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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  E04H
審判 全部申し立て 2項進歩性  E04H
審判 全部申し立て 発明同一  E04H
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  E04H
管理番号 1363963
異議申立番号 異議2019-700386  
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-08-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-05-14 
確定日 2020-05-07 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6422089号発明「柱体の補強方法及び被覆樹脂材で被覆された柱体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6422089号の明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?5〕について訂正することを認める。 特許第6422089号の請求項1?2及び4?5に係る特許を取り消す。 同請求項3に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6422089号(以下「本件特許」という。)の請求項1?5に係る特許についての出願は、平成28年6月18日に出願された特願2016-121306号の一部を分割して平成30年4月12日に出願され、平成30年10月26日にその特許権の設定登録がされ、平成30年11月14日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。

令和1年 5月14日 :特許異議申立人渋谷都(以下「申立人」という。)による請求項1?5に係る特許に対する特許異議の申立て
令和1年 7月25日付け:取消理由通知書
令和1年 9月24日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和1年11月14日 :申立人による意見書の提出
令和1年12月20日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和2年 3月 5日 :特許権者による意見書の提出


第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和1年9月24日になされた訂正の請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求に係る訂正を「本件訂正」という。)による訂正の内容は以下のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に係る発明の記載である
「前記柱体は、金属製であり、前記基台上に露出する前記柱体の側面に劣化部分を有し、
前記柱体の前記劣化部分を含む部分から前記基台中の埋設部分までの前記柱体の側面を」を、
「前記柱体は、金属製であり、前記基台上に露出する前記柱体の側面に劣化部分を有し、
前記基台は、硬化性樹脂組成物の硬化体又は水硬性組成物の硬化体であり、
前記柱体の前記劣化部分を含む部分から前記基台中の埋設部分までの前記柱体の側面を」に訂正し、
特許請求の範囲の請求項1に係る発明の記載である
「(但し、前記補強工法から、前記被覆樹脂材のさらに上側を前記柱体の断面に対応した筒状の補強材で覆って補修する態様、及び被覆樹脂材がフィラメント繊維を使用した繊維強化樹脂シートである場合に前記繊維強化樹脂シートを、前記柱体の外表面の周囲にその軸方向に前記フィラメント繊維を配向させて被覆する態様を除く)」を、
「(但し、前記補強工法から、前記被覆樹脂材のさらに上側を前記柱体の断面に対応した筒状の補強材で覆って補修する態様1、及び被覆樹脂材がフィラメント繊維を使用した繊維強化樹脂シートである場合に前記繊維強化樹脂シートを、前記柱体の外表面の周囲にその軸方向に前記フィラメント繊維を配向させて被覆する態様2を除く(但し、前記態様2において、前記繊維強化樹脂シートは、前記フィラメント繊維を複数本収束した繊維束又は軽度に撚りを掛けて収束した繊維束を支持体シート上に接着剤層を介して一方向に並べて上方から押し潰すことにより、前記支持体上に設けられ、前記繊維束の押し潰しにより繊維束が軽度にバラされて、前記フィラメントが集束剤又は撚りによる結合により複数層に積層した状態で、前記支持体シート上に前記接着剤層を介してほぼ一方向に配列して接着されて得られる。))。」に訂正する(請求項1を引用する請求項2?5も同様に訂正する)。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4に係る発明の記載である
「前記被覆樹脂材が繊維強化樹脂シートである請求項1?3のいずれか1項記載の柱体の補強工法。」を、
「前記被覆樹脂材が繊維強化樹脂シートである請求項1?3のいずれか1項記載の柱体の補強工法(但し、前記繊維強化樹脂シートからアラミド繊維強化プラスチックを成型して得た筒状補強材を当該筒状補強材の軸線を含む仮想平面に沿って分割した複数の部分補強材を接着させた態様を除く)。」に訂正する(請求項4を引用する請求項5も同様に訂正する)。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5に係る発明の記載である
「請求項1?4のいずれか1項記載の柱体の補強工法で製造されうる、」を、
「請求項1?4のいずれか1項記載の柱体の補強工法で製造された、」に訂正する(請求項4を引用する請求項5も同様に訂正する)。

(4)訂正事項4
願書に添付した明細書の訂正前の段落【0019】に記載された
「その硬化体状に化粧レンガ等の歩道用敷石が敷き詰められていてよく」を、
「その硬化体上に化粧レンガ等の歩道用敷石が敷き詰められていてよく」に訂正する。

2 一群の請求項
本件訂正前の請求項2?5は、本件訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用しているところ、本件訂正前の請求項1及び同請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2?5は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項であり、訂正事項1?3の訂正は、当該一群の請求項〔1?5〕に対し請求されたものである。

3 明細書の訂正と関係する請求項についての説明
訂正事項4は、誤記を訂正することを目的とするものであり、特許請求の範囲の全ての請求項1?5と関係しているところ、訂正事項4は、全ての請求項1?5について訂正を請求するものである。
したがって、訂正事項4の訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に適合する。

4 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1)訂正事項1について
訂正事項1に係る訂正のうち、訂正前の請求項1に記載された「基台」が、「硬化性樹脂組成物の硬化体又は水硬性組成物の硬化体であり、」とすることを限定した訂正については、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げられた事項である特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項1に係る訂正のうち、訂正前の請求項1に記載された「(但し、前記補強工法から、前記被覆樹脂材のさらに上側を前記柱体の断面に対応した筒状の補強材で覆って補修する態様、及び被覆樹脂材がフィラメント繊維を使用した繊維強化樹脂シートである場合に前記繊維強化樹脂シートを、前記柱体の外表面の周囲にその軸方向に前記フィラメント繊維を配向させて被覆する態様を除く)」を、「(但し、前記補強工法から、前記被覆樹脂材のさらに上側を前記柱体の断面に対応した筒状の補強材で覆って補修する態様1、及び被覆樹脂材がフィラメント繊維を使用した繊維強化樹脂シートである場合に前記繊維強化樹脂シートを、前記柱体の外表面の周囲にその軸方向に前記フィラメント繊維を配向させて被覆する態様2を除く(但し、前記態様2において、前記繊維強化樹脂シートは、前記フィラメント繊維を複数本収束した繊維束又は軽度に撚りを掛けて収束した繊維束を支持体シート上に接着剤層を介して一方向に並べて上方から押し潰すことにより、前記支持体上に設けられ、前記繊維束の押し潰しにより繊維束が軽度にバラされて、前記フィラメントが集束剤又は撚りによる結合により複数層に積層した状態で、前記支持体シート上に前記接着剤層を介してほぼ一方向に配列して接着されて得られる。))。」と特定した訂正については、訂正前の請求項1に複数記載されていた「態様」間の区別を明確にしたものであり、また、訂正前の「フィラメント繊維」の「配向」に関し、個々のフィラメント繊維がどのように配列しているかの態様が不明確であった点を、訂正により具体的に明確にしたものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げられた事項である明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

そして、訂正事項1に係る訂正のうち、「基台」を、上記した「硬化性樹脂組成物の硬化体又は水硬性組成物の硬化体であり、」とすることについては、願書に添付した明細書の段落【0019】の「基台(13、23)は、硬化性樹脂組成物の硬化体又は水硬性組成物の硬化体又はその硬化体状に化粧レンガ等の歩道用敷石が敷き詰められていてよく、産業・生活基盤用の支柱では、コンクリート等の水硬性組成物の硬化体である場合が多い。」との記載に基づいて減縮するものであるから、新規事項を追加するものではない。また、当該訂正は、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
次に、訂正事項1に係る訂正のうち、「(但し、前記補強工法から、前記被覆樹脂材のさらに上側を前記柱体の断面に対応した筒状の補強材で覆って補修する態様、及び被覆樹脂材がフィラメント繊維を使用した繊維強化樹脂シートである場合に前記繊維強化樹脂シートを、前記柱体の外表面の周囲にその軸方向に前記フィラメント繊維を配向させて被覆する態様を除く)」を、「(但し、前記補強工法から、前記被覆樹脂材のさらに上側を前記柱体の断面に対応した筒状の補強材で覆って補修する態様1、及び被覆樹脂材がフィラメント繊維を使用した繊維強化樹脂シートである場合に前記繊維強化樹脂シートを、前記柱体の外表面の周囲にその軸方向に前記フィラメント繊維を配向させて被覆する態様2を除く(但し、前記態様2において、前記繊維強化樹脂シートは、前記フィラメント繊維を複数本収束した繊維束又は軽度に撚りを掛けて収束した繊維束を支持体シート上に接着剤層を介して一方向に並べて上方から押し潰すことにより、前記支持体上に設けられ、前記繊維束の押し潰しにより繊維束が軽度にバラされて、前記フィラメントが集束剤又は撚りによる結合により複数層に積層した状態で、前記支持体シート上に前記接着剤層を介してほぼ一方向に配列して接着されて得られる。))。」とした訂正については、複数の「態様」間の区別を明確にし、また、「態様2」とされた態様を特定して、当該「態様2」を除くものであって、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであることが明らかであるから、新規事項を追加するものではない。
また、上記した訂正は、複数の「態様」間の区別を明確にし、また、「訂正前の「フィラメント繊維」の「配向」に関し、個々のフィラメント繊維がどのように配列しているかの態様が不明確であった点を、訂正により明確にしたものであることから、上記訂正は、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項4に記載された「前記被覆樹脂材が繊維強化樹脂シートである請求項1?3のいずれか1項記載の柱体の補強工法。」から、「前記繊維強化樹脂シートからアラミド繊維強化プラスチックを成型して得た筒状補強材を当該筒状補強材の軸線を含む仮想平面に沿って分割した複数の部分補強材を接着させた態様」を除く限定をしたものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げられた事項である特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

そして、訂正事項2に係る訂正は、「前記被覆樹脂材が繊維強化樹脂シートである請求項1?3のいずれか1項記載の柱体の補強工法。」から、「前記繊維強化樹脂シートからアラミド繊維強化プラスチックを成型して得た筒状補強材を当該筒状補強材の軸線を含む仮想平面に沿って分割した複数の部分補強材を接着させた態様」を除く限定をしたものであり、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであることが明らかであるから、新規事項を追加するものではなく、実質的に特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

(3)訂正事項3について
訂正事項3は、「請求項1?4のいずれか1項記載の柱体の補強工法で製造されうる、」を、「請求項1?4のいずれか1項記載の柱体の補強工法で製造された、」に訂正することにより、請求項5に係る発明の「柱体」が、補強工法を施された後の「柱体」に係るものであることを明らかにしたものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げられた事項である明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

そして、本件特許の願書に添付した明細書には、例えば段落【0054】に、「(4)アンカー用リブの上端より上方を、第1の被覆樹脂材(14-1)の上端から約20cm上方まで、第1の被覆樹脂材の表面と露出している柱体(11)の側面に、第1の被覆樹脂材(14-1)と同様にして第2の被覆樹脂材(14-2)を形成させる(図4)。(3)柱体(11)の露出部分の周辺に未硬化コンクリートを充填して基台(13)の構成部位を修復した(図5)。(4)充填した未硬化コンクリートを養生して硬化させた(図5)。」とあるように、補強工法を施された後の「柱体」が記載されていることが明らかであるから、訂正事項3に係る訂正は、新規事項を追加するものではなく、また、実質的に特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

(4)訂正事項4について
訂正事項4は、願書に添付した明細書における「硬化体状」なる記載を、「硬化体上」に訂正するものである。本件明細書の段落【0019】には、「基台(13、23)は、硬化性樹脂組成物の硬化体又は水硬性組成物の硬化体又はその硬化体状に化粧レンガ等の歩道用敷石が敷き詰められていてよく、産業・生活基盤用の支柱では、コンクリート等の水硬性組成物の硬化体である場合が多い。」と記載されているように、「その硬化体状に化粧レンガ等の歩道用敷石が敷き詰められて」いるものが、「硬化性樹脂組成物の硬化体」又は「水硬性組成物の硬化体」と同様に基板として機能するためには、歩道用敷石を敷き詰めて「硬化体状」としているのではなく、「硬化体上」に歩道用敷石を敷き詰めていると考えるのが自然である。そうすると、訂正事項4に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げられた事項である誤記又は誤訳の訂正を目的とするものである。

そして、訂正事項4に係る訂正は、新規事項を追加するものではなく、また、実質的に特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

5 小括
以上のとおりであるから、訂正事項1?4に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
また、訂正事項1?2、4の訂正については、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第2号に掲げる事項を目的とするものであるが、いずれも特許異議の申立てがされている請求項に係る訂正であり、訂正事項1?2、4による特許請求の範囲の限定的減縮又は誤記の訂正が行われていても、訂正後の請求項1?5に係る発明について、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

6 まとめ
したがって、明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?5〕について訂正することを認める。


第3 本件訂正発明
本件訂正請求により訂正された訂正後の請求項1?5に係る発明(以下、「本件訂正発明1」等といい、請求項1?5に係る発明をまとめて「本件訂正発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1?5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである(下線は訂正箇所を示す。)。

