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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1362619
審判番号 不服2019-7786  
総通号数 247 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-06-12 
確定日 2020-05-19 
事件の表示 特願2017-531960「構成アクションの頑健な検証を行うスコアリング方法及びシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 3月17日国際公開、WO2016/037637、平成29年11月 9日国内公表、特表2017-533678〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)9月8日を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成30年 6月13日付け 拒絶理由通知書
平成30年 9月18日 意見書、手続補正書の提出
平成31年 2月 1日付け 拒絶査定
令和 元年 6月12日 拒絶査定不服審判の請求

第2 本願発明について
本願の請求項1?18に係る発明は、平成30年9月18日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?18に記載された事項により特定されるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものと認める。

「 自己組織化ネットワークでアクション後検証を行う方法において、
検証装置が、あるドメインにおける構成変化を検出し、その構成変化は、少なくとも1つのパラメータ変化を含み、そして前記ドメインは、少なくとも1つのセルを含み、
前記検証装置が、所定期間中に、評価サイクルを繰り返し、及び
前記検証装置が、前記少なくとも1つのパラメータ変化の各パラメータ変化に対して、前記ドメインの各セルの性能変化に基づき前記各パラメータ変化をアンドゥすべきかどうか判断し、そのセルは、前記各パラメータ変化により影響を受けるものであり、
前記評価サイクルは、前記ドメインの各セルの前記性能変化を評価することを含み、そのセルは、前記少なくとも1つのパラメータ変化のいずれかにより影響を受けるものである、方法。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の概要は、
「(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」
というものであり、請求項1に対して国際公開第2013/089058号が引用されている。

第4 引用発明及び周知事項
1.引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された国際公開第2013/089058号(以下、「引用例」という。)には、図面とともに次の記載がある。

(1)「[0011] しかしながら、無線パラメータを制御する無線セル(制御対象無線セル)に対して、当該制御対象無線セルの無線パラメータを評価するための無線セル(評価対象無線セル)を不必要に多く設定すると、当該制御対象無線セルの無線パラメータの変更に直接関係しない無線セルまで考慮してしまい、適切な無線パラメータの制御が行われない。例えば、制御対象無線セルと、当該制御対象無線セルから一定の距離内にある全ての無線セル(周辺無線セル)とを評価対象無線セルに設定し、評価対象無線セルの品質劣化をトリガとして制御対象無線セルの無線パラメータを変更する場合、評価対象無線セルを広域に取り過ぎると、当該制御対象無線セルの無線パラメータの変更では解決することができない品質劣化まで検出してしまい、不要な無線パラメータの変更処理が発生する可能性がある。また、別の例として、制御対象無線セルの無線パラメータ変更後に評価対象無線セルの品質劣化を検出してフォールバック制御(制御対象無線セルの無線パラメータを元の状態に戻す制御をいう)を行う場合、評価対象無線セルを広域に取り過ぎると、当該無線パラメータの変更が原因ではない品質劣化まで検出してしまい、不要なフォールバック制御が発生する可能性がある。」(3?4ページ)

(2)「[0045] このようにして取得された、無線パラメータの変更後の無線端末1a?無線端末1dのサービングセルのうち、制御対象無線セル2ではない無線端末1a?無線端末1cのサービングセル(無線セル3a,3b,3c)を、制御対象無線セル2に対する評価対象候補無線セルとする。このとき、制御対象無線セル2を評価対象候補無線セルに含めても良いことはいうまでもない。」
(中略)
[0049] このようにして、制御対象無線セルの周辺無線セルに接続していた無線端末1a?無線端末1cの、制御対象無線セルの無線パラメータの変更後のサービングセルを取得する。そして、取得したサービングセルが制御対象無線セル2である場合に、制御対象無線セルの無線パラメータの変更前のサービングセル(無線セル3a,3b,3c)を、制御対象無線セル2に対する評価対象候補無線セルとする。このとき、制御対象無線セル2を評価対象候補無線セルに含めても良いことはいうまでもない。
[0050] 続いて、上述により求められた評価対象候補無線セルから評価対象無線セルを選択する。図2、4に示されるように、評価対象候補無線セルの全てを評価対象無線セルとして選択しても良いし、評価対象候補無線セルのうち重要な無線セルを評価対象無線セルとして選択しても良い。また、制御対象無線セル2を評価対象無線セルとして選択しても良いことは自明である。すなわち、選択方法は限定されるものではなく、適時本発明を逸脱しない範囲で決定する。」(12?14ページ)

