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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C08J |
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管理番号 | 1363973 |
異議申立番号 | 異議2019-700131 |
総通号数 | 248 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2020-08-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2019-02-15 |
確定日 | 2020-05-07 |
異議申立件数 | 2 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6379479号発明「ポリエステルフィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6379479号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?4〕について訂正することを認める。 特許第6379479号の請求項1?4に係る特許を取り消す。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6379479号(以下、「本件特許」という。)は、平成25年12月5日を出願日とする特許出願に係るものであって、平成30年8月10日に特許権の設定登録(請求項の数4)がされ、同年同月29日に特許掲載公報が発行された。 その後、平成31年2月15日に、請求項1?4に係る特許に対し、特許異議申立人土田裕介(以下、「申立人A」という。)により特許異議の申立てがされ、また、同年同月27日に、請求項1?4に係る特許に対し、特許異議申立人早川毅(以下、「申立人B」という。)により特許異議の申立てがされた。 上記申立人Aによる特許異議申立及び申立人Bによる特許異議申立は、特許法第120条の3第1項の規定により、異議2019-700131号事件として併合して審理されることとなったところ、その後の手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。 平成31年 4月24日付け:取消理由通知 令和 1年 7月 5日 :特許権者による意見書の提出 令和 1年 9月 4日付け:取消理由通知(決定の予告) 令和 1年11月 1日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和 1年12月12日 :申立人Aによる意見書の提出 令和 1年12月19日 :申立人Bによる意見書の提出 第2 訂正の適否について 1 請求の趣旨 特許権者が令和1年11月1日に提出の訂正請求書により行った訂正(以下、「本件訂正」という。)は、「特許第6379479号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?4について訂正することを求める」ことを請求の趣旨とするものである。 2 訂正の内容 本件訂正の内容は、以下のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「PETボトル」と記載されているのを、「使用済みPETボトル」に訂正する。 併せて、請求項1を直接あるいは間接的に引用する請求項2?4についても請求項1を訂正したことに伴う訂正をする。 (2)一群の請求項について 訂正事項1による本件訂正は、訂正前の請求項1?4を訂正するものであるところ、本件訂正前の請求項2?4は、訂正請求の対象である請求項1の記載を直接又は間接的に引用する関係にあるから、訂正前の請求項1?4は一群の請求項であって、訂正事項1による本件訂正は、一群の請求項〔1?4〕について請求されたものである。 3 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項1による訂正は、「PETボトル」を「使用済み」のものに限定するものであるから、訂正事項1による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項1による訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件特許明細書等」という。)の範囲内のものであることは、【0005】の「PETボトルなど使用済みの包装材料」なる記載から当業者に自明であるから、訂正事項1による訂正は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 訂正後の請求項1を引用する請求項2?4についての訂正も同様である。 4 小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?4〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 第2で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1?4に係る発明は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 (なお、本件特許の請求項1?4に係る発明を、以下、請求項番号に併せて「本件発明1」等という。) 「【請求項1】 単層のポリエステルフィルムと、前記ポリエステルフィルムの一方の面側に設けられるシーラント層とを有する食品包装用積層フィルムであって、 前記ポリエステルフィルムは前記食品包装用積層フィルムの最も外面側に位置しており、 前記ポリエステルフィルムは、ジオール単位としてバイオマス由来のエチレングリコールを含み、ジカルボン酸単位として化石燃料由来のジカルボン酸を含むヴァージンバイオマスポリエステルと、 ジオール単位として化石燃料由来のジオールおよび/またはバイオマス由来のエチレングリコールを含み、ジカルボン酸単位として化石燃料由来のジカルボン酸を含む使用済みPETボトルをメカニカルリサイクルして得られるメカニカルリサイクルポリエステルと、を含むことを特徴とする、食品包装用積層フィルム。 【請求項2】 前記ポリエステルフィルムの総厚が、5μm以上、100μm未満である、請求項1に記載の食品包装用積層フィルム。 【請求項3】 前記ジカルボン酸がテレフタル酸である、請求項1または2に記載の食品包装用積層フィルム。 【請求項4】 請求項1?3の何れか一項に記載の食品包装用積層フィルムを備えた、包装体。」 第4 取消理由(決定の予告)の概要 設定登録時の請求項1?4に係る特許に対して、令和1年9月4日付けで当審が特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の概要は、次のとおりである。 1 取消理由1A(甲4Aを主引用文献とする進歩性) 請求項1?4に係る発明は、甲4Aに記載された発明及び本件特許の出願前の周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、請求項1?4に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 2 取消理由1B(甲1Bを主引用文献とする進歩性) 請求項1?4に係る発明は、甲1Bに記載された発明及び本件特許の出願前の周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、請求項1?4に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 3 証拠方法 ・取消理由1Aの主引用文献 甲4A :特開2012-96411号公報 ・取消理由1Bの主引用文献 甲1B :特開2012-96469号公報 ・本件特許の出願時の技術常識を示す引用文献(主引用文献として提示したものを除く) 甲6A :「包材構成 100問 100答」、(株)東洋紡パッケージングプラン サービス、1994年4月4日、p.75,76,107,108 甲7A :中川善博、「メカニカルリサイクルPETフィルムを使用したサステナブルパッケージ」、包装技術、公益社団法人 日本包装技術協会、第51巻、第9号、2013年9月、p.26?29 引用文献5A:特開2005-187762号公報 引用文献6A:特開2005-247886号公報 引用文献7A:凸版印刷、メカニカルリサイクルPETフィルムを使用した環境配慮型ラミネート包材を開発、ニュースリリース、日本、凸版印刷株式会社、2012年4月25日、[平成31年2月4日検索]、インターネット、<URL、https://www.toppan.co.jp/news/2012/04/newsrelease1345.html> 引用文献8A:ペットボトルリサイクル樹脂の使用比率を世界最高レベルの80%まで高め、厚さ12μmのPETフィルムを開発、ニュースリリース、日本、東洋紡績株式会社、2012年7月4日、[平成31年2月4日検索]、インターネット、<URL、http://www.toyobo.co.jp/news/pdf/2012/07/press476.pdf> 甲2B :特開2011-256328号公報 甲6B :特開2003-192882号公報 甲7B :特開2003-301038号公報 周知例A :平成24年4月27日の厚生労働省医薬食品局食品安全部長名の「食品用器具及び容器包装における再生プラスチック材料の使用に関する指針(ガイドライン)について」と題する通知(特に、該指針の別添資料の「第1 総則」「4.」「(1)物理的再生法」の項目);http://www.petbottle-rec.gr.jp/more/introduction.htmlの「食品容器としての安全衛生性」の項目 なお、上記の証拠方法は、いずれも本件特許の出願前に、日本国内または外国において頒布された刊行物又は電気回線を通じて公衆に利用可能となったものである。 