1 本件訂正発明1
「【請求項1】
柱体の末端が基台に埋設されて前記柱体が前記基台に固定されている柱体の補強工法であって、
前記柱体は、金属製であり、前記基台上に露出する前記柱体の側面に劣化部分を有し、
前記基台は、硬化性樹脂組成物の硬化体又は水硬性組成物の硬化体であり、
前記柱体の前記劣化部分を含む部分から前記基台中の埋設部分までの前記柱体の側面を、被覆樹脂材で被覆して、前記基台に埋設して前記基台に固定する柱体の補強工法(但し、前記補強工法から、前記被覆樹脂材のさらに上側を前記柱体の断面に対応した筒状の補強材で覆って補修する態様1、及び被覆樹脂材がフィラメント繊維を使用した繊維強化樹脂シートである場合に前記繊維強化樹脂シートを、前記柱体の外表面の周囲にその軸方向に前記フィラメント繊維を配向させて被覆する態様2を除く(但し、前記態様2において、前記繊維強化樹脂シートは、前記フィラメント繊維を複数本収束した繊維束又は軽度に撚りを掛けて収束した繊維束を支持体シート上に接着剤層を介して一方向に並べて上方から押し潰すことにより、前記支持体上に設けられ、前記繊維束の押し潰しにより繊維束が軽度にバラされて、前記フィラメントが集束剤又は撚りによる結合により複数層に積層した状態で、前記支持体シート上に前記接着剤層を介してほぼ一方向に配列して接着されて得られる。))。」

2 本件訂正発明2
「【請求項2】
前記柱体が管体である請求項1記載の柱体の補強工法。」

3 本件訂正発明3
「【請求項3】
前記柱体の管内に、
前記基台中の埋設部分から前記柱体の前記劣化部分を含む部分の高さまで硬化性組成物を充填して硬化させる請求項2記載の柱体の補強工法。」

4 本件訂正発明4
「【請求項4】
前記被覆樹脂材が繊維強化樹脂シートである請求項1?3のいずれか1項記載の柱体の補強工法(但し、前記繊維強化樹脂シートからアラミド繊維強化プラスチックを成型して得た筒状補強材を当該筒状補強材の軸線を含む仮想平面に沿って分割した複数の部分補強材を接着させた態様を除く)。」

5 本件訂正発明5
「【請求項5】
請求項1?4のいずれか1項記載の柱体の補強工法で製造された、
請求項1?4のいずれか1項記載の基台に埋設して固定されている請求項1?4記載の被覆樹脂材で被覆された柱体。」


第4 取消理由についての判断
1 取消理由(決定の予告)の概要
本件訂正発明1、2、4及び5に係る特許に対して、当審が令和1年12月20日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。

(新規性)
本件訂正発明1、2及び5は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、2及び5に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。

(進歩性)
本件訂正発明1、2及び5は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第2号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、2及び5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
本件訂正発明4は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第2号証及び甲第9号証ないし甲第11号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

・甲第2号証:特開2012-245512号公報
・甲第9号証:特開2001-164761号公報
・甲第10号証:特開2015-151836号公報
・甲第11号証:特開2007-303232号公報
(甲第9号証ないし甲第11号証は、令和1年11月14日に特許異議申立人から提出された意見書に添付して証拠として提出されたものである。)

2 当審の判断
(1)証拠
ア 甲第2号証(特開2012-245512号公報)の記載
取消理由通知(決定の予告)において引用した甲第2号証には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付加した。以下同様。)。

(ア)「【請求項1】
構造物表面にプライマー樹脂を塗布した後その表面に仮着剤を塗布し、その後補強繊維シートを仮着しながら該補強繊維シート内に接着剤樹脂を含浸させ、最後にトップコート樹脂を塗布して表面仕上げを行うことを特徴とする既存小規模支柱構造物の補修補強工法。」

(イ)「【請求項3】
補強繊維シートが、屈曲性や下地追随性、柔軟性に優れたアラミド繊維やビニロン繊維、ナイロン繊維等の有機系繊維であることを特徴とする請求項1ないし2のいずれかに記載の既存小規模支柱構造物の補修補強工法。」

(ウ)「【請求項5】
該小規模支柱構造物の基礎部分に補強繊維シートを2?5cm程度定着部させる(当審注:「定着部させる」は、「定着させる」の誤記と認める。)ことを特徴とする請求項1?4のいずれかに記載の既存小規模支柱構造物の補修補強工法。」

(エ)「【技術分野】
【0001】
本発明は、腐食や経年劣化等により耐久性が低下した街灯や交通標識、看板等の支柱構造物を、効果的かつ短時間、安価に補強・耐久性向上処理を行う方法に関する。」
【背景技術】
【0002】
街灯や交通標識、看板等の支柱構造物は、土中に埋設されたコンクリート製の基礎に主として中空状の鋼製パイプが埋め込まれ固定された構造となっており、これら支柱構造物には一般的に、その頂上部や上層部分に照明器具や標識看板、広告看板等の重量物が設置され供用されている。これら重量物は地震時や強風時の地震荷重や風加重により大きな水平力を受け、その結果支柱構造物の基礎部分には大きな水平力と曲げモーメントが発生する。
【0003】
近年の地震の多発化や度重なる大型台風の襲来は、時に支柱構造物の基礎部分に設計条件を超えるような大きな水平荷重と曲げモーメントを発生させていることが想定される。また酸性雨や犬の尿による腐食や部分的な欠損が極端な耐久性低下をもたらしていることから、近年支柱構造物の基礎部分での折損、倒壊などの事故例の報告が増加して来ている。
【0004】
現在支柱構造物の基礎部分の折損、倒壊対策としては、既存の基礎天端より10?30cm程度の高さまでコンクリートを打設し根固めを施す方法が行われているが、早期に根固めコンクリートにひび割れや破損が発生し、十分に効果が得られない状況である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
近年、構造物の老朽化や塩害、凍結融解、酸性雨等による劣化の進行に起因する構造物の耐久性の低下が大きな社会問題としてクローズアップされており、特に阪神大震災の発生以来、巨大地震発生時に生じる構造物の破壊が問題となっておりその対策が急がれている。
【0005】
また一方で、予算面や環境面などから、新たに構造物を建設するのではなく既存の社会インフラを補修補強、維持管理することにより延命化し長く使用することが大きなテーマとして注目されている。
【0006】
このような状況の中で、近年新しい補修補強、維持管理の材料や工法が提案されている。特に従来のセメントや鉄などに比べて優れた性能を持つ有機樹脂材料や高強度の無機・有機繊維材料が開発、提案され、実際に多くの現場で実施され普及しつつある状況である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明者は鋭意研究の結果、新たな支柱構造物の基礎部分の補修、補強方法として、近年開発、提案され、多くの現場で実施され普及しつつある、硬化速度や低温時の硬化性、耐候性、配合作業性に優れたMMA系樹脂と屈曲性や下地追随性、柔軟性に優れたアラミド繊維やビニロン繊維、ナイロン繊維等の高強度有機系繊維を用いて、効果的かつ短時間、安価に補強及び耐久性向上処理を行う方法を確立し、下記本発明を提供するに至った。」

(オ)「【0015】
【図1】 本発明の実施形態を示す小規模支柱構造物(公園鋼製街灯)の標準図。
【発明を実施するための形態】
以下に本発明の実施の形態を説明する。街灯支柱地際部の鋼製ポールにアラミド繊維シートを用いて補強する例を図面に基づいて説明する。まず図1に前記街灯支柱地際部の鋼製ポールへの施工断面図を示すごとく、下記工程により施工する。
【符号の説明】
1:街灯支柱地際部の鋼製ポール
2:プライマー層
3:仮着剤層
4:アラミド繊維シート
5:MMA系接着剤樹脂
6:トップコート表面仕上げ層
7:基礎コンクリート
8:MMA系樹脂モルタル 」

(カ)【図1】



段落【0002】の記載(上記(エ))や段落【0015】の記載(上記(オ))の記載を踏まえると、【図1】からは、中空の鋼製ポール1が基礎コンクリート7に埋設されて、前記鋼製ポール1が前記基礎コンクリート7に固定された点、及び、プライマー層2、仮着剤層3、アラミド繊維シート4、MMA系接着剤樹脂5、トップコート表面仕上げ層6の各層が、前記基礎コンクリート7の表面に露出する位置から表面よりも深い位置まで設けられた点が看取される。

(キ)甲第2号証に記載された発明
a 上記(ア)ないし(カ)を基にすると、甲第2号証には以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「中空の鋼製ポール1が基礎コンクリート7に埋設されて、前記鋼製ポール1が前記基礎コンクリート7に固定された既存小規模支柱構造物の補修補強工法であって、既存小規模支柱構造物の構造物表面に、プライマー樹脂を塗布した後その表面に仮着剤を塗布し、その後アラミド繊維やビニロン繊維、ナイロン繊維等の有機系繊維よりなる補強繊維シートを仮着しながら該補強繊維シート内に接着剤樹脂を含浸させ、最後にトップコート樹脂を塗布し、プライマー層2、仮着剤層3、アラミド繊維シート4、MMA系接着剤樹脂5、トップコート表面仕上げ層6の各層が、前記基礎コンクリート7の表面に露出する位置から表面よりも深い位置まで設けられ、小規模支柱構造物の基礎部分に前記補強繊維シートを2?5cm程度定着される既存小規模支柱構造物の補修補強工法。」

b また、上記(ア)ないし(カ)を基にすると、甲第2号証には、甲2発明による既存小規模支柱構造物の補修補強工法で捕手補強されるポール1に係る発明である以下の発明(以下「甲2ポール発明」という。)が記載されていると認められる。
「鋼製ポール1が、基礎コンクリート7に埋設されて前記鋼製ポール1が前記基礎コンクリート7に固定されて、既存小規模支柱構造物の構造物表面に、プライマー樹脂を塗布した後その表面に仮着剤を塗布し、その後アラミド繊維やビニロン繊維、ナイロン繊維等の有機系繊維よりなる補強繊維シートを仮着しながら該補強繊維シート内に接着剤樹脂を含浸させ、最後にトップコート樹脂を塗布し、プライマー層2、仮着剤層3、アラミド繊維シート4、MMA系接着剤樹脂5、トップコート表面仕上げ層6の各層が、前記基礎コンクリート7の表面に露出する位置から表面よりも深い位置まで設けられ、小規模支柱構造物の基礎部分に前記補強繊維シートを2?5cm程度定着される鋼製ポール1。」

イ 甲第9号証(特開2001-164761号公報)の記載
取消理由通知(決定の予告)において引用した甲第9号証には、以下の事項が記載されている。

(ア)「【0005】
【発明が解決しようとする課題】この発明は上記の現状に鑑み、上記登録実用新案第3060020号の重防食根巻積層嵩上構造を更に改良して、鋼板製支柱と地表基礎に降り懸る酸性電解質溶液が地表近傍に位置する鋼板製支柱の根元部や、地表基礎の内部、とりわけ地表基礎と鋼板製支柱の根元部の接合部に浸透しないようにして、鋼板製支柱の根元部の酸化腐食の進行と地表基礎の劣化の進行を極力抑え、鋼板製支柱の耐用年数を更に延ばし得る重防食根巻積層嵩上補修構造と、その鋼板製支柱の重防食根巻積層嵩上補修方法を得ることを目的とする。」

(イ)「【0011】他方鋼板製支柱1の地表近傍の根元部1cに対しては、腐食部1dを研磨し下地処理した後、腐食部1dの跡を含む鋼板製支柱1の根元部1cの外周面に、ビニ-ルエステル樹脂溶液を塗布して下塗層5aを施し、この下塗層5aの上に、ビニ-ルエステル樹脂溶液を含浸したガラスファイバ-・フィルムを多層に巻きつけ、そのガラスファイバ-・フィルム層の上から脱泡用ロ-ラ-を押しつけて転がすことにより、その層間に残留する気泡を脱泡処理してガラスファイバ-層5bを形成し、このガラスファイバ-層5bの上に、ビニ-ルエステル樹脂溶液を含浸したサ-フェイスマットを巻きつけ、上記と同様に層間に残留する気泡を脱泡処理してサ-フェイスマット層5cを形成し、このサ-フェイスマット層5cのビニ-ルエステル樹脂溶液が指触乾燥した時(指で触って見て指に樹脂溶液がくっつかない程度に半乾燥した時)に、サ-フェイスマット層5cの上にビニ-ルエステル樹脂溶液を塗布して上塗層5dを施し、更に必要に応じて上塗層5dの上に色調塗料5eを塗布する。そして下塗層5a、ガラスファイバ-層5b、サ-フェイスマット層5cおよび上塗層5dによって重防食根巻積層5が形成され、この重防食根巻積層5中のビニ-ルエステル樹脂溶液が乾燥硬化することにより、ビニ-ルエステル樹脂溶液の強い収縮力よって、重防食根巻積層5が鋼板製支柱1の根元部1cの外周面に水密に強固に締着する。なお、鋼板製支柱1の根元部1cに締着される重防食根巻積層5の地表面Gからの高さは、この実施例では55cmで、重防食根巻積層5の積層厚みは2mm程度である。」

(ウ)【図1】



(エ)甲第9号証に記載された技術事項
上記(ア)?(イ)に摘記した事項を踏まえると、甲第9号証には、「鋼板製支柱の根元部の酸化腐食の進行と地表基礎の劣化の進行を極力抑え、鋼板製支柱の耐用年数を更に延ばし得る重防食根巻積層嵩上補修構造と、その鋼板製支柱の重防食根巻積層嵩上補修方法において、下塗層5a、ガラスファイバ-層5b、サ-フェイスマット層5cおよび上塗層5dによる重防食根巻層5を、腐食部1dの部分を含む支柱1の部分に形成した点」が記載されていると認められる(以下「甲第9号証に記載された技術事項」という。)。

ウ 甲第10号証(特開2015-151836号公報)の記載
取消理由通知(決定の予告)において引用した甲第10号証には、以下の事項が記載されている。

(ア)「【0001】
本発明は、中空のコンクリート構造物や鋼構造物のような中空構造物の表面欠損部に対し、繊維強化樹脂を貼付することにより補強する中空構造物の補強構造体及び補強方法に関する。」

