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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04N
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H04N
審判 査定不服 特29条特許要件(新規) 取り消して特許、登録 H04N
審判 査定不服 特29条の2 取り消して特許、登録 H04N
管理番号 1364863
審判番号 不服2018-3863  
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-03-19 
確定日 2020-08-25 
事件の表示 特願2016-167869「画像符号化装置、画像復号装置、画像符号化方法、画像復号方法及び符号化ビットストリームを記録した記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月28日出願公開、特開2016-226035、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)4月3日(優先権主張 平成24年4月13日、平成24年4月26日)を国際出願日とする出願である特願2014-510127号の一部を、平成28年8月30日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成29年 5月26日付け :拒絶理由通知
同年 8月 3日 :意見書の提出、手続補正
同年12月 7日付け :拒絶査定
平成30年 3月19日 :拒絶査定不服審判請求、手続補正
令和 1年 8月 7日付け :拒絶理由通知(当審)
同年10月 3日 :意見書の提出、手続補正
令和 2年 2月27日付け :拒絶理由通知(当審)
同年 4月24日 :意見書の提出、手続補正

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

1.(拡大先願)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。
2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
3.(発明該当性)この出願の下記の請求項に記載されたものは、下記の点で特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。

理由1(拡大先願)について
本願の請求項1-10に係る発明は、先願明細書に記載された発明と実質的に同一である。

理由2(進歩性)について
本願の請求項1-10に係る発明は、引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易になしえたものである。

理由3(発明該当性)について
本願の請求項9、10は、記録媒体に記録されている符号化ビットストリームに含まれるデータの意味内容(データの生成方法、データの符号化方式、データの用いられ方等も含む)を定義したものに過ぎず、そのような定義は人為的な取決めに止まるものであるから、請求項9、10に記載されたものは、全体としてみて、自然法則を利用した技術的思想の創作とはいえない。
なお、そもそも、請求項9、10の記録媒体に記録されている符号化ビットストリームは、データの有する構造がコンピュータによる情報処理を規定するものではなく、プログラムに類似する性質を有するものとはいえないから、ソフトウエアによる情報処理が、ハードウエア資源を用いて具体的に実現されているかどうかを判断するまでもなく、請求項9、10に記載されたものは、自然法則を利用した技術的思想の創作であるとはいえない。
よって、請求項9、10に記載されたものは、依然として、特許法第29条第1項柱書きでいう「発明」に該当しない。

先願明細書:特願2011-215476号(国際公開第2012/176910号)
引用文献2:Benjamin Bross et al., "High efficiency video coding (HEVC) text specification draft 6", Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG16 WP3 and ISO/IEC JTC1/SC29/WG11 8th Meeting: San Jose, CA, USA, 2012-04-02,[JCTVC-H1003] (version 22), pp.28-29,43-44,177,181

第3 当審拒絶理由の概要
令和2年2月27日付けの当審が通知した拒絶理由の概要は次のとおりである。

(発明該当性)この出願の請求項9-10に記載されたものは、下記の点で特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。


令和1年10月3日付け手続補正により補正された請求項9及び請求項10に係る発明(以下、「本願発明9」及び「本願発明10」という)の「符号化ビットストリーム」は、画像復号装置の復号処理としての逆量子化、復号画像の生成、画素適応オフセット処理を実施するために用いられているという用途を単に提示しているに過ぎず、「符号化ビットストリームを記録した記録媒体」は、該「符号化ビットストリーム」の記録媒体への記録を単に特定しているに過ぎないから、符号化ビットストリームを記録した記録媒体におけるデータ構造に基づく情報処理を具体的に行うものとはいえない。
したがって、本願発明9は、画像復号装置の復号処理としての逆量子化、復号画像の生成、画素適応オフセット処理を実施するために用いられる「符号化ビットストリーム」を記録した「記録媒体」であって、「情報の単なる提示」を行うものに該当するといえる。
以上のとおり、本願発明9は「情報の単なる提示」を行うものであるから、「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当せず、特許法第29条第1項柱書でいう「発明」(「自然法則を利用した技術的思想の創作」)に該当しない。

本願発明10は、本願発明9と同様に「情報の単なる提示」を行うものであるから、「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当せず、特許法第29条第1項柱書でいう「発明」(「自然法則を利用した技術的思想の創作」)に該当しない。

