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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08L
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C08L
管理番号 1362329
異議申立番号 異議2019-700129  
総通号数 246 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-06-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-02-15 
確定日 2020-03-30 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6373384号発明「組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6373384号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、〔1-25〕について訂正することを認める。 特許第6373384号の請求項1-12、15-25に係る特許を維持する。 特許第6373384号の請求項13、14に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6373384号(請求項の数25。以下、「本件特許」という。)は、2014年(平成26年)11月25日(パリ条約による優先権主張 2013年(平成25年)11月27日 英国)を国際出願日とする出願であって、平成30年7月27日に設定登録され、同年8月15日に特許掲載公報が発行され、その後、本件特許の請求項1?25に係る特許に対し、平成31年2月15日に特許異議申立人 ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。
その後の手続の経緯は以下のとおりである。

平成31年 4月23日 上申書(申立人)
令和 1年 5月10日付け 審尋(申立人に対して)
令和 1年 8月13日 回答書(申立人)
令和 1年 9月24日付け 取消理由通知書(特許権者に対して)
令和 1年12月20日 意見書、訂正請求書(特許権者)
令和 2年 1月20日付け 通知書(訂正請求があった旨の通知)
令和 2年 2月21日 意見書(申立人)

第2 訂正の請求について
1 訂正の内容
令和1年12月20日付けの訂正請求書による訂正「以下、「本件訂正」という。」の請求は、本件特許請求の範囲を上記訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?25について訂正することを求めるものであり、その内容は、以下のとおりである。下線は、訂正箇所を示す。

(1)訂正事項1-1
特許請求の範囲の請求項1に、「融点が約50℃以下」とあるのを、「融点が50℃以下」に訂正する。

(2)訂正事項1-2
特許請求の範囲の請求項1に、「である、安定化組成物。」とあるのを、「である安定化組成物であって、
該安定化組成物中の安定化成分の比(前記第一の安定化成分:前記第二の安定化成分:前記第三の安定化成分)が、(1?3):(0.01?2):(2?6)である、安定化組成物。」に訂正する。

(3)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に、「融点が約40℃以下」とあるのを、「融点が40℃以下」に訂正する。

(4)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に、「融点が約30℃以下」とあるのを、「融点が30℃以下」に訂正する。

(5)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項9に、「安定化組成物の約15重量%?約45重量%の量で存在する」とあるのを、「安定化組成物の15重量%?45重量%の量で存在する」に訂正する。

(6)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項11に、「安定化組成物の約1重量%?約40重量%の量で存在する」とあるのを、「安定化組成物の1重量%?40重量%の量で存在する」に訂正する。

(7)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項13を削除する。

(8)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項14を削除する。

(9)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項15に、「請求項1から14のいずれか一項に記載の安定化組成物。」とあるのを、「請求項1から12のいずれか一項に記載の安定化組成物。」に訂正する。

(10)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項21に、「a.請求項1から15のいずれか一項に記載の安定化組成物を準備するステップ;」とあるのを、「a.請求項1から12および15のいずれか一項に記載の安定化組成物を準備するステップ;」に訂正する。

(11)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項22に、「ポリマー、架橋剤および請求項1から15のいずれか一項に記載の安定化組成物を含む」とあるのを、「ポリマー、架橋剤および請求項1から12および15のいずれか一項に記載の安定化組成物を含む」に訂正する。

本件訂正請求は、一群の請求項1?25に対して請求されたものである。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1-1、2、3について
訂正事項1-1、2、3は、「約」の記載を削除することにより、融点の温度についての不明瞭な記載を明確にするものである。してみると、この訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであると認められる。
そして、訂正事項1-1、2、3は、訂正前の請求項1、2又は3に記載された安定化組成物の融点を特定するものであるから、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(2)訂正事項1-2について
訂正事項1-2は、請求項1において、安定化組成物中の安定化成分の比(前記第一の安定化成分:前記第二の安定化成分:前記第三の安定化成分)が、(1?3):(0.01?2):(2?6)であることを特定事項として追加するものである。してみると、この訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認められる。
そして、訂正事項1-2は、訂正前の請求項1に記載された安定化組成物中の安定化成分である「a.少なくとも1つの完全ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第一の安定化成分」、「b.少なくとも1つの部分ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第二の安定化成分」、「c.少なくとも1つの含硫酸化防止剤を含む第三の安定化成分」について、それぞれ「第一の安定化成分」:「前記第二の安定化成分」、「前記第三の安定化成分」とした上で、(第一の安定化成分:前記第二の安定化成分:前記第三の安定化成分)が、(1?3):(0.01?2):(2?6)であることを特定するものであり、本件特許明細書の【0059】に記載された「好ましくは、安定化組成物中の安定化成分の比(a):(b):(c)は、(約1?約3):(約0.01?約2):(約2?約6)」の記載に基づき特定するものであるから、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(3)訂正事項4、5について
訂正事項4、5は、「約」の記載を削除することにより、安定化成分(a)または安定化成分(b)の配合量についての不明瞭な記載を明確にするものである。してみると、この訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであると認められる。
そして、訂正事項4、5は、訂正前の請求項9または11に記載された安定化成分(a)または安定化成分(b)の配合量を特定するものであるから、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(4)訂正事項6、7について
訂正事項6、7は、それぞれ、請求項13、14を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認められる。
そして、訂正事項6、7は、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(5)訂正事項8?10について
訂正事項8は、訂正前の請求項13、14の削除に伴って、訂正後の請求項15の従属先の規定から係る請求項13、14を削除するものである。
訂正事項9は、訂正前の請求項13、14の削除に伴って、訂正後の請求項21の従属先の規定から係る請求項13、14を削除するものである。
訂正事項10は、訂正前の請求項13、14の削除に伴って、訂正後の請求項22の従属先の規定から係る請求項13、14を削除するものである。
したがって、これらの訂正は、それぞれ、訂正前の請求項13、14を訂正後の請求項15、21、22から削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認められる。
そして、訂正事項8?10は、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項ないし第6項の規定に適合するので、本件訂正を認める。

第3 本件訂正後の請求項1?25に係る発明
上記第2で述べたように、本件訂正は認められるので、本件訂正により訂正された請求項1?25に係る発明(以下「本件訂正発明1」等という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?25に記載された以下の事項によって特定されるとおりのものである(以下、本件特許の明細書に添付した明細書を「本件明細書」という。)

「 【請求項1】
a.少なくとも1つの完全ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第一の安定化成分;
b.少なくとも1つの部分ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第二の安定化成分;および
c.少なくとも1つの含硫酸化防止剤を含む第三の安定化成分
を含み、
大気圧、即ち101.325kPaでの融点が50℃以下である安定化組成物であって、
該安定化組成物中の安定化成分の比(前記第一の安定化成分:前記第二の安定化成分:前記第三の安定化成分)が、(1?3):(0.01?2):(2?6)である、
安定化組成物。
【請求項2】
大気圧、即ち101.325kPaでの融点が40℃以下である、請求項1に記載の安定化組成物。
【請求項3】
大気圧、即ち101.325kPaでの融点が30℃以下である、請求項1に記載の安定化組成物。
【請求項4】
大気圧、即ち101.325kPaでの融点が50℃未満である液体組成物である、 請求項1に記載の安定化組成物。
【請求項5】
大気圧、即ち101.325kPaでの融点が40℃未満である液体組成物である、請求項1に記載の安定化組成物。
【請求項6】
大気圧、即ち101.325kPaでの融点が30℃未満である液体組成物である、請求項1に記載の安定化組成物。
【請求項7】
少なくとも1つの低度ヒンダードフェノール系酸化防止剤および/または非ヒンダードフェノール系酸化防止剤を追加で含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の安定化組成物。
【請求項8】
安定化成分(a)が、3-(3’5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のC13?C15直鎖および分岐アルキルエステル(ANOX(登録商標)1315-CAS171090-93-0);オクタデシル3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオナート(ANOX(登録商標)PP18-CAS2082-79-3);N,N’-ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド](LOWINOX(登録商標)HD98-CAS23128-74-7);3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のC9?C11直鎖および分岐アルキルエステル(NAUGARD(登録商標)PS48-CAS125643-61-0);ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT-CAS128-37-0);2,6-ジ-ターシャリー-ブチル-4-sec-ブチルフェノール(Isonox(登録商標)132-CAS17540-75-9);2,6-ジ-ターシャリー-ブチル-4-ノニルフェノール(Isonox(登録商標)232)、テトラキスメチレン(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナマート)メタン(ANOX(登録商標)20-CAS6683-19-8);1,3,5-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌラート(ANOX(登録商標)IC14-CAS27676-62-6);1,2-ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナモイル)ヒドラジン(LOWINOX(登録商標)MD24-CAS32687-78-8);2,2’チオジエチレンビス[3(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](ANOX(登録商標)70-CAS41484-35-9);1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン(ANOX(登録商標)330-CAS1709-70-2);ブチル化ヒドロキシトルエン;および/またはこれらのうちの2以上の相溶性混合物のうちの1つまたは複数を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の安定化組成物。
【請求項9】
安定化成分(a)が、安定化組成物中に、安定化組成物の15重量%?45重量%の量で存在する、請求項1から8のいずれか一項に記載の安定化組成物。
【請求項10】
安定化成分(b)が、2-(1,1-ジメチルエチル)-4,6-ジメチル-フェノール(LOWINOX(登録商標)624-CAS1879-09-0);6-tert-ブチル-2-メチルフェノール、(CAS2219-82-1);4,6-ジ-tert-ブチル-2-メチルフェノール、6-tert-ブチル-2-メチルフェノール、2-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2-tert-ブチル-5-メチルフェノール、2,4-ジ-tert-ブチルフェノール;2,4-ジ-tert-ペンチルフェノール;トリエチレングリコール-ビス-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオナート](LOWINOX(登録商標)GP45-CAS36443-68-2);1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシル-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン(LOWINOX(登録商標)1790);2,2’-エチリデンビス[4,6-ジ-t-ブチルフェノール](ANOX(登録商標)29-CAS35958-30-
6);2,2’メチレンビス(6-t-ブチル-4-メチルフェノール)(LOWINOX(登録商標)22M46-CAS119-47-1);および/またはこれらのうちの2以上の相溶性混合物のうちの1つまたは複数を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の安定化組成物。
【請求項11】
安定化成分(b)が、安定化組成物中に、安定化組成物の1重量%?40重量%の量で存在する、請求項1から10のいずれか一項に記載の安定化組成物。
【請求項12】
安定化成分(c)が、ジトリデシルチオジプロピオナート(NAUGARD(登録商標)DTDTDP(液体)CAS-10595-72-9);2,4-ビス(n-オクチルチオメチル)-6-メチルフェノール(Irganox(登録商標)1520-CAS110533-27-0);ペンタエリトリトールテトラキス(β-ラウリルチオプロピオナート)(NAUGARD(登録商標)412S-CAS29598-76-3);ジラウリル-3,3’-チオジプロピオナート(NAUGARD(登録商標)DLTDP-CAS123-28-4);ジステアリル-3,3’-チオジプロピオナート(NAUGARD(登録商標)DSTDP-CAS693-36-7);2,2’チオジエチレンビス[3(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](ANOX(登録商標)70-CAS41484-35-9);ジミリスチルチオジプロピオナート(Cyanox(登録商標)MTDP-CAS16545-54-3);ジステアリル-ジスルフィド(Hostanox(登録商標)SE10-CAS2500-88-1);および/またはこれらのうちの2以上の相溶性混合物のうちの1つまたは複数を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の安定化組成物。
【請求項13】
(削除)
【請求項14】
(削除)
【請求項15】
安定化組成物が枠組規制EC1935/2004に定められた基準を満たすように食品接触に適合したものである、請求項1から12のいずれか一項に記載の安定化組成物。
【請求項16】
(a)高分子基材;
(b)架橋剤;および
(c)請求項1から12のいずれか一項に記載の安定化組成物
を含む、安定化させた絶縁または半導体組成物。
【請求項17】
高分子基材が、ポリオレフィン、EVA、EBA、EMA、EEA、MAH、エチレンプロピレンゴム(EPR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム、ポリウレタンゴム、またはエチレンプロピレンジエンモノマーから製造したポリマーのうちの1つまたは複数を含む、請求項16に記載の安定化させた絶縁または半導体組成物。
【請求項18】
架橋剤が過酸化物である、請求項16または請求項17に記載の安定化させた絶縁または半導体組成物。
【請求項19】
過酸化物が有機過酸化物である、請求項18に記載の安定化させた絶縁または半導体組成物。
【請求項20】
安定化させた絶縁または半導体組成物が枠組規制EC1935/2004に定められた
基準もしくは規制EU10/2011に定められた基準を満たすように食品接触に適合したものである、請求項16?19のいずれか一項に記載の安定化させた絶縁または半導体組成物。
【請求項21】
a.請求項1から12および15のいずれか一項に記載の安定化組成物を準備するステップ;
b.安定化組成物またはその成分をポリマーおよび架橋剤と合わせるステップ;
c.ポリマーから溶融物を形成するステップ;および
d.溶融物を、場合によってワイヤーまたはケーブルの絶縁スリーブの形態で押し出すステップ
を含む、安定化させた絶縁または半導体組成物を形成する方法。
【請求項22】
ポリマー、架橋剤および請求項1から12および15のいずれか一項に記載の安定化組成物を含む高分子溶融物の押出成形品を含む、押し出し、安定化させた絶縁または半導体組成物。
【請求項23】
請求項22に記載の安定化させた絶縁または半導体組成物で包まれた、または組成物を包むワイヤーまたはケーブル。
【請求項24】
請求項23に記載のワイヤーまたはケーブルを含む有用な物品。
【請求項25】
請求項23に記載のワイヤーまたはケーブルの電気系統における使用。」

第4 特許異議の申立ての理由及び取消理由の概要
1 特許異議の申立書に記載した特許異議の申立の理由
本件特許1?25に係る特許は、下記(1)?(6)のとおり、特許法第113条第2号、及び同法第113条第4号に該当する。証拠方法として、下記(7)の甲第1号証?甲第10号証(以下、単に「甲1」等という。)を提出する。

(1)申立理由1(新規性)
本件訂正前の請求項1?25に係る発明は、甲1?甲5に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定に違反して特許されたものであって、特許法第113条第2項に該当し、取り消されるべきものである。

(2)申立理由2(進歩性)
本件訂正前の請求項1?25に係る発明は、甲1?甲7に基いて、当業者が容易に想到し得たものであり、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであって、特許法第113条第2項に該当し、取り消されるべきものである。

(3)申立理由3(明確性要件)
本件訂正前の請求項1?3、9、11、13、14の記載は明確ではなく、請求項1?3、9、11、13、14に係る発明は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反するものであるから、同法113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

(4)申立理由4(明確性要件)
本件訂正前の請求項1の記載は明確ではなく、請求項1に係る発明は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反するものであるから、同法113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