(イ)「【0019】
例えば、中空構造物としてのコンクリート構造物に貫通した穴部が発生した場合、穴部を完全に覆う形で中空構造物の表面に繊維強化樹脂テープAを貼付し、接着させる。さらにこの繊維強化樹脂テープAの全面を完全に覆うように強化繊維シートを貼付した後、熱硬化性樹脂を強化繊維シートに含浸させることにより、その含浸させる熱硬化性樹脂が繊維強化樹脂テープAの存在によって、中空構造物表面や穴が開いた内部にまで、染み出したり、浸入することを防止することができる。そして、樹脂が含浸した強化繊維シートを硬化させて繊維強化樹脂シートBを形成することで欠損を生じた中空構造物を補強することができる。なおここで、区別上、中空構造物の表面に貼付する繊維強化樹脂を繊維強化樹脂テープAと表現し、最終的に繊維強化樹脂テープA上に形成する繊維強化樹脂を繊維強化樹脂シートBと表現する。」

(ウ)「【0028】 本発明における中空構造物としては、鋼材又は鉄筋コンクリートで構成されている柱状体や樹脂材料で構成されている柱状体を例示することができる。」

(エ)【図1】



(オ)甲第10号証に記載された技術事項
上記(ア)?(ウ)に摘記した事項を踏まえると、甲第10号証には、「中空の鋼構造物のような中空構造物の表面欠損部に対し、繊維強化樹脂を貼付することにより補強する中空構造物の補強構造体及び補強方法において、欠損を生じた中空構造物を補強することができるように、穴部を完全に覆う形で、鋼材で構成された中空構造物の表面に繊維強化樹脂テープAを貼付し、接着させ、さらにこの繊維強化樹脂テープAの全面を完全に覆うように強化繊維シートを貼付した後、熱硬化性樹脂を強化繊維シートに含浸させ、樹脂が含浸した強化繊維シートを硬化させて繊維強化樹脂シートBを形成した点」が記載されていると認められる(以下「甲第10号証に記載された技術事項」という。)。

エ 甲第11号証(特開2007-303232号公報)の記載
取消理由通知(決定の予告)において引用した甲第11号証には、以下の事項が記載されている。

(ア)「【0020】
支柱1の地際部4が雨水などによって侵食されたとき、この地際部4の箇所を防食する方法を図2の工程図に基いて説明する。まず、道路照明灯が設置されている道路の交通規制と安全対策をはかり、路面を清掃して測量ケガキし、化粧コンクリート3を支柱1周囲で正方形状にはつる。はつる深さは、基礎コンクリート2に達するまでの例えば5cm程度である。」

(イ)「【0023】
次いで支柱1の下部周囲に太陽光で硬化する透明な光硬化シート6を巻き付けて接着する。この光硬化シート6は、ベースシートとしてポリエチレン、ポリプロピレン、ビニールエステルなどを使用し、これに前記シール材と同様の粘着材を塗布した樹脂シートであるが、これに強度を増加させるために、さらにガラス繊維、ガラスフレーク、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、PETフィルムなどを併用させる。かかる補強材は、光硬化シート6の強度を増すだけでなく、内部の支柱1の補強にもなる。」

(ウ)甲第11号証に記載された技術事項
上記(ア)ないし(イ)に摘記した事項を踏まえると、甲第11号証には、「支柱1の地際部4が雨水などによって侵食されたとき、この地際部4の箇所を防食し、内部の支柱1の補強にもなるようにする方法として、支柱1の下部周囲に光硬化シート6を巻き付けて接着し、これに強度を増加させるために、さらにガラス繊維、ガラスフレーク、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、PETフィルムなどを併用させるようにした点」が記載されていると認められる(以下「甲第11号証に記載された技術事項」という。)。

(2)対比・判断

ア 本件訂正発明1について
(ア)対比
本件訂正発明1と甲2発明(上記(1)ア(キ)a)とを対比する。

a 甲2発明における「ポール1」、「既存小規模支柱構造物」及び「小規模支柱構造物」は、いずれも、本件訂正発明1における「柱体」に相当し、また、甲2発明における「鋼製」、「基礎コンクリート7」、「補修補強工法」、「構造物表面」は、それぞれ、本件訂正発明1における「金属製」、「基台」、「補強工法」、「側面」に相当する。

b 甲2発明における「プライマー層2、仮着剤層3、アラミド繊維シート4、MMA系接着剤樹脂5、トップコート表面仕上げ層6の各層」は、あわせて、本件訂正発明1における「被覆樹脂材」に相当する。

c 甲2発明における「基礎コンクリート7」は、本件訂正発明1の「基台」に相当し、また、「コンクリート」が水硬性組成物であることは明らかであり、「基礎コンクリート」として用いられる状態において既に硬化していることは自明であるから、本件訂正発明1の、「水硬性組成物の硬化体」である点を備えている。

d 甲2発明は、「既存小規模支柱構造物の構造物表面に、プライマー樹脂を塗布した後その表面に仮着剤を塗布し、その後アラミド繊維やビニロン繊維、ナイロン繊維等の有機系繊維よりなる補強繊維シートを仮着しながら該補強繊維シート内に接着剤樹脂を含浸させ、最後にトップコート樹脂を塗布」するという一連の処理工程により、「プライマー層2、仮着剤層3、アラミド繊維シート4、MMA系接着剤樹脂5、トップコート表面仕上げ層6の各層」(被覆樹脂材)が、「既存小規模支柱構造物」(柱体)の「構造物表面」(側面)の、「基礎コンクリート7」(基台)の「表面に露出する位置から表面よりも深い位置まで設けられ、小規模支柱構造物の基礎部分に前記補強繊維シートを2?5cm程度定着され」るのだから、甲2発明は、「基台上に露出する部分から基台中の埋設部分まで」の「柱体の側面」を、「被覆樹脂材で被覆し」て、「基台に埋設して基台に固定する」点を備えているといえる。
そして、この点において、本件訂正発明1における「柱体」が「基台上に露出する柱体の側面に劣化部分を有し」、「前記柱体の前記劣化部分を含む部分」を「被覆樹脂材で被覆」することと、甲2発明とは、「被覆樹脂材で被覆」するのが、「基台上に露出する部分」の「柱体の側面」である点で共通する。

e そうすると、本件訂正発明1と甲2発明とは、以下の一致点と形式的な相違点を有する。

(一致点)
「柱体の末端が基台に埋設されて前記柱体が前記基台に固定されている柱体の補強工法であって、
前記柱体は、金属製であり、
前記基台は、硬化性樹脂組成物の硬化体又は水硬性組成物の硬化体であり、
前記柱体の前記基台上に露出する部分から前記基台中の埋設部分までの前記柱体の側面を、被覆樹脂材で被覆して、前記基台に埋設して前記基台に固定する柱体の補強工法。」

(相違点A)
本件訂正発明1の補強工法は、「基台上に露出する柱体の側面に劣化部分を有し」た「柱体」の「劣化部分を含む部分」に補強を施すものであるのに対し、甲2発明の補修補強工法は、柱体の基台上に露出する部分の側面に補修補強を施すものであるものの、当該側面に「劣化部分」があるのかどうかが明らかでなく、また、当該「劣化部分」を「含む部分」に補修補強を施すものであるのかどうかも明らかでない点。

(相違点B)
柱体の補強工法として、本件訂正発明1は、「(但し、前記補強工法から、前記被覆樹脂材のさらに上側を前記柱体の断面に対応した筒状の補強材で覆って補修する態様1、及び被覆樹脂材がフィラメント繊維を使用した繊維強化樹脂シートである場合に前記繊維強化樹脂シートを、前記柱体の外表面の周囲にその軸方向に前記フィラメント繊維を配向させて被覆する態様2を除く(但し、前記態様2において、前記繊維強化樹脂シートは、前記フィラメント繊維を複数本収束した繊維束又は軽度に撚りを掛けて収束した繊維束を支持体シート上に接着剤層を介して一方向に並べて上方から押し潰すことにより、前記支持体上に設けられ、前記繊維束の押し潰しにより繊維束が軽度にバラされて、前記フィラメントが集束剤又は撚りによる結合により複数層に積層した状態で、前記支持体シート上に前記接着剤層を介してほぼ一方向に配列して接着されて得られる。))」としたものであるが、本件訂正発明1において除かれた態様以外を、甲2発明が含むのか否かが明らかでない点。

(イ)判断
a 相違点Aについて
甲第2号証は、上記(1)ア(エ)に摘記したように、【技術分野】として、段落【0001】に、「本発明は、腐食や経年劣化等により耐久性が低下した・・・支柱構造物を、効果的かつ短時間、安価に補強・耐久性向上処理を行う方法に関する」ことが謳われており、また、【背景技術】として、段落【0003】に、「近年の地震の多発化や度重なる大型台風の襲来は、時に支柱構造物の基礎部分に設計条件を超えるような大きな水平荷重と曲げモーメントを発生させていることが想定される。また酸性雨や犬の尿による腐食や部分的な欠損が極端な耐久性低下をもたらしていることから、近年支柱構造物の基礎部分での折損、倒壊などの事故例の報告が増加して来ている。」と記載されており、続いて、【発明が解決しようとする課題】として、段落【0004】に、「近年、構造物の老朽化や酸性雨等による劣化の進行に起因する構造物の耐久性の低下が大きな社会問題としてクローズアップされており、・・・巨大地震発生時に生じる構造物の破壊が問題となっておりその対策が急がれている。」と記載され、段落【0006】に、「このような状況の中で、近年新しい補修補強、維持管理の材料や工法が提案されている。」と記載されており、続いて、【課題を解決するための手段】として、段落【0007】に、「そこで、本発明者は鋭意研究の結果、新たな支柱構造物の基礎部分の補修、補強方法として、近年開発、提案され、多くの現場で実施され普及しつつある、・・・高強度有機系繊維を用いて、効果的かつ短時間、安価に補強及び耐久性向上処理を行う方法を確立し、下記本発明を提供するに至った。」と記載されている。
上記記載からは、甲2発明が「腐食や経年劣化等により耐久性が低下した支柱構造物」に処理を行う「方法」であり、また、甲2発明の発明者が、「酸性雨や犬の尿による腐食や部分的な欠損」がもたらす「耐久性低下」により、「支柱構造物の基礎部分での折損、倒壊などの事故例の報告が増加して」いることなどを背景として、「構造物の老朽化や塩害、凍結融解、酸性雨等による劣化の進行に起因する構造物の耐久性の低下」への「対策が急がれている」ことを認識し、近年「新しい補修補強、維持管理の材料や工法」が提案されている中で、甲2発明を提供するに至ったことが理解されるから、少なくとも、甲2発明は、支柱構造物の基礎部分における「劣化の進行」により「耐久性」が「低下」した構造物の「破壊」対策としての「補修補強」方法に係るものでもあると考えるのが自然である。
そして、上記したように、「劣化の進行」により「耐久性」が「低下」した支柱構造物の「破壊」対策としては、「劣化の進行」が起きていない部分ではなく、当該支柱構造物において「劣化の進行」が見られる部分、すなわち「劣化部分を含む部分」に、補修補強を施すことが自然であるし、また、当業者にとっての技術常識でもあるから(必要であれば、「甲第9号証に記載された技術事項」(上記(1)イ(エ))や、「甲第10号証に記載された技術事項」(上記(1)ウ(オ))に例示される点を参照されたい。)、甲2発明においては、「柱体」の、「基台上に露出する部分」の「側面」に補修補強が施される以上、当該「基台上に露出する部分」の「側面」が、当該「劣化部分を含む部分」にあたると解することが自然である。
すなわち、上記した当業者にとっての技術常識を踏まえると、甲2発明は、本件訂正発明1の、「基台上に露出する柱体の側面に劣化部分を有し」た「柱体」の「劣化部分を含む部分」に補強を施す点を備えていることになるから、上記相違点Aに挙げた事項は、あくまで形式的なものであって、実質的な相違点とはいえない。

一方、甲第2号証の図1(上記(1)ア(カ))には、「ポール1」(柱体)の「基礎コンクリート7」(基台)の表面に「露出」し、「プライマー層2、仮着剤層3、アラミド繊維シート4、MMA系接着剤樹脂5、トップコート表面仕上げ層6の各層」(被覆樹脂材)が被覆された部分に、「劣化部分」が具体的に明示されてはいないが、上記したように、甲2発明が、柱構造物の基礎部分における「劣化の進行」により「耐久性の低下」が生じた構造物の「破壊」対策を考慮した「補修補強方法」に係るものであると同時に、「劣化の進行」により「耐久性の低下」が生じる前の構造物を補修補強する態様も想定していると考えたときには、当該態様を示す図に「劣化部分」が明示されていないとしても不自然ではないから、甲第2号証の図1に「劣化部分」が明示されていないことをもって、甲第2号証に記載された「補修補強工法」に係る発明が、「劣化部分」を含む部分に補修補強を施すことを全く想定していないとする証拠にはならない。

b 相違点Bについて
まず、甲2発明は、「前記被覆樹脂材のさらに上側を前記柱体の断面に対応した筒状の補強材で覆って補修する態様1」によるものではない。よって、甲2発明は、この点において、本件訂正発明1において除かれた態様以外も、その範囲に含むものである。
次に、本件訂正発明1において除かれる態様としての「被覆樹脂材がフィラメント繊維を使用した繊維強化樹脂シートである場合に前記繊維強化樹脂シートを、前記柱体の外表面の周囲にその軸方向に前記フィラメント繊維を配向させて被覆する態様2」であり、「(但し、前記態様2において、前記繊維強化樹脂シートは、前記フィラメント繊維を複数本収束した繊維束又は軽度に撚りを掛けて収束した繊維束を支持体シート上に接着剤層を介して一方向に並べて上方から押し潰すことにより、前記支持体上に設けられ、前記繊維束の押し潰しにより繊維束が軽度にバラされて、前記フィラメントが集束剤又は撚りによる結合により複数層に積層した状態で、前記支持体シート上に前記接着剤層を介してほぼ一方向に配列して接着されて得られる。)」と特定された態様について検討する。
甲第2号証には、アラミド繊維やビニロン繊維、ナイロン繊維等の有機系繊維よりなる補強繊維シートの繊維方向に関連する記載が特にない。そうすると、甲2発明は、「ほぼ一方向に配列」した「フィラメント繊維」を「(柱体の)軸方向」に「配向」していないものもその範囲に含めていることになる。この点において、本件訂正発明1において除かれた態様以外も、その範囲に含むものであるということができる。
そうすると、甲2発明は、本件訂正発明1において除くものとした態様以外についてもその範囲に含むものであるということができるから、上記相違点Bとして挙げた事項は、実質的な相違点とはいえない。

