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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  A61K
審判 一部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A61K
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  A61K
審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61K
管理番号 1366054
異議申立番号 異議2019-700991  
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-10-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-12-05 
確定日 2020-07-29 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6527715号発明「黒生姜含有組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6527715号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項2、3、5について訂正することを認める。 特許第6527715号の請求項2、3、5に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6527715号の請求項2、3及び5に係る特許についての出願は、平成27年2月27日に出願され、令和1年5月17日にその特許権の設定登録がされ、令和1年6月5日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和1年12月5日に特許異議申立人 山口幸子により特許異議の申立てがされ、当審は、令和2年2月27日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である令和2年4月30日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、その訂正の請求に対して、特許異議申立人 山口幸子は、令和2年6月19日に意見書を提出した。

2 訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
令和2年4月30日の訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)による訂正は、以下のア?ウの訂正事項からなる。
ア 特許請求の範囲の請求項2に、
「黒生姜(Kaempferia parviflora)並びに、ホップ、ケツメイシ、メリロート、エラスチン、没食子酸及びカフェインからなる群から選ばれる少なくとも1種類を含有する抗肥満用組成物。」と記載されているのを、
「黒生姜(Kaempferia parviflora)並びに、ホップ、ケツメイシ、メリロート、エラスチン及び没食子酸からなる群から選ばれる少なくとも1種類を含有する抗肥満用組成物。」に訂正する。
イ 特許請求の範囲の請求項3に、
「黒生姜(Kaempferia parviflora)並びに、ホップ、ケツメイシ、メリロート、エラスチン、没食子酸及びカフェインからなる群から選ばれる少なくとも1種類を含有する体脂肪減少用組成物。」と記載されているのを、
「黒生姜(Kaempferia parviflora)並びに、ホップ、ケツメイシ、メリロート、エラスチン及び没食子酸からなる群から選ばれる少なくとも1種類を含有する体脂肪減少用組成物。」に訂正する。
ウ 特許請求の範囲の請求項5に、
「黒生姜(Kaempferia parviflora)並びに、ホップ、ケツメイシ、メリロート、没食子酸及びカフェインからなる群から選ばれる少なくとも1種類を含有する化粧用組成物。」と記載されているのを、
「黒生姜(Kaempferia parviflora)並びに、ホップ、ケツメイシ、メリロート及び没食子酸からなる群から選ばれる少なくとも1種類を含有する化粧用組成物。」に訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記ア?ウの訂正事項は、請求項2、3又は5に係る発明から黒生姜と「カフェイン」との組合せを削除するものであるから、これらの訂正事項は、いずれも、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。さらに、上記ア?ウの訂正事項は、いずれも、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。

(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項2、3、5について訂正することを認める。

3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項2、3及び5に係る発明(以下「本件発明2」、「本件発明3」及び「本件発明5」といい、まとめて「本件発明」ということもある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項2、3及び5に記載された次の事項により特定されるとおりのものであると認める。

「【請求項2】
黒生姜(Kaempferia parviflora)並びに、ホップ、ケツメイシ、メリロート、エラスチン及び没食子酸からなる群から選ばれる少なくとも1種類を含有する抗肥満用組成物。
【請求項3】
黒生姜(Kaempferia parviflora)並びに、ホップ、ケツメイシ、メリロート、エラスチン及び没食子酸からなる群から選ばれる少なくとも1種類を含有する体脂肪減少用組成物。
【請求項5】
黒生姜(Kaempferia parviflora)並びに、ホップ、ケツメイシ、メリロート及び没食子酸からなる群から選ばれる少なくとも1種類を含有する化粧用組成物。」