(5)申立理由5(実施可能要件)(サポート要件)
本件件訂正前の請求項1?6に係る発明は、当業者が実施できる程度に記載されたものではなく、また、発明の詳細な説明に記載されたものではないから、発明の詳細な説明、及び特許請求の範囲が特許法第36条第4項第1号及び同法第36条第6項第1号の規定に違反するものであって、同法113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

(6)申立理由6(実施可能要件)(サポート要件)
本件訂正前の請求項1に係る発明は、当業者が実施できる程度に記載されたものではなく、また、発明の詳細な説明に記載されたものではないから、発明の詳細な説明、及び特許請求の範囲が特許法第36条第4項第1号及び同法第36条第6項第1号の規定に違反するものであって、同法113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

(7)証拠方法
申立人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。
ア 申立書に添付された証拠
甲1:Ciba Specialty Chemicals社
IRGANOX 1141(1998年)
甲2:BASF Schweiz社
Technical Information
「Irgastab^(R) MBS 11」(2010年9月)
甲3:特開平11-315179号公報
甲4:特開平9-227862号公報
甲5:特表2008-539288号公報
甲6:Hans-Wilhelm Engels et al.,
「Rubber,9. Chemicals and
Additives」,
Wiley-VCH Verlag社 (2011年)
甲7:特表2007-510767号公報

イ 回答書に添付された証拠
甲8:甲1が1998年の時点で公知であることを証明する、ハインツ・ヘアプストによる宣誓書(2019年7月12日)
甲9:新製品IRGANOX^(R)1141に関する1998年9月25日付けのニュースリリースのウェブアーカイブ
「URL:https://web.archive.org/web/19990219220211/www.cibasc.com/di/ad/wn/nr_98_26_9/nr_1141_e.asp」
甲10:甲第2号証が2010年9月の時点で公知であることを証明する、ハインツ・ヘアプストによる宣誓書(2019年7月12日)

(また、^(R)は丸付きである。以下同じ。)

2 取消理由通知書に記載した取消理由
理由1(新規性)本件発明1?6、8、11?13、15は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明であり、特許法第29条第1号第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
理由2(明確性要件)本件発明1?25は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。



1 取消理由1(新規性)について
(1)甲1を主引用例とした場合
・請求項1?6、8、11?13、15
・引用文献等 甲1、甲7

(2)甲2を主引用例とした場合
・請求項1?6、8、12、13、15
・引用文献等 甲2

(3)甲3を主引用例とした場合
・請求項1?6、8、12、13、15
・引用文献等 甲3

2 取消理由2(明確性要件)について
・請求項1?25
(1)「約」について
(2)「約」について

引用文献等一覧
甲1:Ciba Specialty Chemicals社
IRGANOX 1141(1998年)
甲2:BASF Schweiz社
Technical Information
「Irgastab^(R) MBS 11」(2010年9月)
甲3:特開平11-315179号公報
甲7:特表2007-510767号公報

第5 当審の判断
以下に述べるように、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件訂正発明1?12、15?25に係る特許を取り消すことはできない。
以下、詳述する。

1 取消理由通知書に記載した取消理由
(1)取消理由1(新規性)について
ア 甲1を主引用例とした場合
(ア)甲1の記載と甲1に記載された発明
甲1には、以下の記載がある。ここで、甲1には、頁表記のない頁があるが、5頁の前の頁を4頁、9頁の後の頁を10頁として以下摘記を行った。当審訳は申立人により提出された甲1部分訳による。

(ア-1)「The ABS and MBS industries are on the constant lookout for products which fulfill their ever-increasing needs for greater reliability and better cost-to-performance. IRGANOX^(R) 1141 stabilizer from Ciba Specialty Chemicals is a novel liquid product that succeeds in meeting the challenge. IRGANOX^(R) 1141 satisfies the market requirements for an environmentally sound, reliable and efficient stabilizing system with broad coverage of indirect food contact approvals.」(4頁左欄1?10行)
(当審訳:ABSおよびMBS産業は、より高い信頼性およびより良好なコストパフォーマンスについて高まるニーズを満たす製品を探し続けている。Ciba Specialty Chemicals製のIRGANOX(登録商標)1141安定剤は、その課題に対応することに成功する新規の液体の製品である。IRGANOX(登録商標)1141は、広範囲の間接的な食品接触の承認を有する、環境に優しく、信頼性があり且つ効率的な安定化系についての市場の要請を果たす。)

(イ-1)「Since MBS has always a high polybutadiene content and is thus prone to oxidation during the drying step a stabilizer combination of a phenolic antioxidant and a thiosynergist is required so that the polymer can safely pass the drying step.・・・The synergistic blends of IRGANOX^(R) 1141 and IRGANOX^(R) PS 800 outperform the current standard stabilizer packages. Due to the inherent properties of IRGANOX^(R) 1141, lower concentrations can be used compared to standard stabilization systems(Figure 7).」(9頁左欄1行?右欄9行)
(当審訳:MBSは常に高いポリブタジエン含有率を有し、ひいては乾燥段階の間に酸化する傾向があるので、ポリマーが乾燥段階を安全に通過できるためには、フェノール系酸化防止剤とチオ相乗剤との安定剤の組み合わせが必要である。・・・IRGANOX(登録商標)1141およびIRGANOX(登録商標)PS800の相乗配合物は、現在標準的な安定剤パッケージを凌ぐ。IRGANOX(登録商標)1141の固有の特性に起因して、標準的な安定系に比してより低い温度を使用できる(図7)。」

(ウ-1)「


」(9頁 下段)
(当審訳:


)

(エ-1)



」(10頁)
(当審訳:


)

記載事項(イ-1)?(エ-1)から、甲1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「式



の化合物であるCGX AO145と



の化合物であるIRGANOX 1076を含む第1の酸化防止剤であるIRGANOX 1141と、



の化合物であるIRGANOX PS800を含む第2の酸化防止剤を組み合わせた安定剤パッケージであって、IRGANOX PS800を0.6%に対して、IRGANOX 1141を、0.1%、0.2%又は0.3%使用する安定剤パッケージ。」(以下、「甲1発明」という。)

(イ)甲7の記載
(ア-7)


イルガノックス1141(登録商標:Irganox 1141)は、化合物1とイルガノックス1076の4:1混合物である;
DLTDPは、ジ-ラウリル-チオ-ジ-プロピオネートである。
全ての化合物は、チバ スペシャルティ ケミカルズ社製である。」
(37頁11?22行)

(ウ)本件訂正発明1について
a 対比
本件訂正発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「CGX AO145」、「IRGANOX 1076」及び「IRGANOX PS800」は、それぞれ本件訂正発明1の「b.少なくとも1つの部分ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第二の安定化成分」、「a.少なくとも1つの完全ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第一の安定化成分」及び「少なくとも1つの含硫酸化防止剤を含む第三の安定化成分」に相当する。
甲1発明の「安定剤パッケージ」は、本件訂正発明1の「安定化組成物」に相当する。
してみると、本件訂正発明1と甲1発明とは、
「a.少なくとも1つの完全ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第一の安定化成分;
b.少なくとも1つの部分ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第二の安定化成分;および
c.少なくとも1つの含硫酸化防止剤を含む第三の安定化成分
を含む安定化組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1-1>
本件訂正発明1では「大気圧、即ち101.325kPaでの融点が50℃以下である」と特定されているのに対して、甲1発明ではこのような特定がない点。

<相違点2-1>
本件訂正発明1では「該安定化組成物中の安定化成分の比(前記第一の安定化成分:前記第二の安定化成分:前記第三の安定化成分)が、(1?3):(0.01?2):(2?6)である」と特定されているのに対して、甲1発明では、IRGANOX PS800とIRGANOX 1141の配合%について記載しているものの、各配合成分の配合比については特定がない点。

b 判断
事案に鑑み、相違点2-1から検討する。
甲1発明の各配合成分の配合比を計算する。
まず、甲1発明における第一の安定化成分及び第二の安定化成分の配合比について検討する。
甲1発明では、IRGANOX PS800を0.6%に対して、IRGANOX 1141を、0.1%、0.2%又は0.3%で使用するものである。
また、IRGANOX 1141における、CGX AO145とIRGANOX 1076の量比は、4:1である(甲7の摘記(ア-7)参照)。
そうすると、甲1発明の安定剤パッケージにおけるIRGANOX 1076の配合比を計算すると以下のとおりである。
<0.1%使用した場合>
[(0.1×0.2)/(0.6+0.1)]×100=2.9%
<0.2%使用した場合>
[(0.2×0.2)/(0.6+0.2)]×100=5%
<0.3%使用した場合>
[(0.3×0.2)/(0.6+0.3)]×100=6.7%

また、甲1発明の安定剤パッケージにおけるCGX AO145の配合比を計算すると以下のとおりである。
<0.1%使用した場合>
[(0.1×0.8)/(0.6+0.1)]×100=11.4%
<0.2%使用した場合>
[(0.2×0.8)/(0.6+0.2)]×100=20%
<0.3%使用した場合>
[(0.3×0.8)/(0.6+0.3)]×100=26.7%

そして、甲1発明における第三の安定化成分の配合比について、甲1発明において、IRGANOX PS800を0.6%に対して、IRGANOX 1141を、0.1%、0.2%、0.3%使用するものである。
<0.1%使用した場合>
[0.6/(0.1+0.6)])×100=85.7%
<0.2%使用した場合>
[0.6/(0.2+0.6)])×100=75%
<0.3%使用した場合>
[0.6/(0.3+0.6)]×100=66.7%

したがって、甲1発明における安定化組成物中の安定化成分の比(第一の安定化成分:前記第二の安定化成分:前記第三の安定化成分)は、
(2.9?6.7):(11.4?26.7):(66.7?85.7)となり、
本件訂正発明1の「(1?3):(0.01?2):(2?6)」の範囲とはならない。
以上によれば、相違点2-1は実質的な相違点である。
したがって、相違点1-1について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえない。

c 小括
以上のとおり、本件訂正発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえない。

(エ)本件訂正発明2?12、15?25について
本件訂正発明2?12、15?25は、本件訂正発明1を直接又は間接的に引用するものであるが、上記(ウ)で述べたとおり、本件訂正発明1が甲1に記載された発明であるとはいえない以上、本件訂正発明2?12、15?25についても同様に、甲1に記載された発明であるとはいえない。

(オ)まとめ
よって、取消理由1(新規性)は、理由がなく、本件訂正発明1?12、15?25に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消すべきではない。

イ 甲2を主引例とした場合
(ア)甲2の記載と甲2に記載された発明
甲2には、以下の記載がある。当審訳は申立人により提出された甲2部分訳による。
(ア-2)




・・・
Health & Safety
Irgastab MBS 11 exhibits a very low order of oral toxicity
・・・」(1頁)
(当審訳:



・・・
健康と安全性
イルガスタブ MBS 11は非常に低い経口毒性を示す
・・・)

記載事項(ア-2)には、CGX 170 145と、IRGANOX 1076を含むIrgastab MBS11が記載されており、使用ガイドラインとして、MBSの安定化に際して、Irgastab MBS11の0.15%?0.25%を、0.45%?1.5%のIrganox PS800と組み合わせて用いることが推奨されることも記載されていることから、甲2には、以下の発明が記載されていると認められる。

「式


のCGX 170 145と、



のIrganox 1076
を含むIrgastab MBS11と
Irganox PS800を含む安定剤の組み合わせであって、Irgastab MBS11の0.15%?0.25%に対して、Irganox PS800を0.45%?1.5%使用する組み合わせ。」(以下、「甲2発明」という。)

(イ)本件訂正発明1について
a 対比
甲2発明の「CGX 170 145」及び「Irganox 1076」は、それぞれ本件訂正発明1の「b.少なくとも1つの部分ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第二の安定化成分」及び「a.少なくとも1つの完全ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第一の安定化成分」に相当する。
甲2発明の「Irganox PS800」は、含硫酸化防止剤であるから(要すれば甲1の記載((1)アの記載事項(エ-1))、本件訂正発明1の「少なくとも1つの含硫酸化防止剤を含む第三の安定化成分」に相当する。
甲2発明の「安定剤の組み合わせ」は、安定剤が組み合わされた組成物であるといえるから、本件訂正発明1の「安定化組成物」に相当する。

してみると、本件訂正発明1と甲2発明とは、
「a.少なくとも1つの完全ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第一の安定化成分;
b.少なくとも1つの部分ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第二の安定化成分;および
c.少なくとも1つの含硫酸化防止剤を含む第三の安定化成分
を含む安定化組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1-2>
本件訂正発明1では「大気圧、即ち101.325kPaでの融点が50℃以下である」と特定されているのに対して、甲2発明ではこのような特定がない点。

<相違点2-2>
本件訂正発明1では「該安定化組成物中の安定化成分の比(前記第一の安定化成分:前記第二の安定化成分:前記第三の安定化成分)が、(1?3):(0.01?2):(2?6)である」と特定されているのに対して、甲2発明では各配合成分の配合比については特定がない点。

b 判断
事案に鑑み、相違点2-2から検討する。
甲2発明の各配合成分の配合比を計算する。
甲2発明における第三の安定化成分の配合比について、Irgastab MBS11の0.15%?0.25%を、0.45%?1.5%のIrganox PS800と組み合わせて用いるのであるから、安定剤の組み合わせ全体におけるIrganox PS800の配合比は、
[0.45/(0.25+0.45)]×100?[1.5/(0.15+1.5)]×100=64.3%?90.9%
となる。

そして、Irgastab MBS11が含有する「CGX 170 145」及び「Irganox 1076」は、それぞれ本件訂正発明1の「b.少なくとも1つの部分ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第二の安定化成分」及び「a.少なくとも1つの完全ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第一の安定化成分」を含むものであるが、これらの2成分の配合割合が特定されていないものである。また、他に、これら2成分の配合割合を示す技術常識はない。

したがって、甲2発明における安定化組成物中の安定化成分の比(第一の安定化成分:前記第二の安定化成分:前記第三の安定化成分)は、第一の安定化成分と前記第二の安定化成分の割合について不明であるから、本件訂正発明1の「(1?3):(0.01?2):(2?6)」の範囲であるとはいえない。
以上によれば、相違点2-2は実質的な相違点である。
したがって、相違点1-2について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲2に記載された発明であるとはいえない。

c 小括
以上のとおり、本件訂正発明1は、甲2に記載された発明であるとはいえない。

(エ)本件訂正発明2?12、15?25について
本件訂正発明2?12、15?25は、本件訂正発明1を直接又は間接的に引用するものであるが、上記(ウ)で述べたとおり、本件訂正発明1が甲2に記載された発明であるとはいえない以上、本件訂正発明2?12、15?25についても同様に、甲2に記載された発明であるとはいえない。