(ウ)小括
a 以上のとおりであるから、本件訂正発明1と甲2発明との間に差異はない。
そうすると、本件訂正発明1は、甲第2号証に記載された発明である。

b また、本件訂正発明1は、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものである。

イ 本件訂正発明2について
(ア)対比
本件訂正発明2と甲2発明とを対比する。
甲2発明における「ポール1」が本件発明2における「柱体」に相当することは、上記ア(ア)aで説示したとおりであるが、前記「ポール1」は「中空」であるのだから、本件訂正発明2の如くの「管体」であることも明らかである。

そうすると、本件訂正発明2と甲2発明とは、上記した相違点A及びB以外に相違点を有しない。

(イ)判断
相違点A及びBの判断については、上記ア(イ)aないしbにおいて検討したとおりである。

(ウ)小括
a 以上のとおりであるから、本件訂正発明2と甲2発明との間に差異はない。
そうすると、本件訂正発明2は、甲第2号証に記載された発明である。

b また、本件訂正発明2は、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものである。

ウ 本件訂正発明4について
(ア)対比
本件訂正発明4と甲2発明とを対比すると、両者は、上記した相違点A及びBに加え、以下の相違点C及びDを有する。

(相違点C)
本件訂正発明4においては、柱体の補強工法における被覆樹脂材が、「繊維強化樹脂シート」であるのに対して、甲2発明においては、被覆樹脂材が、「プライマー層2、仮着剤層3、アラミド繊維シート4、MMA系接着剤樹脂5、トップコート表面仕上げ層6の各層」をあわせたものである点。

(相違点D)
柱体の補強工法として、本件訂正発明4は、「(但し、前記繊維強化樹脂シートからアラミド繊維強化プラスチックを成型して得た筒状補強材の軸線を含む仮想平面に沿って分割した複数の部分補強材を接着させた態様を除く)」としたものであるが、甲2発明においては、除かれる態様が特定されていない点。

(イ)判断
a 相違点A及びBについて
相違点A及びBの判断については、上記ア(イ)aないしbにおいて検討したとおりである。

b 相違点Cについて
甲第9号証に記載された技術事項(上記(1)イ(エ))では、鋼板製支柱の根元部の酸化腐食の進行と地表基礎の劣化の進行を極力抑え、鋼板製支柱の耐用年数を更に延ばし得る重防食根巻積層嵩上補修構造と、その鋼板製支柱の重防食根巻積層嵩上補修方法において、下塗層5a、ガラスファイバ-層5b、サ-フェイスマット層5cおよび上塗層5dによる重防食根巻層5を、腐食部1dの部分を含む支柱1の部分に形成しており、「ガラスファイバ-層5b」を有する「重防食根巻層5」は、本件訂正発明4の「繊維強化樹脂シート」に相当する。
甲第10号証に記載された技術事項(上記(1)ウ(オ))では、中空の鋼構造物のような中空構造物の表面欠損部に対し、繊維強化樹脂を貼付することにより補強する中空構造物の補強構造体及び補強方法において、欠損を生じた中空構造物を補強することができるように、穴部を完全に覆う形で、鋼材で構成された中空構造物の表面に繊維強化樹脂テープAを貼付し、接着させ、さらにこの繊維強化樹脂テープAの全面を完全に覆うように強化繊維シートを貼付した後、熱硬化性樹脂を強化繊維シートに含浸させ、樹脂が含浸した強化繊維シートを硬化させて繊維強化樹脂シートBを形成しており、「繊維強化樹脂テープA」と「繊維強化樹脂シートB」を合わせたものは、本件訂正発明4の「繊維強化樹脂シート」に相当する。
甲第11号証に記載された技術事項(上記(1)エ(ウ))では、支柱1の地際部4が雨水などによって侵食されたとき、この地際部4の箇所を防食し、内部の支柱1の補強にもなるようにする方法として、支柱1の下部周囲に光硬化シート6を巻き付けて接着し、これに強度を増加させるために、さらにガラス繊維、ガラスフレーク、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、PETフィルムなどを併用させるようにしており、「光硬化シート6」に「ガラス繊維、ガラスフレーク、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、PETフィルムなどを併用」したものは、本件訂正発明4の「繊維強化樹脂シート」に相当する。
甲第9号証ないし甲第11号証にそれぞれ記載された上記「繊維強化樹脂シート」は、いずれも、甲2発明と同様に、柱体の補強工法(既存小規模支柱構造物の補修補強工法)に使用するものといえるから、甲2発明の被覆樹脂材(プライマー層2、仮着剤層3、アラミド繊維シート4、MMA系接着剤樹脂5、トップコート表面仕上げ層6の各層をあわせたもの)に換えてこれらを採用して、相違点Cに係る本件訂正発明4の構成の如くすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

c 相違点Dについて
相違点Cについて上記bで検討した、甲第9号証ないし甲第11号証にそれぞれ記載された「繊維強化樹脂シート」は、「前記繊維強化樹脂シートからアラミド繊維強化プラスチックを成型して得た筒状補強材の軸線を含む仮想平面に沿って分割した複数の部分補強材を接着させた態様」によるものではなく、甲2発明の被覆樹脂材(プライマー層2、仮着剤層3、アラミド繊維シート4、MMA系接着剤樹脂5、トップコート表面仕上げ層6の各層をあわせたもの)に換えてこれらを採用したものには、本件訂正発明4において除かれた態様以外をその範囲に含むことになる。

d 効果の予測性
本件訂正発明4の作用効果は、甲2発明及び甲第9号証ないし甲第11号証に記載された技術事項から当業者が予測できる範囲のものである。

(ウ)小括
よって、本件訂正発明4は、甲2発明及び甲第9号証ないし甲第11号証に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものである。

オ 本件訂正発明5について
(ア)対比
本件訂正発明5と甲2ポール発明(上記(1)ア(キ)b)とを対比する。

a 上記ア(ア)aにおいて述べたように、甲2ポール発明における「ポール1」、「既存小規模支柱構造物」及び「小規模支柱構造物」は、いずれも、本件訂正発明5における「柱体」に相当し、また、甲2ポール発明における「鋼製」、「基礎コンクリート7」、「補修補強工法」、「構造物表面」は、それぞれ、本件訂正発明5における「金属製」、「基台」、「補強工法」、「側面」に相当する。

b 上記ア(ア)bにおいて述べたように、甲2ポール発明における「プライマー層2、仮着剤層3、アラミド繊維シート4、MMA系接着剤樹脂5、トップコート表面仕上げ層6の各層」は、あわせて、本件訂正発明5における「被覆樹脂材」に相当する。

c 上記ア(ア)cにおいて述べたように、甲2ポール発明における「基礎コンクリート7」は、本件訂正発明5の「基台」に相当し、また、「コンクリート」が水硬性組成物であることは明らかであり、「基礎コンクリート」として用いられる状態において既に硬化していることは自明であるから、本件訂正発明5の「水硬性組成物の硬化体」である点を備えている。

d 上記ア(ア)dにおける検討を踏まえると、甲2ポール発明は、「基台上に露出する部分から基台中の埋設部分まで」の「柱体の側面」を、「被覆樹脂材で被覆し」て、「基台に埋設して基台に固定する」点を備えており、この点において、本件訂正発明5における「柱体」が「基台上に露出する柱体の側面に劣化部分を有し」、「前記柱体の前記劣化部分を含む部分」を「被覆樹脂材で被覆」することと、甲2ポール発明とは、「被覆樹脂材で被覆」するのが、「基台上に露出する部分」の「柱体の側面」である点で共通する。

e そうすると、本件訂正発明5と甲2ポール発明とは、上記した相違点A及びB以外に相違点を有しない。

(イ)判断
相違点A及びBの判断については、上記ア(イ)aないしbにおいて検討したとおりである。

(ウ)小括
a 以上のとおりであるから、本件訂正発明5と甲2ポール発明との間に差異はない。
そうすると、本件訂正発明5は、甲第2号証に記載された発明である。

b また、本件訂正発明5は、甲2ポール発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものである。

(3)まとめ
本件訂正発明1、2及び5は、甲第2号証に記載された発明であるか、または甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものである。
本件訂正発明4は、甲第2号証に記載された発明及び甲第9号証ないし甲第11号証に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものである。

(4)意見書における特許権者の主張について
ア 令和1年9月24日付け意見書
特許権者は、令和1年9月24日付け意見書(以下、「意見書1」という)において、「支柱構造物」には、「新規支柱」、「非劣化支柱」、「劣化支柱」を含むとして(意見書1の第15ページ下から4行?第16ページ2行)、甲第2号証の【発明が解決しようとする課題】の記載を引いて、「『構造物の老朽化や塩害、凍結融解、酸性雨等による劣化の進行に起因する構造物の耐久性の低下』の因果関係を考慮すると、劣化の進行後に『構造物の破壊』の原因となる劣化部分が生じるのであるから、ここでの『構造物』とは『新規支柱』又は『非劣化支柱』を意味すると解することが合理的である。何故ならば、この『構造物』が既に劣化部分が存在する『劣化構造物』であるとすると、『老朽化や煙害、凍結融解、酸性雨等による劣化の進行』をしなくても、既に、『構造物の破壊』の原因が発生していることになり『構造物の老朽化や塩害、凍結融解、酸性雨等による劣化の進行に起因する構造物の耐久性の低下』の因果関係が説明できなくなり、合理的な解釈ができなくなるからである。」(意見書1の第17ページ下から7行?第18ページ2行)と主張するとともに、「しかし、・・・劣化が進行して基礎部分に劣化部分を有する劣化金属管になってしまった場合、・・・『既存の社会インフラを補修補強、維持管理する』なる社会政策を前提とする場合、劣化部分を完治する程度の抜本的(多くの場合、モルタル補修に比べて遙かに技術的に困難な)補修・補強をしなければ、当初設計と遜色のない耐久性まで回復したことにならないと考えることが相当であるし、・・・。」(意見書1の第18ページ下から11行?第19ページ2行)と主張している。
意見書1における上記主張に対しては、上記(2)ア(イ)aで説明したとおりであり、本件訂正発明1と甲2発明との間に差異はない。

イ 令和2年3月5日付け意見書
令和2年3月5日付け意見書(以下、「意見書2」という)における特許権者の主張について、以下で検討する。

(ア)新規性について
a 特許権者の主張
意見書2における特許権者の主張のうち、新規性についての主張は、概ね以下のとおりである。

(a)「合議体は、上記したように、
本件訂正発明1と甲2発明の一致点・相違点を認定した上で、
相違点A及びBは『実質的な相違点とはいえない』・・・ことを理由に以下のような認定をして、本件訂正発明1の新規性を否定した・・・。
(ア)以上のとおりであるから、本件訂正発明1と甲2発明との間に実質的な差異はない。
そうすると、本件訂正発明1は、甲2発明である。」
(意見書2の第6ページ第1行?第9行)

(b)「(1)合議体は、本件訂正発明1と甲2発明の一致点・相違点の検討し、相違点A及びBがあると認定した。
(2)審査基準・・・によれば、審査官・・・は『相違点がある場合は、審査官は、請求項に係る発明が新規性を有していると判断する』とされ、審査基準・・・によれば、審査官・・・は『対比の結果、相違点がなければ、審査官は、請求項に係る発明が新規性を有していないと判断し・・・、相違点がある場合には、進歩性の判断を行う・・・。』とされる。
(3)従って、合議体は本件訂正発明1と甲2発明の一致点・相違点の検討し、相違点A及びBがあると認定したのであるから、審査基準に則れば、本件訂正発明1は新規性を有していると判断すべきであり、その結果、本件訂正発明1は理由3に当たらないことが論理的に導出される。
(4)合議体が判断した相違点A及びBが実質的か否かは、特許法第29条第1項第3号(新規性)とは全く趣旨の異なる特許要件である特許法第29条の2(拡大先願)の場合に検討すべき事項であり・・・、新規性の判断にあっては意味のない事項である。」
(意見書2の第6ページ第12行?下から3行)