第4 本件発明
本願の請求項1-10に係る発明(以下、「本件発明1」?「本件発明10」という)は、令和2年4月24日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-10に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりのものである。
なお、各構成の符号(A)?(D43)は、説明のために当審において付与したものであり、以下、構成A?構成D43と称する。また、下線は令和2年4月24日の手続補正により補正された箇所を示す。

【請求項1】
入力画像と予測画像との差分画像の変換処理を実施して得られる上記差分画像の変換係数を量子化し、量子化後の変換係数を圧縮データとして出力する画像圧縮手段と、
上記圧縮データから復号された差分画像と上記予測画像の加算結果である復号画像にフィルタ処理を実施するフィルタリング手段と、
上記圧縮データ及び上記フィルタリング手段によりフィルタ処理が実施される際に用いられるフィルタパラメータを符号化して、上記圧縮データ及び上記フィルタパラメータの符号化データが多重化された符号化ビットストリームを生成する符号化手段とを備え、
上記フィルタリング手段は、最大サイズの符号化ブロック単位にクラスの分類手法を決定し、上記分類手法を用いて、当該最大サイズの符号化ブロック内の各画素のクラス分けを実施し、最大サイズの符号化ブロック単位にクラス毎のオフセット値を算出して、上記オフセット値を対応するクラスに属する画素の画素値に加算する画素適応オフセット処理を実施し、
上記符号化手段は、上記画像圧縮手段により変換係数を量子化する際に用いる量子化マトリクスであって各変換係数のスケーリング値からなる量子化マトリクスを生成するための量子化マトリクスパラメータ及び上記フィルタリング手段により決定された最大サイズの符号化ブロック単位のクラスの分類手法を示すインデックスを符号化するとともに、各クラスのオフセット値に関するパラメータをトランケーテッド・ユーナリ符号による2値化処理に基づいて符号化し、
上記符号化手段は、符号化ブロックに対応する符号化モード、適応パラメータセット、予測パラメータ及びブロックの分割情報を符号化する
ことを特徴とする画像符号化装置。

【請求項2】
上記適応パラメータセットは、デブロッキングフィルタ処理に関するパラメータが存在するか否かを示すフラグを含み、
上記フラグが上記パラメータが存在することを示す場合、上記適応パラメータセットは、上記デブロッキングフィルタ処理に関するパラメータをさらに含む
ことを特徴とする請求項1記載の画像符号化装置。

【請求項3】
符号化ビットストリームに多重化された符号化データから圧縮データ、フィルタパラメータ及び上記圧縮データから得られるブロックの各変換係数のスケーリング値からなる量子化マトリクスを生成するための量子化マトリクスパラメータを復号する復号手段と、
上記復号手段により復号された上記量子化マトリクスパラメータを用いて、上記ブロックの変換係数を逆量子化し、逆量子化後の変換係数を逆変換して、差分画像を生成する差分画像生成手段と、
上記差分画像と予測画像とを加算して復号画像を生成する復号画像生成手段と、
上記フィルタパラメータを用いて、上記圧縮データから復号された復号画像にフィルタ処理を実施するフィルタリング手段と、を備え、
上記復号手段は、上記符号化データからフィルタパラメータとして、最大サイズの符号化ブロック単位のクラスの分類手法を示すインデックスを復号するとともに、トランケーテッド・ユーナリ符号により2値化処理された各クラスのオフセット値に関するパラメータを復号し、
上記フィルタリング手段は、上記インデックスを用いて、各最大サイズの符号化ブロックのクラスの分類手法を特定して、上記最大サイズの符号化ブロック単位に特定したクラスの分類手法による各画素のクラス分けを実施し、上記オフセット値を対応するクラスに属する画素の画素値に加算する画素適応オフセット処理を実施し、
上記復号手段は、符号化ブロックに対応する符号化モード、適応パラメータセット、予測パラメータ及びブロックの分割情報を復号する
ことを特徴とする画像復号装置。

【請求項4】
上記適応パラメータセットは、デブロッキングフィルタ処理に関するパラメータが存在するか否かを示すフラグを含み、
上記フラグが上記パラメータが存在することを示す場合、上記適応パラメータセットは、上記デブロッキングフィルタ処理に関するパラメータをさらに含む
ことを特徴とする請求項3記載の画像復号装置。

