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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1365342
審判番号 不服2019-7047  
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-05-29 
確定日 2020-08-12 
事件の表示 特願2016-515109「ウェルネスを維持するか、または向上するための方法およびシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年11月27日国際公開、WO2014/190234、平成28年 9月29日国内公表、特表2016-530482〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)5月23日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年5月23日が優先日となる1つの米国出願、2013年10月25日が優先日となる3つの米国出願、2013年11月27日が優先日となる3つの米国出願)を国際出願日とする出願であって、平成30年2月8日付けの拒絶理由が通知され、平成30年8月13日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、平成31年1月24日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされたのに対し、令和元年5月29日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、それと同時に手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本件補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正前の請求項1について
本件補正前の平成30年8月13日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は以下のとおりである。
「【請求項1】
個人のウェルネスを維持するか、または向上するための支援を提供するための方法であって、
前記個人由来の尿サンプル中の1若しくはそれ以上のバイオマーカーの存在および/または濃度を測定する工程と、
前記測定された1若しくはそれ以上のバイオマーカーの存在および/または濃度に基づき、前記個人のウェルネスを維持するか、または向上するためのウェルネスの必要性を処理装置によって予測する工程であって、前記1若しくはそれ以上のバイオマーカーは、ウェルネスの必要性の指針である、前記予測する工程と、
前記個人のウェルネスの必要性に対処することによって、前記個人に支援を提供する工程と
を有する方法。」

(2)本件補正の請求項1について
本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は以下のとおりである。
「【請求項1】
個人のウェルネスを維持するか、または向上するための支援を提供するための方法であって、
前記個人由来の尿サンプル中の1若しくはそれ以上のバイオマーカーの存在および/または濃度をパッシブ型で、オペレータの関与なしに、繰り返し測定する工程であって、バイオマーカーと疾患または健康上の関心との間の相関関係の集合、並びにそのような疾患または健康上の関心に関連するウェルネスの必要性の集合を有するデータベースに格納する、前記測定する工程と、
前記データベースに格納された相関関係および前記測定された1若しくはそれ以上のバイオマーカーの存在および/または濃度に基づき、前記個人の現在のウェルネスを維持するか、または向上するためのウェルネスの必要性を、処理装置を有する予測部によって予測する工程であって、前記1若しくはそれ以上のバイオマーカーは、前記ウェルネスの必要性に関する疾患または健康上の関心の指針である、前記予測する工程と、
前記個人の予測されたウェルネスの必要性に対処することによって、前記個人から前記サンプルを取得してから1時間以内に、コントローラーによって前記個人にリアルタイムでの支援を提供する工程であって、前記データベース、前記予測部および前記コントローラーは、有線接続または無線信号で接続されたものである、前記提供する工程と
を有し、
前記リアルタイムでの支援は、前記個人の前記ウェルネスの必要性に対処するための前記個人への製品またはサービスを提案すること、および前記提案された製品またはサービスについて前記個人からフィードバックを得ること、および前記フィードバックに基づいて前記製品またはサービスをランク付けすることであり、
前記ウェルネスの必要性は、感情、健康、フィットネス、精神、美容、若さ、自信、および欲求の1若しくはそれ以上を含む現実のまたは知覚された状態と、人の相対的な状態とを比較することによって決定されるものである、
方法。」(下線は補正箇所である。)

2 補正の適否
(1)新規事項について
ア 本件補正により、請求項1に「前記ウェルネスの必要性は、感情、健康、フィットネス、精神、美容、若さ、自信、および欲求の1若しくはそれ以上を含む現実のまたは知覚された状態と、人の相対的な状態とを比較することによって決定されるものである」との事項が追加されている。

