBr_(3)及び4-ビニルシクロヘキセン200gを添加した。AlBr_(3)が完全溶解した後、反応温度-50℃で7時間重合を行った。一連の操作は窒素雰囲気下で実施した。反応終了後、反応混合液をメタノール中に投入し、ポリマー(固体)を得た。
得られた固体の分子量をGPC(東ソー製、TSKguardcolumn HXL-L、TSKgel G4000HXL,G3000HXL、G20000HL)で測定すると、数平均分子量(Mw)は9,000(ポリスチレン換算)であり、[重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)](分子量分布)は1.3であった。
また、得られた重合体の^(13)C-NMRスペクトルにおいて、下記式(9)で表される構成単位(1,2-ユニット;前記式(3)で表される構成単位に相当する)に加え、下記式(10)で表される構成単位(1,3-ユニット;前記式(4)で表される構成単位に相当する)が存在することを確認した。
・・・(省略)・・・
【0115】
【化9】

【0116】
合成例2(4-ビニルシクロヘキセン重合体のエポキシ化物の合成)
コンデンサー、撹拌機、還流冷却器、窒素導入管、滴下ロートを備えた反応器に、合成例1の方法で得られた重合体の酢酸エチル溶液100g(固形分45重量%)を仕込んだ。過酢酸の酢酸エチル溶液(過酢酸濃度30重量%)147gを滴下ロートに仕込み、反応系内の温度を35℃に保ちながら、1時間かけて反応器内に滴下した。滴下終了後、系内を40℃に保ち5時間熟成した。得られた反応粗液を3重量%水酸化ナトリウム水溶液150mLで中和洗浄し、さらに、210mLの蒸留水にて洗浄した。この時、中和洗浄及び水洗温度は40?50℃の範囲で行った。
水洗処理を施した反応粗液を、140?150℃、5mmHg以下の減圧下にて脱低沸を行い、エポキシ当量114の脂環式エポキシ基含有重合体(A-1)を得た。得られた脂環式エポキシ基含有重合体のゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)分析を行った。GPC分析は、島津製作所の「CR-4A」を用いて測定した。GPC分析の結果、数平均分子量(Mn)は7,500(ポリスチレン換算)、[重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)](分子量分布)は1.4であった。
また、得られた脂環式エポキシ基含有重合体の^(13)C-NMRスペクトルにおいて、下記式(11)で表される構成単位(1,2-ユニット;前記式(1)で表される構成単位に相当)に加え、下記式(12)で表される構成単位(1,3-ユニット;前記式(2)で表される構成単位に相当)が存在することを確認した。得られた脂環式エポキシ基含有重合体の^(1)H-NMRスペクトル、^(13)C-NMRスペクトル、FT-IRの結果を以下に示す。
^( 1)H-NMRスペクトルにおいて、ビニル基特有のシグナル(δ:5.5?5.7ppm)[前記式(9)、(10)におけるe、f、m、nに対応]が消失し、エポキシ基特有のシグナル(δ:2.6ppm)[式(11)、(12)におけるq、r、s、tに対応]が現れていた。また、^(13)C-NMRスペクトルにおいて、ビニル基特有のシグナル(δ:124?127ppm)が消失し、エポキシ基特有のシグナル(δ:46.55ppm)が現れていた。FT-IRにおいて、ビニル基の吸収(1641、912cm^(-1))が消失し、エポキシ基の吸収(869cm^(-1))が現れていた。他の吸収位置に変化は見られなかった。
【0117】
【化10】

【0118】
合成例3(4-ビニルシクロヘキセン重合体のエポキシ化物の合成)
過酢酸の酢酸エチル溶液(過酢酸濃度30重量%)の使用量を73gとしたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、エポキシ当量245のエポキシ基含有重合体(A-2)を得た。
【0119】
合成例4(4-ビニルシクロヘキセン-ビニルシクロヘキサン共重合体の合成)
4-ビニルシクロヘキセン200gの代わりに、4-ビニルシクロヘキセン99g及び4-ビニルヘキサンを101g使用した以外は合成例1と同様の方法にて反応を行った。
得られた固体(ポリマー)の分子量をGPC(東ソー製、TSKguardcolumn HXL-L、TSKgel G4000HXL,G3000HXL、G20000HL)で測定すると、数平均分子量(Mw)は9,000(ポリスチレン換算)であり、[重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)](分子量分布)は1.4であった。
【0120】
合成例5(4-ビニルシクロヘキセン-ビニルシクロヘキサン共重合体のエポキシ化物の合成)
コンデンサー、撹拌機、還流冷却器、窒素導入管、滴下ロートを備えた反応器に、合成例4の方法で得られた重合体の酢酸エチル溶液100g(固形分45重量%)を仕込んだ。過酢酸の酢酸エチル溶液(過酢酸濃度30重量%)70gを滴下ロートに仕込み、反応系内の温度を35℃に保ちながら、1時間かけて反応器内に滴下した。滴下終了後、系内を40℃に保ち5時間熟成した。得られた反応粗液を3重量%水酸化ナトリウム水溶液150mLで中和洗浄し、さらに、210mLの蒸留水にて洗浄した。この時、中和洗浄及び水洗温度は40?50℃の範囲で行った。
水洗処理を施した反応粗液を、140?150℃、5mmHg以下の減圧下にて脱低沸を行い、エポキシ当量230の脂環式エポキシ基含有重合体(A-3)を得た。得られた脂環式エポキシ基含有重合体のゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)分析を行った。GPC分析は、島津製作所の「CR-4A」を用いて測定した。GPC分析の結果、数平均分子量(Mn)は7,500(ポリスチレン換算)、[重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)](分子量分布)は1.48であった。
【0121】
合成例6(ポリグリシジルメタクリレートの合成)
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えたセパラブルフラスコに、メトキシプロパノール(ダイセル化学工業社製、商品名「MMPG」)を75g導入し、90℃に昇温後、グリシジルメタクリレート(GMA)50gと2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(日本ヒドラジン工業社製、商品名「ABN-E」)5gとメトキシプロパノール(ダイセル化学工業社製、商品名「MMPG」)50gを共に3時間かけて滴下した。滴下後4時間熟成した後、水中に入れ樹脂を析出させ、エポキシ当量は150のグリシジルメタクリレート重合体[エポキシ基含有重合体(A-4)]を得た。得られたエポキシ基含有重合体のゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)分析を行った結果、数平均分子量(Mn)は4,500(ポリスチレン換算)、[重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)](分子量分布)は2.1であった。
【0122】
合成例7(ポリ3,4-エポキシシクロへキシルメチルメタクリレートの合成)
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えたセパラブルフラスコに、メトキシプロパノール(ダイセル化学工業社製、「MMPG」)を75g導入し、90℃に昇温後、3,4-エポキシシクロへキシルメチルメタクリレート(ダイセル化学工業社製、商品名「サイクロマーM100」)50gと2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(日本ヒドラジン工業社製、商品名「ABN-E」)5gとメトキシプロパノール(ダイセル化学工業社製、「MMPG」)50gを共に3時間かけて滴下した。滴下後4時間熟成した後、水中に入れ樹脂を析出させ、エポキシ当量200のポリ3,4-エポキシシクロへキシルメチルメタクリレート[脂環式エポキシ基含有重合体(A-5)]を得た。得られた脂環式エポキシ基含有重合体のゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)分析を行った結果、数平均分子量(Mn)は4,200(ポリスチレン換算)、[重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)](分子量分布)は2.2であった。
【0123】
実施例1?3,7、比較例1?3
表1に示される各組成(数字は重量部である)の硬化性樹脂組成物(光カチオン重合性組成物)を調製した。
厚み1mm又は200μmのテフロン(登録商標)板をサンプル形状(76mm×26mmを5mm幅でコの字型)に切り抜き、その片面をテフロン(登録商標)コートしたPETフィルム、続いてガラス板で上下に挟んで積層体(ガラス板/PET/テフロン(登録商標)/PET/ガラス板)を形成した。上記調製した硬化性樹脂組成物を、サンプル形状の切り抜き部分に注射器で注入し、次いでコンベアー式紫外線照射装置を用いて下記条件下で紫外線(UV)を照射することにより、用いたテフロン(登録商標)板に対応する厚み200μm及び1mmの硬化物を形成した。
UV硬化条件:
UV照射装置:ウシオ電機製の紫外線照射装置「UVC-02516S1AA02」メタルハライドランプ
照射条件:160W
コンベアー速度:5m/min
照射回数:1回
【0124】
実施例8?10
表1に示される各組成(数字は重量部である)の硬化性樹脂組成物(光カチオン重合性組成物)を調製した。調製した液(硬化性樹脂組成物)を、表面をフッ素処理(商品名「オプツール」、ダイキン工業社製)したガラス板上にスピンコート(100rpm×1分)し、100℃にて5分間プレベイクして溶剤を揮発させたサンプルを作製した。次いで、このサンプルに、コンベアー式紫外線照射装置を用いて上記と同様のUV硬化条件下で紫外線(UV)を照射することにより、硬化物を得た。硬化物の厚みは約500μmであった。
【0125】
各硬化性樹脂組成物の硬化速度、硬化収縮、及び得られた硬化物の吸水性(吸水率)、耐熱性を下記の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0126】
(硬化速度)
硬化性樹脂組成物を上記コンベアー式紫外線照射装置にて硬化させた際の硬化性について下記の基準で評価した。
○:硬化物を得ることができた。
△:半硬化状態で表面のべとつきが観察された。
×:増粘状態で、固化していなかった。
【0127】
(硬化収縮)
35mm×10mm×膜厚50μmのポリイミドフイルム上に、上記各硬化性樹脂組成物を厚み20μm(溶媒を含む組成物については乾燥後の厚み)で塗布し、上記と同様のコンベアー式紫外線照射装置を用いて硬化させた後、フイルムの反りの高さを測定し、下記の基準で評価した。
○:ほとんど反りが観察されなかった。(反り高さ:2mm未満)
△:反りが観察された。(反り高さ:2mm以上、10mm未満)
×:大きな反りが観察された。(反り高さ:10mm以上)
【0128】
(吸水率(吸水性))
上記実施例、比較例で得られた1mm厚の硬化サンプルを、沸騰水に1時間浸漬し、その後水分をふき取り、重量差から吸水率を求め、下記の基準で吸水性を評価した。
○:吸水率が0.5重量%未満であった。
△:吸水率が0.5重量%以上、1重量%以下であった。
×:吸水性が1重量%以上あった。
【0129】
(耐熱性)
上記実施例、比較例で得られた200μm厚の硬化サンプルを、200℃のオーブンに2時間入れ、着色性を観察し、以下の基準で耐熱性を評価した。
○:無色透明であった。
△:若干黄変が観察された。
×:全体的に茶褐色に着色した。
【0130】
実施例4?6
表1に示される各組成(数字は重量部である)の硬化性樹脂組成物(熱カチオン重合性組成物)を調製した。
厚み1mm又は200μmのテフロン(登録商標)板をサンプル形状(76mm×26mmを5mm幅でコの字型)に切り抜き、離型剤処理したガラス板で上下に挟んで積層体(ガラス板/テフロン(登録商標)/ガラス板)を形成した。上記調製した硬化性樹脂組成物を、サンプル形状の切り抜き部分に注射器で注入し、85℃のオーブンで1時間、次いで150℃のオーブンで2時間かけて硬化させ、用いたテフロン(登録商標)板に対応する厚み200μm及び1mmの硬化物を形成した。
【0131】
各硬化性樹脂組成物の硬化速度、硬化収縮、及び得られた硬化物の吸水性(吸水率)、耐熱性を前記と同様の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0132】
【表1】

【0133】
表1の符号の意義は下記の通りである。
(A)エポキシ基含有ポリマー
(A-1):合成例2で得られた脂環式エポキシ基含有重合体
(A-2):合成例3で得られた脂環式エポキシ基含有重合体
(A-3):合成例5で得られた脂環式エポキシ基含有重合体
(A-4):合成例6で得られたエポキシ基含有重合体
(A-5):合成例7で得られた脂環式エポキシ基含有重合体
(B)硬化性モノマー
(B-1):ダイセル化学工業社製、商品名「セロキサイド2021P」[3,4-エポキシシクロへキシルメチル(3,4-エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート]
(B-1):ダイセル化学工業社製、商品名「セロキサイド8000」[(3,3’,4,4’-ジエポキシ)ビシクロヘキシル]
(B-3):東亞合成社製、商品名「アロンオキセタンOXT-121」
(C)カチオン系酸発生剤
(C-1):サンアプロ社製、商品名「CPI100P」(光酸発生剤)
(C-2):三新化学工業社製、商品名「サンエイドSI-100L」(熱酸発生剤)
(D)増感剤
(D-1):川崎化成工業社製、商品名「Anthracure(登録商標) UVS-1331」
(E)溶媒
(E-1):ダイセル化学工業社製、商品名「MMPGAC」(1-メトキシ-2-プロピルアセテート)」

7 甲1発明
甲第1号証の段落【0133】に記載された「(B-1):ダイセル化学工業社製、商品名「セロキサイド8000」[(3,3’,4,4’-ジエポキシ)ビシクロヘキシル]」は、「(B-2):ダイセル化学工業社製、商品名「セロキサイド8000」[(3,3’,4,4’-ジエポキシ)ビシクロヘキシル]」の誤記と認める。また、甲第1号証の段落【0110】からみて、甲第1号証の「硬化性樹脂組成物」は、「透明封止剤」に使用できるものである。そうしてみると、甲第1号証には、実施例7として、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。

「 以下に示される各組成(数字は重量部である)の硬化性樹脂組成物(光カチオン重合性組成物)を使用した透明封止剤。
ポリマーとしての、4-ビニルシクロヘキセン及び4-ビニルヘキサンの共重合体のエポキシ化物が50重量部、
硬化性モノマーとしての、ダイセル化学工業社製、商品名「セロキサイド8000」[(3,3’,4,4’-ジエポキシ)ビシクロヘキシル]が30重量部、東亞合成社製、商品名「アロンオキセタンOXT-121」が20重量部、
開始剤としての、サンアプロ社製、商品名「CPI100P」(光酸発生剤)3重量部、
増感剤としての、川崎化成工業社製、商品名「Anthracure(登録商標) UVS-1331」が0.5重量部、
を調製してなり、透明封止剤として使用することができる、硬化性樹脂組成物。」

8 甲第3号証の記載事項
甲第3号証(特開2011-1421号公報)には、以下の記載がある。

(1) 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、それを用いた感光性インクジェットインク、感光性接着剤、感光性コーティング剤、及び半導体封止材に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線等のエネルギー線を用いた光硬化システムは、生産性の向上や近年の環境問題を解決する上で有力な方法である。現在の光硬化システムの主流は、(メタ)アクリレート系材料を使用したラジカル硬化材料である。しかし、酸素による硬化阻害を受けやすく、また硬化収縮が大きいため基材への密着性が低いという課題を有する。
【0003】
そこで、近年、これらの課題を解決するため、カチオン硬化材料に注目が集まっている。カチオン硬化材料は、(a)酸素による硬化阻害を受け難いため、微小液滴及び薄膜硬化性に優れること、(b)硬化収縮が小さく、幅広い基材に対し良好な密着性を有すること、(c)活性種の寿命が長く光照射後も硬化が徐々に進むことから(暗反応)、残モノマー量を低く抑えることが可能であること等、ラジカル硬化材料に比べ優れた特長を有する。そのため、カチオン硬化材料を、塗料、接着剤、ディスプレイ用シール剤、印刷インキ、立体造形、シリコーン系剥離紙、フォトレジスト、電子部品用封止剤等へ応用することが検討されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
光カチオン硬化材料では主としてエポキシ化合物が用いられる。中でも比較的反応性に富む脂環式エポキシ化合物が多用される(特許文献1参照)。その他にも、エポキシ化合物を用いた光カチオン硬化材料について種々の試みがなされている。
・・・(省略)・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、一般的なカチオン硬化材料は、ラジカル硬化材料と比較して反応速度が遅い。そこで、反応速度を速める工夫がなされているが、保存時の安定性が低下してしまうという問題がある。保存時の安定性が低く粘度増加が大きい材料は、特にインクジェット用インクとして用いた場合に、安定した吐出性能を得ることが困難になる。
【0011】
特許文献1に開示された技術では、大気中においても酸素による硬化阻害を生じないことから、ラジカル硬化材料に比べて優れた表面硬化性を有するが、内部の反応性が不十分であり、十分な機械特性が得られないという問題がある。
・・・(省略)・・・
【0016】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、速い硬化速度と高い保存安定性を両立し、さらにその硬化物が高い硬度を有する、感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
・・・(省略)・・・
【発明の効果】
【0019】
本発明は、速い硬化速度と高い保存安定性を両立し、さらにその硬化物が高い硬度を有する感光性樹脂組成物を提供することができる。」