(オ)まとめ
よって、取消理由1(新規性)は、理由がなく、本件訂正発明1?12、15?25に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消すべきではない。

ウ 甲3を主引例とした場合
(ア)甲3の記載と甲3に記載された発明
甲3には、以下の記載がある。
(ア-3)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、従来技術で達成されている熱安定性や光安定性が更に改善された塩化ビニリデン系樹脂組成物及びその製造方法を提供することにある。」

(イ-3)「【0013】本発明においては、上記フェノール系抗酸化剤以外にチオエーテル系抗酸化剤及びホスファイト系抗酸化剤から選ばれる少なくとも一種の抗酸化剤を併用することもできる。この場合、相乗的な熱安定性改良効果が得られるので、好ましい使用態様である。・・・本発明で使用できるチオエーテル系抗酸化剤としては、例えば、チオジプロピオン酸;ジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート等のチオジプロピオン酸アルキルエステル;ペンタエリスリトール-テトラキス-(3-ラウリル-チオプロピオネート)等のペンタエリスリトール系のチオプロピオン酸アルキルエステル等を挙げることができる。」

(ウ-3)「【0024】本発明の塩化ビニリデン系樹脂組成物は、熱安定性が大幅に向上し、このため、この樹脂組成物からの成形物の成形速度を速めることが可能となり、黄変度合いも小さく色調の優れた成形物が効率よく得られる。このため、包装材料、例えば、単層または多層フィルム、シート、チューブ、容器等の食品分野の包装材料としての用途が大いに拡大できる。また、熱劣化による着色が小さいのでリサイクル使用に耐えることができ環境に配慮した製品を供給することができる。

(エ-3)「【0026】本実施例及び比較例では以下の抗酸化剤および弱酸塩類を用いた。
抗酸化剤A:オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート:20%、2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノール:80%からなる複合抗酸化剤(製品名:CGXAO-141、チバガイギー(株)社製)を重合開始前の単量体100重量部に対し0.003部添加した。また、重合停止時に、これを0.023部、ジラウリルチオジプロピオネート(DLTDP)を0.017部添加した。
・・・
【0027】(実施例1)櫂型攪拌機を有するステンレス製10リットルオートクレーブに、メトキシセルロース2.975g、ピロリン酸四ナトリウム十水和物、ピロリン酸二水素二ナトリウムをそれぞれ2.625gずつを溶解した脱イオン水4505gを入れ、系内を窒素置換した後、これに必要量のジイソプロピルパーオキシジカーボネートとエポキシ化大豆油、及び0.0875gの抗酸化剤Aを塩化ビニリデン単量体2870gと塩化ビニル630gの混合単量体に溶解した混合物を圧入した。
【0028】これら仕込み原料混合物を攪拌下に、その内温を所定の温度に上げて重合を開始し重合反応を行った。所定の時間後、重合反応を停止するため抗酸化剤Aを0.70gとジラウリルチオジプロピオネート(DLTDP)0.525gを塩化ビニリデン単量体50gに溶解したものをオートクレーブ内に圧入し、圧入後1時間攪拌を継続した後、内圧を放出し、重合物スラリーをオートクレーブから取り出した。」

記載事項(エ-3)から、甲3には以下の発明が記載されていると認められる。
「オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート:20%、2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノール:80%からなる複合抗酸化剤(製品名:CGXAO-141、チバガイギー(株)社製)を0.70gとジラウリルチオジプロピオネート(DLTDP)0.525gを塩化ビニリデン単量体50gに溶解したもの。」(以下、「甲3発明」という。)

(イ)本件訂正発明1について
a 対比
記載事項(ア-3)?(ウ-3)に鑑みるに、甲3発明の「オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート」、「2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノール」及び「ジラウリルチオジプロピオネート(DLTDP)」は、いずれも塩化ビニリデン系樹脂組成物の熱安定性や光安定性を改善するものであるといえるから、「安定化成分」であるということができ、そうであれば、これらはそれぞれ順に、本件訂正発明1の「a.少なくとも1つの完全ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第一の安定化成分」、「b.少なくとも1つの部分ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第二の安定化成分」及び「c.少なくとも1つの含硫酸化防止剤を含む第三の安定化成分」に相当する。
そして、甲3発明の塩化ビニリデンは融点が-122.5℃の常温で液状であることが知られており、該塩化ビニリデンに「溶解したもの」は、安定化成分を含むから、「安定化組成物」であるといえるし、液状のものに「溶解」しているのであるから、液状であり、その「大気圧、即ち101.325kPaでの融点」は50℃以下であるといえる。
してみると本件訂正発明1と甲3発明とは、
「a.少なくとも1つの完全ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第一の安定化成分;
b.少なくとも1つの部分ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第二の安定化成分;および
c.少なくとも1つの含硫酸化防止剤を含む第三の安定化成分
を含み、
大気圧、即ち101.325kPaでの融点が50℃以下である、
安定化組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1-3>
本件訂正発明1では「該安定化組成物中の安定化成分の比(前記第一の安定化成分:前記第二の安定化成分:前記第三の安定化成分)が、(1?3):(0.01?2):(2?6)である」と特定されているのに対して、甲3発明では各配合成分の配合比については特定がない点。

b 判断
甲3発明の各配合成分の配合比を計算する。

甲3発明では、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート:20%、2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノール:80%からなる複合抗酸化剤を0.70g用いており、該配合割合から、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートと2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノールは、それぞれ0.14g(=0.7×0.2)、0.56g(=0.7×0.8)となる。
そして、ジラウリルチオジプロピオネート(DLTDP)が0.525gであることから、安定化組成物中のオクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートは11.4%(=0.14/1.225)、2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノールは45.7(=0.56/1.225)、ジラウリルチオジプロピオネート(DLTDP)が42.9(=0.525/1.225)となる。
そうすると、甲3発明における安定化組成物中の安定化成分の比(第一の安定化成分:前記第二の安定化成分:前記第三の安定化成分)は、(11.4:45.7:42.9)となり、本件訂正発明1の「(1?3):(0.01?2):(2?6)」の範囲とはならない。
以上によれば、相違点1-3は実質的な相違点である。

c 小括
以上のとおり、本件訂正発明1は、甲3に記載された発明であるとはいえない。

(エ)本件訂正発明2?12、15?25について
本件訂正発明2?12、15?25は、本件訂正発明1を直接又は間接的に引用するものであるが、上記(ウ)で述べたとおり、本件訂正発明1が甲3に記載された発明であるとはいえない以上、本件訂正発明2?12、15?25についても同様に、甲3に記載された発明であるとはいえない。

(オ)まとめ
よって、取消理由1(新規性)は、理由がなく、本件訂正発明1?12、15?25に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消すべきではない。

(2)取消理由2(明確性要件)について
ア 判断
取消理由2の概要は、本件訂正前の請求項1?25に対して、(1)請求項1などに記載された「約50℃以下」などの「約」とは、50℃近辺のどの温度を意味するのかが明確ではなく、(2)請求項9などに記載された「約15重量%?約45重量%」などの「約」とは、どのような数値範囲を意味するのかが明確ではないというものである。
そこで検討すると、本件訂正により、本件訂正発明1?12、15?25において、「約」の文言が削除された。
そうすると、本件訂正発明1?12、15?25における温度範囲及び数値範囲は明確になった。

イ まとめ
よって、取消理由2(明確性要件)は、理由がなく、本件訂正発明1?12、15?25に係る特許は、特許法第113条第4号に該当せず、取り消すべきではない。

2 取消理由で採用しなかった申立理由
(1)申立理由1(新規性)(甲4、甲5について)
ア 甲4を主引例とした場合
(ア)甲4の記載と甲4に記載された発明
甲4には、以下の記載がある。
(ア-4)「【請求項1】 a)少なくとも1種の次式I:
【化1】

〔式中、
R_(1 )はメチル基又はエチル基を表わし、そしてR_(2 )は炭素原子数10ないし30のアルキル基を表わす〕で表わされる化合物と、
b)少なくとも1種の次式II:
【化2】

〔式中、
nは1,2又は4を表わし、
X_(1 )は第三ブチル基を表わし、
X_(2 )は炭素原子数1ないし4のアルキル基を表わし、
X_(3 )は、n=1の場合には、炭素原子数1ないし20のアルキル基、炭素原子数1ないし10のアルキルチオ基によりトリアジン環が置換されたトリアジニルアミノ基、又は-A_(1 )-COO-A_(2 )基若しくは-A_(1 )-CONH-A_(2 )基を表わし、
式中、
A_(1 )は直接結合又は炭素原子数1ないし4のアルキレン基を表わし、そしてA_(2 )は炭素原子数1ないし20のアルキル基;-O-基により中断された炭素原子数4ないし20のアルキル基;炭素原子数5ないし12のシクロアルキル基;フェニル基;-OH基及び/又は炭素原子数1ないし4のアルキル基により置換されたフェニル基;炭素原子数7ないし9のフェニルアルキル基;-OH基及び/又は炭素原子数1ないし4のアルキル基によりフェニル部分が置換された炭素原子数7ないし9のフェニルアルキル基を表わし、
X_(3 )は、n=2の場合には、-E_(1)-COO-E_(2)-OOC-E_(3)-基又は-E_(1)-CONH-E_(2)-NHCO-E_(3)-基を表わし、
式中、
E_(1 )及びE_(3 )は互いに独立して、直接結合又は炭素原子数1ないし4のアルキレン基を表わし、
E_(2 )は炭素原子数2ないし20のアルキレン基;-O-基又は-S-基により中断された炭素原子数4ないし20のアルキレン基;次式:
【化3】

で表わされる基;炭素原子数5ないし7のシクロアルキレン基、炭素原子数1ないし4のアルキル基で置換された炭素原子数5ないし7のシクロアルキレン基、フェニレン基又は次式:
【化4】

で表わされる基を表わし、或いはX_(3 )は、n=4の場合には、[-G_(1 )-COO]_(4 )-G_(2 )基を表わし、
式中、
G_(1 )は直接結合又は炭素原子数1ないし4のアルキレン基を表わし、そしてG_(2 )は炭素原子数5ないし10のアルカンテトライル基を表わす〕で表わされる化合物とからなる混合物。
・・・
【請求項7】 少なくとも1種の付加的な安定剤を更に含む請求項1記載の混合物。
・・・
【請求項9】 付加的な安定剤がチオ相乗剤及び/又はホスフィットである請求項7記載の混合物。」

(イ-4)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、2,4-ジメチル-6-s-アルキルフェノールと立体障害フェノールとからなる相乗混合物、前記混合物の使用、並びに熱的,酸化的及び/又は化学的分解に対して前記の新規混合物を用いて安定化された、選択された有機ポリマー、例えばアクリロニトリル/ブタジエン/スチレンターポリマー(ABS)又はスチレン/アクリロニトリルコポリマー(SAN)に関するものである。」

(ウ-4)「【0071】式I及び式II、又は式Ia,Ib及び式IIで表わされる化合物に加えて、本新規混合物又は組成物は、付加的な成分Cとして、一つ又は幾つかの下記のような慣用の添加剤を含んでもよい。
・・・
【0105】7.チオ相乗剤
例えばジラウリルチオジプロピオネート又はジステアリルチオジプロピオネート。
・・・
【0115】前記の添加剤は、都合良くは、安定化すべき有機材料に対して、0.1?10重量%、代表的には0.2?5重量%の量使用される。」

(エ-4)「【実施例及び発明の効果】下記実施例により、本発明を更に詳細に説明する。前記実施例並びに本特許請求の範囲において、特記しない限り、部及び%は重量による。下記の略語が実施例において使用される。
ABS アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン
BHT 2,6-ジ第三ブチル-4-メチルフェノー ル[ブチルヒドロキシトルエン]
DSC 示差走査熱量計
イルガノクス245 トリエチレングリコールビス[3-(3′,(商標名:Irganix 245 ) 5′-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシフェニ ル)プロピオネート
イルガノクス1076 ステアリル-β-(3′,5′-ジ第三ブチ商標名:Irganix 1076) ル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネ ート
Ic 2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタ デシル)フェノール
Id 2,4-ジメチル-6-(2-エチルテトラ デシル)フェノール

【0117】ABSの安定化
表1に記載された安定剤100部とステアリン酸10部とを80℃で溶融する。激しく攪拌しながら、水200部に溶解した水酸化カリウム2部を少しずつ添加する。この結果得られた乳化液の計算量をABSラテックスに添加する。
【0118】ABSラテックス(固形分33%)200gを、酢酸でpH4に調整された、MgSO_(4) ・7H_(2)O7.2gと水300gとからなる凝固溶液に、60℃で少しずつ添加する。この様にして得られたスラリーを90℃で5分間加熱し、濾過し、次いで濾過生成物を水600gを用いて少しずつ洗浄する。この様にして得られた湿ったABS粒子を、真空下(約150mbar)で60℃で15時間かけて乾燥する。この様にして得られたABS粉末の熱安定性を、次いで酸素雰囲気下でDSC装置で決定する。180℃での発熱反応が最大に達するまでの時間を決定する。起こる発熱反応はポリマーの分解の尺度である。安定基準は、発熱反応が起こるか又はその最大に達するまでの時間である。得られる熱パターンは、個々の成分を用いたポリマーの安定性に比べて、安定剤混合物を用いたポリマーの安定性が良好であることを示す。
【0119】
【表1】



記載事項(エ-4)の特に実施例No.4、6の安定剤の記載から、甲4には以下の発明が記載されていると認められる。
「2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノール、2,4-ジメチル-6-(2-エチルテトラデシル)フェノール、及びステアリル-β-(3′,5′-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートからなる安定剤」(以下、「甲4発明1」という。)

記載事項(エ-4)の特に実施例No.12、14の安定剤の記載から、甲4には以下の発明が記載されていると認められる。
「2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノール、2,4-ジメチル-6-(2-エチルテトラデシル)フェノール」、及び2,6-ジ第三ブチル-4-メチルフェノール[ブチルヒドロキシトルエン]からなる安定剤」(以下、「甲4発明2」という。)

(イ)本件訂正発明1について
a 対比
事案に鑑み、甲4発明1、甲4発明2についてまとめて検討する。
甲4発明1、2の「2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノール、2,4-ジメチル-6-(2-エチルテトラデシル)フェノール」、「2,6-ジ第三ブチル-4-メチルフェノール[ブチルヒドロキシトルエン]」は、それぞれ、本件訂正発明1の「a.少なくとも1つの完全ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第一の安定化成分」、「b.少なくとも1つの部分ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第二の安定化成分」に相当する。

してみると本件訂正発明1と甲4発明1、甲4発明2とは、
「a.少なくとも1つの完全ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第一の安定化成分;
b.少なくとも1つの部分ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第二の安定化成分
を含む安定化組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1-4>
本件訂正発明4では、「c.少なくとも1つの含硫酸化防止剤を含む第三の安定化成分」の配合が特定されているのに対し、甲4発明1、甲4発明2ではこのような特定がない点。

