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審決分類 審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する H02K
管理番号 1363342
審判番号 訂正2020-390014  
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-08-28 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2020-02-18 
確定日 2020-05-15 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6629803号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第6629803号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 
理由
第1 手続の経緯

本件訂正審判の請求に係る特許第6629803号は、平成29年9月12日に出願したものであって、令和元年12月13日に設定登録がされ、令和2年1月15日に特許掲載公報が発行された。
そして、令和2年2月18日に本件訂正審判の請求がされたものである。

第2 請求の趣旨

本件訂正審判の請求の趣旨は、特許6629803号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正(以下、「本件訂正」という。)することを認める、との審決を求めるものである。

第3 訂正の内容

1 訂正事項1

本件特許請求の範囲の請求項1に
「糸状の繊維が長手方法に沿って複数配列される繊維束を前記治具の外周面に巻き付ける工程」とされているのを、
「糸状の繊維が長手方向に沿って複数配列される繊維束を前記治具の外周面に巻き付ける工程」(下線部は、当審で付与した。以下同様である。)に訂正する。

2 訂正事項2

本件特許請求の範囲の請求項1に
「前記治具の外周面に巻き付けられた繊維束に樹脂を含侵させる工程」とされているのを、
「前記治具の外周面に巻き付けられた繊維束に樹脂を含浸させる工程」に訂正する。

第4 当審の判断

1 訂正事項1について

ア 訂正の目的について
本件特許の請求項1における「糸状の繊維が長手方法に沿って複数配列される繊維束」とは、糸状の繊維を複数配列して繊維束を構成する態様を特定しようとするものと解されるが、ここでいう「長手方法に沿って」との文言は、本件特許発明が属する分野である回転電機の分野において当業者により技術常識として知られていたものではなく、請求項1の「糸状の繊維が長手方法に沿って複数配列される繊維束」の記載から、糸状の繊維がどのように複数配列されて繊維束を構成するのか、直ちに理解できるとはいえない。

一方、願書に添付した明細書(以下、「特許明細書」という。)には、次の記載がある。

(ア)「【0006】
(1)本発明は、回転部材(例えば、後述する回転軸35)と、前記回転部材の外周側に配置される複数の永久磁石(例えば、後述する永久磁石32)と、複数の前記永久磁石の外周面側に設けられ、糸状の繊維強化プラスチックが長手方向に沿って複数配列される繊維束(例えば、後述するCF繊維束133)により形成される被覆筒(例えば、後述する被覆筒33)と、を備え、前記被覆筒の前記繊維束は、幅方向(例えば、後述する幅方向DW)の一部が弛んだ状態となるように、前記回転部材の周方向(例えば、後述する周方向DR)に沿って螺旋状に積層されている、回転子(例えば、後述する回転子30)に関する。」

(イ)「【0030】
被覆筒33は、図3Aに示すように、CF繊維束133を治具50の外周面に巻き付けた後、樹脂を塗布することにより形成される。CF繊維束133に含まれる糸状CF(CFの繊維一本)133aの配向方向は、CF繊維束133の長手方向と略平行となる。CF繊維束133の幅方向DWは、CF繊維束133の長手方向に直交する方向である。CF繊維束133は、図3Bに示すように、幅方向DWの一部が互いに重なるように、筒状の治具50の周方向に沿って螺旋状に巻き付けられる。CF繊維束133の重なりは、幅を1とした場合、例えば、0.3?0.5程度とすることが好ましい。」

上記(ア)には、繊維束が糸状の繊維を長手方向に沿って複数配列されることが記載され、上記(イ)には、繊維束に含まれる糸状の繊維の配向方向は、繊維束の長手方向と略平行であることが記載されているから、上記(ア)及び(イ)の記載から、特許明細書には、糸状の繊維が複数配列されて繊維束を構成する態様として、「糸状の繊維が長手方向に沿って複数配列される」ことが記載されており、請求項1と特許明細書の記載とをあわせみれば、請求項1の「糸状の繊維が長手方法に沿って複数配列される繊維束を前記治具の外周面に巻き付ける工程」との記載は、当然に「糸状の繊維が長手方向に沿って複数配列される繊維束を治具の外周面に巻き付ける工程」を意味していたことは、客観的にみて明らかである。

よって、訂正事項1は、誤記を訂正するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第2号の「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものである。

イ 願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること

願書に最初に添付した明細書の段落【0006】、【0030】には、「糸状の繊維強化プラスチックが長手方向に沿って複数配列される繊維束」、「CF繊維束133に含まれる糸状CF(CFの繊維一本)133aの配向方向は、CF繊維束133の長手方向と略平行」及び「CF繊維束133は、図3Bに示すように、幅方向DWの一部が互いに重なるように、筒状の治具50の周方向に沿って螺旋状に巻き付けられる」と記載されているから、願書に最初に添付した明細書には、「糸状の繊維が長手方向に沿って複数配列される繊維束を治具の外周面に巻き付ける工程」が記載されているといえる。よって、訂正事項1は、願書に最初に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと

