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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A47C
管理番号 1364014
異議申立番号 異議2020-700190  
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-08-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-03-18 
確定日 2020-07-09 
異議申立件数
事件の表示 特許第6581459号発明「寝台装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6581459号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6581459号の請求項1?6に係る特許についての出願は、平成27年10月6日に出願され、令和1年9月6日に特許権の設定登録がされ、同年9月25日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1?6に係る特許に対し、令和2年3月18日に特許異議申立人株式会社プラッツ(以下「申立人」という。)より特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
特許第6581459号の請求項1?6に係る発明(以下「本件発明1?6」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
寝台と、当該寝台に当接されて当該寝台を直接的に支持する上側フレームと、設置床上に載置されて前記上側フレームの下方に配置される下側フレームと、前記上側フレームを前記下側フレームに対して昇降自在に連結する昇降連結機構と、を備える寝台装置であって、
前記下側フレームは、前記寝台の長手方向に延びる第1縦部材を備え、
前記上側フレームは、前記寝台の短手方向に延び、最下降位置にて、前記下側フレームの前記第1縦部材に平面視で交差した状態で上方から当接する当接部を備えることを特徴とする寝台装置。
【請求項2】
前記上側フレームは、
前記寝台に当接される寝台支持部材と、
前記寝台支持部材から前記短手方向に突出すると共に前記最下降位置にて前記下側フレームに上方から当接して前記当接部として機能する突出部と、
を備えることを特徴とする請求項1記載の寝台装置。
【請求項3】
前記上側フレームが、オプション受けをさらに備え、
前記突出部は、前記オプション受けを前記寝台支持部材からの突出方向である前記短手方向に沿って進退自在に支持する
ことを特徴とする請求項2記載の寝台装置。
【請求項4】
前記上側フレームは、
前記昇降連結機構に対して着脱であり、
さらに、利用者の頭側に対応する部位と足側に対応する部位とに分離自在である
ことを特徴とする請求項1?3いずれか一項に記載の寝台装置。
【請求項5】
前記昇降連結機構は、Xリンク構造を有することを特徴とする請求項1?4いずれか一項に記載の寝台装置。
【請求項6】
前記上側フレームの位置が前記最下降位置よりも高いときに、前記上側フレーム及び前記寝台の荷重を前記昇降連結機構で受け、
前記最下降位置のときに、前記上側フレームの位置が当該最下降位置よりも高いときに前記昇降連結機構で受ける荷重の少なくとも一部が前記当接部を通じて直接的に前記下側フレームに伝達される
ことを特徴とする請求項1?5いずれか一項に記載の寝台装置。」

第3 申立理由の概要
申立人は、証拠として、以下の甲第1?12号証(以下「甲1?12」ということがある。)を提出するとともに、以下の申立理由1及び2により請求項1?6に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。
1 証拠方法
(1)甲第1号証:取扱説明書
「在宅向け電動ケアベッド コンフォーネ」
パナソニック エイジフリーライフテック株式会社

(2)甲第2号証:取扱説明書
「ヒューマンケアベッド730シリーズ(3モーター)」
フランスベッド株式会社

(3)甲第3号証:取扱説明書
「在宅ケアベッド 楽匠Sシリーズ」
パラマウントベッド株式会社

(4)甲第4号証:取扱説明書
「電動在宅介護ベッド NX-1・NX-2 和夢彩」
シーホネンス株式会社

(5)甲第5号証:写真
撮影日:令和2年1月27日
撮影場所:株式会社プラッツ本社
福岡県大野城市仲畑2-3-17
撮影者:株式会社プラッツ従業員 古賀慎弥

(6)甲第6号証:公益財団法人テクノエイド協会のホームページ
「福祉用具情報システム」「福祉用具詳細」のプリントアウト
(http://www.techno-aids.or.jp/WelfareItemDetail.php?RowNo=1&YouguCode1=00980&YouguCode2=000212&DetailStatus=)2020年(令和2年)2月10日印刷

(7)甲第7号証:写真
撮影日:令和1年12月17日
撮影場所:株式会社プラッツ本社
福岡県大野城市仲畑2-3-17
撮影者:株式会社プラッツ従業員 清本太郎

(8)甲第8号証:シルバー産業新聞
1997年(平成9年)10月10日発行

(9)甲第9号証:写真
撮影日:令和1年12月23日
撮影場所:株式会社プラッツ本社
福岡県大野城市仲畑2-3-17
撮影者:株式会社プラッツ従業員 清本太郎

(10)甲第10号証:パラマウントベッド株式会社のホームページ
「TECHNOLOGY&HISTORY]|HISTORY|会社情報|パラマウントベッド株式会社|PARAMOUNT BED」のプリントアウト(https://www.paramount.co.jp/tech_hist/history/2010/index.html)2020年2月10日印刷

(11)甲第11号証:パラマウントベッド株式会社のホームページ
「会社沿革|パラマウントベッド株式会社|PARAMOUNTBED」のプリントアウト(https://www.paramount.co.jp/company/history.html)2020年2月10日印刷