(c)「本件訂正発明1が甲第2号証に対して新規性を有し、甲第2、9及び10号証に対して進歩性を有することから、
本件訂正発明1に従属する本件訂正発明2及び、本件訂正発明1w引用する本件訂正発明5は、甲第2号証に対して新規性を有し、甲第2、9及び10号証に対して進歩性を有する。」
(意見書2の第39ページ第6行?第10行)

b 特許権者の主張についての検討
上記(2)ア(ア)eにおいて、(相違点A)又は(相違点B)として挙げた事項については、いずれも、本件訂正発明1と甲2発明とを対比して、一見して甲2発明では明らかでない点を形式的な相違点として仮に挙げたものであって、続く、上記(2)ア(イ)aないしbにおいて説明したように、甲第2号証の記載を総合すると、前記した、仮に挙げた形式的な相違点が、実質的な相違点ではないと解釈されることを示すという手順で判断を示したものである。
そうであるから、取消理由において、相違点を仮に挙げた記載自体に基づいて新規性を否定し、かつ前記解釈を前提としない特許権者の主張は、採用することができない。

(イ)進歩性について
a 特許権者の主張
意見書2における特許権者の主張のうち、進歩性についての主張は、概ね以下のとおりである。

(a)「(2)合議体の判断のプロセスの不当性
合議体の判断のプロセスは以下の理由から極めて不当である。
〔I〕甲第2号証の本来の課題は、合議体の認定する甲第2号証で認識されている課題ではない。
〔II〕合議体は以下の理由から、審査基準が禁じる後知恵に陥っている。
甲第2号証の記載だけからは、甲2発明(課題解決手段A(a?f))との相違点Aを備える課題解決手段B(a?f)は特定できない。
課題解決手段B(a?f)は、甲第2号証、第9号証及び甲第10号証に記載されておらず、技術常識ではなく、本件訂正発明1が記載されている本件特許明細書にだけ記載されている。
従って合議体は、容易想到性を論理付けする中で、本件訂正発明1に基づいて課題解決手段B(a?f)を特定して(脳裏に思い描いて)おり、後知恵に陥っている。
〔III〕課題解決手段B(a?f)を想到するに際して、甲第2号証には阻害要因が存在する。
仮に、甲第2号証の記載だけから課題解決手段B(a?f)が特定できたとしても、課題解決手段B(a?f)は甲第2号証の本来の課題を解決することができない。
(3)結論
以上から、甲第2号証に基づいて、本件訂正発明1は、出願時における当業者には容易想到であるとはいえない。」
(意見書2の第8ページ第9行?下から2行)

(b)「(1)甲2発明の課題
・・・(中略)・・・
合議体は○4(当審注:「○4」は丸数字の4を示す。以下同様。)で、
『『構造物の老朽化や塩害、凍結融解、酸性雨等による劣化の進行に起因する構造物の耐久性の低下』への『対策が急がれている』』ことが甲2発明の課題として認識されていると認定しているが、・・・当該認定は誤りである。
・・・(中略)・・・
(1.3.3)以上から、甲2発明の技術的課題は、以下のように認定すべきである。
<<発明が解決しようとする課題>>
『劣化の進行に起因する構造物の耐久性の低下』を原因とする『巨大地震発生時に生じる構造物の破壊』に対して技術的な対策を施すこと。」
(意見書2の第13ページ下から5行?第20行)

(c)「(2)相違点Aの容易想到性について
(2.1)合議体は、相違点Aを以下のように認定している・・・。
・・・(中略)・・・
(2.3)しかし、合議体は、相違点Aを「明らかでない点」という極めて抽象的な表現で説明し、相違点Aがどのような構成であるのか明確に特定していない。
・・・(中略)・・・
(2.5)従って、本件訂正発明1と甲2発明との相違点Aは、
工法が対象とする支柱構造物が、
本件訂正発明1(=課題解決手段B(a?f))では劣化支柱であるが、
甲2発明(課題解決手段A(a?f))では非劣化支柱である点である、
と明確に構成の相違として理解できる・・・。
・・・(中略)・・・
(2.8)以上を前提にして、相違点Aの容易想到性を以下に論ずる。
(3)甲2発明の課題解決手段(その1:合議体の認定)
・・・(中略)・・・
(4)甲2発明の課題解決手段(その2:上位概念)
(4.1)甲2発明の技術的課題が、上述したような『劣化の進行に起因する構造物の耐久性の低下』を原因とする『巨大地震発生時に生じる構造物の破壊』に対して、技術的な対策を施すことである、ということに鑑みれば、甲第2号証に接した当業者は、以下の程度の課題解決手段に容易想到するだろう。
<<課題解決手段A>>非劣化支柱に対して、劣化しないように、かつ、耐久性が向上するように補修補強する。
<<課題解決手段B>>劣化支柱に対して、それ以上劣化しないように、かつ、耐久性が向上するように補修補強する。
・・・(中略)・・・
(5)甲2発明の課題解決手段(その3:下位概念)
・・・(中略)・・・
(4.2.3)しかし、甲第2号証には、課題解決手段Bの具体的な構成は一切記載されていないので、合議体が認定する『課題解決手段B(a?f)』は、甲第2号証だけからは特定することができない。
・・・(中略)・・・
(6)甲2発明に基づく課題解決手段B(a?f)の容易想到性
・・・(中略)・・・
(6.3)技術常識の認知と後知恵
(6.3.1)合議体は、○6?○8で、課題解決手段B(a?f)(相違点A)は技術常識であるとして、結果的に容易想到であると決めてかかっている。
しかし、実際には、課題解決手段B(a?f)(相違点A)は甲第2号証に全く記載されていないので、当業者は、甲第2号証の記載だけからは、課題解決手段B(a?f)(相違点A)が技術常識であるか否かを原理的に判断できず、課題解決手段B(a?f)(相違点A)を技術常識として認識することは不可能である。
(6.3.2)言い換えると、当業者は、甲第2号証以外から課題解決手段B(a?f)の情報を何ら得ることなく、甲第2号証の記載だけから課題解決手段A(a?f)における繊維強化シートの被覆構成を劣化支柱の補修補強工法として転用すること(即ち、課題解決手段B(a?f)))を認識することは原理的に不可能である。
(6.3.3)従って、合議体は、甲第2号証以外の何らかの情報から課題解決手段B(a?f)の情報を得て予め課題解決手段B(a?f)を念頭にしてその技術常識性を判断したことになる。
・・・(中略)・・・
(6.3.5)従って、合議体が、課題解決手段B(a?f)が記載されていない甲第2号証の記載だけから、課題解決手段B(a?f)(相違点A)が技術常識であることをもって、課題解決手段B(a?f)が容易想到と判断してしまうのは、
合議体が本件訂正発明1に係る課題解決手段B(a?f)の知識を得た上で甲2発明を示す証拠の内容を理解して、本件訂正発明1の明細書、特許請求の範囲又は図面の文脈に沿ってその内容を曲解し、審査基準で禁じられている後知恵に陥ったためと解するしかない。
・・・(中略)・・・
(6.4.1)合議体は『当業者が、甲第2号証の直接記載事項に当業者が有する技術常識を適用して、甲第2号証の直接記載されていないことを想到しえる』との論理付けをすることが許される。
しかし、その場合、合議体は、当該技術常識を、根拠に基づいて具体的に特定した上で、論理付けして当業者が想到する事項を認定しなければならないが、
当該技術常識を特定するための根拠となる記載は甲第2号証に存在しない。
(6.4.2)当業者は、甲第2号証の文脈から、課題解決手段B(劣化支柱に対して、それ以上劣化しないように、かつ、耐久性が向上するように補修補強すること)は認識できる。
しかし、その具体的な補修補強として、劣化部分との関係で劣化支柱を被覆樹脂材でどのように被覆するかについて、甲第2号証には記載が一切なく、劣化部分の周辺を被覆樹脂材で被覆することも含めて技術常識の根拠となる記載がないのである。」
(意見書2の第15ページ下から11行?第23ページ第13行)

(d)「(2-1)支柱構造物が受ける力学的負荷と力学的負荷に対する耐久性
・・・(中略)・・・
力学的負荷をF、非劣化支柱の耐久性をW[非劣化](当審注:W[非劣化]は、Wに下付き文字として「非劣化」を付したもの。以下同様。)とすると、甲第2号証段落0003は以下のように数学的に表現できる。
W[非劣化] < F
・・・(中略)・・・
(2-2)耐久性の低下とその影響(甲第2号証段落0003)
・・・(中略)・・・
劣化支柱の耐久性をW[劣化](当審注:W[劣化]は、Wに下付き文字として「劣化」を付したものを示す。以下同様。)とすると、甲第2号証段落0003は以下のように数学的に表現できる。
W[劣化] << W[非劣化] < F
・・・(中略)・・・
(4)技術的課題(甲第2号証「発明が解決しようとする課題」)
・・・(中略)・・・
即ち、前述したように、甲2発明の発明者は、以下を「発明が解決しようとする課題」とする。
<<発明が解決しようとする課題>>
「劣化の進行に起因する構造物の耐久性の低下」を原因とする
「巨大地震発生時に生じる構造物の破壊」に対して技術的な対策を施すこと
ここで、劣化の進行した構造物は「劣化支柱」であり、背景技術において、「劣化支柱の耐久性は極端に低下」し、
巨大地震発生時には、劣化支柱の基礎部分に、(非劣化支柱の)設計条件の耐久性を超える力学的負荷が加わると認識されているのであるから、
巨大地震発生時に生じる劣化支柱の破壊とは、
耐久性の設計条件以上の力学的負荷がもたらす、耐久性が極端に低下した劣化支柱の基礎部分での折損、倒壊を意味しているので、
上記課題は以下の等価な表現で記載することができる。
<<発明が解決しようとする課題>>
「劣化の進行に起因する劣化支柱の耐久性の極端な低下」を原因とする
「巨大地震発生時に生じる耐久性の設計条件以上の力学的負荷による、劣化の基礎部分での折損、倒壊」に対して技術的な対策を施すこと
・・・(中略)・・・
これを、甲2発明の技術的課題に当てはめれば、「既存の社会インフラを補修補強」とは「非劣化支柱の補修補強」又は「劣化支柱の補修補強」ということになるが、後述するように、甲2発明の発明者は、甲2発明の技術的課題は「劣化支柱の補修補強」では解決できないため、「非劣化支柱の補修補強」で解決することを選択していることが論理的に導出される。
・・・(中略)・・・
(7-1)甲2発明が課題解決手段B(a?f)を含まない理由1
(7-1-1)甲第2号証の「課題を解決する手段」・・・は、以下のように「『劣化部分』を含む部分に、補修補強を施す」課題解決手段B(a?f)は明示されていない(表5)。
・・・(中略)・・・
(7-2)甲2発明が課題解決手段B(a?f)を含まない理由2
・・・(中略)・・・
(7-2-2)・・・
〔効果○2〕課題解決手段A(a?f)では、支柱構造物に発生する力学的負荷Fと耐久性Wの関係は以下のようになると解されることは当業者には技術常識である。
W[非劣化]<< W[非劣化]+W[被覆樹脂材]≦ F
(当審注:W[被覆樹脂材]は、Wに下付き文字として「被覆樹脂材」を付したもの。以下同様。)
・・・(中略)・・・
(7-2-3)課題解決手段B(a?f)を採用した場合、以下の効果を奏するであろうことを当業者は容易に理解できる。
被覆樹脂材は、「強固な防水性や防錆性」により、劣化部分のそれ以上の化学的腐食に基づく劣化は抑止しうるが、一度劣化した部分には、小さな力学的負荷の下でも極めて大きな応力集中が発生して、化学的腐食が進行しなくても、既に生じた劣化部分の物理的破壊が進行することは当業者には技術常識である。
従って、課題解決手段B(a?f)では、既に劣化が進行して極端に耐久性が低下した劣化支柱の耐久性を、一時的にでも非劣化支柱の耐久性まで復元することができるか否かも不明であり、ましてや、甲2発明が想定する巨大地震発生時に生じる耐久性の設計条件以上の力学的負荷Fに対する耐久性を付与することはできない・・・。
即ち、課題解決手段B(a?f)では、被覆樹脂材を態様態様a?fで被覆しても、上記課題を解決することができない。
(7-2-4)なお、以上に鑑みれば、課題解決手段B(a?f)では、支柱構造物に発生する力学的負荷Fと耐久性Wの関係は以下のようになると解されることは当業者には技術常識である。
W[劣化]<W[劣化]+W[被覆樹脂材]≦W[非劣化]<F
・・・(中略)・・・
上述したように、課題解決手段B(a?f)は甲第2号証に記載されておらず、課題解決手段B(a?f)が解決しようとする課題もその効果も記載されていないので、仮に当業者が「W[劣化]<W[劣化]+W[被覆樹脂材]≦W[非劣化]<F」に想到したとしても、それでは実際に課題解決手段B(a?f)でどの程度の耐久性の向上が見込めるかは、当業者が一から技術的知見を積み上げて検討するしかなく、それは新たな発明の創作であり、当然のことながら容易想到を超えたレベルである。
以上から、甲2発明の技術的課題は、
非劣化支柱を被覆樹脂シートの特定の構成a?fを含む課題解決手段A(a?f)によって解決できるが、
劣化支柱を被覆樹脂シートの特定の構成a?fを含む課題解決手段B(a?f)によって解決することができない。言い換えると、
甲第2号証に明示される課題解決手段A(a?f)を、課題解決手段B(a?f)に置き換えると、
甲2発明の技術的課題を解決することができなくなるため、
当該置き換えには、甲第2号証には阻害要因があるということになる。」
(意見書2の第25ページ最下行?第34ページ第8行)

