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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C08J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08J
管理番号 1364663
審判番号 不服2019-9648  
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-07-19 
確定日 2020-07-27 
事件の表示 特願2013-216579「プリプレグ」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 4月23日出願公開、特開2015- 78310〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成25年10月17日を出願日とする出願であって,その後の手続経緯は以下のとおりである。
平成29年 6月23日付:拒絶理由通知書
平成29年 8月24日 :意見書の提出
平成30年 1月30日付:拒絶理由通知書
平成30年 6月 6日 :意見書及び手続補正書の提出
平成30年10月 3日付:拒絶理由通知書
平成30年12月10日 :意見書の提出
平成31年 4月18日付:拒絶査定
令和 1年 7月19日 :審判請求書及び手続補正書(以下,当該手続補正書でなされた補正を「本件補正」という。)の提出

第2 令和 1年 7月19日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和 1年 7月19日にされた手続補正を却下する。

[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正は,特許請求の範囲の請求項1を次のとおり補正する事項を含む(下線部は,補正箇所である。)。
「単繊維の繊度が1.2?2.4dtexである炭素繊維からなるトウ状の炭素繊維糸条が、複数本で互いに並列に配列されてなるシートと、前記シートの片面或いは両面に前記炭素繊維糸条と異なる角度をもって配置した補助糸からなる強化繊維基材に熱硬化性マトリックス樹脂組成物を含浸してなり、
前記強化繊維基材が、強化繊維に屈曲の無い一方向性織物であるプリプレグ。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「単繊維の繊度が1.2?2.4dtexである炭素繊維からなるトウ状の炭素繊維糸条が、複数本で互いに並列に配列されてなるシートと、前記シートの片面或いは両面に前記炭素繊維糸条と異なる角度をもって配置した補助糸からなる強化繊維基材に熱硬化性マトリックス樹脂組成物を含浸してなるプリプレグ。」

2 補正の適否
本件補正は,本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「強化繊維基材」について,「前記強化繊維基材が、強化繊維に屈曲の無い一方向性織物である」とする限定を付加するものであって,補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について,以下,検討する。