【請求項5】
画像圧縮手段が、入力画像と予測画像との差分画像の変換処理を実施して得られる上記差分画像の変換係数を量子化し、量子化後の変換係数を圧縮データとして出力する画像圧縮ステップと、
フィルタリング手段が、上記圧縮データから復号された差分画像と上記予測画像の加算結果である復号画像にフィルタ処理を実施するフィルタリング処理ステップと、
符号化手段が、上記圧縮データ及び上記フィルタリング処理ステップでフィルタ処理が実施される際に用いられるフィルタパラメータを符号化して、上記圧縮データ及び上記フィルタパラメータの符号化データが多重化された符号化ビットストリームを生成する符号化処理ステップとを備え、
上記フィルタリング処理ステップでは、最大サイズの符号化ブロック単位にクラスの分類手法を決定し、上記分類手法を用いて、当該最大サイズの符号化ブロック内の各画素のクラス分けを実施し、クラス毎のオフセット値を算出して、上記オフセット値を対応するクラスに属する画素の画素値に加算する画素適応オフセット処理を実施し、
上記符号化処理ステップでは、上記画像圧縮ステップで変換係数を量子化する際に用いる量子化マトリクスであって各変換係数のスケーリング値からなる量子化マトリクスを生成するための量子化マトリクスパラメータ及び上記フィルタリング処理ステップで決定された最大サイズの符号化ブロック単位のクラスの分類手法を示すインデックスを符号化するとともに、各クラスのオフセット値に関するパラメータをトランケーテッド・ユーナリ符号による2値化処理に基づいて符号化し、
上記符号化処理ステップでは、符号化ブロックに対応する符号化モード、適応パラメータセット、予測パラメータ及びブロックの分割情報を符号化する
ことを特徴とする画像符号化方法。

【請求項6】
上記適応パラメータセットは、デブロッキングフィルタ処理に関するパラメータが存在するか否かを示すフラグを含み、
上記フラグが上記パラメータが存在することを示す場合、上記適応パラメータセットは、上記デブロッキングフィルタ処理に関するパラメータをさらに含む
ことを特徴とする請求項5記載の画像符号化方法。

【請求項7】
復号手段が、符号化ビットストリームに多重化された符号化データから圧縮データ、フィルタパラメータ及び上記圧縮データから得られるブロックの各変換係数のスケーリング値からなる量子化マトリクスを生成するための量子化マトリクスパラメータを復号する復号処理ステップと、
差分画像生成手段が、上記復号手段により復号された上記量子化マトリクスパラメータを用いて、上記ブロックの変換係数を逆量子化し、逆量子化後の変換係数を逆変換して、差分画像を生成する差分画像生成ステップと、
復号画像生成手段が、上記差分画像と予測画像とを加算して復号画像を生成する復号画像生成ステップと、
フィルタリング手段が、上記フィルタパラメータを用いて、上記圧縮データから復号された復号画像にフィルタ処理を実施するフィルタリング処理ステップと、を備え、
上記復号処理ステップでは、上記符号化データからフィルタパラメータとして、最大サイズの符号化ブロック単位のクラスの分類手法を示すインデックスを復号するとともに、トランケーテッド・ユーナリ符号により2値化処理された各クラスのオフセット値に関するパラメータを復号し、
上記フィルタリング処理ステップでは、上記インデックスを用いて、各最大サイズの符号化ブロックのクラスの分類手法を特定して、上記最大サイズの符号化ブロック単位に特定したクラスの分類手法による各画素のクラス分けを実施し、上記オフセット値を対応するクラスに属する画素の画素値に加算する画素適応オフセット処理を実施し、
上記復号処理ステップでは、符号化ブロックに対応する符号化モード、適応パラメータセット、予測パラメータ及びブロックの分割情報を復号する
ことを特徴とする画像復号方法。

【請求項8】
上記適応パラメータセットは、デブロッキングフィルタ処理に関するパラメータが存在するか否かを示すフラグを含み、
上記フラグが上記パラメータが存在することを示す場合、上記適応パラメータセットは、上記デブロッキングフィルタ処理に関するパラメータをさらに含む
ことを特徴とする請求項7記載の画像復号方法。

