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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D |
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管理番号 | 1364826 |
審判番号 | 不服2019-11861 |
総通号数 | 249 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-09-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-09-09 |
確定日 | 2020-08-05 |
事件の表示 | 特願2016-524316「スキンケア成分を提供するための器具、配置および方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年1月8日国際公開、WO2015/002960、平成28年9月15日国内公表、特表2016-528116〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 この出願(以下「本願」という。)は、平成26年7月1日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年7月2日:米国(US)、2014年6月10日:米国(US))を国際出願日とする特許出願であって、その主な手続は以下のとおりである。 平成30年8月27日付け 拒絶理由通知 同年12月4日 意見書及び手続補正書の提出 平成31年4月16日付け 拒絶査定(以下「原査定」という。) 令和元年9月9日 拒絶査定不服審判の請求及び同時に手続補正書の提出 第2.令和元年9月9日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和元年9月9日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.本件補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲を補正するものであり、本件補正の前後における特許請求の範囲の請求項30の記載は、次のとおりである(下線部は補正箇所である。)。 (1)本件補正前(平成30年12月4日提出の手続補正書) 「【請求項30】 使用者の皮膚に美容製品を適用する方法であって、 少なくとも1つの美容活性成分を含んでいる第1構造と、少なくとも1つの美容活性成分と溶媒溶液との混合物を吸収するように構成されている媒体と、 第1構造内に含まれ、溶媒溶液を含んでいる、第2構造と、 溶媒溶液を少なくとも1つの美容活性成分から分ける少なくとも1つの第3構造と、少なくとも1つの美容活性成分と溶媒溶液とが互いに接触したかどうかを示すように構成されているインジケーター構造と、 を有する配置を提供することと、 溶媒溶液を少なくとも1つの美容活性成分にさらすように、第2構造が少なくとも1つの第3構造を破れさせるように、第2構造の少なくとも一部に特定量の圧力を加えることと、 第1構造を開けることと、 媒体を第1構造から取り出すことと、 媒体を皮膚に適用することと、 を含む方法。」 (2)本件補正後(令和元年9月9日提出の手続補正書) 「【請求項30】 使用者の皮膚に美容製品を適用する方法であって、 少なくとも1つの美容活性成分を含んでいる第1構造と、少なくとも1つの美容活性成分と溶媒溶液との混合物を吸収するように構成されている媒体と、 第1構造内に含まれ、溶媒溶液を含んでいる、第2構造と、 溶媒溶液を少なくとも1つの美容活性成分から分ける少なくとも1つの第3構造と、少なくとも1つの美容活性成分と溶媒溶液とが互いに接触したかどうかを示すように構成されているインジケーター構造と、 を有する配置を提供することと、 溶媒溶液を少なくとも1つの美容活性成分にさらすように、第2構造が少なくとも1つの第3構造を破れさせるように、第2構造の少なくとも一部に特定量の圧力を加えることと、 第1構造を開けることと、 媒体を第1構造から取り出すことと、 媒体を皮膚に適用することと、 を含み、 少なくとも1つの美容活性成分は、液体以外の形態である、 方法。」 2.補正の目的 上記補正は、本件補正前の請求項30に記載された「少なくとも1つの美容活性成分」について、「液体以外の形態である」ことを限定したものである。そのため、上記補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的としたものと認める。 3.独立特許要件 上記2.のとおり、本件補正のうち、上記補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的としたものと認めることができる。 