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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01M
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G01M
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01M
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G01M
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G01M
管理番号 1365905
審判番号 不服2019-7520  
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-06-05 
確定日 2020-09-09 
事件の表示 特願2017-546697「可撓性容器の完全性試験のためのシステム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 9月 9日国際公開、WO2016/140736、平成30年 3月15日国内公表、特表2018-507415〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)1月12日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2015年3月3日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成30年8月14日付けの拒絶理由が通知され、同年11月20日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、平成31年1月30日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされたのに対し、令和元年6月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、それと同時に手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本件補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正前の請求項1及び5について
本件補正前の平成30年11月20日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び5の記載は以下のとおりである。
「【請求項1】
容器の完全性を決定するためのシステムであって、
定圧流体源と、
第1出口及び第2出口を有するバルブと、
前記第1出口及び前記容器と連通する高質量流量変換器と、
前記第2出口及び前記容器と連通する低質量流量変換器と、
前記バルブ、前記高質量流量変換器及び前記低質量流量変換器と連通する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記バルブを制御して前記第1出口又は前記第2出口を選択する、システム。」
「【請求項5】
容器の完全性を決定するためのシステムであって、
定圧流体源と、
前記定圧流体源及び前記容器と連通する低質量流量変換器と、
バルブを備えるバイパス経路であって、前記バルブの入力部は前記定圧流体源と連通し、前記バルブの出力部は前記容器と連通しており、且つ、前記バルブが開いているとき前記低質量流量変換器と前記バイパス経路を通る流量との間に所定の関係があるバイパス経路と、
前記バルブ及び前記低質量流量変換器と連通する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記バルブを制御して前記バイパス経路を通る流体の流れを許容又は停止する、システム。」

(2)本件補正の請求項1及び5について
本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び5の記載は以下のとおりである。
「【請求項1】
容器の完全性を決定するためのシステムであって、
定圧流体源と、
第1出口及び第2出口を有するバルブと、
前記第1出口及び前記容器と連通する高質量流量変換器と、
前記第2出口及び前記容器と連通する低質量流量変換器と、
前記バルブ、前記高質量流量変換器及び前記低質量流量変換器と連通する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記高質量流量変換器によって検出された前記第1出口を通る流量に基づいて、前記バルブを制御して前記第1出口又は前記第2出口を選択する、システム。」
「【請求項5】
容器の完全性を決定するためのシステムであって、
定圧流体源と、
前記定圧流体源及び前記容器と連通する低質量流量変換器と、
バルブを備えるバイパス経路であって、前記バルブの入力部は前記定圧流体源と連通し、前記バルブの出力部は前記容器と連通しており、且つ、前記バルブが開いているとき前記低質量流量変換器と前記バイパス経路を通る流量との間に既知の関係があるバイパス経路と、
前記バルブ及び前記低質量流量変換器と連通する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記低質量流量変換器からのアウトプットに基づいて、前記バルブを制御して前記バイパス経路を通る流体の流れを許容又は停止し、前記容器への総流量を前記既知の関係に基づいて前記低質量流量変換器からの前記アウトプットから決定することができるシステム。」(下線は補正箇所である。)

2 補正の適否
(1)新規事項について
ア 請求項1について
(ア)本件補正により、「制御装置は、前記バルブを制御して前記第1出口又は前記第2出口を選択する」が、「制御装置は、前記高質量流量変換器によって検出された前記第1出口を通る流量に基づいて、前記バルブを制御して前記第1出口又は前記第2出口を選択する」と補正され、これにより「制御装置は、前記高質量流量変換器によって検出された前記第1出口を通る流量に基づいて、前記バルブを制御して前記第1出口を選択する」ことと、「制御装置は、前記高質量流量変換器によって検出された前記第1出口を通る流量に基づいて、前記バルブを制御して前記第2出口を選択する」こととなった。

