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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1362636
審判番号 不服2019-10493  
総通号数 247 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-08-07 
確定日 2020-05-21 
事件の表示 特願2014-235411号「発光装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月19日出願公開、特開2015-207754号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年11月20日(特許法第41条に基づく国内優先権主張 平成25年12月13日、平成26年4月9日)を出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年 6月 9日 :手続補正書の提出
平成30年 3月23日付け:拒絶理由通知書
平成30年 4月20日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年 9月26日付け:拒絶理由(最後)通知書
平成30年11月26日 :意見書、手続補正書の提出
平成31年 4月26日付け:補正の却下の決定(平成30年11月
26日付け手続補正書)、拒絶査定(以下
「原査定」という。)
令和元年 8月 7日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 令和元年8月7日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和元年8月7日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は下線は当審が付した。補正箇所を示す。)。
「【請求項1】
少なくとも第1主面上に、突出パターンがそれぞれ配置された一対の接続端子を有する母材を備える基体と、
前記接続端子と接続された正負電極を有する発光素子と、
前記発光素子を封止し、該発光素子の側面に接触する封止部材と、
前記正負電極と前記突出パターンとを接続し、かつ前記突出パターンの側面を被覆する接合部材とを備える発光装置であって、
前記母材は、線膨張係数が、前記発光素子の線膨張係数の±10ppm/℃以内の範囲であり、
前記接続端子は、前記突出パターンが配置された部位よりも幅狭の部位を有しており、
前記封止部材は、遮光性材料によって形成されており、かつその端面が前記基体の端面と同一面を形成している発光装置。」(以下「本願補正発明」という。)

(2)本件補正前の特許請求の範囲
平成30年11月26日にされた手続補正は平成31年4月26日付け補正の却下の決定で却下されたため、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は、平成30年4月20日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載であって、当該請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
少なくとも第1主面上に一対の接続端子を有する母材を備える基体と、
前記接続端子と接続された発光素子と、
前記発光素子を封止し、該発光素子の側面に接触する封止部材と、を備える発光装置であって、
前記母材は、線膨張係数が、前記発光素子の線膨張係数の±10ppm/℃以内の範囲であり、
前記封止部材は、遮光性材料によって形成されており、かつその端面が前記基体の端面と同一面を形成している発光装置。」

2 補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1において、「接続端子」に関して、「突出パターンがそれぞれ配置された」及び「前記突出パターンが配置された部位よりも幅狭の部位を有しており、」と限定し、「発光素子」に関して「正負電極を有する」と限定し、「前記正負電極と前記突出パターンとを接続し、かつ前記突出パターンの側面を被覆する接合部材と」を備えるとの構成を追加する限定を付加するものであり、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本願補正発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか否か)について検討する。
(1)本願補正発明の認定
本願補正発明は、上記「1」「(1)」に記載したとおりである。

(2)引用文献及び引用発明
(2-1)引用文献1に記載された事項及び引用発明について
ア 原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2013-16588号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審が付した。以下同じ。)。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、LED素子の発光面上に、蛍光体板を積層し、さらに拡散板を透明接着剤にて積層して接着し、LED素子の側面と蛍光体板及び拡散板の側面を反射性の白色部材で充填封止したLED発光装置に関するものであり、詳しくは波長変換粒子を混入した波長変換部材(以降蛍光体板と記す)と光を一様に拡散する拡散板をLED発光素子に組合せてイエローリングを解消したLED発光装置に関する。」

