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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H01M
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01M
審判 全部申し立て 2項進歩性  H01M
管理番号 1364965
異議申立番号 異議2020-700290  
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-09-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-04-23 
確定日 2020-08-18 
異議申立件数
事件の表示 特許第6595153号発明「硫化物系固体電解質粒子」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 
結論 特許第6595153号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6595153号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし5に係る特許についての出願は,平成31年 3月12日(優先権主張 平成30年 3月12日)を国際出願日とする出願(特願2019-539878)であって,令和 1年10月 4日にその特許権の設定の登録がされ,同年10月23日に特許掲載公報が発行された。その後,令和 2年 4月23日に特許異議申立人 中野和子(以下「申立人」という。)により,すべての請求項に対して,特許異議の申立てがされたものである。

2 本件発明
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は,各々,その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
リチウム(Li)、リン(P)、硫黄(S)及びハロゲン(Ha)からなる立方晶系Argyrodite型結晶構造の結晶相を有する硫化物系固体電解質粒子であって、
XPS(X?ray Photoelectron Spectroscopy)により測定される、粒子表面から深さ100nmの位置(SiO_(2)スパッタレート換算)におけるハロゲンの元素比率Z_(Ha1)に対する、粒子表面から深さ5nmの位置(SiO_(2)スパッタレート換算)におけるハロゲン(Ha)の元素比率Z_(Ha2)の比率(Z_(Ha2)/Z_(Ha1))が0.5以下であり、且つ、
粒子表面から深さ5nmの位置(SiO_(2)スパッタレート換算)におけるリン(P)、硫黄(S)、酸素(O)及びハロゲン(Ha)の元素比率の合計Z_(A2)に対する、酸素の元素比率Z_(O2)の比率(Z_(O2)/Z_(A2))が0.5以上であることを特徴とする硫化物系固体電解質粒子。
【請求項2】
粒子表面から深さ5nmの位置(SiO_(2)スパッタレート換算)におけるリン(P)、硫黄(S)、酸素(O)及びハロゲン(Ha)の元素比率の合計Z_(A2)に対する、ハロゲン(Ha)の元素比率Z_(Ha2)の比率(Z_(Ha2)/Z_(A2))が0.1以下であることを特徴とする請求項1に記載の硫化物系固体電解質粒子。
【請求項3】
粒子表面から深さ100nmの位置(SiO_(2)スパッタレート換算)におけるリン(P)、硫黄(S)、酸素(O)及びハロゲン(Ha)の元素比率の合計Z_(A1)に対する、ハロゲン(Ha)の元素比率Z_(Ha1)の比率(Z_(Ha1)/Z_(A1))が0.03?0.3であることを特徴とする請求項1又は2に記載の硫化物系固体電解質粒子。
【請求項4】
請求項1?3の何れかに記載の硫化物系固体電解質粒子と、正極活物質及び/又は負極活物質とを含むことを特徴とするリチウム二次電池用の電極材。
【請求項5】
請求項1?3の何れかに記載の硫化物系固体電解質粒子を含む層を備えたリチウム二次電池。」

3 申立ての理由の概要
申立人は,甲第1号証ないし甲第5号証を提示し,本件特許は次の理由により取り消されるべきものである旨主張している。

(1)申立理由1(新規性)
本件特許の請求項1ないし3に係る発明は,甲第1号証に記載された発明であり,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができないものであるから,その発明についての特許は,特許法第113条第2号に該当し,取り消されるべきものである(当審注:特許異議申立書第10頁に「本件特許発明1?5」とあるのは,特許異議申立書全体との平仄よりみて「本件特許発明1?3」の誤記と認める。)。

(2)申立理由2(進歩性)
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は,甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基いて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,その発明についての特許は,特許法第113条第2号に該当し,取り消されるべきものである。

(3)申立理由3(明確性)
本件特許の請求項1およびこれを引用する請求項2ないし5に係る発明は明確でなく,本件特許は,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから,特許法第113条第4号に該当し,取り消されるべきものである。

(4)申立理由4(サポート要件)
本件特許の請求項1およびこれを引用する請求項2ないし5に係る発明は発明の詳細な説明に記載されたものでなく,本件特許は,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから,特許法第113条第4号に該当し,取り消されるべきものである。

(証拠方法)
甲第1号証:特開2016-24874号公報
甲第2号証:特開2012-94445号公報
甲第3号証:特開2015-225776号公報
甲第4号証:Hans-Joerg Deiseroth, et.al., Angewandte Chemie Int. Ed. 2008, 47, p.755-758
甲第4号証の2:甲第4号証の部分翻訳文(申立人作成)
甲第5号証:特開2018-26321号公報
(以下,各々「甲1」ないし「甲5」という。)