(2) 「【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。そして、本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0022】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、1分子中に2つ以上の水酸基を有し、かつ分子量1000以上の樹枝状化合物(a)1?40質量%と、反応性有機ケイ素化合物(b)5?90質量%と、を含むものである。
【0023】
1分子中に2つ以上の水酸基を有し、かつ分子量1000以上の樹枝状化合物(a)について説明する。
【0024】
ここで、「樹枝状化合物」とは、分子鎖が幾多に分岐した形状を有する化合物をいう。かかる構造により、良好な性能特性を有し、かつ、溶媒なしで又は非常に少量の溶媒を添加するだけで使用可能となるほど粘度の低い組成物を得ることができる。かかる樹脂状化合物としては、例えば、デンドリマーが挙げられる。
【0025】
樹枝状化合物(a)の構造としては、1又はそれ以上の反応基(A)を有する開始剤が樹枝状化合物(a)の中央に位置し、2以上の反応基(A)と反応基(B)を有する連鎖延長剤の反応基(B)が、前記開始剤の反応基(A)と結合し、前記連鎖延長剤の反応基(A)が、別なる連鎖延長剤の反応基(B)と結合している、樹枝状構造が挙げられる。かかる構造を有する樹枝状化合物(a)の樹枝状構造は伸長の可能性を有する。連鎖延長剤の反応基(A)と、別なる連鎖延長剤の反応基(B)が次々と反応することで連鎖が起こり、上記樹枝状構造をさらに枝分かれさせることができる。
【0026】
このような樹枝状化合物(a)としては、例えば、図1の構造を有するデンドリマーが挙げられる。図1は、樹枝状化合物(a)が生成する反応の一例を示した模式図である。図1は、4つの反応基(A)を有する開始剤分子(I)と、2つの反応基(A)と1つの反応基(B)を有する連鎖延長剤(II)とを反応させて2段階デンドリマーを得る反応を示している。まず、開始剤分子(I)の反応基(A)と、連鎖延長剤(II)の反応基(B)とが反応する。それによって第1段階デンドリマー(「第1世代」という場合もある。)が形成される。続いて、第1段階デンドリマーの末端の反応基(A)と、さらに別の連鎖延長剤(III)の反応基(B)が反応する。それによって第2段階デンドリマー(「第2世代」という場合もある。)が形成される。この連鎖反応を繰り返し行うことで、より樹枝化(枝分かれ)が進んだデンドリマーとすることができる。
【0027】
ここで、反応基(A)は、反応基(B)と反応することにより結合を生成するものであればよく、その種類は限定されない。反応基(A)としては、例えば、水酸基が挙げられる。反応基(B)は、反応基(A)と反応することにより結合を生成するものであればよく、その種類は限定されない。例えば、反応基(A)が水酸基である場合、反応基(B)としては、反応基(A)と反応してエステル結合を形成できるものが挙げられる。具体的には、反応基(A)が水酸基である場合、反応基(B)としては、例えば、カルボキシル基が挙げられる。この場合、水酸基とカルボキシル基が反応してエステル結合を形成できる。
・・・(省略)・・・
【0047】
樹枝状化合物(a)の生成プロセスとしては、開始剤を、0?300℃の温度、例えば50?280℃、好ましくは100?250℃の温度で、連鎖延長剤と反応させる方法が挙げられる。その後、得られた反応生成物を、連鎖停止剤と反応させることもできる。
・・・(省略)・・・
【0058】
樹枝状化合物(a)は、重量平均分子量が1000以上である。1000以上の分子量とすることにより、硬化物の表面タック性の低減と硬度の向上を両立させることができる。重量平均分子量が大きい場合、各種物性は向上する傾向にあり、重量平均分子量が小さくすると他の成分との相溶性が良好となり、粘性が低下する傾向にある。かかる観点から、所望する用途や特性に応じて樹枝状化合物(a)の重量平均分子量を制御することができる。移動相としてテトラヒドロフランを用い、標準物質としてポリスチレンを用いるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定できる。
・・・(省略)・・・
【0075】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、カチオン重合性化合物をさらに含むことが好ましい。これにより、水酸基と活性種が連鎖移動反応を起こし、その反応の結果生成する遊離の酸がモノマー転化率を向上できること、及び反応性有機ケイ素化合物の加水分解反応を促進することができる。カチオン重合性化合物としては、例えば、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物等が挙げられる。
【0076】
カチオン重合性化合物としては、分子中にエポキシ基を1個以上有するエポキシ化合物(c)であることが好ましい。エポキシ化合物(c)を含むことで、硬化物の硬度と各基材に対する密着性を向上させることができるため、好ましい。エポキシ化合物(c)としては、例えば、グリシジルエーテル型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物等を挙げることができる。
・・・(省略)・・・
【0078】
脂環エポキシ化合物の具体例としては、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサン-メタ-ジオキサン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、4-ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシル-3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールジ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、プロピレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ-2-エチルヘキシル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジ(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)等が挙げられる。
【0079】
2官能脂環式エポキシ化合物としては、「セロキサイド2021」、「セロキサイド2080」、「セロキサイド3000」(商品名、ダイセル化学工業社製)、「UVR-6110」、「UVR-6105」、「UVR-6128」、「ERLX-4360」(商品名、ダウ・ケミカル日本社製)等を用いることができる。
【0080】
3官能以上の多官能脂環式エポキシ化合物としては「エポリードGT300」、「エポリードGT400」(商品名、ダイセル化学工業社製)等を用いることができる。
【0081】
これらのうち、カチオン重合反応性に優れるため、脂環式エポキシ化合物が好ましい。これらエポキシ基を有する化合物は、1種単独あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0082】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(d)及び/又はエネルギー線感受性ラジカル重合開始剤(e)をさらに含むことが好ましい。
【0083】
エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(d)とは、エネルギー線照射によりカチオン重合を開始させる物質を発生させることが可能な化合物をいう。好ましいものとしては照射によりルイス酸を発生させるオニウム塩が挙げられる。
【0084】
このようなオニウム塩としては、ルイス酸のジアゾニウム塩、ルイス酸のヨードニウム塩、ルイス酸のスルホニウム塩等が挙げられ、これらはカチオン部分がそれぞれ芳香族ジアゾニウム、芳香族ヨードニウム、芳香族スルホニウムであり、アニオン部分がBF_(4)^(-)、PF_(6)^(-)、SbF_(6)^(-)、[BX_(4)]^(-)(ここで、Xは少なくとも2つ以上のフッ素又はトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基)等により構成されたオニウム塩が挙げられる。
【0085】
具体的には、四フッ化ホウ素のフェニルジアゾニウム塩、六フッ化リンのジフェニルヨードニウム塩、六フッ化アンチモンのジフェニルヨードニウム塩、六フッ化ヒ素のトリ-4-メチルフェニルスルホニウム塩、四フッ化アンチモンのトリ-4-メチルフェニルスルホニウム塩、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素のジフェニルヨードニウム塩、アセチルアセトンアルミニウム塩とオルトニトロベンジルシリルエーテル混合体、フェニルチオピリジウム塩、六フッ化リンアレン-鉄錯体等が挙げられる。
【0086】
また、市販品として、「CD-1012」(商品名、SARTOMER社製)、「PCI-019、PCI-021」(商品名、日本化薬社製)、「オプトマーSP-150」、「オプトマーSP-170」(商品名、旭電化社製)、「UVI-6990」(商品名、ダウ・ケミカル社製)、「CPI-100P」、「CPI-100A」(商品名、サンアプロ社製)、「TEPBI-S」(商品名、日本触媒社製)、「RHODORSILPHOTOINITIATOR2074」(商品名、Rhodia社製)等を用いることができる。エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(d)は、上述したものを単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
・・・(省略)・・・
【0103】
感光性樹脂組成物における、カチオン重合性化合物の含有量は、好ましくは30?90質量%であり、より好ましくは50?70質量%である。30質量%以上とすることにより、硬化物の硬度が良好となり、硬化物の機械特性を充分なものにできる。また、90質量%以下とすることにより、樹枝状化合物(a)の含有量を適量にできるためエポキシ基の転化率向上効果に優れ、未反応のエポキシ基の残留を低減できる。
【0104】
感光性樹脂組成物におけるエネルギー線感受性カチオン重合開始剤(d)及びエネルギー線感受性ラジカル重合開始剤(e)の含有量は、合計して0.1?10質量%が好ましく、より好ましくは0.2?8質量%である。0.1質量%以上とすることにより、エネルギー線照射により発生する活性物質の量が十分な量となり、十分な硬化性を得ることができる。また、10質量%以下とすることにより、経済的に望ましく、光線透過率が低下せず膜底部の硬化も十分に行うことができるため好ましい。
・・・(省略)・・・
【0115】
さらに、本実施形態の感光性樹脂組成物を含む半導体封止材とすることができる。本実施形態における半導体封止材は、OLEDディスプレイ素子等の封止材として用いることができる。図3は、本実施形態の半導体封止材を用いたOLEDディスプレイ素子の一態様の断面図である。OLEDディスプレイ素子Aは、基材1上に正孔注入電極2、正孔輸送層3、発光層4及び電子注入電極5を順次形成した後、本実施形態の半導体封止材6により封止し、その後基材7を張り合わせる方法で形成することができる。このような固体膜による全面封止は、基材1及び7としてフレキシブルな材質のものを用いる場合、特に有効な方法である。
【0116】
基材1上に、正孔注入電極2、正孔輸送層3、発光層4、電子注入電極5を順次積層した多層構造を形成する方法としては、公知の方法である抵抗加熱蒸着法、イオンビームスパッタ法、常圧で形成できるインクジェット法、印刷法等を用いることができる。次いで、本実施形態の半導体封止材を多層構造上に塗布する方法としては、半導体封止材を均一に塗布できる方法であれば特に制約はないが、例えば、スクリーン印刷やフレキソ印刷等の印刷法によるものや、ディスペンサーを用いて塗布する方法等が挙げられる。
【0117】
本実施形態の半導体封止材6に基材7を張り合わせた後、基材7側又は基材1側から光等のエネルギー線を照射することにより、半導体封止材6を硬化させることができる。エネルギー線としては、半導体封止材6を硬化させるものであればよく、光や放射線等が挙げられる。また、ここで使用できる光源としては、所定の作業時間内で半導体封止材6を硬化させるものであれば特に制限はなく、例えば、紫外線や可視光線の波長の光を照射できるものを用いることができる。具体的には、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライド灯、無電極放電ランプ等が挙げられる。このように本実施形態の半導体封止材は、OLEDディスプレイ素子をはじめとする種々の半導体素子の封止に用いることができる。特に、本実施形態の半導体封止材は、硬化物とする際に常温で硬化物を作成できるため、従来の熱硬化性樹脂で見られる基材や素子の熱劣化や熱による変形を防ぐことができる。さらに、基材や素子に対する高い密着性を有するため、FPD等のような精密機器の半導体素子の封止に好ましく用いることができ、特にOLEDディスプレイ素子の封止により好ましく用いることができる。」

(3) 「【実施例】
【0118】
以下、本発明の実施形態の例を具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0119】
1.感光性樹脂組成物の作製
感光性樹脂組成物の作製は以下の方法で行った。
・・・(省略)・・・
【0121】
[実施例2]
1分子中に2つ以上の水酸基を有し、かつ分子量1000以上の樹枝状化合物(a)として、ポリエステルポリオールデンドリマー化合物「BOLTORN H2003」(商品名、ペルストルプアー・ベー社製)5質量%と、反応性有機ケイ素化合物(b)として、テトラエトキシシラン「TSL8124」(商品名、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)15質量%と、分子中にエポキシ基を1個以上有するエポキシ化合物(c)として、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート「セロキサイド2021P」(商品名、ダイセル化学工業株式会社製)60質量%と、3-エチル-3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン「OXT-221」(商品名、東亜合成株式会社製)15質量%と、エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(d)として、スルホニウム塩の含有量が50質量%の「CPI-100P」(商品名、サンアプロ株式会社製)5質量%と、を十分混合することにより感光性樹脂組成物を得た。
・・・(省略)・・・
【0124】
[実施例5]
1分子中に2つ以上の水酸基を有し、かつ分子量1000以上の樹枝状化合物(a)として、ポリエステルポリオールデンドリマー化合物「BOLTORN H2003」(商品名、ペルストルプアー・ベー社製)5質量%と、反応性有機ケイ素化合物(b)として、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン「A-186」(商品名、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)15質量%と、分子中にエポキシ基を1個以上有するエポキシ化合物(c)として、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート「セロキサイド2021P」(商品名、ダイセル化学工業株式会社製)60質量%と、3-エチル-3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン「OXT-221」(商品名、東亜合成株式会社製)15質量%と、エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(d)として、スルホニウム塩の含有量が50質量%の「CPI-100P」(商品名、サンアプロ株式会社製)5質量%と、を十分混合することにより感光性樹脂組成物を得た。
・・・(省略)・・・
【0134】
2.評価方法
感光性樹脂組成物の光硬化性及び硬化物の機械特性の評価は以下の方法で行った。
<硬化速度>
動的粘弾性装置(アントンパール社製)のガラス基板上に、各実施例及び各比較例の感光性樹脂組成物を厚さ100μmで塗布し、高圧水銀灯を備えた紫外線照射装置(浜松ホトニクス株式会社製)を用いて、光量10mW/cm^(2)となるように上記ガラス基板を露光しながら、硬化挙動を測定した。本測定において、最初の液体状態(G´(貯蔵弾性率)<G´´(損失弾性率);tanδ>1)から、ゲル化点(G´=G´´;tanδ=1)を迎え、固体状態(G´> G´´;tanδ<1)に変化する様子が、詳細に解析できる。硬化速度は露光開始からゲル化点を迎えるまでの時間で測定した。また、硬化時の環境は、温度:23℃、湿度:60%RHであった。
◎:ゲル化点に到達した時間が露光開始150秒以内
○:ゲル化点に到達した時間が露光開始150秒以上200秒未満
×:ゲル化点に到達した時間が露光開始200秒以上
【0135】
<保存安定性>
各実施例及び各比較例の感光性樹脂組成物を作成直後、及び60℃のオーブンに10日間静置後のそれぞれの状態について、回転式E形粘度計(東機産業株式会社製、「TV-22形」)を用いて25℃における粘度を測定した。そして、作成直後から10日静置後までにおける感光性樹脂組成物の粘度増加量を求め、以下の基準で評価した。
○:粘度増加量が1.0mPa・s未満
×:粘度増加量が1.0mPa・s以上
【0136】
<硬度>
ガラス基板上に、バーコーターを用いて、各実施例及び各比較例の感光性樹脂組成物を厚さ12μmで均一に塗布した。その後、高圧水銀灯を備えた紫外線照射装置(センエンジニアリング株式会社製)を用いて、積算光量40mJ/cm^(2)となるように上記ガラス基板を露光した。硬化時の環境は、温度:23℃、湿度:60%RHで行った。その後、室温23℃、湿度50質量%の雰囲気の下、一昼夜静置し、JIS 5600-5-4に準拠した方法にて鉛筆硬度測定を行った。
◎:2H以上
○:H以上2H未満
×:H未満
【0137】
3.評価結果
実施例及び比較例の評価結果を表1及び表2に示す。また、表1及び表2において略号で表わした感光性樹脂組成物中の成分を表3に示す。
【0138】
【表1】

・・・(省略)・・・
【0140】
【表3】

【0141】
表1及び表2に示すように、実施例1?8の感光性樹脂組成物は、硬化速度、保存安定性、及び硬度のいずれも優れていることが確認された。一方、比較例1?5の感光性樹脂組成物は、硬化速度、保存安定性、及び硬度の少なくともいずれかが不良であることが確認された。
以上より、本実施形態の感光性樹脂組成物は、優れた光硬化性(表面硬化性、内部硬化性)と高い保存安定性を有し、その硬化物は優れた機械特性を有し、さらに高い密着性と基材カールの抑制を両立した優れた膜物性を有することが示された。」

(4) 「【図1】



9 甲3発明
甲第3号証の段落【0121】及び段落【0138】【表1】には、実施例2として、「感光性樹脂組成物」が開示されている。また、甲第3号証の段落【0115】の記載からみて、「樹脂組成物」は、「OLEDディスプレイ素子等の封止材」に用いられるものであるといえる。
そうしてみると、甲第3号証には、次の発明(以下「甲3-1発明」という。)が記載されている。

「 1分子中に2つ以上の水酸基を有し、かつ分子量1000以上の樹枝状化合物(a)として、ポリエステルポリオールデンドリマー化合物「BOLTORN H2003」(商品名、ペルストルプアー・ベー社製)5質量%と、反応性有機ケイ素化合物(b)として、テトラエトキシシラン「TSL8124」(商品名、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)15質量%と、分子中にエポキシ基を1個以上有するエポキシ化合物(c)として、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート「セロキサイド2021P」(商品名、ダイセル化学工業株式会社製)60質量%と、3-エチル-3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン「OXT-221」(商品名、東亜合成株式会社製)15質量%と、エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(d)として、スルホニウム塩の含有量が50質量%の「CPI-100P」(商品名、サンアプロ株式会社製)5質量%と、を十分混合することにより得られる、
OLEDディスプレイ素子等の封止材に用いられる感光性樹脂組成物。」

同様に、甲第3号証に記載の実施例5から把握される発明を、「甲3-2発明」といい、「甲3-1発明」及び「甲3-2発明」を総称して、「甲3発明」という。

10 甲第4号証の記載事項
甲第4号証(特開2011-1422号公報)には、以下の記載がある。

(1) 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、それを用いた感光性インクジェットインク、感光性接着剤、感光性コーティング剤、及び半導体封止材に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線等のエネルギー線を用いた光硬化システムは、生産性の向上や近年の環境問題を解決する上で有力な方法である。現在の光硬化システムの主流は、(メタ)アクリレート系材料を使用したラジカル硬化材料である。しかし、ラジカル硬化材料は、酸素による硬化阻害を受けやすく、また、硬化収縮が大きいため基材への密着性が低いという課題を有する。
【0003】
そこで、近年、これらの課題を解決するため、カチオン硬化材料に注目が集まっている。カチオン硬化材料は、(a)酸素による硬化阻害を受け難いため、微小液滴及び薄膜硬化性に優れること、(b)硬化収縮が小さく、幅広い基材に対し良好な密着性を有すること、(c)活性種の寿命が長く光照射後も硬化が徐々に進むことから(暗反応)、残モノマー量を低く抑えることが可能であること等、ラジカル硬化材料に比べ優れた特長を有する。そのため、カチオン硬化材料を、塗料、接着剤、ディスプレイ用シール剤、印刷インキ、立体造形、シリコーン系剥離紙、フォトレジスト、電子部品用封止剤等へ応用することが検討されている(非特許文献1参照)。
・・・(省略)・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、一般的なカチオン硬化材料は、空気中の水分による反応阻害が起こりやすい。そのため、硬化時における雰囲気の湿度の影響を受けやすく、安定的な硬化性を得ることが困難である。光カチオン硬化材料としてエポキシ化合物を用いる場合、大気中においても酸素による硬化阻害を生じないことから、ラジカル硬化材料に比べて優れた表面硬化性を有するが、内部の反応性が不十分であり、十分な機械特性が得られないという問題がある。
・・・(省略)・・・
【0012】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、湿度による硬化阻害のない優れた硬化性を有し、その硬化物が強靭性と柔軟性に優れた膜物性を有する、感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
・・・(省略)・・・
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、湿度による硬化阻害のない優れた硬化性を有し、その硬化物が強靭性と柔軟性に優れた膜物性を有する、感光性樹脂組成物を提供することができる。」

(2) 「【発明を実施するための形態】
【0017】
・・・(省略)・・・
【0018】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、下記式(1)で表される、1分子中にオキセタニル基とビニルエーテル基をそれぞれ1つ以上有する化合物(a)を含むものである。
【0019】
【化6】

