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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  G06F
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  G06F
管理番号 1363344
審判番号 無効2018-800002  
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-08-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2018-01-12 
確定日 2019-11-25 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第5372080号発明「情報処理装置,情報処理方法,該方法を実行する制御プログラムを記憶した媒体」の特許無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 特許第5372080号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の〔1-3〕,4,5,6,7及び8について訂正することを認める。 特許第5372080号の請求項1,2,3,4,5及び7に係る発明についての特許を無効とする。 特許第5372080号の請求項6及び8に係る発明についての審判請求は,成り立たない。 審判費用は,その4分の1を請求人の負担とし,4分の3を被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5372080号(以下,「本件特許」という。)の手続の経緯は,概略,以下のとおりである。

平成23年 7月23日 本件特許の出願
(遡及出願日 平成11年2月18日)
平成25年 9月27日 本件特許の設定の登録
(特許第5372080号)
平成30年 1月12日 本件特許についての無効審判請求(請求人)
同年 4月 2日付け 答弁書の提出及び訂正請求(被請求人)
同年 6月19日付け 弁駁書の提出(請求人)
同年 8月23日付け 審理事項通知
同年 8月23日付け 補正許否の決定
同年10月 5日付け 口頭審理陳述要領書の提出(請求人)
同年10月 5日付け 口頭審理陳述要領書の提出(被請求人)
同年10月16日付け 口頭審理陳述要領書(2)の提出(請求人)
同年10月19日 口頭審理
同年11月 9日付け 上申書の提出(被請求人)
同年11月26日付け 上申書の提出(請求人)
平成31年 1月30日付け 審決の予告
同年 2月18日 本件特許に係る特許権の存続期間終了
同年 2月28日付け 上申書(2)の提出(請求人)
同年 3月18日 審尋
同年 4月 4日付け 回答書の提出及び訂正請求(被請求人)
令和 元年 5月15日 審尋
同年 6月17日付け 回答書及び弁駁書(2)の提出(請求人)
同年 9月 6日付け 上申書(3)の提出(請求人)

第2 本件訂正請求について
1 本件訂正請求の趣旨
平成31年4月4日付け訂正請求(以下,「本件訂正請求」といい,本件訂正請求に係る訂正を「本件訂正」という。)の趣旨は,本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1?3,4,5,6,7及び8について訂正することを求める,というものである。
なお,平成30年4月2日付け訂正請求は,本件訂正請求がされたことによって,取り下げられたものとみなされる(特許法第134条の2第6項)。

2 本件訂正の内容
(1) 本件訂正前の特許請求の範囲
本件訂正前の特許請求の範囲の記載は,以下のとおりである。

「【請求項1】
印刷に関わる複数の設定内容を一括して変更するための複合設定をメモリから読み出す読み出し手段と,
印刷装置に装着されるオプションの情報を基に,読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが可能であるか否かを確認する確認手段と,
読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが可能であることが確認された場合は,読みだされた複合設定に対応する設定内容を印刷設定画面に表示させ,
読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが不可能であることが確認された場合は,前記オプションを利用しない設定内容を印刷設定画面に表示させる表示制御手段と,を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記複合設定とは,プリンタドライバを操作するための印刷設定画面に表示される複数の設定シートで設定された前記設定内容を組み合わせた設定であることを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが不可能であることが確認された場合は,読みだされた複合設定に対応する設定内容では印刷を実行することが不可能である旨,および読みだされた複合設定に対応する設定内容を別の設定内容に変更する旨が記述されたメッセージを表示することを特徴とする請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記印刷設定画面は,プリンタドライバが提供するユーザインターフェイスであることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
読み出し手段は,印刷に関わる複数の設定内容を一括して変更するための複合設定をメモリから読み出し,
確認手段は,印刷装置に装着されるオプションの情報を基に,読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが可能であるか否かを確認し,
表示制御手段は,読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが可能であることが確認された場合は,読みだされた複合設定に対応する設定内容を印刷設定画面に表示させ,
読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが不可能であることが確認された場合は,前記オプションを利用しない設定内容を印刷設定画面に表示させることを特徴とする情報処理方法。
【請求項6】
印刷に関わる複数の設定内容を一括して変更するための複合設定をメモリから読み出す読み出しステップと,
印刷装置に装着されるオプションの情報を基に,読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが可能であるか否かを確認する確認ステップと,
読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが可能であることが確認された場合は,読みだされた複合設定に対応する設定内容を印刷設定画面に表示させ,
読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが不可能であることが確認された場合は,前記オプションを利用しない設定内容を印刷設定画面に表示させる表示制御ステップと,をコンピュータに実行させるためのプログラムを記憶した記憶媒体。
【請求項7】
前記プログラムは,プリンタドライバであることを特徴とする請求項6に記載の記憶媒体。
【請求項8】
印刷に関わる複数の設定内容を一括して変更するための複合設定を選択する選択ステップと,
選択された複合設定に対応する設定内容で印刷装置に印刷を実行させることが可能である場合は,選択された複合設定に対応する設定内容を印刷設定画面に表示させ,
選択された複合設定に対応する設定内容で印刷装置に印刷を実行させることが不可能である場合は,オプションを装着せずとも印刷可能な印刷装置に装着される前記オプションを利用しない設定内容を印刷設定画面に表示させる表示制御ステップと,をコンピュータに実行させるためのプログラムを記憶した記憶媒体。」

(2) 本件訂正後の特許請求の範囲
本件訂正後の特許請求の範囲の記載は,以下のとおりである(下線は,訂正箇所であり,当審で付加した。)。

「【請求項1】
印刷装置とネットワーク経由で接続される情報処理装置であって,
印刷に関わる複数の設定内容を一括して変更するための複合設定をメモリから読み出す読み出し手段と,
印刷装置に装着されるオプションの情報を基に,読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが可能であるか否かを確認する確認手段と,
読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが可能であることが確認された場合は,読みだされた複合設定に対応する設定内容を印刷設定画面に表示させ,
読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが不可能であることが確認された場合は,前記オプションを利用しない設定内容を印刷設定画面に表示させる表示制御手段と,を有し,
前記表示制御手段は,現在の設定内容が表示されている印刷設定画面に,複合設定の複数の選択候補を表示可能であり,
ユーザにより前記複数の選択候補に基づく複合設定の選択変更が行われる度に,選択された複合設定に関する前記読み出し手段による読み出しと,読み出された複合設定に関する前記確認手段による確認と,確認の結果に対応した前記表示制御手段による表示とを行うことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
印刷装置とネットワーク経由で接続される情報処理装置であって,
印刷に関わる複数の設定内容を一括して変更するための複合設定をメモリから読み出す読み出し手段と,
印刷装置に装着されるオプションの情報である登録オプション情報を基に,読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが可能であるか否かを確認する確認手段と,
読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが可能であることが確認された場合は,読みだされた複合設定に対応する設定内容を印刷設定画面に表示させ,
読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが不可能であることが確認された場合は,前記オプションを利用しない設定内容を印刷設定画面に表示させる表示制御手段と,
ユーザによる取得指示に応じて,印刷装置とのネットワークを介した通信によって当該印刷装置に実際に装着されているオプションの情報を取得して前記登録オプション情報を更新する第1の更新手段と,
ユーザによるマニュアル設定を受け付けて前記登録オプション情報を更新する第2の更新手段と,を有し,
前記表示制御手段は,現在の設定内容が表示されている印刷設定画面に,複合設定の複数の選択候補を表示可能であり,
ユーザにより前記複数の選択候補に基づく複合設定の選択変更が行われる度に,選択された複合設定に関する前記読み出し手段による読み出しと,読み出された複合設定に関する前記確認手段による前記登録オプション情報に基づく確認と,確認の結果に対応した前記表示制御手段による表示とを行い,
前記複合設定とは,プリンタドライバを操作するための印刷設定画面に表示される複数の設定シートで設定された前記設定内容を組み合わせた設定であることを特徴とする情報処理装置。
【請求項3】
読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが不可能であることが確認された場合は,読みだされた複合設定に対応する設定内容では印刷を実行することが不可能である旨,および読みだされた複合設定に対応する設定内容を別の設定内容に変更する旨が記述されたメッセージを表示することを特徴とする請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
印刷装置とネットワーク経由で接続される情報処理装置であって,
印刷に関わる複数の設定内容を一括して変更するための複合設定をメモリから読み出す読み出し手段と,
印刷装置に装着されるオプションの情報を基に,読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが可能であるか否かを確認する確認手段と,
読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが可能であることが確認された場合は,読みだされた複合設定に対応する設定内容を印刷設定画面に表示させ,
読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが不可能であることが確認された場合は,前記オプションを利用しない設定内容を印刷設定画面に表示させる表示制御手段と,を有し,
前記表示制御手段は,現在の設定内容が表示されている印刷設定画面に,複合設定の複数の選択候補を表示可能であり,
ユーザにより前記複数の選択候補に基づく複合設定の選択変更が行われる度に,選択された複合設定に関する前記読み出し手段による読み出しと,読み出された複合設定に関する前記確認手段による確認と,確認の結果に対応した前記表示制御手段による表示とを行い,
前記印刷設定画面は,プリンタドライバが提供するユーザインターフェイスであることを特徴とする情報処理装置。
【請求項5】
印刷装置とネットワーク経由で接続される情報処理装置が実行する情報処理方法であって,
前記情報処理装置の読み出し手段は,印刷に関わる複数の設定内容を一括して変更するための複合設定をメモリから読み出し,
前記情報処理装置の確認手段は,印刷装置に装着されるオプションの情報を基に,読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが可能であるか否かを確認し,
前記情報処理装置の表示制御手段は,読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが可能であることが確認された場合は,読みだされた複合設定に対応する設定内容を印刷設定画面に表示させ,
読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが不可能であることが確認された場合は,前記オプションを利用しない設定内容を印刷設定画面に表示させ,
前記表示制御手段は,現在の設定内容が表示されている印刷設定画面に,複合設定の複数の選択候補を表示し,
ユーザにより前記複数の選択候補に基づく複合設定の選択変更が行われる度に,選択された複合設定に関する前記読み出し手段による読み出しと,読み出された複合設定に関する前記確認手段による確認と,確認の結果に対応した前記表示制御手段による表示とを行い,
読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが不可能であることが確認された場合は,前記表示制御手段は,実行できないことを示すメッセージを表示することを特徴とする情報処理方法。
【請求項6】
印刷に関わる複数の設定内容を一括して変更するための複合設定をメモリから読み出す読み出しステップと,
印刷装置に装着されるオプションの情報を基に,読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが可能であるか否かを確認する確認ステップと,
読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが可能であることが確認された場合は,読みだされた複合設定に対応する設定内容を印刷設定画面に表示させ,
読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが不可能であることが確認された場合は,前記オプションを利用しない設定内容を印刷設定画面に表示させる表示制御ステップと,
ユーザによる指示に応じて,複合設定をメモリに追加する登録ステップと,
ユーザによる指示に応じて,複合設定をメモリから削除する削除ステップと,を,印刷装置とネットワーク経由で接続されるコンピュータに実行させるためのプログラムを記憶した記憶媒体であって,
前記登録ステップにより追加された複合設定は前記削除ステップによる削除が可能であり,前記プログラムに元から用意されている複合設定は前記削除ステップによる削除が不可能であり,
前記プログラムは更に,現在の設定内容が表示されている印刷設定画面に,複合設定の複数の選択候補を表示するステップを前記コンピュータに実行させ,ユーザにより前記複数の選択候補に基づく複合設定の選択変更が行われる度に,選択された複合設定に関する前記読み出しステップによる読み出しと,読み出された複合設定に関する前記確認ステップによる確認と,確認の結果に対応した前記表示制御ステップによる表示とを前記コンピュータに実行させ,
読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが不可能であることが確認された場合は,前記表示制御ステップは,実行できないことを示すメッセージを表示し,
前記複合設定とは,プリンタドライバが提供するユーザインターフェイスである印刷設定画面に表示される複数の設定シートで設定された前記設定内容を組み合わせた設定であり,
前記複合設定の選択変更は,印刷設定画面に表示される複数の設定シートのいずれからも行うことができる,ことを特徴とする記憶媒体。
【請求項7】
印刷に関わる複数の設定内容を一括して変更するための複合設定をメモリから読み出す読み出しステップと,
印刷装置に装着されるオプションの情報を基に,読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが可能であるか否かを確認する確認ステップと,
読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが可能であることが確認された場合は,読みだされた複合設定に対応する設定内容を印刷設定画面に表示させ,
読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが不可能であることが確認された場合は,前記オプションを利用しない設定内容を印刷設定画面に表示させる表示制御ステップと,
ユーザによる指示に応じて,複合設定をメモリに追加する登録ステップと,
ユーザによる指示に応じて,複合設定をメモリから削除する削除ステップと,を,印刷装置とネットワーク経由で接続されるコンピュータに実行させるためのプログラムを記憶した記憶媒体であって,
前記登録ステップにより追加された複合設定は前記削除ステップによる削除が可能であり,前記プログラムに元から用意されている複合設定は前記削除ステップによる削除が不可能であり,
前記プログラムは更に,現在の設定内容が表示されている印刷設定画面に,複合設定の複数の選択候補を表示するステップを前記コンピュータに実行させ,ユーザにより前記複数の選択候補に基づく複合設定の選択変更が行われる度に,選択された複合設定に関する前記読み出しステップによる読み出しと,読み出された複合設定に関する前記確認ステップによる確認と,確認の結果に対応した前記表示制御ステップによる表示とを前記コンピュータに実行させ,
前記プログラムは,プリンタドライバであることを特徴とする記憶媒体。
【請求項8】
印刷に関わる複数の設定内容を一括して変更するための,メモリに格納された複合設定を選択する選択ステップと,
選択された複合設定に対応する設定内容で印刷装置に印刷を実行させることが可能である場合は,選択された複合設定に対応する設定内容を印刷設定画面に表示させ,
選択された複合設定に対応する設定内容で印刷装置に印刷を実行させることが不可能である場合は,オプションを装着せずとも印刷可能な印刷装置に装着される前記オプションを利用しない設定内容を印刷設定画面に表示させる表示制御ステップと,を,印刷装置とネットワーク経由で接続されるコンピュータに実行させるためのプログラムを記憶した記憶媒体であって,
前記プログラムは更に,現在の設定内容が表示されている印刷設定画面に,複合設定の複数の選択候補を表示するステップを前記コンピュータに実行させ,ユーザにより前記複数の選択候補に基づく複合設定の選択変更が行われる度に,ユーザにより選択された複合設定に関する前記選択ステップによる選択と,選択された複合設定に対応する設定内容で印刷装置に印刷を実行させることが可能であるか不可能であるかに対応した前記表示制御ステップによる表示とを前記コンピュータに実行させ,
前記複合設定とは,プリンタドライバが提供するユーザインターフェーイスである印刷設定画面に表示される複数の設定シートで設定された前記設定内容を組み合わせた設定であり,
前記複合設定の選択変更は,印刷設定画面に表示される複数の設定シートのいずれからも行うことができる,記憶媒体。」

3 訂正の適否
(1) 請求項1ないし4に係る訂正について
ア 訂正の目的
(ア) 請求項1に係る訂正
請求項1に係る訂正は,本件訂正前の請求項1に,「印刷装置とネットワーク経由で接続される情報処理装置であって,」及び「前記表示制御手段は,現在の設定内容が表示されている印刷設定画面に,複合設定の複数の選択候補を表示可能であり,ユーザにより前記複数の選択候補に基づく複合設定の選択変更が行われる度に,選択された複合設定に関する前記読み出し手段による読み出しと,読み出された複合設定に関する前記確認手段による確認と,確認の結果に対応した前記表示制御手段による表示とを行う」との事項を付加して特許請求の範囲を減縮したものである。
したがって,請求項1に係る訂正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(イ) 請求項2に係る訂正
請求項2に係る訂正は,本件訂正前の請求項1を引用する請求項2を独立形式とし,また,「印刷装置に装着されるオプションの情報を基に,読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが可能であるか否かを確認する確認手段」を「印刷装置に装着されるオプションの情報である登録オプション情報を基に,読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが可能であるか否かを確認する確認手段」と変更し,さらに,「印刷装置とネットワーク経由で接続される情報処理装置であって,」及び「ユーザによる取得指示に応じて,印刷装置とのネットワークを介した通信によって当該印刷装置に実際に装着されているオプションの情報を取得して前記登録オプション情報を更新する第1の更新手段と,
ユーザによるマニュアル設定を受け付けて前記登録オプション情報を更新する第2の更新手段と,を有し,
前記表示制御手段は,現在の設定内容が表示されている印刷設定画面に,複合設定の複数の選択候補を表示可能であり,
ユーザにより前記複数の選択候補に基づく複合設定の選択変更が行われる度に,選択された複合設定に関する前記読み出し手段による読み出しと,読み出された複合設定に関する前記確認手段による前記登録オプション情報に基づく確認と,確認の結果に対応した前記表示制御手段による表示とを行い,」との事項を付加して特許請求の範囲を減縮したものである。
したがって,請求項2に係る訂正は,他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること,及び,特許の請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(ウ) 請求項3に係る訂正
請求項3は請求項1又は2を引用するものであり,請求項1又は2に係る訂正は上記(ア)及び(イ)のとおり特許の請求の範囲を減縮したものである。
したがって,請求項3に係る訂正は,特許の請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(エ) 請求項4に係る訂正
請求項4に係る訂正は,本件訂正前の請求項1を引用する請求項4を独立形式とし,また,「印刷装置とネットワーク経由で接続される情報処理装置であって,」及び「前記表示制御手段は,現在の設定内容が表示されている印刷設定画面に,複合設定の複数の選択候補を表示可能であり,
ユーザにより前記複数の選択候補に基づく複合設定の選択変更が行われる度に,選択された複合設定に関する前記読み出し手段による読み出しと,読み出された複合設定に関する前記確認手段による確認と,確認の結果に対応した前記表示制御手段による表示とを行い,」との事項を付加して特許請求の範囲を減縮したものである。
したがって,請求項4に係る訂正は,他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること,及び,特許の請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項
(ア) 請求項1に係る訂正
a 請求項1に係る訂正で付加した「印刷装置とネットワーク経由で接続される情報処理装置であって,」との事項は,本件特許の願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下,合わせて「本件明細書等」ともいう。)の【0019】の記載に基づくものである。

b 請求項1に係る訂正で付加した「前記表示制御手段は,現在の設定内容が表示されている印刷設定画面に,複合設定の複数の選択候補を表示可能であり,」との事項は,本件明細書等の【0026】ないし【0029】,【図3】及び【図4】の記載に基づくものである。
この点について詳細に説明する。
まず,本件明細書等の【0026】及び【0027】の記載によれば,【図3】のダイアログDLG1の表示は,CPU1のプログラムにより制御されるものであり,該CPU1は,「表示制御手段」といえるものである。
次に,該ダイアログDLG1は,本件明細書等の【0026】及び【図3】の記載によれば,「印刷設定画面」といえるものであり,それに表示されるコンボボックスLST11は,コンボボックスとは複数の選択候補を表示するものであり,【0029】の記載によれば,「カレントの「お気に入り」がユーザにより選択変更され」るものであるから,「複合設定の複数の選択候補を表示可能であ」るものといえる。
また,本件明細書等の【0029】の「まず,DLG1のコンボボックスLST11でカレントの「お気に入り」がユーザにより選択変更された場合(ステップS401-Yes),選択変更に関する一連の処理を行い(詳細後述)(ステップS402),今から行おうとしている印刷の設定(以下,カレント設定)に関するコンフリクトチェックの処理を行い(詳細後述)(ステップS403),各シートのコントロールを新しい設定に応じて変更する(ステップS404)。」との記載によれば,表示されている【図3】のダイアログDLG1は,ユーザが操作して今から印刷の設定を行おうとしている状態のものである。すなわち,このダイアログDLG1には,今の印刷設定の内容が【図3】のように表示されているといえる。したがって,上記「印刷設定画面」は,「現在の設定内容が表示されている印刷設定画面」といえる。
よって,この訂正事項は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項との関係において,新たな技術事項を導入するものではない。

c 請求項1に係る訂正で付加した「ユーザにより前記複数の選択候補に基づく複合設定の選択変更が行われる度に,選択された複合設定に関する前記読み出し手段による読み出しと,読み出された複合設定に関する前記確認手段による確認と,確認の結果に対応した前記表示制御手段による表示とを行う」との事項は,本件明細書等の【0029】,【0033】ないし【0043】,【図3】,【図4】,【図6】及び【図7】の記載に基づくものである。

したがって,請求項1に係る訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。

(イ) 請求項2に係る訂正
a 請求項2に係る訂正で付加した「印刷装置に装着されるオプションの情報である登録オプション情報を基に,読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが可能であるか否かを確認する確認手段」との事項は,明細書の段落【0039】の記載に基づくものであり,また,「印刷装置とネットワーク経由で接続される情報処理装置であって,」との事項は,本件明細書等の【0019】の記載に基づくものである。

b 請求項2に係る訂正で付加した「ユーザによる取得指示に応じて,印刷装置とのネットワークを介した通信によって当該印刷装置に実際に装着されているオプションの情報を取得して前記登録オプション情報を更新する第1の更新手段と,
ユーザによるマニュアル設定を受け付けて前記登録オプション情報を更新する第2の更新手段と,を有し,」との事項は,本件明細書等の【0058】ないし【0061】,【図17】及び【図18】の記載に基づくものである。

c 請求項2に係る訂正で付加した「前記表示制御手段は,現在の設定内容が表示されている印刷設定画面に,複合設定の複数の選択候補を表示可能であり,
ユーザにより前記複数の選択候補に基づく複合設定の選択変更が行われる度に,選択された複合設定に関する前記読み出し手段による読み出しと,読み出された複合設定に関する前記確認手段による前記登録オプション情報に基づく確認と,確認の結果に対応した前記表示制御手段による表示とを行い,」との事項は,上記請求項1に係る訂正で付加した事項と同じものであり,本件明細書等の【0026】ないし【0029】,【0033】ないし【0043】,【図3】,【図6】及び【図7】の記載に基づくものである。

したがって,請求項2に係る訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。

(ウ) 請求項3に係る訂正
請求項3は請求項1又は2を引用するものであり,請求項1又は2に係る訂正は上記(ア)及び(イ)のとおり願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
したがって,請求項3に係る訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。

(エ) 請求項4に係る訂正
請求項4に係る訂正で付加した事項は,上記請求項1に係る訂正で付加した事項と同じものであるから,請求項4に係る訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。

ウ 拡張・変更
請求項1ないし4に係る訂正は,いずれも,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。

エ 一群の請求項,訂正単位
本件訂正前の請求項2ないし4は,それぞれ,直接的又は間接的に請求項1の記載を引用して記載されたものであるから,請求項1ないし4は一群の請求項である。
なお,請求項4に係る訂正については,当該請求項についての訂正が認められる場合には,一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することの求めがあるので,請求項1ないし3に係る訂正と,請求項4に係る訂正とは別の訂正単位である。

