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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C07D
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C07D
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C07D
管理番号 1364818
審判番号 不服2018-17435  
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-12-27 
確定日 2020-08-05 
事件の表示 特願2016-164420「癌の治療のための化合物」拒絶査定不服審判事件〔平成29年1月12日出願公開、特開2017-8091〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2011年8月24日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年8月24日、2010年12月29日、いずれもアメリカ合衆国(US))を国際出願日とする特願2013-526130号の一部を、平成28年8月25日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下の通りである。

平成29年 7月 7日付け :拒絶理由通知
同年10月18日 :意見書、手続補正書の提出
同年10月31日付け :拒絶理由通知
平成30年 4月 9日 :意見書、手続補正書の提出
同年 8月30日付け :拒絶査定
同年12月27日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 1年 8月21日付け :拒絶理由通知
令和 2年 1月27日 :意見書、手続補正書の提出


第2 特許請求の範囲の記載
この出願の特許請求の範囲の記載は、令和2年1月27日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?17に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1係る発明は、

「【請求項1】
下記の構造で表される化合物。

式中、Xは、単結合、またはNHであり、
Qは、NHであり、
R_(10)およびR_(11)は、互いに独立して、水素またはC_(1)-C_(5)直鎖もしくは分枝鎖アルキルであり、R_(10)およびR_(11)のいずれか一方は水素であり、両方が水素ではなく、lは1であり、
A環は、置換もしくは非置換のフェニル環またはインドール環であり、
前記A環は、任意選択で、O-アルキル、O-ハロアルキル、F、Cl、Br、I、CN、-CH_(2)CN、NH_(2)、ヒドロキシル、-OC(O)CF_(3)、C_(1)-C_(5)直鎖もしくは分枝鎖アルキル、ハロアルキル、アルキルアミノ、アミノアルキル、-OCH_(2)Ph、-NHCO-アルキル、COOH、-C(O)Ph、C(O)O-アルキル、C(O)H、-C(O)NH_(2)、またはNO_(2)から互いに独立して選択される1?5個の置換基で置換される。」というものである(以下、「本願発明」という。)


第3 当審で通知した拒絶の理由
当審で令和1年8月21日付けで通知した拒絶の理由は、概略以下のとおりのものである。

理由1:本願発明は、本願の発明の詳細な説明に記載されたものでなく、この出願は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。

理由2:本願の発明の詳細な説明は、本願発明を当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されておらず、この出願は、特許法第36条第4項第1号に適合するものではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

理由3:本願発明の特許請求の範囲の記載は明確ではなく、この出願は、特許法第36条第6項第2号に適合するものではないから、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。


第4 当審の判断
当審は、当審で通知した拒絶の理由のとおり、この出願は、上記理由1?3により、特許法第36条第6項あるいは特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないため、特許を受けることができない、と判断する。
理由は以下のとおりである。

1 特許法第36条第6項第1号について

(1)サポート要件の判断の前提
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきとされる。

(2)本願発明の課題
本願発明の課題は、発明の詳細な説明の段落【0001】等の明細書全体の記載事項並びに本願出願時の技術常識からみて、薬物耐性腫瘍、薬物耐性癌、転移性癌、転移性メラノーマ、薬物耐性メラノーマ、前立腺癌、および薬物耐性前立腺癌等の癌に対して抗癌活性を有する新規化合物を提供することにあると認められる。

(3)本願の特許請求の範囲の記載
本願の請求項1には、構造式

(式中、Xは、単結合、またはNHであり、
Qは、NHであり、
R_(10)およびR_(11)は、互いに独立して、水素またはC_(1)-C_(5)直鎖もしくは分枝鎖アルキルであり、R_(10)およびR_(11)のいずれか一方は水素であり、両方が水素ではなく、lは1であり、
A環は、置換もしくは非置換のフェニル環またはインドール環であり、
前記A環は、任意選択で、O-アルキル、O-ハロアルキル、F、Cl、Br、I、CN、-CH_(2)CN、NH_(2)、ヒドロキシル、-OC(O)CF_(3)、C_(1)-C_(5)直鎖もしくは分枝鎖アルキル、ハロアルキル、アルキルアミノ、アミノアルキル、-OCH_(2)Ph、-NHCO-アルキル、COOH、-C(O)Ph、C(O)O-アルキル、C(O)H、-C(O)NH_(2)、またはNO_(2)から互いに独立して選択される1?5個の置換基で置換される。)で表される化合物を特定した物の発明が記載されている。

