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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1364654
審判番号 不服2019-6124  
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-05-10 
確定日 2020-07-28 
事件の表示 特願2017-522971「偏光分離・回転デバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月 6日国際公開、WO2016/066033、平成29年12月 7日国内公表、特表2017-536572〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)10月21日(パリ条約による優先権主張 2014年10月28日、欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。

平成29年 6月 7日 :手続補正書の提出
平成30年 5月 1日付け:拒絶理由通知書
平成30年 8月13日 :意見書、手続補正書の提出
平成31年 1月 8日付け:拒絶査定(原査定)
令和 元年 5月10日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 元年 9月24日 :上申書の提出

第2 令和元年5月10日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和元年5月10日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。

「【請求項1】
第1の光導波路であって、前記第1の光導波路のコアが、前記第1の光導波路内に結合された偏光した光がゼロ次の横方向磁場モード(TM0)を1次の横方向電場モード(TE1)に変換させる一方で、ゼロ次の横方向電場モード(TE0)を変化させないようにするように、非対称に形成された第1の光導波路を含む光学モード変換器と、
前記第1の光導波路に結合された第2の光導波路及び前記第2の光導波路に断熱結合された第3の光導波路と、を含む出力結合器であって、前記断熱結合が、前記第1の光導波路から前記第2の光導波路内に結合された前記偏光した光が、1次の横方向電場モード(TE1)をゼロ次の横方向電場モード(TE0)として前記第3の光導波路に結合し、ゼロ次の横方向電場モード(TE0)を、前記第3の光導波路に結合させることなく前記第2の光導波路内を伝搬させる状態を維持することによって、前記第2の光導波路と前記第3の光導波路との間で出力を拡張させる、出力結合器と、
を含み、
前記第1の光導波路の前記コアが、1.8から2.5の範囲の屈折率を有し、
前記第1の光導波路の前記コアが、第1の区画及び、前記第1の区画よりも厚さの大きい第2の区画を含み、前記第2の区画が、前記コアの長手方向に対して前記コアの両側に配置された2つのサブ区画を含み、
前記第2の区画の、前記長手方向に対して垂直な方向における幅が、前記第1の光導波路と前記第2の光導波路との接続部に向かうにつれて減少する、偏光分離・回転デバイス。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、平成30年8月13日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「【請求項1】
第1の光導波路であって、前記第1の光導波路のコアが、前記第1の光導波路内に結合された偏光した光がゼロ次の横方向磁場モード(TM0)を1次の横方向電場モード(TE1)に変換させる一方で、ゼロ次の横方向電場モード(TE0)を変化させないようにするように、非対称に形成された第1の光導波路を含む光学モード変換器と、
前記第1の光導波路に結合された第2の光導波路及び前記第2の光導波路に断熱結合された第3の光導波路と、を含む出力結合器であって、前記断熱結合が、前記第1の光導波路から前記第2の光導波路内に結合された前記偏光した光が、1次の横方向電場モード(TE1)をゼロ次の横方向電場モード(TE0)として前記第3の光導波路に結合し、ゼロ次の横方向電場モード(TE0)を、前記第3の光導波路に結合させることなく前記第2の光導波路内を伝搬させる状態を維持することによって、前記第2の光導波路と前記第3の光導波路との間で出力を拡張させる、出力結合器と、
を含み、
前記第1の光導波路の前記コアが、1.8から2.5の範囲の屈折率を有する、偏光分離・回転デバイス。」

2 新規事項の追加の有無について
本件補正の補正により、請求項1の「第1の光導波路のコア」について、「前記第1の光導波路の前記コアが、第1の区画及び、前記第1の区画よりも厚さの大きい第2の区画を含み、前記第2の区画が、前記コアの長手方向に対して前記コアの両側に配置された2つのサブ区画を含み、前記第2の区画の、前記長手方向に対して垂直な方向における幅が、前記第1の光導波路と前記第2の光導波路との接続部に向かうにつれて減少する」との事項が追加された(下線は、当審で付した。以下同様。)。

上記追加された事項に関し、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「出願当初の明細書等」という。)に、
「【請求項4】 前記第1の光導波路の前記コアが、第1の区画及び前記第1の区画と厚さの異なる第2の区画を含み、前記第1の区画及び前記第2の区画の異なる厚さが、前記コアの非対称形状を形成する、請求項1から3のいずれか一項に記載の偏光分離・回転デバイス。」、
「【0022】
そのような第1の態様に従う、または第1の態様の前述の実装形態のいずれかに従うPSRデバイスの第3の可能な実装形態において、第1の光導波路のコアが、第1の区画及び第1の区画と厚さの異なる第2の区画を含み、第1の区画及び第2の区画の異なる厚さが、コアの非対称形状を形成する。
【0023】
異なる厚さの2つの区画の形成は、例えば異なる高さまでエッチングまたは研削を行うことによって、容易に製造することができる。」、
「【0061】
第1の光導波路511のコア515、517a、517bは、コア515、517a、517bの非対称形状を形成する少なくとも1つのアブレーション部を含む。アブレーション部は、コアの2つの区画515及び517a、517bの異なる厚さの原因となる。第1の光導波路511のコア515、517a、517bは、第1の区画515及び第1の区画515と異なる厚さを有する第2の区画517a、517bを含みうる。第1の区画515及び第2の区画517a、517bの異なる厚さは、コア515、517a、517bの非対称形状を形成する。第2の区画517a、517bは、コアの長手方向に対してコアの両側に配置されうる2つのサブ区画517a、517bを有しうる。
【0062】
第1の光導波路511のコア515、517a、517bの断面は非対称でありうる。第1のサブ区画517aは、第2のサブ区画517bと異なる大きさであり得、それによってコアの断面の非対称性を形成する。
【0063】
第1の光導波路511のコア515、517a、517bの断面は、図5cから分かるように、第1の長方形521とは異なる大きさを有する第2の長方形523a、523bの上部におかれた第1の長方形521として形成されうる。第2の長方形の辺523a、523bは、コアの第2の区画の2つのサブ区画517a、517bを形成しうる一方で、第1の長方形521は、コアの第1の区画515を形成しうる。」、



と記載されている(下線は、当審で付した。以下同様。)。

そうすると、第1の光導波路511は、コア515の第1の区画と、コア517a、517bの第2の区画を含むと解される。そして、第1の区画と厚さの異なる第2の区画、又は、第1の区画(515)よりも厚さの小さい第2の区画(コアの両側に配置されたサブ区画517a、517b)は把握できるものの、第1の区画よりも厚さの大きい第2の区画に関して、出願当初の明細書等には明示的な記載はない。

以上のことから、本件補正後の請求項1は、当初明細書等には記載がなく、当初明細書等の記載から自明な事項でもないから、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。

したがって、本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしておらず、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3 独立特許要件について
上記のとおり、本件補正は特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるが、仮に、本件補正が、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件補正が、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものであるとして、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が、特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下において検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、米国特許出願公開第2014/0270620号明細書(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。