オ まとめ
以上のとおり,請求項〔1-3〕,4に係る訂正は,特許法第134条の2第1項及び同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものであり適法なものである。

(2) 請求項5に係る訂正について
ア 訂正の目的
請求項5に係る訂正は,本件訂正前の請求項5に,「印刷装置とネットワーク経由で接続される情報処理方法であって,」,「前記表示制御手段は,現在の設定内容が表示されている印刷設定画面に,複合設定の複数の選択候補を表示し,
ユーザにより前記複数の選択候補に基づく複合設定の選択変更が行われる度に,選択された複合設定に関する前記読み出し手段による読み出しと,読み出された複合設定に関する前記確認手段による確認と,確認の結果に対応した前記表示制御手段による表示とを行い,」及び「読み出された複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが不可能であることが確認された場合は,前記表示制御手段は,実行できないことを示すメッセージを表示する」との事項を付加し,「読み出し手段」,「確認手段」及び「表示制御手段」を,それぞれ,「前記情報処理装置の読み出し手段」,「前記情報処理装置の確認手段」及び「前記情報処理装置の表示制御手段」と変更して特許請求の範囲を減縮したものである。
したがって,請求項5に係る訂正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項
(ア) 請求項5に係る訂正で付加した「印刷装置とネットワーク経由で接続される情報処理方法であって,」及び「前記表示制御手段は,現在の設定内容が表示されている印刷設定画面に,複合設定の複数の選択候補を表示し,
ユーザにより前記複数の選択候補に基づく複合設定の選択変更が行われる度に,選択された複合設定に関する前記読み出し手段による読み出しと,読み出された複合設定に関する前記確認手段による確認と,確認の結果に対応した前記表示制御手段による表示とを行い,」との事項は,上記請求項1に係る訂正で付加した事項と同様のものであり,本件明細書等の【0019】,【0026】ないし【0029】,【0033】ないし【0043】,【図3】,【図4】,【図6】及び【図7】の記載に基づくものである。

(イ) 請求項5に係る訂正で付加した「読み出された複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが不可能であることが確認された場合は,前記表示制御手段は,実行できないことを示すメッセージを表示する」との事項は,本件明細書等の【0041】,【図7】及び【図8】の記載に基づくものである。

(ウ) 請求項5に係る訂正で付加した「前記情報処理装置の読み出し手段」,「前記情報処理装置の確認手段」及び「前記情報処理装置の表示制御手段」との事項は,本件明細書等の【0025】ないし【0029】及び【請求項1】の記載に基づくものである。

したがって,請求項5に係る訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。

ウ 拡張・変更
請求項5に係る訂正は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。

エ まとめ
以上のとおり,請求項5に係る訂正は,特許法第134条の2第1項及び同法同条第9項において準用する同法第126条第5項,第6項の規定に適合するものであり適法なものである。

(3) 請求項6,7に係る訂正について
ア 訂正の目的
(ア) 請求項6に係る訂正
請求項6に係る訂正は,本件訂正前の請求項6の「をコンピュータに実行させるためのプログラムを記憶した記憶媒体。」を,「ユーザによる指示に応じて,複合設定をメモリに追加する登録ステップと,
ユーザによる指示に応じて,複合設定をメモリから削除する削除ステップと,を,印刷装置とネットワーク経由で接続されるコンピュータに実行させるためのプログラムを記憶した記憶媒体であって,
前記登録ステップにより追加された複合設定は前記削除ステップによる削除が可能であり,前記プログラムに元から用意されている複合設定は前記削除ステップによる削除が不可能であり,
前記プログラムは更に,現在の設定内容が表示されている印刷設定画面に,複合設定の複数の選択候補を表示するステップを前記コンピュータに実行させ,ユーザにより前記複数の選択候補に基づく複合設定の選択変更が行われる度に,選択された複合設定に関する前記読み出しステップによる読み出しと,読み出された複合設定に関する前記確認ステップによる確認と,確認の結果に対応した前記表示制御ステップによる表示とを前記コンピュータに実行させ,
読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが不可能であることが確認された場合は,前記表示制御ステップは,実行できないことを示すメッセージを表示し,
前記複合設定とは,プリンタドライバが提供するユーザインターフェイスである印刷設定画面に表示される複数の設定シートで設定された前記設定内容を組み合わせた設定であり,
前記複合設定の選択変更は,印刷設定画面に表示される複数の設定シートのいずれからも行うことができる,ことを特徴とする記憶媒体。」と変更して,特許請求の範囲を減縮したものである。
したがって,請求項6に係る訂正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(イ) 請求項7に係る訂正
請求項7に係る訂正は,本件訂正前の請求項6を引用する請求項7を独立形式とし,また,本件訂正前の請求項6の「をコンピュータに実行させるためのプログラムを記憶した記憶媒体」を,「ユーザによる指示に応じて,複合設定をメモリに追加する登録ステップと,
ユーザによる指示に応じて,複合設定をメモリから削除する削除ステップと,を,印刷装置とネットワーク経由で接続されるコンピュータに実行させるためのプログラムを記憶した記憶媒体であって,
前記登録ステップにより追加された複合設定は前記削除ステップによる削除が可能であり,前記プログラムに元から用意されている複合設定は前記削除ステップによる削除が不可能であり,
前記プログラムは更に,現在の設定内容が表示されている印刷設定画面に,複合設定の複数の選択候補を表示するステップを前記コンピュータに実行させ,ユーザにより前記複数の選択候補に基づく複合設定の選択変更が行われる度に,選択された複合設定に関する前記読み出しステップによる読み出しと,読み出された複合設定に関する前記確認ステップによる確認と,確認の結果に対応した前記表示制御ステップによる表示とを前記コンピュータに実行させ,」と変更して,特許請求の範囲を減縮したものである。
したがって,請求項7に係る訂正は,他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること,及び,特許の請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項
(ア) 請求項6に係る訂正
a 請求項6に係る訂正で付加した「ユーザによる指示に応じて,複合設定をメモリに追加する登録ステップと,ユーザによる指示に応じて,複合設定をメモリから削除する削除ステップと,」及び「前記登録ステップにより追加された複合設定は前記削除ステップによる削除が可能であり,前記プログラムに元から用意されている複合設定は前記削除ステップによる削除が不可能であり,」との事項は,本件明細書等の【0050】ないし【0057】,【図13】,【図14】及び【図15】の記載に基づくものである。

b 請求項6に係る訂正で付加した「印刷装置とネットワーク経由で接続されるコンピュータ」及び「前記プログラムは更に,現在の設定内容が表示されている印刷設定画面に,複合設定の複数の選択候補を表示するステップを前記コンピュータに実行させ,ユーザにより前記複数の選択候補に基づく複合設定の選択変更が行われる度に,選択された複合設定に関する前記読み出しステップによる読み出しと,読み出された複合設定に関する前記確認ステップによる確認と,確認の結果に対応した前記表示制御ステップによる表示とを前記コンピュータに実行させ,」との事項は,上記請求項1に係る訂正で付加した事項と同様のものであり,本件明細書等の【0019】,【0026】ないし【0029】,【0033】ないし【0043】,【図3】,【図4】,【図6】及び【図7】の記載に基づくものである。

c 請求項6に係る訂正で付加した「読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが不可能であることが確認された場合は,前記表示制御ステップは,実行できないことを示すメッセージを表示し,」との事項は,上記請求項5に係る訂正で付加した事項と同様のものであり,本件明細書等の【0041】,【図7】及び【図8】の記載に基づくものである。

d 請求項6に係る訂正で付加した「前記複合設定とは,プリンタドライバが提供するユーザインターフェイスである印刷設定画面に表示される複数の設定シートで設定された前記設定内容を組み合わせた設定であり,」との事項は,本件明細書等の【0004】,【0029】及び【図3】の記載に基づくものである。

e 請求項6に係る訂正で付加した「前記複合設定の選択変更は,印刷設定画面に表示される複数の設定シートのいずれからも行うことができる,」との事項は,本件明細書等の【0034】及び【図3】の記載に基づくものである。
この点について詳細に説明する。
本件明細書等の【0034】には,次のように記載されている。
「【0034】
「お気に入り」の選択変更が確定した場合は(ステップS601?Yes),カレント設定の内容を保持するバッファ領域を,選択された「お気に入り」の設定内容で更新する(ステップS602)。変更対象は,カレントシート(図3の「ページ設定」というシート)だけでなく,非アクティブシート(図3の「仕上げ」・「給紙」・「印刷品質」のシート)を含むUI上の全コントロールである。どこのシートから選択しても,変更対象は同じである。」
この記載のうち,「どこのシートから選択しても,変更対象は同じである。」との記載における「選択」は,この段落の最初の文に記載された「お気に入り」の選択を意味していると理解でき,また,「どこのシートから選択しても」の「シート」は,この段落の2番目の文に記載された,【図3】(「印刷設定画面」といえる)の「ページ設定」,「仕上げ」,「給紙」及び「印刷品質」の4つのシートを意味していると理解できる(【図3】では,この4つのシート以外にシートは記載されていない。)。さらに,「変更対象」は,「カレントシート」(「ページ設定」シートである1つのシート)だけでなく,「非アクティブシート」(「仕上げ」,「給紙」及び「印刷品質」シートである3つのシート)を含む4つのシートのUI上の全コントロールであることが理解できる(なお,「お気に入り」に関する処理については,本件明細書等の【0029】にも,「・・・カレントの『お気に入り』がユーザにより選択変更された場合・・・,選択変更に関する一連の処理を行い・・・,各シートのコントロールを新しい設定に応じて変更する・・・」と記載されており,4つの各シートのいずれもがカレント,すなわち,カレントシートとなり得るのであって,カレントシートの「お気に入り」が選択変更されると(カレントシートを含む)各シートのコントロールを変更することが理解できる。)。
そうすると,「どこのシートから選択しても,変更対象は同じである。」とは,【図3】の「ページ設定」,「仕上げ」,「給紙」及び「印刷品質」の4つのシートのうち,どこのシートから「お気に入り」の選択をしても,「お気に入り」の選択変更の対象は同じである,との意味であると理解できるから,本件明細書等の【0034】及び【図3】には,「お気に入り」の選択変更は,【図3】の「ページ設定」,「仕上げ」,「給紙」及び「印刷品質」の4つのシートのうち,どこのシートからもできることが記載されているといえる。
したがって,「お気に入り」の選択変更は,「複合設定の選択変更」であり,【図3】の「ページ設定」,「仕上げ」,「給紙」及び「印刷品質」の4つのシートは,「印刷設定画面に表示される複数の設定シート」であるから,結局,本件明細書等の【0034】及び【図3】には,請求項6に係る訂正で付加した「前記複合設定の選択変更は,印刷設定画面に表示される複数の設定シートのいずれからも行うことができる,」との事項が記載されているといえる。
これに対し,請求人は,当該事項の「いずれからも行なうことができる」とは,全ての設定シートから設定が可能なことを意味するところ,被請求人が訂正の根拠とする本件明細書等の【図3】と同じ実施例である【図17】に示されたデバイスオプションの設定ダイアログも印刷設定画面であるのに,当該設定ダイアログにおいては複合設定の選択変更を行なうことはできず,少なくとも全ての設定シートから設定が可能でないことは明らかであるから,請求項6に係る訂正は,訂正要件を満たさないと主張する。
しかしながら,本件明細書等の【0058】の記載によれば,【図17】は「『お気に入り』の設定項目,特にデバイスオプションの設定項目をユーザが設定するときの処理」について説明するダイアログの一例であって,「プリンタや複写機に装備されているデバイスオプションの確認及び設定を行うダイアログの一例」であるから,「お気に入り」の設定項目であるデバイスオプションの設定項目の確認や設定を行う際のダイアログにすぎず,「お気に入り」(複合設定)の選択変更を行うダイアログではない(なお,本件明細書等の【0026】の記載によれば,【図3】は「『お気に入り』の選択,追加,編集を行う」際に表示されるダイアログの一例であるから,「複合設定の選択変更」を行うダイアログであるといえる。)。
そうすると,【図17】に示されるダイアログが,仮に印刷設定画面であるといえたとしても,当該ダイアログは複合設定の選択変更を行うこととは無関係であって,請求項6に係る訂正の可否の判断に影響を及ぼすものではない。そして,「お気に入り」,すなわち,「複合設定」の選択変更が,【図3】の「ページ設定」,「仕上げ」,「給紙」及び「印刷品質」の4つのシートのうち,どこのシートからもできることは上述のとおりであるから,請求人の主張は採用できない。
よって,この訂正事項は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項との関係において,新たな技術事項を導入するものではない。

したがって,請求項6に係る訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。

(イ) 請求項7に係る訂正
a 請求項7に係る訂正で付加した「ユーザによる指示に応じて,複合設定をメモリに追加する登録ステップと,ユーザによる指示に応じて,複合設定をメモリから削除する削除ステップと,」及び「前記登録ステップにより追加された複合設定は前記削除ステップによる削除が可能であり,前記プログラムに元から用意されている複合設定は前記削除ステップによる削除が不可能であり,」との事項は,上記請求項6に係る訂正で付加した事項と同じものであり,本件明細書等の【0050】ないし【0057】,【図13】,【図14】及び【図15】の記載に基づくものである。

b 請求項7に係る訂正で付加した「印刷装置とネットワーク経由で接続されるコンピュータ」,及び,「前記プログラムは更に,現在の設定内容が表示されている印刷設定画面に,複合設定の複数の選択候補を表示するステップを前記コンピュータに実行させ,ユーザにより前記複数の選択候補に基づく複合設定の選択変更が行われる度に,選択された複合設定に関する前記読み出しステップによる読み出しと,読み出された複合設定に関する前記確認ステップによる確認と,確認の結果に対応した前記表示制御ステップによる表示とを前記コンピュータに実行させ,」との事項は,上記請求項6に係る訂正で付加した事項と同じものであり,本件明細書等の【0019】,【0026】ないし【0029】,【0033】ないし【0043】,【図3】,【図4】,【図6】及び【図7】の記載に基づくものである。

したがって,請求項7に係る訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。

ウ 拡張・変更
請求項6,7に係る訂正は,いずれも,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。

エ 一群の請求項,訂正単位
訂正前の請求項7は,請求項6の記載を引用して記載されたものであるから,請求項6,7は一群の請求項である。
なお,請求項7に係る訂正については,当該請求項についての訂正が認められる場合には,一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することの求めがあるので,請求項6に係る訂正と,請求項7に係る訂正とは別の訂正単位である。

オ まとめ
以上のとおり,請求項6,7に係る訂正は,特許法第134条の2第1項及び同法同条第9項において準用する同法第126条第5項,第6項の規定に適合するものであり適法なものである。

(4) 請求項8に係る訂正について
ア 訂正の目的
請求項8に係る訂正は,本件訂正前の請求項8の「印刷に関わる複数の設定内容を一括して変更するための複合設定」を「印刷に関わる複数の設定内容を一括して変更するための,メモリに格納された複合設定」と変更し,本件訂正前の請求項8の「をコンピュータに実行させるためのプログラムを記憶した記憶媒体」を,「を,印刷装置とネットワーク経由で接続されるコンピュータに実行させるためのプログラムを記憶した記憶媒体であって,
前記プログラムは更に,現在の設定内容が表示されている印刷設定画面に,複合設定の複数の選択候補を表示するステップを前記コンピュータに実行させ,ユーザにより前記複数の選択候補に基づく複合設定の選択変更が行われる度に,ユーザにより選択された複合設定に関する前記選択ステップによる選択と,選択された複合設定に対応する設定内容で印刷装置に印刷を実行させることが可能であるか不可能であるかに対応した前記表示制御ステップによる表示とを前記コンピュータに実行させ,
前記複合設定とは,プリンタドライバが提供するユーザインターフェーイスである印刷設定画面に表示される複数の設定シートで設定された前記設定内容を組み合わせた設定であり,
前記複合設定の選択変更は,印刷設定画面に表示される複数の設定シートのいずれからも行うことができる,記憶媒体」と変更して,特許請求の範囲を減縮したものである。
したがって,請求項8に係る訂正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項
(ア) 請求項8に係る訂正で付加した「メモリに格納された複合設定」との事項は,本件明細書等の【0025】の記載に基づくものである。

(イ) 請求項8に係る訂正で付加した「印刷装置とネットワーク経由で接続されるコンピュータ」,及び,「前記プログラムは更に,現在の設定内容が表示されている印刷設定画面に,複合設定の複数の選択候補を表示するステップを前記コンピュータに実行させ,ユーザにより前記複数の選択候補に基づく複合設定の選択変更が行われる度に,ユーザにより選択された複合設定に関する前記選択ステップによる選択と,選択された複合設定に対応する設定内容で印刷装置に印刷を実行させることが可能であるか不可能であるかに対応した前記表示制御ステップによる表示とを前記コンピュータに実行させ,
前記複合設定とは,プリンタドライバが提供するユーザインターフェーイスである印刷設定画面に表示される複数の設定シートで設定された前記設定内容を組み合わせた設定であり,
前記複合設定の選択変更は,印刷設定画面に表示される複数の設定シートのいずれからも行うことができる,」との事項は,上記請求項6に係る訂正で付加した事項と同じものであり,本件明細書等の【0004】,【0019】,【0026】ないし【0029】,【0033】ないし【0043】,【図3】,【図4】,【図6】及び【図7】の記載に基づくものである。

したがって,請求項8に係る訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。

ウ 拡張・変更
請求項8に係る訂正は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。

エ まとめ
以上のとおり,請求項8に係る訂正は,特許法第134条の2第1項及び同条第9項において準用する同法第126条第5項,第6項の規定に適合するものであり適法なものである。

4 請求人の主張について
(1) 請求人は,本件特許には,請求人を含む複数の企業に対する通常実施権が設定されているから,訂正請求に際し,各通常実施権者の承諾が必要であるところ,被請求人は,各通常実施権者から承諾を得た旨の承諾書を提出していないし,請求人は訂正請求について承諾していないから,通常実施権者の承諾のない本件訂正請求及び平成30年4月2日付け訂正請求は却下されるべきであると主張する。
そこで,以下,検討する。
特許無効審判において,特許権者は,許諾による通常実施権者があるときは,これらの者の承諾を得た場合に限り,訂正請求をすることができるとされているから(特許法第134条の2第1項及び第9項,第127条,第78条第1項),特許権者が訂正請求をするときには,許諾による通常実施権者が存在する場合,当該通常実施権者の承諾を得ることが必要であると解される。
これを本件特許無効審判についてみるに,請求人が提出した,被請求人作成の有価証券報告書・事業年度第117期(甲第18号証)によれば,本件特許の特許権者である被請求人は,技術供与契約として,請求人を含む日本及び米国の複数の企業と特許実施権の許諾に関する契約を締結しており,また,同様に,相互技術援助契約として,日本及び米国の複数の企業と特許実施権の許諾に関する契約を締結しているところ,そのいずれの契約においても,各企業との契約期間の終了は,対象特許の満了日までとされている(なお,請求人と被請求人との間で締結した実施許諾契約書(甲第19号証)にも,通常実施権について同じ趣旨の記載がある。)。
そして,本件特許が上記各契約の対象となる特許実施権に係る特許であること,当該特許実施権が許諾による通常実施権であることに争いはないから,本件特許について上記各契約による通常実施権者が存在するのは,本件特許の満了日,すなわち,存続期間終了日までであって,それ以降は許諾による通常実施権者は存在しないものと認められる。また,本件特許について,上記各契約を締結した複数の企業以外に,許諾による通常実施権者が存在するとの主張・立証はないから,許諾による通常実施権者は上記各契約を締結した複数の企業のみであると解するのが相当である。
そうすると,本件訂正請求は,本件特許の存続期間終了日(平成31年2月18日)以降である平成31年4月4日にするものであるから,上述のとおり,本件訂正請求をするときに承諾を得る必要のある,許諾による通常実施権者は存在しない。よって,被請求人は,本件訂正請求に際し,各通常実施権者から承諾を得た旨の承諾書を提出する必要はないし,請求人から訂正請求について承諾を得る必要もないから,本件訂正請求は適法にされたものであり,本件訂正請求を却下する理由はない。
なお,平成30年4月2日付け訂正請求は,上述のとおり,本件訂正請求がされたことによって取り下げられたものとみなされるから(特許法第134条の2第6項),平成30年4月2日付け訂正請求を却下することはできない。
したがって,請求人の主張は採用できない。

(2) また,請求人は,特許無効審判における訂正請求について,特許権消滅等により通常実施権が終了した場合も通常実施権者の承諾が必要であると主張する。
しかしながら,上記(1)のとおり,本件特許に係る通常実施権の許諾に関する契約の期間は,本件特許の存続期間終了日までと定められており,本件訂正請求をするときに承諾を得る必要のある,許諾による通常実施権者は存在しない。
なお,特許無効審判における訂正請求の際に,通常実施権者の承諾を得ることを必要としたのは,訂正請求は,もっぱら,無効審判の請求に対する防御策と考えられるところ,訂正請求が通常実施権者や専用実施権者等の利害関係者にとって利益になることはあっても不利益になることはないが,特許権者が誤解に基づいて不必要な訂正請求をしたり,瑕疵の部分のみを減縮すれば十分であるのにその範囲を超えて訂正請求をすることも考えられ,そうなると利害関係者は不測の損害を被ることもあるので,一応訂正請求をする場合には,利害関係者の承諾を得なければならないとしたものであると解される。
そして,通常実施権者は,特許権者から特許権について通常実施権を許諾された者であり,業としてその特許権に係る特許発明の実施をする権利を有するものであるから(特許法第78条),特許権の存続期間中は,特許権者から何ら権利行使を受けずに特許発明の実施をすることができるという利益があるといえ,特許無効審判における訂正請求についても,通常実施権者の承諾を得ることが必要とされていることによって,上述の不測の損害を被ることを防止するという利益があるということができる。
一方,特許権の存続期間終了後は,通常実施権者であった者に関わらず,他の第三者も特許権者から何ら権利行使を受けずに特許発明の実施をすることができるのであるから,通常実施権者が有する上記利益は存在しないこととなる。
そうすると,特許権の存続期間終了後に,特許権者が特許無効審判における訂正請求をするときには,通常実施権者が有する上記利益は存在しないのであるから,特許権者は,通常実施権者の承諾を得る特段の必要はないというべきである。
これに対し,請求人は,特許法第127条通常実施権者について確保しようとする利益としては特許を無効にする利益(特許を無効にして実施料の支払いを免れる利益)が中心であることは明らかである,通常実施権者が無効審判を請求した場合,特許を無効とする利益は特許権の消滅にかかわらず存続するのに,特許権が存続していた間は必要とされていた訂正請求についての承諾が特許権が消滅した途端に不要となるというのでは,特許を無効とする利益を確保した無効審判制度の趣旨にも,訂正請求によって不利益を被る通常実施権者等の利益を確保しようとする特許法第127条の趣旨にも全く悖る極めて不条理な結果となる,などと主張する。
確かに,請求人の主張するように,通常実施権者は,自らその通常実施権に係る特許について,特許無効審判を請求し,訂正請求の承諾をしないことによって,結果的に特許を無効とし,実施料の支払いを免れる利益があるということも考えられる。
しかしながら,そのような利益は,特許権者が何らかの権利行使をし得る,特許権の存続期間中に存在するのであって,特許権の存続期間終了後には想定しがたく,かえって,特許無効審判の手続中に,対象となる特許権の存続期間が終了した場合,同時に通常実施権の許諾に関する契約も終了し,それ以降は特許権者に実施料の支払いをすることなく,特許発明の実施をすることができるのであるから,実施料の支払いを免れるという利益は何ら失われるものではない。
したがって,請求人の主張は採用できない。

