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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A24F |
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管理番号 | 1363649 |
審判番号 | 不服2019-4188 |
総通号数 | 248 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-08-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-04-01 |
確定日 | 2020-06-24 |
事件の表示 | 特願2016-527076号「触覚的フィードバックを伴う電子喫煙物品」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 1月22日国際公開、WO2015/009838、平成28年8月25日国内公表、特表2016-525348号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2014年7月16日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年7月19日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成28年1月18日に国内書面が提出され、平成28年3月3日に国際出願翻訳文提出書により明細書、特許請求の範囲、要約書及び図面の翻訳文が提出され、同年同日に特許協力条約第34条補正の翻訳文提出書が提出され、平成30年3月20日付けで拒絶理由が通知され、平成30年6月26日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成30年11月26日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成31年4月1日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1ないし17に係る発明は、平成30年6月26日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲、及び国際出願翻訳文提出書により提出された明細書及び図面の翻訳文からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし17に記載されたとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は次のとおりのものである。 「【請求項1】 電子喫煙物品であって、 触覚的フィードバック構成要素、マイクロコントローラ、前記マイクロコントローラ及び前記触覚的フィードバック構成要素と電気的に通信する触覚的ドライバ及び電源を含む、制御本体筐体であって、前記触覚的フィードバック構成要素は、前記電子喫煙物品の状態を定義する1つ以上の異なる波形を発生させることによって、触覚的フィードバックを提供するように構成され、且つ、1つ以上の異なる波形を発生させ触覚的フィードバックを提供すべく、前記触覚的ドライバは、前記マイクロコントローラからの1つ以上の信号を、前記触覚的フィードバック構成要素を指示する出力へ変換するように適合される、制御本体筐体と、 前記制御本体筐体への接続のために適合されるカートリッジ筐体と、を備え、前記カートリッジ筐体は、加熱器とエアロゾル前駆体組成物を含有する貯留容器とを含む、前記電子喫煙物品。」 第3 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由(拒絶査定における理由)は、本願の請求項1ないし17に係る発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用例1ないし5に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 <引用例一覧> 1.特表2013-524835号公報 2.特表2013-511108号公報 3.特開2012-108885号公報 4.Olivier Bau, Ivan Poupyrev,REVEL:Tactile Feedback Technology for Augmented Reality,ACM Transactions on Graphics,2012年8月5日,vol.31, No. 4, Article 89,URL:https://s3-us-west-1.amazonaws.com/disneyresearch/wp-content/uploads/20141222202845/REVEL.pdf 5.特開平8-205413号公報 第4 引用例 1.