そのため、本件補正後の請求項30に係る発明(以下「本件補正発明」という。)は、同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合すること(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであること)を要する。 そこで、以下に本件補正発明の独立特許要件について検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1.(2)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献の記載 ア.原査定において請求項30の拒絶の理由に引用された引用文献1(特表2002-543009号公報)には、以下の記載がある。 (ア)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 例えば、ふき取り体、パッチ又はマスクである少なくとも1つの吸収体(A、A_(1)、A_(2))と、吸収体に含浸される好ましくは液状である少なくとも1つの成分(B、C)を吸収体とは別個に包含するユニット(1)であって、前記吸収体は含浸した液体成分を皮膚や毛髪であるサポートに含浸するためのものであり、該ユニット(1)は、 前記吸収体(A、A_(1)、A_(2))を収容する柔軟性を有する壁面からなる容器(2)と、 前記成分(B、C)を含む、容器(2)の柔軟性を有する壁面を介して加えられる圧力によって開放して、前記吸収体(A、A_(1)、A_(2))に前記成分(B、C)を含浸させることができる少なくとも1つの袋(4)を有し、 前記袋(4)と前記吸収体(A、A_(1)、A_(2))とは容器(2)の中で自由に移動することができ、 前記容器は液を含浸下九州タイを取り出してサポートに塗布することができるように開放可能であることを特徴とするユニット。 【請求項2】 前記容器(2)と袋(B、C)は、少なくとも1つのシールされた縁部(2a‐2d、4a‐4d)によって閉じられており、容器(2)のシールされた縁部(2a‐2d)の圧力に対する強度は袋(4)の縁部(4a‐4d)の圧力に対する強度よりも格段に高いことを特徴とする請求項1に記載のユニット。 ・・・ 【請求項4】 前記袋(4)は熱可塑性のフィルムからなり、前記シールされた縁部(4a‐4d)の前記圧力によって開放されるものであることを特徴とする請求項2又は3に記載のユニット。 ・・・ 【請求項6】 容器は破断部(10)に沿って破れるよう意図されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のユニット。 ・・・ 【請求項10】 容器(2)の少なくとも一部が、透明又は半透明であることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載のユニット。 ・・・ 【請求項15】 袋(4)に収容された成分(B、C)と接触する前に吸収体に、増粘剤、ゲル化剤、界面活性剤、病理学的に許容される溶剤、水、モノアルコール又はポリアルコール;オイル、pH調整剤、乳化剤;生物由来の乾燥抽出成分;例えばフリーズドライされたコラーゲン及びその誘導体;真皮の血液循環又は血管造成を刺激する成分、しわ伸ばし活性を有する成分または植物タンパク質のうちの少なくとも一つの化粧品的又は皮膚科薬学的に活性な成分のうちの少なくとも1つを含浸させたことを特徴とする請求項1ないし14のいずれかに記載のユニット。 【請求項16】 袋に収容された成分(B、C)は、ビタミン、減量剤、酵素、保湿剤、老化防止剤から選択された少なくとも1つの化粧品的に又は皮膚科学‐薬学的に活性な液体成分を含むことを特徴とする請求項1ないし15のいずれかに記載のユニット。 【請求項17】 成分(B、C)は、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンE又はこれらの誘導体、アルファまたはベータヒドロキシ酸、クエン酸、エッセンシャルオイル、カフェイン、コウジ酸、ヒドロキノン、ニコチン酸エステル、β‐カロチン、尿素、グリセロールから選択された少なくとも1つの化粧品的に又は皮膚科学‐薬学的に活性な液体成分から選択されたことを特徴とする請求項16に記載のユニット。 ・・・ 【請求項19】 例えばヒトの皮膚又は毛髪の化粧的処理のための前記請求項1ないし18のいずれかに記載されたユニット(1)の使用。」 (イ)「【発明の詳細な説明】 【0001】 本発明は,例えば、サポートに塗布する前に互いに接触させられる少なくとも2つのエレメントを有する化粧的な処理のためのユニット、および当該ユニットを使用して前記エレメントから得られた製品を、例えば皮膚や毛髪であるサポートに塗布する使用方法に関するものである。 