5 本件訂正請求についてのまとめ
以上によれば,本件訂正請求は適法にされたものであるから,本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付され訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1-3〕,4,5,6,7及び8について訂正することを認める。

第3 本件特許発明
上述のとおり,本件訂正請求は適法なものとして認められるので,本件特許発明は,本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲(上記第2の2(2))の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるとおりの発明(以下,それぞれ,「本件発明1」,「本件発明2」・・・「本件発明8」等という。)である。

第4 請求,答弁及び主張の概要
1 請求人
(1) 請求の趣旨
本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された発明についての特許を無効とする,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求める,というものである。

(2) 無効理由
ア 無効理由1
請求項1ないし8に係る発明は,甲第1号証に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,また,甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,その特許は同法第123条第1項第2号の規定に該当し,無効とすべきである。
イ 無効理由2
請求項1ないし8に係る発明は,甲第2号証に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,また,甲第2号証に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,その特許は同法第123条第1項第2号の規定に該当し,無効とすべきである。

[証拠方法]
甲第1号証:特開平9-146731号公報
甲第2号証:特開平1-147559号公報
甲第3号証:特開平10-49318号公報
甲第4号証:特開平6-78143号公報
甲第5号証:特開平10-67127号公報
甲第6号証:特開平9-179704号公報
甲第7号証:特開平7-234767号公報
甲第8号証:特開平8-185294号公報
甲第9号証:特開平10-301723号公報
甲第10号証:特開平9-26867号公報
甲第11号証:特開平8-336012号公報
甲第12号証:特開平8-278863号公報
甲第13号証:特開平10-187384号公報
甲第14号証:キヤノン株式会社製 インクジェットプリンタ BJ F600 基本操作ガイド 表紙,はじめに,目次,11?12頁,裏表紙(http://cweb.canon.jp/manual/bj/bjf600/f600basic.pdf),平成30年6月15日請求人代理人出力の写し
甲第15号証:ウェブページ「PC Watchホームページ キヤノン,インクジェットプリンタ3機種 '98年11月5日より順次発売」(https://pcwatch.impress.co.jp/docs/article/981029/canon.htm),平成30年6月15日請求人代理人出力の写し
甲第16号証:キヤノン株式会社製 インクジェットプリンタ BJ F600 リファレンスガイド 表紙,2?5頁,150?182頁(http://cweb.canon.jp/manual/bj/bjf600/f600refer.pdf),平成30年6月15日請求人代理人出力の写し
甲第17号証:特開平9-244843号公報
甲第18号証:有価証券報告書 事業年度第117期 自2017年1月1日 至2017年12月31日(表題,1頁及び28頁抜粋)(http://global.canon/ja/ir/yuuhou/canon2017.pdf)
甲第19号証:実施許諾契約書(一部黒塗りを施したもの)

2 被請求人
(1) 答弁の趣旨
本件無効審判の請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,との審決を求める。

(2) 主張
訂正後の特許請求の範囲の請求項1?8に係る発明は,いずれも甲第1号証に記載された発明,甲第2号証に記載された発明に対して新規性及び進歩性を有するから,請求人主張の無効理由1,2には該当しない。

[証拠方法]
乙第1号証:本 俊也,Visual J++6.0入門,初版第1刷,株式会社インパルス,1998年10月1日,p.145,写し
乙第2号証:田中 亘,Windowsの常識事典,初版,株式会社日本実業出版社,1993年12月20日,p.35,写し

第5 当審の判断
1 無効理由1について
(1) 甲第1号証の記載事項,甲1発明,甲1方法発明及び甲1媒体発明
甲第1号証(特開平9-146731号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は,当審で加筆した。以下,同じ。)。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は,例えば,複数の印刷出力装置(この明細書では印刷には複写を含み,印刷出力装置にはプリンタのほか複写機などを含む)が通信ネットワークに接続された分散型のネットワーク印刷システムにおいて,前記複数の印刷出力装置を切り換えて利用する場合に使用する印刷指示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】分散型のネットワーク印刷システムにおいて,例えば1台のコンピュータなどの印刷指示装置から,複写機やプリンタなどの印刷出力装置の選択操作や,その印刷出力装置に対する印刷要求のために設定可能な印刷指示設定項目(例えば用紙サイズ設定,拡大率/縮小率の設定,片面/両面指定,印刷部数の設定,オプション機能の使用/不使用の設定など)の設定を行なって,ネットワークに接続された複数の印刷出力装置の中から印刷出力装置を選択して切り換えて利用する場合,従来,いくつかの方法が行なわれている。
【0003】第1の従来例は,ネットワークに接続された複数個のプリンタの一つを選択して,それに印刷指示を与える場合に,各プリンタ毎に設けられるプリンタドライバを切り換えるようにするものである。
【0004】すなわち,例えば図40に示すように,n個(nは2以上の自然数)のプリンタP1,プリンタP2,…,プリンタPnのそれぞれに対応して,プリンタドライバD1,プリンタドライバD2,…,プリンタドライバDnを設け,各プリンタドライバから印刷指示設定情報と,印刷すべき文書情報などのプリンタ情報とを通信手段C1?Cnをそれぞれ通じてプリンタP1?Pnに送るように構成する。この場合,プリンタドライバD1?Dnのそれぞれは,その印刷指示設定項目を印刷指示設定のための表示ウインドウとして表示し,ユーザーからの印刷指示設定項目の設定を受け付けるようにする表示処理部W1?Wnと,各プリンタに送るべきプリンタ情報の処理を行う印刷データ処理部F1?Fnとを備える。
【0005】そして,ユーザーは,プリンタP1?プリンタPnのうちの一つを選択して利用しようとする場合には,その利用したいプリンタに対応するプリンタドライバを識別して選択する。すると,その選択されたプリンタドライバは,その表示処理部Wを用いて印刷指示設定項目の設定操作パネル画面を表示するので,ユーザーは,その設定操作パネル画面で前記の印刷指示設定項目の設定を行なった後,印刷ジョブの実行を指示する。印刷ジョブは,前記印刷指示設定項目の設定情報を含む印刷指示情報と印刷データとからなる。なお,以下の説明において,単に「ジョブ」というときも,印刷ジョブを意味している。
【0006】この印刷ジョブの実行指示を受けると,プリンタドライバは,これに与えられた印刷すべきプリンタ情報をその印刷データ処理部Fにより,このプリンタドライバに対応するプリンタのフォーマットに適合する印刷データに変換し,前記の印刷指示設定項目の情報と共に,それぞれ通信手段C1,通信手段C2,…,通信手段Cnの内の対応するものを介して,プリンタP1,プリンタP2,…,プリンタPnの内の対応するものに送られる(Microsoft Windows Ver.3.1 Operating System 機能ガイド 第5章参照)。
【0007】また,第2の従来例は,ネットワークに接続された複数のプリンタのそれぞれに対応してボタンアイコンを設定しておき,一つのプリンタを選択するときには,対応するボタンアイコンを指示することで,そのプリンタに対するプリンタオプションのウインドウを開き,各種印刷指示設定項目の設定,印刷出力指示を行なうようにしたものである。
【0008】また,第3の従来例として,ネットワークに接続されて遠隔にある複写機に出力指示する際に,ユーザーと対話的にガイダンスを交え,各々の複写機能の設定を行ない,最後に出力指示するというものもある(特公平6-34498号公報参照)。
【0009】なお,従来から,複写機においては,例えば特開平1-246572号公報,特開平2-331059号公報,特開平3-151292号公報,特開平5-323703号公報,特開平6-89055号公報等に示されているように,複写の後処理としてホチキス止めなどの,いわゆるフィニッシング処理を行なうことができる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】上述した第1の従来例の場合,プリンタドライバは,対応するプリンタの装備機能を固定的に保持しているものであり,印刷出力先を変えようとする場合には,ユーザーが利用したい装備機能を,選択しようとしているプリンタが実際に装備しているか否かを確認し,そのプリンタに対応したプリンタドライバをユーザーが識別して切り換えなければならない。
【0011】そして,ネットワークに接続されたプリンタを利用するためには,予め利用するすべてのプリンタのプリンタドライバソフトウエアをコンピュータにインストールしておき,利用するためにウインドウ画面から利用するプリンタを指定してプリンタドライバを切り換える必要があり,1台のパーソナルコンピュータから複数のプリンタを切り換えながら利用することは極めて不便である。
【0012】また,同時に異なるプリンタに出力することはできなかった。これは,プリンタドライバを切り換えることは,これを利用するアプリケーションへの切り換えの通知やネットワークドライバやネットワークキュー(スプール)と常に関係しているために簡単ではなかったことによる。また,このために複数のプリンタドライバを同時に実行することはできなかった。
【0013】さらに,印刷出力先を変えようとすると,出力先の変更のウインドウを閉じる必要がある。そのために,それまで設定していた情報がすべてリセットされてしまい,出力先変更後に再度同じ情報を再入力しなければならないという使い難さがあった。
【0014】また,第2の従来例の場合には,プリンタの装備機能などの情報はプリンタオプションのウインドウを開く時に一度取得するだけで,プリンタオプションをウインドウで開いた状態からはプリンタの装備機能の情報を取得することができない。また,印刷出力先を指定した後は出力先を変更することはできず,一旦,印刷指示手順の取り消しを行ない,初めから,変更後のプリンタに対する印刷指示手順を行なう再入力および再設定が必要となる。
【0015】また,第3の従来例の場合には,ユーザーと対話的にガイダンスを交えて複写機能設定を行なうものであり,遠隔にある出力先の複写機の機能を一覧することができないため,どのように印刷出力することができるかが,設定の最後まで進まないと把握できず,必要とする機能を有する複写機を選択する上で非常に不便であった。
【0016】また,従来,利用者が印刷物にフィニッシング処理を行なう場合には,前記公報に記載されたものでは,一旦,印刷した原稿を複写機まで持っていき,複写機に原稿をセットし,フィニッシング処理の指定をして複写処理をしなければならなかった。
【0017】この発明は,以上の点にかんがみ,通信ネットワークに接続された複数の印刷出力装置を簡単な切り換え操作で利用することができ,また,各印刷出力装置が備える,例えばフィニッシング処理などの装備機能をも,遠隔から有効に利用できるようにした印刷指示装置を提供することを目的とする。
【0018】また,この発明は,ネットワークに接続された複数の印刷出力装置に対して,できるだけ簡単な設定操作で印刷指示を行なうことができるようにする印刷指示装置を提供することを目的とする。」

イ 「【0073】この例の印刷指示装置機能部に搭載されるプリンタドライバ(ソフトウエア)は,図40で示したものと異なり,印刷指示設定項目設定のための表示処理は不要であって,印刷データを,選択した印刷出力装置用のものに変換する印刷データ処理機能を有するだけでよい。つまり,各印刷指示装置機能部は,ネットワークLAN10上に存在するすべての印刷出力装置用に適合する印刷データに変換するため,複数個の印刷データ処理機能を有しており,この印刷データ処理機能がユーザーの印刷出力装置選択に応じて自動的に切り換えられるものである。
・・・
【0075】この場合の印刷指示装置機能部による印刷出力先の切り換え処理の概略を,図40の従来例との比較において説明すると,図3に示すようなものとなる。すなわち,図3に示すように,印刷指示装置機能部20は,複数の印刷出力装置の例としてのプリンタP1?Pnのそれぞれの印刷指示操作パネルをすべて切り換えて表示できる共通ユーザーインターフェイス部21を備えると共に,各プリンタP1?Pn用の印刷データ処理部22aと,共通ユーザーインターフェイス部21で表示する事項以外で必要な一部表示処理部22bとを具備するプリンタドライバ部22とを備える。」

ウ 「【0082】図1において,100は印刷指示装置,200は印刷管理装置で,これらは前述したように通信ネットワークのLAN10に接続されている。この例では,印刷管理装置200に対して印刷出力装置301および302が接続されると共に,印刷出力装置303がLAN10に直接的に接続されている。ここで,直接的に接続されているとは,印刷出力装置がコンピュータを介して接続されている場合も含む。
・・・
【0088】装置情報提供部202は,前述もしたように,印刷出力装置301,302,303からオプション情報(ソーター,HCS(ハイキャパシティスタック=大容量スタック),オフセットスタック(排出される印刷された用紙を,指定された単位に,定められた前後方向あるいは左右方向に固定量ずらして排紙する機能),フィニッシング処理の種類(例えば製本やホチキス止め)など)を含む装備機能や用紙サイズの情報(例えばA3,A4,B4,B5,レター,リーガル,MSI(マルチシートインサータ)等)などからなる装備機能情報と,前述した紙づまり,紙切れ,紙切れ警告,トナー切れ,故障などの装置状態情報と,ジョブ情報と,その他の印刷出力装置や印刷ジョブに関する情報とを含む装置情報を取得し,印刷指示装置100からの要求によりこれらの情報を含む装置情報を印刷指示装置100に提供する。」