(e)「本件訂正発明1が甲第2号証に対して新規性を有し、甲第2、9及び10号証に対して進歩性を有することから、
本件訂正発明1に従属する本件訂正発明2及び、本件訂正発明1w引用する本件訂正発明5は、甲第2号証に対して新規性を有し、甲第2、9及び10号証に対して進歩性を有する。」
(意見書2の第39ページ第7行?第10行)

b 特許権者の主張についての検討
(a)後知恵
特許権者は、「本件訂正発明1と甲2発明との相違点Aは、工法が対象とする支柱構造物が、本件訂正発明1(=課題解決手段B(a?f))では劣化支柱であるが、甲2発明(課題解決手段A(a?f))では非劣化支柱である点である」と説明するが、上記(2)ア(イ)aで述べたように、甲2発明は、支柱構造物の基礎部分における「劣化の進行」により「耐久性」が「低下」した構造物の「破壊」対策としての「補修補強」方法に係るものでもあり、その「破壊」対策としては、「劣化の進行」が起きていない部分ではなく、支柱構造物の基礎部分において「劣化の進行」が見られる部分、すなわち「劣化部分を含む部分」に、補修補強を施すことが当業者にとっての技術常識であって、甲2発明においては、「柱体」の、補修補強が施される「基台上に露出する部分」の「側面」が、当該「劣化部分を含む部分」にあたることを踏まえると、甲2発明は、本件訂正発明1の、「基台上に露出する柱体の側面に劣化部分を有し」た「柱体」の「劣化部分を含む部分」に補強を施す点を備え、課題解決手段B(a?f)を備えていることになるから、特許権者が主張する上記相違点Aの認定が妥当であるとはいえない。
そして、特許権者が主張する上記相違点Aを前提として、「課題解決手段A(a?f)における繊維強化シートの被覆構成を劣化支柱の補修補強工法として転用すること」が、「本件訂正発明1係る課題解決手段B(a?f)の知識」を得た上で甲2発明の内容を理解した「後知恵」であるとした主張も、同様にして、妥当であるとはいえない。

(b)阻害要因
特許権者は、甲2発明の「発明が解決しようとする課題」を、「劣化の進行に起因する構造物の耐久性の低下を原因とする巨大地震発生時に生じる構造物の破壊に対して技術的な対策を施すこと」とした上で、「背景技術において、『劣化支柱の耐久性は極端に低下』し、巨大地震発生時には、劣化支柱の基礎部分に、(非劣化支柱の)設計条件の耐久性を超える力学的負荷が加わると認識されているのであるから、巨大地震発生時に生じる劣化支柱の破壊とは、耐久性の設計条件以上の力学的負荷がもたらす、耐久性が極端に低下した劣化支柱の基礎部分での折損、倒壊を意味している」から、上記「発明が解決しようとする課題」は、「劣化の進行に起因する劣化支柱の耐久性の極端な低下を原因とする巨大地震発生時に生じる耐久性の設計条件以上の力学的負荷による、劣化の基礎部分での折損、倒壊に対して技術的な対策を施すこと」と等価である旨主張している。
ここで、「耐久性の極端な低下」については、甲第2号証における「背景技術」を説明する段落【0003】に、「また酸性雨や犬の尿による腐食や部分的な欠損が極端な耐久性低下をもたらしていることから、近年支柱構造物の基礎部分での折損、倒壊などの事故例の報告が増加して来ている。」と記載されているに過ぎないのであり、「劣化」にも、例えば、腐食の前段階としての塗膜の剥離、腐食の開始?広範囲化、腐食の深化、貫通孔の形成?広範囲化等、程度が様々あると考えられる中で、特許権者は、段落【0003】の上記記載を基にして、甲2発明が、上記のように、「耐久性の極端な低下」が起きるまで「劣化」が進行した「劣化支柱」の、基礎部分での折損、倒壊に対して技術的な対策を施すことが課題であると狭く解釈するものである。その上で、そのような「劣化支柱」に対しては、課題解決手段B(a?f)によって上記課題を解決することができないから、甲2発明は、「劣化支柱」ではなく「非劣化支柱」を対象としたものであって、「非劣化支柱」に対する課題解決手段A(a?f)を、「劣化支柱」に対する課題解決手段B(a?f)に置き換えることには阻害要因があると主張するが、上記したように、甲2発明の課題を狭く解釈することを前提とした上記主張は妥当とはいえない。


第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由についての判断

1 申立理由の概要
申立人は、概略、以下の理由に基づき、請求項1?5に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。

「本件請求項1にかかる「フィラメント繊維を使用した繊維強化樹脂シート」について、繊維方向が統一されていないランダム配向、一方向のみに繊維が配向している一軸配向、織物や一軸配向シートの積層体のように多軸配向といった繊維配向材料がある中で、「その軸方向に前記フィラメント繊維を配向させて被覆する」するとの記載によって除かれる範囲が、繊維強化樹脂シートに使用しているフィラメント繊維を全て柱体の軸方向に配向させている態様のみを意味しているのか、多軸配向やランダム配向のフィラメント繊維の一部だけが軸方向に配向している態様も意味包含するのかが不明確である。よって、本件特許請求の範囲の請求項1の記載は、除く記載によって除かれる範囲が不明確であるから、特許を受けようとする発明が明確ではなく、本件特許請求の範囲の請求項1を直接的もしくは間接的に引用する請求項2?5も同様に不明確な記載であり、特許を受けようとする発明が明確とはいえず、特許法第36条第6項第2項の規定に違反する。」(明確性要件)

2 判断
令和1年9月24日付けで提出された訂正請求書により特許請求の範囲の請求項1についてなされた訂正請求(訂正事項1)により、本件訂正発明1は、「フィラメント繊維を使用した繊維強化樹脂シート」が、「前記フィラメント繊維を複数本収束した繊維束又は軽度に撚りを掛けて収束した繊維束を支持体シート上に接着剤層を介して一方向に並べて上方から押し潰すことにより、前記支持体上に設けられ、前記繊維束の押し潰しにより繊維束が軽度にバラされて、前記フィラメントが集束剤又は撚りによる結合により複数層に積層した状態で、前記支持体シート上に前記接着剤層を介してほぼ一方向に配列して接着されて得られる」ものであることが特定されたことにより、「前記柱体の外表面の周囲にその軸方向に前記フィラメント繊維を配向させて被覆する」との記載によって除かれる範囲が明確となった。
したがって、申立人の上記主張に係る申立の理由は解消した。
一方、申立人は、令和1年11月14日に提出した意見書で、「柱体の補強工法から除かれる範囲が、訂正前の除かれる範囲に対して、訂正後の除かれる範囲が減縮していることとなるから、その結果として、訂正後の特許請求の範囲が拡張したことになる。」(第3ページ第16行?第18行)として、「適法な訂正請求とはいえない」(第3ページ最下行)ため、「訂正請求は認められないので、理由1は解消されていない。」(第4ページ第4行)と主張するが、本件訂正請求が認められることは、上記第2で述べたとおりであり、申立人の上記主張は採用しない。