【0020】
(式中、R^(1)は炭素数1?5のアルキル基、炭素数5?10のシクロアルキル基、炭素数1?5のアルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、アリール基又はアラルキル基を表し、m^(1)は2?5の整数を表し、n^(1)は0?20の整数を表す。)
【0021】
本実施形態の感光性樹脂組成物が化合物(a)を含むことで、エポキシ化合物及びビニルエーテル化合物と、オキセタン化合物を共重合させることが可能となり、オキセタン化合物の単独重合体の副生を抑制することができる。その結果、湿度による硬化阻害がない優れた光硬化性(表面硬化性、内部硬化性)を有し、強靭性と柔軟性に優れた膜物性を有する硬化物とすることができる。硬化物の強靭性と柔軟性が優れることで、硬化物の屈曲性等についても優れたものにすることができる。
・・・(省略)・・・
【0044】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、さらにエポキシ化合物(b)を含むことが好ましい。本実施形態の感光性樹脂組成物が含む化合物(a)は、エポキシ化合物(b)と重合することができるため、エポキシ化合物としての反応性をより向上できる。さらに、化合物(a)とエポキシ化合物(b)の未反応成分として残留する不純物も発生しない。これにより、優れた強靭性と柔軟性を有する硬化物を得ることができる。
【0045】
分子中にエポキシ基を1個以上有するエポキシ化合物(b)としては、例えば、グリシジルエーテル型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物等が挙げられる。
・・・(省略)・・・
【0047】
脂環エポキシ化合物の具体例としては、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサン-メタ-ジオキサン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、4-ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシル-3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールジ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、プロピレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ-2-エチルヘキシル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジ(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)等が挙げられる。
【0048】
2官能脂環式エポキシ化合物としては、「セロキサイド2021P」、「セロキサイド2000」、「セロキサイド3000」(商品名、ダイセル化学工業社製)、「UVR-6110」、「UVR-6105」、「UVR-6128」、「ERLX-4360」(商品名、ダウ・ケミカル日本社製)等を用いることができる。
【0049】
3官能以上の多官能脂環式エポキシ化合物としては「エポリードGT300」、「エポリードGT400」(商品名、ダイセル化学工業社製)等を用いることができる。
【0050】
これらのうち、カチオン重合反応性に優れるため、脂環式エポキシ化合物が好ましい。これらエポキシ基を有する化合物は、1種単独あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
・・・(省略)・・・
【0097】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、上記化合物(a)と、エポキシ樹脂(b)と、エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(c)と、を含むことが好ましい。
本実施形態におけるエネルギー線感受性カチオン重合開始剤(c)とは、エネルギー線照射によりカチオン重合を開始させる物質を発生させることが可能な化合物をいう。好ましいものとしては、照射によりルイス酸を発生させるオニウム塩が挙げられる。
【0098】
このようなオニウム塩としては、ルイス酸のジアゾニウム塩、ルイス酸のヨードニウム塩、ルイス酸のスルホニウム塩等が挙げられ、これらはカチオン部分がそれぞれ芳香族ジアゾニウム、芳香族ヨードニウム、芳香族スルホニウムであり、アニオン部分がBF_(4)^(-)、PF_(6)^(-)、SbF_(6)^(-)、[BX_(4)]^(-)(ここで、Xは少なくとも2つ以上のフッ素又はトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基を表す。)等により構成されたオニウム塩が挙げられる。
【0099】
具体的には、四フッ化ホウ素のフェニルジアゾニウム塩、六フッ化リンのジフェニルヨードニウム塩、六フッ化アンチモンのジフェニルヨードニウム塩、六フッ化ヒ素のトリ-4-メチルフェニルスルホニウム塩、四フッ化アンチモンのトリ-4-メチルフェニルスルホニウム塩、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素のジフェニルヨードニウム塩、アセチルアセトンアルミニウム塩とオルトニトロベンジルシリルエーテル混合体、フェニルチオピリジウム塩、六フッ化リンアレン-鉄錯体等が挙げられる。
【0100】
また、市販品として、「CD-1012」(商品名、SARTOMER社製)、「PCI-019」、「PCI-021」(商品名、日本化薬社製)、「オプトマーSP-150」、「オプトマーSP-170」(商品名、旭電化社製)、「UVI-6990」(商品名、ダウ・ケミカル社製)、「CPI-100P」、「CPI-100A」(商品名、サンアプロ社製)、「TEPBI-S」(商品名、日本触媒社製)、「RHODORSILPHOTOINITIATOR2074」(商品名、Rhodia社製)等を用いることができる。エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(c)は、上述したものを単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
・・・(省略)・・・
【0129】
さらに、本実施形態の感光性樹脂組成物を含む半導体封止材とすることができる。本実施形態における半導体封止材は、OLEDディスプレイ素子等の封止材として用いることができる。図1は、本実施形態の半導体封止材を用いたOLEDディスプレイ素子の一態様の断面図である。OLEDディスプレイ素子Aは、基材1上に、正孔注入電極2、正孔輸送層3、発光層4及び電子注入電極5を順次形成した後、本実施形態の半導体封止材6により封止し、その後基材7を張り合わせる方法で形成することができる。このような固体膜による全面封止は、基材1及び7としてフレキシブルな材質のものを用いる場合、特に有効な方法である。
【0130】
基材1上に、上記正孔注入電極2、正孔輸送層3、発光層4、電子注入電極5を順次積層した多層構造を形成する方法としては、公知の方法である抵抗加熱蒸着法、イオンビームスパッタ法、常圧で形成できるインクジェット法、印刷法等を用いることができる。次いで、本実施形態の半導体封止材を多層構造上に塗布する方法としては、半導体封止材を均一に塗布できる方法であれば特に制約はないが、例えば、スクリーン印刷やフレキソ印刷等の印刷法によるものや、ディスペンサーを用いて塗布する方法等が挙げられる。
【0131】
本実施形態の半導体封止材6に基材7を張り合わせた後、基材7側又は基材1側から光等のエネルギー線を照射することにより、半導体封止材6を硬化させることができる。エネルギー線としては、半導体封止材6を硬化させるものであればよく、光や放射線等が挙げられる。また、ここで使用できる光源としては、所定の作業時間内で半導体封止材6を硬化させるものであれば特に制限はなく、例えば、紫外線や可視光線の波長の光を照射できるものを用いることができる。具体的には、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライド灯、無電極放電ランプ等が挙げられる。このように本実施形態の半導体封止材は、OLEDディスプレイ素子をはじめとする種々の半導体素子の封止に用いることができる。特に、本実施形態の半導体封止材は、硬化物とする際に常温で硬化物を作製できるため、従来の熱硬化性樹脂で見られる基材や素子の熱劣化や熱による変形を防ぐことができる。さらに、基材や素子に対する高い密着性を有するため、FPD等のような精密機器の半導体素子の封止に好ましく用いることができ、特にOLEDディスプレイ素子の封止により好ましく用いることができる。」

(3) 「【実施例】
【0132】
以下、本発明の実施形態の例を具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0133】
1.感光性樹脂組成物の作製
感光性樹脂組成物の作製は以下の方法で行った。
・・・(省略)・・・
【0135】
[実施例2]
1分子中にオキセタニル基とビニルエーテル基をそれぞれ1つ以上有する化合物(a)として、3-エチル-3-[(ビニロキシ)メチル]オキセタン(丸善石油化学株式会社製)15質量%と、分子中にエポキシ基を1個以上有するエポキシ化合物(b)として、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート「セロキサイド2021P」(商品名、ダイセル化学工業株式会社製)60質量%と、3-エチル-3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン「OXT-221」(商品名、東亜合成株式会社製)15質量%と、エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(c)として、スルホニウム塩の含有量が50質量%の「CPI-100P」(商品名、サンアプロ株式会社製)5質量%と、多核フェノール化合物(d)としてフェノール3?5核体の含有率が50質量%のp-tert-ブチル-フェノールノボラック樹脂「PAPS-PTBPN」(商品名、旭有機材工業社製)5質量%と、を十分混合することにより感光性樹脂組成物を得た。
・・・(省略)・・・
【0145】
2.評価方法
感光性樹脂組成物の光硬化性及び硬化物の機械特性の評価は以下の方法で行った。
<モノマーの転化率>
表面処理を行った2軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム上に、バーコーターを用いて、各実施例及び各比較例の感光性樹脂組成物を厚さ12μmで均一に塗布した。その後、高圧水銀灯を備えた紫外線照射装置(センエンジニアリング株式会社製)を用いて、積算光量40mJ/cm^(2)となるように上記フィルムを露光した。光照射の反応条件は温度:23℃、湿度:60%RHで行った。
感光性樹脂組成物における転化率は、FT-IR(「Nicolet6700」、サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)により、エポキシ基、ビニル基、オキセタニル基の紫外線照射前後の各吸収を測定した。これらの官能基の減少率から平均の反応率を算出し、添加率とした。モノマー添加率60%以上を少なくとも実用に耐えうるレベルとして判断した。
◎:モノマー転化率90%以上
○:モノマー転化率75%以上、90%未満
△:モノマー転化率60%以上、75%未満
×:モノマー転化率60%未満
【0146】
<表面タック性>
ガラス基板上に、バーコーターを用いて、各実施例及び各比較例の感光性樹脂組成物を厚さ12μmで均一に塗布した。その後、高圧水銀灯を備えた紫外線照射装置(センエンジニアリング株式会社製)を用いて、積算光量40mJ/cm^(2)となるように上記ガラス基板を露光した。硬化時の環境は、温度:23℃、湿度:60%RHで行った。
○:露光終了30秒後に被膜を指で触って評価した。べたつきがなく、指がくっつかない。
×:露光終了30秒後に被膜を指で触って評価した。べたつきがあり、指がくっつく。
【0147】
<屈曲性>
表面処理を行った2軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム上に、バーコーターを用いて、各実施例及び各比較例の感光性樹脂組成物を厚さ12μmで均一に塗布した。その後、高圧水銀灯を備えた紫外線照射装置(センエンジニアリング株式会社製)を用いて、積算光量40mJ/cm^(2)となるように上記フィルムを露光して、硬化物を得た。屈曲性は10mmφの円筒形マンドレルテスター「BD2000」(コーテック株式会社製)を用いて硬化物の180度折り曲げ試験を行い、目視にて判断した。
○:変化がなかったもの
×:クラック等のひび割れが生じたもの
【0148】
3.評価結果
各実施例及び各比較例で用いた化合物名の一覧を表1に示し、各実施例及び各比較例の評価結果を表2及び表3に示す。
【0149】
【表1】

【0150】
【表2】

・・・(省略)・・・
【0152】
表2及び表3で示すように、実施例1?6の感光性樹脂組成物は、モノマー添加率、表面タック性試験、屈曲性試験のいずれにおいても優れていることが確認された。一方、比較例1?5の感光性樹脂組成物は、モノマー添加率、表面タック性試験、屈曲性試験の少なくともいずれかが不良であることが確認された。以上より、本実施形態の感光性樹脂組成物は、エネルギー線の照射により大気中における硬化性(表面タック性とモノマー転化率)及び屈曲性が優れていることが示された。」

11 甲4発明
甲第4号証の段落【0135】及び段落【0150】【表2】には、実施例2として、「感光性樹脂組成物」が開示されている。また、甲第4号証の段落【0129】の記載からみて、「樹脂組成物」は、「OLEDディスプレイ素子等の封止材」に用いられるものであるといえる。
そうしてみると、甲第4号証には、次の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されている。

「 1分子中にオキセタニル基とビニルエーテル基をそれぞれ1つ以上有する化合物(a)として、3-エチル-3-[(ビニロキシ)メチル]オキセタン(丸善石油化学株式会社製)15質量%と、分子中にエポキシ基を1個以上有するエポキシ化合物(b)として、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート「セロキサイド2021P」(商品名、ダイセル化学工業株式会社製)60質量%と、3-エチル-3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン「OXT-221」(商品名、東亜合成株式会社製)15質量%と、エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(c)として、スルホニウム塩の含有量が50質量%の「CPI-100P」(商品名、サンアプロ株式会社製)5質量%と、多核フェノール化合物(d)としてフェノール3?5核体の含有率が50質量%のp-tert-ブチル-フェノールノボラック樹脂「PAPS-PTBPN」(商品名、旭有機材工業社製)5質量%と、を十分混合することにより得られる、
OLEDディスプレイ素子等の封止材に用いられる感光性樹脂組成物。」

12 甲第5号証
甲第5号証(特開2014-148580号公報)には、以下の記載がある。

(1) 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線硬化型接着剤組成物及び接着方法に関する。詳細には、紫外線が到達しない遮光部を効果的に硬化させることが可能な、遮光部の硬化性に優れた紫外線硬化型接着剤組成物及びそれを用いた接着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ画面上のカバーレンズには、一般的に意匠性等を目的として、着色層からなる枠(以下、「ベゼル」という。)が設けられている。この着色層は、隠蔽性を確実にするために着色層を何層にも重ねているので、着色層を紫外線が透過することは困難である。そのため、紫外線が照射される部分を硬化させることは容易であるにも拘わらず、着色した遮光部分は硬化反応が十分進まないことが問題となっている。
【0003】
紫外線による硬化反応が不十分な遮光部は、物性不足、残存モノマーによる臭気や気泡の発生、経時による未反応成分のディスプレイ枠外への流出、と言った問題を生じるケースがある。また、経時によるディスプレイの表示不良や剥がれを生じる可能性も有している。
・・・(省略)・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記の事情に鑑みてなされたものであり、紫外線硬化型接着剤において、紫外線が到達しない遮光部を効果的に硬化させることが可能な紫外線硬化型接着剤組成物、及びそれを用いた塗布、硬化、貼り合わせ方法を提供することを目的とする。
・・・(省略)・・・
【発明の効果】
【0016】
本発明の接着剤組成物は、室温で硬化させることが可能であり、紫外線が到達しない遮光部に用いた場合でも、熱硬化性接着剤のように部材の変形や破損を生じさせることなく、部材の貼り合わせを行うことができる。遮光部を有する光学部材等を貼り合わせた場合でも、未反応成分がディスプレイ枠外に流出したり、気泡を生じたりすることがないので、表示不良や剥離を生じない高品質の画像表示装置を得ることができる。硬化物の透明性が高く、耐湿・耐水性、柔軟性に優れているので、各種透明部材又は非透明部材の接着剤としても有用である。」

(2) 「【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の接着剤組成物は、脂環式エポキシ基を有する化合物からなる(A)成分、グリシジルエーテル基を有する化合物からなる(B)成分、水酸基を有する化合物からなる(C)成分及び光カチオン重合開始剤からなる(D)成分を必須成分として含むものである。これらの(A)成分?(D)成分は、それぞれ1種又は2種以上を用いることができる。
【0019】
[脂環式エポキシ基を有する化合物(A)]
本発明の接着剤組成物において、(A)成分となる脂環式エポキシ基を有する化合物は、分子内に下記式(1)に示すエポキシシクロヘキサン基を有するエポキシ化合物である。エポキシシクロヘキサン基中のエポキシ基の位置は限定されず、任意の位置に設けることができる。
【0020】
【化1】

・・・(省略)・・・
【0024】
上記(A)成分の脂環式エポキシ基を有する化合物の中でも、エステル基がシクロヘキサン環に結合した形態の式(2-1)及び式(2-2)で表わされる化合物が好ましい。このような化合物は低粘度であり、塗布液を薄く塗布でき、微弱な紫外線しか届かない遮光部分に塗布した塗布液の硬化性に優れている。中でも、式(2-1)で表わされる化合物は、接着力及び耐久性に優れる点で特に好ましい。
・・・(省略)・・・
【0026】
[グリシジルエーテル基を有する化合物(B)]
本発明の接着剤組成物において、(B)成分となるグリシジルエーテル基を有する化合物は、(D)成分(光カチオン重合開始剤)によって開環し架橋構造を形成しうるグリシジルエーテル基を有し、(C)成分(水酸基を有する化合物)の水酸基とカチオン重合反応を行うことにより、硬化物の接着強度を向上させることができる。また、本発明の接着剤組成物に適度なオープンタイムを付与し、該組成物に紫外線を照射した後に、部材を貼り合わせることを可能とするうえで重要な成分である。
・・・(省略)・・・
【0034】
[水酸基を有する化合物(C)]
本発明の接着剤組成物において、(C)成分となる水酸基を含有する化合物は、後述する光カチオン重合開始剤によって開環し架橋構造を形成しうる前述のエポキシ化合物とのカチオン重合反応を進行させ、硬化収縮を低減させ、貯蔵弾性率を低下させる上で必須成分である。水酸基を有する化合物は、接着剤組成物の塗布作業性等の点より、常温で液状の化合物が望ましい。
・・・(省略)・・・
【0045】
[光カチオン重合開始剤(D)]
本発明における(D)成分;光カチオン重合開始剤としては、紫外線を受けてカチオンを発生する化合物であれば良い。光カチオン重合開始剤を配合することにより、常温でも硬化が可能となり、熱による部材の膨張又は収縮による歪を抑制でき、部材を良好に接着することができる。
・・・(省略)・・・
【0049】
[オキセタン化合物(E)]
本発明の接着剤組成物では、硬化速度をさらに向上させる目的で、(E)成分:オキセタン化合物を配合することができる。
・・・(省略)・・・
【0053】
接着剤組成物の粘度は、塗布工程で使用可能な塗布性、即ち薄膜で平滑性に優れた塗布面を得るために、25℃における粘度が150mPa・s以下であることが好ましい。
・・・(省略)・・・
【0067】
本発明の接着剤組成物を用いて遮光部を有する基材を接着する場合等には、前記ガラス板又はプラスチック基材の貼合面に、本発明の接着剤組成物からなる塗布液を塗布する塗布工程と、必要により乾燥(揮発分除去)させた後、前記塗布液に紫外線を照射することにより接着剤を半硬化させる硬化工程と、半硬化状態の接着層を介して遮光部を有する基材を積層する貼合工程と、を含む接着方法により積層体を製造することができる。接着剤の硬化を促進させるために、貼合工程の後に熱硬化工程を設けることが好ましい。塗布工程と硬化工程は、同時に実施しても良い。
【0068】
塗布工程における塗布方法は、例えば、ロールコート方式、スプレー方式、ディップ方式、刷毛塗り方式、インクジェット方式、静電塗装方式等の公知の方法を用いれば良い。塗布工程の雰囲気温度は15?30℃が好ましい。塗膜厚さは特に限定されないが、硬化後の膜厚が50?200μm程度となるよう塗布することが好ましい。
・・・(省略)・・・
【0073】
さらに、本発明の接着剤組成物は、その透明性、柔軟性及び耐水性を活かして、液晶表示装置の液晶パネルと保護部材の間に存在する空間に充填して貼り合わせる接着剤としても用いることができる。これに限らず、例えば、有機EL装置(有機EL素子の封止剤)、プラズマディスプレイ装置(透明プラスチックフィルムと導電性金属箔の接着)等、種々の画像表示装置にも適用することができる。」