(イ)翻訳文等の記載
上記請求項1の補正事項に関して、国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面(図面の中の説明に限る。)の翻訳文、国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文又は国際出願日における国際特許出願の図面(図面の中の説明を除く。)(以下「翻訳文等」という。)において、以下の記載がある(なお、下線は当審において付与した。以下、同様。)。
「【0033】
図3は、可撓性容器100を充填しその完全性を決定するプロセスを示すフローチャートを示す。まず、ステップ300に示すように、可撓性容器100の容積が制御装置30に提供される。いくつかの実施形態では、制御装置30は、可撓性容器100の容積に基づいて所望の流体圧力を決定する。他の実施形態では、所望の流体圧力も制御装置30に提供される。いくつかの実施形態では、容器の容積は制御装置30に提供されない。むしろ、制御装置30は、試験対象の可撓性容器100の容積を知ることに依存することなく、普遍的な充填及び完全性試験を実施する。特定の実施形態では、所望の圧力は、可撓性容器の広範囲の容積に対して許容可能であると考えられる固定値に設定される。
【0034】
所望の流体圧力に基づいて、制御装置30は、ステップ310に示すように変換器20からの読み取り値に基づいて流体供給部10を調整する。
【0035】
制御装置30は、その後ステップ320に示すように、バルブ40を作動させてバルブ40の第1出口41を選択する。これにより、流体供給部10からの流体が高質量流量変換器50を通過する。
【0036】
制御装置30は、次にステップ330に示すように、高質量流量変換器50にクエリすることによって可撓性容器100に流入する流量を監視する。可撓性容器100は比較的空である間、図2A-Cに示すように流量は高いが、可撓性容器100が充填されるにつれて減少する。ステップ340に示すように、高質量流量変換器50によって測定された流量を、制御装置30によって所定のレベル、例えば30リットル/分と比較する。上述するように、所定のレベルは、低質量流量変換器60によって測定可能な最大流量を下回る流量のような絶対流量であってもよい。他の実施形態では、所定のレベルは、高質量流量変換器50によって検出される初期流量の割合であってもよい。流量が依然として所定のレベルよりも大きい場合、制御装置30はステップ330に示すように、高質量流量変換器50によって測定される流量の監視を継続する。
【0037】
流量が所定のレベルよりも少なくなると、制御装置30はステップ350に示すように、バルブ40を作動させて第2出口42を選択する。これにより、流体は低質量流量変換器60を通って流れることができ、第1出口41を通る流れを無効にする。制御装置30は、次にステップ360に示すように、低質量流量変換器60にクエリすることによって流量を監視する。」

(ウ)判断
上記翻訳文等を参照するに、制御装置30は、まず、バルブ40を作動させて第1出口41を選択し、流体供給部10からの流体を高質量流量変換器50を通過させ、高質量流量変換器50が可撓性容器100に流入する流量を監視し、流量が所定のレベルよりも少なくなると、制御装置30は、バルブ40を作動させて第2出口42を選択している。
すなわち、制御装置30は、流体を高質量流量変換器50を通過させるために、まず、バルブ40を作動させて第1出口41を選択するのであり、バルブ40を作動させて第1出口41を選択する際には、まだ高質量流量変換器には流体が流れていないのであるから、高質量流量変換器によって検出された流量に基づいて、第1出口41を選択することは想定されないことである。
してみれば、「制御装置は、前記高質量流量変換器によって検出された前記第1出口を通る流量に基づいて、前記バルブを制御して前記第1出口を選択する」ことについては、翻訳文等のすべての記載を総合しても記載されていたとはいえない。
この点、請求人は、審判請求書で「請求項1における補正事項の根拠は、本願当初明細書段落0034?0037等の記載である。」と説明するのみであり、「段落0034?0037」の記載は、上記(イ)のとおりであるから、請求人の審判請求書における説明によって上記判断が変わることはない。
よって、請求項1についての補正は、「制御装置は、前記高質量流量変換器によって検出された前記第1出口を通る流量に基づいて、前記バルブを制御して前記第1出口を選択する」ことが追加されたことにおいて、翻訳文等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものとはいえない。

イ 請求項5について
(ア)本件補正により「制御装置は、前記バルブを制御して前記バイパス経路を通る流体の流れを許容又は停止する」が、「制御装置は、前記低質量流量変換器からのアウトプットに基づいて、前記バルブを制御して前記バイパス経路を通る流体の流れを許容又は停止し、前記容器への総流量を前記既知の関係に基づいて前記低質量流量変換器からの前記アウトプットから決定することができる」と補正された。