第5 当審の判断 当審合議体は、取消理由1B(甲1Bを主引用文献とする進歩性)及び取消理由1A(甲4Aを主引用文献とする進歩性)により、訂正後の請求項1?4に係る特許は取り消されるべきものと考える。 1 取消理由1B(甲1Bを主引用文献とする進歩性) (1)甲1Bの記載及び甲1Bに記載された発明 ア 甲1Bの記載 ・特許請求の範囲 「【請求項1】 基材層と、前記基材層の少なくとも一方の面に形成された蒸着層とを有するバリア性フィルムであって、 前記基材層が、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなる樹脂組成物からなり、前記樹脂組成物が、ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであり、ジカルボン酸単位が化石燃料由来のジカルボン酸であるポリエステルを、樹脂組成物全体に対して、50?95質量%含んでなり、 前記蒸着層が、無機物または無機酸化物の蒸着膜からなることを特徴とする、バリア性フィルム。 【請求項2】 前記樹脂組成物が、ジオール単位が化石燃料由来のジオールまたはバイオマス由来のエチレングリコールであり、ジカルボン酸単位が化石燃料由来のジカルボン酸であるポリエステルからなる樹脂製品をリサイクルして得られるポリエステルをさらに含んでなる、請求項1に記載のバリア性フィルム。 ・・・ 【請求項4】 前記化石燃料由来のジカルボン酸がテレフタル酸である、請求項1?3のいずれか一項に記載のバリア性フィルム。 ・・・ 【請求項9】 前記基材層が2軸延伸されてなる樹脂フィルムである、請求項1?8のいずれか一項に記載のバリア性フィルム。 ・・・ 【請求項12】 請求項1?11のいずれか一項に記載のバリア性フィルムを用いた積層体。 【請求項13】 請求項12に記載の積層体からなる、積層フィルム。 【請求項14】 請求項12に記載の積層体からなる、包装用袋。」 ・発明を実施するための形態 「【0051】 基材層を形成する樹脂組成物中に5?45質量%の割合で含まれてもよいポリエステル(以下、リサイクルポリエステルともいう)は、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなり、ジオール単位としてジオール単位が化石燃料由来のジオールまたはバイオマス由来のエチレングリコールを用い、ジカルボン酸単位として化石燃料由来のジカルボン酸を用いて重縮合反応により得られたポリエステル樹脂からなる製品をリサイクルして得られるポリエステルである。」 「【0120】 本発明に係るバリア性フィルムは、・・・包装材料として有用であり、特に、ガスバリア性(O_(2)、N_(2)、H_(2)O、CO_(2)、その他等の透過を遮断、阻止する)に優れるため、食品包装用フィルムを構成するバリア性基材として、好適に使用されるものである。特に、N_(2)あるいは、CO_(2)ガス等を充填した、いわゆる、ガス充填包装に用いた場合には、その優れたガスバリア性が、充填ガスの保持に極めて有効となる。さらに、本発明に係るバリア性フィルムは、熱水処理、特に、高圧熱水処理(レトルト処理)に優れ、極めて優れたガスバリア性特性を示すものである。」 ・実施例 「【0138】 <バイオマス由来のポリエステルの合成> テレフタル酸83質量部とバイオマスエチレングリコール(インディアグライコール社製)62質量部とをスラリーとして反応槽に供給し、常法の直重方法で、エステル化反応を240℃で5時間行った。その後、トリメチルフォスフェート(アルドリッチ社製)を0.013質量部添加(酸成分に対して15mmol%)してから高温真空条件下の重合反応に移行させた。まず、40分間で、真空度を4000Pa、重合温度280℃にまで昇温し、ついでその重合温度280℃のまま、真空度を200Paまで下げて溶融重合反応を行った。反応時間は3時間であった。合成したポリマーは、ストランドの形で流水中に吐出し、ペレタイザによってペレット化した。そのペレットを160℃において5時間乾燥後、窒素雰囲気下50Paの真空下205℃で固相重合して固有粘度0.8dl/gのポリマーを得た。なお、固有粘度はフェノール/テトラクロロエタン(成分比:3/2)溶媒を用い、35℃で測定した溶融粘度から算出した。得られたポリマーの示差熱分析(装置:島津製作所DSC-60、測定条件:ヘリウムガス中、6℃/分で昇温)を行ったところ、ガラス転移温度は69℃を示し、化石燃料由来の原料から得られる既知のポリエチレンテレフタレートと同等であった。また、得られたバイオマス由来のポリエチレンテレフタレートの放射製炭素測定を行ったところ、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量は16%であった。 【0139】 <フィルムの作製1> 上記のようにして得られたポリエチレンテレフタレートペレット90質量部と、滑剤として平均粒子径0.9μmの多孔性シリカを200ppm含む化石燃料由来のポリエチレンテレフタレートマスターバッチ10質量部とを乾燥した後押出機に供給し、285℃で溶融し、Tダイよりシート状に押し出し、冷却ロールにて冷却固化させて未延伸シートを得た。次いでこの未延伸シートを、低速側駆動ロールの速度を6.5m/min、高速側駆動ロールの速度を22m/minとして、縦方向に3.5倍の倍率で延伸し、さらに、テンターにて横方向に3.5倍の倍率で延伸して厚みが12.02μmである二軸延伸ポリエステルフィルム1を得た。」 「【0152】 実施例2 <積層体の作製2> (1)上記のようにして得られたバイオマスPETフィルム1(厚さ12μm)を用意し、一方の面にコロナ処理を施した。コロナ処理を施したバイオマスPETフィルム1を巻き取り式の真空蒸着装置の送り出しロールに装着し、次いで、これを繰り出し、そのバイオマスPETフィルム1のコロナ処理面に、アルミニウムを蒸着源に用いて、酸素ガスを供給しながら、エレクトロンビーム(EB)加熱方式による真空蒸着法により、下記の蒸着条件により、膜厚200Åの酸化アルミニウムの蒸着膜を形成した。 (蒸着条件) 蒸着チャンバー内の真空度:2×10^(-4)mbar 巻き取りチャンバー内の真空度:2×10^(-2)mbar 電子ビーム電力:25kW フィルムの搬送速度:240m/分 蒸着面:コロナ処理面 (2)次に、下記に示す組成表に従って調製した、組成aの、ポリビニルアルコール、イソプロピルアルコール、およびイオン交換水からなる混合液に、組成bの、エチルシリケート、シランカップリング剤、イソプロピルアルコール、塩酸、およびイオン交換水からなる加水分解液を加えて攪拌し、無色透明のバリア塗工液を得た。 組成表 a ポリビニルアルコール 2.30 イソプロピルアルコール 2.70 H_(2)O 51.20 b エチルシリケート 16.60 シランカップリング剤 0.20 イソプロピルアルコール 3.90 0.5N塩酸水溶液 0.50 H_(2)O 22.60 合 計 100.00(wt%) (3)次に、酸化アルミ蒸着面に、上記で製造したガスバリア性組成物(バリア塗工液)をコーティングして、次いで、乾燥温度180℃でライン速100m/minにて加熱処理して、厚さ0.3μm(乾操状態)のガスバリアコート層を形成し、ガスバリア性積層フィルムを製造した。この様にして得られた酸化アルミニウム蒸着PETフィルムの蒸着面と、一般のナイロンフィルム(東洋紡績社製:ハーデンN1200、厚さ15μm)とをドライラミネートで貼合した。さらに、ナイロンフィルム上に、一般の直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(三井化学東セロ社製:T.U.X FC-D、厚さ80μm)をドライラミネートで貼合して、積層フィルムを得た。ドライラミネートによる貼合にはウレタン系接着剤(三井化学社製:タケラックA-515V/タケネートA-5)を使用し、乾燥時の塗布量が3.5g/m2になるよう調整した。貼合後、40℃×48時間のエージングを行った。・・・この積層フィルムを使用して、外寸法120mm×190mm、折り込み巾35mm、外周部のシール巾5mmのスタンディングパウチを作成した。」 イ 甲1Bに記載された発明 上記アの甲1Bの記載、特に、請求項1、4、9、及び、12?14の記載によれば、甲1Bには、請求項13に係る発明として、 「包装用袋を作製するための積層フィルムであって、 積層フィルムが、基材層と、前記基材層の少なくとも一方の面に形成された蒸着層とを有するバリア性フィルムを用いた積層体からなる積層フィルムであって、 前記基材層が、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなる樹脂組成物からなる、2軸延伸されてなる樹脂フィルムであり、 前記樹脂組成物が、ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであり、ジカルボン酸単位が化石燃料由来のジカルボン酸であるテレフタル酸であるポリエステルを、樹脂組成物全体に対して、50?95質量%含んでなり、 前記蒸着層が、無機物または無機酸化物の蒸着膜からなるバリア性フィルムである積層フィルム。」 の発明が記載されているといえるところ、甲1Bの、バイオマスポリエチレンテレフタレートフィルム1(【0138】及び【0139】)から作製された積層フィルムについての実施例2の記載(【0152】)、及び、該積層フィルムからスタンディングパウチを作成した旨の記載(同左)によれば、甲1Bには、請求項13に係る発明の具体的態様に相当する発明として、次のとおりの発明が記載されていると認められる。 