「1 . An apparatus comprising:
an optical waveguide structure configured to transmit a pair of optical signals in guided modes, the optical waveguide structure comprising a rotator, wherein the rotator is configured to:
receive a first optical signal of the pair of optical signals polarized in a transverse electric (TE) mode and maintain the first optical signal in the TE mode as the first optical signal propagates through the rotator; and
receive a second optical signal of the pair of optical signals polarized in a transverse magnetic (TM) mode and convert the TM mode optical signal to a TE mode optical signal as the second optical signal propagates through the rotator,
wherein the rotator comprises a dual-layer core comprising a first layer disposed on a substrate and a second layer disposed on the first layer,
wherein the first layer comprises a base portion that inversely tapers from a first end to a second end of the core, wherein a width of the base portion at the first end is less than the width of the base portion at the second end, and wherein the second layer comprises a rib portion, the rib portion having a width that is less than the width of the base portion at the first end and at the second end. 」
(【請求項1】
装置であって、
一対の光学信号を導波モードで送信するように構成される光学導波管構造体を備え、
前記光学導波管構造体は、回転子を含み、
前記回転子は、
横方向電気(TE)モードで偏光された前記一対の光学信号のうちの第1の光学信号を受信し、前記第1の光学信号が前記回転子を通って伝搬する際に、前記第1の光学信号をTEモードに維持すること、
横方向磁気(TM)モードで偏光された前記一対の光学信号のうちの第2の光学信号を受信し、前記第2の光学信号が前記回転子を通って伝搬する際に、TMモードの光学信号をTEモードの光学信号に変換すること、を実行するように構成され、
前記回転子は、基板上に配置される第1の層と、前記第1の層上に配置される第2の層とを含む二重層コアを含み、
前記第1の層は、前記二重層コアの第1の端部から第2の端部にわたって逆テーパ形状を有するベース部を含み、
前記第1の端部における前記ベース部の幅は、前記第2の端部における前記ベース部の幅未満であり、
前記第2の層は、リブ部を含み、
前記リブ部は、前記第1の端部及び前記第2の端部における前記ベース部の幅未満の幅を有する、装置。(訳は、特表2016-511448号公報における該当箇所の記載を使用。以下同様。))


「9 . The apparatus of claim 1 , wherein the optical waveguide structure further comprises a separator that is configured to:
receive the first optical signal and the second optical signal from the rotator; and
separate the first optical signal from the second optical signal and into separate first and second waveguide paths,
wherein the separator comprises a single-layer core disposed on the substrate, wherein the single-layer core comprises an asymmetric Y-splitter comprising:
a first tapering portion that is configured to receive the first optical signal and the second optical signal from the rotator; and
a second tapering portion that is configured to couple substantially all of the energy of one of the first optical signal or the signal optical signal away from the first tapering portion, while substantially all of the energy of the other of the first optical signal or the second optical signal remains coupled to the first tapering portion. 」
(【請求項9】
前記光学導波管構造体は、セパレータをさらに含み、
前記セパレータは、
前記回転子から前記第1の光学信号及び前記第2の光学信号を受信すること、
前記第1の光学信号を前記第2の光学信号から分離して、別個の第1の導波路及び第2の導波路に分けること、を実行するように構成され、
前記セパレータは、前記基板上に配置される単層コアを含み、
前記単層コアは、非対称Y字スプリッタを含み、
前記非対称Y字スプリッタは、
前記回転子から前記第1の光学信号及び前記第2の光学信号を受信するように構成される第1のテーパ部と、
前記第1の光学信号又は前記第2の光学信号のうちの一方のエネルギーの略全てを前記第1のテーパ部から離れて結合し、前記第1の光学信号又は前記第2の光学信号のうちの他方のエネルギーの略全ては、前記第1のテーパ部に結合された状態を保つように構成される第2のテーパ部と、を含む、請求項1に記載の装置。)

「[0019] The external light source 104 may transmit a pair of optical signals together or simultaneously. The first and second optical signals may be transmitted together by being polarized in different transverse modes or in different combinations of "s" and "p" polarized light. Upon receipt of the first and second optical signals, the nanotaper stage 102 may be configured to confine or concentrate the optical signals to the waveguide structure 100 in guided modes. The guided modes may be different guided modes, which may include the TE mode and the TM mode. By being confined or concentrated, the light is substantially localized or contained within the waveguide structure 100 , at least in terms of optical waveguides. As such, as the output or end of the nanotaper stage 102 , the first optical signal may be concentrated in the optical waveguide structure 100 as a TE mode optical signal, and the second optical signal may be concentrated in the optical waveguide structure 100 as a TM mode optical signal. In addition, each of the TE mode optical signal and the TM mode optical signal may be of the lowest order (i.e., first order) or be fundamental mode optical signals, which may be referred to as TE_(0) and TM_(0) mode optical signals. The order of the mode may refer to and/or be indicative a spatial symmetry of the light energy in the optical signal relative to a central axis of propagation. First order or fundamental optical signals may have a single concentration of light energy centrally located on the axis of propagation.
[0020] The optical waveguide structure 100 may further include a rotator stage 106 that is configured to rotate or alter the polarization state of the TM mode optical signal to a TE mode optical signal, and maintain or keep unchanged the TE mode optical signal as a TE mode optical signal. Accordingly, at the output or end of the rotator stage 106 , the pair of optical signals initially received at the nanotaper stage 102 may be confined or concentrated to the optical waveguide structure 100 as first and second TE mode optical signals.
[0021] The first and second TE mode optical signals may have different orders. For example, the first TE mode optical signal may be the first order TE_(0) optical signal that is maintained as a TE mode optical signal as it propagates through the rotation stage 106 . The second TE mode optical signal may have a higher order than the first order. For example, the second TE mode optical signal may be a second-order TE mode optical signal, which may be referred to as a TE_(1) mode optical signal. A second-order TE_(1) mode optical signal may have two concentrations of light energy symmetric about the axis of propagation. As such, the rotation stage 106 may be configured to convert a first-order TM0 mode optical signal to a second-order TE_(1) optical signal, and maintain the first-order TE_(1) mode optical signal as a first-order TE_(0) mode optical signal as the received optical signals propagate through the rotation stage 106 .
[0022] The optical waveguide structure 100 may further include a separation stage 108 that may be configured to separate the first-order TE_(0) mode optical signal and the second-order TE_(1) mode optical signal into separate optical waveguides or waveguide paths. The first-order TE_(0) mode optical signal and the second-order TE_(1) mode optical signal may be transmitted to the separation stage 108 together on a single waveguide or waveguide path. So that the TE_(0) and TE_(1) mode optical signals may be processed separately, the separation stage 108 may separate and confine the TE_(0) mode optical signal and the TE_(1) mode optical signal into separate waveguide paths 110 a and 110 b. The separation of the TE_(0) mode optical signal and the TE_(1) mode optical signal (or more generally the separation of different order optical signals polarized in the same TE or TM mode) into separate waveguide paths may be referred to as modal diversity. After separation, the TE_(0) mode optical signal and the TE_(1) mode optical signal may then be transmitted along their respective waveguide paths 110 a, 110 b to processing circuitry 112 , where one or more functions may be performed on each of the TE_(0) and TE_(1) mode optical signals. In addition, after separation, the TE_(1) optical signal may become a first order TE_(0) mode optical signal when transmitted along its respective waveguide path 110 b to the processing circuitry 112 .」
([0019] 外部光源104は、一対の光学信号を一緒に、又は同時に送信し得る。第1及び第2の光学信号は一緒に、異なる横方向モードで、又は「s」偏光及び「p」偏光の異なる組合せで偏光されることによって送信し得る。第1及び第2の光学信号を受信すると、ナノテーパステージ102は、光学信号を導波モードで導波管構造体100に閉じ込めるか、又は集中させるように構成し得る。導波モードは異なる導波モードであり得、TEモード及びTMモードを含み得る。閉じ込められるか、又は集中される(concentrated)ことにより、光は実質的に、少なくとも光学導波管に関して、導波管構造体100内に限局(localized)又は包含される。したがって、ナノテーパステージ102の出力又は端部において、第1の光学信号は、TEモード光学信号として光学導波管構造体100内に集中し得、第2の光学信号は、TMモード光学信号として、光学導波管構造体100内に集中し得る。さらに、TEモード光学信号及びTMモード光学信号のそれぞれは、最低次数(すなわち、一次)であり得、又は基本モード光学信号であり得、TE_(0)及びTM_(0)モード光学信号と呼ばれ得る。モードの次数は、伝搬の中心軸に相対する光学信号内の光エネルギーの空間的対称性を指し、且つ/又は示し得る。一次又は基本光学信号は、伝搬軸の中心に配置された光エネルギーの単一の集中を有し得る。
[0020] 光学導波管構造体100は、回転子ステージ106をさらに含み得、回転子ステージ106は、TMモード光学信号の偏光状態をTEモード光学信号に回転又は変更し、TEモード光学信号をTEモード光学信号として維持又は保持するように構成される。したがって、回転子ステージ106の出力又は端部において、ナノテーパステージ102において最初に受信された一対の光学信号は、第1及び第2のTEモード光学信号として光学導波管構造体100に閉じ込めるか、又は集中させ得る。
[0021] 第1及び第2のTEモード光学信号は、異なる次数を有し得る。例えば、第1のTEモード光学信号は、回転ステージ106を通って伝搬する際、TEモード光学信号として維持される一次TE_(0)光学信号であり得る。第2のTEモード光学信号は、一次よりも高い次数を有し得る。例えば、第2のTEモード光学信号は二次TEモード光学信号であり得、TE_(1)モード光学信号と呼び得る。二次TE_(1)モード光学信号は、伝搬軸を中心として光エネルギー対称の2つの集中(two concentrations)を有し得る。したがって、回転ステージ106は、一次TM_(0)モード光学信号を二次TE_(1)光学信号に変換し、受信した光学信号が回転ステージ106を通って伝搬する際、一次TE_(0)モード光学信号を一次TE_(0)モード光学信号として維持するように構成し得る。
[0022] 光学導波管構造体100は、一次TE_(0)モード光学信号及び二次TE_(1)モード光学信号を別個の光学導波管又は導波路内に分離する分離ステージ108をさらに含み得る。一次TE_(0)モード光学信号及び二次TE_(1)モード光学信号は、単一の導波管又は波長路で分離ステージ108に一緒に送信し得る。したがって、TE_(0)及びTE_(1)モード光学信号は、別個に処理し得、分離ステージ108は、TE_(0)モード光学信号及びTE_(1)モード光学信号を別個の導波路110a及び110bに分離し閉じ込め得る。別個の導波路へのTE_(0)モード光学信号及びTE_(1)モード光学信号の分離(より一般的には、同じTE又はTMモードで偏光される異なる次数の光学信号の分離)は、モードダイバーシティ(modal diversity)と呼ばれる。分離後、TE_(0)モード光学信号及びTE_(1)モード光学信号は次に、各導波路110a、110bに沿って処理回路112に送信し得、処理回路112において、1つ又は複数の機能をTE_(0)及びTE_(1)モード光学信号のそれぞれに対して実行し得る。さらに、分離後、TE_(1)光学信号は、各導波路110bに沿って処理回路112に送信される際、一次TE_(0)モード光学信号になり得る。(特表2016-511448号公報(【0012】-【0015】)))