(12)甲第12号証:シーホネンス株式会社のホームページ
「会社沿革|シーホネンス株式会社|SEAHONENCE.inc」のプリントアウト
(http://www.seahonence.co.jp/hp/Company/CorporateHistory.html)2020年2月10日印刷

2 申立理由
(1)申立理由1(特許法第29条第2項:甲1及び甲7を主たる証拠とするもの)
本件発明1及び2は、甲7に記載された事項により補足された甲1に記載された発明、甲9に記載された事項により補足された甲2に記載された事項、及び甲5の公然実施された事項に基いて、本件発明3及び4は、上記発明及び上記事項に加えて甲3に記載された事項に基いて、本件発明5及び6は、上記発明及び上記事項に加えて甲4に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明1?6に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してなされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである(特許異議申立書35頁下から4行?38頁8行、39頁10行?42頁16行)。

(2)申立理由2(特許法第29条第2項:甲2及び甲9を主たる証拠とするもの)
本件発明1及び2は、甲9に記載された事項により補足された甲2に記載された発明、甲7に記載された事項により補足された甲1に記載された事項及び甲5の公然実施された事項に基いて、本件発明3及び4は、上記発明及び上記事項に加えて甲3に記載された事項に基いて、本件発明5及び6は、上記発明及び上記事項に加えて甲4に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明1?6に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してなされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである(特許異議申立書38頁9行?42頁16行)。

第4 申立理由についての判断
1 各甲号証の記載事項等
(1)甲1の記載事項等
(1-1)甲1の記載事項
甲1には次の図面及び説明文が記載されている(なお、かっこ書きで取扱説明書の頁番号等を併記する。手書きの文字等は、申立人が付したものである。以下同様。)。
(1a)1枚目(表紙)








(1b)3枚目(6頁)












(1c)4枚目(25頁)










(1d)5枚目(50頁) 「部材A」、「部材B」、「部材C」を当審で追記している。

(1e)6枚目(51頁) 「部材A」、「部材B」、「部材C」を当審で追記している。


(1f)7枚目(52頁)

(1g)9枚目(54頁) 「部材A」、「部材B」、「部材C」を当審で追記している。







(1h)10枚目(55頁)「部材A」、「部材B」、「部材C」を当審で追記している。

(1i)16枚目(裏表紙)

(1-2)認定事項
甲1には、摘示(1a)のとおり「在宅向け電動ケアベッド」について開示されており、かかる「在宅向け電動ケアベッド」の構造について、以下の事項が認定できる。
ア 摘示(1b)より、背ボトム、ぴったりライン、ひざボトム及び足ボトムを備えること。

イ 摘示(1b)(1d)より、各ボトム及びぴったりラインに当接されて当該各ボトム及びぴったりラインを直接的に支持するフロントユニット及びリアユニットを備えること。

ウ 摘示(1e)より、頭側ベースユニット及び足側ベースユニットを備えること。摘示(1c)から、当該頭側ベースユニット及び足側ベースユニットは、設置床上に載置されることが理解できるところ、さらに摘示(1d)(1h)を参照すると、フロントユニット及びリアユニットの下方に配置されること。

エ 上記イ及びウをも踏まえると、摘示(1c)の「6.ベッドの高さをあげる(3モーション・2モーション)」及び「6.ベッドの高さをさげる(3モーション・2モーション)」における「-ベッドの動作-」に描かれた図とその説明から、フロントユニット及びリアユニットを頭側ベースユニット及び足側ベースユニットに対して昇降自在に連結する一対のリンク機構を備えること。

オ 摘示(1d)(1e)(1g)(1h)より、頭側ベースユニット及び足側ベースユニットは前記各ボトム及びぴったりラインを接続した状態における短手方向に延びる部材Cを有し、該部材Cの略中央から、前記各ボトム及びぴったりラインを接続した状態における長手方向に延びるそれぞれ2本の部材からなる部材A及び部材Bを備えるものであること。


(1-3)甲1に記載された発明及び事項
上記(1-1)及び(1-2)によれば、甲1には、次の発明及び事項(以下「甲1発明」及び「甲1事項」という。)が記載されていると認められる。
「背ボトム、ぴったりライン、ひざボトム、及び足ボトムと、当該各ボトム及びぴったりラインに当接されて当該各足ボトム及びぴったりライン全体を直接的に支持するフロントユニット及びリアユニットと、設置床上に載置されて前記フロントユニット及びリアユニットの下方に配置される頭側ベースユニット及び足側ベースユニットと、前記フロントユニット及びリアユニットを頭側ベースユニット及び足側ベースユニットに対して昇降自在に連結する一対のリンク機構と、を備える在宅向け電動ケアベッドであって、
前記頭側ベースユニット及び足側ベースユニットは前記各ボトム及びぴったりラインを接続した状態における短手方向に延びる部材Cを有し、該部材Cの略中央から、前記各ボトム及びぴったりラインを接続した状態における長手方向に延びるそれぞれ2本の部材からなる部材A及び部材Bを備える在宅向け電動ケアベッド。」

