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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1363395
審判番号 不服2018-17415  
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-12-27 
確定日 2020-06-18 
事件の表示 特願2017-199247「HEVCビデオ符号化における論理的イントラモードネーミング」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 2月15日出願公開、特開2018- 26870〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年1月17日(パリ条約による優先権主張 2012年1月20日、米国、2012年11月12日、米国)を出願日とする特願2013-19866号の一部を平成26年2月3日に出願した特願2014-18483号の一部を平成27年11月4日に出願した特願2015-216616号の一部を平成28年10月17日に出願した特願2016-203275号の一部を平成29年10月13日に出願したものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成29年10月30日 :手続補正
平成30年 8月1日付け :拒絶理由通知
平成30年 8月21日 :意見書提出および手続補正
平成30年 9月18日付け:拒絶理由通知(最後)
平成30年10月11日 :意見書提出および手続補正
平成30年10月31日付け:補正却下の決定および拒絶査定
平成30年12月27日 :拒絶査定不服審判請求および手続補正
平成31年 1月31日 :前置報告

第2 平成30年12月27日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成30年12月27日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
平成30年12月27日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成30年8月21日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし12を、本件補正による特許請求の範囲の請求項1ないし12に補正するものであり、本件補正は、補正前の請求項7を補正後の請求項7とする補正事項を含むものである(下線は補正箇所を示す。)。

(補正前の請求項7)
画像処理装置において、イントラ予測を行う方法であって、
前記イントラ予測を行うブロックの左に隣接する左隣接ブロックに対する第一のイントラ予測モードと前記ブロックの上に隣接する上隣接ブロックに対する第二のイントラ予測モードとが共に第一の方向の方向予測モードである場合、前記ブロックに対する候補となるイントラ予測モードとして、前記第一の方向の方向予測モードと前記第一の方向に隣接する第二の方向の方向予測モードと前記第一の方向に隣接し前記第二の方向とは異なる第三の方向の方向予測モードとを設定するステップと、
設定された前記第一の方向の方向予測モードと前記第二の方向の方向予測モードと前記第三の方向の方向予測モードとから、前記ブロックに対してイントラ予測を行う際に用いられるイントラ予測モードを選択するステップと、
選択されたイントラ予測モードを用いて、前記ブロックに対して前記イントラ予測を行い、前記ブロックに対する予測画像を生成するステップと、
生成された前記予測画像を用いて、前記ブロックを復号して復号画像を生成するステップと、
を含む方法。

(補正後の請求項7)
画像処理装置において、イントラ予測を行う方法であって、
前記イントラ予測を行うブロックの左に隣接する左隣接ブロックに対する第一のイントラ予測モードと前記ブロックの上に隣接する上隣接ブロックに対する第二のイントラ予測モードとが共に第一の角度方向の方向予測モードである場合、前記ブロックに対する候補となるイントラ予測モードとして、前記第一の角度方向の予測と、前記第一の角度方向に隣接する第二の角度方向の予測と、前記第一の角度方向に隣接し前記第二の角度方向とは異なる第三の角度方向の予測とを設定するステップと、
設定された前記第一の角度方向の予測と前記第二の角度方向の予測と前記第三の角度方向の予測とから、前記ブロックに対してイントラ予測を行う際に用いられるイントラ予測モードを選択するステップと、
選択されたイントラ予測モードを用いて、前記ブロックに対して前記イントラ予測を行い、前記ブロックに対する予測画像を生成するステップと、
生成された前記予測画像を用いて、前記ブロックを復号して復号画像を生成するステップと、
を含む方法。

2 補正の適合性
(1)補正の目的について
請求項7に係る補正は、補正前の「前記第一(二、三)の方向の方向予測モード」という記載を、補正後の「第一(二、三)の角度方向の予測」という記載とする補正である。
当該補正は、補正前の「方向の方向予測モード」を、「角度方向の予測」とすることで予測に関する「方向」が「角度方向」であることを限定することで下位概念化とともに、補正前の「イントラ予測モードとして、」「方向予測モードを設定する」という記載を、「イントラ予測モードとして、」「角度方向の予測を設定する」として明確化するものであって、これらを総合すると、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正といえる。
そして、いずれの補正も本件補正前の請求項7に記載された発明と本件補正後の請求項7に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は変わるものではなく、同一であるといえるから、請求項7に係る補正は、特許法第17条の2第5項第2号の規定に適合するものである。

(2)補正の範囲及び単一性について
本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲、及び図面(以下、明細書等という)には、以下の記載がある。(下線は、強調のため当審で付したものである。)

