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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 D05B
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 D05B
管理番号 1365524
審判番号 不服2019-14193  
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-10-07 
確定日 2020-08-20 
事件の表示 特願2018-193850「ボビンレス下糸連続供給装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 4月 2日出願公開、特開2020- 49190〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成30年 9月26日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成31年 4月11日付け:拒絶理由通知書
令和 元年 5月15日 :意見書の提出
令和 元年 7月31日付け:拒絶査定
令和 元年10月 7日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 令和 元年10月 7日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和 元年10月 7日付けの手続補正を却下する。

[理由](補正の適否の判断)
1.本件補正について(補正の内容)
令和 元年10月 7日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、以下の事項を含むものである。

(1)特許請求の範囲について
「【請求項1】
下糸防護導管5(1)と継手6を挿入する挿入孔を開けた、回転軸1と、
外釜底部2cに継手取り付け窪み2gを加工した、外釜2と、
中釜中心軸3aに糸通り孔3eを開け、中釜側面ガイドレール切欠部3f(1)の下部の中釜側面に空間3jを開け、中釜側面ガイドレール切欠部3f(1)の下部に下糸防護導管5(2)取り付け溝3hを掘り、中釜側面ガイドレール切欠部3f(2)に鋼板取り付け溝3iを切った中釜3と、
ボビンケース中心軸4aを短く切り、ボビンケース側面に下糸導入空間4bを開けた、ボビンケース4と、
釜の外部用の下糸防護導管5(1)と、釜の内部用の下糸防護導管5(2)に鋼板5dを取り付けた、下糸防護導管5と、
外釜2に取り付け、下糸防護導管5(1)と下糸防護導管5(2)を継ぐ、継手6と、
下糸防護導管5(1)をミシン底部に取り付ける、支持金具7と、
下糸防護導管5(2)を中釜3に取り付ける、下糸防護導管取り付け金具8と、
を備えた、ボビンレス下糸連続供給装置。
【請求項2】
下糸防護導管5(1)をミシン頭部よりミシン底部に導入し、回転軸1の挿入孔に挿入し、継手6と接続し、支持金具7でミシン底部に取り付ける、部分と、
下糸防護導管5(2)を中釜側面ガイドレール切欠部3f(1)の溝に差し込み下糸防護導管取り付け金具8で取り付け、鋼板5dを中釜側面ガイドレール切欠部3f(2)に取り付け、下糸防護導管5(2)を外釜2に取り付けてある継手6と接続する、部分と、
ボビンケース側面に下糸導入空間4bを開けた、ボビンケース4を中釜3にセットする、部分と、
の三部分で構成されている、ボビンレス下糸連続供給装置。」

(2)明細書の発明の詳細な説明について
ア 段落[0023]?段落[0024]
「【0023】
上記課題と目的を達成するために、図2参照、請求項1の外釜2は、従来使用している外釜2を改造する。新しく制作する外釜2は、軽くて、強い、新素材を使用する。最新の設備や工作機械を備えた工場で、新技術で新素材を加工し、安価で高性能の外釜2を開発し、ミシンを自動化する。
【0024】
図2の(1)は、図9参照、外釜底部2cの中心部の表面に長方形の継手取り付け窪み2gを加工する。」

イ 段落[0027]
「【0027】
上記課題と目的を達成するために、図3と図9及び図12参照、請求項1の中釜3は、従来使用している中釜3を改造する。新しく制作する中釜3は、軽くて強い新素材を使用する。最新の設備や工作機械を備えた工場の新技術で新素材を加工し、安価で高性能の中釜3を開発し、ミシンを自動化する。」

ウ 段落[0030]
「【0030】
図3の(1)は、図11参照、下糸防護導管取り付け金具8の取り付けは、下糸防護導管5(2)取り付け溝3hに差し込まれている下糸防護導管5(2)に下糸防護導管取り付け金具8を被せて、ネジ9で止め取り付ける。」

エ 段落[0035]
「【0035】
図3の(1)は、下糸防護導管5(2)と鋼板5dの取り付けは、下糸防護導管5(2)取り付け溝3hに下糸防護導管5(2)糸出口軸5cを差し込み、下糸防護導管取り付け金具8で蓋をしてネジ9で止め取り付ける。図11参照、鋼板5dの取り付け溝3iに、鋼板5dの上部の縁5eの突出部を差し込み取り付ける。下糸防護導管5(2)と鋼板5dが壁になり、中釜外側面3gと下糸防護導管5(2)及び鋼板内側面5gの間に隙間23が形成される。隙間23は、外釜内側面2fと下糸防護導管5(2)及び鋼板外側面5hが接触し、外釜2と中釜3の間の隙間と接続している。」

オ 段落[0040]
「【0040】
上記課題と目的を達成するために、図4と図9及び図12参照、請求項1のボビンケース4は、従来使用しているボビンケース4を改造する。ボビンケース側面の空間4bは、ボビンケース糸出口4cとボビンケース窪み4gの間の側面を細長く切り取り、下糸を中釜側面の空間3jよりボビンケース内部に導入する、下糸導入空間4bである。ボビンケース中心軸4aは、中釜中心軸糸通り穴3eにかぶさらないように短く切り、下糸24をボビンケース糸出口4cに連続供給する。」

カ 段落[0047]
「【0047】
上記課題と目的を達成するために、図6参照、請求項1の継手6は、下糸防護導管5をしっかり支える軸受けの機能を備えている。素材は、回転軸1と外釜2の高速回転力に耐える、軽くて、強い、新素材を使用する。継手軸糸入り口6cの糸通り穴は下糸防護導管5(1)の糸出口5b軸が差し込めるように大きく開ける。継手軸糸出口6dは、下糸防護導管5(2)の糸入り口5aに差し込めるように細く加工する。」