(3)「[0053] 図5は本発明の無線パラメータ制御システムの構成図である。
[0054] 本発明の無線パラメータ制御システムは、無線端末10と、評価対象無線セル選択部11と、無線パラメータ制御部12とを有する。尚、無線通信ネットワーク13は、端末10に無線通信サービスを提供するシステムであり、無線基地局や無線パラメータ制御装置等を含む。」(14ページ)

(4)「[0075] また、評価対象無線セルの品質は、評価対象無線セルのトラフィック負荷、平均スループット、異常切断率、ハンドオーバ失敗率等である。尚、評価対象無線セルの品質のみを評価しても良いが、評価対象無線セルの品質を重視しつつ、評価対象無線セル以外の無線セルの品質を評価しても良い。また、上述したように評価対象無線セルの重要度が求められている場合、その重要度が高い評価対象無線セルほど重視して評価するようにしても良い。」(19?20ページ)

(5)「[0102] 無線パラメータ制御部34は、制御対象無線セルに対して選択された評価対象無線セルの品質評価の結果を用いて、制御対象無線セルの無線パラメータの変更が必要であるかを判定し、無線パラメータの変更値を決定する。例えば、評価対象無線セルの品質劣化をトリガとして、制御対象無線セルの無線パラメータを変更する。あるいは、制御対象無線セルの無線パラメータ変更後に評価対象無線セルにおいて品質劣化が確認された場合に、無線パラメータのフォールバックを実施する。尚、無線パラメータの具体例は、無線セルの下り信号の最大送信電力、パイロット信号やリファレンス信号の送信電力、アンテナのチルト角、又はアンテナの方位角等である。また、無線パラメータとして、CIO(Cell Individual Offset)やQoffsetを用いても良い。」(26ページ)

(6)「[0135] 図12は第2の実施の形態の一例の動作全体のフローチャートである。
[0136] まず、制御対象無線セルをサービングセルとする又は制御対象無線セルの周辺無線セルをサービングセルとするUE50が測定した測定情報(無線品質)を、無線基地局40を介して、無線パラメータ制御装置30が収集し、収集した無線品質情報や無線セル毎のパフォーマンスカウンタ情報に基づいて、無線パラメータ制御部34は、制御対象無線セルの無線パラメータを変更する(Step 40)。
[0137] 次に、無線パラメータ制御装置30の評価対象無線セル選択部32は、制御対象無線セルの無線パラメータを評価するための評価対象無線セルを選択する(Step 41)。尚、選択動作については、後述する。
[0138] 無線パラメータ制御装置30の品質評価部33は、評価対象無線セルの品質を評価する(Step 42)。そして、評価対象無線セルの品質の劣化が検出されると、無線パラメータ制御装置30の無線パラメータ制御部34は、制御対象無線セルの無線パラメータのフォールバックの実施や、新たな無線パラメータの候補値に変更する制御を行う(Step 43)。
[0139] 次に、制御対象無線セルに対する評価対象無線セルを選択する動作を説明する。
[0140] 図13は第2の実施の形態の一例の評価対象無線セル選択部32のフローチャートである。
[0141] まず、無線パラメータの変更前に制御対象無線セルをサービングセルとしていたUE50、又は、制御対象無線セルの周辺無線セルをサービングセルとしていたUE50の、無線パラメータの変更後のサービングセルの情報(実測値)を取得する(Step 50)。そして、取得したUE50のサービングセルに基づいて、評価対象候補無線セルを選択する。(Step 51)。具体的には、無線パラメータの変更によって、あるUE50のサービングセルが制御対象無線セルから他の無線セルに変化した場合、取得した無線パラメータ変更後の当該UE50のサービングセルを評価対象候補無線セルとする。一方、無線パラメータの変更によって、あるUE50のサービングセルが周辺無線セルから制御対象無線セルに変化した場合、当該UE50の無線パラメータの変更前のサービングセルを、評価対象候補無線セルとする。このような処理をUE50毎に行う。
[0142] 最後に、評価対象候補無線セルから評価対象無線セルを選択する(Step 52)。」(31?33ページ)