【0002】 本発明が対象とするユニットは、柔軟性のある外容器、例えば、前記エレメントを収容する柔らかい外壁を有する袋のようなものである。より正確には、前記エレメントのうちの少なくとも1つは破ることのできる壁面を有する内袋であり、その中には、外気および/または他のエレメントと隔離する必要がある液状製品が収容されている。容器を構成する少なくとも1つの他のエレメントは、吸収体である。適当であれば、容器はさらに粉体又はペーストあるいはその他の液状体を収容しても良い。」 (ウ)「【0017】 本発明の対象は、少なくとも1つの吸収体例えば塗布用の布、パッチ又はマスクであって吸収体とは別に収容された少なくとも1種の好ましくは液体である成分を含浸し、液体成分を含浸した後でたとえば皮膚や毛髪であるサポートに塗布する吸収体を具備したユニットであって、前記吸収体と前記成分を収容した少なくとも1つの容器の柔らかな壁面を介して加えられる圧力によって開放される袋を収容し、前記成分を含む液状成分を吸収体に含浸させ、袋と吸収体は容器の中で拘束が無く、成分を含浸した吸収体を取り出して当該サポートに塗布することができるように開放することができるユニットである。」 (エ)「【0020】 同様に、好ましくは、前記容器と袋は少なくとも1つの封止された縁部において閉じられており、封止された縁部の圧力に対する抵抗力は、袋の封止された縁部の圧力に対する抵抗力よりも格段に大きい。 【0021】 したがって、前記エレメントは、容器の柔らかな壁面を介して加えられる圧力によって袋の少なくとも1つの縁部が破れることによって容器の中で互いに接触する。」 (オ)「【0046】 図1に示したように、本発明の第1の実施例に基づく処理ユニット1は、・・・ 【0047】 ユニット1は、柔軟性のある袋状の外容器2を有する。外容器2は概略長方形の2つの柔軟性のあるシート3a、3bを重ね合わせて形成される(図2参照)。これらのシートは、対応する縁部2a?2dに沿って、例えば熱シール溶着によって封止され、液密な袋を形成している。 ・・・ 【0049】 2つのエレメントAとBとが外容器2の中に収容されている。この実施例の場合には、エレメントAは織られたまたは織られていない材料からなる吸収ふき取り体である。ふき取り体Aは粘性の大きなあるいは粘性の小さな液体を含浸することができる。ふき取り体Aはさらに、予め化粧的又は皮膚科学的に活性の成分又は化粧的又は皮膚‐薬学的に許容できる成分を予め含んでいても良い。 【0050】 エレメントBは液体で袋4に収容され、袋は容器2の中で自由に動くことができる。袋4は容器2に比較してはるかに小さく、2つの変形可能な可撓性のあるシートでできており、縁部4a?4dの部分でシールされている。これらのシートは単一層又は複数層の材料からなり、液体Bに対して最も保存性能が良いものから選択される。縁部4a?4dのシールうちの少なくとも1つは、容器2のシールされた縁部2a?2dの圧力に対する抵抗力よりも小さな抵抗力しか有していない。・・・ 【0053】 外容器2は、袋4の位置が見分けられるように透明か半透明の材質からなることが好ましい。 【0054】 製品を使用したいときは、外容器2を介して親指と人差し指の間で袋4を押圧し、袋4の溶着部分がはがれるようにする。一般に、袋4が開放されたときは破裂音が聞こえ、成分Bが開放されたことが音によって示される。外容器2を揉み解すことによって使用者は適当にエレメントAをエレメントBに均一に含浸させることができる。例えばはさみを使うか予め弱く作ってある線10に沿って破るかして外容器を開け、外容器から含浸したエレメントAを取り出して所望の場所に塗布することができる。・・・ 【0055】 図2は、顔の処理のためのマスクを示すものであり、このマスクは織られたか、織られていない、あるいは吸収性の何らかの材料を切って得ることができる。目と鼻と口のために適当な形状の穴が設けられている。このマスクには、予めゲル化剤および/またはその他の活性成分が含浸されており、脱水されていても良い。・・・ 【0056】 成分Bと接触すると、マスクは吸水し、袋4に含まれていた活性成分が含浸される。・・・ 【0058】 図4は、図1に示した実施例と同様、ふき取り体Aと袋4と外容器2を有するが、これらのうちの1つが成分Bを含み、これらの他方が追加の成分Cを含むものである。好ましくは、容器2の少なくとも一部は透明又は半透明であって、袋の中身を放出させるべき袋が見分けられるようになっている。・・・」 (カ)「【0065】 このように、本発明は、異なる実施例に応じてそれぞれ個別にまた経済的な方法で以下の事を可能にする:・・・ ‐吸収体に含浸させるときに、固体の状態では安定であるが溶解すると急速に劣化する粉体と少なくとも1つの液状成分を個別に保存して、溶解させること。