キ 段落[0051]?段落[0052]
「【0051】
上記課題と目的を達成するために、図7参照、請求項1の支持金具7は、図12に示すように、下糸防護導管5(1)を回転軸1の回転力に耐えるように継手6と接続し、ミシン底部にしっかり取り付け固定する金具である。素材は、回転軸1の高速回転力に耐える、軽くて強い新素材を使用する。 【0052】
上記課題と目的を達成するために、図8参照、請求項1の板状の下糸防護導管取り付け金具8は、中釜側面ガイドレール切欠部3f(1)の下糸防護導管5(2)取り付け溝3hに差し込まれている下糸防護導管5(2)糸出口軸5cを、中釜3にしっかり取り付け固定する金具である。素材は、軽くて強い新素材を使用する。」

ク 段落[0056]
「【0056】
上記課題と目的を達成するために、図4と図11及び図12参照、請求項2のボビンレス下糸連続供給装置のボビンケース4は、中釜中心軸3aにボビンケース中心軸4aを差し込み、中釜3にボビンケース4をセットする。下糸24は、下糸防護導管5(2)取り付け溝に取り付けられている下糸防護導管糸出口5bより、ボビンケース側面に開けられている下糸導入空間4bより、中釜中心軸糸通り孔3eを通り、ボビンケース糸出口4cに、下糸24を連続供給する。 ボビンレス下糸連続供給装置のボビンケース4は、中釜3とボビンケース4によって構成されている。」

ケ 段落[0068]
「【0068】
下糸24通しは、図9と図12参照、多巻きした下糸24を、糸立て台21に乗せて、糸調節糸掛け18を通り、糸通し器で、下糸防護導管5(1)糸入り口5aより下糸防護導管5(1)内を通り、継手6を介して下糸防護導管5(2)糸出口5bより中釜3内部に導入し、ボビンケース側面に切られている下糸導入空間4bよりボビンケース内部に導入し、中釜中心軸糸通り孔3eに通す。中釜中心軸糸通り孔3eに供給された下糸24は、ボビンケース溝4eより、糸調子バネ4dの中心部の下部にある糸孔に引き入れる、そしてボビンケース糸出口4cに連続供給される。 縫い初めにボビンケース糸出口4cとノド板針孔15の間の空間に下糸24を張る。図12参照、左手で針11から出ている上糸25の端を糸の緩む程度に軽く持ち、ハズミ車19を静かに回す。針11は一度下降した後、天秤16が上昇して最高点に達したらハズミ車19を止めて上糸25を引き出す、ボビンケース糸出口4cより約5cm出ている下糸24が上糸25に絡まって出てくる。この時下糸24はボビンケース糸出口4cとノド板針孔15の間の空間に張られる、図13の(1)参照、上糸25の先端は下糸24の先端と共に押さえ金26の下を通して向こう側に出し、布を押さえ金26の下に入れてから押え金26を降し、上糸25と下糸24及び布を押さえ金26で押さえ、モーターのスイッチを入れ縫い始める。一個の縫い目が完成し、針11が上昇している間に、送り歯27で布目を一つずつ前方に送り縫い目が完成され、縫製作業を行う。」

2.補正の適否
(1)下糸防護導管取り付け金具8の形状と下糸防護導管取り付け金具差し込み口について
本件補正は、下糸防護導管取り付け金具8の形状を単なる平板状(図8を参照。)に変更するとともに、
ア 「下糸防護導管取り付け金具8の取り付けは、下糸防護導管5(2)取り付け溝3hに差し込まれている下糸防護導管5(2)に下糸防護導管取り付け金具8を被せて、ネジ9で止め取り付ける」[0030]

イ 「下糸防護導管取り付け金具8で蓋をしてネジ9で止め取り付ける」[0035]
と変更し、さらに、

ウ 「・・・ボビンケース側面に下糸導入空間部4bを開け・・・」[請求項1]

エ 「ボビンケース側面に下糸導入空間4bを開けた」[請求項2]

オ 「ボビンケース側面の空間4bは、・・・下糸を中釜側面の空間3jよりボビンケース内部に導入する、下糸導入空間4bである。」[0040]

カ 「下糸24は、・・・下糸防護導管糸出口5bより、ボビンケース側面に開けられている下糸導入空間4bより、中釜中心軸糸通り孔3eを通り、ボビンケース糸出口4cに、下糸24を連続供給する。」[0056]

キ 「ボビンケース側面に切られている下糸導入空間4bよりボビンケース内部に導入し、中釜中心軸糸通り孔3eに通す。」[0068]
なる事項を追加するものである。

しかしながら、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下、「当初明細書等」という。)には、図8に筒状の部材と平板状の金具を組み合わせた下糸防護導管取り付け金具8が示されるとともに、

ク 「中釜側面ガイドレールの根元部に下糸防護導管取付け口3bを開け、・・・ボビンケース4側面に下糸防護導管取付け金具差し込み口4bを開けた、ボビンケース4と・・・」[請求項1]

ケ 「下糸防護導管5(2)を中釜側面ガイドレール切欠部3f(1)に取付け・・・、下糸防護導管取付け金具8で中釜3に取付け固定する。」

コ 「下糸防護導管取付け金具差し込み口4bは、ボビンケース糸出口4cとボビンケース窪み4gの間の側面を細長く切り取り、中釜3にボビンケース4が容易にセットできるようにする。」[0040]

サ 「中釜3に取り付けられている下糸防護導管5(2)糸入り口5aに外釜2に取り付けてある継手軸糸出口6dを差し込み、ネジ9で止め接続し、釜を組み立てる。」[0055]

シ 「下糸防護導管5(2)を中釜側面ガイドレール切欠部3f(1)に取り付ける、下糸防護導管取付け金具8を、下糸防護導管取付け口3bにネジ9でしっかり取り付け固定する。・・・下糸防護導管取付け口3bに取り付けてある下糸防護導管取付け金具8の筒に通し、ネジ9でしっかり止め固定する。」[0062]