(7)


(8)


上記各記載からみて、

a.上記(7)の図5に無線パラメータ制御システムが記載されており、上記(3)の段落54の記載によれば、無線パラメータ制御システムの無線通信ネットワークには無線パラメータ制御装置が含まれるといえる。また、上記(6)の記載によれば、無線パラメータ制御装置30の無線パラメータ制御部34は制御対象無線セルの無線パラメータを変更するといえる。
よって、引用例には、無線パラメータ制御システムにおいて無線パラメータ制御装置により制御対象無線セルの無線パラメータを変更する方法が記載されているといえる。
また、上記(5)の「制御対象無線セルの無線パラメータ変更後に評価対象無線セルにおいて品質劣化が確認された場合に、無線パラメータのフォールバックを実施する。」という記載及び上記(8)の図12及び上記(6)の記載によれば、無線パラメータ制御装置は、制御対象無線セルの無線パラメータを変更し、無線パラメータ変更後の評価対象無線セルの品質の評価を行っていることから、無線パラメータ制御装置は無線パラメータ変更後の評価を行っているといえる。
したがって、引用例には「無線パラメータ制御システムにおいて無線パラメータ制御装置により制御対象無線セルの無線パラメータを変更し、無線パラメータ変更後の評価を行う方法」が記載されているといえ、また、「無線パラメータ制御装置の無線パラメータ制御部は制御対象無線セルの無線パラメータを変更」するといえる。

b.上記(2)に「制御対象無線セル2を評価対象候補無線セルに含めても良いことはいうまでもない。」、「評価対象候補無線セルの全てを評価対象無線セルとして選択しても良い」と記載され、上記(6)の段落141に「評価対象候補無線セルを選択する。(Step 51)」「評価対象候補無線セルから評価対象無線セルを選択する(Step 52)」と記載されていることから、「制御対象無線セルを含めた評価対象候補無線セルから制御対象無線セルを含めた全てを評価対象無線セルに選択」しているといえる。

c.上記(5)の「制御対象無線セルの無線パラメータ変更後に評価対象無線セルにおいて品質劣化が確認された場合に、無線パラメータのフォールバックを実施する。」という記載及び上記(8)の図12及び上記(6)の記載によれば、評価対象無線セルの品質の劣化が検出されると、無線パラメータ制御装置の無線パラメータ制御部は、制御対象無線セルの無線パラメータのフォールバックの実施を行っており、また、無線パラメータ制御装置の品質評価部は評価対象無線セルの品質を評価し品質劣化を確認しているといえる。また、上記(4)に「評価対象無線セルの品質は、平均スループットである」と記載されていることから、引用例では「無線パラメータ制御装置の品質評価部は平均スループットで評価対象無線セルの品質を評価し品質劣化を確認し」ているといえる。更に、上記(1)に「フォールバック制御(制御対象無線セルの無線パラメータを元の状態に戻す制御をいう)」と記載されていることから、「無線パラメータ制御装置の無線パラメータ制御部は、評価対象無線セルの品質の劣化が検出されると、制御対象無線セルの無線パラメータを元の状態に戻す制御を行」っているといえる。

以上を総合すると、引用例には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「無線パラメータ制御システムにおいて無線パラメータ制御装置により制御対象無線セルの無線パラメータを変更し、無線パラメータ変更後の評価を行う方法において、
無線パラメータ制御装置の無線パラメータ制御部は制御対象無線セルの無線パラメータを変更し、
制御対象無線セルを含めた評価対象候補無線セルから制御対象無線セルを含めた全てを評価対象無線セルに選択し、
無線パラメータ制御装置の品質評価部は平均スループットで評価対象無線セルの品質を評価し品質劣化を確認し、
無線パラメータ制御装置の無線パラメータ制御部は、評価対象無線セルの品質の劣化が検出されると、制御対象無線セルの無線パラメータを元の状態に戻す制御を行う、
方法。」

2.周知事項
(1)本願出願前に公開された国際公開第2012/053240号には、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

「[0032] MeNB100は、当該MeNB100とUE200との間の無線通信におけるスループット(通信速度)を周期的に測定する。MeNB100は、所定期間内に測定したスループットの平均値を算出する。」(8ページ)

(2)同じく本願出願前に公開された特開2011-55060号公報には、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