「【0010】
本発明の方法を利用すると、高速イントラモード決定アルゴリズムを単純化することができる。モードがナンバー(ネーム)と角度方向の間の明確なリンク(関連性)を提供するので、階層手法を利用するような様々な高速モード決定(FMD)アルゴリズムの適用が容易である。更に、本方法は、例えば、3つのMPMアルゴリズムのようなアルゴリズムを単純化するために近傍の及び垂直モードを取得するような他のアルゴリズムを容易又は単純化することができる。従って、論理的イントラモードネームと角度方向の間の関連性を利用することは、決定論理及びルックアップテーブルの単純化、又は特定のルックアップテーブルの除去を共に可能にする。」
「【0019】
(4)本発明におけるモードナンバーはその角度を示すので、リアルタイム符号器に対する高速モード決定の設計がはるかに簡単になる。粗決定に迅速に到達することができ、例えば、最初に方向の低解像度をテストし、その結果に基づいて、最適モードに近いモードだけを第2段階でテストすることができる。」
「【0038】
図7A及び図7Bは、イントラ予測モードの符号化及び復号を支援するために符号器及び復号器の両方で利用される、3MPMを決定する例示的な実施形態を示している。決定150において、左の近傍PUがイントラ符号化(モード)である場合には、ブロック152において値iLeftIntraDirが左近傍のPUのイントラ予測モードに設定され、そうでない場合には、ブロック154において、iLeftIntraDirがDCに設定される。決定156において、上近傍のPUがイントラ符号化されている場合、ブロック158において、値iAboveIntraDirが上近傍のPUのイントラ予測モードに設定され、そうでない場合には、ブロック160において、iAboveIntraDirはDCに設定される。iLeftIntraDir及びiAboveIntraDirを使用して(162)、ブロック164においてこれらが等しくない場合、ブロック166において、何れか1つが平面であるかどうかチェックされる。
(中略)
ブロック164に戻り、iLeftIntraDirがiAboveIntraDirに等しい場合、ブロック176では、iLeftIntraDirが角度のあるかどうかをチェックをする。非角度のiLeftIntraDirに対して、ブロック178において、MPM0は平面に設定され、MPM1はDCに設定され、MPM2は垂直に設定される。角度のあるiLeftIntraDirに対しては、ブロック180においてMPM0はiLeftIntraDirに設定され、MPM1はiLeftIntraDir-δに設定され、MPM2は、iLeftIntraDir+δに設定され、ここでδの値は、HM5.0における4x4PUに対して2でありPUサイズの残りに対して1である。この場合も同様に、当業者であれば、本発明の教示から逸脱することなく異なる値を利用できる点を理解するであろう。」

上記の明細書等の記載によれば、上記補正事項は、特に【0010】、【0038】の記載に基づくものであるから、請求項7に係る補正は、本願出願時の明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第17条の2第3項の規定に適合するものである。

また、請求項7に係る補正は、上記のとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正であるから、本件補正前の請求項7に記載された発明と、本件補正後の請求項7に記載された発明は、発明の単一性の要件を満たすものといえ、請求項7に係る補正は、特許法第17条の2第4項の規定に適合するものである。

(3) 独立特許要件について
以上のように、請求項7に係る補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正であるから、本件補正後の請求項7に記載された発明が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。

(3-1)本件補正発明
本件補正後の請求項7に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)は、次のとおりのものである。(なお、本件補正発明の各構成の符号は、請求項の記載を分節するために当審で付したものであり、請求項の記載を符号を用いて、以下、発明特定事項A?発明特定事項Eと称する。)

(本件補正発明)
A 画像処理装置において、イントラ予測を行う方法であって、
B1 前記イントラ予測を行うブロックの左に隣接する左隣接ブロックに対する第一のイントラ予測モードと前記ブロックの上に隣接する上隣接ブロックに対する第二のイントラ予測モードとが共に第一の角度方向の方向予測モードである場合、
B2 前記ブロックに対する候補となるイントラ予測モードとして、前記第一の角度方向の予測と、前記第一の角度方向に隣接する第二の角度方向の予測と、前記第一の角度方向に隣接し前記第二の角度方向とは異なる第三の角度方向の予測とを設定するステップと、
C 設定された前記第一の角度方向の予測と前記第二の角度方向の予測と前記第三の角度方向の予測とから、前記ブロックに対してイントラ予測を行う際に用いられるイントラ予測モードを選択するステップと、
D 選択されたイントラ予測モードを用いて、前記ブロックに対して前記イントラ予測を行い、前記ブロックに対する予測画像を生成するステップと、
E 生成された前記予測画像を用いて、前記ブロックを復号して復号画像を生成するステップと、
A を含む方法。

(3-2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1である、
Wei-Jung Chien et al.,Parsing friendly intra mode coding,Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG16 WP3 and ISO/IEC JTC1/SC29/WG11,6th Meeting: Torino,IT,14-22 Jury,2011,Document:JCTVC-F459,2011年7月,pp.1-5
には、以下の記載がある(括弧内に当審で作成した仮訳を添付する。また、下線は強調のために当審で付した。)。

(ア)「Abstract
This contribution presents a coding method for intra prediction mode. In the current HEVC Test Model, different codeword binerizations are defined based on the intra prediction modes of neighboring partitions for the luma intra prediction mode coding.」

(要約
この寄書は、イントラ予測モードに関するコーディング方法を提示する。現在のHEVCテストモデルでは、異なる符号語の二値化は輝度イントラ予測モードコーディングにおける隣接した部分のイントラ予測モードに基づいて定義される。)

(イ)「1 Introduction
In the current HEVC Test Model (HM 3.0), the parsing of luma intra prediction mode (intra_pred_mode) depends on intra_pred_mode of the neighboring blocks A and B, as shown in Figure 1. In the current Working Draft[2], candidate mode list (candModeList) and number of candidate modes (NumMPMC) are derived from the intra_pred_mode of the neighboring blocks A and B (candIntraPredModeA and candIntraPredModeB) as follows:
- If both candIntraPredModeN are not available, then the value 2 is assigned to candModeList[ 0 ] and NumMPMC and is set equal to 1
- Otherwise, if only one candIntraPredModeN is available or if both candIntraPredModeN are the same, then this candIntraPredModeN is assigned to candModeList[ 0 ] and NumMPMCand is set equal to 1
- Otherwise, both candIntraPredModeN are assigned to the candidate modes list with the smaller of the two candidates at candModeList[ 0 ] and the larger at candModeList[ 1 ] and NumMPMC and is set equal to 2.
The parsing throughput is affected due to necessity of prior knowledge of intra prediction modes of neighboring blocks A and B (candIntraPredModeA and candIntraPredModeB).」