【請求項9】
(A)(A1) 最大サイズの符号化ブロックから階層的に分割される階層数が特定され、
(A2) 上記階層数の上限に至るまで階層的に分割された符号化ブロックの符号化モードを特定する符号化データを含む符号化ビットストリームを記録し、
(A3) 画像復号装置に上記符号化ビットストリームの復号処理を実施させるために用いられる
(A) 記録媒体であって、
(B) 上記符号化ビットストリームは、
(B1) ヘッダ情報、及び上記符号化ブロックの符号化データが多重化され、
(B2) 上記符号化ブロックの符号化データは、
(B21) 入力画像と予測画像との差分画像の変換処理を実施して上記差分画像の変換係数を量子化してなる量子化後の変換係数が入力画像の圧縮データとして画像符号化装置により可変長符号化されたデータと、
(B22) 上記予測画像と上記圧縮データから復号された差分画像との加算結果である局所復号画像にフィルタ処理を実施する際に用いられるフィルタパラメータが上記画像符号化装置により可変長符号化されたデータと、
(B23) 上記符号化ブロックに対応する上記符号化モード、予測パラメータ及び最大符号化ブロック内のブロックの分割情報が上記画像符号化装置により可変長符号化されたデータと、を含み、
(B3) 上記ヘッダ情報は、
(B31) 上記符号化ブロックの最大サイズ及び上記階層数と、
(B32) 上記差分画像の変換係数を量子化する際に用いる量子化マトリクスであって各変換係数のスケーリング値からなる量子化マトリクスを生成するための量子化マトリクスパラメータが上記画像符号化装置により可変長符号化されたデータと、
(B33) 適応パラメータセットが上記画像符号化装置により符号化されたデータと、を含み、
(C) 上記フィルタ処理は、
(C1) 最大サイズの符号化ブロック単位にクラスの分類手法を決定し、
(C2) 上記分類手法を用いて当該最大サイズの符号化ブロック内の各画素のクラス分けを実施し、
(C3) クラス毎のオフセット値を算出して、
(C4) 上記オフセット値を対応するクラスに属する画素の画素値に加算する画素適応オフセット処理を実施する処理であり、
(B4) 上記フィルタパラメータが可変長符号化されたデータは、
(B41) 最大サイズの符号化ブロック単位のクラスの分類手法を示すインデックスが可変長符号化されたデータと、
(B42) 各クラスのオフセット値に関するパラメータがトランケーテッド・ユーナリ符号による2値化処理に基づいて符号化されたデータと、を含み、
(D) 上記画像復号装置が上記復号処理として、
(D1) 上記量子化マトリクスパラメータを復号し、
(D2) 復号した上記量子化マトリクスパラメータを用いて、上記圧縮データから得られるブロックの変換係数を逆量子化し、
(D3) 逆量子化後の変換係数を逆変換して差分画像を生成し、上記差分画像と予測画像とを加算して復号画像を生成し、
(D4) 上記画像復号装置が上記復号画像に対するフィルタ処理として、
(D41) 上記インデックスを用いて、各最大サイズの符号化ブロックのクラスの分類手法を特定し、
(D42) 上記最大サイズの符号化ブロック単位に特定されたクラスの分類手法による各画素のクラス分けを実施し、
(D43) 上記オフセット値を対応するクラスに属する画素の画素値に加算する画素適応オフセット処理を実施し、するために用いられるものであり、
(D21) 上記量子化マトリクスパラメータが示す新たな量子化マトリクスの存在の有無に応じて、上記ブロックの変換係数の逆量子化に用いるマトリクスを変更して逆量子化する
(A) ことを特徴とする符号化ビットストリームを記録した記録媒体。

【請求項10】
(B33)上記適応パラメータセットは、
(B331)デブロッキングフィルタ処理に関するパラメータが存在するか否かを示すフラグを含み、
(B332)上記フラグが上記パラメータが存在することを示す場合、上記適応パラメータセットは、上記デブロッキングフィルタ処理に関するパラメータをさらに含む
ことを特徴とする請求項9記載の記録媒体。

第4 判断
本件発明9及び本件発明10が、特許法第29条第1項柱書でいう「発明」(「自然法則を利用した技術的思想の創作」)に該当するか、以下に検討する。

1.本件発明9の「記録媒体」の発明特定事項について

(1)「記録媒体」の構成
本件発明9の「記録媒体」は、「画像復号装置に符号化ビットストリームの復号処理を実施させるために用いられる」(構成A3)ものであって、「符号化ビットストリームを記録し」(構成A2)た記録媒体である。

(2)「符号化ビットストリーム」の構成
(ア)本件発明9の「符号化ビットストリーム」は、最大サイズの符号化ブロックから階層数の上限に至るまで階層的に分割された「符号化ブロック」の「符号化モードを特定する符号化データ」(構成A1、構成A2)を含む。
そして、本件発明9の「符号化ビットストリーム」は、「ヘッダ情報」(構成B1)及び「符号化ブロックの符号化データ」(構成B1)が多重化されている。