「【0038】
ステップS50では、無線端末装置110のスループット測定部132が、上記のアクセスポイント200との間のEchoメッセージのやりとりにおける通信処理のスループットを算出する。具体的には、スループット測定部132は、記憶しておいた上記の各計測時間t_(1),t_(2),…,t_(N)と、Echoメッセージの既知のデータ量とを用いて、Echoメッセージのやりとりの1回ごとのスループットを算出し、その平均値を算出する。」(8ページ)

これらの記載によれば、「スループットを複数回測定し、複数のスループットの平均値から平均スループットは算出する。」ことは周知事項であると認められる。

第5 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。

1.引用発明では無線パラメータ制御装置により制御対象無線セルの無線パラメータを変更したり、評価対象無線セルの品質を評価し、制御対象無線セルの無線パラメータを元の状態に戻す制御を行っていることから、無線パラメータ制御システムのネットワーク内で自己組織化を行っているといえる。また、引用発明で制御対象無線セルの無線パラメータを変更することを「アクション」と称することは任意であるから、引用発明の「無線パラメータ制御システムにおいて無線パラメータ制御装置により制御対象無線セルの無線パラメータを変更し、無線パラメータ変更後の評価を行う方法」は、本願発明と同様に、「自己組織化ネットワークでアクション後検証を行う方法」といえる。

2.引用発明の無線パラメータ制御装置の品質評価部は品質を評価し品質劣化を確認し、無線パラメータ制御装置の無線パラメータ制御部は評価対象無線セルの品質の劣化が検出されると制御対象無線セルの無線パラメータを元の状態に戻す制御を行うことから、無線パラメータ制御装置は検証を行っているといえる。よって、引用発明の「無線パラメータ制御装置」は、本願発明の「検証装置」に対応する。
また、引用発明では制御対象無線セルを含めた評価対象候補無線セルから制御対象無線セルを含めた全てを評価対象無線セルに選択しているところ、評価対象無線セルを「ドメイン」と称することは任意である。
そして、引用発明では、無線パラメータ制御装置の無線パラメータ制御部で制御対象無線セルの無線パラメータを変更した後に、無線パラメータ制御装置の品質評価部が品質の評価を始めることから、無線パラメータ制御装置内では制御対象無線セルの無線パラメータの変更である「あるドメインにおける構成変化を検出」しているといえる。
また、引用発明の「制御対象無線セルの無線パラメータを変更」は「少なくとも1つのパラメータ変化」といえる。更に、引用発明では無線パラメータ制御装置の無線パラメータ制御部は制御対象無線セルの無線パラメータを変更しているところ、制御対象無線セルはセルであり、「ドメインの少なくとも1つのセル」といえる。
したがって、引用発明の「無線パラメータ制御装置の無線パラメータ制御部は制御対象無線セルの無線パラメータを変更し」、「制御対象無線セルを含めた評価対象候補無線セルから制御対象無線セルを含めた全てを評価対象無線セルに選択し」は、本願発明と同様に、「検証装置が、あるドメインにおける構成変化を検出し、その構成変化は、少なくとも1つのパラメータ変化を含み、そして前記ドメインは、少なくとも1つのセルを含み、」といえる。

3.引用発明の評価対象無線セルの品質である平均スループットはセルの性能といえ、引用発明では平均スループットの劣化の検出を行っていることから、性能変化を評価しているといえる。また、引用発明の評価対象無線セルは無線パラメータを変更の影響を受けると考えている無線セルであることは明らかである。
よって、本願発明の「前記検証装置が、所定期間中に、評価サイクルを繰り返し、」「前記評価サイクルは、前記ドメインの各セルの前記性能変化を評価することを含み、そのセルは、前記少なくとも1つのパラメータ変化のいずれかにより影響を受けるものである、」と引用発明の「無線パラメータ制御装置の品質評価部は平均スループットで評価対象無線セルの品質を評価」とは、「検証装置が、評価を行い、前記評価は、ドメインの各セルの性能変化を評価することを含み、そのセルは、少なくとも1つのパラメータ変化のいずれかにより影響を受けるものである」点で共通する。