(現在のHEVCテストモデル(HM3.0)では、輝度イントラ予測モード(intra_pred_mode)の解析は図1に示される隣接ブロックAとBのintra_pred_modeに依存する。現在のワーキングドラフト[2]では、候補モードリスト(candModeList)と候補モードの数(NumMPMC)は隣接ブロックAとBのintra_pred_mode(candIntraPredModeAとcandIntraPredModeB)から以下のように導出される。
- もし、両方のcandIntraPredModeNが利用できなければ、値2がcandModeList[0]に代入され、NumMPMCが1に等しく設定される。
- そうでない場合、もし唯一のcandIntraPredModeNが利用可能であるか、両方のcandIntraModeNが同じであれば、candIntraModeNがcandIntraMode[0]に代入され、NumMPMCが1に等しく設定される。
- そうでない場合、両方のintraPredModeNumが候補モードリストに割り当てられ、2つの候補のうち小さい方がcandModeList[0]に代入され、大きい方がcandModeList[1]に代入され、NumMPMCが2に等しく設定される。
解析のスループットは、隣接ブロックAとBのイントラ予測モード(candIntraPredModeAとcandIntraPredModeB)の以前の知識の必要性に応じて影響される。)

(ウ)「2 Proposed Algorithm
In this proposal, the number of candidate modes(NumMPMC) is a constant, i.e. NumMPMC does not change whether candIntraPredModeA and candIntraPredModeB are different or not. Also, the number of available chroma intra prediction modes is also constant. With the proposed algorithm, the parsing process can be performed without accessing the neighboring intra prediction modes.

3.1 Luma intra prediction mode

In luma intra prediction, the proposed algorithm uses three most probable candidate modes(MPMC), i.e. NumMPMC=3. The derivation of MPMC is as follows:
- If both candIntraPredModeN are not available, then the value 2 is assigned to candModeList[ 0 ], the value 0 is assigned to candModeList[ 1], and the value 1 is assigned to candModeList[ 2 ],
- Otherwise, if both candIntraPredModeN are the same, then this candIntraPredModeN is assigned to candModeList[ 0 ]. candModeList[ 1 ] and candModeList[ 2 ] are derived by applying the following procedure with Table3.1, 3.2, and 3.3.
- If intraPredModeNum is equal to M, PredModeMinus1_M[candModeList[ 0 ] is assigned to candModeList[ 1 ], PredModePlus1_M[candModeList[ 0 ] is assigned to candModeList[ 2 ], where M represents intraPredModeNum.」

(2 提案されたアルゴリズム
この提案では、候補モードの数(NumMPMC)は一定、すなわち、NumMPMCはcandIntraPredModeAとcandIntraPredModeBが異なるか否かにかかわらず変わらない。また、利用可能な色差イントラ予測モードの数も一定である。この提案されたアルゴリズムでは、解析処理は隣接するイントラ予測モードにアクセスすることなく実行される。
3.1 輝度イントラ予測モード
輝度イントラ予測において、提案されたアルゴリズムは3つの最尤候補モード(MPMC)を用いる。すなわち、NumMPMC=3である。MPMCの導出は以下の通りである。
- 両方のcandIntraPredModeNが利用できなければ、値2がcandModeList[0]に、値0がcandModeList[1]に、値1がcandModeList[2]に、割り当てられる。
- そうでない場合、もし両方のcandIntraPredModeNが同じであれば、candIntraPredModeNがcandModeList[0]に割り当てられ、candModeList[1]とcandModeList[2]はTable3.1、3.2、及び3.3を用いて以下の手順を適用することにより導出される。
- もしintraPredModeNumがMに等しければ、PredModeMinus1_M[candModeList[0]]がcandModeList[1]に代入され、PredModePlus1_M[candModeList[0]]がcandModeList[2]に代入される、ここで、MはintraPredModeNumを表す。)

(エ)「



(図1 左と上のブロックについてのintra_pred_mode)

(オ)「


(表3.3 intraPredNumが35に等しい時の候補モードのマッピング)

(カ)「3.2 Chroma intra prediction mode
In the proposed method, there are six available chroma intra prediction modes (IntraPredModeC) that can be signaled. Two modes, luma signal prediction and reuse of the luma intra prediction mode remain unchanged. For the other four modes, two choices are added, which are the adjacent intra prediction modes (Table 3.2 and Table 3.3) and the perpendicularly adjacent intra prediction modes (Table 3.4 and Table 3.5). 」

(3.2 色差イントラ予測モード
提案方法では、シグナルされる6つの利用可能なイントラ予測モード(IntraPredModeC)がある。2つのモードでは、輝度信号予測と再利用する輝度イントラ予測モードは変更しないままである。他の4つのモードについて、2つの選択が加えられており、それらは隣接イントラ予測モード(表3.2と表3.3)と垂直隣接予測モード(表3.4と表3.5)である。)である。