(イ)構成B1の「符号化ブロックの符号化データ」は、
「量子化後の変換係数が入力画像の圧縮データ」として「可変長符号化されたデータ」(構成B21)と、
「フィルタパラメータ」が「可変長符号化されたデータ」(構成B22)、並びに、
「符号化モード」、「予測パラメータ」及び「ブロックの分割情報」が「可変長符号化されたデータ」(構成B23)と、を含む。

(ウ)構成B1の「ヘッダ情報」は、
符号化ブロックの「最大サイズ」及び「階層数」(構成B31)と、
「量子化マトリクスパラメータ」が「可変長符号化されたデータ」(構成B32)と、
「適応パラメータセット」が「符号化されたデータ」(構成B33)と、を含む。

(エ)構成B22の「フィルタパラメータが可変長符号化されたデータ」は、
「最大サイズの符号化ブロック単位のクラスの分類手法を示すインデックス」が「可変長符号化されたデータ」(構成B41)と、
「各クラスのオフセット値に関するパラメータ」が「符号化されたデータ」(構成B42)と、を含む。

(3)「符号化ビットストリーム」に基づき実行される情報処理
(ア)本件発明9の「符号化ビットストリーム」は、構成Dに特定される画像復号装置の復号処理に供する情報である。
構成Dの復号処理は、「量子化マトリクスパラメータを復号」(構成D1)、「圧縮データから得られるブロックの変換係数を逆量子化」(構成D2)、「復号画像を生成」(構成D3)、「復号画像に対するフィルタ処理」(構成C、構成D4)である。

(イ)構成D1の情報処理に供される情報は、構成B1の「ヘッダ情報」に含まれる構成B32の「量子化マトリクスパラメータ」である。
構成D1の情報処理は、構成B32の「量子化マトリクスパラメータ」を復号する。

(ウ)構成D2の情報処理に供される情報である「圧縮データ」は、上記(2)(イ)のとおり、構成B21の「量子化後の変換係数」である。
構成D2の情報処理は、構成D1で復号した「量子化マトリクスパラメータ」を用いて、構成B21の「量子化後の変換係数」を逆量子化する。
また、構成D2の情報処理は、構成D21の情報処理を実施するものであって、構成D21の情報処理は、構成D1で復号した「量子化マトリクスパラメータ」(新たな量子化マトリクスの存在の有無)に応じて、構成B21の「量子化後の変換係数」の逆量子化を変更する。

(エ)構成D3の情報処理に供される情報は、構成D2で逆量子化した「逆量子化後の変換係数」である。
構成D3の情報処理は、構成D2で逆量子化した「逆量子化後の変換係数」から「復号画像」を生成する。

(オ)構成C及び構成D4の情報処理に供される情報は、最大サイズの符号化ブロック単位で構成B22の「フィルタパラメータ」に含まれる構成B41の「インデックス」及び構成B42の「オフセット値に関するパラメータ」、並びに、構成D3で生成した「復号画像」である。
構成C及び構成D4の情報処理(フィルタ処理)は、構成C1及び構成D41の情報処理、構成C2及び構成D42の情報処理、構成C3の情報処理、並びに、構成C4及び構成D43の情報処理(画素適応オフセット処理)を実施する。

(オ1)構成C1及び構成D41の情報処理は、構成B41の「インデックス」を用いて各最大サイズの符号化ブロック単位のクラスの「分類手法」を決定(特定)する。
(オ2)構成C2及び構成D42の情報処理は、構成C1及び構成D41で決定した「分類手法」を用いて、構成D3で生成した「復号画像」の各画素のクラス分けを実施する。
(オ3)構成C3の情報処理は、(構成B42の「オフセット値に関するパラメータ」から)「オフセット値」を算出する。
(オ4)構成C4及び構成D43の情報処理(画素適応オフセット処理)は、構成C3で算出した「オフセット値」を用いて、構成C2及び構成D42でクラス分けした「クラスに属する画素の画素値」に加算処理を行う。