(3) 「【実施例】
【0077】
以下、本発明を実施例および比較例を用いて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではない。また、文中の「部」、「%」は質量基準であるものとする。
【0078】
配合した接着剤成分の略称と詳細を以下に記す。
(A)成分:脂環式エポキシ基を有する化合物
・セロキサイド2021P((株)ダイセル製)
3´,4´-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(2個の脂環式エポキシ基を有する化合物)
(B)成分:グリシジルエーテル基を有する化合物
・EX-212:デナコールEX-212(ナガセケムテックス(株)製)
1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(2官能グリシジルエーテル)
・EX-821:デナコールEX-821(ナガセケムテックス(株)製)
ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(n=4)
・EX-920:デナコールEX-920(ナガセケムテックス(株)製)
ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(n=3)
(C)成分:水酸基含有化合物
・UH2000:ARUFON UH-2000(東亞合成(株)製)
無溶剤アクリルポリオール、ガラス転移点:-55℃ 水酸基価:20 Mw:11,000
・4002:ニッポラン4002(日本ポリウレタン工業(株)製)
ポリエステルジオール、水酸基価:107?117
・T5650J:デュラノールT5650J(旭化成(株)製)
ポリカーボネートジオール、水酸基価:130?150
・PEG600:ポリエチレングリコール600(純正化学(株)製)
ポリエーテルジオール、水酸基価:570?630
・Polyip(出光興産(株)製)
ポリイソプレンポリオール、水酸基価:47 Mn(ASTM D 2503):2,500
・R-45HT:Poly bd R-45HT(出光興産(株)製)
ポリブタジエンポリオール、水酸基価:47 Mn(ASTM D 2503):2,800
(D)成分:光カチオン重合開始剤
・#250:イルガキュア250(BASF社製)
(E)成分:オキセタン化合物
・XDO:アロンオキセタンOXT-121(東亞合成(株)製)
キシリレンビスオキセタン
【0079】
(実施例1?10、比較例1?6)
表1に示した各成分と量を配合し、接着剤組成物を調製した。部材は10cm×10cm、厚さ1mmのガラス板を使用した。
[工程1]:接着剤組成物を一方の部材に滴下し、もう一方の部材を貼り合わせた後、UV照射(Fusion製Dバルブ、積算光量:3,000mJ/cm^(2)、最大照度:600mW/cm^(2))をして硬化させ、接着剤を介して2枚の部材を貼り合わせた試験片を作製した。
・・・(省略)・・・
【0086】
上記の実施例1?22及び比較例1?14で得た試験片の評価は、以下の方法に従った。
【0087】
(評価方法)
(1)透過率:
分光光度計(U-3000、日立ハイテクノロジーズ社製)で400?800nmの範囲で、試験片の光線透過率を測定(ブランク:2mm厚ガラス板)。
(2)伸び:
300μm厚の接着剤組成物の硬化膜を作成し、引っ張り試験機(島津製作所EZ-S 500N)で5mm/minの速度で接着剤組成物を引っ張り、切断するまでの伸びを測定。
(3)貯蔵弾性率:
500μm厚の接着剤組成物の硬化膜を作成し、引っ張りモード、周波数1HZで粘弾性を測定(粘弾性測定装置:SIIナノテクノロジー社製DMS6100)。
(4)硬化収縮率:
電子比重計(アルファーミラージュ社製SD-200L)を用いて液体比重、固体比重を測定し次式により算出。
硬化収縮率%=[(硬化後の比重-硬化前の比重)/硬化後の比重]×100
(5)接着強度:
試験片の2枚のガラスを上下に引っ張り試験機で引き剥がし接着強度を測定。
(6)耐湿性:
80℃90%RHの環境に試験片を500h放置し、取り出し後に外観を観察。
(7)耐沸騰水性:
沸騰水に試験片を3h浸漬し、取り出し後に外観を観察。以下の評価基準にて評価。
○:変化無し、合格
△:僅かに白化、合格
×:白化、不合格
××:剥離、不合格
(8)貼り合わせ後の塗布液の濡れ拡がり:
塗布液にUV照射後、室温で規定の時間放置後、部材同士を貼り合わせ。貼り合わせに要した接着剤の濡れ広がりを目視で評価。
○:合格、スムーズに部材全体に濡れ拡がり
△:合格、時間は要するが部材全体に濡れ拡がり
△×:不合格、濡れ拡がるが不十分
×:不合格、ほぼ全く濡れ拡がらない
【0088】
以上の評価結果を表1、表2、表3に示す。
【0089】
【表1】



13 甲5発明
甲第5号証の段落【0079】及び段落【0089】【表1】には、実施例1として、「接着剤組成物」が開示されている。また、甲第5号証の段落【0073】の記載からみて、「接着剤組成物」は、「有機EL素子の封止剤」にも適用することができるものであるといえる。
そうしてみると、甲第5号証には、次の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されている。

「 脂環式エポキシ基を有する化合物として、セロキサイド2021P((株)ダイセル製)(3´,4´-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(2個の脂環式エポキシ基を有する化合物))10質量部、
グリシジルエーテル基を有する化合物として、デナコールEX-212(ナガセケムテックス(株)製)(1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(2官能グリシジルエーテル))25質量部、
オキセタン化合物として、アロンオキセタンOXT-121(東亞合成(株)製)(キシリレンビスオキセタン)10質量部、
水酸基含有化合物として、ARUFON UH-2000(東亞合成(株)製)(無溶剤アクリルポリオール、ガラス転移点:-55℃ 水酸基価:20 Mw:11,000)53質量部、
光カチオン重合開始剤として、イルガキュア250(BASF社製)2質量部
を配合して調製された、
有機EL素子の封止剤にも適用することができる接着剤組成物。」

14 甲第6号証
甲第6号証(特開2015-86369号公報)には、以下の記載がある。

(1) 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カチオン重合性組成物及び該カチオン重合性組成物に活性エネルギー線を照射することによって得られる硬化物に関する。該カチオン重合性組成物は、特に接着剤に有用である。
【背景技術】
【0002】
カチオン重合性組成物は、インキ、塗料、各種コーティング剤、接着剤、光学部材等の分野において用いられている。
・・・(省略)・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、硬化性及び接着性に優れるカチオン重合性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、カチオン重合性化合物の混合物(1)100質量部中、エポキシ化ポリオレフィン(1A)を1?50質量部、及び分子量500以下のカチオン重合性モノマー(1B)を10?99質量部含むことを特徴とするカチオン重合性組成物を提供することで、上記目的を達成したものである。
【0007】
また、本発明は、上記カチオン重合性組成物からなる接着剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のカチオン重合性組成物は、硬化性及び接着性に優れるため、接着剤用途として特に有用なものである。」

(2) 「【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のカチオン重合性組成物及び該カチオン重合性組成物からなる接着剤について詳細に説明する。
【0010】
本発明に使用する前記カチオン重合性化合物の混合物(1)において、該混合物を構成するカチオン重合性化合物は、光照射により活性化したエネルギー線感受性カチオン重合開始剤により高分子化または、架橋反応を起こす化合物であり、エポキシ化合物、オキセタン化合物、環状ラクトン化合物、環状アセタール化合物、環状チオエーテル化合物、スピロオルトエステル化合物、ビニルエーテル等を用いることができる。これらは1種単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
・・・(省略)・・・
【0012】
本発明のカチオン重合性組成物においては、上記エポキシ化合物として、少なくともエポキシ化ポリオレフィンを用いる。エポキシ化ポリオレフィンとは、ポリオレフィンをエポキシ基含有単量体で変性して、エポキシ基を導入したポリオレフィンである。エチレン又は炭素数3?20のα-オレフィン、エポキシ基含有単量体、及び必要に応じて他のモノマーを、共重合法及びグラフト法のいずれかにより共重合させることによって製造することができる。エチレン又は炭素数3?20のα-オレフィン、エポキシ基含有単量体及び他のモノマーは、それぞれ単独で重合させてもよく、他の単量体と複数で重合させてもよい。また、非共役のポリブタジエンの二重結合を、過酢酸法等によりエポキシ化して得ることもでき、分子内に水酸基を持つものを使用してもよい。また、水酸基をイソシアネートでウレタン化し、ここに1級水酸基含有エポキシ化合物を反応させてエポキシ基を導入することもできる。
・・・(省略)・・・
【0018】
上記エポキシ化ポリオレフィンとしては、下記一般式(I)で表されるような主鎖にエポキシ基を有し少なくとも1種以上の二重結合を有するものが、相溶性が高く、得られるカチオン重合性組成物の硬化物の耐熱性が高くなるので好ましい。
【0019】
【化1】

(式中、R^(1)及びR^(2)は、それぞれ独立して、炭素原子数1?5のアルキル基、炭素原子数1?5のアルコキシ基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、炭素原子数6?30のアリール基、炭素原子数6?30のアルキルアリール基又はハロゲン原子であり、
n及びqは、それぞれ独立して、1?5の整数であり、m及びpは、それぞれ独立して、0?5の整数であり、n+m+p+qは20以下であり、rは、1?50の整数である。)
・・・(省略)・・・
【0025】
上記カチオン重合性化合物としては、市販品のものを用いることができ、例えば、・・・(省略)・・・セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド2000、セロキサイド3000(ダイセル社製)・・・(省略)・・・アロンオキセタンOXT-121、OXT-221、EXOH、POX、OXA、OXT-101、OXT-211、OXT-212(東亞合成社製)、・・・(省略)・・・等が挙げられる。
・・・(省略)・・・
【0029】
本発明のカチオン重合性組成物には、即時硬化性の点から、エネルギー線感受性酸発生剤(2)を含有することが好ましい。エネルギー線感受性酸発生剤とは、エネルギー線照射により酸を発生することが可能な化合物であればどのようなものでも差し支えないが、好ましくは、エネルギー線の照射によってルイス酸を放出するオニウム塩である複塩、またはその誘導体である。かかる化合物の代表的なものとしては、下記一般式、
[A]^(s+)[B]^(s-)
で表される陽イオンと陰イオンの塩を挙げることができる。
・・・(省略)・・・
【0052】
本発明のカチオン重合性組成物は、粘度が1?150mPa・s以下であるものが、硬化性及び塗工性に優れるため好ましい。カチオン重合性組成物の粘度は、例えばE型粘度計を用いて、25℃で測定する。
【0053】
本発明のカチオン重合性組成物は、ロールコーター、カーテンコーター、各種の印刷、浸漬等の公知の手段で、支持基体上に適用される。また、一旦フィルム等の支持基体上に施した後、他の支持基体上に転写することもでき、その適用方法に制限はない。
・・・(省略)・・・
【0057】
本発明のカチオン重合性組成物の具体的な用途としては、メガネ、撮像用レンズに代表される光学材料、塗料、コーティング剤、ライニング剤、インキ、レジスト、液状レジスト、接着剤、印刷版、絶縁ワニス、絶縁シート、積層板、プリント基盤、半導体装置用・LEDパッケージ用・液晶注入口用・有機EL用・光素子用・電気絶縁用・電子部品用・分離膜用等の封止剤、成形材料、パテ、ガラス繊維含浸剤、目止め剤、半導体用・太陽電池用等のパッシベーション膜、層間絶縁膜、保護膜、液晶表示装置のバックライトに使用されるプリズムレンズシート、プロジェクションテレビ等のスクリーンに使用されるフレネルレンズシート、レンチキュラーレンズシート等のレンズシートのレンズ部、またはこのようなシートを用いたバックライト等、マイクロレンズ等の光学レンズ、光学素子、光コネクター、光導波路、光学的造形用注型剤等を挙げることができ、例えばコーティング剤として適用できる基材としては金属、木材、ゴム、プラスチック、ガラス、セラミック製品等を挙げることができる。本発明のカチオン重合性組成物は、特に接着剤として好適に用いることができる。」

(3) 「【実施例】
【0061】
以下、実施例等を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0062】
以下、本発明のカチオン重合性組成物及び該カチオン重合性組成物を硬化して得られる硬化物に関し、実施例、評価例及び比較例により具体的に説明する。なお、実施例及び比較例では部は質量部を意味する。
【0063】
[実施例1?12、比較例1?3]
下記の[表1]?[表3]に示す配合で各成分を十分に混合して、各々実施組成物1?12、比較組成物1?3を得た。なお[表1]?[表3]]中の数値はすべて質量部である。
【0064】
エポキシ化ポリオレフィンとしては、下記の化合物(1A-1)?(1A-2)を、カチオン重合性化合物としては下記の化合物(1B-a1)?(1B-a5)及び(1B-b1)?(1B-b5)を用いた。
化合物1A-1:BF-1000(エポキシ化ポリブタジエン;ADEKA社製)
化合物1A-2:JP-100(エポキシ化ポリブタジエン;日本曹達社製)
化合物1B-a1:シクロヘキセンオキシド
化合物1B-a2:スチレンオキサイド
化合物1B-a3:デナコールEX-141(ナガセケムテックス社製)
化合物1B-a4:アデカグリシロールED-509S(ADEKA社製)
化合物1B-a5:ヒドロキシブチルビニルエーテル
化合物1B-b1:セロキサイド2021P(ダイセル社製)
化合物1B-b2:デナコールEX-201(ナガセケムテックス社製)
化合物1B-b3: アデカグリシロールED-503G(ADEKA社製)
化合物1B-b4:アデカレジンEP-4100L(ADEKA社製)
化合物1B-b5:アロンオキセタンOXT-221(東亞合成社製)
【0065】
エネルギー線感受性酸発生剤(2)としては下記の化合物2を用いた。
化合物2:CPI-100P(サンアプロ社製)
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】

【0068】
【表3】

【0069】
[評価例1?12、比較評価例1?3]
上記実施例1?12で得られた実施組成物及び比較例1?3で得られた比較組成物について、下記評価を行った。結果を上記[表1]?[表3]に示す。
(粘度)
得られた実施組成物の1?12、比較組成物の1及び2それぞれの25℃における粘度をE型粘度計で粘度を測定した。結果を[表1]?[表3]に示す。
(硬化性)
実施組成物1?12、比較組成物の1?3のそれぞれをPETフィルム上にバーコーターで3?6μmの厚さに塗布し、無電極紫外光ランプを用いて800mJ/cm^(2)のエネルギーを照射した。照射3分後に塗布面がタックフリーになっているものを○、タックが残っているものを×として評価した。
(接着性)
得られた実施組成物1?12、比較組成物の1のそれぞれを、COP(シクロオレフィンポリマー)フィルムにそれぞれ塗布した後、該フィルムを、ラミネーターを用いてコロナ放電処理を施したもう一枚のCOPフィルムと貼り合わせ、無電極紫外光ランプを用いて1000mJ/cm^(2)のエネルギーを照射して接着して試験片を得た。得られた試験片の90度ピール試験を行い、0.8N/cm以上であるものを◎、0.4?0.8N/cmであるものを○、0.4N/cm以下であるものを×として評価した。
【0070】
[表1]?[表3]より、本発明のカチオン重合性組成物は、硬化性及び接着性に優れることが明らかである。」

15 甲6-1発明
甲第6号証の段落【0062】、段落【0063】及び段落【0066】【表1】には、実施例3として、「カチオン重合性組成物」が開示されている。また、甲第6号証の段落【0057】の記載からみて、「組成物」は、「有機EL用」の「封止剤」にも用いることができるものであるといえる。
そうしてみると、甲第6号証には、次の発明(以下「甲6-1発明」という。)が記載されている。

「 BF-1000(エポキシ化ポリブタジエン;ADEKA社製)20質量部、
シクロヘキセンオキシド40質量部、
デナコールEX-141(ナガセケムテックス社製)40質量部、
CPI-100P(サンアプロ社製)5質量部
を十分に混合して得られる、
粘度が13m・PaSである、
有機EL用の封止剤に用いるカチオン重合性組成物。」

16 甲6-2発明
甲第6号証の段落【0062】、段落【0063】及び段落【0067】【表2】には、実施例9として、「カチオン重合性組成物」が開示されている。また、甲第6号証の段落【0057】の記載からみて、「組成物」は、「有機EL用」の「封止剤」にも用いることができるものであるといえる。
そうしてみると、甲第6号証には、次の発明(以下「甲6-2-1発明」という。)が記載されている。

「 BF-1000(エポキシ化ポリブタジエン;ADEKA社製)20質量部、
アデカグリシロールED-509S(ADEKA社製)35質量部、
アデカレジンEP-4100L(ADEKA社製)30質量部、
アロンオキセタンOXT-221(東亞合成社製)15質量部、
CPI-100P(サンアプロ社製)5質量部
を十分に混合して得られる、
有機EL用の封止剤に用いるカチオン重合性組成物。」

同様に、甲第6号証に記載の実施例11及び12から把握される発明を、それぞれ、「甲6-2-2発明」及び「甲6-2-3発明」といい、「甲6-2-1発明」?「甲6-2-3発明」を総称して、「甲6-2発明」という。

17 引用文献Fの記載事項
特開2007-31667号公報(以下、「引用文献F」という。)には、以下の記載がある。

「【0020】
本発明のエネルギー線硬化型インクジェット記録用クリアインク組成物は、エネルギー線硬化性化合物、光重合開始剤、及び表面張力調整剤を含有する。
・・・(省略)・・・
表面張力の調整は例えば界面活性剤を表面張力調整剤として用い、その種類と量を変化させて、インクの表面張力を所定の数値範囲に調整することができる。また粘度の調整は主にエネルギー線硬化性化合物の種類と配合を変化させて、所定の数値範囲に調整することが可能である。」