(イ)「【0021】
図1(a)において、LED素子10の光出射面には蛍光体板20が積層され、さらに蛍光体板20からの出射光が入射する拡散板30が透明接着剤にて積層して接着されている。LED素子10の一方の面には電極が設けられており、バンプ90により回路基板80の配線電極70上にフリップチップ実装され導通可能となっている。LED素子10と蛍光体板20および拡散板30の側面は反射性の白色部材40が充填されている。また、LED素子10の下面側もバンプ90など接続部を除いた空間は反射性の白色部材40が充填されている。図1(b)はLED発光装置100を光観測方向から見た平面図であるが、拡散板30の光出射面を除いて周囲が反射性の白色部材40にて覆われている。
・・・(途中省略)・・・
【0025】
本実施形態によれば、LED素子10および蛍光体板20の側面方向を覆った反射性の白色部材40の光もどし作用により側面方向への漏洩光が著しく減少する。さらに蛍光体板20の光出射面から斜め横方向に出射され蛍光粒子との衝突回数多い出射光Py(黄色味を帯びた光)は拡散板30の側面方向を覆った反射性の白色部材40の光もどし作用により、さらに減少することができる。また、拡散板30の拡散作用と混色作用により、拡散板30の光出射面では一様な角度で拡散された均一な光を得ることができる。つまり、点光源に近い微小面積の面光源を得ることができ、同時にイエローリングを解消したLED発光装置100を提供できる。
【0026】
なお、本発明に係るLED発光装置100は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、LED素子10は公知のものであるが、特にGaN系半導体であれば良い。蛍光体板20は通過する光の少なくとも一部を波長変換可能な波長変換材料を有することが好ましい。また、その母材は樹脂、ガラス、無機物を用いることができ、成形体、結晶体でも良い。拡散板30については、その母材は樹脂、ガラス、無機物を用いることができ、フィルム状あるいは板状で光透過率が高い素材が好ましい。反射性の白色部材40は樹脂材料等の基材に光反射性材料を含有したもので良く、対光性、耐熱性に優れ熱伝導性にも優れたものが好ましい。回路基板80は少なくとも表面がLED素子10の電極と接続される配線電極70を形成したもので良く、基材は熱伝導性が高いものが好ましい。」

(ウ)図1及び5は次のとおりである。


(エ)上記(イ)の記載を踏まえて、上記(ウ)の図1を見ると、LED素子10は1対のバンプ90により回路基板80の配線電極70上にフリップチップ実装されているから、当該LED素子10が、1対の電極を有するとともに、当該回路基板80が一対の配線電極70を有すること、及び、反射性の白色部材40の端面が配線電極70を有する回路基板80の端面と同一面を形成している点が見てとれる。

イ 上記「ア」「(エ)」によれば、LED素子10は一対のバンプ90により回路基板80の配線電極70上にフリップチップ実装され、一対の電極を有し、また、一般にLEDは正負の電極を備えるものであるから、当該LED素子10が、一対の正負電極を有することは明らかである。
したがって、上記アによれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「LED素子10の光出射面には蛍光体板20が積層され、さらに蛍光体板20からの出射光が入射する拡散板30が透明接着剤にて積層して接着され、
前記LED素子10の一方の面には一対の正負電極が設けられており、バンプ90により回路基板80の一対の配線電極70上にフリップチップ実装され導通可能となり、
前記LED素子10と蛍光体板20および拡散板30の側面は反射性の白色部材40が充填され、
前記LED素子10の下面側もバンプ90など接続部を除いた空間は反射性の白色部材40が充填され、
前記LED素子10および蛍光体板20の側面方向を覆った反射性の白色部材40の光もどし作用により側面方向への漏洩光が著しく減少し、
前記LED素子10はGaN系半導体であり、
前記回路基板80は少なくとも表面がLED素子10の電極と接続される配線電極70を形成したもので、基材は熱伝導性が高いものであり、
前記反射性の白色部材40の端面が配線電極70を有する前記回路基板80の端面と同一面を形成している、
前記LED素子10の側面を反射性の白色部材40で充填封止したLED発光装置。」

(2-2)引用文献2?4に記載された事項及び周知の技術事項1について
ア 原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2012-169189号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオードなどの発光素子を備えた発光モジュールに関する。」
「【0080】・・・
(4:実装基板)
[線膨張係数]
発光モジュールは、1枚の実装基板上に多くのLEDチップを搭載する。そこで、発光モジュールの熱サイクル試験で実装基板にクラックを発生させないために、実装基板の線膨張係数をLEDチップの熱膨張係数の±5ppm/℃の範囲内に規定する。これにより、LEDチップの点消灯による繰り返しの温度変化で生じる接続信頼性の低下を抑制できる。なお、LEDチップがGaNの場合、その熱膨張係数は約7ppm/℃である。実装基板の主成分としては、アルミナ、AlN、Si、SiO_(2)などが好適である。」