イ 引用文献1において参照されている文献(参照文献)
引用文献1の上記箇所イにおいて「現在のワーキングドラフト[2]」として参照されている、Thomas Wiegand et al.,WD3: Working Draft 3 of High-Efficiency Video Coding,Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG16 WP3 and ISO/IEC JTC1/SC29/WG11,5th Meeting: Geneva,CH,16-23 March,2011,Document:JCTVC-E603、2011年6月(以下、参照文献という)には、以下の記載がある。

「8.3 Decoding process for coding units coded in intra prediction mode
Inputs to this process are:
- a luma location ( xB, yB ) specifying the top-left luma sample of the current coding unit relative to the top-left luma sample of the current picture,
・・・
Output of this process is:
- a modified reconstructed picture before deblocking filtering.
・・・
8.3.1 Derivation process for luma intra prediction mode
・・・
Table 8-1 specifies the value for the intra prediction mode and the associated names.

Table 8-2 specifies the number of luma intra prediction modes intraPredModeNum depending on log2TrafoSize.


・・・
IntraPredMode[xB][yB] labelled 0,1,2,..,33 represents directions of predictions as illustrated in Figure 8-1.

・・・
4. For N being either replaced A or B, the variables candIntraPredModeN are derived as follows.
・・・
6. IntraPredMode[xB][yB] is derived by applying the following procedure.
- If prev_intra_pred_flag[xB][yB] is true, the IntraPredMode[xB][yB] is set equal to candModeList[mpm_idx[xB][yB]
・・・
8.3.2 Derivation process for chroma intra prediction mode
・・・
8.3.3 Decoding Process for intra blocks
Inputs to this process are:
- a sample location (xB, yB) specifying the top-left sample of the current block relative to the top-left sample of the current picture,
・・・
- a variable intraPredMode specifying the intra prediction mode.
・・・
Output of this process is:
- a modified reconstructed picture before deblocking filtering.
Depending split_transform_flag[xB][yB][trafoDepth], the following applies:
・・・・
- Otherwise (split_transform_flag[xB][yB][trafoDepth] is equal to 0), the following ordered steps apply:
・・・
2. The intra sample prediction process as specified in subclause 8.3.3.1 is invoked with the location (xB, yB), the intra prediction mode intraPredMode, the prediction size nS and the variable cIdx as the inputs and the output is a (nS)x(nS) array predSamples.
・・・
4. The residual signal accumulation process as specified in subclause XXX is invoked with the variable arraySize set equal to nS, the (nS)x(nS) array predSamples, and the (nS)x(nS) array resSamples as the inputs and the output is a (nS)x(nS) array recSamples.
5. The picture reconstruction process for a component before deblocking filtering as specified in subclause XXX is invoked with the location (xB, yB), the variable arraySize set equal to nS, the variable cIdx set equal to 0, and the (nS)x(nS) array recSamples as the inputs and the output is a modified reconstructed picture before deblocking filtering.

8.3.3.1 Intra sample prediction
Inputs to this process are:
- a sample location (xB,yB) specifying the top-left sample of the current block relative to the top-left sample of the current picture,
- a variable intraPredMode specifying the luma intra prediction mode,
・・・
Output of this process is:
- the predicted samples predSamples[x,y],with x,y=0..nS-1.


(8.3 イントラ予測モードにおける符号化ユニットの復号処理
この処理の入力:
- 現在ピクチャの上と左の輝度サンプルに関する現在ブロックの上と左の輝度サンプルを特定する輝度位置(xB、yB)
・・・
この処理の出力:
- デブロッキングフィルタ前の変更された再構成画像
・・・
8.3.1 輝度イントラ予測モードの導出処理
・・・
表8-1はイントラ予測モードの値と関連する名称が特定されている。

表8-1-イントラ予測モードと関連する名称の特定

表8-2は輝度イントラ予測モードの数intraPredModeNumがlog2Trafosizeに依存することを特定する。
・・・・
0,1,2,・・,33がラベルされたIntraPredMode[xB][yB]は図8-1により図示される予測の方向を表している。



図8-1-イントラ予測モードの方向(参考)
・・・
4.NをAまたはBのいずれかに置き換えることで、変数candIntraPredModeNは以下のように導出される。
・・・
6.IntraPredMode[xB][yB]は、以下の手順を適用することで導出される。
- もし、prev_intra_pred_flag[xB][yB]が真ならば、前記IntraPredMode[xB][yB]はcandModeList[mpm_idx[xB][yB]]と等しく設定される
・・・
8.3.2 色差イントラ予測モードの導出処理
・・・
8.3.3 イントラブロックの復号処理
この処理における入力:
- 現在ピクチャの上と左のサンプルに関する現在ブロックの上と左のサンプルを特定するサンプル位置(xB、yB)
・・・
- イントラ予測モードを特定する変数intraPredMode。
・・・
この処理における出力:
- デブロッキングフィルタリング前の変更された再構成画像。
split_transform_flag[xB][yB][trafoDepth]に依存して、以下が適用される
・・・
- そうでなければ(split_transform_flag[xB][yB][trafoDepth]が0に等しければ)以下の順序のステップが適用される
・・・・
2.サブクローズ8.3.3.1にて特定されるイントラサンプル予測処理は、上記位置(xB、yB)、イントラ予測モードintraPredMode、予測サイズnSと変数cIdxを入力として呼び出され、(nS)x(nS)の配列predSamplesを出力とする。
・・・
4.サブクローズXXXにおいて特定される残差加算処理は、nSに設定された変数arraySize、上記(nS)x(nS)の配列predSamplesと(nS)x(nS)の配列resSamplesを入力として呼び出され、(nS)x(nS)の配列recSamplesを出力とする。
5.サブクローズXXXにおいて特定されるデブロッキングフィルタリングの前にコンポーネントに対する画像再構成処理は、上記位置(xB、yB)と、nSに設定された変数arraySize、0に設定された変数cIdx、上記(nS)x(nS)の配列recSamplesを入力として呼び出され、デブロッキングフィルタリングの前の再構成画像を出力とする。