「[0049] FIG. 3 shows a top view of an alternative example optical waveguide structure 300 . The alternative example optical waveguide structure 300 may be similar to the example waveguide structure 200 , except that the waveguide structure 300 may include a different separator 308 . The alternative separator 308 may include an asymmetric Y-splitter 343 that is asymmetric relative to the direction of propagation. The asymmetric Y-splitter 343 may replace the symmetric Y-splitter 242 , the coupler 244 , and the S-bend coupling portion 286 shown in FIG. 2 . Instead, the asymmetric Y-splitter 343 may combine the splitter and the coupler into a single optical waveguide structure that performs the splitting and the coupling functions simultaneously or together, rather than in separate stages. Otherwise stated, the asymmetric Y-splitter 343 may include a dual waveguide structure in which a first waveguide receives the TE_(0) and TE_(1) mode optical signals and a second waveguide couples away either the TE_(0) mode optical signal or the TE_(1) mode optical signal from the first waveguide so that the TE_(0) and TE_(1) mode optical signals are in separate optical waveguide paths. By combining the splitting and coupling stages of the separator, the example separator 308 of FIG. 3 may be shorter in length than the example separator 208 of FIG. 3 , and thus may be a more preferable design choice.
[0050] As shown in FIG. 3 , the asymmetric Y-splitter 343 may include a first tapering portion 347 and a second tapering portion 349 . The first tapering portion 347 may have a first end 353 that abuts or connects to the output or second end 236 of the rotator 206 . The first tapering portion 347 may taper down from a width at the first end 353 to a width at a second end 361 . The second tapering portion 349 may inversely taper or increase in width from a first end 359 having a small width or converging at a point to a second end 363 having a width that may be different than the width of the first tapering portion 347 at the second end 361 .
[0051] The widths of the first and second tapering portions 347 , 349 may be configured so that the second tapering portion 349 couples either the TE_(0) mode optical signal or the TE_(1) mode optical signal away from the first tapering portion 347 while the other optical signal remains coupled to the first tapering portion 347 . In this way, the TE_(0) and TE_(1) mode optical signals are in separate optical waveguide paths at the ends 361 , 363 to achieve modal diversity. Where the width of the first tapering portion 347 at the end 361 is larger than the width of the second tapering portion 349 at the end 363 , as shown in FIG. 3 , the TE_(0) mode optical signal may remain coupled to the first waveguide portion 347 and the TE_(1) mode optical signal may be coupled to the second waveguide portion 349 .In an alternative configuration, the width of the first tapering portion 237 at the end 361 may be smaller than the width of the second tapering portion 349 at the end 363 such that the TE_(1) mode optical signal remains coupled to the first tapering portion 347 and the TE_(0) mode optical signal is coupled to the second tapering portion 349 .
[0052] In alternative optical waveguide applications, the asymmetric Y-splitter 343 may be configured for splitting and/or for applications that do not use modal diversity, as opposed to separation where modal diversity is achieved. That is, instead of all or substantially all of the energy of the TE_(0) mode optical signal being coupled to the first tapering portion 347 and all or substantially all of the energy of the TE_(1) mode signal being coupled to the second tapering portion 349 for modal diversity, the asymmetric Y-splitter 343 may be configured so that first energy portions of both the TE_(0) mode optical signal and the TE_(1) mode optical signal are coupled to the first tapering portion 347 and second energy portions of both the TE_(0) mode optical signal and the TE_(1) mode optical signal are coupled to the second tapering portion 349 .
[0053] For some example configurations, the asymmetric Y-splitter 343 may split the first and second energy portions equally so that about 50% of the energies of the TE_(0) mode optical signal and the TE_(1) mode optical signal are coupled to the first tapering portion 347 , and about 50% of the energies of the TE_(0) mode optical signal and the TE_(1) mode optical signal are coupled to the second tapering portion 349 . For these example configurations, the widths of the first and second tapering portions 347 , 349 at their respective ends 361 , 363 may be the same or substantially the same. Alternatively, the first and second energy portions may vary, such as to achieve desired or predetermined ratios of energy portions in the first and second tapering portions. As an example, widths may be configured so that 86% of the energy is in the first tapering portion 347 and 14% of the energy is in the second tapering portion 349 . Various configurations are possible.
