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審決分類 |
審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 C01B 審判 一部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 C01B 審判 一部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 C01B 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載 C01B 審判 一部申し立て 2項進歩性 C01B |
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管理番号 | 1362344 |
異議申立番号 | 異議2019-700443 |
総通号数 | 246 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2020-06-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2019-05-28 |
確定日 | 2020-04-03 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6429791号発明「疎水化球状シリカ微粉末及びその用途」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6429791号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?6〕について訂正することを認める。 特許第6429791号の請求項1、2に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件特許第6429791号(以下、「本件」という。)の請求項1?6に係る特許についての出願は、2014年(平成26年)10月29日(優先権主張 平成25年10月30日 日本国(JP))を国際出願日とし、平成30年11月9日に特許権の設定登録がなされ、同年11月28日に特許掲載公報が発行されたものである。 その後、本件の請求項1?6に係る特許のうちの請求項1、請求項2に係る特許に対し、令和1年5月28日付けで特許異議申立人 丹羽良子(以下「異議申立人」という。)により甲第1号証?甲第6号証が添付された特許異議の申立てがされ、同年7月22日付けで異議申立人に審尋が行われ、また、同年同月同日付けで特許権者にも審尋が行われ、それらの指定期間内である、同年8月7日付けで異議申立人より甲第7号証?甲第9号証が添付された回答書が提出され、また、同年同月同日付けで特許権者より乙第1号証?乙第5号証が添付された回答書が提出され、同年9月5日付けで異議申立人に対して、同年8月7日付けの特許権者の回答書が提出された旨を通知して期間を指定して意見を求め、また、同年同月同日付けで特許権者に対しても、同年8月7日付けの異議申立人の回答書が提出された旨を通知して期間を指定して意見を求めたところ、それらの指定期間内である、同年10月3日付けで特許権者より意見書が提出され、また、同年同月10日付けで異議申立人より甲第10号証が添付された意見書が提出されたものであり、同年10月29日付けで特許権者に対して、同年同月10日付けの異議申立人の意見書を送付するとともに、取消理由を通知し、その指定期間内である、同年12月26日付けで特許権者より意見書の提出及び訂正(以下、「本件訂正」という。)請求がされ、令和2年1月16日付けで異議申立人に対して、特許権者の同年10月3日付けの意見書を送付するとともに、訂正請求があった旨を通知して期間を指定して意見を求めたが、その指定期間内に異議申立人から意見書の提出がなかったものである。 第2 本件訂正について 本件訂正の請求の趣旨、及び、訂正の内容は、本件訂正請求書の記載によれば、それぞれ以下のとおりのものである。 1. 請求の趣旨 本件の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?6について訂正することを求める。 2. 訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は以下の訂正事項1のとおりである。(当審注:訂正箇所には下線を付加した。) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「疎水化球状シリカ微粉末」とあるのを、 「疎水化球状シリカ微粉末(但し、フェニル処理による疎水化された球状シリカ微粉末を除く)」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2?6も同様に訂正する)。 