エ 「【0090】次に,印刷指示装置100の構成について説明する。
【0091】印刷指示装置100は,装置情報管理部101,出力先選択部102,出力切り換え部103,装置情報取得部104,装備機能・状態解析部105,表示情報構成部106,表示情報保存部107,表示制御部108,ディスプレイ(表示部)109,設定情報保存部110,デフォルト値保存部111,指示設定操作部112,プリンタドライバ121,印刷データ保存部122,ジョブ発行部123を備える。
【0092】装置情報管理部101は,前述したように,印刷管理装置200のネットワーク情報提供部201と装置情報提供部202とから,通信部130を通じて前記識別子情報および装置情報を取得して管理する。したがって,この装置情報管理部101は,前述の情報に関しては,印刷管理装置200のネットワーク情報提供部201および装置情報提供部202とほぼ同じ情報を保持する。
【0093】前記情報を取得するために,印刷指示装置100から印刷管理装置200に対して要求を出す契機は,印刷指示装置100の実行開始時,ユーザーが指示したとき,あるいは一定時間間隔ごとである。なお,この要求送出の契機は,システムの利用状況に応じて設定することができる。
【0094】図4は,この装置情報管理部101が前記装置情報等を取得する処理動作の一例のフローチャートである。
【0095】すなわち,まず,タイマがセットされる(ステップS101)。次に,印刷指示装置100の実行開始時の取得要求やユーザーの指示による取得要求があるか否か判別する(ステップS102)。
【0096】これら取得要求がなければ,タイマ時間が予め定められた一定時間Tになったか否か判別し(ステップS103),タイマ時間が一定時間T以内であれば,ステップS102に戻る。タイマ時間が一定時間Tになったときには,装置情報等の取得の処理を実行する(ステップS104)。
【0097】ステップS102で,前記取得要求があると判断されたときには,即座にステップS104に飛んで,装置情報等の取得の処理を実行する。ステップS104の後は,ステップS101に戻って,タイマをセットし直し,上述の処理を繰り返し行う。
【0098】出力先選択部102はユーザーが印刷出力先を指定あるいは変更を行なうときに働く。すなわち,ユーザーによる印刷出力先の指定/変更要求があると,この出力先選択部102は,装置情報管理部101に対して識別子情報および装置情報の取得の指示を出すと共に,出力先切り換え部103に対して,装置情報取得部104による装置名と装置情報の取り出し,および装備機能・状態解析部105,表示情報構成部106によるLAN10上のすべての印刷出力装置の識別子の一覧リスト,あるいはLAN10上の複数の印刷出力装置の内から予め選択された印刷出力装置の識別子の一覧リスト,この例の場合には装置名一覧リストの生成と,その一覧リストの表示データを作成を指示し,後述する表示制御部108に基づいて装置名リストを,表示制御部108によりディスプレイ109の画面に表示させるようにする。
【0099】装置名リストのウインドウで印刷出力装置を削除,追加することで,ユーザーはLAN10上の複数の印刷出力装置の内の利用したいものを予め選定することができる。
【0100】そして,このウインドウの一覧リストで,ユーザーが一つの印刷出力装置を選択指示すると,表示制御部108から,ユーザーの選択操作により選択された印刷出力装置の装置名の情報が出力先選択部102に送られてくるので,出力先選択部102は,当該選択された装置名の情報と切り換え指示とを出力先切り換え部103に通知する。
【0101】図5は,この出力先選択部102を中心とした上述の処理動作を表すフローチャートである。すなわち,まず,出力先選択部102は,ユーザーの印刷出力先の指定あるいは変更入力に応じて装置情報管理部101に対して識別子情報および装置情報の取得の指示を出す(ステップS111)。
【0102】次に,出力先切り換え部103が,出力先選択部102からの指示により,装置情報取得部104,装備機能・状態解析部105,表示情報構成部106に前述したような指示を出すので,識別子リストが表示情報構成部106に渡されて(ステップS112),この表示情報構成部106で識別子リスト,すなわち,装置名の一覧リストが生成され,この装置名一覧リストのウインドウがディスプレイ109に表示される(ステップS113)。
【0103】次に,表示制御部108は,マウスボタンが操作されて,一覧リスト中の特定の装置名が選択されたか否か判断し(ステップS114),特定の装置名が選択されたと判断したときには,指定された装置名を例えばハイライト表示してユーザーに知らせる(ステップS115)。そして,キャンセルボタンの操作があったか否か判断し(ステップS118),キャンセルボタンの操作がなければ,ステップS114に戻る。
【0104】ステップS114で,表示制御部108は,マウスボタンの操作がなされないと判断すると,選択ボタンの操作がなされたか否か判断する(ステップS116)。選択ボタンが操作されたと判断したときには,表示制御部108は,装置の切り換え選択が確定したとして,選択された装置名情報を出力先選択部102に送るので,出力先選択部102は,当該選択された装置名情報と切り換え指示とを出力先切り換え部103に出力する(ステップS117)。そして,選択動作を終了させる。また,ステップS116で選択ボタンが操作されないと判断されたときにはステップS118に進む。ステップS118で,キャンセルボタンが押されたと判断されたときには,この選択動作が終了となる。
【0105】出力先切り換え部103は,出力先選択部102からの切り換え指示に従い,選択された印刷出力装置名を識別子として受け取り,装置情報取得部104にその印刷出力装置名に対応する装置情報の取得を指示する。また,出力先切り換え部103は,表示制御部108に印刷要求のための印刷指示操作パネルの表示画面の切り換えを指示する。さらに,出力先切り換え部103は,プリンタドライバ121(図3のプリンタドライバ22に対応)に対して,印刷出力装置の切り換えを指示する。
【0106】図6は,この出力先切り換え部103の動作を表すフローチャートである。すなわち,出力先選択部102からの指示を受けると(ステップS121),その指示が一覧リスト作成の指示であるか否か判断し(ステップS122),そうであれば前述したような装置名一覧リストを作成する際に,この出力先切り換え部103で行われる処理が実行される(ステップS123)。
【0107】出力先切り換え部103は,ステップS122で出力先選択部102からの指示が一覧リスト作成の指示でないと判断したときには,印刷出力装置の切り換え指示であるか否か判断し(ステップS124),切り換え指示であれば,出力先切り換えのための処理を実行し,装置情報取得部104,装備機能・状態解析部105,表示制御部108,プリンタドライバ121に対して前述したような指示を与える(ステップS125)。
【0108】装置情報取得部104は,出力先切り換え部103からの切り換え指示を受けて,装置情報管理部101からその印刷出力装置名の装置情報を取得し,装備機能・状態解析部105に渡す。このとき,装置情報取得部104が取得する装置情報には,例えば以下に示すような情報が含まれるものである。
【0109】すなわち,
・出力解像度(例えば400dpi )
・印刷出力装置のモデル名
・現在セットされている用紙サイズの種類(例えば,トレイ1=B4,トレイ2=A3,トレイ3=A4,手差し=はがき)
・拡大縮小率の範囲(例えば25%?400%)
・両面印刷可否,可であれば短辺綴じ/長辺綴じの可否
・Nup機能の設定可能数(例えば,無し/2up/4up/9up)
・排紙トレイの種類(例えば,上面/ソータ/HCS)
・フィニッシング処理の可否,可であれば製本/ホチキス止めの種類,種類が製本であれば綴じ位置(例えば,左綴じ/右綴じ),種類がホチキス止めであれば,その止め位置(例えば,左上一か所,左二か所,左下一か所,右一か所,右二か所,右下一か所等)
などである。なお,Nupの機能は,Nin1機能とも呼ばれる場合があるが,1枚の用紙に複数(N)頁を表示し,印刷する機能である。
【0110】装備機能・状態解析部105は,渡された情報から,選択された印刷出力装置の装備機能および性能に関する情報を解析し,機能(例えば両面印刷/複写可能,使用可能な用紙サイズ,縮小/拡大可能,ソーター使用可能,フィニッシング処理可能など)およびそれに関する性能(例えば,数値入力や用紙指定の縮小/拡大可能など)を決定する。また,選択された印刷出力装置の状態情報を解析し,装置状態を決定する。そして,その決定結果を表示情報構成部106に送る。
【0111】表示情報構成部106は,出力先切り換え部103からの切り換え指示に基づいて,装備機能・状態解析部105から前記の解析結果の情報を受け取る。そして,表示情報構成部106は,状態情報の解析結果が,選択された印刷出力装置が故障などで使用可能でないことを示しているときは,エラーメッセージの表示情報を構成し,それを表示制御部108で表示を行なうために利用する表示バッファとしての表示情報保存部107に送り,ディスプレイに表示する。
【0112】そして,表示情報構成部106は,選択された印刷出力装置が使用可能であるときには,装備機能および装置の状態の解析結果に従って表示情報を生成して,新たに選択された印刷出力装置についての印刷指示操作パネルを再構成し,表示制御部108を通じてディスプレイに表示する。この印刷指示操作パネルは,予め,ネットワークに接続されている複数の印刷出力装置に共通に用意されている基準操作画面から生成される。
【0113】この基準操作画面は,ネットワークに接続された複数の印刷出力装置の装備機能や状態情報など,印刷指示操作に関連する情報を装置情報管理部101が取得するので,その取得した情報に基づいて,すべての印刷指示操作項目をカバーするように,表示情報構成部106において,予め構成されて保存されている。
【0114】なお,この基準操作画面の情報は,この実施の形態のように,ネットワークに接続された印刷出力装置から取得した装備機能や状態情報に基づいて自動的に予め作成しておくのではなく,ネットワークに接続される複数の印刷出力装置の装備機能や状態情報を予めすべて考慮して,それらすべてをカバーするように作成したものを用意するようにしてもよい。
【0115】この場合,印刷指示操作パネルは,複数の印刷出力装置に共通にするために,印刷出力装置の機能数に関係なく,一定の大きさを保つように,この印刷指示操作パネルを複数枚に分割して表示する構成とする。この例では,複数枚に分割した印刷指示操作パネルのそれぞれを,「基本」「その他」「一覧」「フィニッシング」のようにカテゴリーにより分類する。
【0116】すなわち,この例では,印刷指示操作パネルは,基本機能群の操作パネルと,その他の機能群の操作パネルと,基本機能群とその他機能群のすべての機能を一面に表示する一覧操作パネルとに分割する。さらに,この例の場合,基本機能群およびその他の機能群に含まれない,印刷処理の前処理や後処理,例えば後処理としてのフィニッシング処理などのその他のオプションについては,そのオプションの機能についての操作パネルを別に用意する。その他のオプションとしては,印刷処理の前処理としてのスキャナーやイメージリーダーによる原稿読み取り機能もあるが,この実施の形態では,フィニッシング処理の機能についてのみ説明することとする。
【0117】基本機能群の操作パネルの例を図7に,その他の機能群の操作パネルの例を図8に,一覧操作パネルの例を図9に,それぞれ示す。また,その他のオプションの例としてのフィニッシング処理の操作パネルの例を図10に示す。
【0118】これら図7?図10において,31はカテゴリー表示欄である。この例においては,前述したように,「基本」「その他」「一覧」「フィニッシング」のカテゴリーを選択するためのカテゴリーボタンが,このカテゴリー表示欄31に表示される。表示情報構成部106は,「基本」「その他」「一覧」のカテゴリーボタンの表示情報を備えると共に,その他の機能群に含まれないフィニッシング処理等のオプション機能等については,そのそれぞれ用のカテゴリーボタンの表示情報を予め備えている。
【0119】ただし,この例の場合,表示スペースの関係で,カテゴリー表示欄31に表示可能なカテゴリーボタンは3個であり,スクロール操作部31aを操作して,上下にスクロールさせることにより,選択可能な操作パネルを呼び出すカテゴリーボタンを,このカテゴリー表示欄31に表示させることができる。
【0120】そして,このカテゴリー表示欄31中の一つのボタンをマウス等で指定すると,図7?図10で斜線を付して示すように,そのカテゴリーボタンが選択されたことが例えば反転表示などにより示され,表示制御部107は,そのカテゴリーの印刷指示操作パネルをウインドウ表示する。
【0121】なお,「基本」「その他」「一覧」のカテゴリーボタンは,常にカテゴリー表示欄31に表示されるが,後述もするように,フィニッシング処理を選択するカテゴリーボタンは,フィニッシング処理機能を装備している印刷出力装置が利用者により選択されたときにのみ,このカテゴリー表示欄31に表示するようにしている。したがって,ユーザが例えばフィニッシング処理機能を有しない印刷出力装置を選択したときには,カテゴリー表示欄31には,「フィニッシング」のカテゴリーボタンは現れず,このため,図10のフィニッシング処理の操作パネルも表示されることはなく,ユーザによるフィニッシング処理に関する設定が不可となる。
【0122】各操作パネルの表示欄32には,各カテゴリーにおける各機能の設定項目内容が表示される。また,表示欄33は印刷指示対象のファイル名を表示する欄であり,表示欄34は印刷指示装置から発行した印刷ジョブの現在の状態を表示するための欄である。さらに,表示欄35は各種のボタンアイコンの表示欄であり,また,表示欄36には,その操作パネルが対応する印刷出力装置の現在の状態がメッセージ表示される。
【0123】図7に示すように,基本機能群の操作パネルにおいて,表示される機能は,この例では,
・部数指定 ・両面/片面指定 ・綴じ方向指定 ・綴じ代位置指定 ・綴じ代量指定 ・用紙サイズ指定 ・拡大縮小率指定 ・丁合する/しない ・排紙トレイ指定 ・オフセットスタック指定ならびに指定単位とされている。
【0124】また,その他の機能群の操作パネルにおいて,表示される機能は,この例では図8に示すように,
・Nup(Nin1)指定 ・仕分紙指定 ・セキュリティプリント指定ならびにそのパスワードである。
【0125】ここで,セキュリティプリントの機能とは,印刷データにパスワードを付帯してジョブを発行する機能である。セキュリティプリントの機能が設定されると,プリンタにおいて,そのジョブが印刷される順番になっても通常は出力されないで,待機状態のままとなる。このジョブを印刷するためには,印刷される順番になった後で,プリンタでそのジョブを指定し,印刷指示操作パネルで設定したパスワードと一致するパスワードを入力しなければならない。
【0126】一覧操作パネルは,図9のように,上記の基本機能と,その他機能とを合わせた機能を,設定のし易さよりも一覧できることを重視したレイアウトデザインで表示する。
【0127】図10の例のフィニッシング処理についての操作パネルの表示欄32には,前述したフィニッシング処理の種類として「製本」および「ホチキス止め」と,そのそれぞれについての設定項目が表示される。
【0128】表示情報構成部106は,選択された印刷出力装置に対して,図9に示される基準操作画面の全機能をユーザーが設定可能の状態で印刷指示操作パネルを再構成するのではなく,装備機能・状態解析部105からの解析結果から,選択された印刷出力装置が装備する機能を判別し,装備していない機能は,使用不可として,ユーザーが設定を入力することができないような状態で印刷指示操作パネルの表示情報を再構成する。
【0129】例えば,装備機能ではないので設定不可とするように表示する方法としては,当該使用できない装備機能に関する印刷指示設定項目を印刷指示操作パネル上に表示しない方法,使用不能であるマークを付与して表示して,設定入力を不能または無効とする方法,シェード表示(他の印刷指示設定項目の表示に比べて濃度を薄くして表示)し,このシェード表示の印刷指示設定項目への設定を不能または無効とする方法などがある。
【0130】図7?図10の表示例では,基準操作画面の前記複数の設定項目のうち,装備していない機能の印刷指示設定項目をシェード表示して,ユーザーによる設定不能にして,印刷指示操作パネルを再構成している。また,例えば図10のフィニッシング処理の操作パネルのフィニッシング処理の種類である「製本」や「ホチキス止め」のような機能項目に,それぞれ下位の項目がある場合には,その機能項目を選択していないときには,その下位の項目はすべてシェード表示されており,前記上位の機能項目が選択されると,その下位の内の選択設定可能な項目のみがシェード表示から実表示に変わるようにされている。
【0131】なお,図7?図10において,○印は,各印刷指示設定項目の設定ボタンを示し,当該設定ボタンがマウスにより指示されて,その印刷指示設定項目が設定されると,この設定ボタンの表示が◎の表示に変わり,設定されたことがユーザーに知らされる。
【0132】さらに,表示情報構成部106は,印刷指示操作パネルをディスプレイ109の表示画面に表示するに当たって,後述するようにして,前回の印刷出力装置についての設定情報と,予め設定されている標準値(デフォルト値)とを用いて設定項目の初期設定の表示情報を生成する。
【0133】次に,表示制御部108は,出力先切り換え部103からの切り換え指示に従い,表示情報構成部106からの表示情報を表示情報保存部107に受け取り,エラーメッセージを印刷指示操作パネルとは別のウインドウで表示し,あるいは印刷指示操作パネルのウインドウを,再構成された印刷指示操作パネルの表示画面に切り換える。
【0134】表示制御部108は,また,出力先選択部102からの指示により印刷出力装置名リストを別のウインドウとして表示し,指示設定操作部112によるユーザーによる選択操作を受けて,選択された印刷出力装置名を出力先選択部102に送る。
【0135】そして,表示制御部108は,表示情報保存部107に保存された表示情報をディスプレイ109に表示する。さらに,表示制御部108は,印刷指示操作パネルの表示画面において,例えばマウスからなる指示設定操作部112からの設定操作を受付け,表示情報保存部107の表示情報を設定に応じたものに変更して,ディスプレイ109の画面にその設定状態を反映させると共に,設定された印刷指示情報を設定情報保存部110に保存する。
【0136】設定情報保存部110は,出力先切り換え部103からの切り換え指示を受けたときに,保存されていた前回の設定情報を表示情報構成部106に渡した後クリアする。
【0137】デフォルト値保存部111は,ネットワーク上に配置されているすべての印刷出力装置の設定項目についての標準値(デフォルト値)が保存されている。この場合,このデフォルト値保存部111のデフォルト値は,すべての印刷出力装置に共通的に用いるもの,印刷出力装置の種類ごとに用いるもの,個々の印刷出力装置毎に用いるものなどと区分けして,ユーザーにより設定と変更が可能とされている。
【0138】表示情報構成部106は,設定情報保存部110からの前回の設定情報を取得して,前回の設定値が切り換え後も有効な場合には,その前回の設定値を今回の設定値として再構成された印刷指示操作パネル中の設定情報とする。前回の設定値が有効でない場合には,設定値を変更する。例えば,前回の印刷出力装置には,ソータが付いていて,ソータが選択された設定状態になっていたが,今回の印刷出力装置にはソータが付いていない場合には,ソータの設定値は,「使用しない」を設定する。
【0139】また,表示情報構成部106は,再構成した印刷指示操作パネルに,前回の印刷指示操作パネルにはない設定項目など,未設定の設定項目があるときには,デフォルト値保存部111からのデフォルト値をその設定項目の設定情報として,表示情報に含める。
【0140】そして,決定した初期設定情報を設定情報保存部110に送り,その初期設定情報を保存する。
【0141】ここで,前述したように,印刷指示操作パネルに表示される表示情報は,選択された印刷出力装置の装備機能や状態に対応する情報であるので,設定情報保存部110に保存される設定情報のすべてが印刷指示操作パネルに表示される表示情報として表されるわけではない。例えば,前述したソータなどのオプションが,選択された印刷出力装置に存在しない場合には,これらの選択ボタン表示は操作パネルには存在しないあるいはシェード表示され,設定不可とされるのは前述した通りである。このように,装備しない機能などを,操作パネルに表示しないことにより,ユーザーによる誤設定入力を不可とすることができる。
【0142】こうして,新たに選択された印刷出力装置に対する印刷指示操作パネルを再構成するときに,前回と同じ印刷指示設定項目については,前回の設定情報をそのまま使用できるので,非常に便利である。また,前になかった印刷指示設定項目については,予め用意されているデフォルト値(標準値)が設定情報として自動的に設定されるので,この点でも使い勝手がよい。
【0143】印刷指示操作パネルで設定情報を変更する場合には,指示設定操作部112による設定操作により,その設定情報の変更が可能である。変更された設定情報については,設定情報保存部110の対応する情報が,その変更された設定情報に書き替えられる。
【0144】以上のようにして表示制御部108を通じて設定された印刷指示設定情報は,設定情報保存部110に保存される。そして,指示設定操作部112による印刷ジョブの発行要求の操作入力があると,設定情報保存部110は,表示制御部108からのその発行要求指示を受けて,保存している設定情報から印刷指示情報を生成し,ジョブ発行部123に渡す。
【0145】プリンタドライバ121は,出力先切り換え部103からの選択された印刷出力装置名を伴う切り換え指示により,動作中のアプリケーションプログラム120に印刷出力装置の切り換え通知メッセージを発行する。また,プリンタドライバ121は,アプリケーションプログラム120からの指示に基づき,アプリケーションプログラム120から印刷処理データを受け取り,選択された印刷出力装置に対応して印刷データ(例えばポストスクリプトなどのページ記述言語)を生成し,印刷データ保存部122に渡す。また,プリンタドライバ121は,印刷データの生成に必要な,例えば出力解像度などの情報は,装備機能・状態解析部105から取得する。」

オ 「【0192】[出力先選択パネルの表示]ある印刷出力装置に対する印刷指示操作パネルが起動されている状態から,ユーザーが他の印刷出力装置に,印刷出力先を変更する場合には,まず,ディスプレイ109の画面において,印刷出力先の変更指示をマウス112で行う。すると,出力先選択部102は,装置情報管理部101からネットワーク上のすべての,あるいは予め選択された複数の印刷出力装置名のリストを取得し,表示制御部108を介してディスプレイ109の画面に,例えば図32に示すような当該印刷出力装置名リストからなる出力先選択/切り換えパネルのウインドウ表示を行う。
【0193】ユーザーは,この出力先選択/切り換えパネルにおいて,マウス112を操作して,選択したい印刷出力装置名を指示する。すると,例えば選択された印刷出力装置名がハイライト表示されて,それが確認される。この確認後,ユーザーが「選択ボタン」をマウス112でクリックあるいは印刷出力装置名をダブルクリックして,選択したい印刷出力装置名の確定指示をすると,その印刷出力装置名からなる選択情報が表示制御部108から出力先選択部102に送られる。出力先選択部102は,その選択指示に基づいて選択された印刷出力装置名を切り換え指示と共に,出力先切り換え部103に渡す。これにより,出力先の切り換えが開始されることになり,図33に示すような処理手順が実行される。
【0194】すなわち,出力先切り換え部103からの切り換え指示と印刷出力装置名とに基づいて,装置情報取得部104は,まず,装置情報管理部101から選択した印刷出力装置の状態情報を取得して,装備機能・状態解析部105に渡す(ステップS1)。装備機能・状態解析部105は,選択された印刷出力装置の状態の解析をし,使用可能かどうかを判断する(ステップS2)。
【0195】選択された印刷出力装置が,例えば故障中であったり,起動されておらずに,使用可能でない状態のときには,表示情報構成部106にそれを通知する。すると,表示情報構成部106は,例えば「使用可能でない出力先は選択できません」というメッセージの表示情報を生成し,表示制御部108を通じてディスプレイ109の画面に,そのメッセージを表示し(ステップS11),この出力先の切り換え時の処理ルーチンを終了する。
【0196】選択された印刷出力装置が使用可能であれば,装備機能・状態解析部105はその旨を装置情報取得部104に知らせると共に,この状態情報を後で表示用として使用するために表示情報構成部106に渡して一時記憶しておく。そして,装置情報取得部104は,選択された印刷出力装置の装置情報を装置情報管理部101から取得する(ステップS3)。
【0197】装備機能・状態解析部105は,装置情報取得部104で取得した装置情報を受け取って解析し,使用できない機能項目については,使用不可の印(例えばフラグ)を付加して,表示情報構成部106に引き渡す(ステップS4)。 表示情報構成部106は,前述したようにして,選択された印刷出力装置の印刷指示操作パネルの表示項目を再構成する(ステップS5)。
【0198】この印刷指示操作パネルの再構成の際に,基本機能群およびその他の機能群中において,使用できない機能の印刷指示設定項目については,前述したように,この例ではシェード表示を行ない,利用者が選択設定できないようにする。
【0199】また,選択された印刷出力装置が,基本機能群およびその他機能群に含まれないフィニッシング処理の機能を具備している場合には,カテゴリー表示欄31に「フィニッシング」のカテゴリーボタンを表示するようにすると共に,図10に示したフィニッシング処理の操作パネルを形成する。選択された印刷出力装置が,フィニッシング処理の機能を具備していない場合には,カテゴリー表示欄31には「フィニッシング」のカテゴリーボタンを表示しないようにし,また,フィニッシング処理の操作パネルは形成しない。
【0200】次に,前述したように,設定情報保存部110の前回の設定情報を用いて使用可能な機能の印刷指示設定項目の設定情報を決定する(ステップS6)。次に,使用可能な機能の印刷指示設定項目について未設定の項目があるか否かを判断し(ステップS7),未設定の項目があれば,デフォルト値保存部111のデフォルト値の情報を用いて設定情報を決定する(ステップS8)。
【0201】表示制御部108は,,印刷指示操作パネルの表示情報をディスプレイ109に表示するが,シェードされている機能の印刷指示設定項目については,設定不可と認識し,その後のユーザーの設定入力に対して設定不可の対応をする(ステップS9)。
【0202】次に,出力先切り換え部103からの切り換え指示によりプリンタドライバ121を,選択された印刷出力装置に適合したものに変更し(ステップS10),この出力先の切り換え時の処理ルーチンを終了する。」

カ 「【0221】以上は,印刷指示操作パネルが起動されている状態からの出力先切り換えについての説明であるが,実際的には,ユーザーは,まず,印刷指示操作パネルを起動しなければならない。ユーザーは,印刷指示装置200のディスプレイ109の画面における操作指示により,印刷指示操作パネルを起動するが,その際には,前回終了時に設定されていた印刷出力装置名を記録しているファイルにアクセスし,そのファイルから前回終了時の印刷出力装置名を獲得した上で,その印刷出力装置を最初に選択したものとして立ち上がる。
【0222】また,上述の例では,設定情報保存部110の前回の保存情報を用いて,印刷指示操作パネルの設定項目の初期的な設定を行なうようにしたが,ユーザーが保存を希望する設定情報は,それぞれ識別ファイル名を付与して設定情報保存部110に保存しておき,ユーザーがその保存された過去の設定情報ファイルの中から,希望するものを選択し,その選択された設定情報により印刷指示操作パネルの各設定項目の初期的な設定を行なうようにすると,さらに,よい。この場合に,過去の設定情報の内容をウインドウ表示するなどして,ユーザーが知ることができるようにすると,便利である。
【0223】以上説明した印刷指示装置によれば,ユーザーは印刷出力装置名を選択するだけで利用する印刷出力装置を切り換えて,印刷出力先として指定して,印刷指示することができる。そして,利用しようとするプリンタの,その時点の装備機能を確実に把握した上で,印刷指示を行うことができる。
【0224】また,利用しようとした印刷出力装置に所望の機能がない場合,容易に他の印刷出力装置に切り換えられる。さらに,利用中に故障が発生した場合などにも,その時点で他の印刷出力装置へ切り換えることができる。また,印刷指示を行う前に予めプリンタの常置を確認したい場合も,容易に確認できる。
【0225】また,印刷出力装置が印刷処理の後処理のフィニッシング処理の機能を有しているか否かを確実に検知することができると共に,印刷出力装置がフィニッシング処理の機能を有しているときには,そのフィニッシング処理機能を遠隔位置から指定して利用することができる。また,印刷出力装置がフィニッシング処理機能を備えていない場合には,ユーザーによるフィニッシング処理の設定ができないようにしているので,誤設定を確実に防止できる。」

キ 「【0235】なお,以上の例では,印刷指示装置100の装置情報管理部101は,印刷管理装置200から,ネットワークLAN10を通じて各印刷出力装置の識別子情報および装置情報を取得するようにしたが,オペレータが,印刷指示装置機能部の装置情報管理部に対して,これらのネットワーク上の複数個の印刷出力装置に関する上記情報を入力して登録するようにしてもよい。」

以上によれば,甲第1号証には,次の発明(以下,「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

[甲1発明]
「複数の印刷出力装置301,302,303と通信ネットワーク経由で接続される印刷指示装置100であって,
装置情報管理部101,出力先選択部102,出力先切り換え部103,装置情報取得部104,装備機能・状態解析部105,表示情報構成部106,表示情報保存部107を含む表示制御部108,ディスプレイ109,設定情報保存部110,デフォルト値保存部111,指示設定操作部112,プリンタドライバ121,印刷データ保存部122,ジョブ発行部123,通信部130を備え,
ユーザーは,まず,印刷指示操作パネルを起動し,その際には,前回終了時に設定されていた印刷出力装置名を記録しているファイルにアクセスし,そのファイルから前回終了時の印刷出力装置名を獲得した上で,その印刷出力装置を最初に選択したものとして立ち上がり,
ある印刷出力装置に対する印刷指示操作パネルが起動されている状態から,ユーザーが他の印刷出力装置に,印刷出力先を変更する場合には,まず,ディスプレイ109の画面において,印刷出力先の変更指示をマウス112で行い,ディスプレイ109の画面に,印刷出力装置名リストからなる出力先選択/切り換えパネルのウインドウ表示を行い,
ユーザーは,この出力先選択/切り換えパネルにおいて,マウス112を操作して,選択したい印刷出力装置名の確定指示をすると,その印刷出力装置名からなる選択情報が表示制御部108から出力先選択部102に送られ,出力先選択部102は,その選択指示に基づいて選択された印刷出力装置名を切り換え指示と共に,出力先切り換え部103に渡し,これにより,出力先の切り換えが開始されることになり,
出力先切り換え部103からの切り換え指示と印刷出力装置名とに基づいて,装置情報取得部104は,まず,装置情報管理部101から選択した印刷出力装置の状態情報を取得して,装備機能・状態解析部105に渡し(ステップS1),装備機能・状態解析部105は,選択された印刷出力装置の状態の解析をし,使用可能かどうかを判断し(ステップS2),
選択された印刷出力装置が使用可能であれば,装備機能・状態解析部105はその旨を装置情報取得部104に知らせると共に,この状態情報を後で表示用として使用するために表示情報構成部106に渡して一時記憶しておき,装置情報取得部104は,選択された印刷出力装置の装置情報を装置情報管理部101から取得し(ステップS3),
装備機能・状態解析部105は,装置情報取得部104で取得した装置情報を受け取って解析し,使用できない機能項目については,使用不可の印(例えばフラグ)を付加して,表示情報構成部106に引き渡し(ステップS4),表示情報構成部106は,選択された印刷出力装置の印刷指示操作パネルの表示項目を再構成し(ステップS5),
この印刷指示操作パネルの再構成の際に,基本機能群およびその他の機能群中において,使用できない機能の印刷指示設定項目については,シェード表示などを行ない,利用者が選択設定できないようにし,
次に,設定情報保存部110の前回の設定情報を用いて使用可能な機能の印刷指示設定項目の設定情報を決定し(ステップS6),次に,使用可能な機能の印刷指示設定項目について未設定の項目があるか否かを判断し(ステップS7),未設定の項目があれば,デフォルト値保存部111のデフォルト値の情報を用いて設定情報を決定し(ステップS8),
表示制御部108は,印刷指示操作パネルの表示情報をディスプレイ109に表示するが,シェードされている機能の印刷指示設定項目については,設定不可と認識し,その後のユーザーの設定入力に対して設定不可の対応をし(ステップS9),
次に,出力先切り換え部103からの切り換え指示によりプリンタドライバ121を,選択された印刷出力装置に適合したものに変更し(ステップS10),出力先の切り換え時の処理ルーチンを終了し,
また,上述の例では,設定情報保存部110の前回の保存情報を用いて,印刷指示操作パネルの設定項目の初期的な設定を行なうようにしたが,ユーザーが保存を希望する設定情報は,それぞれ識別ファイル名を付与して設定情報保存部110に保存しておき,ユーザーがその保存された過去の設定情報ファイルの中から,希望するものを選択し,その選択された設定情報により印刷指示操作パネルの各設定項目の初期的な設定を行なうようにするとさらによく,この場合に,過去の設定情報の内容をウインドウ表示するなどして,ユーザーが知ることができるようにすると便利であり,
印刷指示操作パネルは,複数の印刷出力装置に共通にするために,印刷出力装置の機能数に関係なく,一定の大きさを保つように,この印刷指示操作パネルを複数枚に分割して表示する構成とし,例えば,複数枚に分割した印刷指示操作パネルのそれぞれを,「基本」「その他」「一覧」「フィニッシング」のようにカテゴリーにより分類し,「基本」「その他」「一覧」「フィニッシング」のカテゴリーを選択するためのカテゴリーボタンが表示され,一つのボタンをマウス等で指定すると,表示制御部107は,そのカテゴリーの印刷指示操作パネルをウインドウ表示するものであり,
基本機能群の操作パネルにおいて,表示される機能は,例えば,・部数指定 ・両面/片面指定 ・綴じ方向指定 ・綴じ代位置指定 ・綴じ代量指定 ・用紙サイズ指定 ・拡大縮小率指定 ・丁合する/しない ・排紙トレイ指定 ・オフセットスタック指定ならびに指定単位とされており,
オペレータが,装置情報管理部101に対して,ネットワーク上の複数個の印刷出力装置の識別子情報および装置情報を入力して登録するようにしてもよい,
印刷指示装置100。」