イ 原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2006-93711号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子のパッケージに関し、具体的に、複合基板とフレキシブル接着剤を含む半導体発光素子ユニットに関する。」
「【0023】
凹部13は、配線レイアウトキャリヤ11に形成され、配線レイアウトキャリヤ11は、接続構造12により複合基板10と接続される。半導体発光素子14は、凹部13に固定され、導線17は、配線レイアウトキャリヤ11に形成される電気接点20と半導体発光素子14とを接続するために使用される。半導体発光素子14と複合基板10の熱膨張係数の差は実質的に10×10^(-6)/℃以下であるので、半導体発光素子14と複合基板10との間の熱応力は小さくなる。複合基板10は、半導体発光素子ユニット1のサポートベースであるのみならず、半導体発光素子14の放熱媒体でもある。
【0024】
半導体発光素子14は、例えば、LEDまたはLDである。本発明の半導体発光素子14は、基本的にダイであり、パッケージされていないダイであることが好ましい。よって、ダイより生成された熱が比較的短い距離で複合基板10に伝達されることできる。半導体発光素子14としてのダイの熱膨張係数は、1×10^(-6)/℃と10×10^(-6)/℃との間の値である。例えば、GaNの熱膨張係数は、5.4×10^(-6)/℃であり、InPの熱膨張係数は、4.6×10^(-6)/℃であり、GaPの熱膨張係数は、5.3×10^(-6)/℃である。
【0025】
半導体発光素子14の熱膨張係数とマッチングし、半導体発光素子14とそのコンタクト材料との間に生じる余分な熱応力を抑えるために、本発明は、複合基板10を半導体発光素子ユニット1のサポートベースとして使用する。配線レイアウトキャリヤ11と半導体発光素子14をサポートする他に、複合基板10は、放熱媒体としても使用される。複合基板10の材料は、半導体発光素子14と複合基板10の熱膨張係数の差を10×10^(-6)/℃以下にするために適切に選択される。これにより、半導体発光素子14と複合基板10との間における熱応力による影響が小さくなる。」

ウ 原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2013-12607号公報(以下「引用文献4」という。)には、次の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は、例えばガラスからなる封止部材によって封止された発光素子を備えた発光装置に関する。」
「【0029】
素子搭載基板20は、熱膨張率を例えば7×10^(-6)/℃とする酸化アルミニウム(Al_(2)O_(3))のセラミックス材料からなる平面略正方形状の板部材によって形成されている。素子搭載基板20の材料としては、Al_(2)O_(3)の他に、シリコン(Si)や窒化アルミニウム(AlN)あるいは白色樹脂が用いられる。素子搭載基板20の厚さは例えば約0.25mmに、また一辺が例えば約0.7mmにそれぞれ設定されている。
【0030】
素子搭載基板20の素子搭載面(表面)20aには、図3及び図4に示すように、LED素子21のp側パッド電極210a(後述)に接続する表面パターン200、及びn側電極211(後述)に接続する表面パターン201が設けられている。素子搭載基板20の実装側面(裏面)20bには、LED素子21に対して電源電圧を供給するための裏面パターン202,203が設けられている。
【0031】
表面パターン200と裏面パターン202とは素子搭載基板20を貫通するビアホール204内に充填されたビアパターン205により、また表面パターン201と裏面パターン203とは素子搭載基板20を貫通するビアホール206内に充填されたビアパターン207によりそれぞれ電気的に接続されている。表面パターン200及び裏面パターン202はビアパターン205に、また表面パターン201及び裏面パターン203はビアパターン207にそれぞれ例えばタングステン(W),モリブデン(Mo)等の高融点金属によって一体に形成されている。
【0032】
なお、表面パターン200,201及び裏面パターン202,203の表面には、ニッケル(Ni),アルミニウム(Al),白金(Pt),チタン(Ti),金(Au),銀(Ag),銅(Cu)などの材料による単数又は複数の金属層あるいは半田材料による金属層が必要に応じて形成される。
【0033】
図4及び図5に示すように、LED素子21は、p側電極210及びn側電極211を有し、p側電極210(p側パッド電極210a)を表面パターン200に、またn側電極211を表面パターン201にそれぞれバンプ212を介してフリップチップ接続することにより素子搭載基板20における素子搭載面20aの略中央部に搭載されている。LED素子21としては、熱膨張率を例えば7×10^(-6)/℃とする平面略正方形状の青色LED素子が用いられる。LED素子21の厚さは例えば約0.1mmに、また一辺は例えば約0.34mmにそれぞれ設定されている。
【0034】
そして、LED素子21は、サファイア(Al_(2)O_(3))からなる基板213の表面にIII族窒化物系半導体を例えば700℃の温度でエピタキシャル成長させることにより、バッファ層214,n型半導体層215,発光層としてのMQW(Multiple Quantum Well:重量子井戸)層216,及びp型半導体層217が順次形成され、発光面218からピーク発光波長が例えば460nm?463nmである青色光を発するように構成されている。LED素子21は、その耐熱温度は600℃以上であり、後述する低融点のガラスを用いた素子封止加工における加工温度に対して安定である。」