(1)本件補正発明について
本件補正発明は,上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である,国際公開第2012/050171号(2012年 4月19日国際公開。以下「引用文献1」という。)には,図面とともに,次のことが記載されている(下線については当審において付与したものである。)。
ア「[0001] 本発明は、炭素繊維前駆体繊維束、耐炎化処理方法、炭素繊維束及び炭素繊維束の製造方法に関する。また本発明は、炭素繊維プリプレグ、特に、大型成形物に適した取扱い性と強度発現性を有する炭素繊維プリプレグに関する。更に本発明は、繊維強化織物及び繊維強化プラスチック成形方法に関する。」
イ「[0008] また繊維強化複合材料の成形法の1つとして、強化用繊維に主として熱硬化性樹脂によるマトリックス樹脂を含浸してなるプリプレグを用いる手法があり、このような複合材料はスポーツレジャー関連用途から航空機用途に至るまでの広範囲の用途に供されている。プリプレグからなる中間基材を用いた繊維強化複合材料の成形は、プリプレグを積層した後、これを加熱あるいは加熱、加圧して、マトリックス樹脂である熱硬化性樹脂を硬化させることによって行われている。
[0009] プリプレグを用いる手法は、繊維の強度利用率の点で、VARTM法などと比較して優れている。大型成形物を成形する際は、一般にマトリックス樹脂が高フローであることが望まれる。マトリックス樹脂が低フローであるとボイド発生の原因となる。しかし、マトリックス樹脂が高フローであると、繊維の微小蛇行(micro ondulation)が生じ、大型成形物での機械物性が低下する。大型成形物での機械物性は厚み依存性が大きく、成形物の厚みが増すと圧縮強度が低下する。特許文献10及び11は、マトリックス樹脂を低フローにすることで諸物性の低下を防ぐことを提案している。
[0010] 繊維強化織物を繊維基材として使用する場合、オートクレーブ成形では、繊維強化織物にフィルムに樹脂が塗布された樹脂フィルムを貼り付けてプリプレグにしたものを必要枚数積層して加熱、加圧する。その場合、樹脂は織物全体に十分含浸され、良好な成形体が得られる。また、繊維強化織物の構造や繊維断面形状にかかわらず樹脂含浸性は非常に良好である。しかし、RTM成形や真空バグ成形では、樹脂を繊維基材に注入する方法であることから、樹脂としては流動性の良いいわゆる、樹脂粘度の低い樹脂が一般的に用いられる。そのためにこれまでオートクレーブ成形と比較すると、目付の大きい繊維基材の成形のコストは優位とされてきたが、樹脂の含浸性については、樹脂の粘度、繊維織物の目付、繊維間空隙、単繊維径などに大きな影響を受けるという問題があった。」
ウ「[0022] 本発明は、マトリックス樹脂の高フローを維持しながら、成形後の成形物の厚みが増しても圧縮強度の低下が少ない炭素繊維プリプレグを提供することを目的とする。」
エ「[0145] 〔一方向性繊維強化織物〕
本発明炭素繊維束は以下の一方向性繊維強化織物に好適に使用可能である。本発明の一方向性繊維強化織物は、炭素繊維束が縦方向に配列された目付が、300?1,000g/m^(2)であることが好ましい。一般に繊維織物の目付が200g/m^(2)程度に小さければ、繊維間空隙が大きくなるため、樹脂の含浸性は良くなる。一方、繊維織物の目付が大きいと繊維間空隙が小さくなり、樹脂の流動性が悪くなり含浸不良や含浸に多くの時間が掛かることになる。加えて成形加工を施す際に繊維織物の目付が小さい織物を多数積層するよりも、繊維織物の目付が大きい織物を少数積層する方がコスト低減を図ることができるため、積層を必要とする成形加工では、できる限り目付が大きい繊維織物を用いた方が有利である。本発明の炭素繊維束を使用することで繊維織物の目付が300?1,000g/m^(2)の範囲にあっても、樹脂の含浸性が良好であり、かつ長い含浸時間を要しない繊維織物が得られる。
[0146] 一般的に繊維織物の目付が大きい織物を得る方法は、大きく2つに分類される。そのひとつは汎用的なフィラメント数が12,000本の炭素繊維束を用い、織物の織密度を増やして高目付けの織物を得る方法である。その2つ目はフィラメント数48,000本以上の炭素繊維束を用いて織物を得る方法である。しかしながら高目付の織物を得るにはフィラメント数が多い、いわゆるラージトウといわれる炭素繊維束を用いて織物を製織する方が工程通過性から見て遥かに容易である。また、これらいずれの繊維強化織物を繊維基材として用いた場合でも、フィラメント数の少ない炭素繊維束を用いた場合では、炭素繊維束の使用本数が多く必要である。また、フィラメント数の多い炭素繊維束を用いた場合では、炭素繊維束の使用本数が少ない代わりにフィラメント数が多い。そのためこれらのいずれの場合も、結局は繊維間空隙が小さくなり、成形加工時の樹脂の流動が悪くなり、含浸不良や含浸に多くの時間を要することとなる。
[0147] これらを解決する為に繊維強化織物にラージトウの炭素繊維束で且つ単繊維径が太い炭素繊維束を用いることにより樹脂の流動性が良くなり、含浸時間も大幅に短縮することとなる。この理由は単繊維径を太くすることで繊維間の空隙が大きくなり樹脂の流動が良くなったためである。さらに本発明では先に規定した単繊維の繊維断面の真円度が0.7以上0.9以下である炭素繊維束が好ましい。真円度が0.9を超えると集束性が高くなりすぎる傾向にある。集束性が高くなりすぎると、単繊維が均一にばらけ難くなる。即ち単繊維間の空隙が少なくなることに起因して、樹脂の含浸性も低下する。一方、真円度が0,7未満であると集束性が低下してしまい、炭素繊維束を製造する際の焼成工程が悪化し、炭素繊維束を安定に生産できなくなる。よって、真円度が0,7以上0.9以下の単繊維を用いることにより炭素繊維束の集束性を適度に制御することができ、集束性とばらけやすさのバランスに優れ、成形加工において樹脂の含浸性も向上する。
[0148] 本発明に用いる織物は、炭素繊維束が縦方向に配列された一方向性繊維強化織物であり、横方向には補助糸が用いられる。この織物の基本構造は耐震補強材用途で既に周知である。補助糸としては、コンポジットの機械物性の強度を向上させる為に、縦方向に用いる炭素繊維束より小さい繊度の糸条が通常用いられる。即ち、縦方向に配列された炭素繊維束と横方向に配列された補助糸は必ず一本ずつ交互に交錯されるので、炭素繊維束には多少にかかわらず屈曲が生じ、これにより強度発現が損なわれる。屈曲の度合いは補助糸の繊度に比例し補助糸が太いほど炭素繊維束の屈曲が大きく機械物性も低下する。よって、できるだけ細い補助糸が好ましいが、織物の形態保持が外部力に耐えられるものであれば何ら限定するものではない。
[0149] 尚、補助糸は一般にはガラス繊維が多く用いられているが、これに限定するものではない。又、通常、一方向性織物の補助糸の打込み本数は、織物の取扱い性を考慮し、10本/インチ以下と比較的少なく、且つ細い補助糸で縦糸と交錯されることから、拘束力がなく、織物の取扱い性が非常に悪い。よって低融点ポリマーを含んだ補助糸を用い、そのポリマーを介して炭素繊維と補助糸とがその交点で互いに接着させることで拘束力が保持される。低融点ポリマー繊維としてはナイロン、ポリエチレンなどの低融点の熱融着繊維が用いられる。又、補助糸と熱融着繊維はカバリング、合燃、引き揃え接着などの複合糸とすれば問題ない。更に、接着方法は熱ロールを利用する方法、或いは遠赤外線ヒーターなどの輻射熱を利用する方法でも差し支えない。」
オ「[0153] 〔炭素繊維プリプレグ〕
また本発明は、炭素繊維束とマトリックス樹脂からなる炭素繊維プリプレグに関する。本発明の炭素繊維プリプレグの炭素繊維は、特には限定されないが、PAN系炭素繊維、PITCH系炭素繊維が挙げられる。望ましくはPAN系炭素繊維である。単繊維繊度が1.2?2.4dtexのものが用いられ、特に、本発明の前記炭素繊維束が好適に用いられる。単繊維繊度が1.2dtex以上であると成形物の厚みが増した時の圧縮強度保持率が高くなる。また単繊維繊度が2.4dtex以下であると成形物の機械的強度が良好である。炭素繊維束は、同じプリプレグについて1種類のものを使用しても良く、複数種類のものを規則的にまたは不規則に並べて使用してもかまわない。通常、特定方向に比強度、比弾性率が高いことを要求される用途には単一方向プリプレグが最も適しているが、あらかじめ長繊維マットや織物などのシート形態に加工したものを使用することも可能である。」