「包装用袋であるスタンディングパウチを作製するための積層フィルムであって、 積層フィルムが、下記のバイオマスポリエチレンテレフタレートフィルム1(厚さ12μm)の一方の面にコロナ処理を施した後、その処理面に膜厚200Åの酸化アルミニウムの蒸着膜を形成し、次に、酸化アルミ蒸着面に、下記のガスバリア塗工液をコーティング・加熱処理して、厚さ0.3μm(乾操状態)のガスバリアコート層を形成し、得られた酸化アルミニウム蒸着PETフィルムであるガスバリア性積層フィルムの蒸着面と、ナイロンフィルム(東洋紡績社製:ハーデンN1200、厚さ15μm)とをウレタン系接着剤(三井化学社製:タケラックA-515V/タケネートA-5)を使用してドライラミネートで貼合し、さらに、ナイロンフィルム上に、直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(三井化学東セロ社製:T.U.X FC-D、厚さ80μm)を同様にドライラミネートで貼合して得られたものである積層フィルム。 <バイオマスポリエチレンテレフタレートフィルム1> テレフタル酸83質量部とバイオマスエチレングリコール(インディアグライコール社製)62質量部とから合成したポリエチレンテレフタレートポリマーをペレット化して得られたペレット90質量部と、滑剤として平均粒子径0.9μmの多孔性シリカを200ppm含む化石燃料由来のポリエチレンテレフタレートマスターバッチ10質量部とからなる樹脂組成物を押出機に供給し、285℃で溶融し、Tダイよりシート状に押し出し、冷却ロールにて冷却固化させて未延伸シートを得て、次いでこの未延伸シートを、縦方向に3.5倍の倍率で延伸し、さらに、テンターにて横方向に3.5倍の倍率で延伸して得られた厚みが12.02μmである二軸延伸ポリエステルフィルム1。 <ガスバリア塗工液> 下記組成aの、ポリビニルアルコール、イソプロピルアルコール、およびイオン交換水からなる混合液に、組成bの、エチルシリケート、シランカップリング剤、イソプロピルアルコール、塩酸、およびイオン交換水からなる加水分解液を加えて攪拌して得た、無色透明のバリア塗工液。 組成表 a ポリビニルアルコール 2.30 イソプロピルアルコール 2.70 H_(2)O 51.20 b エチルシリケート 16.60 シランカップリング剤 0.20 イソプロピルアルコール 3.90 0.5N塩酸水溶液 0.50 H_(2)O 22.60 合 計 100.00(wt%)」 (以下、「甲1Bフィルム発明」という。) また、甲1Bには、「甲1Bフィルム発明の積層フィルムを用いた包装用袋であるスタンディングパウチ。」(以下「甲1Bパウチ発明」という。)の発明が記載されていると認められる。 (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1Bフィルム発明とを対比する。 ・甲1Bフィルム発明の「包装用袋であるスタンディングパウチを作製するための積層フィルム」は、本件発明1の「包装用積層フィルム」に相当する。 ・甲1Bフィルム発明の「バイオマスポリエチレンテレフタレートフィルム1」は、本件発明1の「ポリエステルフィルム」に相当するし、これが「単層」であり、甲1Bフィルム発明の積層フィルムの「最も外面側に位置」していることは明らかである。 また、甲1Bフィルム発明の積層フィルムを構成する「バイオマスポリエチレンテレフタレートフィルム1」は、「テレフタル酸83質量部とバイオマスエチレングリコール(インディアグライコール社製)62質量部とから合成されたポリマーから得られたポリエチレンテレフタレートポリマー」をペレット化して得られたペレットを使用して製造されるものであるから、これは、本件発明1の「ポリエステルフィルム」についての、「ジオール単位としてバイオマス由来のエチレングリコールを含み、ジカルボン酸単位として化石燃料由来のジカルボン酸を含むヴァージンバイオマスポリエステル」を「含む」との構成を満足する。 ・甲1Bフィルム発明の積層フィルムは、「包装用袋であるスタンディングパウチを作製するため」のものであり、パウチを作製する際に積層フィルムはシールされるところ、該積層フィルムを構成する「直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(三井化学東セロ社製:T.U.X FC-D、厚さ80μm)」が、シールのための層であること(つまり、本件発明1の「シーラント層」に相当すること)は当業者に明らかである。また、甲1Bフィルム発明の「直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(三井化学東セロ社製:T.U.X FC-D、厚さ80μm)」は、積層フィルムにおいてバイオマスポリエチレンテレフタレートフィルム1の一方の面側に設けられている。 よって、甲1Bフィルム発明の「直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(三井化学東セロ社製:T.U.X FC-D、厚さ80μm)」は、本件発明1の「ポリエステルフィルムの一方の面側に設けられるシーラント層」に相当するといえる。 そうすると、本件発明1と甲1Bフィルム発明とを対比すると、両者は、以下の点で一致し、以下の点で相違する。 <一致点> 単層のポリエステルフィルムと、前記ポリエステルフィルムの一方の面側に設けられるシーラント層とを有する包装用積層フィルムであって、 前記ポリエステルフィルムは前記包装用積層フィルムの最も外面側に位置しており、 前記ポリエステルフィルムは、ジオール単位としてバイオマス由来のエチレングリコールを含み、ジカルボン酸単位として化石燃料由来のジカルボン酸を含むヴァージンバイオマスポリエステルとを含む包装用積層フィルム。 <相違点B1> 包装用積層フィルムについて、本件発明1では、「食品包装用」であると特定されているのに対し、甲1Bフィルム発明では、「スタンディングパウチを作製するための」ものであることが特定されるのみで、「食品」包装用であることは特定されていない点。 <相違点B2> 包装用積層フィルムを構成するポリエステルフィルムについて、本件発明1では、(ヴァージンバイオマスポリエステルに加えて)「ジオール単位として化石燃料由来のジオールおよび/またはバイオマス由来のエチレングリコールを含み、ジカルボン酸単位として化石燃料由来のジカルボン酸を含む使用済みPETボトルをメカニカルリサイクルして得られるメカニカルリサイクルポリエステル」(以下、「使用済みPETボトルメカニカルリサイクルポリエステル」という。)を含むことが特定されているのに対し、甲1Bフィルム発明では、「使用済みPETボトルメカニカルリサイクルポリエステル」は含まれていない点。 イ 判断 (ア)まず、相違点B1について検討する。 甲1Bフィルム発明のスタンディングパウチを作製するための積層フィルムは、ガスバリア性積層フィルムを含む積層フィルムであるところ、甲1Bの【0120】には、「本発明に係るバリア性フィルムは、・・・包装材料として有用であり、特に、ガスバリア性(・・・)に優れるため、食品包装用フィルムを構成するバリア性基材として、好適に使用されるものである。」と記載されているし、スタンディングパウチは、食品包装用袋の形態としても周知である。例えば、甲6Aの108頁の4.には、以下の記載がある。 「 」 そうすると、甲1Bフィルム発明の、包装用袋であるスタンディングパウチを作製するための、ガスバリア性積層フィルムを含む積層フィルムを、甲1Bにも好適であることが示唆され、それ自体周知の食品包装用のものとして、相違点B1に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、当業者が適宜なし得たことである。 (イ)次に相違点B2について検討する。 甲1Bには、第1層であるバイオマスポリエチレンテレフタレートフィルム1を製造するための樹脂組成物に、ジオール単位が化石燃料由来のジオールまたはバイオマス由来のエチレングリコールであり、ジカルボン酸単位が化石燃料由来のジカルボン酸であるポリエステルからなる樹脂製品をリサイクルして得られるポリエステルをさらに含ませることが示唆されており(甲1Bの請求項2)、また、【0051】には、リサイクルポリエステルが「ポリエステル樹脂からなる製品をリサイクルして得られるポリエステル」と記載されている。 ここで、本件特許の出願より10年以上前から、容器包装リサイクル法が全面施行され、「ポリエステル樹脂からなる製品」に相当する使用済みPETボトルがリサイクルのために回収され、利用されていた(特開2000-10489号公報(申立人Aが令和1年12月12日提出の意見書に添付した甲第10号証)の【0002】の記載、及び、「食品用器具及び容器包装における再生プラスチック材料の使用について」と題する資料3-1(申立人Bが令和1年12月19日提出の意見書に添付して提出した参考資料1)の1頁の「2.我が国の現状」の1段落目の記載参照。)。 さらに、本件特許の出願前において、ポリエステルからなる樹脂製品をリサイクルして得られるポリエステルとして、「使用済みPETボトルメカニカルリサイクルポリエステル」は周知でもあった(例えば、甲2Bの【0002】?【0004】、周知例Aの別添資料の「第1 総則」「4.」「(1)物理的再生法」の項目)、甲6Bの【0110】、甲7Bの【0096】、甲1Aの【0142】、甲7Aの全体、特に、「1.PETボトルのリサイクル方法」の項目の記載、引用文献5Aの【0045】、引用文献6Aの【0197】、引用文献7Aの全体)。 そうすると、甲1Bの【0051】の「ポリエステル樹脂からなる製品をリサイクルして得られるポリエステル」との記載に接した当業者は、当該リサイクルポリエステルを得るための「ポリエステル樹脂からなる製品」に、「使用済みPETボトル」が含まれることを自然に認識するといえるし、また、使用済みPETボトルからのリサイクルポリエステルとして、「使用済みPETボトルメカニカルリサイクルポリエステル」を採用することも、特段の創意なく思い到るといえる。 