4 甲号証の記載
(1)甲1
ア 甲1は「リチウムイオン電池用硫化物系固体電解質」(発明の名称)に関するものであって,次の記載がある(なお,「…」によって記載の省略を表す。)。
「【請求項1】
立方晶系Argyrodite型結晶構造を有し、組成式(1):Li_(7-x-2y)PS_(6-x-y)Cl_(x)で表される化合物を含有し、且つ、前記組成式(1)において、0.8≦x≦1.7、0<y≦-0.25x+0.5を満足することを特徴とするリチウムイオン電池用硫化物系固体電解質。」

「【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明者は、リチウムイオン電池に用いる固体電解質材料として、立方晶系Argyrodite型結晶構造を有し、Li_(7-x)PS_(6-x)Cl_(x)で表される化合物に着目した。
しかしながら、かかる化合物は、水分や酸素との反応性が極めて高いため、リチウムイオン電池の固体電解質として使用して全固体リチウムイオン電池を組み立てる際には、超低露点の不活性ガスが供給されるグローブボックスなどの環境内で全固体リチウムイオン電池の組立作業を行う必要があり、工業的に利用するには課題を抱えていた。
【0013】
そこで本発明は、立方晶系Argyrodite型結晶構造を有し、Li_(7-x)PS_(6-x)Cl_(x)で表される化合物を含有するリチウムイオン電池用硫化物系固体電解質に関し、耐水性及び耐酸化性を改良し、例えばドライルームなどの超低露点の不活性ガスが供給されない環境内でも全固体リチウムイオン電池の組立作業を行うことができる、新たなリチウムイオン電池用硫化物系固体電解質を提案せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、立方晶系Argyrodite型結晶構造を有し、組成式(1):Li_(7-x-2y)PS_(6-x-y)Cl_(x)で表される化合物を含有し、且つ、前記組成式において、0.8≦x≦1.7、0<y≦ -0.25x+0.5を満足することを特徴とするリチウムイオン電池用硫化物系固体電解質を提案する。
【発明の効果】
【0015】
本発明が提案する硫化物系固体電解質は、Li_(7-x)PS_(6-x)Cl_(x)で表される化合物を含有する硫化物系固体電解質に比べて、耐水性及び耐酸化性が格段に優れており、乾燥空気中で取り扱っても特性劣化が少ないため、例えばドライルームなどの超低露点の不活性ガスが供給されない環境内でも、全固体リチウムイオン電池の組立作業を行うことができる。」

「【0032】
…また、上記の原料は、大気中で極めて不安定で、水分と反応して分解し、硫化水素ガスを発生したり、酸化したりするため、不活性ガス雰囲気に置換したグローブボックス等を通じて、原料を炉内にセットして焼成を行うのが好ましい。
【0033】
このように製造することにより、硫黄欠損の生成を抑制することができ、電子伝導性を低くすることができる。そのため、本固体電解質を用いて全固体リチウムイオン電池を作製すれば、電池特性である充放電特性やサイクル特性を良好にすることができる。」

「【0039】
(実施例・比較例)
表1に示した組成式となるように、硫化リチウム(Li_(2)S)粉末と、硫化リン(P_(2)S_(5))粉末と、塩化リチウム(LiCl)粉末とを用い、全量で5gになるようにそれぞれを秤量し、ボールミルで15時間粉砕混合して混合粉末を調製した。この混合粉末をカーボン製の容器に充填し、これを管状電気炉にて硫化水素ガス(H_(2)S、純度100%)を1.0L/min流通させながら、昇降温速度200℃/hにて500℃で4時間焼成した。その後、試料を乳鉢で解砕し、目開き53μmの篩いで整粒して粉末状のサンプルを得た。
この際、上記秤量、混合、電気炉へのセット、電気炉からの取り出し、解砕及び整粒作業は全て、十分に乾燥されたArガス(露点-60℃以下)で置換されたグローブボックス内で実施した。
【0040】
<組成の測定>
実施例・比較例で得られたサンプルについて、組成をICP発光分析法で測定した。
【0041】
<生成相の特定>
実施例・比較例で得られた粉末状のサンプルをX線回折法(XRD)で分析し、生成相を特定した。
【0042】
<初期導電率の測定>
実施例・比較例で得たサンプルを、十分に乾燥されたArガス(露点-60℃以下)で置換されたグローブボックス内で200MPaの圧力にて一軸加圧成形して直径10mm、厚み2?5mmのペレットを作製し、更にペレット上下両面に電極としてのカーボンペーストを塗布した後、180℃で30分熱処理を行い、イオン導電率測定用サンプルを作製した。イオン導電率測定は、室温(25℃)にて交流インピーダンス法にて行った。
【0043】
<乾燥空気曝露後の導電率の測定>
実施例・比較例で得たサンプルを、平均露点-45℃の乾燥空気で置換されたグローブボックス内に入れて6時間放置した。その後、サンプルを再び十分に乾燥されたArガス(露点-60℃以下)で置換されたグローブボックス内に入れ、初期導電率の測定と同様にイオン導電率を測定した。
【0044】
表1中の「x」「y」はそれぞれ、組成式:Li_(7-x-2y)PS_(6-x-y)Cl_(x)のxyを示し、「Li_(2)S過少割合」は当該組成式におけるxyの関係、すなわち[y/(2-x)]を示し、「初期」は初期導電率を示し、「乾燥空気曝露6h」は6時間乾燥空気曝露後の導電率を示し、「導電率維持率」は初期導電率に対する6時間乾燥空気曝露後の導電率の維持割合(%)を示す。
また、表1の生成相の項目において、「A」は立方晶系Argyrodite型結晶構造のLi_(7-x-2y)PS_(6-x-y)Cl_(x)相を示し、「A+Li_(3)PS_(4)」とは、該Li_(7-x-2y)PS_(6-x-y)Cl_(x)相とLi_(3)PS_(4)相の混合相を示す。また、「A+Li_(3)PS_(4)(小)」とは、XRDチャートにおいて、Li_(3)PS_(4)が確認されたものの、そのピーク強度が、Li_(7-x-2y)PS_(6-x-y)Cl_(x)のピーク強度の3%未満であることを示している。
【0045】
【表1】