引用例 (1)引用例の記載事項 原査定の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された引用例である、特表2013-524835号公報(以下、「引用例」という。)には、「電子喫煙装置」に関して、図面とともに以下の記載がある(なお、下線は理解の一助のために当審が付与した。以下同様。)。 a)「【0006】 本開示の観点によれば、電子喫煙装置は、ユーザーの喫煙行為を検出する第1のセンサーと、給気口と、前記給気口から延長する送風路と、喫煙液を貯蔵する液体隔室と、前記液体隔室から前記喫煙液を選択的に分与するように構成された分与量制御装置と、前記液体隔室および前記送風路に連通する気化隔室と、前記気化隔室に配置された加熱器と、前記第1のセンサーによって前記ユーザーの喫煙行為が検出されると前記加熱器を作動させて前記液体隔室から分与された前記喫煙液を気化させるように構成されたコントローラーと、前記気化隔室に接続する煙出口とを含み、前記分与量制御装置によって分与された前記喫煙液の量は、気化隔室に流入する空気の量に対応する。」 b)「【0019】 本開示の別の観点によれば、電子喫煙装置のパッケージは、該パッケージに電力を供給する充電式電池と、外部電源から電力を受け取って前記充電式電池を充電するように構成された電源インターフェースと、第1の外部装置とデータを交換するように構成された通信インターフェースと、前記電子喫煙装置と係合して該電子喫煙装置に電力を提供するように構成された喫煙装置コネクターとを含んでいる。 【0020】 前記喫煙装置コネクターは、さらに、前記電子喫煙装置とデータを交換するように構成してもよく、前記パッケージは、さらに、ユーザーインターフェースと、前記電子喫煙装置から前記喫煙装置コネクターを介して受け取ったデータに応答して前記ユーザーインターフェースを操作するように構成されたコントローラーとを含んでいてもよい。 【0021】 前記パッケージは、さらに、ユーザーインターフェースを含んでいてもよく、該ユーザーインターフェースは、LEDランプ、振動モーター、ディスプレイ、および音響装置のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。」 c)「 」 d)「【0026】 図1Aは、本開示の原理に従って構成された電子喫煙装置(electronic smoking device:ESD)100の構造の全体図である。前記ESDは使い捨てでもよく、または再使用可能であってもよい。前記ESD 100は、2若しくはそれ以上の本体を含むマルチボディ構造を有していてもよい。例えば、前記ESD 100は、特殊工具を一切使用せずに任意の時点で相互に容易に結合でき分離できる第1の本体部100Aおよび第2の本体部100Bなどを含む再使用可能なESDであってもよい。例えば、各本体部がねじ切り部位を含んでいてもよい。各本体部が異なるハウジングによって覆われていてもよい。前記第2の本体部100Bは、例えば喫煙液などの消耗材料を収納することができる。前記消耗材料が完全に消費されると、前記第2の本体部100Bを前記第1の本体部100Aから分離し、新しいものと取り替えることができる。また、前記第2の本体部100Bは、異なる風味、濃度、種類などの別のものと取り替えることもできる。あるいは、前記ESD 100は、図2Aに示すように単一の本体構造であってもよい。前記構造の種類に拘わらず、前記ESD 100は、図2Aに示すように第1の端部102および第2の端部104を備えた細長い形状を有してもよく、即ち従来の紙巻タバコに似た形状であってもよい。その他の非従来的な紙巻タバコの形状も考えられる。例えば、前記ESD 100は、喫煙パイプの形状などであってもよい。 【0027】 前記ESD 100は、給気口120と、送風路122と、気化室124と、煙出口126と、電源ユニット130と、センサー132と、容器140と、分与量制御装置141と、加熱器146と、などを含んでいてもよい。さらに、前記ESD 100は、例えばマイクロコントローラー、マイクロプロセッサー、カスタムアナログ回路、特定用途向けIC(application-specific integrated circuit:ASIC)、プログラム可能論理回路(programmable logic device:PLD)(例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(field programmable gate array:FPGA)など)などのコントローラー、ならびに基本的なデジタル回路およびアナログ回路によるその等価物を含んでいてもよいが、これについては図1Bを参照しながら下記に説明する。前記給気口120は、例えば図2Aに示す前記ハウジング110の外表面から延長していてもよい。前記送風路122は、前記給気口120に接続し、前記気化室124まで延長していてもよい。前記煙出口126は、前記気化室124に接続していてもよい。前記煙出口126は、前記ESD 100の前記第2の端部104に形成され、前記気化室124に接続していてもよい。