(イ)翻訳文等の記載
上記請求項5の補正事項に関して、翻訳文等において、以下の記載がある。
「【0047】
更に、バイパス経路471及び測定経路472に使用する導管のサイズは、これら2つの経路471、472を通る流量の間に既知の関係が存在するように選択される。例えば、バイパス経路471は、全流体の99%がバイパス経路471を通過するようなサイズにすることができる。もちろん、他の比率も本発明の範囲内であり、本システムは特定の比率に制限されない。バイパス経路471を通る流量と低質量流量変換器60を通る流量との間に既知の関係があるので、低質量流量変換器60のみを使用して可撓性容器100内への全体流量を決定することが可能である。例えば、上記の例では、低質量流量変換器60によって測定される流量に20を乗算して可撓性容器100への総流量を決定することができる。いくつかの実施形態では、充填プロセス中に可撓性容器100内への流量を正確に決定する必要はなくてもよい。むしろ、流量が低質量流量変換器60によって正確に測定できるレベルに減少したときに決定することが重要なだけである。
【0048】
例えば、低質量流量変換器60はXsccm未満の流量を正確に測定できると仮定する。また、バイパス経路471を通る流量は、低質量流量変換器60を通る流量よりもM倍大きいとも仮定する。従って、可撓性容器100への総流量は、およそ(M+1)*Fであり、ここで、Fは低質量流量変換器60によって測定された流量である。低質量流量変換器60を通る流量(F)がX/(M+1)より減少すると、(低質量流量変換器60とバイパス経路471の両方を通る)総流量は、低質量流量変換器60によって測定可能な最大値よりも小さいことがわかる。この時点で、バルブ440を作動させてバイパス経路471を通る流体の流れを停止し、それによって流体の全流れを低質量流量変換器60に導くことができる。可撓性容器100の充填を完了するために必要な流量を監視することができる。同様に、漏れを(図2B及び図2Cに示すように)残留流量に基づいて検出することができる。」

(ウ)判断
上記(イ)で摘記した翻訳文等の記載及びその余の翻訳文等の記載を参照しても「アウトプット」という用語の記載はなく、請求人は、上記補正について、審判請求書で「請求項5における補正事項の根拠は、本願当初明細書段落0047等の記載である。」と説明するのみで、「段落0047」の記載は上記(イ)のとおりで「アウトプット」という記載はないことから、請求人はどのような技術的意図のもと、あえて翻訳文等に記載されていない「アウトプット」という用語を用いたのか理解できない。
上記(イ)で摘記した翻訳文等には「低質量流量変換器60によって測定される流量」との記載があることから、上記補正された「低質量流量変換器からのアウトプット」における「アウトプット」とは、「測定される流量」に対応するものとも推測されるが、一般に「アウトプット」という用語は「出力」(例えば「広辞苑」参照)という意味であるから、「低質量流量変換器からのアウトプット」とは、「測定される流量」に限定されない低質量流量変換器60から出力される全てのものを含むことになる。例えば、翻訳文等の【0054】には「更に、所与の圧力及び温度での流量を、オリフィス開口部に相関付けてもよい。例えば、50ミクロンサイズの孔は0.5psiでの特定の漏れ率を有すると決定してもよい。同様に、他のサイズのオリフィスも所定の圧力及び温度で特定の漏れ率を有し得る。従って、圧力、流体の温度及び最終流量に基づいて、欠陥(又はオリフィス)のサイズを決定することができる。」との記載もあり、「流量」だけでなく「圧力」、「温度」を含めようとして「アウトプット」という用語をあえて用いたとも推定されるところ、翻訳文等には「低質量流量変換器」が圧力、温度を測定するものであるとの記載はない。
そうすると、翻訳文等に記載されている「低質量流量変換器60によって測定される流量」との記載を用いずに、あえて「低質量流量変換器からのアウトプット」との記載を用いたことに鑑みれば、「測定される流量」に限定されない低質量流量変換器60から出力される全てのものを含むことを意図して表現したものとも推定されるが、翻訳文等には「測定される流量」以外の「低質量流量変換器からのアウトプット」については記載されていない。
したがって、補正された「制御装置は、前記バルブを制御して前記バイパス経路を通る流体の流れを許容又は停止」することが、測定される流量に限定されない「前記低質量流量変換器からのアウトプットに基づいて」行われること、「前記容器への総流量を前記既知の関係に基づいて」「決定すること」が、測定される流量に限定されない「前記低質量流量変換器からの前記アウトプット」から決定される点において、翻訳文等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものとはいえない。
なお、さらに付言するなら、国際出願日における国際特許出願の明細書、請求の範囲及び図面の原文にも「output」という記載はないことから、誤訳訂正したものでもない。

ウ 小括
よって、本件補正は、上記ア及びイの点において、翻訳文等に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしているとはいえない(同法第184条の12第2項参照)。

(2)独立特許要件について
請求人は、本件補正について、審判請求書で「これらの補正事項は、いずれも発明特定事項の限定的減縮を目的とするものである。」と説明していることから、請求人の主張のとおり、請求項5についての本件補正が限定的減縮を目的としたものとして、以下、本件補正後の上記1(2)で摘記した請求項5に記載された発明(以下「補正発明」という。)が特許法第17条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、検討する。