第6 むすび
以上のとおり、本件訂正発明1、2及び5は、甲第2号証に記載された発明であるか、または甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものであり、本件訂正発明1、2及び5に係る特許は、特許法第29条第1項第3号又は第2項の規定に違反してされたものである。
また、本件訂正発明4は甲第2号証に記載された発明及び甲第9号証ないし甲第11号証に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正発明4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件訂正発明1、2、4及び5に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、本件訂正発明3に係る特許は、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。さらに、他に本件訂正発明3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (54)【発明の名称】
柱体の補強方法及び被覆樹脂材で被覆された柱体
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱体の補強方法及び被覆樹脂材で被覆された柱体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コンクリート製電柱の補修すべき箇所の表面に、炭素繊維を強化繊維とする補強材を巻き付け、次いでその最外層上に絶縁性繊維の強化繊維シートを巻き付けて前記炭素繊維の補強材の露出をなくし、然る後にこれら炭素繊維及び絶縁性繊維に含浸した熱硬化性樹脂を硬化することを特徴とするコンクリート製電柱の補修方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-332032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、交通環境の整備に伴い、街路灯(12)や道路標識支柱(22)の整備が進んでいる。
一方で、街路灯(12)や道路標識支柱(22)等の柱体(11、21)はΓ字型であり、柱体(11、21)の埋設部分の近傍に大きな負荷がかかるため、柱体(11、21)が様々な要因で劣化した場合、特に、これらの柱体(11、21)の埋設部分の近傍が劣化した場合、柱体(11、21)が倒壊又は折損するリスクが高くなる。
【0005】
特許文献1に開示される補修方法で、このような柱体の劣化部分(12、22)の表面に補強材を巻き付けるだけでは、柱体の倒壊又は折損リスクを低減することは容易でない。
【0006】
本発明は、柱体(11、21)の劣化による柱体(11、21)の倒壊又は折損を抑止するための柱体(11、21)の補強方法及び被覆樹脂材(14-1及び2、24-1及び2)で被覆された柱体(11、21)を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
〔1〕柱体(11、21)の末端が基台(13、23)に埋設されて前記柱体(11、21)が前記基台(13、23)に固定されている柱体(11、21)の補強工法であって、
前記柱体(11、21)は、前記基台(13、23)上に露出する前記柱体(11、21)の側面に劣化部分(12、22)を有し、
前記柱体(11、21)の前記劣化部分(12、22)を含む部分から前記基台(13、23)中の埋設部分までの前記柱体(11、21)の側面を、
被覆樹脂材(14-1及び2、24-1及び2)で被覆して、前記基台(13、23)に埋設して前記基台(13、23)に固定する柱体(11、21)の補強工法。
(以下、本発明1ともいう)、及び、
〔2〕前項〔1〕又は〔2〕記載の柱体(11、21)の補強工法で製造されうる、
前項〔1〕又は〔2〕記載の基台(13、23)に埋設して固定される前項〔1〕又は〔2〕の被覆樹脂材(14-1及び2、24-1及び2)で被覆された柱体(11、21)(以下、本発明2ともいう)に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、柱体(11、21)の劣化による柱体(11、21)の倒壊又は折損を抑止するための柱体(11、21)の補強方法及び被覆樹脂材(14-1及び2、24-1及び2)で被覆された柱体(11、21)を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施態様例1における柱体(11)(街路灯)が基台(13)(コンクリート硬化体)に埋設されて固定されている柱体(11)の側面と柱体(11)の埋設部分近傍の基台(13)の模式図(図1(a))と、図1(a)の破線で囲まれた部分Sの柱体(13)の側面と基台(13)の断面の模式図(図1(b))である。
【図2】実施態様例1において、柱体(11)の基台(13)中の埋設部分を、基台(13)を掘削して露出させた状態の模式図(図2(a))と、図2(a)の破線で囲まれた部分Sの断面の模式図(図2(b))である。
【図3】実施態様例1において、柱体(11)の劣化部分(12)を含む部分から基台(13)中の埋設部分までの柱体(11)の側面を第1の被覆樹脂材(14-1)で被覆した状態の模式図(図3(a))と、図3(a)の破線で囲まれた部分Sの断面の模式図(図3(b))である。
【図4】実施態様例1において、第1の被覆樹脂材(14-1)の上をさらに第2の被覆樹脂材(14-2)で巻き込んで被覆した状態の模式図(図4(a))と、図4(a)の破線で囲まれた部分Sの断面の模式図(図4(b))である。
【図5】第1の被覆樹脂材(14-1)及び2(14-2)で被覆した状態のまま、柱体(11)の基台(13)下に埋設していた部分を、再び基台(13)中に埋設して基台(13)に固定された柱体(11)の状態の模式図(図5(a))と、図5(a)の破線で囲まれた部分Sの断面の模式図(図5(b))である。
【図6】実施態様例2における柱体(21)(道路標識支柱)が基台(23)(コンクリート硬化体)に埋設されて固定されている柱体(21)の側面と柱体(21)の埋設部分近傍の基台(23)の模式図(図6(a))と、図6(a)の破線で囲まれた部分Sの柱体(23)の側面と基台(23)の断面の模式図(図6(b))である。
【図7】実施態様例2において、柱体(21)の劣化部分(22)の上方側面に、柱体(21)の管内に硬化性組成物を充填するための硬化性組成物投入孔(21-5)を設けた状態の模式図(図7(a))と、図7(a)の破線で囲まれた部分Sの柱体(23)の側面と基台(23)の断面の模式図(図7(b))である。
【図8】実施態様例2において、柱体(21)の管内に、鉄筋(25-2)を設置した状態の模式図(図8(a))と、図8(a)の破線で囲まれた部分Sの柱体(23)の側面と基台(23)の断面の模式図(図8(b))である。
【図9】実施態様例2において、柱体(21)の管内に、劣化部分(22)の上方まで硬化性組成物(25-3)を充填した状態の模式図(図9(a))と、図9(a)の破線で囲まれた部分Sの柱体(23)の側面と基台(23)の断面の模式図(図9(b))である。である。
【図10】実施態様例2において、柱体(21)の管内に硬化性組成物(25-3)を充填した後に、硬化性組成物投入孔(21-5)を充填材投入孔封鎖用金属キャップ(25-4)で封鎖した状態の模式図(図10(a))と、図10(a)の破線で囲まれた部分Sの柱体(23)の側面と基台(23)の断面の模式図(図10(b))である。
【図11】実施態様例2において、柱体(21)の基台(23)中の埋設部分を、基台(23)を掘削して露出させた状態の模式図(図11(a))と、図11(a)の破線で囲まれた部分Sの断面の模式図(図11(b))である。
【図12】実施態様例2において、柱体(21)の劣化部分(22)を含む部分から基台(23)中の埋設部分までの柱体(21)の側面を第1の被覆樹脂材(24)で被覆した状態の模式図(図12(a))と、図12(a)の破線で囲まれた部分Sの断面の模式図(図12(b))である。
【図13】実施態様例2において、第2の被覆樹脂材(24-1)の上をさらに第2の被覆樹脂材(24-2)で巻き込んで被覆した状態の模式図(図13(a))と、図13(a)の破線で囲まれた部分Sの断面の模式図(図13(b))である。
【図14】第1の被覆樹脂材(24-1)及び2(24-2)で被覆した状態のまま、柱体(21)の基台(23)下に埋設していた部分を、再び基台(23)中に埋設して基台(23)に固定された柱体(21)の状態の模式図(図14(a))と、図14(a)の破線で囲まれた部分Sの断面の模式図(図14(b))である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔本発明1〕
本発明1は、柱体(11、21)の末端が基台(13、23)に埋設して前記柱体(11、21)が前記基台(13、23)に固定されている柱体(11、21)の補強工法である。
【0011】
(柱体)
本発明1が対象とする柱体(11、21)(以下、柱体(11、21)ともいう)は、柱体(11、21)の末端が基台(13、23)に埋設して固定されているものである(図1及び5の街路灯(12)と道路標識支柱の例を示す)。
以下では、柱体(11、21)の基台(13、23)に埋設された末端を固定末端(11-3、21-3)、柱体(11、21)の基台(13、23)に埋設されていない方の末端を支持末端、柱体(11、21)の外部に露出した部分で、埋設部分の近傍の部分を根元という。
【0012】
柱体(11、21)としては、例えば、電柱、道路標識支柱(22)、街路灯(12)、カーブミラー、歩道橋の支柱等の外部に設置される産業・生活基盤用の支柱で、支柱の支持末端側に変圧器、道路標識のような重量物や、電灯のような機能部品が設置され、その用途目的からΓ字型である場合も多く、根元に大きな負荷がかかっている柱体(11、21)が挙げられ、Γ字型である柱体(11、21)を対象とすることが好ましい。
【0013】
柱体(11、21)の材質は金属、プラスチック、セラミックス、コンクリート等が挙げられるが、柱体(11、21)側面の劣化の影響がより大きく生じる金属を対象とすることが好ましく、金属としては鉄、ステンレス、貴金属、鉛当が挙げられるが、産業・生活基盤用に広く使用され、柱体(11、21)側面の劣化の影響がより大きい鉄を対象とすることが好ましい。
【0014】
柱体(11、21)は、内部が中空になっていない場合も内部が中空になっている管体である場合もあるが、柱体(11、21)側面の劣化の影響がより大きい管体を対象とすることが好ましく、金属管、プラスチック管、セラミックス管、コンクリート管等を対象とすることがより好ましく、金属管を対象とすることが更に好ましく、鉄管であることが更に好ましい。
【0015】
(劣化部分)
本発明1の対象となる柱体(11、21)は側面に劣化部分(12、22)を有する。
劣化部分(12、22)は、柱体(11、21)の表面の材質が、大気中の塩;硫黄ガス;炭酸ガス等の有害ガス;硫酸等の酸;これらを含む黄砂や雨が接触することによって化学的に損傷が進行する場合や、人、自転車、車等の接触・衝突による物理的な損傷を受けた場合が挙げられる。
【0016】
柱体(11、21)の根元の側面の劣化部分(12、22)は、人、自転車、車等の接触・衝突による物理的な損傷だけでなく、柱体(11、21)の表面の材質が人、犬、猫等の排泄物が接触して進行する場合も考えられる。
【0017】
柱体(11、21)が管体の場合、劣化部分は、根元近傍に柱体(11、21)の周囲を半周する程度又はそれ以上の長さにわたり腐食され、金属外管部分(11-1.21-1)が喪失して、管内が外部と連通してしまう程度になる場合もある。
【0018】
根元に負荷のかかる柱体(11、21)の場合、柱体(11、21)の倒壊又は折損により繋がり易いとの観点から、柱体(11、21)の根元の側面の劣化部分(12、22)を対象とすることが好ましく、柱体(11、21)の側面の基台(13、23)から50cm以下の高さにある劣化部分(12、22)を対象とすることがより好ましく、30cm以下の高さにある劣化部分(12、22)を対象とすることが更に好ましく、10cm以下の高さにある劣化部分(12、22)を対象とすることが更に好ましく、5cm以下の高さにある劣化部分(12、22)を対象とすることが更に好ましく、これらの高さから根元に至るまである劣化部分(12、22)を対象とすることが更に好ましい。
【0019】
(基台)
本発明1が対象とする基台(13、23)は、柱体(11、21)の固定末端(11-3、21-3)側が埋設され、柱体(11、21)を固定する。基台(13、23)は、土で構成される大地そのもの、又は一定の型枠に充填された土で形成されたものでよく、この場合は、柱体(11、21)の固定末端(11-3、21-3)側は土に直接埋め込まれていることになる。基台(13、23)は、硬化性樹脂組成物の硬化体又は水硬性組成物の硬化体又はその硬化体上に化粧レンガ等の歩道用敷石が敷き詰められていてよく、産業・生活基盤用の支柱では、コンクリート等の水硬性組成物の硬化体である場合が多い。
【0020】
(補修方法1)
本発明1は、柱体(11、21)の劣化部分(12、22)を含む部分から基台(13、23)中の埋設部分までの柱体(11、21)の側面を、
被覆樹脂材(14-1及び2、24-1及び2)で被覆して、基台(13、23)に埋設して基台(13、23)に固定する柱体(11、21)の補強工法である。
【0021】
被覆樹脂材(14-1及び2、24-1及び2)は、強度及び耐蝕性の観点から、
繊維ネット、樹脂フィルム、繊維強化樹脂(FRP(Fiber Reinforced Plastics))シート等であることが好ましく、樹脂フィルム及び/又は繊維強化樹脂シートであることがより好ましく、繊維強化樹脂シートであることが更に好ましい。
【0022】
繊維ネットとしては、
ナイロン等の従来から使用される汎用樹脂製繊維;
帝人テクノプロダクツ社「テクノーラ」「トワロン」(以上、登録商標)、東レ・デュポン社「ケブラー」(登録商標)等のパラ系アラミド繊維;
東洋紡社「ダイニーマ」(登録商標)等の超高分子量ポリエチレン繊維;
クラレ社「ベクトラン」(登録商標)等のポリアリレート繊維;及び
東洋紡社「ザイロン」(登録商標)等のPBO(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサザール)繊維;
東レ社「トレカ」(登録商標)、東邦テナックス社「テナックス」(登録商標)、三菱レイヨン社「パイロフィル」(登録商標)等の炭素繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の繊維で構成されるネットが好ましい。
【0023】
樹脂フィルムとしては、ポリエチレン、変性ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリプロピレン、ポリブテン、ポリエステル、ビニルエステル、ポリ塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、熱可塑性エラストマー、シリコーンゴム、ポリイミド等のエンジニアプラスチックを、所望の強度に応じで厚みと延伸条件等の製造条件を調整してフィルム化したものが使用できる。市販品としては、東レ社「ルミラー」(登録商標)等の二軸延伸ポリエステルフィルム、帝人デュポンフィルム社「テイジンテトロンフィルム」「メリネックス」「マイラー」「テフレックス」(以上、登録商標)等のPETフィルム;帝人デュポンフィルム社「テオネックス」(登録商標)等のPEN(ポリエチレンナフタレート)フィルムが挙げられる。
【0024】
繊維強化樹脂シートとしては、繊維ネット及び樹脂フィルムで挙げられた好適樹脂の繊維又はガラス繊維を練り込んでフィルム化する、又はこれらの樹脂をネット化したシートを骨格基材として、ネット化したシートに、例えば光又は熱で硬化する、例えばアクリレート系、エポキシ系等の硬化性樹脂を含浸・硬化して形成されたものが好ましい。
【0025】
被覆樹脂材(14-1及び2、24-1及び2)の厚みは、所望の強度を達成するように調整されるが、被覆された柱体(11、21)部分の外観、基台(13、23)に埋設されたときの固定性等の観点から、過剰に大きくならないようにすることが好ましく、0.1?20mmが好ましく、1?15mmがより好ましく、2?10mmが更に好ましい。
【0026】
本発明1では、被覆樹脂材(14-1及び2、24-1及び2)で、柱体(11、21)の劣化部分(12、22)を含む部分から基台(13、23)中の埋設部分までの柱体(11、21)の側面を被覆する。
【0027】
被覆樹脂材(14-1及び2、24-1及び2)の被覆高さは、少なくとも基台(13、23)表面から柱体(11、21)の劣化部分(12、22)が全て被覆される高さであることが好ましく、柱体(11、21)の劣化部分(12、22)の最高端よりも少なくとも5cm高い部分まで被覆される高さであることがより好ましく、柱体(11、21)の劣化部分(12、22)の最高端よりも少なくとも10cm高い部分まで被覆される高さであることが更に好ましい。
【0028】
柱体(11、21)の基台(13、23)中の埋設部分については、被覆樹脂材(14-1及び2、24-1及び2)が、基台(13、23)表面(23-1)上に露出する柱体(11、21)とほぼ同じ断面径の部分の側面を被覆していることが好ましく、固定末端(11-3、21-3)までの側面を被覆していることがより好ましい。
【0029】