4 取消理由通知に記載した取消理由について
(1)取消理由の概要
訂正前の請求項2、3及び5に係る特許に対して、当審が令和2年2月27日に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
ア 請求項2、3及び5に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第3 6条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされ たものであり、取り消されるべきものである。
イ 請求項2及び3に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36 条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされた ものであり、取り消されるべきものである。
ウ 請求項2及び3に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国にお いて、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じ て公衆に利用可能となった発明であり、特許法第29条第1項第3号に該 当する。よって、請求項2及び3に係る特許は、特許法第29条第1項の 規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
エ 請求項2及び3に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国にお いて、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じ て公衆に利用可能となった発明に基づいて、当業者が容易に発明をするこ とができたものである。よって、請求項2及び3に係る特許は、特許法第 29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきもの である。

引用例1:「黒しょうが(ブラックジンジャー)×5つの黒|商品一覧|スベルティ[SVELTY]公式サイト」と題するウェブページの、WayBackMachineによるアーカイブ、アーカイブされた日:2014年11月12日、[2019年11月23日検索]、インターネット
<URL:https://web.archive.org/web/20141112085221/http://www.svelty.jp/product/item10.html>
引用例2:グリッター,2014年11月号,p.140-143
引用例3:ビーズアップ,2014年5月号,p.70-71
引用例4:日本食品科学工学会誌 2012年7月,第59巻.第7号,p.326-330
引用例5:Clinical andExperimental Pharmacology and Physiology,2002,Vol.29, p.391-394
引用例6:Food Science &Nutrition, 2014, Vol.2, issue.6, p.634-637

(2)当審の判断
ア 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
(ア)サポート要件とは
特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件(いわゆるサポート要件)に適合するか否かは、特許請求の範囲と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるかを検討して判断すべきものである。

(イ)当審の判断
発明の詳細な説明の段落【0006】等からみて、本件発明の解決しようとする課題は、副作用の問題がなく、長期的かつ持続的な摂取が可能である、UCP1発現促進作用及び/又は褐色脂肪細胞分化促進作用を示す組成物を提供することであると認める。
ここで、発明の詳細な説明の段落【0042】の記載によれば、上記課題における「UCP1発現促進作用」とは、被験体におけるUCP1遺伝子の発現量を促進すること、UCP1タンパク質の翻訳量を増大すること及びUCP1を活性化することのうち少なくともいずれか1つの作用をいい、また、「褐色脂肪細胞活性化作用」とは、褐色脂肪細胞を活性化すること及び褐色脂肪細胞数を増加させることのうち少なくともいずれか1つの作用をいうものと認める。
また、発明の詳細な説明の段落【0007】、【0041】等によれば、当該課題を解決するために、本件発明が採用した手段は、黒生姜と特定の成分とを組み合わせるというものである。

取消理由通知においては、以下のような理由で、請求項2、3及び5に係る発明は、サポート要件を満たさないとの判断を示した。
a 実施例では、内在性コントロール遺伝子(本実施例ではGAPDH)を用いて定量リアルタイムPCRを行い、サンプル間で生じるターゲット遺伝子の発現量を補正し、標準化しているにもかかわらず、表1における黒生姜抽出物を単独で供した場合のUCP1のmRNA発現量(内在性コントロールに対する相対発現量)は、0.81(エラスチン)?9.38(ショウガ)と大きな開きがあり、その値の信憑性については疑義がある。
b 例えば、被験物質がホップの例において、黒生姜抽出物単独の場合のUCP1のmRNA発現量(内在性コントロールに対する相対発現量)として、ショウガの場合の値(9.38)を当てはめてみると、
9.38(黒生姜抽出物単独)+1.93(ホップ単独)>3.05(黒生姜抽出物及びホップの組合せ)
となってしまい、黒生姜と特定の成分とを組み合わせることで、UCP1発現はむしろ抑制されていることとなる。
c このように、表1における黒生姜抽出物を単独で供した場合のUCP1のmRNA発現量(内在性コントロールに対する相対発現量)の値の信憑性が低いことに起因して、技術常識を参酌したとしても、表1に示される実験結果から、黒生姜と特定の成分とを組み合わせる請求項2、3及び5に係る発明により、上記課題が解決できることを当業者が認識できるとはいえない。

