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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H04B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04B
管理番号 1362134
審判番号 不服2018-17075  
総通号数 246 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-12-21 
確定日 2020-05-07 
事件の表示 特願2015-552827「空対地のデータリンクアンテナ自己較正(AIR-TO-GROUND DATA LINK ANTENNA SELF CALIBRATION)のための方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 7月17日国際公開、WO2014/110427、平成28年 8月 4日国内公表、特表2016-522997〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)1月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年1月13日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成27年 9月11日 :手続補正書、上申書の提出
平成27年 9月14日 :手続補正書、上申書の提出
平成28年12月19日 :手続補正書、上申書の提出
平成29年 9月27日付け:拒絶理由通知書
平成30年 3月28日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年 8月15日付け:拒絶査定
平成30年12月21日 :拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提出
平成31年 1月16日 :手続補正書(方式)による請求の理由の補充
平成31年 2月 1日 :前置報告書
令和 元年 6月 5日 :上申書

第2 平成30年12月21日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年12月21日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲
本件補正により、特許請求の範囲の請求項6の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「【請求項6】
基地局からの隣接するビーム間の干渉を低減するために、対応する複数のビームで複数の航空機と通信するように構成される基地局アンテナのビームパターンを精製するための装置であって、
前記複数の航空機の各々から位置決定を受信するための手段と、
前記複数の航空機の各々の姿勢を受信するための手段と、
前記複数の航空機の各々からパイロット信号の測定値のレポートを受信するための手段と、前記パイロット信号は、基地局によって送信されており、各レポートは、航空機に対応するビームの中のパイロット信号の測定値、および前記複数の航空機の各々に対応するビームの中のパイロット信号の測定値を含む、そして、
前記ビームパターンを精製するために少なくとも1つのアンテナ送信要素を駆動する信号の振幅および位相を調整するための手段と、前記調整することは、前記複数の航空機の各々の前記受信された姿勢、前記受信された位置決定、および前記パイロット信号の前記測定値に少なくとも部分的に基づく、
を備える、上記装置。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成30年3月28日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項6の記載は次のとおりである。
「【請求項6】
対応する複数のビームで複数の航空機と通信するように構成される基地局アンテナのビームパターンを精製するための装置であって、
前記複数の航空機の各々から位置決定を受信するための手段と、
前記複数の航空機の各々の姿勢を受信するための手段と、
前記複数の航空機の各々からパイロット信号の測定値のレポートを受信するための手段と、前記パイロット信号は、基地局によって送信された、各レポートは、航空機に対応するビームの中のパイロット信号の測定値、および前記複数の航空機の各々に対応するビームの中のパイロット信号の測定値を含む、そして、
前記ビームパターンを精製するための少なくとも1つのアンテナ送信要素を駆動して信号の振幅および位相を調整するための手段と、前記調整することは、前記複数の航空機の各々の前記受信された姿勢、前記受信された位置決定、および前記パイロット信号の前記測定値に少なくとも部分的に基づく、
を備える、上記装置。」

2 補正の適否
本件補正前の特許請求の範囲の請求項6の「前記パイロット信号は、基地局によって送信された」との記載及び「前記ビームパターンを精製するための少なくとも1つのアンテナ送信要素を駆動して信号の振幅および位相を調整するための手段と」との記載を、それぞれ「前記パイロット信号は、基地局によって送信されており、」との記載及び「前記ビームパターンを精製するために少なくとも1つのアンテナ送信要素を駆動する信号の振幅および位相を調整するための手段と」との記載へ補正することは、誤記の訂正ないし明りょうでない記載の釈明に該当する。
上記以外の特許請求の範囲の請求項6についての補正は、補正前の請求項6に記載された発明(以下、「本願発明」という。)を特定するために必要な事項である「基地局アンテナのビームパターンを精製する」という動作について、「基地局からの隣接するビーム間の干渉を低減するために」との限定を付加するものであって、本願発明と補正後の請求項6に記載される発明(以下、「本件補正発明」という。)の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正発明が同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1) サポート要件に関する独立特許要件
ア 本件補正後の請求項6は「前記複数の航空機の各々からパイロット信号の測定値のレポートを受信するための手段と、前記パイロット信号は、基地局によって送信されており、各レポートは、航空機に対応するビームの中のパイロット信号の測定値、および前記複数の航空機の各々に対応するビームの中のパイロット信号の測定値を含む」との記載を含むが、当該記載による発明特定事項は、「前記複数の航空機の各々からパイロット信号の測定値のレポートを受信するための手段」という発明特定事項(以下、「特定事項1」という。)と、特定事項1のうちパイロット信号を「前記パイロット信号は、基地局によって送信されており」と特定する事項(以下、「特定事項2」という。)と、特定事項1のうちレポートを「各レポートは、航空機に対応するビームの中のパイロット信号の測定値、および前記複数の航空機の各々に対応するビームの中のパイロット信号の測定値を含む」と特定する事項(以下、「特定事項3」という。)に分けることができる。