(4)本願明細書の発明の詳細な説明の記載

ア 化合物に関する包括的・一般的な記載
本願明細書の発明の詳細な説明には、請求項1に係る発明に関連する記載として、段落【0014】、【0016】に補正前の請求項の内容の繰り返しが記載されている。また、段落【0043】?【0047】に、当該化合物を包含する包括的な記載があり、段落【0159】?【0161】、【0205】?【0207】に、該包括的に記載された化合物のB環が置換されたイミダゾール環構造である場合にR_(10)あるいはR_(11)が取りうる膨大な選択肢が一般的な形式で列挙されている。

イ 比較的明確に化学構造が特定された記載
さらに、比較的明確に化学構造が特定された記載として、
(3,4,5-トリメトキシフェニル)カルボニル基がイミダゾール環の4位に結合した構造を有する化合物(ただし、イミダゾール環の窒素に置換基を有しないもの)に対応する記載としては、段落【0117】の式(XI)、【0122】の式(XI(a))、【0125】の式(XI(b))、【0134】の式(XI(e))、【0139】の式(17ya)、【0142】の式52、【0220】の式(XIII)、【0223】の式(XIV)、【0227】の式(XIVa)、【0231】の式(XV)、【0239】の式(XVII)、【0259】の式(XX)、【0263】の式(12da)、【0265】の式(12fa)があり、
(3,4,5-トリメトキシフェニル)カルボニル基がイミダゾール環の4位に結合し、かつイミダゾール環にインドール環が結合した構造を有する化合物(ただし、イミダゾール環の窒素に置換基を有しないもの)に対応する記載として、【0267】の式(XXI)、【0277】の式(XXII)、【0282】の式(17ya)(【0139】記載のものと同じ化合物)がある。

ウ 製造例
そして、段落【0412】以降に具体的実施態様として具体的な製造例が記載されているのは、
(3,4,5-トリメトキシフェニル)カルボニル基がイミダゾール環の4位に結合した構造を有する化合物(ただし、イミダゾール環の窒素に置換基を有しないもの)については、【0588】の化合物(5e)、【0636】の化合物(12la)、【0644】、【0645】の化合物(12la)(【0636】記載の化合物と同じもの)、【0653】、【0654】の化合物(12da)、【0656】、【0657】の化合物(12fa)、【0682】の化合物(12aa)、【0687】の化合物(12ba)及び(12ca)、【0688】の化合物(12da)(【0654】記載の化合物と同じもの)、【0690】の化合物(12ea)、【0691】の化合物(12fa)(【0657】記載の化合物と同じもの)、【0692】の化合物(12ga)、【0693】の化合物(12ha)、【0694】の化合物(12ia)、【0696】の化合物(12ka)及び化合物(12la)(【0636】記載の化合物と同じもの)、【0697】の化合物(12pa)のみであり、
(3,4,5-トリメトキシフェニル)カルボニル基がイミダゾール環の4位に結合した構造を有し、かつイミダゾール環にインドール環が結合した化合物(ただし、イミダゾール環の窒素に置換基を有しないもの)について具体的な製造例として記載されているのは、【0705】及び【0709】の化合物(15xaa)、【0708】の化合物(16xaa)、【0711】及び【0716】の化合物(17ya)のみである。

エ 生物学的活性が確認されている化合物
またウで挙げた具体的に製造された化合物のうち、以下の化合物については生物学的活性が確認されている。
(3,4,5-トリメトキシフェニル)カルボニル基がイミダゾール環の4位に結合した構造を有する化合物(ただし、イミダゾール環の窒素に置換基を有しないもの):
【0779】の【表5C】記載の化合物(5e)、【0811】の【表11】記載の化合物(12aa)、【0815】の【表12】記載の化合物(12ba、12ca、12da、12fa、12ga、12ha、12ka、12la、12pa)、【0821】の【表14A】記載の化合物(12da)、【0822】の【表14B】記載の化合物(12da)、実施例16(【0824】?【0829】)、実施例17(【0830】?【0835】)、実施例19(【0844】?【0852】)の化合物(12da)、【表16B】記載の化合物(12fa)

(3,4,5-トリメトキシフェニル)カルボニル基がイミダゾール環の4位に結合した構造を有し、かつイミダゾール環にインドール環が結合した化合物(ただし、イミダゾール環の窒素に置換基を有しないもの):
【0779】の【表5C】記載の化合物(17ya)、【0792】の【表6A-8】の化合物(17ya)、(15xaa)、実施例20(【0853】?【0883】)における、【0867】の【表15】、【0872】の【表16A】、【0873】の【表16B】、【0878】の【表17】、【0881】の【表18】、並びに【0883】の【表19】記載化合物(17ya)、及び実施例25(【0926】?【0940】)における【0934】の【表24】記載の化合物(17ya)