イ 判断
これについて検討するに、「ウェルネスの必要性」との表記自体は、国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面(図面の中の説明に限る。)の翻訳文、国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文又は国際出願日における国際特許出願の図面(図面の中の説明を除く。)(以下「翻訳文等」という。)の随所にみられるが、「ウェルネスの必要性」が、「感情、健康、フィットネス、精神、美容、若さ、自信、および欲求の1若しくはそれ以上を含む現実のまたは知覚された状態と、人の相対的な状態とを比較することによって決定されるものである」ことに関連する記載として、翻訳文等には以下の記載があるのみである(なお、下線は当審において付与した。以下同様。)。
「【0077】
用語「ウェルネス」は、本明細書で使用される場合、人の比較となる状態と比較したときに、感情、健康、フィットネス、精神、美容、若さ、自信、および欲求を含む、実際の、または感知される向上した状態を指す。これは、ウェルネスが疾患または病弱が存在しないことによって単に決定されていた従来の健康モデルではない。ウェルネスは、本発明の内容では、個人の現在の健康状態または不自由さにかかわらず、個人の機能の改良された状態である。従って、ウェルネスは、連続して存在し、個人の固有の状況に基づき、それぞれの個人に固有である。ウェルネスは、個人を全体として見て、個人の血圧レベルだけ、または個人の体重がどの程度多いか、または個人がストレスをどの程度うまく管理しているかだけを見るのではなく、全体的な概念として観察されてもよい。」
上記翻訳文等の記載を参照するに、「ウェルネスの必要性」が「感情、健康、フィットネス、精神、美容、若さ、自信、および欲求の1若しくはそれ以上を含む現実のまたは知覚された状態と、人の相対的な状態とを比較することによって決定されるものである」ことについて記載されておらず、その余の翻訳文等の「ウェルネスの必要性」との表記がある部分をみても、「ウェルネスの必要性」が「感情、健康、フィットネス、精神、美容、若さ、自信、および欲求の1若しくはそれ以上を含む現実のまたは知覚された状態と、人の相対的な状態とを比較することによって決定されるものである」ことについての記載はないことから、翻訳文等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものとはいえない。

ウ 小括
よって、本件補正は、上記アの点において、翻訳文等に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしているとはいえない(同法第184条の12第2項参照)。

(2)補正の目的について
ア 測定について
本件補正により、請求項1の「前記個人由来の尿サンプル中の1若しくはそれ以上のバイオマーカーの存在および/または濃度を測定する工程」について、「バイオマーカーと疾患または健康上の関心との間の相関関係の集合、並びにそのような疾患または健康上の関心に関連するウェルネスの必要性の集合を有するデータベースに格納する」事項を追加する補正をしているが、「測定する」ことと「データベースに格納する」こととは、技術的事項として概念が異なるものであり、「バイオマーカーと疾患または健康上の関心との間の相関関係の集合、並びにそのような疾患または健康上の関心に関連するウェルネスの必要性の集合を有するデータベースに格納する」事項が、「前記個人由来の尿サンプル中の1若しくはそれ以上のバイオマーカーの存在および/または濃度を測定する」ことを、技術的に下位概念として限定していることにはならない。
してみれば、「測定する工程」について、「バイオマーカーと疾患または健康上の関心との間の相関関係の集合、並びにそのような疾患または健康上の関心に関連するウェルネスの必要性の集合を有するデータベースに格納する」事項を追加することは、いわゆる「限定的」減縮とはいえず、特許法第17条の2第5項第2号の括弧書きの特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものには該当しないことから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものには該当しない。
また、上記事項を追加する補正が、特許法第17条の2第5項第1号に掲げる請求項の削除、同項第3号に掲げる誤記の訂正、同項第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明のいずれにも該当しないことは明かである。

イ ランク付けについて
本件補正により、請求項1の「個人のウェルネスの必要性に対処することによって、前記個人に」「提供する」「支援」について、「提案された製品またはサービスについて前記個人からフィードバックを得ること、および前記フィードバックに基づいて前記製品またはサービスをランク付けする」事項を追加する補正をしているが、「個人に支援を提供する」ことと、「個人からフィードバックを得ること、および」「ランク付けする」こととは、技術的事項として概念が異なるものであり、「提案された製品またはサービスについて前記個人からフィードバックを得ること、および前記フィードバックに基づいて前記製品またはサービスをランク付けする」事項が、「個人に支援を提供する」ことを、技術的に下位概念として限定していることにはならない。
してみれば、「提案された製品またはサービスについて前記個人からフィードバックを得ること、および前記フィードバックに基づいて前記製品またはサービスをランク付けする」事項を追加することは、いわゆる「限定的」減縮とはいえず、特許法第17条の2第5項第2号の括弧書きの特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものには該当しないことから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものには該当しない。
また、上記事項を追加する補正が、特許法第17条の2第5項第1号に掲げる請求項の削除、同項第3号に掲げる誤記の訂正、同項第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明のいずれにも該当しないことは明かである。