反対に、袋に粉体を収容し、液体を吸収体とともに容器内に収容しておくことも可能である;・・・」 (キ)「【図1】 」 (ク)「【図2】 」 (ケ)上記(ア)の「前記容器は液を含浸下九州タイを取り出して」という記載は、その前後及び上記ウ.の記載を参酌すれば、「前記容器は液を含浸した吸収体を取り出して」の明らかな誤記である。 (コ)上記(ア)及び(オ)によれば、吸収体(ふき取り体A)は、予め化粧的又は皮膚科学的に活性の成分を含んでいる。そして、袋(4)が開放されると、成分(B、C)が吸収体(ふき取り体A)及び活性の成分に含浸し、活性の成分が溶解する。 (サ)上記(ア)、(イ)、(オ)及び(キ)によれば、吸収体(ふき取り体A)と袋は容器の中にある。 (シ)上記(ア)(特に【請求項15】)には活性の成分として乾燥抽出成分が例示され、上記(カ)には粉体が記載されていることから、活性の成分は、粉体である。 上記(ア)?(シ)から、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。 「予め化粧的又は皮膚科学的に活性の成分を含んでいる吸収体(ふき取り体A)と、吸収体(ふき取り体A)に含浸される液状成分を吸収体(ふき取り体A)とは別個に包含するユニットであって、 前記吸収体(ふき取り体A)を収容する柔軟性を有する壁面からなる容器と、 前記液状成分を含む、容器の柔軟性を有する壁面を介して加えられる圧力によって開放して、前記吸収体(ふき取り体A)に前記液状成分を含浸させることができる袋を有し、 吸収体(ふき取り体A)と袋は容器の中にあり、 容器の少なくとも一部は、透明であり、 前記袋は、前記圧力によってシールされた縁部が開放され、前記液状成分が前記吸収体(ふき取り体A)及び前記活性の成分に含浸し、前記活性の成分が溶解し、 前記容器は液を含浸した吸収体(ふき取り体A)を取り出して皮膚であるサポートに塗布することができるように開放可能であり、 前記活性の成分は、粉体である、 ヒトの皮膚のためのユニットの使用。」 イ.原査定において請求項30の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2007-112482号公報)には、以下の記載がある。 (ア)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 密封容器内を仕切りで区分けしてなる複数の独立空間内のそれぞれに、混合されるべき複数種類の液体が外部から視認可能な状態で収容保存されており、混合時には、前記仕切りを外して併合空間を形成し、この併合空間内にて前記複数種類の液体を混合し、混合物を得るための複数液の保存兼混合容器であって、 前記複数種類の液体のそれぞれには、前記混合時にその混合状態を視覚的に把握できるように、前記混合の前後で色調差を発生させる色調差発生剤が配合されており、前記複数種類の液体のそれぞれは、前記色調差発生剤によって調色されたものである複数液の保存兼混合容器。」 (イ)「【0001】 本発明は、複数液の保存兼混合容器及び混合物調製方法に関する。さらに詳しくは、密封空間において、色調差によって混合状態を視覚的に把握しつつ混合することのできる複数液の保存兼混合容器及び混合物調製方法に関する。」 ウ.さらに引用文献5(実願昭63-44390号(実開平1-147235号)のマイクロフィルム)には、以下の記載がある。 (ア)「2.実用新案登録請求の範囲 (1)内部に水が収納された内袋と、該水と反応し吸熱作用を有する寒剤と、上記内袋と寒剤を密封してなる外袋とを有してなる携帯用保冷具において、上記外袋に透光材からなる検出窓を設けると共に、上記内袋に収納された水を着色したことを特徴とする携帯用保冷具。 (2)内部に水が収納された内袋と、該水と反応し吸熱作用を有する寒剤と、上記内袋と寒剤を密封してなる外袋とを有してなる携帯用保冷具において、上記外袋に透光材からなる検出窓を設けると共に、上記寒剤に水を含むと変色あいは発色する水検出剤を混入したことを特徴とする携帯用保冷具。 (3)内部に水が収納された内袋と、該水と反応し吸熱作用を有する寒剤と、上記内袋と寒剤を密封してなる外袋とを有してなる携帯用保冷具において、上記外袋に透光材からなる検出窓を設けると共に、上記外袋の内側であって少なくとも上記検出窓が設けられている部分に水を検出すると変色あるいは発色するシートを積層したことを特徴とする携帯用保冷具。」 (当審注:(2)の「変色あいは発色する」は、「変色あるいは発色する」の明らかな誤記である。) (イ)「第1の考案の実施例に係る携帯用保冷具10は、内部に着色水11が収納された内袋12と、該内袋12の回りに配置された寒剤の一例である硝酸アンモニウム粒13と、プラスチックシートからなる外袋14とを有して構成されている。」