イ 上記アの摘示,特に【請求項1】,段落【0039】,【0043】の記載によると,甲1には,次の発明が記載されている。
「立方晶系Argyrodite型結晶構造を有し、組成式(1):Li_(7-x-2y)PS_(6-x-y)Cl_(x)で表される化合物を含有し、且つ、前記組成式(1)において、0.8≦x≦1.7、0<y≦-0.25x+0.5を満足するリチウムイオン電池用硫化物系固体電解質の粉末状のサンプルであって、
上記サンプルは、硫化リチウム(Li_(2)S)粉末と、硫化リン(P_(2)S_(5))粉末と、塩化リチウム(LiCl)粉末とを用い、それぞれを秤量し、ボールミルで粉砕混合して混合粉末を調製し、この混合粉末をカーボン製の容器に充填し、これを管状電気炉にて硫化水素ガスを流通させながら、昇降温速度200℃/hにて500℃で4時間焼成し、その後、試料を乳鉢で解砕し、整粒して得られたものであり、
上記サンプルを得る際、上記秤量、混合、電気炉へのセット、電気炉からの取り出し、解砕及び整粒作業は全て、十分に乾燥されたArガス(露点-60℃以下)で置換されたグローブボックス内で実施し、
得られた上記サンプルを、平均露点-45℃の乾燥空気で置換されたグローブボックス内に入れて6時間放置し、その後、上記サンプルを再び十分に乾燥されたArガス(露点-60℃以下)で置換されたグローブボックス内に入れたものである、リチウムイオン電池用硫化物系固体電解質の粉末状のサンプル」
(以下「甲1発明」という。)

(2)甲2は「硫化物固体電解質粒子」(発明の名称)に関するものであって,次の記載がある。
ア「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、酸化物活物質及び硫化物固体電解質材料の界面に着目する試みはなされているものの、高抵抗部位の生成による界面抵抗の増加を抑制し、また優れた製造コストを実現することは困難であった。本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、酸化物活物質および硫化物固体電解質材料の反応によって生じる高抵抗部位の生成を抑制でき、界面抵抗の低い硫化物固体電解質粒子を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明においては、表面に自らが酸化されてなる酸化物層を有し、硫化物固体電解質材料からなることを特徴とする硫化物固体電解質粒子を提供する。
【0010】
本発明によれば、酸化物層を有することによって、硫化物固体電解質粒子と酸化物活物質との界面に高抵抗部位が生成されることを抑制し、上記硫化物固体電解質粒子の劣化を抑制することができる。また、全固体電池とした際に上記全固体電池の耐久性を向上させることができる。
【0011】
上記発明においては、上記硫化物固体電解質粒子表面の酸素/硫黄元素比率が、表面より30nm(SiO_(2)スパッタレート換算)の位置の酸素/硫黄元素比率に対して2倍以上であることが好ましい。硫化物固体電解質粒子と酸化物活物質との界面での高抵抗部位の生成を抑制し、上記硫化物固体電解質粒子の劣化を抑制することができるため、全固体電池の耐久性を向上させることができるからである。」