明確性について
(ア)本件補正により、補正発明は「容器の完全性を決定するためのシステムであって、・・・前記制御装置は、前記低質量流量変換器からのアウトプットに基づいて、前記バルブを制御して前記バイパス経路を通る流体の流れを許容又は停止し、前記容器への総流量を前記既知の関係に基づいて前記低質量流量変換器からの前記アウトプットから決定することができるシステム。」の発明となった。
しかしながら、本件補正で追加された「前記容器への総流量を」「決定する」ことと、「容器の完全性を決定する」こととの技術的関係について特定されておらず、補正発明において、他に「容器の完全性を決定する」具体的な手段を示す事項も特定されていないことから、「前記容器への総流量を」「決定する」ことが「容器の完全性を決定する」ことであるとの解釈等、多様な技術的関係を含む発明となっている。

(イ)本願明細書の記載
上記(1)イ(イ)で摘記した本願明細書の【0048】には「(低質量流量変換器60とバイパス経路471の両方を通る)総流量」と記載され、【0047】には「低質量流量変換器60によって測定される流量に20を乗算して可撓性容器100への総流量を決定することができる。いくつかの実施形態では、充填プロセス中に可撓性容器100内への流量を正確に決定する必要はなくてもよい。むしろ、流量が低質量流量変換器60によって正確に測定できるレベルに減少したときに決定することが重要なだけである。」と記載され、さらに、本願明細書には、補正発明に対応する記載として、以下の記載がある。
「【0053】
流量が所定のレベルよりも少なくなると、制御装置430はステップ550に示すように、バルブ440を作動させてバイパス経路471の通過を無効にする。これにより、流体の全量が低質量流量変換器60を通って流れることができる。このように、低質量流量変換器60を通る流量は、(M+1)倍だけ増加する。制御装置430は、次にステップ560に示すように、低質量流量変換器60にクエリすることによって流量を監視する。
【0054】
制御装置430は、その後ステップ570に示すように、可撓性容器100の完全性を決定する。いくつかの実施形態では、完全性は低質量流量変換器60への移行後の一定時間の流量を監視することによって決定される。」

(ウ)検討
上記明細書の記載を参照するに、容器の完全性は、バイパス経路471の通過を無効にして、低質量流量変換器60の流量を監視することによって決定されるものであり、低質量流量変換器60とバイパス経路471の両方を通る総流量によって決定されるものではない。
また、「前記容器への総流量を」「決定する」ことにより、「バルブを制御して前記バイパス経路を通る流体の流れを許容又は停止」するものであるとも推定されるが、補正発明において「低質量流量変換器からのアウトプットに基づいて、前記バルブを制御して前記バイパス経路を通る流体の流れを許容又は停止」すると特定されているから、補正発明においては当該推定を正当な解釈とすることはできない。
してみれば、「容器の完全性を決定するためのシステム」の発明において、「容器の完全性を決定する」ことと、どのような技術的関係のもと「前記容器への総流量を」「決定する」との事項を追加したのか不明であり、補正発明を不明確とするものである。

(エ)小括
よって、補正発明は、上記点において、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしているとはいえない。

進歩性について
下記の第3の2「原査定」において、最初に請求項5について記載されており、その請求項5に係る発明について引用文献1又は2に記載された発明であるか、それら各々の発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるとされていることから、当審においても、まず、原査定の請求項5に係る発明に対応する補正発明について検討する。

(ア)引用文献2について
a 本願の優先日前に頒布され、下記第3の2の原査定の拒絶の理由で引用された刊行物である引用文献2(特開2008-14678号公報)には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審において付与した。
(2ア)「【0009】
本発明はかかる課題に鑑みなされたもので、微小な漏れの検出を可能とし、または判定時間の短縮化を図ることができる容器の漏れ検出装置及び検出方法を提供することをその目的とする。」