(明細書7ページ1?6行) (3)本件補正発明の進歩性についての判断 ア.対比 本件補正発明と引用発明1を対比すると、引用発明1の「吸収体(ふき取り体A)」は本件補正発明の「媒体」に相当し、以下同様に「容器」は「第1構造」に、「袋」は「第2構造」に、「ユニット」は「美容製品」に、「ヒトの皮膚のためのユニットの使用」は「使用者の皮膚に美容製品を適用する方法」に、それぞれ相当する。そして、引用発明1の「ユニット」を使用することが、本件補正発明の「配置を提供すること」を具備していることは明らかである。 引用発明1の「化粧的又は皮膚科学的に活性の成分」は、本件補正発明の「少なくとも1つの美容活性成分」に相当する。そして、引用発明1の「容器」が「予め化粧的又は皮膚科学的に活性の成分を含んでいる吸収体(ふき取り体A)」を「収容する」ことは、本件補正発明の「第1構造」が「少なくとも1つの美容活性成分を含んでいる」ことに相当する。 引用発明1の「吸収体(ふき取り体A)」が、「活性の成分が溶解」した「液状成分」の「液を含浸」することは、本件補正発明の「媒体」が「少なくとも1つの美容活性成分と溶媒溶液との混合物を吸収するように構成されている」ことに相当する。 引用発明1の「液状成分」は、本件補正発明の「溶媒溶液」に相当する。そして、引用発明1の「袋」が「容器の中」にあることは、本件補正発明の「第2構造」が「第1構造内に含まれ」ることに相当する。 引用発明1の「袋」の「シールされた縁部」は、「袋」の一部であるから、本件補正発明の「溶媒溶液を少なくとも1つの美容活性成分から分ける少なくとも1つの第3構造」に相当する。そして、引用発明1の「袋」が「容器の柔軟性を有する壁面を介して加えられる圧力によって開放」されて「前記液状成分が前記吸収体(ふき取り体A)及び前記活性の成分に含浸し、前記活性の成分が溶解」することは、本件補正発明の「溶媒溶液を少なくとも1つの美容活性成分にさらすように、第2構造が少なくとも1つの第3構造を破れさせるように、第2構造の少なくとも一部に特定量の圧力を加えること」に相当する。 引用発明1の「皮膚であるサポート」は、本件補正発明の「皮膚」に相当するから、引用発明1の「皮膚であるサポートに塗布すること」は、本件補正発明の「皮膚に適用すること」に相当する。そうすると、引用発明1の「前記容器は液を含浸した吸収体(ふき取り体A)を取り出して皮膚であるサポートに塗布することができるように開放可能である」ことは、本件補正発明の「第1構造を開けることと、媒体を第1構造から取り出すことと、媒体を皮膚に適用すること」に相当する。 引用発明1の「活性の成分は、粉体である」ことは、本件補正発明の「少なくとも1つの美容活性成分は、液体以外の形態である」ことに相当する。 よって、本件補正発明と引用発明1は、以下の点で一致している。 <一致点> 「使用者の皮膚に美容製品を適用する方法であって、 少なくとも1つの美容活性成分を含んでいる第1構造と、少なくとも1つの美容活性成分と溶媒溶液との混合物を吸収するように構成されている媒体と、 第1構造内に含まれ、溶媒溶液を含んでいる、第2構造と、 溶媒溶液を少なくとも1つの美容活性成分から分ける少なくとも1つの第3構造と、 を有する配置を提供することと、 溶媒溶液を少なくとも1つの美容活性成分にさらすように、第2構造が少なくとも1つの第3構造を破れさせるように、第2構造の少なくとも一部に特定量の圧力を加えることと、 第1構造を開けることと、 媒体を第1構造から取り出すことと、 媒体を皮膚に適用することと、 を含み、 少なくとも1つの美容活性成分は、液体以外の形態である、 方法。」 そして、本件補正発明と引用発明1は、以下の点で相違している。 <相違点> 本件補正発明は、「少なくとも1つの美容活性成分と溶媒溶液とが互いに接触したかどうかを示すように構成されているインジケーター構造」を備えているのに対して、引用発明1は、容器の少なくとも一部が透明であることにとどまる点。 イ.相違点についての検討 引用文献2(上記(2)イ.)には、混合されるべき複数種類の液体が外部から視認可能な状態で収容保存されており、混合時にその混合状態を視覚的に把握できるように、混合の前後で色調差を発生させる色調差発生剤が配合されている複数液の保存兼混合容器が記載されている。 また、引用文献5(上記(2)ウ.)には、混合されるべき粒体と液体が収容保存されており、混合時にその混合状態を視覚的に把握できる検出窓が設けられた混合容器が記載されている。 ここで、引用発明1において容器の少なくとも一部を透明としているのは、「袋の中身を放出させるべき袋が見分けられるように」(段落【0058】)するためであり、「外容器2を揉み解すことによって使用者は適当にエレメントAをエレメントBに均一に含浸させることができる。」