イ「【0088】
(1)表面酸化工程
本態様における表面酸化工程は、硫化物固体電解質材料が酸化剤と接触し、上記硫化物固体電解質材料表面が酸化され、表面に酸化物層を有する硫化物固体電解質粒子となる工程である。
【0089】
本工程で用いられる酸化剤は、硫化物固体電解質材料表面を酸化し、表面に酸化物層を形成できるものであれば特に限定するものではないが、例えば、気体を用いることができる。上記気体としては、酸素含有気体が挙げられる。具体的には、大気や純酸素等が挙げられる。
【0090】
また、上記の気体は水分量が少ないことが好ましい。水分を含有している場合、後述する乾燥工程が必要となるからである。
【0091】
本工程に用いられる表面酸化方法は、硫化物固体電解質材料表面を酸化し、酸化物層を形成できるものであれば特に限定するものではなく、通常用いられる方法を用いることができる。具体的には、硫化物固体電解質材料を所定の温度、湿度を持つ気体中に、所定の時間保持する方法等が挙げられる。」

ウ「【実施例】
【0117】
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明する。
[実施例1]
(硫化物固体電解質材料の合成)
原料組成物として硫化リチウム(Li_(2)S)および硫化リン(P_(2)S_(5))を用い、これらの粉末をアルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、Li_(2)S 0.442g、P_(2)S_(5 )0.305gおよびSiS_(2) 0.253gを秤量し、これらをメノウ乳鉢で混合した。この際、Li_(2)S、P_(2)S_(5)およびSiS_(2)の割合は、モル比率71:12.5:16.5であった。次に、原料組成物1gをジルコニア(ZrO_(2))製のボールとともにジルコニアポットに投入し、ポットを完全に密閉した。このポットを遊星ボールミル処理機に取り付け、回転数370rpmで40時間メカニカルミリングを行い、硫化物固体電解質材料(71Li_(2)S-12.5P_(2)S_(5)-16.5SiS_(2))を得た。
【0118】
(酸化物層形成)
得られた硫化物固体電解質材料を大気中に1分間曝露した後、5分間真空乾燥を行った。同様の1分間の大気曝露と5分間の真空乾燥からなる表面酸化工程と乾燥工程とを3回繰り返して、上記硫化物固体電解質材料表面に自らが酸化されてなる酸化物層を形成した硫化物固体電解質粒子を得た。
【0119】?【0120】(略)
【0121】
[比較例]
実施例1の表面酸化工程および乾燥工程を行わなかった以外はすべて同様にして硫化物固体電解質粒子を合成し、全固体電池を作製した。
【0122】
[評価]
(酸素/硫黄元素比率測定)
実施例1および比較例で得られた硫化物固体電解質粒子の表面の酸素/硫黄元素比率(A)と、表面より30nm(SiO_(2)スパッタレート換算)の位置の酸素/硫黄元素比率(B)をそれぞれXPSにより測定した。また、表面により30nmにおける酸素/硫黄元素比率に対する表面の酸素/硫黄元素比率(A/B)を求めた。得られた結果を表1に示す。
【0123】



(3)甲3は「全固体電池の製造方法」(発明の名称)に関するものであって,次の記載がある。
ア「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
全固体電池を構成する正極層及び負極層の電極層の外周部は強度が比較的弱く、取り扱い中に衝撃が加わりやすい箇所でもあるため、電極層外周部に含まれる活物質、固体電解質、導電助剤等の粒子が脱落することがあった。
【0008】?【0010】(略)
【0011】
そのため、電池性能を低下させずに簡便な方法で電極層の外周部の強度を向上することができる全固体電池の製造方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題に対して、本発明者は、硫化物系固体電解質を含む電極層を、露点温度が-30℃以上の雰囲気に暴露することによって、電極層の外周部の結着力を向上して電極層の強度を向上できることを見出した。
【0013】
本発明は、正極層及び負極層、正極層と負極層との間に配置される固体電解質層、正極層に接して配置される正極集電体層、並びに負極層に接して配置される負極集電体層を含む全固体電池の製造方法であって、
正極層及び負極層はそれぞれ活物質を含み、正極層及び負極層のうち少なくとも一方は硫化物系固体電解質を含む電極層であり、
硫化物系固体電解質を含む電極層の第1主表面及び第2主表面のそれぞれの少なくとも中央部を、周囲雰囲気から遮断する工程、並びに
電極層を、遮断した状態で、露点温度が-30℃以上の雰囲気中に暴露する工程、
を含む、全固体電池の製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電池性能を低下させずに簡便な方法で電極層の外周部の強度を向上することができる全固体電池の製造方法を提供することができる。」