2.本件発明9の発明該当性についての判断

(1)「符号化ビットストリーム」のデータ構造について
上記1(2)から、本件発明9の「符号化ビットストリーム」の「データ構造」について、以下のことがいえる。

(ア)上記1(2)(ア)の、本件発明9の「符号化ビットストリーム」は、最大サイズの符号化ブロックから階層数の上限に至るまで階層的に分割された「符号化ブロック」を含むこと(構成A2)、また、上記1(2)(ウ)の構成B1の「ヘッダ情報」と「符号化ブロックの符号化データ」が多重化されていることから、
本件発明9の「符号化ビットストリーム」は、「ヘッダ情報」と最大サイズの符号化ブロックから階層的に分割された「符号化ブロック」の「符号化ブロックの符号化データ」が多重化されているという階層構造の「データ構造」を有するといえる。

(イ)上記1(2)(ウ)から、本件発明9の「符号化ビットストリーム」に含まれる構成B1の「ヘッダ情報」は、「最大サイズ」及び「階層数」(構成B31)、「量子化マトリクスパラメータ」(構成B32)及び「適応パラメータセット」(構成B33)を含むことから、
本件発明9の「符号化ビットストリーム」に含まれる構成B1の「ヘッダ情報」は、「最大サイズ」及び「階層数」、「量子化マトリクスパラメータ」及び「適応パラメータセット」を独立した単位で含む「データ構造」を有するといえる。

(ウ)上記1(2)(イ)から、本件発明9の「符号化ビットストリーム」に含まれる構成B1の「符号化ブロックの符号化データ」は、「量子化後の変換係数」(構成B21)、「フィルタパラメータ」(構成B22)及び「符号化モード、予測パラメータ及びブロックの分割情報」(構成B23)を含むことから、
本件発明9の「符号化ビットストリーム」に含まれる構成B1の「符号化ブロックの符号化データ」は、「量子化後の変換係数」(構成B21)、「フィルタパラメータ」(構成B22)及び「符号化モード、予測パラメータ及びブロックの分割情報」(構成B23)を独立した単位で含む「データ構造」を有するといえる。

(エ)上記(ア)から、本件発明9の「符号化ビットストリーム」と、構成B1の「ヘッダ情報」及び「符号化ブロックの符号化データ」は、階層関係を有する情報が多重化されているという階層構造の「データ構造」を有するといえるから、本件発明9の「符号化ビットストリーム」は、データ要素間の論理的関係と階層関係が表された「データ構造」を有しているといえる。
また、上記(イ)及び(ウ)から、構成B32の「量子化マトリクスパラメータ」は構成B1の「ヘッダ情報」に含まれ、構成B22の「フィルタパラメータ」は構成B1の「符号化ブロックの符号化データ」に含まれることで独立した単位で符号化されるから、本件発明9の「符号化ビットストリーム」は、「量子化マトリクスパラメータ」及び「フィルタパラメータ」について、データ要素間の論理的関係と階層関係が表された「データ構造」を有しているといえる。

(オ)したがって、本件発明9の「記録媒体」は、上記(エ)の「符号化ビットストリーム」を記録したものであるから、データ要素間の論理的関係と階層関係が表された「データ構造」を有するといえる。

(2)「データ構造に基づく情報処理を具体的に行うもの」について
(ア)構成D1、構成D2及びD3の情報処理について
構成D1、構成D2及びD3の情報処理の演算対象のデータ要素について検討する。
当該演算対象のデータ要素の一つは、上記1(3)(イ)のとおり、構成B1の「ヘッダ情報」に含まれる「量子化マトリクスパラメータ」であり、他のデータ要素は、上記1(3)(ウ)のとおり、構成B1の「符号化ブロックの符号化データ」が含む「量子化後の変換係数」である。

ここで、構成B1の「ヘッダ情報」は、「符号化ビットストリーム」に含まれるデータ要素であり、構成B1の「符号化ブロックの符号化データ」は、「最大サイズの符号化ブロック」から階層的に分割されて多重化された「符号化ブロック」に含まれるデータ要素といえる。

そうすると、構成D1、構成D2及びD3の情報処理は、「符号化ビットストリーム」に含まれる「量子化マトリクスパラメータ」が、「最大サイズの符号化ブロック」から階層的に分割されて多重化された「符号化ブロック」に対しても対応する、という「データ要素間の階層的関係により定められる情報処理」であるといえる。

(イ)構成C及び構成D4の情報処理について
構成C及び構成D4の情報処理の演算対象のデータ要素について検討する。
当該演算対象のデータ要素の一つは、上記1(3)(オ)のとおり、最大サイズの符号化ブロック単位で構成B22の「フィルタパラメータ」に含まれる構成B41の「インデックス」及び構成B42の「オフセット値に関するパラメータ」であり、他のデータ要素は、構成D3で生成した「復号画像」である。