また,上記甲1発明の印刷指示装置の動作は情報処理方法として捉えることができるから,甲第1号証には,次の発明(以下,「甲1方法発明」という。)も記載されていると認められる。

[甲1方法発明]
「複数の印刷出力装置301,302,303と通信ネットワーク経由で接続される印刷指示装置100の情報処理方法であって,
印刷指示装置100は,装置情報管理部101,出力先選択部102,出力先切り換え部103,装置情報取得部104,装備機能・状態解析部105,表示情報構成部106,表示情報保存部107を含む表示制御部108,ディスプレイ109,設定情報保存部110,デフォルト値保存部111,指示設定操作部112,プリンタドライバ121,印刷データ保存部122,ジョブ発行部123,通信部130を備え,
ユーザーは,まず,印刷指示操作パネルを起動し,その際には,前回終了時に設定されていた印刷出力装置名を記録しているファイルにアクセスし,そのファイルから前回終了時の印刷出力装置名を獲得した上で,その印刷出力装置を最初に選択したものとして立ち上がり,
ある印刷出力装置に対する印刷指示操作パネルが起動されている状態から,ユーザーが他の印刷出力装置に,印刷出力先を変更する場合には,まず,ディスプレイ109の画面において,印刷出力先の変更指示をマウス112で行い,ディスプレイ109の画面に,印刷出力装置名リストからなる出力先選択/切り換えパネルのウインドウ表示を行い,
ユーザーは,この出力先選択/切り換えパネルにおいて,マウス112を操作して,選択したい印刷出力装置名の確定指示をすると,その印刷出力装置名からなる選択情報が表示制御部108から出力先選択部102に送られ,出力先選択部102は,その選択指示に基づいて選択された印刷出力装置名を切り換え指示と共に,出力先切り換え部103に渡し,これにより,出力先の切り換えが開始されることになり,
出力先切り換え部103からの切り換え指示と印刷出力装置名とに基づいて,装置情報取得部104は,まず,装置情報管理部101から選択した印刷出力装置の状態情報を取得して,装備機能・状態解析部105に渡し(ステップS1),装備機能・状態解析部105は,選択された印刷出力装置の状態の解析をし,使用可能かどうかを判断し(ステップS2),
選択された印刷出力装置が使用可能であれば,装備機能・状態解析部105はその旨を装置情報取得部104に知らせると共に,この状態情報を後で表示用として使用するために表示情報構成部106に渡して一時記憶しておき,装置情報取得部104は,選択された印刷出力装置の装置情報を装置情報管理部101から取得し(ステップS3),
装備機能・状態解析部105は,装置情報取得部104で取得した装置情報を受け取って解析し,使用できない機能項目については,使用不可の印(例えばフラグ)を付加して,表示情報構成部106に引き渡し(ステップS4),表示情報構成部106は,選択された印刷出力装置の印刷指示操作パネルの表示項目を再構成し(ステップS5),
この印刷指示操作パネルの再構成の際に,基本機能群およびその他の機能群中において,使用できない機能の印刷指示設定項目については,シェード表示などを行ない,利用者が選択設定できないようにし,
次に,設定情報保存部110の前回の設定情報を用いて使用可能な機能の印刷指示設定項目の設定情報を決定し(ステップS6),次に,使用可能な機能の印刷指示設定項目について未設定の項目があるか否かを判断し(ステップS7),未設定の項目があれば,デフォルト値保存部111のデフォルト値の情報を用いて設定情報を決定し(ステップS8),
表示制御部108は,印刷指示操作パネルの表示情報をディスプレイ109に表示するが,シェードされている機能の印刷指示設定項目については,設定不可と認識し,その後のユーザーの設定入力に対して設定不可の対応をし(ステップS9),
次に,出力先切り換え部103からの切り換え指示によりプリンタドライバ121を,選択された印刷出力装置に適合したものに変更し(ステップS10),出力先の切り換え時の処理ルーチンを終了し,
また,上述の例では,設定情報保存部110の前回の保存情報を用いて,印刷指示操作パネルの設定項目の初期的な設定を行なうようにしたが,ユーザーが保存を希望する設定情報は,それぞれ識別ファイル名を付与して設定情報保存部110に保存しておき,ユーザーがその保存された過去の設定情報ファイルの中から,希望するものを選択し,その選択された設定情報により印刷指示操作パネルの各設定項目の初期的な設定を行なうようにするとさらによく,この場合に,過去の設定情報の内容をウインドウ表示するなどして,ユーザーが知ることができるようにすると便利であり,
印刷指示操作パネルは,複数の印刷出力装置に共通にするために,印刷出力装置の機能数に関係なく,一定の大きさを保つように,この印刷指示操作パネルを複数枚に分割して表示する構成とし,例えば,複数枚に分割した印刷指示操作パネルのそれぞれを,「基本」「その他」「一覧」「フィニッシング」のようにカテゴリーにより分類し,「基本」「その他」「一覧」「フィニッシング」のカテゴリーを選択するためのカテゴリーボタンが表示され,一つのボタンをマウス等で指定すると,表示制御部107は,そのカテゴリーの印刷指示操作パネルをウインドウ表示するものであり,
基本機能群の操作パネルにおいて,表示される機能は,例えば,・部数指定 ・両面/片面指定 ・綴じ方向指定 ・綴じ代位置指定 ・綴じ代量指定 ・用紙サイズ指定 ・拡大縮小率指定 ・丁合する/しない ・排紙トレイ指定 ・オフセットスタック指定ならびに指定単位とされており,
オペレータが,装置情報管理部101に対して,ネットワーク上の複数個の印刷出力装置の識別子情報および装置情報を入力して登録するようにしてもよい,
印刷指示装置100の情報処理方法。」

さらに,上記甲1方法発明の情報処理方法は,コンピュータのプログラムにより実行されるものであり,該プログラムは記憶媒体に記憶されるものであることは明らかであるから,甲第1号証には,次の発明(以下,「甲1媒体発明」という。)も記載されていると認められる。

[甲1媒体発明]
「複数の印刷出力装置301,302,303と通信ネットワーク経由で接続される印刷指示装置100の情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記憶した記憶媒体であって,
印刷指示装置100は,装置情報管理部101,出力先選択部102,出力先切り換え部103,装置情報取得部104,装備機能・状態解析部105,表示情報構成部106,表示情報保存部107を含む表示制御部108,ディスプレイ109,設定情報保存部110,デフォルト値保存部111,指示設定操作部112,プリンタドライバ121,印刷データ保存部122,ジョブ発行部123,通信部130を備え,
ユーザーは,まず,印刷指示操作パネルを起動し,その際には,前回終了時に設定されていた印刷出力装置名を記録しているファイルにアクセスし,そのファイルから前回終了時の印刷出力装置名を獲得した上で,その印刷出力装置を最初に選択したものとして立ち上がり,
ある印刷出力装置に対する印刷指示操作パネルが起動されている状態から,ユーザーが他の印刷出力装置に,印刷出力先を変更する場合には,まず,ディスプレイ109の画面において,印刷出力先の変更指示をマウス112で行い,ディスプレイ109の画面に,印刷出力装置名リストからなる出力先選択/切り換えパネルのウインドウ表示を行い,
ユーザーは,この出力先選択/切り換えパネルにおいて,マウス112を操作して,選択したい印刷出力装置名の確定指示をすると,その印刷出力装置名からなる選択情報が表示制御部108から出力先選択部102に送られ,出力先選択部102は,その選択指示に基づいて選択された印刷出力装置名を切り換え指示と共に,出力先切り換え部103に渡し,これにより,出力先の切り換えが開始されることになり,
出力先切り換え部103からの切り換え指示と印刷出力装置名とに基づいて,装置情報取得部104は,まず,装置情報管理部101から選択した印刷出力装置の状態情報を取得して,装備機能・状態解析部105に渡し(ステップS1),装備機能・状態解析部105は,選択された印刷出力装置の状態の解析をし,使用可能かどうかを判断し(ステップS2),
選択された印刷出力装置が使用可能であれば,装備機能・状態解析部105はその旨を装置情報取得部104に知らせると共に,この状態情報を後で表示用として使用するために表示情報構成部106に渡して一時記憶しておき,装置情報取得部104は,選択された印刷出力装置の装置情報を装置情報管理部101から取得し(ステップS3),
装備機能・状態解析部105は,装置情報取得部104で取得した装置情報を受け取って解析し,使用できない機能項目については,使用不可の印(例えばフラグ)を付加して,表示情報構成部106に引き渡し(ステップS4),表示情報構成部106は,選択された印刷出力装置の印刷指示操作パネルの表示項目を再構成し(ステップS5),
この印刷指示操作パネルの再構成の際に,基本機能群およびその他の機能群中において,使用できない機能の印刷指示設定項目については,シェード表示などを行ない,利用者が選択設定できないようにし,
次に,設定情報保存部110の前回の設定情報を用いて使用可能な機能の印刷指示設定項目の設定情報を決定し(ステップS6),次に,使用可能な機能の印刷指示設定項目について未設定の項目があるか否かを判断し(ステップS7),未設定の項目があれば,デフォルト値保存部111のデフォルト値の情報を用いて設定情報を決定し(ステップS8),
表示制御部108は,印刷指示操作パネルの表示情報をディスプレイ109に表示するが,シェードされている機能の印刷指示設定項目については,設定不可と認識し,その後のユーザーの設定入力に対して設定不可の対応をし(ステップS9),
次に,出力先切り換え部103からの切り換え指示によりプリンタドライバ121を,選択された印刷出力装置に適合したものに変更し(ステップS10),出力先の切り換え時の処理ルーチンを終了し,
また,上述の例では,設定情報保存部110の前回の保存情報を用いて,印刷指示操作パネルの設定項目の初期的な設定を行なうようにしたが,ユーザーが保存を希望する設定情報は,それぞれ識別ファイル名を付与して設定情報保存部110に保存しておき,ユーザーがその保存された過去の設定情報ファイルの中から,希望するものを選択し,その選択された設定情報により印刷指示操作パネルの各設定項目の初期的な設定を行なうようにするとさらによく,この場合に,過去の設定情報の内容をウインドウ表示するなどして,ユーザーが知ることができるようにすると便利であり,
印刷指示操作パネルは,複数の印刷出力装置に共通にするために,印刷出力装置の機能数に関係なく,一定の大きさを保つように,この印刷指示操作パネルを複数枚に分割して表示する構成とし,例えば,複数枚に分割した印刷指示操作パネルのそれぞれを,「基本」「その他」「一覧」「フィニッシング」のようにカテゴリーにより分類し,「基本」「その他」「一覧」「フィニッシング」のカテゴリーを選択するためのカテゴリーボタンが表示され,一つのボタンをマウス等で指定すると,表示制御部107は,そのカテゴリーの印刷指示操作パネルをウインドウ表示するものであり,
基本機能群の操作パネルにおいて,表示される機能は,例えば,・部数指定 ・両面/片面指定 ・綴じ方向指定 ・綴じ代位置指定 ・綴じ代量指定 ・用紙サイズ指定 ・拡大縮小率指定 ・丁合する/しない ・排紙トレイ指定 ・オフセットスタック指定ならびに指定単位とされており,
オペレータが,装置情報管理部101に対して,ネットワーク上の複数個の印刷出力装置の識別子情報および装置情報を入力して登録するようにしてもよい,
印刷指示装置100の情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記憶した記憶媒体。」

(2) 対比・判断
ア 本件発明1について
(ア) 本件発明1と甲1発明との対比
a 甲1発明の「複数の印刷出力装置301,302,303と通信ネットワーク経由で接続される印刷指示装置100」は,「印刷装置とネットワーク経由で接続される情報処理装置」といえ,本件発明1と甲1発明は,「印刷装置とネットワーク経由で接続される情報処理装置」である点で一致する。

b 甲1発明は,「ある印刷出力装置に対する印刷指示操作パネルが起動されている状態から,ユーザーが他の印刷出力装置に,印刷出力先を変更する場合には,・・・マウス112を操作して,選択したい印刷出力装置名の確定指示をすると,・・・選択された印刷出力装置の印刷指示操作パネルの表示項目を再構成し,・・・この印刷指示操作パネルの再構成の際に,・・・設定情報保存部110の前回の設定情報を用いて使用可能な機能の印刷指示設定項目の設定情報を決定」するものであって,「また,上述の例では,設定情報保存部110の前回の保存情報を用いて,印刷指示操作パネルの設定項目の初期的な設定を行なうようにしたが,ユーザーが保存を希望する設定情報は,それぞれ識別ファイル名を付与して設定情報保存部110に保存しておき,ユーザーがその保存された過去の設定情報ファイルの中から,希望するものを選択し,その選択された設定情報により印刷指示操作パネルの各設定項目の初期的な設定を行なうようにするとさらによく,この場合に,過去の設定情報の内容をウインドウ表示するなどして,ユーザーが知ることができるようにすると便利であ」るものであるから,保存された過去の設定情報ファイルの中から,希望するものを選択して読み出す読み出し手段を有することは明らかであり,また,該設定情報ファイルは,印刷指示操作パネルの各設定項目の初期的な設定を行なうためのものであるから,印刷に関わる複数の設定内容を一括して設定するための複合設定といえる。
したがって,甲1発明は,本件発明1の「印刷に関わる複数の設定内容を一括して変更するための複合設定をメモリから読み出す読み出し手段」と,「印刷に関わる複数の設定内容を一括して設定するための複合設定をメモリから読み出す読み出し手段」といえる点では共通する手段を有しているといえる。
しかしながら,「一括して設定するための複合設定」が,本件発明1では,「一括して変更するための複合設定」であるのに対し,甲1発明では,印刷指示操作パネルの各設定項目の初期的な設定を行なうものであり,「一括して変更するための複合設定」であるといえるか否かは明らかでない点で,両者は相違する。

c 甲1発明は,「印刷指示操作パネルの再構成の際に,基本機能群およびその他の機能群中において,使用できない機能の印刷指示設定項目については,シェード表示などを行ない,利用者が選択設定できないようにし,次に,設定情報保存部110の前回の設定情報を用いて使用可能な機能の印刷指示設定項目の設定情報を決定」するものであり,前回の設定情報を用いて使用可能ではない機能の設定項目は設定しないもの,例えば,甲第1号証の段落【0138】(上記(1)エ)の記載によれば,前回の印刷出力装置には,ソータが付いていて,ソータが選択された設定状態になっていたが,今回の印刷出力装置にはソータが付いていない場合には,ソータの設定値は,「使用しない」を設定するものであり,また,該設定により再構成された印刷指示操作パネルが表示されるから,甲1発明は,本件発明1の「印刷装置に装着されるオプションの情報を基に,読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが可能であるか否かを確認する確認手段」と,「読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが可能であることが確認された場合は,読みだされた複合設定に対応する設定内容を印刷設定画面に表示させ,
読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが不可能であることが確認された場合は,前記オプションを利用しない設定内容を印刷設定画面に表示させる表示制御手段」に相当する発明特定事項を有するといえる。
したがって,本件発明1と甲1発明とは,「印刷装置に装着されるオプションの情報を基に,読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが可能であるか否かを確認する確認手段と,
読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが可能であることが確認された場合は,読みだされた複合設定に対応する設定内容を印刷設定画面に表示させ,
読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが不可能であることが確認された場合は,前記オプションを利用しない設定内容を印刷設定画面に表示させる表示制御手段と,を有する」点で一致する。

以上,aないしcによれば,本件発明1と甲1発明の一致点及び相違点は次のとおりである。

[一致点]
印刷装置とネットワーク経由で接続される情報処理装置であって,
印刷に関わる複数の設定内容を一括して設定するための複合設定をメモリから読み出す読み出し手段と,
印刷装置に装着されるオプションの情報を基に,読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが可能であるか否かを確認する確認手段と,
読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが可能であることが確認された場合は,読みだされた複合設定に対応する設定内容を印刷設定画面に表示させ,
読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが不可能であることが確認された場合は,前記オプションを利用しない設定内容を印刷設定画面に表示させる表示制御手段と,を有する情報処理装置。

[相違点]
[相違点1-1]
本件発明1は,「印刷に関わる複数の設定内容を一括して変更するための複合設定をメモリから読み出す読み出し手段」を有するのに対し,甲1発明は,「印刷に関わる複数の設定内容を一括して設定するための複合設定をメモリから読み出す読み出し手段」を有するとはいえるものの,該複合設定が,「一括して変更するための複合設定」であるといえるか否かは明らかではない点。

[相違点1-2]
本件発明1は,「前記表示制御手段は,現在の設定内容が表示されている印刷設定画面に,複合設定の複数の選択候補を表示可能であり,
ユーザにより前記複数の選択候補に基づく複合設定の選択変更が行われる度に,選択された複合設定に関する前記読み出し手段による読み出しと,読み出された複合設定に関する前記確認手段による確認と,確認の結果に対応した前記表示制御手段による表示とを行う」ものであるのに対し,甲1発明は,そのようなものではない点。

(イ) 判断
まず,上記[相違点1-1]について検討する。
甲1発明は,「設定情報保存部110の前回の設定情報を用いて使用可能な機能の印刷指示設定項目の設定情報を決定し(ステップS6)」,「また,上述の例では,設定情報保存部110の前回の保存情報を用いて,印刷指示操作パネルの設定項目の初期的な設定を行なうようにしたが,ユーザーが保存を希望する設定情報は,それぞれ識別ファイル名を付与して設定情報保存部110に保存しておき,ユーザーがその保存された過去の設定情報ファイルの中から,希望するものを選択し,その選択された設定情報により印刷指示操作パネルの各設定項目の初期的な設定を行なうようにするとさらによ」いものであるから,甲1発明は,保存された過去の設定情報ファイルの中から選択した設定情報により印刷指示操作パネルの各設定項目の初期的な設定を行なうようにする態様も含んでいる。ここで,選択される過去の設定情報ファイルは,「複合設定の複数の選択候補」といえる。
このような印刷の設定において,複数の選択候補の中から1つを選択して設定をする場合,一旦,1つの候補を選択設定した後にその設定を変更したいという状況は普通に想定し得ることであり(例えば,用紙サイズ等を誤って設定してしまった場合など),逆に,一旦,選択設定をすると,その後は変更ができないようにするのは自然ではなく想定しにくい。
上記した「複合設定の複数の選択候補」から選択設定をする場合にも同様のことがいえるから,甲1発明において,保存された過去の設定情報ファイルの中から選択した設定情報により印刷指示操作パネルの各設定項目の初期的な設定を行なうようにする場合に,一旦,選択して設定した後にその設定を変更したいという状況で,再度,複数の選択候補から選択して設定を変更できるようにすること,すなわち,複合設定を「一括して変更するための複合設定」とすることは,当業者が容易に想到し得ることである。

次に,上記[相違点1-2]ついて検討する。
[相違点1-1]についての検討で述べたように,複合設定を「一括して変更するための複合設定」とした場合,設定を変更しようとして過去の設定情報ファイルの中から設定情報を選択するときには,すでに,表示制御手段が,一旦,設定した設定内容を印刷設定画面に表示させているので,このことは,本件発明1の「前記表示制御手段は,現在の設定内容が表示されている印刷設定画面に,複合設定の複数の選択候補を表示可能であ」ることに相当する。
また,設定を変更しようとして過去の設定情報ファイルの中から設定情報を選択して設定するときには,一旦,設定したときに行った「読み出し」,「確認」,「表示」と同様のことを行うのは明らかであり,このことは,本件発明1の「ユーザにより前記複数の選択候補に基づく複合設定の選択変更が行われる度に,選択された複合設定に関する前記読み出し手段による読み出しと,読み出された複合設定に関する前記確認手段による確認と,確認の結果に対応した前記表示制御手段による表示とを行う」ることに相当する。
したがって,[相違点1-1]についての検討で述べたように,複合設定を「一括して変更するための複合設定」とすると,その結果,[相違点1-2]に係る本件発明1の発明特定事項に至ることとなる。

よって,本件発明1は,甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

イ 本件発明2について
(ア) 本件発明2と甲1発明との対比
a 甲1発明の「オペレータが,装置情報管理部101に対して,ネットワーク上の複数個の印刷出力装置の識別子情報および装置情報を入力して登録する」手段は,本件発明2の「ユーザによるマニュアル設定を受け付けて前記登録オプション情報を更新する第2の更新手段」に相当し,この点で両者は一致する。

b 甲1発明において,「印刷指示操作パネルは,・・・例えば,複数枚に分割した印刷指示操作パネルのそれぞれを,「基本」「その他」「一覧」「フィニッシング」のようにカテゴリーにより分類し,「基本」「その他」「一覧」「フィニッシング」のカテゴリーを選択するためのカテゴリーボタンが表示され,一つのボタンをマウス等で指定すると,表示制御部107は,そのカテゴリーの印刷指示操作パネルをウインドウ表示するもの」であり,印刷指示操作パネルがプリンタドライバを操作するためのものであるのは明らかであるから,甲1発明の上記印刷指示操作パネルの設定は,本件発明2の「プリンタドライバを操作するための印刷設定画面に表示される複数の設定シートで設定された前記設定内容を組み合わせた設定である」「複合設定」に相当し,本件発明2と甲1発明は,「前記複合設定とは,プリンタドライバを操作するための印刷設定画面に表示される複数の設定シートで設定された前記設定内容を組み合わせた設定である」点で一致する。

c その他の点は上記ア(ア)と同様に対比でき,本件発明2と甲1発明とは,上記[相違点1-1]及び[相違点1-2]と同様の相違点があり,さらに,本件発明2は,「ユーザによる取得指示に応じて,印刷装置とのネットワークを介した通信によって当該印刷装置に実際に装着されているオプションの情報を取得して前記登録オプション情報を更新する第1の更新手段」を有するのに対し,甲1発明は,そのような手段を有していない点で両者は相違する。