ウ 小括
よって、本件補正は、上記ア及びイの点において、特許法第17条の2第5項第1号ないし4号のいずれに掲げる事項を目的とするものに該当しない。

(3)シフト補正について
ア 請求人は、本件補正された請求項1に係る発明を含む本願発明の特徴について、審判請求書で、
「本願発明は、「3.本願発明の要旨」において記載したとおりであり、本願発明に係る方法またはシステムは、個人のウェルネスの必要性に対処するための製品やサービスを提案することが可能なものであり、提案された製品またはサービスについて個人からフィードバックを得ること、およびフィードバックに基づいて製品またはサービスをランク付けすることを特徴とするものであります。」と主張しており、請求人の主張を踏まえると、本件補正により追加された「前記個人の前記ウェルネスの必要性に対処するための前記個人への製品またはサービスを提案すること、および前記提案された製品またはサービスについて前記個人からフィードバックを得ること、および前記フィードバックに基づいて前記製品またはサービスをランク付けすること」が特別な技術的特徴となることから、本件補正前の請求項1に係る発明と本件補正後の請求項1に係る発明とは、特別な技術的特徴が共通しないことになり、両者について特許法第37条の発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するものとはいえないともいえる。

イ 小括
よって、本件補正は、上記アの点において、特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たしていないともいえる。

(4)独立特許要件について
請求人は、本件補正について、審判請求書で「本審判請求書と同時に提出の手続補正書によって行った補正は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的として行ったものです。」と説明していることから、請求人の主張のとおり、請求項1についての本件補正が限定的減縮を目的としたものとして、以下、本件補正後の上記1(2)で摘記した請求項1に記載された発明(以下「補正発明」という。)が特許法第17条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、検討する。

明確性について
(ア)集合について
本件補正により、「バイオマーカーと疾患または健康上の関心との間の相関関係の集合、並びにそのような疾患または健康上の関心に関連するウェルネスの必要性の集合を有するデータベースに格納する」ことが追加されてきたが、バイオマーカーと疾患または健康上の関心との間の「相関関係の集合」、そのような疾患または健康上の関心に関連する「ウェルネスの必要性の集合」とは、具体的にどのような集合のこと特定しようとしているのか明確とはいえない。
この点、本願明細書には、
「【0174】
ある実施形態において、疾患または健康上の関心のバイオマーカーおよびウェルネスの必要性に関するすべての情報が、データベース14に格納されていてもよい。データベース14は、1若しくはそれ以上のバイオマーカーと、疾患または健康上の関心との間の関係を提供することができ、後者は、さらにウェルネスの必要性と関係がある。データベース14は、バイオマーカーと、疾患または健康上の関心との間の相関関係の大きな集合、およびこのような疾患または健康上の関心と関係があるウェルネスの必要性の集合を含む。」と記載されるものの、「尿サンプル中の」「バイオマーカー」と疾患または健康上の「関心」との間の、どのような相関関係を集合としたものであるのか、そして、そのような疾患または健康上の「関心に関連する」ウェルネスの必要性の集合とは、どのような集合であるのか、明確に特定できない。

(イ)指針について
本件補正により、「バイオマーカーは、前記ウェルネスの必要性に関する疾患または健康上の関心の指針である」と補正されているが、「バイオマーカー」は、具体的には請求項2で特定されるところの「バイオマーカーは、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、代謝物、微生物、無機化合物、およびイオンから成る群から選択されるもの」である物質であるが、「物質自体」がウェルネスの必要性に関する疾患または健康上の「関心の指針である」とは意味不明であり、不明確である。

(ウ)コントローラーについて
本件補正により、「コントローラー」との用語が追加されているが、本願明細書には「制御部」との記載はあるが「コントローラー」との記載はなく、「コントローラー」が「制御部」と同じものであるなら明確といえるが、「コントローラー」が「制御部」と異なるものを特定しようとしている限りにおいて、不明確といえる。