(2イ)「【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下図面につき本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は本発明の原理を表す容器の漏れ検出装置の概略図である。図において、漏れ検出装置10は、流体供給源であるエア源12と、該エア源12と検査する容器Cとの間を接続する気体流路14を備えている。エア源12は、所定圧力に調整された流体としての空気を供給するものとなっており、その圧力は、例えば、絶対圧で110kPaから200kPaの間のものとすることができる。圧力は高圧であると装置全体を堅牢にしなければならず、低圧であると漏れを検出しにくくなるために、これらのトレードオフによって決められる値とするとよい。
【0014】
気体流路14には該気体流路14の連通/遮蔽を行なう送込用開閉弁16が設けられる。さらに、送込用開閉弁16よりも下流側において、気体流路14は送込用気体流路14Aと測定用気体流路14Bとに分岐されており、送込用気体流路14Aには送込用気体流路14Aの連通/遮蔽を行なう流路切換用開閉弁18が設けられ、測定用気体流路14Bには流量センサ19が設けられている。
【0015】
この例では、空気送り込み時と流量測定時とで流路を切り換えて流量センサ19に大流量を流さないようにするために、送込用気体流路14Aと測定用気体流路14Bとに分岐されているが、分岐せずに流量センサを設けることも可能である。この場合には、流路切換用開閉弁18は省略することができる。
【0016】
容器Cには、気体流路14が接続されると共に、排出路20が接続される。そして、排出路20の終端には排出路20の開放/閉鎖を行なう排気弁または排出弁22が設けられる。排出路20には圧力センサ21が設けられる。
【0017】
気体流路14の下流端と、排出路20の上流端とは、容器Cの上部に密着されるヘッド23に形成される。
【0018】
送込用開閉弁16、流路切換用開閉弁18及び排出弁22はそれぞれ電磁弁で構成することができ、その開閉動作は、制御部24からの制御信号によって制御される。図2は、送込用開閉弁16、流路切換用開閉弁18及び排出弁22の開閉動作のタイミングチャートを示しており、制御部24は、容器Cの検査開始トリガ信号を受けると、送込用開閉弁16、流路切換用開閉弁18及び排出弁22を所定時間t1、t2、t3だけ切り換えて、各流路の連通及び排出路20の開放を行なう。所定時間t1は、1つの容器Cの検査を行なうのに必要な時間に対応し、所定時間t2は空気を容器Cに送り込むのに必要な時間に対応している。所定時間t3は、所定時間t1、t2のうちの一部の時間に対応する。それぞれの関係は、t1>t2>t3となっているとよい。
【0019】
流量センサ19からの検出信号は、制御部24へと入力されて、その判定手段26によって、容器Cの良・不良の判定、即ち漏れの有無が判定される。
【0020】
以上のように構成される漏れ検出装置10において、その作用を説明する。任意の方法で搬送されることができる容器Cにヘッド23が装着されて、図示しないセンサからの検査開始トリガ信号が発生されると、送込用開閉弁16、流路切換用開閉弁18及び排出弁22が同時に開放側に切り換えられる。これによって、エア源12からの空気が気体流路14及び主として送込用気体流路14Aを通り容器Cへと送り込まれて加圧が行なわれる。このときに、排出路20も開放されているために、容器Cから排出路20への流れも存在する。これによって、流量は排出路20が開放されていない場合に比べて格段に大きくなる。
【0021】
次いで、所定時間t3が経過して排出弁22が閉じられると、排出路20が閉鎖されるために、容器C内の圧力は高くなり流量は急速に下がる。しかしながら、排出路20開放時の流量が高いために、流量の積算値は高く、結果として容器Cには大量の空気が流れ込むこととなる。
【0022】
流量が急速に下がった後、所定時間t2が経過して流路切換用開閉弁18が閉じられると、主として送込用気体流路14Aを通り容器Cへと空気が送り込まれていた流路は測定用気体流路14Bのみに切替えられる為、その後計測される流量が増加する。増加した流量計測値はその後にほぼ一定値に収束する。このときの一定値は、容器Cの漏れの有無に応じて有意な差を示すので、制御部24の判定手段26は、流量センサ19からの計測信号を取り込み、その流量の計測値を閾値と比較し、閾値より流量の計測値が大きいまたは閾値以上の場合に漏れ有りと判定し、閾値より流量の計測値が小さいまたは閾値以下の場合に漏れ無しと判定することによって、漏れの有無を確実に検出することができる。
【0023】
上記検出を行なった後、所定時間t1経過とともに送込用開閉弁16が閉じて1つの容器Cに対する検査を終了する。
【0024】
図3は、(a)排出弁による排出を行なった場合と、(b)排出弁を設けない場合のそれぞれの流量と圧力(排出路で測定)を示すグラフである。図から明らかなように、排出弁を設けない場合、圧力はすぐに一定値に飽和するものの、流量の絶対値を大きくすることができず、よって、結果として容器Cに流れ込む流量は少なく、容器Cを隅々まで空気が行き渡るように完全に充填することができない。よって、流量が短時間で安定せずに、漏れの有無を判定するのにはデータのばらつきが大きくなる。
【0025】
これに対して、排出弁による排出を行なうと、排出中は容器Cからの排出があるために圧力は小さいが、流量が大きくなるため、排出を停止した後も、大きい流量で容器に流れ込むことになり、容器Cを満杯にすることができる。従って、満杯になった後の流量変化が少ないために、満杯後はすぐに流量が一定値に収束して安定するので、短時間で漏れの有無の判定をすることができるようになる。確実に容器Cを満杯にすることができるために、小さな漏れであっても確実に流量値の変化として検出することができる。」