ス 「下糸防護導管5(2)を中釜側面ガイドレール切欠部3f(1)より少し中に入った下糸防護導管5(2)取付け溝3hに埋め込み、下糸防護導管取付け金具8で中釜内部に取り付ける。・・・・ボビンケース側面に下糸防護導管取付け金具差し込み口4bを開ける。・・・」[0064]
と記載されており、図4(2)、図11からも、下糸防護導管取り付け金具8の筒状の部分がボビンケース4の側面の下糸防護導管取り付け金具差し込み口4bに挿入されている状態が見て取れる。


・本件補正後の[図8]


・本件補正後の[図11]


・当初明細書等の[図8]


・当初明細書等の[図4(2)]


・当初明細書等の[図11]


してみると、当初明細書等には、「筒状の部分を有する下糸防護導管取り付け金具8を中釜3の下糸防護導管取付け口3bに取り付けるとともに、下糸防護導管5(2)を中釜側面ガイドレール切欠部3f(1)に取付けるとともに下糸防護導管取付け金具8で中釜3に取付け固定し、下糸防護導管取り付け金具8の筒状の部分をボビンケース4の下糸防護導管取り付け金具差し込み口4bに挿入した構造」が記載されているのみであり、本件補正により追加された、「平板状の下糸防護導管取り付け金具8により、下糸防護導管5(2)取り付け溝3hに差し込まれている下糸防護導管5(2)に下糸防護導管取り付け金具8を被せて蓋をして取り付けるとともに、ボビンケース側面に下糸導入空間4bを開け、下糸防護導管糸出口5bより、ボビンケース側面に開けられている下糸導入空間4bより、中釜中心軸糸通り孔3eを通り、ボビンケース糸出口4cに、下糸24を連続供給する」構造は、当初明細書等には記載されていない。
そして、上記補正により追加された構造は、当初明細書等には記載がなく、当初明細書等から自明でもないから、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。したがって、本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

(2)外釜、中釜、継手、支持金具、下糸防護導管取り付け金具の材質について
本件補正は、外釜、中釜、継手、支持金具、下糸防護導管取り付け金具の材質について、

ア 「・・・新しく制作する外釜2は、軽くて、強い、新素材を使用する。・・・」[0023]

イ 「・・・新しく制作する中釜3は、軽くて強い新素材を使用する。・・・」[0027]

ウ 「継手6は、・・・。素材は、回転軸1と外釜2の高速回転力に耐える、軽くて、強い、新素材を使用する。」[0047]

エ 「支持金具7は・・・。素材は、回転軸1の高速回転力に耐える、軽くて強い新素材を使用する。」[0051]

オ 「板状の下糸防護導管取り付け金具8は、・・・。素材は、軽くて強い新素材を使用する。」[0052]
と変更するものである。
しかしながら、当初明細書等では、

カ 「請求項1の外釜2は、従来使用している外釜2を改造する。」[0023]

キ 「請求項1の中釜3は、従来使用している中釜3を改造する。」[0027]

ク 「継手6は、・・・。素材は、釜と同一素材を使用する。又釜以外の素材を使用する場合は、回転軸1と外釜2の高速回転力に耐える強靭な素材を使用する。」[0047]

ケ 「支持金具7は、・・・。素材は、回転軸1の高速回転力に耐える素材を使用する。」[0051]

コ 「下糸防護導管取付け金具8は、・・・。 素材は釜と同一素材を使用する。」[0052]

と記載されている。
してみると、当初明細書等には、外釜、中釜、継手、支持金具、下糸防護導管取り付け金具の素材として、従来から使用している外釜、中釜、釜と同一素材の材料、あるいは「高速回転に耐え得る」「強靱」な材料を用いることは記載されているが、「軽くて強い」新素材を用いることについては記載も示唆もない。
そして、上記補正により追加された「軽くて強い」素材は、当初明細書等には記載がなく、当初明細書等から自明でもないから、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。したがって、本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

(3)継手取り付け枠6f及び継手取り付け窪み2gについて
本件補正は、継手取り付け枠6fと継手取り付け窪み2gとの関係について、[図6(2)]の継手取り付け枠6fを長方形に変更するとともに、「外釜底部2cの中心部の表面に長方形の継手取り付け窪み2gを加工する。」[0024]と変更するものである。
しかしながら、当初明細書等には、[図6(2)]の継手取り付け枠6fは、円形で構成されており、継手取り付け枠6f及び継手取り付け窪み2gを長方形で構成することについては、記載も示唆もない。
そして、上記補正により追加された「長方形」の継手取り付け枠6f及び継手取り付け窪み2gは、当初明細書等には記載がなく、当初明細書等から自明でもないから初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。したがって、本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

・本件補正後の[図6(2)]



・当初明細書等の[図6(2)]


3.むすび(補正の却下の決定のむすび)
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1.本願発明
令和 元年10月 7日付け手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1及び請求項2に係る発明(以下、「本願発明1」及び「本願発明2」という。)は、願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項1及び請求項2に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
下糸防護導管5(1)と継手6を挿入する挿入孔を開けた、回転軸1と、 外釜底部2cに継手取付け窪み2gを加工し、外釜側面ガイドレール溝2eの下部の外釜内側面2fを削り取った、外釜2と、
中釜中心軸3aに糸通り孔3eを開け、中釜側面ガイドレール3fの下部に空間3jを開け、中釜側面ガイドレール3fの下部に下糸防護導管5(2)取付け溝3hを掘り、中釜側面ガイドレールの根元部に下糸防護導管取付け口3bを開け、中釜側面ガイドレール切欠部3f(2)に鋼板5d取付け溝3iを切った、中釜3と、
ボビンケース中心軸4aを短く切り、ボビンケース4側面に下糸防護導管取付け金具差し込み口4bを開けた、ボビンケース4と、
鋼板5dを取付けた下糸防護導管5(2)と、下糸24を外釜2外部より中釜3内部に導入する下糸防護導管5(1)と5(3)と、
外釜2に取付け、下糸防護導管5をしっかり支える、継手6と、
下糸防護導管5(1)をミシン底部に取付け固定する、支持金具7と、 下糸防護導管5(2)を中釜3に取付ける、下糸防護導管取付け金具8と、を備えた、ボビンレス下糸連続供給装置。」