したがって、甲1Bフィルム発明のスタンディングパウチを作製するための積層フィルムを構成するバイオマスポリエチレンテレフタレートフィルム1に、ポリエステルからなる樹脂製品をリサイクルして得られるポリエステルを含ませること、その際に周知の使用済みPETボトルメカニカルリサイクルポリエステルを採用して、相違点B2に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、当業者が適宜なし得たことである。 (ウ)本件発明1の効果に関し、本件特許明細書の【0014】には、「本発明によれば、ポリエステルフィルムを、バイオマスポリエステルとリサイクルポリエステルとを用いて形成することにより、リサイクルされていないポリエステルよりもCO_(2)削減効果に優れると共に、リサイクルポリエステルよりも衛生性に優れたポリエステルフィルムを提供することができる。」と記載されているが、リサイクルポリエステルがリサイクルされていないポリエステルよりもCO_(2)削減効果に優れることは本件特許の出願前から周知の事項である。(例えば、甲7Aの28頁左欄の下から14?12行には、凸版印刷(株)が東洋紡(株)と共同で開発した、ラミネート包材に使用するためのメカニカルリサイクルPETフィルムに関して、「一般PETフィルムと比較して,フィルム製造段階までの二酸化炭素排出量を約24%削減」と記載されているし、引用文献7Aの「本製品の特長」の欄には、「メカニカルリサイクルPETフィルムを用いることで、非再生PETフィルムに比べ素材製造段階までのCO2排出量を約40%削減できます」と、さらに、引用文献8Aの「2.リサイクル樹脂を主原料としたフィルムの特長」の欄には、「リサイクル樹脂の使用比率を世界最高レベルの80%まで高めることにより、リサイクル樹脂を使用しないときと比較して、CO2排出量を約40%削減することができ」と記載されている。) また、リサイクルされていないポリエステルであるバイオマスポリエステルを併用することで、リサイクルポリエステルの割合を減らすことができ、リサイクルポリエステルに起因する非衛生性が改善することは当業者に自明の事項であるから、本件発明1による効果は、当業者が予期し得る範囲内のものに過ぎない。 (エ)特許権者は、令和1年11月1日提出の意見書(以下、単に「意見書」という。)において、以下の(a)?(d)の点を指摘して、使用済みのPETボトルを食品用途で用いる場合にメカニカルリサイクル品を使用することが周知であったとはいえないし、食品包装用という用途とPETボトルメカニカルリサイクルポリエステルという構成は両立し難い概念であるといえるから、相違点B1と相違点B2を同時に充足することは、当事者が格別の創意工夫を要することである旨主張する。(意見書の22頁下から6?1行(「(4)取消理由1B(甲1Bを主引用文献とする進歩性)」の項目)、及び、12頁11行?15頁下から2行(上記(4)の項目が援用する「(3)「取消理由1A(甲4Aを主引用文献とする進歩性」の項目の、特に(3-2)) (a)使用済みのPETボトルからのメカニカルリサイクル品は、現実問題として食品用途で用いるには解決されていない問題点が多く、本件出願日前に、甲1Bフィルム発明のような食品用途に実際に使用された例は皆無である。(12頁11?16行) (b)メカニカルリサイクル品を使用することが周知である根拠として指摘された甲2B、及び、周知例Aは、単に日本ないし欧米でメカニカルリサイクル品を食品用途で用いることが全面禁止されていた訳でないことを示しているに過ぎない。(12頁16?23行) (c)甲2Bの【0004】には、「メカニカルリサイクルによる再生PETは、・・・黄色味が強いという問題を有している」と記載されており、外観面でも問題があり、使用が困難であったことが示唆されているから、甲2Bは、甲1Bフィルム発明から本件発明1を想到する阻害要因になるし、甲1Bの実施例でリサイクルPETとして記載されているフィルム製膜時の耳ロス等に代えて、汚染の大きい「使用済みPETボトル」を用いることは動機づけられない。(12頁24行?13頁4行) (d)PETトレイ協議会において、平成23年8月2日に実施された薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会器具・容器包装部会で配布された資料(乙第8号証)の資料3-2の9頁の記載に照らせば、安全性に関して容器メーカーは極めて高度な安全保証義務を課されており、本件出願当時の技術水準において、これらの厳しい安全性基準をクリアしてメカニカルリサイクルPETを食品用途で用いることは事実上不可能と考えられていた。 このことは、周知例Aが通知された後の本件特許の出願後においても、PETトレイ協議会より出された乙第9号証(平成27年10月22日付け、「ポリエチレンテレフタレート製無延伸シート・フィルム及びその製品の食品衛生安全性に関する自己規制基準」、「?基準審査課からのご指導により作成-」と題する資料)の物理再生ポリエステルの使用に関する基準において、一方の層に再生原料樹脂を含む2層フィルムは、安全性の観点から食品用途に使用できない旨記載される等、メカニカルリサイクルPETの食品用途への適用に関してはその安全性について極めて慎重な判断が求められていたことからも理解できる。(13頁5行?14頁12行及び14頁下から5行?15頁18行) 以下、特許権者の主張を検討する。 (a)及び(d)の指摘に関しては、乙第9号証に示されるように、使用済みPETボトルからのメカニカルリサイクルPETの食品用途への使用に際し安全性について慎重な判断が求められるとしても、同号証の6頁の18?25行(項目「3-1-2」)には、「使用済みPETボトルメカニカルリサイクルポリエステル」であって食品用途に使用できるもの(分類記号MRP)について言及されているし、以下のとおり、使用済みPETボトルからのメカニカルリサイクルPETは、食品用途に実際に使用されていた。 すなわち、乙第8号証の「食品用器具及び容器包装における再生プラスチック材料の使用実態について(ペットボトル編)」と題する資料3-2の4頁目の「具体的製品別の再生フレーク使用量(2009年度)」の表には、PETボトル再生フレークを使用した製品例として、食品トレイ(卵パック、果実トレイ等)が使用量67.4千トン(約38.5%)と記載され、製品例の第1位として食品用途への使用が記載されているところ、6頁目の「(4)分別排出からはじまるPETボトル再商品化の流れ」のフロー図によれば、「再商品化工程」として、粉砕、洗浄、風力分離、比重分離し、フレークとし、さらに、加熱融解してペレットとする工程(これは、7頁目の「物理的再生法によるペットボトルの再生」の項目の記載からみて、メカニカルリサイクル工程に相当するものと解される。)が記載され、この利用先として卵パックが例示されている。 また、「メカニカルリサイクルPETフィルムを使用したサステナブルパッケージ」について記載する甲7Aには以下の記載があり、使用済みPETボトルからのメカニカルリサイクルポリエステルは食品包装用途に実際に適用されたことが理解される。 「リサイクル資源に関しては,最近,メカニカルリサイクルと呼ばれる新しい手法によるPETボトルのリサイクルが注目されている。ここでは,このメカニカルリサイクルによる再生PET樹脂を使用したフィルムのラミネート包材への展開について紹介する。」(26頁右欄2段落目) 「サントリーではその後、メカニカルリサイクル再生PETを飲料用PETボトルでも採用した。」(27頁右欄25-27行) 「メカニカルリサイクルの技術は、PETボトルをふたたびPETボトルにするというボトルtoボトルの資源循環の仕組みを可能にした。」(29頁右欄16-19行) そして、28頁右欄にはメカニカルリサイクルPETフィルムを使用したラミネート包材の写真1が記載されている(写真1の右側に「本格中華炒めの素」が写っている。)。 そうすると、使用済みのPETボトルからのメカニカルリサイクル品を食品用途に実際に使用された例は皆無である旨の特許権者の(a)の指摘、及び、メカニカルリサイクル再生PETを厳しい基準をクリアして食品用途で用いることは事実上不可能と考えられていた旨の(d)の指摘はあたらない。 また、使用済み再生PETボトルからのメカニカルリサイクルポリエステルが安全であるかは具体的に採用される再生処理の工程によっても異なり、使用済み再生PETボトルからのメカニカルリサイクルポリエステルであるから直ちに安全ではなく、食品用途には使用できないというものではないし、「甲1Bフィルム発明」の積層フィルムは、食品と接する直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(シーラント層)上に、ナイロンフィルムがドライラミネートされ、その上にウレタン接着剤を介して、ガスバリアコート層を蒸着面上に有する酸化アルミニウム蒸着PETフィルムであるガスバリア性積層フィルムの蒸着面が接合された構造を有しており、食品と接する直鎖状低密度ポリエチレンフィルム層と、リサイクルポリエステルを含むことが示唆されているPETフィルム層との間には、ナイロンフィルム、ガスバリアコート層、酸化アルミニウム蒸着層が存在しているものである。 そうすると、仮に、最外層のPETフィルムに使用済み再生PETボトルからのメカニカルリサイクルポリエステルを含むことで、非再生ポリエステルのみからなる場合に比べて衛生面で若干劣る場合であったとしても、そのことから直ちに、間の各層の存在にかかわらず最内層のシーラント層側も衛生面で劣り安全でなくなり、食品用途に用いることが不可能ということにはならない。 次に、(b)の指摘に関しては、周知例Aのような安全性のガイドラインの策定や甲2Bにあるような認可が行われる理由は、メカニカルリサイクルを含めた再生プラスチック材料を食品用途で用いるという技術開発動向における必要性によるものと解される。