3. 訂正の適否についての判断 (1) 訂正事項1 訂正事項1は、訂正前の請求項1?6の疎水化球状シリカ微粉末から、フェニル処理による疎水化された球状シリカ微粉末を除く訂正事項であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (2) 一群の請求項について 訂正前の請求項2?6は、訂正前の請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項であり、請求項1?6は一群の請求項であるところ、訂正事項1の訂正は、その一群の請求項に対して請求されたものであるから、その訂正事項1を含む本件訂正は特許法120条の5第4項の規定に適合する。 (3) 独立特許要件について 本件の請求項1?6のうち、請求項3?6については、特許異議の申立てがされていないので、請求項3?6についての訂正事項1には、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第7項の規定が適用されるが、訂正事項1は、特許要件を備えたものとして特許された訂正前の請求項3?6の特許請求の範囲を減縮するものであるから、訂正事項1による訂正後の請求項3?6も特許要件を備えたものと認める。 したがって、請求項3?6についての訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第7項の規定に適合する。 4. 小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項から第7項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?6〕について訂正することを認める。 第3 本件訂正発明 上記第2のとおり訂正することを認めるので、本件の特許請求の範囲の請求項1?6に係る発明は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 粉体抵抗が1.0×10^(13)Ω・cm以上3.0×10^(14)Ω・cm以下であり、水分量が0.5wt%以下であり、タップ密度が0.10g/cm^(3)以上0.40g/cm^(3)以下であることを特徴とする疎水化球状シリカ微粉末(但し、フェニル処理による疎水化された球状シリカ微粉末を除く)。 【請求項2】 前記疎水化球状シリカ微粉末のレーザー回折散乱式粒度分布測定機にて測定された平均粒子径が0.080μm以上0.200μm以下であり、前記疎水化球状シリカ微粉末の最大粒子径が0.800μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の疎水化球状シリカ微粉末。 【請求項3】 前記疎水化球状シリカ微粉末において顕微鏡法による投影面積円相当径0.100μm以上の粒子は、平均球形度0.88以上であり、 前記顕微鏡法による投影面積円相当径0.100μm以上の粒子の総数を100%とした場合、球形度0.85以下の粒子の個数割合が20%以下であり、 前記顕微鏡法による投影面積円相当径0.100μm以上の粒子の総数を100%とした場合、球形度0.80以下の粒子の個数割合が10%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の疎水化球状シリカ微粉末。 【請求項4】 温度35℃以上55℃以下、絶対湿度40g/m^(3)以上100g/m^(3)以下の条件下で 24時間以上放置した球状シリカ微粉末に、前記球状シリカ粉末1m^(2)当たり、4.0×10^(-6)mol以上1.5×10^(-5)mol以下のヘキサメチルジシラザンを噴霧することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の疎水化球状シリカ微粉末の製造方法。 【請求項5】 前記球状シリカ微粉末は、水分量が0.4wt%以下であり、レーザー回折散乱式粒度分布測定機にて測定された平均粒子径が0.070μm以上0.170μm以下であり、最大粒子径が0.300μm以下であることを特徴とする請求項4に記載の疎水化球状シリカ微粉末の製造方法。 【請求項6】 請求項1から3のいずれか1項に記載の疎水化球状シリカ微粉末を含有することを特徴とする静電荷像現像用トナー外添剤。」 以下では、本件の特許請求の範囲の請求項1、請求項2に係る発明を、それぞれ、「本件訂正発明1」、「本件訂正発明2」といい、これらをまとめて、「本件訂正発明」ということがある。 第4 特許異議の申立てについて 1. 申立理由の概要 異議申立人は、以下の甲第1号証?甲第10号証を提出して、以下の申立理由1?3によって、訂正前の請求項1?2に係る発明(以下、「本件発明1?2」という。)