(2)甲2の記載事項等
(2-1)甲2の記載事項
甲2には次の図面及び説明文が記載されている。

(2a)1枚目右(表紙)



(2b)2枚目右(6頁)





(2c)3枚目左(7頁)


(2d)3枚目右(8頁)




(2e)4枚目左(11頁) 「部材a」及び「部材b」を当審で追記している。

(2f)4枚目右(12頁) 「部材a」及び「部材b」を当審で追記している。


(2-2)認定事項
甲2には、摘示(2a)のとおり「ヒューマンケアベッド」について開示されており、かかる「ヒューマンケアベッド」の構造について、以下の事項が認定できる。

ア 摘示(2b)の[FB-730タイプ]の図面、摘示(2c)の「床板組立」の図面、摘示(2e)の「丸囲み9(以下丸囲みの数字を「丸数字」と表記する。)ギャッチモーターの頭側(ローラーが4つ付いてる側)に床板組立の背上げ床板側・・・」(下線は当審が付与。以下同様。)との記載、「丸11 脚上げ床板を上げ・・・」との記載、及び図面から、「背上げ床板」及び「脚上げ床板」を含む「床板組立」を備えること。

イ 摘示(2e)の「丸12 ヘッドボード(大きい方)をギャッチフレームの頭側の左右にある穴に差し込みます。」との記載から、摘示(2e)の各図面に示された部材aが「ギャッチフレーム」であり、該ギャッチフレームは、「背上げ床板」及び「脚上げ床板」を含む「床板組立」に当接されて当該「背上げ床板」及び「脚上げ床板」を含む「床板組立」を直接的に支持すること。

ウ 摘示(2e)の各図面には、部材bが存在し、摘示(2d)をも参照すると、部材bは「ベースフレーム」であること。また、摘示(2e)の各図面から、該「ベースフレーム」は「ギャッチフレーム」(部材a)の下方に配置されること。そして、「ベースフレーム」が設置床上に載置されることは技術常識であること。

エ 上記イ及びウをも踏まえると、摘示(2f)の部材aは「ギャッチフレーム」であり、部材bは「ベースフレーム」であるといえるところ、図面とその説明から、「ギャッチフレーム」を「ベースフレーム」に対して昇降自在に連結する一対のリンク機構を備えること。

オ 摘示(2e)(2f)より、「ベースフレーム」は、「背上げ床板」及び「脚上げ床板」を含む「床板組立」の長手方向に延びるフレームを備えること。

(2-3)甲2に記載された発明及び事項
上記(2-1)及び(2-2)によれば、甲2には、次の発明及び事項(以下「甲2発明」及び「甲2事項」という。)が記載されていると認められる。
「背上げ床板及び脚上げ床板を含む床板組立と、当該床板組立に当接されて当該床板組立を直接的に支持するギャッチフレームと、設置床上に載置されて前記ギャッチフレームの下方に配置されるベースフレームと、前記ギャッチフレームを前記ベースフレームに対して昇降自在に連結する一対のリンク機構と、を備えるヒューマンケアベッドであって、
前記ベースフレームは、前記床板組立の長手方向に延びるフレームを備えるヒューマンケアベッド。」

(3)甲3の記載事項
(3-1)甲3の記載事項
甲3には次の図面及び説明文が記載されている。

(3a)1枚目(表紙)





(3b)2枚目(32頁)

(3c)3枚目(51頁)





(3d)7枚目(裏表紙)

(4)甲4の記載事項
(4-1)甲4の記載事項
甲4には次の図面及び説明文が記載されている。

(4a)1枚目(表紙)


(4b)2枚目右(10頁)

(4c)















(5)甲5の記載事項
甲5には次の写真が掲載されている。
(5a)上段


(5b)下段

(5c)下段の右







(6)甲6の記載事項等
甲6には次の写真が掲載されている。

(6a)


(7)甲7の記載事項等
甲7には次の写真が掲載されている。 「部材D」及び「部材E」を当審で追記している。

(7a)上段


(7b)中段及び下段
















(8)甲8の記載事項等
甲8には次の新聞記事が掲載されている。

(8a)

(8b)

(9)甲9の記載事項等
甲9には次の写真が掲載されている。

(9a)


















(10)甲10の記載事項
(10-1)甲10の記載事項
甲10には次の事項が記載されている。
(10a)1枚目(1/5)

(10b)3枚目(3/5)









(11)甲11の記載事項
(11-1)甲11の記載事項
甲11には次の事項が記載されている。
(11a)1枚目(1/10)

(11b)3枚目(3/10)




(12)甲12の記載事項
(12-1)甲11の記載事項
甲12には次の事項が記載されている。

(12a)1枚目(1/7)

(12b)5枚目(5/7)