イ「【0017】
第1主表面及び第2主表面のそれぞれの少なくとも中央部を周囲雰囲気から遮断した状態で、活物質及び硫化物系固体電解質を含む電極層を、露点温度が-30℃以上の雰囲気中に暴露することによって、電極層の外周部に含まれる硫化物系固体電解質の結着力を向上し、活物質、固体電解質、導電助剤等の構成粒子の脱落が最も発生しやすい電極層の外周部の強度を向上することができる。」

ウ「【0036】
電極層の強度向上は、電極層の結着力の向上によってもたらされる。電極層の結着力向上は、引張試験機を用いて評価することができる。例えば、露点温度が-30℃以上の雰囲気に暴露した電極層を所定の寸法に打ち抜き、両面に両面テープを貼り付けた打ち抜いた電極層を、引張試験機に設置して引張試験を行い、破断までの最大引張力を結着力として測定することができる。
【0037】
硫化物系固体電解質を含む電極層の露点温度が-30℃以上の雰囲気への暴露による結着力向上は、硫化物系固体電解質の湿分への暴露による結着力向上によるものである。硫化物系固体電解質の湿分への暴露による結着力向上のメカニズムは、理論に束縛されるものではないが、硫化物系固体電解質の表面が水分により潮解し粘性を発現するためであると推察される。」

エ「【0111】
図28に、比較例1の結着力を1(基準)としたときの実施例1の結着力を示す。図28に示されるように、露点温度が-30℃のアルゴン雰囲気中に暴露することによって、正極層の結着力が2.8倍に向上した。」

オ「【図28】



(4)甲4は「Li_(6)PS_(5)X: A Class of Crystalline Li-Rich Solids With an Unusually High Li^(+) Mobility」(当審訳:Li_(6)PS_(5)X:極めて高いLi^(+)イオン伝導性を有するLiに富んだ固体結晶群)と題する技術論文であって,次の記載がある。
ア(第755頁左欄1?4行)
「The mineral argyrodite (Ag_(8)GeS_(6)) was the first representative of a group of solids known as argyrodites^([1,2]) that are characterized, in general, by a high ionic conductivity and mobility of their Ag^(+) ions.」
(申立人訳:天然鉱物のアルジロダイト (Ag_(8)GeS_(6)) は,高いイオン伝導性と銀イオンの移動度に特徴づけられるアルジロダイト鉱物のグループを代表するものである。)

イ(第755頁右欄20?25行)
「Li_(6)PS_(5)X (X: Cl, Br, I) represents a series of argyrodites whose chemical formula is based on a well-known substitution pattern for the corresponding Ag and Cu compounds characterized by the replacement of one chalcogen by one halogen atom with S and X atoms ordered on separate crystallographic positions.」
(申立人訳:Li_(6)PS_(5)X (X: Cl, Br, I) は,アルジロダイトの一連のものであり,その化学式はよく知られたAgとCu化合物の置換パターンを基礎としており,結晶学的に異なる位置に配置されるSとXについて,一つのカルコゲンを一つのハロゲン原子で置換することで特徴づけられる。)

ウ(第756頁 図1)



(当審訳:図1 a)PS_(4)四面体,一つのS^(2-)及び複数のI^(-)イオンの分布を示す Li_(6)PS_(5)I の結晶構造の一部分。b)略)

(5)甲5は「硫化物固体電解質材料、正極材料、および、電池」(発明の名称)に関するものであって,次の記載がある。
ア「【0022】
さらに、x≦4.06が満たされることで、硫化物固体電解質材料の最表面(すなわち、酸化物層101の最表面)における酸素/硫黄元素比率が、過剰に大きくなることを防止できる。言い換えれば、硫化物固体電解質材料の最表面における酸素結合の割合が、過剰に大きくなることを防止できる。これにより、過剰な酸素結合の存在により、硫化物固体電解質材料の最表面の柔軟性が損なわれることを防止できる。すなわち、酸素結合が占める割合を適切に小さくすることで、硫化物固体電解質材料の最表面に十分な柔軟性を持たせることができる。このため、硫化物固体電解質材料と接する活物質粒子などの形状に応じて、硫化物固体電解質材料が変形できる。したがって、硫化物固体電解質材料と活物質粒子などとにおいて、原子レベルで密接した界面を形成することができる。すなわち、硫化物固体電解質材料と活物質粒子などとの密着性を向上させることができる。この結果、電池の充放電特性を、より向上させることができる。」