「【請求項2】
下糸防護導管5(3)をミシン頭部よりミシン底部に導入し、下糸防護導管5(1)と接続し、下糸防護導管5(1)を回転軸1の挿入孔に挿入し、回転軸1に外釜2と共に装着されている継手6と接続し、支持金具7でミシン底部に取付け固定する、部分と、
下糸防護導管5(2)に取り付けてある鋼板5dを中釜側面ガイドレール切欠部3f(2)に取付け、下糸防護導管5(2)を中釜側面ガイドレール切欠部3f(1)に取付け、外釜2に取付けてある継手6と接続し、下糸防護導管取付け金具8で中釜3に取付け固定する、部分と、
ボビンケース4を中釜3にセットする、部分と、
の三部分で構成されている、ボビンレス下糸連続供給装置。」

2.原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。

理由1.(実施可能要件)
この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
理由2.(新規性)
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由3.(進歩性)
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


●理由1(実施可能要件)について
・請求項 1-2
・備考
本願発明は、ミシンからボビンを無くして下糸24を、外釜2の外部から中釜3の内部に連続供給して縫製作業を可能とする、ボビンレス下糸連続供給装置を提供することを目的としている(段落[0020]参照)。
上記目的の達成のために、発明の詳細な説明には、上糸ループを外釜2と中釜3との隙間内に進入、退出させて、ボビンケース糸出口4cより出ている下糸24を絡めて、縫い目を形成する旨、記載されている(特に、段落[0069]?[0077]参照)。
そして、特に、上糸ループの一方は、外釜底部2cの表面と中釜底部3dの間の隙間内を上昇させる旨(段落[0075]参照)、上糸ループの他方は、中釜3中心軸3aの頭部(図11中左側の中釜中心軸3aの端部と解される)をまたがせる旨(段落[0076]参照)、記載されており、上糸ループ内に中釜3をくぐらせることが読み取れる。
しかしながら、発明の詳細な説明に記載された構成に基づけば(図11等参照)、中釜3の外周には、下糸防護導管5(2)の糸出口5b側の端部が、下糸防護導管取付け金具8により固定されており、外釜底部2cの表面と中釜底部3dの間の隙間内を上昇する上糸ループの一方は、下糸防護導管5(2)に遮られて上糸ループを外釜2と中釜3との隙間内から退出させることができない。
したがって、発明の詳細な説明の記載は、上糸ループを外釜2と中釜3との隙間内に進入、退出させて、下糸24を絡めるための手段が不明であり、下糸24を外釜2の外部から中釜3の内部に連続供給して縫製作業を可能とすることを、当業者が実施することができる程度に説明されたものとはいえない。
よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1?2に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。

●理由2(新規性)及び理由3(進歩性)について
・請求項 1-2
・引用文献等 1
・備考
また、仮に、請求項1-2に係る発明が実施可能なものであったとしても、請求項1-2に係る発明は、引用文献1に記載の発明と総ての点において一致するため、新規性及び進歩性を有しない(引用文献1の請求項1-2等参照)。

引用文献1:特開2017-029658号公報

3.当審の判断
3-1.発明の詳細な説明の記載内容
(1)発明の詳細な説明には、次の内容が記載されている。
ア.発明が解決しようとする課題
「【0019】
ボビンを備えたミシンからボビンを無くし、継手6を介して下糸防護導管5で、下糸24を、外釜2外部から中釜3内部に連続供給して縫製作業を行うには、外釜二枚剣先根元部2iと中釜押さえ根元部2jの間の対向空間2m(1)内で、上糸25が下糸24「下糸防護導管5(2)」に絡まる課題を解決する。
【0020】
そこで本発明は、中釜3の中釜側面ガイドレール切欠部3f(1)に下糸防護導管5(2)を取付け、中釜側面ガイドレール切欠部3f(2)に鋼板5dを取付け、壁を造り、外釜二枚剣先根元部2iと中釜押さえ根元部2jの間の対向空間2m(1)内に下糸防護導管5(2)が設置された状態「下糸24が対向空間2m(1)内に張られた状態」を解決し、上糸25が下糸防護導管5(2)に絡まるのを防ぎ、下糸24を外釜2の外部から中釜3の内部に連続供給して縫製作業を可能とする、ボビンレス下糸連続供給装置を提供することを目的とする。」

イ.課題を解決するための手段
「【0021】
上記課題と目的を達成するために、図12参照、請求項1のボビンレス下糸連続供給装置は、駆動機構により外釜2を回転させる回転軸1と、中釜3の周りを回転する外釜2と、ボビンケース4に下糸24を供給する中釜3と、中釜3にセットしボビンケース糸出口4cに下糸24を供給するボビンケース4と、下糸24を外釜2外部より中釜3内部に導入する下糸防護導管5と、上糸25が下糸防護導管5(2)に絡まるのを防ぐ鋼板5dを取り付けた下糸防護導管5(2)と、外釜2に取り付け下糸防護導管5をしっかり支える継手6と、下糸防護導管5(1)をミシン底部に取り付け固定する支持金具7と、鋼板5dを取り付けた下糸防護導管5(2)を中釜3内部に取り付け固定する下糸防護導管取付け金具8と、を備えている。」

ウ.発明の効果
「【0078】
労働集約型の生産工程を改善し、ミシンの高速化と自動化により、生産性を高め、人件費の削減によりコスト競争力を強め、安価で高品質の商品を大量に市場に供給することができる。」


(2)発明の詳細な説明における上記記載からみて、本願発明1及び2は、「下糸24」を「外釜2の外部から中釜3の内部に連続供給」することを前提として、その上でボビンから下糸を供給することなしに「縫製作業を可能」とする「ボビンレス下糸連続供給装置」を得ることを目的としているものと認められる。