2 当審の判断
2-1 甲1?5、7及び9の公知・公用性について
(1)甲1について
甲1は、パナソニック エイジフリーライフテック株式会社が販売する「在宅向け電動ケアベッド コンフォーネ」の「取扱説明書」であり(摘示(1a))、
甲6(公益財団法人テクノエイド協会のホームページ)には、商品名「電動ケアベッド コンフォーネ(ショート/レギュラー、2モーション、91cm幅、樹脂ボード」、製品番号「XPN-S105200B」である福祉用器具が平成27年(2015年)1月に発売されたことが記載されている。そして、甲1の表紙(摘示(1a))には、この取扱説明書が品番「XPN-S105200B」を含む製品に関する取扱説明書であることの記載がある。
そして、「取扱説明書」は、製品に添付して頒布するのが一般的であるところ、摘示(1a)の「保証書別添付」及び「保証書は『お買い上げ日・販売店名』などの記入を確かめ、取扱説明書とともに大切に保管してください。」との記載からみて、製品に添付して頒布されたものといえるから、甲1の「取扱説明書」は、本件特許の出願日である前の2015年10月6日より前には公知になったものと一応推認することができる。

(2)甲2について
甲2は、フランスベッド株式会社が販売する「ヒューマンケアベッド730シリーズ(3モーター)」の「取扱説明書」であり(摘示(2a))、
甲8(シルバー産業新聞 1997年(平成9年)10月10日発行)の第1面(摘示(8b))には、フランスベッドメディカルサービス株式会社が提供する「ヒューマンケアベッド FB-730(3モーター)FB-720(2モーター)」に関する広告が掲載されている。そして、商品広告と同時期にその商品が販売されることが通例である。
そして、上記(1)で述べたと同様に、「取扱説明書」は、製品に添付して頒布されたものといえるから、甲2の「取扱説明書」は、本件特許の出願日である2015年10月6日より前には公知になったものと一応推認することができる。

(3)甲3について
甲3は、「在宅ケアベッド 楽匠Sシリーズ」の「取扱説明書」であり(摘示(3a))、甲3の7枚目(摘示(3d))の右下に「’12.03」と記載されているから、上記「取扱説明書」は、2012年3月には公知になっていたとも推認できる。
また、甲10(摘示(10b))及び甲11(摘示(11b))によれば、上記「在宅ケアベッド 楽匠Sシリーズ」は、2009年にJIS規格の認証を取得し、2009年4月に販売が開始されたものと推認できる。
そして、上記(1)で述べたと同様に、「取扱説明書」は、製品に添付して頒布されたものといえるから、甲3の「取扱説明書」は、本件特許の出願日である2015年10月6日より前には公知になったものと一応推認することができる。

(4)甲4について
甲4は、「電動在宅介護ベッド NX-1・NX-2 和夢彩」の「取扱説明書」であり(摘示(4a))、甲4の6枚目(摘示(4c))の右下に「2014.07.01」と記載されているから、上記「取扱説明書」は、2014年7月1日には公知になっていたとも推認できる。
また、甲12(摘示(12b))によれば、上記「電動在宅介護ベッド NX-1・NX-2 和夢彩」は、2014年10月にJIS規格の認証を取得するとともに発売されたものと推認できる。
そして、上記(1)で述べたと同様に、「取扱説明書」は、製品に添付して頒布されたものといえるから、甲4の「取扱説明書」は、本件特許の出願日である2015年10月6日より前には公知になったものと一応推認することができる。

(5)甲5について
甲5について申立人は、「甲第5号証に係る電動ベッドのアクチュエータ部には、甲第5号証に示すように、ベッドの製造年月日として『00-05』なる表記がある。製造年月日という表記であることを考慮すると、『00-05』なる表記は2000年5月であることがわかる。従って、甲第5号証に係る電動ベッドは2000年5月に製造されたものである。
従って、甲第5号証に係る電動ベッドは少なくとも2000年5月に公然実施されたものである。」(異議申立書の32ページ21行?末行)と述べている。
しかしながら、甲5の摘示(5c)の写真のラベルが、アクチュエータ部に貼り付けられたものであることの真偽は不明である。仮に、甲5の各写真に示された電動ベッドが2000年5月に製造されたとしても、その販売実績等の証拠は提示されていないから、本件特許の出願日である2015年10月6日より前に上記電動ベッドが公然実施されたものであることは推認できない。

(6)甲7について
甲7に示された各写真が、本件特許の出願日である2015年10月6日より前に、公然知られたものであること、公然実施されたものであること、又は頒布されたものであることを証明する証拠は提出されていないから、公知・公用性を認めることはできない。

(7)甲9について
甲9に示された各写真が、本件特許の出願日である2015年10月6日より前に、公然知られたものであること、公然実施されたものであること、又は頒布されたものであることを証明する証拠は提出されていないから、公知・公用性を認めることはできない。

(8)まとめ
上記(1)?(7)のとおり、甲1?4は、いずれも本件特許の出願日前には公知になったものと一応推認することができるが、甲5の上記電動ベッドが公然実施されたものであることは認められない。また、甲7及び9の公知・公用性も認められないので、甲1?4が、本件特許の出願日前に日本国内において頒布された刊行物であるとして、以下、申立理由1及び申立理由2について検討する。