イ そして、特定事項1及び2については本願の発明の詳細な説明に記載されているものの、特定事項3については本願の発明の詳細な説明に記載されておらず、かつ、技術常識であるとも認められない。以下、特定事項3について詳述する。
特定事項3は、「各レポート」すなわち航空機の各々が送信するレポートのうちのどの1つについてみても、「航空機に対応するビームの中のパイロット信号の測定値」(以下、「測定値1」という。)と「前記複数の航空機の各々に対応するビームの中のパイロット信号の測定値」(以下、「測定値2」という。)とが含まれていることを特定している。ここで、測定値1の「航空機」がどの航空機のことを示しているのかは明瞭とはいえないが、文脈からレポートを送信した航空機のことを示していると推察され、よって、測定値1はレポートを送信した航空機に対応するビームの中のパイロット信号の測定値であると推察される。これと対照的に、測定値2は、航空機に対応するビームの中のパイロット信号の測定値ではなく、「前記複数の航空機の各々に対応するビームの中のパイロット信号の測定値」だとされている。したがって、特定事項3は、各航空機が送信する「レポート」の中に、該航空機に対応するビームの中のパイロット信号の測定値だけではなく、他の航空機に対応するビームの中の測定値が含まれていることを特定していると認められる。
他方、本願の発明の詳細な説明には、各々の航空機がパイロット信号の測定値を含むレポートを送信すること(【0011】、【0036】、【0057】)及び各々の航空機からのパイロット信号の測定値に基づいてアンテナ送信要素を調整すること(【0011】?【0013】、【0015】、【0057】、【0058】)は記載されているものの、各航空機からのレポートに他の航空機に対応するビームの中のパイロット信号の測定値が含まれていることや、それを伺わせることは記載されていない。本願の発明の詳細な説明の他の部分を参照しても、ある航空機からのレポートに他の航空機に対応するビームの中のパイロット信号の測定値が含まれていることは記載されていない。
そして、パイロット信号の測定値を返送するような無線通信において、各局が他の局宛てのパイロット信号についての測定値を返送することは技術常識であるとは認められず、むしろ、各局は自局宛のパイロット信号についての測定値のみを返送することが当然であると認められる。
そうすると、特定事項3を含む本件補正発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではないため、特許法36条6項1号の規定に違反し、独立して特許を受けることができるものではない。

ウ 審判請求人はこの点につき反論をしており、その根拠として、本願の発明の詳細な説明の【0057】及び【0058】(平成30年3月38日の意見書5頁6?29行)、【0008】、【0011】及び【0058】(手続補正書(方式)2頁36行?3頁26行)並びに【0032】、【0036】及び【0037】(令和元年6月5日の上申書2頁22行?3頁6行)の記載を挙げている。
しかしながら、【0008】は航空機のアンテナの指向性について記載しているのみである。【0011】については前記イのとおりである。【0032】は基地局で受信される信号に依存してビーム形成がされること及びビームにパイロット信号が含有されることについて記載しているが、ある航空機からのレポートに他の航空機に対応するビームの中のパイロット信号の測定値が含まれることは記載していない。【0036】については前記イのとおりである。【0037】は、第1の航空機でパイロット信号を測定し、基地局にパイロット信号測定レポートを送信することについて記載しているが、第1の航空機が他の航空機に対応するビーム中のパイロット信号の測定値をレポートに含めて送信することについては記載していない。【0057】及び【0058】については前記イのとおりである。
そうすると、審判請求人の反論には理由がない。

エ 小括
前記イ及びウによれば、本件補正発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではなく、特許法36条6項1号の規定に違反し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
前記2のとおりであるから、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は前記第2のとおり却下されたので、本願発明は、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2.原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の理由2は、概略、以下のとおりである。

理由2.請求項1,6について、パイロット信号の測定値のレポートが、「複数の航空機の各々に対応するビームの中のパイロット信号の測定値」を含むことは、発明の詳細な説明に実施例として記載されていない。したがって、請求項1,6及び当該請求項を引用する請求項2?5,7に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものでない。

3.理由2についての判断
本願発明は、本件補正発明が備える特定事項3を同じく備えるものである。そして、本件補正による本願の発明の詳細な説明の補正は、誤記の訂正ないし明りょうでない記載の釈明に過ぎないものである。そうすると、前記第2[理由]2(1)イ及びウと同様の理由で、本願発明は、本願の発明の詳細な説明に記載されたものではない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法36条6項1号の規定に違反するから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-11-28 
結審通知日 2019-12-03 
審決日 2019-12-16 
出願番号 特願2015-552827(P2015-552827)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (H04B)
P 1 8・ 575- Z (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 原田 聖子  
特許庁審判長 北岡 浩
特許庁審判官 丸山 高政
衣鳩 文彦
発明の名称 空対地のデータリンクアンテナ自己較正(AIR-TO-GROUND DATA LINK ANTENNA SELF CALIBRATION)のための方法  
代理人 福原 淑弘  
代理人 中丸 慶洋  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 井関 守三  
代理人 岡田 貴志  

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