に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。 (1) 申立理由1 本件発明1は、本件の優先日前に公知の甲第1号証により公然実施された発明、または、同甲第1号証に記載された発明(以下、単に「甲1発明」ということがある。)であるので、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである(特許異議申立書第7頁第1?6行)。 (2) 申立理由2 本件発明1?2は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件発明1?2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(特許異議申立書第7頁第1?17行)。 (3) 申立理由3 本件発明1?2に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない発明に対してされたものである、または、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない発明に対してされたものである(特許異議申立書第7頁第19行?第8頁第5行)。 [異議申立人が提出した証拠方法] 甲第1号証:製品紹介、アドマナノ(登録商標)/製品一覧、 株式会社アドマテック、[online ]、2016年、 Admatechs.、[2019年5月20日検索]、イン ターネット<URL:https://www.admatechs.co.jp/product- admanano-list.html> 甲第2号証:YA010C-Google検索、[online]、 2012年11月30日、株式会社アドマテック、 [2019年5月20日検索]、インターネット <URL:https://www.google.com/search?q=YA010C&source= lnt&tbs=cdr%3A1%2Ccd_min%3A%2Ccd_max%3A10%2F29%2F2013&tb m=> 甲第3号証:期間指定は「ピリオド2つ」 あなたの知らない検索ワザ、 MONO TRENDY、NIKKEI STYLE、 [online]、一歩先行くグーグル検索のコツ(上)、 2014年8月22日[2019年5月20日検索]、 インターネット<URL:https://style.nikkei.com/article /DGXMZO75419030Y4A800C1000000?page=2> 甲第4号証:実験成績証明書(粉体抵抗値の測定結果) 甲第5号証:実験成績証明書(水分量の測定結果) 甲第6号証:実験成績証明書(タップ密度の測定結果) 甲第7号証:粉体抵抗測定報告書、2019年3月8日、株式会社MCエバ テック 尼崎事業所尼崎分析センター 甲第8号証:SEM室の写真及び実験室1?2の写真、2019年8月1日 撮影、令和1年8月7日 丹羽良子提出 甲第9号証:アドマナノ(登録商標) YA010C-SP3のラベルの 写真及び納品書(2016年2月28日納入)の写し、 令和1年8月7日 丹羽良子提出 甲第10号証:取扱説明書 タップ密度測定器タップデンサーKYT- 5000k、改正2、2013年11月1日、株式会社セイ シン企業 2. 取消理由の概要 本件発明1に係る特許に対して、令和1年10月29日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 (1) 本件発明1は本件の優先日前に公知の甲第1号証に記載された発明であるので、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである(以下、「取消理由1」という。)。 3. 当審の判断 (1) 甲各号証の記載事項 (1-1) 甲第1号証の記載事項 1ア. 「 」 1イ. 「 」 1ウ. 「 YA010C 」 (1-2) 甲第2号証の記載事項 「 」 (1-3) 甲第3号証の記載事項 「 」 (1-4) 甲第4号証の記載事項 甲第4号証には、株式会社アドマテックスのアドマナノ(登録商標)YA010C(フェニル処理品、品番YA010C-SP3、Lot.No.VAB161-1)(以下、単に、「フェニル処理したYA010C」という。)について、本件明細書の0010段落の方法に準拠して粉体抵抗値を測定した結果、8.10×10^(13)Ω・m(当審注:甲第7号証の記載によれば、単位は「Ω・cm」の誤記と認める。)であったことが記載されている。 (1-5) 甲第5号証の記載事項 甲第5号証には、フェニル処理したYA010Cについて、本件明細書の0012段落の方法に準拠して水分量を測定した結果、0.46wt%であったことが記載されている。 (1-6) 甲第6号証の記載事項 甲第6号証には、フェニル処理したYA010Cについて、本件明細書の0014段落の方法に準拠するも、ストローク長は10mmにして、タップ密度を測定した結果、0.34g/cm^(3)であったことが記載されている。 なお、異議申立人に対する令和1年9月5日付けの通知書に対して、異議申立人が令和1年10月10日付けで提出した意見書によれば、フェニル処理したYA010Cについて、本件明細書の0014段落の方法に準拠し、ストローク長を18mmにして、タップ密度を測定し直した結果、0.36g/cm^(3)であったとされている。 (2) 甲第1号証に示されている発明 上記3.(1-1)の1ア.?1ウ.によれば、甲第1号証には、メタクリル、ビニル、フェニル等にて表面処理した、動的光散乱式粒度分布計にて測定した粒径が10nmであり、水分量が2%未満であり、ECが20μS/cm未満であるシリカ微粒子YA010Cが示されており、当該シリカ微粒子YA010Cは、上記3.(1-2)?(1-3)によれば、本件の優先日前に公知の真球状シリカ微粒子であると認められる。 してみると、甲第1号証には、本件訂正発明の優先日前に公知の真球状シリカ微粒子として、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「メタクリル、ビニル、フェニル等にて表面処理した真球状シリカ微粒子YA010Cであって、動的光散乱式粒度分布計にて測定した粒径が10nmであり、水分量が2%未満であり、ECが20μS/cm未満である、真球状シリカ微粒子YA010C。」 (3) 取消理由1についての検討 上記2.に示した、本件発明1は本件の優先日前に公知の甲第1号証に記載された発明(甲1発明)である旨の取消理由1について、以下に検討する。 (3-1) 本件訂正発明1と甲1発明との対比 本件訂正発明1と、上記(2)に示した、甲1発明とを対比すると、甲1発明における、「メタクリル、ビニル、フェニル等にて表面処理」すること、「真球状」、「シリカ微粒子YA010C」は、それぞれ、本件訂正発明1における、「疎水化」、「球状」、「シリカ微粒子」に相当するから、両者は、以下の点で一致し、以下の点で、相違していると認められる。 <一致点> 「疎水化球状シリカ微粉末」の点。 <相違点> 相違点1: 粉体抵抗について、本件訂正発明1は、「1.0×10^(13)Ω・cm以上3.0×10^(14)Ω・cm以下であ」るとの発明特定事項を備えているのに対し、甲1発明は、前記の発明特定事項を備えているのか明らかではない点。 相違点2: 水分量について、本件訂正発明1は、「0.5wt%以下であ」るとの発明特定事項を備えているのに対し、甲1発明は、水分量が2%未満であるものの、前記の発明特定事項を備えているのか明らかではない点。 相違点3: タップ密度について、本件訂正発明1は、「0.10g/cm^(3)以上0.40g/cm^(3)以下である」との発明特定事項を備えているのに対し、甲1発明は、前記の発明特定事項を備えているのか明らかではない点。 相違点4: 疎水化球状シリカ微粉末について、本件訂正発明1は、「(但し、フェニル処理による疎水化された球状シリカ微粉末を除く)」との発明特定事項を備えているのに対し、甲1発明は、メタクリル、ビニル、フェニル等にて表面処理(疎水化)した真球状シリカ微粒子YA010Cである点。 (3-2) 上記相違点についての検討 ア. 事案に鑑み、まず、上記相違点4について検討するに、甲1発明は、メタクリル、ビニル、フェニル等にて疎水化した真球状シリカ微粒子YA010Cであり、これらのうちの、メタクリル、ビニルにて疎水化した真球状シリカ微粒子YA010Cは、本件訂正発明1において除かれたものではない。 してみると、上記相違点4は実質的な相違点とはいえない。 イ. 次に、上記相違点1について検討する。 (ア) 甲1発明の真球状シリカ微粒子YA010Cは、ECが20μS/cm未満であるところ、前記ECとは、その単位からして、導電率を意味しており、その逆数が粉体抵抗であることから、甲1発明の真球状シリカ微粒子YA010Cは、5000Ω・cmよりも大きい粉体抵抗を有するものであると認められる。 (イ) 上記(ア)に示した、甲1発明の粉体抵抗(5000Ω・cmよりも大きい粉体抵抗)は、一応、上記相違点1に係る本件訂正発明1の、「1.0×10^(13)Ω・cm以上3.0×10^(14)Ω・cm以下であ」るとの発明特定事項の範囲と重複してはいるものの、その範囲以外の粉体抵抗、例えば本件訂正発明の比較例の粉体抵抗をも包含するほどに、広範囲なものである。 (ウ) ここで、上記(1)の(1-4)によれば、甲1発明のうちの、フェニル処理(疎水化)した真球状シリカ微粒子YA010Cの粉体抵抗は8.10×10^(13)Ω・cmとされているが、本件訂正発明1は、当該YA010Cを除くものである。 