すなわち、これらの文献からは、従来、当業者がメカニカルリサイクルを含めた再生PETを食品用途で用いる努力をしてきたことが理解できる。そして、ガイドライン等の存在は、メカニカルリサイクルからの再生PETを食品用途に適用することを阻害する理由とはならず、むしろ安全性を確保しつつ、さらなる利用拡大をすることを当業者に推進するものといえる。 よって、上記の文献が、日本ないし欧米でメカニカルリサイクルからの再生PETを食品用途で用いることが全面禁止されていた訳でないことを示しているに過ぎないということはできず、特許権者の(b)の指摘もあたらない。 さらに、(c)の指摘に関しては、甲2Bでは、メカニカルリサイクルによる再生PETは、熱履歴を経ることから、マテリアルリサイクルPETと同様黄色味が強いという問題はあることが知られていたことを記載した上で、欧米で既に飲食品と直接触れる用途への使用が認められていることを指摘しているのであるから(【0002】?【0004】)、黄色味が強いことが使用済みメカニカルリサイクルによる再生PETを食品用途の製品に使用することの阻害要因になるとはいえない。 また、甲1Bの【0051】の「ポリエステル樹脂からなる製品」に、「使用済みPETボトル」が含まれることは当業者が自然に認識することであることは既に上記(イ)で説示したとおりであって、【0051】の「ポリエステル樹脂からなる製品」を実施例のフィルム製膜時の耳ロスに限定するべき理由も見当たらない。そして、上記(イ)で説示したとおり、当業者は、甲1Bフィルム発明において、バイオマスポリエチレンテレフタレートフィルム1に、使用済みPETボトルからのリサイクルポリエステルを含ませること、その際に甲2B等に示されるような周知の使用済みPETボトルメカニカルリサイクルポリエステルを採用することを、甲1Bの記載及び甲2Bも含めた周知技術から動機付けられるといえる。 よって、特許権者の(c)の指摘もあたらない。 以上のとおり、上記(a)?(d)の指摘はいずれもあたらず、本件出願当時、使用済みのPETボトルを食品用途で用いる場合、メカニカルリサイクル品を使用することは周知であったといえるし、また、安全性に配慮することは必要であるにせよ、食品包装用という用途とPETボトルメカニカルリサイクルPETという構成は両立し得る概念といえ、相違点B1と相違点B2を同時に充足することは、当業者が格別の創意工夫を要することなくなし得ることといえる。 よって、特許権者の主張は採用できない。 なお、意見書における、食品用途がレトルト用途である場合についての特許権者の指摘は、甲1Bを主引用文献とする取消理由1Bにはあたらないことから、ここでは、省略した。 (オ)以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1Bフィルム発明、すなわち、甲1Bに記載された発明、及び、本件特許の出願前の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)本件発明2、3について 本件発明2は、本件発明1について、「ポリエステルフィルムの総厚が、5μm以上、100μm未満である」ことを特定した発明であるところ、甲1Bフィルム発明においては、バイオマスポリエチレンテレフタレートフィルム1の厚さは12μmであり、本件発明2における上記特定を満足する。 また、本件発明3は、本件発明1または2について、「ジカルボン酸がテレフタル酸である」ことを特定した発明であるが、甲1Bフィルム発明においてもジカルボン酸は「テレフタル酸」であり、本件発明3における上記特定を満足する。 そうすると、本件発明2、3と甲1Bフィルム発明とは、上記(2)で記載した相違点B1及びB2で相違するのみであり、新たな相違点はない。 そして、相違点B1及びB2についての判断は(2)で記載したとおりであるから、本件発明2、3は、甲1Bフィルム発明、すなわち、甲1Bに記載された発明、及び、本件特許の出願前の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)本件発明4について ア 対比 本件発明4は、「請求項1?3の何れか一項に記載の食品包装用積層フィルムを備えた、包装体。」の発明であるところ、請求項1を引用する本件発明4を請求項1を引用しない形式で記載すると以下のとおりとなる。 「下記の食品包装用積層フィルムを備えた、包装体。 <食品包装用積層フィルム> 単層のポリエステルフィルムと、前記ポリエステルフィルムの一方の面側に設けられるシーラント層とを有する食品包装用積層フィルムであって、 前記ポリエステルフィルムは前記食品包装用積層フィルムの最も外面側に位置しており、 前記ポリエステルフィルムは、ジオール単位としてバイオマス由来のエチレングリコールを含み、ジカルボン酸単位として化石燃料由来のジカルボン酸を含むヴァージンバイオマスポリエステルと、 ジオール単位として化石燃料由来のジオールおよび/またはバイオマス由来のエチレングリコールを含み、ジカルボン酸単位として化石燃料由来のジカルボン酸を含む使用済みPETボトルをメカニカルリサイクルして得られるメカニカルリサイクルポリエステルと、を含むことを特徴とする、食品包装用積層フィルム。」 ここで、本件発明4は、本件発明1の食品包装用積層フィルムを備えた包装体に関する発明であるから、上記(2)アにおける対比を踏まえて、本件発明4と甲1Bパウチ発明を対比すると、両者は、以下の点で一致し、以下の点で相違する。 <一致点> 下記の包装用積層フィルムを備えた、包装体。 <包装用積層フィルム> 単層のポリエステルフィルムと、前記ポリエステルフィルムの一方の面側に設けられるシーラント層とを有する食品包装用積層フィルムであって、 前記ポリエステルフィルムは前記包装用積層フィルムの最も外面側に位置しており、 前記ポリエステルフィルムは、ジオール単位としてバイオマス由来のエチレングリコールを含み、ジカルボン酸単位として化石燃料由来のジカルボン酸を含むヴァージンバイオマスポリエステルとを含む包装用積層フィルム。 <相違点B1’> 包装体の包装用積層フィルムについて、本件発明1では、「食品包装用」であると特定されているのに対し、甲1Bパウチ発明では、「包装用袋であるスタンディングパウチを作製するための」ものであることが特定されるのみで、「食品」の包装用であることは特定されていない点。 <相違点B2’> 包装体の包装用積層フィルムを構成するポリエステルフィルムについて、本件発明4では、(ヴァージンバイオマスポリエステルに加えて)「ジオール単位として化石燃料由来のジオールおよび/またはバイオマス由来のエチレングリコールを含み、ジカルボン酸単位として化石燃料由来のジカルボン酸を含む使用済みPETボトルをメカニカルリサイクルして得られるメカニカルリサイクルポリエステル」(つまり、上述の「使用済みPETボトルメカニカルリサイクルポリエステル」)を含むことが特定されているのに対し、甲1Bパウチ発明では、「使用済みPETボトルメカニカルリサイクルポリエステル」を含んでいない点。 イ 判断 相違点B1’及びB2’はそれぞれ、上記(2)アで記載した相違点B1及びB2に対応するものであり、上記(2)イで相違点B1及びB2について説示したと同様の理由により、甲1Bパウチ発明において、スタンディングパウチの作製に用いられる積層フィルムを食品包装用として相違点B1’に係る本件発明4の構成を備えたものとすること、及び、該積層フィルム構成するバイオマスポリエチレンテレフタレートフィルム1を、PETボトルメカニカルリサイクルポリエステルも含むものとして、相違点B2’に係る本件発明4の構成を備えたものとすることは、当業者が適宜なし得たことである。 また、本件発明4の効果は、上記1(2)イ(ウ)で記載したとおり、本件特許の出願前から周知であるか、当業者に自明の事項であって、当業者が予期し得る範囲内のものに過ぎない。 よって、本件発明4は、甲1Bパウチ発明、すなわち、甲1Bに記載された発明、及び、本件特許の出願前の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 2 取消理由1A(甲4Aを主引用文献とする進歩性) (1)甲4Aの記載及び甲4Aに記載された発明 ア 甲4Aの記載 ・特許請求の範囲 「【請求項1】 少なくとも2層を有する積層体であって、 第1の層が、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなる樹脂組成物からなり、前記樹脂組成物が、ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであり、ジカルボン酸単位が化石燃料由来のジカルボン酸であるポリエステルを、樹脂組成物全体に対して、50?95質量%含んでなり、 第2の層が、化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなることを特徴とする、積層体。 【請求項2】 前記樹脂組成物が、ジオール単位が化石燃料由来のジオールまたはバイオマス由来のエチレングリコールであり、ジカルボン酸単位が化石燃料由来のジカルボン酸であるポリエステルからなる樹脂製品をリサイクルして得られるポリエステルをさらに含んでなる、請求項1に記載の積層体。 ・・・ 【請求項4】 前記化石燃料由来のジカルボン酸がテレフタル酸である、請求項1?3のいずれか一項に記載の積層体。 ・・・ 【請求項9】 第1の層が2軸延伸されてなる樹脂フィルムである、請求項1?8のいずれか一項に記載の積層体。 【請求項10】 無機物または無機酸化物からなる第3の層をさらに有する、請求項1?9のいずれか一項に記載の積層体。 【請求項11】 請求項1?10のいずれか一項に記載の積層体からなる、積層フィルム。 【請求項12】 請求項1?10のいずれか一項に記載の積層体からなる、包装用袋。 ・発明を実施するための形態 「【0050】 第1の層を形成する樹脂組成物中に5?45質量%の割合で含まれてもよいポリエステル(以下、リサイクルポリエステルともいう)は、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなり、ジオール単位としてジオール単位が化石燃料由来のジオールまたはバイオマス由来のエチレングリコールを用い、ジカルボン酸単位として化石燃料由来のジカルボン酸を用いて重縮合反応により得られたポリエステル樹脂からなる製品をリサイクルして得られるポリエステルである。」 「【0073】 <用途> 本発明による積層体は、包装製品、各種ラベル材料、蓋材、シート成型品、ラミネートチューブ等の用途に好適に使用することができ、特に、積層フィルムまたは包装用袋(例えば、ピロー袋、スタンディングパウチや4方パウチ等のパウチ)が好ましい。積層体の厚さは、その用途に応じて、適宜決定することができる。例えば、5?500μm、好ましくは10?300μm程度の厚みのフィルムないしシート状の形態で用いられる。」 「【0075】 実施例1 <バイオマス由来のポリエステルの合成> テレフタル酸83質量部とバイオマスエチレングリコール(インディアグライコール社製)62質量部とをスラリーとして反応槽に供給し、常法の直重方法で、エステル化反応を240℃で5時間行った。その後、トリメチルフォスフェート(アルドリッチ社製)を0.013質量部添加(酸成分に対して15mmol%)してから高温真空条件下の重合反応に移行させた。まず、40分間で、真空度を4000Pa、重合温度280℃にまで昇温し、ついでその重合温度280℃のまま、真空度を200Paまで下げて溶融重合反応を行った。反応時間は3時間であった。合成したポリマーは、ストランドの形で流水中に吐出し、ペレタイザによってペレット化した。そのペレットを160℃において5時間乾燥後、窒素雰囲気下50Paの真空下205℃で固相重合して固有粘度0.8dl/gのポリマーを得た。なお、固有粘度はフェノール/テトラクロロエタン(成分比:3/2)溶媒を用い、35℃で測定した溶融粘度から算出した。得られたポリマーの示差熱分析(装置:島津製作所DSC-60、測定条件:ヘリウムガス中、6℃/分で昇温)を行ったところ、ガラス転移温度は69℃を示し、化石燃料由来の原料から得られる既知のポリエチレンテレフタレートと同等であった。また、得られたバイオマス由来のポリエチレンテレフタレートの放射製炭素測定を行ったところ、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量は16%であった。 【0076】 <フィルムの作製1> 上記のようにして得られたポリエチレンテレフタレートペレット90質量部と、滑剤として平均粒子径0.9μmの多孔性シリカを200ppm含む化石燃料由来のポリエチレンテレフタレートマスターバッチ10質量部とを乾燥した後押出機に供給し、285℃で溶融し、Tダイよりシート状に押し出し、冷却ロールにて冷却固化させて未延伸シートを得た。次いでこの未延伸シートを、低速側駆動ロールの速度を6.5m/min、高速側駆動ロールの速度を22m/minとして、縦方向に3.5倍の倍率で延伸し、さらに、テンターにて横方向に3.5倍の倍率で延伸して厚みが12.02μmである二軸延伸ポリエステルフィルム1を得た。」 「【0089】 実施例2 <積層体の作製2> 上記のようにして得られたバイオマスPETフィルム1(厚さ12μm)と、一般のナイロンフィルム(東洋紡績社製:ハーデンN1200、厚さ15μm)と、アルミ箔(日本製箔社製:1N30材、厚さ7μm)と、未延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学社製:FRTK-G、厚さ70μm)とをこの順序でドライラミネートで貼合して、積層フィルムを得た。ドライラミネートによる貼合にはウレタン系接着剤(三井化学社製:タケラックA-515V/タケネートA-5)を使用し、乾燥時の塗布量が3.5g/m^(2)になるようにグラビア版にて塗布した。貼合後、40℃×48時間のエージングを行った。・・・この積層フィルムを使用して、外寸法130mm×170mm、外周部のシール巾10mmの4方パウチを作成した。」 「【0099】 実施例2および比較例2において、水180ccを充填後、外周部をシールして、水入りの4方パウチを作製した。作製した水入りの4方パウチを、120℃・30分の条件で加熱加圧殺菌(日坂製作所社:RCS-60/10RSPXT)を行い、耐レトルト試験を行った。測定結果は、下記の表3に示される通りであった。 【0100】 上記で作製した水入りの4方パウチを、40kg×3分の静置圧力を負荷し、耐圧縮試験を行った。測定結果は、下記の表3に示される通りであった。 【0101】 上記で作製した水入りの4方パウチのシール部を、引き裂くことで開封性を確認した。結果は、下記の表3に示される通りであった。 【表3】 」 イ 甲4Aに記載された発明 上記アの記載、特に、請求項1、4、9、10、11及び12によれば、甲4Aには、請求項11に係る発明として、 「少なくとも2層を有する積層体からなる、包装用袋に用いられる積層フィルムであって、 積層体が、 第1の層が、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなる樹脂組成物からなり、前記樹脂組成物が、ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであり、ジカルボン酸単位が化石燃料由来のジカルボン酸であるがテレフタル酸であるポリエステルを、樹脂組成物全体に対して、50?95質量%含んでなる、2軸延伸されてなる樹脂フィルムであり、 第2の層が、化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなり、 無機物または無機酸化物からなる第3の層をさらに有する、 積層体フィルム。」 の発明が記載されているといえるところ、 上記アの、特に、甲4Aの、バイオマスPETフィルム1(【0075】及び【0076】;なお、「PET」は、【0087】に記載のとおり、「ポリエチレンテレフタレート」を意味する。)から作製された積層フィルムについての実施例2の記載(【0089】)、及び、該積層フィルムからパウチを作成し(同左)、該パウチに水を充填して作製した水入りの4方パウチに対して耐レトルト試験を行った旨の記載(【0099】)によれば、甲4Aには、請求項11に係る発明の具体的態様に相当する発明として、次のとおりの発明が記載されていると認められる。 「レトルト用4方パウチを作製するための、積層体からなる積層フィルムであって、 積層体フィルムが、下記のバイオマスポリエチレンテレフタレートフィルム1(第1の層;厚さ12μm)と、ナイロンフィルム(第2の層;東洋紡績社製:ハーデンN1200、厚さ15μm)と、アルミ箔(第3の層;日本製箔社製:1N30材、厚さ7μm)と、未延伸ポリプロピレンフィルム(第2の層;フタムラ化学社製:FRTK-G、厚さ70μm)とを、この順序で、ウレタン系接着剤(三井化学社製:タケラックA-515V/タケネートA-5)を使用してドライラミネートで貼合して得られたものである積層フィルム。 <バイオマスポリエチレンテレフタレートフィルム1> テレフタル酸83質量部とバイオマスエチレングリコール(インディアグライコール社製)62質量部とから合成したポリエチレンテレフタレートポリマーをペレット化して得られたペレット90質量部と、滑剤として平均粒子径0.9μmの多孔性シリカを200ppm含む化石燃料由来のポリエチレンテレフタレートマスターバッチ10質量部とからなる樹脂組成物を押出機に供給し、285℃で溶融し、Tダイよりシート状に押し出し、冷却ロールにて冷却固化させて未延伸シートを得て、次いでこの未延伸シートを、縦方向に3.5倍の倍率で延伸し、さらに、テンターにて横方向に3.5倍の倍率で延伸して得られた厚みが12.02μmである二軸延伸ポリエステルフィルム1。」(以下、「甲4Aフィルム発明」という。) また、甲4Aには、「甲4Aフィルム発明の食品包装用積層フィルムを用いたレトルト用パウチ。」(以下「甲4Aパウチ発明」という。)の発明が記載されていると認められる。 (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲4Aフィルム発明とを対比する。 ・甲4Aフィルム発明の「レトルト用4方パウチを作製するための、積層体からなる積層フィルム」は、本件発明1の「食品包装用積層フィルム」に相当する。 ・甲4Aフィルム発明の「バイオマスポリエチレンテレフタレートフィルム1」は、本件発明1の「ポリエステルフィルム」に相当するし、これが「単層」であり、甲4Aフィルム発明の積層フィルムの「最も外面側に位置」していることは明らかである。 また、甲4Aフィルム発明の積層フィルムを構成する「バイオマスポリエチレンテレフタレートフィルム1」は、「テレフタル酸83質量部とバイオマスエチレングリコール(インディアグライコール社製)62質量部とから合成されたポリマーから得られたポリエチレンテレフタレートポリマー」をペレット化して得られたペレットを使用して製造されるものであるから、これは、本件発明1の「ポリエステルフィルム」についての、「ジオール単位としてバイオマス由来のエチレングリコールを含み、ジカルボン酸単位として化石燃料由来のジカルボン酸を含むヴァージンバイオマスポリエステル」を「含む」との構成を満足する。 ・甲4Aフィルム発明の積層フィルムは、「パウチを作製するため」のものであり、パウチを作製する際に積層フィルムはシールされるところ、該積層フィルムを構成する「未延伸ポリプロピレンフィルム(第2の層;フタムラ化学社製:FRTK-G、厚さ70μm)」が、シールのための層であること(つまり、本件発明1の「シーラント層」に相当すること)は当業者に明らかである。また、甲4Aフィルム発明の「未延伸ポリプロピレンフィルム(第2の層;フタムラ化学社製:FRTK-G、厚さ70μm)」は、甲4Aフィルム発明の積層フィルムにおいてバイオマスポリエチレンテレフタレートフィルム1の一方の面側に設けられている。 