8.3.3.1 イントラサンプル予測
この処理における入力:
- 現在ピクチャの上と左のサンプルに関する現在ブロックの上と左のサンプルを特定するサンプル位置(xB、yB)
- 輝度イントラ予測モードを特定する変数intraPredMode
・・・
この処理における出力
- 予測されたサンプルpredSamples[x、y]、x、y=0..nS-1.)

(3-3) 引用文献1に記載された発明
(ア) 引用文献1の図1から導かれる事項について
引用文献1の図1から、大きなブロックの左に記号Aが付されたブロックが、上に記号Bが付されたブロックが看取することができ、図1の説明として、左と上のブロックについてのintra_pred_modeという記載がある。
そうすると、大きなブロックの左に隣接する記号Aが付されたブロックが隣接ブロックAであり、これを左隣接ブロックAと、大きなブロックの上に隣接する記号Bが付されたブロックが隣接ブロックBであり、これを上隣接ブロックBと称することができる。
さらに、隣接ブロックA、Bと接するブロックが輝度イントラ予測モードの解析が行われるブロックであると認められる。

(イ) 参照文献から導かれる輝度イントラ予測モードに関する事項について
(イ-1) 参照文献には、8.3.1における輝度イントラ予測モードの導出処理に関し、intraPredeModeNumは輝度イントラ予測モード数を表すことが、8.3.3におけるイントラブロックの復号処理に関し、8.3.3のイントラ予測モードを特定する変数intraPredModeは、8.3.3.1において、輝度イントラ予測モードを特定する変数であることが、それぞれ記載されているといえる。

(イ-2) 一方、参照文献には、8.3.1における輝度イントラ予測モードの導出処理に関し、表8-1、図8-1から、イントラ予測モードが0から35まであるものが示されており、表8-1から、35のIntra_FromLumaについては、色差のみに用いられることが記載されているといえる。

(イー3) 参照文献の8.3.1の4には、変数candIntraPredModeNにおいて、NをAまたはBのいずれかに置き換えたものが、変数candIntraPredModeA及び変数candIntraModeBであることが記載されている。そうすると、両方のcandIntraPredModeNとは、candIntraPredModeA及びcandIntraPredModeBであると認められる。

(イー4) 参照文献の8.3.1には、0,1,2,・・・,33がラベルされたIntraPredMode[xB][yB]は、図8-1により図示される予測の方向を表していると記載されており、IntraPredModeはイントラ予測モードにおける予測の方向を表すといえる。
また、参照文献の8.3.1の6には、IntraPredMode[xB][yB]がcandModeList[mpm_idx[xB][yB]]に等しい値に設定されることが記載されており、イントラ予測モードにおける予測の方向を表すIntraPredModeはcandModeListから求められることが記載されているといえる。

(ウ) イントラ予測処理及び復号処理について
引用文献1はHEVC(High EfficiencyVideo Coding)テストモデルにおけるイントラ予測モードの候補モードリストcandModeListを用いるイントラ予測モードにおけるコーディング方法に関する文献であり、参照文献の内容を含むものである。

ここで、参照文献の8.3はイントラ予測モードにおける符号化ユニットの復号処理に関するものであり、現在ピクチャの上と左の輝度サンプルに関する現在ブロックの上と左の輝度サンプルを特定する輝度位置(xB、yB)を入力として、変更された再構成画像を出力することが、
8.3.3はイントラブロックの復号処理に関するものであり、上記位置(xB、yB)とイントラ予測モードを特定する変数intraPredModeを入力として、変更された再構成画像を出力するものであり、
8.3.3の2.には、8.3.3.1において特定されるイントラサンプル予測処理において、上記位置(xB、yB)とイントラ予測モードintraPredModeを入力として呼び出され、予測されたサンプルである配列predSamplesを出力することが、
8.3.3の4.には、残差加算処理は配列predSamplesを入力として呼び出され、配列recSamplesを出力とすることが、
8.3.3の5には、画像再構成処理は配列recSamplesを入力として呼び出され、変更された再構成画像を出力することが、
それぞれ記載されている。

そうすると、参照文献には、イントラ予測モードにおける復号処理において、イントラ予測モードを特定する変数intraPredModeを入力として、イントラサンプル予測処理において、予測されたサンプルを出力し、該予測されたサンプルを入力として、残差加算処理を行い、画像の再構成処理を経て、変更された再構成画像を出力する生成することが記載されているといえる。

したがって、参照文献を踏まえた引用文献1は、イントラ予測モードにおける復号処理において、イントラ予測モードを用いて、イントラサンプル予測処理において、予測されたサンプルを出力し、該予測されたサンプルを入力として、残差加算処理、画像の再構成処理を経て、変更された再構成画像を出力することについて記載された文献であるといえる。