以上,aないしcによれば,本件発明2と甲1発明の一致点,相違点は次のとおりである。

[一致点]
印刷装置とネットワーク経由で接続される情報処理装置であって,
印刷に関わる複数の設定内容を一括して設定するための複合設定をメモリから読み出す読み出し手段と,
印刷装置に装着されるオプションの情報である登録オプション情報を基に,読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが可能であるか否かを確認する確認手段と,
読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが可能であることが確認された場合は,読みだされた複合設定に対応する設定内容を印刷設定画面に表示させ,
読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが不可能であることが確認された場合は,前記オプションを利用しない設定内容を印刷設定画面に表示させる表示制御手段と,
ユーザによるマニュアル設定を受け付けて前記登録オプション情報を更新する第2の更新手段と,を有し,
前記複合設定とは,プリンタドライバを操作するための印刷設定画面に表示される複数の設定シートで設定された前記設定内容を組み合わせた設定であることを特徴とする情報処理装置。

[相違点]
[相違点1-1]
本件発明2は,「印刷に関わる複数の設定内容を一括して変更するための複合設定をメモリから読み出す読み出し手段」を有するのに対し,甲1発明は,「印刷に関わる複数の設定内容を一括して設定するための複合設定をメモリから読み出す読み出し手段」を有するとはいえるものの,該複合設定が,「一括して変更するための複合設定」であるといえるか否かは明らかではない点。

[相違点1-2]
本件発明2は,「前記表示制御手段は,現在の設定内容が表示されている印刷設定画面に,複合設定の複数の選択候補を表示可能であり,
ユーザにより前記複数の選択候補に基づく複合設定の選択変更が行われる度に,選択された複合設定に関する前記読み出し手段による読み出しと,読み出された複合設定に関する前記確認手段による確認と,確認の結果に対応した前記表示制御手段による表示とを行」うものであるのに対し,甲1発明は,そのようなものではない点。

[相違点2-1]
本件発明2は,「ユーザによる取得指示に応じて,印刷装置とのネットワークを介した通信によって当該印刷装置に実際に装着されているオプションの情報を取得して前記登録オプション情報を更新する第1の更新手段」を有するのに対し,甲1発明は,そのような手段を有していない点。

(イ) 判断
[相違点1-1]及び[相違点1-2]は,上記アで述べた[相違点1-1]及び[相違点1-2]と同じであり,同様の判断により,甲1発明において,[相違点1-1]及び[相違点1-2]に係る発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得ることである。

[相違点2-1]について検討する。
甲第1号証の【0088】,【0092】及び【0093】には,以下のように記載されている(上記(1)ウ及びエ)。

「【0088】装置情報提供部202は,・・・印刷出力装置301,302,303からオプション情報・・・を取得し,印刷指示装置100からの要求によりこれらの情報を含む装置情報を印刷指示装置100に提供する。」

「【0092】装置情報管理部101は,前述したように,・・・装置情報提供部202とから,通信部130を通じて・・・装置情報を取得して管理する。・・・
【0093】前記情報を取得するために,印刷指示装置100から印刷管理装置200に対して要求を出す契機は,印刷指示装置100の実行開始時,ユーザーが指示したとき,あるいは一定時間間隔ごとである。・・・」

これらの記載によれば,甲第1号証に記載された印刷指示装置100は,ユーザーが指示したとき,装置情報提供部202から,通信部130を通じて,印刷出力装置301,302,303のオプション情報を取得して装置情報管理部101で管理する手段を有する。
該装置情報提供部202からのオプション情報は,印刷出力装置301,302,303から取得したものであるから,甲第1号証に記載された印刷指示装置100は,ユーザーが指示したとき,直接ではないが,間接的には,印刷出力装置301,302,303から,通信部130を通じて,印刷出力装置301,302,303のオプション情報を取得して装置情報管理部101で管理する手段を有するといえる。
この手段は,本件発明2の「ユーザによる取得指示に応じて,印刷装置とのネットワークを介した通信によって当該印刷装置に実際に装着されているオプションの情報を取得して前記登録オプション情報を更新する第1の更新手段」と,「ユーザによる取得指示に応じて,ネットワークを介した通信によって印刷装置に実際に装着されているオプションの情報を取得して前記登録オプション情報を更新する第1の更新手段」といえる点では共通する。
直接接続された印刷装置とのネットワークを介した通信によって当該印刷装置に実際に装着されているオプションの情報を取得することは,例えば,甲第10号証?甲第12号証に記載されているように普通に行われていることであり,甲第1号証に記載された印刷指示装置100においても,LANを介して直接接続された印刷出力装置303が存在するから,甲1発明において,直接接続された印刷装置とのネットワークを介した通信によって情報を取得して,「ユーザによる取得指示に応じて,印刷装置とのネットワークを介した通信によって当該印刷装置に実際に装着されているオプションの情報を取得して前記登録オプション情報を更新する第1の更新手段」を有するようにすることは当業者が容易に想到し得ることである。

したがって,本件発明2は,甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

ウ 本件発明3について
(ア) 本件発明3と甲1発明との対比
本件発明3は,本件発明1または2の情報処理装置に,「読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが不可能であることが確認された場合は,読みだされた複合設定に対応する設定内容では印刷を実行することが不可能である旨,および読みだされた複合設定に対応する設定内容を別の設定内容に変更する旨が記述されたメッセージを表示する」ことを付加するものである。
よって,本件発明3と甲1発明とを対比すると,両者の一致点は,上記ア(ア)及びイ(ア)と同じであり,両者の相違点は,上記ア(ア)及びイ(ア)と同じものに加えて次の相違点がある。

[相違点]
[相違点3-1]
本件発明3は,「読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが不可能であることが確認された場合は,読みだされた複合設定に対応する設定内容では印刷を実行することが不可能である旨,および読みだされた複合設定に対応する設定内容を別の設定内容に変更する旨が記述されたメッセージを表示する」ものであるのに対し,甲1発明は,そのような特定はされていない点。

(イ) 判断
両者の相違点のうち,上記ア(ア)及びイ(ア)と同じものについては,上記ア(イ)及びイ(イ)と同じ判断により,甲1発明において,当該相違点に係る発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得ることである。

[相違点3-1]について検討する。
甲1発明は,「印刷指示操作パネルの再構成の際に,・・・使用できない機能の印刷指示設定項目については,シェード表示などを行ない,利用者が選択設定できないようにし,
次に,設定情報保存部110の前回の設定情報を用いて使用可能な機能の印刷指示設定項目の設定情報を決定し・・・,
表示制御部108は,印刷指示操作パネルの表示情報をディスプレイ109に表示するが,シェードされている機能の印刷指示設定項目については,設定不可と認識し,その後のユーザーの設定入力に対して設定不可の対応」をするものである。
すなわち,甲1発明は,ユーザが設定しようとする設定情報のうち,使用できない機能の設定項目については,シェード表示をするものである。このシェード表示は,機能の設定項目が使用できない旨(本件発明3でいう「読みだされた複合設定に対応する設定内容では印刷を実行することが不可能である旨」)を示すものであり,また,このことは換言すれば,機能の設定項目を使用する設定から使用しない設定に変更する旨(本件発明3でいう「読みだされた複合設定に対応する設定内容を別の設定内容に変更する旨」)を示すともいえる。
また,このような設定項目の使用についての表示形態として,その内容が記述されたメッセージにより表示する形態は,甲第2号証(【図25】),甲第3号証(【図22】,【図27】,【図30】及び【図34】),甲第4号証(【図4】),甲第5号証(【図20】),甲第6号証(【図8】,【図10】及び【図11】)及び甲第7号証(【0033】)に記載されるように周知であり,このような周知のメッセージによる表示形態が甲1発明においても有用であるのは当業者に明らかである。
したがって,甲1発明において,設定項目の使用についての表示形態として,上記周知のメッセージによる表示形態を採用すること(本件発明3でいう「読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが不可能であることが確認された場合は,読みだされた複合設定に対応する設定内容では印刷を実行することが不可能である旨,および読みだされた複合設定に対応する設定内容を別の設定内容に変更する旨が記述されたメッセージを表示する」こと)は,当業者が容易に想到し得ることである。

よって,本件発明3は,甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

エ 本件発明4について
(ア) 本件発明4と甲1発明との対比
本件発明4は,本件発明1の情報処理装置に,「前記印刷設定画面は,プリンタドライバが提供するユーザインターフェイスである」ことを付加するものである。
よって,本件発明4と甲1発明とを対比すると,両者の一致点は,上記ア(ア)と同じであり,両者の相違点は,上記ア(ア)と同じものに加えて次の相違点がある。

[相違点]
[相違点4-1]
本件発明4は,「前記印刷設定画面は,プリンタドライバが提供するユーザインターフェイスである」のに対し,甲1発明は,そのような特定はされていない点。

(イ) 判断
両者の相違点のうち,上記ア(ア)と同じものについては,上記ア(イ)と同じ判断により,甲1発明において,当該相違点に係る発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得ることである。

次に,[相違点4-1]について検討する。
まず,本件発明4でいう「プリンタドライバ」について,本件明細書等には,次のように記載されている。

「【0020】
図21のホストコンピュータ2100内の各ブロックは,図2のシステムで,CPU1がプログラムを実行することで実現される機能をブロックで示したものである。アプリケーション2101,グラフィックエンジン2102,プリンタドライバ2103,およびシステムスプーラ2104は,図2の外部メモリ12に保存されたファイルとして存在し,実行される場合にOSやそのモジュールを利用する上位モジュールによってRAM2にロードされ実行されるプログラムモジュールである。
【0021】
また,アプリケーション2101およびプリンタドライバ2103は,外部メモリ12のFDや不図示のCD-ROMから供給されることが可能となっている。ユーザが,このアプリケーション2101においてプリンタ2105に対する印刷操作を行うと,まず,アプリケーション2101は,RAM2にロードされ実行可能となっているグラフィックエンジン2102を利用して出力(描画)を行う。
【0022】
なお,グラフィックエンジン2102は,一般に,アプリケーションに対して,プリンタやディスプレイ等の出力デバイスに依存しない共通のグラフィック用インターフェイスを提供するものである。
【0023】
グラフィックエンジン2102は,印刷装置ごとに用意されたプリンタドライバ2103を同様に外部メモリ12からRAM2にロードし,アプリケーション2101の出力をプリンタドライバ2103を用いてプリンタの制御コマンドに変換する。このとき,ユーザは,プリンタドライバのユーザインターフェイスを用いて,プリンタに対する印刷設定を行うことができ,その設定にしたがってプリンタドライバ2103はプリンタの制御コマンドを生成する。」

この記載によれば,本件発明4にでいう「プリンタドライバ」とは,アプリケーションの出力(印刷データ)を,印刷しようとするプリンタの制御コマンドに変換するプログラムモジュールであり,そのユーザインターフェイスを用いて,プリンタに対する印刷設定を行うことができ,その設定にしたがってプリンタドライバ2103はプリンタの制御コマンドを生成するものを含んでいる。

一方,甲第1号証には,プリンタドライバについて次のように記載されている(上記(1)イ及びエ)。

「【0073】この例の印刷指示装置機能部に搭載されるプリンタドライバ(ソフトウエア)は,図40で示したものと異なり,印刷指示設定項目設定のための表示処理は不要であって,印刷データを,選択した印刷出力装置用のものに変換する印刷データ処理機能を有するだけでよい。・・・
【0075】・・・すなわち,図3に示すように,印刷指示装置機能部20は,複数の印刷出力装置の例としてのプリンタP1?Pnのそれぞれの印刷指示操作パネルをすべて切り換えて表示できる共通ユーザーインターフェイス部21を備えると共に,各プリンタP1?Pn用の印刷データ処理部22aと,共通ユーザーインターフェイス部21で表示する事項以外で必要な一部表示処理部22bとを具備するプリンタドライバ部22とを備える。」

「【0105】・・・さらに,出力先切り換え部103は,プリンタドライバ121(図3のプリンタドライバ22に対応)に対して,印刷出力装置の切り換えを指示する。」

これらの記載によれば,甲第1号証における,プリンタドライバ121(22)は,印刷データを,印刷しようとするプリンタ用のデータ(制御コマンド)に変換するプログラムモジュールである。また,印刷指示操作パネルをすべて切り換えて表示できる共通ユーザーインターフェース部21は,プリンタP1?Pnに対する印刷設定を行うことができるものであり,その設定にしたがってプリンタ用のデータ(制御コマンド)が生成されるといえる。

そうすると,甲1発明の「『プリンタドライバ121』及び『印刷指示操作パネル』」は,本件発明4の「プリンタドライバ」と同等の機能を有するものであり,甲1発明の「印刷指示操作パネル」(本件発明4でいう「印刷設定画面」)は,本件発明4の「プリンタドライバが提供するユーザインターフェース」であるといえ,上記[相違点4-1]は,実質的な相違点ではない。

よって,本件発明4は,甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

オ 本件発明5について
(ア) 本件発明5と甲1方法発明との対比
本件発明5は,本件発明1の「情報処理装置」に係る発明に対応する「情報処理方法」という発明とし,さらに構成を付加して限定したものであって,本件発明5と甲1方法発明との対比は,上記ア(ア)と同様にでき,両者の一致点及び相違点は次のとおりである。

[一致点]
印刷装置とネットワーク経由で接続される情報処理装置が実行する情報処理方法であって,
前記情報処理装置の読み出し手段は,印刷に関わる複数の設定内容を一括して設定するための複合設定をメモリから読み出し,
前記情報処理装置の確認手段は,印刷装置に装着されるオプションの情報を基に,読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが可能であるか否かを確認し,
前記情報処理装置の表示制御手段は,読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが可能であることが確認された場合は,読みだされた複合設定に対応する設定内容を印刷設定画面に表示させ,
読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが不可能であることが確認された場合は,前記オプションを利用しない設定内容を印刷設定画面に表示させることを特徴とする情報処理方法。

[相違点]
[相違点1-1’]
本件発明5は,「前記情報処理装置の読み出し手段は,印刷に関わる複数の設定内容を一括して変更するための複合設定をメモリから読み出」すのに対し,甲1方法発明は,「前記情報処理装置の読み出し手段は,印刷に関わる複数の設定内容を一括して設定するための複合設定をメモリから読み出」すとはいえるものの,該複合設定が,「一括して変更するための複合設定」であるといえるか否かは明らかではない点。

[相違点1-2’]
本件発明5は,「前記表示制御手段は,現在の設定内容が表示されている印刷設定画面に,複合設定の複数の選択候補を表示し,
ユーザにより前記複数の選択候補に基づく複合設定の選択変更が行われる度に,選択された複合設定に関する前記読み出し手段による読み出しと,読み出された複合設定に関する前記確認手段による確認と,確認の結果に対応した前記表示制御手段による表示とを行」うのに対し,甲1方法発明は,そのようなものではない点。

[相違点5-1]
本件発明5は,「読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが不可能であることが確認された場合は,前記表示制御手段は,実行できないことを示すメッセージを表示する」のに対し,甲1方法発明は,そのようなものではない点。

(イ) 判断
上記相違点のうち,[相違点1-1’]及び[相違点1-2’]については,上記ア(ア)で述べたものと同様の相違点であるから,上記ア(イ)と同様の判断により,甲1方法発明において,当該相違点に係る発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得ることである。

[相違点5-1]について検討する。
甲1方法発明は,「印刷指示操作パネルの再構成の際に,・・・使用できない機能の印刷指示設定項目については,シェード表示などを行ない,利用者が選択設定できないようにし,
次に,設定情報保存部110の前回の設定情報を用いて使用可能な機能の印刷指示設定項目の設定情報を決定し・・・,
表示制御部108は,印刷指示操作パネルの表示情報をディスプレイ109に表示するが,シェードされている機能の印刷指示設定項目については,設定不可と認識し,その後のユーザーの設定入力に対して設定不可の対応」をするものである。
すなわち,甲1方法発明は,ユーザが設定しようとする設定情報のうち,使用できない機能の設定項目については,シェード表示をするものである。このシェード表示は,機能の設定項目が使用できないこと(本件発明5でいう「(読み出された複合設定に対応する設定内容で印刷を)実行できないこと」)を示すものである。
また,このような設定項目の使用についての表示形態として,その内容が記述されたメッセージにより表示する形態は,甲第2号証(【図25】),甲第3号証(【図22】,【図27】,【図30】及び【図34】),甲第4号証(【図4】),甲第5号証(【図20】),甲第6号証(【図8】,【図10】及び【図11】)及び甲第7号証(【0033】)に記載されるように周知であり,このような周知のメッセージによる表示形態が甲1方法発明においても有用であるのは当業者に明らかである。
したがって,甲1方法発明において,設定項目の使用についての表示形態として,上記周知のメッセージによる表示形態を採用すること(本件発明5でいう「読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが不可能であることが確認された場合は,前記表示制御手段は,実行できないことを示すメッセージを表示すること」)は,当業者が容易に想到し得ることである。

よって,本件発明5は,甲1方法発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

カ 本件発明6について
(ア) 本件発明6と甲1媒体発明との対比
本件発明6は,本件発明1の「情報処理装置」に係る発明に対応する「記憶媒体」という発明とし,さらに構成を付加して限定したものであって,本件発明6と甲1媒体発明との対比は,上記ア,エ及びオと同様にでき,両者の一致点及び相違点は次のとおりである。

[一致点]
印刷に関わる複数の設定内容を一括して設定するための複合設定をメモリから読み出す読み出しステップと,
印刷装置に装着されるオプションの情報を基に,読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが可能であるか否かを確認する確認ステップと,
読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが可能であることが確認された場合は,読みだされた複合設定に対応する設定内容を印刷設定画面に表示させ,
読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが不可能であることが確認された場合は,前記オプションを利用しない設定内容を印刷設定画面に表示させる表示制御ステップと,
を,印刷装置とネットワーク経由で接続されるコンピュータに実行させるためのプログラムを記憶した記憶媒体。

[相違点]
[相違点1-1’]
本件発明6は,「印刷に関わる複数の設定内容を一括して変更するための複合設定をメモリから読み出す読み出しステップ」を実行させるのに対し,甲1媒体発明は,「印刷に関わる複数の設定内容を一括して設定するための複合設定をメモリから読み出す読み出しステップ」を実行させるとはいえるものの,該複合設定が,「一括して変更するための複合設定」であるといえるか否かは明らかではない点。

[相違点6-1]
本件発明6は,「ユーザによる指示に応じて,複合設定をメモリに追加する登録ステップと,
ユーザによる指示に応じて,複合設定をメモリから削除する削除ステップと,を,印刷装置とネットワーク経由で接続されるコンピュータに実行させるためのプログラムを記憶した記憶媒体であって,
前記登録ステップにより追加された複合設定は前記削除ステップによる削除が可能であり,前記プログラムに元から用意されている複合設定は前記削除ステップによる削除が不可能であ」るのに対し,甲1媒体発明は,そのようなものではない点。

[相違点1-2’]
本件発明6は,「前記プログラムは更に,現在の設定内容が表示されている印刷設定画面に,複合設定の複数の選択候補を表示するステップを前記コンピュータに実行させ,ユーザにより前記複数の選択候補に基づく複合設定の選択変更が行われる度に,選択された複合設定に関する前記読み出しステップによる読み出しと,読み出された複合設定に関する前記確認ステップによる確認と,確認の結果に対応した前記表示制御ステップによる表示とを前記コンピュータに実行させ」るものであるのに対し,甲1媒体発明は,そのようなものではない点。

[相違点5-1’]
本件発明6は,「読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが不可能であることが確認された場合は,前記表示制御ステップは,実行できないことを示すメッセージを表示」するのに対し,甲1媒体発明は,そのようなものではない点。

[相違点6-2]
本件発明6では,「前記複合設定とは,プリンタドライバが提供するユーザインターフェーイスである印刷設定画面に表示される複数の設定シートで設定された前記設定内容を組み合わせた設定であり,
前記複合設定の選択変更は,印刷設定画面に表示される複数の設定シートのいずれからも行うことができる,」ものであるのに対し,甲1媒体発明は,そのようなものではない点。

(イ) 判断
まず,[相違点6-2]について検討する。
この相違点のうち,本件発明6が,「前記複合設定の選択変更は,印刷設定画面に表示される複数の設定シートのいずれからも行うことができる」ものである点について,この「前記複合設定」とは,「印刷に関わる複数の設定内容を一括して変更するための複合設定」であって,「プリンタドライバが提供するユーザインターフェイスである印刷設定画面に表示される複数の設定シートで設定された前記設定内容を組み合わせた設定」を指している。甲1媒体発明は,上記[相違点1-1’]でいうように,「印刷に関わる複数の設定内容を一括して設定するための複合設定」をするものといえるものであり,甲1媒体発明において,該「一括して設定」を「一括して変更」とすることは,上記ア(イ)で述べたように,当業者が容易に想到し得るとはいえる。しかしながら,そうした上でさらに,「印刷に関わる複数の設定内容を一括して変更するための複合設定」であって,「プリンタドライバが提供するユーザインターフェイスである印刷設定画面に表示される複数の設定シートで設定された前記設定内容を組み合わせた設定」の「選択変更」を,「印刷設定画面に表示される複数の設定シートのいずれからも行うことができる」ようにすることまでもが容易に想到し得るといえる証拠はなく,単なる設計事項や周知技術であるともいえない(なお,甲第17号証には,【図3】及び【図6】等に,「色設定」,「用紙」,「印刷対象」及び「印刷品質」等の設定項目(設定シート)と同じウィンドウに「ユーザ定義」ボタン29が配置されている構成は記載されているが,当該ボタンが指示されたとしても,【図4】に示される「ユーザ定義パネル」が表示されるにとどまり,「印刷に関わる複数の設定内容を一括して変更するための複合設定」であって,「プリンタドライバが提供するユーザインターフェイスである印刷設定画面に表示される複数の設定シートで設定された前記設定内容を組み合わせた設定」の「選択変更」を,「印刷設定画面に表示される複数の設定シートのいずれからも行うことができる」ようにすることとは無関係である。)。

したがって,その他の相違点について検討するまでもなく,本件発明6は,甲1媒体発明であるとも,甲1媒体発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

キ 本件発明7について
(ア) 本件発明7と甲1媒体発明との対比
本件発明7と甲1媒体発明との対比は,上記カと同様にでき,両者の一致点及び相違点は次のとおりである。

[一致点]
印刷に関わる複数の設定内容を一括して設定するための複合設定をメモリから読み出す読み出しステップと,
印刷装置に装着されるオプションの情報を基に,読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが可能であるか否かを確認する確認ステップと,
読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが可能であることが確認された場合は,読みだされた複合設定に対応する設定内容を印刷設定画面に表示させ,
読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが不可能であることが確認された場合は,前記オプションを利用しない設定内容を印刷設定画面に表示させる表示制御ステップと,
を印刷装置とネットワーク経由で接続されるコンピュータに実行させるためのプログラムを記憶した記憶媒体。