(エ)小括
よって、補正発明は、上記(ア)?(ウ)の点において、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしているとはいえない。

イ サポート要件について
(ア)ウェルネスの必要性の予測について
a 本件補正により、「前記ウェルネスの必要性は、感情、健康、フィットネス、精神、美容、若さ、自信、および欲求の1若しくはそれ以上を含む現実のまたは知覚された状態と、人の相対的な状態とを比較することによって決定されるものである」との事項が追加され、当該補正及び上記(1)イで摘記した本願明細書の【0077】の記載を参照すると、補正発明における「ウェルネス」とは「感情、健康、フィットネス、精神、美容、若さ、自信、および欲求の1若しくはそれ以上を含む現実のまたは知覚された状態」といえる。
そうすると、「感情、健康、フィットネス、精神、美容、若さ、自信、および欲求の1若しくはそれ以上を含む現実のまたは知覚された状態」であるウェルネスの必要性は、個人由来の尿サンプル中の1若しくはそれ以上のバイオマーカーの存在および/または濃度を測定し、その測定された1若しくはそれ以上のバイオマーカーの存在および/または濃度に基づき、前記個人の現在のウェルネスを維持するか、または向上するためのウェルネスの必要性を予測することになる。

b 本願明細書の記載
「尿」サンプルについての本願明細書の記載を摘記すると、以下のとおりである。
「【0163】
個人の体液中の代謝物が、ヒトの行動と関係づけられることを提案する試験が存在する。例えば、Kandelら(「Urine nicotine metabolites and smokingbehavior in a multiracial/multiethnic nationalsample of young adults」、Am J Epidemiol、165巻、901?910ページ、2007)は、ニコチン代謝から生成する尿代謝物が、ヒトの喫煙行動と関係づけられることを発見した。具体的には、trans-3’-ヒドロキシコチニンとコチニンの比率は、大きい集合において、喫煙行動の複数の測定値およびニコチンの依存性と関係づけられる。
【0164】
別の例は、Traeskmanら(「Monoamine metabolites in CSF and suicidalbehavior」、Arch Gen Psychiatry、38巻、631?636ページ、1981)から得られ、自殺行動と関係づけられる脳脊髄液流体中のいくつかのモノアミン代謝物を発見した。これらの代謝物は、5-ヒドロキシインドール酢酸(5-HIAA)、ホモバニリン酸(HVA)、および3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニルグリコール(MHPG)を含む。自殺を企てたヒト、特に、より激しい企てを行ったヒトは、コントロールよりも顕著に低い5-HIAAレベルを有する。5-HIAAの濃度も、腰椎穿刺のときには鬱状態であると診断されなかった自殺患者では、正常な値よりも低く、一方、HVAレベルは、抑鬱状態でのみ低下した。尿でも、同様の観察結果が得られ(Ostroffら、「The norepinephrine-to-epinephrine ratioin patients with a history of suicide attempts」、Am J Psychiatry、142巻、224?227ページ、1985)、重篤な自殺企図を行った3人の鬱状態の患者は、自殺を企てなかった19人の鬱状態の患者と比較して、24時間の尿のエピネフリン(EPI)に対するノルエピネフリンの比率が顕著に低かった。
「【0167】
他の例は、AMPK(AMP活性化タンパク質キナーゼ)が、運動中に正常に発現する例を含み、グルコースは、中程度に高いレベルまたは低いレベルが存在するかどうかに依存して、高いエネルギーまたは弱った感覚と関係があり、尿中のカテコールアミン(アドレナリン)は、ストレスと関係があり、エピネフリンは、集中および闘争逃走反応と関係があり、ドーパミンは、喜びと関係があり、外交的な人では高いレベルが観察され、IL6は、ストレスおよび鬱と関係がある。息の中のジメチルスルホンは、皮膚癌と関係があり、息の中のアセトンレベルは、糖尿病と関係があり、息の中のアンモニア化合物は、肝疾患および腎疾患のシグナルである場合がある。」
「【0238】
ある実施形態において、本発明のシステムは、便所で実施される。便所の中に配置される測定デバイス11は、便器内で尿および/または糞便にさらされる。システムの予測部12および制御部13は、便所内または離れた位置に配置されていてもよい。個人が便所を使用したら、尿および/または糞便が水中に入る。測定デバイス11による測定のために、尿または糞便の中のバイオマーカーが、水中に拡散する。次いで、測定結果が、データベース14、例えば、RAM上のデータベースにアクセスする予測部12に通信される。
【0239】
ある実施形態において、便所は、個人の生理学的パラメータ(例えば、個人の体温、脈拍数、および/または血圧)を決定するための補助的な測定デバイスも有していてもよい。予測部12は、測定されたバイオマーカーと、選択的に、任意のさらなるデータ、例えば、上述のような生理学的データおよび/または位置データとに基づき、個人の社会的なウェルネスの必要性を予測する。
【0240】
制御部13は、予測されるウェルネスの必要性に基づき、ちょうど便所を使用している個人に支援を提供する。この支援は、上述の任意の様式で、または上述の任意の媒体または方法によって提供されてもよい。
【0241】
ある実施形態において、本発明のシステムは、小便器で実施される。測定デバイス11は、小便器中に配置され、尿にさらされ得る。システムの予測部12および制御部13は、小便器内または離れた位置に配置されていてもよい。個人が小便器を使用するとき、尿は、測定デバイス11と接触する。尿中のバイオマーカーは、測定デバイス11によって測定される。システムの残りは、便所内で行われる実施形態を参照しつつ上に記載されるとおりである。
【0242】
公衆便所または公衆の小便器の場合には、表示デバイスは便器または小便器と関連して提供されて、予測されるウェルネスの必要性に基づき、小便器をちょうど使用している個人に、情報、アドバイス、またはガイダンスまたは支援を提供してもよい。または、情報、アドバイス、またはガイダンスを、有線または無線によって伝送し、スピーカーによって放送するか、壁またはプロジェクタ画面に表示するか、TV画面またはコンピュータ画面に表示するか、ゲームデバイスの画面に表示するか、携帯用デバイス(スマートフォン、タブレットコンピュータ、ノートブックコンピュータ、イーブックリーダー、モバイルインターネットデバイス、携帯情報端末、インターネット電話、ホログラフィーデバイス、ホログラフィー電話、ケーブルインターネットデバイス、衛星インターネットデバイス、インターネットテレビ、DSLインターネットデバイス、およびリモートコントロール)の画面に表示してもよい。情報、アドバイス、またはガイダンスに関連する任意のプロモーションまたはクーポンを、情報、アドバイス、またはガイダンスと共に表示してもよい。
【0243】
小便器は、デバイスに操作可能に接続し、室内の照明の明るさまたは色、温度、湿度、および香り、壁の色、家具の配置を調整するため、または適切な音楽をかけてもよい。」