[0054] In still other optical waveguide applications, the asymmetric Y-splitter 343 may be used independent of and/or without the rotator 206 . In addition or alternatively, the asymmetric Y-splitter 343 may be used for splitting or combining for optical waveguide applications where only a single order TE mode optical signal is propagated through the optical waveguide. For example, the asymmetric Y-splitter 343 may configured to split a single TE_(0) mode optical signal into different optical waveguide paths or combine a pair of TE_(0) mode optical signal into a single optical waveguide path.
[0055] As shown in FIG. 3 the second tapering portion 349 may include a side 371 that faces and extends substantially parallel with a side 367 of the first tapering portion 347 . The sides 367 and 371 may be spaced apart from each other by an appropriate distance or spacing so that coupling away of the TE_(1) mode signal to the second tapering portion 349 may be achieved. In addition, as shown in FIG. 3 , a coupling portion 389 , which may include S-bends, other curved structure or straight structures, may be coupled to the ends 361 , 363 to widen the separate optical waveguide paths before the TE_(0) and TE_(1) mode optical signals may be sent to the processing circuitry.
[0056] In addition, the asymmetric Y-splitter 343 may be an adiabatic optical waveguide structure, like the components of the optical waveguide structure 200 . That is, the asymmetric Y-splitter 343 may have a sufficient length from the first ends 353 , 359 to the second ends 361 , 363 so that the splitting and coupling of the pair of optical signals is performed with minimal energy loss and high isolation as the optical signals propagate through the asymmetric Y-splitter 343 . In some example embodiments, the asymmetric Y-splitter 343 may have a length of about 50 microns, although other lengths may be used.」
([0049] 図3は、代替例としての光学導波管構造体300の上面図を示す。代替例としての光学導波管構造体300は、例としての導波管構造体200と同様であり得るが、導波管構造体300は異なるセパレータ308を含み得る。代替のセパレータ308は、伝搬方向に相対して非対称である非対称Yスプリッタ343を含み得る。非対称Yスプリッタ343は、図2に示される対称Yスプリッタ242、カプラ244、及びS湾曲結合部286を置換し得る。代わりに、非対称Yスプリッタ343は、スプリッタ及びカプラを結合して単一の光学導波管構造体にし得、単一の光学導波管構造体は、別個のステージではなく、分割機能及び結合機能を同時に又は一緒に実行する。換言すれば、非対称Yスプリッタ343は二重導波管構造体を含み得、この構造体では、第1の導波管はTE_(0)及びTE_(1)モード光学信号を受信し、第2の導波管は、TE_(0)及びTE_(1)モード光学信号が別個の光学導波路にあるように、TE_(0)モード光学信号又はTE_(1)モード光学信号のいずれかを第1の導波管から離れて結合する。セパレータの分割ステージ及び結合ステージを結合することにより、図3の例としてのセパレータ308は、図3の例としてのセパレータ208よりも短い長さであり得、したがって、より好ましい設計選択であり得る。
[0050] 図3に示されるように、非対称Yスプリッタ343は、第1のテーパ部347と、第2のテーパ部349とを含み得る。第1のテーパ部347は、回転子206の出力又は第2の端部236に当接又は接続する第1の端部353を有し得る。第1のテーパ部347は、第1の端部353での幅から第2の端部361での幅まで先細りし得る。第2のテーパ部349は、小さな幅を有するか、又は点に収束する第1の端部359から、第2の端部361での第1のテーパ部347の幅とは異なり得る幅を有する第2の端部363まで逆テーパ形状を有し、すなわち、幅が増大し得る。
[0051] 第1及び第2のテーパ部347、349の幅は、第2のテーパ部349がTE_(0)モード光学信号又はTE_(1)モード光学信号のいずれかを第1のテーパ部347から離れて結合し、一方、他方の光学信号が第1のテーパ部347に結合されたままであるように構成し得る。このようにして、TE_(0)及びTE_(1)モード光学信号は、端部361、363において別個の光学導波路にあり、モードダイバーシティを達成する。図3に示されるように、端部361での第1のテーパ部347の幅が、端部363での第2のテーパ部349の幅よりも大きい場合、TE_(0)モード光学信号は、第1の導波管部347に結合されたままであり得、TE_(1)モード光学信号は、第2の導波管部349に結合し得る。代替の構成では、端部361での第1のテーパ部237の幅は、端部363での第2のテーパ部349の幅よりも小さくし得、それにより、TE_(1)モード光学信号は第1のテーパ部347に結合したままであり、TE_(0)モード光学信号は第2のテーパ部349に結合される。
[0052] 代替の光学導波管用途では、非対称Yスプリッタ343は、モードダイバーシティが達成される分離とは対照的に、モードダイバーシティを使用しない分割及び/又は用途に向けて構成し得る。すなわち、モードダイバーシティのために、TE_(0)モード光学信号のエネルギーの全て又は略全てが第1のテーパ部347に結合され、TE_(1)モード信号のエネルギーの全て又は略全てが第2のテーパ部349に結合される代わりに、非対称Yスプリッタ343は、TE_(0)モード光学信号及びTE_(1)モード光学信号の両方の第1のエネルギー部が、第1のテーパ部347に結合され、TE_(0)モード光学信号及びTE_(1)モード光学信号の両方の第2のエネルギー部が、第2のテーパ部349に結合されるように構成し得る。
[0053] 幾つかの構成例では、非対称Yスプリッタ343は、TE_(0)モード光学信号及びTE_(1)モード光学信号のエネルギーの約50%が第1のテーパ部347に結合され、TE_(0)モード光学信号及びTE_(1)モード光学信号のエネルギーの約50%が、第2のテーパ部349に結合されるように、第1及び第2のエネルギー部を等しく分割し得る。これらの構成例では、それぞれの端部361、363での第1及び第2のテーパ部347、349の幅は、同じ又は略同じであり得る。代替的には、第1及び第2のエネルギー部は、第1及び第2のテーパ部でのエネルギー部の所望又は所定の比率の達成等のために、変更し得る。一例として、幅は、エネルギーの86%が第1のテーパ部347にあり、エネルギーの14%が第2のテーパ部349にあるように構成し得る。様々な構成が可能である。
[0054] さらに他の光学導波管用途では、非対称Yスプリッタ343は、回転子206から独立して、且つ/又は回転子206なしで使用することができる。追加又は代替として、非対称Yスプリッタ343は、一次TEモード光学信号のみが光学導波管を通って伝搬する光学導波管用途で分割又は結合するために使用し得る。例えば、非対称Yスプリッタ343は、単一のTE_(0)モード光学信号を異なる光学導波路に分割するか、又は一対のTE_(0)モード光学信号を結合して単一の光学導波路にするように構成し得る。
[0055] 図3に示されるように、第2のテーパ部349は、第1のテーパ部347の側部367に面し、側部367に略平行して延びる側部371を含み得る。側部367及び371は、TE_(1)モード信号の第2のテーパ部349への離れた結合を達成し得るように、適切な距離又は間隔だけ互いから離間し得る。さらに、図3に示されるように、S湾曲、他の湾曲構造体、又は直線構造体を含み得る結合部389を端部361、363に結合して、TE_(0)及びTE_(1)モード光学信号を処理回路に送信し得る前に、別個の光学導波路を広げ得る。
[0056] さらに、非対称Yスプリッタ343は、光学導波管構造体200の構成要素のように、断熱光学導波管構造体であり得る。すなわち、非対称Yスプリッタ343は、光学信号が非対称Yスプリッタ343を通って伝搬する際、一対の光学信号の分割及び結合が最小のエネルギー損失及び高分離で実行されるように、第1の端部353、359から第2の端部361、363までに十分な長さを有し得る。幾つかの例示的な実施形態では、非対称Yスプリッタ343は、約50ミクロンの長さを有し得るが、他の長さを使用することも可能である。(特表2016-511448号公報(【0042】-【0049】)))