(2ウ)上記図1及び図3(a)として、以下の図面が記載されている。
【図1】

【図3】


上記図1から、流量センサ19はエア源と容器と連通しており、流路切換用開閉弁18の入力側はエア源と出力側は容器と連通していることが見て取れる。

b 引用発明について
上記aの記載事項を踏まえると、引用文献2には、以下の発明が記載されていると認められる。なお、図面番号は省略して記載した。
「微小な漏れの検出を可能とし、または判定時間の短縮化を図ることができる容器の漏れ検出装置であって、
流体供給源であるエア源と、該エア源と検査する容器との間を接続する気体流路を備えており、該エア源は、所定圧力に調整された流体としての空気を供給するものであり、
空気送り込み時と流量測定時とで流路を切り換えて流量センサに大流量を流さないようにするために、気体流路は送込用気体流路と測定用気体流路とに分岐されており、送込用気体流路には送込用気体流路の連通/遮蔽を行なう流路切換用開閉弁が設けられ、測定用気体流路には流量センサが設けられ、流量センサはエア源と容器と連通しており、流路切換用開閉弁の入力側はエア源と出力側は容器と連通しており、
流路切換用開閉弁の開閉動作は、制御部からの制御信号によって制御され、流量センサからの検出信号は、制御部へと入力される、装置において、
所定時間t2が経過して流路切換用開閉弁が閉じられると、主として送込用気体流路を通り容器へと空気が送り込まれていた流路は測定用気体流路のみに切替えられ、その後計測される流量が増加し、増加した流量計測値はその後にほぼ一定値に収束し、このときの一定値は、容器の漏れの有無に応じて有意な差を示すので、制御部の判定手段は、流量センサからの計測信号を取り込み、その流量の計測値を閾値と比較し、閾値より流量の計測値が大きいまたは閾値以上の場合に漏れ有りと判定し、閾値より流量の計測値が小さいまたは閾値以下の場合に漏れ無しと判定することによって、漏れの有無を確実に検出することができる、装置。」

(イ)対比
補正発明と引用発明とを対比する。
a 定圧流体源について
引用発明の「所定圧力に調整された流体としての空気を供給する」「エア源」は、補正発明の「定圧流体源」に相当する。

b 低質量流量変換器について
引用発明の「流量センサ」は、「流路を切り換えて」「流量測定時」に「流量センサに大流量を流さないようにする」ものであり、「微小な漏れの検出を可能と」するものであるから、「低質量流量」に対応するものといえ、そして、それは「前記エア源及び前記容器と連通して」いることから、引用発明の「エア源及び容器と連通して」いる「流量センサ」は、補正発明の「前記定圧流体源及び前記容器と連通する低質量流量変換器」に相当する。

c バルブ、バイパス経路について
(a)引用発明の「流路切換用開閉弁が設けられ」た「送込用気体流路」は、補正発明の「バルブを備えるバイパス経路」に相当し、引用発明の「流路切換用開閉弁の入力側はエア源と出力側は容器と連通して」いることは、補正発明の「前記バルブの入力部は前記定圧流体源と連通し、前記バルブの出力部は前記容器と連通して」いることに相当する。

(b)補正発明の「前記低質量流量変換器と前記バイパス経路を通る流量との間に既知の関係がある」ことについて、本願明細書には「バイパス経路471及び測定経路472に使用する導管のサイズは、これら2つの経路471、472を通る流量の間に既知の関係が存在するように選択される。」と記載されており、それら「バイパス経路」及び「測定経路」に相当するものは、引用発明の「送込用気体流路」及び「測定用気体流路」である。
そして、引用発明の「送込用気体流路」及び「測定用気体流路」は、装置を製造するにあたり、各々決められた「流路」(導管)のサイズの部材を使って構成されるものであるから、引用発明において、「流路切換用開閉弁」が「開」いているとき「測定用気体流路に」「設けられ」ている「流量センサ」と「送込用気体流路」を通る流量との間には、補正発明と同じく「既知の関係がある」といえる。
そうすると、引用発明の「送込用気体流路」は、補正発明の「前記バルブが開いているとき前記低質量流量変換器と前記バイパス経路を通る流量との間に既知の関係があるバイパス経路」の構成を満たすものである。