(エ) まとめ
以上によれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という)が記載されているものと認められる。引用発明の各構成は、符号(a)?(e)を用いて、以下、構成(a)?(e)と称する。

(引用発明)
(a) イントラ予測モードに関するコーディング方法であって、HEVCテストモデルにおいて、輝度イントラ予測モード(intra_pred_mode)の解析は隣接ブロックAとBのintra_pred_modeに依存するものであり、現在のワーキングドラフト[2]では、候補モードリスト(candModeList)と候補モードの数(NumMPMC)は、隣接ブロックAと隣接ブロックBのintra_pred_mode(candIntraPredModeAとcandIntraPredModeB)から導出されるものであり、隣接ブロックAとBのイントラ予測モードはcandIntraPredModeAとcandIntraPredModeBであるものにおいて、
この提案では、候補モードの数(NumMPMC)は一定の、輝度イントラ予測において、3つの最尤候補モード(MPMC)を用い、MPMCの導出は以下のとおりであり、
(b0) 両方のcandIntraPredModeNが利用できなければ、値2がcandModeList[0]に、値0がcandModeList[1]に、値1がcandModeList[2]に、割り当てられ、
(b1) そうでない場合、もし両方のcandIntraModeNが同じであれば、
(b2) candIntraModeNがcandModeList[0]に割り当てられ、candModeList[1]とcandModeList[2]は表3.1、3.2、及び3.3を用いて以下の手順を適用することにより導出され、
(b21) もし輝度イントラ予測モードの数intraPredModeNumがMに等しければ、PredModeMinus1_M[candModeList[0]]がcandModeList[1]に代入され、PredModePlus1_M[candModeList[0]]がcandModeList[2]に代入され、
(b3) 表3.3 intraPredNumが35に等しい時の候補モードのマッピング

であり、
(b4) 隣接ブロックAが左隣接ブロックAであり、隣接ブロックBが上隣接ブロックであり、隣接ブロックA、Bと接するブロックが輝度イントラ予測モードの解析が行われるブロックであり、
(b5) intraPredModeNumは輝度イントラ予測モード数を、変数intraPredModeは輝度イントラ予測モードを特定するものであり、
(b6) 輝度イントラ予測モードの導出処理について、イントラ予測モードが0から35まであり、イントラ予測モードの方向は、

であり、ただし、35のIntra_FromLumaは、色差の場合のみ用いられるものであり、
(b7) 両方のcandIntraPredModeNとは、candIntraPredModeA及びcandIntraPredModeBであり、
(c) イントラ予測モードにおける予測の方向を表すIntraPredModeはcandModeListから求められ、
(d) 求められたイントラ予測モードを用いてイントラサンプル処理において、予測されたサンプルを出力し、
(e) 該予測されたサンプルを入力として、残差加算処理、画像の再構成処理を経て、変更された再構成画像を出力する、
(a) イントラ予測モードに関する復号処理を行うコーディング方法。

(3-4) 本件発明と引用発明との対比及び判断
次に、本件発明と引用発明とを対比する。

ア 発明特定事項Aについて
構成(a)の「HEVCテストモデルにおいて」「イントラ予測モードに関するコーディング方法」は、本件補正発明の発明特定事項A「画像処理装置において、イントラ予測を行う方法」に相当する。

イ 発明特定事項B1について
(ア) 構成(a)における、輝度イントラ予測モード(intra_Pred_mode)、隣接ブロックAと隣接ブロックBのintra_pred_mode(candIntraPredModeAとcandIntraPredModeB)という事項、構成(b4)における、隣接ブロックAが左隣接ブロックAであり、隣接ブロックBが右隣接ブロックBであるという事項、構成(b7)における、両方のcandIntraPredModeNとは、candIntraPredModeA及びcandIntraPredModeBであるという事項から、構成(b0)(b1)の「両方のcandIntraPredModeN」とは、左隣接ブロックAの輝度イントラ予測モードcandIntraPredModeAと右隣接ブロックBの輝度イントラ予測モードcandIntraPredModeBを指すものといえる。
そうすると、構成(b0)の「両方のcandIntraPredModeNが利用できな」い場合を踏まえた、構成(b1)の「そうでない場合、両方のcandIntraModeNが同じ」であるとは、左隣接ブロックAの輝度イントラ予測モードcandIntraPredModeAと上隣接ブロックBの輝度イントラ予測モードcandIntraPredModeBが利用可能であって、candIntraPredModeAとcandIntraPredModeBが等しいことを特定するものである。

(イ) 次に、構成(b3)について検討すると、表3.3から、(intraPredMode、PredModeMinus1_35、PredModePlus1_35)の組み合わせとして、(1,30,29)、(2,0,1)、(3,26,18)、(4,19,20)、(5,23,24)、(6,25,9)、(7,28,27)、(8,32,31)、(9,6,33)、(10,18,19)、(11,21,20)、(12,22,23)、(13,24,25)、(14,27,26)、(15,29,28)、(16,31,30)、(17,33,32)、(18,3,10)、(19,10,4)、(20,4,11)、(21,11,0)、(22,0,12)、(23,12,5)、(24,5,13)、(25,13,6)、(26,14,3)、(27,7,14)、(28,15、7)、(29,1,15)、(30,16,1)、(31,8,16)、(32,17,8)、(33,9,17)、(34,0,1)があることがいえる(以下、組み合わせCという)。