3-2.ミシンの原理に関する技術常識

一般に、ミシンにより、布地を糸により縫う原理は、以下のようなものである。なお、技術常識を示すものとして、実公平5-8952号公報(「従来の技術」及び第4図)や、「増補改訂最新裁縫ミシン教科書全書」(吉田元著、家庭教育社発行 昭和29年2月1日 25-49頁ミシンの機構参照)の記載を参照。

動作1:上糸を伴った針を布地を貫いて下に動かす。

動作2:針が布地の下にさがっている間に上糸を緩め、上糸をループ状にし、このループ部分に回転釜の回転運動によって回転釜の剣先を挿入して、ループ部分を回転釜の回転に伴って連れて回転するようにする。

動作3:回転釜を更に回転させ、回転釜内部に保持するボビンの周囲に上糸のループ部分を通す(上糸のループ部分がボビンをくぐる)ことにより、ボビンが保持する下糸を上糸に交差させる。

動作4:針を上昇させ、上糸を上に強く引っ張って、交差させた下糸を持ち上げて縫い目を形成する。

動作5:一個の縫い目が完成し、針が上昇している間に布目を一目づつ前方に送る。



「 実公平5-8952号公報 1:回転釜 2:ボビン




「 増補改訂最新裁縫ミシン教科書全書」ミシンの機構 ミシンの原理 37頁




3-3.本願の発明の詳細な説明記載の「ボビンレス下糸連続供給装置」により、ミシンの縫い目を形成することが可能か否かについて

(1)上記3-2.で述べたミシンの原理に基づけば、ミシンが縫うためには、下糸と上糸が交差する際、下糸のうち、布に縫われていない部分の全体を、上糸のループがくぐることが必要である。
従来のミシンは、その下糸の縫われていない部分を全てボビンに巻かれたものとし、そのボビンを上糸のループにくぐらせることで実現していた。
本願発明1及び本願発明2は、「ボビンレス」であり、下糸は従来のボビンに巻かれた状態でなく、下糸防護導管5から中釜3に供給するものとされる。
この下糸防護導管5に供給される下糸と上糸のループとの関係について本願明細書の記載を以下に参照する。

(2)ア.下糸24と上糸25により縫い目を形成する過程については、段落【0065】?【0077】(図10?図13)にその説明がなされている。

まず、下糸24は巻かれた状態で糸立て台21に立てられている。そして、そのような下糸24が、上糸25と縫い目をつくるまでについてみてみると次のとおりである。(下線部は、当審で付与したもので、下線部の記載は下糸24に関する記載である。)

(ア)「図11参照、中釜3にボビンケース4をセットする。中釜中心軸3aの糸通り孔3eは、ボビンの役目をはたし、良好な下糸24をボビンケース糸出口4cに連続供給する。」(段落【0067】)

(イ)「下糸24通しは、図9と図12参照、多巻きした下糸24を、糸立て台21に乗せて、糸調節糸掛け18を通り、糸通し器で、下糸防護導管5(3)糸入り口5aより下糸防護導管5(1)内に入り、継手6を介して下糸防護導管5(2)糸出口5bより中釜3内部に導入し、中釜中心軸糸通り孔3eに通す。中釜中心軸糸通り孔3eに供給された下糸24は、ボビンケース4に切られている溝4eより、糸調子ばね4dの中心部の下部にある糸孔に引き入れる、そしてボビンケース糸出口4cに連続供給される。
縫い始めに、ボビンケース糸出口4cとノド板針孔15の間の空間に下糸24を張る。図9参照、左手で針11から出ている上糸25の端を糸の緩む程度に軽く持ち、ハズミ車19を静かに回す。針11は一度下降した後天秤16が上昇して最高点に達したらハズミ車19を止めて上糸25を引き出す、ボビンケース糸出口4cより約5cm出ている下糸24が上糸25に絡まって出てくる、この時下糸24はボビンケース糸出口4cとノド板針孔15の間の空間に張られる、図12の(1)参照。上糸25は下糸24と共に押えの下を通して向こう側に出し、布を押さえの下に入れてから押えを降し縫い始める。」(段落【0068】)

(ウ)「外釜2の回転に伴う上糸25の遷移状態を図13(1)?(8)で説明する。
上糸25は外釜二枚剣先2aに捕捉されループ状になり、外釜二枚剣先2aの下側と上側に分けられ、時計と反対回りに、中釜3と下糸防護導管5(2)及び鋼板5dの周りを回っている。」(段落【0069】)

(エ)「図13の(1)は、図10参照、外釜二枚剣先2aが上糸25を捕捉する直前に、外釜内側面2fと鋼板外側面5hが接触し、鋼板5dが外釜二枚剣先根元部2iと中釜押さえ根元部2jとの間の対向空間2m(1)を塞ぎ、中釜外側面3gと鋼板内側面5g及び下糸防護導管5(2)の間に隙間23を形成する。ボビンケース糸出口4cとノド板針孔15の間の空間に下糸24が張られている、・・・」(段落【0070】)

(オ)「図13の(2)は、外釜2が回転するに従い、外釜側面ガイドレール溝2eと中釜側面ガイドレール切欠部3f(1)が篏合する。外釜二枚剣先2aの下側に回り込んだ上糸ループの一端は、外釜二枚剣先2aの後部の剣先2kに引き掛かり、中釜側面ガイドレール3fの上部を通過し、中釜側面ガイドレール切欠部3f(1)に当接し、その当接位置に残り、中釜外側面3gと鋼板内側面5g及び下糸防護導管5(2)の間の隙間23内に進入する。
外側二枚剣先2aの上側に回り込んだ上糸ループの一端は釜の外部を遷移している。外釜2が回転するに従い約11時の時点でボビンケース糸出口4cとノド板針孔15の間の空間に張られている下糸24の下側を通過する。
」(段落【0071】)