2-2 申立理由1について
(1)本件発明1について
(1-1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
ア 後者の「背ボトム、ぴったりライン、ひざボトム及び足ボトム」は、前者の「寝台」に相当する。

イ 後者の「当該各ボトム及びぴったりラインに当接されて当該各ボトム及びぴったりラインを直接的に支持するフロントユニット及びリアユニット」は、前者の「当該寝台に当接されて当該寝台を直接的に支持する上側フレーム」に相当する。

ウ 後者の「設置床上に載置されて前記フロントユニット及びリアユニットの下方に配置される頭側ベースユニット及び足側ベースユニット」は、前者の「設置床上に載置されて前記上側フレームの下方に配置される下側フレーム」に相当する。

エ 後者の「前記フロントユニット及びリアユニットを頭側ベースユニット及び足側ベースユニットに対して昇降自在に連結する一対のリンク機構」は、前者の「前記上側フレームを前記下側フレームに対して昇降自在に連結する昇降連結機構」に相当する。

オ 後者の「在宅向け電動ケアベッド」は、前者の「寝台装置」に相当する。

カ 後者の「前記頭側ベースユニット及び足側ベースユニットは前記各ボトム及びぴったりラインを接続した状態における短手方向に延びる部材Cを有し、該部材Cの略中央から、前記各ボトム及びぴったりラインを接続した状態における長手方向に延びるそれぞれ2本の部材からなる部材A及び部材Bを備える」構成において、後者の「前記各ボトム及びぴったりラインを接続した状態における長手方向」は、前者の「前記寝台の長手方向」に相当し、後者の「部材A及び部材B」は、前者の「第1縦部材」に相当するから、後者の「頭側ベースユニット及び足側ベースユニットは前記各ボトム及びぴったりラインを接続した状態における短手方向に延びる部材Cを有し、該部材Cの略中央から、前記各ボトム及びぴったりラインを接続した状態における長手方向に延びるそれぞれ2本の部材からなる部材A及び部材Bを備える」ことは、前者の「前記下側フレームは、前記寝台の長手方向に延びる第1縦部材を備えること」に相当する。

以上によれば、本件発明1と甲1発明とは、
「寝台と、当該寝台に当接されて当該寝台を直接的に支持する上側フレームと、設置床上に載置されて前記上側フレームの下方に配置される下側フレームと、前記上側フレームを前記下側フレームに対して昇降自在に連結する昇降連結機構と、を備える寝台装置であって、
前記下側フレームは、前記寝台の長手方向に延びる第1縦部材を備える寝台装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
本件発明1は、「前記上側フレームは、前記寝台の短手方向に延び、最下降位置にて、前記下側フレームの前記第1縦部材に平面視で交差した状態で上方から当接する当接部を備える」のに対し、
甲1発明は、かかる当接部が特定されていない点。

(1-2)判断
ア 甲2には、上記「1 (2)(2-3)」のとおり「背上げ床板及び脚上げ床板を含む床板組立と、当該床板組立に当接されて当該床板組立を直接的に支持するギャッチフレームと、設置床上に載置されて前記ギャッチフレームの下方に配置されるベースフレームと、前記ギャッチフレームを前記ベースフレームに対して昇降自在に連結する一対のリンク機構と、を備えるヒューマンケアベッドであって、前記ベースフレームは、前記床板組立の長手方向に延びるフレームを備えるヒューマンケアベッド。」が記載さているが、かかる甲2事項は、上記相違点1に係る本件発明1の構成は存在しない。
したがって、上記相違点1に係る本件発明1の構成を、甲1発明及び甲2事項から容易想到ということはできない。

イ 上記「2-1(5)?(7)」で述べたように、甲5、甲7及び甲9は公知・公用性が認められないが、甲5、甲7及び甲9の写真の内容を加味した場合に上記相違点1が容易想到であるかを、一応検討する。
なお、検討するにあたり、甲5、甲7及び甲9の各写真において、申立人が引き出し線とともに示した部材名を用いることがある。

イ-1 甲5の記載事項
甲5の摘示(5a)?(5c)から、「介護支援ベッド」について、次の事項(以下「甲5事項」という。)が看取できる。
「上側フレームと、設置床上に載置されて前記上側フレームの下方に配置される下側フレームと、前記上側フレームを前記下側フレームに対して昇降自在に連結する昇降連結機構と、を備える介護支援ベッドであって、
前記下側フレームは、上側フレームの長手方向に延びるフレームを備え、
前記下側フレームの長手方向の端部には、最下降位置にて、前記上側フレームの短手方向のフレームに下方から当接する鉛直方向に上に伸びる突出部を備える介護支援ベッド。」