よって、甲4Aフィルム発明の「未延伸ポリプロピレンフィルム(第2の層;フタムラ化学社製:FRTK-G、厚さ70μm)」は、本件発明1の「ポリエステルフィルムの一方の面側に設けられるシーラント層」に相当するといえる。 そうすると、本件発明1と甲4Aフィルム発明とを対比すると、両者は、下記の点で一致し、下記の点で相違する。 <一致点> 単層のポリエステルフィルムと、前記ポリエステルフィルムの一方の面側に設けられるシーラント層とを有する食品包装用積層フィルムであって、 前記ポリエステルフィルムは前記食品包装用積層フィルムの最も外面側に位置しており、 前記ポリエステルフィルムは、ジオール単位としてバイオマス由来のエチレングリコールを含み、ジカルボン酸単位として化石燃料由来のジカルボン酸を含むヴァージンバイオマスポリエステルとを含む食品包装用積層フィルム。 <相違点A1> 食品包装用積層フィルムを構成するポリエステルフィルムについて、本件発明1では、(ヴァージンバイオマスポリエステルに加えて)「ジオール単位として化石燃料由来のジオールおよび/またはバイオマス由来のエチレングリコールを含み、ジカルボン酸単位として化石燃料由来のジカルボン酸を含む使用済みPETボトルをメカニカルリサイクルして得られるメカニカルリサイクルポリエステル」(つまり、「使用済みPETボトルメカニカルリサイクルポリエステル」)を含むことが特定されているのに対し、甲4Aフィルム発明では、「使用済みPETボトルメカニカルリサイクルポリエステル」は含まれていない点。 イ 判断 (ア)甲4Aの請求項1?2によれば、甲4Aには、「少なくとも2層を有する積層体」であって、「第1の層が、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなる樹脂組成物からなり、前記樹脂組成物が、ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであり、ジカルボン酸単位が化石燃料由来のジカルボン酸であるポリエステル(合議体注;いわゆる、「バイオポリエステル」、以下、「バイオPET」ともいう。)を、樹脂組成物全体に対して、50?95質量%含んでなり、第2の層が、化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなる」積層体の第1層を、リサイクルポリエステルを含むものとすることが示唆され(請求項2)、また、【0050】には、リサイクルポリエステルが「ポリエステル樹脂からなる製品をリサイクルして得られるポリエステル」と記載されている。 そして、上記1(2)イ(イ)で検討したとおり、本件特許の出願前に既に容器包装リサイクル法が全面施行されており、「ポリエステル樹脂からなる製品」に相当する使用済みPETボトルがリサイクルのために回収され、利用されてきたのであるし、ポリエステルからなる樹脂製品をリサイクルして得られるポリエステルとして、「使用済みPETボトルメカニカルリサイクルポリエステル」は周知であった。また、第5 1(2)イ(エ)における検討で説示したとおり、メカニカルリサイクル再生PETを食品用途に適用すること自体も本件特許の出願前から周知であったし(上記甲2B、周知例A)、かつ、使用済みPETボトルからの再生PETは、食品用途に主に使用されており(乙第8号証)、使用済みPETボトルからのメカニカルリサイクルポリエステルを、実際に、食品用途に適用することも知られていた(同第8号証及び甲7A)。 そうすると、甲4Aフィルム発明のレトルト用パウチを作製するための積層フィルムを構成するバイオマスポリエチレンテレフタレートフィルム1をポリエステルからなる樹脂製品をリサイクルして得られるポリエステルを含んだものとすること、その際に周知の使用済みPETボトルメカニカルリサイクルポリエステルを採用して、相違点A1に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、当業者が適宜なし得たことである。 (イ)本件発明1の効果に関しては、上記1(2)イ(ウ)で記載したとおり、本件特許の出願前から周知であるか、当業者に自明の事項であって、当業者が予期し得る範囲内のものに過ぎない。 (ウ)よって、本件発明1は、甲4Aフィルム発明、すなわち、甲4Aに記載された発明、及び、本件特許の出願前の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 ウ 特許権者は、甲4Aフィルム発明が「レトルト用」の積層フィルムの発明であることに基づき、要旨、以下の(ア)?(オ)のとおり主張する。 (ア)甲2B及び周知例Aは、メカニカルリサイクル品が、甲4Aフィルム発明のようなレトルト用途で使用できることを示すものではない。(12頁22?23行) (イ)出願当時、周知例Aに記載のような厳しい基準をクリアし食品用途で用いていくことは事実上不可能と考えられており、殊に、このようなリサイクルPETが、甲4Aフィルム発明のようなレトルト用途に使用された例は存在しない。(13頁下から2行?14頁2行) (ウ)乙第9号証は、1頁「まえがき」には、「本書は未使用原料、再生原料(特に使用済みPETボトルからの再生材料)の使用に関わる食品衛生安全性を保証するために、無延伸PETシート(フィルム)及びその製品の製造・流通段階での自主規制基準を提案するものである。」と記載されるとおり、使用済みPETボトルからの再生材料に関するものであるところ、その10頁に、「4-3 再生原料を含有するシート(フィルム)の自主規制基準」として、「5)3層のシート(フィルム)で、表層がいずれも未使用の原料樹脂であり、法規制に適合していれば、その厚さ、用途、使用条件(温度、時間、食品分類)、接触状態などにより科学的に安全と判断できる場合のみ、食品に直接接触する用途に使用できる。」と記載されていることに照らせば、高温で処理され汚染物質が特に懸念されるレトルト食品の分野においては、その安全性について極めて慎重な判断が求められる。(15頁14?17行) (エ)意見書の16頁最下行?17頁5行における主張。 取消理由通知書(決定の予告)の第4 1(2)イ(イ)において指摘した特許権者の主張; 「(i)甲4Aフィルム発明は、リサイクルPETを含むものではなく、甲4の【0101】の表3に記載される「耐レトルト試験:外観に変化なし」という評価が、リサイクルPETを用いたフィルムの場合にも得られるか否か不明であるから、甲4Aフィルム発明についてリサイクルPETを配合する動機付けが存在するとは認められない。」 についての検討で、合議体が; 「(i)の主張については、(ア)で記載したとおり、甲4Aには、積層体(フィルム)のバイオPET(フィルム)層(これは、「ヴァージンバイオマスポリエステル」層である。)を構成する樹脂組成物に、リサイクルポリエステル(リサイクルPET)をさらに含ませることが示唆されているところ(請求項2)、甲4Aには、請求項12に、請求項2の積層体を包装用袋とすることが記載され、【0073】に包装用袋の例として4方パウチが記載されているのであるから、請求項2の示唆が、4方パウチの形態である包装用袋についても想定されていることは明らかであり、(レトルト用)4方パウチの作製に用いられる甲4Aフィルム発明の積層フィルムにおいて、リサイクルPETを配合する動機付けはあるといえる。 そして、本件特許の出願前に、リサイクルPETを配合したバイオPETを用いた積層フィルムからのパウチは、レトルト用には不適合であるという技術常識があったとも認められない。(むしろ、甲4Aの【0086】の表1のフィルム2と他のフィルムとの物性の比較によれば、少なくとも強度の点では遜色のないものとなる蓋然性が理解できる。) よって、特許権者の(i)の主張は採用できない。」 と記載した点について、意見書の16頁最下行?17頁5行において、以下の主張をする。 「本件特許の出願前に、リサイクルPETを配合したバイオPETを用いた積層フィルムからのパウチは、レトルト用には不適合であるという技術常識があったとも認められないと認定されておりますが、特に安全性に関し、甲4Aの段落【0099】に記載されているような120℃・30分という過酷な条件で、上述した厳しい安全性基準をクリアできるという技術常識は存在しません。」 (オ)甲4Aには使用済みPETボトルを用いることは記載も示唆もされておらず、敢えて汚染の大きい「使用済みPETボトル」を用いる動機づけは存在しないし、食品用途、殊に甲4Aフィルム発明のようなレトルト用途で、安全性に懸念の大きい「使用済みPETボトルをメカニカルリサイクルして得られるメカニカルリサイクルポリエステル」を用いることには、明確な阻害要因が存在する。(意見書の17頁下から5行?18頁2行) 上記主張(ア)?(オ)についてまとめて検討する。 上記イ(ア)及び1(2)イ(エ)において説示したとおり、メカニカルリサイクル再生PETを食品用途に適用することは、従来周知であったし、使用済み再生PETボトルからの再生PETは食品用途に広く使用され、また、使用済みPETボトルからのメカニカルリサイクルポリエステルを食品用途に実際に適用した例も知られていたのであるから、メカニカルリサイクルPETをレトルト用途に使用する場合に、他の食品用途に使用する場合に比べて厳しい安全性基準が課されるとしても、そのことから、「使用済みPETボトルをメカニカルリサイクルして得られるメカニカルリサイクルポリエステル」をレトルト用途に使用することを試みることに阻害要因があるとまではいえない。 むしろ、これまで、使用済みPETボトルのリサイクルが推奨され、これをメカニカルリサイクルして得られたポリエステルを食品用途に使用する試みが続けられてきたことに鑑みれば、当業者は、使用済みPETボトルをメカニカルリサイクルして得られるポリエステルについても、安全性基準を考慮しながら、その食品用途における適用範囲の拡大をねらって更なる創意工夫をするものと解される。 