<相違点2-4>
本件訂正発明1では「大気圧、即ち101.325kPaでの融点が50℃以下である」と特定されているのに対して、甲4発明1、甲4発明2ではこのような特定がない点。

<相違点3-4>
本件訂正発明1では「該安定化組成物中の安定化成分の比(前記第一の安定化成分:前記第二の安定化成分:前記第三の安定化成分)が、(1?3):(0.01?2):(2?6)である」と特定されているのに対して、甲4発明1、甲4発明2では各配合成分の配合比については特定がない点。

b 判断
事案に鑑み、相違点1-4、相違点3-4から検討する。
甲4発明1、甲4発明2には、本件訂正発明1の「c.少なくとも1つの含硫酸化防止剤を含む第三の安定化成分」の配合については特定されていない。
そして、甲4発明1、甲4発明2の「2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノール、2,4-ジメチル-6-(2-エチルテトラデシル)フェノール」、「2,6-ジ第三ブチル-4-メチルフェノール[ブチルヒドロキシトルエン]」は、表1の実施例No.4、6、12、14の記載からみて混合物として用いるものであるが、その配合量の割合については特定していないから、本件訂正発明1に係る「該安定化組成物中の安定化成分の比(前記第一の安定化成分:前記第二の安定化成分:前記第三の安定化成分)が、(1?3):(0.01?2):(2?6)である」点についても特定されていない。
したがって、甲4発明1、甲4発明2は、本件訂正発明1の「c.少なくとも1つの含硫酸化防止剤を含む第三の安定化成分」の配合しているとはいえない。
さらに、甲4発明1、甲4発明2における安定化組成物中の安定化成分の比(第一の安定化成分:前記第二の安定化成分:前記第三の安定化成分)は、第一の安定化成分と前記第二の安定化成分の割合について不明であり、さら前記第三の安定化成分を配合するものでもないから、本件訂正発明1の「(1?3):(0.01?2):(2?6)」の範囲であるとはいえない。

以上によれば、相違点1-4、相違点3-4は実質的な相違点である。
したがって、相違点2-4について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲4に記載された発明であるとはいえない。

c 小括
以上のとおり、本件訂正発明1は、甲4に記載された発明であるとはいえない。

(エ)本件訂正発明2?12、15?25について
本件訂正発明2?12、15?25は、本件訂正発明1を直接又は間接的に引用するものであるが、上記(ウ)で述べたとおり、本件訂正発明1が甲4に記載された発明であるとはいえない以上、本件訂正発明2?12、15?25についても同様に、甲4に記載された発明であるとはいえない。

(オ)まとめ
よって、申立理由1(新規性)は、理由がなく、本件訂正発明1?12、15?25に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消すべきではない。

イ 甲5を主引例とした場合
(ア)甲5の記載と甲5に記載された発明
甲5には、以下の記載がある。
(ア-5)「【請求項1】
(a)少なくとも1種類のポリオレフィン;
(b)少なくとも1種類の有機過酸化物;並びに
(c)(i)低度ヒンダードフェノール類、低度ヒンダードチオフェノール類、低度ヒンダードチオビスフェノール類、脂肪族アミン類、芳香族アミン類、NOR HALS、ヒドロキシルアミン類及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種類の迅速ラジカルスカベンジャー、及び
(ii)低度ヒンダードフェノール類、高度ヒンダードフェノール類、チオ相乗剤類、脂肪族アミン類、芳香族アミン類、HALS、ヒドロキシルアミン類及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種類の長期安定化剤、
の抗酸化剤混合物;
を含む組成物。」

(イ-5)「【0008】
更に、十分に低い融点が必要とされる。低い融点であれば重合体マトリックス中に抗酸化剤の良好な分散を確実とする。不十分な分散は重合体マトリックスにおける添加物の性能を低下させることになる。重合体の最高処理温度より上の融点を有する添加物(当該過酸化物で測定した)は重合体マトリックス中において当該添加物の非常に芳しくない分散を生じる。これは重要な欠点とされる。重合体に添加物を組み込む最も適切な方法は液体形状であろう。安定剤系は室温で液体であることは必ずしも必要とされないが、簡単に溶融、ろ過そして液状で当該重合体に添加するのに十分な低温度で溶解する必要がある。液体添加は当該添加剤がろ過でき、清浄度を増すことができるという点で更なる利点を有するであろう。当該添加物が清浄度を増せば当該ケーブルの品質を更に改善するであろう。そのため、当該安定化剤系が十分に低い融解挙動を有することが更なる必要条件である(今後、「必要条件5」)。
【0009】
要約すると、少なくとも5つの基本的必要条件が適切な安定化剤または安定化剤系では満たさなければならない:
必要条件1:高度な抗スコーチ性
必要条件2:良好な長期安定性
必要条件3:低度な過酸化物との相互作用
必要条件4:高溶解性(低いブルーミング性)
必要条件5:低い融解挙動」

(ウ-5)「【0070】
(実施例)
(試料の調製)
種類がExxon LD100MED粉末の低密度ポリエチレン(PE)(d=0.923g/cm^(3))を抗酸化剤及び過酸化物(2%)と高速攪拌機中で混合して抗酸化剤の良好な事前分散物を得る。次いで、この混合物を、添加物を溶融混合するために、130℃で単スクリュー押出し機にて注意深く押出す(当該過酸化物の分解温度未満で)。当該押出し物は更なる試験に使用される。TBM-6に関し、添加物を溶融混合して良好な分散物を得るため、単スクリュー押出し機で混ぜるのに先立って過酸化物無しのマスターバッチを高温で(190℃)まず調製する。
【0071】
(抗スコーチ性の測定)
抗スコーチ性は各化合物(上記のように調製した)の42グラムを量り、当初の物質温度135℃にて試験室ブラベンダーニーダーにて10rpmで攪拌融解する。これはケーブル押出し条件をシミュレートするために行う。材料は2キログラムの一定負荷で30分間捏ねる。当該スコーチ時間、t_(5)は最小トルクと5Nmの増加の間を分による期間として測定される。当該スコーチ時間、t_(10)は最小トルクと10Nmの増加の間を分による期間として測定される。スコーチ時間がより長ければ長所となり、ケーブル押出しの間の尚早の架橋に関する問題がより少ないことを示す。
【0072】
(過酸化物相互作用の測定)
上のように調製した各試料の5グラムをMonsanto Moving Die Rheometer(MDR 2000E)内にて、ISO 6502;1991に従い、0.5°捻転で最大トルクが得られるまで180℃に加熱する。NmでのΔS、すなわち最小と最大トルクの間の差は架橋密度の尺度である。米国特許第3,954,907号に記載されているように、値は高ければ高いほど良く、より高い架橋密度に相当し、抗酸化剤系の当該架橋反応とのより低い相互作用を意味している。
【0073】
(熱劣化)
引張用棒(寸法はISO527-2による)を空気循環オーブン中での150℃劣化用に架橋プラックからくり貫く。圧縮成形及び次なる架橋を170℃にて200バールで25分間行う。当該引張用棒は、150℃での7及び14日の曝露での保持された引張降伏点強度及び破断点伸びについて評価する。工業標準では150℃における2週間の劣化後で75%の特性保持が要求される。
【0074】
(ブルーミング)
ブルーミング試験は圧縮成形非架橋プラックについて55℃の空気循環(オーブン)中において1週間行われる。5×5×2.2mmのプラックを120℃にて5分間100バールで圧縮成形する。ブルーミングは目視で観察する。下記順位付けを目視評価で行う;ブルーミングなし、軽度のブルーミング、中程度のブルーミング、重度のブルーミング。以下の実施例が本発明を表す。
【0075】
【表1】

【0076】
【表2】

AO-1は2,2'-チオジエチレンビス[3(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]
AO-2はジステアリル3,3'-チオプロピオナート、
AO-3は4,4'-チオビス(2-t-ブチル-5-メチルフェノール)、
AO-4は4,6-ビス(オクチルチオメチル)o-クレゾール、
AO-5はジトリデシルチオジプロピオナート、
AO-6は4,4'-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、
AO-7はADK stab AO-23、
AO-8は、3-(3',5'?ジ-t-ブチル-4'-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のC_(13)-C_(15)直鎖及び分岐アルキルエステル(Anox 1315)の混合物である。
【0077】
典型的な負荷量である0.2?0.3%で、単一抗酸化剤として用いられる4,4'-チオビス(2-t-ブチル-5-メチルフェノール)は、抗スコーチ性、最小過酸化物相互作用及び長期安定性について非常に良好なバランスの特性を有する。これは150℃にて2週間の劣化後に特性の75%保持である工業上の必要条件を満たすが、当該抗酸化剤はLDPEと相溶性に乏しく、ブルーミングまたはプレートアウトが生じる。これに加えて、これはケーブルの加工温度より上の高融点を有する。2,2'-チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]とジステアリル3,3'-チオプロピオナートの1:1混合物は4,4'-チオビス(2-t-ブチル-5-メチルフェノール)より優れていると思われる。しかしながら、相溶性がよりよくて低融点を有しているが、抗スコーチ性に乏しく、また、長期安定性がより乏しくなる。
【0078】
4,6-ビス(オクチルチオメチル)o-クレゾールを0.3%使用すると、良好な抗スコーチ添加物となる。21日後でもブルーミングは示さないが、明らかに良好な長期安定性が低下する。0.5%までのより高い負荷量では150℃、2週間の長期熱劣化後では相当よい特性の保持を行うが、この処方は当該過酸化物との相当な相互作用を被る(ΔSは低い)。過酸化物負荷量を増加させるのは特性を改善させる選択肢であるが、上記したように望ましくない。そこで、4,6-ビス(オクチルチオメチル)o-クレゾールにより達成することができる特性のバランスは、抗スコーチ添加物としては非常によいが、不十分である。驚いたことに、特性のより良好なバランスは4,6-ビス(オクチルチオメチル)o-クレゾールを高ヒンダードフェノールまたは芳香族アミンのような他の分子と混合し、例えばジステアリル3,3'-チオプロピオナート(DSTDP)またはジトリデシルチオジプロピオナート(DTDTDP)などのチオ相乗剤の添加または無添加で達成できる。これは予想することができない抗酸化剤間の相互作用のため、自明ではない。」

記載事項(ア-5)?(ウ-5)の特に(ア-5)の記載から、甲5には以下の発明が記載されていると認められる。
「(a)少なくとも1種類のポリオレフィン;
(b)少なくとも1種類の有機過酸化物;並びに
(c)(i)低度ヒンダードフェノール類、低度ヒンダードチオフェノール類、低度ヒンダードチオビスフェノール類、脂肪族アミン類、芳香族アミン類、NOR HALS、ヒドロキシルアミン類及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種類の迅速ラジカルスカベンジャー、及び
(ii)低度ヒンダードフェノール類、高度ヒンダードフェノール類、チオ相乗剤類、脂肪族アミン類、芳香族アミン類、HALS、ヒドロキシルアミン類及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種類の長期安定化剤、
の抗酸化剤混合物;
を含む組成物。」(以下、「甲5発明」という。)


(イ)本件訂正発明1について
a 対比
本件訂正発明1と甲5発明について検討する。
甲5発明の(c)の(ii)「高度ヒンダードフェノール類」、(i)及び(ii)の「低度ヒンダードフェノール類」、(ii)「チオ相乗剤類」は、それぞれ、本件訂正発明1の「a.少なくとも1つの完全ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第一の安定化成分」、「b.少なくとも1つの部分ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第二の安定化成分」、「c.少なくとも1つの含硫酸化防止剤を含む第三の安定化成分」に相当する。
甲5発明の(c)の(ii)は長期安定化剤であるから、該(ii)長期安定剤を配合する(c)は本件訂正発明1の「安定化剤組成物」に相当する。

してみると本件訂正発明1と甲5発明とは、
「 b.少なくとも1つの部分ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第二の安定化成分;
を必須成分とし、
a.少なくとも1つの完全ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第一の安定化成分; または
c.少なくとも1つの含硫酸化防止剤を含む第三の安定化成分
のいずれか1種以上を含む安定化組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1-5>
本件訂正発明1では「a.少なくとも1つの完全ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第一の安定化成分; b.少なくとも1つの部分ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第二の安定化成分;およびc.少なくとも1つの含硫酸化防止剤を含む第三の安定化成分」と特定されているのに対して、甲5発明では前記3成分の併用が必須である特定がない点。

<相違点2-5>
本件訂正発明1では「大気圧、即ち101.325kPaでの融点が50℃以下である」と特定されているのに対して、甲5発明ではこのような特定がない点。

<相違点3-5>
本件訂正発明1では「該安定化組成物中の安定化成分の比(前記第一の安定化成分:前記第二の安定化成分:前記第三の安定化成分)が、(1?3):(0.01?2):(2?6)である」と特定されているのに対して、甲5発明では各配合成分の配合比については特定がない点。

b 判断
事案に鑑み、相違点1-5、相違点3-5から検討する。
甲5発明には、「a.少なくとも1つの完全ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第一の安定化成分; b.少なくとも1つの部分ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第二の安定化成分;およびc.少なくとも1つの含硫酸化防止剤を含む第三の安定化成分」の3成分を必須成分とすることは特定されていない。
そして、甲5発明には、前記第一の安定化成分、前記第二の安定化成分及び前記第三の安定化成分の配合量の割合については特定していないから、本件訂正発明1に係る「該安定化組成物中の安定化成分の比(前記第一の安定化成分:前記第二の安定化成分:前記第三の安定化成分)が、(1?3):(0.01?2):(2?6)である」点についても特定されていない。
したがって、甲5発明は、本件訂正発明1の「a.少なくとも1つの完全ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第一の安定化成分; b.少なくとも1つの部分ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第二の安定化成分;およびc.少なくとも1つの含硫酸化防止剤を含む第三の安定化成分」の3成分を配合しているとはいえない。
さらに、甲5発明における安定化組成物中の安定化成分の比(第一の安定化成分:前記第二の安定化成分:前記第三の安定化成分)は、第一の安定化成分と前記第二の安定化成分の割合について不明であり、さら前記第三の安定化成分を配合するものでもないから、本件訂正発明1の「(1?3):(0.01?2):(2?6)」の範囲であるとはいえない。

以上によれば、相違点1-5、相違点3-5は実質的な相違点である。
したがって、相違点2-5について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲5に記載された発明であるとはいえない。

c 小括
以上のとおり、本件訂正発明1は、甲5に記載された発明であるとはいえない。

(エ)本件訂正発明2?12、15?25について
本件訂正発明2?12、15?25は、本件訂正発明1を直接又は間接的に引用するものであるが、上記(ウ)で述べたとおり、本件訂正発明1が甲5に記載された発明であるとはいえない以上、本件訂正発明2?12、15?25についても同様に、甲5に記載された発明であるとはいえない。