18 引用文献Kの記載事項
特開2015-3938号公報(以下、「引用文献K」という。)には、以下の記載がある。

「【0067】
・・・(省略)・・・
・セロキサイド2021P(脂環式エポキシ、粘度:100?600mPa・s(25℃)、(株)ダイセル製)」

19 引用文献Lの記載事項
特開平7-34015号公報(以下、「引用文献L」という。)には、以下の記載がある。

「【0056】また、エポキシ樹脂としては、上記のビスフエノールタイプのエポキシ樹脂のほかに、前述した範囲内の数平均分子量及びエポキシ当量を有する脂肪族グリシジルエーテルタイプのエポキシ樹脂(例:デナコールEX-201、デナコールEX-301、デナコールEX-810(いずれも長瀬産業社製)等)、脂肪族トリグリジジルエーテルタイプのエポキシ樹脂(例:デナコールEX-411(長瀬産業社製)、芳香族モノグリジジルエーテルタイプのエポキシ樹脂(例:デナコールEX-141(長瀬産業社製)等)なども使用することができる。」

20 引用文献Mの記載事項
国際公開第2015/005210号(以下、「引用文献M」という。)には、以下の記載がある。

「[0017] 上記芳香族エポキシ化合物(1C)としては、・・・(省略)・・・アデカグリシロールED-509S・・・(省略)・・・等が挙げられる。」

21 引用文献Nの記載事項
特開2008-307773号公報(以下、「引用文献K」という。)には、以下の記載がある。

「【発明が解決しようとする課題】
【0010】
水蒸気や空気の透過性が低いEPDMは、上記の様なO-リングやインクチューブ(インク供給路)の他に、パッキング、メンテナンスユニットのクリーニングブレード等に幅広く使用されている。
【0011】
この様な各構成部材にEPDMを適用する際、柔軟性を付与し、ゴム硬度を低下させる目的で、軟化剤が添加されている。軟化剤としては、例えば、パラフィン系、ナフテン系のオイルやリン酸エステルやフタル酸エステルに代表される可塑剤等が用いられている。
【0012】
しかしながら、EPDMは耐油性に欠点を有しており、非水系の活性エネルギー線硬化性化合物を含む活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを用いるインクジェット記録装置のインクと接する部分、あるいはインクが付着する部分にこの様な軟化剤を含むEPDMを適用した場合、活性エネルギー線硬化型インクジェットインク中の重合性モノマーにより、軟化剤のEPDMからの溶出を生じ、その結果、EPDMの膨潤や溶解を起こし、構成部材の劣化やインク漏れを引き起こすことが判明した。特に、活性エネルギー線重合化合物として、カチオン重合性化合物を用いた活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを用いた場合、その劣化が顕著になることが判明し、早急な改良が要望されている。
【0013】
従って、本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、EPDMのインク耐性を向上させ、長期安定性に優れたインクジェット記録装置及びインクカートリッジを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0015】
1.インクを吐出する複数のインク吐出口が設けられたインク吐出面を有する記録ヘッドと、該記録ヘッドにより画像を印字するインクジェット記録装置において、該インクと接する部分、該インクが付着する部分及びゴム系構成部品から選ばれる少なくとも一つが、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)を使用し、該エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)がハロゲン化ブチルを含有していることを特徴とするインクジェット記録装置。
・・・(省略)・・・
【実施例】
【0110】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0111】
実施例1
《インクの調製》
〔マゼンタインク1の調製:ラジカル重合性インク〕
〈マゼンタ顔料分散液1の調製〉
以下の組成で顔料を分散した。
【0112】
以下の化合物をステンレスビーカーに入れ、65℃ホットプレート上で加熱しながら1時間加熱・撹拌して溶解した。
【0113】
PB824(味の素ファインテクノ社製分散剤) 8部
テトラエチレングリコールジアクリレート(2官能) 72部
室温まで冷却した後、これに下記顔料20部を加え、直径0.5mmのジルコニアビーズ200gと共にガラス瓶に入れ密栓し、ペイントシェーカーにて10時間分散処理した後、ジルコニアビーズを除去し、マゼンタ顔料分散液1とした。
【0114】
顔料:C.I.Pigment Red 122(クラリアント社製:PV FAST PINK E)
〈マゼンタインク1の調製〉
上記調製したマゼンタ顔料分散液を用いて、以下に示す組成のマゼンタインク1を調製し、ADVATEC社製JIS K 5600で定めるテフロン(登録商標)3μmメンブランフィルターで濾過を行った。このマゼンタインク1の25℃における粘度は、30mPa・sであった。
【0115】
マゼンタ顔料分散液1 20.0部
光重合性化合物(ラウリルアクリレート:単官能) 19.9部
光重合性化合物(テトラエチレングリコールジアクリレート:2官能)
25.0部
光重合性化合物(トリメチロールプロパントリアクリレート:3官能)
30.0部
変性シリコーンオイル(SDX-1843:旭電化工業社製) 0.1部
光ラジカル開始剤(イルガキュア184:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 2.5部
光ラジカル開始剤(イルガキュア819:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 2.5部
〔マゼンタインク2の調製:カチオン重合性インク〕
(マゼンタ顔料分散液2の調製)
下記に示す方法に従って、マゼンタ顔料分散液2を調製した。
【0116】
下記の2種の化合物をステンレスビーカーに入れ、ホットプレート上で65℃で加熱、攪拌しながら溶解した。
【0117】
アジスパーPB822(味の素ファインテクノ社製分散剤) 8質量部
アロンオキセタンOXT-221(東亞合成社製オキセタン化合物)
72質量部
次いで、室温まで冷却した後、この溶液に顔料としてC.I.Pigment Red 122(前出)を20質量部を加えて、直径0.3mmのジルコニアビーズ200部と共にガラス瓶に入れ密栓し、ペイントシェーカーにて4時間の分散処理を施した後、ジルコニアビーズを除去して、マゼンタ顔料分散液2を調製した。
【0118】
(マゼンタインク2の調製)
上記調製したマゼンタ顔料分散液2(マゼンタ顔料:20質量%、分散剤PB822:8質量%、光重合性化合物OXT-221:72質量%含有)と下記の各添加剤とを用いて、マゼンタインク2を調製した。
【0119】
具体的には、マゼンタ顔料分散物2以外の全ての下記添加剤を混合し、十分に溶解したことを確認した後、この混合溶液をマゼンタ顔料分散物2中に攪拌しながら少しずつ添加し、15分間攪拌した後、ロキテクノ社製PP3μmディスクフィルタで濾過を行った。
【0120】
マゼンタ顔料分散液2 20.0質量部
アジスバーPB822(味の素ファインテクノ製) 2.0質量部
オキセタンOXT-221(東亞合成製) 55.0質量部
オキセタンOXT-212(東亞合成製) 5.0質量部
オキセタンOXT-211(東亞合成製) 5.0質量部
脂環式エポキシ化合物1 18.0質量部
光酸発生剤1(分子量466、1分子量当たり3つのアリール基を持つ)
4.0質量部
重合禁止剤(トリイソプロパノールアミン) 0.1質量部
【0121】
【化5】

【0122】
次いで、このマゼンタインク2を、中空糸膜を用いた脱気モジュール(大日本インキ化学工業(株)製、SEPAREL PF-004D)を用いて脱気し、これをマゼンタインク2とした。このマゼンタインク2の25℃における粘度は、31mPa・sであった。
【0123】
《試料の作製》
〔試料1の作製〕
1)配合工程
下記の各添加剤を配合した。
【0124】
エチレン-プロピレン-ジエンゴム 100部
軟化剤(ステアリン酸) 50部
加硫剤(硫黄) 5部
老化防止剤 1部
2)加工工程
上記混合物を混合した後、バーバリーミキサーを用いて混練りして、ペレットを作製した。
【0125】
3)加硫・成形工程
上記ペレットを、金型に入れてプレスし、加熱を行って、幅30mm、長さ100mm、厚さ5mmの試験用プレートを作製し、これを試料1とした。
・・・(省略)・・・
【0129】
《試料の評価》
上記作製した各試料について、下記の方法に従って、ゴム硬度の測定と耐インク性の評価を行った。
【0130】
〔ゴム硬度の測定〕
各試料について、JIS K 6253に記載された方法に準拠して、デュロメータを用いてゴム硬度(ショアA)を測定した。
【0131】
〔耐インク性の評価〕
各試料のインク液に浸漬前の体積V_(0)を測定した後、前記マゼンタインク1、マゼンタインク2にそれぞれ70℃で7日間の浸漬処理を行った。浸漬後に、試料表面に付着しているインクを拭き取った後、再度その体量V_(1)を測定し、JISK 6528に記載の方法に準じて、体積変化率(%)を求め、これを耐インク性の尺度とした。マイナス表示は、体積の減少、すなわち軟化剤等の溶出が生じていることを表し、プラス表示は試料が膨潤を起こしていることを表す。数値の絶対値が小さいほど、耐インク性に優れていることを表す。
【0132】
以上により得られた結果を、表1に示す。
【0133】
【表1】



第6 特許法第29条についての当審の判断
1 甲2-1発明との対比及び判断
(1) 本件特許発明1
ア 対比
(ア) 有機EL表示素子用封止剤
甲2-1発明の「有機EL素子の封止材」は、本件特許発明1でいう「有機EL表示素子用封止剤」に相当する。

(イ) 重合性化合物と重合開始剤を含有すること
甲2-1発明の「有機EL素子の封止材」は、「OXT-121」、「OXT-221」及び「GSID 26-1」を含有する。
甲2-1発明の「OXT-121」及び「OXT-221」は、本件明細書の段落【0023】及び段落【0025】の記載からみて、本件特許発明1でいう「重合性化合物」に該当する。また、甲2-1発明の「GSID 26-1」は、技術的にみて、本件特許発明1の「重合開始剤」に該当する(当合議体注:甲第2号証の段落[0029]及び段落[0031]の記載からも、「光カチオン重合開始剤(C)」であることが確認される。)。
そうしてみると、甲2-1発明の「有機EL素子の封止材」は、本件特許発明1の「重合性化合物と重合開始剤とを含有」するという要件を満たす。

(ウ) 多官能ビニルエーテルを含有するものを除くこと
甲2-1発明の「有機EL素子の封止材」は、その材料組成からみて、本件特許発明1でいう「但し、多官能ビニルエーテルを含有するものを除く」という要件を満たす。

イ 一致点
以上のことから、本件特許発明1と甲2-1発明とは、次の構成で一致する。
「重合性化合物と重合開始剤とを含有する、
有機EL表示素子用封止剤(但し、多官能ビニルエーテルを含有するものを除く)。」

ウ 相違点
本件特許発明1と甲2-1発明は、以下の点で相違する。
(相違点1)
25℃における粘度が、本件特許発明1は、「5?20mPa・s」であるのに対し、甲2-1発明は、「45mPa・s」である点。

(相違点2)
25℃における表面張力が、本件特許発明1は、「15?30mN/m」であるのに対し、甲2-1発明は、これが、一応明らかではない点。

(相違点3)
封止剤中にエチレン・プロピレン・ジエンゴム(AS568-009(森清化工社社製))を浸漬させたまま25℃で1週間静置する含浸試験を行った際、含浸試験前後におけるエチレン・プロピレン・ジエンゴム(AS568-009(森清化工社社製))の重量変化率が、本件特許発明1は、「5%以下」であるのに対し、甲2-1発明は、これが、一応明らかではない点。

(相違点4)
有機EL表示素子用封止剤が、本件特許発明1は、「インクジェット法に用いる」のに対し、甲2-1発明は、これが、一応明らかではない点。

エ 判断
相違点1について検討する。
(ア) 甲第2号証の段落[0060]には、「本発明の樹脂組成物の粘度は、固体有機EL用封止材(例えばガラス等)を接着するための塗膜を形成することが出来れば良く、25℃で、10mPa・s以上であればよく、好ましくは10?3000mPa・s程度である。また、微粒子(D)を含まない本発明の樹脂組成物の粘度は、10?150mPa・s程度であり、20?120mPa・s程度が好ましい。」と記載されている。
しかしながら、甲第2号証において、実施例として実際に開示されたものの粘度は45?2000mPa・sであり、「5?20mPa・s」といった低粘度のものは開示されていない。かえって、甲第2号証では、粘度が18mPa・sや13mPa・sのものが、比較例として開示されている。
そうしてみると、甲第2号証において、「有機EL素子の封止材」の「25℃における粘度」を「5?20mPa・s」の範囲内とすることについて、実質的な記載又は示唆があるということはできない。

(イ) ここで、甲第2号証の段落[0076]表1における実施例1及び比較例3の材料組成及び粘度の値からみて、「OXT-221」の含有量が増加すると、「有機EL素子の封止材」の粘度が減少することが看てとれるから、当該記載を参照した当業者が、「有機EL素子の封止材」における「OXT-221」の含有量を増やすことにより、「有機EL素子の封止材」の粘度を低減しようと試みる可能性はありうる。
しかしながら、甲第2号証の段落[0076]表1における実施例1及び比較例3の材料組成およびガラス転移温度の値を参照すると、「有機EL素子の封止材」における「OXT-221」の含有量を増やすことにより、ガラス転移点が低下する可能性が高いことが理解できる。
そして、甲2-1発明は、甲第2号証の段落[0015]に記載のとおり、「高い耐熱性(高いガラス転移点(Tg))を有する硬化物の提供」を課題とするものであるから、甲2-1発明において、当業者が、さらにガラス転移点を低下させるような設計変更をするとは考えがたい。

(ウ) 加えて、引用文献1の段落【0053】に、「有機EL表示素子用封止剤」の粘度を、「好ましい上限が12cps(=12mPa・s)」となるようにすることが記載されているが、粘度を上記の範囲に設定するために、段落【0010】に、「多官能ビニルエーテル化合物を含有」させることが記載されている。
したがって、甲2-1発明の「有機EL素子の封止材」において、当業者が引用文献1の記載事項をに基づいて粘度を低減させようとすると、多官能ビニルエーテル化合物を含有」させることになるから、本件特許発明1の要件を満たさなくなる。
また、甲2-1発明に、他の甲第1号証?甲第6号証に記載の技術事項又は周知の技術事項を組み合わせても、本件特許発明1には到らない。

次に、事案に鑑みて、相違点4について検討する。
(エ) 甲第2号証の段落[0063]には、「本発明の樹脂組成物(封止用接着剤)を塗布する」ことが記載されており、段落[0074]には、塗布の際に「メイヤーバーコーター」を使用することが示唆されている。しかしながら、甲2-1発明及び甲第2号証には、「有機EL素子の封止材」を「インクジェット法」で塗布することについて、記載も示唆もない。

(オ) また、前記第5の4(2)(引用文献1の段落【0053】を参照)で述べたとおり、「有機EL表示素子用封止剤の粘度が12cps(当合議体注:技術常識からみて、12cps=12mPa・s)を超えると、インクジェットによる塗布が困難となることがある」ことは、周知の技術事項であったことが認められる。
したがって、上記(エ)の記載事項に加え、甲2-1発明の「有機EL素子の封止材」の「25℃における粘度」が「45mPa・s」であることからみて、甲2-1発明の「有機EL素子の封止材」を「インクジェット法に用いる」動機づけがない。

(カ) 加えて、前記(オ)で述べたとおり、「有機EL表示素子用封止剤の粘度が12cpsを超えると、インクジェットによる塗布が困難となることがある」から、甲2-1発明の「有機EL素子の封止材」を「インクジェット法に用いる」ことには、阻害要因がある。

(キ) 本件特許発明は、「インクジェット法により容易に塗布することができ、低アウトガス性に優れ、かつ、信頼性に優れる有機EL表示素子を得ることができる有機EL表示素子用封止剤を提供する」(段落【0007】)ために、本件特許発明1に係る構成を採用したものであり、これにより、特に、「非加熱式インクジェット法によって好適に塗布することができる」(段落【0015】)という効果が得られるものである。そして、この効果は、本件明細書の段落【0083】、段落【0093】【表2】及び段落【0097】【表2】に記載された実施例1?6及び実験例1及び2の「インクジェット吐出性」の相違によっても裏付けられているといえる。
一方、甲第1?6号証及び引用文献には、「有機EL表示素子用封止剤」の「25℃における粘度」を「5?20mPa・s」とすることにより、「非加熱式インクジェット法によって好適に塗布することができる」ことについて記載がなく、甲第1?6号証及び引用文献F?Mの記載事項からは、上記効果について、当業者であれば容易に予測し得たということはできない。
したがって、本件特許発明の効果は、甲第1?6号証及び引用文献の記載事項からみて、顕著なものということができる。

(ク) 小括
したがって、その余の相違点を検討するまでもなく、本件特許発明1は、当業者であっても、甲2-1発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたということはできない。

(2) 本件特許発明2
ア 対比・一致点・相違点
前記(1)ウで述べた(相違点1)、(相違点2)及び(相違点4)に加え、本件特許発明1と甲2-1発明は、以下の点で相違する。
(相違点5)
重合性化合物が、本件特許発明2は、「エポキシ化合物を含有」するのに対し、甲2-1発明は、そのように特定されていない点。

(相違点6)
封止剤中にエチレン・プロピレン・ジエンゴム(AS568-009(森清化工社社製))を浸漬させたまま25℃で1週間静置する含浸試験を行った際、含浸試験前後におけるエチレン・プロピレン・ジエンゴム(AS568-009(森清化工社社製))の重量変化率が、本件特許発明2は、「10%以下」であるのに対し、甲2-1発明は、これが、一応明らかではない点。

イ 判断
前記(1)エで述べた理由と同様の理由により、本件特許発明2は、当業者であっても、甲2-1発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたということはできない。

(3) 本件特許発明3及び4
本件特許発明3及び4は、本件特許発明1又は2に対して、さらに他の発明特定事項を付加した発明であり、前記(1)ウの(相違点1)及び(相違点4)で述べた、本件特許発明1又は2の構成を具備するものである。したがって、本件特許発明3及び4も、本件特許発明1及び2と同じ理由により、当業者であっても、甲2-1発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたということはできない。

2 甲2-2発明との対比・判断
(1) 本件特許発明1
ア 対比
(ア) 有機EL表示素子用封止剤
甲2-2発明の「有機EL素子の封止材」は、本件特許発明1でいう「有機EL表示素子用封止剤」に相当する。