c 当審の判断
上記本願明細書を参照すると、尿サンプル中のニコチン代謝物が喫煙行動と、尿サンプル中エピネフリンに対するノルエピネフリンの比率が鬱状態と、尿サンプル中のアドレナリンがストレスと、尿サンプル中のドーパミンが喜びと、尿サンプル中のIL6がストレス及び鬱と、それぞれ関係することが記載されており、喫煙行動、鬱状態、ストレス、喜びは、「健康、精神、感情」の1若しくはそれ以上を含む現実のまたは知覚された状態といえることから、本願明細書には、個人由来の尿サンプル中の1若しくはそれ以上のバイオマーカーの存在および/または濃度を測定し、その測定された1若しくはそれ以上のバイオマーカーの存在および/または濃度に基づき、前記個人の現在の「健康、精神、感情の1若しくはそれ以上を含む現実のまたは知覚された状態」であるウェルネスを維持するか、または向上するための「健康、精神、感情の1若しくはそれ以上を含む現実のまたは知覚された状態」であるウェルネスの必要性を予測することについては記載されているといえる。
しかしながら、個人の「美容、若さ、自信、および欲求」の状態を、尿サンプル中のバイオマーカーの存在および/または濃度に基づいて予測することについては記載されておらず、そして、本願優先日時に、個人の「美容、若さ、自信、および欲求」の状態を判断できる「尿中のバイオマーカー」が当業者において周知であったともいえない。
してみれば、個人由来の尿サンプル中の1若しくはそれ以上のバイオマーカーの存在および/または濃度を測定し、その測定された1若しくはそれ以上のバイオマーカーの存在および/または濃度に基づき、前記個人の現在の「美容、若さ、自信、および欲求の1若しくはそれ以上を含む現実のまたは知覚された状態」であるウェルネスを維持するか、または向上するための「美容、若さ、自信、および欲求の1若しくはそれ以上を含む現実のまたは知覚された状態」であるウェルネスの必要性を予測することについてはサポートされているものとはいえない。