イ「【0031】
また、一般的に、柔らかさを表す指標であるヤング率について、酸素結合は大きく、硫黄結合は小さい。例えば、すべてが酸素結合からなるLi_(2)O-P_(2)O_(5)のヤング率は約80GPaである。一方で、すべてが硫黄結合からなるLi_(2)S-P_(2)S_(5)のヤング率は約20GPaである。このため、酸素結合が占める割合が大きいと粒子最表面が硬くなる。この結果、硫化物固体電解質材料が接する活物質粒子の形状に応じて変形せず、接触している界面の面積が減少する。界面の面積が減少すると、抵抗が上昇してしまい、充放電特性が低下する。特許文献2では、このような観点に基づいた、粒子最表面の酸素結合の最適な割合については、言及されていない。」

5 当審の判断
(1)申立理由1(新規性)について
ア 請求項1に係る発明について
(ア)対比
本件特許の請求項1に係る発明(上記2)と甲1発明(上記4(1)イ)とを対比すると,後者の「リチウムイオン電池用硫化物系固体電解質の粉末状のサンプル」は,前者の「硫化物系固体電解質粒子」に相当する。
そして,後者の硫化物系固体電解質が「立方晶系Argyrodite型結晶構造を有し、組成式(1):Li_(7-x-2y)PS_(6-x-y)Cl_(x)で表される化合物を含有」するものであることは,前者の硫化物系固体電解質が「リチウム(Li)、リン(P)、硫黄(S)及びハロゲン(Ha)からなる立方晶系Argyrodite型結晶構造の結晶相」を有するものであることに相当する。
よって,両者は,
「リチウム(Li)、リン(P)、硫黄(S)及びハロゲン(Ha)からなる立方晶系Argyrodite型結晶構造の結晶相を有する硫化物系固体電解質粒子」である点において一致し,次の相違点を有する。

(相違点)
XPS(X?ray Photoelectron Spectroscopy)により測定される,元素の比率について,
本件特許の請求項1に係る発明では,粒子表面から深さ100nmの位置(SiO_(2)スパッタレート換算)におけるハロゲンの元素比率Z_(Ha1)に対する、粒子表面から深さ5nmの位置(SiO_(2)スパッタレート換算)におけるハロゲン(Ha)の元素比率Z_(Ha2)の比率(Z_(Ha2)/Z_(Ha1))が0.5以下であり、且つ、粒子表面から深さ5nmの位置(SiO_(2)スパッタレート換算)におけるリン(P)、硫黄(S)、酸素(O)及びハロゲン(Ha)の元素比率の合計Z_(A2)に対する、酸素の元素比率Z_(O2)の比率(Z_(O2)/Z_(A2))が0.5以上であるのに対して,
甲1発明では,上記比率(Z_(Ha2)/Z_(Ha1)),及び,上記比率(Z_(O2)/Z_(A2))のいずれも明らかでない点。

(イ)相違点の検討
上記相違点について検討すると,甲1には,粒子表面から特定の深さ位置における特定元素の比率をXPSにより測定したことは記載されておらず,したがって,上記比率(Z_(Ha2)/Z_(Ha1)),及び,上記比率(Z_(O2)/Z_(A2))も特定されていない。

(ウ)申立人の主張について
申立人は,甲1発明においては,本件特許の請求項1に係る発明で表面改質処理を行う際の条件と同様に,所定の露点を示す雰囲気中で曝露していることから,上記比率と同様である蓋然性が高い旨,また,甲1発明では曝露により,イオン導電性が低下していることから,空気中の水分との反応により,表面に酸素が導入され,酸素濃度の割合が増加し,ハロゲンが占める割合が低下している旨,更に,甲1発明に係る硫化物系固体電解質は,立方晶系Argyrodaite型結晶構造を有する単一相のものであるから,電池に組んだ際の充放電効果やサイクル特性が良好なものであると推認できる旨主張する(特許異議申立書第15?17頁)。
そこで上記主張について検討するに,甲1に記載された曝露処理の条件は,平均露点-45℃の乾燥空気で6時間放置し,その後,十分に乾燥されたArガス(露点-60℃以下)に戻すものである(段落【0043】)のに対し,本件特許明細書に記載された表面改質処理は,好ましくは露点温度-45℃?10℃の雰囲気中,1時間?12時間曝露し,且つ,乾燥処理を行わないものであり(段落【0045】?【0047】),実施例では,露点温度-30℃に調整したグローブボックス内に6時間曝露して,曝露後は乾燥処理をしないものである(段落【0054】)。そうすると,甲1発明に関しての曝露処理条件は,本件特許の請求項1に係る発明に関しての表面処理条件と,露点温度において好ましい範囲の下限で接するのみであって実施例とは重複しないうえ,処理後に更なる乾燥処理をしている点においても異なる。
よって,仮に,曝露処理による表面の酸素導入及びハロゲンの割合低下,結晶構造が単一相であることによる充放電効果やサイクル特性の向上が推認できるとしても,本件特許の請求項1に係る発明が特定する上記比率(Z_(Ha2)/Z_(Ha1)),及び,上記比率(Z_(O2)/Z_(A2))と同様である蓋然性が高いとまではいうことができない。
したがって,上記相違点は実質的な相違点であるから,本件特許の請求項1に係る発明は甲1に記載された発明であるとはいえない。