(ウ) さらに、構成(b6)について検討すると、構成(b5)に定義される輝度イントラ予測モードを特定する変数intraPredModeの値が、0,1,3から33の場合について、イントラ予測モードの方向が番号付けられて並んでいることがいえる。また、構成(b6)は輝度イントラ予測モードの導出処理に関するものであることから、イントラ予測モードの方向は輝度イントラ予測モードの方向であることは自明である。

(エ) (ア)から、構成(b1)の両方のcandIntraPredModeN、すなわち、構成(a)の輝度イントラ予測モードcandIntraPredModeAと輝度イントラ予測モードcandIntraModeB、は、それぞれ本件補正発明の発明特定事項B1における「前記イントラ予測を行うブロックの左に隣接する左隣接ブロックに対する第一のイントラ予測モード」と「前記ブロックの上に隣接する上隣接ブロックに対する第二のイントラ予測モード」にそれぞれ相当する。
さらに、構成(b1)の両方のcandIntraPredModeNが同じである場合のうち、上記(ウ)における輝度イントラ予測モードを特定する変数intraPredModeの値が0,1,3から33の値をとる場合、すなわち、輝度イントラ予測モードcandIntraPredModeAとcandIntraPredModeBの両方が同じ値であって0,1,3から33のいずれかの値をとる場合、が、本件補正発明の発明特定事項B1において、「第一のイントラ予測モードと第二のイントラ予測モードとが共に第一の角度方向の方向予測モードである場合」に相当する。

ウ 発明特定事項B2について
(ア) 構成(b6)について検討すると、構成(b5)に定義される輝度イントラ予測モードを特定する変数intraPredModeの値が、9,33,17,32,8,31,16,30,1,29,15,28,7,27,14,26,3,18,10,19,4,20,11,21,0,22,12,23,5,24,13,25,6の順番に輝度イントラ予測モードの方向が番号付けられて並んでおり、さらに番号6と番号9の輝度イントラ予測モードの方向の間には、他のイントラ予測モードの方向を示すものは何も存在しないことがいえる。
そうすると、変数intraPredModeの値と輝度イントラ予測モードの方向の番号とを対応させると、9,33,17,32,8,31,16,30,1,29,15,28,7,27,14,26,3,18,10,19,4,20,11,21,0,22,12,23,5,24,13,25,6の順番の輝度イントラ予測モードの方向が隣り合っており、さらに6と9の輝度イントラ予測モードの方向が隣り合っているといえる(以下、この番号の並びを並びLという)。

(イ) 構成(b3)の組み合わせCにおいて、輝度イントラ予測モードを表す変数intraPredModeと並びLの番号とを対応付けると、Cのすべての組み合わせ要素において、PredModeMinus1_35の値とPredModePlus1_35の値は、並びLにおけるintraPredModeの値の両隣の値となる。
そうすると、構成(b3)(b5)(b6)から、引用発明では、変数intraPredModeが0,1,3から33の値、すなわち、所定の輝度イントラ予測モードの方向を意味する値、をとる場合は、PredModeMinus1_35、PredModePlus1_35は、該輝度イントラ予測モードの方向に対して、両側に隣接する輝度イントラ予測モードの方向となることを意味する値を持つことがいえる。

(ウ) また、構成(b1)を踏まえた構成(b2)(b21)によれば、candIntraModeNがとる等しい値(以下、この値をmとする)がcandModeList[0]に割り当てられ、PredModeMinus1_35[m]がcandModeList[1]に、PredModePlus1_35[m]がcandModeList[2]にそれぞれ代入される。
そうすると、上記組み合わせCは、輝度イントラ予測モードの値mに対して、(m、PredModeMinus1_35[m]、PredModePlus1_35[m])の組み合わせと同じであるといえる。

(エ) (ア)?(ウ)を総合すると、構成(b1)を踏まえた構成(b2)(b21)において、candModeList[0]、candModeList[1]、candModeList[2]を導出することは、所定のイントラ予測モードの方向となる値をとる場合に、該イントラ予測モードの方向に対して、両側に隣接するイントラ予測モードの方向となる値をイントラ予測モードの候補として得るものといえる。
このとき、所定のイントラ予測モードの方向(ここではD0という)となる値を設定した場合に、D0に隣接するイントラ予測モードの方向(ここではD1という)の値と、同じくD0に隣接するが、D1とは異なる方向に隣接する予測モードの方向(ここではD2という)の値を設定することになる。
これは発明特定事項B2に相当する。

エ 発明特定事項Cについて
構成(c)の「イントラ予測モードにおける予測の方向を表すIntraPredModeはcandModeListから求められ」ることについて、「candModeList」はイントラ予測モードにおける予測の方向を求めることに用いられるといえる。
また、イントラ予測モードにおける予測が行われるのは、構成(b4)の「イントラ予測モードの解析が行われるブロック」であることは明らかである。
一方、発明特定事項Cの「設定された前記第一の角度方向の予測と前記第二の角度方向の予測と前記第三の角度方向の予測」も、前記ブロックに対してイントラ予測を行う際に用いられる。
そうすると、構成(c)は発明特定事項Cに相当する。

オ 発明特定事項D、Eについて
構成(d)における「求められたイントラ予測モード」は構成(b4)の「輝度イントラ予測モードの解析が行われるブロック」についてのイントラ予測モードであることは明らかであり、該ブロックが本件補正発明の発明特定事項D、Eの「前記ブロック」に相当することは明らかである。
また、構成(d)(e)における「予測されたサンプル」「再構成画像を出力する」は、それぞれ発明特定事項D、Eの「前記ブロックに対する予測画像」「復号画像を生成する」に相当する。
そうすると、構成(d)(e)は、発明特定事項D,Eに相当する。