4.引用発明の「無線パラメータ制御装置の無線パラメータ制御部は、評価対象無線セルの品質の劣化が検出されると、制御対象無線セルの無線パラメータを元の状態に戻す制御を行う」とは、評価対象無線セルの品質が劣化していない場合には元の状態に戻す制御を行わないことから、無線パラメータ制御装置の無線パラメータ制御部は、制御対象無線セルの無線パラメータを変更した後の評価対象無線セルの品質に基づき制御対象無線セルの無線パラメータを元の状態に戻すべきかどうか判断しているといえる。また、引用発明の「制御対象無線セルの無線パラメータを元の状態に戻す制御」は本願発明の「アンドゥ」に含まれる。よって、引用発明の「無線パラメータ制御装置の無線パラメータ制御部は、評価対象無線セルの品質の劣化が検出されると、制御対象無線セルの無線パラメータを元の状態に戻す制御を行う」は、本願発明の「検証装置が、少なくとも1つのパラメータ変化の各パラメータ変化に対して、前記ドメインの各セルの性能変化に基づき前記各パラメータ変化をアンドゥすべきかどうか判断」することに含まれる。
そして、引用発明の評価対象無線セルは無線パラメータを変更の影響を受けると考えている無線セルであることは明らかである。
よって、引用発明の「無線パラメータ制御装置の無線パラメータ制御部は、評価対象無線セルの品質の劣化が検出されると、制御対象無線セルの無線パラメータを元の状態に戻す制御を行う」は、本願発明の「前記検証装置が、前記少なくとも1つのパラメータ変化の各パラメータ変化に対して、前記ドメインの各セルの性能変化に基づき前記各パラメータ変化をアンドゥすべきかどうか判断し、そのセルは、前記各パラメータ変化により影響を受けるものであり、」に含まれる。

以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

(一致点)
「 自己組織化ネットワークでアクション後検証を行う方法において、
検証装置が、あるドメインにおける構成変化し、その構成変化は、少なくとも1つのパラメータ変化を含み、そして前記ドメインは、少なくとも1つのセルを含み、
前記検証装置が、評価を行い、及び
前記検証装置が、前記少なくとも1つのパラメータ変化の各パラメータ変化に対して、前記ドメインの各セルの性能変化に基づき前記各パラメータ変化をアンドゥすべきかどうか判断し、そのセルは、前記各パラメータ変化により影響を受けるものであり、
前記評価は、前記ドメインの各セルの前記性能変化を評価することを含み、そのセルは、前記少なくとも1つのパラメータ変化のいずれかにより影響を受けるものである、方法。」

(相違点)
「評価」について、本願発明では「所定期間中に、評価サイクルを繰り返し」するのに対して、引用発明では「平均スループットで評価対象無線セルの品質を評価」しているものの、当該発明特定事項は特定されていない点。

以下、相違点について検討する。
(相違点について)
スループットは単位時間あたりの処理される量を意味し、「bps」等の単位が用いられることは技術常識であり、引用発明の「平均スループット」は所定期間のスループットを複数回求めて平均しているものと解するのが相当である。
また、平均スループットの算出については、上記「第4 引用発明及び周知事項」の「2.周知事項」のとおり、「スループットを複数回測定し、複数のスループットの平均値から平均スループットは算出する。」ことは周知事項である。当該周知事項からも、引用発明の平均スループットを算出する際に、複数のサイクルでスループットを算出し、これらのスループットの平均値から算出することは当然行われているといえる。
そして、スループットを算出することは、品質を評価していることであるから、引用発明でも評価サイクルを繰り返していることは明らかである。
よって、上記相違点は実質的な相違点とは認められない。

また、所定期間内に評価を複数回行ってみることは常套手段であり、格別困難なことではなく、当業者が容易に想到し得る。

したがって、本願発明と引用発明とは同一であり、また本願発明は引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。また、本願発明は、当業者が引用例に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-12-20 
結審通知日 2019-12-23 
審決日 2020-01-07 
出願番号 特願2017-531960(P2017-531960)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (H04W)
P 1 8・ 121- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉村 真治▲郎▼  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 中木 努
相澤 祐介
発明の名称 構成アクションの頑健な検証を行うスコアリング方法及びシステム  
代理人 近藤 直樹  
代理人 上杉 浩  
代理人 西島 孝喜  
代理人 須田 洋之  
代理人 那須 威夫  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 大塚 文昭  

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