エ 上記アによれば、引用文献2には、「発光モジュール」において、「LEDチップがGaNの場合」等において、「実装基板の線膨張係数をLEDチップの熱膨張係数の±5ppm/℃の範囲内に規定する」ことが記載され、上記イによれば、引用文献3には、「半導体発光素子ユニット」において、「半導体発光素子」が「GaN」の場合等において、「半導体発光素子と複合基板の熱膨張係数の差」を「実質的に10ppm/℃(10×10^(-6)/℃)以下」とすることが記載され、上記ウによれば、引用文献4には、「発光装置」において、「素子搭載基板」が「熱膨張率を例えば7×10^(-6)/℃とする酸化アルミニウム(Al_(2)O_(3))のセラミックス材料からなる平面略正方形状の板部材によって形成されている」場合には、「LED素子としては、熱膨張率を例えば7×10^(-6)/℃とする平面略正方形状の青色LED素子が用いられる」こと、つまり、素子搭載基板とLED素子の熱膨張率はほぼ同じとすることが記載されている。
ここで、熱膨張率と線膨張係数は別異のパラメータであるが、特に引用文献2の記載を踏まえて上記引用文献2ないし4に記載された事項に照らせば、「発光装置において、母材の線膨張係数を発光素子の線膨張係数の±10ppm/℃以内の範囲の適宜の小さい値の線膨張係数差とすること。」(以下「周知の技術事項1という」)が、本願の優先日当日には周知の技術事項であったと認められる。

(2-3)引用文献5?7に記載された事項及び周知の技術事項2について
ア 本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2009-141030号公報(以下「引用文献5」という。)には、次の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に係り、特に、照明器具、バックライト、車載用発光装置、ディスプレイ、動画照明補助光源、その他の一般的民生用光源などに用いられる高輝度、高信頼性の発光装置に関する。」
「【0021】
内部接続部13aは、開口部の内壁から離れて配置されており、発光素子チップ11の電極11aと導電性ペースト14を介して電気的に接続されている。内部接続部13aは、図1に示すように、発光素子チップ11と対向する領域内に配置されていることが好ましい。これにより、内部接続部13aと後述する透光性樹脂15との接触面積を小さくすることができ、透光性樹脂15から外部のガスが透過した際における内部接続部13aの酸化や硫化による変色を防ぐことができる。これにより長時間において高出力を保持することが可能となる。また、内部接続部13aの突出高さは、1μm以上100μm以下であることが好ましい。これにより、製造時における発光素子チップと内部接続部13aとの接合不良や、内部接続部13a間へ導電ペースト14が多く這い上がることによる短絡を防止することができる。特に、内部接続部13aの突出高さは、対向する発光素子チップ11の電極11aの高さ、またはバンプを用いる場合は発光素子チップ11の電極11aとバンプとを合わせた高さと、ほぼ同じであることが好ましい。これにより、内部接続部13a側と発光素子チップ側11の双方において導電性ペースト14の這い上がり量を同様にすることができ、接合強度を高めることができる。」
・図1は次のとおりである。