「[0066] As described above, the optical waveguide structures 200 , 300 , 400 , including each of the nanotaper 202 , the rotator 206 , and the separators 208 , 308 , 408 , may be adiabatic optical waveguide structures, where loss and interference between optical signals may be minimized. In addition, the waveguide structures 200 , 300 , 400 may be considered broadband structures that may operate or perform adiabatically, with optimal performance, or without performance degradation over a broad range of wavelengths. Here, broadband may refer to an operation band of about 100 nanometers.
[0067] FIG. 5 shows a cross-sectional side view of the nanotaper 202 taken along line 5 - 5 in FIG. 1 . The nanotaper 202 may include a core 502 disposed on a planar surface 504 of the substrate or buffer 220 . The core 502 may be encased or surrounded by a cladding 506 . As shown in FIG. 5 , the core 502 may have an associated thickness, which may be in a range of 110 to 130 nanometers, although other thicknesses may be used. In addition, the core 502 , the cladding 506 , and the substrate 220 may be made of any materials, including dielectric materials, that may be used for dielectric or optical waveguides or optical integrated circuits using dielectric or optical waveguides. In some example configurations, the substrate 220 may be made of silicon dioxide (SiO_(2)) or other material having a relatively low index of refraction. Similar to the substrate 220 , the cladding 506 may also be made of a material having a relatively low index of refraction. For example, the cladding 506 may be made of glass, which has an index of refraction of about 1.5. In contrast, the core 502 may be made of a material that has a relatively high index of refraction, such as silicon (Si), which has an index of refraction of about 3.5. Various materials other than silicon may be used such as gallium nitride, silicon-based materials, such as silicon nitride, silicon oxy-nitride, single crystal silicon, polycrystalline silicon materials, or other III/V materials such as gallium arsenide, indium phosphide, or other related compounds, as non-limiting examples. Various other materials may be used. The contrast or difference in indices of refraction between the core 502 and the cladding 506 may render the optical waveguide structure as a high contrast optical waveguide, meaning that a relatively large difference exists between the indices of refraction of the core 502 material and cladding 506 material.
[0068] Although the cross-sectional view shown in FIG. 5 is of the nanotaper 202 , the cross-sectional view may be representative of other parts or portions of the example optical waveguide structures 200 , 300 , or 400 having a single layer core, such as the separators 208 or 308 . The thickness of the core 502 and/or the materials used for the core 502 and/or the cladding 506 for other single-layer cross sections may be the same throughout the waveguide structures 200 , 300 . Differences for other cross sections may include the widths of the cores and/or that other cross-sections may include two separate cores for the two separate waveguide paths, as illustrated by the top views of FIGS. 2 and 3 .
[0069] FIG. 6 shows a cross-sectional side view of the rotator 206 taken along line 6 - 6 . The rotator 206 may include a core 602 that is disposed on a planar surface of the substrate 220 . The core 602 may include a first layer 638 , which may be the layer for the base portion 238 shown in FIG. 2 . The first layer 638 may be the same layer and/or a layer that is coplanar with the core 502 for the other parts of the waveguide structures 200 , 300 made of a single layer. For example, the first layer 638 may be fabricated to be made of the same material and/or be of the same or substantially the same thickness as the core 502 for the single-layer core components. The core 602 may further include a second layer 640 , which may be the layer for the rib portion 240 shown in FIG. 2 . As shown in FIG. 6 , the second layer 640 may be disposed on and/or extend from the first layer 638 . The second layer 640 may be made of the same material or a different material as the material making up the first layer 638 . In one example configuration, the first layer 638 may be made of single crystal silicon and the second layer making up the rib portion 640 may be made of polycrystalline silicon (poly-silicon), although other materials may be used.」
([0066] 上述したように、ナノテーパ202と、回転子206と、セパレータ208、308、408とのそれぞれを含む光学導波管構造体200、300、400は、断熱光学導波管構造体であり得、光学信号間の損失及び干渉を最小化し得る。さらに、導波管構造体200、300、400は、広範囲の波長にわたり、最適な性能で、又は性能低下なく、断熱的に動作又は実行し得る広帯域構造体と見なし得る。ここで、広帯域は、約100ナノメートルの動作帯域を指し得る。
[0067] 図5は、図2の線5-5に沿ったナノテーパ202の断面側面図を示す。ナノテーパ202は、基板又はバッファ220の平面504上に配置されるコア502を含み得る。コア502は、被覆材506で封入又は囲み得る。図5に示されるように、コア502は関連付けられた厚さを有し得、厚さは110?130ナノメートルの範囲であり得るが、他の厚さを使用することも可能である。さらに、コア502、被覆材506、及び基板220は、誘電材料を含め、誘電若しくは光学導波管又は誘電若しくは光学導波管を使用する光学集積回路に使用し得る任意の材料で製造し得る。幾つかの構成例では、基板220は、二酸化ケイ素(SiO_(2))又は比較的低い屈折率を有する他の材料で製造し得る。基板220と同様に、被覆材506も、比較的低い屈折率を有する材料で製造し得る。例えば、被覆材506はガラスで製造し得、ガラスは屈折率約1.5を有する。これとは対照的に、コア502はシリコン(Si)等の比較的高い屈折率を有する材料で製造し得、シリコンは屈折率約3.5を有する。非限定的な例として、窒化ガリウム、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、単結晶シリコン、多結晶シリコン材料等のシリコンベースの材料、ガリウムヒ素、リン化インジウム、若しくは他の関連する化合物等の他のIII/V族材料等のシリコン以外の様々な材料を使用することも可能である。様々な他の材料を使用することも可能である。コア502と被覆材506との屈折率のコントラスト又は差は、光学導波管構造体を高コントラスト光学導波管とし得、これは、比較的大きな差が、コア502の材料の屈折率と被覆材506の材料の屈折率との間に存在することを意味する。
[0068] 図5に示される断面図は、ナノテーパ202のものであるが、セパレータ208又は308等の単層コアを有する例としての光学導波管構造体200、300又は400の他の部品又は部分を表すこともできる。他の単層コアセクションでのコア502の厚さ及び/又はコア502及び/又は被覆材506に使用される材料は、導波管構造体200、300全体を通して同じであり得る。他の断面での違いとしては、コアの幅及び/又は図2及び図3の上面図に示されるように、他の断面が2つの別個の導波路に2つの別個のコアを含み得ることを挙げることができる。
[0069] 図6は、線6-6に沿った回転子206の断面側面図を示す。回転子206は、基板220の平面上に配置されるコア602を含み得る。コア602は、図2に示されるように、ベース部238の層であり得る第1の層638を含み得る。第1の層638は、単層で作られる導波管構造体200、300の他の部品のコア502と同じ層であり得、且つ/又は同一平面にある。例えば、第1の層638は、単層コア構成要素の場合のコア502と同じ材料で作られ、且つ/又は同じ又は略同じ厚さで作られるように製造し得る。コア602は、図2に示されるリブ部240の層であり得る第2の層640をさらに含み得る。図6に示されるように、第2の層640は、第1の層638上に配置し得、且つ/又は第1の層638から延び得る。第2の層640は、第1の層638を構成する材料と同じ材料又は異なる材料で製造し得る。一構成例では、第1の層638は単結晶シリコンで製造し得、リブ部を構成する第2の層640は、多結晶シリコン(ポリシリコン)で製造し得るが、他の材料を使用することも可能である。(特表2016-511448号公報(【0059】-【0062】)))