しかしながら、特許権者が令和2年4月30日に提出した意見書の主張及び乙第3号証から乙第5号証の内容も踏まえ再検討したところ、以下のとおり、本件発明2、3及び5については、上記サポート要件違反の取消理由はないといえる。
なお、特許権者が提出した乙号証のうち、乙第1号証は、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった日が本件特許の出願前であるかどうかが不明であり、また、乙第2号証は、本件特許の出願後である2019年に公開されたものであるから、これらの証拠は、再検討において、参酌していない。

a 表1における黒生姜抽出物単独の場合のUCP1のmRNA発現量(内在性コントロールに対する相対発現量)について、被験物質が「ショウガ」以外の場合の値は、0.81(エラスチン)?2.33(アラニン)であり、大きくばらついているとまではいえず、特に、本件発明2、3及び5における特定の成分「ホップ、ケツメイシ、メリロート、エラスチン及び没食子酸」の場合の値(0.81?1.35)は、その平均値(1.10)、標準偏差(0.18)、変動係数(0.16)を踏まえると、十分にばらつきが小さいものである。
b また、黒生姜抽出物単独の場合のUCP1のmRNA発現量(内在性コントロールに対する相対発現量)として、被験物質が「ショウガ」の場合の値(9.38)が存在するとしても、「ショウガ」以外の場合の値が明らかに間違えているといえる事情は、存在しない。なお、特許権者は、意見書において、被験物質が「ショウガ」の場合の値(9.38)はいわゆる「外れ値」である旨主張しているが、特許明細書、意見書及び乙第3号証から乙第5号証の記載を参酌しても、この値が外れ値であるかどうか評価することはできないと考える。
c 被験物質の作用を評価する場合には、被験物質以外の条件が同一であることが前提であり、被験物質ごとの黒生姜抽出物単独の場合の値が記載されている表1においては、被験物質の黒生姜単独と、被験物質単独と、黒生姜抽出物及び被験物質の組合せとを比較すべきであり、異なる被験物質における黒生姜抽出物単独の値を入れ替えて比較することは適切とはいえない。
d そして、表1によれば、被験物質がホップの場合、
1.07(黒生姜抽出物単独)+1.93(ホップ単独)<3.05(黒生姜抽出物及びホップの組合せ)
となっており、黒生姜抽出物単独及び被験物質単独の合計UCP1発現量よりも、黒生姜抽出物と被験物質との組合せのUCP1発現量の方が大きかったことが示されている。請求項2、3及び5におけるホップ以外の被験物質(ケツメイシ、メリロート、エラスチン及び没食子酸)を用いた場合についても同様である。
e そうしてみると、上記実施例の結果は、本件発明2、3及び5における黒生姜と被験物質(ホップ、ケツメイシ、メリロート、エラスチン(請求項5では被験物質ではない)及び没食子酸)を組み合わせた組成物がUCP1発現促進作用を有することを示しているといえる。また、この組成物で用いられる黒生姜及び被験物質については、それぞれ医薬品や化粧品などでの使用実績があり、組成物自体の安全性は高いものであるから(発明の詳細な説明の段落【0020】を参照。)、副作用の問題がなく、長期的かつ持続的な摂取が可能であることは、明らかである。
f したがって、本件発明2、3及び5は、発明の詳細な説明の記載により、上記の課題(副作用の問題がなく、長期的かつ持続的な摂取が可能である、UCP1発現促進作用及び/又は褐色脂肪細胞分化促進作用を示す組成物を提供すること)を解決できると当業者が認識できる範囲のものである。