(オ)まとめ
よって、申立理由1(新規性)は、理由がなく、本件訂正発明1?12、15?25に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消すべきではない。

(2)申立理由2(進歩性)
ア 甲1を主引例とした場合
(ア)甲1の記載と甲1に記載された発明
甲1の記載と甲1に記載された発明については、上記第5の1(1)ア(ア)に示したとおりである。

(イ)甲7の記載
甲7の記載については、上記第5の1(1)ア(イ)に示したとおりである。

(ウ)本件訂正発明1について
a 対比
本件訂正発明1と甲1発明とを対比する。
一致点及び相違点については、上記第5の1(1)ア(ウ)aで述べたのと同様であり、相違点として相違点1-1?2-1が挙げられる。

b 判断
事案に鑑み、相違点2-1から検討する。
相違点2-1は、上記第5の1(1)ア(ウ)bから、実質的な相違点である。
次に、相違点2-1の容易想到性について検討する。
まず、相違点2-1のうち、本件訂正発明1の「a.少なくとも1つの完全ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第一の安定化成分」、「b.少なくとも1つの部分ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第二の安定化成分」に該当する成分の比について検討する。
甲1発明は、本件訂正発明1の「a.少なくとも1つの完全ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第一の安定化成分」、「b.少なくとも1つの部分ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第二の安定化成分」に相当するIRGANOX 1076とCGX AO145を含む第1の酸化防止剤であるIRGANOX 1141を用いている。ここで、前にも述べたとおり、IRGANOX 1141における、IRGANOX 1076とCGX AO145との量比は、4:1である(甲7の摘記(ア-7)参照)。
そうすると、IRGANOX 1141は市販品であることから、甲1発明におけるIRGANOX 1141中のIRGANOX 1076とCGX AO145の量比は1:4となり、その配合成分量を調節するという思想はない。してみると、甲1において、IRGANOX 1076とCGX AO145の量比は、1:4以外とする動機づけがあるとはいえない。
してみると、甲1には、「該安定化組成物中の安定化成分の比(前記第一の安定化成分:前記第二の安定化成分)が、(1?3):(0.01?2)」の範囲ではないから、「該安定化組成物中の安定化成分の比(前記第一の安定化成分:前記第二の安定化成分:前記第三の安定化成分)が、(1?3):(0.01?2):(2?6)である」とする動機付けもあるとはいえない。
したがって、相違点1-1については検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲1及び甲7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

c 小括
以上のとおり、本件訂正発明1は、甲1及び甲7の記載に基いて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

(エ)本件訂正発明2?12、15?25について
本件訂正発明2?12、15?25は、本件訂正発明1を直接又は間接的に引用するものであるが、上記(ウ)で述べたとおり、本件訂正発明1が甲1及び甲7に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない以上、本件訂正発明2?12、15?25についても同様に、甲1及び甲7に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(オ)まとめ
よって、申立理由2(進歩性)は、理由がなく、本件訂正発明1?12、15?25に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消すべきではない。

イ 甲2を主引例とした場合
(ア)甲2の記載と甲2に記載された発明
甲2の記載と甲2に記載された発明については、上記第5の1(1)イ(ア)に示したとおりである。

(イ)本件訂正発明1について
a 対比
本件訂正発明1と甲2発明とを対比する。
一致点及び相違点については、上記第5の1(1)イ(イ)aで述べたのと同様であり、相違点として相違点1-2?2-2が挙げられる。

b 判断
事案に鑑み、相違点2-2から検討する。
相違点2-2は、上記第5の1(1)イ(イ)bから、実質的な相違点である。
次に、相違点2-2の容易想到性について検討する。
まず、相違点2-2のうち、本件訂正発明1の「a.少なくとも1つの完全ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第一の安定化成分」、「b.少なくとも1つの部分ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第二の安定化成分」に該当する成分の比について検討する。
甲2発明は、本件訂正発明1の「a.少なくとも1つの完全ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第一の安定化成分」、「b.少なくとも1つの部分ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第二の安定化成分」に相当する「Irganox 1076」と「CGX 170 145」を含むIrgastab MBS11を用いている。
そうすると、Irgastab MBS11は市販品であることから、甲2発明におけるIrganox 1076とCGX 170 145の配合成分量を調節するという思想はない。
してみると、甲2には、「該安定化組成物中の安定化成分の比(前記第一の安定化成分:前記第二の安定化成分)が、(1?3):(0.01?2)」の範囲とする動機付けがあるとはいえないから、「該安定化組成物中の安定化成分の比(前記第一の安定化成分:前記第二の安定化成分:前記第三の安定化成分)が、(1?3):(0.01?2):(2?6)である」とする動機付けもあるとはいえない。
したがって、相違点1-2については検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

c 小括
以上のとおり、本件訂正発明1は、甲2の記載に基いて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

(ウ)本件訂正発明2?12、15?25について
本件訂正発明2?12、15?25は、本件訂正発明1を直接又は間接的に引用するものであるが、上記(イ)で述べたとおり、本件訂正発明1が甲2に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない以上、本件訂正発明2?12、15?25についても同様に、甲2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(エ)まとめ
よって、申立理由2(進歩性)は、理由がなく、本件訂正発明1?12、15?25に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消すべきではない。

ウ 甲3を主引例とした場合
(ア)甲3の記載と甲3に記載された発明
甲3の記載と甲3に記載された発明については、上記第5の1(1)ウ(ア)に示したとおりである。

(イ)本件訂正発明1について
a 対比
本件訂正発明1と甲3発明とを対比する。
一致点及び相違点については、上記第5の1(1)ウ(イ)aで述べたのと同様であり、相違点として相違点1-3が挙げられる。

b 判断
相違点1-3は、上記第5の1(1)ウ(イ)bから、実質的な相違点である。
次に、相違点1-3の容易想到性について検討する。
まず、相違点1-3のうち、本件訂正発明1の「a.少なくとも1つの完全ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第一の安定化成分」、「b.少なくとも1つの部分ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第二の安定化成分」に該当する成分の比について検討する。
甲3発明は、本件訂正発明1の「a.少なくとも1つの完全ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第一の安定化成分」、「b.少なくとも1つの部分ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第二の安定化成分」に相当する「オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート」20%と「2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノール」80%からなる複合抗酸化剤CGXAO-141を用いている。
そうすると、CGXAO-141は市販品であることから、甲3発明におけるCGXAO-141中の「オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート」と「2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノール」の量比は1:4となり、その配合成分量を調節して使用するという思想はない。してみると、甲3において、「オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート」と「2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノール」の量比を1:4以外とする動機づけがあるとはいえない。
してみると、甲3には、「該安定化組成物中の安定化成分の比(前記第一の安定化成分:前記第二の安定化成分)が、(1?3):(0.01?2)」の範囲とする動機付けがあるとはいえないから、「該安定化組成物中の安定化成分の比(前記第一の安定化成分:前記第二の安定化成分:前記第三の安定化成分)が、(1?3):(0.01?2):(2?6)である」とする動機付けもあるとはいえない。
したがって、本件訂正発明1は、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

c 小括
以上のとおり、本件訂正発明1は、甲3の記載に基いて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

(ウ)本件訂正発明2?12、15?25について
本件訂正発明2?12、15?25は、本件訂正発明1を直接又は間接的に引用するものであるが、上記(イ)で述べたとおり、本件訂正発明1が甲3に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない以上、本件訂正発明2?12、15?25についても同様に、甲3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(エ)まとめ
よって、申立理由2(進歩性)は、理由がなく、本件訂正発明1?12、15?25に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消すべきではない。

エ 甲4を主引例とした場合
(ア)甲4の記載と甲4に記載された発明
甲4の記載と甲4に記載された発明については、上記第5の1(1)エ(ア)に示したとおりである。

(イ)本件訂正発明1について
a 対比
本件訂正発明1と甲4発明1、甲4発明2とを対比する。
一致点及び相違点については、上記第5の1(1)エ(イ)aで述べたのと同様であり、相違点として相違点1-4?3-4が挙げられる。

b 判断
事案に鑑み、相違点1-4、相違点3-4から検討する。
相違点1-4、相違点3-4は、上記第5の1(1)エ(イ)bから、実質的な相違点である。
次に、相違点1-4、相違点3-4の容易想到性について検討する。
甲4には、段落番号【0071】に「式I及び式II、又は式Ia,Ib及び式IIで表わされる化合物に加えて、本新規混合物又は組成物は、付加的な成分Cとして、一つ又は幾つかの下記のような慣用の添加剤を含んでもよい」こと、段落番号【0105】に「7.チオ相乗剤」として「例えばジラウリルチオジプロピオネート又はジステアリルチオジプロピオネート。」こと、段落番号【0115】に「前記の添加剤は、都合良くは、安定化すべき有機材料に対して、0.1?10重量%、代表的には0.2?5重量%の量使用される。」 ことが記載されている。
そして、甲4の表1の「ABS中の%」から、甲4発明1の「2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノール及び2,4-ジメチル-6-(2-エチルテトラデシル)フェノール」と「ステアリル-β-(3′,5′-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート」の配合量比、甲4発明2における「2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノール及び2,4-ジメチル-6-(2-エチルテトラデシル)フェノール」と「2,6-ジ第三ブチル-4-メチルフェノール[ブチルヒドロキシトルエン]」の配合量比は、共に1:1である。

そうすると、甲4には、安定剤にさらに配合する付加的な成分Cとして慣用の添加剤が多数挙げられ、そのうちの1つとして、「チオ相乗剤」が挙げられること、そして、慣用の添加剤の配合剤として、「都合良くは、安定化すべき有機材料に対して、0.1?10重量%、代表的には0.2?5重量%の量使用される。」こと、本件訂正発明1の「a.少なくとも1つの完全ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第一の安定化成分」と「b.少なくとも1つの部分ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第二の安定化成分」を1:1の配合量で配合することが記載されていると認められる。
しかしながら、甲4の実施例には、「チオ相乗剤」を用いた例は記載されていない。そして、甲4の中で多数列記された慣用の添加剤のうち、特に「チオ相乗剤」を用いる動機付けがあるとはいえない。
さらに、甲4において、該安定化組成物中の安定化成分の比(前記第一の安定化成分:前記第二の安定化成分)が、1:1であることまではいえるものの、安定化組成物にさらにチオ相乗剤を配合した安定剤の各成分の配合量を「該安定化組成物中の安定化成分の比(前記第一の安定化成分:前記第二の安定化成分:前記第三の安定化成分)が、(1?3):(0.01?2):(2?6)である」とする動機付けもあるとはいえない。
したがって、相違点2-4については検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

c 小括
以上のとおり、本件訂正発明1は、甲4の記載に基いて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

(ウ)本件訂正発明2?12、15?25について
本件訂正発明2?12、15?25は、本件訂正発明1を直接又は間接的に引用するものであるが、上記(イ)で述べたとおり、本件訂正発明1が甲4に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない以上、本件訂正発明2?12、15?25についても同様に、甲4に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(エ)まとめ
よって、申立理由2(進歩性)は、理由がなく、本件訂正発明1?12、15?25に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消すべきではない。

オ 甲5を主引例とした場合
(ア)甲5の記載と甲5に記載された発明
甲5の記載と甲5に記載された発明については、上記第5の1(1)オ(ア)に示したとおりである。

(イ)本件訂正発明1について
a 対比
本件訂正発明1と甲5発明とを対比する。
一致点及び相違点については、上記第5の1(1)オ(イ)aで述べたのと同様であり、相違点として相違点1-5?3-5が挙げられる。

b 判断
事案に鑑み、相違点1-5、相違点3-5から検討する。
相違点1-5、相違点3-5は、上記第5の1(1)オ(イ)bから、実質的な相違点である。
次に、相違点1-5、相違点3-5の容易想到性について検討する。
甲5には、請求項1に「(c)(i)低度ヒンダードフェノール類、低度ヒンダードチオフェノール類、低度ヒンダードチオビスフェノール類、脂肪族アミン類、芳香族アミン類、NOR HALS、ヒドロキシルアミン類及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種類の迅速ラジカルスカベンジャー、及び
(ii)低度ヒンダードフェノール類、高度ヒンダードフェノール類、チオ相乗剤類、脂肪族アミン類、芳香族アミン類、HALS、ヒドロキシルアミン類及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種類の長期安定化剤、
の抗酸化剤混合物」が記載され、実施例において例えば実施例1にAO-1として「2,2'-チオジエチレンビス[3(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]」を0.2重量パーセント、AO-2として「ジステアリル3,3'-チオプロピオナート」を0.2重量%、及びLDPEを溶融混合した押出物のt_(5) at 135℃(分)及びt_(10) at 135℃(分)(耐スコーチ性)がそれぞれ7.8、10.7であること、実施例7?10にAO-1として「2,2'-チオジエチレンビス[3(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]」を0.2?0.4重量%、AO-4として「4,6-ビス(オクチルチオメチル)o-クレゾール」を0.1?0.3重量パーセント及びLDPEを溶融混合した押出物のt_(5) at 135℃(分)及びt_(10) at 135℃(分)(耐スコーチ性)がそれぞれ10.7?12.1、17.1であること(【0070】、【0075】)が記載されている。
ここで、甲5のAO-1「2,2'-チオジエチレンビス[3(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]」、AO-2「ジステアリル3,3'-チオプロピオナート」、AO-4として「4,6-ビス(オクチルチオメチル)o-クレゾール」 は、それぞれ、本件訂正発明1の「a.少なくとも1つの完全ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第一の安定化成分」、「b.少なくとも1つの部分ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第二の安定化成分」、「c.少なくとも1つの含硫酸化防止剤を含む第三の安定化成分」に相当する。
そうすると、甲5には、「2,2'-チオジエチレンビス[3(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]」と「ジステアリル3,3'-チオプロピオナート」、「2,2'-チオジエチレンビス[3(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]」、AO-2「ジステアリル3,3'-チオプロピオナート」と「4,6-ビス(オクチルチオメチル)o-クレゾール」を特定の割合で配合する具体例が記載されているが、t_(5) at 135℃(分)及びt_(10) at 135℃(分)(耐スコーチ性)は長ければ長所となることから、AO-1「2,2'-チオジエチレンビス[3(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]」、AO-2「ジステアリル3,3'-チオプロピオナート」のt_(5) at 135℃(分)及びt_(10) at 135℃(分)の耐スコーチ性は、実施例7?9より劣るものと解される。
しかしながら、甲5の実施例には、本件訂正発明1の「a.少なくとも1つの完全ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第一の安定化成分」、「b.少なくとも1つの部分ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第二の安定化成分」、「c.少なくとも1つの含硫酸化防止剤を含む第三の安定化成分」を併用した例は記載されていない。そして、甲5の中でAO-1「2,2'-チオジエチレンビス[3(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]」、AO-2「ジステアリル3,3'-チオプロピオナート」を使用した実施例1から、耐スコーチ性が劣ると解されることから、「a.少なくとも1つの完全ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第一の安定化成分」、「b.少なくとも1つの部分ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第二の安定化成分」、「c.少なくとも1つの含硫酸化防止剤を含む第三の安定化成分」の三成分を併用する動機付けがあるとはいえない。
さらに、甲5の実施例7?9から、該安定化組成物中の安定化成分の比(前記第一の安定化成分:前記第二の安定化成分)を特定することまではいえるものの、安定化組成物にさらに前記第三の安定化成分を配合した安定剤の各成分の配合量を「該安定化組成物中の安定化成分の比(前記第一の安定化成分:前記第二の安定化成分:前記第三の安定化成分)が、(1?3):(0.01?2):(2?6)である」とする動機付けもあるとはいえない。
したがって、相違点2-5については検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

c 小括
以上のとおり、本件訂正発明1は、甲5の記載に基いて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