FIG.3、FIG.6は以下のとおりである。





イ 上記アから、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「装置であって、
一対の光学信号を導波モードで送信するように構成される光学導波管構造体を備え、
前記光学導波管構造体は、断熱光学導波管構造体であり、
前記光学導波管構造体は、回転子を含み、
前記回転子は、
横方向電気(TE)モードで偏光された前記一対の光学信号のうちの基本モード光学信号であり得るTE_(0)モード光学信号を受信し、前記TE_(0)モード光学信号が前記回転子を通って伝搬する際に、前記TE_(0)モード光学信号に維持すること、
横方向磁気(TM)モードで偏光された前記一対の光学信号のうちの基本モード光学信号であり得るTM_(0)モード光学信号を受信し、前記TM_(0)モード光学信号が前記回転子を通って伝搬する際に、TM_(0)モード光学信号を異なる次数を有し得るTE_(1)モード光学信号に変換すること、を実行するように構成され、
前記光学導波管構造体は、セパレータをさらに含み、
セパレータは、非対称Yスプリッタ(343)を含み、非対称Yスプリッタ(343)は、第1の導波管部(347)と、第2の導波管部(349)とを含み、第1の導波管部(347)は、回転子の第2の端部に接続する第1の端部を有し、TE_(0)モード光学信号のエネルギーの全てが第1の導波管部(347)に結合され、第1の導波管部(347)に結合されたままであり得、第2の導波管部(349)がTE_(1)モード光学信号を第1の導波管部(347)から離れて結合し、
前記非対称Yスプリッタ(343)は、断熱光学導波管構造体であり、
前記回転子は、基板上に配置される第1の層と、前記第1の層上に配置される第2の層とを含む二重層コアを含み、前記二重層コアは、窒化ケイ素を使用することも可能であり、
前記第1の層は、前記二重層コアの第1の端部から第2の端部にわたって逆テーパ形状を有するベース部を含み、前記第1の端部における前記ベース部の幅は、前記第2の端部における前記ベース部の幅未満であり、前記第2の層は、リブ部を含み、前記リブ部は、前記第1の端部及び前記第2の端部における前記ベース部の幅未満の幅を有する、装置。」

(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「回転子」は、本件補正発明の「第1の光導波路」、「光学モード変換器」に、
引用発明の「『二重層コアを含み、』『横方向電気(TE)モードで偏光された前記一対の光学信号のうちの基本モード光学信号であり得るTE_(0)モード光学信号を受信し、前記TE_(0)モード光学信号が前記回転子を通って伝搬する際に、前記TE_(0)モード光学信号に維持する』『回転子』」は、本件補正発明の「『第1の光導波路であって、前記第1の光導波路のコアが、』『ゼロ次の横方向電場モード(TE0)を変化させないようにするように、非対称に形成された第1の光導波路を含む光学モード変換器』」に、
引用発明の「『回転子の第2の端部に接続する第1の端部を有』する『第1の導波管部(347)』」は、本件補正発明の「第1の光導波路に結合された第2の光導波路」に、
引用発明の「『非対称Yスプリッタ(343)を含』む『セパレータ』」」は、本件補正発明の「『第2の光導波路及び』『第3の光導波路と、を含む出力結合器』」、「前記第2の光導波路と前記第3の光導波路との間で出力を拡張させる、出力結合器」に、
引用発明の「TE_(0)モード光学信号のエネルギーの全てが第1の導波管部(347)に結合され、第1の導波管部(347)に結合されたままであり得」は、本件補正発明の「ゼロ次の横方向電場モード(TE0)を、前記第3の光導波路に結合させることなく前記第2の光導波路内を伝搬させる状態を維持する」に、
引用発明の「『回転子を含み』、『セパレータをさらに含』む『装置』」は、本件補正発明の「偏光分離・回転デバイス」に、
それぞれ相当する。

イ 引用発明の「『二重層コアを含み、』『横方向磁気(TM)モードで偏光された前記一対の光学信号のうちの基本モード光学信号であり得るTM_(0)モード光学信号を受信し、前記TM_(0)モードの光学信号が前記回転子を通って伝搬する際に、TM_(0)モードの光学信号を異なる次数を有し得るTE_(1)モードの光学信号に変換すること、を実行する』『回転子』」と、本願補正発明の「『第1の光導波路であって、前記第1の光導波路のコアが、前記第1の光導波路内に結合された偏光した光がゼロ次の横方向磁場モード(TM0)を1次の横方向電場モード(TE1)に変換させる』『非対称に形成された第1の光導波路を含む光学モード変換器』」とは、「『第1の光導波路であって、前記第1の光導波路のコアが、前記第1の光導波路内に結合された偏光した光がゼロ次の横方向磁場モード(TM0)を異なる次数の横方向電場モード(TE1)に変換させる』『非対称に形成された第1の光導波路を含む光学モード変換器』」の点で一致する。

ウ 引用発明は「『非対称Yスプリッタ(343)は、第1の導波管部(347)と、第2の導波管部(349)とを含み、』『非対称Yスプリッタ(343)は、断熱光学導波管構造体であり』」と特定されているので、第2の導波管部(349)も第1の導波管部(347)に断熱結合しているといえる。
したがって、引用発明の「『非対称Yスプリッタ(343)は、第1の導波管部(347)と、第2の導波管部(349)とを含み、』『非対称Yスプリッタ(343)は、断熱光学導波管構造体であり、』『非対称Yスプリッタ(343)』に『含』まれる『第2の導波管部(349)』」は、本件補正発明の「第2の光導波路に断熱結合された第3の光導波路」に、相当する。
また、引用発明の「『非対称Yスプリッタは、断熱光学導波管構造体であり、』『非対称Yスプリッタ(343)は、第1の導波管部(347)と、第2の導波管部(349)とを含み、第1の導波管部(347)は、回転子の第2の端部に接続する第1の端部を有し、』『第2の導波管部(349)がTE_(1)モード光学信号を第1の導波管部(347)から離れて結合し』」と、本件補正発明の「前記断熱結合が、前記第1の光導波路から前記第2の光導波路内に結合された前記偏光した光が、1次の横方向電場モード(TE1)をゼロ次の横方向電場モード(TE0)として前記第3の光導波路に結合し」とは、「『前記断熱結合が、前記第1の光導波路から前記第2の光導波路内に結合された前記偏光した光が、』『前記第3の光導波路に結合し』」の点で一致する。