イ-2 甲7の記載事項
摘示(7b)の写真から、「頭側ベースユニット」には「PN-S105001」と表示されたラベルが貼られ、甲1の摘示(1e)の「丸1頭側ベースユニット」には「品番:PN-S105001」と記載さているから、甲1の摘示(1e)で示された上記「頭側ベースユニット」の構造が甲7の各写真に示されているといえる。他方、摘示(7a)の右の写真の「フロントユニット」及び摘示(7b)の該「フロントユニット」に対応する部材の品番は不明であるから、甲7の各写真で示された「フロントユニット」が甲1の摘示(1f)で示された「フロントユニット」と同一部品であるかの真偽は不明である。
仮に、甲7の各写真で示された「フロントユニット」が甲1の摘示(1f)で示された「フロントユニット」と同一部品であった場合には、
甲1発明の「電動ケアベッド」において、甲1の摘示(1f)の「フロントユニット」の図示内容と甲7の摘示(7a)(7b)から、さらに、次の事項(以下「甲7事項」という。)が看取できる。
「前記フロントユニットには、前記各ボトム及びぴったりラインを接続した状態における短手方向に延びる部材Dの端部から鉛直方向下に伸び、最下降位置にて、前記頭側ベースユニットの前記短手方向に延びる部材Cに上方から当接する突出部を備えること。」

イ-3 甲9の記載事項等
甲9の摘示(9a)の右上の写真に、「ヒューマンケアベッド FB?730」、「フランスベッド株式会社」と表示されたラベルがあるが、該ラベルが甲9の他の各写真に示されたベッドに貼り付けられたものであることの真偽は不明であるが、仮に甲9の各写真が、甲2の「ヒューマンケアベッド FB?730シリーズ(3モーター)」の構造を示したものとして以下検討する。
甲2の摘示(2d)には、ベースフレームの端部に設けられた固定脚の上端に鉛直方向上に伸びる突出部(申立人が引き出し線とともに示している。)が示されているところ、甲9をも参照すると、甲2発明の「ヒューマンケアベッド」において、さらに、次の事項(以下「甲9事項」という。)が看取できる。
「前記ベースフレームの端部に設けられた固定脚の上端に鉛直方向上に伸び、最下降位置にて、前記ギャッチフレームの前記長手方向のフレームに下方から当接する突出部を備えること。」

イ-4 検討
(ア)本件発明1の課題は、願書に添付された明細書(以下「本件明細書」という。)の段落【0008】に記載されているように、「寝台を昇降自在とする寝台装置において、低床化を実現しかつ寝台と設置床との接触を防止することを目的とする」ものである。そして、かかる目的は、上記相違点1に係る本件発明1の「前記上側フレームは、前記寝台の短手方向に延び、最下降位置にて、前記下側フレームの前記第1縦部材に平面視で交差した状態で上方から当接する当接部を備える」との構成により達成するものである。
(イ)本件発明1と、甲7事項により補足された甲1発明(以下「甲1発明(甲7)」という。)とを対比すると、両者は、上記(1-1)の一致点で一致し、次の点で相違している。

<相違点1α>
本件発明1が、「前記寝台の短手方向に延び、最下降位置にて、前記下側フレームの前記第1縦部材に平面視で交差した状態で上方から当接する当接部を備える」のに対し、
甲1発明(甲7)は、「前記フロントユニットには、前記背ボトム、ぴったりライン、ひざボトム及び足ボトムの短手方向に延びる部材Dから鉛直方向下に伸び、最下降位置にて、前記頭側ベースユニットの前記短手方向に伸びる部材Cに上方から当接する突出部を備える」点。

(ウ)甲1発明(甲7)において、甲9事項により補足された甲2事項(以下「甲2事項(甲9)」という。)を参考にして、相違点1αが容易想到であるかを検討する。
甲2事項(甲9)の「ベースフレーム」、「ギャッチフレーム」及び「突出部」は、甲1発明(甲7)の「頭側ベースユニット及び足側ベースユニット」、「フロントユニット及びリアユニット」、及び「突出部」に対応する。(本件発明1の「下側フレーム」、「上側フレーム」及び「当接部」に対応する。)
ここで、甲1発明(甲7)と甲2事項(甲9)とは、「突出部」の当接・被当接の関係が逆ではあるが、甲2事項(甲9)の「突出部」は「ギャッチフレームの前記長手方向のフレームに下方から当接する」ものであるから、該「突出部」を長手方向に延びる部材に当接させる構成が示されているといえる。
そして、甲1発明(甲7)の「頭側ベースユニット及び足側ベースユニット」における長手方向に延びる部材は「部材A及び部材B」であって、該「部材A及び部材B」は部材Cの略中央から延びているから、甲2事項(甲9)を参考として、甲1発明(甲7)の「突出部」を該「部材A及び部材B」に当接させる構成に変更するためには、甲1発明(甲7)の該「突出部」が取り付けられている「部材D」をフロントユニットの上記長手方向に延びる部材E(摘示(7a)を参照)における長手方向内側に位置させ、かつ短手方向にさらに延長する必要がある。
しかしながら、甲7の摘示(7a)(7b)の写真をみると、「部材D」を、上記長手方向に延びる部材Eにおける長手方向内側に位置させ、かつさらに延長する先には昇降連結機構を構成する部材(リンク等)が存在するから、該「部材D」をかかる構成の変更を行うべき合理性はなく、むしろそのように構成の変更を行うことには阻害要因が存在するといえる。
また、仮に、「突出部」を「部材A及び部材B」に当接させる構成に変更できたとしても、該「突出部」の構成は、甲7事項で認定したとおり「部材Dから鉛直方向下に伸び」る構成であるから、上記相違点1αに係る本件発明1の「下側フレームの前記第1縦部材に平面視で交差した状態で上方から当接する当接部」の構成に至るものではない。
そして、甲1発明(甲7)の「突出部」は、「部材Dから鉛直方向下に伸び」る構成であるから、上記(ア)で述べたような、最下降位置における「低床化」の目的を果たすには不十分であるのに対し、本件発明1は、当該「下側フレームの前記第1縦部材に平面視で交差した状態で上方から当接する当接部」の構成により、上記(ア)で述べた目的に対応して「低床化を実現しかつ寝台と設置床との接触を防止する」との効果を奏するものである。