ユーザーが前記ESD 100の前記第2の端部104を吸うと、図1に示す破線矢印によって表示されるように、前記給気口120の外側の空気を引き込み、前記送風路122を通って気化室124に移動させることができる。前記加熱器146は、図5に示す半導体ヒーターなどであってもよく、前記気化室124に位置してもよい。前記容器140は前記喫煙液を収納し、前記気化室124に接続していてもよい。前記容器140は、前記気化室124に連通する開口部を有していてもよい。前記容器140は単一の容器でもよく、または例えば容器140A、140Bなどのように相互に接続し、若しくは相互から分離した一群の容器であってもよい。」 e)「【0036】 前記ESD 100がマルチボディ構造を有している場合、前記ESD 100は、それらの間に電源接続および/またはデータ接続を設定するための2若しくはそれ以上の端子162を含んでいてもよい。例えば、図1において、前記第1の本体部100Aは第1のターミナルの162Aを含んでいてもよく、前記第2の本体部100Bは第2の端子162Bを含んでいてもよい。前記第1のターミナル162Aを、第1の電源バス160Aおよび第1のデータバス144Aに接続してもよい。前記第2の端子162Bを、第2の電源バス160Bおよび第2のデータバス144Bに接続してもよい。前記第1および第2の本体部100Aおよび100Bが相互に結合されている場合、前記第1および第2の端子162Aおよび162Bを相互に接続してもよい。また、前記第1の電源バス160Aおよび前記第1のデータバス144Aは、前記第2の電源バス160Bおよび前記第2のデータバス144Bにそれぞれ接続している。前記電源ユニット130内の電池の充電、データ交換などを行うために、前記第1の本体部100Aを前記第2の本体部100Bから分離して前記パッケージ200などに接続してもよく、その結果として前記パッケージ200の紙巻タバコ用コネクター216などに前記第1の端子162Aを接続してもよい。あるいは、外部装置の充電および/またはそれとの有線通信のための別個の端子(図示せず)を、前記ESD 100に提供してもよい。 【0037】 前記ESD 100は、さらに、例えばLEDユニット134、音発生装置(図示せず)、振動モーター(図示せず)などの1若しくはそれ以上のユーザーインターフェース装置を含んでいてもよい。前記LEDユニット134を、それぞれ前記電源バス160Aおよび前記データバス144Aを介して電源ユニット130に接続してもよい。前記ESD 100の動作中、前記LEDユニット134は視覚表示を提供してもよい。さらに、前記ESD 100の内に問題がある場合、前記センサー/コントローラー統合回路132は、前記LEDユニット134を制御して異なる視覚表示を生成することもできる。例えば、前記容器140がほとんど空か、前記電池の充電レベルが低い場合、前記LEDユニット134は、一定のパターンで(例えば、より長い間隔で30秒間)明滅してもよい。前記加熱器146が誤動作している場合、前記加熱器146を使用不能とし、LEDユニット134を制御して異なるパターンで(例えば、より短い間隔で1分間)明滅させてもよい。他のユーザーインターフェース装置を使用してテキスト、画像などを表示し、かつ/または音、振動などを発生させてもよい。」 f)上記c)、d)及びe)の記載によると、電子喫煙装置であるESD 100は、第1の本体部及び第2の本体部を含むマルチボディー構造を有しており、そのうち、第1の本体部100Aは、LEDユニット134、電源ユニット130及びセンサー/コントローラー統合回路132を備えるものであり、第2の本体部100Bは、加熱器146及び喫煙液を収納する容器140を備えるものであり、さらに、第1の本体部100Aと第2の本体部100Bとは相互に結合できるものであることが分かる。 (2)引用発明 上記(1)からみて、引用例には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「電子喫煙装置であって、 LEDユニット134からなるユーザーインターフェース装置、センサー/コントローラー統合回路132及び電源ユニット130を備える第1の本体部100Aであって、 LEDユニット134は、喫煙液を収納する容器140がほとんど空か、電源ユニット130内の電池の充電レベルが低い場合、一定パターンで明滅し、加熱器146が誤動作している場合は、異なるパターンで明滅して異なる視覚表示を生成するものであって、 第1の本体部100Aと相互に結合できる第2の本体部100Bとを備え、第2の本体部100Bは、加熱器146と喫煙液を収納する容器140を備える、電子喫煙装置。」 第5 対比・判断 引用発明における「電子喫煙装置」は、本件発明における「電子喫煙物品」に相当し、以下同様に、「センサー/コントローラー統合回路132」は「マイクロコントローラ」に、「電源ユニット130」は「電源」に、「備える」は「含む」に、「第1の本体部100A」は「制御本体筐体」に、「相互に結合できる」は「接続のために適合される」に、「第2の本体部100B」は「カートリッジ筐体」に、「加熱器146」は「加熱器」に、「喫煙液」は「エアロゾル前駆体組成物」に、「収納する」は「含有する」に、「容器140」は「貯留容器」に、それぞれ相当する。 