ここで、構成B22の「フィルタパラメータ」及び構成D3で生成した「復号画像」は、「最大サイズの符号化ブロック」から階層的に分割されて多重化された構成B1の「符号化ブロックの符号化データ」に含まれるデータ要素といえる。

そうすると、構成C及び構成D4の情報処理は、階層的に分割されて多重化された構成B1の「符号化ブロック」に対応する「インデックス」及び「オフセット値に関するパラメータ」が、「最大サイズの符号化ブロック」単位で定められている、という「データ要素間の階層関係により定められる情報処理」であるといえる。

(ウ)また、上記(ア)および(イ)から、構成D1、構成D2及び構成D3の情報処理に用いる「量子化マトリクスパラメータ」と、構成C及び構成D4の情報処理に用いる「フィルタパラメータ」は、いずれも「符号化ブロック」に対応するパラメータデータ要素であるといえる。
他方、「量子化マトリクスパラメータ」は「ヘッダ情報」に含まれ、「フィルタパラメータ」は、「符号化ブロックの符号化データ」に含まれることで、独立して符号化されるパラメータデータ要素といえる。

(エ)上記(ア)?(ウ)から総合すると、
本件発明9の情報処理は、「符号化ビットストリーム」の「データ要素間の階層的関係により定められる情報処理」であり、「符号化ブロック」に対応する2つのパラメータデータ要素が独立して符号化される、という「データ要素間の論理的関係により定められる情報処理」であるから、本件発明9の情報処理は、本件発明9の「符号化ビットストリーム」の「データ要素間の論理的関係と階層関係が表されたデータ構造」に基づく具体的な情報処理であるであるといえる。

(オ)よって、本件発明9の「符号化ビットストリーム」は、「データ要素間の論理的関係と階層関係が表されたデータ構造」を有しており、画像復号装置に当該「符号化ビットストリーム」の復号処理をデータ要素間の論理的関係と階層関係に基づく具体的な情報処理として実施させるものといえる。
さらに、本件発明9の「符号化ビットストリームを記録した記録媒体」は、当該「符号化ビットストリーム」の記録媒体への記録を特定しているものであるが、「符号化ビットストリーム」それ自体のデータ構造がデータ要素間の論理的関係と階層関係に基づく情報処理を具体的に行うものであるといえる以上、これを記録した記録媒体についても、データ要素間の論理的関係と階層関係に基づく情報処理を具体的に行うものといえる。

(3) 小括
したがって、本件発明9は、データ構造に基づく情報処理を具体的に行うものということができるから、「情報の単なる提示」を行うものに該当するものではなく、情報の提示それ自体に「符号化ビットストリーム」の情報及び構造に関する技術的特徴を有するものであるから、特許法第2条第1項における「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当し、特許法第29条第1項柱書でいう「発明」に該当する。

3.本件発明10について
上記2のとおり、本件発明9が特許法第29条第1項柱書きでいう「発明」に該当する以上、構成B33の「適応パラメータセット」についての限定を行った本件発明10についても、同様に、特許法第2条第1項における「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当し、特許法第29条第1項柱書でいう「発明」に該当する。

第5 原査定についての判断
原査定の拒絶の理由の(理由1)、(理由2)については、本件発明1-10は、上記先願発明と同一であるということも、引用文献2記載の発明から当業者が容易になしえた発明であるということもできない。
よって、原査定を維持することはできない。

第6 むすび
以上のとおり、本願は、原査定の理由によって拒絶することはできない。
また、他に拒絶の理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-08-04 
出願番号 特願2016-167869(P2016-167869)
審決分類 P 1 8・ 1- WY (H04N)
P 1 8・ 16- WY (H04N)
P 1 8・ 113- WY (H04N)
P 1 8・ 121- WY (H04N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 坂東 大五郎片岡 利延  
特許庁審判長 清水 正一
特許庁審判官 曽我 亮司
川崎 優
発明の名称 画像符号化装置、画像復号装置、画像符号化方法、画像復号方法及び符号化ビットストリームを記録した記録媒体  
代理人 坂元 辰哉  
代理人 特許業務法人山王内外特許事務所  
代理人 辻岡 将昭  
代理人 中島 成  
代理人 井上 和真  
代理人 濱田 初音  
代理人 田澤 英昭  
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