また、上記(1)の(1-1)?(1-6)等の甲各号証の記載事項を参照しても、甲1発明のうちの、メタクリル、ビニルにて疎水化した真球状シリカ微粒子YA010Cについて、この粉体抵抗が「1.0×10^(13)Ω・cm以上3.0×10^(14)Ω・cm以下であ」ると把握(理解)することはできず、また、上記微粒子の粉体抵抗を上記範囲にすることが、本件優先日の技術常識であるともいえない。 (エ) 上記(ア)?(ウ)の検討によれば、上記相違点1は実質的な相違点である。 (3-3) 小括 上記(3-2)ア.?イ.の検討によれば、上記相違点1は実質的な相違点である。 してみると、上記相違点2?3について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲1発明と同じものとはいえず、取消理由1が妥当なものとはいえない。 (4) 申立理由についての検討 上記1.に示した申立理由1?3のうちの、申立理由1は、上記2.に示した取消理由1と同じものであり、上記(3)で検討したとおり、妥当なものとはいえない。 そこで、申立理由2?3につき検討する。 (4-1) 申立理由2について 申立理由2は、本件発明1?2は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである旨の申立理由である。 ア. そして、上記(3-2)ア.?イ.の検討によれば、上記相違点4は実質的な相違点とはいえないが、上記相違点1は実質的な相違点である。 そこで、まず、甲1発明が、上記相違点1に係る本件訂正発明1の発明特定事項を備えるようにすることが容易になし得る技術事項であるかにつき、以下に、検討を行う。 (ア) 甲第1号証のメタクリル、ビニルにて疎水化した真球状シリカ微粒子は、粉体抵抗が5000Ω・cmよりも大きい特定値を有するものであるとしても、甲第1号証は、上記微粒子の粉体抵抗を「1.0×10^(13)Ω・cm以上3.0×10^(14)Ω・cm以下」の範囲に限定することを記載も示唆もするものではない。 (イ) さらに、上記(3-2)イ.で検討したとおり、上記(1)の(1-4)によれば、甲1発明のうちの、フェニル処理(疎水化)した真球状シリカ微粒子YA010Cの粉体抵抗は8.10×10^(13)Ω・cmとされているが、本件訂正発明1は、当該YA010Cを除くものであるし、また、上記(1)の(1-1)?(1-6)等の甲各号証の記載事項を参照しても、甲1発明のうちの、メタクリル、ビニルにて疎水化した真球状シリカ微粒子YA010Cについて、この粉体抵抗が「1.0×10^(13)Ω・cm以上3.0×10^(14)Ω・cm以下であ」ると把握(理解)することはできず、また、上記微粒子の粉体抵抗を上記範囲にすることが、本件優先日の技術常識であるともいえない。 (ウ) 上記(ア)?(イ)の検討によれば、甲1発明が、上記相違点1に係る本件訂正発明1の発明特定事項を備えるようにすることが容易になし得る技術事項であるとはいえない。 イ. 上記ア.の検討によれば、上記相違点2?3について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ. また、本件訂正発明2は、本件訂正発明1の全ての発明特定事項を備えたものであるから、本件訂正発明2も、本件訂正発明1と同様、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 エ. したがって、申立理由2は妥当なものとはいえない。 (4-2) 申立理由3について ア. 申立て理由3について、タップ密度にて本件発明が特定されているところ、異議申立人は特許異議申立書で、タップ密度の測定において、ストローク長のタップ密度の測定値に与える影響が大きいことは技術常識であるにもかかわらず、ストローク長についてはどのように選択すべきかの指標すら本件明細書に開示されていないので、本件明細書の開示では、タップ密度にて本件発明を特定することができず、発明の詳細な説明の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない本件発明1?2に対して特許されたものである、または、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない本件発明1?2に対して特許されたものである旨主張している。 イ. 本件訂正発明1は、上記第3に示されるとおり、「タップ密度が0.10g/cm^(3)以上0.40g/cm^(3)以下である」との特定事項を備えるものであり、当該特定事項について、本件明細書には、「疎水化球状シリカ微粉末のタップ密度はパウダテスターを用いて測定することが出来る。測定装置には、ホソカワミクロン社製「PT-E型」を使用した。