そして、引用発明における「LEDユニット134からなるユーザーインターフェース装置」と本件発明における「触覚的フィードバック構成要素」とは、「ユーザーインターフェース」である限りにおいて一致する。 したがって、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。 [一致点] 「電子喫煙物品であって、 ユーザーインターフェース、マイクロコントローラ及び電源を含む、制御本体筐体と、 前記制御本体筐体への接続のために適合されるカートリッジ筐体と、を備え、前記カートリッジ筐体は、加熱器とエアロゾル前駆体組成物を含有する貯留容器とを含む、前記電子喫煙物品。」 [相違点1] ユーザーインターフェースに関して、本願発明においては「触覚的フィードバック構成要素」であるのに対して、引用発明においては「LEDユニット134、音発生装置、振動モーターなどからなるユーザーインターフェース装置」である点。 [相違点2] 本願発明においては、「制御本体筐体」が、「マイクロコントローラ及び触覚フィードバック構成要素と電気的に通信する触覚的ドライバ」を備えるとともに「前記触覚的フィードバック構成要素は、前記電子喫煙物品の状態を定義する1つ以上の異なる波形を発生させることによって、触覚的フィードバックを提供するように構成され、且つ、1つ以上の異なる波形を発生させ触覚的フィードバックを提供すべく、前記触覚的ドライバは、前記マイクロコントローラからの1つ以上の信号を、前記触覚的フィードバック構成要素を指示する出力へ変換するように適合される」のに対して、 引用発明においては、「第1の本体部100A」が備える「LEDユニット134は、喫煙液を収納する容器140がほとんど空か、電源ユニット130内の電池の充電レベルが低い場合、一定パターンで明滅し、加熱器146が誤動作している場合は、異なるパターンで明滅して異なる視覚表示を生成する」ものであり、さらに、「第1の本体部100A」が「触覚的ドライバ」を備えるか不明である点。 以下、相違点について検討する。 [相違点1及び2について] 引用発明において「喫煙液を収納する容器140がほとんど空か、電源ユニット130内の電池の充電レベルが低い場合」、「加熱器146が誤動作している場合」とは、電子喫煙装置の状態を表すことは明らかであるから、LEDユニット134は電子喫煙装置の状態に応じたパターンにより明滅して1つまたは複数の異なる視覚表示を生成するものといえる。 そして、引用例には、ユーザーインターフェース装置として、「LEDユニット134、音発生装置、振動モーター」が例示されている(段落【0037】を参照。)から、電子喫煙装置の状態に応じた1つまたは複数の異なる表示として、「LEDユニット134」による視覚表示に代えて、「触覚的フィードバック構成要素」に対応する「振動モーター」により複数の異なる表示を生成するものとすることに困難性はない。ここで「振動モーター」により複数の異なる表示を生成することは、「振動モーター」による振動の態様が異なるということであるから、異なる波形を発生させることといえる。 そして、その際、アクチュエータの駆動のために、プロセッサなどの制御装置とアクチュエータとの間にドライバを設けることにより制御信号をアクチュエータの駆動信号に変換することは周知技術(例えば、特開2013-80483号公報、段落【0025】、図1におけるアクチュエータインターフェース116、及び特開2011-210272号公報、段落【0063】、図27におけるドライバ2702を参照。以下、「周知技術」という。)であるから、周知技術に基づいて引用発明における「センサー/コントローラー統合回路132」からの信号を「振動モーター」の駆動信号に変換するドライバを設けることにより、上記相違点1及び2に係る本件発明の発明特定事項とすることは当業者であれば容易になし得たことである。 そして、本件発明は、引用発明及び周知技術から予測される以上の格別の効果を奏するものではない。 第6 むすび 以上のとおり、本件発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2020-01-21 |
結審通知日 | 2020-01-28 |
審決日 | 2020-02-12 |
出願番号 | 特願2016-527076(P2016-527076) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A24F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 西田 侑以、西村 賢 |
特許庁審判長 |
紀本 孝 |
特許庁審判官 |
松下 聡 平城 俊雅 |
発明の名称 | 触覚的フィードバックを伴う電子喫煙物品 |
代理人 | 特許業務法人川口國際特許事務所 |