(5)対比・判断
ア 請求項1には、(3,4,5-トリメトキシフェニル)カルボニル基がイミダゾール環の4位に結合した部分構造を有する所定の構造の化合物が記載されており、その内容から、当該イミダゾール環には、環A-X基と(3,4,5-トリメトキシフェニル)カルボニル基に加えて、R_(10)、R_(11)のいずれか一方が水素であって、もう一方はC_(1)?C_(5)直鎖もしくは分枝鎖アルキル基である基が結合している必要がある。

イ 一方、発明の詳細な説明には、特許請求の範囲の実質的な繰り返し等が一般的記載として例示されているものの、具体的裏付けをもった化合物として製造され、さらには生物学的活性を有することが確認されているものは全て、イミダゾール環に結合している基が環A-X基と(3,4,5-トリメトキシフェニル)カルボニル基に加えて水素のみである化合物、すなわちR_(10)、あるいはR_(11)に、C_(1)?C_(5)直鎖もしくは分枝鎖アルキル基が存在するという本願発明の定義を満たさない化合物のみである。

ウ ここで、化合物の性状や薬理活性等は、その化学構造のわずかな差違によって影響を受けるものであることが技術常識であり、実際、本願の発明の詳細な説明の【0811】【表11】、【0815】【表12】、【0817】【表13】等を見ると、化合物の僅かな構造の違いで、生物学的活性が失われることを理解することができる。
そうすると、本願の請求項1の範囲外の化合物である、イミダゾール環に環A-X基と(3,4,5-トリメトキシフェニル)カルボニル基に加えて水素のみが結合している化合物、すなわち、請求項1において“除く”(すなわち本願発明の範囲外)とされている化合物について示されている効果のみをもって、本願発明の化合物において本願発明の上記課題を解決する化合物が得られるかどうかが不明である。

エ よって、本願発明は、発明の詳細な説明に裏付けをもって記載されているとはいえない。また、そのような記載や示唆がなくとも、本願発明の上記課題が解決できると当業者が認識できる、本願出願日時点の技術常識も存在しない。

オ したがって、本願発明は、本願発明の課題が解決できると当業者が認識できる範囲を超えて特定されたものである。

カ 請求人は、令和元年1月27日付けの意見書の第3頁において、同日付の補正書により、本願発明の化合物が、A環が置換もしくは非置換のフェニル環又はインドール環であるものに限定され、それに対応した記載が発明の詳細な説明に存在するから、本願発明は発明の詳細な説明に裏付けをもって本願発明の課題が解決できると当業者が認識できる程度に記載されたものであると主張する。しかしながら、当審が拒絶理由通知及び上記ア?エで述べているのは、本願発明におけるイミダゾール環上の原子に結合する置換基に対してであって、A環がどのような構造であるかという点については、特に問題にしていないから、請求人の当該主張に関わらず、上記判断は影響されない。


2 特許法第36条第4項第1号について

(1)実施可能要件の判断の前提
物の発明における発明の「実施」とは、その物の生産、使用等をする行為をいう(特許法第2条第3項第1号)から、特許法第36条第4項第1号の「その実施をすることができる」(実施可能要件)とは、その物を生産することができ、かつ、その物を使用できることである。したがって、物の発明については、明細書の記載又はその示唆及び出願当時の技術常識に基づき、当業者がその物を生産することができ、かつ、その物を使用できるのであれば、上記の実施可能要件を満たすということができる。

(2)本願明細書の発明の詳細な説明の記載
ア 本願発明の化合物について
本願発明の化合物においては、その定義上、lは1であり、R_(10)は必ず存在する必要があることに鑑みると、該化合物のイミダゾール環には、環A-X基と(3,4,5-トリメトキシフェニル)カルボニル基に加えて、R_(10)、R_(11)のいずれか一方が水素であって、もう一方は、C_(1)?C_(5)直鎖もしくは分枝鎖アルキル基が結合している必要があるから、水素を含めた2つの置換基が導入されている必要がある。

イ 発明の詳細な説明及び図面の記載
本願明細書の発明の詳細な説明には、本願発明に関連する化合物として上記1(4)のア?エで指摘した化合物群が記載されており、【図7】、【図8】、【図10】?【図14】にその合成工程が示されている。
しかしながら、具体的裏付けをもった化合物として製造され、さらには生物学的活性を有することが確認されているものは全て、イミダゾール環に結合している基が環A-X基と(3,4,5-トリメトキシフェニル)カルボニル基に加えて水素のみである化合物、すなわちR_(10)、あるいはR_(11)に、C_(1)?C_(5)直鎖もしくは分枝鎖アルキル基が存在するという本願発明の定義を満たさない、本願発明の範囲外の化合物のみである。