イ 本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2001-223391号公報(以下「引用文献6」という。)には、次の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、一対のリード電極を有するパッケージ上にLEDチップが配置された発光ダイオードの形成方法に係わり、特に、前記各リード電極の一部分に突起部を形成する工程を有する発光ダイオードの形成方法に関するものである。」
「【0036】
【発明の効果】本発明の、発光ダイオードのパッケージ電極部にLEDチップを直接接続させるための突起部分を、凸形状のポンチ(押圧片)で前記電極部の一部分を押圧することにより形成することで、発光ダイオードの量産効率と生産コストダウンを格段に向上させることができ、また発光ダイオードの薄型化を実現することができる。またLEDチップとパッケージのリード電極との接合部は、リード電極に施された半田メッキを溶融・凝固することでLEDチップを固定させるか、あるいは膜厚が1μm以下の金メッキを施したリード電極表面にさらにクリーム半田またはフラックスを用いて半田ボールを施し、該半田を溶融・凝固させることでLEDチップを固定させるので、接合部の面積を広くとることができ、ゆえに接合部の安定感を増すことができる。」
・図1は次のとおりである。


ウ 本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2006-313897号公報(以下「引用文献7」という。)には、次の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子パッケージ用サブマウントに係り、詳細には発光素子のショートを防止できる発光素子パッケージ用サブマウントに関する。」
「【0020】
前記第1及び第2ボンディング層112a、112bの上面には、それぞれ前記第1及び第2バリア層114a、114bの両側に沿って第1及び第2遮断層120a、120bが形成されている。前記第1及び第2遮断層120a、120bは、発光素子が本実施形態によるサブマウント上にフリップチップボンディングされる時、第1及び第2ハンダ116a、116bが溶融されて前記第1及び第2ボンディング層112a、112b上に第1及び第2遮断層120a、120bを乗り越えて流れることを防止するための層である。ここで、前記第1及び第2遮断層120a、120bは、前記第1及び第2ボンディング層112a、112bの上面が露出されるように、前記第1及び第2バリア層114a、114bから所定間隔離隔して形成されることが望ましい。これは、フリップチップ工程時に第1及び第2ハンダ116a、116bが溶融されて流れて、第1及び第2ボンディング層112a、112bの露出された上面に取り付けられることによって接合性を向上させるためのものである。一方、前記第1及び第2遮断層120a、120bは、それぞれ前記第1及び第2バリア層114a、114bから離隔して前記第1及び第2バリア層114a、114bを取り囲むように形成されてもよい。」
・図5は次のとおりである。


エ 上記アによれば、引用文献5には、「発光装置」において、「内部接続部の突出高さにより、製造時における発光素子チップと内部接続部との接合不良や、内部接続部間へ導電ペーストが多く這い上がることによる短絡を防止することができる」ことが記載され、上記イによれば、引用文献6には、「発光ダイオード」において、「発光ダイオードのパッケージ電極部にLEDチップを直接接続させるための突起部分」を設け、「LEDチップ」「の接合部は、」「半田を溶融・凝固させることでLEDチップを固定させるので、接合部の面積を広くとることができ、ゆえに接合部の安定感を増すことができる」ことが記載され、上記ウによれば、引用文献7には、「発光素子パッケージ用サブマウント」において、「前記第1及び第2ボンディング層112a、112bの上面には、それぞれ前記第1及び第2バリア層114a、114b」「が形成され」、「フリップチップ工程時に第1及び第2ハンダ116a、116bが溶融されて流れて、第1及び第2ボンディング層112a、112bの露出された上面に取り付けられることによって接合性を向上させるためのものである」ことが記載されていることに照らして、「発光装置において、電極部にLEDチップを直接接続させるための突起部分を設け、LEDチップを当該電極部の突起部分と接続すること。」(以下「周知の技術事項2という」)が、本願の優先日当日には周知の技術事項であったと認められる。