(3)引用発明について
上記(2)ア-ウ,オより,引用文献1には,次のとおりの発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「単繊維の繊度が1.2?2.4dtexである炭素繊維束とマトリックス樹脂とからなる炭素繊維プリプレグであって,炭素繊維束をあらかじめ織物などのシート形態に加工したものにマトリックス樹脂を含浸してなる,炭素繊維プリプレグ。」

(4)対比・判断
本件補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「炭素繊維プリプレグ」及び「炭素繊維束をあらかじめ織物などのシート形態に加工したもの」は,それぞれ本件補正発明の「プリプレグ」及び「強化繊維基材」に相当する。
引用発明のプリプレグにおける,「炭素繊維束」は上記(1)エの記載からみて「トウ状の炭素繊維糸条」に相当し,「マトリックス樹脂」は上記(1)イの記載からみて,通常は硬化性樹脂であると認めるから,本件補正発明における「熱硬化性マトリックス樹脂組成物」に相当する。
また,織物は経糸と緯糸とを組み合わせるものであるから,炭素繊維束を織物のシート形態に加工する際には,炭素繊維束が複数本を経糸又は緯糸として互いに並列に配列されることは明らかであり,また,シートの片面或いは両面に露出するように配され,かつこれらの並列に配列された炭素繊維束と異なる角度をもって配される糸が別に存在すると言える。

そうすると,本件補正発明と引用発明は,以下の点で一致する。
「単繊維の繊度が1.2?2.4dtexである炭素繊維からなるトウ状の炭素繊維糸条が複数本で互いに並列に配列されてなるシートと、前記シートの片面或いは両面に前記繊維糸条と異なる角度をもって配置した補助糸からなる強化繊維基材に,熱硬化性マトリックス樹脂組成物を含浸してなり,
前記強化繊維基材が織物である,プリプレグ。」

そして,本件補正発明と引用発明とでは以下の点で相違する。
<相違点>
強化繊維基材に関し,本件補正発明は「強化繊維に屈曲の無い一方向性織物」と特定されるのに対し,引用発明においてはこのような特定がない点。