温度25℃、相対湿度55%の条件下で24Hr静置させた疎水化球状シリカ微粉末を100mlのカップに入れ、1秒に1回の速さで180回タッピング後に見掛け密度を測定した。」(【0014】)との記載があるものの、「ストローク長」についての開示はされていない。 ウ. ここで、特許権者が令和1年8月7日付けの回答書に添付した、乙第1?2号証によれば、上記イ.のように本件明細書に記載の、タップ密度の測定装置である、ホソカワミクロン社製「PT-E型」は、ストローク長が18mmに固定されている測定装置であると認められる。 エ. 上記イ.?ウ.の検討によれば、タップ密度の測定について、本件明細書の開示では、「ストローク長」が不明確であるとはいえないから、申立理由3も妥当なものとはいえない。 (4-3) 小括 上記(4-1)?(4-2)の検討によれば、申立理由2?3は妥当なものとはいえないから、本件訂正発明1?2に係る特許は、それらの申立理由によって、取り消されるべきものではない。 第5 むすび 以上のとおり、取消理由、特許異議の申立理由によっては、本件訂正発明1?2に係る特許を取り消すことができない。 さらに、他に本件訂正発明1?2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 粉体抵抗が1.0×10^(13)Ω・cm以上3.0×10^(14)Ω・cm以下であり、水分量が0.5wt%以下であり、タップ密度が0.10g/cm^(3)以上0.40g/cm^(3)以下であることを特徴とする疎水化球状シリカ微粉末(但し、フェニル処理による疎水化された球状シリカ微粉末を除く)。 【請求項2】 前記疎水化球状シリカ微粉末のレーザー回折散乱式粒度分布測定機にて測定された平均粒子径が0.080μm以上0.200μm以下であり、前記疎水化球状シリカ微粉末の最大粒子径が0.800μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の疎水化球状シリカ微粉末。 【請求項3】 前記疎水化球状シリカ微粉末において顕微鏡法による投影面積円相当径0.100μm以上の粒子は、平均球形度0.88以上であり、 前記顕微鏡法による投影面積円相当径0.100μm以上の粒子の総数を100%とした場合、球形度0.85以下の粒子の個数割合が20%以下であり、 前記顕微鏡法による投影面積円相当径0.100μm以上の粒子の総数を100%とした場合、球形度0.80以下の粒子の個数割合が10%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の疎水化球状シリカ微粉末。 【請求項4】 温度35℃以上55℃以下、絶対湿度40g/m^(3)以上100g/m^(3)以下の条件下で 24時間以上放置した球状シリカ微粉末に、前記球状シリカ粉末1m^(2)当たり、4.0×10^(-6)mol以上1.5×10^(-5)mol以下のヘキサメチルジシラザンを噴霧することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の疎水化球状シリカ微粉末の製造方法。 【請求項5】 前記球状シリカ微粉末は、水分量が0.4wt%以下であり、レーザー回折散乱式粒度分布測定機にて測定された平均粒子径が0.070μm以上0.170μm以下であり、最大粒子径が0.300μm以下であることを特徴とする請求項4に記載の疎水化球状シリカ微粉末の製造方法。 【請求項6】 請求項1から3のいずれか1項に記載の疎水化球状シリカ微粉末を含有することを特徴とする静電荷像現像用トナー外添剤。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2020-03-25 |
出願番号 | 特願2015-545264(P2015-545264) |
審決分類 |
P
1
652・
113-
YAA
(C01B)
P 1 652・ 537- YAA (C01B) P 1 652・ 851- YAA (C01B) P 1 652・ 121- YAA (C01B) P 1 652・ 536- YAA (C01B) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 若土 雅之 |
特許庁審判長 |
豊永 茂弘 |
特許庁審判官 |
後藤 政博 小川 進 |
登録日 | 2018-11-09 |
登録番号 | 特許第6429791号(P6429791) |
権利者 | デンカ株式会社 |
発明の名称 | 疎水化球状シリカ微粉末及びその用途 |
代理人 | 奥野 彰彦 |
代理人 | SK特許業務法人 |
代理人 | 奥野 彰彦 |
代理人 | 伊藤 寛之 |
代理人 | 伊藤 寛之 |
代理人 | SK特許業務法人 |