(イ) 重合性化合物と重合開始剤を含有すること
甲2-2発明の「有機EL素子の封止材」は、「OXT-221」及び「GSID 26-1」を含有する。
甲2-2発明の「OXT-221」は、本件明細書の段落【0023】及び段落【0025】の記載からみて、本件特許発明1でいう「重合性化合物」に該当する。また、甲2-2発明の「GSID 26-1」は、技術的にみて、「本件特許発明1の「重合開始剤」に該当する(当合議体注:甲第2号証の段落[0029]及び段落[0031]の記載からも、「光カチオン重合開始剤(C)」であることが確認される。)。
そうしてみると、甲2-2発明の「有機EL素子の封止材」は、本件特許発明1の「重合性化合物と重合開始剤とを含有」するという要件を満たす。

(ウ) 粘度
甲2-2発明の「有機EL素子の封止材」は、「25℃における粘度」が「13mPa・s」である。
したがって、甲2-2発明の「有機EL素子の封止材」は、本件特許発明1の「25℃における粘度が5?20mPa・s」という要件を満たす。

(エ) 多官能ビニルエーテルを含有するものを除くこと
甲2-2発明の「有機EL素子の封止材」は、その材料組成からみて、本件特許発明1でいう「但し、多官能ビニルエーテルを含有するものを除く」という要件を満たす。

イ 一致点
以上のことから、本件特許発明1と甲2-2発明とは、次の構成で一致する。

「重合性化合物と重合開始剤とを含有し、
25℃における粘度が5?20mPa・sである
有機EL表示素子用封止剤(但し、多官能ビニルエーテルを含有するものを除く)。」

ウ 相違点
本件特許発明1と甲2-2発明は、以下の点で相違する。
(相違点1)
25℃における表面張力が、本件特許発明1は、「15?30mN/m」であるのに対し、甲2-2は、これが、明らかではない点。

(相違点2)
封止剤中にエチレン・プロピレン・ジエンゴム(AS568-009(森清化工社社製))を浸漬させたまま25℃で1週間静置する含浸試験を行った際、含浸試験前後におけるエチレン・プロピレン・ジエンゴム(AS568-009(森清化工社社製))の重量変化率が、本件特許発明1は、「5%以下」であるのに対し、甲2-2発明は、これが、一応明らかではない点。

(相違点3)
有機EL表示素子用封止剤が、本件特許発明1は、「インクジェット法に用いる」のに対し、甲2-2発明は、これが、一応明らかではない点。

エ 判断
事案に鑑み、相違点3について検討する。
(ア) 甲第2号証の段落[0063]には、「本発明の樹脂組成物(封止用接着剤)を塗布する」ことが記載されており、段落[0074]には、塗布の際に「メイヤーバーコーター」を使用することが示唆されている。しかしながら、甲2-2発明及び甲第2号証には、「有機EL素子の封止材」を「インクジェット法」で塗布することについて、記載も示唆もない。

(イ) また、甲2-2発明は「比較例」であり、そういった「比較例」とされるものについて、当業者が「インクジェット法に用いる」ことについて検討することを、容易に推考し得たとはいえない。

(ウ) 加えて、前記第5の4(2)(引用文献1の段落【0053】を参照)で述べたとおり、「有機EL表示素子用封止剤の粘度が12cps(当合議体注:技術常識からみて、12cps=12mPa・s)を超えると、インクジェットによる塗布が困難となることがある」ことは、周知の技術事項であったことが認められる。
したがって、上記(ア)の記載事項に加え、甲2-2発明の「有機EL素子の封止材」の「25℃における粘度」が「13mPa・s」であることからみて、甲2-2発明の「有機EL素子の封止材」を「インクジェット法に用いる」動機づけがない。

(エ) 加えて、前記(ウ)で述べたとおり、「有機EL表示素子用封止剤の粘度が12cpsを超えると、インクジェットによる塗布が困難となることがある」、甲2-2発明の「有機EL素子の封止材」を「インクジェット法に用いる」ことには、阻害要因がある。

(オ) 小括
したがって、その余の相違点を検討するまでもなく、本件特許発明1は、当業者であっても、甲2-2発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたということはできない。

(2) 本件特許発明2
ア 対比・一致点・相違点
前記(1)ウで述べた(相違点1)及び(相違点3)に加え、本件特許発明2と甲2-2発明は、以下の点で相違する。
(相違点4)
重合性化合物が、本件特許発明2は、「エポキシ化合物を含有」するのに対し、甲2-2発明は、そのように特定されていない点。

(相違点5)
封止剤中にエチレン・プロピレン・ジエンゴム(AS568-009(森清化工社社製))を浸漬させたまま25℃で1週間静置する含浸試験を行った際、含浸試験前後におけるエチレン・プロピレン・ジエンゴム(AS568-009(森清化工社社製))の重量変化率が、本件特許発明2は、「10%以下」であるのに対し、甲2-2発明は、これが、一応明らかではない点。

イ 判断
前記(1)エで述べた理由と同様の理由により、本件特許発明2は、当業者であっても、甲2-2発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたということはできない。

(3) 本件特許発明3及び4
本件特許発明3及び4は、本件特許発明1又は2に対して、さらにほかの発明特定事項を付加した発明であり、前記(1)ウの(相違点1)で述べた、本件特許発明1又は2の構成を具備するものである。したがって、本件特許発明3及び4も、本件特許発明1及び2と同じ理由により、当業者であっても、甲2-2発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたということはできない。

3 引用発明1との対比及び判断
(1) 本件特許発明1
ア 対比
(ア) インクジェット法に用いる有機EL表示素子用封止剤
引用発明1-1の「有機EL表示素子用封止剤」は、「インクジェット法により容易に塗布することができる」から、本件特許発明1でいう「インクジェット法に用いる有機EL表示素子用封止剤」という要件を満たす。

(イ) 重合性化合物と重合開始剤を含有すること
引用発明1-1の「有機EL表示素子用封止剤」は、「水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂」、「3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート」、「3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタン」及び「芳香族スルホニウム塩」を含有する。
引用発明1-1の「水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂」、「3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート」及び「3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタン」は、本件明細書の段落【0023】及び段落【0024】の記載からみて、本件特許発明1でいう「重合性化合物」に該当する。また、引用発明1-1の「芳香族スルホニウム塩」は、技術的にみて、本件特許発明1の「重合開始剤」に該当する(当合議体注:引用文献1の段落【0072】の記載からも、「カチオン重合開始剤」であることが確認される。)。
そうしてみると、引用発明1-1の「有機EL表示素子用封止剤」は、本件特許発明1の「重合性化合物と重合開始剤とを含有」するという要件を満たす。

(ウ) 粘度
引用発明1-1の「有機EL表示素子用封止剤」は、「25℃における粘度が6.5cps」である。
そして、技術常識からみて、1mPa・s=1cpsであるから、引用発明1-1の「有機EL表示素子用封止剤」の25℃における粘度は、6.5mPa・sである。
そうしてみると、引用発明1-1の「有機EL表示素子用封止剤」は、本件特許発明1の「25℃における粘度が5?20mPa・s」という要件を満たす。

イ 一致点
以上のことから、本件特許発明1と引用発明1-1とは、次の構成で一致する。

「重合性化合物と重合開始剤とを含有し、
25℃における粘度が5?20mPa・sである
有機EL表示素子用封止剤。」

ウ 相違点
本件特許発明1と引用発明1-1は、以下の点で相違する。
(相違点1)
25℃における表面張力が、本件特許発明1は、「15?30mN/m」であるのに対し、引用発明1-1は、これが、一応明らかではない点。

(相違点2)
封止剤中にエチレン・プロピレン・ジエンゴム(AS568-009(森清化工社社製))を浸漬させたまま25℃で1週間静置する含浸試験を行った際、含浸試験前後におけるエチレン・プロピレン・ジエンゴム(AS568-009(森清化工社社製))の重量変化率が、本件特許発明1は、「5%以下」であるのに対し、引用発明1-1は、これが、一応明らかではない点。

(相違点3)
有機EL表示素子用封止剤が、本件特許発明1は、「但し、多官能ビニルエーテルを含有するものを除く」のに対し、引用発明1-1は、これが、一応明らかではない点。

エ 判断
事案に鑑み、相違点3について検討する。
(ア) 前記第5の4(1)(引用文献1の段落【0010】を参照。)に記載のとおり、「多官能ビニルエーテル化合物」は、「有機EL表示素子用封止剤」の「インクジェットによる塗布に好適な粘度を有し、かつ、有機発光材料層の劣化やアウトガスの発生を抑制する」材料である。そしてこのことは、引用文献1の段落【0099】【表1】及び段落【0100】【表2】からも確認できる事項である。
したがって、引用発明1-1の「有機EL表示素子用封止剤」において、「多官能ビニルエーテル化合物」は必須の組成と認められる。
そうしてみると、引用発明1-1の「有機EL表示素子用封止剤」を構成する組成から、「多官能ビニルエーテル化合物」を除く動機づけがない。

(イ) また、前記第5の4(1)からみて、引用発明1-1の「有機EL表示素子用封止剤」の組成から「多官能ビニルエーテル化合物」を除くと、「インクジェットによる塗布に好適な粘度を有し、かつ、有機発光材料層の劣化やアウトガスの発生を抑制する」という効果を得られなくなるから、「多官能ビニルエーテル化合物」を除くことについて、阻害要因がある。

(ウ) なお、特許異議申立人は、令和2年1月23日に提出した意見書において、「引用文献1の記載を鑑みると、多官能ビニルエーテル化合物は、硬化物のバリア性及び有機EL表示素子の信頼性が得られる点で、単官能ビニルエーテルと比べれば好ましい化合物であると理解できるが、有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤において多官能ビニルエーテル化合物が必須であるとまではいうことはできない」と主張している。
しかしながら、前記(ア)での指摘事項に加え、引用文献1の段落【0008】には、段落【0007】に記載された、「インクジェット法により容易に塗布することができ、硬化性、硬化物の透明性及びバリア性に優れる有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤を提供する」という課題の解決手段として、「有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤」に、「環状エーテル化合物と、カチオン重合開始剤と、多官能ビニルエーテル化合物とを含有」させ、「上記多官能ビニルエーテル化合物の含有量」を、「上記環状エーテル化合物100重量部に対して5?50重量部」とすることが記載されている。
そうしてみると、「多官能ビニルエーテル化合物」は、引用発明1の「有機EL表示素子用封止剤」において必須の組成であるから、特許異議申立人の意見は採用しない。

(エ) 小括
したがって、その余の相違点を検討するまでもなく、本件特許発明1は、当業者であっても、引用発明1-1及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたということはできない。
そして、本件特許発明1と、引用発明1-2等の他の引用発明1との関係においても、上記判断は同様である。

(2) 本件特許発明2
ア 対比・一致点・相違点
引用発明1-1の「有機EL表示素子用封止剤」は、「水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂」、「3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート」、「3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタン」及び「芳香族スルホニウム塩」を含有する。
引用発明1-1の「3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート」は、その名称が表す化学構造からみて、「重合性」の「エポキシ化合物」であるから、本件特許発明2でいう、「前記重合性化合物は、エポキシ化合物を含有し」という要件を満たす。
そうしてみると、前記(1)ウで述べた(相違点1)及び(相違点3)に加え、本件特許発明2と引用発明1-1は、以下の点で相違する。
(相違点4)
封止剤中にエチレン・プロピレン・ジエンゴム(AS568-009(森清化工社社製))を浸漬させたまま25℃で1週間静置する含浸試験を行った際、含浸試験前後におけるエチレン・プロピレン・ジエンゴム(AS568-009(森清化工社社製))の重量変化率が、本件特許発明2は、「10%以下」であるのに対し、引用発明1は、これが、一応明らかではない点。

イ 判断
前記(1)エで述べた理由と同様の理由により、本件特許発明2は、当業者であっても、引用発明1及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたということはできない。
そして、本件特許発明2と、引用発明1-2等の他の引用発明1との関係においても、上記判断は同様である。

(2) 本件特許発明3及び4
本件特許発明3及び4は、本件特許発明1又は2に対して、さらに他の発明特定事項を付加した発明であり、前記(1)ウの(相違点3)で述べた、本件特許発明1又は2の構成を具備するものである。したがって、本件特許発明3及び4も、本件特許発明1及び2と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1-1及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたということはできない。
そして、本件特許発明3及び4と、引用発明1-2等の他の引用発明1との関係においても、上記判断は同様である。

4 甲1発明との対比及び判断
(1) 本件特許発明1
ア 対比
(ア) 封止剤
甲1発明の「硬化性樹脂組成物」は、「透明封止剤として使用することができる」ものであるから、本件特許発明1「有機EL表示素子用封止剤」と、「封止剤」の点で共通する。

(イ) 重合性化合物と重合開始剤を含有すること
甲1発明の「硬化性樹脂組成物」は、「セロキサイド8000」、「アロンオキセタンOXT-121」及び「開始剤」を含有する。
甲1発明の「セロキサイド8000」は、本件明細書の段落【0023】及び段落【0025】の記載からみて、本件特許発明1でいう「重合性化合物」に該当する。また、甲1発明の「アロンオキセタンOXT-121」は、前記第5の18(引用文献Bの段落【0212】を参照。)の記載からみて、本件特許発明1でいう「重合性化合物」に該当する。加えて、甲1発明の「開始剤」は、「光酸発生剤」であるから、本件特許発明1の「重合開始剤」に該当する。
そうしてみると、甲1発明の「硬化性樹脂組成物」は、本件特許発明1の「重合性化合物と重合開始剤とを含有」するという要件を満たす。

(ウ) 多官能ビニルエーテルを含有するものを除くこと
甲1発明の「有機EL素子の封止材」は、その材料組成からみて、本件特許発明1でいう「但し、多官能ビニルエーテルを含有するものを除く」という要件を満たす。

イ 一致点
以上のことから、本件特許発明1と甲1発明とは、次の構成で一致する。
「重合性化合物と重合開始剤とを含有する、
封止剤(但し、多官能ビニルエーテルを含有するものを除く)。」

ウ 相違点
本件特許発明1と甲1発明は、以下の点で相違、又は、一応相違する。
(相違点1)
25℃における粘度が、本件特許発明1は、「5?20mPa・s」であるのに対し、甲1発明は、これが、明らかではない点。

(相違点2)
25℃における表面張力が、本件特許発明1は、「15?30mN/m」であるのに対し、甲1発明は、これが、一応明らかではない点。

(相違点3)
封止剤中にエチレン・プロピレン・ジエンゴム(AS568-009(森清化工社社製))を浸漬させたまま25℃で1週間静置する含浸試験を行った際、含浸試験前後におけるエチレン・プロピレン・ジエンゴム(AS568-009(森清化工社社製))の重量変化率が、本件特許発明1は、「5%以下」であるのに対し、甲1発明は、これが、一応明らかではない点。

(相違点4)
封止剤が、本件特許発明1は、「有機EL表示素子用」であるのに対し、甲1発明は、これが、明らかではない点。

(相違点5)
封止剤が、本件特許発明1は、「インクジェット法に用いる」のに対し、甲1発明は、これが、一応明らかではない点。

エ 判断
相違点1について検討する。
(ア) 甲第1号証には、「硬化性樹脂組成物」の「25℃における粘度」を「5?20mPa・s」とすることについて記載も示唆もない。

(イ) 甲1発明の「硬化性樹脂組成物」は、「ポリマー(A-3)」を50重量部含有する。当該「ポリマー(A-3)」は、甲第1号証の段落【0023】に記載のとおり、「脂環式エポキシ基を有するとともに、該脂環式エポキシ基を有する構成単位の主鎖は炭素-炭素結合であり、しかも前記脂環式エポキシ基が主鎖を構成しているか又は直接若しくは炭素鎖を介して主鎖に結合している」ため、そのポリマー(A-3)を含む透明封止材は、「カチオン硬化性(反応性)に優れるとともに、硬化により、耐熱性、耐候性、透明性、柔軟性、耐薬品性、密着性等に優れた硬化物(硬化樹脂)が得られる」ものである。
ここで、甲第6号証の段落【0066】【表1】には、実施例1及び3に、エポキシ化ポリブタジエン、シクロヘキセンオキシド、デナコールEX-141(カチオン重合性化合物、段落【0025】の記載も参照)及びエネルギー線感受性酸発生剤を含むカチオン重合性組成物が記載されており、エポキシ化ポリブタジエンの含有割合が20質量部から40質量部に増えると、カチオン重合性組成物の粘度が13m・PaSから68m・PaSに上昇することが記載されている。
したがって、封止剤中にポリマーを含有させると、その粘度は上昇することは周知の技術事項であると認められる。一方、甲1発明の「硬化性樹脂組成物」は、「ポリマー(A-3)」を50重量部含有する。そうしてみると、甲1発明の「透明封止材」は、その粘度が「5?20mPa・s」の範囲内にあるとは考えがたい。

(ウ) また、甲第1号証の段落【0091】には、「硬化性樹脂組成物中の前記脂環式エポキシ基含有重合体の含有量」を、「特に好ましくは20重量%以上」とすることが記載されている。そして、上記(イ)で述べたとおり、封止剤中にポリマーを含有させると、その粘度は上昇するから、甲1発明の「硬化性樹脂組成物」において、「25℃における粘度」を「5?20mPa・s」とする動機づけがない。

(エ) 加えて、甲1発明の「硬化性樹脂組成物」において、「ポリマー(A-3)」の含有量を減らすと、「カチオン硬化性(反応性)に優れるとともに、硬化により、耐熱性、耐候性、透明性、柔軟性、耐薬品性、密着性等に優れた硬化物(硬化樹脂)が得られる」(【0023】)という効果が得られなくなる可能性がある。
したがって、甲1発明の「硬化性樹脂組成物」において、「ポリマー(A-3)」の含有量を減らし、「25℃における粘度」を「5?20mPa・s」とすることについて、阻害要因がある。

(オ) 小括
したがって、その余の相違点を検討するまでもなく、本件特許発明1は、当業者であっても、甲1発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたということはできない。

(2) 本件特許発明2
ア 対比・一致点・相違点
甲1発明の「硬化性樹脂組成物」は、「セロキサイド8000」を含有する。
甲1発明の「セロキサイド8000」は、本願明細書の段落【0093】【表1】の記載からみて、本件特許発明2でいう「重合性」の「エポキシ化合物」であるから、甲1発明の「封止材」は、本件特許発明2でいう、「前記重合性化合物は、エポキシ化合物を含有し」という要件を満たす。
そうしてみると、前記(1)ウで述べた(相違点1)、(相違点2)、(相違点4)及び(相違点5)に加え、本件特許発明2と甲1発明は、以下の点で相違する。
(相違点6)
封止剤中にエチレン・プロピレン・ジエンゴム(AS568-009(森清化工社社製))を浸漬させたまま25℃で1週間静置する含浸試験を行った際、含浸試験前後におけるエチレン・プロピレン・ジエンゴム(AS568-009(森清化工社社製))の重量変化率が、本件特許発明2は、「10%以下」であるのに対し、甲1発明は、これが、一応明らかではない点。