(カ)「図13の(3)は、更に外釜2は回転するに従い、釜の内部お遷移している上糸ループの一端は、中釜側面ガイドレール切欠部3f(1)に当接し、その当接位置に残り、空間3j内で下糸防護導管5(2)の上部を横切り通過し、外釜内側面2fと中釜外側面3gの間の隙間内に進入する。
釜の外部お遷移している上糸ループの一端は、ボビンケース糸出口4cとノド板針孔15の間の空間に張られている下糸24の下側を通過し、釜の外部を遷移する。」(段落【0072】)

(キ)「図13の(4)は、更に外釜2は回転するに従い、釜の内部を遷移している上糸ループの一端は、外釜二枚剣先2aの後部剣先2kより外れ、下降し、中釜側面ガイドレール切欠部3f(1)より離れ、中釜外側面3gと下糸防護導管5(2)及び鋼板5dの間の隙間23内を中釜側面ガイドレール切欠部3f(2)に向かって移動し、中釜底部3dをくぐり、下糸防護導管5(2)の上部を横切り、通過し、外釜底部2cと中釜底部3dの間の隙間内に進入する。
釜の外部を遷移している上糸ループの一端は、約8時の時点で、ボビンケース糸出口4cとノド板針孔15の間の空間に張られている下糸24の下側を通過し、釜の外部を遷移している。」(段落【0073】)

(ク)「図13の(5)は、更に外釜2は回転し釜の内部を遷移している上糸ループの一端は、最下点、6時で下糸防護導管5(2)の上部を横切り、継手軸6aの頭部を跨ぎ、上昇に転じる。
ボビンケース糸出口4cとノド板針孔15の間の空間に張られている下糸24の先端部は、布押さえ金にてノド板針孔15に押さえつけられ止められているため、上糸25は下糸24の先端部を跨ぐことができず、下糸24の下側を通過した後に、下糸24の上側を通過するため、上糸25は、下糸24を絡めて、中釜中心軸3aの頭部を跨ぎ上昇に転じる。」(段落【0074】)

(ケ)「図13の(6)は、外釜2は更に回転し、外釜底部2cの表面と中釜底部3dの間の隙間内を上昇した上糸ループの一端は、中釜底部3dをくぐり、中釜外側面3gと下糸防護導管5(2)及び鋼板5dの間の隙間23内に戻り、中釜側面ガイドレール切欠部3f(2)に当接し、その当接位置に残り、外釜二枚剣先2aの剣先部に引き掛かっている。」(段落【0075】)

(コ)「図13の(7)は、図12参照、外釜2の外部を遷移している上糸ループの一端は、最下点6時で中釜中心軸3aの頭部をまたぎ、外釜二枚剣先2aの根元部2iから徐々に剣先部に移動し、中釜止め金具13と中釜止め窪み14との間の隙間をくぐり抜け、釜の内部を遷移している上糸ループの一端と一体になり外釜二枚剣先2aより外れ、ループ状になり、中釜押さえ2bの剣先部に引き掛かる。」(段落【0076】)

(サ)「図13の(8)は、図12参照、更に外釜2は回転し、上糸25は、もう少しで一回転しようとする手前で、中釜外側面3gと下糸防護導管5(2)及び鋼板5dの間の隙間23内より出て、中釜押さえ2bの剣先部から外れ、ボビンケース糸出口4cとノド板針孔15の間の空間に張られている下糸24を上糸25のループ内に抱え込んで、天秤16でノド板針孔15に引き上げられ、布は送り歯で送られ縫い目を形成する。」(段落【0077】)

イ.上記(ア)及び(イ)の記載より、下糸24は、糸立て台21に立てられた巻かれた状態からほどかれ下糸防護導管5内を通過してボビンケース糸出口4Cまで供給され、上記(エ)の記載より、その供給された下糸24は、ボビンケース糸出口4Cとノド板針孔15の間の空間に張られて、上糸25のループに交差し、抱え込まれるものとされる。すなわち、下糸24のうち縫われていない部分は、糸立て台21とボビンケース糸出口4Cと、その両者の間に延在することになる。

上記3-3.(1)で述べたように、縫い目ができるためには、下糸と上糸が交差する際、下糸の縫われていない部分全体を、上糸のループがくぐることが必要である。すなわち、本願発明では、糸立て台21とボビンケース糸出口4Cとの間に下糸が連続して存在するから、糸立て台21とボビンケース糸出口4Cを上糸のループにくぐらせることが必要である。

しかしながら、上記(ア)?(サ)にボビンケース糸出口4cとノド板針孔15の間の空間に張られている下糸24と上糸25を交差させることは記載されているものの、糸立て台21からボビンケース糸出口4Cとの間に連続して存在する下糸を上糸のループがくぐるための機構についての記載はない。また、他の記載をみても、上糸のループが下糸の縫われていない部分全体をくぐることを可能とさせるための機構について何ら示されていない。

仮に、くぐることができないとすると、上糸25は、ボビンケース糸出口4Cとノド板針孔15の間に張られた下糸と交差するだけでなく、糸立て台21からの下糸とも交差することになり、縫い目は形成できず、ミシンとして用をなすものとはいえない。

ウ.したがって、本願の発明の詳細な説明の記載は、上糸25のループが下糸24の縫われていない部分全体をくぐるための手段が不明であり、下糸24を外釜2の外部から中釜3の内部に連続供給して縫製作業を可能とする点を、当業者が実施することができる程度に説明されたものとはいえない。

(3)よって、本件出願の発明の詳細な説明は、依然として、当業者が本願発明1及び本願発明2を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。