(イ)支援について
a 美容、若さ、自信、および欲求の場合
本件補正により、支援について、「前記個人の前記ウェルネスの必要性に対処するための前記個人への製品またはサービスを提案すること、および前記提案された製品またはサービスについて前記個人からフィードバックを得ること、および前記フィードバックに基づいて前記製品またはサービスをランク付けする」ことが追加されたが、「ウェルネス」が「美容、若さ、自信、および欲求の1若しくはそれ以上を含む現実のまたは知覚された状態」の場合には、上記(ア)cで述べたとおり、個人由来の尿サンプル中の1若しくはそれ以上のバイオマーカーの存在および/または濃度を測定し、その測定された1若しくはそれ以上のバイオマーカーの存在および/または濃度に基づき、前記個人の現在の「美容、若さ、自信、および欲求の1若しくはそれ以上を含む現実のまたは知覚された状態」であるウェルネスを維持するか、または向上するための「美容、若さ、自信、および欲求の1若しくはそれ以上を含む現実のまたは知覚された状態」であるウェルネスの必要性を予測することがサポートされていないのであるから、「前記個人の前記ウェルネスの必要性に対処するための前記個人への製品またはサービスを提案すること、および前記提案された製品またはサービスについて前記個人からフィードバックを得ること、および前記フィードバックに基づいて前記製品またはサービスをランク付けする」こともサポートされているとはいえない。

b 健康、精神、感情の場合
上記(ア)cで述べたとおり、「ウェルネス」が「健康、精神、感情の1若しくはそれ以上を含む現実のまたは知覚された状態」である場合には、個人由来の尿サンプル中の1若しくはそれ以上のバイオマーカーの存在および/または濃度を測定し、その測定された1若しくはそれ以上のバイオマーカーの存在および/または濃度に基づき、ウェルネスの必要性を予測することについては記載されているといえる。
しかしながら、支援として「情報、アドバイス、またはガイダンスまたは支援」、「室内の照明の明るさまたは色、温度、湿度、および香り、壁の色、家具の配置を調整するため、または適切な音楽」等が記載されているが、「健康、精神、感情」の本願明細書に記載されている状態である喫煙行動、鬱状態、ストレス、喜びに対して、各々具体的にどのような「製品またはサービスを提案」し、「前記提案された製品またはサービスについて前記個人からフィードバックを得ること、および前記フィードバックに基づいて前記製品またはサービスをランク付け」することについては何ら具体的に記載されておらず、そして、尿中のバイオマーカーの存在および/または濃度に基づき、提案された製品またはサービスについて個人からフィードバックを得て、前記フィードバックに基づいて前記製品またはサービスをランク付けすることが、本願優先日時に当業者において周知であったともいえない。
してみれば、「ウェルネス」が「健康、精神、感情の1若しくはそれ以上を含む現実のまたは知覚された状態」である場合でも、「前記個人の前記ウェルネスの必要性に対処するための前記個人への製品またはサービスを提案すること、および前記提案された製品またはサービスについて前記個人からフィードバックを得ること、および前記フィードバックに基づいて前記製品またはサービスをランク付けする」ことはサポートされているとはいえない。

(ウ)小括
よって、補正発明は、上記(ア)及び(イ)の点において、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしているとはいえない。