さらに、使用済み再生PETボトルからのメカニカルリサイクルポリエステルの安全性は具体的に採用される再生処理の工程によっても異なるものといえるところ、甲7Aの以下の記載にあるとおり、再生処理工程においては、高温加熱・真空等による除染がなされることが知られている。 「最近,マテリアルリサイクルされたPET樹脂を,さらに高温・減圧条件下で一定時間の処理を行うことで,樹脂中に浸透した汚染物質までも除去できるメカニカルリサイクルと呼ばれる方法が開発された。メカニカルリサイクルはマテリアルリサイクルと同様,物理的再生法の一つである。」(甲7Aの27頁の左欄9?16行) 「メカニカルリサイクルでは,・・・再縮合重合反応の工程があり,・・・その工程でPET樹脂が減圧下で加熱されるため,PET樹脂中に浸透した汚染物質も除去され,不純物の非常に少ない高品質の再生PET樹脂を得ることができる。」(27頁右欄9?17行) その上、「甲4Aフィルム発明」の積層フィルムは、積層体フィルムが、バイオマスポリエチレンテレフタレートフィルム1(第1の層)と、ナイロンフィルム(第2の層)と、アルミ箔(第3の層)と、未延伸ポリプロピレンフィルム(第2の層)とが、この順序で、ウレタン系接着剤を介してドライラミネートで貼合して得られたものであって、食品と接する未延伸ポリプロピレンフィルム(第2の層)とリサイクルポリエステルを含むことが示唆されているバイオマスポリエチレンテレフタレートフィルム1との間には、アルミ箔及びナイロンフィルム層が介在している。 そうすると、仮に、最外層のPETフィルムに使用済み再生PETボトルからのメカニカルリサイクルポリエステルを含むことで、非再生ポリエステルのみからなる場合に比べて衛生面で若干劣る場合であったとしても、そのことから直ちに、各層の存在にかかわらず最内層の未延伸ポリプロピレンフィルム層側も衛生面で劣り安全でなくなるということにはならない。 よって、かかる観点からも、使用済みPETボトルメカニカルリサイクルポリエステルを、レトルト用途に用いることに阻害要因があるということはできない。 以上のとおりであるから、上記特許権者の主張は採用できない。 (3)本件発明2、3について 本件発明2は、本件発明1について、「ポリエステルフィルムの総厚が、5μm以上、100μm未満である」ことを特定した発明であるところ、甲4Aフィルム発明においては、バイオマスポリエチレンテレフタレートフィルム1の厚さは12μmであり、本件発明2における上記特定を満足する。また、本件発明3は、本件発明1または2について、「ジカルボン酸がテレフタル酸である」ことを特定した発明であるが、甲4Aフィルム発明においてもジカルボン酸は「テレフタル酸」であり、本件発明3における上記特定を満足する。 そうすると、本件発明2、3と甲4Aフィルム発明とは、上記(2)で記載した相違点A1で相違するのみであり、新たな相違点はない。 そして、相違点A1についての判断は(2)で記載したとおりであるから、本件発明2、3は、甲4Aフィルム発明、すなわち、甲4Aに記載された発明、及び、本件特許の出願前の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)本件発明4について ア 対比 本件発明4は、「請求項1?3の何れか一項に記載の食品包装用積層フィルムを備えた、包装体。」の発明であるところ、請求項1を引用する本件発明4を請求項1を引用しない形式で記載すると以下のとおりとなる。 「下記の食品包装用積層フィルムを備えた、包装体。 <食品包装用積層フィルム> 単層のポリエステルフィルムと、前記ポリエステルフィルムの一方の面側に設けられるシーラント層とを有する食品包装用積層フィルムであって、 前記ポリエステルフィルムは前記食品包装用積層フィルムの最も外面側に位置しており、 前記ポリエステルフィルムは、ジオール単位としてバイオマス由来のエチレングリコールを含み、ジカルボン酸単位として化石燃料由来のジカルボン酸を含むヴァージンバイオマスポリエステルと、 ジオール単位として化石燃料由来のジオールおよび/またはバイオマス由来のエチレングリコールを含み、ジカルボン酸単位として化石燃料由来のジカルボン酸を含む使用済みPETボトルをメカニカルリサイクルして得られるメカニカルリサイクルポリエステルと、を含むことを特徴とする、食品包装用積層フィルム。」 ここで、上記の本件発明4は、本件発明1の食品包装用積層フィルムを備えた包装体に関する発明であるから、上記(2)アにおける対比を踏まえて、本件発明4と甲4Aパウチ発明を対比すると、両者は、以下の点で一致し、以下の点で相違する。 <一致点> 下記の食品包装用積層フィルムを備えた、包装体。 <食品包装用積層フィルム> 単層のポリエステルフィルムと、前記ポリエステルフィルムの一方の面側に設けられるシーラント層とを有する食品包装用積層フィルムであって、 前記ポリエステルフィルムは前記食品包装用積層フィルムの最も外面側に位置しており、 前記ポリエステルフィルムは、ジオール単位としてバイオマス由来のエチレングリコールを含み、ジカルボン酸単位として化石燃料由来のジカルボン酸を含むヴァージンバイオマスポリエステルとを含む食品包装用積層フィルム。 <相違点A1’> 包装体の食品包装用積層フィルムを構成するポリエステルフィルムについて、本件発明4では、(ヴァージンバイオマスポリエステルに加えて)「ジオール単位として化石燃料由来のジオールおよび/またはバイオマス由来のエチレングリコールを含み、ジカルボン酸単位として化石燃料由来のジカルボン酸を含む使用済みPETボトルをメカニカルリサイクルして得られるメカニカルリサイクルポリエステル」(つまり、上述の「使用済みPETボトルメカニカルリサイクルポリエステル」)を含むことが特定されているのに対し、甲4Aパウチ発明では、「PETボトルメカニカルリサイクルポリエステル」を含んでいない点。 イ 判断 相違点A1’は、上記(2)アで記載した相違点A1に対応するものであり、上記(2)イで相違点A1について説示したと同様の理由により、甲4Aパウチ発明において、レトルト用パウチの作製に用いられる積層フィルムを構成するバイオマスポリエチレンテレフタレートフィルム1を、使用済みPETボトルメカニカルリサイクルポリエステルも含むものとして、相違点A1’に係る本件発明4の構成を備えたものとすることは、当業者が適宜なし得たことである。 また、本件発明4による効果は、上記(2)イ(ア)で本件発明1について記載したと同じであり、上記(2)イ(ア)で本件発明1について説示したと同様の理由によって、当業者が予期し得る範囲内のものに過ぎない。 よって、本件発明4は、甲4Aパウチ発明、すなわち、甲4Aに記載された発明、及び、本件特許の出願前の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 むすび 以上のとおり、本件発明1?4は、甲1Bに記載された発明及び本件特許の出願前の周知技術から、あるいは、甲4Aに記載された発明及び本件特許の出願前の周知技術から、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、請求項1?4に係る本件特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 単層のポリエステルフィルムと、前記ポリエステルフィルムの一方の面側に設けられるシーラント層とを有する食品包装用積層フィルムであって、 前記ポリエステルフィルムは前記食品包装用積層フィルムの最も外面側に位置しており、 前記ポリエステルフィルムは、ジオール単位としてバイオマス由来のエチレングリコールを含み、ジカルボン酸単位として化石燃料由来のジカルボン酸を含むヴァージンバイオマスポリエステルと、 ジオール単位として化石燃料由来のジオールおよび/またはバイオマス由来のエチレングリコールを含み、ジカルボン酸単位として化石燃料由来のジカルボン酸を含む使用済みPETボトルをメカニカルリサイクルして得られるメカニカルリサイクルポリエステルと、を含むことを特徴とする、食品包装用積層フィルム。 【請求項2】 前記ポリエステルフィルムの総厚が、5μm以上、100μm未満である、請求項1に記載の食品包装用積層フィルム。 【請求項3】 前記ジカルボン酸がテレフタル酸である、請求項1または2に記載の食品包装用積層フィルム。 【請求項4】 請求項1?3の何れか一項に記載の食品包装用積層フィルムを備えた、包装体。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2020-03-26 |
出願番号 | 特願2013-252018(P2013-252018) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
ZAA
(C08J)
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最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 大村 博一 |
特許庁審判長 |
加藤 友也 |
特許庁審判官 |
渕野 留香 植前 充司 |
登録日 | 2018-08-10 |
登録番号 | 特許第6379479号(P6379479) |
権利者 | 大日本印刷株式会社 |
発明の名称 | ポリエステルフィルム |
代理人 | 柏 延之 |
代理人 | 朝倉 悟 |
代理人 | 中村 行孝 |
代理人 | 阿部 寛 |
代理人 | 朝倉 悟 |
代理人 | 黒木 義樹 |
代理人 | 浅野 真理 |
代理人 | 宮嶋 学 |
代理人 | 宮嶋 学 |
代理人 | 小島 一真 |
代理人 | 永井 浩之 |
代理人 | 浅野 真理 |
代理人 | 長谷川 芳樹 |
代理人 | 中村 行孝 |
代理人 | 永井 浩之 |
代理人 | 小島 一真 |
代理人 | 柏 延之 |