(3)判断(本願発明化合物のイミダゾール環上に存在しうる置換基について)
ア ここで、イミダゾール環上の原子の反応性に関しての技術常識からすると、本願発明の化合物のイミダゾール環上の各原子のうち、「X」と結合する炭素原子(2位)、カルボニル炭素と結合する炭素原子(4位)及び「=N-」で表される窒素原子(3位)については、その構造の定義から、結合手は全て使われており、更なる置換基の導入はできないことに加え、Q(1位)についても「Qは、NHであり」と特定されているから、更なる置換基は存在し得ないことになる。そうすると、当該イミダゾール環には、水素あるいはC_(1)?C_(5)直鎖もしくは分枝鎖アルキル基によって置換しうる原子は5位の炭素原子1つしか存在し得ないことになり、2つの置換基を導入することができるものとは認められない。
このような技術的な矛盾を孕む化合物が、本願発明において定義されているにもかかわらず、発明の詳細な説明欄には、R_(10)、R_(11)の2つの置換基が導入された化合物を製造する方法が具体的に記載されているとは認められないし、そもそも上記(2)イにおいて指摘したように、R_(10)あるいはR_(11)に、C_(1)?C_(5)直鎖もしくは分枝鎖アルキル基を導入した具体例の記載すら見受けられないから、当該化合物をどのように製造すれば良いのかを当業者は理解することができない。
加えて、技術的に見ると、通常、イミダゾール環上の原子で最も反応性が高いのは1位にある窒素原子、すなわちQの窒素原子であるから、置換基を導入しようとした場合に、当該窒素原子に最も容易に置換基が導入されると考えられる。しかしながら、既に述べたとおり、本願明細書の発明の詳細な説明には、1位の窒素原子上ではなく、5位の炭素原子上にのみ置換基を有する化合物を具体的に製造した例は一切記載されていないし、そもそも5位の炭素原子上に置換基を有する化合物を製造することが当業者に周知の技術的事項であると認めるに足る根拠もないから、この点からも当該化合物をどのように製造すれば良いのかを当業者は理解することができないというほかない。

イ また、明確な記載はなくとも、当該化合物が得られると当業者が認識できるような本願出願日時点の技術常識も存在しないから、当該化合物を当業者が過度な試行錯誤なく、製造できるとは到底認められない。

ウ したがって、本願明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本願発明の実施をできる程度に明確かつ十分に記載されているものとはいえない。

エ 請求人は、令和元年1月27日付けの意見書の第3頁において、同日付の補正書により、本願発明の化合物が、A環が置換もしくは非置換のフェニル環又はインドール環であるものに限定され、それに対応した記載が発明の詳細な説明に存在し、具体的な製造方法が記載されていると主張する。しかしながら、当審が拒絶理由通知及び上記ア?ウで述べているのは、本願発明におけるイミダゾール環上の原子に結合する置換基に対してであって、A環がどのような構造であるかという点については、特に問題にしていないから、請求人の当該主張に関わらず、上記判断は影響されない。


3 特許法第36条第6項第2号について
(1)明確性要件の判断の前提について
特許法第36条第6項第2号は、特許請求の範囲の記載に関し、特許を受けようとする発明が明確でなければならない旨規定する。
そして、特許を受けようとする発明が明確か否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断される。

(2)検討
上記2(3)において述べたとおり、本願発明に係る請求項1は、化学構造式では、イミダゾール環に、R_(10)およびR_(11)すなわち、水素あるいはC_(1)?C_(5)直鎖もしくは分枝鎖アルキル基という2つの置換基で置換されている必要がある一方で、技術常識からすると当該イミダゾール環上の原子として置換可能なものは1つしかない、という矛盾を孕む形で特定されているから、当該請求項に係る発明の化合物の範囲が把握できず、また本願明細書の発明の詳細な説明や図面の記載を考慮しても、そのような矛盾を解消するような記載は見あたらない。
したがって、本願発明の記載は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である。


第5 むすび
以上から、他の請求項について検討するまでもなく、本願の特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号及び2号の規定に適合せず(前記1及び3)、また、発明の詳細な説明の記載は特許法第36条第4項第1号の規定に適合しない(前記2)から、本願は、特許を受けることができない。
 
別掲
 
審理終結日 2020-03-04 
結審通知日 2020-03-10 
審決日 2020-03-24 
出願番号 特願2016-164420(P2016-164420)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (C07D)
P 1 8・ 537- WZ (C07D)
P 1 8・ 55- WZ (C07D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 三木 寛  
特許庁審判長 佐々木 秀次
特許庁審判官 中島 芳人
天野 宏樹
発明の名称 癌の治療のための化合物  
代理人 勝見 陽介  
代理人 大島 陽一  
代理人 木村 政彦  
代理人 高尾 智満  
代理人 大島 陽一  
代理人 高尾 智満  
代理人 立川 幸男  
代理人 立川 幸男  
代理人 木村 政彦  
代理人 勝見 陽介  
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