(3-5) 小括
以上のア?オの対比に基づき、本件発明と上記引用発明とを比較すると、両者は一致し、実質的な相違点は見当たらないことから、本件発明は特許法第29条第1項第3号に該当し、独立して特許を受けることができない。

(4) 審判請求人の主張について
審判請求人は平成30年12月27日付け審判請求書の「3.本願発明が特許されるべき理由」の「3.2 本願発明と引用発明との対比」において、以下のような主張をしているので、これらについて検討する。

(4-1) ルックアップテーブルを必要とすることなく方向角度を決定することについて
(請求人の主張)
「具体的には、審査官殿は、引用文献1について、「if both candIntraPredModeN are the same」以下の記載に基づき、第一のイントラ予測モードと第二のイントラ予測モードと共に第一の方向予測モードである場合、イントラ予測を行うブロックに対する候補となるイントラ予測モードとして、第一の方向予測モードと第二の方向予測モードと第三の方向予測モードとを設定することが開示されていると認定しております。しかしながら、引用文献1の該当する記載は、あくまで、第一のイントラ予測モードと第二のイントラ予測モードとが同じか否かを判定するものであり、これらのモードが方向予測モードか否かに関係なく、常にTable3.1?3.3のいずれかを使用し、モードを導出して決定するというものであります。
また、審査官殿が認定されているように、引用文献1に開示された技術は、Table3.1?3.3として示されたルックアップテーブルを使用してモードを特定するというものであります。
これに対して、本願発明は、例えば、段落0016、0018に開示されているように、ルックアップテーブルを必要とすることなく、単純な計算によってその方向角度を決定することができ、本願発明の方法を利用して複数のルックアップテーブルを取り除くことを可能とするものであります。この点を鑑みると、引用文献1及び3に開示された技術は、本願発明とは異なる思想に基づく技術であり、上述した本願発明に特有の作用効果を奏することは困難と言わざるを得ません。」

上記主張について検討する。
本件補正は、発明特定事項のB2において「前記ブロックに対する候補となるイントラ予測モードとして、前記第一の角度方向の予測と、前記第一の角度方向に隣接する第二の角度方向の予測と、前記第一の角度方向に隣接し前記第二の角度方向とは異なる第三の角度方向の予測とを設定する」にすぎないから、補正後の特許請求の範囲の請求項7には、第一の角度方向に隣接する第二の角度方向を決定するために必要な計算方法であって、ルックアップテーブルを使用することなくモードを特定するための計算方法は記載されていない。

(4-2) 引用文献1に係る技術が4つの候補を設定することについて
(請求人の主張)
「加えて、引用文献1に係る技術は、さらに4つ目のモードを2か34で固定し、4つの候補を設定しており、この点を鑑みても、第一の角度方向?第三の角度方向それぞれに対応する予測(即ち、3つの予測)を設定する本願発明と異なることは明らかであります。」

上記主張について検討する。
上記(3-2)ア(カ)には、引用文献において、色差イントラ予測モードにおいて、6つの利用可能なイントラ予測モードがあり、変更しないままの2つのモードの他に4つのモードがあるという事項が示されているが、当該事項は色差信号のイントラ予測に関するものであり、輝度イントラ予測に関する上記引用発明とは関係のない事項にすぎない。
また、4つ目のモードを2か34で固定することは引用文献に記載された事項ではない。

以上(4-1)?(4-2)のとおり、審判請求人の主張は請求項の記載に基づくものではなく、また引用発明とは関係ない色差信号のイントラ予測に関する記載を引用文献から引用して本件発明との相違を主張しているにすぎず、採用できない。

3 むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成30年12月27日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成30年8月21日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定されるものであり、そのうち、請求項7に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2の1に示した(補正前の請求項7)に記載された事項により特定されるとおりのものである。

2 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由である平成30年9月18日付け拒絶理由の内容は、概略、以下のとおりである。

1.(新規性)この出願の請求項1、7に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができない。

3 引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1の記載事項は、上記第2の2(3-2)アに示したとおりであり、引用文献1に記載された発明(引用発明)は、上記第2の2(3-3)(エ)に認定したとおりである。

4 対比、判断
本願発明は、「第一(二、三)の方向の予測」について、上記第2の1の(補正後の請求項7)で限定された「角度方向の予測」という発明特定事項を除き、「方向の方向予測モード」という記載を用いて上位概念化したものである。
そうすると、本願発明を下位概念化したものに相当する本件補正発明が上記第2の2(3)に記載したとおり、引用文献1に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号に該当する以上、本願発明も、同様の理由により、引用文献1に記載された発明と同一の発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当する。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明と同一の発明であり、特許法第29条第1項第3項の規定に該当し、特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について検討するまでもなく、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-03-31 
結審通知日 2020-04-07 
審決日 2020-04-30 
出願番号 特願2017-199247(P2017-199247)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
P 1 8・ 113- Z (H04N)
P 1 8・ 575- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩井 健二  
特許庁審判長 清水 正一
特許庁審判官 鳥居 稔
川崎 優
発明の名称 HEVCビデオ符号化における論理的イントラモードネーミング  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  

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