(ウ)異議申立人の主張について
異議申立人は、令和2年6月19日提出の意見書において、以下のように主張する。
a 表1において、訂正請求項に記載される5種成分(ホップ等)の行に記載の「黒生姜抽出物単独」と、訂正請求項に記載されていない残り8種成分(ショウガ等)の行に記載の「黒生姜抽出物単独」とで実験手法に違いがあるとは認められないにかかわらず、この13とおりの「黒生姜抽出物単独」の値のうち、訂正請求項に記載される5種成分(ホップ等)の行に記載の「黒生姜抽出物単独」のみを評価対象とし、その他8種成分(ショウガ等)の行に記載の「黒生姜抽出物単独」を評価対象としないことは、データの恣意的な解釈であり、不適切である。
b また、9.38とのデータが外れ値のように見えるとしても、この値が誤りであるとの根拠がなく、当該データを検討対象から恣意的に除外することはできない。むしろ、9.38との値が外れ値であるというのであれば、表1中のその他の一つ一つの値についても、それぞれのデータ集合を代表する値といえるのか、それとも外れ値であるのか、判断することができず、表1の値の信頼性を損ねることになる。そのため、9.38とのデータは、「黒生姜抽出物単独」の結果の検討対象から除外すべきではない。
c そうすると、取消理由通知書に記載されているとおり、被験物質がホップの例において、黒生姜抽出物単独の場合のUCP1のmRNA発現量(内在性コントロールに対する相対発現量)として、ショウガの場合の値(9.38)を当てはめてみると、
9.38(黒生姜抽出物単独)+1.93(ホップ単独)>3.05(黒生姜抽出物及びホップの組合せ)
となってしまい、黒生姜と特定の成分とを組み合わせることで、UCP1発現はむしろ抑制されていることとなり、訂正請求項に係る発明により、本件発明の課題を解決できると認識できない。
d さらに、実施例では、黒生姜も被験物質も添加していない対照試験の結果が記載されていない。そして、対照試験におけるUCP1のmRNA発現量(内在性コントロールに対する相対発現量)の値の方が、黒生姜抽出物単独や被験物質単独の場合の値よりも大きく、黒生姜抽出物及び被験物質の組み合わせの場合の値と比べても大きくなっていて、UCP1のmRNA発現量が抑制されていると言う可能性は十分あり得る。よって、黒生姜抽出物及び被験物質の組合せについて、黒生姜抽出物単独や特定成分単独と比較してUCP1のmRNA発現量が多いとしても、それだけでは、黒生姜抽出物及び特定成分の組合せにより「UCP1発現促進作用及び/又は褐色脂肪細胞分化促進作用を示す組成物を提供する」という本件発明の課題が解決できるとは認識できない。

以下、上記主張について検討する。
・上記主張a?cについて
これらの主張における「黒生姜抽出物単独」の場合のUCP1のmRNA発現量の値の取捨選択の問題は、つまるところ、上記主張cにおける計算式の採用の可否(例えば、被験物質として「ホップ」を用いた実施例において、黒生姜抽出物単独の場合のUCP1のmRNA発現量(内在性コントロールに対する相対発現量)の値として、「ホップ」以外の値(例えば、「ショウガ」の場合の値(9.38))を当てはめてみることが適切であるかどうか)の問題に帰着する。
しかしながら、このような考え方が適切でないことは、上記(イ)cで説示したとおりである。
よって、上記主張a?cについては、採用できない。

・上記主張dについて
この主張は、黒生姜を添加することで、黒生姜を添加していない場合よりも、UCP1のmRNA発現量が低下する可能性は否定できないことを前提とするものである。
しかしながら、黒生姜の摂取によりUCP1の発現が増加することは、周知の技術的知見であるから(要すれば、引用例1の5ページ中段左側、引用例6の要約を参照)、上記主張dは、その前提において誤っており、採用できない。

イ 特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)について
(ア)実施可能要件について
発明の詳細な説明の記載が、いわゆる実施可能要件に適合するといえるためには、物の発明の場合は、当業者がその物を製造し、使用をすることができる程度のものである必要がある。
そして、本件発明2及び3は、「物」の発明であり、さらに、「抗肥満用」ないし「体脂肪減少用」という限定の付された、いわゆる「医薬用途発明」であるから、当該用途に使用できることを当業者が理解できる程度に発明の詳細な説明は記載されている必要がある。