エ 窒化ケイ素の屈折率は、通常2.0程度であることは周知の事実(必要ならば、特開2011-232649号公報(【0019】)、特開2011-242651号公報(【0017】)、国際公開第2014/009029号(【26】)を参照されたい。)である。
そうすると、引用発明の「前記回転子は、基板上に配置される第1の層と、前記第1の層上に配置される第2の層とを含む二重層コアを含み、前記二重層コアは、窒化ケイ素を使用する」は、本件補正発明の「前記第1の光導波路の前記コアが、1.8から2.5の範囲の屈折率を有し」に相当する。

オ 引用発明の「『前記回転子』の『前記第1の層は、前記二重層コアの第1の端部から第2の端部にわたって逆テーパ形状を有するベース部を含み、前記第1の端部における前記ベース部の幅は、前記第2の端部における前記ベース部の幅未満であり、前記第2の層は、リブ部を含み、前記リブ部は、前記第1の端部及び前記第2の端部における前記ベース部の幅未満の幅を有する』」と、本件補正発明の「前記第1の光導波路の前記コアが、第1の区画及び、前記第1の区画よりも厚さの大きい第2の区画を含み、前記第2の区画が、前記コアの長手方向に対して前記コアの両側に配置された2つのサブ区画を含み」とは、「『前記第1の光導波路の前記コアが、第1の区画及び、』『第2の区画を含み、前記第2の区画が、前記コアの長手方向に対して前記コアの両側に配置された2つのサブ区画を含み』」の点で一致する。

カ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

【一致点】
「第1の光導波路であって、前記第1の光導波路のコアが、前記第1の光導波路内に結合された偏光した光がゼロ次の横方向磁場モード(TM0)を異なる次数の横方向電場モード(TE1)に変換させる一方で、ゼロ次の横方向電場モード(TE0)を変化させないようにするように、非対称に形成された第1の光導波路を含む光学モード変換器と、
前記第1の光導波路に結合された第2の光導波路及び前記第2の光導波路に断熱結合された第3の光導波路と、を含む出力結合器であって、前記断熱結合が、前記第1の光導波路から前記第2の光導波路内に結合された前記偏光した光が、前記第3の光導波路に結合し、ゼロ次の横方向電場モード(TE0)を、前記第3の光導波路に結合させることなく前記第2の光導波路内を伝搬させる状態を維持することによって、前記第2の光導波路と前記第3の光導波路との間で出力を拡張させる、出力結合器と、
を含み、
前記第1の光導波路の前記コアが、1.8から2.5の範囲の屈折率を有し、
前記第1の光導波路の前記コアが、第1の区画及び、第2の区画を含み、前記第2の区画が、前記コアの長手方向に対して前記コアの両側に配置された2つのサブ区画を含み、偏光分離・回転デバイス。 」

【相違点1】
横方向電場モード(TE1)が、本件補正発明では1次であるのに対し、引用発明ではそのようなものか明らかでない点。

【相違点2】
第3の光導波路に結合する横方向電場モードについて、本件補正発明では1次の横方向電場モード(TE1)をゼロ次の横方向電場モード(TE0)として結合するのに対し、引用発明ではそのようなものか明らかでない点。

【相違点3】
第1の光導波路のコアについて、本件補正発明では、前記第1の区画よりも厚さの大きい第2の区画を含み、前記第2の区画の、前記長手方向に対して垂直な方向における幅が、前記第1の光導波路と前記第2の光導波路との接続部に向かうにつれて減少するのに対し、引用発明ではそのようなものか明らかでない点。

(4)判断
以下、上記相違点について検討する。
ア 相違点1について
(ア)引用発明では、TE_(0)モード光学信号は、基本モードの横方向電気モードの光学信号すなわちゼロ次の横方向電気モードの光学信号と特定され、TEの下付き文字が「0」であることから、TEの下付き文字が「1」の場合のTE_(1)モード光学信号は、1次の横方向電気モードの光学信号であると考えるのが自然である。
そうすると、相違点1は実質的な相違点ではない。

(イ)仮に、相違点1が実質的な相違点であった場合について検討する。
引用文献1には「第1及び第2のTEモード光学信号は、異なる次数を有し得る。例えば、第1のTEモード光学信号は、回転ステージ106を通って伝搬する際、TEモード光学信号として維持される一次TE_(0)光学信号であり得る。第2のTEモード光学信号は、一次よりも高い次数を有し得る。例えば、第2のTEモード光学信号は二次TEモード光学信号であり得、TE_(1)モード光学信号と呼び得る。」が記載されていると認められる([0021]の訳参照)。
そうすると、第1のTEモード光学信号が、一次の場合は、第2のTEモード光学信号は、一次より高い次数として二次と例示されていることから、第1のTEモード光学信号が、基本モードの横方向電気モードの光学信号の場合、第2のTEモード光学信号は、ゼロ次より高い次数として1次の横方向電気モードの光学信号となることは、当業者が容易に想到し得たことである。
したがって、引用発明の異なる次数を有し得るTE_(1)モード光学信号は、1次の横方向電場モードのTE_(1)モード光学信号とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

イ 相違点2について
(ア)引用文献1には「分離後、TE_(1)光学信号は、各導波路110bに沿って処理回路112に送信される際、一次TE_(0)モード光学信号になり得る。」が記載されていると認められる([0022]の訳参照)。
そうすると、引用発明は「第2の導波管部(349)がTE_(1)モード光学信号を第1の導波管部(347)から離れて結合」と特定されているので、TE_(1)モード光学信号が、1次の横方向電気モードの光学信号である場合には、分離後に1次の横方向電気モードのTE_(1)モード光学信号を基本モードの横方向電気モードのTE_(0)モード光学信号として送信すると考えるのが自然である。
したがって、相違点2は実質的な相違点ではない。

(イ)仮に、相違点2が実質的な相違点であった場合について検討する。
上記(ア)に加え、引用文献1には「非対称Yスプリッタ343は、一次TEモード光学信号のみが光学導波管を通って伝搬する光学導波管用途で分割又は結合するために使用し得る。例えば、非対称Yスプリッタ343は、単一のTE_(0)モード光学信号を異なる光学導波路に分割する」が記載されていると認められ([0054]の訳参照)、非対称Yスプリッタ(343)は、TE_(0)モード光学信号のみを異なる光学導波路に分割して伝搬する態様も記載されていると解される。
そして、引用発明の非対称Yスプリッタ(343)は、基本モードの横方向電気モードのTE_(0)モード光学信号のエネルギーの全てが第1の導波管部(347)に結合され、第1の導波管部(347)に結合されたままである。
そうすると、引用発明の非対称Yスプリッタ(343)の第2の導波管部(349)に光学信号について、分離後に1次の横方向電気モードのTE_(1)モード光学信号を基本モードの横方向電気モードのTE_(0)モード光学信号として送信するようになすことは、当業者が容易に想到し得たことである。