イ 請求項2,3に係る発明について
本件特許の請求項2,3に係る発明はいずれも,請求項1に係る発明を直接又は間接的に引用して更に技術的に特定したものであるから,甲1に記載された発明と,少なくとも上記相違点において相違する。
そして,上記相違点は実質的な相違点であるから,本件特許の請求項2,3に係る発明はいずれも,甲1に記載された発明であるとはいえない。

ウ まとめ
以上のとおり,申立人の主張は採用できず,本件特許の請求項1ないし3に係る発明は特許法第29条第1項第3号に該当しないから,その発明についての特許は特許法第113条第2号に該当しない。

(2)申立理由2(進歩性)について
ア 請求項1に係る発明について
本件特許の請求項1に係る発明(上記2)と甲1発明(上記4(1)イ)との相違点(上記(1)ア(ア))について,更に検討する。
上記(1)ア(ウ)のとおり,甲1発明に関しての曝露処理は,本件の請求項1に係る発明に関しての表面処理と,露点温度や乾燥処理の有無の点において異なるものであるところ,甲1発明に係る粉末状のサンプルは,初期導電率に対する導電率変化を測定するために曝露処理したものであって,甲1におけるサンプルの製造やその取扱いは,本来,十分に乾燥されたArガス(露点-60℃以下)で実施するものである(段落【0032】,【0033】,【0039】)。そうすると,甲1発明に関して,その曝露処理を省略することはあり得ても,更に露点温度を高くし,かつ,乾燥処理を省略して,本件の請求項1に係る発明に関しての処理条件に近づけようとする動機づけは見い出せない。
また,甲2には,酸化物活物質と硫化物固体電解質材料との反応により界面に生じる高抵抗部位の生成を抑制し,界面抵抗の低い硫化物固体電解質粒子を提供することを目的として,硫化物固体電解質材料からなる粒子の表面に酸化物層を形成することが記載されているが,酸化物層の形成には乾燥工程を伴うものである(段落【0090】,【0118】)。そもそも,甲2所載の条件は,本件特許明細書の比較例4に相当する(段落【0056】)ことも踏まえると,仮に,甲1発明に甲2所載の技術事項を適用し得たとしても,本件の請求項1に係る発明に関しての処理条件を導き出すことはできない。
更に,甲3には,硫化物系固体電解質を含む電極層を,露点温度が-30℃以上の雰囲気に暴露することによって,電極層の外周部の結着力を向上して強度を向上できること,そのメカニズムが,硫化物系固体電解質の表面が水分により潮解し粘性を発現するためであると推察されることが記載されているが,これは電極層の処理に関するものであって,硫化物系固体電解質の処理ではない。しかも,甲1における「耐水性及び耐酸化性が格段に優れており、乾燥空気中で取り扱っても特性劣化が少ない」(段落【0015】)との記載からすれば,耐水性及び耐酸化性が優れる甲1発明に対し,あえて甲3所載の技術事項を適用して,水分による潮解や酸化を起こすような条件を付与することは,容易に想到できるものではない。結局,本件の請求項1に係る発明に関しての処理条件を導き出すことはできない。
その外,甲4,甲5の技術事項を勘案しても,甲1発明に関しての曝露処理を調整して,本件の請求項1に係る発明に関しての表面処理に近づけようとする動機づけが見い出せない。そうすると,甲1発明において,本件の請求項1に係る発明と同様の元素の比率となっている蓋然性が高いということはできない。
よって,本件特許の請求項1に係る発明は,当業者といえども,甲1ないし甲3に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。

イ 請求項2?5に係る発明について
(ア)本件特許の請求項2,3に係る発明はいずれも,請求項1に係る発明直接又は間接的に引用して更に技術的に特定したものであるから,甲1に記載された発明と,少なくとも上記相違点において相違する。
そして,上記アと同様の理由により,本件特許の請求項2,3に係る発明はいずれも,当業者といえども,甲1ないし甲3に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。

(イ)本件特許の請求項4,5に係る発明は,請求項1ないし3に係る発明を引用して,リチウム二次電池用の電極材,リチウム二次電池を規定したものである。
そして,上記アと同様の理由により,本件特許の請求項4,5に係る発明はいずれも,当業者といえども,甲1ないし甲3に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。

ウ まとめ
以上のとおり,申立人の主張は採用できず,本件特許の請求項1ないし5に係る特許は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではないから,その発明についての特許は特許法第113条第2号に該当しない。