[相違点]
[相違点1-1’]
本件発明7は,「印刷に関わる複数の設定内容を一括して変更するための複合設定をメモリから読み出す読み出しステップ」を実行させるのに対し,甲1媒体発明は,「印刷に関わる複数の設定内容を一括して設定するための複合設定をメモリから読み出す読み出しステップ」を実行させるとはいえるものの,該複合設定が,「一括して変更するための複合設定」であるといえるか否かは明らかではない点。

[相違点6-1]
本件発明7は,「ユーザによる指示に応じて,複合設定をメモリに追加する登録ステップと,
ユーザによる指示に応じて,複合設定をメモリから削除する削除ステップと,を,印刷装置とネットワーク経由で接続されるコンピュータに実行させるためのプログラムを記憶した記憶媒体であって,
前記登録ステップにより追加された複合設定は前記削除ステップによる削除が可能であり,前記プログラムに元から用意されている複合設定は前記削除ステップによる削除が不可能であ」るのに対し,甲1媒体発明は,そのようなものではない点。

[相違点1-2’]
本件発明7は,「前記プログラムは更に,現在の設定内容が表示されている印刷設定画面に,複合設定の複数の選択候補を表示するステップを前記コンピュータに実行させ,ユーザにより前記複数の選択候補に基づく複合設定の選択変更が行われる度に,選択された複合設定に関する前記読み出しステップによる読み出しと,読み出された複合設定に関する前記確認ステップによる確認と,確認の結果に対応した前記表示制御ステップによる表示とを前記コンピュータに実行させ」るのに対し,甲1媒体発明は,そのようなものではない点。

[相違点7-1]
本件発明7は,「前記プログラムは,プリンタドライバである」のに対し,甲1媒体発明は,そうではない点。

(イ) 判断
上記相違点のうち,[相違点1-1’]及び[相違点1-2’]については,上記ア(ア)で述べたものと同様の相違点であるから,上記ア(イ)と同様の判断により,甲1媒体発明において,当該相違点に係る発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得ることである。
また,上記相違点のうち,[相違点7-1]については,上記エ(ア)で述べた[相違点4-1]と同様の相違点であるから,上記エ(イ)と同様の判断により,上記[相違点7-1]は,実質的な相違点ではない。

次に,[相違点6-1]について検討する。
甲1媒体発明は,「ユーザーが保存を希望する設定情報は,それぞれ識別ファイル名を付与して設定情報保存部110に保存しておき,ユーザーがその保存された過去の設定情報ファイルの中から,希望するものを選択し,その選択された設定情報により印刷指示操作パネルの各設定項目の初期的な設定を行なうようにするとさらによ」いものであるから,この場合には,ユーザが複数の設定情報を設定情報保存部110に保存し(本件発明7の「ユーザによる指示に応じて,複合設定をメモリに追加する登録ステップ」に相当),該複数の設定情報の中から希望するものを選択するものである。保存しておいてその中から選択する複数の設定情報は,後に不要になったときに削除し得ることが望ましいのは当業者に明らかであり,また,保存した印刷設定を後に削除することは普通に行われていることである(甲第8号証,甲第13号証,甲第14号証を参照)。さらに,削除が不可能な印刷設定を用意しておき設定に用いることも普通に行われていることである(甲第9号証,甲第14号証を参照)から,甲1媒体発明において,ユーザが設定情報保存部110に保存した複数の設定情報を削除すること,削除が不可能な印刷設定を用意しておくこと(本件発明7の「ユーザによる指示に応じて,複合設定をメモリから削除する削除ステップ」,「前記登録ステップにより追加された複合設定は前記削除ステップによる削除が可能であり,前記プログラムに元から用意されている複合設定は前記削除ステップによる削除が不可能であ」ることに相当)は当業者が容易に想到し得ることであり,これらのことを採用するのを妨げる要因もない。

したがって,本件発明7は,甲1媒体発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

ク 本件発明8について
(ア) 本件発明8と甲1媒体発明との対比
本件発明8と甲1媒体発明との対比は,上記カと同様にでき,両者の一致点及び相違点は次のとおりである。

[一致点]
印刷に関わる複数の設定内容を一括して設定するための,メモリに格納された複合設定を選択する選択ステップと,
選択された複合設定に対応する設定内容で印刷装置に印刷を実行させることが可能である場合は,選択された複合設定に対応する設定内容を印刷設定画面に表示させ,
選択された複合設定に対応する設定内容で印刷装置に印刷を実行させることが不可能である場合は,オプションを装着せずとも印刷可能な印刷装置に装着される前記オプションを利用しない設定内容を印刷設定画面に表示させる表示制御ステップと,を,印刷装置とネットワーク経由で接続されるコンピュータに実行させるためのプログラムを記憶した記憶媒体。

[相違点]
[相違点1-1’]
本件発明8は,「印刷に関わる複数の設定内容を一括して変更するための,メモリに格納された複合設定を選択する選択ステップ」を実行させるのに対し,甲1媒体発明は,「印刷に関わる複数の設定内容を一括して設定するための,メモリに格納された複合設定を選択する選択ステップ」を実行させるとはいえるものの,該複合設定が,「一括して変更するための」複合設定であるといえるか否かは明らかではない点。

[相違点1-2’]
本件発明8は,「前記プログラムは更に,現在の設定内容が表示されている印刷設定画面に,複合設定の複数の選択候補を表示するステップを前記コンピュータに実行させ,ユーザにより前記複数の選択候補に基づく複合設定の選択変更が行われる度に,ユーザにより選択された複合設定に関する前記選択ステップによる選択と,選択された複合設定に対応する設定内容で印刷装置に印刷を実行させることが可能であるか不可能であるかに対応した前記表示制御ステップによる表示とを前記コンピュータに実行させ」るのに対し,甲1媒体発明は,そのようなものではない点。

[相違点6-2]
本件発明8は,「前記複合設定とは,プリンタドライバが提供するユーザインターフェーイスである印刷設定画面に表示される複数の設定シートで設定された前記設定内容を組み合わせた設定であり,
前記複合設定の選択変更は,印刷設定画面に表示される複数の設定シートのいずれからも行うことができる」のに対し,甲1媒体発明は,そのようなものではない点。

(イ) 判断
上記相違点のうち,[相違点6-2]については,上記カ(ア)で述べたものと同じ相違点であるから,上記カ(イ)と同様の判断により,甲1媒体発明において,当該相違点に係る発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得ることであるとはいえない。

したがって,その他の相違点について検討するまでもなく,本件発明8は,甲1媒体発明であるとも,甲1媒体発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(3) 無効理由1についてのまとめ
以上のとおり,請求項1,2,3,4,5及び7に係る発明は,甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,その特許は同法第123条第1項第2号の規定に該当し,無効とすべきである。
また,請求項6及び8に係る発明は,甲第1号証に記載された発明であるとも,甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないから,その特許についての無効理由1には理由がない。

2 無効理由2について
(1) 甲第2号証の記載事項,甲2発明,甲2方法発明及び甲2媒体発明
甲第2号証(特開平1-147559号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「3.発明の詳細な説明
「産業上の利用分野」
本発明は複写機,ファクシミリ装置あるいはプリンタ等の画情報の記録を行う機能をもった装置に係わり,特に異なった機種で要求された機能を実行する際の調整を図った記録装置に関する。
「従来の技術」
複写機を例にとって説明すると,近年,その機能を高度化させた製品の開発が活発に行われている。例えば原稿の複写倍率についてみると,等倍の複写だけを行う複写機の他に幾種類かの倍率を選択できるものが登場し,更に連続的に倍率を変化させることのできる複写機も登場している。現像についてみても,1種類のトナーを用いていわゆる白黒で画像の再現を行う複写機の他に,2種類以上のトナーを用いて多色記録や記録を行う色を選択することのできる複写機が登場している。原稿の取り扱いについて見てみると,原稿を自動的に取り替える装置の付いた複写機が登場したり,製本原稿の見開き2ページを原稿自体を動かさずに1ページずつ順に複写していく複写機も登場している。
また,このような複写機では顧客の要求に応じて各種付加装置を取りつけることができるようになっているものが多い。このような付加装置の代表的なものとしては,コピーのソーティングを行うソータや,原稿の自動送りを行うADF(原稿自動送り装置)がある。
このように複写機に多くの機能が備えられたり多くの付加装置を選別可能になってくると,オペレータはこれら複写機本体に備えられた機能あるいは付加装置によって実現される機能を駆使することによって,要求にもっともかなったコピーを得ることができるようになる。ところが,この反面,次に同じような条件でコピーを採ろうとすると,前と同じ条件に設定するためにメモを見たり,あるいはコンソールパネル上の各種複写条件に関する指示を見ながら,細かく複写条件を設定する必要があった。このような注意深い,あるいは根気のいる作業を行うことは,事務能率に必ずしも寄与するものではない。
そこで最近ではオペレータの行う作業との関係で複写条件を記憶させることのできる複写機が登場している。このような複写機は,例えば複写機本体に不揮発性メモリを備えており,ここに各種複写条件を記憶させるようになっている。磁気カード等の外部記憶媒体に複写条件を記憶させて,これを複写機本体に読み込ませ複写条件を設定するようにしたものも提案されている。
「発明が解決しようとする問題点」
ところで外部記憶媒体を用いるようになると,この外部記憶媒体を他の複写機に使用して同一の複写条件を設定することが原理的に可能となる。すなわち,いつも利用していた複写機が使用中の場合には,複写条件を格納した磁気カード等を持って池の複写機にセットすることで同一の複写条件を設定してコピー作業を行うことが可能となる。しかしながら,これには両複写機が全く同一の機能を有することを前提としなければならない。すなわち,例えばソータで丁合を行うことを指示した磁気カードをソータの付いていない複写機にセットしても,ソーティングという作業は実行されない。
このように従来の複写機では,複写条件を予め設定した場合には,この条件は全く同一の機種に適用が制限されていた。従って,たとえ各人が複写条件の設定のために外部記憶媒体を所持していても,1つの記憶媒体はそれ専用の機種にしか適用することができず,機種が多くなれば外部記憶媒体の数も多く必要としてそれらの管理が複雑となった。
以上複写機について説明したが,ファクシミリ装置やプリンタ等の他の記録装置についても,これらの操作を単純化するために記録条件の設定を行おうとすると同様の問題がある。
そこで本発明の目的は,異なった形式の記録装置に対しても特に不都合を生じさせず記録条件を設定することのできる記録装置を提供することにある。」(第2頁左上欄第15行ないし第3頁左上欄第13行)

イ 「(6)ICカードによる複写機の制御
(6-1)ICカードのメモリ内容
次の第21図はICカードの記憶領域の要部を図解したものである。この実施例の複写機に適用されるICカード131の記憶領域は,(イ)編集機能コード登録領域501,(ロ)編集座標データ登録領域502,(ハ)機能登録領域503および(ニ)機能設定領域504を備えている。
ここで(イ)編集機能コード登録領域501とは,編集がテンキー80だけで行われるかエディタパッド132を用いて行われるかをしめすエディタパッドフラグ501Fを登録する領域である。
(ロ)編集座標データ登録領域502には,編集結果としての各種座標データが登録されるようになっている。このような座標データはICカード131に登録することで,他の複写機等にも共通して使用することができ,また特別の部署で使用される座標データはICカード131に登録することで,その部署が独自に管理することができる。
(ハ)機能登録領域503は,複写条件としての各種機能を登録する領域である。ここにはこれらの機能の有無を示す各種フラグが登録される。これには,例えば次のようなものがある。
(i)両面原稿フラグ503-1;原稿自動送り装置で原稿を反転してプラテンガラス上に載置することを要求するフラグである。DADF24が備えられていれば,両面原稿を取り扱えることになるが,ADF23が備えられていたり,半自動原稿送り装置が取りつけられている場合,あるいはこれらの原稿送り装置がなんら備えられていない場合には両面原稿を取り扱えないことになる。
(ii)両面コピーフラグ503-2;両面コピーを要求するフラグである。中間トレイ33が用意されていなければ,手差しというマニュアル操作を除いて両面コピーをとることができない。
(iii)丁合フラグ503-3;ソータモードにおいてコピー用紙の丁合を要求するフラグである。従って,この複写機にソータ(例えば第2図に示した10ビンソータ38あるいは20ビンソータ39)が取りつけられていることが,この要求を満たすために必要な第1の要件となる。またそのソータが丁合モードに設定されることが第2の要件となる。
(iv)スタックフラグ503-4;ソータモードにおいてコピー用紙のスタックを要求するフラグである。この複写機にソータが取りつけられていることと,スタックモードに設定できることがこの要求を満たす要件である。なお,この実施例の複写機では,ソータモードにおいてソータのビン数までを複写条件として要求していない。従って,10ビンのソータ38を装備した複写機で例えば18枚ずつのコピーに対するソーティングが要求されることもある。このような場合,複写機には「ソータの設定枚数がオーバです」という表示が行われ,まず10枚ずつコピー作業が行われてソーティングが実行される。この後,複写機はオペレータが更に8枚ずつコピーをとる操作を行うのを待機することになる。
(v)単色カラーフラグ503-5;白黒の記録色の他にカラーの記録色(1色)を要求するフラグである。この実施例の複写機では第8図に示したようにメイン現像装置59Mの他に4種類のサブ現像装置59S1?59S4を配置することができる。従って,メイン現像装置59Mで白黒現像を行うことができる他,サブ現像装置59S1?59S4で4色のカラー現像を行うことができる。このため,サブ現像装置59S1?59S4のうち1つでもベースマシン21に配置しておけば,この要求に応えることになる。装置によっては記録色まで指定することも可能であるが,本実施例の複写機ではカラー1色が使用できれば,この要求を満たすことになる。
(vi)右綴代フラグ503-6;原稿の右側に綴代を要求するフラグである。
(vii)左綴代フラグ503-7;原稿の左側に綴代を要求するフラグである。
(ニ)機能設定領域504は,複写条件を各種設定するための領域である。ここにはこれらの設定条件の希望内容が登録される。これには,例えば縮倍率504-1やコピー濃度504-2の他に設定枚数,用紙サイズ等がある。
(6-2)ICカードによるデータ処理
第22図は,ICカード装置にICカードがセットされる場合の複写機の制御を表わしたものである。複写機のICカード装置22にICカード131がセットされると,これが正規のカードである場合データの読み出しが行われる(ステップ1(※審決注)原文は「ステップX」について「X」は丸囲みの数字である。以下,同じ。)。読み出されたデータは,後に説明する大容量転送によってメインCPU121側に転送される(ステップ2)。メインCPU121では,このデータを解読し,複写条件を設定するための各種コードやフラグをセットする(ステップ3)。この後,その複写機用に機能の設定を行ったり,要求されている機能であっても特に必要でないものについてはそれをクリアする(ステップ4)。この状態でメインCPU121はコピー作業を開始することができるかどうかの判別を行う(ステップ5)。例えば2色でコピー作業が要求されているのに1色の現像装置しかセットされていない場合には,コピー作業を開始することができない。そこでこのような場合には(N),液晶表示部112に警告表示が行われる(ステップ6)。
これに対してオペレータは2つの方法を採ることができる。第1の方法は,複写条件自体を妥協することである。前記した例の場合には,1色のカラー記録を追加することを断念して,すべてを白黒で記録するようにコンソールパネル28上で指定を行う。第2の方法は,液晶表示部112の警告に従って足りない機能を追加する。この例の場合には,複写機にカラー記録用の現像装置をセットすることによってコピー作業の開始が可能になる。
ステップ5でコピー作業の開始が可能になったり,元々可能な状態であれば(Y),液晶表示部112に「コピーできます」という表示が行われる。この場合,オペレータはスタートボタン117を押すことで直ちにコピー作業を開始させることができる。もちろん,この状態でコンソールパネル28にはICカード131によってセットされた複写条件が表示されているので,オペレータはこれを適宜修正した後にスタートボタン117を押すことも可能である。」(第24頁右上欄第7行ないし第25頁右下欄第8行)」

ウ 「以上説明した第23図では,所定の機能についてこれらが実現されない場合には特に警告表示も行わずにその機能をクリアすることにした。これによってオペレータは,あまり重要とみられない機能についてはこれらが実現できない場合でも,その確認作業を省略することができ,煩雑な作業から開放されると共に事務効率を向上させることができる。しかしながら,一方ではこのことは複写条件の一部が欠落したことを知らずにオペレータがコピー作業を開始させるという危険性をはらんでいる。
第24図は,第22図に対する変形例としてオペレータにこのような場合何らかの注意を与えるようにした例を表わしたものである。
この第24図でステップ1からステップ6までの動作は第22図と同一である。ステップ5でコピー作業が開始できると判別された場合には,ステップ7に進んでステップ4で機能のクリアが実行されたかどうかの判別が行われる。例えば丁合モードが存在しない場合に丁合モードを使用する機能がクリアされたような場合には,T秒だけ液晶表示部112にクリアされた機能の表示が行われ,注意を促すためにピーという電子音が短時間出力される(ステップ8)。
第25図は,この場合の液晶表示部112の表示内容を表わしたものである。液晶表示部112には,「丁合モード設定不可の状態でコピーします」という表示が行われる。この表示は例えば5秒間だけ行われる。この後,液晶表示部112の表示は通常の「コピーできます」という内容に変更される(ステップ9)。これに対して,ステップ7で機能のクリアが実行されなかったと判別された場合には(N),液晶表示部112には直ちに「コピーできます」という表示が行われることになる(ステップ9)。」(第26頁右下欄下から2行ないし第27頁右上欄第13行)

エ 「以上説明した実施例ではICカードを用いた複写機について説明したが,ICカード以外に磁気ストライプを設けた磁気カードを用いてもよいし,記録装置に内蔵のメモリに記録要求条件を格納してもよい。特に複写条件の格納のみを行う場合には,磁気カードのように比較的容量の少ない記憶媒体でも十分機能させることができる。また,記録装置は複写機に限らずファクシミリ装置やプリンタ等の他の画像処理装置であってもよいし,これらを共通して活用する複合システムであってもよい。後者の場合には,ICカード等の記憶媒体を用いることで例えばプリンタで所望のソーティングを行ったり,2色記録を行うことができるようになる。」(第30頁右上欄第6行ないし第19行)

以上によれば,甲第2号証には,次の発明(以下,「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。

[甲2発明]
「複写機,ファクシミリ装置あるいはプリンタ等の画情報の記録を行う機能をもった装置であって,
一実施例の複写機について,
ICカード131の記憶領域は,(イ)編集機能コード登録領域501,(ロ)編集座標データ登録領域502,(ハ)機能登録領域503および(ニ)機能設定領域504を備え,
(ハ)機能登録領域503は,複写条件としての各種機能を登録する領域であり,ここにはこれらの機能の有無を示す各種フラグが登録され,これには,例えば,両面原稿フラグ503-1,両面コピーフラグ503-2,丁合フラグ503-3,スタックフラグ503-4,単色カラーフラグ503-5,右綴代フラグ503-6,左綴代フラグ503-7があり,
(ニ)機能設定領域504は,複写条件を各種設定するための領域であり,ここにはこれらの設定条件の希望内容が登録され,これには,例えば縮倍率504-1やコピー濃度504-2の他に設定枚数,用紙サイズ等があり,
複写機のICカード装置22にICカード131がセットされると,これが正規のカードである場合データの読み出しが行われ(ステップ1),読み出されたデータは,後に説明する大容量転送によってメインCPU121側に転送され(ステップ2),メインCPU121では,このデータを解読し,複写条件を設定するための各種コードやフラグをセットし(ステップ3),この後,その複写機用に機能の設定を行ったり,要求されている機能であっても特に必要でないものについてはそれをクリアし(ステップ4),この状態でメインCPU121はコピー作業を開始することができるかどうかの判別を行い(ステップ5),例えば2色でコピー作業が要求されているのに1色の現像装置しかセットされていない場合には,コピー作業を開始することができないのでこのような場合には(N),液晶表示部112に警告表示が行われ(ステップ6),
ステップ5でコピー作業の開始が可能になったり,元々可能な状態であれば(Y),液晶表示部112に「コピーできます」という表示が行われ,この場合,オペレータはスタートボタン117を押すことで直ちにコピー作業を開始させることができ,この状態でコンソールパネル28にはICカード131によってセットされた複写条件が表示されているので,オペレータはこれを適宜修正した後にスタートボタン117を押すことも可能であり,
ステップ5でコピー作業が開始できると判別された場合には,ステップ7に進んでステップ4で機能のクリアが実行されたかどうかの判別が行われ,例えば丁合モードが存在しない場合に丁合モードを使用する機能がクリアされたような場合には,T秒だけ液晶表示部112にクリアされた機能の表示が行われ,注意を促すためにピーという電子音が短時間出力され(ステップ8),液晶表示部112には,「丁合モード設定不可の状態でコピーします」という表示が行われ,この表示は例えば5秒間だけ行われ,この後,液晶表示部112の表示は通常の「コピーできます」という内容に変更され(ステップ9),これに対して,ステップ7で機能のクリアが実行されなかったと判別された場合には(N),液晶表示部112には直ちに「コピーできます」という表示が行われることになり(ステップ9),
記録装置は複写機に限らずファクシミリ装置やプリンタ等の他の画像処理装置であってもよい,装置。」

また,上記甲2発明の装置の動作は情報処理方法として捉えることができるから,甲第2号証には,次の発明(以下,「甲2方法発明」という。)も記載されていると認められる。