上記相違点について検討する。
本件補正発明における,「強化繊維に屈曲の無い一方向性織物」について,本願明細書の発明の詳細な説明の【0032】には,
「経糸に対してかなり目付けの小さい緯糸を一定ピッチで打ち込んだ、例えば600g/m^(2)の経糸に225dtexのガラス繊維を約3mmピッチで打ち込んだ簾状の一方向性織物は経糸の屈曲が殆ど無い状態で製織することができる。本発明に用いることができる強化繊維基材には、このような、強化繊維に屈曲の無い一方向性織物も含まれる。」
と記載されているから,「屈曲が無い」とは結局「経糸の屈曲が殆ど無い」ものを意味するものと解される。
以上の点を踏まえ検討するに,引用文献1には,(2)エのとおり,ラージトウの炭素繊維束で且つ単繊維径が太い炭素繊維束を用い,単繊径を太くすることで樹脂の流動性を良く,含浸時間を大幅に短縮する一方向性繊維強化織物が得られること,その一方で,縦方向に配列された炭素繊維束と横方向に配列された補助糸が交錯されることにより,炭素繊維束に屈曲が生じ,強度発現が損なわれること,及びこの屈曲の度合いは補助糸の繊度に比例し補助糸が太いほど炭素繊維束の屈曲が大きく機械物性も低下するものであるから,できるだけ細い補助糸が好ましいこと,が開示されている。
してみると,引用文献1に記載されている引用発明のプリプレグを具体化する際,織物の構造を定めるにあたっては,できるだけ細い補助糸を用い,経糸となる炭素繊維束の屈曲を抑え,実質的に「強化繊維に屈曲の無い」一方向性織物とすることは当業者が通常検討しなし得ることである。

また、引用文献1で開示されている一方向性織物が炭素繊維束と補助糸とが交錯されることにより屈曲が避けられないものであり,本件補正発明の「強化繊維に屈曲の無い」なる発明特定事項を満たさないものであったとしても,互いに並列して配列されてなる炭素繊維束を屈曲させることなく,ばらけないように拘束することは,原査定の拒絶の理由で引用された特開2012-246583号公報(以下,「引用文献2」という。)の段落0022に記載された,一方向に引き揃えられた縦糸となる炭素繊維束の表面に横糸となる熱融着繊維を単に置いてから熱融着する技術,特開平9-94900号公報(以下、「引用文献3」という。)の請求項1-2,実施例1-3に記載の一方向に引き揃えられた炭素繊維の基材シートの片面に熱融着線条体のメッシュ状斜交体を熱融着する技術,又は特開2010-156081号公報の特許請求の範囲,実施例1-2に記載の炭素繊維からなる強化繊維が一方向に並行に配列された強化繊維シートにあって,該強化繊維シートの表裏面に補助繊維を強化繊維に対して直角方向に配列する技術,等の如く周知技術に属するものである。
してみると,引用文献1には(2)エのように,炭素繊維束に屈曲が生じることによって,強度発現が損なわれる問題点が開示されているから,引用発明において,この問題点を解決するために,強化繊維に屈曲の無い一方向性織物とするため,上記周知技術を採用することは当業者が容易に想到し得ることである。

審判請求人が主張する作用効果について
審判請求人は,単繊維繊度に由来する効果を主張するが,引用発明も同一の単繊維繊度を有するものであることから,本件補正発明が引用発明に対する新たな格別の効果を奏するものとは解することができない。また,審判請求人の主張する,【0032】の,強化繊維に屈曲がない,とすることで屈曲に起因する応力集中などによる繊維強化複合材料の物性の低下を防止する,という効果についても,上記「相違点」について検討したとおりである。
故に,審判請求人の主張はいずれも採用できない。

したがって,本件補正発明は,引用発明に基いて,または引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 まとめ
よって,本件補正は,上記2のとおり特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するものであるので,同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
したがって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
令和 1年 7月19日にされた手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1ないし4に係る発明は,平成30年 6月 6日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,その請求項1に記載された事項により特定される,前記第2の1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,この出願の請求項1に係る発明は,本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明及び引用文献2-3の記載事項に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は,前記第2の2(2),(3)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は,前記第2の2で検討した本件補正発明から,「強化繊維基材が、強化繊維に屈曲の無い一方向性織物である」との特定事項を削除したものである。
そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が,前記第2の2に記載したとおり,引用発明,又は引用発明ならびに引用文献2-3及び特開2010-156081号公報記載の周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,引用発明,引用発明及び引用文献2-3記載の周知技術,または引用発明ならびに引用文献2-3及び特開2010-156081号公報記載の周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-05-22 
結審通知日 2020-05-26 
審決日 2020-06-08 
出願番号 特願2013-216579(P2013-216579)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (C08J)
P 1 8・ 121- Z (C08J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩田 行剛福井 弘子平井 裕彰安積 高靖  
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 神田 和輝
植前 充司
発明の名称 プリプレグ  
代理人 大浪 一徳  
代理人 田▲崎▼ 聡  
代理人 伏見 俊介  

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