(ウ)本件訂正発明2?12、15?25について
本件訂正発明2?12、15?25は、本件訂正発明1を直接又は間接的に引用するものであるが、上記(イ)で述べたとおり、本件訂正発明1が甲5に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない以上、本件訂正発明2?12、15?25についても同様に、甲5に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(エ)まとめ
よって、申立理由2(進歩性)は、理由がなく、本件訂正発明1?12、15?25に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消すべきではない。

(3)申立理由4(明確性要件)について
ア 判断
申立理由4の概要は、本件訂正前の請求項1について、組成物の「a.少なくとも1つの完全ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第一の安定化成分」、「b.少なくとも1つの部分ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第二の安定化成分」および「c.少なくとも1つの含硫酸化防止剤を含む第三の安定化成分」の3つの成分の含有量の範囲が記載されていないから、明確ではないというものである。
そこで検討すると、本件訂正により、本件訂正発明1において、「該安定化組成物中の安定化成分の比(前記第一の安定化成分:前記第二の安定化成分:前記第三の安定化成分)が、(1?3):(0.01?2):(2?6)」であることが特定された。
そうすると、本件訂正発明1における「a.少なくとも1つの完全ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第一の安定化成分」、「b.少なくとも1つの部分ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第二の安定化成分」および「c.少なくとも1つの含硫酸化防止剤を含む第三の安定化成分」の3つの成分の含有量の範囲は明確になった。

イ 本件訂正発明2?12、15?25について
本件訂正発明2?12、15?25は、本件訂正発明1を直接又は間接的に引用するものであるが、上記アで述べたとおり、本件訂正発明1が明確ではないとはいえない以上、本件訂正発明2?12、15?25についても同様に、明確ではないとはいえない。

ウ まとめ
よって、申立理由4(明確性要件)は、理由がなく、本件訂正発明1?12、15?25に係る特許は、特許法第113条第4号に該当せず、取り消すべきではない。

(4)申立理由5(実施可能要件)(サポート要件)について
ア 特許法第36条第4項第1号の考え方について
特許法第36条第4項は、「前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定され、その第1号において、「経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易にその実施をすることができる程度に、明確かつ十分に記載したものであること。」と規定している。
特許法第36条第4項第1号は、発明の詳細な説明のいわゆる実施可能要件を規定したものであって、物の発明では、その物を作り、かつ、その物を使用する具体的な記載が発明の詳細な説明にあるか、そのような記載が無い場合には、明細書及び図面の記載及び出願時の技術常識に基づき、当業者が過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく、その物を作り、その物を使用することができる程度にその発明が記載されていなければならないと解される。
また、方法の発明では、その方法を使用する具体的な記載が発明の詳細な説明にあるか、そのような記載がない場合には、明細書及び図面の記載及び出願時の技術常識に基づき、当業者が過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく、その方法を使用することができる程度にその発明が記載されていなければならないと解される。

イ 特許法第36条第6項第1号の考え方について
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであり、明細書のサポート要件の存在は、特許権者が証明責任を負うと解するのが相当である(知的財産高等裁判所、平成17年(行ケ)第10042号、同年11月11日特別部判決)。

以下、上記の観点に立って、本件について検討することとする。

ウ 本件明細書の記載事項
本件明細書には、以下の記載がある。
(1-1)「【発明が解決しようとする課題】
【0017】
これらおよび他の先行技術の絶縁組成物に関連した多くの欠点、すなわち、安定剤と過酸化物との好ましくない相互作用、低い架橋速度、一部の例でみられる架橋化合物における低い最大トルク、ポリマーの不十分な架橋度、および時として起こる低耐スコーチ性が存在する。
【0018】
結果として、産業界においては、所望の特性を最適化し、現在入手可能な安定化系に対して必要である相当な改良となる、個々の必要に応じた安定化組成物に対する明確な必要性が存在する。」

(1-2)「【0026】
本明細書において、「完全ヒンダード」とは、好ましくは、フェノール系酸化防止剤がフェノール性-OH基に対して両オルト位に置換ヒドロカルビル基を含み、それら置換基のそれぞれがC_(1)および/またはC_(2)位、好ましくはC_(1)位で芳香環に対して分岐していることを意味する。
【0027】
本明細書において、「部分ヒンダード」とは、好ましくは、フェノール系酸化防止剤がフェノール性-OH基に対してオルト位に少なくとも1つの置換ヒドロカルビル基を含み、置換基の一方またはそれぞれがC_(1)および/またはC_(2)位、好ましくはC_(1)位で芳香環に対して分岐していることを意味する。
【0028】
本明細書において、「低度ヒンダード」とは、好ましくは、フェノール系酸化防止剤がフェノール性-OH基に対してオルト位に少なくとも1つの置換ヒドロカルビル基を含み、それら置換基のいずれもがC_(1)および/またはC_(2)位、好ましくはC_(1)位で芳香環に対して分岐していないことを意味する。
【0029】
本明細書において、「非ヒンダード」とは、好ましくは、フェノール系酸化防止剤がフェノール性-OH基に対してオルト位に置換ヒドロカルビル基を含まないことを意味する。」

(1-3)「【0043】
一部の例では、本発明の安定化組成物に供給される酸化防止剤ブレンドは、液体安定化組成物、即ち、50℃未満、好ましくは40℃未満、より好ましくは30℃未満で溶融する組成物を提供するために選択される。多くの場合、これは、これらの温度の一方または両方よりも低い温度ではそれ自体が液体である個々の酸化防止剤安定化成分を選択することによって達成される。具体的かつ非制限的例として、安定化成分(a)は、例えば3-(3’5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のC13?C15直鎖および分岐アルキルエステル(ANOX(登録商標)1315-CAS171090-93-0);オクタデシル3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオナート(ANOX(登録商標)PP18-CAS2082-79-3);N,N’-ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド](LOWINOX(登録商標)HD98-CAS23128-74-7);3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のC9?C11直鎖および分岐アルキルエステル(NAUGARD(登録商標)PS48-CAS125643-61-0);ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT-CAS128-37-0);2,6-ジ-ターシャリー-ブチル-4-sec-ブチルフェノール(Isonox(登録商標)132);2,6-ジ-ターシャリー-ブチル-4-ノニルフェノール(Isonox(登録商標)232)、および/またはこれらのうちの2以上の相溶性混合物のうちの1つまたは複数を含んでもよい。
・・・
【0045】
液体組成物が望まれる場合であっても、適切にブレンド/溶解させることにより固体材料を含む組成物を調合することが可能なこともある。安定化成分(a)は必ずしも単一の材料を含まなくてもよく、材料の適切なブレンドをそれ自体が含んでもよい。その場合、液体組成物を調合する場合であっても、特定の温度(複数可)でそれ自体液体ではないが、特定の温度(複数化)でそれ自体液体である安定化組成物を得るために1つまたは複数の他の相溶性液体酸化防止剤とブレンドしてもよい1つまたは複数のヒンダードフェノール系酸化防止剤をブレンドに含めることが可能なこともある。こうした材料の具体的、非制限的例としては、テトラキスメチレン(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナマート)メタン(ANOX(登録商標)20-CAS6683-19-8);オクタデシル3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオナート(ANOX(登録商標)PP18-CAS2082-79-3);1,3,5-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌラート(ANOX(登録商標)IC14-CAS27676-62-6);1,2-ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナモイル)ヒドラジン(LOWINOX(登録商標)MD24-CAS32687-78-8);2,2’チオジエチレンビス[3(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](ANOX(登録商標)70-CAS41484-35-9);1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン(ANOX(登録商標)330-CAS1709-70-2);ブチル化ヒドロキシトルエン;および/またはこれらのうちの2以上の相溶性混合物が挙げられる。
【0046】
前述の材料、またはそのいずれか、更には本明細書における安定化成分(a)についての一般的定義の範囲に入る他のフェノール系酸化防止剤を使用して本発明による固体安定化組成物を調合してもよい。
【0047】
特に好適な1つの安定化成分(a)は、3-(3’5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のC13?C15直鎖および分岐アルキルエステル(ANOX(登録商標)1315-CAS171090-93-0)を含む。
【0048】
安定化成分(a)は、安定化組成物中に、安定化組成物の約15%?約45重量%の量で存在してもよい。好ましくは、安定化成分(a)は、安定化組成物の約20%?約40重量%、より好ましくは安定化組成物の約25%?約35重量%の量で存在する。
【0049】
安定化成分(b)は、1つまたは複数の部分ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含んでもよい。既に強調したように、本発明の安定化組成物に供給される酸化防止剤ブレンドは、液体安定化組成物、即ち、50℃未満、好ましくは40℃未満、より好ましくは30℃未満で溶融する組成物を提供するために選択してもよい。多くの場合、これは、これらの温度の一方または両方よりも低い温度ではそれ自体が液体である個々の酸化防止剤安定化成分を選択することによって達成される。具体的かつ非制限的例として、安定化成分(b)は、2-(1,1-ジメチルエチル)-4,6-ジメチル-フェノール(LOWINOX(登録商標)624-CAS1879-09-0);6-tert-ブチル-2-メチルフェノール(CAS2219-82-1);および/またはこれらの相溶性混合物を含んでもよい。
【0050】
しかしながら、既に明らかにしたように、安定化成分(b)は必ずしも単一の材料を含まなくてもよく、材料の適切なブレンドをそれ自体が含んでもよい。その場合、液体組成物を調合する場合であっても、特定の温度(複数可)でそれ自体液体ではないが、特定の温度(複数化)でそれ自体液体である安定化組成物を得るために1つまたは複数の他の相溶性の液体酸化防止剤とブレンドしてもよい1つまたは複数の部分ヒンダードフェノール系酸化防止剤をブレンドに含めることが可能なこともある。こうした材料の具体的、非制限的例としては、4,6-ジ-tert-ブチル-2-メチルフェノール、6-tert-ブチル-2-メチルフェノール、2-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2-tert-ブチル-5-メチルフェノール、2,4-ジ-tert-ブチルフェノール;2,4-ジ-tert-ペンチルフェノール;トリエチレングリコール-ビス-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオナート](LOWINOX(登録商標)GP45-CAS36443-68-2);1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシル-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン(LOWINOX(登録商標)1790);2,2’-エチリデンビス[4,6-ジ-t-ブチルフェノール](ANOX(登録商標)29-CAS35958-30-6);2,2’メチレンビス(6-t-ブチル-4-メチルフェノール)(LOWINOX(登録商標)22M46-CAS119-47-1);および/またはこれらのうちの2以上の相溶性混合物が挙げられる。
【0051】
前述の材料、またはそのいずれか、更には本明細書における安定化成分(b)についての一般的定義の範囲に入る他のフェノール系酸化防止剤を使用して本発明による固体安定化組成物、即ち、50℃以上、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上で溶融する組成物を調合してもよい。
【0052】
安定化成分(b)は、本明細書において定義する少なくとも1つの部分ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含むことが必要である。安定化成分(b)は、1つまたは複数の低度または非ヒンダードフェノール系酸化防止剤から選択される少なくとも1つの更なる安定化成分(b^(optional))、例えば、4-tert-ペンチフェノール、p-クレゾールとジシクロペンタジエンのブチル化反応生成物(LOWINOX(登録商標)CPL-CAS68610-51-5)、または2,6-キシレノールを追加で含んでもよい。
【0053】
安定化成分(b)は、安定化組成物中に、安定化組成物の約1%?約40重量%の量で存在してもよい。好ましくは、安定化成分(b)は、安定化組成物の約5%?約30重量%、より好ましくは安定化組成物の約10%?約20重量%の量で存在する。
【0054】
安定化成分(c)は、1つまたは複数のチオエステルを含んでもよい。既に強調したように、本発明の安定化組成物に供給される酸化防止剤ブレンドは、液体安定化組成物、即ち、50℃未満、好ましくは40℃未満、より好ましくは30℃未満で溶融する組成物を提供するために選択してもよい。多くの場合、これは、これらの温度の一方または両方よりも低い温度ではそれ自体が液体である個々の酸化防止剤安定化成分を選択することによって達成される。具体的かつ非制限的例として、安定化成分(c)は、ジトリデシルチオジプロピオナート(NAUGARD(登録商標)DTDTDP(液体)CAS-10595-72-9);2,4-ビス(n-オクチルチオメチル)-6-メチルフェノール(Irganox(登録商標)1520-CAS110533-27-0);および/またはこれらのうちの2以上の相溶性混合物を含んでもよい。
【0055】
成分(a)および(b)と同様、安定化成分(c)は必ずしも単一の材料を含まなくてもよく、材料の適切なブレンドをそれ自体が含んでもよい。その場合、液体組成物を調合する場合であっても、特定の温度(複数可)でそれ自体液体ではないが、特定の温度(複数化)でそれ自体液体である安定化組成物を得るために1つまたは複数の他の相溶性の液体酸化防止剤とブレンドしてもよい1つまたは複数の含硫酸化防止剤をブレンドに含めることが可能なこともある。こうした材料の具体的、非制限的例としては、ペンタエリトリトールテトラキス(β-ラウリルチオプロピオナート)(NAUGARD(登録商標)412S-CAS29598-76-3);ジラウリル-3,3’-チオジプロピオナート(NAUGARD(登録商標)DLTDP-CAS123-28-4);ジステアリル-3,3’-チオジプロピオナート(NAUGARD(登録商標)DSTDP-CAS693-36-7);2,2’チオジエチレンビス[3(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](ANOX(登録商標)70-CAS41484-35-9);ジミリスチルチオジプロピオナート(Cyanox(登録商標)MTDP-CAS16545-54-3);ジステアリル-ジスルフィド(Hostanox(登録商標)SE10-CAS2500-88-1);および/またはこれらのうちの2以上の相溶性混合物が挙げられる。
【0056】
前述の材料、またはそのいずれか、更には本明細書における安定化成分(c)についての一般的定義の範囲に入る他のフェノール系酸化防止剤を使用して本発明による固体安定化組成物、即ち、50℃以上、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上で溶融する組成物を調合してもよい。
【0057】
特に好適な1つの安定化成分(c)は、ジトリデシルチオジプロピオナート(NAUGARD(登録商標)DTDTDP(液体)CAS-10595-72-9)を含む。特に好適な別の安定化成分(c)は、2,4-ビス(n-オクチルチオメチル)-6-メチルフェノール(Irganox(登録商標)1520-CAS110533-27-0)を含む。
【0058】
安定化成分(c)は、安定化組成物中に、安定化組成物の約20%?約80重量%、好ましくは安定化組成物の約30%?約75重量%、より好ましくは約40%?約70重量%、最も好ましくは約50%?約60重量%の量で存在してもよい。
【0059】
好ましくは、安定化組成物中の安定化成分の比(a):(b):(c)は、(約1?約3):(約0.01?約2):(約2?約6)、好ましくは(約1.5?約2.5):(約0.05?約1.5):(約3?約5)である。特に好適な比は、およそ2:1:4である。
【0060】
有利には、本発明による安定化組成物は、食品接触に適合したものであってもよい。「食品接触に適合」とは、安定化組成物が枠組規制EC1935/2004に定められた基準を満たす、および/または安定化組成物を含むプラスチック材料および/または物品が規制EU10/2011に定められた基準を満たすことを意味する。
【0061】
特に好適な食品接触に適合する安定化組成物は、オクタデシル3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオナート(ANOX(登録商標)PP18-CAS2082-79-3);トリエチレングリコール-ビス-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオナート](LOWINOX(登録商標)GP45-CAS36443-68-2);および、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオナート(NAUGARD(登録商標)DLTDP-CAS123-28-4)を含む。」