訂正事項1は、上記アのとおり、特許請求の範囲における誤記を、特許明細書の記載から自明な正しい表記に訂正するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

エ 独立特許要件について

訂正事項1は、誤記の訂正を目的とするものであるので、訂正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができることが要件となるところ、当該訂正後における特許請求の範囲の請求項1?3に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるとする理由を発見しないから、訂正事項1に係る訂正は、特許法第126条第7項に規定する要件を満たす。

オ 小括

よって、訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものに該当し、かつ、同条第5項ないし第7号の規定に適合するものである。

2 訂正事項2について

ア 訂正の目的について
本件特許の請求項1における「前記治具の外周面に巻き付けられた繊維束に樹脂を含侵させる工程」について、「含侵」なる用語ならびにその意味が、本件特許発明が属する技術分野である回転電機の技術分野において当業者により技術常識として知られていたものとはいえず、「樹脂を含侵させる工程」との記載が、一見して誤りであることが明らかであるところ、「含浸」は、固体内部の隙間に液体などをしみ込ませることを意味する用語であり、「樹脂を含浸させる」とは、樹脂をしみ込ませることを意味するから、「治具の外周面に巻き付けられた繊維束に樹脂を含浸させる工程」であれば、その技術的意味を明確に理解できる。
そうすると、本件特許の請求項1における「前記治具の外周面に巻き付けられた繊維束に樹脂を含侵させる工程」の記載は、漢字の読みが同じであったことから「浸」を誤って「侵」としたものであって、当然に「前記治具の外周面に巻き付けられた繊維束に樹脂を含浸させる工程」を意味していたことは、客観的にみて明らかである。

よって、訂正事項2は、誤記を訂正するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第2号の「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものである。

イ 願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること

願書に最初に添付した明細書には、次の記載がある。

「【0036】
本実施形態の被覆筒33において、CF繊維束133は、樹脂が含浸していない状態で治具50の外周面に巻き付けられる。CF繊維束133は、治具50に巻き付けられた後、樹脂が塗布(含浸)される。CF繊維束133に塗布される樹脂としては、例えば、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂等が用いられる。治具50に巻き付けられ、樹脂が塗布されたCF繊維束(この時点では実質的にCFRP繊維束)133は、樹脂が硬化した後、治具50が除去されることにより、被覆筒33となる。」

上記の記載から、願書に最初に添付した明細書には、「治具の外周面に巻き付けられた繊維束に樹脂を含浸させる工程」について記載されているといえる。よって、訂正事項2は、願書に最初に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと

訂正事項2は、上記アのとおり、特許請求の範囲の記載が、それ自体で誤りであることが明らかであり、その誤りを正しい記載に訂正するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

エ 独立特許要件について

訂正事項2は、誤記の訂正を目的とするものであるので、訂正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができることが要件となるところ、当該訂正後における特許請求の範囲の請求項1?3に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるとする理由を発見しないから、訂正事項2に係る訂正は、特許法第126条第7項に規定する要件を満たす。

オ 小括

よって、訂正事項2は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものに該当し、かつ、同条第5項ないし第7号の規定に適合するものである。

第5 むすび

以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合するものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の治具の軸方向に対して斜め方向に傾いて延在する棒状部材を介して、糸状の繊維が長手方向に沿って複数配列される繊維束を前記治具の外周面に巻き付ける工程と、
前記治具の外周面に巻き付けられた繊維束に樹脂を含浸させる工程と、
前記樹脂が硬化した後、前記治具を除去して被覆筒を得る工程と、
を含む被覆筒の製造方法。
【請求項2】
前記繊維束を前記治具の外周面に巻き付ける工程において、
前記繊維束は、幅方向の一部が互いに重なるように前記治具の周方向に沿って螺旋状に巻き付けられる、
請求項1に記載の被覆筒の製造方法。
【請求項3】
前記繊維は、炭素繊維である、
請求項1又は請求項2に記載の被覆筒の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2020-04-15 
結審通知日 2020-04-20 
審決日 2020-05-07 
出願番号 特願2017-174528(P2017-174528)
審決分類 P 1 41・ 852- Y (H02K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 安池 一貴  
特許庁審判長 佐々木 芳枝
特許庁審判官 久保 竜一
松本 泰典
登録日 2019-12-13 
登録番号 特許第6629803号(P6629803)
発明の名称 被覆筒の製造方法  
代理人 芝 哲央  
代理人 正林 真之  
代理人 星野 寛明  
代理人 星野 寛明  
代理人 芝 哲央  
代理人 正林 真之  
代理人 岩池 満  
代理人 岩池 満  

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