(2-4)引用文献8?9に記載された事項及び周知の技術事項3について
ア 本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2013-239644号公報(以下「引用文献8」という。)には、次の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体発光装置に関する。」
「【0061】
(第5実施形態)
図13は、第5実施形態に係る半導体発光装置600を表す模式図である。図13(a)は、半導体発光装置600の外観を模式的に表す斜視図であり、図13(b)は、その正面図である。
【0062】
半導体発光装置600は、絶縁性のベース80と、半導体発光素子45と、半導体発光素子45を封止する樹脂30と、を備える。半導体発光素子45は、その下面に第1電極と第2電極と(図示しない)を備えるフリップチップ構造を有する。
【0063】
図13(a)に示すように、ベース80の第1の面80aには、電極3と、電極5と、が並設される。さらに、第1の面80aには、側面電極7aと、側面電極7bと、が設けられる。側面電極7aは電極3につながり、側面電極7bは電極5につながる。
【0064】
半導体発光素子45は、例えば、ハンダボール等を介して、電極3および電極5に固着される。例えば、電極3にハンダボールを介して第1電極が接続され、電極5にハンダボールを介して第2電極が接続される。第1電極は、側面電極7aおよび凹部17の金属層33を介して裏面メタル13に電気的に接続され、第2電極は、側面電極7bおよび凹部17の金属層33を介して裏面メタル15に電気的に接続される。
【0065】
本実施形態では、金属ワイヤによる接続が無いため、樹脂30の厚みを薄くできる。これにより、パッケージの低背化が可能である。」
・図13は次のとおりである。


イ 本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2011-23484号公報(以下「引用文献9」という。)には、次の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子等の素子を半導体絶縁基板等の実装基板に実装した発光装置に関する。」
「【0067】
また、図10に示すように、第1基板電極52と第2基板電極53がほぼ同じ大きさで隣接して配置された構成であっても、第1基板電極52と第2基板電極53にそれぞれ第1延出部52b、53bが形成されていれば、ハンダボールの発生を防止することが可能となる。
【0068】
第1基板電極52及び第2基板電極53の構成では、使用する発光素子10Eも矩形状であり外側周縁gsより内側に並列に形成された第1素子電極及び第2素子電極(図示せず)が形成されている。そして、すでに説明した構成と同じように、加熱溶融接続材kh(図5参照)を介してセルフアライメントにより発光素子を実装するものとなる。なお、第1基板電極52及び第2基板電極53がほぼ同じ大きさである場合には、電極の正負を誤認しないように、ここでは、一方の電極体53aに直線部分を有する形状とし、他方の電極体52aには曲線を有する形状に形成している。そして、矩形の発光素子10Eの長辺側において、外側周縁gsから外側に延出する第1延出部52b,53bが発光素子10Eの一辺に対して2つ延出となるように配置している。このように、第1基板電極52及び第2基板電極53では、長辺に対する第1延出部52b,53bの幅の割合を増やしてハンダボールの発生の防止を図っている。このように発光素子10Eの一辺に対して2つ配置される場合には、当該辺の中央に対して対称となる位置であることが望ましい。」
・図10は次のとおりである。


ウ 上記アによれば、引用文献8(特に図13)には、「半導体発光装置」において、電極は、半導体発光素子と電極を接続する部位よりも幅狭の部位を有する点が記載され、上記イによれば、引用文献9(特に図10)には、「発光装置」において、電極は、発光素子と電極を接続する部位よりも幅狭の部位を有する点が記載され、引用文献1(特に上記「(2-1)」「ア」「(ウ)」の図5)には、「LED発光装置」(上記「(2-1)」「ア」「(ア)」)において、配線電極は、LED素子と配線電極を接続する部位よりも幅狭の部位を有する点が記載されていることに照らして、「発光装置において、電極は、発光素子と電極を接続する部位よりも幅狭の部位を有すること。」(以下「周知の技術事項3という」)が、本願の優先日当日には周知の技術事項であったと認められる。

(3)対比・判断
ア 本願補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「LED素子10」、「正負電極」、「バンプ90」、「回路基板80」、「配線電極70」、「反射性の白色部材40」、「基材」及び「LED発光装置」は、本願補正発明の「発光素子」、「正負電極」、「接合部材」、「基体」、「接続端子」、「封止部材」、「母材」及び「発光装置」にそれぞれ相当する。