d 制御装置について
引用発明は、「流路切換用開閉弁」の「開閉動作は、制御部からの制御信号によって制御され、流量センサからの検出信号は、制御部へと入力される」から、引用発明の「制御部」は、補正発明の「前記バルブ及び前記低質量流量変換器と連通する制御装置」に相当する。
そして、引用発明の「制御部からの制御信号によって制御され」る「流路切換用開閉弁」の「開閉動作」によって「送込用気体流路」の「気体」の「連通/遮蔽を行なう」ことは、補正発明の「前記制御装置は」「前記バルブを制御して前記バイパス経路を通る流体の流れを許容又は停止」することに相当する。

e システムについて
引用発明の「容器の漏れ検出装置」は、補正発明の「容器の完全性を決定するためのシステム」に相当する。

(ウ)一致点・相違点について
上記(イ)を踏まえると、補正発明と引用発明とは、
(一致点)
「容器の完全性を決定するためのシステムであって、
定圧流体源と、
前記定圧流体源及び前記容器と連通する低質量流量変換器と、
バルブを備えるバイパス経路であって、前記バルブの入力部は前記定圧流体源と連通し、前記バルブの出力部は前記容器と連通しており、且つ、前記バルブが開いているとき前記低質量流量変換器と前記バイパス経路を通る流量との間に既知の関係があるバイパス経路と、
前記バルブ及び前記低質量流量変換器と連通する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記バルブを制御して前記バイパス経路を通る流体の流れを許容又は停止する、システム」
の点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
バルブを制御してバイパス経路を通る流体の流れを許容又は停止することが、補正発明では、「前記低質量流量変換器からのアウトプットに基づいて」行うのに対し、引用発明では、「所定時間t2」で行う点で相違する

(相違点2)
容器の完全性を決定するためのシステムが、補正発明では、「前記容器への総流量を前記既知の関係に基づいて前記低質量流量変換器からの前記アウトプットから決定することができる」のに対し、引用発明では、そのような決定をすることができるかどうか不明である点。

(エ)判断
a 相違点についての判断
(a)相違点1について
補正発明の「低質量流量変換器からのアウトプット」については、上記(1)イで述べたように、翻訳文等に記載した範囲内においてしたものではないことから、ここでは「低質量流量変換器からのアウトプット」を「低質量流量変換器によって測定される流量」として、以下検討する。
引用発明における「所定時間t2」とは、「流路切換用開閉弁が閉じられ」「主として送込用気体流路を通り容器へと空気が送り込まれていた流路は測定用気体流路のみに切替え」る時間である。それは、上記引用文献2の図3(a)を見ても分かるとおり、流量センサによって測定した流量が極小値となる時間である。
してみれば、引用発明の「流路切換用開閉弁」の「開閉動作」によって「送込用気体流路」の「気体」の「連通/遮蔽を行なう」ことにおいて、「流路切換用開閉弁が閉じられ」「主として送込用気体流路を通り容器へと空気が送り込まれていた流路は測定用気体流路のみに切替え」ることを、「所定時間」に替えて、流量センサによって測定される流量に基づいて行うことは当業者が容易になし得たことである。

(b)相違点2について
補正発明の「前記容器への総流量を前記既知の関係に基づいて前記低質量流量変換器からの前記アウトプットから決定することができる」ことについては、上記アで述べたとおり、「容器の完全性を決定する」こととの関係におい明確に特定されているとはいえず、その技術的意義が不明であることから、引用発明おいて、容器への総流量を既知の関係に基づいて容量センサからの流量から決定することができるかどうか、そして、それが容易かどうかについて検討する。
補正発明における「容器への総流量」とは、上記ア(イ)で述べたとおり、「(低質量流量変換器60とバイパス経路471の両方を通る)総流量」のことであり、その「総流量」は、補正発明では、上記(イ)c(b)で述べたとおり、バイパス経路471及び測定経路472に使用する導管のサイズによる流量の関係に基づいて、低質量流量変換器で測定される流量から決定することができる。具体的には、上記(1)イ(イ)で摘記した本願明細書に記載されているように、バイパス経路を通る流量が、低質量流量変換器を通る流量よりもM倍大きいとき、低質量流量変換器によって測定された流量がFであると、「総流量」は(M+1)*Fになるとうことである。
ところで、主管に分流管を設け、その分流管に設けた流量計で測定する流量と、主管と分流管の分流比(主管と分流管の流量比)から主管の流量(主管の流量と分流管の流量を足すと総流量となる)を求めることは、いわゆる分流式流量計として本願優先日前に慣用手段(例えば、特開2011-75429号公報、特開平10-111156号公報の【0002】、特開2013-205322号公報の【0004】、特開2003-270006号公報、等参照)であり、この分流比が、補正発明の「前記低質量流量変換器と前記バイパス経路を通る流量との間にある既知の関係」に対応するものである。
一方、引用発明においても、上記(イ)c(b)で述べたとおり、「測定用気体流路に」「設けられ」ている「流量センサ」と「送込用気体流路」を通る流量との間には、補正発明と同じく「既知の関係がある」といえるのであるから、引用発明においても、上記慣用手段に鑑みれば、「流量センサ」と「送込用気体流路」の両方を通る総流量を、「流量センサ」と「送込用気体流路」を通る流量との間の既知の関係に基づいて「流量センサ」からの流量から決定することができるといえる。
そして、補正発明において「容器への総流量」「を決定する」ことの技術的意義は明確ではないが、引用発明において、例えば、容器への流体の充填状況を知るために、「流量センサ」と「送込用気体流路」の両方を通る総流量を決定することができるようにすることは当業者が容易になし得たことであるといえる。