イ 判断
前記(1)エで述べた理由と同様の理由により、本件特許発明2は、当業者であっても、甲1発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたということはできない。

(3) 本件特許発明3及び4
本件特許発明3及び4は、本件特許発明1又は2に対して、さらに他の発明特定事項を付加した発明であり、前記(1)ウの(相違点1)で述べた、本件特許発明1又は2の構成を具備するものである。したがって、本件特許発明3及び4も、本件特許発明1及び2と同じ理由により、当業者であっても、甲1発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたということはできない。

5 甲3発明との対比及び判断
(1) 本件特許発明1
ア 対比
(ア) 有機EL表示素子用封止剤
甲3発明の「OLEDディスプレイ素子等の封止材に用いられる感光性樹脂組成物」は、本件特許発明1でいう「有機EL表示素子用封止剤」に相当する。

(イ) 重合性化合物と重合開始剤を含有すること
甲3発明の「感光性樹脂組成物」は、「3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート「セロキサイド2021P」(商品名、ダイセル化学工業株式会社製)」、「3-エチル-3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン「OXT-221」(商品名、東亜合成株式会社製)」及び「エネルギー線感受性カチオン重合開始剤」を含有する。
甲3発明の「3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート「セロキサイド2021P」(商品名、ダイセル化学工業株式会社製)」及び「3-エチル-3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン「OXT-221」(商品名、東亜合成株式会社製)」は、本件明細書の段落【0023】及び段落【0025】の記載からみて、本件特許発明1でいう「重合性化合物」に該当する。また、甲3発明の「エネルギー線感受性カチオン重合開始剤」は、本件特許発明1の「重合開始剤」に該当する。
そうしてみると、甲3発明の「感光性樹脂組成物」は、本件特許発明1の「重合性化合物と重合開始剤とを含有」するという要件を満たす。

(ウ) 多官能ビニルエーテルを含有するものを除くこと
甲3発明の「感光性樹脂組成物」は、その材料組成からみて、本件特許発明1でいう「但し、多官能ビニルエーテルを含有するものを除く」という要件を満たす。

イ 一致点
以上のことから、本件特許発明1と甲3発明とは、次の構成で一致する。
「重合性化合物と重合開始剤とを含有する、
有機EL表示素子用封止剤(但し、多官能ビニルエーテルを含有するものを除く)。」

ウ 相違点
本件特許発明1と甲3発明は、以下の点で相違する。
(相違点1)
25℃における粘度が、本件特許発明1は、「5?20mPa・s」であるのに対し、甲3発明は、これが、明らかではない点。

(相違点2)
25℃における表面張力が、本件特許発明1は、「15?30mN/m」であるのに対し、甲3発明は、これが、一応明らかではない点。

(相違点3)
封止剤中にエチレン・プロピレン・ジエンゴム(AS568-009(森清化工社社製))を浸漬させたまま25℃で1週間静置する含浸試験を行った際、含浸試験前後におけるエチレン・プロピレン・ジエンゴム(AS568-009(森清化工社社製))の重量変化率が、本件特許発明1は、「5%以下」であるのに対し、甲3発明は、これが、一応明らかではない点。

(相違点4)
有機EL表示素子用封止剤を、本件特許発明1は、「インクジェット法に用いる」のに対し、甲3発明は、これが、一応明らかではない点。

エ 判断
相違点1について検討する。
(ア) 甲第3号証には、「感光性樹脂組成物」の「25℃における粘度」を「5?20mPa・s」とすることについて記載も示唆もない。

(イ) 甲3発明の「感光性樹脂組成物」は、「セロキサイド2021P」(商品名、ダイセル化学工業株式会社製)を60質量%含有する。そして、前記第5の18に記載のとおり、「セロキサイド2021P」の25℃における粘度は、100?600mPa・s程度である。
したがって、甲3発明の「感光性樹脂組成物」の材料組成からみて、その粘度が「5?20mPa・s」の範囲内にあるとは考えがたい。

(ウ) 小括
したがって、その余の相違点を検討するまでもなく、本件特許発明1は、当業者であっても、甲3発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたということはできない。

(2) 本件特許発明2
ア 対比・一致点・相違点
甲3発明の「感光性樹脂組成物」は、「3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート「セロキサイド2021P」(商品名、ダイセル化学工業株式会社製)」を含有する。
甲3発明の「3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート「セロキサイド2021P」(商品名、ダイセル化学工業株式会社製)」は、その名称が表す化学構造からみて、本件特許発明2でいう「重合性」の「エポキシ化合物」であるから、甲3発明の「感光性樹脂組成物」は、本件特許発明2でいう、「前記重合性化合物は、エポキシ化合物を含有し」という要件を満たす。
そうしてみると、前記(1)ウで述べた(相違点1)、(相違点2)及び(相違点4)に加え、本件特許発明2と甲3発明は、以下の点で相違する。
(相違点5)
封止剤中にエチレン・プロピレン・ジエンゴム(AS568-009(森清化工社社製))を浸漬させたまま25℃で1週間静置する含浸試験を行った際、含浸試験前後におけるエチレン・プロピレン・ジエンゴム(AS568-009(森清化工社社製))の重量変化率が、本件特許発明2は、「10%以下」であるのに対し、甲3発明は、これが、一応明らかではない点。

イ 判断
前記(1)エで述べた理由と同様の理由により、本件特許発明2は、当業者であっても、甲3発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたということはできない。

(3) 本件特許発明3及び4
本件特許発明3及び4は、本件特許発明1又は2に対して、さらに他の発明特定事項を付加した発明であり、前記(1)ウの(相違点1)で述べた、本件特許発明1又は2の構成を具備するものである。したがって、本件特許発明3及び4も、本件特許発明1及び2と同じ理由により、当業者であっても、甲3発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたということはできない。

6 甲4発明との対比及び判断
(1) 本件特許発明1
ア 対比
(ア) 有機EL表示素子用封止剤
甲4発明の「OLEDディスプレイ素子等の封止材に用いられる感光性樹脂組成物」は、本件特許発明1でいう「有機EL表示素子用封止剤」に相当する。

(イ) 重合性化合物と重合開始剤を含有すること
甲4発明の「感光性樹脂組成物」は、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート「セロキサイド2021P」(商品名、ダイセル化学工業株式会社製)、「3-エチル-3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン「OXT-221」(商品名、東亜合成株式会社製)」及び「エネルギー線感受性カチオン重合開始剤」を含有する。
甲4発明の「3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート「セロキサイド2021P」(商品名、ダイセル化学工業株式会社製)」及び「3-エチル-3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン「OXT-221」(商品名、東亜合成株式会社製)」は、本件明細書の段落【0023】及び段落【0025】の記載からみて、本件特許発明1でいう「重合性化合物」に該当する。また、甲4発明の「エネルギー線感受性カチオン重合開始剤」は、本件特許発明1の「重合開始剤」に該当する。
そうしてみると、甲4発明の「感光性樹脂組成物」は、本件特許発明1の「重合性化合物と重合開始剤とを含有」するという要件を満たす。

(ウ) 多官能ビニルエーテルを含有するものを除くこと
甲4発明の「感光性樹脂組成物」は、その材料組成からみて、本件特許発明1でいう「但し、多官能ビニルエーテルを含有するものを除く」という要件を満たす。

イ 一致点
以上のことから、本件特許発明1と甲4発明とは、次の構成で一致する。
「重合性化合物と重合開始剤とを含有する、
有機EL表示素子用封止剤(但し、多官能ビニルエーテルを含有するものを除く)。」

ウ 相違点
本件特許発明1と甲4発明は、以下の点で相違する。
(相違点1)
25℃における粘度が、本件特許発明1は、「5?20mPa・s」であるのに対し、甲4発明は、これが、明らかではない点。

(相違点2)
25℃における表面張力が、本件特許発明1は、「15?30mN/m」であるのに対し、甲4発明は、これが、一応明らかではない点。

(相違点3)
封止剤中にエチレン・プロピレン・ジエンゴム(AS568-009(森清化工社社製))を浸漬させたまま25℃で1週間静置する含浸試験を行った際、含浸試験前後におけるエチレン・プロピレン・ジエンゴム(AS568-009(森清化工社社製))の重量変化率が、本件特許発明1は、「5%以下」であるのに対し、甲4発明は、これが、一応明らかではない点。

(相違点4)
有機EL表示素子用封止剤を、本件特許発明1は、「インクジェット法に用いる」のに対し、甲4発明は、これが、一応明らかではない点。

エ 判断
相違点1について検討する。
(ア) 甲第4号証には、「感光性樹脂組成物」の「25℃における粘度」を「5?20mPa・s」とすることについて記載も示唆もない。

(イ) 甲4発明の「感光性樹脂組成物」は、「セロキサイド2021P」(商品名、ダイセル化学工業株式会社製)を60質量%含有する。そして、前記第5の18に記載のとおり、「セロキサイド2021P」の25℃における粘度は、100?600mPa・s程度である。
したがって、甲4発明の「感光性樹脂組成物」の材料組成からみて、その粘度が「5?20mPa・s」の範囲内にあるとは考えがたい。

(ウ) 小括
したがって、その余の相違点を検討するまでもなく、本件特許発明1は、当業者であっても、甲4発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたということはできない。

(2) 本件特許発明2
ア 対比・一致点・相違点
甲4発明の「感光性樹脂組成物」は、「3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート「セロキサイド2021P」(商品名、ダイセル化学工業株式会社製)」を含有する。
甲4発明の「3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート「セロキサイド2021P」(商品名、ダイセル化学工業株式会社製)」は、その名称が表す化学構造からみて、本件特許発明2でいう「重合性」の「エポキシ化合物」であるから、甲4発明の「感光性樹脂組成物」は、本件特許発明2でいう、「前記重合性化合物は、エポキシ化合物を含有し」という要件を満たす。
そうしてみると、前記(1)ウで述べた(相違点1)、(相違点2)及び(相違点4)に加え、本件特許発明2と甲4発明は、以下の点で相違する。
(相違点5)
封止剤中にエチレン・プロピレン・ジエンゴム(AS568-009(森清化工社社製))を浸漬させたまま25℃で1週間静置する含浸試験を行った際、含浸試験前後におけるエチレン・プロピレン・ジエンゴム(AS568-009(森清化工社社製))の重量変化率が、本件特許発明2は、「10%以下」であるのに対し、甲4発明は、これが、一応明らかではない点。

イ 判断
前記(1)エで述べた理由と同様の理由により、本件特許発明2は、当業者であっても、甲4発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたということはできない。

(3) 本件特許発明3及び4
本件特許発明3及び4は、本件特許発明1又は2に対して、さらに他の発明特定事項を付加した発明であり、前記(1)ウの(相違点1)で述べた、本件特許発明1又は2の構成を具備するものである。したがって、本件特許発明3及び4も、本件特許発明1及び2と同じ理由により、当業者であっても、甲4発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたということはできない。

7 甲5発明との対比及び判断
(1) 本件特許発明1
ア 対比
(ア) 有機EL表示素子用封止剤
甲5発明の「有機EL素子の封止剤にも適用することができる接着剤組成物」は、本件特許発明1でいう「有機EL表示素子用封止剤」に相当する。

(イ) 重合性化合物と重合開始剤を含有すること
甲5発明の「接着剤組成物」は、「セロキサイド2021P((株)ダイセル製)(3´,4´-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(2個の脂環式エポキシ基を有する化合物)」、「デナコールEX-212(ナガセケムテックス(株)製)(1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(2官能グリシジルエーテル))」、「アロンオキセタンOXT-121(東亞合成(株)製)(キシリレンビスオキセタン)」及び「イルガキュア250(BASF社製)」を含有する。
甲5発明の「セロキサイド2021P((株)ダイセル製)(3´,4´-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(2個の脂環式エポキシ基を有する化合物)」、「デナコールEX-212(ナガセケムテックス(株)製)(1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(2官能グリシジルエーテル))」、「アロンオキセタンOXT-121(東亞合成(株)製)(キシリレンビスオキセタン)」は、本件明細書の段落【0023】及び段落【0025】の記載からみて、本件特許発明1でいう「重合性化合物」に該当する。また、甲5発明の「イルガキュア250(BASF社製)」は、本件特許発明1の「重合開始剤」に該当する。
そうしてみると、甲5発明の「接着剤組成物」は、本件特許発明1の「重合性化合物と重合開始剤とを含有」するという要件を満たす。

(ウ) 多官能ビニルエーテルを含有するものを除くこと
甲5発明の「接着剤組成物」は、その材料組成からみて、本件特許発明1でいう「但し、多官能ビニルエーテルを含有するものを除く」という要件を満たす。

イ 一致点
以上のことから、本件特許発明1と甲5発明とは、次の構成で一致する。
「重合性化合物と重合開始剤とを含有する、
有機EL表示素子用封止剤(但し、多官能ビニルエーテルを含有するものを除く)。」

ウ 相違点
本件特許発明1と甲5発明は、以下の点で相違、又は、一応相違する。
(相違点1)
25℃における粘度が、本件特許発明1は、「5?20mPa・s」であるのに対し、甲5発明は、これが、明らかではない点。

(相違点2)
25℃における表面張力が、本件特許発明1は、「15?30mN/m」であるのに対し、甲5発明は、これが、一応明らかではない点。

(相違点3)
封止剤中にエチレン・プロピレン・ジエンゴム(AS568-009(森清化工社社製))を浸漬させたまま25℃で1週間静置する含浸試験を行った際、含浸試験前後におけるエチレン・プロピレン・ジエンゴム(AS568-009(森清化工社社製))の重量変化率が、本件特許発明1は、「5%以下」であるのに対し、甲5発明は、これが、一応明らかではない点。

(相違点4)
有機EL表示素子用封止剤を、本件特許発明1は、「インクジェット法に用いる」のに対し、甲5発明は、これが、一応明らかではない点。

エ 判断
相違点1について検討する。
(ア) 甲第5号証には、「接着剤組成物」の「25℃における粘度」を「5?20mPa・s」とすることについて記載も示唆もない。

(イ) 甲5発明の「接着剤組成物」は、「水酸基含有化合物」として、分子量11,000の「無溶剤アクリルポリオール」を53重量部含有する。
ここで、甲第6号証の段落【0066】【表1】には、実施例1及び3に、エポキシ化ポリブタジエン、シクロヘキセンオキシド、デナコールEX-141(カチオン重合性化合物、段落【0025】の記載も参照)及びエネルギー線感受性酸発生剤を含むカチオン重合性組成物が記載されており、エポキシ化ポリブタジエンの含有割合が20質量部から40質量部に増えると、カチオン重合性組成物の粘度が13m・PaSから68m・PaSに上昇することが記載されている。
したがって、封止剤中にポリマーを含有させると、その粘度は上昇することは周知の技術事項であると認められる。一方、甲5発明の「接着剤組成物」は、「無溶剤アクリルポリオール」を53重量部含有する。そうしてみると、甲5発明の「接着剤組成物」は、その粘度が「5?20mPa・s」の範囲内にあるとは考えがたい。

(ウ) 甲5発明の「接着剤組成物」における「無溶剤アクリルポリオール」は、甲第5号証の段落【0034】に記載のとおり、「光カチオン重合開始剤によって開環し架橋構造を形成しうる前述のエポキシ化合物とのカチオン重合反応を進行させ、硬化収縮を低減させ、貯蔵弾性率を低下させる上で必須成分」である。したがって、甲5発明の「接着剤組成物」における「無溶剤アクリルポリオール」の含有量を減らすことにより、粘度を減少させようとすると、「硬化収縮を低減させ、貯蔵弾性率を低下させる」という効果が得られなくなる可能性がある。
そうしてみると、甲5発明の「接着剤組成物」の「25℃における粘度」を「5?20mPa・s」とすることについて、阻害要因がある。

(エ) 小括
したがって、その余の相違点を検討するまでもなく、本件特許発明1は、当業者であっても、甲5発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたということはできない。

(2) 本件特許発明2
ア 対比・一致点・相違点
甲5発明の「接着剤組成物」は、「セロキサイド2021P((株)ダイセル製)(3´,4´-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(2個の脂環式エポキシ基を有する化合物)」を含有する。
甲5発明の「セロキサイド2021P((株)ダイセル製)(3´,4´-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(2個の脂環式エポキシ基を有する化合物)」は、その名称が表す化学構造からみて、本件特許発明2でいう「重合性」の「エポキシ化合物」であるから、甲5発明の「接着剤組成物」は、本件特許発明2でいう、「前記重合性化合物は、エポキシ化合物を含有し」という要件を満たす。
そうしてみると、前記(1)ウで述べた(相違点1)、(相違点2)及び(相違点4)に加え、本件特許発明2と甲5発明は、以下の点で相違する。
(相違点5)
封止剤中にエチレン・プロピレン・ジエンゴム(AS568-009(森清化工社社製))を浸漬させたまま25℃で1週間静置する含浸試験を行った際、含浸試験前後におけるエチレン・プロピレン・ジエンゴム(AS568-009(森清化工社社製))の重量変化率が、本件特許発明2は、「10%以下」であるのに対し、甲5発明は、これが、一応明らかではない点。

イ 判断
前記(1)エで述べた理由と同様の理由により、本件特許発明2は、当業者であっても、甲5発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたということはできない。

(3) 本件特許発明3及び4
本件特許発明3及び4は、本件特許発明1又は2に対して、さらに他の発明特定事項を付加した発明であり、前記(1)ウの(相違点1)で述べた、本件特許発明1又は2の構成を具備するものである。したがって、本件特許発明3及び4も、本件特許発明1及び2と同じ理由により、当業者であっても、甲5発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたということはできない。

8 甲6-1発明との対比及び判断
(1) 本件特許発明1
ア 対比
(ア) 有機EL表示素子用封止剤
甲6-1発明の「有機EL用の封止剤に用いるカチオン重合性組成物」は、本件特許発明1でいう「有機EL表示素子用封止剤」に相当する。