(イ)引用発明の「前記LED素子10の一方の面には一対の正負電極が設けられており、バンプ90により回路基板80の一対の配線電極70上にフリップチップ実装され導通可能となり」、「少なくとも表面がLED素子10の電極と接続される配線電極70を形成したもので、基材は熱伝導性が高いものであ」る「回路基板80」は、一方の面に一対の正負電極を有する基材を備える回路基板80であるから、本願補正発明の「少なくとも第1主面上に、突出パターンがそれぞれ配置された一対の接続端子を有する母材を備える基体」と、「第1主面上に、一対の接続端子を有する母材を備える基体」の点で一致する。

(ウ)引用発明の「一方の面には一対の正負電極が設けられており、バンプ90により回路基板80の一対の配線電極70上にフリップチップ実装され導通可能とな」る「LED素子10」は、配線電極70と接続された正負電極が設けられているLED素子10であるから、本願補正発明の「前記接続端子と接続された正負電極を有する発光素子」に相当する。

(エ)引用発明の「前記LED素子10と蛍光体板20および拡散板30の側面は反射性の白色部材40が充填され」、「前記LED素子10の側面を反射性の白色部材40で充填封止した」「反射性の白色部材40」は、LED素子10を充填封止し、前記LED素子10の側面に接触する反射性の白色部材40であるから、本願補正発明の「前記発光素子を封止し、該発光素子の側面に接触する封止部材」に相当する。

(オ)引用発明の「前記LED素子10の一方の面には一対の正負電極が設けられており、バンプ90により回路基板80の一対の配線電極70上にフリップチップ実装され導通可能とな」る「LED発光装置」は、正負電極と配線電極70とを接続し、配線電極70するバンプ90を備えるLED発光装置であるから、本願補正発明の「前記正負電極と前記突出パターンとを接続し、かつ前記突出パターンの側面を被覆する接合部材とを備える発光装置」と、「前記正負電極と配線電極70を接続する接合部材とを備える発光装置」の点で一致する。

(カ)引用発明の「前記LED素子10および蛍光体板20の側面方向を覆った反射性の白色部材40の光もどし作用により側面方向への漏洩光が著しく減少し」、「前記反射性の白色部材40の端面が配線電極70を有する前記回路基板80の端面と同一面を形成している」「反射性の白色部材40」は、漏洩光が著しく減少する反射性の白色の材料によって形成されており、かつその端面が配線電極70を有する前記回路基板80の端面と同一面を形成しているから、本願補正発明の「遮光性材料によって形成されており、かつその端面が前記基体の端面と同一面を形成している」「封止部材」に相当する。

(キ)上記(ア)ないし(カ)によれば、本願補正発明と引用発明は、
「第1主面上に、それぞれ配置された一対の接続端子を有する母材を備える基体と、
前記接続端子と接続された正負電極を有する発光素子と、
前記発光素子を封止し、該発光素子の側面に接触する封止部材と、
前記正負電極と配線電極70を接続する接合部材とを備える発光装置であって、
前記封止部材は、遮光性材料によって形成されており、かつその端面が前記基体の端面と同一面を形成している発光装置。」
の点で一致し、以下の各点で相違するものと認められる。

<相違点1>
「接続端子」に関して、本願補正発明では、「突出パターン」がそれぞれ接続端子に配置され、接合部材が、正負電極と接続端子の「前記突出パターン」とを接続し、かつ「前記突出パターンの側面を被覆する」ものであって、接続端子は「前記突出パターンが配置された部位よりも幅狭の部位を有して」いるのに対して、引用発明は、このように特定されない点。

<相違点2>
「母材」に関して、本願補正発明では、「線膨張係数が、前記発光素子の線膨張係数の±10ppm/℃以内の範囲であ」るのに対して、引用発明は、このように特定されない点。