(エ)また、甲5事項の「突出部」は、上側フレームの短手方向のフレームに当接するものであり、かつ「鉛直方向上に伸び」るものであるから、甲5事項を参考にしても、上記相違点1αに係る本件発明1の「下側フレームの前記第1縦部材に平面視で交差した状態で上方から当接する当接部」の構成に至るものではない。

(オ)したがって、甲1発明(甲7)において、甲2事項(甲9)及び甲5事項を参考にしても、上記相違点1αに係る本件発明1の構成に至るものではない。

ウ 小括
以上のとおり、甲5、甲7、及び甲9は公知・公用性が認められないから証拠として採用することができない。そして、本件発明1は甲1発明と上記相違点1において相違するものであるところ、相違点1に係る本件発明1の構成は上記アのとおり容易想到とはいえないものであるから、本件発明1は、甲1発明及び甲2事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。また、仮に、甲5、甲7及び甲9の写真から看取できる事項を加味したとしても、本件発明1を当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)本件発明2?6について
本件発明2?6は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものであるから、本件発明1と同様に、甲1発明及び甲2事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。また、仮に、甲5、甲7及び甲9の写真から看取できる事項を加味したとしても、本件発明1を当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2-3 申立理由2について
(1)本件発明1について
(1-1)対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
ア 後者の「背上げ床板及び脚上げ床板を含む床板組立」は、前者の「寝台」に相当する。

イ 後者の「当該床板組立に当接されて当該床板組立を直接的に支持するギャッチフレーム」は、前者の「当該寝台に当接されて当該寝台を直接的に支持する上側フレーム」に相当する。

ウ 後者の「設置床上に載置されて前記ギャッチフレームの下方に配置されるベースフレーム」は、前者の「設置床上に載置されて前記上側フレームの下方に配置される下側フレーム」に相当する。

エ 後者の「前記ギャッチフレームを前記ベースフレームに対して昇降自在に連結する一対のリンク機構」は、前者の「前記上側フレームを前記下側フレームに対して昇降自在に連結する昇降連結機構」に相当する。

オ 後者の「ヒューマンケアベッド」は、前者の「寝台装置」に相当する。

カ 後者の「前記ベースフレームは、前記床板組立の長手方向に延びるフレームを備える」構成は、前者の「前記下側フレームは、前記寝台の長手方向に延びる第1縦部材を備える」構成に相当する。

以上によれば、本件発明1と甲2発明とは、
「寝台と、当該寝台に当接されて当該寝台を直接的に支持する上側フレームと、設置床上に載置されて前記上側フレームの下方に配置される下側フレームと、前記上側フレームを前記下側フレームに対して昇降自在に連結する昇降連結機構と、を備える寝台装置であって、
前記下側フレームは、前記寝台の長手方向に延びる第1縦部材を備える寝台装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点2>
本件発明1は、「前記上側フレームは、前記寝台の短手方向に延び、最下降位置にて、前記下側フレームの前記第1縦部材に平面視で交差した状態で上方から当接する当接部」を備えるのに対し、
甲2発明は、かかる当接部が特定されていない点。

(1-2)判断
ア 甲1には、上記「1 (1)(1-3)」のとおり甲1事項が記載されているが、かかる甲1事項は、上記相違点2に係る本件発明1の構成は存在しない。
したがって、上記相違点2に係る本件発明1の構成を、甲2発明及び甲1事項から容易想到ということはできない。

イ 上記「2-1 (5)?(7)」で述べたように、甲5、甲7及び甲9は公知・公用性が認められないが、甲5、甲7及び甲9の写真の内容を加味した場合について、上記相違点2が容易想到であるかを、一応検討する。なお、検討するにあたり、甲5、甲7及び甲9の写真において、申立人が引き込み線とともに示した部材名を用いることがある。