3 本件補正についてのまとめ
以上のとおり、本件補正は、上記2(1)?(3)で述べたとおり、特許法第17条の2第3項ないし第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
加えて、請求項1についての補正が、いわゆる限定的減縮、すなわち特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものに該当するものとしても、上記2(4)で述べたとおり、補正発明が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件あるいは特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしているとはいえず、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?55に係る発明は、平成30年8月13日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲のとおりのものであり、そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は上記第2の1(1)に記載したとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、理由1(特許法第36条第4項第1号)、理由2(特許法第36条第6項第1号)及び理由3(特許法第36条第6項第2号)であり、それらについて、概ね以下のとおり説示している。
(1)理由1及び2について
本願の発明の詳細な説明には、「前記測定された1若しくはそれ以上のバイオマーカーの存在および/または濃度に基づき、前記個人のウェルネスを維持するか、または向上するためのウェルネスの必要性を予測する工程であって、前記1若しくはそれ以上のバイオマーカーは、ウェルネスの必要性の指針である、前記予測する工程」、「前記個人のウェルネスの必要性に対処することによって、前記個人に支援を提供する工程」が、どのように技術的に実現されているか、具体的に全く記載されておらず、実際のデータに対し、どのような処理を行ってウェルネスの必要性を予測したかは、全く記載されていない。[0160]に記載されているのも、バイオマーカーデータベースの列挙であり、これらをどのように用いて処理したか具体的に記載されていない。本願明細書の他の部分も、バイオマーカーに関する公知技術を列挙するものであって、実際の尿サンプルの何らかのバイオマーカーを実測したこと、何らかの具体的データを用い、特定された処理装置によって予測を行ったことは、記載されていない。

(2)理由3について
「ウェルネス」が不明確であることについて、請求人は、本願明細書の段落[0077]に記載したとおりであると主張しているが、ここに列挙された、感情、健康、等々はいずれもその範囲が不明確な概念であり、[0077]の定義によっても、「ウェルネス」範囲は不明確である。

3 当審の判断
(1)理由3について
本願発明は、補正発明の「前記ウェルネスの必要性は、感情、健康、フィットネス、精神、美容、若さ、自信、および欲求の1若しくはそれ以上を含む現実のまたは知覚された状態」との事項が削除されていることから、本願発明の「ウェルネス」は「感情、健康、フィットネス、精神、美容、若さ、自信、および欲求の1若しくはそれ以上を含む現実のまたは知覚された状態」に限定されることなく、さらに広い概念として解釈されることになる。
そして、請求人の主張のとおり、上記第2の2(1)イで摘記した、
「【0077】
用語「ウェルネス」は、本明細書で使用される場合、人の比較となる状態と比較したときに、感情、健康、フィットネス、精神、美容、若さ、自信、および欲求を含む、実際の、または感知される向上した状態を指す。これは、ウェルネスが疾患または病弱が存在しないことによって単に決定されていた従来の健康モデルではない。ウェルネスは、本発明の内容では、個人の現在の健康状態または不自由さにかかわらず、個人の機能の改良された状態である。従って、ウェルネスは、連続して存在し、個人の固有の状況に基づき、それぞれの個人に固有である。ウェルネスは、個人を全体として見て、個人の血圧レベルだけ、または個人の体重がどの程度多いか、または個人がストレスをどの程度うまく管理しているかだけを見るのではなく、全体的な概念として観察されてもよい。」との記載を参照するに、本願発明における「ウェルネス」とは、「従来の健康モデルではない」、「個人の現在の健康状態または不自由さにかかわらず、個人の機能の改良された状態」であると定義されている。
してみれば、「感情、健康、フィットネス、精神、美容、若さ、自信、および欲求の1若しくはそれ以上を含む現実のまたは知覚された状態」に限定されず、さらに広い概念としての「従来の健康モデルではな」く「個人の現在の健康状態または不自由さにかかわらず、個人の機能の改良された状態」である「ウェルネス」とは、その範囲としてどのような状態のものを含むものとして解すればいいのか明確とはいえない。
よって、原査定の理由3のとおり、本願発明の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしているとはいえない。