イ 判断
(ア)相違点1について
引用発明のLED素子10は、「一方の面には一対の正負電極が設けられており、バンプ90により回路基板80の一対の配線電極70上にフリップチップ実装され導通可能とな」るものであるところ、当該配線電極70に関して、「発光装置において、電極部にLEDチップを直接接続させるための突起部分を設け、LEDチップを当該電極部の突起部分と接続すること」(周知の技術事項2)が、本願の優先日当日には周知の技術事項であったこと、及び、「発光装置において、電極は、発光素子と電極を接続する部位よりも幅狭の部位を有すること」(周知の技術事項3)が、本願の優先日当日には周知の技術事項であったことを踏まえると、必要に応じて、一対の配線電極70上にフリップチップ実装される箇所に突起部分を設けるとともに、さら、必要に応じて、発光素子と電極を接続する部位よりも幅狭の部位を有する構成となすことは当業者が容易になし得たことである。

(イ)相違点2について
引用発明の「LED素子10」は「GaN系半導体であり」、「回路基板80」の「基材は熱伝導性が高いものであ」るところ、当該「回路基板80」の「基材」に関して「発光装置において、母材の線膨張係数を発光素子の線膨張係数の±10ppm/℃以内の範囲の適宜の小さい値の線膨張係数差とすること」(周知の技術事項1)が本願の優先日当日には周知の技術事項であったことを踏まえると、「熱伝導性が高い」「回路基板80」の「基材」を具体的に選ぶに際して、基材の線膨張係数をLED素子10の線膨張係数の±10ppm/℃以内の範囲の適宜の小さい値の線膨張係数差の素材を選ぶことは当業者が容易になし得たことである。

(ウ)よって、本願補正発明は、引用発明及び上記周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 むすび(補正の却下の決定のむすび)
上記2のとおり、本願補正発明は、引用発明及び周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
令和元年8月7日付け手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし29に係る発明は、平成30年4月20日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし29に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に記載された発明は、上記「1」「(2)」のとおりのものであると認められる(以下「本願発明」という。)。

2 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1、5-7、12-13、17、21に係る発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない等、というものである。

引用文献1.特開2013-16588号公報
引用文献2.特開2012-169189号公報
引用文献3.特開2006-093711号公報
引用文献4.特開2013-012607号公報

3 引用文献
原査定の拒絶理由で引用された、引用文献1の記載事項及び引用発明は、前記「第2」[理由]「(2)」「(2-1)」のとおりであり、引用文献2?4の記載事項及び周知の技術事項(周知の技術事項1)は、前記「第2」[理由]「(2)」「(2-2)」のとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記「第2」[理由]「2」で検討した本願補正発明から、「接続端子」に関して、「突出パターンがそれぞれ配置された」及び「前記突出パターンが配置された部位よりも幅狭の部位を有しており、」と限定し、「発光素子」に関して「正負電極を有する」と限定し、「前記正負電極と前記突出パターンとを接続し、かつ前記突出パターンの側面を被覆する接合部材と」を備えるとの構成を追加する限定を省いたものである。
そうすると、本願発明と引用発明は、本願発明では、「前記母材は、線膨張係数が、前記発光素子の線膨張係数の±10ppm/℃以内の範囲であ」ると特定されるのに対して、引用発明は、このように特定されない点で相違する(以下「相違点3」という。)。
しかしながら、上記相違点3は実質的に相違点2と同じ相違点であるから、上記前記「第2」[理由]「2」「(3)」「イ」「(イ)」で検討した理由と同じ理由により、「熱伝導性が高い」「回路基板80」の「基材」を具体的に選択するに際して、基材の線膨張係数をLED素子10の線膨張係数の±10ppm/℃以内の範囲の適宜の小さい値の線膨張係数差の素材を選ぶことにより、上記相違点3に係る本願発明の構成となすことは当業者が容易になし得たことである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2ないし4に記載された周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-03-17 
結審通知日 2020-03-24 
審決日 2020-04-07 
出願番号 特願2014-235411(P2014-235411)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 島田 英昭小濱 健太皆藤 彰吾  
特許庁審判長 瀬川 勝久
特許庁審判官 近藤 幸浩
松川 直樹
発明の名称 発光装置  
代理人 新樹グローバル・アイピー特許業務法人  

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