(1-4)「【0088】
以下の非制限的実施例により、本発明をより具体的に説明する。
【実施例】
【0089】
サンプルの調製
選択した安定化組成物、有機過酸化物架橋剤、およびRepsolS.A.が販売する低密度ポリエチレン(d=0.923g/cm^(3))ALCUDIA(登録商標)PE-003を個別に80℃に予熱し、次いで、ロータリーミキサーを用いて合わせ、その後、更なる使用の前に乾燥させる。
【0090】
スコーチ時間
得られる乾燥サンプル43gを、実験室用混練機Brabender Plasticorder814 300型において30rpmで、初期塊温度130℃にて撹拌溶融する。材料を2.0kgの一定荷重下で混練し、トルクをモニターする。スコーチ時間を、最小トルクと最小トルクから出発して1Nm増加するまでの時間として判定する。スコーチ時間が長いほど押し出し時の早期架橋のリスクが少ないことを意味する。
【0091】
架橋手順
架橋したPE-LDプラーク(厚さ:1.5mm)の製造を、温度が異なる3つの圧縮成形用金型で実施する:上述の調製したサンプルを圧縮金型内に広げ、圧力を0から150barまで徐々に増加させながら120℃まで6分間加熱する。得られるプラークを第二の圧縮金型に搬送し、180℃で15分間置いて架橋を完了させ、次いで、冷却してサンプルプラークを得る。
【0092】
熱劣化、伸びおよび引張強度
引張試験片(DIN53-504-82による寸法)を架橋したプラークから打ち抜き、150℃で0、10および14日間のオーブン老化のために3セットに分ける。引張試験片を引張強度および伸びの保持(降伏点;破断点)について評価する。機械的試験条件は、ASTMD638に準拠する。
【0093】
架橋速度およびレオメーターにおける最大トルク
各サンプル3gをMoving Die Rheometer(Rheotech)で180℃に加熱する。サンプルを、最大トルクが得られるまで一定の振幅で周期的交互応力(1.66Hzで0.5°の捩り)にかけ、架橋速度を判定する。
【0094】
結果を表I?VIに示す以下の実施例では、使用した安定化組成物は以下の通りである:
比較C1=4,4-チオビス(2-t-ブチル-5-メチルフェノール)(=TBM-6)
比較C2=50wt%2,2-チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](=ANOX(登録商標)70)と50wt%ジステアリルチオジプロピオナート(=DSTDP)との混合物
比較C3=4,6ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール(=KV-10)
本発明1=57wt%ジ(トリデシル)3,3’-チオジプロピオナートと、29wt%3,5-ビス-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシベンゼンプロパン酸アルキル-(C13?C15)と、14wt%6-tert-ブチル-2-メチルフェノールとの混合物
本発明2=57wt%ジ(トリデシル)3,3’-チオジプロピオナートと、29wt%3,5-ビス-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシベンゼンプロパン酸アルキル-(C13?C15)と、14wt%6-tert-ブチル-2,4-キシレノールとの混合物
本発明3=39.5wt%ジラウリル-3,3’-チオジプロピオナートと、23wt%オクタデシル3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオナートと、37.5wt%トリエチレングリコール-ビス-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオナート]との混合物
【0095】
これらの実施例および比較例は、表Iに記載した本発明に必要な成分A、BおよびCのうちの1つまたは複数を含むと考えてもよい:
【0096】
【表1】

【0097】
実施例C1、C2およびC3は比較例である。実施例1、2および3は本発明によるものである。明らかなように、ある種の材料(例えばTBM-6)は、本発明の必須成分として定義される範疇A、B、Cの2つ以上に入ってもよい。比較例C3は、KV10が2つのチオアルキル基だけでなくオルト位にメチル基を持つフェノール性-OHを含有することから、成分C(含硫酸化防止剤)と低度ヒンダードフェノール系酸化防止剤の両方を含むと考えてもよい。ただし、比較例C3は、本発明で必要な部分ヒンダードフェノール系酸化防止剤は含有しない。
【0098】
実験結果を以下の表に記載する。
【0099】
【表2】
(省略)
【0100】
本発明による組成物は、スコーチ時間が、C1?C3に例示する現在の産業界の標準的なものが示すスコーチ時間に等しい、近い、またはそれを超え、従って、「非常に良好」から「優れている」の範囲にあることがわかる。本発明の組成物の場合の最大トルクレベルは、産業界の標準を超え、ポリマーにおける架橋度が高く、本発明の安定化組成物と架橋剤または架橋反応による干渉のレベルが同程度に低いことを実証している。
【0101】
【表3】
(省略)
【0102】
本発明の組成物の熱劣化の前後いずれの引張強度も、これらの材料が示す熱伸びも、産業界の標準的な組成物に匹敵することがわかる。
【0103】
【表4】
(省略)
【0104】
【表5】
(省略)
【0105】
表IVおよびVのデータは、4℃および室温(比較的冷涼および温暖な気候でよくみられる異なる保存条件を再現することを意図している)で保存した液体AOおよび過酸化物の安定性を明らかにする。データは、時間の経過と共に比較例(KV-10)の最大トルクおよび架橋速度が劇的に低下し、架橋度の大幅な低下につながる、即ち、LDPEが産業界の基準を満たす所望のレベルまで架橋しないことを示している。
【0106】
しかし、本発明の組成物は遙かに高い架橋速度および最大トルクを示し、高い架橋度を示唆していた。
【0107】
これらの利点により、絶縁ワイヤーおよびケーブルまたは絶縁ワイヤーおよびケーブル用押出成形品の製造業者が、押し出しプロセスを行う相当以前に本発明の安定化組成物を架橋剤と予めブレンドすることが可能となる。こうした有益性は、結果として操業の柔軟性につながり、原料の無駄が削減または解消され、合わせた酸化防止剤/架橋剤組成物の投入量を、別々の成分としてではなく、単一のブレンドとして投入することでより正確にまたは容易に制御できるようになる。
【0108】
本発明組成物は、過酸化物により4℃および室温の両方で長期にわたり顕著な安定性を示す。安定性は、本発明組成物については、最大架橋速度および最大トルクの両方が、時間が経っても維持されることで実証される。
【0109】
【表6】
(省略)
【0110】
本発明の組成物の熱劣化の前後いずれの引張強度も、これらの材料が示す熱伸びも、産業界の標準的な組成物に匹敵することがわかる。
【0111】
【表7】

【0112】
上記の結果は、組成物を適切に調節することにより、スコーチ時間を個々の製造業者の要件に適するように調整できることを示している。これにより、KV-10およびTBM-6によって例示される先行技術の単一成分系と比較して、重要な利点が提供される。」

エ 判断
申立理由5の概要は、本件訂正前の請求項1?6について、組成物の成分として「完全ヒンダードフェノール系酸化防止剤」、「部分ヒンダードフェノール系酸化防止剤」、「含硫酸化防止剤」と記載されているものの、いずれの成分も漠然とした定義であって、多くの幅広い化合物を含むものであり、これらの3成分を適宜選択して「大気圧、即ち101.325kPaでの融点が約50℃以下」等の融点を特定することは当業者にとり試行錯誤を必要とする。また、本件明細書の実施例に記載された以外の化合物については、出願時の技術常識から同等の効果を奏することを推認することができないから、請求項1?6に係る発明に範囲にまで、拡張ないし一般化できないし、また、当業者が実施しうる程度に充分に記載されていないとするものである。

本件訂正発明1は、要するに訂正前の請求項1に【0059】の各安定化成分の比をさらに特定したものであって、「a.少なくとも1つの完全ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第一の安定化成分」、「b.少なくとも1つの部分ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第二の安定化成分」および「c.少なくとも1つの含硫酸化防止剤を含む第三の安定化成分」を含み、「大気圧、即ち101.325kPaでの融点が50℃以下である該安定化組成物中の安定化成分の比(前記第一の安定化成分:前記第二の安定化成分:前記第三の安定化成分)が、(1?3):(0.01?2):(2?6)である」安定化組成物である。
そして、本件明細書には、「完全ヒンダード」、「部分ヒンダード」、「低度ヒンダード」、「非ヒンダード」が定義され、これらの違いはフェノール系酸化防止剤がフェノール性OH基に対してオルト位にどのような構造のヒドロカルビル基を両側、片側又は有さないことであることが記載されている(摘記(1-2))。
また、本件明細書には、安定化成分(a)(【0043】、【0045】)、安定化成分(b)(【0049】、【0050】)、及び安定化成分(c)(【0054】、【0055】、【0057】)の具体例及び商品名が記載されている。さらに、本件明細書には、「安定化組成物に供給される酸化防止剤ブレンドは、液体安定化組成物、即ち、50℃未満・・・で溶融する組成物を提供するために選択され、多くの場合、目的とする融点の温度の一方または両方より低い温度ではそれ自体が液体である個々の酸化防止剤安定化成分を選択することにより達成される」(【0043】、【0049】、【0054】)と記載されていることから、50℃未満で溶融する安定化組成物を得る手段、及び目的とする融点の温度の一方または両方より低い温度ではそれ自体が液体である個々の酸化防止剤安定化成分を選択し、融点を本件訂正発明1の「50℃以下」に調節する手段も記載されていると解される。
本件明細書の記載によれば、本件訂正発明1の課題は、「安定剤と過酸化物との好ましくない相互作用、低い架橋速度、一部の例でみられる架橋化合物における低い最大トルク、ポリマーの不十分な架橋度、および時として起こる低耐スコーチ性が存在する」ため「所望の特性を最適化」することであり、上記の特定の安定化剤組成物を用いることによって解決できるとされている。
そして、本件明細書の実施例には、上記の安定化組成物に該当する例として実施例1、2が記載され、該実施例はスコーチ時間が「非常に良好」から「優れている」範囲にあり、最大トルクレベルが大きいことからポリマーにおける架橋度が高く、本件訂正発明1の架橋剤または架橋反応による干渉のレベルが同程度に低いこと(【0100】)、最大架橋速度及び最大トルクの両方から過酸化物により4℃及び室温の両方で長期にわたり顕著な安定性を有すること(【0108】)が示されている。

そうすると、本件明細書には、「完全ヒンダードフェノール系酸化防止剤」、「部分ヒンダードフェノール系酸化防止剤」の、「完全ヒンダード」、「部分ヒンダード」の構造の定義がなされ、さらに融点が50℃以下などの「完全ヒンダードフェノール系酸化防止剤」、「部分ヒンダードフェノール系酸化防止剤」、「含硫酸化防止剤」の具体的な化合物名及び商品名が記載されていることから、当業者であれば、これらの記載から本件訂正発明1の「完全ヒンダードフェノール系酸化防止剤」、「部分ヒンダードフェノール系酸化防止剤」、「含硫酸化防止剤」及びこれらの配合成分を配合した特定の融点を有する安定化剤組成物について理解でき、本件訂正発明1における各配合成分を選択することは適宜行う程度のものである。
したがって、本件特許の発明の詳細な説明は、当業者が本件訂正発明1を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるといえる。
さらに、本件訂正発明1の課題についても、本件明細書の実施例において、本件訂正発明1の安定化組成物は、最大トルクレベルが大きいことからポリマーにおける架橋度が高く、架橋剤または架橋反応による干渉のレベルが同程度に低いことが理解でき、また、最大架橋速度及び最大トルクの両方から過酸化物により4℃及び室温の両方で長期にわたり顕著な安定性を有することや、スコーチ時間から、耐スコーチ性に優れることが理解できるから(【0099】、【0100】、【0108】)、「安定剤と過酸化物との好ましくない相互作用、低い架橋速度、一部の例でみられる架橋化合物における低い最大トルク、ポリマーの不十分な架橋度、および時として起こる低耐スコーチ性が存在する」ため「所望の特性を最適化」することが示されているといえ、本件訂正発明の課題を解決できると当業者が認識できるように記載されているといえる。

オ 本件訂正発明2?12、15?25について
本件訂正発明2?12、15?25は、本件訂正発明1を直接又は間接的に引用するものであるが、上記エで述べたとおり、本件訂正発明1は当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているといえ、また、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものいえる以上、本件訂正発明2?12、15?25についても同様に、当業者が実施できる程度に記載されているといえ、及び当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものということができる。

カ まとめ
よって、申立理由5(実施可能要件)(サポート要件)は、理由がなく、本件訂正発明1?12、15?25に係る特許は、特許法第113条第4号に該当せず、取り消すべきではない。

(5)申立理由6(実施可能要件)(サポート要件)について
ア 特許法第36条第4項第1号の考え方について
上記(4)アで述べたとおりである。

イ 特許法第36条第6項第1号の考え方について
上記(4)イで述べたとおりである。

ウ 本件明細書の記載事項
上記(4)ウで述べたとおりである。

エ 判断
申立理由6の概要は、本件訂正前の請求項1について、安定化組成物の成分として「a.少なくとも1つの完全ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第一の安定化成分」、「b.少なくとも1つの部分ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第二の安定化成分」および「c.少なくとも1つの含硫酸化防止剤を含む第三の安定化成分」と記載されているものの、それぞれの成分の含有量の範囲が記載されていないが、本件明細書には、それぞれの成分に特定の含有量の比が記載されているのみであり、それ以外の含有量については、出願時の技術常識から同等の効果を奏することを推認できず、請求項1に係る発明の範囲にまで拡張ないし一般化できないし、また、当業者が実施しうる程度に充分に記載されていないとするものである。