(3)申立理由3(明確性)について
ア 申立人の主張
申立人は,硫化物系固体電解質のサンプルは,その取り扱いによって曝露の影響が強くでており,XPS測定においては,サンプルの取り扱い方法によって,真値から大きくずれ,XPS測定が正確にできていないから,XPSの測定結果から算出されている発明特定事項のパラメータ(ハロゲン比率に関する0.5以下という条件)は測定誤差の影響を大きく受けるものであり,値自体の信頼性がなく,特許を受けようとする発明が明確になっているとはいえない旨,主張する(申立書第40頁)。

イ 検討
そこで検討するに,本件特許の請求項1の「XPS(X?ray Photoelectron Spectroscopy)により測定される、粒子表面から深さ100nmの位置(SiO_(2)スパッタレート換算)におけるハロゲンの元素比率Z_(Ha1)に対する、粒子表面から深さ5nmの位置(SiO_(2)スパッタレート換算)におけるハロゲン(Ha)の元素比率Z_(Ha2)の比率(Z_(Ha2)/Z_(Ha1))が0.5以下」との記載が,粒子表面から深さ100nmにおけるハロゲンの元素比率Z_(Ha1)と,粒子表面から深さ5nmにおけるハロゲン(Ha)の元素比率Z_(Ha2)とをXPSによって測定し,その比率(Z_(Ha2)/Z_(Ha1))が0.5以下であることを意味することは明確である。
そして,XPSの測定条件は,発明の詳細な説明の段落【0059】に記載され,また,実施例での測定結果は,段落【0068】?【0074】の表1?表7に記載されるとおりであって,不明確な点はない。
敷衍するに,申立人の主張は,サンプルの取り扱い方法によってXPS測定が正確にできない旨を指摘するに止まり,同一サンプルにおける測定結果の信頼性がない旨を指摘するものではないから,採用できない。

ウ まとめ
以上のとおり,申立人の主張は採用できず,本件特許の請求項1ないし5に係る特許は,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願についてされたものということはできないから,特許法第113条第4号に該当しない。

(4)申立理由4(サポート要件)について
ア 申立人の主張
申立人は,実施例からみて,酸素が導入された後,P量,S量がCl量以上に大きく減少していることから,固体電解質が結晶構造を保持できていないことが推察されるところ,発明特定事項を満たしさえすれば,本件の請求項1?5に係る発明でいう「立方晶系Argyrodite型結晶構造の結晶相を有する硫化物系固体電解質粒子」を提供するという発明の課題が解決されているものとはいえず,本件の請求項1?5に係る発明は,発明の課題が達成されているとはいえないものを含むものであるから,発明の詳細な説明に記載された発明の範囲を超えるものである旨,主張する(申立書第40?42頁)。

イ 検討
そこで検討するに,本件特許明細書の実施例によると,固体電解質粒子の平均粒径D_(50)は0.7?3.3μm(すなわち700?3300nm)であるところ,申立人がその主張の根拠とする,粒子表面から深さ5nm,同じく100nmの元素比率は,粒子全体からみて表面近傍のごく一部分に係るものである。
よって,上記の各元素比率が,ICP発光分光法(段落【0057】)による粒子の組成と乖離していることをもって,固体電解質がその結晶構造を保持していないとまでいうことはできない。そして,実施例では,使用した硫化物系粒子をX線回折法(XRD)で分析し,生成相を特定しており(段落【0058】),その結果として,立方晶系Argyrodite型結晶構造の結晶相を有する硫化物系固体電解質粒子について考察している(段落【0075】)。
結局,甲4,甲5の技術事項を参酌するまでもなく,本件の請求項1?5に係る発明は,発明の詳細な説明に記載された発明の範囲を超えるものではない。

ウ まとめ
以上のとおり,申立人の主張は採用できず,本件特許の請求項1ないし5に係る特許は,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願についてされたものということはできないから,特許法第113条第4号に該当しない。

6 むすび
以上のとおり,申立人が主張する理由によっては,請求項1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。
また,外に請求項1ないし5に係る特許を取り消す理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2020-08-03 
出願番号 特願2019-539878(P2019-539878)
審決分類 P 1 651・ 113- Y (H01M)
P 1 651・ 121- Y (H01M)
P 1 651・ 537- Y (H01M)
最終処分 維持  
前審関与審査官 高木 康晴  
特許庁審判長 池渕 立
特許庁審判官 平塚 政宏
北村 龍平
登録日 2019-10-04 
登録番号 特許第6595153号(P6595153)
権利者 三井金属鉱業株式会社
発明の名称 硫化物系固体電解質粒子  
代理人 特許業務法人竹内・市澤国際特許事務所  

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