(段落【0054】)とあるから、液状成分と活性の成分を確実に混合し、混合してできた液を、吸収体(ふき取り体A)に確実に含浸することを目的とするものである。 また、引用文献1には、「一般に、袋4が開放されたときは破裂音が聞こえ、成分Bが開放されたことが音によって示される。」(段落【0054】)とあるから、袋が開放して液状成分と活性の成分の混合が始まったことを、音によって使用者に伝えることが記載されている。 そうすると、引用発明1は、液状成分と活性の成分を確実に混合し、混合してできた液を、吸収体(ふき取り体A)に確実に含浸するために容器の少なくとも一部を透明としているものであって、液状成分と活性の成分の混合が始まったことを使用者に伝えることが示唆されているのだから、引用文献2、5に記載された事項(以下「引用文献2記載事項」等という。)を容器の透明部分に適用して、上記<相違点>に係る構成であるインジケーター構造とすることに十分な動機付けがある。 よって、引用発明1に引用文献2、5記載事項を適用し、上記<相違点>に係る構成とすることは、当業者が容易になし得るものである。 したがって、本件補正発明は、引用発明1、及び引用文献2、5記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 (4)本件補正についてのむすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条7項の規定に違反する上記補正を含むものであるから、同法第159条1項の規定において読み替えて準用する同法第53条1項の規定により、却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3.本件発明についての判断 1.本件発明 令和元年9月9日にされた手続補正は、上記第2.のとおり却下されたので、本願の請求項30に係る発明(以下「本件発明」という。)は、平成30年12月4日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項30に記載された事項により特定されるものであり、上記第2.1.(1)に記載のとおりのものである。 2.拒絶査定の概要 平成31年4月16日付けでされた拒絶査定のうち、本件発明に係る拒絶の理由は、請求項30に係る発明は、引用文献1に記載された発明、及び引用文献2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、とするものである。 3.引用文献の記載事項 引用文献1及び2の記載事項は、上記第2.3.(2)ア.及びイ.に示したとおりである。 4.対比・判断 本件補正発明と、引用発明1との対比、及び相違点についての判断は、上記第2.3.(3)に示したとおりである。 また、本件発明は、本件補正発明が「少なくとも1つの美容活性成分は、液体以外の形態である」としていたものが、そのような要件を限定しないものである。 そして、上記第2.3.(3)において引用された引用文献5は、液体と粒体の混合の場合のインジケーター構造を示す文献であり、本件補正発明の「少なくとも1つの美容活性成分は、液体以外の形態である」場合のインジケーター構造に対応したものである。 そうすると、本件発明の発明特定事項をすべて含み、さらに「少なくとも1つの美容活性成分は、液体以外の形態である」という発明特定事項を含む本件補正発明が、上記第2.3.(3)で述べたように、引用発明1、及び引用文献2、5記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、そのような発明特定事項を含まない本件発明も、同様の理由により、原査定の理由のとおり、引用発明1、及び引用文献2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.小括 よって、本件発明は、引用発明1、及び引用文献2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない 第4.むすび 以上のとおり、本願の請求項30に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2020-03-04 |
結審通知日 | 2020-03-10 |
審決日 | 2020-03-25 |
出願番号 | 特願2016-524316(P2016-524316) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B65D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 宮崎 基樹 |
特許庁審判長 |
石井 孝明 |
特許庁審判官 |
井上 茂夫 横溝 顕範 |
発明の名称 | スキンケア成分を提供するための器具、配置および方法 |
代理人 | 正林 真之 |