そこで検討すると、本件訂正発明1は、要するに訂正前の請求項1に【0059】に記載された各安定化成分の比をさらに特定したものであって、「a.少なくとも1つの完全ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第一の安定化成分」、「b.少なくとも1つの部分ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第二の安定化成分」および「c.少なくとも1つの含硫酸化防止剤を含む第三の安定化成分」を含み、「大気圧、即ち101.325kPaでの融点が50℃以下である「該安定化組成物中の安定化成分の比(前記第一の安定化成分:前記第二の安定化成分:前記第三の安定化成分)が、(1?3):(0.01?2):(2?6)である」安定化組成物である。

また、本件明細書には、安定化成分(a)(【0048】)、安定化成分(b)(【0053】)、及び安定化成分(c)(【0058】)の配合量及び各安定化成分の比(【0059】)が記載されている。
本件明細書の記載によれば、本件訂正発明1の課題は、「安定剤と過酸化物との好ましくない相互作用、低い架橋速度、一部の例でみられる架橋化合物における低い最大トルク、ポリマーの不十分な架橋度、および時として起こる低耐スコーチ性が存在する」ため「所望の特性を最適化」することであり、上記の特定の安定化剤組成物を用いることによって解決できるとされている。
そして、本件明細書の実施例には、上記の安定化組成物に該当する例として実施例1、2が記載され、該実施例はスコーチ時間が「非常に良好」から「優れている」範囲にあり、最大トルクレベルが大きいことからポリマーにおける架橋度が高く、本件訂正発明1の架橋剤または架橋反応による干渉のレベルが同程度に低いこと(【0100】)、最大架橋速度及び最大トルクの両方から過酸化物により4℃及び室温の両方で長期にわたり顕著な安定性を有すること(【0108】)が示されている。

そうすると、本件明細書には、「a.少なくとも1つの完全ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第一の安定化成分」、「b.少なくとも1つの部分ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第二の安定化成分」および「c.少なくとも1つの含硫酸化防止剤を含む第三の安定化成分」の比が特定されていることから、当業者であれば、これらの記載から「a.少なくとも1つの完全ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第一の安定化成分」、「b.少なくとも1つの部分ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第二の安定化成分」および「c.少なくとも1つの含硫酸化防止剤を含む第三の安定化成分」の比が特定された安定化剤組成物について理解でき、本件訂正発明における各配合成分の比を選択することは適宜行う程度のものである。 したがって、本件特許の発明の詳細な説明は、当業者が本件訂正発明1を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるといえる。
さらに、本件訂正発明1の課題についても、本件明細書の実施例において、本件訂正発明1の安定化組成物は、最大トルクレベルが大きいことからポリマーにおける架橋度が高く、架橋剤または架橋反応による干渉のレベルが同程度に低いことが理解でき、また、最大架橋速度及び最大トルクの両方から過酸化物により4℃及び室温の両方で長期にわたり顕著な安定性を有することや、スコーチ時間から、耐スコーチ性に優れることが理解できるから(【0099】、【0100】、【0108】)、「安定剤と過酸化物との好ましくない相互作用、低い架橋速度、一部の例でみられる架橋化合物における低い最大トルク、ポリマーの不十分な架橋度、および時として起こる低耐スコーチ性が存在する」ため「所望の特性を最適化」することが示されているといえ、本件訂正発明の課題を解決できると当業者が認識できるように記載されているといえる。

オ 本件訂正発明2?12、15?25について
本件訂正発明2?12、15?25は、本件訂正発明1を直接又は間接的に引用するものであるが、上記(イ)で述べたとおり、本件訂正発明1は当業者が実施できる程度に記載されていないとはいえない、及び当業者が当該発明の課題を解決できる範囲を越えるとはいえない以上、本件訂正発明2?12、15?25についても同様に、当業者が実施できる程度に記載されていないとはいえない、及び当業者が当該発明の課題を解決できる範囲を越えるとはいえない。

カ まとめ
よって、申立理由6(実施可能要件)(サポート要件)は、理由がなく、本件訂正発明1?12、15?25に係る特許は、特許法第113条第4号に該当せず、取り消すべきではない。

3 申立人の主張
ア 本件訂正発明1について
申立人は令和2年2月21日付けの意見書の(2-2)において、本件訂正発明1の「該安定化組成物中の安定化成分の比(前記第一の安定化成分:前記第二の安定化成分:前記第三の安定化成分)が、(1?3):(0.01?2):(2?6)である」とあるが、この「安定化成分の比」とは、何に対する比なのか、成分のモル数に関する比なのか、容量に基づく比なのか明らかではなく、本件明細書にも定義が記載されていないから、当業者であっても発明の範囲を理解できないものであり、明瞭ではないし、当業者が実施できる程度に記載されていないと主張する。

申立人の上記(2-2)は、申立の要旨を変更するものであるので、採用するものではないが、念のため、以下当審の判断を述べる。

本件明細書には、各安定化成分の配合量について、安定化成分(a)(【0048】)、安定化成分(b)(【0053】)、及び安定化成分(c)(【0058】)の配合量及び各安定化成分の比(【0059】)が記載されており、実施例には安定化成分の配合量が「wt%」を用いて記載されている。
そして、本件明細書には、各安定化成分の配合量をモル数に関する比や、容量に基づく比では記載していない。

そうすると、本件明細書からは、本件訂正発明1の各安定化成分の配合量をwt%、すなわち重量%を用いて表していることから、本件訂正発明1における各安定化成分は重量の比で表していると考えるのが自然である。

したがって、本件訂正発明1は明確であり、さらに、当業者が実施できる程度に記載されている。

イ 本件訂正発明2?12、15?25について
本件訂正発明2?12、15?25は、本件訂正発明1を直接又は間接的に引用するものであるが、上記アで述べたとおり、本件訂正発明1は、当業者が実施できる程度に記載されており、また明確であるといえる以上、本件訂正発明2?12、15?25についても同様に、当業者が実施できる程度に記載されており、また明確であるといえる。

ウ まとめ
よって、たとえ意見書の(2-2)が採用されたとしても、この主張に基づく取消理由には理由がなく、本件訂正発明1?12、15?25に係る特許は、特許法第113条第4号に該当せず、取り消すべきではない。

第7 むすび
以上のとおり、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1?12、15?25に係る特許を取り消すことができない。
また、他に本件特許の請求項1?12、15?25に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件特許の請求項13、14に係る特許は、訂正により削除されたため、特許法第120条の8第1項で準用する第135条の規定により、この特許についての特許異議の申立ては却下する。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.少なくとも1つの完全ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第一の安定化成分;
b.少なくとも1つの部分ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む第二の安定化成分;および
c.少なくとも1つの含硫酸化防止剤を含む第三の安定化成分
を含み、
大気圧、即ち101.325kPaでの融点が50℃以下である安定化組成物であって、
該安定化組成物中の安定化成分の比(前記第一の安定化成分:前記第二の安定化成分:前記第三の安定化成分)が、(1?3):(0.01?2):(2?6)である、
安定化組成物。
【請求項2】
大気圧、即ち101.325kPaでの融点が40℃以下である、請求項1に記載の安定化組成物。
【請求項3】
大気圧、即ち101.325kPaでの融点が30℃以下である、請求項1に記載の安定化組成物。
【請求項4】
大気圧、即ち101.325kPaでの融点が50℃未満である液体組成物である、請求項1に記載の安定化組成物。
【請求項5】
大気圧、即ち101.325kPaでの融点が40℃未満である液体組成物である、請求項1に記載の安定化組成物。
【請求項6】
大気圧、即ち101.325kPaでの融点が30℃未満である液体組成物である、請求項1に記載の安定化組成物。
【請求項7】
少なくとも1つの低度ヒンダードフェノール系酸化防止剤および/または非ヒンダードフェノール系酸化防止剤を追加で含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の安定化組成物。
【請求項8】
安定化成分(a)が、3-(3’5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のC13?C15直鎖および分岐アルキルエステル(ANOX(登録商標)1315-CAS171090-93-0);オクタデシル3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオナート(ANOX(登録商標)PP18-CAS2082-79-3);N,N’-ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド](LOWINOX(登録商標)HD98-CAS23128-74-7);3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のC9?C11直鎖および分岐アルキルエステル(NAUGARD(登録商標)PS48-CAS125643-61-0);ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT-CAS128-37-0);2,6-ジ-ターシャリー-ブチル-4-sec-ブチルフェノール(Isonox(登録商標)132-CAS17540-75-9);2,6-ジ-ターシャリー-ブチル-4-ノニルフェノール(Isonox(登録商標)232)、テトラキスメチレン(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナマート)メタン(ANOX(登録商標)20-CAS6683-19-8);1,3,5-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌラート(ANOX(登録商標)IC14-CAS27676-62-6);1,2-ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナモイル)ヒドラジン(LOWINOX(登録商標)MD24-CAS32687-78-8);2,2’チオジエチレンビス[3(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](ANOX(登録商標)70-CAS41484-35-9);1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン(ANOX(登録商標)330-CAS1709-70-2);ブチル化ヒドロキシトルエン;および/またはこれらのうちの2以上の相溶性混合物のうちの1つまたは複数を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の安定化組成物。
【請求項9】
安定化成分(a)が、安定化組成物中に、安定化組成物の15重量%?45重量%の量で存在する、請求項1から8のいずれか一項に記載の安定化組成物。
【請求項10】
安定化成分(b)が、2-(1,1-ジメチルエチル)-4,6-ジメチル-フェノール(LOWINOX(登録商標)624-CAS1879-09-0);6-tert-ブチル-2-メチルフェノール、(CAS2219-82-1);4,6-ジ-tert-ブチル-2-メチルフェノール、6-tert-ブチル-2-メチルフェノール、2-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2-tert-ブチル-5-メチルフェノール、2,4-ジ-tert-ブチルフェノール;2,4-ジ-tert-ペンチルフェノール;トリエチレングリコール-ビス-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオナート](LOWINOX(登録商標)GP45-CAS36443-68-2);1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシル-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン(LOWINOX(登録商標)1790);2,2’-エチリデンビス[4,6-ジ-t-ブチルフェノール](ANOX(登録商標)29-CAS35958-30-6);2,2’メチレンビス(6-t-ブチル-4-メチルフェノール)(LOWINOX(登録商標)22M46-CAS119-47-1);および/またはこれらのうちの2以上の相溶性混合物のうちの1つまたは複数を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の安定化組成物。
【請求項11】
安定化成分(b)が、安定化組成物中に、安定化組成物の1重量%?40重量%の量で存在する、請求項1から10のいずれか一項に記載の安定化組成物。
【請求項12】
安定化成分(c)が、ジトリデシルチオジプロピオナート(NAUGARD(登録商標)DTDTDP(液体)CAS-10595-72-9);2,4-ビス(n-オクチルチオメチル)-6-メチルフェノール(Irganox(登録商標)1520-CAS110533-27-0);ペンタエリトリトールテトラキス(β-ラウリルチオプロピオナート)(NAUGARD(登録商標)412S-CAS29598-76-3);ジラウリル-3,3’-チオジプロピオナート(NAUGARD(登録商標)DLTDP-CAS123-28-4);ジステアリル-3,3’-チオジプロピオナート(NAUGARD(登録商標)DSTDP-CAS693-36-7);2,2’チオジエチレンビス[3(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](ANOX(登録商標)70-CAS41484-35-9);ジミリスチルチオジプロピオナート(Cyanox(登録商標)MTDP-CAS16545-54-3);ジステアリル-ジスルフィド(Hostanox(登録商標)SE10-CAS2500-88-1);および/またはこれらのうちの2以上の相溶性混合物のうちの1つまたは複数を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の安定化組成物。
【請求項13】
(削除)
【請求項14】
(削除)
【請求項15】
安定化組成物が枠組規制EC1935/2004に定められた基準を満たすように食品接触に適合したものである、請求項1から12のいずれか一項に記載の安定化組成物。
【請求項16】
(a)高分子基材;
(b)架橋剤;および
(c)請求項1から12のいずれか一項に記載の安定化組成物
を含む、安定化させた絶縁または半導体組成物。
【請求項17】
高分子基材が、ポリオレフィン、EVA、EBA、EMA、EEA、MAH、エチレンプロピレンゴム(EPR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム、ポリウレタンゴム、またはエチレンプロピレンジエンモノマーから製造したポリマーのうちの1つまたは複数を含む、請求項16に記載の安定化させた絶縁または半導体組成物。
【請求項18】
架橋剤が過酸化物である、請求項16または請求項17に記載の安定化させた絶縁または半導体組成物。
【請求項19】
過酸化物が有機過酸化物である、請求項18に記載の安定化させた絶縁または半導体組成物。
【請求項20】
安定化させた絶縁または半導体組成物が枠組規制EC1935/2004に定められた基準もしくは規制EU10/2011に定められた基準を満たすように食品接触に適合したものである、請求項16?19のいずれか一項に記載の安定化させた絶縁または半導体組成物。
【請求項21】
a.請求項1から12および15のいずれか一項に記載の安定化組成物を準備するステップ;
b.安定化組成物またはその成分をポリマーおよび架橋剤と合わせるステップ;
c.ポリマーから溶融物を形成するステップ;および
d.溶融物を、場合によってワイヤーまたはケーブルの絶縁スリーブの形態で押し出すステップ
を含む、安定化させた絶縁または半導体組成物を形成する方法。
【請求項22】
ポリマー、架橋剤および請求項1から12および15のいずれか一項に記載の安定化組成物を含む高分子溶融物の押出成形品を含む、押し出し、安定化させた絶縁または半導体組成物。
【請求項23】
請求項22に記載の安定化させた絶縁または半導体組成物で包まれた、または組成物を包むワイヤーまたはケーブル。
【請求項24】
請求項23に記載のワイヤーまたはケーブルを含む有用な物品。
【請求項25】
請求項23に記載のワイヤーまたはケーブルの電気系統における使用。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-03-19 
出願番号 特願2016-535149(P2016-535149)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (C08L)
P 1 651・ 536- YAA (C08L)
P 1 651・ 121- YAA (C08L)
P 1 651・ 537- YAA (C08L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 久保 道弘  
特許庁審判長 大熊 幸治
特許庁審判官 大▲わき▼ 弘子
佐藤 健史
登録日 2018-07-27 
登録番号 特許第6373384号(P6373384)
権利者 エスアイ グループ スウィッツァーランド(シーエイチエーエー)ゲーエムベーハー
発明の名称 組成物  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 片山 健一  
代理人 篠 良一  
代理人 片山 健一  
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