b 効果について
補正発明の効果として、本願明細書には「当該システムは、低質量流量変換器を使用して可撓性容器内への流体の流れを監視する。この流量に基づいて、可撓性容器内のオリフィスの存在を検出することができる。当該システムはまた、より速い充填時間を可能にするために可撓性容器への第2流路を備える。第2の高質量流量変換器又は較正されたバイパス経路の使用を通じて、より大きな流量が達成される。」(【0009】)と、容器へのより速い充填時間等の効果が記載されているが、引用発明も「微小な漏れの検出を可能とし、または判定時間の短縮化を図ることができる容器の漏れ検出装置」であるから、上記補正発明の効果は格別なものではない。

c 請求人の主張について
請求人は、審判請求書で「引用文献2に関して、引用文献2には、流路切換用開閉弁18を所定時間t2後に閉じることによって、流れの全てが測定流路を通ることが記載されている。しかし、引用文献1と同様に、このバイパス経路を閉じるための決定は、低質量流量変換器の出力に基づいて行われるものではない。」と主張している。
当該主張は、上記(ウ)で記載した「相違点2」を述べたことにとどまり、それが容易でないことを説明するものではないことから、上記a(a)で述べたとおり、当業者が容易なし得たことであるとの判断に変わりはない。

(キ)小括
よって、補正発明は、引用文献2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3 本件補正についてのまとめ
以上のとおり、本件補正は、上記2(1)で述べたとおり、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
加えて、請求項5についての補正が、いわゆる限定的減縮、すなわち特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものに該当するものとしても、上記2(2)で述べたとおり、補正発明が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしているとはいえず、また、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?10に係る発明は、平成30年11月20日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲のとおりのものであり、そのうち請求項5に係る発明(以下「本願発明」という。)は上記第2の1(1)に記載したとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の概略は、以下のとおりである(なお、下線は当審において付与した。)
1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
●理由1(特許法第29条第1項第3号)について
・請求項5 ・引用文献1または2
・請求項6 ・引用文献1

●理由2(特許法第29条第2項)について
・請求項1、3、4 ・引用文献1、3
・請求項2 ・引用文献1、3
・請求項5 ・引用文献1または2
・請求項6 ・引用文献1または、2及び1
・請求項7、8 ・引用文献2
・請求項9 ・引用文献1、3
・請求項10 ・引用文献2

<引用文献等一覧>
1.特開2007-108102号公報
2.特開2008-014678号公報
3.特開平08-128914号公報

3 引用文献について
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2の記載事項は、上記第2の2(2)イ(ア)で記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、上記第2の1(1)で摘記した本件補正前の請求項5の記載及び(2)で摘記した本件補正後の請求項5の記載をみてわかるとおり、補正発明から「前記低質量流量変換器からのアウトプットに基づいて」、「前記容器への総流量を前記既知の関係に基づいて前記低質量流量変換器からの前記アウトプットから決定することができる」との事項を削除した発明であり、上記第2の2(2)イ(ウ)で記載したとおり、前者は相違点1に、後者は相違点2に相当するものである。
そうすると、それらの事項を削除した本願発明は、上記第2の2(2)イ(ア)bで記載した引用発明と対比すると、相違点がないことになる。
よって、本願発明は、引用文献2に記載された発明であるから、上記原査定のとおり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり、審決する
 
別掲
 
審理終結日 2020-03-24 
結審通知日 2020-03-31 
審決日 2020-04-14 
出願番号 特願2017-546697(P2017-546697)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (G01M)
P 1 8・ 121- Z (G01M)
P 1 8・ 561- Z (G01M)
P 1 8・ 537- Z (G01M)
P 1 8・ 575- Z (G01M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 本村 眞也  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 三崎 仁
▲高▼見 重雄
発明の名称 可撓性容器の完全性試験のためのシステム及び方法  
代理人 アクシス国際特許業務法人  

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