(イ) 重合性化合物と重合開始剤を含有すること
甲6-1発明の「カチオン重合性組成物」は、「シクロヘキセンオキシド」、「デナコールEX-141(ナガセケムテックス社製)」及び「CPI-100P(サンアプロ社製)」を含有する。
甲6-1発明の「シクロヘキセンオキシド」及び「デナコールEX-141(ナガセケムテックス社製)」は、本件特許発明1でいう「重合性化合物」に該当する。また、甲6-1発明の「CPI-100P(サンアプロ社製)」は、本件特許発明1の「重合開始剤」に該当する。
そうしてみると、甲6-1発明の「有機EL用の封止剤に用いるカチオン重合性組成物」は、本件特許発明1の「重合性化合物と重合開始剤とを含有」するという要件を満たす。

(ウ) 粘度
甲6-1発明の「有機EL用の封止剤に用いるカチオン重合性組成物」は、「25℃における粘度」が「13mPa・s」である。
したがって、甲6-1発明の「有機EL用の封止剤に用いるカチオン重合性組成物」は、本件特許発明1の「25℃における粘度が5?20mPa・s」という要件を満たす。

(エ) 多官能ビニルエーテルを含有するものを除くこと
甲6-1発明の「カチオン重合性組成物」は、その材料組成からみて、本件特許発明1でいう「但し、多官能ビニルエーテルを含有するものを除く」という要件を満たす。

イ 一致点
以上のことから、本件特許発明1と甲6-1発明とは、次の構成で一致する。
「重合性化合物と重合開始剤とを含有し、
25℃における粘度が5?20mPa・sである、
有機EL表示素子用封止剤(但し、多官能ビニルエーテルを含有するものを除く)。」

ウ 相違点
本件特許発明1と甲6-1発明は、以下の点で相違する。
(相違点1)
25℃における表面張力が、本件特許発明1は、「15?30mN/m」であるのに対し、甲6-1発明は、これが、一応明らかではない点。

(相違点2)
封止剤中にエチレン・プロピレン・ジエンゴム(AS568-009(森清化工社社製))を浸漬させたまま25℃で1週間静置する含浸試験を行った際、含浸試験前後におけるエチレン・プロピレン・ジエンゴム(AS568-009(森清化工社社製))の重量変化率が、本件特許発明1は、「5%以下」であるのに対し、甲6-1発明は、これが、一応明らかではない点。

(相違点3)
有機EL表示素子用封止剤を、本件特許発明1は、「インクジェット法に用いる」のに対し、甲6-1発明は、これが、一応明らかではない点。

エ 判断
事案に鑑み、相違点3について検討する。
(ア) 甲第6号証の段落【0069】には、「カチオン重合性組成物」を「バーコーター」で塗布することが記載されている。しかしながら、甲第6号証には、「有機EL素子の封止材」を「インクジェット法」で塗布することについて、記載も示唆もない。

(イ) また、前記第5の4(2)(引用文献1の段落【0053】を参照)で述べたとおり、「有機EL表示素子用封止剤の粘度が12cps(当合議体注:技術常識からみて、12cps=12mPa・s)を超えると、インクジェットによる塗布が困難となることがある」ことは、周知の技術事項であったことが認められる。
したがって、上記(ア)の記載事項に加え、甲6-1発明の「カチオン重合性組成物」の「25℃における粘度」が「13mPa・s」であることからみて、甲6-1発明の「カチオン重合性組成物」を「インクジェット法に用いる」動機づけがない。

(ウ) 加えて、前記(イ)で述べたとおり、「有機EL表示素子用封止剤の粘度が12cpsを超えると、インクジェットによる塗布が困難となることがある」、甲6-1発明の「カチオン重合性組成物」を「インクジェット法に用いる」ことには、阻害要因がある。

(エ) 小括
したがって、その余の相違点を検討するまでもなく、本件特許発明1は、当業者であっても、甲6-1発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたということはできない。

(2) 本件特許発明2
ア 対比・一致点・相違点
甲6-1発明の「カチオン重合性組成物」は、「デナコールEX-141(ナガセケムテックス社製)」を含有する。
前記第5の19で述べたとおり、甲6-1発明の「デナコールEX-141(ナガセケムテックス社製)」は、本件特許発明2でいう、「重合性」の「エポキシ化合物」である。
そうしてみると、前記(1)ウで述べた(相違点1)及び(相違点3)に加え、本件特許発明2と甲6-1発明は、以下の点で相違する。
(相違点4)
封止剤中にエチレン・プロピレン・ジエンゴム(AS568-009(森清化工社社製))を浸漬させたまま25℃で1週間静置する含浸試験を行った際、含浸試験前後におけるエチレン・プロピレン・ジエンゴム(AS568-009(森清化工社社製))の重量変化率が、本件特許発明2は、「10%以下」であるのに対し、甲5発明は、これが、一応明らかではない点。

イ 判断
前記(1)エで述べた理由と同様の理由により、本件特許発明2は、当業者であっても、甲6-1発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたということはできない。

(3) 本件特許発明3及び4
本件特許発明3及び4は、本件特許発明1又は2に対して、さらに他の発明特定事項を付加した発明であり、前記(1)ウの(相違点3)で述べた、本件特許発明1又は2の構成を具備するものである。したがって、本件特許発明3及び4も、本件特許発明1及び2と同じ理由により、当業者であっても、甲6-1発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたということはできない。

9 甲6-2発明との対比及び判断
(1) 本件特許発明1
ア 対比
(ア) 有機EL表示素子用封止剤
甲6-2発明の「有機EL用の封止剤に用いるカチオン重合性組成物」は、本件特許発明1でいう「有機EL表示素子用封止剤」に相当する。

(イ) 重合性化合物と重合開始剤を含有すること
甲6-2発明の「カチオン重合性組成物」は、「化合物1B-a4:アデカグリシロールED-509S(ADEKA社製)」及び「CPI-100P(サンアプロ社製)」を含有する。
甲6-2発明の「化合物1B-a4:アデカグリシロールED-509S(ADEKA社製)」は、本件特許発明1でいう「重合性化合物」に該当する。また、甲6-2発明の「CPI-100P(サンアプロ社製)」は、本件特許発明1の「重合開始剤」に該当する。
そうしてみると、甲6-2発明の「カチオン重合性組成物」は、本件特許発明1の「重合性化合物と重合開始剤とを含有」するという要件を満たす。

(ウ) 多官能ビニルエーテルを含有するものを除くこと
甲6-2発明の「カチオン重合性組成物」は、その材料組成からみて、本件特許発明1でいう「但し、多官能ビニルエーテルを含有するものを除く」という要件を満たす。

イ 一致点
以上のことから、本件特許発明1と甲6-2発明とは、次の構成で一致する。
「重合性化合物と重合開始剤とを含有する、
有機EL表示素子用封止剤(但し、多官能ビニルエーテルを含有するものを除く)。」

ウ 相違点
本件特許発明1と甲6-2発明は、以下の点で相違する。
(相違点1)
25℃における粘度が、本件特許発明1は、「5?20mN/m」であるのに対し、甲6-2発明は、これが、77?338mPa・sである点。

(相違点2)
25℃における表面張力が、本件特許発明1は、「15?30mN/m」であるのに対し、甲6-2発明は、これが、一応明らかではない点。

(相違点3)
封止剤中にエチレン・プロピレン・ジエンゴム(AS568-009(森清化工社社製))を浸漬させたまま25℃で1週間静置する含浸試験を行った際、含浸試験前後におけるエチレン・プロピレン・ジエンゴム(AS568-009(森清化工社社製))の重量変化率が、本件特許発明1は、「5%以下」であるのに対し、甲6-2発明は、これが、一応明らかではない点。

(相違点4)
有機EL表示素子用封止剤を、本件特許発明1は、「インクジェット法に用いる」のに対し、甲6-2発明は、これが、一応明らかではない点。

エ 判断
事案に鑑み、相違点4について検討する。
(ア) 甲第6号証の段落【0069】には、「カチオン重合性組成物」を「バーコーター」で塗布することが記載されている。しかしながら、甲6-2発明及び甲第6号証には、「有機EL素子の封止材」を「インクジェット法」で塗布することについて、記載も示唆もない。

(イ) また、前記第5の4(2)(引用文献1の段落【0053】を参照)で述べたとおり、「有機EL表示素子用封止剤の粘度が12cps(当合議体注:技術常識からみて、12cps=12mPa・s)を超えると、インクジェットによる塗布が困難となることがある」ことは、周知の技術事項であったことが認められる。
したがって、上記(ア)の記載事項に加え、甲6-2発明の「カチオン重合性組成物」の「25℃における粘度」が77?338mPa・s程度であることからみて、甲6-2発明の「カチオン重合性組成物」を「インクジェット法に用いる」動機付けがない。

(ウ) 加えて、前記(イ)で述べたとおり、「有機EL表示素子用封止剤の粘度が12cpsを超えると、インクジェットによる塗布が困難となることがある」、甲6-2発明の「カチオン重合性組成物」を「インクジェット法に用いる」ことには、阻害要因がある。

(エ) 小括
したがって、その余の相違点を検討するまでもなく、本件特許発明1は、当業者であっても、甲6-2発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたということはできない。

(2) 本件特許発明2
ア 対比
甲6-2発明の「カチオン重合性組成物」は、「アデカグリシロールED-509S(ADEKA社製)」を含有する。
前記第5の20で述べたとおり、甲6-2発明の「アデカグリシロールED-509S(ADEKA社製)」は、本件特許発明2でいう、「重合性」の「エポキシ化合物」である。
そうしてみると、前記(1)ウで述べた(相違点1)、(相違点2)及び(相違点4)に加え、本件特許発明2と甲6-2発明は、以下の点で相違する。
(相違点5)
封止剤中にエチレン・プロピレン・ジエンゴム(AS568-009(森清化工社社製))を浸漬させたまま25℃で1週間静置する含浸試験を行った際、含浸試験前後におけるエチレン・プロピレン・ジエンゴム(AS568-009(森清化工社社製))の重量変化率が、本件特許発明2は、「10%以下」であるのに対し、甲5発明は、これが、一応明らかではない点。

イ 判断
前記(1)エで述べた理由と同様の理由により、本件特許発明2は、当業者であっても、甲6-2発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたということはできない。

(3) 本件特許発明3及び4
本件特許発明3及び4は、本件特許発明1又は2に対して、さらに他の発明特定事項を付加した発明であり、前記(1)ウの(相違点4)で述べた、本件特許発明1又は2の構成を具備するものである。したがって、本件特許発明3及び4も、本件特許発明1及び2と同じ理由により、当業者であっても、甲6-2発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたということはできない。

第7 特許法第36条についての当審の判断
1 特許法第36条第4項第1号(本件特許発明1?4)
前記第5の17に記載のとおり、「エネルギー線硬化性化合物、光重合開始剤」を含むインク組成物について、「表面張力の調整は例えば界面活性剤を表面張力調整剤として用い、その種類と量を変化させて、インクの表面張力を所定の数値範囲に調整すること」や、「粘度の調整は主にエネルギー線硬化性化合物の種類と配合を変化させて、所定の数値範囲に調整すること」は、本件特許の出願時の当業者における技術常識であったと認められる。
そして、材料の粘度測定は、周知の技術事項であって、当業者であれば、所定の材料の粘度測定を、市販の粘度計を使用して容易に行うことができる。
また、前記5の21に記載のとおり、インクジェット装置に使用されるものを含む一般的なEPDMは軟化剤等を含むこと、軟化剤がインク中のカチオン重合性化合物に溶出しやすいことは、本件特許の出願時の当業者における技術常識であったと認められる。
加えて、本件明細書の段落【0020】には、「上記粘度、上記表面張力、及び、上記含浸試験前後におけるEPDMゴムの重量変化率は、後述する、重合性化合物、重合開始剤、及び、含有してもよいその他の成分について、これらの種類の選択及び含有割合の調整により、上述した範囲とすることができる。」と記載されている。また、段落【0084】?段落【0094】には、「有機EL表示素子用封止剤」の実施例及び比較例が、材料組成とともに開示されている。加えて、本件明細書の段落【0084】には、「EPDMゴムの重量変化率」を測定する際に、その試料として「エチレン・プロピレン・ジエンゴム(AS568-009(森清化工社社製))」を使用することが記載されている。
そうしてみると、発明の詳細な説明の記載は、本件特許発明の全体について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるといえる。

2 特許法第36条第6項第1号(本件特許発明1?4)
本件明細書の段落【0007】の記載によると、本件特許発明の課題は、「インクジェット法により容易に塗布することができ、低アウトガス性に優れ、かつ、インクジェット装置のダメージを低減できる有機EL表示素子用封止剤を提供すること」と認められる。
そして、発明の詳細な説明には、上記課題を解決するための具体物として、「25℃における粘度が5?20mPa・sであり、25℃における表面張力が15?30mN/mであり、かつ、封止剤中にエチレン・プロピレン・ジエンゴムを浸漬させたまま25℃で1週間静置する含浸試験を行った際、含浸試験前後におけるエチレン・プロピレン・ジエンゴムの重量変化率が5%以下である有機EL表示素子用封止剤」が記載されている。
特に、「有機EL表示素子用封止剤」の「粘度」について、本件明細書の段落【0015】には、「上記非加熱式インクジェット法によって塗布する場合の本発明の有機EL表示素子用封止剤の粘度の好ましい下限は5mPa・s、好ましい上限は20mPa.sである。上記粘度がこの範囲であることにより、非加熱式インクジェット法によって好適に塗布することができる。」と記載されており、その点は、実施例5?8及び実験例1及び2からも理解することができる。
したがって、「25℃における粘度」、「25℃における表面張力」及び「封止剤中にエチレン・プロピレン・ジエンゴムを浸漬させたまま25℃で1週間静置する含浸試験を行った際、含浸試験前後におけるエチレン・プロピレン・ジエンゴムの重量変化率」を本件特許の請求項1の範囲に設定することにより、本件特許発明の課題を解決できることが、具体的に確認されていると認められる。
以上より、本件特許発明の範囲は、発明の詳細な説明に記載された事項から、課題を解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲内にあるといえる。

3 特許法第36条第6項第2号(本件特許発明1?4)
本件明細書の段落【0018】には、「上記EPDMゴムの重量変化率が10%以下であることにより、インクジェット装置のダメージを低減する効果に優れるものとなる。」と記載され、さらに、段落【0021】には、「本発明者らは、上述したインクジェット装置のダメージの原因は、装置のヘッド部分等に用いられているゴム材料と封止剤との相溶性が高いことであると考えた。」と記載されている。そうしてみると、請求項1及び2に記載の「封止剤中にエチレン・プロピレン・ジエンゴムを浸漬させたまま25℃で1週間静置する含浸試験を行った際、含浸試験前後におけるエチレン・プロピレン・ジエンゴムの重量変化率」は、「インクジェット装置」の「ヘッド部分等に用いられているゴム材料と封止剤との相溶性」に依存する特性と認められる。
そして、前記第5の21に記載のとおり、EPDMゴムにおける軟化剤等の溶出の程度が、カチオン重合性化合物に種類に依存することは、周知の技術事項である。また、前記1で述べたとおり、本件明細書の段落【0084】?段落【0094】には、「有機EL表示素子用封止剤」の実施例及び比較例が、材料組成とともに開示されており、「EPDMゴムの重量変化率」を測定する際に、その試料として「エチレン・プロピレン・ジエンゴム(AS568-009(森清化工社社製))」を使用することが記載されている。
したがって、どのような「有機EL表示素子用封止剤」であれば、「封止剤中にエチレン・プロピレン・ジエンゴムを浸漬させたまま25℃で1週間静置する含浸試験を行った際、含浸試験前後におけるエチレン・プロピレン・ジエンゴムの重量変化率」について、本件特許発明1及び2に記載の条件の満足するものとなるかについて、当業者であれば、追試により把握することができるといえる。
そうしてみると、本件特許発明は、明確である。

第8 むすび
したがって、取消理由通知書に記載した取消しの理由(特許異議申立書に記載された特許異議申立ての理由)によっては、本件特許発明1?4を取り消すことはできない。
また、他に本件特許発明1?4を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性化合物と重合開始剤とを含有し、
25℃における粘度が5?20mPa・sであり、25℃における表面張力が15?30mN/mであり、かつ、
封止剤中にエチレン・プロピレン・ジエンゴム(AS568-009(森清化工社社製))を浸漬させたまま25℃で1週間静置する含浸試験を行った際、含浸試験前後におけるエチレン・プロピレン・ジエンゴム(AS568-009(森清化工社社製))の重量変化率が5%以下である
ことを特徴とするインクジェット法に用いる有機EL表示素子用封止剤(但し、多官能ビニルエーテルを含有するものを除く)。
【請求項2】
重合性化合物と重合開始剤とを含有し、
前記重合性化合物は、エポキシ化合物を含有し、
25℃における粘度が5?20mPa・sであり、25℃における表面張力が15?30mN/mであり、かつ、
封止剤中にエチレン・プロピレン・ジエンゴム(AS568-009(森清化工社社製))を浸漬させたまま25℃で1週間静置する含浸試験を行った際、含浸試験前後におけるエチレン・プロピレン・ジエンゴム(AS568-009(森清化工社社製))の重量変化率が10%以下である
ことを特徴とするインクジェット法に用いる有機EL表示素子用封止剤(但し、多官能ビニルエーテルを含有するものを除く)。
【請求項3】
重合性化合物は、分子内に酸素原子を17%以上含む化合物を、重合性化合物全体100重量部中に10?100重量部含有することを特徴とする請求項1又は2記載の有機EL表示素子用封止剤。
【請求項4】
溶剤を含有しない、又は、溶剤の含有量が0.05重量%以下であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の有機EL表示素子用封止剤。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-02-27 
出願番号 特願2017-556271(P2017-556271)
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (H05B)
P 1 651・ 113- YAA (H05B)
P 1 651・ 121- YAA (H05B)
P 1 651・ 537- YAA (H05B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 辻本 寛司  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 宮澤 浩
高松 大
登録日 2018-09-21 
登録番号 特許第6404496号(P6404496)
権利者 積水化学工業株式会社
発明の名称 有機EL表示素子用封止剤  
代理人 特許業務法人 安富国際特許事務所  
代理人 特許業務法人安富国際特許事務所  
代理人 田口 昌浩  
代理人 田口 昌浩  
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