(2)理由2について
原査定では、理由1(特許法第36条第4項第1号)と理由2(特許法第36条第6項第1号)を同時に記載しているが、当審においては、上記第2の2(4)の独立特許要件において、サポート要件について述べていることから、理由2について検討する。
本願発明は、上記第2の1(1)に記載したとおり、「前記個人由来の尿サンプル中の1若しくはそれ以上のバイオマーカーの存在および/または濃度を測定する工程と、前記測定された1若しくはそれ以上のバイオマーカーの存在および/または濃度に基づき、前記個人のウェルネスを維持するか、または向上するためのウェルネスの必要性を処理装置によって予測する工程であって、前記1若しくはそれ以上のバイオマーカーは、ウェルネスの必要性の指針である、前記予測する工程と、前記個人のウェルネスの必要性に対処することによって、前記個人に支援を提供する工程とを有する方法」であるが、「ウェルネス」について「感情、健康、フィットネス、精神、美容、若さ、自信、および欲求の1若しくはそれ以上を含む現実のまたは知覚された状態」と限定して解釈したとしても、上記第2の2(4)イ(ア)cで述べたとおり、個人由来の尿サンプル中の1若しくはそれ以上のバイオマーカーの存在および/または濃度を測定し、その測定された1若しくはそれ以上のバイオマーカーの存在および/または濃度に基づき、前記個人の「美容、若さ、自信、および欲求の1若しくはそれ以上を含む現実のまたは知覚された状態」であるウェルネスを維持するか、または向上するための「美容、若さ、自信、および欲求の1若しくはそれ以上を含む現実のまたは知覚された状態」であるウェルネスの必要性を予測することについてはサポートされているものとはいえないのであるから、さらに広く解釈される本願発明についてサポートされているものとはいえないことはなおさらである。
よって、原査定の理由2のとおり、本願発明は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしているとはいえない。

(3)請求人の主張について
ア 請求人は、審判請求書において、理由1及び2について「・本請求人の意見 まず、本願発明は、「4.補正の説明」において記載いたしましたように、本審判請求書と同時に提出の手続補正書による補正(以下、「今回の補正」と称します。)がなされており、今回の補正後の本願発明においては・・・」、理由3について「 ・本請求人の意見 今回の補正後の本願発明において、・・・」と記載し、いずれの理由に対しても限定された補正発明についての主張となっていることから、これらの主張を参照しても、本願発明について、上記(1)及び(2)のとおり、少なくとも原査定の上記理由2及び3が解消されたとはいえない。

イ 請求人は、手続補足書として、参考資料1及び2を提示している。
参考資料1は、本願発明の発明者の一人であるJay M.Shortによる宣言書で、その項目16?17に胃癌に関連する尿中バイオマーカーである内皮リパーゼ(EL)タンパク質の測定を用いたアルゴリズム、項目20?21に尿中のナトリウム量の測定を用いたアルゴリズムが記載されているが、前者は、尿中バイオマーカーである内皮リパーゼタンパク質の測定が、胃癌の可能性を示す判定となり得ることを示しているだけであり、尿中バイオマーカーである内皮リパーゼタンパク質の測定の結果により、「感情、健康、フィットネス、精神、美容、若さ、自信、および欲求の1若しくはそれ以上を含む現実のまたは知覚された状態」を含む「ウェルネス」の「必要性」を「予測」し、「前記個人のウェルネスの必要性に対処することによって、前記個人に支援を提供する」ことの具体例を示したものではない。また、後者については、尿中のナトリウム量の測定したものであり、そもそも「バイオマーカー」の存在および/または濃度を測定したものではない。
参考資料2は、毛細管電気泳動法による無接触の電導度検出によって血清と尿における主な無機イオンの決定についての技術を開示した論文であり、これについても「バイオマーカー」の存在および/または濃度を測定したものではない。
そうすると、参考資料1及び2の内容を参酌しても、少なくとも原査定の上記理由2及び3が解消することはできない。

(4)小括
よって、本願発明は、原査定のとおり、特許法第36条第6項第1号及び同項第2号に規定する要件を満たしていない。

第4 むすび
以上のとおり、本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号及び同項第2号に規定する要件を満たしていないことから、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり、審決する。

 
別掲
 
審理終結日 2020-03-11 
結審通知日 2020-03-17 
審決日 2020-03-30 
出願番号 特願2016-515109(P2016-515109)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (G01N)
P 1 8・ 536- Z (G01N)
P 1 8・ 561- Z (G01N)
P 1 8・ 537- Z (G01N)
P 1 8・ 575- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大瀧 真理  
特許庁審判長 福島 浩司
特許庁審判官 三崎 仁
森 竜介
発明の名称 ウェルネスを維持するか、または向上するための方法およびシステム  
代理人 矢口 太郎  
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