柱体(11、21)が安定して固定される観点から、柱体(11、21)が基台(13、23)に埋設された柱体(11、21)の固定末端側に、柱体(11、21)の軸方向から基台(13、23)中に末広がりに軸対称に例えば2本、4本、6本、8本のアンカー用リブが張り出して設けてあることが好ましく、アンカー用リブが柱体(11、21)の固定末端と共に軸方向に垂直な底板に固定されていることがより好ましい。
【0030】
この場合、アンカー用リブ以外の部分を、柱体(11、21)の劣化部分(12、22)を含む部分から固定末端までお柱体(11、21)の側面を第1の被覆樹脂材(14-1、24-1)で被覆し、アンカー用リブよりも上方の側面を、第1の被覆樹脂材(14-1、24-1)の上に重ねて第2の被覆樹脂材(14-2、24-2)を被覆するとよい。第2の被覆樹脂材(14-2、24-2)を軸の周囲を横巻にして被覆してもよい。
【0031】
このように第1の被覆樹脂材(14-1、24-1)と第2の被覆樹脂材(14-2、24-2)とを被覆すると、第1の被覆樹脂材(14-1、24-1)が再度基台(13、23)中に埋設されて基材(13、23)中で固定されるため、第2の被覆樹脂材(14-2、24-2)が軸方向へのズレを抑制できる。
【0032】
本発明1では、柱体(11、21)の基台(13、23)中の埋設部分は、基台(13、23)の構成部材を柱体(11、21)に沿って掘り出して、柱体(11、21)の基台(13、23)中の埋設部分を露出させ、その露出部分を被覆樹脂材(14-1及び2、24-1及び2)で被覆し、その後、掘り出した基台(13、23)の構成部材を埋め戻すか、基台(13、23)の構成部材を破壊・粉砕して柱体(11、21)に沿って掘り出した場合は、掘り出された基台(13、23)の構成部材に代えて、コンクリート等の硬化性組成物を露出部分の周りに流し込んで硬化させて新たに基台(13、23)の構成部材とする。
【0033】
本発明1では、劣化部分の腐食を抑制するために、劣化部分の錆や汚れを除去した後を、劣化部分に上述したような硬化性樹脂を含浸して硬化させることが好ましく、さらにその上からパッチ部材(15-2、25-2)を貼着することが好ましい。
【0034】
パッチ部材(15-2、25-2)(15-2、25-2)は、補修対象箇所を被覆できるだけの面積を有すればよく、四辺形に形成してもよく、円形や三角形、その他の多角形であっても良い。
【0035】
パッチ部材(15-2、25-2)は、柱体(11、21)の表面に沿って劣化部分を被覆できるように屈曲性又は弾力性を有することが好ましい。屈曲性又は弾力性を有するパッチ部材(15-2、25-2)を構成するには、パッチ部材(15-2、25-2)がガラス、合成樹脂あるいは金属で作られた板状の部材であることが好ましい。
【0036】
パッチ部材(15-2、25-2)がガラス又は金属で構成されている場合、パッチ部材(15-2、25-2)はガラスクロスや金属繊維で構成された布帛状であってよい。パッチ部材(15-2、25-2)が合成樹脂又は金属で構成されている場合は、屈曲性又は弾力性を有する薄いシート状であってもよいし、硬めのシート状である場合であっても屈曲性を付与できる観点から、所定方向に延びる可変部が形成されていることが好ましく、この可変部は、例えば溝を形成して肉薄とし、容易に屈曲可能にした部分であってよい。
【0037】
パッチ部材(15-2、25-2)が合成樹脂で構成されている場合、合成樹脂としては、強度、屈曲性、弾力性及び防水性の観点から、ポリエチレン、変性ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリプロピレン、ポリブテン、ポリエステル、ビニルエステル、ポリ塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、熱可塑性エラストマー、シリコーンゴム、ポリイミド等のエンジニアプラスチック又はゴム類が好ましく、液体が水の場合はポリエステル、ビニルエステル又はエポキシ樹脂が好ましく、液体が溶剤であっても溶剤耐性に優れるビニルエステルがより好ましい。
【0038】
パッチ部材(15-2、25-2)は、さらに、強度、屈曲性、弾力性及び防水性の観点から、合成樹脂と繊維で構成されるFRP(Fiber Reinforced Plastics)が好ましい。
FRPの場合、合成樹脂はポリエステル、エポキシ樹脂及びビニルエステルであり、繊維はガラス繊維であることがより好ましい。
【0039】
パッチ部材(15-2、25-2)の厚みは、工程2で金属管を防水性に囲って覆う包囲カバーの大きさが不必要に大きくならないようにする観点から、薄いことが好ましく、0.1?10mmが好ましく、0.2?5mmがより好ましく、0.3?3mmが更に好ましく、0.4?2mmが更に好ましく、0.4?1mmが更に好ましい。
【0040】
(補修方法2)
柱体(11、21)が管体である場合、柱体(11、21)の劣化部分(12、22)の近傍の強度を確保してから、劣化部分の補修をすることが好ましく、向上する観点から、柱体(11、21)の管内に、
基台(13、23)中の埋設部分から柱体(11、21)の劣化部分(12、22)を含む部分の高さまで硬化性組成物を充填して硬化させることが好ましい。
【0041】
硬化性組成物としては、加熱、光照射、二剤の混合発熱等により硬化する硬化性樹脂組成物又はコンクリート等の水硬性組成物が挙げられるが、強度の向上効果の簡単から、コンクリート等の水硬性組成物であることが好ましい。
【0042】
柱体(11、21)の管内に、硬化性組成物を充填して硬化する場合は、柱体(11、21)の劣化部分(12、22)の近傍の強度を向上する観点から、
硬化性組成物の充填高さは、少なくとも基台(13、23)表面から柱体(11、21)の劣化部分(12、22)の最高端の高さであることが好ましく、最高端よりも少なくとも10cm高いことがより好ましく、最高端よりも少なくとも20cm高いことが更に好ましい。
【0043】
劣化部分が、柱体(11、21)の根元近傍の低位置にある場合であっても、基台表面(1-1、23-1)から、基台(13、23)中に埋設された部分の充填深さの好ましくは10?100%、より好ましくは20?80%、更に好ましくは40?60%程度の高さまで硬化性組成物を充填することが好ましい。
【0044】
柱体(11、21)の管内に、硬化性組成物を充填して硬化する場合は、被覆樹脂材(14-1及び2、24-1及び2)の被覆高さは、
少なくとも硬化性組成物の充填高さと同じであることが好ましく、
柱体(11、21)の靭性・弾性が硬化性組成物の充填高さよりも高い部分と低い部分とで異なることによる硬化性組成物の充填高さ近傍柱体(11、21)に加わる負荷に対する補強の観点から、硬化性組成物の充填高さよりも少なくとも10cm高いことがより好ましく、少なくとも20cm高いことが更に好ましく、劣化部分が、柱体(11、21)の根元近傍の低位置にある場合であっても、基台表面(1-1、23-1)上の硬化性組成物の充填高さの、好ましくは10?100%、より好ましくは20?80%、更に好ましくは40?60%程度の高さまであることである。
【0045】
(本発明1の効果)
本発明1によれば、柱体(11、21)の劣化部分(12、22)を、柱体(11、21)の倒壊又は折損を抑止するために十分な補強を、簡易に行うことができる。
【0046】
本発明1は、さらに柱体(11、21)の根元の近傍に劣化部分(12、22)があり、例えば、電柱、道路標識支柱(22)、街路灯(12)、カーブミラー、歩道橋の支柱等の外部に設置される産業・生活基盤用の支柱で、支柱の支持末端側に変圧器、道路標識のような重量物や、電灯のような機能部品が設置されるΓ字型で、根元に大きな負荷がかかっている場合にも有効に補強できる。
【0047】
本発明1は以上の効果を奏し、劣化部分(12、22)が問題となる柱体(11、21)を補強することで、柱体(11、21)の交換をすることなくそのまま使用できることから、経済的効果が大きいだけでなく、例えば、デザイナーによって設計された意匠性の高い街路灯(12)を長期間にわたり使用できるようになり、都市景観の保全にも有用である。
【0048】
〔本発明2〕
本発明2は、本発明1で製造されうる、本発明1における基台(13、23)に埋設して固定される被覆樹脂材(14-1及び2、24-1及び2)で被覆された柱体(11、21)である。
【0049】
本発明2によれば、例えば、電柱、道路標識支柱(22)、街路灯(12)、カーブミラー、歩道橋の支柱等の外部に設置される産業・生活基盤用の安全性が高く、経済的コストの増大を抑制せずに使用することができ、例えば、デザイナーによって設計された意匠性を維持できるため都市景観の保全にも有用である。
【0050】
〔実施態様例1〕
【0051】
(柱体)
(1)Γ字型の街路灯(12):高さ約10m、アーム長約3m、肉厚約1cmの鉄管で、基台(13)に埋設された部分が約50cm、柱体(11)の固定末端近傍に、三角版状のアンカー用リブ(11-2)が軸周りに互いに45°の角度をなして8枚張り出していて、固定末端と共に底板の固定されている(図面には4枚だけ示した)。底板はさらにボルト(図示していない)で基台(13)に螺嵌され固定されている。
(2)基台(13):コンクリート硬化体
【0052】
(劣化部分)
基台(13)の根元から表面から5cmの高さまで、根元周りに半周の範囲に腐食が広がっている。
【0053】
(被覆樹脂材の原材料)
(1)繊維ネット:アラミド繊維ネット(引張強度約3000MPa、繊維直径約12μm)
(2)硬化性樹脂:熱硬化性ビニルエステル樹脂(液状のビニルエステル、硬化剤及び硬化促進剤を含む液状混合物)
(3)パッチ部材(15-2、25-2):メス型上に離型剤を塗布し、その上に、硬化性樹脂を塗布し、その上に重ねて繊維ネットを配置し、さらに重ねて硬化性樹脂を塗布してパッチ部材(15-2、25-2)シートを形成させる。硬化性樹脂が硬化した後、パッチ部材(15-2、25-2)シートをメス型から剥離させ、長さ約15cm、幅約10cm、厚み約2.5mmに切断してパッチ部材(15-2、25-2)とした。
【0054】
(補強方法)
(1)柱体(11)の基台(13)に埋設された部分の周囲の基台(13)部位を、ドリルで掘削して、柱体(11)の基台(13)に埋設された部分を露出させて、高圧水で露出部分の汚れを除去した(図2)。
(2)劣化部分の錆及び汚れを除去して光沢表面にした後、劣化部分充填樹脂(15-1)として硬化性樹脂を劣化部分と劣化部分近傍の柱体(11)の側面に充填して、その上からパッチ部材(15-2、25-2)を貼着した(図3)。
(3)劣化部分(12)の最高端の上方約20cmから柱体(11)の固定末端までの、アンカー用リブを除く柱体(11)の側面に、硬化性樹脂(15-1)を塗布して、その上に重ねて繊維ネットを配置し、さらに重ねて硬化性樹脂を塗布して、硬化性樹脂を硬化させて第1の被覆樹脂材(14-1)を形成させる(図3)。
(4)アンカー用リブの上端より上方を、第1の被覆樹脂材(14-1)の上端から約20cm上方まで、第1の被覆樹脂材の表面と露出している柱体(11)の側面に、第1の被覆樹脂材(14-1)と同様にして第2の被覆樹脂材(14-2)を形成させる(図4)。
(3)柱体(11)の露出部分の周辺に未硬化コンクリートを充填して基台(13)の構成部位を修復した(図5)。
(4)充填した未硬化コンクリートを養生して硬化させた(図5)。
【0055】
〔実施態様例2〕
【0056】
(柱体)
(1)Γ字型の街路灯(22):高さ約10m、アーム長約5m、肉厚約1cmの鉄管で、基台(23)に埋設された部分が約50cm、柱体(21)の固定末端近傍に、三角版状のアンカー用リブ(21-2)が軸周りに互いに45°の角度をなして8枚張り出していて、固定末端と共に底板の固定されている(図面には4枚だけ図示した)。底板はさらにボルト(図示していない)で基台(23)に螺嵌され固定されている。
(2)基台(23):コンクリート
【0057】
(劣化部分)
基台(23)の根元から表面から5cmの高さまで、根元周りに半周の範囲に腐食が広がっている。
【0058】
(被覆樹脂材の原材料)
実施態様例1と同じ原材料を使用した。
【0059】
(補強方法)
(1)柱体(21)の劣化部分(22)の最高端の上方約50cmに管内に連通するようにサンダー等で硬化性組成物投入孔(21-4)を切抜き、硬化性組成物投入孔(21-4)から硬化性組成物(未硬化コンクリート)を劣化部分(22)の最高端の上方30cmまで充填した(図7?9)。
(2)充填した未硬化コンクリートを養生して硬化させた。
(3)硬化性組成物投入孔(21-4)を、硬化性組成物投入孔封鎖用金属キャップ(25-3)を嵌め込んで溶接して封鎖した(図10)。
(3)充填した未硬化コンクリートが硬化した後、柱体(21)の基台(13、23)に埋設された部分の周囲の基台(23)部位を掘削して、柱体(21)の基台(23)に埋設された部分を露出させて、高圧水で露出部分の汚れを除去した(図11)。
(4)硬化性組成物投入孔封鎖用金属キャップ(25-3)の最高端の上方約10cmから柱体(21)の固定末端までの、アンカー用リブを除く柱体(21)の側面に、硬化性樹脂(25-1)を塗布して、その上に重ねて繊維ネットを配置し、さらに重ねて硬化性樹脂を塗布して、硬化性樹脂を硬化させて第1の被覆樹脂材(24-1)を形成させる(図12)。
(4)アンカー用リブの上端より上方を、第1の被覆樹脂材(24-1)の上端から約20cm上方まで、第1の被覆樹脂材の表面と露出している柱体(21)の側面に、第1の被覆樹脂材(24-1)と同様にして第2の被覆樹脂材(24-2)を形成させる(図13)。
(5)柱体(21)の露出部分の周辺に未硬化コンクリートを充填して基台(23)の構成部位を修復した。
【符号の説明】
【0060】
11 柱体(金属製街路灯)
11-1 柱体の金属外管部分
11-2 アンカー用リブ
11-3 固定末端
11-4 底板
12 劣化部分
13 基台
13-1 基台の表面
13-2 基台下の埋設部分を露出させるために形成された基台の掘削孔
14-1 第1の被覆樹脂材
14-2 第2の被覆樹脂材
15-1 劣化部分充填樹脂
15-2 パッチ部材
【0061】
21 柱体(金属製道路標識支柱)
21-1 柱体の金属外管部分
21-2 アンカー用リブ
21-3 固定末端
21-4 底板
21-5 硬化性組成物投入孔
22 劣化部分
23 基台(コンクリート硬化体)
23-1 基台の表面
23-2 基台下の埋設部分を露出させるために形成された基台の掘削孔
24 被覆樹脂材
25-1 劣化部分充填樹脂
25-2 パッチ部材
25-2 鉄筋
25-3 充填されたコンクリート
25-4 硬化性組成物投入孔封鎖用金属キャップ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱体の末端が基台に埋設されて前記柱体が前記基台に固定されている柱体の補強工法であって、
前記柱体は、金属製であり、前記基台上に露出する前記柱体の側面に劣化部分を有し、
前記基台は、硬化性樹脂組成物の硬化体又は水硬性組成物の硬化体であり、
前記柱体の前記劣化部分を含む部分から前記基台中の埋設部分までの前記柱体の側面を、被覆樹脂材で被覆して、前記基台に埋設して前記基台に固定する柱体の補強工法(但し、前記補強工法から、前記被覆樹脂材のさらに上側を前記柱体の断面に対応した筒状の補強材で覆って補修する態様1、及び被覆樹脂材がフィラメント繊維を使用した繊維強化樹脂シートである場合に前記繊維強化樹脂シートを、前記柱体の外表面の周囲にその軸方向に前記フィラメント繊維を配向させて被覆する態様2を除く(但し、前記態様2において、前記繊維強化樹脂シートは、前記フィラメント繊維を複数本収束した繊維束又は軽度に撚りを掛けて収束した繊維束を支持体シート上に接着剤層を介して一方向に並べて上方から押し潰すことにより、前記支持体上に設けられ、前記繊維束の押し潰しにより繊維束が軽度にバラされて、前記フィラメントが集束剤又は撚りによる結合により複数層に積層した状態で、前記支持体シート上に前記接着剤層を介してほぼ一方向に配列して接着されて得られる。))
【請求項2】
前記柱体が管体である請求項1記載の柱体の補強工法。
【請求項3】
前記柱体の管内に、
前記基台中の埋設部分から前記柱体の前記劣化部分を含む部分の高さまで硬化性組成物を充填して硬化させる請求項2記載の柱体の補強工法。
【請求項4】
前記被覆樹脂材が繊維強化樹脂シートである請求項1?3のいずれか1項記載の柱体の補強工法(但し、前記繊維強化樹脂シートからアラミド繊維強化プラスチックを成型して得た筒状補強材を当該筒状補強材の軸線を含む仮想平面に沿って分割した複数の部分補強材を接着させた態様を除く)。
【請求項5】
請求項1?4のいずれか1項記載の柱体の補強工法で製造された、
請求項1?4のいずれか1項記載の基台に埋設して固定されている請求項1?4記載の被覆樹脂材で被覆された柱体。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-03-26 
出願番号 特願2018-76612(P2018-76612)
審決分類 P 1 651・ 537- ZDA (E04H)
P 1 651・ 113- ZDA (E04H)
P 1 651・ 161- ZDA (E04H)
P 1 651・ 121- ZDA (E04H)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 立澤 正樹  
特許庁審判長 秋田 将行
特許庁審判官 住田 秀弘
小林 俊久
登録日 2018-10-26 
登録番号 特許第6422089号(P6422089)
権利者 株式会社 新倉技研
発明の名称 柱体の補強方法及び被覆樹脂材で被覆された柱体  
代理人 柴 大介  
代理人 柴 大介  

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