3-4.新規性について
(1)引用文献1の記載
引用文献1には、以下の事項が記載されている。
ア 特許請求の範囲
「【請求項1】
下糸防護導管5(1)と継手6を挿入する挿入孔を開けた、回転軸1と、 外釜底部2cに継手取付け窪み2gを加工し、外釜側面ガイドレール溝2eの下部の外釜内側面2fを削り取った、外釜2と、
中釜中心軸3aに糸通り孔3eを開け、中釜側面ガイドレール3fの下部に空間3jを開け、中釜側面ガイドレール3fの下部に下糸防護導管5(2)取付け溝3hを掘り、中釜側面ガイドレールの根元部に下糸防護導管取付け口3bを開け、中釜側面ガイドレール切欠部3f(2)に鋼板5d取付け溝3iを切った、中釜3と、
ボビンケース中心軸4aを短く切り、ボビンケース4側面に下糸防護導管取付け金具差し込み口4bを開けた、ボビンケース4と、 鋼板5dに下糸防護導管5(2)を取付け、下糸24を外釜2外部より中釜3内部に導入する下糸防護導管5(1)と5(3)と、
外釜2に取付け、下糸防護導管5をしっかり支える、継手6と、
下糸防護導管5(1)をミシン底部に取付け固定する、支持金具7と、
下糸防護導管5(2)を中釜3に取付ける、下糸防護導管取付け金具8と、を備えた、ボビンレス下糸連続供給装置。
【請求項2】
下糸防護導管5(3)をミシン頭部よりミシン底部に導入し、下糸防護導管5(1)と接続し、下糸防護導管5(1)を回転軸1の挿入孔に挿入し、回転軸1に外釜2と共に装着されている継手6と接続し、支持金具7でミシン底部に取付け固定する。部分と、
下糸防護導管5(2)に取り付けてある鋼板5dを中釜側面ガイドレール切欠部3f(2)に取付け、下糸防護導管5(2)を中釜側面ガイドレール切欠部3f(1)に取付け、外釜2に取付けてある継手6と接続し、下糸防護導管取付け金具8で中釜3に取付け固定する。部分と、
ボビンケース4を中釜3にセットする。部分と、
の三部分で構成されている、ボビンレス下糸連続供給装置。」

イ 段落[0022]
「【0022】
上記目的を達成するために、図1参照、請求項1の回転軸1は、従来使用している回転軸1に、継手6取付け孔及び下糸防護導管5(1)を挿入する挿入孔を開ける。継手6挿入孔は、回転軸1と継手回転筒6eとの接触部に隙間ができぬように精密加工する。又下糸防護導管5(1)の挿入孔は、回転軸1と下糸防護導管5(1)が接触しないように開ける。」

ウ 段落[0024]、段落[0025]
「【0024】
図2の(1)は、外釜底部2cの中心部の表面に継手取付け窪み2gを加工する。
【0025】
図2の(1)は、外釜ガイドレール溝2eの下部の縁を残して、外釜内側面2fの表面を削り取る。鋼板5dを中釜3に取付け釜を組み立てた時、鋼板5dの上部の縁5eに外釜ガイドレール溝2eの下部の縁が覆いかぶさるように、又従来の外釜2と中釜3との間の隙間を保持するように、外釜内側面2fの表面を削り取る。」

エ 段落[0028]-段落[0031]
「【0028】
図3の(1)は、中釜側面ガイドレール3f下部の空間3jは、下糸防護導管5(2)が外釜2と中釜3の間の隙間を塞がぬように、又下糸防護導管5(2)が中釜外側面3gに接触して外釜2の回転を妨げぬように、中釜側面ガイドレール切欠部3f(1)より少し中に入った中釜側面ガイドレール3fの下部の中釜側面を縦に細長く切り取り空間3jを開ける。空間3jの広さは、上糸25が下糸防護導管5(2)の上部を横切り通過できる程度に広くする。
【0029】
図3の(1)は、下糸防護導管5(2)取付け溝3hを中釜側面ガイドレール切欠部3f(1)より少し中に入った中釜側面ガイドレール3fの下部の中釜側面ガイドレール3fと外釜側面ガイドレール溝2eの嵌合部より中釜側面ガイドレール3fの根元部に向かって開ける。釜を組み立てた時、下糸防護導管5(2)が外釜側面ガイドレール溝2eの下部の縁に軽く接触する程度に開ける。圧接すると外釜2が回転不能になる。
【0030】
図3の(1)は、下糸防護導管取付け口3bを中釜側面ガイドレール切欠部3f(1)より少し中に入った中釜側面ガイドレール3fの根元部に開ける。 下糸防護導管取付け溝3hと下糸防護導管取付け口3bは繋がっている。
【0031】
図3の(1)は、鋼板5dの取付け溝3iは、中釜側面ガイドレール3fと外釜側面ガイドレール溝2eの嵌合部に開ける。釜を組み立てた時、鋼板5dが外釜側面ガイドレール溝2eの下部の縁に軽く接触する程度に開ける。圧接すると外釜が回転不能になる。」

オ 段落[0040]
「【0040】
上記目的を達成するために、図4参照、請求項1のボビンケース4は、従来使用しているボビンケース4を改造する。下糸防護導管取付け金具差し込み口4bは、ボビンケース糸出口4cとボビンケース窪み4gの間の側面を細長く切り取り、中釜3にボビンケース4が容易にセットできるようにする。ボビンケース中心軸4aは、中釜中心軸糸通り穴3eに、かぶさらないように短く切り、下糸24をボビンケース糸出口4cに連続供給する。」

カ 段落[0042]、段落[0043]
「【0042】
図5の下糸防護導管5(1)と5(2)及び鋼板5dの素材は、回転軸1と外釜2の高速回転力に耐える強靭な同一素材を使用する。下糸防護導管5(3)の素材は、糸汚れが防止できればよい安価な素材を使用する。
【0043】
図3の(1)参照、板状の下糸防護導管5(2)は角を取り丸くして銅板内側面5gに下糸防護導管5(2)の縦軸を溶接にて取付け中釜側面ガイドレール切欠部3f(1)より少し中に入った中釜側面ガイドレール下部の空間3j内にある下糸防護導管取付け溝3hに取り付ける。」

キ 段落[0047]
「【0047】
上記目的を達成するために、図6参照、請求項1の継手6は、下糸防護導管5をしっかり支える軸受けの機能を兼備している。素材は、釜と同一素材を使用する。又釜以外の素材を使用する場合は、回転軸1と外釜2の高速回転力に耐える強靭な素材を使用する。」