ウ 相違点3について
(ア)引用発明の回転子のコアは、「基板上に配置される第1の層と、前記第1の層上に配置される第2の層とを含む二重層コアを含」んだものであり、第1の層、第2の層の厚さは、当業者が適宜設計する事項にすぎない。
また、上記Fig.3の記載から、回転子(206)の第2の端部(236)に接続する第1の導波管部(347)の第1の端部(353)の直後では、コアの長手方向に対して垂直な方向における幅が減少していることが見て取れることから、第1の導波管部(347)の第1の端部(353)の直後の上記第2の層に対応する部分は、コアの長手方向に対して垂直な方向における幅が減少しているといえる。また、一般に、光導波路の技術分野において光導波路の断面形状の変更に際して、不連続に変化させること、あるいは連続的に変化させることは、いずれもよく知られた技術手段である。そうすると、回転子(206)の第2の層の一部に、コアの長手方向に対して垂直な方向における幅が減少する部分を設けることは、当業者が適宜なし得た事項にすぎない。

(イ)ところで、引用発明の「回転子は、」「TE_(0)モードの光学信号が前記回転子を通って伝搬する際に、前記TE_(0)モードの光学信号に維持」し、「前記TM_(0)モードの光学信号が前記回転子を通って伝搬する際に、」「TE_(1)モードの光学信号に変換する」と特定されているものである。

(ウ)そうすると、引用発明の回転子のコアを上記の光学信号の維持や伝播するものとして、上記二重層コアの一部を所定の厚さとし、第2の層の一部に、コアの長手方向に対して垂直な方向における幅が減少する部分を設けるような形状とすることは、当業者が適宜設計する事項にすぎない。

エ そして、相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献1に記載された技術的事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

オ したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献1に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 審判請求人の主張について
(1)本件審判請求人は、令和元年5月10日付けで提出された審判請求書において、
「引用文献1及び5は、少なくとも『第1の光導波路のコアが、第1の区画及び、第1の区画よりも厚さの大きい第2の区画を含み、
第2の区画が、コアの長手方向に対してコアの両側に配置された2つのサブ区画を含み、第2の区画の、長手方向に対して垂直な方向における幅が、第1の光導波路と第2の光導波路との接続部に向かうにつれて減少する』という明確な特徴を開示していません。
引用文献1の段落[0033]は、リブ部240が第1の端部234から第2の端部236まで回転子206の全長に延びうること及びナノテーパ202上に延びうることを開示しています。引用文献1のリブ部240及びベース部238の幅はその長さ方向に沿って変化していません。
引用文献5の図10は、中間コア25の幅がその長さ方向に沿って減少することを開示しています。しかし、引用文献5の図9は、中間コア25の厚さが内側コア24の幅よりも大きいことを開示しています。したがって、出願人は、引用文献5に開示された構成は本願発明の構成とは異なるものと思料いたします。」
旨主張している。

(2)上記主張について以下検討する。
上記第2の[理由]2で指摘したように、上記特徴は新規事項の追加に関するものである。
仮に、新規事項の追加でなくても、上記第2の[理由]3で検討したように、当業者が適宜なし得た事項にすぎない。

以上から、審判請求人の上記主張は、採用することができない。

(3)なお、審判請求人は、令和元年9月24日付けで提出された上申書において、請求項1を、
「【請求項1】
第1の光導波路であって、前記第1の光導波路のコアが、前記第1の光導波路内に結合された偏光した光がゼロ次の横方向磁場モード(TM0)を1次の横方向電場モード(TE1)に変換させる一方で、ゼロ次の横方向電場モード(TE0)を変化させないようにするように、非対称に形成された第1の光導波路を含む光学モード変換器と、
前記第1の光導波路に結合された第2の光導波路及び前記第2の光導波路に断熱結合された第3の光導波路と、を含む出力結合器であって、前記断熱結合が、前記第1の光導波路から前記第2の光導波路内に結合された前記偏光した光が、1次の横方向電場モード(TE1)をゼロ次の横方向電場モード(TE0)として前記第3の光導波路に結合し、ゼロ次の横方向電場モード(TE0)を、前記第3の光導波路に結合させることなく前記第2の光導波路内を伝搬させる状態を維持することによって、前記第2の光導波路と前記第3の光導波路との間で出力を拡張させる、出力結合器と、
を含み、
前記第1の光導波路の前記コアが、1.8から2.5の範囲の屈折率を有し、
前記第1の光導波路の前記コアが、第1の区画及び、前記第1の区画よりも厚さの小さい第2の区画を含み、前記第2の区画が、前記コアの長手方向に対して前記コアの両側に配置された2つのサブ区画を含み、
前記第2の区画が、前記第1の光導波路と前記第2の光導波路との接続部に向かうにつれて、前記長手方向に対して垂直な方向における幅が増大する部分、一定である部分及び減少する部分をこの順に含む、偏光分離・回転デバイス。」
に補正することを含む補正案を提示した。

しかしながら、上記FIG.3の記載から、回転子(206)は、コアの長手方向に対して垂直な方向における幅が増大する部分についても見て取れる。
上記第2の[理由]3(4)ウで指摘した点に加え、上記FIG.3の記載も考慮し、回転子のコアを上記の光学信号の維持や伝播するものとして、上記二重層コアの一部を所定の厚さとし、長手方向に対して垂直な方向における幅が増大する部分、一定である部分及び減少する部分を設けるような適宜な形状とすることは、当業者が適宜なし得た事項にすぎない。

5 本件補正についてのむすび
本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
仮に、本件補正が、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件補正が、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものであるとしても、「本件補正発明」が、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであることは以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に適合しないものである。
よって、本件補正は、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
令和元年5月10日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成30年8月13日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の下記の請求項に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、この出願の下記の請求項に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

●理由1(特許法第29条第1項第3号)及び理由2(特許法第29条第2項)について
・請求項 1-2,4-12
・引用文献等 1,4-6

●理由2(特許法第29条第2項)について
・請求項 3,13
・引用文献等 1-2,4-6

・請求項 14
・引用文献等 1-6

<引用文献等一覧>
1.米国特許出願公開第2014/0270620号明細書
2.特開2013-125276号公報
3.米国特許出願公開第2014/0270628号明細書
4.特開2011-232649号公報(周知技術を示す文献;新たに引用された文献)
5.特開2011-242651号公報(周知技術を示す文献;新たに引用された文献)
6.国際公開第2014/009029号(周知技術を示す文献;新たに引用された文献)

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、前記第2の[理由]3(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]3で検討した本件補正発明の「第1の光導波路のコア」について、「前記第1の光導波路の前記コアが、第1の区画及び、前記第1の区画よりも厚さの大きい第2の区画を含み、前記第2の区画が、前記コアの長手方向に対して前記コアの両側に配置された2つのサブ区画を含み、前記第2の区画の、前記長手方向に対して垂直な方向における幅が、前記第1の光導波路と前記第2の光導波路との接続部に向かうにつれて減少する」との限定事項を省いたものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]3(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び引用文献1に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用文献1に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、上記限定事項が省かれた本願発明と引用発明の相違点は、上記相違点1、2であり、上記相違点1、2が実質的な相違点ではない場合には、本願発明は、引用発明に該当するものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、又は、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-02-25 
結審通知日 2020-03-02 
審決日 2020-03-17 
出願番号 特願2017-522971(P2017-522971)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
P 1 8・ 575- Z (G02B)
P 1 8・ 55- Z (G02B)
P 1 8・ 113- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岸 智史  
特許庁審判長 瀬川 勝久
特許庁審判官 星野 浩一
野村 伸雄
発明の名称 偏光分離・回転デバイス  
代理人 実広 信哉  
代理人 木内 敬二  

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