(イ)当審の判断
取消理由通知においては、サポート要件違反の取消理由と同様、実施例において示される黒生姜抽出物を単独で供した場合のUCP1のmRNA発現量(内在性コントロールに対する相対発現量)の値の信憑性が低いことに起因して、技術常識を参酌したとしても、実施例(表1)に示される実験結果から、黒生姜と特定の成分とを組み合わせる請求項2及び3に係る発明について、UCP1発現促進作用を奏することが確認できたとはいえないことから、実施可能要件を満たさないと判断した。
ところで、サポート要件について、特許権者が令和2年4月30日に提出した意見書の主張及び乙第3号証から乙第5号証の内容も踏まえ再検討したところ、サポート要件違反の取消理由はないと判断したことは、上記ア(イ)で説示したとおりである。
よって、実施可能要件についても、これと同様、取消理由はないと考える。

(ウ)異議申立人の主張について
令和2年6月19日提出の意見書における異議申立人の主張も、サポート要件違反と同様の理由により、実施可能要件を満たさないというものである。
しかしながら、本件発明2及び3がサポート要件を満たすことは、上記ア(イ)で説示したとおりであり、また、サポート要件に関する異議申立人の主張が採用できないことも、上記ア(ウ)で述べたとおりである。
よって、異議申立人の主張は、採用できない。

ウ 特許法第29条第1項第3号(新規性)及び同法同条第2項(進歩性)について
取消理由通知書における新規性進歩性欠如の取消理由は、請求項2及び3に係る発明のうち、黒生姜及びカフェインの組合せに係る部分については、
引用例1に基づき、新規性及び進歩性がない、
引用例2に基づき、新規性及び進歩性がない、
引用例5,6に基づき、進歩性がない
というものであった。

しかしながら、上記2で説示したとおり、請求項2、3又は5に係る発明から黒生姜と「カフェイン」との組合せを削除する訂正が認められたから、本件訂正後の本件発明2及び3について、上記取消理由が解消したことは明らかである。

5 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件請求項2、3及び5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項2、3及び5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒生姜(Kaempferia parviflora)並びに、ホップ、ケツメイシ及びメリロートからなる群から選ばれる少なくとも1種類を含有する経口組成物。
【請求項2】
黒生姜(Kaempferia parviflora)並びに、ホップ、ケツメイシ、メリロート、エラスチン及び没食子酸からなる群から選ばれる少なくとも1種類を含有する抗肥満用組成物。
【請求項3】
黒生姜(Kaempferia parviflora)並びに、ホップ、ケツメイシ、メリロート、エラスチン及び没食子酸からなる群から選ばれる少なくとも1種類を含有する体脂肪減少用組成物。
【請求項4】
黒生姜(Kaempferia parviflora)並びに、ホップ、ケツメイシ、メリロート及びエラスチンからなる群から選ばれる少なくとも1種類を含有する代謝促進用組成物。
【請求項5】
黒生姜(Kaempferia parviflora)並びに、ホップ、ケツメイシ、メリロート及び没食子酸からなる群から選ばれる少なくとも1種類を含有する化粧用組成物。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-07-14 
出願番号 特願2015-38887(P2015-38887)
審決分類 P 1 652・ 113- YAA (A61K)
P 1 652・ 121- YAA (A61K)
P 1 652・ 537- YAA (A61K)
P 1 652・ 536- YAA (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 松元 麻紀子  
特許庁審判長 藤原 浩子
特許庁審判官 穴吹 智子
滝口 尚良
登録日 2019-05-17 
登録番号 特許第6527715号(P6527715)
権利者 株式会社東洋新薬
発明の名称 黒生姜含有組成物  
代理人 森本 敏明  
代理人 森本 敏明  

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