ク 段落[0051]、段落[0052]
「【0051】
上記目的を達成するために、図7参照、請求項1の支持金具7は、下糸防護導管5(1)が回転軸1の回転力に耐えるように継手6と接続し、ミシン底部にしっかり取り付け固定する金具である。素材は、回転軸1の高速回転力に耐える素材を使用する。
【0052】
上記目的を達成するために、図8参照、請求項1の下糸防護導管取付け金具8は、下糸防護導管5(2)が外釜2の回転力に耐えるように、中釜3にしっかり取付け固定する金具である。 素材は釜と同一素材を使用する。」

ケ 段落[0054]
「【0054】
上記目的を達成するために、図9参照、請求項2のボビンレス下糸連続供給装置の釜の外部構造は、外釜2の継手取付け窪み2gに、継手取付け枠6fをネジ9で取付け固定する。下糸防護導管5(1)を、外釜2に取付けてある継手軸糸入り口6cに差し込みネジ9で止め接続し、ミシン底部に取付けてある回転軸1の挿入孔に挿入し、外釜2を回転軸1に取り付け、ネジ9で止め固定し、挿入孔より出ている下糸防護導管5(1)の端を支持金具7でミシン底部に取付け固定する。下糸防護導管5(3)をミシン頭部よりミシン底部に導入し、回転軸1の挿入孔より出ている下糸防護導管5(1)に差し込み、ネジ9で止め接続する。下糸防護導管5(3)の糸入り口5aを、取付け金具でミシン頭部にネジ9で取付ける。釜の外部は、回転軸1と、継手6と、支持金具7と、下糸防護導管5(1)と5(3)によって構成されている。」

(2)対比・判断
引用文献1の「下糸防護導管5(1)」、「下糸防護導管5(2)」、「下糸防護導管5(3)」、「継手6」、「挿入孔」、「回転軸1」、「外釜底部2c」、「継手取り付け窪み2g」、「外釜側面ガイドレール溝2e」、「外釜内側面2f」、「外釜2」、「中釜中心軸3a」、「糸通り孔3e」、「中釜側面ガイドレール3f」、「空間3j」、「下糸防護導管5(2)取り付け溝3h」、「下糸防護導管取付け口3b」「中釜側面ガイドレール切欠部3f(2)」、「鋼板5d取付け溝3i」、「中釜3」、「ボビンケース中心軸4a」、「下糸防護導管取付け金具差し込み口4b」、「ボビンケース4」、「鋼板5d」、「下糸24」、「支持金具7」、「下糸防護導管取付け金具8」、「ボビンレス下糸連続供給装置」、「ミシン頭部」、「ミシン底部」、「中釜側面ガイドレール切欠部3f(1)」は、それぞれ、本願発明1及び本願発明2の同じ部材に相当する。
してみると、引用文献1には、以下の2つの発明(以下、「引用発明1」及び「引用発明2」という。)が記載されている。

(引用発明1)
「下糸防護導管5(1)と継手6を挿入する挿入孔を開けた、回転軸1と、 外釜底部2cに継手取付け窪み2gを加工し、外釜側面ガイドレール溝2eの下部の外釜内側面2fを削り取った、外釜2と、
中釜中心軸3aに糸通り孔3eを開け、中釜側面ガイドレール3fの下部に空間3jを開け、中釜側面ガイドレール3fの下部に下糸防護導管5(2)取付け溝3hを掘り、中釜側面ガイドレールの根元部に下糸防護導管取付け口3bを開け、中釜側面ガイドレール切欠部3f(2)に鋼板5d取付け溝3iを切った、中釜3と、 ボビンケース中心軸4aを短く切り、ボビンケース4側面に下糸防護導管取付け金具差し込み口4bを開けた、ボビンケース4と、 鋼板5dを取付けた下糸防護導管5(2)と、下糸24を外釜2外部より中釜3内部に導入する下糸防護導管5(1)と5(3)と、
外釜2に取付け、下糸防護導管5をしっかり支える、継手6と、
下糸防護導管5(1)をミシン底部に取付け固定する、支持金具7と、 下糸防護導管5(2)を中釜3に取付ける、下糸防護導管取付け金具8と、を備えた、ボビンレス下糸連続供給装置。」

(引用発明2)
「下糸防護導管5(3)をミシン頭部よりミシン底部に導入し、下糸防護導管5(1)と接続し、下糸防護導管5(1)を回転軸1の挿入孔に挿入し、回転軸1に外釜2と共に装着されている継手6と接続し、支持金具7でミシン底部に取付け固定する、部分と、
下糸防護導管5(2)に取り付けてある鋼板5dを中釜側面ガイドレール切欠部3f(2)に取付け、下糸防護導管5(2)を中釜側面ガイドレール切欠部3f(1)に取付け、外釜2に取付けてある継手6と接続し、下糸防護導管取付け金具8で中釜3に取付け固定する、部分と、
ボビンケース4を中釜3にセットする、部分と、
の三部分で構成されている、ボビンレス下糸連続供給装置。」

そして、引用発明1と本願発明1とを対比すると、両者の構成に差異は認められない。また、引用発明2と本願発明2とを対比すると、同じく両者の構成に差異は認められない。
してみると、本願発明1及び本願発明2は、それぞれ引用発明1及び引用発明2に該当するものといえる。

(3)小括
したがって、本願発明1及び本願発明2は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

第4 むすび
上記のとおりであるから、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、本願は拒絶すべきものであり、また、本願発明1及び本願発明2は、同法第29条第1項第3号に該当するから、特許を受けることができないものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-06-09 
結審通知日 2020-06-16 
審決日 2020-06-30 
出願番号 特願2018-193850(P2018-193850)
審決分類 P 1 8・ 536- Z (D05B)
P 1 8・ 113- Z (D05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 姫島 卓弥  
特許庁審判長 井上 茂夫
特許庁審判官 杉山 悟史
間中 耕治
発明の名称 ボビンレス下糸連続供給装置  

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