イ-1 甲5、甲7、甲9の記載事項
甲5、甲7、甲9から看取できる事項は、上記「2-2 (1)(1-2)イ」の(イ-1)?(イ-3)で述べたとおりである。

イ-2 検討
(ア)本件発明1の課題は、本件明細書の段落【0008】に記載されているように、「寝台を昇降自在とする寝台装置において、低床化を実現しかつ寝台と設置床との接触を防止することを目的とする」ものである。そして、かかる目的は、上記相違点に係る本件発明1の「前記上側フレームは、前記寝台の短手方向に延び、最下降位置にて、前記下側フレームの前記第1縦部材に平面視で交差した状態で上方から当接する当接部を備える」との構成により達成するものである。

(イ)本件発明1と、甲9事項により補足された甲2発明(以下「甲2発明(甲9)」という。)とを対比すると、両者は、上記(1-1)の一致点で一致し、次の点で相違している。

<相違点2β>
本件発明1が、「前記寝台の短手方向に延び、最下降位置にて、前記下側フレームの前記第1縦部材に平面視で交差した状態で上方から当接する当接部」であるのに対し、
甲2発明(甲9)は、「前記ベースフレームの端部に設けられた固定脚の上端に鉛直方向上に伸び、最下降位置にて、前記ギャッチフレームの前記長手方向のフレームに下方から当接する突出部」である点。

(ウ)甲2発明(甲9)において、甲7事項により補足された甲1事項(以下「甲1事項(甲7)という。)を参考にして、相違点2βが容易想到であるかを検討する。
甲1事項(甲7)の「頭側ベースユニット及び足側ベースユニット」、「フロントユニット及びリアユニット」及び「突出部」は、甲2発明(甲9)の「ベースフレーム」、「ギャッチフレーム」及び「突出部」に対応する。(本件発明1の「下側フレーム」、「上側フレーム」及び「当接部」に対応する。)
ここで、上記相違点2βのうち、甲2発明(甲9)の「突出部」は「ベースフレーム」(本件発明1の「下側フレーム」)に備えているのに対し、本件発明1の「当接部」は上側フレーム(甲2発明(甲9)の「ギャッチフレーム」)に備えていることに関しては、甲1事項(甲7)の「突出部」を「フロントユニット」(甲2発明(甲9)の「ギャッチフレーム」)に備えることを参考にすれば、甲2発明(甲9)の「突出部」を「ギャッチフレーム」に備える構成に変更することは容易想到といえる。
しかしながら、かかる変更をしたとしても、甲2発明(甲9)の「突出部」の構成は、鉛直方向上に伸びる構成から鉛直方向下に伸びる構成に変更されるだけであり、甲9の摘示(a)の中段右の写真にみられるように、「突出部」とギャッチフレームとは平面視で交差した状態で上方から当接するものでないから、上記相違点2βに係る本件発明1の「下側フレームの前記第1縦部材に平面視で交差した状態で上方から当接する当接部」の構成に至るものではない。
そして、甲2発明(甲9)の上記変更後の「突出部」は、鉛直方向下に伸びる構成であるから、上記(ア)で述べたような、最下降位置における「低床化」の目的を果たすには不十分であるのに対し、本件発明1は、当該「下側フレームの前記第1縦部材に平面視で交差した状態で上方から当接する当接部」の構成により、上記(ア)で述べた目的に対応して「低床化を実現しかつ寝台と設置床との接触を防止する」との効果を奏するものである。

(エ)また、甲5事項の「突出部」も「鉛直方向上に伸び」るものであるから、甲5事項を参考にしても、上記相違点2βに係る本件発明1の「下側フレームの前記第1縦部材に平面視で交差した状態で上方から当接する当接部」の構成に至るものではない。

(オ)したがって、甲2発明(甲9)において、甲1事項(甲7)及び甲5事項を参考としたとしても、上記相違点2βに係る本件発明1の構成に至るものではない。

ウ 小括
以上のとおり、甲5、甲7、及び甲9は公知・公用性が認められないから証拠として採用することができない。そして、本件発明1は甲2発明と上記相違点において相違するものであるところ、相違点2に係る本件発明1の構成は上記アのとおり容易想到とはいえないものであるから、本件発明1は、甲2発明及び甲1事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。また、仮に、甲5、甲7及び甲9の写真から看取できる事項を加味したとしても、本件発明1を当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)本件発明2?6について
本件発明2?6は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものであるから、本件発明1と同様に、甲2発明及び甲1事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。また、仮に、甲5、甲7及び甲9の写真から看取できる事項を加味したとしても、本件発明1を当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第5 むすび
以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2020-07-01 
出願番号 特願2015-198763(P2015-198763)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A47C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 小島 哲次  
特許庁審判長 氏原 康宏
特許庁審判官 一ノ瀬 覚
島田 信一
登録日 2019-09-06 
登録番号 特許第6581459号(P6581459)
権利者 パラマウントベッド株式会社
発明の名称 寝台装置  
代理人 日向寺 雅彦  
代理人 小崎 純一  
代理人 特許業務法人ウィルフォート国際特許事務所  
代理人 市川 浩  

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