[甲2方法発明]
「複写機,ファクシミリ装置あるいはプリンタ等の画情報の記録を行う機能をもった装置の情報処理方法であって,
一実施例の複写機について,
ICカード131の記憶領域は,(イ)編集機能コード登録領域501,(ロ)編集座標データ登録領域502,(ハ)機能登録領域503および(ニ)機能設定領域504を備え,
(ハ)機能登録領域503は,複写条件としての各種機能を登録する領域であり,ここにはこれらの機能の有無を示す各種フラグが登録され,これには,例えば,両面原稿フラグ503-1,両面コピーフラグ503-2,丁合フラグ503-3,スタックフラグ503-4,単色カラーフラグ503-5,右綴代フラグ503-6,左綴代フラグ503-7があり,
(ニ)機能設定領域504は,複写条件を各種設定するための領域であり,ここにはこれらの設定条件の希望内容が登録され,これには,例えば縮倍率504-1やコピー濃度504-2の他に設定枚数,用紙サイズ等があり,
複写機のICカード装置22にICカード131がセットされると,これが正規のカードである場合データの読み出しが行われ(ステップ1),読み出されたデータは,後に説明する大容量転送によってメインCPU121側に転送され(ステップ2),メインCPU121では,このデータを解読し,複写条件を設定するための各種コードやフラグをセットし(ステップ3),この後,その複写機用に機能の設定を行ったり,要求されている機能であっても特に必要でないものについてはそれをクリアし(ステップ4),この状態でメインCPU121はコピー作業を開始することができるかどうかの判別を行い(ステップ5),例えば2色でコピー作業が要求されているのに1色の現像装置しかセットされていない場合には,コピー作業を開始することができないのでこのような場合には(N),液晶表示部112に警告表示が行われ(ステップ6),
ステップ5でコピー作業の開始が可能になったり,元々可能な状態であれば(Y),液晶表示部112に「コピーできます」という表示が行われ,この場合,オペレータはスタートボタン117を押すことで直ちにコピー作業を開始させることができ,この状態でコンソールパネル28にはICカード131によってセットされた複写条件が表示されているので,オペレータはこれを適宜修正した後にスタートボタン117を押すことも可能であり,
ステップ5でコピー作業が開始できると判別された場合には,ステップ7に進んでステップ4で機能のクリアが実行されたかどうかの判別が行われ,例えば丁合モードが存在しない場合に丁合モードを使用する機能がクリアされたような場合には,T秒だけ液晶表示部112にクリアされた機能の表示が行われ,注意を促すためにピーという電子音が短時間出力され(ステップ8),液晶表示部112には,「丁合モード設定不可の状態でコピーします」という表示が行われ,この表示は例えば5秒間だけ行われ,この後,液晶表示部112の表示は通常の「コピーできます」という内容に変更され(ステップ9),これに対して,ステップ7で機能のクリアが実行されなかったと判別された場合には(N),液晶表示部112には直ちに「コピーできます」という表示が行われることになり(ステップ9),
記録装置は複写機に限らずファクシミリ装置やプリンタ等の他の画像処理装置であってもよい,装置の情報処理方法。」

さらに,上記甲2方法発明の情報処理方法は,コンピュータのプログラムにより実行されるものであり,該プログラムは記憶媒体に記憶されるものであることは明らかであるから,甲第2号証には,次の発明(以下,「甲2媒体発明」という。)も記載されていると認められる。

[甲2媒体発明]
「複写機,ファクシミリ装置あるいはプリンタ等の画情報の記録を行う機能をもった装置の情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記憶した記憶媒体であって,
一実施例の複写機について,
ICカード131の記憶領域は,(イ)編集機能コード登録領域501,(ロ)編集座標データ登録領域502,(ハ)機能登録領域503および(ニ)機能設定領域504を備え,
(ハ)機能登録領域503は,複写条件としての各種機能を登録する領域であり,ここにはこれらの機能の有無を示す各種フラグが登録され,これには,例えば,両面原稿フラグ503-1,両面コピーフラグ503-2,丁合フラグ503-3,スタックフラグ503-4,単色カラーフラグ503-5,右綴代フラグ503-6,左綴代フラグ503-7があり,
(ニ)機能設定領域504は,複写条件を各種設定するための領域であり,ここにはこれらの設定条件の希望内容が登録され,これには,例えば縮倍率504-1やコピー濃度504-2の他に設定枚数,用紙サイズ等があり,
複写機のICカード装置22にICカード131がセットされると,これが正規のカードである場合データの読み出しが行われ(ステップ1),読み出されたデータは,後に説明する大容量転送によってメインCPU121側に転送され(ステップ2),メインCPU121では,このデータを解読し,複写条件を設定するための各種コードやフラグをセットし(ステップ3),この後,その複写機用に機能の設定を行ったり,要求されている機能であっても特に必要でないものについてはそれをクリアし(ステップ4),この状態でメインCPU121はコピー作業を開始することができるかどうかの判別を行い(ステップ5),例えば2色でコピー作業が要求されているのに1色の現像装置しかセットされていない場合には,コピー作業を開始することができないのでこのような場合には(N),液晶表示部112に警告表示が行われ(ステップ6),
ステップ5でコピー作業の開始が可能になったり,元々可能な状態であれば(Y),液晶表示部112に「コピーできます」という表示が行われ,この場合,オペレータはスタートボタン117を押すことで直ちにコピー作業を開始させることができ,この状態でコンソールパネル28にはICカード131によってセットされた複写条件が表示されているので,オペレータはこれを適宜修正した後にスタートボタン117を押すことも可能であり,
ステップ5でコピー作業が開始できると判別された場合には,ステップ7に進んでステップ4で機能のクリアが実行されたかどうかの判別が行われ,例えば丁合モードが存在しない場合に丁合モードを使用する機能がクリアされたような場合には,T秒だけ液晶表示部112にクリアされた機能の表示が行われ,注意を促すためにピーという電子音が短時間出力され(ステップ8),液晶表示部112には,「丁合モード設定不可の状態でコピーします」という表示が行われ,この表示は例えば5秒間だけ行われ,この後,液晶表示部112の表示は通常の「コピーできます」という内容に変更され(ステップ9),これに対して,ステップ7で機能のクリアが実行されなかったと判別された場合には(N),液晶表示部112には直ちに「コピーできます」という表示が行われることになり(ステップ9),
記録装置は複写機に限らずファクシミリ装置やプリンタ等の他の画像処理装置であってもよい,装置の情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記憶した記憶媒体。」

(2) 対比・判断
ア 本件発明1について
(ア) 本件発明1と甲2発明との対比
a 甲2発明の「複写機,ファクシミリ装置あるいはプリンタ等の画情報の記録を行う機能をもった装置」は,「情報処理装置」といえ,本件発明1と甲2発明は,「情報処理装置」である点では共通する。
しかしながら,本件発明1は,「印刷装置とネットワーク経由で接続される」ものであるのに対し,甲2発明は,「印刷装置とネットワーク経由で接続される」ものではない点で相違する。

b 甲2発明では,「ICカード131の記憶領域は,(イ)編集機能コード登録領域501,(ロ)編集座標データ登録領域502,(ハ)機能登録領域503および(ニ)機能設定領域504を備え,
(ハ)機能登録領域503は,複写条件としての各種機能を登録する領域であり,ここにはこれらの機能の有無を示す各種フラグが登録され,これには,例えば,両面原稿フラグ503-1,両面コピーフラグ503-2,丁合フラグ503-3,スタックフラグ503-4,単色カラーフラグ503-5,右綴代フラグ503-6,左綴代フラグ503-7があり,
(ニ)機能設定領域504は,複写条件を各種設定するための領域であり,ここにはこれらの設定条件の希望内容がが登録され,これには,例えば縮倍率504-1やコピー濃度504-2の他に設定枚数,用紙サイズ等があり」,「複写機のICカード装置22にICカード131がセットされると,これが正規のカードである場合データの読み出しが行われ(ステップ1)」,「複写機用に機能の設定を行」うものであり,また,そのように複写機用に機能の設定を行う時点ですでに該複写機に何らかの設定が行われている場合があるのは明らかであるから,該ICカード131の記憶領域に記憶されている内容は,「印刷に関わる複数の設定内容を一括して変更するための複合設定」といえる。
したがって,本件発明1と甲2発明は,「印刷に関わる複数の設定内容を一括して変更するための複合設定をメモリから読み出す読み出し手段」を有する点で一致する。

c 甲2発明は,ICカード131から読み出されたデータにより,その複写機用に機能の設定を行ったり,要求されている機能であっても特に必要でないものについてはそれをクリアし,例えば,丁合モードが存在しない場合に丁合モードを使用する機能がクリアされ,「丁合モード設定不可の状態でコピーします」という表示が5秒間だけ行われるものであるから,甲2発明は,本件発明1の「印刷装置に装着されるオプションの情報を基に,読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが可能であるか否かを確認する確認手段」に相当する発明特定事項を有するといえる。
また,甲2発明は,コピー作業を開始させることができる状態でコンソールパネル28にはICカード131によってセットされた複写条件が表示されているから,「読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが可能であることが確認された場合は,読みだされた複合設定に対応する設定内容を印刷設定画面に表示させ,
読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが不可能であることが確認された場合は,前記オプションを利用しない設定内容を印刷設定画面に表示させる表示制御手段」に相当する発明特定事項を有するといえる。
したがって,本件発明1と甲2発明とは,「印刷装置に装着されるオプションの情報を基に,読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが可能であるか否かを確認する確認手段と,
読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが可能であることが確認された場合は,読みだされた複合設定に対応する設定内容を印刷設定画面に表示させ,
読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが不可能であることが確認された場合は,前記オプションを利用しない設定内容を印刷設定画面に表示させる表示制御手段と,を有する」点で一致する。

以上,aないしcによれば,本件発明1と甲2発明の一致点及び相違点は次のとおりである。

[一致点]
情報処理装置であって,
印刷に関わる複数の設定内容を一括して変更するための複合設定をメモリから読み出す読み出し手段と,
印刷装置に装着されるオプションの情報を基に,読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが可能であるか否かを確認する確認手段と,
読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが可能であることが確認された場合は,読みだされた複合設定に対応する設定内容を印刷設定画面に表示させ,
読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが不可能であることが確認された場合は,前記オプションを利用しない設定内容を印刷設定画面に表示させる表示制御手段と,を有する情報処理装置。

[相違点]
[相違点11-1]
本件発明1は,「印刷装置とネットワーク経由で接続される」ものであるのに対し,甲2発明は,「印刷装置とネットワーク経由で接続される」ものではない点。

[相違点11-2]
本件発明1は,「前記表示制御手段は,現在の設定内容が表示されている印刷設定画面に,複合設定の複数の選択候補を表示可能であり,
ユーザにより前記複数の選択候補に基づく複合設定の選択変更が行われる度に,選択された複合設定に関する前記読み出し手段による読み出しと,読み出された複合設定に関する前記確認手段による確認と,確認の結果に対応した前記表示制御手段による表示とを行う」ものであるのに対し,甲2発明は,そのようなものではない点。

(イ)判断
まず,「相違点11-2]について検討する。
甲2発明は,「複写機のICカード装置22にICカード131がセットされると,・・・データの読み出しが行われ・・・このデータを解読し・・・その複写機用に機能の設定を行」うものであり,この構成は,甲第2号証の明細書の「従来の技術」及び「発明が解決しようとする問題点」の記載(上記(1)ア)によれば,1つの複写機で設定した機能の設定をICカードに記憶しておき,該ICカードをセットして他の複写機でも同様の設定を可能とすることを意図したものである。
このような甲2発明にあっては,複写機の機能の設定は,ICカードなどの外部記録媒体をセットすることにより行われるようにすることが必要であるから,甲2発明において,本件発明1のような「現在の設定内容が表示されている印刷設定画面に,複合設定の複数の選択候補を表示可能であり,ユーザにより前記複数の選択候補に基づく複合設定の選択変更が行われる」ようにすることは想定できない。また,甲2発明において,そのようにすることが容易に想到し得たといい得る理由や周知技術となる証拠はない。

したがって,その他の相違点について検討するまでもなく,本件発明1は,甲2発明であるとも,甲2発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

イ 本件発明2ないし8について
本件発明2ないし4と甲2発明,本件発明5と甲2方法発明,本件発明6ないし8と甲2媒体発明とを,それぞれ対比すると,本件発明2ないし8はいずれも,上述した,本件発明1と甲2発明との[相違点11-2]に係る発明特定事項と同様の発明特定事項を備えるものであるから,上述したものと同様の判断により,本件発明2ないし8は,いずれも,甲2発明,甲2方法発明又は甲2媒体発明であるとも,甲2発明,甲2方法発明又は甲2媒体発明,及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(3) 無効理由2についてのまとめ
以上のとおり,請求項1ないし8に係る発明は,甲第2号証に記載された発明であるとも,甲第2号証に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないから,その特許についての無効理由2については理由がない。

第6 むすび
以上によれば,本件訂正は,特許法第134条の2第1項の規定に適合するものであり,また,同条第9項で準用する第126条第5項,第6項の規定に適合するものであるから,適法なものである。
そして,本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1,2,3,4,5及び7に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,その特許は,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。
また,請求人の主張及び証拠方法によっては,本件訂正後の特許請求の範囲の請求項6及び8に係る発明についての特許を無効とすることはできない。
なお,審判に関する費用については,特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により,その4分の1を請求人の負担とし,4分の3を被請求人の負担とするものとする。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷装置とネットワーク経由で接続される情報処理装置であって、
印刷に関わる複数の設定内容を一括して変更するための複合設定をメモリから読み出す読み出し手段と、
印刷装置に装着されるオプションの情報を基に、読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが可能であるか否かを確認する確認手段と、
読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが可能であることが確認された場合は、読みだされた複合設定に対応する設定内容を印刷設定画面に表示させ、
読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが不可能であることが確認された場合は、前記オプションを利用しない設定内容を印刷設定画面に表示させる表示制御手段と、を有し、
前記表示制御手段は、現在の設定内容が表示されている印刷設定画面に、複合設定の複数の選択候補を表示可能であり、
ユーザにより前記複数の選択候補に基づく複合設定の選択変更が行われる度に、選択された複合設定に関する前記読み出し手段による読み出しと、読み出された複合設定に関する前記確認手段による確認と、確認の結果に対応した前記表示制御手段による表示とを行うことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
印刷装置とネットワーク経由で接続される情報処理装置であって、
印刷に関わる複数の設定内容を一括して変更するための複合設定をメモリから読み出す読み出し手段と、
印刷装置に装着されるオプションの情報である登録オプション情報を基に、読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが可能であるか否かを確認する確認手段と、
読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが可能であることが確認された場合は、読みだされた複合設定に対応する設定内容を印刷設定画面に表示させ、
読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが不可能であることが確認された場合は、前記オプションを利用しない設定内容を印刷設定画面に表示させる表示制御手段と、
ユーザによる取得指示に応じて、印刷装置とのネットワークを介した通信によって当該印刷装置に実際に装着されているオプションの情報を取得して前記登録オプション情報を更新する第1の更新手段と、
ユーザによるマニュアル設定を受け付けて前記登録オプション情報を更新する第2の更新手段と、を有し、
前記表示制御手段は、現在の設定内容が表示されている印刷設定画面に、複合設定の複数の選択候補を表示可能であり、
ユーザにより前記複数の選択候補に基づく複合設定の選択変更が行われる度に、選択された複合設定に関する前記読み出し手段による読み出しと、読み出された複合設定に関する前記確認手段による前記登録オプション情報に基づく確認と、確認の結果に対応した前記表示制御手段による表示とを行い、
前記複合設定とは、プリンタドライバを操作するための印刷設定画面に表示される複数の設定シートで設定された前記設定内容を組み合わせた設定であることを特徴とする情報処理装置。
【請求項3】
読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが不可能であることが確認された場合は、読みだされた複合設定に対応する設定内容では印刷を実行することが不可能である旨、および読みだされた複合設定に対応する設定内容を別の設定内容に変更する旨が記述されたメッセージを表示することを特徴とする請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
印刷装置とネットワーク経由で接続される情報処理装置であって、
印刷に関わる複数の設定内容を一括して変更するための複合設定をメモリから読み出す読み出し手段と、
印刷装置に装着されるオプションの情報を基に、読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが可能であるか否かを確認する確認手段と、
読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが可能であることが確認された場合は、読みだされた複合設定に対応する設定内容を印刷設定画面に表示させ、
読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが不可能であることが確認された場合は、前記オプションを利用しない設定内容を印刷設定画面に表示させる表示制御手段と、を有し、
前記表示制御手段は、現在の設定内容が表示されている印刷設定画面に、複合設定の複数の選択候補を表示可能であり、
ユーザにより前記複数の選択候補に基づく複合設定の選択変更が行われる度に、選択された複合設定に関する前記読み出し手段による読み出しと、読み出された複合設定に関する前記確認手段による確認と、確認の結果に対応した前記表示制御手段による表示とを行い、
前記印刷設定画面は、プリンタドライバが提供するユーザインターフェイスであることを特徴とする情報処理装置。
【請求項5】
印刷装置とネットワーク経由で接続される情報処理装置が実行する情報処理方法であって、
前記情報処理装置の読み出し手段は、印刷に関わる複数の設定内容を一括して変更するための複合設定をメモリから読み出し、
前記情報処理装置の確認手段は、印刷装置に装着されるオプションの情報を基に、読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが可能であるか否かを確認し、
前記情報処理装置の表示制御手段は、読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが可能であることが確認された場合は、読みだされた複合設定に対応する設定内容を印刷設定画面に表示させ、
読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが不可能であることが確認された場合は、前記オプションを利用しない設定内容を印刷設定画面に表示させ、
前記表示制御手段は、現在の設定内容が表示されている印刷設定画面に、複合設定の複数の選択候補を表示し、
ユーザにより前記複数の選択候補に基づく複合設定の選択変更が行われる度に、選択された複合設定に関する前記読み出し手段による読み出しと、読み出された複合設定に関する前記確認手段による確認と、確認の結果に対応した前記表示制御手段による表示とを行い、
読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが不可能であることが確認された場合は、前記表示制御手段は、実行できないことを示すメッセージを表示することを特徴とする情報処理方法。
【請求項6】
印刷に関わる複数の設定内容を一括して変更するための複合設定をメモリから読み出す読み出しステップと、
印刷装置に装着されるオプションの情報を基に、読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが可能であるか否かを確認する確認ステップと、
読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが可能であることが確認された場合は、読みだされた複合設定に対応する設定内容を印刷設定画面に表示させ、
読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが不可能であることが確認された場合は、前記オプションを利用しない設定内容を印刷設定画面に表示させる表示制御ステップと、
ユーザによる指示に応じて、複合設定をメモリに追加する登録ステップと、
ユーザによる指示に応じて、複合設定をメモリから削除する削除ステップと、を、印刷装置とネットワーク経由で接続されるコンピュータに実行させるためのプログラムを記憶した記憶媒体であって、
前記登録ステップにより追加された複合設定は前記削除ステップによる削除が可能であり、前記プログラムに元から用意されている複合設定は前記削除ステップによる削除が不可能であり、
前記プログラムは更に、現在の設定内容が表示されている印刷設定画面に、複合設定の複数の選択候補を表示するステップを前記コンピュータに実行させ、ユーザにより前記複数の選択候補に基づく複合設定の選択変更が行われる度に、選択された複合設定に関する前記読み出しステップによる読み出しと、読み出された複合設定に関する前記確認ステップによる確認と、確認の結果に対応した前記表示制御ステップによる表示とを前記コンピュータに実行させ、
読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが不可能であることが確認された場合は、前記表示制御ステップは、実行できないことを示すメッセージを表示し、
前記複合設定とは、プリンタドライバが提供するユーザインターフェイスである印刷設定画面に表示される複数の設定シートで設定された前記設定内容を組み合わせた設定であり、
前記複合設定の選択変更は、印刷設定画面に表示される複数の設定シートのいずれからも行うことができる、ことを特徴とする記憶媒体。
【請求項7】
印刷に関わる複数の設定内容を一括して変更するための複合設定をメモリから読み出す読み出しステップと、
印刷装置に装着されるオプションの情報を基に、読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが可能であるか否かを確認する確認ステップと、
読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが可能であることが確認された場合は、読みだされた複合設定に対応する設定内容を印刷設定画面に表示させ、
読みだされた複合設定に対応する設定内容で印刷を実行することが不可能であることが確認された場合は、前記オプションを利用しない設定内容を印刷設定画面に表示させる表示制御ステップと、
ユーザによる指示に応じて、複合設定をメモリに追加する登録ステップと、
ユーザによる指示に応じて、複合設定をメモリから削除する削除ステップと、を、印刷装置とネットワーク経由で接続されるコンピュータに実行させるためのプログラムを記憶した記憶媒体であって、
前記登録ステップにより追加された複合設定は前記削除ステップによる削除が可能であり、前記プログラムに元から用意されている複合設定は前記削除ステップによる削除が不可能であり、
前記プログラムは更に、現在の設定内容が表示されている印刷設定画面に、複合設定の複数の選択候補を表示するステップを前記コンピュータに実行させ、ユーザにより前記複数の選択候補に基づく複合設定の選択変更が行われる度に、選択された複合設定に関する前記読み出しステップによる読み出しと、読み出された複合設定に関する前記確認ステップによる確認と、確認の結果に対応した前記表示制御ステップによる表示とを前記コンピュータに実行させ、
前記プログラムは、プリンタドライバであることを特徴とする記憶媒体。
【請求項8】
印刷に関わる複数の設定内容を一括して変更するための、メモリに格納された複合設定を選択する選択ステップと、
選択された複合設定に対応する設定内容で印刷装置に印刷を実行させることが可能である場合は、選択された複合設定に対応する設定内容を印刷設定画面に表示させ、
選択された複合設定に対応する設定内容で印刷装置に印刷を実行させることが不可能である場合は、オプションを装着せずとも印刷可能な印刷装置に装着される前記オプションを利用しない設定内容を印刷設定画面に表示させる表示制御ステップと、を、印刷装置とネットワーク経由で接続されるコンピュータに実行させるためのプログラムを記憶した記憶媒体であって、
前記プログラムは更に、現在の設定内容が表示されている印刷設定画面に、複合設定の複数の選択候補を表示するステップを前記コンピュータに実行させ、ユーザにより前記複数の選択候補に基づく複合設定の選択変更が行われる度に、ユーザにより選択された複合設定に関する前記選択ステップによる選択と、選択された複合設定に対応する設定内容で印刷装置に印刷を実行させることが可能であるか不可能であるかに対応した前記表示制御ステップによる表示とを前記コンピュータに実行させ、
前記複合設定とは、プリンタドライバが提供するユーザインターフェイスである印刷設定画面に表示される複数の設定シートで設定された前記設定内容を組み合わせた設定であり、
前記複合設定の選択変更は、印刷設定画面に表示される複数の設定シートのいずれからも行うことができる、記憶媒体。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2019-09-30 
結審通知日 2019-10-03 
審決日 2019-10-16 
出願番号 特願2011-161432(P2011-161432)
審決分類 P 1 113・ 113- ZDA (G06F)
P 1 113・ 121- ZDA (G06F)
最終処分 一部成立  
前審関与審査官 山口 大志  
特許庁審判長 ▲吉▼田 耕一
特許庁審判官 稲葉 和生
梶尾 誠哉
登録日 2013-09-27 
登録番号 特許第5372080号(P5372080)
発明の名称 情報処理装置、情報処理方法、該方法を実行する制御プログラムを記憶した媒体  
代理人 大塚 康弘  
代理人 福本 洋一  
代理人 江嶋 清仁  
代理人 杉原 朱嶺  
代理人 坂根 大亮  
代理人 鎌田 邦彦  
代理人 永川 行光  
代理人 下山 治  
代理人 木村 秀二  
代理人 高柳 司郎  
代理人 大塚 康徳  
代理人 大塚 康弘  
代理人 大塚 康徳  
代理人 下山 治  
代理人 坂田 恭弘  
代理人 高柳 司郎  
代理人 村上 光太郎  
代理人 坂田 恭弘  
代理人 永川 行光  
代理人 木村 秀二  
代理人 江嶋 清仁  

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